JP2004138691A - 静電潜像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高速化・高画質化に必要な高耐久性と十分なる現像・転写効率を両立したトナーを効率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくともバインダ樹脂および着色剤からなるトナー用組成物を混合、溶融混練した後、微粉砕して得られたトナー母粒子を表面改質処理する静電潜像現像用トナーの製造方法において、トナー母粒子の軟化点が140℃以上であり、表面改質処理が熱風によるものであり、表面改質処理後のトナーの球形度が0.94以上であり、かつ下記(1)式で求められるカップリング発生量が0.04%以下であることを特徴とする静電潜像現像用トナーの製造方法。
カップリング発生量=[表面改質処理後の、(2×D)以上の粒子の個数割合]−[表面改質処理前の、(2×D)以上の粒子の個数割合]・・・・・・(1)
Dはトナー粒子の平均粒径(μm)を表す。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくともバインダ樹脂および着色剤からなるトナー用組成物を混合、溶融混練した後、微粉砕して得られたトナー母粒子を表面改質処理する静電潜像現像用トナーの製造方法において、トナー母粒子の軟化点が140℃以上であり、表面改質処理が熱風によるものであり、表面改質処理後のトナーの球形度が0.94以上であり、かつ下記(1)式で求められるカップリング発生量が0.04%以下であることを特徴とする静電潜像現像用トナーの製造方法。
カップリング発生量=[表面改質処理後の、(2×D)以上の粒子の個数割合]−[表面改質処理前の、(2×D)以上の粒子の個数割合]・・・・・・(1)
Dはトナー粒子の平均粒径(μm)を表す。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真、静電印刷などに用いられる静電潜像現像用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機やプリンターの高速化・高画質化が進んでいる。トナーの性能には、高速化に伴うトナーへのストレス増大に耐えうる耐久性が必要とされるが、一般に高耐久性トナーは堅く、大きな力で粉砕する必要があるため、粉砕後のトナー形状には大きな凹凸が存在する。この凹凸はトナーの帯電性不良、トナー同士の凝集を増大させる原因となり、紙への画像形成のため行われる現像・転写工程において、しばしば部分的な現像・転写効率ムラを引き起こし、ベタムラ・文字欠けなどの画像欠陥を引き起こす問題があった。このことは高画質化要求とは相反するものであるため、かかる問題に対し、流動性向上剤なる添加剤を大量に添加し、現像・転写効率を向上させる検討もなされて来たが、未だ満足できるレベルではなく、逆に添加し過ぎた場合にはフィルミングという別の問題を引き起こす原因にもなっていた。
【0003】
一方、現像、転写効率に優れたトナーを製造する技術として、熱風処理を施すことでトナーを球形化する方法が開示されている(例えば、特許文献1 参照)が、表面を溶融させて球形化するというシステム上、バインダ樹脂の軟化点/ガラス転移点を高く設定することには限界があるため、高速現像に必要な耐久性が不足するという問題があった。また、熱風処理の際には、カップリング(表面が溶融したトナー同士の合一化)防止のため流動開始剤で前処理する技術も併用されるが、軟化点/ガラス転移点の高い樹脂の場合には十分満足できるレベルではなく、後の分級工程でカップリングした粗大粒子を取り除く必要があるため、生産行程が複雑になる上、生産コスト面でもデメリットであった。更には、カップリングした粗大粒子は帯電ブレードと現像スリーブの間に挟まり、しばしばトナー形成不良(スジ)を引き起こす原因となることが問題であった。
【0004】
以上の通り、高速化に必要な耐久性を有する軟化点/ガラス転移点の高いトナーを、カップリングを抑制しつつ球形化する充分な技術は完成されていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−295929号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述の従来技術に鑑みてなされたもので、従って、本発明は、高速化・高画質化に必要な高耐久性と十分なる現像・転写効率を両立したトナーを効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、耐久性を満足できるトナー、すなわち高軟化点/ガラス転移点を有するトナー母粒子であっても、特定の方法、条件で表面改質処理を行うことにより、カップリング発生量が少なく、後分級工程なしに球形化を達成することができ、トナーの耐久性と高画質化の両立化を達成し得る手法を見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、少なくともバインダ樹脂および着色剤からなるトナー用組成物を混合、溶融混練した後、微粉砕して得られたトナー母粒子を表面改質処理する静電潜像現像用トナーの製造方法において、トナー母粒子の軟化点が140℃以上であり、表面改質処理が熱風によるものであり、表面改質処理後のトナーの球形度が0.94以上であり、かつ下記(1)式で求められるカップリング発生量が0.04%以下であることを特徴とする静電潜像現像用トナーの製造方法、に存する。
