JP2004142062A - チャック用親子爪及び爪成形補助具 - Google Patents
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Abstract
【課題】旋盤等の工作機械で被加工物を把持するチャック用親子爪であって、チャック本体に固着する親爪と、この親爪に締着して被加工物を把持する子爪とからなるチャック用親子爪において、着脱が容易でありながら、高い姿勢安定性を図ることができる着脱構造を有する親子爪を提供する。
【解決手段】旋盤等の工作機械で被加工物を把持するチャック用親子爪であって、チャック本体6に固着する親爪3と、この親爪3に締着して被加工物を把持する子爪1とからなるチャック用親子爪4において、親爪3は子爪底面5を接面する載置面2に嵌合ピン13を立設し、子爪1はこの子爪底面5の前記嵌合ピン13対応位置にこの嵌合ピン13を嵌入及び嵌脱自在な子爪嵌入孔10を穿孔したチャック用親子爪4である。
【選択図】 図6
【解決手段】旋盤等の工作機械で被加工物を把持するチャック用親子爪であって、チャック本体6に固着する親爪3と、この親爪3に締着して被加工物を把持する子爪1とからなるチャック用親子爪4において、親爪3は子爪底面5を接面する載置面2に嵌合ピン13を立設し、子爪1はこの子爪底面5の前記嵌合ピン13対応位置にこの嵌合ピン13を嵌入及び嵌脱自在な子爪嵌入孔10を穿孔したチャック用親子爪4である。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば旋盤等の工作機械で、被加工物を把持するチャック用親子爪であって、チャック本体に固着する親爪と、この親爪に締着して被加工物を把持する子爪とからなるチャック用親子爪と、被加工物に応じて子爪を成形するためにチャック用親子爪の半径方向位置を決定、保持する爪成形補助具とに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば旋盤等の工作機械で被加工物を把持するチャック用親子爪として、チャック本体に固着する親爪と、この親爪に締着して被加工物を把持する子爪とからなるチャック用親子爪(以下、親子爪と略する)がある。この親子爪の利点は、劣化等に伴う交換が子爪のみで済む経済性や、子爪を姿勢変更することで被加工物毎に把持位置を容易に変更できる利便性にあり、特に後者の利便性をいかに実現するかにつき、子爪の着脱構造が従来より種々提案されている。
【0003】
特許文献1は、旋盤の軸線方向に対する放射方向に運動する1個以上の爪(親爪)に1個以上の生爪(子爪)を着脱できるチャックで、中心に締め付けネジ孔を有する凹部を前記爪に2箇所設け、生爪に前記凹部に嵌め込む凸部を付け、この中心に凸部の逆方向より締め付けボルト用の段付孔を形成し、三角形以上の角がこの生爪の側面に連番で符号を打刻した旋盤チャック用嵌め込み生爪(親子爪)を提案している。生爪が多角形であるために何箇所も使用でき、爪の凹部に生爪の凸部を嵌め込むのでキャップボルト(締着ボルト)だけに負担が掛からない効果がある。
【0004】
特許文献2は、割出爪(子爪)の底部に設けた親爪に対する円形の取付部にセレーションキーの円形部を嵌め込むことにより割り出し可能とし、セレーションキー及び割出爪に取付部を嵌め合わせて位置決めする構造で、爪の中心と取付距離を半径とする円周上に割出数の半数の取付孔を設け、割出爪の割出中心を置き換えることによって所定数の割出を可能にした多角形の工作用チャックの割出爪を提案している。
【0005】
特許文献3は、長手方向に往復可能にチャックに取り付けられるあご部材(親爪)と、あご部材の前縁に取り外し可能に固定される割り出し可能な多角形の締め付け部材(子爪)とからなり、割り出しのために締め付け部材と係合する立設突起があご部材の上面から縦方向に延設され、締め付け部材の下面に凹部が設けられ、凹部の周面に複数個のスロットが形成され、締め付け部材の一作用位置においてスロットのひとつが前記突起と係合する締め付けあご(親子爪)を提案している。この締め付けあごは、従来と比べて製造及び使用が簡単でありながら、締め付け部材を正確に割り出し、機械加工又は工作物の回転の際に移動しないようにしっかりと固定できる効果があると述べている。
【0006】
特許文献4は、多種類のワーク毎に合致した生爪の管理等の課題を爪の耐久性を悪化させずに解決するため、ワーク把持面を複数個形成したマスタージョーにおいて、複数ワーク把持面を有するブロック(子爪)を、本体に設けた平面視形状がブロックのそれとほぼ一致して1つのワーク把持面のみを本体端面に開放させる縦溝に嵌合させ、軸心部に通す1本のボルトで本体に固定する爪チャック用親子爪のトップ又はソフトジョーを提案している。この爪チャック用親子爪のトップ又はソフトジョーは、ワークの寸法や形状の変化に伴うワーク把持面の交換が容易かつ迅速に行え、交換後の爪の芯出し精度に狂いを生じることもない効果があると述べている。
【0007】
特許文献5は、角材にて構成される交換爪をホルダ部(親爪)で保持するようにしたチャック用生爪の爪ホルダであって、前記ホルダ部は、前記交換爪をワークの挟持方向に抜脱不能に嵌合せしめる嵌合溝を備え、前記嵌合溝に連なるすり割り溝に対して交差方向に挿入される締め付け部材を備え、この締め付け部材の締め付け操作によって前記嵌合溝は拡縮自在にされるチャック用生爪の爪ホルダを提案している。この爪ホルダは、締め付け部材を緩めるだけで交換爪を装着でき、作業時間が短縮される効果を有すると述べている。
【0008】
特許文献6は、生爪本体(親爪)の長手方向先端部に先端チップ(子爪)を交換可能に取付可能とした取付座底面を設けると共に、この取付座底面に隣接して垂直に屹立する取付座壁面を設け、前記先端チップの側面を前記先端チップの底面に対して垂直に形成したチャック用交換式生爪(親子爪)を提案している。ここで、先端チップの中心軸に直角な断面の形状を正6角形断面にすれば、1稜を使った後に他の稜を使用でき、全体で最大6回の繰り返し使用を可能にする作用、効果をうたっている。
【0009】
特許文献7は、ワークの挟持側に当接面をV字状に設けたV字溝を有する親爪と、ワークの挟持側にワークとの挟持面を有し、非挟持側にこの親爪のV字溝と嵌合する山形突起を有する子爪と、この子爪を親爪に固定するための連結ボルトとを備え、この親爪の外側面から該当接面に向かって開口した挿通孔に、この連結ボルトを外側面側から挿入して子爪の山形突起に螺合させることにより子爪を親爪に固定する旋盤用チャック(親子爪)装置を提案している。この旋盤用チャック装置は、親爪と子爪は製造が容易で安価であり、親爪をチャックに固定した状態で、他のチャック爪に邪魔されることなく連結ボルトの弛緩が可能であり、子爪の交換が容易で、子爪の脱着を行っても再び同じ位置に子爪を取り付けることが容易になる効果を述べている。
【0010】
特許文献8は、3個の生爪からなる工作機械用生爪チャックにおいて、前記生爪(親爪)は、中心側に前記爪受台への取付穴を有し、外周縁側がこの取付穴を中心として正六角形状をなす角部となったブロック体(子爪)により構成した工作機械用生爪チャックを提案している。ブロック体の各角部を互いに異なる爪先形状に削り加工でき、それぞれの角部を異なる形状の加工対象物に対する把持用の爪先として使用できる。そして、生爪は多数の加工対象物に対し、その外面(曲面)形状にフィットする爪先形状の角部を選択的に用いることで、加工対象物を確実に安定して把持でき、加工対象物の表面に把持痕等の傷痕が発生するのを防止できる効果を述べている。また、この特許文献8は、ブロック体の成形のため、リングから半径方向に突出する調節ボルトによる芯出し治具を提案している。突出量を加減した各調節ボルトを対応するブロック体で挟持した状態で各ブロック体を成形すると、精度の高い成形が可能と述べている。
【0011】
【特許文献1】
実全昭48−028586号公報(第1〜4頁、第1〜3図)
【特許文献2】
特開昭52−026671号公報(第1〜2頁、第1〜3図)
【特許文献3】
特開昭63−229206号公報(第3〜4頁、第1〜6図)
【特許文献4】
実公平01−044248号公報(第2〜3頁、第1〜7図)
【特許文献5】
特開平11−048010号公報(第2〜3頁、第1〜4図)
【特許文献6】
特開平11−197917号公報(第2〜3頁、第1〜6図)
【特許文献7】
特開2000−326117号公報(第2〜5頁、第1〜5図)
【特許文献8】
特開2002−137105号公報(第3〜9頁、第2〜3図)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記各特許文献は、子爪の姿勢を容易に変更する着脱構造を種々提案しているが、変更後の安定した姿勢保持、特に被加工物を把持した加工状態での姿勢安定性がより重要である。ここで、子爪の「姿勢安定性」とは、(1)子爪に掛かる回転方向の力(親爪に対する子爪の締着部位中心を軸とした自転方向の力、以下回転力と略する)や、(2)子爪に掛かる浮き上げ方向の力(親爪に対する子爪の締着部位中心を支点とした持ち上げ方向の力、以下浮上力と略する)に対抗し、親爪に締着した子爪の姿勢を維持することを意味する。容易な着脱構造は、切削工具から被加工物を介して加わる負荷により発生する前記回転力又は浮上力の影響を受けて姿勢を保てなくなり、安定した被加工物の把持ができなくなる可能性がある。
【0013】
特許文献1の親子爪は、加工状態において、回転力又は浮上力への対抗が弱いと考えられる。なぜなら、締着の基礎となる凸部が子爪より小さく、しかも被加工物からの負荷は上方に偏って子爪に加えられるため、浮上力の影響を受けやすく、姿勢安定性を損ねる可能性が大きい。また、親爪の凹部と子爪の凸部側面とを接面する姿勢保持は、接面する両面に高い平坦度が要求されるため、親子爪の製造コストを高騰させる経済的不利益や、経時劣化に対するメンテナンスが難しい等の問題をもたらす。
【0014】
