JP2004142694A - ウエビング巻取装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転部材をスプールに抜け止め状態で装着する作業が容易であるウエビング巻取装置を得る。
【解決手段】ウエビング巻取装置では、ウエビングが巻き回されるスプール12の軸方向端部に開口し軸心部に設けられたロックベース受入れ部22に、ロックベース24が装着される。ロックベース24の基部24Aの外周面には、ストッパ64のCリング部66がリング突部62によって軸方向の脱落が阻止された状態で装着されている。基部24Aをロックベース受入れ部22内に挿入すると、ストッパ64の係合片68等がスプール12の連通路74等に入り込み、ロックベース24を軸線廻りに回動すると係合片68等がスリット82等に入り込む。これにより、ロックベース24がスプール12に対し抜け止めされる。
【選択図】 図3
【解決手段】ウエビング巻取装置では、ウエビングが巻き回されるスプール12の軸方向端部に開口し軸心部に設けられたロックベース受入れ部22に、ロックベース24が装着される。ロックベース24の基部24Aの外周面には、ストッパ64のCリング部66がリング突部62によって軸方向の脱落が阻止された状態で装着されている。基部24Aをロックベース受入れ部22内に挿入すると、ストッパ64の係合片68等がスプール12の連通路74等に入り込み、ロックベース24を軸線廻りに回動すると係合片68等がスリット82等に入り込む。これにより、ロックベース24がスプール12に対し抜け止めされる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両急減速時にエネルギ吸収するためにスプールに対し相対回転する回転部材を有するウエビング巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にウエビング巻取装置は、平面視で略コ字状に形成され車両に固定されたフレームを備えており、該フレームの互いに対向する一対の脚板間には乗員拘束用のウエビングが層状に巻き回されたスプールが回転可能に軸支されている。そして、ウエビング巻取装置では、通常はスプールが回転自在であることによりウエビングの巻取り引出しが自由とされている。
【0003】
一方、ウエビング巻取装置では、車両の急減速時やウエビングの急激な引出時等の場合に、スプールのウエビング引出方向の回転を阻止するロック手段が設けられている。これにより、ウエビング巻取装置では、例えば急減速状態に慣性で車両前方側へ移動しようとする乗員によるウエビング引出力に抗し、車両急減速時におけるウエビングによる乗員の拘束力を向上するようになっている。
【0004】
さらに、ウエビング巻取装置には、ロック手段の作動時に、ウエビングの所定量の引出しを許容してエネルギ吸収を行うエネルギ吸収機構を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなウエビング巻取装置について図5及び図6を用いて説明する。
【0005】
これらの図に示されるように、ウエビングを層状に巻取るスプール100の軸芯部には、エネルギ吸収用のトーションバー102を挿入するためのトーションバー挿通孔104が形成されている。さらに、トーションバー挿通孔104の軸方向の一端部側には、これよりも大径とされたロックベース装着部106が同軸上に形成されている。ロックベース装着部106には、車両急減速時等にウエビング引出方向の回転が阻止されるロックベース(回転部材)108が、スプール100に対し相対回転可能に装着されている。
【0006】
ロックベース108におけるロックベース装着部106内に入り込む部分の外周部には環状の凹溝110が形成されている。一方、スプール100には、その外周部に凹設されたストッパ収容溝112の両端部と、ロックベース装着部106における凹溝110との隙間部分とをそれぞれ連通する一対のスリット114が設けられている。
【0007】
そして、スプール100のロックベース装着部106の装着されたロックベース108は、抜け止め部材116によってスプール100に対し抜け止めされている。抜け止め部材116は、全体として略コ字状に形成されており、互いに対向しそれぞれ異なるスリット114に入り込む一対の脚部118と、スプール100の外周面に対応した円弧状に形成され一対の脚部118を連結する連結部120とで構成されている。
【0008】
この抜け止め部材116は、ロックベース108がロックベース装着部106に装着された状態で、各脚部118がそれぞれスリット114に挿入されてロックベース108の凹溝110とスリット114との間に圧入される(塑性変形する)。これにより、ロックベース108をスプール100から抜き出そうとしても、凹溝110の溝壁が脚部118に係合し、脚部118がスリット114の溝壁に係合するため、該抜き出しが阻止される。また、一対の脚部118が上記の通り圧入されているため、ロックベース108は、スプール100との相対回転を可能としつつガタつきが防止されている。なお、この状態で、抜け止め部材116の連結部120は、ストッパ収容溝112に入り込んでスプール100の外周面よりも突出しないようになっている。
【0009】
このロックベース108には、トーションバー挿通孔104に挿通されたトーションバー102の一端部が回転不能に係止されており、トーションバー102の他端部はトーションバー挿通孔104の他端部にスプール100に対し回転不能に固定されたスリーブ122に回転不能に係止されている。これにより、車両急減速時等にロックベース108のウエビング引出方向の回転が阻止されると、乗員の慣性力等に基づくウエビング引出力によってスプール100はトーションバー102を捩りつつ該ウエビングの引出を許容する。このトーションバーの捩り荷重によって、乗員を前方へ移動させようとするエネルギが吸収される。
【0010】
なお、図5に示すベルト通し孔124(図6では図示省略)は、ウエビングを挿通させて該ウエビングの一端に取り付けられたストッパ部材を係合させるものである。このベルト通し孔124は、スプール100におけるロックベース装着部106を避けた径方向外側部分に配置されている。
【0011】
ところで、スプール100にロックベース108を組み付ける際には、該ロックベース108をスプール100の軸線方向(図6の矢印B方向)に沿ってロックベース装着部106に挿入し、この状態から抜け止め部材116をスプール100の軸線方向に直交する方向(図6の矢印C方向)からスプール100に近接させ、各脚部118をそれぞれスリット114に挿入(圧入)する。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−289572公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来のウエビング巻取装置では、ロックベース108と抜け止め部材116とでスプール100に対する組付方向が異なっており、組付方向が2方向であったため、スプール100に対するロックベース108の装着(抜け止めを含む)が煩雑で作業性が悪いという問題があった。特に、自動組立装置を用いてスプール100にロックベース108を組み付ける場合には、該自動組立装置の構成が複雑化する原因となる。
【0014】
また、抜け止め部材116の各脚部118がスリット114とロックベース108の凹溝110との間で塑性変形するように圧入するため、専用の治具または圧入装置が必要であった。
【0015】
本発明は、上記事実を考慮して、回転部材をスプールに抜け止め状態で装着する作業が容易であるウエビング巻取装置を得ることが目的である。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係るウエビング巻取装置は、外周部に乗員拘束用のウエビングが巻取り引出し可能に巻き回されると共に、軸方向端部に開口する受入れ凹部が軸心部に設けられたスプールと、前記受入れ凹部に、前記スプールに対する相対回転可能に装着される回転部材と、周方向の一部が切り欠かれたリング状に形成され前記回転部材の外周部に摺動可能に装着される装着部と、該装着部の径方向外側に突設された係合部とを有する抜け止め部材と、前記回転部材の外周部から突設され前記抜け止め部材の軸方向の脱落を阻止する突部と、前記受入れ凹部の内周面に開口すると共に前記軸方向との直交面に沿って前記スプールに設けられ、前記係合部が係合可能に入り込むスリットと、前記係合部の進入可能に前記スプールの軸方向端部に開口して設けられ、前記受入れ凹部に径方向外側から連通すると共に前記スリットに周方向から連通する連通路と、を備えている。
【0017】
請求項1記載のウエビング巻取装置では、先ず回転部材の外周部に抜け止め部材の装着部を装着する。次いで、抜け止め部材の係合部がスプールの軸方向端部に開口する連通路に入り込むように、該抜け止め部材が装着された回転部材をスプールの受入れ凹部に挿入する。この連通路は受入れ凹部の径方向外側に連通されているため、抜け止め部材は、回転部材と共に受入れ凹部に挿入される装着部と連通路に入り込む係合部との付根部分がスプールに干渉することがない。この状態から回転部材(または抜け止め部材)をスプールの軸線廻りに回動し、抜け止め部材の係合部を連通路に周方向から連通したスリット内に入り込ませる。
【0018】
