JP2004141774A - 土壌又は底質の浄化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質に還元性金属を添加してメカノケミカル処理することにより脱ハロゲン化処理して浄化する方法において、パッキング現象を防止して、良好な処理効果を得る。
【解決手段】有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質を非加熱手段により乾燥し、得られた乾燥物に金属を加えて粉砕する。
【解決手段】有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質を非加熱手段により乾燥し、得られた乾燥物に金属を加えて粉砕する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌又は底質の浄化方法に係り、特に有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質に還元性金属を添加して脱ハロゲン化処理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃棄物の焼却によって発生する飛灰にはダイオキシン類が含まれている。このため、廃棄物焼却工場の周辺土壌は、煙突から排出される排ガスに含まれる飛灰の降下により、ダイオキシン類で汚染されている場合がある。また、電気設備の製造もしくは使用工場などの周辺土壌は、絶縁油として利用されたPCB類で汚染されている場合がある。
【0003】
これらのダイオキシン類やPCB類などの多塩素化芳香族化合物は、高い毒性を示すため、無害化処理する必要がある。
【0004】
また、ダイオキシン類やPCB類に限らず、洗浄剤として用いられる多塩素化エチレン類、農薬などに用いられる多塩素化フェノール、多塩素化ベンゼン、難燃剤の焼却処理によって発生する臭素化ダイオキシン類などの有機ハロゲン化物質も毒性が高いことから、これらの有機ハロゲン化物質で汚染された土壌、焼却灰、焼却飛灰、海域、湖沼や河川の底質、焼却炉解体残渣等についての処理が検討されている。
【0005】
従来、有機ハロゲン化物質を脱ハロゲン化処理する技術として、次の▲1▼〜▲4▼の通り、汚染物質に還元性金属や生石灰などを加えて磨砕することによって活性化エネルギーを付与し、実質的に非加熱で還元脱ハロゲン化して無害化を図るメカノケミカル式脱ハロゲン無害化処理技術が提案されている。
【0006】
▲1▼ 有毒物質と適当な試薬の混合物に対し機械的な活性化を施し、無毒な最終生成物を生産する方法。機械的な活性化は、好ましくはボールミル等の機械ミル内で行われる(特表平8−504665)。
【0007】
▲2▼ ダイオキシン汚染土壌に生石灰を加え、粉砕操作で反応物質に機械的エネルギーを与え、活性化させることにより、非加熱の状態でダイオキシン類の脱塩素無害化を図る方法(特開2000−70401)。
【0008】
▲3▼ ダイオキシン汚染土壌に還元剤としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄又はアルミニウムなどを添加すると共に、水素供与体としてアミンなどを添加し、粉砕操作で反応物質に機械的エネルギーを与えて活性化させることにより、非加熱の状態でダイオキシン類の脱塩素無害化を図る方法(特表2001−517641)。
【0009】
▲4▼ アミンの存在下でハロゲン化炭化水素を還元性金属及び水素供与化合物と反応させる方法。ハロゲン化炭化水素をリチウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛又は鉄と反応させるのが好ましい。金属の種類に応じて、還元脱ハロゲン化反応は室温から400℃の範囲で行われる(特開2000−225385)。
【0010】
【特許文献1】
特表平8−504665
【特許文献2】
特開2000−70401
【特許文献3】
特表2001−517641
【特許文献4】
特開2000−225385
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
有機ハロゲン化物質で汚染された土壌や、海域、湖沼又は河川の底質をメカノケミカル処理によって実質的に非加熱で脱ハロゲン無害化する際、パッキング現象が発生する場合がある。パッキング現象とは、粉砕容器内部で、被処理物が粉砕容器内壁や粉砕用ボールなどに固着する現象である。このパッキング現象が生じると、事実上粉砕は進行しなくなる。メカノケミカル処理は、粉砕により固体間の反応を促進するものであるため、パッキング現象により被処理物が固着すると被処理物の粉砕が行えなくなり、脱ハロゲン化処理効果を得ることができなくなる。また、パッキング現象は、粉砕容器内壁や粉砕用ボールなどへの固着で、処理後、処理物を粉砕容器から排出することが困難となるなど、多くのトラブル発生要因となる。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質に還元性金属を添加してメカノケミカル処理することにより脱ハロゲン化処理して浄化する方法において、パッキング現象を防止して、良好な処理効果を得る方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の土壌又は底質の浄化方法は、有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質を非加熱処理により浄化する方法であって、前記土壌又は底質を非加熱状態にて乾燥し、得られた乾燥物に金属を加えて粉砕することを特徴とする。
【0014】
本発明者らは、メカノケミカル処理におけるパッキング現象について検討した結果、その主たる原因は、被処理物に含まれる水分であり、被処理物の含水率によってパッキング誘発の有無が決定することを確認し、適切な事前乾燥によって、このパッキング現象を抑止することができることを見出した。
【0015】
なお、土壌又は底質の乾燥を非加熱状態にて行うことにより、加熱のための設備が不要であり、コスト低減を図ることができると共に、加熱処理時の乾燥物の飛散も無い。この乾燥は風乾及び/又は天日干しが好適である。
【0016】
メカノケミカル処理時のパッキング現象を確実に防止するために、土壌又は底質は、非加熱手段により含水率5〜15%程度にまで乾燥した後、メカノケミカル処理に供することが好ましい。この乾燥物の含水率とは、次式で算出される値である。
【0017】
【数1】
【0018】
メカノケミカル処理で用いる金属としては、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム及び鉄よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の還元性金属が挙げられる。
【0019】
ところで、このような還元性金属を用いて土壌又は底質のメカノケミカル処理を実際に現場で行う場合、還元剤として添加した金属が水分との反応によって水酸化物等に変化することにより、活性低下を招くことがしばしば起こる。即ち、メカノケミカル処理で用いられる還元性金属は、いずれも常温で水と反応し、還元力を低下する性質を有している。本発明においては、土壌又は底質をパッキングしない程度にまで事前乾燥した後に、必要に応じて酸化カルシウムを含有する脱水剤を用いて脱水処理することが好ましい。このように乾燥後の被処理物を脱水処理することにより、被処理物中の水分による還元性金属の活性低下を防止して、還元性金属の還元力を有効に発揮させ、高い処理効果を得ることができる。
【0020】
なお、土壌又は底質に対し乾燥処理することなく酸化カルシウム等の脱水剤を添加して脱水処理したのでは、脱水剤が著しく多量に必要になり、コスト高であると共に、土壌又は底質に多量の脱水剤が添加されることにより被処理物の体積も徒に増加する。また、被処理物の体積が増えると、これに応じて、還元性金属の必要添加量が増加し、コスト高となる。
【0021】
土壌又は底質を予め風乾等により乾燥した後、脱水剤によって脱水処理することにより、比較的少ない脱水剤添加量で被処理物を効率的に脱水処理することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の土壌又は底質の浄化方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明においては、まず、有機ハロゲン化物質で汚染された土壌、又は海域、湖沼や河川の底質を非加熱状態にて乾燥する。この乾燥方法としては、乾燥ヤードに被処理物を広げて風乾及び/又は天日干しする方法が好適である。この際、バックホーなどの掘削車両や掘削機械などによって被処理物をほぐしながら風乾及び/又は天日干しすると効果的である。通風装置や空調装置を備えた屋内ヤードにて風乾を行ってもよい。
【0024】
