JP2004141110A - 培養器、培養器の製造方法及び培養方法 - Google Patents
培養器、培養器の製造方法及び培養方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】凹状部を有する支持容器と、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質とを備える培養器であって、当該ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質は、当該支持容器の凹状部内に配設されており、当該支持容器の凹状部表面が露出するような孔を一つ以上有しており、且つ、培地成分と、好ましくは被検物質をも含有する溶液を保持している培養器を用いる。
【選択図】 図1
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ヒト及びその他の動物、植物並びに昆虫等の細胞や組織片の培養に有用な培養基材及び培養器、当該培養器の製造方法、当該培養器の作製用キット、当該細胞や組織片の培養方法並びに被検物質の当該細胞や組織片に対する影響の観察、観測方法に関する。本発明は、臨床検査並びに臨床及び基礎研究分野において、細胞や組織片の生体外培養を行なう際に、特に、被検薬剤の細胞や組織片に対する作用を観察する際に、有用である。
【0002】
【従来の技術】
生体外で細胞培養を行なう場合には、培養に必要な栄養素や増殖因子等の大部分を、外部から人工的に与える必要がある。培養細胞は、培養液に溶解された栄養素等を取り込み、生体維持、増殖、有用物質の産生等を行なう。その際に、細胞は、酸素と栄養素等とを消費し、二酸化炭素と代謝産物を含む老廃物とを排出する。培養が長期化すると、培養液中の栄養素や培養環境中の酸素が不足するようになり、細胞が増殖あるいは生存できなくなることがある。また、薬剤等の細胞への影響を調べる際には、薬剤の絶対量ではなく薬剤の培養液中の濃度とその細胞への影響との関係を調べるが、培養時間の経過に伴い、被検薬剤が消費されて培養液中の薬剤濃度が低下する、即ち薬剤濃度を一定に保つことができないという問題がある。
【0003】
従来、細胞や組織片を長期に亘って培養し、それらに対する薬剤等の影響を観察あるいは観測する場合であって、培養容器としてシャーレ、フラスコ、マルチウェルプレート等を使用する場合には、初期細胞数又は初期組織片量を少な目にし、培養液を多目に加えておくか、もしくは培養途中で培養液を交換していた。後者の場合についてより詳しく説明すると、細胞や組織片の観察、観測は、培養に適した細胞密度又は組織片量で行なう必要があるため、また、そのような細胞密度又は組織片量に対して適切な培養液量があるため、適量の、所定の濃度で被検薬剤を含む培養液を用いて培養実験を開始し、観察、観測期間が長期化したら、培養液の全部又は一部を、被検薬剤を同濃度で含む同じ培養液に交換していた。
【0004】
従来の、シャーレ、フラスコやマルチウェルプレート等を容器として使用して細胞や組織片(以下、「細胞等」ということがある)を培養し、当該細胞を比較的長期に亘り経時的に観察、観測する方法には、下記のような欠点が存在した。即ち、1)培養を、培養液量に対して細胞数又は組織片量が少なく、細胞等の密度が低い状態から始めなければならない場合がある。細胞等の密度が低いということは、増殖に必要な環境が悪いということであり、そのために、対数増殖期へ入るのが遅くなる、換言すれば、増殖までの準備期間として長時間を要する。2)培養液量を多くする(これは、被検薬剤濃度の変動を小さくするのに有効である)と、培養液面が高くなり、培養容器底部(細胞はここに落ち着く)での酸素、二酸化炭素等のガスの交換効率が低下するため、培養条件が悪化する。3)培養液の交換の際に、追加の無菌操作が必要となる、雑菌混入の危険性が増す、交換後の培養液量を一定とし難い、強固に容器にしっかり張り付く細胞の場合を除いて、培養液交換後に細胞等が元の位置から散り(移動し)やすい、等々のために、培養途中で培養液を交換することは、同じ細胞の継続的な観察には不利である、というような問題が生じていた。
【0005】
上記欠点1)についてより詳細に説明する。対数増殖期では、細胞が分裂して2倍になる時間が一定となり、接触阻害(コンタクト・インヒビション)等がかかるまでは、上記の一定時間をn回経過すると、細胞は2n個に増殖する。接触阻害等がかからない場合には、栄養素、酸素、老廃物等に関して良い条件が続く限り、細胞は、場合によっては重なりながら増殖し続ける。細胞がこの対数増殖期にある際に被検薬剤等の細胞への影響を観察すると、その影響を認識し易い。しかし、細胞の種類にも因るが、培養環境における細胞密度が低い場合や、培地成分等の培養条件が前培養のそれと異なる場合には、通常は、培養を開始してもすぐには対数増殖期には入らない。また、細胞密度が小さい場合は、細胞が上向き調節(アップ・レギュレート)をする増殖因子等を産生して培養環境を自己増殖に都合の良い状態に変えるのに時間がかかる。この環境の整備には、近隣に仲間の細胞が集まっていることが有利であり、細胞が少なすぎることは不利である。以上のような理由により、薬剤の影響を観察できるまでの準備又は立上時間が長くなるのである。
【0006】
従って、例えば増殖が速いミエローマ細胞を5日間以上の比較的長期間に亘って培養し、当該細胞に対する薬剤の影響を経時的に調べる場合には、一般的には、培養液量を多くする、及び/又は、播種細胞数を少なくする、という方法が採用されている。しかし、このような方法を採用すると、細胞密度が低くなり、この細胞密度が低い状態で細胞の状況を観察しようとすると、細胞の状態を判断できる倍率の顕微鏡下では、一視野に入る細胞数が少なすぎ、観察効率が悪い。一方、培養開始時から観察しやすい細胞密度、即ち細胞密度が高い状態で培養すると、培養液中の被検薬剤や栄養素等が急速に消費されてしまうため、培養液を交換することなく長期間に亘って細胞を培養してその変化を経時的に観察することは難しい。
【0007】
生体外培養の他の方法として、スピンナー・ボトル等と、その内部に設けられる、その少なくとも一部が細胞不透過性で液体培地透過性の網又は膜によって構成された内容器とを用い、当該網又は膜を介して内容器内外の培養液を連続的に交換しながら培養を行なう方法(特許文献1参照)、ホロー・ファーバー(中空糸)中に培養液を流して栄養素と酸素を供給しつつ中空糸の外側で細胞を長期間培養して細胞の産生物を得る方法(特許文献2参照)、細胞を中空糸内部に封入し、中空糸の外側に潅流液を流して培養に必要な物質を細胞に提供すると共に、細胞が分泌した物質を潅流液から取り出す方法(特許文献3参照)が知られている。しかし、これらの方法は、より多くの細胞を培養すること又は培養細胞分泌物の回収を容易とすることを目的として開発された方法であり、細胞の状態の経時的な観察、観測に適する方法ではない。
【0008】
従来より、細胞を培養し、その状態を経時的に観察するのに適する容器も提案されている。その一例として、ティッシュ・カルチャー・インサート(ヌンク社)をマルチ・ディッシュ(ヌンク社)と組み合わせて、又は、セル・カルチャー・インサート(ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー)をコンパニオン・プレート(ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー)と組み合わせて使用するものが挙げられる。これらは、特許文献4に記載の発明の原理、即ち、ウェル内に置かれたインサートの上部に透過性膜を配し、インサート内(透過性膜下)で組織培養をする方法を利用したものである。
【0009】
また、これをさらに応用して、膜で隔てられた二つの細胞集団同士を物理的に接触させずに、二種類の細胞の相互作用を研究する際に有用な装置が提案されている(特許文献5及び6参照)。特許文献5及び6に記載された装置では、培養容器の中に、底部が細胞を通さない多孔質膜になっているインサートが挿入され、その多孔質膜の上下で、即ち、培養容器内とインサート内部の二個所において、細胞が培養される。これらの装置では、培養液はインサートの底部に配置された多孔質膜を通してインサート内部に供給されるが、インサートを培養容器から取り出して、又は特許文献6に記載の装置では培養容器内とインサートとの間にピペットを挿入することにより、培養液の交換等を行なうこともできる。従って、これらの装置では、培養液面はそれ程高くする必要はなく、そして、これらの装置は、培養容器の培養液面よりも上方の空間に細胞に十分な量のガスを提供できるように構成されている。また、これらの装置を用いれば、インサートを培養容器から取り出して、細胞を観察することも可能である。
【0010】
一方、培養液を保持している多孔質材料を用いて細胞を培養する技術も知られている(特許文献7参照)。特許文献7には、分子内にコラーゲン等のペプタイドマトリクスを形成させた多孔性ポリウレタン発泡体(PUF)に培養液を保持させ、且つ、当該発泡体に付着性動物細胞を付着させて、当該動物細胞を培養することが記載されている。この発明においては、PUFは、好ましくは1〜3mmの細片とされ、細胞を付着させるキャリアーとしての役割を果たす。細胞培養に必要な栄養素やガスは、培養槽(この中にPUF細片が入れられる)内の培養液から供給される。
【0011】
また、ゲル化する物質の一つとして、寒天が知られており、寒天を用いた細胞培養法としては、30年近く前から、クローン化用などに使用するソフトアガー法が知られている(非特許文献1参照)。この方法は、寒天を低濃度で含む培地に細胞を極く低密度で播き、ゲル化した軟寒天中で一個の細胞から増殖した細胞コロニーを培養する方法である。また、血液幹細胞や骨髄幹細胞のアッセイでは、同様に軟寒天又はメチルセルロースあるいはその誘導体中でコロニーを形成させ、そのコロニーを観察することが行われてきている。
【0012】
さらに、培養細胞を用いる実験では、培養細胞の電位の測定もしばしばなされている。一例を挙げると、容器底部に配した電極に細胞を接触させて細胞電位を測定する方法が知られている(特許文献8及び9参照)が、そのような電極を用いる方法において、ソフトアガー法を採用すると、電極と細胞とが接触しにくくなり、不適切である。
【0013】
ソフトアガー法を採用せずに、細胞を培養しつつ単層の上皮細胞を電流が通過する際に上皮細胞に生じる電気抵抗を測定する方法としては、特許文献10に開示の装置を用いて、細胞を保持する支持体とその上に生長している細胞との融合層とに電流を流す方法が知られている。
【0014】
【特許文献1】
特公平6−44860号公報
【特許文献2】
特公平7−97982号公報
【特許文献3】
特許第2619885号公報
【特許文献4】
米国特許第4,308,351号公報
【特許文献5】
特許第2573795号公報
【特許文献6】
特許第2638738号公報
【特許文献7】
特公平7−46988号公報
【特許文献8】
特開平6−296595号公報(実施例)
【特許文献9】
特開平8−62209号公報(実施例)
【特許文献10】
米国特許第4,686,190号公報
【非特許文献1】
R.G.コットン、C.ミルシテイン他;Eur.J.Immunol.3;135−140(1973)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