特許文献2は、2つの取付ボルトを用い、子爪を親爪及び取付駒それぞれに固着するため、回転力又は浮上力に対抗しやすいが、親爪のほかに取付駒を用いて2つの取付ボルトを着脱する手間は親子爪の利便性を低下させる。特許文献3は、あご部材(親爪)の凸部と締め付け部材(子爪)の凹部との嵌合によって浮上力に対抗しやすいが、回転力には凹部の周面に形成したスロットとあご部材の凸部に設けた突起との係合で対抗しなければならず、前記係合が僅かであるため、姿勢安定性に不安が残る。これは、特許文献4における突起(10a)及び凹部(12e)の係合についても言える。
【0015】
特許文献5は、親爪が備える嵌合溝に子爪を嵌め込むため、およそ回転力への対抗は十分と考えられる。しかし、嵌合溝内面と交換爪外面との接面による姿勢保持は、上記特許文献1の問題としても述べたように、接面する両面に高い平坦度が要求されるため、親子爪の製造コストを高騰させる経済的不利益や、経時劣化に対するメンテナンスが難しいなどの問題をもたらす。この接面による姿勢保持の問題は、特許文献6にも当てはまる。
【0016】
特許文献7は、接面による姿勢保持を採用しながら、更に子爪の側面に向けて連結ボルトを螺合させていることから、上記までと異なり、接面による姿勢保持の問題は低減される。しかし、連結ボルトによる親爪と子爪との連結は、半径方向外側、すなわち子爪の後ろ半分に偏っており、浮上力に対する心配が残る。特許文献8は、アダプタを用いる部品点数及び製造コストの増加のほか、上向きに付勢したボールからなるロック機構による押圧によって回転力による影響を避けようとしているが、依然不十分である。
【0017】
以上から、子爪を姿勢変更させる着脱構造において、着脱を容易にすることと、姿勢安定性を図ることとは両立しにくいことが理解できる。このほか、上記各先行技術は、例えば子爪の側面が接面するような嵌合部位を設けた親爪を用意し、子爪の姿勢安定性を高めているが、これは子爪の種類だけ親爪を必要とし、親子爪の経済性を損ねる問題をもたらしている。そこで、親子爪において、着脱が容易でありながら、高い姿勢安定性を図ることができる着脱構造を有し、かつ複数種類の子爪に対して共通の親爪を用いることができる親子爪を開発するため、検討した。
【0018】
また、チャック用の爪は、被加工物に応じて爪を成形する場合があり、その前提として、被加工物を把持した状態を精度よく、かつ安定して創出しなければならない。しかし、上記各特許文献に爪の成形に関する提案がほとんどなく、わずか特許文献8に芯出し治具が例示的に示されている程度であった。しかし、特許文献8に例示されている芯出し治具は、リングから各調節ボルトの突出量を一致させることや、また各調節ボルトを等しくブロック体で挟持することが難しい問題があった。そこで、被加工物に応じて子爪を成形する際に、子爪を親爪に締着したままチャック用親子爪の半径方向位置を高い精度で決定、保持する爪成形補助具を開発するため、検討した。
【0019】
【課題を解決するための手段】
検討の結果開発したものが、チャック本体に固着する親爪と、該親爪に締着して被加工物を把持する子爪とからなるチャック用親子爪において、親爪及び子爪を一方又は双方に嵌合ピンを嵌合又は嵌脱して親爪に子爪を着脱するチャック用親子爪である。具体的には、親爪は子爪底面を接面する載置面に嵌合ピンを立設し、子爪はこの子爪底面に前記嵌合ピンと対応して子爪嵌入孔を穿孔してなり、嵌合ピンを子爪嵌入孔に抜き差しして親爪に子爪を着脱するチャック用親子爪である。チャック本体に対する親爪の固着は、セレーション方式又はクロスキー方式等、従来公知の各種手段を用いることができる。
【0020】
本発明の親子爪は、従来公知の締着手段を用いて親爪に子爪を締着すればよく、以下では締着ボルトを例に挙げる。これから、親爪に対する子爪の締着位置は締着ボルトの螺合位置で、締着位置中心は締着ボルトの軸心となる。子爪の姿勢変更及び姿勢保持は、前記締着ボルトによる締着と嵌合ピン及び子爪嵌入孔の嵌合との協働により実現する。これは、嵌合ピンのみによる着脱構造を実現することを意味し、子爪の側面を接面させるような嵌合部位を親爪に設けなくてもよい、すなわち共通の親爪を用いて複数種類の子爪を着脱できる利点をもたらす。ここで、前記「嵌合」は、嵌合ピンを隙間なく子爪嵌入孔に差し込む状態、すなわち嵌合ピン及び子爪嵌入孔が嵌合すれば両者にぐらつきを生じない結合となる状態を意味する。
【0021】
親爪に対して子爪を締着する締着ボルトは、通常子爪中心から親爪に向けて螺合する。よって、締着位置中心=子爪中心となり、締着ボルトが回転中心になるから、締着ボルトのみでは子爪に掛かる回転力に対抗できない。また、親爪に対する締着ボルトの螺合部位を支点として子爪に負荷が掛かるため、締着ボルトの螺着強度及び螺合強度のみが浮上力に対抗することになり、締着ボルトががたつけば勢い不安定となる。本発明の親子爪は、親爪の載置面に嵌合ピンを立設し、子爪底面に穿孔した子爪嵌入孔に前記嵌合ピンを嵌入することで、子爪は回転力及び浮上力に対抗する。子爪嵌入孔に嵌入した嵌合ピンが、締着ボルトと別体で、締着ボルトと平行に親爪及び子爪を連結する部材を構成するわけである。
【0022】
嵌合ピン及び子爪嵌入孔の形状及び大きさは自由であるが、嵌合ピン及び各嵌入孔を密に嵌合する加工精度の要求程度や、摩耗による劣化等を考慮した場合、円柱状嵌合ピンと円筒状子爪嵌入孔とが好ましい。ここで、子爪嵌入孔が子爪を貫通して穿孔し、子爪より大きな嵌合ピンを貫通させる構成も考えられる。確かに、両者の接触範囲が大きいほど姿勢安定性に寄与するが、両者の接触範囲が増えると摩擦力が大きくなり、子爪が着脱しにくくなる。これから、例えば子爪の高さを30mmとした場合、嵌合ピンの直径は2〜10mm、好ましくは3〜8mm、より好ましくは4〜6mmとし、高さは2〜10mm、好ましくは3〜8mm、より好ましくは4〜6mmの大きさとし、子爪嵌入孔は嵌合ピンと同径で、嵌合ピンよりも1mm程度高くするとよい。嵌合ピンよりも子爪嵌入孔を高くすると、嵌合ピンを確実に根元まで子爪嵌入孔に嵌入できる。
【0023】
これから、嵌合ピンを載置面に複数本立設すれば(対応する子爪嵌入孔も同数設ける)、より回転力及び浮上力に対抗できるようになる。このとき、特定の嵌合ピンに掛かる回転力及び浮上力は、他の嵌合ピンに掛かる各回転力及び浮上力に相殺される。前記相殺は特に回転力に対して効果があり、子爪の姿勢安定性向上が高まっていく。そして、複数の嵌合ピンが全体として回転力及び浮上力への対抗を担うようになるため、締着ボルトは専ら親爪に対して子爪を締着させるだけでよくなる。
【0024】
複数の嵌合ピンは、上述のような相互作用で回転力及び浮上力を相殺するので、複数であれば、基本的に嵌合ピンの本数及び位置関係は自由に決定してよい。しかし、嵌合ピンの数が増えるに従って、加工精度の関係から、各嵌合ピン及び子爪嵌入孔の嵌合を均一にすることが難しくなり、嵌合ピンによる子爪のガタツキを発生させて、かえって姿勢安定性を損ねてしまう問題がある。また、嵌合ピンは、本数に比例して相殺の効果の高い浮上力への対抗を強めるが、回転力への対抗は各嵌合ピンの位置関係によって変化する。これから、複数の嵌合ピンを用いる場合、各嵌合ピン相互による回転力の相殺が最大になる位置関係、すなわち嵌合ピンを親爪に対する子爪の締着位置中心を含む直径方向に複数本並設する構成がよい。
【0025】
締着位置中心を含む直径方向では、締着位置中心の片側に複数本の嵌合ピンを並設してもよいが、この場合、嵌合ピン相互に掛かる浮上力を相殺できない。よって、より好ましくは、嵌合ピンを、(1)親爪に対する子爪の締着位置を点対称中心とした載置面の点対称位置へ一対2本立設する、又は(2)親爪に対する子爪の締着位置中心を含む軸線を線対称軸線とした載置面の線対称位置へ一対2本立設する。具体的には、2本の嵌合ピンが180度間隔で立設することになる。ここで、浮上力が働く方向、すなわちチャック本体の半径方向において各嵌合ピンの半径位置が異なると、それぞれに加わる浮上力に差が生じる。そこで、線対称軸線を前記チャック本体の半径方向に揃え、各嵌合ピンの半径位置を揃えておくことが望ましい。
【0026】
嵌合ピンは、子爪嵌入孔への嵌入によってガタツキなく子爪を親爪に締着できるようにするため、載置面にしっかりと立設することが好ましい。これから、嵌合ピンを載置面と一体に形成することも考えられるが、より好ましくは、載置面に穿孔した親爪嵌入孔へ差し込んだノックピンで嵌合ピンを構成するとよい。ノックピンの種類には限定はなく、交換不可な平行ピン又はテーパピンをはじめとして、交換可能な平行ピン又はテーパピンでもよく、更に載置面への結合度を高めるため、外ネジ付又は内ネジ付ノックピンを用いてもよい。外ネジ付ノックピンの場合、親爪嵌入孔に雌ネジを刻設する。
【0027】
子爪嵌入孔は、嵌合ピンを嵌入して保持し、親爪の載置面に対して子爪を締着する働きを提供するもので、嵌合ピンに対応して同数穿孔する。しかし、子爪の姿勢が嵌合ピン及び子爪嵌入孔の組み合わせで決定されることから、子爪嵌入孔を嵌合ピンの本数より多く子爪底面に穿孔すれば、子爪嵌入孔を選択することにより、親爪に対する子爪の姿勢を変更できるようになる。この場合、複数の子爪嵌入孔のいずれもが単一の嵌合ピンを嵌入できるように、各子爪嵌入孔は締着位置中心からの半径距離を同じにしておく必要がある。
【0028】
また、嵌合ピンを2本1組で設けている場合、子爪嵌入孔は嵌合ピンに対応して2個1組の子爪嵌入孔からなる孔単位を前記ピン単位の組数より多く子爪底面に穿孔すればよい。この場合も、各孔単位の同一関係に配した子爪嵌入孔同士が、締着位置中心からの半径距離が同じである必要がある。ここで、複数の子爪嵌入孔は、子爪の周方向に設定した複数の把持部位の間隔に合わせて複数組設けると、子爪に設定した把持部位を適切に切り換える姿勢変更ができるようになる。把持部位は、子爪が平面視多角形であれば側面間の稜線であり、子爪が平面視円形であれば適宜設定した側面上の直線となる。子爪の姿勢は、締着ボルト及び各嵌合ピンの相対的位置関係によって厳密に設定できるため、姿勢変更を繰り返しても、同じ嵌合ピン及び子爪嵌入孔を嵌合すれば、同じ子爪の姿勢を確実に再現できる、すなわち高い復元性度を実現する。