本発明では、被処理物をその含水率が15%以下、特に10%以下となるように乾燥することによって、被処理物の成分(例えば土壌の砂質、シルト分、粘土分の含有率)に関わらず、パッキングを誘発することなく安定した粉砕処理が可能となる。なお、この風乾及び/又は天日干しによる乾燥は、乾燥後の被処理物の含水率が5〜15%、特に7〜10%程度となるように行うのが好適である。
【0025】
被処理物を乾燥した後、乾燥物に金属、好ましくはナトリウム、マグネシウム、アルミニウム及び鉄よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の還元性金属を添加し、粉砕処理(メカノケミカル処理)を施し、非加熱で有機ハロゲン化物質の脱ハロゲン化を行う。
【0026】
この粉砕を行う粉砕機としては、振動ボールミル、転動ボールミル、遊星ポットミル、ジェットミル、ロッドミル、タワーミルなどの微粉砕が可能なミルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、処理時間は、被処理物の性状、処理量、粉砕機の機種等に応じて適宜決定される。
【0027】
前述の如く、このメカノケミカル処理において、被処理物が水分を多く含んでいると、還元性金属がこの水分と反応して水酸化物等に変化し、その還元能力の低下を招く。従って、乾燥後の被処理物の含水率が高目であったり、特に高度に有機ハロゲン化物質を除去する場合には、メカノケミカル処理に先立ち、脱水剤を用いて脱水処理を施してもよい。
【0028】
脱水処理に用いられる脱水剤としては、酸化カルシウム(生石灰)、焼成ドロマイト、硫酸マグネシウム等が挙げられるが、生石灰(酸化カルシウム)が安価で好適である。
【0029】
脱水剤は被処理物の乾燥物の含水量に対して化学当量以上、例えば、化学当量の1.01〜2倍、特に1.2〜1.5倍程度添加することが好ましく、このような化学当量以上の脱水剤の添加で、被処理物を含水率2%以下とすることも可能である。
【0030】
この脱水処理は、乾燥後の被処理物に所定量の脱水剤を加え、これらを十分に混合するために粉砕機で粉砕して行うことが好ましい。この場合、本発明の浄化処理を回分処理で行う場合には、メカノケミカル処理のための粉砕機でこの脱水処理を行うことができる。
【0031】
このような脱水処理を行うことにより、還元性金属の活性低下を防止すると共に、パッキング現象を確実に防止することができる。
【0032】
この還元性金属によるメカノケミカル処理に当たり、事前に反応性評価試験を実施し、水素供与体の添加が必要である場合は、アミン、アミノアルコール、アミノ酸、糖類、多価アルコールなどの水素供与体を、別途被処理物に添加しても良い。この場合、水素供与体の添加量は必要とされる水素供与能に応じて適宜決定される。ただし、土壌のように、そのマトリックス内に水素供与能を有する官能基(水酸基)等を有するシリカやアルミナを含む場合は、一般に、この水素供与体の添加は不要である。
【0033】
還元性金属は、被処理物との接触効率を高めるために過剰添加とすることが好ましく、被処理物の性状によっても異なるが、通常は、被処理物(乾燥基準)に対して0.5〜15重量%、特に0.5〜10重量%とすることが好ましい。
【0034】
メカノケミカル処理に当たり、このように還元性金属を過剰量添加した場合、メカノケミカル処理後の処理物には、未反応の還元性金属が微粉状で分散して残存する。このような未反応還元性金属を含む処理物を埋め立て等で最終処分した場合、処理物中の未反応還元性金属が雨水、地下水等と接触して、可燃性の水素ガスを発生する可能性がある。そこで、メカノケミカル処理後は、これらの未反応の還元性金属を水和処理することが好ましい。
【0035】
未反応還元性金属の水和処理としては、処理物を水洗して濾過する方法も考えられるが、この方法では水洗容器やスラリーポンプ、脱水機などの大型装置が必要となるばかりでなく、洗浄排水の処理設備が必要となり、設備や運転費の大幅な増加をもたらす。
【0036】
還元性金属はいずれも水和物とすれば、安全な化合物となるため、洗い流すまでの必要はない。従って、未反応還元性金属の水和処理は、処理物に、水和に十分な程度の水(酸性水溶液であっても良い。)を添加して混練し、未反応還元性金属を安定な物質に変換する方法が好ましい。
【0037】
水和処理は、メカノケミカル処理を実施した粉砕機に水を直接添加し、混合をかねて粉砕することにより行うこともできる。この方法は、別途、水の添加混合装置を用いる必要がなく有効な方法である。しかしながら、処理対象によっては、水の添加により、粉砕時凝集して粉砕効率の低下や排出阻害を招くものもある。このような場合には、メカノケミカル処理を実施した粉砕機の後段に、剪断的に水の混合が達成されるミキサー、例えばニーダーやセメントミキサーなどの混合装置を別途設置するのが好ましい。
【0038】
この場合、水の添加混合装置内部(可能な場合は粉砕機で兼用)には水との反応で発生する水素ガス濃度が燃焼下限(4モル%)未満となるよう、空気もしくは窒素などの不活性ガスなどをパージしながら行うことが、未反応還元性金属の処理時の安全を確保する上で好ましい。
【0039】
なお、この未反応還元性金属の水和処理のための水として、酸性水溶液を用いる場合には、未反応還元性金属の水和で生じた水酸化物及び被処理物の脱水剤として添加した生石灰等の中和処理をも行える。この場合、酸としては硫酸、塩酸、硝酸などを用いることができ、0.01〜50重量%程度の水溶液として用いることが好ましい。
【0040】
前述の如く、未反応還元性金属の水和処理のための水の添加量は、脱水剤として添加した生石灰と、未反応還元性金属の水和に十分な量であれば良いが、通常、脱ハロゲン化のために被処理物に添加した還元性金属及び添加した生石灰の1〜3倍当量程度の水を添加することが好ましい。また、酸性水溶液を用いる場合、水分として上記の量を確保しつつ、還元性金属の水酸化物及び脱水剤として加えた生石灰を中和するのに必要な量の酸を加えた水溶液を調製して用いるのが好ましい。必要な酸量は、被処理物を用いた事前の予備実験で決定しておくことができる。
【0041】
このような水和処理のための水の添加混練操作は、未反応還元性金属の水和処理のみならず、処理物のベルトコンベアでの搬送や運搬車両への積み込み、最終処分場への埋め立て作業時における粉塵防止にも有効である。また、酸性水溶液を用いて処理物を中和処理した場合には、アルカリ性の浸出水発生を防止することもでき、処理物からの重金属類の溶出防止にも有効である。
【0042】
以下に、未反応還元性金属の水和処理例について具体的に説明する。
【0043】
(1) メカノケミカル処理用の回分式粉砕機(ミル)を利用して未反応還元性金属の水和処理を行う場合には、
▲1▼ 乾燥された被処理物の所定量をミルに投入する工程;
▲2▼ 必要に応じて脱水用の生石灰を投入して、粉砕することにより脱水処理する工程;
▲3▼ 還元性金属の所定量をミルに投入する工程;
▲4▼ 必要に応じて水素供与体の所定量を投入して粉砕することにより、メカノケミカル処理する工程;及び
▲5▼ 未反応還元性金属の水和処理に必要かつ十分な量の水(又は酸性水溶液)をミルに投入し、水の分散混合と水和反応の実施を目的として粉砕を行う工程、により処理するのが好ましい。
【0044】
水の添加は、全量を一度に添加しても良いが、水和反応による急激な水素の発生や、発熱によってミル内部が高温になることを避ける場合には、徐々に添加する方法が有効である。また、この時、ミル内部で発生した水素の燃焼混合気を形成しないよう、十分な量の空気又は窒素などの不活性ガスでパージすることが好ましい。
【0045】
(2) メカノケミカル処理用の回分粉砕機を用い、別途水和処理用ミキサーを用いる場合には、
▲1▼ 乾燥された被処理物の所定量をミルに投入する工程;
▲2▼ 必要に応じて脱水用の生石灰を投入して、粉砕することにより脱水処理する工程;
▲3▼ 還元性金属の所定量をミルに投入する工程;
▲4▼ 必要に応じて水素供与体の所定量を投入して粉砕することにより、メカノケミカル処理する工程;
▲5▼ メカノケミカル処理物をミルから取り出し、後続の剪断型のミキサーに移し、このミキサーに未反応還元性金属の水和処理に必要かつ十分な量の水(又は酸性水溶液)を投入し、水の分散混合と水和反応の実施を目的として混合を行う工程;
により処理するのが好ましい。
【0046】
この場合、メカノケミカル処理物は直接ミキサーに移し替えてもよく、中間ホッパーなどの容器に一度受けた後、ミキサーに移し替えてもよい。
【0047】
水の添加は、全量を一度に添加しても良いが、水和反応による急激な水素の発生や、発熱によってミキサー内部が高温になることを避ける場合には、徐々に添加する方法が有効である。また、この時、ミキサー内部で発生した水素の燃焼混合気を形成しないよう、十分な量の空気又は窒素などの不活性ガスでパージすることが好ましい。