生体外での細胞培養に関し、上記の如く、多くの提案がなされてきている。しかし、細胞密度を高く保ちつつ、細胞の絶対数を少なくして、細胞数に対して培養液量を多くすることができる培養器は知られていない。このような培養器があれば、細胞や組織片(以下、「細胞等」ということがある)を培養する場合に、培養液の絶対量を多くすることができる。また、培養液に被検薬剤等を含有させる場合、被検薬剤等の絶対量を多くすることができる。このような場合、培養の進行に伴って栄養素が消費され又は被検薬剤が代謝等によって分解等されても、栄養素や被検薬剤の濃度は、影響を殆ど生じない誤差範囲内に長く保持され、その結果、長期に亘る細胞等の培養や、細胞等への被検薬剤の影響の長期に亘る経時的な観察が可能となる。
【0016】
また、細胞等を培養するに際し、細胞等と培養液のみを用意すれば、誰でも同じ条件で容易に細胞等に対する被検薬剤等の作用を調べることができる培養器も望まれている。
【0017】
さらに、上記のような長期に亘る培養細胞等の経時的な観察の際に、細胞等の電位測定もできることが望ましい。
【0018】
加えて、より長期の観察のためには、培養液の採取や追加を極めて容易に行ない得る培養器が提供されることが好ましい。
【0019】
更にまた、培養細胞等への被検薬剤等の投与による影響を容易に観察、観測することができる培養器が提供されることも好ましい。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、細胞培養の分野における上記の要求を満足する培養器を開発すべく、鋭意努力した結果としてなされた。
【0021】
即ち、本願第一の発明は、凹状部を有する支持容器と、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質とを備える培養器であって、当該ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質は、当該支持容器の凹状部内に配設されており、当該支持容器の凹状部表面が露出するような孔を一つ以上有しており、且つ、培地成分を含有する溶液を保持していることを特徴とする培養器である。
【0022】
上記本願第一の発明の具体的態様の一つとして、培地成分を含有する溶液が、更に、一種以上の被検物質をも含有する培養器が挙げられる。
【0023】
本願第二の発明は、凹状部を有する支持容器の凹状部内に、凹状部表面の一部を覆うことができ且つ特定の高さを有する障害物を配置する工程a、後工程でゲル状となる培地成分を含有する溶液を支持容器の凹状部内に注入する工程b、及び、溶液をゲル化させる工程cを含むことを特徴とする培養器の製造方法である。
【0024】
上記本願第二の発明の具体的態様の一つとして、後工程でゲル状となる培地成分を含有する溶液として、更に、一種以上の被検物質をも含有する溶液を使用する、培養器の製造方法が挙げられる。
【0025】
本願第三の発明は、支持容器の凹状部内に、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質であって、培地成分を含有する溶液を保持している物質の層を形成する工程A、及び、工程Aで形成された層の一部を支持容器の凹状部表面が露出するようにくり貫いて、孔を一つ以上形成する工程Bを含むことを特徴とする培養器の製造方法である。
【0026】
上記本願第三の発明の具体的態様の一つとして、工程Aにおいて、培地成分を含有する溶液として、更に、一種以上の被検物質をも含有する溶液を使用する、培養器の製造方法が挙げられる。
【0027】
本願第四の発明は、支持容器の凹状部内に、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層を形成する工程Ia、工程Iaで形成された層の一部を支持容器の凹状部表面が露出するようにくり貫いて、孔を一つ以上形成する工程IIa、及びゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層に、培地成分を含有する溶液を保持させる工程IIIaを含むことを特徴とする培養器の製造方法である。
【0028】
上記本願第四の発明の具体的態様の一つとして、工程IIIaにおいて、前記物質の層に、培地成分に加えて更に一種以上の被検物質をも含有する溶液を保持させる、培養器の製造方法が挙げられる。
【0029】
本願第五の発明は、支持容器の凹状部内に、一種以上の被検物質を保持するゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層を形成する工程Ib、工程Ibで形成された層の一部を支持容器の凹状部表面が露出するようにくり貫いて、孔を一つ以上形成する工程IIb、及びゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層に、培地成分を含有する溶液を保持させる工程IIIbを含むことを特徴とする培養器の製造方法である。
【0030】
本願第六の発明は、層状のスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質に孔を一つ以上形成する工程1a、工程1aで形成された孔を一つ以上有するスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質を支持容器の凹状部内に入れる工程2a、及びスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質の層に、培地成分を含有する溶液を保持させる工程3aを含むことを特徴とする培養器の製造方法である。
【0031】
上記本願第六の発明の具体的態様の一つとして、工程3aにおいて、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質の層に、培地成分に加えて更に一種以上の被検物質をも含有する溶液を保持させる、培養器の製造方法が挙げられる。
【0032】
第七の発明は、一種以上の被検物質を保持する層状のスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質に孔を一つ以上形成する工程1b、工程1bで形成された孔を一つ以上有するスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質を支持容器の凹状部内に入れる工程2b、及びスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質の層に、培地成分を含有する溶液を保持させる工程3bを含むことを特徴とする培養器の製造方法である。
【0033】
本願第八の発明は、本願第一の発明の培養器を用い、当該培養器の孔に培養液と被検細胞又は組織片とを入れ、培養器をインキュベートすることによって当該被検細胞又は組織片を培養することを特徴とする培養方法である。
【0034】
本願第九の発明は、本願第一の発明の孔を一つ以上有する培養器であって、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質が、更に、支持容器の凹状部表面を露出させない穴及び前記孔よりもその容積が大きい大孔からなる群から選択される一種以上を一つ以上有し、且つ、培地成分を含有する溶液が被検物質をも含有する培養器を用い、当該培養器の孔に被検物質をも含有する培養液と被検細胞又は組織片とを入れ、当該培養器の穴及び/又は大孔には被検物質をも含有する培養液を入れ、必要に応じて当該穴及び/又は大孔内の溶液を交換して被検物質を補充しながら培養器をインキュベートすることによって当該被検細胞又は組織片を培養することを特徴とする培養方法である。
【0035】
本願第十の発明は、本願第一の発明の培養器であって、培地成分を含有する溶液が被検物質を含有しない培養器を用い、当該培養器の孔に培養液と被検細胞又は組織片とを入れ、培養器をインキュベートすることによって当該被検細胞又は組織片を培養し、且つ、培養途中において、孔に被検物質を添加し、当該被検物質が当該被検細胞又は組織片に与える影響を観察又は観測することを特徴とする、被検物質の細胞又は組織片に対する影響を観察又は観測する方法である。
【0036】
本願第十一の発明は、凹状部を有する支持容器、培地成分、その水溶液がゲル状物質となる物質、及び支持容器の凹状部表面の一部を覆うことができ且つ特定の高さを有する障害物一つ以上とを含むことを特徴とする培養器作製用キットである。
【0037】
本願第十二の発明は、凹状部を有する支持容器、培地成分、その水溶液がゲル状物質となる物質、及びゲル状物質の層のくり貫き用用具とを含むことを特徴とする培養器作製キットである。
【0038】
本願第十三の発明は、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で形成された平板状の培養基材であって、一つ以上の孔を有しており、当該基材中には培地成分が保持されている、培養基材である。
【0039】
本願第十四の発明は、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で形成された平板状の培養基材であって、一つ以上の孔を有しており、当該基材中には一種以上の被検物質が保持されている、培養基材である。
【0040】
本願第十五の発明は、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で形成された平板状の培養基材であって、一つ以上の孔を有しており、当該基材中には培地成分と一種以上の被検物質とが保持されている、培養基材である。
【0041】
上記本願第十三乃至十五の発明において、培養基材は、更に、水や緩衝液等の液体をも保持していてもよい。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を、好適態様を挙げて説明する。
先ず、本願第一の発明の培養器を、必要に応じて図面を参照しながら説明する。
【0043】
図1は、本願第一の発明の培養器の一好適例を示す。図1中、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X線における断面図、(c)は斜視図である。また、図2は、本願第一の発明の培養器の他の好適例を示す。図2中、(a)は平面図、(b)は(a)のY−Y線における断面図、(c)は斜視図である。
【0044】
培養器10、20は、凹状部を有する支持容器であるシャーレ1と、シャーレ1の凹状部内に配設されたゲル状物質3とからなる。ゲル状物質3は、それを貫通する孔5を有している。この孔5のある個所においては、支持容器1の凹状部表面7が露出されている。また、ゲル状物質3は、培地成分を含有する溶液を保持している。
【0045】
支持容器は、一つ以上の凹状部を有し、形状を保持できる硬さのある物であれば、特に限定されない。凹状部を一つ有する支持容器の好適例として、図1及び図2に示すシャーレ(培養シャーレ)が挙げられる。また、凹状部を複数有する支持容器の好適例として、マルチウェルプレートが挙げられる。しかし、これら以外であっても、例えば、円形のシャーレが長方形または正方形のプラスチック樹脂板に載ったもの、培養フラスコ、凹状部が角を有する形状のものでも、支持容器として使用することができる。
【0046】
支持容器の材質も、形状を保持できる硬さを有する限り特に限定されないが、透明なプラスチックやガラスが好ましい。この他、セラミックス、表面処理した紙類、竹等の植物の一部も使える。但し、少なくとも孔に対応する部分、即ち、細胞等が集約される部分は、細胞等の観察のため、透明であること又は透明部分が多いことが好ましい。
【0047】