これにより、回転部材をスプールから抜き出そうとしても、回転部材の外周部から突設された突部が抜け止め部材に係合し、抜け止め部材の係合部がスプールのスリット壁に係合するため、該抜き出しが阻止される。また、抜け止め部材の装着部が回転部材と摺動可能であるため、回転部材のスプールに対する相対回転が許容される。
【0019】
ここで、回転部材をスプールに装着する際には、単に回転部材をスプールの軸線方向に移動して受入れ凹部に挿入し、該軸線廻りに回転部材を回動するのみで該回転部材がスプールに対し抜け止め状態で装着されるため、該装着作業が容易である。すなわち、スプールに対する部品の挿入方向が1方向となり(複数の部品を一体化して組み付けることができ)、自動組立装置の構造も簡素化される。
【0020】
また、抜け止め部材の装着部は、周方向の一部を切欠かれたリング状(例えば、Cリング状)であり、回転部材の外周部に装着(嵌合)されているため、回転部材が受入れ凹部内で径方向に片寄せられることがない。このため、抜け止め部材をスプールに圧入する必要がなく、すなわち該圧入のために専用の治具等を用いる必要がなく、上記装着作業が一層容易である。
【0021】
このように、請求項1記載のウエビング巻取装置では、回転部材をスプールに抜け止め状態で装着する作業が容易である。
【0022】
請求項2記載の発明に係るウエビング巻取装置は、請求項1記載のウエビング巻取装置において、前記スプールは軸方向端部にフランジ部を有し、該フランジ部の軸心部に前記受入れ凹部を設けた、ことを特徴としている。
【0023】
請求項2記載のウエビング巻取装置では、スプールの軸方向端部にフランジ部が設けられており、該フランジ部の軸心部に受入れ凹部が設けられているため、換言すれば、スプールにおけるウエビングが巻装されない部分に受入れ凹部、スリット、及び連通路が設けられているため、回転部材がスプールにおけるウエビング巻装部分の内側に入り込まない構造とすることができる。この構造では、ウエビングを挿通して係止するベルト通し孔をスプールの軸心に近づけて設けることができるため、スプールの強度、特にウエビングが全て引き出された状態で該スプールに作用する力に対する強度が向上する。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置10について、図1乃至図4に基づいて説明する。
【0025】
図1には本実施の形態に係るウエビング巻取装置10の全体構成が断面図にて示されている。この図に示される如く、ウエビング巻取装置10は平面視で略コ字形に形成されたフレーム14を備えており、該フレーム14が車体側に固定されている。フレーム14は互いに平行に延出された第1脚板16と第2脚板18とを備えており、これらの第1脚板16、第2脚板18間にダイカストによって製作されたスプール12が回転可能に軸支されている。
【0026】
スプール12は、円筒形状のスプール軸12Aと、このスプール軸12Aの両端部に略円板形状にそれぞれ形成された一対のフランジ部(以下、第1脚板16側に配置されるフランジ部を「第1フランジ部12B」と称し、第2脚板18側に配置されるフランジ部を「第2フランジ部12C」と称す)とによって構成されており、全体としては鼓形状をなしている。このスプール12のスプール軸12AにはウエビングWの一端が係止されて該ウエビングWが巻き回されており、スプール12の回転により、ウエビングWがスプール12に対して巻取り引出し自在とされている。
【0027】
スプール軸12Aの軸芯部には、トーションバー挿通孔20が形成されている。トーションバー挿通孔20は、第1フランジ部12Bの軸心部に形成(凹設)された受入れ凹部としてのロックベース受入れ部22と同軸的に連通されている。ロックベース受入れ部22は、トーションバー挿通孔20よりも大径とされている。このロックベース受入れ部22には、回転部材としてのロックベース24がスプール12と相対回転可能に装着されている。ロックベース24のスプール12に対する装着構造については後述する。
【0028】
ロックベース24は鍔付き円筒形状に形成されており、ロックベース受入れ部22に挿入される基部24Aと、基部24Aよりも大径とされかつ第1フランジ部12Bの外側面に当接状態で配置される保持部24Bとによって構成されている。一方、ロックベース24における軸芯部には、その外端を除いた部分に六角穴形状の嵌合孔26が形成されており、その外端部分には嵌合孔26の軸芯部と相互に連通されかつこれよりも小径とされた小孔28が形成されている。
【0029】
また、トーションバー挿通孔20は、第2フランジ部12Cの軸心部に形成(凹設)されたスリーブ受入れ部30とも連通されている。このスリーブ受入れ部30には、軸芯部に六角穴形状の嵌合孔32が形成されたスリーブ34が回転不能に嵌合されている。すなわち、スリーブ34は、常にスプール12と一体に回転するようになっている。
【0030】
なお、スリーブ34の先端部には、スプール12をウエビング巻取回転方向へ回転付勢する付勢手段(ぜんまいばね)の内端が図示しないアダプタを介して係止されている。また、上記構成のスリーブ34は、車両急減速時にスプール12を瞬時にウエビング巻取方向回転させるプリテンショナ機構の構成部品の1つである。
【0031】
上述したロックベース24とスリーブ34とは、トーションバー36によって相互に連結されている。トーションバー36は、その主部を構成する軸部36Aと、軸部36Aの一端部に形成された六角形状の頭部36Bと、軸部36Aの他端部に形成された六角形状の嵌合部36Cと、軸部36Aよりも小径とされ嵌合部36Cの軸芯部から軸部36Aと同軸上に延出された支軸36Dとによって構成されている。
【0032】
トーションバー36の頭部36Bはスリーブ34に形成された六角穴形状の嵌合孔32へ嵌合されており、またトーションバー36の嵌合部36Cはロックベース24に形成された六角穴形状の嵌合孔26へ嵌合されている。これにより、トーションバー36は、ロックベース24及びスリーブ34を介してスプール軸12Aと一体化されている。この状態で、トーションバー36の軸部36Aはトーションバー挿通孔20内に位置し、支軸36Dはロックベース24の小孔28を貫通している。
【0033】
また、上述したフレーム14の第1脚板16には、内歯ラチェット38が打ち抜きにより形成されている。内歯ラチェット38のラチェット歯38Aは高強度に設定されている。この内歯ラチェット38の径方向内側には、ロックベース24の保持部24Bが配置されている。また、保持部24Bの外端面にはプレート収容部40が凹設されており、このプレート収容部40にはロックプレート42がロックカバー44によって脱落阻止された状態で収容されている。
【0034】
ロックプレート42は、全体としてプレート収容部40内に収容されるラチェット歯38Aとの非噛合位置と、その一部をプレート収容部40から径方向外側へ突出させてラチェット歯38Aと噛み合わせる噛合位置とを選択的に取り得るようになっている。噛合位置に位置するロックプレート42は、ロックベース24のウエビング引出方向の回転を阻止するようになっている。
【0035】
また、ロックベース24(ロックカバー44)の外側に隣接する位置には、これよりも大径の略円板形状に形成されたVギヤ46が配置されている。Vギヤ46の軸芯部には円筒状のボス48が形成されており、トーションバー36の支軸36Dに相対回転可能に軸支されている。さらに、Vギヤ46の短円筒状に形成された外周部には、複数のロック歯46Aが等間隔で一体に形成されている。
【0036】
このVギヤ46には、ガイド孔50が形成されており、該ガイド孔50にはロックプレート42から立設されたガイドピン42Aが挿入されている。また、Vギヤ46は、図示しないリターンスプリングの付勢力によってウエビング引出方向に付勢されており、通常は、ガイド孔50にガイドピン42Aを入り込ませたロックプレート42を非噛合位置に保持するスプール12との相対位置に保持されつつ、該スプール12と一体に回転するようになっている。
【0037】
さらに、Vギヤ46は、車両急減速時にはVSIR用の加速度センサ(図示省略)のセンサレバーがロック歯46Aに係合することで、ウエビングWの急激な引出時には自ら揺動自在に軸支するWSIR用のパウル(図示省略)がカバー部材52の内歯52Aに係合することで、ウエビング引出方向の回転が阻止されるようになっている。そして、この状態でスプール12と共にロックベース24がウエビング引出方向に回転すると、このロックベース24とVギヤ46との相対回転によって、ガイド孔50がガイドピン42Aをガイドしてロックプレート42を噛合位置へ移動させるようになっている。
【0038】
また、カバー部材52の軸芯部には円筒状の軸受部54が一体に形成されており、この軸受部54にはトーションバー36の支軸36Dが軸支されている。
【0039】
次に、スプール12へのロックベース24の装着構造について説明する。図2及び図3にも示される如く、ロックベース24におけるロックベース受入れ部22内に挿入される基部24Aの外周部には、係合溝60が環状に設けられている。係合溝60の一方の溝壁は保持部24Bで構成されており、係合溝60の他方の溝壁は基部24Aの先端に位置するリング突部62で構成されている。リング突部62の外径はロックベース受入れ部22の内径に対応している。このリング突部62が本発明における「突部」に相当する。なお、図3ではプレート収容部40の図示を省略している。
【0040】