【0048】
(3) メカノケミカル処理に連続粉砕機(ミル)を用いる場合には、次の▲1▼,▲2▼の工程により処理するのが好ましい。
▲1▼ 乾燥された被処理物及び還元性金属、必要に応じて水素供与体を所定量の割合でミルに投入し、メカノケミカル処理に必要な滞留時間で粉砕処理することにより連続的にメカノケミカル処理を行う。なお、被処理物は、非加熱手段による乾燥後、必要に応じて更に脱水剤により脱水処理しておく。
▲2▼ このミルから連続的に排出されるメカノケミカル処理物を後続の剪断型のミキサーに投入し、このミキサーに未反応還元性金属の水和処理に必要かつ十分な量の水(又は酸性水溶液)を投入し、水の分散混合と水和反応の実施を目的として混合を行う。
【0049】
この場合、メカノケミカル処理物は直接連続的にミキサーに移し替えてもよく、中間ホッパーなどの容器に一度受けた後、ミキサーに移し替えてもよい。
【0050】
連続的に移送する場合、ミキサーは連続処理可能であることが必要であり、メカノケミカル処理物及び水を連続的にミキサーに投入して連続的に水和処理を行う。中間ホッパーで一度受けた場合には、前段のメカノケミカル処理用ミルの処理工程に影響を与えない程度の処理能力を有する回分型のミキサーを用いることも可能である。回分式の場合、水の添加は、全量を一度に添加しても良いが、水和反応による急激な水素の発生や、発熱によってミキサー内部が高温になることを避ける場合には、徐々に添加する方法が有効である。また、いずれの場合も、ミキサー内部で発生した水素の燃焼混合気を形成しないよう、十分な量の空気又は窒素などの不活性ガスでパージすることが好ましい。
【0051】
なお、上記(1)〜(3)の方法において、未反応還元性金属の水和処理を行うミル又はミキサーのガス排出口から排出される水素ガスは燃焼下限界以下の濃度であるので、大気に放出しても引火の危険はない。排ガス中に土壌の同伴が多い場合には、集塵機を介して大気放出すれば良い。また、低濃度ではあるが、可燃性水素の処理が必要な場合には、排ガス燃焼装置を用いて酸化処理した後、集塵して大気放出すれば良い。排ガス燃焼装置と集塵機の配置は、どちらが前段に設置されても構わない。
【0052】
ところで、このような還元性金属を用いる脱ハロゲン化処理において、還元性金属として用いられるマグネシウムやアルミニウムは、その形態によっては消防法で定めるところの危険物第2種(可燃性固体)となる。しかしながら、マグネシウムやアルミニウムはその粒度、形状により危険性が異なることから、総務省令で定める小ガス火炎着火試験において、10秒以内に着火し、かつ燃焼を継続するもの以外は危険物に該当しないとされている。従って、一定以上の粒径を持つ粒状マグネシウムは危険物に該当しない。また、危険物の除外規定として、マグネシウムにおいては目開きが2mmの網ふるいを通過しない塊状のもの、直径が2mm以上の棒状のものは危険物に該当しない、実際に、粒径500μm以上の画分が25%以上であって、355μm未満の画分が15%未満である粒状マグネシウム(山石金属株式会社製「Mg−10」)は、小ガス火炎着火試験の結果から非危険物として一般に流通している。
【0053】
同様に、アルミニウムにおいては目開きが150μmの網ふるいを通過するものが50%未満のものは、消防法上の危険物ではない。
【0054】
これは、還元性金属の粒径が大きくなった場合、逆に比表面積(単位量当たりの表面積)が小さくなるため、反応速度は小さくなり、酸化や水和によって生じる反応熱の蓄積が、反応を連鎖促進するまでに達しないためである。
【0055】
従って、下記(A),(B)のような比較的粗粒の還元性金属粉であれば、運搬、貯蔵、反応器への供給に際して、安全に取り扱うことが可能となるため、本発明で用いる還元性金属として好適である。
【0056】
(A) 粒径500μm以上の画分が20%以上で、粒径355μm未満の画分が15%未満の粒状マグネシウム
(B) 粒径150μm未満の画分が50%未満のアルミニウム粉。
【0057】
反応性の低い、粗粒の還元性金属を使用することは、必要とされる還元力の低下を招くことが懸念される。しかしながら、本発明におけるメカノケミカル処理は、粉砕による機械的エネルギーを付与して固体同士の反応を促進するものであり、反応性の低い粗粒の還元性金属を用いても、メカノケミカル処理の過程で粉砕されて反応性の高い微粉となるため、還元反応は十分に進行する。しかも、脱ハロゲン化反応によって還元性金属の粒子表面に生成する反応生成物の被膜を粉砕によって除去することができるため、常に活性の高い還元性金属表面を維持することができ、高い反応効率を維持可能となる。更に、表面の生成物阻害を除外しつつ、活性表面を常に更新しながら反応を行えるため、還元性金属の有効利用率も高くすることができ、処理に要する還元性金属の添加量も低く抑えることが可能となる。
【0058】
このように、反応時に還元性金属を粉砕して活性化させる場合は、反応器内には不活性な被処理物マトリックス(例えば、被処理物がダイオキシン類汚染土壌である場合、土壌自体)が還元性金属に比べて多量に存在し、大きな熱容量を付与しているため、脱ハロゲン化反応の過程で、還元性金属の脱塩素化反応や、副次的に進行する可能性のある還元性金属の空気酸化反応で生じる反応熱で大幅な温度上昇を招く恐れはない。
【0059】
また、還元性金属を比表面積が大きく、反応性の高い微粉状で貯蔵しておくと危険であるばかりでなく、貯蔵中に空気中の酸素による酸化や水分による水和反応によって性能低下する割合が飛躍的に大きくなる。そのため、使用時には、還元性が低下しているという事態が発生するが、上述のような粗粒の還元性金属を用いることは、還元性金属の貯蔵時における性能低下防止にも効果的である。
【0060】
なお、本発明において、用いる還元性金属は、前述の(A),(B)のような粗粒であれば良く、その粒径の上限については特に制限はないが、メカノケミカル処理における粉砕エネルギーや取り扱い性を考慮した場合、マグネシウムは平均粒径500〜5000μm程度であることが好ましく、アルミニウムは平均粒径150〜5000μm程度であることが好ましい。
【0061】
また、本発明においては、被処理物中に重金属類が含まれている場合、被処理物に更に重金属固定化剤を添加して脱ハロゲン化と共に、重金属類の固定化を行うことが好ましい。
【0062】
この場合、重金属固定化剤は、メカノケミカル処理前、処理中、又は処理後の任意の段階で被処理物に添加することができる。
【0063】
用いる重金属固定化剤は、無機系重金属固定化剤であっても、有機系重金属固定化剤であっても良く、無機系重金属固定化剤としては、例えば次のようなものが挙げられる。
【0064】
正リン酸(オルソリン酸)、ポリリン酸、メタリン酸、次リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、過リン酸、第一リン酸ソーダ、第二リン酸ソーダ、第三リン酸ソーダ、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウム、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第一リン酸マグネシウム、第二リン酸マグネシウム、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、過リン酸石灰、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等のリン酸化合物;焼き石膏、ポルトランドセメント、早強セメント、ジェットセメント、高炉セメント、アルミナセメント等のセメント類;各種活性白土、合成珪酸、天然珪酸加工物等の無機吸着剤;汎用の珪酸ソーダ、珪酸カリウム等の水溶性珪酸塩等の水ガラス。
【0065】
また、有機系重金属固定化剤としては、ジチオカルバミン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、ピペラジンビスジチオカルバミン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、テトラ(ジチオカルボキシ)テトラエチレンペンタミンのナトリウム塩及びカリウム塩、(エチレンアミノ)ジチオカルボキシナトリウム−エチレンベンジルアミン−エチレンアミン共重合体、(エチレンアミノ)ジチオカルボキシカリウム−エチレンベンジルアミン−エチレンアミン共重合体等のキレート系重金属固定化剤等を用いることができる。
【0066】
これらの重金属固定化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0067】
重金属固定化剤の添加量は用いる薬剤の種類や被処理物の性状により異なるが、通常の場合、無機系重金属固定化剤であれば、その添加量は被処理物(乾燥基準)に対して有効成分量として0.1〜50重量%、特に1〜20重量%とするのが好ましい。また、有機系重金属固定化剤であれば、その添加量は被処理物(乾燥基準)に対して有効成分量として0.1〜30重量%、特に1〜10重量%とするのが好ましい。