【0029】
本発明の親子爪では、嵌合ピン及び子爪嵌入孔がガタツキなくきっちりと嵌合することで、姿勢安定性を実現する。このためには、親爪の載置面と子爪底面とが密着することが望ましく、前記載置面及び子爪底面との関係が、上述した接面による問題(高い加工精度の要求や親爪に対する子爪のガタツキ)をもたらす可能性がある。そこで、親爪の載置面は、子爪底面に対して離隔する凹面を形成するとよい。すなわち、子爪底面全域で接面する載置面ではなく、載置面から凹面を除いた残余面のみを子爪底面に接面させるわけである。
【0030】
接面による問題は、接面する両面の接触面積が増えるに従って深刻になる。載置面に形成する凹面は、載置面から子爪底面に対する接触面積を低減する働きを有している。これから、凹面は載置面の子爪底面に対する接触面積を低減できれば形状又は深さを問わない。しかし、姿勢安定性を考慮した場合、締着位置及び嵌合ピンを囲む形状で、子爪底面の周縁が接面する残余面となるように凹面を形成するとよい。この場合、凹面の深さは締着ボルトの締付代となるので、凹面は前記締着ボルトの締付代を確保できる程度の深さがあればよいことになる。また、凹面があまり深いと載置面付近の親爪の構造強度が低下する虞があるので、凹面は残余面に対して0.1〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.0mm程度あればよい。
【0031】
上記親子爪は、親爪と子爪とを規制ピンで連結する構成であり、この規制ピンは両者と一体になればよいため、上記のほかに次の構成も考えられる。すなわち、(a)親爪は子爪底面を接面する載置面に親爪嵌入孔を穿孔し、子爪はこの子爪底面に前記親爪嵌入孔と対応して嵌合ピンを立設してなり、嵌合ピンを親爪嵌入孔に抜き差しして親爪に子爪を着脱する親子爪、又は(b)親爪は子爪底面を接面する載置面に親爪嵌入孔を穿孔し、子爪はこの子爪底面に前記親爪嵌入孔と対応して子爪嵌入孔を穿孔してなり、嵌合ピンを親爪嵌入孔及び子爪嵌入孔に抜き差しして親爪に子爪を着脱する親子爪である。嵌合ピンと親爪嵌入孔又は子爪嵌入孔の働きは上述と同じであるため、説明は省略する。
【0032】
本発明では、子爪の成形のため、姿勢安定性を高めた子爪を親爪に締着した状態で、親子爪の半径方向位置を高い精度で決定、保持する爪成形補助具を開発した。すなわち、全親子爪をチャック本体の半径方向位置の所定半径を含む大きさを有する規制リングの片面又は両面に、所定半径の半径方向位置かつ各親子爪に対応した間隔で、子爪を親爪に締着する締着ボルトを挿入する各締着ボルト受に嵌合する突起を設けた爪成形補助具である。この爪成形補助具は、突起を各親子爪の子爪に設けてある締着ボルト受に差し込むことで、各親子爪の半径方向位置が子爪を介して高い精度で決定し、チャック本体に取り付ける全親子爪相互の位置関係を拘束、保持することで、被加工物を把持した状態で子爪の成形をすることができる。
【0033】
突起は、規制リングの片面に全親子爪の数だけ1組(親子爪が3基の場合は3個)設けることを基本とするが、残る片面に突起の半径方向位置が異なる1組を設けて、両面での使用を可能にするとよい。また、前述のように、通常片面には所定半径で揃えた1組の突起を配するのみであるが、可能であれば、1組の各突起の間に異なる所定半径で揃えた別の組の突起を配してもよい。この場合、両面に2組の突起を配すれば、両面合わせて合計4組の突起を設けることができ、親子爪の半径方向位置も4段階で決定、維持できるようになる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。図1は六角形柱状の子爪1と一部を切り欠いて載置面2を形成した親爪3とからなる本発明の親子爪4の一例(セレーション方式)を表す斜視図、図2は六角形柱状の子爪1と一部を切り欠いて載置面2を形成した親爪3とからなる本発明の親子爪4の別例(クロスキー方式)を表す斜視図、図3は同親子爪4の子爪1及び親爪3の組み付け関係を表す斜視図、図4は別例の親子爪4の子爪1及び親爪3の組み付け関係を表す斜視図、図5は更に別例の親子爪4の子爪1及び親爪3の組み付け関係を表す斜視図、図6は同親子爪4をチャック本体6に装着した状態を表す斜視図、図7は同親子爪4の側面図(子爪1のみチャック本体6の半径方向縦断面)、図8は同親子爪4の平面図(子爪1のみ横断面)であり、図9は同親子爪4の正面図(子爪1のみチャック本体6の半径直交方向縦断面)である。
【0035】
本発明に基づく親子爪4の外観は、図1及び図7〜図9に見られるように、従来相当品と変わりはなく、本例ではセレーション方式の親爪3を用いている。子爪1は、高さHtが約30mmの六角柱形状で、図3に見られるように、平面視中心に設けた段差のある締着ボルト受7から挿入した締着ボルト8を親爪3の締着ボルト孔9に螺合することで親爪3に締着する。本発明は、親爪3に対する子爪1の着脱構造にかかる技術であるから、親爪3は従来公知の各種固着構造を用いることができ、例えば図2に見られるように、親爪3は、底面にクロスキー34を設けたクロスキー方式としてもよい。
【0036】
子爪嵌入孔10は、締着ボルト受7を中心として、各側面11に対応する位置で、60度間隔に子爪底面5から6個穿孔している。このうち、点対称位置にある2個の子爪嵌入孔10,10を1組の孔単位12とすれば、本例は孔単位12を60度間隔で3組設けていることになる。各子爪嵌入孔10は、直径Rhを嵌合ピン13と略同径で約2mm、高さHhを嵌合ピン13より若干高い6mmとした円筒状である。本例の子爪1は、各側面11,11間の稜線を把持部位14とするので、6種類の被加工物に対応できる。
【0037】
親爪3及び子爪1は、嵌合ピン13を介した着脱構造であり、前記嵌合ピン13は両者の間に介在すればよい。このため、上記例示と異なり、例えば図4に見られるように、親爪3に締着ボルト孔9を中心とする点対称位置に親爪嵌入孔20を穿孔し、嵌合ピン13を子爪底面5から立設してもよいし、逆に図5に見られるように、親爪3には親爪嵌入孔20、子爪1には子爪嵌入孔10をそれぞれ穿孔し、各嵌入孔10,20双方に嵌合する嵌合ピン13を用いてもよい。対となる嵌入孔にそれぞれ嵌合する嵌合ピン13は各種ノックピンを用いることができ、通常はいずれのかの嵌入孔に勘合し、適宜交換可能にする場合に適している。
【0038】
子爪嵌入孔10は、締着ボルト受7を中心として、各側面11に対応する位置で、60度間隔に子爪底面5から6個穿孔している。このうち、点対称位置にある2個の子爪嵌入孔10,10を1組の孔単位12(図中一点鎖線枠で表示)とすれば、本例は孔単位12を60度間隔で3組設けていることになる。各子爪嵌入孔10は、直径Rhを嵌合ピン13と略同径で約2mm、高さHhを嵌合ピン13より若干高い6mmとした円筒状である。本例の子爪1は、各側面11,11間の稜線を把持部位14とするので、6種類の被加工物に対応できる。
【0039】
親爪3は、図1、図3、図6〜図9に見られるように、後部の2箇所に設けた段差のある固着ボルト受15,15から挿入した固着ボルト16,16を、2条のセレーション17,17(図1のみ表示、他図は省略表示)に挟まれた摺動溝18から突出させ、チャック本体6の案内溝19に締め付ける構成で、従来同種の親爪と基本的には変わりない。嵌合ピン13は、親爪3の前部を切り欠いて形成した平坦な載置面2に開孔した締着ボルト孔9を中心とし、点対称位置かつチャック本体6の半径直交方向に2本立設している。各嵌合ピン13,13は、直径Rp約5mm、高さHp5〜6mmの円柱状である。
【0040】
また、本発明の親子爪4は、嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10の嵌合によって子爪1の姿勢保持を図ることから、親爪3の載置面2に続く垂直面21と子爪1の側面11とを接面させる必要がない。このため、本例では、図1、図3及び図7に見られるように、前記載置面2と垂直面21との境界22を丸く連続的に形成し、子爪1の側面11が垂直面21に接触しないようにしている(特に図8参照)。丸い境界22は、負荷の集中を回避し、親爪3の構造強度を高める効果をもたらす。
【0041】
親爪3に対する子爪1の姿勢安定性は、嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10の嵌合によって実現する。しかし、嵌合ピン13が根元までしっかりと子爪嵌入孔10に嵌入しなければ、親爪3に対する子爪1のガタツキを招き、子爪1の姿勢が安定しない。そこで、図10〜図12(それぞれ図7〜図9相当図)に見られるように、親爪3の載置面2に、締着ボルト孔9から嵌合ピン13に至る平面視略半円形で深さ0.5〜1.0mmの凹面23を形成し、凹面23を除く残余面24を子爪底面周縁25に接面させるとよい。凹面23は締着ボルト8の締付代を構成し、締着ボルト8により子爪1を親爪3に押し付けやすくするため、子爪底面周縁25は前記残余面24に密着する。この結果、嵌合ピン13は根元までしっかりと子爪嵌入孔10に嵌入することになり、本発明の嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10の嵌合による回転力及び浮上力への対抗が最大限発揮されるようになる。
【0042】
子爪1の姿勢変更(又は初期の取付)作業は、次の手順による。まず、選択した子爪1の把持部位14(稜線)をチャック本体6の半径方向内向きに向け、嵌合ピン13,13を嵌入する孔単位12を選択する。従来のチャックでも見られるように、把持部位14は前記稜線をそのまま使うほか、被加工物に応じて適宜丸く加工したり、逆に切り欠いたりする。例えば、図13に見られるように、現在使用している把持部位26が丸く加工してあり、対面となる把持部位27を切り欠いている場合、稜線そのままの把持部位14を使うには子爪1を左又は右方向へ60度旋回させ、切り欠いた把持部位27を使うには子爪を180度旋回(反転)させることになる。孔単位12は60度間隔で、各子爪嵌入孔10は締着ボルト受7を中心に等しい半径距離で並べているから(図8参照)、把持部位14,26,27の選択に際して60度間隔で子爪1を旋回させている限り、選択した孔単位12はそれぞれ同じように嵌合ピン13,13を嵌入できる。