このロックベース24の係合溝60には、抜け止め部材としてのストッパ64が装着されるようになっている。ストッパ64は、周方向の一部を切り欠いた環状に形成された装着部としてのCリング部66と、該Cリング部66から径方向外側に突出したそれぞれ係合部としての係合片68、70、72とを備えている。このストッパ64は、プレス加工等によって打ち抜かれた板状部材を適宜曲げて全体として一体に形成されている。
【0041】
Cリング部66は、自然状態で内径が係合溝60(の溝底)の外径よりも若干小径とされており、係合溝60への装着(嵌合)状態では自らの復元力によって該係合溝60の溝底にしっかりと抱き付くようになっている。また、Cリング部66は、その内周部に突出部がなく係合溝60に摺動可能に装着される構成である。さらに、Cリング部66は、その厚みが係合溝60の深さよりも若干小とされ、該係合溝60への装着状態でリング突部62の外周面よりも径方向外側に突出しない(略面一となる)構成とされている。
【0042】
また、係合片68、70、72は、Cリング部66のロックベース24への装着状態において、軸方向視で周方向に等間隔となるように配置されている。係合片68、72は、それぞれCリング部66の異なる切欠き端に位置している。すなわち、Cリング部66の切欠き端間の中心角は120°よりも若干小である。これらの係合片68、70、72は、それぞれ形状が異なっている。
【0043】
具体的には、係合片68は、Cリング部66の幅(軸)方向一端部(ロックベース24への装着状態でリング突部62側)から延設され、先端が丸められた単なる平板状に形成されている。係合片70は、Cリング部66の幅方向他端部から延設され、クランク状に曲げられて先端部70Aが係合片68と面一となるように形成されている。係合片72は、Cリング部66の幅方向一端部から延設され、根元部72Aが係合片68よりも幅広とされると共に先端部に引掛部72Bが形成されている。また、係合片70、72は、それぞれ軸方向視で(径方向の長さが)係合片68よりも長く形成されている。さらに、係合片72の根元部72Aには、上記プレス加工等によって形成された突部72Cが設けられている。
【0044】
一方、スプール12の第1フランジ部12Bには、ストッパ64の各係合片68、70、72が入り込む連通路74、76、78が設けられている。各連通路74、76、78は、第1フランジ部12Bの外端面及びロックベース受入れ部22の内周面に開口している。また、各連通路74、76、78の底部は、ロックベース受入れ部22の軸方向中間部に位置している。具体的には、ロックベース受入れ部22とトーションバー挿通孔20との間の段部80から各連通路74、76、78の底部までの長さが、ロックベース24のリング突部62の厚みに対応している。
【0045】
さらに、各連通路74、76、78には、それぞれロックベース受入れ部22の内周面に開口したスリット82、84、86が第1フランジ部12Bの周方向における同じ側(図3に示す矢印A側)に連設されている。各スリット82、84、86は、それぞれ互いに対向するスリット壁の一方が各連通路74、76、78の底部と面一とされると共に、他方のスリット壁によって第1フランジ部12Bの外端面で閉じている。これにより、各スリット82、84、86には、ストッパ64の係合片68、70、72が係合可能に入り込むようになっている。
【0046】
ここで、連通路74には係合片68がスプール12の軸方向から入り込むようになっており、該連通路74に連設されたスリット82には係合片68が周方向にスライドして入り込むようになっている。連通路74は、スプール12の軸方向視で縁部が係合片68に対応した略U字状に形成され、係合片68よりも長い係合片70、72が入り込めない形状とされている。
【0047】
また、連通路76には係合片70がスプール12の軸方向から入り込むようになっており、該連通路76に連設されたスリット84には係合片70が周方向にスライドして入り込むようになっている。連通路76とロックベース受入れ部22との間には、係合片70がクランク状に形成されている(根元部が第1フランジ部12Bの外端面側に位置する)ことに対応して低壁部76Aが形成されている。この低壁部76Aの存在により、連通路76には係合片68、72が入り込めないようになっている。
【0048】
さらに、連通路78には係合片72がスプール12の軸方向から入り込むようになっており、該連通路78に連設されたスリット86には係合片72が周方向にスライドして入り込むようになっている。スリット86には係合片72の根元部72Aのみが入り込むようになっており、連通路78がスリット86のスプール12径方向の外側まで延長されている。これにより、係合片72がスリット86に入り込んだ状態で引掛部72Bを操作可能に露出させる構成である。また、スリット86に入り込んだ係合片72はその突部72Cをスリット壁に当接させてストッパ64の軸方向のガタつきを抑えるようになっている。なお、連通路78は係合片68、70が単独では入り込むことができる形状であるが、該連通路78に対応した係合片72が他の連通路74、76に入り込めないため、結局、連通路78に係合片68、70が入り込むことはない。
【0049】
なお、各スリット82、84、86は、第1フランジ部12Bの外周面にも開口しているが、これはダイカストによって製作されるスプール12のスライド型の型抜きを考慮したものである。
【0050】
以上により、ロックベース24は、その係合溝60にストッパ64のCリング部66をリング突部62による抜け止め状態で装着した状態で、その基部24AをCリング部66と共にスプール12のロックベース受入れ部22に挿入し、かつストッパ64の各係合片68、70、72をそれぞれスプール12のスリット82、84、86に係合可能に入り込ませることで、スプール12に対し抜け止め状態で装着される構成である。
【0051】
また、スプール12のスプール軸12Aには、ウエビングWを挿通させて該ウエビングWの一端部を係止するためのベルト通し孔88が設けられている。本実施の形態では、ベルト通し孔88は、スプール軸12Aの全長に亘り設けられトーションバー挿通孔20に連設されている。すなわち、ベルト通し孔88の両端部はそれぞれロックベース受入れ部22、スリーブ受入れ部30とも連通されている。
【0052】
具体的には、トーションバー挿通孔20の内周面における軸心よりも連通路76側部分から一対のレール90が突設されており、該レール90よりも連通路76側の部分がベルト通し孔88とされている。このベルト通し孔88とロックベース受入れ部22との間には、連通路76近傍の一部を除いて段部80が形成されていない。また、連通路76近傍の段部80Aは、その内縁部が円弧形状ではなくストレート形状とされている。
【0053】
すなわち、ベルト通し孔88の実質的な形状は、段部80Aを形成する平坦な壁面88Aと一対のレール90を結ぶ仮想平面とに挟まれた扁平形状であり、かつ軸線と直交する貫通方向一方側のレール90の外側で開口幅が広げられている(図4参照)。この開口幅が広げられた部分の内側にウエビングWの一端部に取り付けられた係止部材が挿入されて係止されるようになっている。
【0054】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0055】
上記構成のウエビング巻取装置10では、通常は、トーションバー36及びスリーブ34を介してスプール12に連結されているロックベース24が該スプール12と一体に回転する。このとき、リターンスプリングによってウエビング引出方向に付勢されているVギヤ46がスプールの回転に追従するため、ウエビングの引出し巻取りが自由とされる。
【0056】
一方、車両急減速時またはウエビングの急激な引出時にはVギヤ46のウエビング引出方向の回転が阻止される。この状態からウエビング引出力が作用するとスプール12がウエビング引出方向に回転し、該スプール12とVギヤ46との間に相対回転が生じる。この相対回転によって、Vギヤ46のガイド孔50がロックプレート42のガイドピン42Aをガイドするとこで、ロックプレート42が噛合位置へ移動する。ロックプレート42がフレーム14のラチェット歯38Aと噛み合うとロックベース24のウエビング引出方向の回転が阻止される。
【0057】
すると、ウエビング引出力が作用しているスプール12は、トーションバー36の軸部36Aを捩りつつウエビング引出方向に回転し、ウエビングWの所定量の引出しを許容する。このときのトーションバー36の捩れ荷重によって、ウエビングWを引き出そうとするエネルギ、すなわち乗員を前方へ移動させようとするエネルギを吸収する。これにより、乗員の前方への移動を規制しつつ該乗員に作用する外力が低減される(フォースリミッタ作用が果たされる)。
【0058】
また、車両衝突時等の車両減速度が大きい場合には、Vギヤ46のウエビング引出方向の回転が阻止されるのとほぼ同時にプリテンショナ機構が作動し、ウエビングWが瞬時に巻き取られる。これにより、衝突初期の乗員の前方への移動を効果的に抑制する。その後、上記の通りフォースリミッタ作用が果たされ、乗員に作用する外力を緩和する。
【0059】
次に、ストッパ64を用いたロックベース24のスプール12への組付手順について説明する。
【0060】
先ず、ロックベース24の係合溝60にストッパ64のCリング部66を装着する。このとき、ストッパ64の係合片68、72、係合片70の先端部70Aがリング突部62側に位置するように装着する。Cリング部66は、その切欠き端間の中心角が略120°であることにより、両切欠き端を係合溝60の外周面にそれぞれ当接させてロックベース24の軸直角方向から押し付けると、容易に係合溝60に装着(嵌合)される。