【0068】
重金属固定化剤による重金属の固定化機構は、重金属固定化剤により異なることがある。リン酸系重金属固定化剤は、鉛等の重金属類を不溶性のリン酸塩とし、更に被処理物中に存在するカルシウムと反応して長期的にはより安定な鉱物であるヒドロキシアパタイトを形成して重金属類を固定化する。また、キレート系重金属固定化剤は、鉛等の重金属類を不溶性の塩として固定化する。
【0069】
重金属固定化剤の添加時期は、用いる重金属固定化剤の性状に応じて、十分な効果が得られるように適宜決定する。即ち、無機系重金属固定化剤はメカノケミカル処理に拘わらず効果を発揮するため、メカノケミカル処理の処理前、処理中、処理後のいずれでも良い。一方、有機系重金属固定化剤の中にはメカノケミカル処理により一部が分解することにより、重金属固定化効果が損なわれるものがある。この場合には、添加量を多くするか、メカノケミカル処理後に添加することが望ましく、添加量を多くする経済性を考えた場合、メカノケミカル処理後に添加することが望ましい。
【0070】
リン酸塩などのように固体状で添加可能な重金属固定化剤の場合、還元性金属等を加えてメカノケミカル処理する粉砕機に直接加えることができる。この場合、粉砕機の効果で薬剤の分散混合効果を得ることができ、好都合である。重金属固定化剤の添加は還元性金属の供給時でもメカノケミカル処理中でも構わない。
【0071】
重金属固定化剤としてのキレート剤やリン酸塩などを水溶液として用いる場合、水溶液の水が還元性金属と反応して水酸化物となり、還元能力の低下を招く。従って、水溶液系の重金属固定化剤を用いる場合は、還元性金属によるメカノケミカル処理で脱ハロゲン化反応を終えた後に添加することが望ましい。
【0072】
なお、重金属固定化剤を水溶液として用いる場合、重金属固定化剤量は、被処理物質中に含まれる重金属濃度に応じて決定される。一方、水は被処理物質の飛散を防止したり、ベレット化することによってハンドリングを容易としたりするために必要な量として決定される。従って、重金属固定化剤を水溶液として添加する場合、上記の各々の要求を満足するような量で水溶液を調製しておけばよい。あるいは、重金属固定化処理装置の前段にラインミキサーなどを設置し、その入口において適当な量の重金属固定化剤と、水を供給し、その場で水溶液とするような方法も採用することができる。また、重金属固定化処理装置に重金属固定化剤及び水の必要量を別々に供給し、装置内部の混合機構を利用して分散させることも可能である。
【0073】
このようにして重金属固定化剤を添加することにより、還元性金属により溶出が促進される鉛等の重金属類を固定化し、その溶出を確実に防止することができる。
【0074】
重金属固定化剤としてリン酸系重金属固定化剤を用いた場合には、水の添加により重金属の不溶性塩を生成させる効果も奏される。
【0075】
なお、重金属固定化剤を水溶液としてメカノケミカル処理後に添加する場合、重金属類の固定化と前述の水添加による未反応還元性金属の水和処理とを兼用することができる。
【0076】
【実施例】
以下に実験例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0077】
実験例1
表1に示す如く、粒径の細かい粘土質含有量の異なる3種類の土壌(含水率30%)を準備し、各々の土壌を1〜3日風乾して含水率5%、10%、15%の乾燥物を得た。
【0078】
乾燥後の土壌及び未乾燥の土壌の各々を、遊星ボールミル容器内に入れて粉砕処理し、粉砕処理時のパッキング現象の発生の有無を確認し、結果を表1に示した。
【0079】
表1に示されるように土壌の質によらず、含水率15%以下の乾燥物であればパッキング現象が抑制される。
【0080】
【表1】
【0081】
実験例2
実験例1において、粘土質が多い土壌と粘土質が中程度の土壌の含水率10%の乾燥物と含水率15%の乾燥物の各々に、脱水剤として生石灰を土壌中の水分量の化学当量に対して表2に示す量添加混合した後、実験例1と同様にしてパッキング現象の発生の有無を確認する実験を行い、結果を表2に示した。
【0082】
表2より、乾燥物を更に脱水剤で脱水処理することにより、含水率が比較的高い乾燥物であってもパッキング現象を確実に防止することができることがわかる。
【0083】
【表2】
【0084】
実施例1
下記性状の土壌を試料として本発明による浄化処理を行った。
【0085】
[試料土壌]
含水率:30%
ダイオキシン類濃度:685,000pg/g
【0086】
試料土壌を風乾して表3に示す含水率の乾燥物を得、この乾燥物50g(乾燥基準)に、脱水剤として生石灰を表3に示す量加え、乾燥を目的として遊星ボールミルにて、非加熱で15分間粉砕した。この乾燥処理後の試料に、還元性金属として金属マグネシウムのグラニュールを3g添加し、同じ遊星ボールミルで非加熱のまま2時間粉砕してメカノケミカル処理を行った。メカノケミカル処理後、粉砕による摩擦によって、ミル内の温度は72℃に上昇していた。
【0087】
得られた処理土壌についてダイオキシン類濃度を分析し、結果を表3に示した。また、この処理土壌に環境庁告示第46号に定める溶出試験を実施し、結果を表3に示した。
【0088】
なお、メカノケミカル処理後の処理土壌を多量の水に投入したところ、微細な気泡の発生が観察されたが、処理土壌50gと水10gとを混練したものを水中に投入したところ、ここでは微細な気泡の発生は確認されず、水との混練によって、未反応で残存している金属マグネシウムが水和し、もはや水素を発生しなくなったことが確認された。
【0089】
実施例2
実施例1において、金属マグネシウムと共に、重金属固定化剤としてリン酸水素ナトリウムNaH2PO4を3g添加したこと以外は同様にしてメカノケミカル処理を行った。このメカノケミカル処理後、粉砕による摩擦によって、ミル内の温度は71℃に上昇していた。
【0090】
得られた処理土壌についてダイオキシン類濃度を分析すると共に、環境庁告示第46号に定める溶出試験を実施し、結果を表3に示した。
【0091】
なお、メカノケミカル処理後の処理土壌を多量の水に投入したところ、微細な気泡の発生が観察されたが、処理土壌50gと水10gとを混練したものを水中に投入したところ、ここでは微細な気泡の発生は確認されず、水との混練によって、未反応で残存している金属マグネシウムが水和し、もはや水素を発生しなくなったことが確認された。
【0092】
実施例3
実施例1と同様にして、メカノケミカル処理を行った後、ジチオカルバミン酸ナトリウムの15%水溶液20g(有効成分量として3g相当)を処理物と共にミキサー内に投入し、混合を目的に3分間撹拌混合を行った。このとき添加された水の量は17gであり、未反応で残存するマグネシウムの水和反応を起こすのに十分な水を提供している。なお、ミキサー内は窒素ガスを流通することにより、水和反応で発生する水素ガスをパージするようにした。
【0093】
混合後の処理土壌を取り出し、ダイオキシン類濃度の分析及び環境庁告示第46号溶出試験を行い、結果を表3に示した。
【0094】
なお、処理土壌を多量の水に投入したが、微細な気泡の発生は確認されなかった。このことから、金属マグネシウムはすべて水和しており、水素の発生が起きなくなっているといえる。
【0095】
比較例1
実施例1において、土壌の乾燥を行わず、また、生石灰を添加せずにメカノケミカル処理を行おうとしたが、ミル内でのパッキング現象のために、粉砕処理を行うことはできなかった。
【0096】
比較例2
実施例1において、土壌の乾燥を行わず、生石灰の添加量を表3に示す量としたこと以外は同様にしてメカノケミカル処理を行い、得られた処理土壌についてダイオキシン類濃度を分析すると共に、環境庁告示第46号に定める溶出試験を実施し、結果を表3に示した。
【0097】
この比較例2では、生石灰で脱水処理したことにより、実施例1と同等の処理効果が得られるが、脱水処理のために大量の生石灰が必要であった。
【0098】
【表3】
【0099】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の土壌又は底質の浄化方法によれば、有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質に還元性金属を添加してメカノケミカル処理することにより脱ハロゲン化処理して浄化する方法において、パッキング現象を防止して、良好な処理効果を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌又は底質の浄化方法に係り、特に有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質に還元性金属を添加して脱ハロゲン化処理する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃棄物の焼却によって発生する飛灰にはダイオキシン類が含まれている。このため、廃棄物焼却工場の周辺土壌は、煙突から排出される排ガスに含まれる飛灰の降下により、ダイオキシン類で汚染されている場合がある。また、電気設備の製造もしくは使用工場などの周辺土壌は、絶縁油として利用されたPCB類で汚染されている場合がある。