【0043】
次いで、嵌合ピン13に対して子爪1を押し込むように、親爪3の嵌合ピン13に対応する孔単位12の各子爪嵌入孔10,10へ前記嵌合ピン13,13を嵌入させる。このとき、嵌合ピン13が根元までしっかりと子爪嵌入孔10に嵌合するように押し込み、子爪底面5と載置面2とが密着(接面)することが大事である。これから、嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10は相似な構造であることが必要であるが、更に子爪嵌入孔10に対する嵌合ピン13の嵌入及び嵌脱を容易にするため、例えば嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10を若干テーパ形状に形成してもよい。
【0044】
こうして嵌合ピン13をしっかりと子爪嵌入孔10に嵌入し終えたら、子爪1の締着ボルト受15から挿入した締着ボルト8を親爪3の締着ボルト孔9に螺合することで、親爪3に対する子爪1の取付が完了する。子爪1の取り外しは、上述までの手順を逆にたどればよい。この一連の手順において、親爪3に対する子爪1の着脱は締着ボルト8の操作のみで、本発明の親子爪4における子爪1の交換作業は最も簡略化された作業で、親子爪4の利便性を十分に有していることがわかる。しかし、嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10の嵌合は、これまでにない子爪1の高い姿勢安定性をもたらす。このように、本発明は、従来両立し難かった利便性及び姿勢安定性を両立させる技術であることが分かる。
【0045】
本発明は、親爪3に対する子爪1の姿勢安定性を図るために、親爪3の載置面2に立設した嵌合ピン13を子爪底面5に穿孔した子爪嵌入孔10に嵌入する構成にしている。これは、子爪1及び親爪3の着脱を嵌合ピン13のみで実現していることを意味し、これから、同一の親爪3に様々な子爪1を交換できる効果を得ることができる。図14は四角柱状の子爪28からなる本発明の親子爪4を表す図1相当斜視図、図15は三角柱状の子爪29からなる本発明の親子爪4を表す図1相当斜視図であり、図16は円柱状の子爪30からなる本発明の親子爪4を表す図1相当斜視図である。図14〜図16例示の親子爪4は、親爪3を共通の構成とし、各子爪28,29,30の子爪嵌入孔10が締着ボルト受7を中心かつ同じ半径距離で設けているが、子爪28,29,30毎に設定する把持部位14の関係から、子爪嵌入孔10の数及び配置が異なっている。
【0046】
四角柱状の子爪28は、上記例示の六角柱状の子爪1(図1参照)に比べて把持部位14となる稜線が少ないため、図14に見られるように、子爪嵌入孔10の組となる孔単位12は90度間隔で2組しか設けていない。これに対して、三角柱状の子爪29は、稜線の数は上記例示の六角柱状の子爪1(図1参照)の半分しかないが、各稜線が120度間隔であることから、孔単位12を60度間隔で同じ3組設けている(図3及び図15比較対照)。すなわち、六角柱状の子爪1は、各孔単位12を反転して左右の子爪嵌入孔10,10を入れ替えて全稜線に対応する計6方向で使用するが、三角形状の子爪29の各孔単位12は常に同じ向き、すなわち3稜線に対応する計3方向でしか使用しない。このほか、図示は省略するが、本発明は、共通の親爪に対して種々の多角形柱状の子爪を着脱しうる汎用性がある。
【0047】
これら多角形柱状の子爪に対し、円柱状の子爪では、孔単位の個数は任意である。これは、円柱状の子爪では、側面の任意の位置を把持部位として設定できるからである。これから、図16に見られるように、各孔単位12の間隔は等間隔(図示では30度間隔)を基本とするが、任意の位置に設定した把持部位14に合わせて孔単位12を不等間隔に設けることもできる。また、この場合でも、親爪3は共通のものを用いることができる(図1、図14〜図16比較対照)。
【0048】
円柱状の子爪の場合、個別に子爪嵌入孔を設けるのではなく、周方向に連通する円環状溝を連続する子爪嵌入孔とすることもできる。この円環状溝の直径の間隔で2本の嵌合ピンを立設していれば、各嵌合ピンは円環状溝に対して一義的に嵌入位置が決定されるからである。実際には、嵌合ピンは円環状溝の内周面及び外周面にしか接触しないため、ガタツキを防ぐ観点から実用的ではないが、把持部位を任意に設定できる円柱状の子爪を用いる場合、使用時毎に把持部位を決定、変更する自由度が得られる利点がある。
【0049】
本発明の親子爪4は、子爪1の姿勢安定性が優れているので、被加工物を把持した状態で子爪1を成形するため、子爪1に負荷を掛けるように押し引きしても問題がない。そこで、本発明の親子爪4では、図17に見られるように、各子爪4の締着ボルト受7に嵌合する突起31を規制リング32に設けた爪成形補助具33を用い、前記突起31を対応する各子爪1の締着ボルト受7それぞれに嵌合することで、被加工物を把持した状態で、子爪1相互の位置関係を決定、保持して、高い精度で各子爪1を成形することができる。
【0050】
この爪成形補助具33は、全親子爪4を揃えたいチャック本体6の半径方向位置における半径R1(図18参照)及び半径R2(図19参照)を含む大きさの規制リング32からなる。この規制リング32両面には、それぞれ前記半径R1又は半径R2の半径方向位置かつ親子爪4に対応する間隔(例示は120度の等間隔)で、各子爪1の締着ボルト受7に嵌合する突起31を設けている。本例の各突起31は120度間隔で、両面で60度ずつずらしているが、両面の突起31,31を同じ位置に設けてもよい。
【0051】
各親子爪4は、チャック本体6の案内溝19に沿って移動可能な状態(親爪3の固定ボルト16を緩めた状態)とし、爪成形補助具33で設定したい半径R1又はR2の突起31を各子爪1の締着ボルト受7に差し込むことで、簡単かつ迅速に同じ半径方向位置に設定できる。そして、各親子爪4をチャック本体6の半径方向に移動させて被加工物を把持した状態を作りだし、被加工物に応じて各子爪を成形する。このように、子爪1及び親爪3を一体に、すなわち親子爪4を直接半径方向位置に設定できるのも、親爪3に対する子爪1の姿勢安定性を高めた本発明によるところが大きい。
【0052】
【発明の効果】
本発明の親子爪は、親子爪の利便性を損ねることなく、実運用上、親爪に対する子爪の姿勢安定性を大きく改善する。例えば、親爪の載置面に嵌合ピンを立設したり、対応する子爪嵌入孔を子爪底面に穿孔することは、既存の親子爪でも可能であり、本発明は新製又は既製の親子爪、いずれにも適用できる利点がある。また、嵌合ピンのみによる着脱構造は、共通の親爪を用いながら、複数種類の子爪を適宜交換して使用できる効果を生み、使用上の自由度が高い利点をもたらす。このように、本発明は、従来の親子爪では難しかった利便性と子爪の姿勢安定性とを両立させる効果があり、前記効果を実現する着脱構造を広く適用できる利点がある。
【0053】
また、本発明の爪成形補助具は、各子爪の締着ボルト受に対応する突起を嵌合するだけで、簡易かつ精度よく子爪相互の位置関係を決定し、前記位置関係で全子爪を拘束、保持できるので、被加工物に対する把持精度向上を図る子爪の成形が容易にできるようになる。上記親子爪は、比較的小さなチャックを構成する場合に適しており、子爪の半径方向位置の調整範囲はそれほど広くはない。このため、突起の半径位置が異なる本発明の爪成形補助具を複数種類用意することにより、およそ必要な子爪の成形が容易に実現できるようになる。このように、本発明の爪成形補助具は、親子爪の使用を助け、より効率的な旋盤作業等を実現する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の親子爪の一例(セレーション方式)を表す斜視図である。
【図2】本発明の親子爪の別例(クロスキー方式)を表す斜視図である。
【図3】同親子爪の子爪及び親爪の組み付け関係を表す斜視図である。
【図4】別例の親子爪の子爪及び親爪の組み付け関係を表す斜視図である。
【図5】別例の親子爪の子爪及び親爪の組み付け関係を表す斜視図である。
【図6】同親子爪をチャック本体に装着した状態を表す斜視図である。
【図7】同親子爪の側面図(子爪のみチャック本体の半径方向縦断面)である。
【図8】同親子爪の平面図(子爪のみ横断面)である。
【図9】同親子爪の正面図(子爪のみチャック本体の半径直交方向縦断面)である。
【図10】親爪の載置面に凹面を形成した親子爪の図7相当側面図である。
【図11】親爪の載置面に凹面を形成した親子爪の図8相当平面図である。
【図12】親爪の載置面に凹面を形成した親子爪の図9相当正面図である。
【図13】本例の親子爪における子爪の姿勢変更を表した斜視図である。
【図14】四角柱状の子爪からなる本発明の親子爪を表す図1相当斜視図である。
【図15】三角柱状の子爪からなる本発明の親子爪を表す図1相当斜視図である。
【図16】円柱状の子爪からなる本発明の親子爪を表す図1相当斜視図である。
【図17】爪成形補助具を表す斜視図である。
【図18】半径R1で並ぶ突起によって親子爪の位置調整を説明するチャックの正面図である。
【図19】半径R2で並ぶ突起によって親子爪の位置調整を説明するチャックの正面図である。
【符号の説明】
1 六角形柱状の子爪
2 載置面
3 親爪
4 親子爪
5 子爪底面
6 チャック本体
7 締着ボルト受
10 子爪嵌入孔
12 孔単位
13 嵌合ピン
14 把持部位
20 親爪嵌入孔
21 垂直面
22 境界
23 凹面
24 残余面
25 子爪底面周縁
28 四角柱状の子爪
29 三角柱状の子爪
30 円柱状の子爪
31 突起
32 規制リング
33 爪成形補助具