【0009】
【数3】
カップリング発生量=[表面改質処理後の、(2×D)以上の粒子の個数割合]−[表面改質処理前の、(2×D)以上の粒子の個数割合]・・・・・・(1)
Dはトナー粒子の平均粒径(μm)を表す。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法について、詳細に説明する。本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子は、バインダ樹脂、着色剤、必要に応じて添加されるワックス、磁性粉、帯電制御剤、その他の物質等を混合、溶融混練し、微粉砕した粉末である。
【0011】
バインダ樹脂としては、トナーに適した公知の種々のものが使用できる。例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂並びにポリビニルブチラール樹脂等があるが、本発明に用いるのに特に好ましい樹脂としては、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0012】
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体及びスチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等、スチレンまたはスチレン置換体を含む単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0013】
ポリエステル系樹脂としては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させることにより得られるものが好ましい。
多価アルコール成分のうち2価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられ、中で、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコールのうち少なくとも何れかを含むものが好ましい。
【0014】
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0015】
また、多価カルボン酸成分のうち2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクチルコハク酸、およびこれらの酸の無水物あるいは低級アルキルエステルが挙げられ、中で、イソフタル酸、テレフタル酸のうち少なくとも何れかを含むものが好ましい。
【0016】
3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンボール二量体酸、およびこれらの酸の無水物、低級アルキルエステル等が挙げられ、中で、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの酸の無水物、低級アルキルエステル等のうち少なくとも1つ以上を含むものが好ましい。
【0017】
ポリエステル樹脂の酸価は、2〜50KOHmg/gが好ましく、3〜30KOHmg/gのものがより好ましい。酸価が前記範囲未満の場合は、着色剤や帯電制御剤の分散性が低下する場合や、トナー粒子の帯電量が低下する場合がある。また酸価が前記範囲を超過となると、特に湿度変動に対するトナー帯電量の安定性が損なわれる場合がある。なお、ポリエステル樹脂の酸価は、樹脂試料をトルエン等の溶媒に溶解し、指示薬を用いて滴定した値から算出したものである。
【0018】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの重縮合物などが好適に使用できる。例えば、三井化学社製のエポミックR362、R364、R365、R367、R369、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−012、YD−014、YD−904、YD−017、シェルケミカル社製のエピコート1002、1004、1007等、市販のものも使用できる。
【0019】