【0003】
これらのダイオキシン類やPCB類などの多塩素化芳香族化合物は、高い毒性を示すため、無害化処理する必要がある。
【0004】
また、ダイオキシン類やPCB類に限らず、洗浄剤として用いられる多塩素化エチレン類、農薬などに用いられる多塩素化フェノール、多塩素化ベンゼン、難燃剤の焼却処理によって発生する臭素化ダイオキシン類などの有機ハロゲン化物質も毒性が高いことから、これらの有機ハロゲン化物質で汚染された土壌、焼却灰、焼却飛灰、海域、湖沼や河川の底質、焼却炉解体残渣等についての処理が検討されている。
【0005】
従来、有機ハロゲン化物質を脱ハロゲン化処理する技術として、次の▲1▼〜▲4▼の通り、汚染物質に還元性金属や生石灰などを加えて磨砕することによって活性化エネルギーを付与し、実質的に非加熱で還元脱ハロゲン化して無害化を図るメカノケミカル式脱ハロゲン無害化処理技術が提案されている。
【0006】
▲1▼ 有毒物質と適当な試薬の混合物に対し機械的な活性化を施し、無毒な最終生成物を生産する方法。機械的な活性化は、好ましくはボールミル等の機械ミル内で行われる(特表平8−504665)。
【0007】
▲2▼ ダイオキシン汚染土壌に生石灰を加え、粉砕操作で反応物質に機械的エネルギーを与え、活性化させることにより、非加熱の状態でダイオキシン類の脱塩素無害化を図る方法(特開2000−70401)。
【0008】
▲3▼ ダイオキシン汚染土壌に還元剤としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄又はアルミニウムなどを添加すると共に、水素供与体としてアミンなどを添加し、粉砕操作で反応物質に機械的エネルギーを与えて活性化させることにより、非加熱の状態でダイオキシン類の脱塩素無害化を図る方法(特表2001−517641)。
【0009】
▲4▼ アミンの存在下でハロゲン化炭化水素を還元性金属及び水素供与化合物と反応させる方法。ハロゲン化炭化水素をリチウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛又は鉄と反応させるのが好ましい。金属の種類に応じて、還元脱ハロゲン化反応は室温から400℃の範囲で行われる(特開2000−225385)。
【0010】
【特許文献1】
特表平8−504665
【特許文献2】
特開2000−70401
【特許文献3】
特表2001−517641
【特許文献4】
特開2000−225385
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
有機ハロゲン化物質で汚染された土壌や、海域、湖沼又は河川の底質をメカノケミカル処理によって実質的に非加熱で脱ハロゲン無害化する際、パッキング現象が発生する場合がある。パッキング現象とは、粉砕容器内部で、被処理物が粉砕容器内壁や粉砕用ボールなどに固着する現象である。このパッキング現象が生じると、事実上粉砕は進行しなくなる。メカノケミカル処理は、粉砕により固体間の反応を促進するものであるため、パッキング現象により被処理物が固着すると被処理物の粉砕が行えなくなり、脱ハロゲン化処理効果を得ることができなくなる。また、パッキング現象は、粉砕容器内壁や粉砕用ボールなどへの固着で、処理後、処理物を粉砕容器から排出することが困難となるなど、多くのトラブル発生要因となる。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質に還元性金属を添加してメカノケミカル処理することにより脱ハロゲン化処理して浄化する方法において、パッキング現象を防止して、良好な処理効果を得る方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の土壌又は底質の浄化方法は、有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質を非加熱処理により浄化する方法であって、前記土壌又は底質を非加熱状態にて乾燥し、得られた乾燥物に金属を加えて粉砕することを特徴とする。
【0014】
本発明者らは、メカノケミカル処理におけるパッキング現象について検討した結果、その主たる原因は、被処理物に含まれる水分であり、被処理物の含水率によってパッキング誘発の有無が決定することを確認し、適切な事前乾燥によって、このパッキング現象を抑止することができることを見出した。
【0015】
なお、土壌又は底質の乾燥を非加熱状態にて行うことにより、加熱のための設備が不要であり、コスト低減を図ることができると共に、加熱処理時の乾燥物の飛散も無い。この乾燥は風乾及び/又は天日干しが好適である。
【0016】
メカノケミカル処理時のパッキング現象を確実に防止するために、土壌又は底質は、非加熱手段により含水率5〜15%程度にまで乾燥した後、メカノケミカル処理に供することが好ましい。この乾燥物の含水率とは、次式で算出される値である。
【0017】
【数1】
【0018】
メカノケミカル処理で用いる金属としては、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム及び鉄よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の還元性金属が挙げられる。
【0019】
ところで、このような還元性金属を用いて土壌又は底質のメカノケミカル処理を実際に現場で行う場合、還元剤として添加した金属が水分との反応によって水酸化物等に変化することにより、活性低下を招くことがしばしば起こる。即ち、メカノケミカル処理で用いられる還元性金属は、いずれも常温で水と反応し、還元力を低下する性質を有している。本発明においては、土壌又は底質をパッキングしない程度にまで事前乾燥した後に、必要に応じて酸化カルシウムを含有する脱水剤を用いて脱水処理することが好ましい。このように乾燥後の被処理物を脱水処理することにより、被処理物中の水分による還元性金属の活性低下を防止して、還元性金属の還元力を有効に発揮させ、高い処理効果を得ることができる。
【0020】
なお、土壌又は底質に対し乾燥処理することなく酸化カルシウム等の脱水剤を添加して脱水処理したのでは、脱水剤が著しく多量に必要になり、コスト高であると共に、土壌又は底質に多量の脱水剤が添加されることにより被処理物の体積も徒に増加する。また、被処理物の体積が増えると、これに応じて、還元性金属の必要添加量が増加し、コスト高となる。
【0021】
土壌又は底質を予め風乾等により乾燥した後、脱水剤によって脱水処理することにより、比較的少ない脱水剤添加量で被処理物を効率的に脱水処理することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の土壌又は底質の浄化方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明においては、まず、有機ハロゲン化物質で汚染された土壌、又は海域、湖沼や河川の底質を非加熱状態にて乾燥する。この乾燥方法としては、乾燥ヤードに被処理物を広げて風乾及び/又は天日干しする方法が好適である。この際、バックホーなどの掘削車両や掘削機械などによって被処理物をほぐしながら風乾及び/又は天日干しすると効果的である。通風装置や空調装置を備えた屋内ヤードにて風乾を行ってもよい。
【0024】
本発明では、被処理物をその含水率が15%以下、特に10%以下となるように乾燥することによって、被処理物の成分(例えば土壌の砂質、シルト分、粘土分の含有率)に関わらず、パッキングを誘発することなく安定した粉砕処理が可能となる。なお、この風乾及び/又は天日干しによる乾燥は、乾燥後の被処理物の含水率が5〜15%、特に7〜10%程度となるように行うのが好適である。
【0025】
被処理物を乾燥した後、乾燥物に金属、好ましくはナトリウム、マグネシウム、アルミニウム及び鉄よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の還元性金属を添加し、粉砕処理(メカノケミカル処理)を施し、非加熱で有機ハロゲン化物質の脱ハロゲン化を行う。
【0026】
この粉砕を行う粉砕機としては、振動ボールミル、転動ボールミル、遊星ポットミル、ジェットミル、ロッドミル、タワーミルなどの微粉砕が可能なミルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、処理時間は、被処理物の性状、処理量、粉砕機の機種等に応じて適宜決定される。