【0061】
次いで、ロックベース24に装着されたストッパ64の各係合片68、70、72のそれぞれ対応する連通路74、76、78に対する周方向の位置を一致させつつ、または一致させた後、該ロックベース24をスプール12の軸線方向に沿って(互いに軸線方向が一致するように)該スプール12に対し近接させ、基部24Aをロックベース受入れ部22に挿入する。この挿入動作に伴って、図4(A)に示される如く、各係合片68、70、72がそれぞれ対応する連通路74、76、78に入り込む。
【0062】
ロックベース24の保持部24Bがスプール12の第1フランジ部12Bに当接するまで基部24Aをロックベース受入れ部22に挿入した後、該ロックベース24を図3及び図4に示される矢印A方向、すなわち互いに一致したスプール12及びロックベース24の軸線廻りに回動する。これにより、図4(B)に示される如く、各係合片68、70、72がそれぞれ対応するスリット82、84、86に入り込む。
【0063】
以上により、ロックベース24のスプール12への抜け止め状態で装着が完了する。すなわち、この状態からロックベース24を軸線方向に沿ってスプール12から抜き出そうとしても、該ロックベース24のリング突部62(係合溝60の溝壁)がストッパ64のCリング部66に係合し、該ストッパ64の各係合片が68、70、72がそれぞれ対応するスリット82、84、86のスリット壁に係合するため、ロックベース24のスプール12からの抜き出しが阻止される。なお、ロックベース24をスプール12から抜き出す際には、ストッパ64の引掛部72Bを操作してストッパ64を矢印Aとは反対側に回動し、その後ロックベース24を軸線方向に沿って抜き出せば良い。
【0064】
ここで、ロックベース24をスプール12に装着する際には、上記の通り、単にストッパ64を装着したロックベース24をスプール12の軸線方向に移動して基部24Aをロックベース受入れ部22に挿入し、該軸線廻りにロックベース24を回動するのみで該ロックベース24がスプール12に対し抜け止め状態で装着されるため、該装着作業が容易である。すなわち、スプール12に対する部品の挿入方向が1方向となる(ロックベース24とストッパ64とを一体化してスプール12に組み付けることができる)ため、自動組立装置の構造も簡素化される。
【0065】
また、ストッパ64のCリング部66は、周方向の一部を切欠かれたリング状であり、その切欠き部分(略120°の範囲)を除いて180°以上の範囲でロックベース24の環状の係合溝60に装着(嵌合)されているため、ロックベース24がロックベース受入れ部22内で径方向に片寄せられることがない。このため、ストッパ64をスプール12に圧入する必要がなく、すなわち該圧入のために専用の治具等を用いる必要がなく、上記装着作業が一層容易である。
【0066】
このように、本実施の形態に係るウエビング巻取装置10では、ロックベース24をスプール12に抜け止め状態で装着する作業が容易である。
【0067】
またここで、ウエビング巻取装置10では、スプール12の第1フランジ部12Bにロックベース受入れ部22、各連通路74、76、78、及び各スリット82、84、86が設けられており、かつロックベース24の基部24Aがトーションバー挿通孔20内に(段部80よりも内側に)入り込まない。すなわち、ロックベース24がウエビングWを巻装するスプール軸12A内に入り込まず、同様にスリーブ34がスプール軸12A内に入り込まないため、上記の通り、トーションバー挿通孔20とベルト通し孔88とを連設する構成が実現されている。これにより、スプール軸12Aを軸線と直交する方向に貫通するベルト通し孔88がスプール12の軸心近くに配置され、スプール12の強度、特にウエビングWが全て引き出された状態で該スプール12に作用する力に対する強度が向上する。
【0068】
さらに、ウエビング巻取装置10では、スプール12の各スリット82、84、86に入り込んでスリット壁と係合可能な複数の係合片68、70、72が、ストッパ64の周方向に略等間隔で設けられているため、該ストッパ64はロックベース24を抜き出そうとする力にバランス良く抗することができる。そして、これらの複数の係合片68、70、72の形状がそれぞれ異なり、かつ異なる形状の係合部にそれぞれ対応した各連通路74、76、78のうち少なくとも1つ(本実施の形態では連通路74、76の2つ)を、他の係合部(対応する係合部以外の係合部)が入り込めない形状としているため、ストッパ64の誤装着が防止される。すなわち、ストッパ64を係合片68がロックベース24の保持部24B側に位置するように係合溝60に装着すると、各係合片68、70、72が連通路74、76、78に入り込めず、誤装着が防止される。
【0069】
なお、上記の実施の形態では、ロックベース受入れ部22(各連通路74等、各スリット82等)が第1フランジ部12Bに設けられた好ましい構成としたが本発明はこれに限定されず、例えば、ロックベース受入れ部22がスプール軸12Aの内側まで延長されても良い。また、エネルギ吸収部材がスプール12内に収容されるトーションバーに限定されないことは言うまでもない。
【0070】
また、上記の実施の形態では、ストッパ64が3つの係合片68、70、72を有する好ましい構成としたが、本発明はこれに限定されず、ストッパ64が1つまたは3つ以外の複数の係合部を備えた構成とすることができる。また、本発明は、各係合片68、70、72(各連通路74、76、78)の形状がそれぞれ異なる好ましい構成に限定されることはない。
【0071】
さらに、上記の実施の形態では、ロックベース24の環状の係合溝60にストッパ64のCリング部66を装着する好ましい構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、係合溝60の溝壁であるリング突部62を周方向に分割して構成しても良い。また、係合溝の他方の溝壁に相当する部分(上記実施形態では保持部24B端面)を設けない構成としても良い。
【0072】
さらにまた、上記の実施の形態では、Vギヤ46にガイドされたロックプレート42がフレーム14のラチェット歯38Aに噛み合うことによって、ロックベース24は回転を阻止されスプール12に対し相対回転する構成としたが、本発明がロックベース24のロック構造(ロック手段の構成)によって限定されないことは言うまでもない。したがって例えば、外周部にラチェット歯が形成されたロックベース24がフレームに揺動可能に支持されたロックパウルに直接的に係合して回転を阻止されても良く、また例えばエネルギ吸収機構を備えない構成では、Vギヤ46をストッパ64によってスプール12に装着しても良い。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明係るウエビング巻取装置は、回転部材をスプールに抜け止め状態で装着する作業が容易であるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置の全体構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置を構成するスプールとロックベースとの組付状態を示す一部切り欠いた側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置を構成するスプール、ロックベース、ストッパを示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置を構成するスプールへのロックベースの装着過程を示す図であって、(A)はストッパの各係合片がスプールの連通路に入り込んだ状態を示す正面図、(B)はストッパの各係合片がスプールのスリットに入り込んだ状態を示す正面図である。
【図5】従来のウエビング巻取装置におけるスプールとロックベースとの組付状態を示す横断面図である。
【図6】従来のウエビング巻取装置における構成するスプール、ロックベース、ストッパを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
10 ウエビング巻取装置
12 スプール
12B 第1フランジ部(フランジ部)
22 ロックベース受入れ部(受入れ凹部)
24 ロックベース(回転部材)
62 リング突部(突部)
64 ストッパ(抜け止め部材)
66 Cリング部(装着部)
68、70、72 係合片(係合部)
74、76、78 連通路
82、84、86 スリット
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両急減速時にエネルギ吸収するためにスプールに対し相対回転する回転部材を有するウエビング巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にウエビング巻取装置は、平面視で略コ字状に形成され車両に固定されたフレームを備えており、該フレームの互いに対向する一対の脚板間には乗員拘束用のウエビングが層状に巻き回されたスプールが回転可能に軸支されている。そして、ウエビング巻取装置では、通常はスプールが回転自在であることによりウエビングの巻取り引出しが自由とされている。
【0003】
一方、ウエビング巻取装置では、車両の急減速時やウエビングの急激な引出時等の場合に、スプールのウエビング引出方向の回転を阻止するロック手段が設けられている。これにより、ウエビング巻取装置では、例えば急減速状態に慣性で車両前方側へ移動しようとする乗員によるウエビング引出力に抗し、車両急減速時におけるウエビングによる乗員の拘束力を向上するようになっている。