容器の凹状部表面は、親水性であっても疎水性であってもよい。但し、組織片ではなく細胞を培養する場合には、ある程度親水性であることが好ましい。また、支持容器の凹状部表面には、その親水性を高めるための表面処理がなされていてもよい。
【0048】
支持容器内に配設されたゲル状物質とは、少なくとも培養温度においてゲル状態を保持可能で、細胞は通過させない又は通過させにくいが、薬剤、糖、タンパク質、アミノ酸、ビタミン等は通過させる物質をいう。
【0049】
本願第一の発明の培養器では、ゲル状物質は、培地成分を含有する溶液を保持している。即ち、少なくとも培地成分とそれを溶解する液体とを保持している。ここで、液体とは、通常は水又は緩衝液である。また、培地成分とは、特定のあるいは一般的な細胞や組織片の培養に使用される培養液の構成成分の混合物をいう。この液体と培地成分により、培養液が形成される。本願第一の発明の培養器では、細胞の代謝物質等の老廃物が孔内の培養液中からゲル中に拡散するため、孔内の培養液中の老廃物濃度が低下する。
【0050】
本願第一の発明の培養器の一態様として、ゲル状物質が保持する溶液に、一種以上の被検物質も含有されている例が挙げられる。このような態様の培養器においては、被検物質(各種薬剤、糖、タンパク質、アミノ酸、ビタミン等の栄養素、各種増殖因子、各種阻害因子等)が、ゲル状物質中から拡散によって孔内の培養液中に供給される。
【0051】
ゲル状物質を構成する物質、即ち水等の液体と共にゲル状物質となる物質の例としては、寒天(アガー)、アガロース、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、デキストラン、セファロース、アクリルアミド、ペクチン、マンナン、ゼラチン、デンプン、アルギン酸、ポルフィラン、ヒアルロン酸、キトサン、ポリ−L−ロイシン、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ガラクトマンナン等が挙げられ、これらは、単独で又は二種以上の混合物として使用される。孔の形状を比較的長時間保持し易く、且つ廉価であることから、寒天(アガー)又はアガロースが特に好ましい。なお、アクリルアミド等の重合により液体と共にゲル状物質となる物質を用いる場合には、未重合モノマー、重合開始剤、重合促進剤等による細胞毒性の影響が出ないように、充分に洗浄して未重合モノマー、重合開始剤、重合促進剤等を除去してから使用する必要がある。
【0052】
ゲル状物質を構成する物質の濃度は、ゲルの篩の大きさに影響を与える。従って、ゲル状物質が保持する溶液が被検物質をも含有するものである場合は、ゲル状物質の調製の際、ゲル状物質を構成する物質の濃度を、被検物質の種類に応じて選択する必要がある。被検物質が低分子量のものであれば、ゲル状物質を構成する物質としてアガロースを用いる場合、その濃度は0.5〜1%でよい。但し、この範囲に限定されるものではない。被検物質の分子量が大きくなるに従い、被検物質はゲル内を通過(拡散)しにくくなるので、ゲル状物質を構成する物質の濃度を下げて、即ち、ゲルの篩の大きさを大きくして、ゲルを形成させる必要がある。但し、孔の形状を保てる硬さのゲルが形成されなくてはならない。ゲル状物質を構成する物質として寒天を用いる場合は、その精製度が低いと、精製度の低下に伴って一定温度で形成されるゲルの流動性が勝るようになり、形状を保てなくなる。従って、特に精製度の低い寒天を用いる場合には、精製されたアガロースを用いる場合と比べてより高い濃度で使用する必要がある。その他の物質を使用する場合も、同様にゲル状物質を構成する物質の濃度を調整し、又は二種以上の物質を用いてそれらの量比を調整することにより、ゲルの硬さを調節する。
【0053】
本願第一の発明の培養器では、ゲル状物質に代わって、又はゲル状物質と共に、スポンジ状やメッシュ状の物質も使用することができる。即ち、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質の中の一種以上を使用することができる。スポンジ状物質の例としては、セルローススポンジ、コラーゲンスポンジ及びアクリルアミドのスポンジが挙げられる。本願第一の発明においては、細胞の代謝物質等の老廃物や、薬剤や栄養素等の被検物質を通過(拡散)させることができるものであれば、基本的にいずれのスポンジ状やメッシュ状の物質も使用できる。
【0054】
また、例えばメッシュ状物質の空隙の一部にのみゲル状物質が存在するような態様とすれば、被検物質を、孔中の培養液中にゆっくりと拡散(徐放)させることができる。
【0055】
本願第一の発明においては、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層には、支持容器の凹状部表面を露出させる孔が、一つ以上形成されている。例えば支持容器が培養シャーレである場合、孔は、一つでも複数個形成されていてもよい。孔の形状は、特に限定されないが、図1に示す例のような円柱形状、図2に示す例のような逆円錐台形状、角柱形状及び逆角錐台形状が好ましく、円柱形状及び逆円錐台形状が特に好ましい。
【0056】
孔は、細胞や組織片(以下、「細胞等」ということがある)の観察に適した大きさであり、且つ、細胞密度や組織片量を培養に適した値とすることができるような大きさに形作られる。孔が大きすぎる、例えば、孔の容積がゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層の容積(孔の容積を含む)の半分以上であると、孔に入れる細胞の絶対数又は組織片の絶対量をある程度大きくしなければならなくなるため、長期培養にそれ程有利とはなり難く、一方、小さすぎると、孔に入れることのできる細胞の数又は組織片の量と増殖させることのできる期間が限定されてしまい、また、孔に細胞等を入れる際の操作性も悪くなる。しかし、細胞等を培養する上では、孔の底部の面積は、ある程度小さい方が、細胞等を集約できるので有利である。
【0057】
孔への細胞等の注入とその観察の両面を考慮すると、孔の大きさは、孔の底部の直径で表して、4〜8mm程度の範囲であるのがよい。また、孔の深さ、即ち、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層の高さ(図1(b)中のh)は、孔の底部(支持容器の凹状部表面の露出部)の直径(図1(b)中のd)又は対角線の長さの四分の一以上が好ましい。これにより、孔の側壁面積が底部の面積以上となる。孔が円柱形状である場合、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層の高さが孔の底部の直径の四分の一であれば、孔の側壁面積が孔の底部の面積と等しくなる。孔の底部の直径を小さくしてゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層の高さを大きくする程、孔の底部の面積に対する孔の側壁面積の割合が増す。直径と高さが等しければ、側壁面積は底部面積の4倍、高さが直径の2倍であれば、側壁面積は底部面積の8倍となる。
【0058】
また、細胞等が入れられる孔の容積が、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層の容積(孔の容積を含む)全体の三分の一乃至二〇分の一であることが、薬剤や栄養素等の被検物質や、細胞等が排泄する老廃物の拡散、ゲル状物質等の内部の通過の観点から、好ましいと考えられる。ただし、これに限定されるものではない。
【0059】
被検物質とは、その細胞等に対する影響を調べようとする物質のことである。例えば、薬剤、栄養素、増殖因子、阻害因子が挙げられる。本発明においては、培養液に溶解し且つゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質中(ゲル状、スポンジ状又はメッシュ状物質を構成する物質間、液体の存在する部分)を拡散して孔内の溶液中に移動できる物質であれば、いずれも被検物質となり得る。被検物質として、具体的には、臨床治療薬、一般化学薬品、毒物や劇物、毒薬や劇薬に加え、生理活性物質(例えば抗癌剤を含む抗生物質、増殖因子、分化誘導因子、アポトーシス誘導物質、環境ホルモン等の機能活性化(賦活化)物質、又は機能抑制物質等)及びそれらの候補物質が挙げられる。
【0060】
図3に示すように、本願第一の発明の培養器30のゲル状物質3の層には、前記孔5に加えて、支持容器であるシャーレ1の凹状部表面7を露出させない穴9が形成されていてもよい。また、穴の代わりに、あるいは穴に加えて、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質中に形成された細胞等の培養に使用される前記孔よりもその容積が大きい、支持容器の凹状部表面を露出させる大孔が形成されていてもよい。
【0061】
このような穴や大孔があれば、細胞等をより長期的に培養したい場合には、その穴や大孔を利用して、培養液の交換又は被検物質の補充を行なうことができる。この場合、細胞等の位置が、培養液の交換又は被検物質の補充によって殆ど動かされることなく、細胞等が長期的に培養され得る。
【0062】
穴や大孔の数は限定されない。穴や大孔の容積も特に限定されないが、それらの総容積が、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層の容積(孔、穴及び大孔の容積を含む)の二分の一乃至三分の一程度であることが相応しい。
【0063】
穴や大孔の形状は特に限定されないが、例えば、円柱形状、逆円錐台形状、角柱形状、逆角錐台形状が挙げられる。また、その形状は、不定形でも、溝形状(例えば、孔の周りを囲むドーナツ状の溝)であってもよい。
【0064】
複数の孔の中の一つ以上を、ここに説明した穴や大孔の用途で使用することも可能である。即ち、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層に形成された複数の孔の中の一つ以上には、細胞等を入れず、その細胞等を入れなかった孔を、培養液の交換の場等として用いることもできるのである。
【0065】
培養細胞の電位の測定を行なう場合には、図4及び図5に示す例のように、ゲル状物質3が有する孔5により露出された支持容器であるシャーレ1の凹状部表面7に、電極8及びリード線6が貼付け又は印刷されている培養器40、50を用いればよい。図4に示す例においては、孔5によって露出されたシャーレ1の凹状部表面7の一部にのみ、電極8が存在する。図5に示す例においては、孔5によって露出されたシャーレ1の凹状部表面7の全般に亘って電極8が存在する。
【0066】
本願第一の発明の培養器は、好ましくは、本願第二乃至第七の発明に係る方法によって製造される。
【0067】
本願第一の発明の培養器における「ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質」がゲル状物質であるものは、先ず、工程aとして、凹状部を有する支持容器の凹状部内、例えば培養シャーレのシャーレ内空間やマルチウェルプレートのウェルに、孔を形成させるための凹状部表面の一部を覆うことができ且つ特定の高さを有する障害物を一つ以上配置する。ここで、障害物の形状及び大きさは、形成させる孔の形状及び大きさに対応する。また、特定の高さとは、ゲル状物質形成後に当該障害物を取り出せる高さである。即ち、一般的にはゲル状物質の層の高さよりも大であるが、当該障害物に取出用の紐などが付いている場合には、ゲル状物質の層の高さと同じであってもよい。
【0068】