また、上記樹脂は単独で使用するに限らず、2種以上を併用することもできる。更に、特公昭50−23354号公報、特開昭50−44836号公報に記載される架橋系バインダ樹脂、あるいは特公昭55−6895号公報、特公昭63−32180号公報に記載される非架橋系バインダ樹脂等も使用できる。
該トナー用バインダ樹脂の軟化点は、フローテスタ法で測定した値が、120℃以上であるのが好ましく、また、160℃以下であるのが好ましい。バインダ樹脂の軟化点が120℃未満の場合、高速複写における耐久性に劣る場合があり、160℃を越える場合は、定着強度が悪化する場合がある。
【0020】
ここで、フローテスタ法とは、フローテスター(CFT−500:島津製作所社製など)を用い、試料1.0gをキャピラリダイス:径1mm×長さ10mmを用いて、加重30kgfの条件にて、80〜200℃の温度範囲を3℃/分で昇温した際の、流出開始温度と流出終了時の温度との中間温度として測定した値である。
【0021】
また、バインダ樹脂のガラス転移温度は、示差熱分析装置で測定したときの転移開始温度(変曲点)として50℃以上であるのが好ましい。ガラス転移温度が50℃未満の場合、長期保管時の熱安定性が悪く、トナーの凝集や固化を生じる場合がある。
着色剤としては、従来から用いられるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、酸化チタン、亜鉛華、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、紺青、各種カーボンブラック、ランプブラック、フタロシアニンブルー、アニリンブルー、カルコイルブルー、ウルトラマリンブルー、メチレンブルークロリド、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、ローズベンガル、デュポンオイルレツド、トリアリルメタン系染料、アントラキノン染料、モノアゾ及びジスアゾ系染顔料などを相当するトナーの色に合わせて単独または適宜混合して用いる。
【0022】
着色剤の含有量は、現像により可視像を形成することができるようトナーを着色するに十分な量であればよく、例えばバインダ樹脂100重量部に対して3〜20重量部とするのが好ましい。
また、黒トナーの場合は、前記の着色剤以外に、着色剤の一部または全部を磁性体で置き換えることができる。このような磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト、鉄等、公知の磁性体微粒子が使用可能である。磁性粒子の平均粒径は製造時における分散性を得る意味において、好ましくは1μm以下、特に0.5μm以下が好ましい。黒色の非磁性トナーとしての特性を持たせつつ、飛散防止や帯電制御等の観点で添加する場合は、その添加量はバインダ樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部、より好ましくは1〜5重量部である。添加量が前記範囲を超えるとトナーに対する現像剤担持体(マグネットローラ内蔵)の磁気的拘束力が強くなって現像性が低下する場合がある。
【0023】
また、磁性トナーとして使用する場合の添加量は、バインダ樹脂100重量部に対して磁性体を20重量部以上、150重量部以下が好ましい。添加量が20重量部未満では、トナー飛散が増加する傾向にあり、150重量部を超えるとトナー帯電量が安定的に確保できず、画像品質の低下を引き起こす場合がある。
本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子には耐オフセット性等の特性を向上させるためにワックスを含有させてもよい。このようなワックスとしてはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、サゾールワックス、モンタン系エステルワックス、フィッシャートロプシュワックス等を挙げることができる。このようにトナーにワックスを含有させる場合は、その含有量をバインダ樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部とすることが、フィルミング等の問題を生じることなく添加による効果を得る上で好ましい。
【0024】
さらに、本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子には、目的に応じて帯電制御剤等の添加剤を含有させてもよい。帯電制御剤としては、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属錯体、アゾ系金属化合物のような含金属染料、マレイン酸を単量体成分として含む共重合体の如き高分子酸、第4級アンモニウム塩、ニグロシン等のアジン系染料等を添加することができる。