【0004】
さらに、ウエビング巻取装置には、ロック手段の作動時に、ウエビングの所定量の引出しを許容してエネルギ吸収を行うエネルギ吸収機構を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなウエビング巻取装置について図5及び図6を用いて説明する。
【0005】
これらの図に示されるように、ウエビングを層状に巻取るスプール100の軸芯部には、エネルギ吸収用のトーションバー102を挿入するためのトーションバー挿通孔104が形成されている。さらに、トーションバー挿通孔104の軸方向の一端部側には、これよりも大径とされたロックベース装着部106が同軸上に形成されている。ロックベース装着部106には、車両急減速時等にウエビング引出方向の回転が阻止されるロックベース(回転部材)108が、スプール100に対し相対回転可能に装着されている。
【0006】
ロックベース108におけるロックベース装着部106内に入り込む部分の外周部には環状の凹溝110が形成されている。一方、スプール100には、その外周部に凹設されたストッパ収容溝112の両端部と、ロックベース装着部106における凹溝110との隙間部分とをそれぞれ連通する一対のスリット114が設けられている。
【0007】
そして、スプール100のロックベース装着部106の装着されたロックベース108は、抜け止め部材116によってスプール100に対し抜け止めされている。抜け止め部材116は、全体として略コ字状に形成されており、互いに対向しそれぞれ異なるスリット114に入り込む一対の脚部118と、スプール100の外周面に対応した円弧状に形成され一対の脚部118を連結する連結部120とで構成されている。
【0008】
この抜け止め部材116は、ロックベース108がロックベース装着部106に装着された状態で、各脚部118がそれぞれスリット114に挿入されてロックベース108の凹溝110とスリット114との間に圧入される(塑性変形する)。これにより、ロックベース108をスプール100から抜き出そうとしても、凹溝110の溝壁が脚部118に係合し、脚部118がスリット114の溝壁に係合するため、該抜き出しが阻止される。また、一対の脚部118が上記の通り圧入されているため、ロックベース108は、スプール100との相対回転を可能としつつガタつきが防止されている。なお、この状態で、抜け止め部材116の連結部120は、ストッパ収容溝112に入り込んでスプール100の外周面よりも突出しないようになっている。
【0009】
このロックベース108には、トーションバー挿通孔104に挿通されたトーションバー102の一端部が回転不能に係止されており、トーションバー102の他端部はトーションバー挿通孔104の他端部にスプール100に対し回転不能に固定されたスリーブ122に回転不能に係止されている。これにより、車両急減速時等にロックベース108のウエビング引出方向の回転が阻止されると、乗員の慣性力等に基づくウエビング引出力によってスプール100はトーションバー102を捩りつつ該ウエビングの引出を許容する。このトーションバーの捩り荷重によって、乗員を前方へ移動させようとするエネルギが吸収される。
【0010】
なお、図5に示すベルト通し孔124(図6では図示省略)は、ウエビングを挿通させて該ウエビングの一端に取り付けられたストッパ部材を係合させるものである。このベルト通し孔124は、スプール100におけるロックベース装着部106を避けた径方向外側部分に配置されている。
【0011】
ところで、スプール100にロックベース108を組み付ける際には、該ロックベース108をスプール100の軸線方向(図6の矢印B方向)に沿ってロックベース装着部106に挿入し、この状態から抜け止め部材116をスプール100の軸線方向に直交する方向(図6の矢印C方向)からスプール100に近接させ、各脚部118をそれぞれスリット114に挿入(圧入)する。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−289572公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来のウエビング巻取装置では、ロックベース108と抜け止め部材116とでスプール100に対する組付方向が異なっており、組付方向が2方向であったため、スプール100に対するロックベース108の装着(抜け止めを含む)が煩雑で作業性が悪いという問題があった。特に、自動組立装置を用いてスプール100にロックベース108を組み付ける場合には、該自動組立装置の構成が複雑化する原因となる。
【0014】
また、抜け止め部材116の各脚部118がスリット114とロックベース108の凹溝110との間で塑性変形するように圧入するため、専用の治具または圧入装置が必要であった。
【0015】
本発明は、上記事実を考慮して、回転部材をスプールに抜け止め状態で装着する作業が容易であるウエビング巻取装置を得ることが目的である。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係るウエビング巻取装置は、外周部に乗員拘束用のウエビングが巻取り引出し可能に巻き回されると共に、軸方向端部に開口する受入れ凹部が軸心部に設けられたスプールと、前記受入れ凹部に、前記スプールに対する相対回転可能に装着される回転部材と、周方向の一部が切り欠かれたリング状に形成され前記回転部材の外周部に摺動可能に装着される装着部と、該装着部の径方向外側に突設された係合部とを有する抜け止め部材と、前記回転部材の外周部から突設され前記抜け止め部材の軸方向の脱落を阻止する突部と、前記受入れ凹部の内周面に開口すると共に前記軸方向との直交面に沿って前記スプールに設けられ、前記係合部が係合可能に入り込むスリットと、前記係合部の進入可能に前記スプールの軸方向端部に開口して設けられ、前記受入れ凹部に径方向外側から連通すると共に前記スリットに周方向から連通する連通路と、を備えている。
【0017】
請求項1記載のウエビング巻取装置では、先ず回転部材の外周部に抜け止め部材の装着部を装着する。次いで、抜け止め部材の係合部がスプールの軸方向端部に開口する連通路に入り込むように、該抜け止め部材が装着された回転部材をスプールの受入れ凹部に挿入する。この連通路は受入れ凹部の径方向外側に連通されているため、抜け止め部材は、回転部材と共に受入れ凹部に挿入される装着部と連通路に入り込む係合部との付根部分がスプールに干渉することがない。この状態から回転部材(または抜け止め部材)をスプールの軸線廻りに回動し、抜け止め部材の係合部を連通路に周方向から連通したスリット内に入り込ませる。
【0018】
これにより、回転部材をスプールから抜き出そうとしても、回転部材の外周部から突設された突部が抜け止め部材に係合し、抜け止め部材の係合部がスプールのスリット壁に係合するため、該抜き出しが阻止される。また、抜け止め部材の装着部が回転部材と摺動可能であるため、回転部材のスプールに対する相対回転が許容される。
【0019】
ここで、回転部材をスプールに装着する際には、単に回転部材をスプールの軸線方向に移動して受入れ凹部に挿入し、該軸線廻りに回転部材を回動するのみで該回転部材がスプールに対し抜け止め状態で装着されるため、該装着作業が容易である。すなわち、スプールに対する部品の挿入方向が1方向となり(複数の部品を一体化して組み付けることができ)、自動組立装置の構造も簡素化される。
【0020】
また、抜け止め部材の装着部は、周方向の一部を切欠かれたリング状(例えば、Cリング状)であり、回転部材の外周部に装着(嵌合)されているため、回転部材が受入れ凹部内で径方向に片寄せられることがない。このため、抜け止め部材をスプールに圧入する必要がなく、すなわち該圧入のために専用の治具等を用いる必要がなく、上記装着作業が一層容易である。
【0021】
このように、請求項1記載のウエビング巻取装置では、回転部材をスプールに抜け止め状態で装着する作業が容易である。
【0022】
請求項2記載の発明に係るウエビング巻取装置は、請求項1記載のウエビング巻取装置において、前記スプールは軸方向端部にフランジ部を有し、該フランジ部の軸心部に前記受入れ凹部を設けた、ことを特徴としている。
【0023】
請求項2記載のウエビング巻取装置では、スプールの軸方向端部にフランジ部が設けられており、該フランジ部の軸心部に受入れ凹部が設けられているため、換言すれば、スプールにおけるウエビングが巻装されない部分に受入れ凹部、スリット、及び連通路が設けられているため、回転部材がスプールにおけるウエビング巻装部分の内側に入り込まない構造とすることができる。この構造では、ウエビングを挿通して係止するベルト通し孔をスプールの軸心に近づけて設けることができるため、スプールの強度、特にウエビングが全て引き出された状態で該スプールに作用する力に対する強度が向上する。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置10について、図1乃至図4に基づいて説明する。
【0025】
図1には本実施の形態に係るウエビング巻取装置10の全体構成が断面図にて示されている。この図に示される如く、ウエビング巻取装置10は平面視で略コ字形に形成されたフレーム14を備えており、該フレーム14が車体側に固定されている。フレーム14は互いに平行に延出された第1脚板16と第2脚板18とを備えており、これらの第1脚板16、第2脚板18間にダイカストによって製作されたスプール12が回転可能に軸支されている。