障害物は、凹状部表面の一部(一個所又は二個所以上)を覆うことができる。また、障害物は、凹状部表面の一部を覆う部分(孔に対応する部分)に加え、凹状部表面を直接は覆わないが、該表面のやや上方から特定の高さまでの空間を占める部分(穴に対応する部分)を併せ持つものであってもよい。このような障害物を用いると、孔と穴とを同時に形成することができる。あるいは、障害物は、凹状部表面の一部を覆う部分として、孔に対応する部分と大孔に対応する部分の両者を有するものであってもよい。このような障害物を用いると、孔と大孔とを同時に形成することができる。
【0069】
次に、工程bとして、後工程でゲル状となるゾル状の溶液であって、培地成分を含む溶液を、支持容器の凹状部内に注入する。このゾル状の溶液には、溶媒(水等)及び培地成分に加え、適切な濃度の、先に説明したゲル状物質を構成する物質(寒天、アガロース等)が含まれている。また、このゾル状の溶液には、一種以上の被検物質も含有されていてもよい。
【0070】
ゾル状の溶液は、例えば以下のようにして調製する。
【0071】
ゲル状物質を構成する物質を2倍濃度で含む溶液と、培地成分を2倍濃度で含む培養液とを各々調製する。これらを40℃付近又はそれ以上の温度で等量ずつ混合する。昆虫細胞用の培養器であって、37℃よりも低い温度で使用される培養器の製造の場合には、ゲル状物質を構成する物質の種類やその濃度によっては、上記混合の際の温度をより低くすることができる。また、ゾル状の溶液が一種以上の被検物質をも含有するものである場合には、培地成分と被検物質とを各々2倍濃度で含む培養液を調製し、これを、ゲル状物質を構成する物質を2倍濃度で含む溶液と等量ずつ混合する。あるいは、ゲル状物質を構成する物質を2倍濃度で含む培養液と、被検物質を2倍濃度で含む培養液とを調製し、それらを等量ずつ混合する。
【0072】
次いで、支持容器ごと、支持容器の凹状部に注入された溶液を冷却し、又はゲル状物質を構成する物質を架橋させて、当該溶液をゲル化させる(工程c)。冷却は、自然又は強制冷却による。
【0073】
このようにして製造された培養器は、前記障害物を除去することによって形成される孔に培養液と細胞等を入れて使用するものであるが、孔の形成、即ち障害物の除去は、工程cに続いて工程dとして行なってもよいし、使用直前に、培養器の使用者が行なってもよい。
【0074】
また、培養細胞の電位の測定に使用できる培養器を製造する場合には、その凹状部表面に電極(及びリード線)が貼付け又は印刷されている支持容器を用いるか、あるいは、工程aの前に、支持容器の凹状部表面に電極(及びリード線)を貼付け又は印刷する工程xが行われる。この電極の形成は、支持容器の凹状部表面の一部であって、工程aにおいて障害物で覆われる部分にのみ、為されてもよい。電極の形成は、公知の方法、例えば特開平6−78889号、特開平6−296595号(特許文献8)、特開平8−62209号(特許文献9)に記載の方法によって行なうことができる。
【0075】
更に、ゲル状物質の層に、先に説明した穴又は大孔を形成するための工程、即ち、工程cより後に、溶液がゲル化して形成された層の一部をくり貫き、支持容器の凹状部表面を露出させない穴及び/又は支持容器の凹状部表面を露出させる大孔を形成する工程eを行なってもよい。この工程は、例えば、細胞培養の開始直前に、培養器の使用者が行なってもよい。
【0076】
上記の本発明の培養器の製造方法は、支持容器の凹状部内に配設される物質がゲル状物質である場合に適合する方法であるが、次に、当該物質がゲル状物質、スポンジ状物質、メッシュ状物質のいずれであっても適合する、本発明の培養器の製造方法について説明する。
【0077】
その一例は、支持容器の凹状部内に、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質であって、培地成分を含有する溶液を保持している物質の層を形成する工程A、及び、工程Aで形成された層の一部を支持容器の凹状部表面が露出するようにくり貫いて、孔を一つ以上形成する工程Bを含む。
【0078】
工程Aは、例えば、(1)冷却されるとゲル状となるゾル状の溶液であって、培地成分を含む水溶液(その温度は、例えば約40℃である)を、支持容器の凹状部内に注入し、冷却するか、(2)架橋によって水分を保持してゲル状物質となる物質及び培地成分を含む水溶液を、支持容器の凹状部内に注入し、架橋によって水分を保持してゲル状物質となる物質を架橋させるか、(3)スポンジ状又はメッシュ状物質に、培地成分を含む水溶液を含浸させるか、(4)冷却されるとゲル状となるゾル状の水溶液(その温度は、例えば約40℃である)を、支持容器の凹状部内に注入し、冷却し、ゲル化した後に、培地成分を含む水溶液をゲルに供給し、拡散によってゲル内が置換されるのを待つか、又は(5)架橋によって水分を保持してゲル状物質となる物質を含む水溶液を、支持容器の凹状部内に注入し、架橋によって水分を保持してゲル状物質となる物質を架橋させ、ゲル化した後に、培地成分を含む水溶液をゲル状物質に供給し、拡散によってゲル内の水溶液が置換されるのを待つことで達成される。但し、方法(4)及び(5)は、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質に含浸させる、培地成分を含む水溶液を交換して、平衡化する必要があるので、あまり現実的であるとはいえない。
【0079】
このような方法において用いられる水溶液は、更に、一種以上の被検物質をも含むものであってもよい。方法(3)の場合、凍結乾燥された被検物質をスポンジ状又はメッシュ状物質に予め固着させておけば、培地成分を含む水溶液を含浸させるのみで、被検物質をも含む水溶液を保持している物質の層を形成することができる。方法(3)、(4)及び(5)は、一般的には、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質中の被検物質濃度の厳密性がそれ程要求されない場合に適用される。また、被検物質が40℃付近の温度まで加熱することができないものである場合には、被検物質に温度負荷をかけない、方法(3)、(4)又は(5)が採用されることになる。
【0080】
工程Bは、くり貫きにより、孔を形成する工程である。例えばバイオプシーパンチを用いて、ゲル状物質等の層の一部をくり貫く。また、その凹状部表面に電極が貼付け又は印刷されている支持容器を用いる場合には、電極の少なくとも一部が露出するように、孔を形成する。なお、この工程Bは、細胞培養の開始直前に、培養器の使用者が行なってもよい。
【0081】
工程Aと工程Bとの間、又は、工程Bの後に、先に説明した穴及び/又は大孔を形成する工程Cを行なってもよい。
【0082】
本発明の培養器の製造方法の他の例は、支持容器の凹状部内に、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層を形成する工程Ia、工程Iaで形成された層の一部を支持容器の凹状部表面が露出するようにくり貫いて、孔を一つ以上形成する工程IIa、及びゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層に、培地成分を含有する溶液を保持させる工程IIIaを含む。
【0083】
上記工程Iaは、例えば、(1)冷却されるとゲル状となるゾル状の水溶液(その温度は、例えば約40℃である)を、支持容器の凹状部内に注入し、冷却するか、(2)架橋によって水分を保持してゲル状物質となる物質の水溶液を、支持容器の凹状部内に注入し、架橋によって水分を保持してゲル状物質となる物質を架橋させるか、又は、(3)スポンジ状又はメッシュ状物質を支持容器の凹状部内に入れることで達成される。次に、工程IIa、即ち、くり貫きにより孔を形成する工程を行なう。その後、培地成分を含む溶液をゲル状物質に供給し、拡散によってゲル内の水溶液が置換されるのを待つか、スポンジ状又はメッシュ状物質に、培地成分を含む溶液を含浸させることにより、工程IIIaを行なう。工程IIIaで用いる溶液は、更に、一種以上の被検物質をも含有していてもよい。
【0084】
本発明の培養器の製造方法の更に他の例は、支持容器の凹状部内に、一種以上の被検物質を保持するゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層を形成する工程Ib、工程Ibで形成された層の一部を支持容器の凹状部表面が露出するようにくり貫いて、孔を一つ以上形成する工程IIb、及びゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層に、培地成分を含有する溶液とを保持させる工程IIIbを含む。
【0085】
上記工程Ibは、例えば、(1)冷却されるとゲル状となるゾル状の溶液(その温度は、例えば約40℃である)であって、被検物質を含む水溶液を、支持容器の凹状部内に注入し、冷却するか、(2)架橋によって水分を保持してゲル状物質となる物質及び被検物質を含む水溶液を、支持容器の凹状部内に注入し、架橋によって水分を保持してゲル状物質となる物質を架橋させるか、又は、(3)凍結乾燥等の手法により被検物質が固着されてなるスポンジ状又はメッシュ状物質を支持容器の凹状部内に入れることで達成される。方法(3)は、被検物質の保存安定性に優れる。次に、工程IIb、即ち、くり貫きにより孔を形成する工程を行なう。その後、培地成分を含む溶液をゲル状物質に供給し、拡散によってゲル内の水溶液が置換されるのを待つか、スポンジ状又はメッシュ状物質に、培地成分を含む溶液を含浸させることにより、工程IIIbを行なう。
【0086】
「ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質」がスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質である場合には、本発明の培養器は、次のような方法でも製造することができる。
【0087】
(方法X)層状のスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質に孔を一つ以上形成する工程1a、工程1aで形成された孔を一つ以上有するスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質を支持容器の凹状部内に入れる工程2a、及びスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質の層に、培地成分を含有する溶液(この溶液は、更に、一種以上の被検物質をも含有していてもよい)を保持させる工程3aを行なう。
【0088】
(方法Y)一種以上の被検物質を保持する層状のスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質に孔を一つ以上形成する工程1b、工程1bで形成された孔を一つ以上有するスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質を支持容器の凹状部内に入れる工程2b、及びスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質の層に、培地成分を含有する溶液を保持させる工程3bを行なう。
【0089】
上記方法X及びYの各工程の具体例は、先に記載した本発明の培養器の他の製造方法についての説明中にあるとおりである。
【0090】
本願第八の発明の培養方法は、本願第一の発明の培養器を用い、当該培養器の孔に培養液と被検細胞又は組織片とを入れ、培養器をインキュベートすることによって当該被検細胞又は組織片を培養することを特徴とする。
【0091】