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば旋盤等の工作機械で、被加工物を把持するチャック用親子爪であって、チャック本体に固着する親爪と、この親爪に締着して被加工物を把持する子爪とからなるチャック用親子爪と、被加工物に応じて子爪を成形するためにチャック用親子爪の半径方向位置を決定、保持する爪成形補助具とに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば旋盤等の工作機械で被加工物を把持するチャック用親子爪として、チャック本体に固着する親爪と、この親爪に締着して被加工物を把持する子爪とからなるチャック用親子爪(以下、親子爪と略する)がある。この親子爪の利点は、劣化等に伴う交換が子爪のみで済む経済性や、子爪を姿勢変更することで被加工物毎に把持位置を容易に変更できる利便性にあり、特に後者の利便性をいかに実現するかにつき、子爪の着脱構造が従来より種々提案されている。
【0003】
特許文献1は、旋盤の軸線方向に対する放射方向に運動する1個以上の爪(親爪)に1個以上の生爪(子爪)を着脱できるチャックで、中心に締め付けネジ孔を有する凹部を前記爪に2箇所設け、生爪に前記凹部に嵌め込む凸部を付け、この中心に凸部の逆方向より締め付けボルト用の段付孔を形成し、三角形以上の角がこの生爪の側面に連番で符号を打刻した旋盤チャック用嵌め込み生爪(親子爪)を提案している。生爪が多角形であるために何箇所も使用でき、爪の凹部に生爪の凸部を嵌め込むのでキャップボルト(締着ボルト)だけに負担が掛からない効果がある。
【0004】
特許文献2は、割出爪(子爪)の底部に設けた親爪に対する円形の取付部にセレーションキーの円形部を嵌め込むことにより割り出し可能とし、セレーションキー及び割出爪に取付部を嵌め合わせて位置決めする構造で、爪の中心と取付距離を半径とする円周上に割出数の半数の取付孔を設け、割出爪の割出中心を置き換えることによって所定数の割出を可能にした多角形の工作用チャックの割出爪を提案している。
【0005】
特許文献3は、長手方向に往復可能にチャックに取り付けられるあご部材(親爪)と、あご部材の前縁に取り外し可能に固定される割り出し可能な多角形の締め付け部材(子爪)とからなり、割り出しのために締め付け部材と係合する立設突起があご部材の上面から縦方向に延設され、締め付け部材の下面に凹部が設けられ、凹部の周面に複数個のスロットが形成され、締め付け部材の一作用位置においてスロットのひとつが前記突起と係合する締め付けあご(親子爪)を提案している。この締め付けあごは、従来と比べて製造及び使用が簡単でありながら、締め付け部材を正確に割り出し、機械加工又は工作物の回転の際に移動しないようにしっかりと固定できる効果があると述べている。
【0006】
特許文献4は、多種類のワーク毎に合致した生爪の管理等の課題を爪の耐久性を悪化させずに解決するため、ワーク把持面を複数個形成したマスタージョーにおいて、複数ワーク把持面を有するブロック(子爪)を、本体に設けた平面視形状がブロックのそれとほぼ一致して1つのワーク把持面のみを本体端面に開放させる縦溝に嵌合させ、軸心部に通す1本のボルトで本体に固定する爪チャック用親子爪のトップ又はソフトジョーを提案している。この爪チャック用親子爪のトップ又はソフトジョーは、ワークの寸法や形状の変化に伴うワーク把持面の交換が容易かつ迅速に行え、交換後の爪の芯出し精度に狂いを生じることもない効果があると述べている。
【0007】
特許文献5は、角材にて構成される交換爪をホルダ部(親爪)で保持するようにしたチャック用生爪の爪ホルダであって、前記ホルダ部は、前記交換爪をワークの挟持方向に抜脱不能に嵌合せしめる嵌合溝を備え、前記嵌合溝に連なるすり割り溝に対して交差方向に挿入される締め付け部材を備え、この締め付け部材の締め付け操作によって前記嵌合溝は拡縮自在にされるチャック用生爪の爪ホルダを提案している。この爪ホルダは、締め付け部材を緩めるだけで交換爪を装着でき、作業時間が短縮される効果を有すると述べている。
【0008】
特許文献6は、生爪本体(親爪)の長手方向先端部に先端チップ(子爪)を交換可能に取付可能とした取付座底面を設けると共に、この取付座底面に隣接して垂直に屹立する取付座壁面を設け、前記先端チップの側面を前記先端チップの底面に対して垂直に形成したチャック用交換式生爪(親子爪)を提案している。ここで、先端チップの中心軸に直角な断面の形状を正6角形断面にすれば、1稜を使った後に他の稜を使用でき、全体で最大6回の繰り返し使用を可能にする作用、効果をうたっている。
【0009】
特許文献7は、ワークの挟持側に当接面をV字状に設けたV字溝を有する親爪と、ワークの挟持側にワークとの挟持面を有し、非挟持側にこの親爪のV字溝と嵌合する山形突起を有する子爪と、この子爪を親爪に固定するための連結ボルトとを備え、この親爪の外側面から該当接面に向かって開口した挿通孔に、この連結ボルトを外側面側から挿入して子爪の山形突起に螺合させることにより子爪を親爪に固定する旋盤用チャック(親子爪)装置を提案している。この旋盤用チャック装置は、親爪と子爪は製造が容易で安価であり、親爪をチャックに固定した状態で、他のチャック爪に邪魔されることなく連結ボルトの弛緩が可能であり、子爪の交換が容易で、子爪の脱着を行っても再び同じ位置に子爪を取り付けることが容易になる効果を述べている。
【0010】
特許文献8は、3個の生爪からなる工作機械用生爪チャックにおいて、前記生爪(親爪)は、中心側に前記爪受台への取付穴を有し、外周縁側がこの取付穴を中心として正六角形状をなす角部となったブロック体(子爪)により構成した工作機械用生爪チャックを提案している。ブロック体の各角部を互いに異なる爪先形状に削り加工でき、それぞれの角部を異なる形状の加工対象物に対する把持用の爪先として使用できる。そして、生爪は多数の加工対象物に対し、その外面(曲面)形状にフィットする爪先形状の角部を選択的に用いることで、加工対象物を確実に安定して把持でき、加工対象物の表面に把持痕等の傷痕が発生するのを防止できる効果を述べている。また、この特許文献8は、ブロック体の成形のため、リングから半径方向に突出する調節ボルトによる芯出し治具を提案している。突出量を加減した各調節ボルトを対応するブロック体で挟持した状態で各ブロック体を成形すると、精度の高い成形が可能と述べている。
【0011】
【特許文献1】
実全昭48−028586号公報(第1〜4頁、第1〜3図)
【特許文献2】
特開昭52−026671号公報(第1〜2頁、第1〜3図)
【特許文献3】
特開昭63−229206号公報(第3〜4頁、第1〜6図)
【特許文献4】
実公平01−044248号公報(第2〜3頁、第1〜7図)
【特許文献5】
特開平11−048010号公報(第2〜3頁、第1〜4図)
【特許文献6】
特開平11−197917号公報(第2〜3頁、第1〜6図)
【特許文献7】
特開2000−326117号公報(第2〜5頁、第1〜5図)
【特許文献8】
特開2002−137105号公報(第3〜9頁、第2〜3図)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記各特許文献は、子爪の姿勢を容易に変更する着脱構造を種々提案しているが、変更後の安定した姿勢保持、特に被加工物を把持した加工状態での姿勢安定性がより重要である。ここで、子爪の「姿勢安定性」とは、(1)子爪に掛かる回転方向の力(親爪に対する子爪の締着部位中心を軸とした自転方向の力、以下回転力と略する)や、(2)子爪に掛かる浮き上げ方向の力(親爪に対する子爪の締着部位中心を支点とした持ち上げ方向の力、以下浮上力と略する)に対抗し、親爪に締着した子爪の姿勢を維持することを意味する。容易な着脱構造は、切削工具から被加工物を介して加わる負荷により発生する前記回転力又は浮上力の影響を受けて姿勢を保てなくなり、安定した被加工物の把持ができなくなる可能性がある。
【0013】
特許文献1の親子爪は、加工状態において、回転力又は浮上力への対抗が弱いと考えられる。なぜなら、締着の基礎となる凸部が子爪より小さく、しかも被加工物からの負荷は上方に偏って子爪に加えられるため、浮上力の影響を受けやすく、姿勢安定性を損ねる可能性が大きい。また、親爪の凹部と子爪の凸部側面とを接面する姿勢保持は、接面する両面に高い平坦度が要求されるため、親子爪の製造コストを高騰させる経済的不利益や、経時劣化に対するメンテナンスが難しい等の問題をもたらす。
【0014】
特許文献2は、2つの取付ボルトを用い、子爪を親爪及び取付駒それぞれに固着するため、回転力又は浮上力に対抗しやすいが、親爪のほかに取付駒を用いて2つの取付ボルトを着脱する手間は親子爪の利便性を低下させる。特許文献3は、あご部材(親爪)の凸部と締め付け部材(子爪)の凹部との嵌合によって浮上力に対抗しやすいが、回転力には凹部の周面に形成したスロットとあご部材の凸部に設けた突起との係合で対抗しなければならず、前記係合が僅かであるため、姿勢安定性に不安が残る。これは、特許文献4における突起(10a)及び凹部(12e)の係合についても言える。
【0015】
特許文献5は、親爪が備える嵌合溝に子爪を嵌め込むため、およそ回転力への対抗は十分と考えられる。しかし、嵌合溝内面と交換爪外面との接面による姿勢保持は、上記特許文献1の問題としても述べたように、接面する両面に高い平坦度が要求されるため、親子爪の製造コストを高騰させる経済的不利益や、経時劣化に対するメンテナンスが難しいなどの問題をもたらす。この接面による姿勢保持の問題は、特許文献6にも当てはまる。
【0016】
特許文献7は、接面による姿勢保持を採用しながら、更に子爪の側面に向けて連結ボルトを螺合させていることから、上記までと異なり、接面による姿勢保持の問題は低減される。しかし、連結ボルトによる親爪と子爪との連結は、半径方向外側、すなわち子爪の後ろ半分に偏っており、浮上力に対する心配が残る。特許文献8は、アダプタを用いる部品点数及び製造コストの増加のほか、上向きに付勢したボールからなるロック機構による押圧によって回転力による影響を避けようとしているが、依然不十分である。