【0027】
前述の如く、このメカノケミカル処理において、被処理物が水分を多く含んでいると、還元性金属がこの水分と反応して水酸化物等に変化し、その還元能力の低下を招く。従って、乾燥後の被処理物の含水率が高目であったり、特に高度に有機ハロゲン化物質を除去する場合には、メカノケミカル処理に先立ち、脱水剤を用いて脱水処理を施してもよい。
【0028】
脱水処理に用いられる脱水剤としては、酸化カルシウム(生石灰)、焼成ドロマイト、硫酸マグネシウム等が挙げられるが、生石灰(酸化カルシウム)が安価で好適である。
【0029】
脱水剤は被処理物の乾燥物の含水量に対して化学当量以上、例えば、化学当量の1.01〜2倍、特に1.2〜1.5倍程度添加することが好ましく、このような化学当量以上の脱水剤の添加で、被処理物を含水率2%以下とすることも可能である。
【0030】
この脱水処理は、乾燥後の被処理物に所定量の脱水剤を加え、これらを十分に混合するために粉砕機で粉砕して行うことが好ましい。この場合、本発明の浄化処理を回分処理で行う場合には、メカノケミカル処理のための粉砕機でこの脱水処理を行うことができる。
【0031】
このような脱水処理を行うことにより、還元性金属の活性低下を防止すると共に、パッキング現象を確実に防止することができる。
【0032】
この還元性金属によるメカノケミカル処理に当たり、事前に反応性評価試験を実施し、水素供与体の添加が必要である場合は、アミン、アミノアルコール、アミノ酸、糖類、多価アルコールなどの水素供与体を、別途被処理物に添加しても良い。この場合、水素供与体の添加量は必要とされる水素供与能に応じて適宜決定される。ただし、土壌のように、そのマトリックス内に水素供与能を有する官能基(水酸基)等を有するシリカやアルミナを含む場合は、一般に、この水素供与体の添加は不要である。
【0033】
還元性金属は、被処理物との接触効率を高めるために過剰添加とすることが好ましく、被処理物の性状によっても異なるが、通常は、被処理物(乾燥基準)に対して0.5〜15重量%、特に0.5〜10重量%とすることが好ましい。
【0034】
メカノケミカル処理に当たり、このように還元性金属を過剰量添加した場合、メカノケミカル処理後の処理物には、未反応の還元性金属が微粉状で分散して残存する。このような未反応還元性金属を含む処理物を埋め立て等で最終処分した場合、処理物中の未反応還元性金属が雨水、地下水等と接触して、可燃性の水素ガスを発生する可能性がある。そこで、メカノケミカル処理後は、これらの未反応の還元性金属を水和処理することが好ましい。
【0035】
未反応還元性金属の水和処理としては、処理物を水洗して濾過する方法も考えられるが、この方法では水洗容器やスラリーポンプ、脱水機などの大型装置が必要となるばかりでなく、洗浄排水の処理設備が必要となり、設備や運転費の大幅な増加をもたらす。
【0036】
還元性金属はいずれも水和物とすれば、安全な化合物となるため、洗い流すまでの必要はない。従って、未反応還元性金属の水和処理は、処理物に、水和に十分な程度の水(酸性水溶液であっても良い。)を添加して混練し、未反応還元性金属を安定な物質に変換する方法が好ましい。
【0037】
水和処理は、メカノケミカル処理を実施した粉砕機に水を直接添加し、混合をかねて粉砕することにより行うこともできる。この方法は、別途、水の添加混合装置を用いる必要がなく有効な方法である。しかしながら、処理対象によっては、水の添加により、粉砕時凝集して粉砕効率の低下や排出阻害を招くものもある。このような場合には、メカノケミカル処理を実施した粉砕機の後段に、剪断的に水の混合が達成されるミキサー、例えばニーダーやセメントミキサーなどの混合装置を別途設置するのが好ましい。
【0038】
この場合、水の添加混合装置内部(可能な場合は粉砕機で兼用)には水との反応で発生する水素ガス濃度が燃焼下限(4モル%)未満となるよう、空気もしくは窒素などの不活性ガスなどをパージしながら行うことが、未反応還元性金属の処理時の安全を確保する上で好ましい。
【0039】
なお、この未反応還元性金属の水和処理のための水として、酸性水溶液を用いる場合には、未反応還元性金属の水和で生じた水酸化物及び被処理物の脱水剤として添加した生石灰等の中和処理をも行える。この場合、酸としては硫酸、塩酸、硝酸などを用いることができ、0.01〜50重量%程度の水溶液として用いることが好ましい。
【0040】
前述の如く、未反応還元性金属の水和処理のための水の添加量は、脱水剤として添加した生石灰と、未反応還元性金属の水和に十分な量であれば良いが、通常、脱ハロゲン化のために被処理物に添加した還元性金属及び添加した生石灰の1〜3倍当量程度の水を添加することが好ましい。また、酸性水溶液を用いる場合、水分として上記の量を確保しつつ、還元性金属の水酸化物及び脱水剤として加えた生石灰を中和するのに必要な量の酸を加えた水溶液を調製して用いるのが好ましい。必要な酸量は、被処理物を用いた事前の予備実験で決定しておくことができる。
【0041】
このような水和処理のための水の添加混練操作は、未反応還元性金属の水和処理のみならず、処理物のベルトコンベアでの搬送や運搬車両への積み込み、最終処分場への埋め立て作業時における粉塵防止にも有効である。また、酸性水溶液を用いて処理物を中和処理した場合には、アルカリ性の浸出水発生を防止することもでき、処理物からの重金属類の溶出防止にも有効である。
【0042】
以下に、未反応還元性金属の水和処理例について具体的に説明する。
【0043】
(1) メカノケミカル処理用の回分式粉砕機(ミル)を利用して未反応還元性金属の水和処理を行う場合には、
▲1▼ 乾燥された被処理物の所定量をミルに投入する工程;
▲2▼ 必要に応じて脱水用の生石灰を投入して、粉砕することにより脱水処理する工程;
▲3▼ 還元性金属の所定量をミルに投入する工程;
▲4▼ 必要に応じて水素供与体の所定量を投入して粉砕することにより、メカノケミカル処理する工程;及び
▲5▼ 未反応還元性金属の水和処理に必要かつ十分な量の水(又は酸性水溶液)をミルに投入し、水の分散混合と水和反応の実施を目的として粉砕を行う工程、により処理するのが好ましい。
【0044】
水の添加は、全量を一度に添加しても良いが、水和反応による急激な水素の発生や、発熱によってミル内部が高温になることを避ける場合には、徐々に添加する方法が有効である。また、この時、ミル内部で発生した水素の燃焼混合気を形成しないよう、十分な量の空気又は窒素などの不活性ガスでパージすることが好ましい。
【0045】
(2) メカノケミカル処理用の回分粉砕機を用い、別途水和処理用ミキサーを用いる場合には、
▲1▼ 乾燥された被処理物の所定量をミルに投入する工程;
▲2▼ 必要に応じて脱水用の生石灰を投入して、粉砕することにより脱水処理する工程;
▲3▼ 還元性金属の所定量をミルに投入する工程;
▲4▼ 必要に応じて水素供与体の所定量を投入して粉砕することにより、メカノケミカル処理する工程;
▲5▼ メカノケミカル処理物をミルから取り出し、後続の剪断型のミキサーに移し、このミキサーに未反応還元性金属の水和処理に必要かつ十分な量の水(又は酸性水溶液)を投入し、水の分散混合と水和反応の実施を目的として混合を行う工程;
により処理するのが好ましい。
【0046】
この場合、メカノケミカル処理物は直接ミキサーに移し替えてもよく、中間ホッパーなどの容器に一度受けた後、ミキサーに移し替えてもよい。
【0047】
水の添加は、全量を一度に添加しても良いが、水和反応による急激な水素の発生や、発熱によってミキサー内部が高温になることを避ける場合には、徐々に添加する方法が有効である。また、この時、ミキサー内部で発生した水素の燃焼混合気を形成しないよう、十分な量の空気又は窒素などの不活性ガスでパージすることが好ましい。
【0048】
(3) メカノケミカル処理に連続粉砕機(ミル)を用いる場合には、次の▲1▼,▲2▼の工程により処理するのが好ましい。
▲1▼ 乾燥された被処理物及び還元性金属、必要に応じて水素供与体を所定量の割合でミルに投入し、メカノケミカル処理に必要な滞留時間で粉砕処理することにより連続的にメカノケミカル処理を行う。なお、被処理物は、非加熱手段による乾燥後、必要に応じて更に脱水剤により脱水処理しておく。
▲2▼ このミルから連続的に排出されるメカノケミカル処理物を後続の剪断型のミキサーに投入し、このミキサーに未反応還元性金属の水和処理に必要かつ十分な量の水(又は酸性水溶液)を投入し、水の分散混合と水和反応の実施を目的として混合を行う。
【0049】
この場合、メカノケミカル処理物は直接連続的にミキサーに移し替えてもよく、中間ホッパーなどの容器に一度受けた後、ミキサーに移し替えてもよい。
【0050】