【0025】
本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子は、上記したバインダ樹脂、着色剤、必要に応じて添加されるワックス、磁性粉、帯電制御剤、その他の物質等を、常法により混合、溶融混練、粉砕し、必要に応じて分級して得ることができる。得られたトナー母粒子の粒径は、好ましくは4〜15μm、より好ましくは5〜9μmである。ここで、粒径はマルチサイザー(コールター社製)等を用いて測定することが出来る。
【0026】
こうして得られた本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子の軟化点は、前記のフローテスタ法で測定した値が140℃以上である。本発明の製造方法では、トナー母粒子の軟化点を140℃以上とすることにより、高速複写に適した耐久性を有し、更に定着での汚れ(いわゆる「ホットオフセット」現象)を抑制することができるものである。
【0027】
また、トナー母粒子のガラス転移温度は、示差熱分析装置で測定したときの転移開始温度(変曲点)として通常50℃以上、好ましくは60℃であるのが望ましい。ガラス転移温度が前記未満の場合、長期保管時の熱安定性が悪く、トナーの凝集や固化を生じる場合がある。
本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子は、軟化点および/またはガラス転移温度の異なる2種以上のバインダ樹脂を配合することによっても良いが、この場合も、トナー母粒子の軟化点および/またはガラス転移温度が前記範囲となるように配合すればよい。
【0028】
また、トナー母粒子の軟化点/ガラス転移温度は、母粒子に使用するバインダ樹脂の軟化点/ガラス転移温度に大きく依存するが、一義的には規定されず、母粒子を構成する着色剤、必要に応じて添加されるワックス、磁性粉、帯電制御剤、その他の物質等の影響を受け、更には溶融混練の条件によっても影響を受ける。
【0029】
本発明の製造方法では、軟化点の高いトナー母粒子に熱風による表面改質処理を施すこと、及び、該処理後のトナーの球形度が0.94以上、かつ前記式(1)で求められるカップリング発生量0.04%以下となる条件で表面改質処理を行うことを特徴とする。この特徴によって、高速複写に適した耐久性を有し、更に定着の際の汚れを抑制することができる。
【0030】
軟化点の高いトナー母粒子を表面改質処理するためには、トナー母粒子の流動性をできる限り上げた状態で表面改質処理することが好ましい。熱処理前のトナー母粒子の流動性を上げることにより、トナー母粒子一つ一つが処理槽の気相中で単独に存在することが可能となるので、カップリングを抑制出来るため好ましい。
【0031】
この流動性を確保するためには、流動化処理剤でトナー母粒子を前処理しておくことが好ましく、具体的には、BET値が120m2/g以上、好ましくは140m2/g以上、更に好ましくは160m2/g以上の流動化処理剤で前処理することが望ましい。BET値が120m2/g未満の流動化処理剤で前処理を施した場合、静電潜像の現像時にフィルミングやカブリ等を発生させる場合がある。これは、高温・高圧という過酷条件の中では、BET値の小さな処理剤はトナー母粒子からの脱離が起こる結果、さらなる流動化処理剤等の脱落を誘発したり、感光体を傷つけたり、トナー母粒子表面での流動化処理剤の不均一化等を引き起こすためと考えられる。なお、前記BET値は、島津製作所社製フローソーブ2300を用いてN2吸着比表面積を測定した値とする。BET値の異なる複数の流動性処理剤を併用する場合は、これを所定量混合した状態で測定したBET値が前記範囲であればよい。
【0032】
また、流動化処理剤のトナー母粒子への被覆率は、(2)式で算出される値として好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上になるように添加することが望ましい。トナー母粒子への被覆率が前記以上であると、カップリング発生量を抑制することが可能となり、高速複写に適した耐久性を有し、更に定着での汚れを抑制することが出来るため好ましい。トナー母粒子の被覆率が前記範囲未満の場合は、熱処理槽中で十分な分散ができず、溶融したトナー同士が接する確率が増大するため、カップリング発生量が増加する傾向がある。
【0033】
【数4】
【0034】
Dt:母粒子の体積平均粒径 (μm)
ρt:母粒子の真密度 (g/cm3)
Dn:流動化処理剤nの体積平均粒径(μm)
ρn:流動化処理剤nの真密度 (g/cm3)
Wn:流動化処理剤nの添加部数 (母粒子を100としたときの重量部)
a :流動化処理剤の種類数