【0017】
以上から、子爪を姿勢変更させる着脱構造において、着脱を容易にすることと、姿勢安定性を図ることとは両立しにくいことが理解できる。このほか、上記各先行技術は、例えば子爪の側面が接面するような嵌合部位を設けた親爪を用意し、子爪の姿勢安定性を高めているが、これは子爪の種類だけ親爪を必要とし、親子爪の経済性を損ねる問題をもたらしている。そこで、親子爪において、着脱が容易でありながら、高い姿勢安定性を図ることができる着脱構造を有し、かつ複数種類の子爪に対して共通の親爪を用いることができる親子爪を開発するため、検討した。
【0018】
また、チャック用の爪は、被加工物に応じて爪を成形する場合があり、その前提として、被加工物を把持した状態を精度よく、かつ安定して創出しなければならない。しかし、上記各特許文献に爪の成形に関する提案がほとんどなく、わずか特許文献8に芯出し治具が例示的に示されている程度であった。しかし、特許文献8に例示されている芯出し治具は、リングから各調節ボルトの突出量を一致させることや、また各調節ボルトを等しくブロック体で挟持することが難しい問題があった。そこで、被加工物に応じて子爪を成形する際に、子爪を親爪に締着したままチャック用親子爪の半径方向位置を高い精度で決定、保持する爪成形補助具を開発するため、検討した。
【0019】
【課題を解決するための手段】
検討の結果開発したものが、チャック本体に固着する親爪と、該親爪に締着して被加工物を把持する子爪とからなるチャック用親子爪において、親爪及び子爪を一方又は双方に嵌合ピンを嵌合又は嵌脱して親爪に子爪を着脱するチャック用親子爪である。具体的には、親爪は子爪底面を接面する載置面に嵌合ピンを立設し、子爪はこの子爪底面に前記嵌合ピンと対応して子爪嵌入孔を穿孔してなり、嵌合ピンを子爪嵌入孔に抜き差しして親爪に子爪を着脱するチャック用親子爪である。チャック本体に対する親爪の固着は、セレーション方式又はクロスキー方式等、従来公知の各種手段を用いることができる。
【0020】
本発明の親子爪は、従来公知の締着手段を用いて親爪に子爪を締着すればよく、以下では締着ボルトを例に挙げる。これから、親爪に対する子爪の締着位置は締着ボルトの螺合位置で、締着位置中心は締着ボルトの軸心となる。子爪の姿勢変更及び姿勢保持は、前記締着ボルトによる締着と嵌合ピン及び子爪嵌入孔の嵌合との協働により実現する。これは、嵌合ピンのみによる着脱構造を実現することを意味し、子爪の側面を接面させるような嵌合部位を親爪に設けなくてもよい、すなわち共通の親爪を用いて複数種類の子爪を着脱できる利点をもたらす。ここで、前記「嵌合」は、嵌合ピンを隙間なく子爪嵌入孔に差し込む状態、すなわち嵌合ピン及び子爪嵌入孔が嵌合すれば両者にぐらつきを生じない結合となる状態を意味する。
【0021】
親爪に対して子爪を締着する締着ボルトは、通常子爪中心から親爪に向けて螺合する。よって、締着位置中心=子爪中心となり、締着ボルトが回転中心になるから、締着ボルトのみでは子爪に掛かる回転力に対抗できない。また、親爪に対する締着ボルトの螺合部位を支点として子爪に負荷が掛かるため、締着ボルトの螺着強度及び螺合強度のみが浮上力に対抗することになり、締着ボルトががたつけば勢い不安定となる。本発明の親子爪は、親爪の載置面に嵌合ピンを立設し、子爪底面に穿孔した子爪嵌入孔に前記嵌合ピンを嵌入することで、子爪は回転力及び浮上力に対抗する。子爪嵌入孔に嵌入した嵌合ピンが、締着ボルトと別体で、締着ボルトと平行に親爪及び子爪を連結する部材を構成するわけである。
【0022】
嵌合ピン及び子爪嵌入孔の形状及び大きさは自由であるが、嵌合ピン及び各嵌入孔を密に嵌合する加工精度の要求程度や、摩耗による劣化等を考慮した場合、円柱状嵌合ピンと円筒状子爪嵌入孔とが好ましい。ここで、子爪嵌入孔が子爪を貫通して穿孔し、子爪より大きな嵌合ピンを貫通させる構成も考えられる。確かに、両者の接触範囲が大きいほど姿勢安定性に寄与するが、両者の接触範囲が増えると摩擦力が大きくなり、子爪が着脱しにくくなる。これから、例えば子爪の高さを30mmとした場合、嵌合ピンの直径は2〜10mm、好ましくは3〜8mm、より好ましくは4〜6mmとし、高さは2〜10mm、好ましくは3〜8mm、より好ましくは4〜6mmの大きさとし、子爪嵌入孔は嵌合ピンと同径で、嵌合ピンよりも1mm程度高くするとよい。嵌合ピンよりも子爪嵌入孔を高くすると、嵌合ピンを確実に根元まで子爪嵌入孔に嵌入できる。
【0023】
これから、嵌合ピンを載置面に複数本立設すれば(対応する子爪嵌入孔も同数設ける)、より回転力及び浮上力に対抗できるようになる。このとき、特定の嵌合ピンに掛かる回転力及び浮上力は、他の嵌合ピンに掛かる各回転力及び浮上力に相殺される。前記相殺は特に回転力に対して効果があり、子爪の姿勢安定性向上が高まっていく。そして、複数の嵌合ピンが全体として回転力及び浮上力への対抗を担うようになるため、締着ボルトは専ら親爪に対して子爪を締着させるだけでよくなる。
【0024】
複数の嵌合ピンは、上述のような相互作用で回転力及び浮上力を相殺するので、複数であれば、基本的に嵌合ピンの本数及び位置関係は自由に決定してよい。しかし、嵌合ピンの数が増えるに従って、加工精度の関係から、各嵌合ピン及び子爪嵌入孔の嵌合を均一にすることが難しくなり、嵌合ピンによる子爪のガタツキを発生させて、かえって姿勢安定性を損ねてしまう問題がある。また、嵌合ピンは、本数に比例して相殺の効果の高い浮上力への対抗を強めるが、回転力への対抗は各嵌合ピンの位置関係によって変化する。これから、複数の嵌合ピンを用いる場合、各嵌合ピン相互による回転力の相殺が最大になる位置関係、すなわち嵌合ピンを親爪に対する子爪の締着位置中心を含む直径方向に複数本並設する構成がよい。
【0025】
締着位置中心を含む直径方向では、締着位置中心の片側に複数本の嵌合ピンを並設してもよいが、この場合、嵌合ピン相互に掛かる浮上力を相殺できない。よって、より好ましくは、嵌合ピンを、(1)親爪に対する子爪の締着位置を点対称中心とした載置面の点対称位置へ一対2本立設する、又は(2)親爪に対する子爪の締着位置中心を含む軸線を線対称軸線とした載置面の線対称位置へ一対2本立設する。具体的には、2本の嵌合ピンが180度間隔で立設することになる。ここで、浮上力が働く方向、すなわちチャック本体の半径方向において各嵌合ピンの半径位置が異なると、それぞれに加わる浮上力に差が生じる。そこで、線対称軸線を前記チャック本体の半径方向に揃え、各嵌合ピンの半径位置を揃えておくことが望ましい。
【0026】
嵌合ピンは、子爪嵌入孔への嵌入によってガタツキなく子爪を親爪に締着できるようにするため、載置面にしっかりと立設することが好ましい。これから、嵌合ピンを載置面と一体に形成することも考えられるが、より好ましくは、載置面に穿孔した親爪嵌入孔へ差し込んだノックピンで嵌合ピンを構成するとよい。ノックピンの種類には限定はなく、交換不可な平行ピン又はテーパピンをはじめとして、交換可能な平行ピン又はテーパピンでもよく、更に載置面への結合度を高めるため、外ネジ付又は内ネジ付ノックピンを用いてもよい。外ネジ付ノックピンの場合、親爪嵌入孔に雌ネジを刻設する。
【0027】
子爪嵌入孔は、嵌合ピンを嵌入して保持し、親爪の載置面に対して子爪を締着する働きを提供するもので、嵌合ピンに対応して同数穿孔する。しかし、子爪の姿勢が嵌合ピン及び子爪嵌入孔の組み合わせで決定されることから、子爪嵌入孔を嵌合ピンの本数より多く子爪底面に穿孔すれば、子爪嵌入孔を選択することにより、親爪に対する子爪の姿勢を変更できるようになる。この場合、複数の子爪嵌入孔のいずれもが単一の嵌合ピンを嵌入できるように、各子爪嵌入孔は締着位置中心からの半径距離を同じにしておく必要がある。
【0028】
また、嵌合ピンを2本1組で設けている場合、子爪嵌入孔は嵌合ピンに対応して2個1組の子爪嵌入孔からなる孔単位を前記ピン単位の組数より多く子爪底面に穿孔すればよい。この場合も、各孔単位の同一関係に配した子爪嵌入孔同士が、締着位置中心からの半径距離が同じである必要がある。ここで、複数の子爪嵌入孔は、子爪の周方向に設定した複数の把持部位の間隔に合わせて複数組設けると、子爪に設定した把持部位を適切に切り換える姿勢変更ができるようになる。把持部位は、子爪が平面視多角形であれば側面間の稜線であり、子爪が平面視円形であれば適宜設定した側面上の直線となる。子爪の姿勢は、締着ボルト及び各嵌合ピンの相対的位置関係によって厳密に設定できるため、姿勢変更を繰り返しても、同じ嵌合ピン及び子爪嵌入孔を嵌合すれば、同じ子爪の姿勢を確実に再現できる、すなわち高い復元性度を実現する。
【0029】
本発明の親子爪では、嵌合ピン及び子爪嵌入孔がガタツキなくきっちりと嵌合することで、姿勢安定性を実現する。このためには、親爪の載置面と子爪底面とが密着することが望ましく、前記載置面及び子爪底面との関係が、上述した接面による問題(高い加工精度の要求や親爪に対する子爪のガタツキ)をもたらす可能性がある。そこで、親爪の載置面は、子爪底面に対して離隔する凹面を形成するとよい。すなわち、子爪底面全域で接面する載置面ではなく、載置面から凹面を除いた残余面のみを子爪底面に接面させるわけである。
【0030】
接面による問題は、接面する両面の接触面積が増えるに従って深刻になる。載置面に形成する凹面は、載置面から子爪底面に対する接触面積を低減する働きを有している。これから、凹面は載置面の子爪底面に対する接触面積を低減できれば形状又は深さを問わない。しかし、姿勢安定性を考慮した場合、締着位置及び嵌合ピンを囲む形状で、子爪底面の周縁が接面する残余面となるように凹面を形成するとよい。この場合、凹面の深さは締着ボルトの締付代となるので、凹面は前記締着ボルトの締付代を確保できる程度の深さがあればよいことになる。また、凹面があまり深いと載置面付近の親爪の構造強度が低下する虞があるので、凹面は残余面に対して0.1〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.0mm程度あればよい。