ここで、培養器中のゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質が保持する溶液と、孔に入れる溶液とは、原則として同等組成である。従って、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質が保持する溶液が被検物質をも含有するものである場合には、孔に入れる溶液も、被検物質を含有するものを用いる。
【0092】
本願第八の発明の培養方法を、被検物質を含まないゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層を有する培養器と、被検物質を含まないゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層を有する培養器とを用い、同様の条件で培養を実施し、両者の結果を比較観察することにより、被検物質の影響による細胞又は組織片の形態的、生化学的あるいは電気的変化を観察又は観測することができる。
【0093】
本願第九の発明の培養方法は、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層に孔に加えて穴及び/又は大孔をも有する培養器であって、培地成分を含有する溶液が被検物質をも含有する培養器(本願第一の発明の培養器の一態様)を用い、当該培養器の孔に被検物質をも含有する培養液と被検細胞又は組織片とを入れ、当該培養器の穴及び/又は大孔には被検物質をも含有する培養液を入れ、必要に応じて当該穴及び/又は大孔内の溶液を交換して被検物質を補充しながら培養器をインキュベートすることによって当該被検細胞又は組織片を培養することを特徴とする。
【0094】
本願発明の培養方法の実施に際しては、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層の表面の乾燥は、少しでも避ける方がよい。
【0095】
インキュベート温度等の培養条件は、被検細胞又は組織片の種類に応じて選択される。
【0096】
本願発明の培養方法では、培地成分をはじめとする培養に必要な様々な物質や被検物質は、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層から供給される。また、孔中の培養液が気体と接触しているので、本発明の培養方法では、気体の補給やガス交換も、問題なく行われ得る。
【0097】
培養を特に長期に亘って行なう場合には、穴及び/又は大孔を有する培養器を用いる方法の採用が好ましい。そのような方法では、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層に形成された穴及び/又は大孔に培養液を入れるため、長期に亘って孔中の培地成分濃度が適切な値に維持される。更に長期の培養が必要な場合には、当該穴及び/又は大孔において、培養液を随時交換又は補充すればよい。この交換又は補充作業は、観察中の細胞を動かすことなく、簡便に行なうことができる。
【0098】
また、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質に保持される溶液が被検物質をも含有する培養器を用いる培養方法においては、穴及び/又は大孔中の培養液から被検物質が補充されるため、長期に亘って孔中の溶液の被検物質濃度が維持される。
【0099】
培養細胞又は組織片の経時的な観察、観測は、顕微鏡等による拡大視、電子画像処理の他、光学的測定又は電気的測定に拠ることもできる。観測方法として光学的又は電気的方法を採用する場合には、孔に光路又は電極が来るように製造された培養器を用いる。特に、電極を支持容器凹状部(底部)表面に設けてなる培養器を用い、その電極に細胞等に接触させれば、観測のための細胞培養が大変効率良く行なえることは、自明の理である。
【0100】
電位測定に際し、培養液の流れがあると、電位が乱れることがある。しかし、穴や大孔のある培養器を用いる培養方法では、培養液は穴や大孔に供給されるため、電位測定個所である孔では、培養液の流れは殆ど生じず、よって、電位の乱れは生じ難い。
【0101】
孔が複数個所ある培養器を用いる場合は、それら複数個所で、同時に同じ又は異なる細胞を培養することができる。これは、特に、別々な細胞を用いて同一条件下で比較する場合に有利である。
【0102】
本願発明の培養方法では、支持容器内において、ゲル状物質等で細胞等を培養する範囲を限定して、培養液量に対して局所的に細胞密度を高める、換言すると、その局所的細胞密度計算容積よりも、培養液容積を大きくすることができる。
【0103】
本願発明の培養方法中、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質に保持される溶液が被検物質をも含有する培養器を用いる態様においては、被検物質の絶対量を大きくすることができ、また、被検物質が、ゲル状物質等の中から培養個所(孔)の側壁を通じて培養個所内の培養液中に拡散することを利用して、被検物質を培養液中に供給するので、従来の方法と比べて、細胞を散らさない(移動させない)ことと、長期的に細胞への薬剤の影響を経時的に観察、観測することとを両立させることができる。
【0104】
さらに、本願発明の培養方法によれば、培養液の交換又は補充が不要であるか、あるいは、前記穴及び/又は大孔を利用して培養液の交換又は補充を行なうことができるため、例えば細胞のクローン化のための培養や長期に亘るコロニーアッセイ時に、培養液の交換が原因でコロニーが散り、その結果生じた複数のコロニーを構成している細胞が単一クローンであるか否かが不明になるという事態の招来を防ぐことができる。
【0105】
本願発明の培養方法では、通常は支持容器の底面部分が観察、観測機能を担い、培地成分や被検物質の供給等は、培養個所(孔)の側壁を通じて、即ち側面方向から行なわれる。
【0106】
本願発明の培養方法は、懸濁細胞(非付着性細胞)だけでなく、付着細胞や組織片を培養して、経時的にその状態を観測する場合にも有効である。特に、孔が複数個ある培養器を用いて組織片を培養する場合には、それぞれの組織片の位置を限定でき、且つ、薬剤等の被検物質濃度を含めて同一条件下で、それぞれの組織片の経時的な観察、観測を行なえるため、大変有利である。
【0107】
また、本願第十の発明は、本願第一の発明の培養器の中、培地成分を含有する溶液が被検物質を含有しない培養器を用い、当該培養器の孔に培養液と被検細胞又は組織片とを入れ、培養器をインキュベートすることによって当該被検細胞又は組織片を培養し、且つ、培養途中において、孔に被検物質を添加し、当該被検物質が当該被検細胞又は組織片に与える影響を観察又は観測することを特徴とする、被検物質の細胞又は組織片に対する影響を観察又は観測する方法に関する。
【0108】
本願第十の発明では、被検細胞又は組織片を被検物質の不存在下で培養し、ある期間培養した後、細胞又は組織片の周囲環境(具体的には孔中の培養液)に被検物質を添加し、その急性の影響を観察又は観測する。具体的には、被検物質の添加直後の、細胞の形状の変化、細胞電位の変化、細胞が放出する特定の物質の濃度の変化などを、観察又は観測する。
【0109】
本発明は、凹状部を有する支持容器、培地成分、その水溶液がゲル状物質となる物質、及び支持容器の凹状部表面の一部を覆うことができ且つ特定の高さを有する障害物一つ以上とを含むことを特徴とする培養器作製用キット1(本願第十一の発明)、及び、凹状部を有する支持容器、培地成分、その水溶液がゲル状物質となる物質、及びゲル状物質の層のくり貫き用用具とを含むことを特徴とする培養器作製用キット2(本願第十二の発明)をも提供する。
【0110】
これらを用いて、本願発明の培養器の製造方法に従い、本願発明の培養器を作製することができる。
【0111】
本願発明の培養基材は、先に説明した培養器における「ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質」がスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質であるものであって、支持容器以外の部分として使用することが可能なものに相当する。より具体的には、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で形成された平板状の培養基材であって、一つ以上の孔を有しており、当該基材中には培地成分が保持されているもの(本願第十三の発明)、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で形成された平板状の培養基材であって、一つ以上の孔を有しており、当該基材中には一種以上の被検物質が保持されているもの(本願第十四の発明)、及びスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で形成された平板状の培養基材であって、一つ以上の孔を有しており、当該基材中には培地成分と一種以上の被検物質とが保持されているもの(本願第十五の発明)が挙げられる。
【0112】
平板状の培養基材とは、例えば、培養シャーレに入れて使用するのに適する形状を有するものを、マルチウェルプレートのウェルに入れて使用するのに適する形状を有するものを指す。
【0113】
これらの培養基材は、更に、前記穴及び/又は大孔を有していてもよい。また、これらの培養基材は、更に、水や緩衝液等の液体をも保持していてもよい。
【0114】
培養基材は、例えばポリマー製のシート又はフィルムで包装されて供給され、必要に応じて培養シャーレやマルチウェルプレートのような支持容器に入れて使用される。
【0115】
【実施例】
実施例1
アガロース(タカラ社製、L 03「TAKARA」)0.05gを5mlの蒸留水に懸濁させ(濃度:1w/v%)、オートクレーブ(トミー精工社製、SS−320)を用い、温度121℃で15分間、アガロースを加熱溶解させた。得られたアガロース溶液を入れたボトルを、温度41℃にセットしたウォーター・インキュベータに浸漬し、アガロース溶液を41℃まで冷却した。
【0116】
次いで、0.3%トリパンブルーの2倍濃度PBS(リン酸緩衝食塩水、2×PBS)溶液を調製し、これを細孔サイズ0.2μmのニトロセルロースろ過膜に通してろ過滅菌を行った。滅菌後の0.3%トリパンブルーの2×PBS溶液を入れたボトルを、温度41℃にセットしたウォーター・インキュベータに浸漬し、当該溶液を41℃まで加温した。
【0117】
41℃にて、1%アガロース水溶液と0.3%トリパンブルーの2×PBS溶液とを、無菌的に等量ずつ混ぜ合わせた。このようにして得られた混合溶液(0.5%アガロース、0.15%トリパンブルーのPBS溶液)を、12穴のカルチャー・プレート(ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー製;FALCON MULTIWELL TISSUE CULTURE PLATE;カタログ番号353043)の各穴に、2.3mlずつ分注した。これは、計算上の深さで約6.1mmとなる量である。また、この深さは、96穴のカルチャー・プレートの各穴に、当該溶液を0.2mlずつ分注した場合の深さ(約6.2mmにほぼ等しい。
【0118】
分注後、そのカルチャー・プレートを室温で30分間放冷し、混合溶液をゲル化させた。ゲル化後の混合溶液を、以後、トリパンブルー含有アガロースゲルと呼ぶ。
【0119】
各穴内のトリパンブルー含有アガロースゲル層の中央を、直径6mmのバイオプシー・パンチで打ち抜き、ゲルを除去した。