【0026】
スプール12は、円筒形状のスプール軸12Aと、このスプール軸12Aの両端部に略円板形状にそれぞれ形成された一対のフランジ部(以下、第1脚板16側に配置されるフランジ部を「第1フランジ部12B」と称し、第2脚板18側に配置されるフランジ部を「第2フランジ部12C」と称す)とによって構成されており、全体としては鼓形状をなしている。このスプール12のスプール軸12AにはウエビングWの一端が係止されて該ウエビングWが巻き回されており、スプール12の回転により、ウエビングWがスプール12に対して巻取り引出し自在とされている。
【0027】
スプール軸12Aの軸芯部には、トーションバー挿通孔20が形成されている。トーションバー挿通孔20は、第1フランジ部12Bの軸心部に形成(凹設)された受入れ凹部としてのロックベース受入れ部22と同軸的に連通されている。ロックベース受入れ部22は、トーションバー挿通孔20よりも大径とされている。このロックベース受入れ部22には、回転部材としてのロックベース24がスプール12と相対回転可能に装着されている。ロックベース24のスプール12に対する装着構造については後述する。
【0028】
ロックベース24は鍔付き円筒形状に形成されており、ロックベース受入れ部22に挿入される基部24Aと、基部24Aよりも大径とされかつ第1フランジ部12Bの外側面に当接状態で配置される保持部24Bとによって構成されている。一方、ロックベース24における軸芯部には、その外端を除いた部分に六角穴形状の嵌合孔26が形成されており、その外端部分には嵌合孔26の軸芯部と相互に連通されかつこれよりも小径とされた小孔28が形成されている。
【0029】
また、トーションバー挿通孔20は、第2フランジ部12Cの軸心部に形成(凹設)されたスリーブ受入れ部30とも連通されている。このスリーブ受入れ部30には、軸芯部に六角穴形状の嵌合孔32が形成されたスリーブ34が回転不能に嵌合されている。すなわち、スリーブ34は、常にスプール12と一体に回転するようになっている。
【0030】
なお、スリーブ34の先端部には、スプール12をウエビング巻取回転方向へ回転付勢する付勢手段(ぜんまいばね)の内端が図示しないアダプタを介して係止されている。また、上記構成のスリーブ34は、車両急減速時にスプール12を瞬時にウエビング巻取方向回転させるプリテンショナ機構の構成部品の1つである。
【0031】
上述したロックベース24とスリーブ34とは、トーションバー36によって相互に連結されている。トーションバー36は、その主部を構成する軸部36Aと、軸部36Aの一端部に形成された六角形状の頭部36Bと、軸部36Aの他端部に形成された六角形状の嵌合部36Cと、軸部36Aよりも小径とされ嵌合部36Cの軸芯部から軸部36Aと同軸上に延出された支軸36Dとによって構成されている。
【0032】
トーションバー36の頭部36Bはスリーブ34に形成された六角穴形状の嵌合孔32へ嵌合されており、またトーションバー36の嵌合部36Cはロックベース24に形成された六角穴形状の嵌合孔26へ嵌合されている。これにより、トーションバー36は、ロックベース24及びスリーブ34を介してスプール軸12Aと一体化されている。この状態で、トーションバー36の軸部36Aはトーションバー挿通孔20内に位置し、支軸36Dはロックベース24の小孔28を貫通している。
【0033】
また、上述したフレーム14の第1脚板16には、内歯ラチェット38が打ち抜きにより形成されている。内歯ラチェット38のラチェット歯38Aは高強度に設定されている。この内歯ラチェット38の径方向内側には、ロックベース24の保持部24Bが配置されている。また、保持部24Bの外端面にはプレート収容部40が凹設されており、このプレート収容部40にはロックプレート42がロックカバー44によって脱落阻止された状態で収容されている。
【0034】
ロックプレート42は、全体としてプレート収容部40内に収容されるラチェット歯38Aとの非噛合位置と、その一部をプレート収容部40から径方向外側へ突出させてラチェット歯38Aと噛み合わせる噛合位置とを選択的に取り得るようになっている。噛合位置に位置するロックプレート42は、ロックベース24のウエビング引出方向の回転を阻止するようになっている。
【0035】
また、ロックベース24(ロックカバー44)の外側に隣接する位置には、これよりも大径の略円板形状に形成されたVギヤ46が配置されている。Vギヤ46の軸芯部には円筒状のボス48が形成されており、トーションバー36の支軸36Dに相対回転可能に軸支されている。さらに、Vギヤ46の短円筒状に形成された外周部には、複数のロック歯46Aが等間隔で一体に形成されている。
【0036】
このVギヤ46には、ガイド孔50が形成されており、該ガイド孔50にはロックプレート42から立設されたガイドピン42Aが挿入されている。また、Vギヤ46は、図示しないリターンスプリングの付勢力によってウエビング引出方向に付勢されており、通常は、ガイド孔50にガイドピン42Aを入り込ませたロックプレート42を非噛合位置に保持するスプール12との相対位置に保持されつつ、該スプール12と一体に回転するようになっている。
【0037】
さらに、Vギヤ46は、車両急減速時にはVSIR用の加速度センサ(図示省略)のセンサレバーがロック歯46Aに係合することで、ウエビングWの急激な引出時には自ら揺動自在に軸支するWSIR用のパウル(図示省略)がカバー部材52の内歯52Aに係合することで、ウエビング引出方向の回転が阻止されるようになっている。そして、この状態でスプール12と共にロックベース24がウエビング引出方向に回転すると、このロックベース24とVギヤ46との相対回転によって、ガイド孔50がガイドピン42Aをガイドしてロックプレート42を噛合位置へ移動させるようになっている。
【0038】
また、カバー部材52の軸芯部には円筒状の軸受部54が一体に形成されており、この軸受部54にはトーションバー36の支軸36Dが軸支されている。
【0039】
次に、スプール12へのロックベース24の装着構造について説明する。図2及び図3にも示される如く、ロックベース24におけるロックベース受入れ部22内に挿入される基部24Aの外周部には、係合溝60が環状に設けられている。係合溝60の一方の溝壁は保持部24Bで構成されており、係合溝60の他方の溝壁は基部24Aの先端に位置するリング突部62で構成されている。リング突部62の外径はロックベース受入れ部22の内径に対応している。このリング突部62が本発明における「突部」に相当する。なお、図3ではプレート収容部40の図示を省略している。
【0040】
このロックベース24の係合溝60には、抜け止め部材としてのストッパ64が装着されるようになっている。ストッパ64は、周方向の一部を切り欠いた環状に形成された装着部としてのCリング部66と、該Cリング部66から径方向外側に突出したそれぞれ係合部としての係合片68、70、72とを備えている。このストッパ64は、プレス加工等によって打ち抜かれた板状部材を適宜曲げて全体として一体に形成されている。
【0041】
Cリング部66は、自然状態で内径が係合溝60(の溝底)の外径よりも若干小径とされており、係合溝60への装着(嵌合)状態では自らの復元力によって該係合溝60の溝底にしっかりと抱き付くようになっている。また、Cリング部66は、その内周部に突出部がなく係合溝60に摺動可能に装着される構成である。さらに、Cリング部66は、その厚みが係合溝60の深さよりも若干小とされ、該係合溝60への装着状態でリング突部62の外周面よりも径方向外側に突出しない(略面一となる)構成とされている。
【0042】
また、係合片68、70、72は、Cリング部66のロックベース24への装着状態において、軸方向視で周方向に等間隔となるように配置されている。係合片68、72は、それぞれCリング部66の異なる切欠き端に位置している。すなわち、Cリング部66の切欠き端間の中心角は120°よりも若干小である。これらの係合片68、70、72は、それぞれ形状が異なっている。
【0043】
具体的には、係合片68は、Cリング部66の幅(軸)方向一端部(ロックベース24への装着状態でリング突部62側)から延設され、先端が丸められた単なる平板状に形成されている。係合片70は、Cリング部66の幅方向他端部から延設され、クランク状に曲げられて先端部70Aが係合片68と面一となるように形成されている。係合片72は、Cリング部66の幅方向一端部から延設され、根元部72Aが係合片68よりも幅広とされると共に先端部に引掛部72Bが形成されている。また、係合片70、72は、それぞれ軸方向視で(径方向の長さが)係合片68よりも長く形成されている。さらに、係合片72の根元部72Aには、上記プレス加工等によって形成された突部72Cが設けられている。
【0044】
一方、スプール12の第1フランジ部12Bには、ストッパ64の各係合片68、70、72が入り込む連通路74、76、78が設けられている。各連通路74、76、78は、第1フランジ部12Bの外端面及びロックベース受入れ部22の内周面に開口している。また、各連通路74、76、78の底部は、ロックベース受入れ部22の軸方向中間部に位置している。具体的には、ロックベース受入れ部22とトーションバー挿通孔20との間の段部80から各連通路74、76、78の底部までの長さが、ロックベース24のリング突部62の厚みに対応している。