【0031】
上記親子爪は、親爪と子爪とを規制ピンで連結する構成であり、この規制ピンは両者と一体になればよいため、上記のほかに次の構成も考えられる。すなわち、(a)親爪は子爪底面を接面する載置面に親爪嵌入孔を穿孔し、子爪はこの子爪底面に前記親爪嵌入孔と対応して嵌合ピンを立設してなり、嵌合ピンを親爪嵌入孔に抜き差しして親爪に子爪を着脱する親子爪、又は(b)親爪は子爪底面を接面する載置面に親爪嵌入孔を穿孔し、子爪はこの子爪底面に前記親爪嵌入孔と対応して子爪嵌入孔を穿孔してなり、嵌合ピンを親爪嵌入孔及び子爪嵌入孔に抜き差しして親爪に子爪を着脱する親子爪である。嵌合ピンと親爪嵌入孔又は子爪嵌入孔の働きは上述と同じであるため、説明は省略する。
【0032】
本発明では、子爪の成形のため、姿勢安定性を高めた子爪を親爪に締着した状態で、親子爪の半径方向位置を高い精度で決定、保持する爪成形補助具を開発した。すなわち、全親子爪をチャック本体の半径方向位置の所定半径を含む大きさを有する規制リングの片面又は両面に、所定半径の半径方向位置かつ各親子爪に対応した間隔で、子爪を親爪に締着する締着ボルトを挿入する各締着ボルト受に嵌合する突起を設けた爪成形補助具である。この爪成形補助具は、突起を各親子爪の子爪に設けてある締着ボルト受に差し込むことで、各親子爪の半径方向位置が子爪を介して高い精度で決定し、チャック本体に取り付ける全親子爪相互の位置関係を拘束、保持することで、被加工物を把持した状態で子爪の成形をすることができる。
【0033】
突起は、規制リングの片面に全親子爪の数だけ1組(親子爪が3基の場合は3個)設けることを基本とするが、残る片面に突起の半径方向位置が異なる1組を設けて、両面での使用を可能にするとよい。また、前述のように、通常片面には所定半径で揃えた1組の突起を配するのみであるが、可能であれば、1組の各突起の間に異なる所定半径で揃えた別の組の突起を配してもよい。この場合、両面に2組の突起を配すれば、両面合わせて合計4組の突起を設けることができ、親子爪の半径方向位置も4段階で決定、維持できるようになる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。図1は六角形柱状の子爪1と一部を切り欠いて載置面2を形成した親爪3とからなる本発明の親子爪4の一例(セレーション方式)を表す斜視図、図2は六角形柱状の子爪1と一部を切り欠いて載置面2を形成した親爪3とからなる本発明の親子爪4の別例(クロスキー方式)を表す斜視図、図3は同親子爪4の子爪1及び親爪3の組み付け関係を表す斜視図、図4は別例の親子爪4の子爪1及び親爪3の組み付け関係を表す斜視図、図5は更に別例の親子爪4の子爪1及び親爪3の組み付け関係を表す斜視図、図6は同親子爪4をチャック本体6に装着した状態を表す斜視図、図7は同親子爪4の側面図(子爪1のみチャック本体6の半径方向縦断面)、図8は同親子爪4の平面図(子爪1のみ横断面)であり、図9は同親子爪4の正面図(子爪1のみチャック本体6の半径直交方向縦断面)である。
【0035】
本発明に基づく親子爪4の外観は、図1及び図7〜図9に見られるように、従来相当品と変わりはなく、本例ではセレーション方式の親爪3を用いている。子爪1は、高さHtが約30mmの六角柱形状で、図3に見られるように、平面視中心に設けた段差のある締着ボルト受7から挿入した締着ボルト8を親爪3の締着ボルト孔9に螺合することで親爪3に締着する。本発明は、親爪3に対する子爪1の着脱構造にかかる技術であるから、親爪3は従来公知の各種固着構造を用いることができ、例えば図2に見られるように、親爪3は、底面にクロスキー34を設けたクロスキー方式としてもよい。
【0036】
子爪嵌入孔10は、締着ボルト受7を中心として、各側面11に対応する位置で、60度間隔に子爪底面5から6個穿孔している。このうち、点対称位置にある2個の子爪嵌入孔10,10を1組の孔単位12とすれば、本例は孔単位12を60度間隔で3組設けていることになる。各子爪嵌入孔10は、直径Rhを嵌合ピン13と略同径で約2mm、高さHhを嵌合ピン13より若干高い6mmとした円筒状である。本例の子爪1は、各側面11,11間の稜線を把持部位14とするので、6種類の被加工物に対応できる。
【0037】
親爪3及び子爪1は、嵌合ピン13を介した着脱構造であり、前記嵌合ピン13は両者の間に介在すればよい。このため、上記例示と異なり、例えば図4に見られるように、親爪3に締着ボルト孔9を中心とする点対称位置に親爪嵌入孔20を穿孔し、嵌合ピン13を子爪底面5から立設してもよいし、逆に図5に見られるように、親爪3には親爪嵌入孔20、子爪1には子爪嵌入孔10をそれぞれ穿孔し、各嵌入孔10,20双方に嵌合する嵌合ピン13を用いてもよい。対となる嵌入孔にそれぞれ嵌合する嵌合ピン13は各種ノックピンを用いることができ、通常はいずれのかの嵌入孔に勘合し、適宜交換可能にする場合に適している。
【0038】
子爪嵌入孔10は、締着ボルト受7を中心として、各側面11に対応する位置で、60度間隔に子爪底面5から6個穿孔している。このうち、点対称位置にある2個の子爪嵌入孔10,10を1組の孔単位12(図中一点鎖線枠で表示)とすれば、本例は孔単位12を60度間隔で3組設けていることになる。各子爪嵌入孔10は、直径Rhを嵌合ピン13と略同径で約2mm、高さHhを嵌合ピン13より若干高い6mmとした円筒状である。本例の子爪1は、各側面11,11間の稜線を把持部位14とするので、6種類の被加工物に対応できる。
【0039】
親爪3は、図1、図3、図6〜図9に見られるように、後部の2箇所に設けた段差のある固着ボルト受15,15から挿入した固着ボルト16,16を、2条のセレーション17,17(図1のみ表示、他図は省略表示)に挟まれた摺動溝18から突出させ、チャック本体6の案内溝19に締め付ける構成で、従来同種の親爪と基本的には変わりない。嵌合ピン13は、親爪3の前部を切り欠いて形成した平坦な載置面2に開孔した締着ボルト孔9を中心とし、点対称位置かつチャック本体6の半径直交方向に2本立設している。各嵌合ピン13,13は、直径Rp約5mm、高さHp5〜6mmの円柱状である。
【0040】
また、本発明の親子爪4は、嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10の嵌合によって子爪1の姿勢保持を図ることから、親爪3の載置面2に続く垂直面21と子爪1の側面11とを接面させる必要がない。このため、本例では、図1、図3及び図7に見られるように、前記載置面2と垂直面21との境界22を丸く連続的に形成し、子爪1の側面11が垂直面21に接触しないようにしている(特に図8参照)。丸い境界22は、負荷の集中を回避し、親爪3の構造強度を高める効果をもたらす。
【0041】
親爪3に対する子爪1の姿勢安定性は、嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10の嵌合によって実現する。しかし、嵌合ピン13が根元までしっかりと子爪嵌入孔10に嵌入しなければ、親爪3に対する子爪1のガタツキを招き、子爪1の姿勢が安定しない。そこで、図10〜図12(それぞれ図7〜図9相当図)に見られるように、親爪3の載置面2に、締着ボルト孔9から嵌合ピン13に至る平面視略半円形で深さ0.5〜1.0mmの凹面23を形成し、凹面23を除く残余面24を子爪底面周縁25に接面させるとよい。凹面23は締着ボルト8の締付代を構成し、締着ボルト8により子爪1を親爪3に押し付けやすくするため、子爪底面周縁25は前記残余面24に密着する。この結果、嵌合ピン13は根元までしっかりと子爪嵌入孔10に嵌入することになり、本発明の嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10の嵌合による回転力及び浮上力への対抗が最大限発揮されるようになる。
【0042】
子爪1の姿勢変更(又は初期の取付)作業は、次の手順による。まず、選択した子爪1の把持部位14(稜線)をチャック本体6の半径方向内向きに向け、嵌合ピン13,13を嵌入する孔単位12を選択する。従来のチャックでも見られるように、把持部位14は前記稜線をそのまま使うほか、被加工物に応じて適宜丸く加工したり、逆に切り欠いたりする。例えば、図13に見られるように、現在使用している把持部位26が丸く加工してあり、対面となる把持部位27を切り欠いている場合、稜線そのままの把持部位14を使うには子爪1を左又は右方向へ60度旋回させ、切り欠いた把持部位27を使うには子爪を180度旋回(反転)させることになる。孔単位12は60度間隔で、各子爪嵌入孔10は締着ボルト受7を中心に等しい半径距離で並べているから(図8参照)、把持部位14,26,27の選択に際して60度間隔で子爪1を旋回させている限り、選択した孔単位12はそれぞれ同じように嵌合ピン13,13を嵌入できる。
【0043】
次いで、嵌合ピン13に対して子爪1を押し込むように、親爪3の嵌合ピン13に対応する孔単位12の各子爪嵌入孔10,10へ前記嵌合ピン13,13を嵌入させる。このとき、嵌合ピン13が根元までしっかりと子爪嵌入孔10に嵌合するように押し込み、子爪底面5と載置面2とが密着(接面)することが大事である。これから、嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10は相似な構造であることが必要であるが、更に子爪嵌入孔10に対する嵌合ピン13の嵌入及び嵌脱を容易にするため、例えば嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10を若干テーパ形状に形成してもよい。
【0044】