ここで、母粒子の体積平均粒径(Dt)は、たとえば、マルチサイザー(コールター社製)等により求めることができる。また、流動化処理剤の体積平均粒径(Dn)は、例えば、透過型電子顕微鏡による観察によって得られた画像から、必要に応じて自動計算を行う画像処理装置を用いることにより求めることができる。母粒子の真密度(ρt)および流動化処理剤nの真密度(ρn)は、たとえば、差圧式、浮沈式、浸漬式等の一般的な密度測定法より適宜選択して求めることができる。
【0035】
流動化処理剤は、各種無機/有機微粒子の中から適宜選択して使用することができる。無機の微粒子としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の各種炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物、リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸、滑石、ベントナイト等の各種非磁性無機微粒子を単独であるいは組み合わせて用いることができる。
【0036】
有機微粒子としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等の微粒子を用いることができる。
これら微粒子の中では、特にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛等が好適に使用される。これら微粒子は、さらに、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニス等の疎水化処理剤、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アルミニウム塩基を有するカップリング剤、変性シリコーンオイル等の処理剤によって表面処理されているものを使用することもできる。
【0037】
これら流動化処理剤は、2種以上を併用することができる。また、疎水化処理をしたものと疎水化処理していないもの、その他表面処理をしたものと表面処理していないもの、あるいは正帯電性のものと負帯電性のもの等を適宜組み合わせて使用することができる。
これら流動化処理剤の添加量は、前記の被覆率となるように適宜設定されるが、トナー母粒子100重量部に対して、0.1〜6重量部が好ましく、0.5〜3重量部が更に好ましい。流動化処理剤の添加量が前記範囲未満の場合は、カップリング発生量が増大する場合があり、前記範囲を越える場合は、静電潜像の現像時にフィルミングやカブリ等を発生させる場合がある。
【0038】
上記の流動化処理には、公知の混合機等を用いることにより処理することができる。
なお、前記の流動化処理剤として記載した化合物は、流動化以外の目的を含め、本発明の効果を損なわない範囲で、前記したバインダ樹脂、着色剤、必要に応じて添加されるワックス、磁性粉、帯電制御剤、その他の物質等とともに、溶融混練の際の成分として含有することもできる。
【0039】
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法では、前記のトナー母粒子を熱風によって表面改質処理を行う。
以下に、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法に用いる表面改質処理装置の仕組みの概略を、構成図1を例示して説明する。図1の熱風供給装置1に圧空7を通過させて高圧熱風を発生させ、熱風供給ノズル2より処理槽3へ向けて熱風を供給する。一方、トナー母粒子はトナー供給装置4から所定量の圧空7(加圧エアー)により搬送され、トナー供給ノズル5から処理槽3に供給される。
【0040】
ここで、トナー供給ノズル5の取り付け角度は、噴射されたトナー母粒子が熱風気流に効率よく触れ、またトナー母粒子同士が衝突してカップリングが生じないように処理槽3の形状に応じて適宜最適化する。おおよそは水平面と処理槽3壁面がなす角度の1/2〜3/4の角度を水平面に対して下方向に設定する。
また、トナー供給ノズル5は複数本設置することが好ましく、通常4本以上、好ましくは6本以上を設置することが望ましい。さらには、複数本のノズルを、処理層の水平面の中心に対して対称に設置することが好ましい。4本以上のトナー供給ノズルを対称に設置することにより、熱風気流中へのトナー母粒子の均一な分散供給が可能となり、カップリングを抑制することが可能となるため望ましい。カップリング抑制に最適なノズル本数および配置は、処理槽3の形状および大きさに応じて選択される。
【0041】
複数本設置したノズルからのトナー供給量は、通常は各々同量のトナーを供給するが、処理槽3の形状および熱風の噴射状況によっては、各ノズルからのトナー供給量または供給速度を変化させることにより、均一な分散供給を達成し、カップリングを抑制することも出来る。