【0120】
バイオプシー・パンチで打ち抜いて形成された孔に、0.17ml(計算上の深さ:約6.1mm)の1×PBSを入れ、カルチャー・プレートを、温度37℃、湿度100%、5%炭酸ガス及び95%大気の条件下に5時間静置した。
【0121】
一定時間ごとに、カルチャー・プレートの穴内のゲル層の中央部に形成された孔から、PBS(トリパンブルーを含有しているものと思われる)0.02mlを採取し、純水0.08mlを加えて5倍希釈した後、550nmにて、その吸光度を測定した。バックグラウンドの値は、トリパンブルーを含まないPBS(同じく5倍希釈したもの)を用いて求めた。孔から採取したPBS(トリパンブルーを含有しているものと思われる、5倍希釈)の吸光度からバックグラウンドの値を差し引き、孔から採取したPBS(トリパンブルーを含有しているものと思われる、5倍希釈)の吸光度とした。
【0122】
また、トリパンブルー含有アガロースゲルを粉砕し、14,000rpmにて10分間遠心し(トミー精工社製、MRX150、TMS−4)、上清を得、上清0.02mlに純水0.08mlを加えて5倍希釈した後、その吸光度を550nmにて測定した。その吸光度からバックグラウンドの値を差し引き、ゲル内から抽出されたトリパンブルー含有溶液(上清、5倍希釈)の吸光度とした。その吸光度を100%として、それに対する一定時間ごとに採取されたPBS(トリパンブルーを含有しているものと思われる、5倍希釈)の吸光度の割合を、百分率で表した。結果を図6に示した。なお、測定は3回ずつ行い(但し、ゲル内から抽出された溶液の吸光度は、6回の測定値の平均値である)、図6には、得られた数値の平均値と標準偏差の幅を示した。
【0123】
図6に示された結果より、ゲルに保持されていたトリパンブルーが、ゲルの孔中のPBS中に拡散、移動し、ゲルの孔中のPBS中のトリパンブルー濃度(550nmでの吸光度で表す)は、インキュベーション開始から1時間後には、平衡値(孔中のPBSの量はゲル中のPBSの量よりもかなり少ないので、この値はゲル中のトリパンブルー濃度とほぼ等しい)の5割以上の値にまで、また、3時間後には、8割以上の値にまで上昇したことがわかる。以上の結果より、ゲル中に保持されていたトリパンブルーが、ゲルを打ち抜いて形成した孔中のPBS中に、短時間で拡散、移動したことが確認できた。
【0124】
実施例2
アガロース(タカラ社製、L 03「TAKARA」)を、超純水100mlあたり1gの割合で超純水に加え、それに懸濁させた(濃度:1w/v%)。得られた懸濁液を、オートクレーブ(トミー精工社製、SS−320)中で温度121℃にて15分間加熱し、アガロースを溶解させた。得られたアガロース溶液を入れたボトルを、温度41℃にセットしたウォーター・インキュベータに浸漬し、アガロース溶液を41℃まで冷却した。
【0125】
次いで、超純水500mlあたり10.4gの割合で、RPMI1640培地粉末(グルタミン含有、GIBCO BRL社製、RPMI Medium 1640)を超純水に加えて溶解させ(2倍濃度)、得られた溶液を、細孔サイズ0.2μmのニトロセルロースろ過膜に通してろ過滅菌を行った。このようにして、2×RPMI1640培地溶液を調製した。この培地溶液30mlに、2−メルカプトエタノールを100μMの濃度になるように、また、ペニシリンとストレプトマイシンとを各々50U/ml、50ng/mlの濃度になるように無菌的に加え、更に、非働化ウシ胎児血清6mlも加えた。このようにして得られた非働化ウシ胎児血清/2×RPMI1640培地溶液に、インターロイキン−2(IL−2;マウス、リコンビナント、シグマ社製SIGMA I−0523)を5ng/mlの割合で加えた。このようにして調製されたIL−2/非働化ウシ胎児血清/2×RPMI1640培地溶液を入れたボトルを、温度41℃にセットしたウォーター・インキュベータに浸漬し、当該溶液を41℃まで加温した。
【0126】
41℃にて、アガロース溶液とIL−2/非働化ウシ胎児血清/2×RPMI1640培地溶液とを、無菌的に等量ずつ混ぜ合わせた。このようにして得られた混合溶液を、12穴のカルチャー・プレート(ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー製;FALCON MULTIWELL TISSUE CULTURE PLATE;カタログ番号353043)の各穴に、2.5mlずつ分注した。
【0127】
分注後、そのカルチャー・プレートを室温で30分間以上放冷し、混合溶液をゲル化させた。ゲル化後の混合溶液を、以後、IL−2含有アガロースゲルと呼ぶ。
【0128】
各穴内のIL−2含有アガロースゲル層の中央を、直径6mmのバイオプシー・パンチで打ち抜き、ゲルを除去した。
【0129】
バイオプシー・パンチで打ち抜いて形成された孔に、IL−2を含まない非働化ウシ胎児血清/2×RPMI1640培地溶液を超純水で2倍希釈した溶液0.15mlを入れ、カルチャー・プレートを、温度37℃、湿度100%、5%炭酸ガス及び95%大気の条件下に48時間静置した。ゲルと孔との体積比が3.80:0.322であるから、ゲル中と孔中の溶液のIL−2濃度が平衡に達すると、その濃度は約4.6ng/mlになるはずである。
【0130】
孔にIL−2を含まない非働化ウシ胎児血清/2×RPMI1640培地溶液を超純水で2倍希釈した溶液を添加後、一定時間ごとに、孔三つの中から当該溶液を0.02mlずつ採取し、それらを合わせて0.2ml容量のチューブに入れ、−20℃にて凍結させた。全サンプリング及び凍結終了後、全サンプルを融解させ、マウスIL−2ELISA READY−SET−GO(イー・バイオサイエンス社製)を使用して、その能書の方法に従い、IL−2濃度を測定した。
【0131】
得られた結果を図7に示す。なお、縦軸の数値は、IL−2含有アガロースゲルを粉砕し、ゲル内から溶液を搾り出し、その溶液について上記と同様にIL−2濃度を測定し、このようにして得られた値を100%として、孔から採取した溶液のIL−2濃度を百分率で表したものである。
【0132】
図7に示された結果より、孔にIL−2を含まない前記溶液を添加後、IL−2はゲル中から孔中の前記溶液中に拡散し、孔中の溶液のIL−2濃度は、2時間で平衡濃度の約1割、6時間以内に3割以上、48時間では約7割となったことが分かる。
【0133】
以上の結果から、比較的緩やかではあるが、IL−2がゲル中から孔中の溶液中に拡散、移動したことが確認された。
【0134】
実施例3
アガロース0.2gをメジュームボトル中で20mlの超純水に懸濁させ(濃度:1w/v%)、次いで、オートクレーブ(トミー精工社製、SS−320)を用い、温度121℃で15分間、アガロースを加熱溶解させた。得られたアガロース溶液を入れたボトルを、温度41℃にセットしたウォーター・インキュベータに浸漬し、アガロース溶液を41℃まで冷却した。
【0135】
次いで、RPMI1640培地粉末(GIBCO BRL社製、RPMI Medium 1640)10.4gを500mlの超純水に溶解し、得られた溶液(2倍濃度)を、細孔サイズ0.2μmのニトロセルロースろ過膜に通してろ過滅菌を行った。滅菌後の溶液に、非働化ウシ胎児血清100mlを無菌的に加えた。このようにして調製された非働化ウシ胎児血清/2×RPMI1640培地溶液30mlを、滅菌ボトル4本の各々に入れた。4本の滅菌ボトルを、温度41℃にセットしたウォーター・インキュベータに浸漬し、非働化ウシ胎児血清/2×RPMI1640培地溶液を41℃まで加温した。
【0136】
このうち3本に、アミノプテリン(シグマ社製Hybri−Max、50倍濃度、コードNo.A5159、葉酸拮抗剤)を二五分の一容量(2倍濃度)で加え、その3本の中の1本には、HTサプリメント(100倍濃度)(ギブコ/インビトロジェン社製、コードNo.11067−030、ヒポキサンチンとチミジンとの混合液)を五〇分の一容量(2倍濃度)で加え、3本の中の別の1本には、HTサプリメント(100倍濃度)を五〇〇分の一容量(0.2倍濃度)で加え、加温を続けた。
【0137】
以上のように、1本はアミノプテリンもHTも含まず[A(−)、H(−)]、1本はアミノプテリンを含むがHTを含まず[A(+)、H(−)]、1本はアミノプテリンとHTを含み[A(+)、H(+)]、最後の1本はアミノプテリンと1桁少ない濃度のHTを含む[A(+)、H(0.1+)]ものであった。
【0138】
次いで、41℃にて、アガロース溶液とアミノプテリン/HT/血清入り[A(+)、H(+)]RPMI1640培地溶液(2倍濃度)とを、無菌的に20mlずつ混ぜ合わせた。これにより、2倍濃度で準備した上記RPMI1640培地成分、非働化ウシ胎児血清、アミノプテリン、HTサプリメントの最終濃度は、準備したものの半分となり、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ作製時にHAT(ヒポキサンチン+アミノプテリン+チミヂン)選択培養する際のHATの使用濃度と等しくなった。
【0139】
このようにして得られた溶液を、12穴のカルチャー・プレート(ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー製;FALCON MULTIWELL TISSUE CULTURE PLATE;カタログ番号353043;直径22mm)の各穴に、2.3mlずつ分注した。
【0140】
また、残ったアミノプテリン/HT/血清入りRPMI1640培地溶液(2倍濃度)10mlに、ろ過減菌した超純水10mlを加え、アガロースを含まないこと以外は同等組成の培地溶液を調製し、これを比較対照用とした。
【0141】
分注後、前記カルチャー・プレートを室温で60分間以上放冷し、穴内の溶液をゲル化させた。ゲル化後の溶液を、以後、アミノプテリン/HT含有アガロースゲルと呼ぶ。
【0142】
各穴内のアミノプテリン/HT含有アガロースゲルの中央を、直径6mmのバイオプシー・パンチで打ち抜き、ゲルを除去した。
【0143】
バイオプシー・パンチで打ち抜いて形成された孔に、先に調製したアガロースを含まないこと以外は同等組成の培地溶液0.17mlを入れ、カルチャー・プレートを、温度37℃、湿度100%、5%炭酸ガス及び95%大気の条件のインキュベータ内に30分間以上静置した。
【0144】
インキュベータからゲルを取出し、くり貫き孔に加えた培地溶液を吸引除去した。次いで、その孔に、先に調製したアガロースを含まないこと以外は同等組成の培地溶液1ml当たりモノクローナル抗体産生ハイブリドーマKNA14.2を1×106個含むハイブリドーマ分散液0.1mlを入れた。その孔に、更に、先に調製したアガロースを含まない以外は同等組成の培地溶液0.05mlを加え、温度37℃、湿度100%、5%炭酸ガス及び95%大気の条件下で培養した。
【0145】
比較対照として、96穴のカルチャー・プレート(ナルジェヌンク・インターナショナル社製;ヌンク96ウェルプレート;カタログ番号167008;直径6.4mm)の各穴に、前記ハイブリドーマ分散液0.1mlを入れ、その孔に、更に、アガロースを含まないこと以外は同等組成の培地溶液0.1mlを加えて全量0.2mlとし、前記と同条件で培養した。なお、使用した96穴のカルチャー・プレートの各穴に液体を0.2ml加えた場合の深さと、12穴のカルチャー・プレートの各穴に液体を2.3ml加えた場合の深さは、計算上ほぼ等しく、その差による影響は、理論上極小化されている。
【0146】