こうして嵌合ピン13をしっかりと子爪嵌入孔10に嵌入し終えたら、子爪1の締着ボルト受15から挿入した締着ボルト8を親爪3の締着ボルト孔9に螺合することで、親爪3に対する子爪1の取付が完了する。子爪1の取り外しは、上述までの手順を逆にたどればよい。この一連の手順において、親爪3に対する子爪1の着脱は締着ボルト8の操作のみで、本発明の親子爪4における子爪1の交換作業は最も簡略化された作業で、親子爪4の利便性を十分に有していることがわかる。しかし、嵌合ピン13及び子爪嵌入孔10の嵌合は、これまでにない子爪1の高い姿勢安定性をもたらす。このように、本発明は、従来両立し難かった利便性及び姿勢安定性を両立させる技術であることが分かる。
【0045】
本発明は、親爪3に対する子爪1の姿勢安定性を図るために、親爪3の載置面2に立設した嵌合ピン13を子爪底面5に穿孔した子爪嵌入孔10に嵌入する構成にしている。これは、子爪1及び親爪3の着脱を嵌合ピン13のみで実現していることを意味し、これから、同一の親爪3に様々な子爪1を交換できる効果を得ることができる。図14は四角柱状の子爪28からなる本発明の親子爪4を表す図1相当斜視図、図15は三角柱状の子爪29からなる本発明の親子爪4を表す図1相当斜視図であり、図16は円柱状の子爪30からなる本発明の親子爪4を表す図1相当斜視図である。図14〜図16例示の親子爪4は、親爪3を共通の構成とし、各子爪28,29,30の子爪嵌入孔10が締着ボルト受7を中心かつ同じ半径距離で設けているが、子爪28,29,30毎に設定する把持部位14の関係から、子爪嵌入孔10の数及び配置が異なっている。
【0046】
四角柱状の子爪28は、上記例示の六角柱状の子爪1(図1参照)に比べて把持部位14となる稜線が少ないため、図14に見られるように、子爪嵌入孔10の組となる孔単位12は90度間隔で2組しか設けていない。これに対して、三角柱状の子爪29は、稜線の数は上記例示の六角柱状の子爪1(図1参照)の半分しかないが、各稜線が120度間隔であることから、孔単位12を60度間隔で同じ3組設けている(図3及び図15比較対照)。すなわち、六角柱状の子爪1は、各孔単位12を反転して左右の子爪嵌入孔10,10を入れ替えて全稜線に対応する計6方向で使用するが、三角形状の子爪29の各孔単位12は常に同じ向き、すなわち3稜線に対応する計3方向でしか使用しない。このほか、図示は省略するが、本発明は、共通の親爪に対して種々の多角形柱状の子爪を着脱しうる汎用性がある。
【0047】
これら多角形柱状の子爪に対し、円柱状の子爪では、孔単位の個数は任意である。これは、円柱状の子爪では、側面の任意の位置を把持部位として設定できるからである。これから、図16に見られるように、各孔単位12の間隔は等間隔(図示では30度間隔)を基本とするが、任意の位置に設定した把持部位14に合わせて孔単位12を不等間隔に設けることもできる。また、この場合でも、親爪3は共通のものを用いることができる(図1、図14〜図16比較対照)。
【0048】
円柱状の子爪の場合、個別に子爪嵌入孔を設けるのではなく、周方向に連通する円環状溝を連続する子爪嵌入孔とすることもできる。この円環状溝の直径の間隔で2本の嵌合ピンを立設していれば、各嵌合ピンは円環状溝に対して一義的に嵌入位置が決定されるからである。実際には、嵌合ピンは円環状溝の内周面及び外周面にしか接触しないため、ガタツキを防ぐ観点から実用的ではないが、把持部位を任意に設定できる円柱状の子爪を用いる場合、使用時毎に把持部位を決定、変更する自由度が得られる利点がある。
【0049】
本発明の親子爪4は、子爪1の姿勢安定性が優れているので、被加工物を把持した状態で子爪1を成形するため、子爪1に負荷を掛けるように押し引きしても問題がない。そこで、本発明の親子爪4では、図17に見られるように、各子爪4の締着ボルト受7に嵌合する突起31を規制リング32に設けた爪成形補助具33を用い、前記突起31を対応する各子爪1の締着ボルト受7それぞれに嵌合することで、被加工物を把持した状態で、子爪1相互の位置関係を決定、保持して、高い精度で各子爪1を成形することができる。
【0050】
この爪成形補助具33は、全親子爪4を揃えたいチャック本体6の半径方向位置における半径R1(図18参照)及び半径R2(図19参照)を含む大きさの規制リング32からなる。この規制リング32両面には、それぞれ前記半径R1又は半径R2の半径方向位置かつ親子爪4に対応する間隔(例示は120度の等間隔)で、各子爪1の締着ボルト受7に嵌合する突起31を設けている。本例の各突起31は120度間隔で、両面で60度ずつずらしているが、両面の突起31,31を同じ位置に設けてもよい。
【0051】
各親子爪4は、チャック本体6の案内溝19に沿って移動可能な状態(親爪3の固定ボルト16を緩めた状態)とし、爪成形補助具33で設定したい半径R1又はR2の突起31を各子爪1の締着ボルト受7に差し込むことで、簡単かつ迅速に同じ半径方向位置に設定できる。そして、各親子爪4をチャック本体6の半径方向に移動させて被加工物を把持した状態を作りだし、被加工物に応じて各子爪を成形する。このように、子爪1及び親爪3を一体に、すなわち親子爪4を直接半径方向位置に設定できるのも、親爪3に対する子爪1の姿勢安定性を高めた本発明によるところが大きい。
【0052】
【発明の効果】
本発明の親子爪は、親子爪の利便性を損ねることなく、実運用上、親爪に対する子爪の姿勢安定性を大きく改善する。例えば、親爪の載置面に嵌合ピンを立設したり、対応する子爪嵌入孔を子爪底面に穿孔することは、既存の親子爪でも可能であり、本発明は新製又は既製の親子爪、いずれにも適用できる利点がある。また、嵌合ピンのみによる着脱構造は、共通の親爪を用いながら、複数種類の子爪を適宜交換して使用できる効果を生み、使用上の自由度が高い利点をもたらす。このように、本発明は、従来の親子爪では難しかった利便性と子爪の姿勢安定性とを両立させる効果があり、前記効果を実現する着脱構造を広く適用できる利点がある。
【0053】
また、本発明の爪成形補助具は、各子爪の締着ボルト受に対応する突起を嵌合するだけで、簡易かつ精度よく子爪相互の位置関係を決定し、前記位置関係で全子爪を拘束、保持できるので、被加工物に対する把持精度向上を図る子爪の成形が容易にできるようになる。上記親子爪は、比較的小さなチャックを構成する場合に適しており、子爪の半径方向位置の調整範囲はそれほど広くはない。このため、突起の半径位置が異なる本発明の爪成形補助具を複数種類用意することにより、およそ必要な子爪の成形が容易に実現できるようになる。このように、本発明の爪成形補助具は、親子爪の使用を助け、より効率的な旋盤作業等を実現する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の親子爪の一例(セレーション方式)を表す斜視図である。
【図2】本発明の親子爪の別例(クロスキー方式)を表す斜視図である。
【図3】同親子爪の子爪及び親爪の組み付け関係を表す斜視図である。
【図4】別例の親子爪の子爪及び親爪の組み付け関係を表す斜視図である。
【図5】別例の親子爪の子爪及び親爪の組み付け関係を表す斜視図である。
【図6】同親子爪をチャック本体に装着した状態を表す斜視図である。
【図7】同親子爪の側面図(子爪のみチャック本体の半径方向縦断面)である。
【図8】同親子爪の平面図(子爪のみ横断面)である。
【図9】同親子爪の正面図(子爪のみチャック本体の半径直交方向縦断面)である。
【図10】親爪の載置面に凹面を形成した親子爪の図7相当側面図である。
【図11】親爪の載置面に凹面を形成した親子爪の図8相当平面図である。
【図12】親爪の載置面に凹面を形成した親子爪の図9相当正面図である。
【図13】本例の親子爪における子爪の姿勢変更を表した斜視図である。
【図14】四角柱状の子爪からなる本発明の親子爪を表す図1相当斜視図である。
【図15】三角柱状の子爪からなる本発明の親子爪を表す図1相当斜視図である。
【図16】円柱状の子爪からなる本発明の親子爪を表す図1相当斜視図である。
【図17】爪成形補助具を表す斜視図である。
【図18】半径R1で並ぶ突起によって親子爪の位置調整を説明するチャックの正面図である。
【図19】半径R2で並ぶ突起によって親子爪の位置調整を説明するチャックの正面図である。
【符号の説明】
1 六角形柱状の子爪
2 載置面
3 親爪
4 親子爪
5 子爪底面
6 チャック本体
7 締着ボルト受
10 子爪嵌入孔
12 孔単位
13 嵌合ピン
14 把持部位
20 親爪嵌入孔
21 垂直面
22 境界
23 凹面
24 残余面
25 子爪底面周縁
28 四角柱状の子爪
29 三角柱状の子爪
30 円柱状の子爪
31 突起
32 規制リング
33 爪成形補助具
Claims (5)
- チャック本体に固着する親爪と、該親爪に締着して被加工物を把持する子爪とからなるチャック用親子爪において、親爪及び子爪を一方又は双方に嵌合ピンを嵌合又は嵌脱して親爪に子爪を着脱することを特徴とするチャック用親子爪。
- 親爪は子爪底面を接面する載置面に嵌合ピンを立設し、子爪は該子爪底面に前記嵌合ピンと対応して子爪嵌入孔を穿孔してなり、嵌合ピンを子爪嵌入孔に抜き差しして親爪に子爪を着脱する請求項1記載のチャック用親子爪。
- 親爪は子爪底面を接面する載置面に親爪嵌入孔を穿孔し、子爪は該子爪底面に前記親爪嵌入孔と対応して嵌合ピンを立設してなり、嵌合ピンを親爪嵌入孔に抜き差しして親爪に子爪を着脱する請求項1記載のチャック用親子爪。
- 親爪は子爪底面を接面する載置面に親爪嵌入孔を穿孔し、子爪は該子爪底面に前記親爪嵌入孔と対応して子爪嵌入孔を穿孔してなり、嵌合ピンを親爪嵌入孔及び子爪嵌入孔に抜き差しして親爪に子爪を着脱する請求項1記載のチャック用親子爪。
- チャック本体に固着する親爪と、該親爪に締着して被加工物を把持する子爪とからなるチャック用親子爪の半径方向位置を決定、保持する爪成形補助具において、全親子爪をチャック本体の半径方向位置の所定半径を含む大きさを有する規制リングの片面又は両面に、所定半径の半径方向位置かつ各親子爪に対応した間隔で、子爪を親爪に締着する締着ボルトを挿入する各締着ボルト受に嵌合する突起を設けたことを特徴とする爪成形補助具。
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