連続的に移送する場合、ミキサーは連続処理可能であることが必要であり、メカノケミカル処理物及び水を連続的にミキサーに投入して連続的に水和処理を行う。中間ホッパーで一度受けた場合には、前段のメカノケミカル処理用ミルの処理工程に影響を与えない程度の処理能力を有する回分型のミキサーを用いることも可能である。回分式の場合、水の添加は、全量を一度に添加しても良いが、水和反応による急激な水素の発生や、発熱によってミキサー内部が高温になることを避ける場合には、徐々に添加する方法が有効である。また、いずれの場合も、ミキサー内部で発生した水素の燃焼混合気を形成しないよう、十分な量の空気又は窒素などの不活性ガスでパージすることが好ましい。
【0051】
なお、上記(1)〜(3)の方法において、未反応還元性金属の水和処理を行うミル又はミキサーのガス排出口から排出される水素ガスは燃焼下限界以下の濃度であるので、大気に放出しても引火の危険はない。排ガス中に土壌の同伴が多い場合には、集塵機を介して大気放出すれば良い。また、低濃度ではあるが、可燃性水素の処理が必要な場合には、排ガス燃焼装置を用いて酸化処理した後、集塵して大気放出すれば良い。排ガス燃焼装置と集塵機の配置は、どちらが前段に設置されても構わない。
【0052】
ところで、このような還元性金属を用いる脱ハロゲン化処理において、還元性金属として用いられるマグネシウムやアルミニウムは、その形態によっては消防法で定めるところの危険物第2種(可燃性固体)となる。しかしながら、マグネシウムやアルミニウムはその粒度、形状により危険性が異なることから、総務省令で定める小ガス火炎着火試験において、10秒以内に着火し、かつ燃焼を継続するもの以外は危険物に該当しないとされている。従って、一定以上の粒径を持つ粒状マグネシウムは危険物に該当しない。また、危険物の除外規定として、マグネシウムにおいては目開きが2mmの網ふるいを通過しない塊状のもの、直径が2mm以上の棒状のものは危険物に該当しない、実際に、粒径500μm以上の画分が25%以上であって、355μm未満の画分が15%未満である粒状マグネシウム(山石金属株式会社製「Mg−10」)は、小ガス火炎着火試験の結果から非危険物として一般に流通している。
【0053】
同様に、アルミニウムにおいては目開きが150μmの網ふるいを通過するものが50%未満のものは、消防法上の危険物ではない。
【0054】
これは、還元性金属の粒径が大きくなった場合、逆に比表面積(単位量当たりの表面積)が小さくなるため、反応速度は小さくなり、酸化や水和によって生じる反応熱の蓄積が、反応を連鎖促進するまでに達しないためである。
【0055】
従って、下記(A),(B)のような比較的粗粒の還元性金属粉であれば、運搬、貯蔵、反応器への供給に際して、安全に取り扱うことが可能となるため、本発明で用いる還元性金属として好適である。
【0056】
(A) 粒径500μm以上の画分が20%以上で、粒径355μm未満の画分が15%未満の粒状マグネシウム
(B) 粒径150μm未満の画分が50%未満のアルミニウム粉。
【0057】
反応性の低い、粗粒の還元性金属を使用することは、必要とされる還元力の低下を招くことが懸念される。しかしながら、本発明におけるメカノケミカル処理は、粉砕による機械的エネルギーを付与して固体同士の反応を促進するものであり、反応性の低い粗粒の還元性金属を用いても、メカノケミカル処理の過程で粉砕されて反応性の高い微粉となるため、還元反応は十分に進行する。しかも、脱ハロゲン化反応によって還元性金属の粒子表面に生成する反応生成物の被膜を粉砕によって除去することができるため、常に活性の高い還元性金属表面を維持することができ、高い反応効率を維持可能となる。更に、表面の生成物阻害を除外しつつ、活性表面を常に更新しながら反応を行えるため、還元性金属の有効利用率も高くすることができ、処理に要する還元性金属の添加量も低く抑えることが可能となる。
【0058】
このように、反応時に還元性金属を粉砕して活性化させる場合は、反応器内には不活性な被処理物マトリックス(例えば、被処理物がダイオキシン類汚染土壌である場合、土壌自体)が還元性金属に比べて多量に存在し、大きな熱容量を付与しているため、脱ハロゲン化反応の過程で、還元性金属の脱塩素化反応や、副次的に進行する可能性のある還元性金属の空気酸化反応で生じる反応熱で大幅な温度上昇を招く恐れはない。
【0059】
また、還元性金属を比表面積が大きく、反応性の高い微粉状で貯蔵しておくと危険であるばかりでなく、貯蔵中に空気中の酸素による酸化や水分による水和反応によって性能低下する割合が飛躍的に大きくなる。そのため、使用時には、還元性が低下しているという事態が発生するが、上述のような粗粒の還元性金属を用いることは、還元性金属の貯蔵時における性能低下防止にも効果的である。
【0060】
なお、本発明において、用いる還元性金属は、前述の(A),(B)のような粗粒であれば良く、その粒径の上限については特に制限はないが、メカノケミカル処理における粉砕エネルギーや取り扱い性を考慮した場合、マグネシウムは平均粒径500〜5000μm程度であることが好ましく、アルミニウムは平均粒径150〜5000μm程度であることが好ましい。
【0061】
また、本発明においては、被処理物中に重金属類が含まれている場合、被処理物に更に重金属固定化剤を添加して脱ハロゲン化と共に、重金属類の固定化を行うことが好ましい。
【0062】
この場合、重金属固定化剤は、メカノケミカル処理前、処理中、又は処理後の任意の段階で被処理物に添加することができる。
【0063】
用いる重金属固定化剤は、無機系重金属固定化剤であっても、有機系重金属固定化剤であっても良く、無機系重金属固定化剤としては、例えば次のようなものが挙げられる。
【0064】
正リン酸(オルソリン酸)、ポリリン酸、メタリン酸、次リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、過リン酸、第一リン酸ソーダ、第二リン酸ソーダ、第三リン酸ソーダ、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウム、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第一リン酸マグネシウム、第二リン酸マグネシウム、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、過リン酸石灰、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等のリン酸化合物;焼き石膏、ポルトランドセメント、早強セメント、ジェットセメント、高炉セメント、アルミナセメント等のセメント類;各種活性白土、合成珪酸、天然珪酸加工物等の無機吸着剤;汎用の珪酸ソーダ、珪酸カリウム等の水溶性珪酸塩等の水ガラス。
【0065】
また、有機系重金属固定化剤としては、ジチオカルバミン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、ピペラジンビスジチオカルバミン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、テトラ(ジチオカルボキシ)テトラエチレンペンタミンのナトリウム塩及びカリウム塩、(エチレンアミノ)ジチオカルボキシナトリウム−エチレンベンジルアミン−エチレンアミン共重合体、(エチレンアミノ)ジチオカルボキシカリウム−エチレンベンジルアミン−エチレンアミン共重合体等のキレート系重金属固定化剤等を用いることができる。
【0066】
これらの重金属固定化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0067】
重金属固定化剤の添加量は用いる薬剤の種類や被処理物の性状により異なるが、通常の場合、無機系重金属固定化剤であれば、その添加量は被処理物(乾燥基準)に対して有効成分量として0.1〜50重量%、特に1〜20重量%とするのが好ましい。また、有機系重金属固定化剤であれば、その添加量は被処理物(乾燥基準)に対して有効成分量として0.1〜30重量%、特に1〜10重量%とするのが好ましい。
【0068】
重金属固定化剤による重金属の固定化機構は、重金属固定化剤により異なることがある。リン酸系重金属固定化剤は、鉛等の重金属類を不溶性のリン酸塩とし、更に被処理物中に存在するカルシウムと反応して長期的にはより安定な鉱物であるヒドロキシアパタイトを形成して重金属類を固定化する。また、キレート系重金属固定化剤は、鉛等の重金属類を不溶性の塩として固定化する。
【0069】
重金属固定化剤の添加時期は、用いる重金属固定化剤の性状に応じて、十分な効果が得られるように適宜決定する。即ち、無機系重金属固定化剤はメカノケミカル処理に拘わらず効果を発揮するため、メカノケミカル処理の処理前、処理中、処理後のいずれでも良い。一方、有機系重金属固定化剤の中にはメカノケミカル処理により一部が分解することにより、重金属固定化効果が損なわれるものがある。この場合には、添加量を多くするか、メカノケミカル処理後に添加することが望ましく、添加量を多くする経済性を考えた場合、メカノケミカル処理後に添加することが望ましい。