処理槽3では熱風によりトナー母粒子を球形化し、且つその後の溶融トナー粒子同士の衝突によるカップリングが発生しないよう、素早い加熱・冷却工程が必要となる。そのため、加熱処理時間は短い方が良く、処理槽3の大きさにより異なるが、遅くとも1秒以下、好ましくは0.7秒以下、より好ましくは0.5秒以下が望ましい。
【0042】
ここで、処理時間とは、トナー粒子がトナー供給ノズル5から噴射されてから、処理槽3より排出されるまでの滞留時間を意味する。
熱風供給装置1より得られる熱風の風量は、処理するトナー母粒子に十分な熱を均一に付与するために大きい方が好ましい。
熱風供給装置1より得られる熱風の温度は、熱風供給ノズルから供給される時点の温度として、トナー母粒子の軟化点より好ましくは160℃高い温度以上、より好ましくは170℃高い温度以上、更に好ましくは180℃高い温度以上が好ましい。熱風の温度が前記温度未満である場合は、トナー母粒子表面におけるバインダ樹脂の軟化に対する熱供給が小さいために充分に球形化されない場合や、処理時間を要するためにカップリングが多くなる場合がある。一方、熱風の温度は、熱風供給ノズルから供給される時点の温度として、トナー母粒子の軟化点より好ましくは300℃高い温度以下、より好ましくは290℃高い温度以下、更に好ましくは280℃高い温度以下が好ましい。熱風の温度が前記温度を越える場合は、冷却不良からカップリング発生を引き起こす場合がある。
【0043】
上記の表面改質処理装置としては、処理槽内に熱風を発生させることができる装置であれば機構および形状は限定されないが、例えばサーフュージングシステム(日本ニューマチック工業社製)等を用いることができる。
表面改質処理を行う際のトナー母粒子の分散濃度は、カップリング抑制という観点から、できる限り小さくしたほうが良い。すなわち、処理槽内での単位体積あたりのトナー母粒子存在密度(=分散濃度)を小さくして衝突確率を減少させたほうが好ましく、分散濃度が好ましくは75g/m3以下、更に好ましくは60g/m3以下、特に好ましくは45g/m3以下である。分散濃度を前記範囲とすることにより、カップリング発生量を抑制することが可能となり、高速複写に適した耐久性を有し、更に定着での汚れを抑制することが出来るため好ましい。分散濃度が前記濃度を越える場合は、カップリングした粒子が多くなり、トナー形成不良(スジ)を引き起こす場合がある。
【0044】
熱風により球形化処理されたトナーは、冷却風導入部より取り入れられる冷却風6により冷却される。該冷却はできる限り低い温度のほうが冷却効率が高いため好ましく、具体的には冷却風温度が、トナーに接触する時点で30℃以下、好ましくは20℃以下である。一方で冷却風温度が低過ぎる場合は、配管内部やトナーの結露を引き起こす可能性があるため、冷却風を除湿するなど注意が必要である。
【0045】
冷却風6によって冷却されたトナーは、処理槽3から排出され、圧空10によってサイクロン8に移送される。ここで圧空10は、冷却風6と同様に冷却されていてもよい。サイクロン8に移送されたトナーは製品トナー9として回収され、移送のための圧空10はバグフィルター、ブロアー11へ流れる。
こうして得られた表面改質処理後のトナーは、前記の条件で表面改質処理することによって、球形度は0.94以上、特に好ましくは0.945以上となる。球形度が高いほど静電潜像現像時の画像欠陥が少ないため望ましいが、前記未満の場合は現像・転写ムラを引き起こすため好ましくない。なお、球形度は、粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子の投影像の周囲長により算出される値の平均値とした。球形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(FPIA−2100;東亞医用電子株式会社製など)等を使用することができる。
【0046】
さらに、表面改質処理を経たトナー粒子は、(1)式で示されるカップリング発生量が、0.04%以下、さらに好ましくは0.03%以下、特に好ましくは0.025以下である。カップリング発生量が低いほどトナー形成不良(スジ)が少ないため望ましく、前記の値を越える場合は、カップリングした粒子を分級等の操作で取り除く必要が生じるため好ましくない。
【0047】
【数5】
カップリング発生量=[表面改質処理後の、(2×D)以上の粒子の個数割合]−[表面改質処理前の、(2×D)以上の粒子の個数割合]・・・・・・(1)
Dはトナー粒子の平均粒径(μm)を表す。
【0048】
ここで、「(2×D)以上の粒子の個数割合」とは、平均粒径の2倍以上の粒径をもつ粒子の個数割合を意味する。なお、粒径分布の測定は、例えば、マルチサイザー(コールター社製)などを使用して求めることができる。