【0045】
さらに、各連通路74、76、78には、それぞれロックベース受入れ部22の内周面に開口したスリット82、84、86が第1フランジ部12Bの周方向における同じ側(図3に示す矢印A側)に連設されている。各スリット82、84、86は、それぞれ互いに対向するスリット壁の一方が各連通路74、76、78の底部と面一とされると共に、他方のスリット壁によって第1フランジ部12Bの外端面で閉じている。これにより、各スリット82、84、86には、ストッパ64の係合片68、70、72が係合可能に入り込むようになっている。
【0046】
ここで、連通路74には係合片68がスプール12の軸方向から入り込むようになっており、該連通路74に連設されたスリット82には係合片68が周方向にスライドして入り込むようになっている。連通路74は、スプール12の軸方向視で縁部が係合片68に対応した略U字状に形成され、係合片68よりも長い係合片70、72が入り込めない形状とされている。
【0047】
また、連通路76には係合片70がスプール12の軸方向から入り込むようになっており、該連通路76に連設されたスリット84には係合片70が周方向にスライドして入り込むようになっている。連通路76とロックベース受入れ部22との間には、係合片70がクランク状に形成されている(根元部が第1フランジ部12Bの外端面側に位置する)ことに対応して低壁部76Aが形成されている。この低壁部76Aの存在により、連通路76には係合片68、72が入り込めないようになっている。
【0048】
さらに、連通路78には係合片72がスプール12の軸方向から入り込むようになっており、該連通路78に連設されたスリット86には係合片72が周方向にスライドして入り込むようになっている。スリット86には係合片72の根元部72Aのみが入り込むようになっており、連通路78がスリット86のスプール12径方向の外側まで延長されている。これにより、係合片72がスリット86に入り込んだ状態で引掛部72Bを操作可能に露出させる構成である。また、スリット86に入り込んだ係合片72はその突部72Cをスリット壁に当接させてストッパ64の軸方向のガタつきを抑えるようになっている。なお、連通路78は係合片68、70が単独では入り込むことができる形状であるが、該連通路78に対応した係合片72が他の連通路74、76に入り込めないため、結局、連通路78に係合片68、70が入り込むことはない。
【0049】
なお、各スリット82、84、86は、第1フランジ部12Bの外周面にも開口しているが、これはダイカストによって製作されるスプール12のスライド型の型抜きを考慮したものである。
【0050】
以上により、ロックベース24は、その係合溝60にストッパ64のCリング部66をリング突部62による抜け止め状態で装着した状態で、その基部24AをCリング部66と共にスプール12のロックベース受入れ部22に挿入し、かつストッパ64の各係合片68、70、72をそれぞれスプール12のスリット82、84、86に係合可能に入り込ませることで、スプール12に対し抜け止め状態で装着される構成である。
【0051】
また、スプール12のスプール軸12Aには、ウエビングWを挿通させて該ウエビングWの一端部を係止するためのベルト通し孔88が設けられている。本実施の形態では、ベルト通し孔88は、スプール軸12Aの全長に亘り設けられトーションバー挿通孔20に連設されている。すなわち、ベルト通し孔88の両端部はそれぞれロックベース受入れ部22、スリーブ受入れ部30とも連通されている。
【0052】
具体的には、トーションバー挿通孔20の内周面における軸心よりも連通路76側部分から一対のレール90が突設されており、該レール90よりも連通路76側の部分がベルト通し孔88とされている。このベルト通し孔88とロックベース受入れ部22との間には、連通路76近傍の一部を除いて段部80が形成されていない。また、連通路76近傍の段部80Aは、その内縁部が円弧形状ではなくストレート形状とされている。
【0053】
すなわち、ベルト通し孔88の実質的な形状は、段部80Aを形成する平坦な壁面88Aと一対のレール90を結ぶ仮想平面とに挟まれた扁平形状であり、かつ軸線と直交する貫通方向一方側のレール90の外側で開口幅が広げられている(図4参照)。この開口幅が広げられた部分の内側にウエビングWの一端部に取り付けられた係止部材が挿入されて係止されるようになっている。
【0054】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0055】
上記構成のウエビング巻取装置10では、通常は、トーションバー36及びスリーブ34を介してスプール12に連結されているロックベース24が該スプール12と一体に回転する。このとき、リターンスプリングによってウエビング引出方向に付勢されているVギヤ46がスプールの回転に追従するため、ウエビングの引出し巻取りが自由とされる。
【0056】
一方、車両急減速時またはウエビングの急激な引出時にはVギヤ46のウエビング引出方向の回転が阻止される。この状態からウエビング引出力が作用するとスプール12がウエビング引出方向に回転し、該スプール12とVギヤ46との間に相対回転が生じる。この相対回転によって、Vギヤ46のガイド孔50がロックプレート42のガイドピン42Aをガイドするとこで、ロックプレート42が噛合位置へ移動する。ロックプレート42がフレーム14のラチェット歯38Aと噛み合うとロックベース24のウエビング引出方向の回転が阻止される。
【0057】
すると、ウエビング引出力が作用しているスプール12は、トーションバー36の軸部36Aを捩りつつウエビング引出方向に回転し、ウエビングWの所定量の引出しを許容する。このときのトーションバー36の捩れ荷重によって、ウエビングWを引き出そうとするエネルギ、すなわち乗員を前方へ移動させようとするエネルギを吸収する。これにより、乗員の前方への移動を規制しつつ該乗員に作用する外力が低減される(フォースリミッタ作用が果たされる)。
【0058】
また、車両衝突時等の車両減速度が大きい場合には、Vギヤ46のウエビング引出方向の回転が阻止されるのとほぼ同時にプリテンショナ機構が作動し、ウエビングWが瞬時に巻き取られる。これにより、衝突初期の乗員の前方への移動を効果的に抑制する。その後、上記の通りフォースリミッタ作用が果たされ、乗員に作用する外力を緩和する。
【0059】
次に、ストッパ64を用いたロックベース24のスプール12への組付手順について説明する。
【0060】
先ず、ロックベース24の係合溝60にストッパ64のCリング部66を装着する。このとき、ストッパ64の係合片68、72、係合片70の先端部70Aがリング突部62側に位置するように装着する。Cリング部66は、その切欠き端間の中心角が略120°であることにより、両切欠き端を係合溝60の外周面にそれぞれ当接させてロックベース24の軸直角方向から押し付けると、容易に係合溝60に装着(嵌合)される。
【0061】
次いで、ロックベース24に装着されたストッパ64の各係合片68、70、72のそれぞれ対応する連通路74、76、78に対する周方向の位置を一致させつつ、または一致させた後、該ロックベース24をスプール12の軸線方向に沿って(互いに軸線方向が一致するように)該スプール12に対し近接させ、基部24Aをロックベース受入れ部22に挿入する。この挿入動作に伴って、図4(A)に示される如く、各係合片68、70、72がそれぞれ対応する連通路74、76、78に入り込む。
【0062】
ロックベース24の保持部24Bがスプール12の第1フランジ部12Bに当接するまで基部24Aをロックベース受入れ部22に挿入した後、該ロックベース24を図3及び図4に示される矢印A方向、すなわち互いに一致したスプール12及びロックベース24の軸線廻りに回動する。これにより、図4(B)に示される如く、各係合片68、70、72がそれぞれ対応するスリット82、84、86に入り込む。
【0063】
以上により、ロックベース24のスプール12への抜け止め状態で装着が完了する。すなわち、この状態からロックベース24を軸線方向に沿ってスプール12から抜き出そうとしても、該ロックベース24のリング突部62(係合溝60の溝壁)がストッパ64のCリング部66に係合し、該ストッパ64の各係合片が68、70、72がそれぞれ対応するスリット82、84、86のスリット壁に係合するため、ロックベース24のスプール12からの抜き出しが阻止される。なお、ロックベース24をスプール12から抜き出す際には、ストッパ64の引掛部72Bを操作してストッパ64を矢印Aとは反対側に回動し、その後ロックベース24を軸線方向に沿って抜き出せば良い。
【0064】
ここで、ロックベース24をスプール12に装着する際には、上記の通り、単にストッパ64を装着したロックベース24をスプール12の軸線方向に移動して基部24Aをロックベース受入れ部22に挿入し、該軸線廻りにロックベース24を回動するのみで該ロックベース24がスプール12に対し抜け止め状態で装着されるため、該装着作業が容易である。すなわち、スプール12に対する部品の挿入方向が1方向となる(ロックベース24とストッパ64とを一体化してスプール12に組み付けることができる)ため、自動組立装置の構造も簡素化される。
【0065】