【0070】
リン酸塩などのように固体状で添加可能な重金属固定化剤の場合、還元性金属等を加えてメカノケミカル処理する粉砕機に直接加えることができる。この場合、粉砕機の効果で薬剤の分散混合効果を得ることができ、好都合である。重金属固定化剤の添加は還元性金属の供給時でもメカノケミカル処理中でも構わない。
【0071】
重金属固定化剤としてのキレート剤やリン酸塩などを水溶液として用いる場合、水溶液の水が還元性金属と反応して水酸化物となり、還元能力の低下を招く。従って、水溶液系の重金属固定化剤を用いる場合は、還元性金属によるメカノケミカル処理で脱ハロゲン化反応を終えた後に添加することが望ましい。
【0072】
なお、重金属固定化剤を水溶液として用いる場合、重金属固定化剤量は、被処理物質中に含まれる重金属濃度に応じて決定される。一方、水は被処理物質の飛散を防止したり、ベレット化することによってハンドリングを容易としたりするために必要な量として決定される。従って、重金属固定化剤を水溶液として添加する場合、上記の各々の要求を満足するような量で水溶液を調製しておけばよい。あるいは、重金属固定化処理装置の前段にラインミキサーなどを設置し、その入口において適当な量の重金属固定化剤と、水を供給し、その場で水溶液とするような方法も採用することができる。また、重金属固定化処理装置に重金属固定化剤及び水の必要量を別々に供給し、装置内部の混合機構を利用して分散させることも可能である。
【0073】
このようにして重金属固定化剤を添加することにより、還元性金属により溶出が促進される鉛等の重金属類を固定化し、その溶出を確実に防止することができる。
【0074】
重金属固定化剤としてリン酸系重金属固定化剤を用いた場合には、水の添加により重金属の不溶性塩を生成させる効果も奏される。
【0075】
なお、重金属固定化剤を水溶液としてメカノケミカル処理後に添加する場合、重金属類の固定化と前述の水添加による未反応還元性金属の水和処理とを兼用することができる。
【0076】
【実施例】
以下に実験例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0077】
実験例1
表1に示す如く、粒径の細かい粘土質含有量の異なる3種類の土壌(含水率30%)を準備し、各々の土壌を1〜3日風乾して含水率5%、10%、15%の乾燥物を得た。
【0078】
乾燥後の土壌及び未乾燥の土壌の各々を、遊星ボールミル容器内に入れて粉砕処理し、粉砕処理時のパッキング現象の発生の有無を確認し、結果を表1に示した。
【0079】
表1に示されるように土壌の質によらず、含水率15%以下の乾燥物であればパッキング現象が抑制される。
【0080】
【表1】
【0081】
実験例2
実験例1において、粘土質が多い土壌と粘土質が中程度の土壌の含水率10%の乾燥物と含水率15%の乾燥物の各々に、脱水剤として生石灰を土壌中の水分量の化学当量に対して表2に示す量添加混合した後、実験例1と同様にしてパッキング現象の発生の有無を確認する実験を行い、結果を表2に示した。
【0082】
表2より、乾燥物を更に脱水剤で脱水処理することにより、含水率が比較的高い乾燥物であってもパッキング現象を確実に防止することができることがわかる。
【0083】
【表2】
【0084】
実施例1
下記性状の土壌を試料として本発明による浄化処理を行った。
【0085】
[試料土壌]
含水率:30%
ダイオキシン類濃度:685,000pg/g
【0086】
試料土壌を風乾して表3に示す含水率の乾燥物を得、この乾燥物50g(乾燥基準)に、脱水剤として生石灰を表3に示す量加え、乾燥を目的として遊星ボールミルにて、非加熱で15分間粉砕した。この乾燥処理後の試料に、還元性金属として金属マグネシウムのグラニュールを3g添加し、同じ遊星ボールミルで非加熱のまま2時間粉砕してメカノケミカル処理を行った。メカノケミカル処理後、粉砕による摩擦によって、ミル内の温度は72℃に上昇していた。
【0087】
得られた処理土壌についてダイオキシン類濃度を分析し、結果を表3に示した。また、この処理土壌に環境庁告示第46号に定める溶出試験を実施し、結果を表3に示した。
【0088】
なお、メカノケミカル処理後の処理土壌を多量の水に投入したところ、微細な気泡の発生が観察されたが、処理土壌50gと水10gとを混練したものを水中に投入したところ、ここでは微細な気泡の発生は確認されず、水との混練によって、未反応で残存している金属マグネシウムが水和し、もはや水素を発生しなくなったことが確認された。
【0089】
実施例2
実施例1において、金属マグネシウムと共に、重金属固定化剤としてリン酸水素ナトリウムNaH2PO4を3g添加したこと以外は同様にしてメカノケミカル処理を行った。このメカノケミカル処理後、粉砕による摩擦によって、ミル内の温度は71℃に上昇していた。
【0090】
得られた処理土壌についてダイオキシン類濃度を分析すると共に、環境庁告示第46号に定める溶出試験を実施し、結果を表3に示した。
【0091】
なお、メカノケミカル処理後の処理土壌を多量の水に投入したところ、微細な気泡の発生が観察されたが、処理土壌50gと水10gとを混練したものを水中に投入したところ、ここでは微細な気泡の発生は確認されず、水との混練によって、未反応で残存している金属マグネシウムが水和し、もはや水素を発生しなくなったことが確認された。
【0092】
実施例3
実施例1と同様にして、メカノケミカル処理を行った後、ジチオカルバミン酸ナトリウムの15%水溶液20g(有効成分量として3g相当)を処理物と共にミキサー内に投入し、混合を目的に3分間撹拌混合を行った。このとき添加された水の量は17gであり、未反応で残存するマグネシウムの水和反応を起こすのに十分な水を提供している。なお、ミキサー内は窒素ガスを流通することにより、水和反応で発生する水素ガスをパージするようにした。
【0093】
混合後の処理土壌を取り出し、ダイオキシン類濃度の分析及び環境庁告示第46号溶出試験を行い、結果を表3に示した。
【0094】
なお、処理土壌を多量の水に投入したが、微細な気泡の発生は確認されなかった。このことから、金属マグネシウムはすべて水和しており、水素の発生が起きなくなっているといえる。
【0095】
比較例1
実施例1において、土壌の乾燥を行わず、また、生石灰を添加せずにメカノケミカル処理を行おうとしたが、ミル内でのパッキング現象のために、粉砕処理を行うことはできなかった。
【0096】
比較例2
実施例1において、土壌の乾燥を行わず、生石灰の添加量を表3に示す量としたこと以外は同様にしてメカノケミカル処理を行い、得られた処理土壌についてダイオキシン類濃度を分析すると共に、環境庁告示第46号に定める溶出試験を実施し、結果を表3に示した。
【0097】
この比較例2では、生石灰で脱水処理したことにより、実施例1と同等の処理効果が得られるが、脱水処理のために大量の生石灰が必要であった。
【0098】
【表3】
【0099】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の土壌又は底質の浄化方法によれば、有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質に還元性金属を添加してメカノケミカル処理することにより脱ハロゲン化処理して浄化する方法において、パッキング現象を防止して、良好な処理効果を得ることができる。
Claims (5)
- 有機ハロゲン化物質で汚染された土壌又は底質を非加熱処理により浄化する方法であって、
前記土壌又は底質を非加熱状態にて乾燥し、得られた乾燥物に金属を加えて粉砕することを特徴とする土壌又は底質の浄化方法。 - 請求項1において、該乾燥物の含水率が5〜15%であることを特徴とする土壌又は底質の浄化方法。
- 請求項1又は2において、該金属が、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム及び鉄よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の還元性金属であることを特徴とする土壌又は底質の浄化方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該土壌又は底質を風乾及び/又は天日干しにより乾燥することを特徴とする土壌又は底質の浄化方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、該非加熱状態にて乾燥して得られた乾燥物に酸化カルシウムを含む脱水剤を加えて更に脱水処理した後、金属を加えて粉砕することを特徴とする土壌又は底質の浄化方法。
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