さらに、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法では、表面改質処理の後に流動化処理を行うこともできる。ここで使用する流動化処理剤は、前記の、表面改質処理前に添加する流動化処理剤と同じ物質の中から適宜選択することができ、2種以上を併用することもできる。表面改質処理後の添加の場合は、トナー100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部が更に好ましい。
【0049】
表面改質処理後の流動化処理に使用する処理剤としては、BET値が、島津製作所社製フローソーブ2300を用いてN2吸着比表面積を測定した値として、好ましくは120m2/g以上、より好ましくは140m2/g以上であることが望ましい。BET値が120m2/g未満の流動化処理剤で前処理を施した場合、静電潜像の現像時にフィルミングやカブリ等を発生させる場合がある。なお、BET値の異なる複数の流動性処理剤を併用する場合は、これを所定量混合した状態で測定したBET値が前記範囲であればよい。
【0050】
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法では、前記の通りのカップリング率を達成することにより粗大粒子が少ないため、粗大粒子を除去する目的で表面改質処理後に分級操作を行うことを必須としないが、粗大粒子以外の異物等を除去するために篩別する操作等を加えることができる。
こうして得られた熱処理後のトナーの粒径は、好ましくは4〜15μm、より好ましくは5〜9μmである。
【0051】
本発明の製造方法で得られたトナーは、用いる現像方法に限定はなく、磁性トナー、非磁性トナーの何れに用いてもよく、一成分系現像用、二成分系現像用の何れに用いてもよい。また、接触帯電方式の現像であっても非接触帯電方式の現像であってもよい。また、黒色トナー、単色カラートナー、フルカラートナー用の何れにも使用できる。中で、本発明の製造方法で得られたトナーは、非磁性一成分現像用のトナーとして好適であり、フルカラー用トナーとして好適に用いることができる。
【0052】
以上の通り、本発明の製造方法で得られた静電潜像現像用トナーは、軟化点が高く、球形度が高く、カップリングした粒子が少ないため、高速化・高画質化に必要な高耐久性と十分なる現像・転写効率を両立したトナーを効率良く提供することができる。
【0053】
【実施例】
以下に、実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
[トナー母粒子の製造]
(1)トナー母粒子A
以上の材料を混合機で混合した後、二軸混練機(池貝鉄工製PCM−30)で混練し、ジェットミルで粉砕して平均粒径8.5μm、軟化点144.9℃、ガラス転移点66.7℃のトナー母粒子Aを得た。
(2)トナー母粒子B
ポリエステル樹脂にFC1233(三菱レイヨン(株)製、軟化点142℃、ガラス転移点62℃)を使用する以外、上記トナー母粒子Aと同様にして、平均粒径8.8μm、軟化点140.6℃、ガラス転移点65.1℃のトナー母粒子Bを得た。
(3)トナー母粒子C
ポリエステル樹脂にFC684(三菱レイヨン(株)製、軟化点130℃、ガラス転移点:61℃)を使用する以外、上記トナー母粒子Aと同様にして、平均粒径8.5μm、軟化点129.0℃、ガラス転移点61.5℃のトナー母粒子Cを得た。
【0054】
[表面改質処理前の流動化処理]
(流動化前処理1) トナー母粒子100重量部に対してBET値170m2/gのシリカ(R974:日本アエロジル(株)製)1.25重量部を添加し、混合機で混合した。
(流動化前処理2) トナー母粒子100重量部に対してBET値170m2/gのシリカ(R974:日本アエロジル(株)製)1.50重量部を添加し、混合機で混合した。
(流動化前処理3) トナー母粒子100重量部に対してBET値170m2/gのシリカ(R974:日本アエロジル(株)製)0.20重量部を添加し、混合機で混合した。
(流動化前処理4) トナー母粒子100重量部に対してBET値170m2/gのシリカ(R974:日本アエロジル(株)製)1.25重量部およびBET値30m2/gのシリカ(NY50:日本アエロジル(株)製)1.0重量部を添加し、混合機で混合した。
[表面改質処理]
サーフュージングシステム(日本ニューマチック工業社製)を使用し、トナー母粒子を以下に示す分散濃度および熱風温度の条件の何れかを選択して処理を行った。加熱処理時間は0.5秒、冷却風の温度は20℃とした。
【0055】
・分散濃度: 39、77、154g/cm3
・熱風温度: 300、330、360、400、440℃
[表面改質処理後の流動化処理]
(流動化後処理a) 表面改質処理後のトナー粒子100重量部に対して、BET値170m2/gのシリカ(R974:日本アエロジル(株)製)0.5重量部を添加し、混合機で混合した。