また、ストッパ64のCリング部66は、周方向の一部を切欠かれたリング状であり、その切欠き部分(略120°の範囲)を除いて180°以上の範囲でロックベース24の環状の係合溝60に装着(嵌合)されているため、ロックベース24がロックベース受入れ部22内で径方向に片寄せられることがない。このため、ストッパ64をスプール12に圧入する必要がなく、すなわち該圧入のために専用の治具等を用いる必要がなく、上記装着作業が一層容易である。
【0066】
このように、本実施の形態に係るウエビング巻取装置10では、ロックベース24をスプール12に抜け止め状態で装着する作業が容易である。
【0067】
またここで、ウエビング巻取装置10では、スプール12の第1フランジ部12Bにロックベース受入れ部22、各連通路74、76、78、及び各スリット82、84、86が設けられており、かつロックベース24の基部24Aがトーションバー挿通孔20内に(段部80よりも内側に)入り込まない。すなわち、ロックベース24がウエビングWを巻装するスプール軸12A内に入り込まず、同様にスリーブ34がスプール軸12A内に入り込まないため、上記の通り、トーションバー挿通孔20とベルト通し孔88とを連設する構成が実現されている。これにより、スプール軸12Aを軸線と直交する方向に貫通するベルト通し孔88がスプール12の軸心近くに配置され、スプール12の強度、特にウエビングWが全て引き出された状態で該スプール12に作用する力に対する強度が向上する。
【0068】
さらに、ウエビング巻取装置10では、スプール12の各スリット82、84、86に入り込んでスリット壁と係合可能な複数の係合片68、70、72が、ストッパ64の周方向に略等間隔で設けられているため、該ストッパ64はロックベース24を抜き出そうとする力にバランス良く抗することができる。そして、これらの複数の係合片68、70、72の形状がそれぞれ異なり、かつ異なる形状の係合部にそれぞれ対応した各連通路74、76、78のうち少なくとも1つ(本実施の形態では連通路74、76の2つ)を、他の係合部(対応する係合部以外の係合部)が入り込めない形状としているため、ストッパ64の誤装着が防止される。すなわち、ストッパ64を係合片68がロックベース24の保持部24B側に位置するように係合溝60に装着すると、各係合片68、70、72が連通路74、76、78に入り込めず、誤装着が防止される。
【0069】
なお、上記の実施の形態では、ロックベース受入れ部22(各連通路74等、各スリット82等)が第1フランジ部12Bに設けられた好ましい構成としたが本発明はこれに限定されず、例えば、ロックベース受入れ部22がスプール軸12Aの内側まで延長されても良い。また、エネルギ吸収部材がスプール12内に収容されるトーションバーに限定されないことは言うまでもない。
【0070】
また、上記の実施の形態では、ストッパ64が3つの係合片68、70、72を有する好ましい構成としたが、本発明はこれに限定されず、ストッパ64が1つまたは3つ以外の複数の係合部を備えた構成とすることができる。また、本発明は、各係合片68、70、72(各連通路74、76、78)の形状がそれぞれ異なる好ましい構成に限定されることはない。
【0071】
さらに、上記の実施の形態では、ロックベース24の環状の係合溝60にストッパ64のCリング部66を装着する好ましい構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、係合溝60の溝壁であるリング突部62を周方向に分割して構成しても良い。また、係合溝の他方の溝壁に相当する部分(上記実施形態では保持部24B端面)を設けない構成としても良い。
【0072】
さらにまた、上記の実施の形態では、Vギヤ46にガイドされたロックプレート42がフレーム14のラチェット歯38Aに噛み合うことによって、ロックベース24は回転を阻止されスプール12に対し相対回転する構成としたが、本発明がロックベース24のロック構造(ロック手段の構成)によって限定されないことは言うまでもない。したがって例えば、外周部にラチェット歯が形成されたロックベース24がフレームに揺動可能に支持されたロックパウルに直接的に係合して回転を阻止されても良く、また例えばエネルギ吸収機構を備えない構成では、Vギヤ46をストッパ64によってスプール12に装着しても良い。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明係るウエビング巻取装置は、回転部材をスプールに抜け止め状態で装着する作業が容易であるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置の全体構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置を構成するスプールとロックベースとの組付状態を示す一部切り欠いた側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置を構成するスプール、ロックベース、ストッパを示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置を構成するスプールへのロックベースの装着過程を示す図であって、(A)はストッパの各係合片がスプールの連通路に入り込んだ状態を示す正面図、(B)はストッパの各係合片がスプールのスリットに入り込んだ状態を示す正面図である。
【図5】従来のウエビング巻取装置におけるスプールとロックベースとの組付状態を示す横断面図である。
【図6】従来のウエビング巻取装置における構成するスプール、ロックベース、ストッパを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
10 ウエビング巻取装置
12 スプール
12B 第1フランジ部(フランジ部)
22 ロックベース受入れ部(受入れ凹部)
24 ロックベース(回転部材)
62 リング突部(突部)
64 ストッパ(抜け止め部材)
66 Cリング部(装着部)
68、70、72 係合片(係合部)
74、76、78 連通路
82、84、86 スリット
Claims (2)
- 外周部に乗員拘束用のウエビングが巻取り引出し可能に巻き回されると共に、軸方向端部に開口する受入れ凹部が軸心部に設けられたスプールと、
前記受入れ凹部に、前記スプールに対する相対回転可能に装着される回転部材と、
周方向の一部が切り欠かれたリング状に形成され前記回転部材の外周部に摺動可能に装着される装着部と、該装着部の径方向外側に突設された係合部とを有する抜け止め部材と、
前記回転部材の外周部から突設され前記抜け止め部材の軸方向の脱落を阻止する突部と、
前記受入れ凹部の内周面に開口すると共に前記軸方向との直交面に沿って前記スプールに設けられ、前記係合部が係合可能に入り込むスリットと、
前記係合部の進入可能に前記スプールの軸方向端部に開口して設けられ、前記受入れ凹部に径方向外側から連通すると共に前記スリットに周方向から連通する連通路と、
を備えたウエビング巻取装置。 - 前記スプールは軸方向端部にフランジ部を有し、該フランジ部の軸心部に前記受入れ凹部を設けた、ことを特徴とする請求項1記載のウエビング巻取装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002312257A JP2004142694A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | ウエビング巻取装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002312257A JP2004142694A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | ウエビング巻取装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004142694A true JP2004142694A (ja) | 2004-05-20 |
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Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002312257A Pending JP2004142694A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | ウエビング巻取装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004142694A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011143280A (ja) * | 2011-04-26 | 2011-07-28 | Toshiba Home Technology Corp | 炊飯器 |
-
2002
- 2002-10-28 JP JP2002312257A patent/JP2004142694A/ja active Pending
Cited By (1)
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JP2011143280A (ja) * | 2011-04-26 | 2011-07-28 | Toshiba Home Technology Corp | 炊飯器 |
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