培養2日目、3日目、4日目に、96穴のカルチャー・プレートの穴及び12穴のカルチャー・プレートの穴内のゲルに形成された孔(以後、便宜上、「穴及び孔」ということがある)の各々から、10マイクロリットルの培養上清(1)を採取し、入替えに1%トライトンX−100/PBSを10マイクロリットル加え、室温に30分間放置した。これにより、生きた細胞は死んでLDH(ラクトース・デヒドロゲナーゼ)を含む細胞内液が、培養上清中に拡散してくる。
【0147】
30分後、穴及び孔内の培養上清各々を、10マイクロリットルずつ静かに取った。先に採取した培養上清(1)と、ここで採取した培養上清(2)の各々を、PBSで10倍に希釈した。これらの希釈された培養上清(1)及び(2)の各々に、MTX−LDH試薬(極東製薬工業株式会社製)を加え、上清中に出たLDHによる発色反応を起こさせ、550nmの吸光度を測定した。
【0148】
この実験では、ゲルが潰れてしまう為、予め遠心操作によって洗浄することはできない。従って、培養上清(2)のみを測定したのでは、死細胞に由来するLDHの量も測定してしまうことになる。そこで、死細胞に由来するLDHの量の影響を排除するために、1%トライトンX−100を加える前に採取した培養上清(1)(PBSで希釈後)のLDH値を、1%トライトンX−100を加えてから採取した培養上清(2)(PBSで希釈後)のLDHの値から差し引いた。実験は、三重測定で行い、図8(ゲルを使用した本発明例、12穴カルチャー・プレート使用)及び図9(対照例、96穴カルチャー・プレート使用)には、得られた値の平均値を示した。
【0149】
アミノプテリン/HT/血清入り[A(+)、H(+)]RPMI1640培地溶液(2倍濃度)の替わりに、血清入り[A(−)、H(−)]RPMI1640培地溶液(2倍濃度)、アミノプテリン/血清入り[A(+)、H(−)]RPMI1640培地溶液(2倍濃度)、又はアミノプテリン/HT/血清入り[A(+)、H(0.1+)]RPMI1640培地溶液(2倍濃度)を用いた以外は同様の実験を行なった。それらの結果も、図8及び図9に示した。
【0150】
図8及び図9より、96穴カルチャー・プレートの穴(容量:200マイクロリットル)内での培養と比べ、ゲルに形成された孔中での培養では、LDHの産生量が多いことが分かる。従って、ゲルに形成された孔中で培養した方が、細胞がより活性であるといえる。また、ゲルに形成された孔中で細胞を培養すると、細胞がより活性であるため、アミノプテリンによる細胞増殖の阻害([A(+)、H(−)])がヒポキサンチンによって補償される([A(+)、H(0.1+)]及び[A(+)、H(+)]、サルベージ回路による)ことが、より明瞭に示された。
【0151】
実施例4
細胞をより長期間培養するため、ハイブリーマKNA14.2を1×106個/mlの濃度で含むハイブリドーマ分散液の代わりに、1×105個/mlの濃度で含むハイブリドーマ分散液を用いた以外は、実施例3と同様の実験を行なった。
【0152】
培養4日目及び6日目に、穴及び孔の各々から、10マイクロリットルの培養上清(1)を採取した。この採取と入替えに、1%トライトンX−100/PBSを10マイクロリットル加え、室温に30分放置後、穴及び孔中各々の培養上清(2)を10マイクロリットルずつ静かに取った。培養上清(1)及び(2)各々をPBSで10倍に希釈した。これらの希釈された培養上清(1)及び(2)の各々に、MTX−LDH試薬(極東製薬工業株式会社製)を加え、実施例3に記載した方法で、LDH量を測定した。
【0153】
実験は、三重測定で行い、図10(培養4日目の測定値)及び図11(培養6日目の測定値)に、得られた値の平均値と標準偏差の幅を示した。
【0154】
図10より、従来の方法(96穴カルチャープレートでの培養)では、アミノプテリンによる細胞増殖の阻害([A(+)、H(−)])を、ヒポキサンチンが40%程度しか補償できなかった([A(+)、H(+)]、[A(+)、H(0.1+)])が、本発明の方法(ゲルに形成された孔内での培養)では、細胞がより活性であるため、ほぼ100%補償できた([A(+)、H(+)]、[A(+)、H(0.1+)])ことが分かる。
【0155】
また、図11より、従来の方法では、経時によるヒポキサンチンの消費により、ヒポキサンチン濃度が低い条件での培養([A(+)、H(0.1+)])では、もはやアミノプテリンによる細胞増殖の阻害([A(+)、H(−)])をヒポキサンチンが殆ど補償できなかったが、本発明の方法では、ゲルを通してヒポキサンチンが供給され続けるので、ヒポキサンチン濃度が低い条件での培養([A(+)、H(0.1+)])でも、通常濃度での培養([A(+)、H(+)])と同レベルで、しかも従来の方法よりは高レベルで、アミノプテリンによる細胞増殖の阻害([A(+)、H(−)])をヒポキサンチンが補償できたことが分かる。
【0156】
実施例5
ハイブリーマKNA14.2を1×106個/mlの濃度で含むハイブリドーマ分散液の代わりに、5×105個/mlの濃度で含むハイブリドーマ分散液を用いた以外は、実施例3と同様の方法で培養を行なった。
【0157】
培養開始から3日目に、アミノプテリン/血清入り[A(+)、H(−)]RPMI1640培地溶液で培養された細胞と、アミノプテリン/HT/血清入り[A(+)、H(+)]RPMI1640培地溶液で培養された細胞の状態を顕微鏡下で写真撮影した(×200)。
【0158】
図12及び図13は、各々、従来の方法(96穴カルチャープレートでの培養)による、アミノプテリン/血清入り[A(+)、H(−)]RPMI1640培地溶液で培養された細胞と、アミノプテリン/HT/血清入り[A(+)、H(+)]RPMI1640培地溶液で培養された細胞を、又、図14及び図15は、各々、本発明の方法(ゲルに形成された孔内での培養)による、アミノプテリン/血清入り[A(+)、H(−)]RPMI1640培地溶液で培養された細胞と、アミノプテリン/HT/血清入り[A(+)、H(+)]RPMI1640培地溶液で培養された細胞を示す。
【0159】
図13と図15とを比べると明らかなように、本発明の方法で培養した方(図15)が、細胞の数が多く(細胞が密集している)且つ状態がよく、アミノプテリンによる細胞増殖阻害がヒポキサンチンによって補償されていることがよく分かる。また、共にアミノプテリンによる細胞増殖の阻害状況を示す図12(従来の方法)と図14(本発明の方法)との比較においても、本発明の方法で培養した方(図14)が、細胞の数が多く(細胞のない個所(空隙)が少ない)且つその状態がよいことが分かる。
【0160】
【発明の効果】
本発明によれば、ゲル等によって囲まれて形成された孔中(局所)に細胞や組織片を集約させることができ、その結果、細胞等の密度を高く保ちつつ、細胞の絶対数や組織片の絶対量を少なくして、細胞数や組織片の量に対して培養液量を多くすることができるので、長期間に亘って細胞や組織片を培養し、観察又は観測することが可能となる。
【0161】
また、本発明の培養器の中、培養液中に薬剤等が含有されている培養器を用いれば、薬剤等が細胞等に及ぼす影響を、長期間に亘って観察又は観測することが可能となる。特に、薬剤等が予めゲルに保持されているものを用いる場合には、培地と細胞等さえ用意すれば、誰もが同じ条件で、容易に細胞等の培養と薬剤等が細胞等に及ぼす影響の観察、観測を行なうことができるという利点も得られる。
【0162】
支持容器の凹状部表面に電極を印刷しておけば、細胞等の状態の電気的観測も容易に行なうことができる。
【0163】
本発明の培養方法によれば、ゲル等によって囲まれた孔中(局所)に細胞等を集約または位置的に限定させるので、細胞等を培養開始当初からよい状態で、しかも長期間に亘って観察または観測することが可能になる。また、ゲル等に薬剤等を保持させておけば、当該薬剤等が細胞に及ぼす影響を長期間に亘って観察又は観測することが可能になる。例えば96穴カルチャー・プレートの一穴分の容積(200マイクロリットル)で細胞を培養する場合であっても、より長期間、容易に、観測しながら細胞を培養できるので、薬剤等が細胞に与える影響を、より長期間観測することが可能である。
【0164】
本発明の培養方法では、細胞等を局所に集約させるので、光学的あるいは電気的に細胞等の状態を観測する際に、特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本願第一の発明の培養器の一好適例を示す。同図中、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【図2】図2は、本願第一の発明の培養器の他の好適例を示す。同図中、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【図3】図3は、穴を有する、本願第一の発明の培養器の一例を示す。同図中、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図4】図4は、支持容器の底部表面に電極が貼付け又は印刷されている、本願第一の発明の培養器の一例の平面図である。
【図5】図5は、支持容器の底部表面に電極が貼付け又は印刷されている、本願第一の発明の培養器の他の一例の平面図である。
【図6】図6は、トリパンブルー含有アガロースゲルから、孔中の培養液中への、トリパンブルーの拡散、溶出の程度を示すグラフである。
【図7】図7は、IL−2含有アガロースゲルから、孔中の培養液中への、IL−2の拡散、溶出の程度を示すグラフである。
【図8】図8は、アガロースゲルに形成された孔中での細胞培養実験(アミノプテリンによる細胞増殖抑制と、ヒポキサンチンによるその抑制の補償)(本発明の方法)の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、96マルチウェルプレート中での細胞培養実験(アミノプテリンによる細胞増殖抑制と、ヒポキサンチンによるその抑制の補償)(従来の方法)の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、96マルチウェルプレート中(従来の方法)及びアガロースゲルに形成された孔中(本発明の方法)での細胞培養実験(アミノプテリンによる細胞増殖抑制と、ヒポキサンチンによるその抑制の補償)の結果を示すグラフである。
【図11】図11は、96マルチウェルプレート中(従来の方法)及びアガロースゲルに形成された孔中(本発明の方法)での細胞培養実験(アミノプテリンによる細胞増殖抑制と、ヒポキサンチンによるその抑制の補償)の結果を示すグラフである。
【図12】図12は、従来の方法によって培養された細胞の顕微鏡写真(×200)である。
【図13】図13は、従来の方法によって培養された細胞の顕微鏡写真(×200)である。
【図14】図14は、本発明の方法によって培養された細胞の顕微鏡写真(×200)である。
【図15】図15は、本発明の方法によって培養された細胞の顕微鏡写真(×200)である。
【符号の説明】
1 シャーレ
3 ゲル状物質
5 孔
6 リード線
7 凹状部表面
8 電極
9 穴
10、20、30、40、50 培養器
Claims (38)
- 凹状部を有する支持容器と、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質とを備える培養器であって、当該ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質は、当該支持容器の凹状部内に配設されており、当該支持容器の凹状部表面が露出するような孔を一つ以上有しており、且つ、培地成分を含有する溶液を保持していることを特徴とする培養器。
- 培地成分を含有する溶液が、更に、一種以上の被検物質をも含有している、請求項1に記載の培養器。
- 凹状部を有する支持容器が、培養シャーレ又はマルチウェルプレートである、請求項1又は2に記載の培養器。
- ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質が、寒天、アガロース及びセルロース誘導体からなる群から選択される一種以上の物質がゲル化したゲル状物質である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の培養器。
- 被検物質が、薬剤、栄養素、増殖因子(growth factor)及び阻害因子からなる群から選択される一種以上の物質である、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の培養器。
- 孔が、円柱、逆円錐台、角柱又は逆角錐台の形状である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の培養器。
- 孔の深さが、孔底部の支持容器の凹状部表面露出部の直径又は対角線の長さの4分の1以上である、請求項6に記載の培養器。
- ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質が有する孔により露出された支持容器の凹状部表面に電極が貼付け又は印刷されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の培養器。
- ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質が、更に、支持容器の凹状部表面を露出させない穴及び前記孔よりもその容積が大きい大孔からなる群から選択される一種以上を一つ以上有する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の培養器。
- 凹状部を有する支持容器の凹状部内に、凹状部表面の一部を覆うことができ且つ特定の高さを有する障害物を配置する工程a、後工程でゲル状となる培地成分を含有する溶液を支持容器の凹状部内に注入する工程b、及び、溶液をゲル化させる工程cを含むことを特徴とする培養器の製造方法。
- 後工程でゲル状となる培地成分を含有する溶液が、更に、一種以上の被検物質をも含有する、請求項10に記載の培養器の製造方法。
- 工程cより後に行われる工程であって、障害物を除去する工程dを更に含む、請求項10又は11に記載の培養器の製造方法。
- 支持容器の凹状部表面に電極が貼付け又は印刷されている支持容器を用いる、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の培養器の製造方法。
- 支持容器の凹状部表面の一部にのみ電極が貼付け又は印刷されており、且つ、工程aにおいて、障害物は、凹状部表面の一部であって電極が貼付け又は印刷された部分を覆うように配置される、請求項13に記載の培養器の製造方法。
- 工程cより後に行われる工程であって、溶液がゲル化して形成された層の一部をくり貫き、支持容器の凹状部表面を露出させない穴、及び、前記障害物を取り除いた際に形成される支持容器の凹状部表面が露出するような孔よりもその容積が大きい大孔からなる群から選択される一種以上を一つ以上形成する工程eを更に含む、請求項10乃至14のいずれか1項に記載の培養器の製造方法。
- 支持容器の凹状部内に、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質であって、培地成分を含有する溶液を保持している物質の層を形成する工程A、及び、工程Aで形成された層の一部を支持容器の凹状部表面が露出するようにくり貫いて、孔を一つ以上形成する工程Bを含むことを特徴とする培養器の製造方法。
- 培地成分を含有する溶液が、更に、一種以上の被検物質をも含有する、請求項16に記載の培養器の製造方法。
- 支持容器の凹状部表面に電極が貼付け又は印刷されている支持容器を用いる、請求項16又は17に記載の培養器の製造方法。
- 支持容器の凹状部表面の一部にのみ電極が貼付け又は印刷されており、且つ、工程Bにおいて、凹状部表面の一部であって電極が貼付け又は印刷された部分が露出するように、工程Aで形成された層の一部をくり貫いて孔を形成する、請求項18に記載の培養器の製造方法。
- 工程Aより後に行われる工程であって、工程Aで形成された層の一部をくり貫き、支持容器の凹状部表面を露出させない穴及び前記孔よりもその容積が大きい大孔からなる群から選択される一種以上を一つ以上形成する工程Cを更に含む、請求項16乃至19のいずれか1項に記載の培養器の製造方法。
- 支持容器の凹状部内に形成される層が、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で構成され、工程Aが、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質に、培地成分を含有する溶液を含浸させることを含む、請求項16乃至20のいずれか1項に記載の培養器の製造方法。
- 支持容器の凹状部内に形成される層が、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で構成され、工程Aが、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質に、培地成分と一種以上の被検物質とを含有する溶液を含浸させることを含む、請求項17乃至20のいずれか1項に記載の培養器の製造方法。
- 支持容器の凹状部内に形成される層が、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で構成され、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質には、減圧乾燥又は凍結乾燥されてなる被検物質が予め付着されており、工程Aが、スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質に培地成分を含む溶液を含浸させることを含む、請求項17乃至20のいずれか1項に記載の培養器の製造方法。
- 支持容器の凹状部内に、ゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層を形成する工程Ia、工程Iaで形成された層の一部を支持容器の凹状部表面が露出するようにくり貫いて、孔を一つ以上形成する工程IIa、及びゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層に、培地成分を含有する溶液を保持させる工程IIIaを含むことを特徴とする培養器の製造方法。
- 培地成分を含有する溶液が、更に、一種以上の被検物質をも含有する、請求項24に記載の培養器の製造方法。
- 支持容器の凹状部内に、一種以上の被検物質を保持するゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層を形成する工程Ib、工程Ibで形成された層の一部を支持容器の凹状部表面が露出するようにくり貫いて、孔を一つ以上形成する工程IIb、及びゲル状物質、スポンジ状物質及びメッシュ状物質からなる群から選択される一種以上の物質の層に、培地成分を含有する溶液を保持させる工程IIIbを含むことを特徴とする培養器の製造方法。
- 層状のスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質に孔を一つ以上形成する工程1a、工程1aで形成された孔を一つ以上有するスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質を支持容器の凹状部内に入れる工程2a、及びスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質の層に、培地成分を含有する溶液を保持させる工程3aを含むことを特徴とする培養器の製造方法。
- 培地成分を含有する溶液が、更に、一種以上の被検物質をも含有する、請求項27に記載の培養器の製造方法。
- 一種以上の被検物質を保持する層状のスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質に孔を一つ以上形成する工程1b、工程1bで形成された孔を一つ以上有するスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質を支持容器の凹状部内に入れる工程2b、及びスポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質の層に、培地成分を含有する溶液を保持させる工程3bを含むことを特徴とする培養器の製造方法。
- 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の培養器を用い、当該培養器の孔に培養液と被検細胞又は組織片とを入れ、培養器をインキュベートすることによって当該被検細胞又は組織片を培養することを特徴とする培養方法。
- 請求項9に記載の培養器であって、培地成分を含有する溶液が被検物質をも含有する培養器を用い、当該培養器の孔に被検物質をも含有する培養液と被検細胞又は組織片とを入れ、当該培養器の穴及び/又は大孔には被検物質をも含有する培養液を入れ、必要に応じて当該穴及び/又は大孔内の溶液を交換して被検物質を補充しながら培養器をインキュベートすることによって当該被検細胞又は組織片を培養することを特徴とする培養方法。
- 請求項1、3、4、6、7、8及び9のいずれか1項に記載の培養器であって、培地成分を含有する溶液が被検物質を含有しない培養器を用い、当該培養器の孔に培養液と被検細胞又は組織片とを入れ、培養器をインキュベートすることによって当該被検細胞又は組織片を培養し、且つ、培養途中において、孔に被検物質を添加し、当該被検物質が当該被検細胞又は組織片に与える影響を観察又は観測することを特徴とする、被検物質の細胞又は組織片に対する影響を観察又は観測する方法。
- 凹状部を有する支持容器、培地成分、その水溶液がゲル状物質となる物質、及び支持容器の凹状部表面の一部を覆うことができ且つ特定の高さを有する障害物一つ以上とを含むことを特徴とする培養器作製用キット。
- 凹状部を有する支持容器、培地成分、その水溶液がゲル状物質となる物質、及びゲル状物質の層のくり貫き用用具とを含むことを特徴とする培養器作製用キット。
- スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で形成された平板状の培養基材であって、一つ以上の孔を有しており、当該基材中には培地成分が保持されている、培養基材。
- スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で形成された平板状の培養基材であって、一つ以上の孔を有しており、当該基材中には一種以上の被検物質が保持されている、培養基材。
- スポンジ状物質及び/又はメッシュ状物質で形成された平板状の培養基材であって、一つ以上の孔を有しており、当該基材中には培地成分と一種以上の被検物質が保持されている、培養基材。
- 一つ以上の穴及び/又は前記孔よりもその容積が大きい大孔を更に有する、請求項35乃至37のいずれか1項に記載の培養基材。
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