(流動化後処理b) 表面改質処理後のトナー粒子100重量部に対して、BET値30m2/gのシリカ(NY50:日本アエロジル(株)製)1.0重量部を添加し、混合機で混合した。
[測定条件等]
(1)平均粒径の測定:マルチサイザー(コールター社製)を使用。
(2)軟化点の測定 :フローテスター(CFT−500:島津製作所社製)を使用して以下の条件で測定し、流出開始温度と流出終了時の温度との中間温度を軟化点とした。
【0056】
・試料: 1.0g
・キャピラリダイス: 径1mm×長さ10mm
・負荷加重: 30kgf
・昇温速度: 3℃/min
・温度範囲: 80〜200℃
・予熱時間: 300秒
(3)ガラス転移点の測定:示差走査熱量計(DSC−2200:セイコー電子社製)を使用し、一旦、30℃から100℃間を昇温後、降温させ、再度昇温させた際の転移開始(変曲点)温度をガラス転移点とした。
【0057】
・リファレンス:アルミナ
・昇温速度: 10℃/min
・降温速度: 10℃/min
(4)流動化処理剤の被覆率の測定
被覆率は(2)式より算出した。母粒子の体積平均粒径(Dt)は、マルチサイザー(コールター社製)により求めた。流動化処理剤の体積平均粒径(Dn)は、透過型電子顕微鏡による観察によって得られた画像から、自動計算を行う画像処理装置を用いることにより求めた。
【0058】
【数6】
【0059】
Dt:母粒子の体積平均粒径 (μm)
ρt:母粒子の真密度 (g/cm3)
Dn:流動化処理剤nの体積平均粒径(μm)
ρt:流動化処理剤nの真密度 (g/cm3)
Wn:流動化処理剤nの添加部数(母粒子を100としたときの重量部)
a :流動化処理剤の種類数
実施例1:
母粒子Aを使用し、流動化前処理1を施すことにより、流動化処理剤の被覆率73%の母粒子を得た。これを、分散濃度39g/m3、熱風温度330℃の条件で表面改質処理を行った。得られたトナーの球形度は0.945、カップリング率は0.018%であった。
【0060】
このトナー100重量部に対して流動化後処理aを施した後、200メッシュの篩いで篩別した。3000枚印刷テストした際の現像・転写ムラ、スジ発生、フィルミング発生は良好であった。
実施例2〜4、比較例1〜7
表1に記載する通りに、使用する母粒子、表面改質処理前の流動化処理の種類、表面改質処理時の分散濃度、熱風温度、表面改質処理後の流動化処理の種類を変更した以外は実施例1と同様の方法で球形化処理を行った。
【0061】
得られたトナーを実施例1と同様に測定した被覆率、トナーの球形度、カップリング率、3000枚印刷テストした際の現像・転写ムラ、スジ発生、フィルミング発生の結果を表1に示す。
比較例8
母粒子Cを使用し、実施例1と同様の流動化前処理を施すことにより、流動化処理剤の被覆率88%の母粒子を得た。これを、実施例1と同様に表面改質処理を行った。しかしながら、トナー母粒子のカップリングが激しいばかりでなく、表面改質処理槽の内壁への付着も見られ、適当に表面改質処理を行うことが出来なかった。このため、表面改質処理したトナーの評価および流動化後処理、印刷適正の評価は行わなかった。
【0062】
参考1、参考2
表1に記載する通り、表面改質処理前の流動化処理のみを行った母粒子A、Bを、それぞれ参考1、参考2とした。得られたトナーを実施例1と同様に測定した被覆率、トナーの球形度の結果を表1に示す。
[評価方法]
(A)球形度
フロー式粒子像分析装置(FPIA−2100;東亞医用電子株式会社製)を使用し、粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子の投影像の周囲長により算出される値の平均値とした。
(B)カップリング率
粒度分布はマルチサイザー(コールター社製)を使用して測定し、(1)式により算出した。
【0063】
【数7】
カップリング発生量=[熱風処理後の、(2×D)以上の粒子の個数割合]−[熱風処理前の、(2×D)以上の粒子の個数割合]・・・・・・(1)
Dはトナー粒子の平均粒径(μm)を表す。
(C)現像・転写ムラ有無
非磁性一成分方式のプリンタを使用し、印刷初期および3000枚印刷した後のベタ画像のムラ、文字欠け有無の変化を目視評価にて行った。
【0064】
3000枚印刷した後のベタ画像のムラ、文字欠けが確認されない場合を○、僅かに認められる場合を△、明らかに印刷初期と差異を生じている場合を×とした。
(D)現像スリーブ上のスジ発生有無
非磁性一成分方式のプリンタを使用し、印刷初期および3000枚印刷した後の現像スリーブ上のスジ有無の変化を目視評価にて行った。
【0065】
3000枚印刷した後にスジが確認されない場合を○、僅かに認められる場合を△、明らかにスジが認められる場合を×とした。
(E)フィルミング有無
非磁性一成分方式のプリンタを使用し、印刷初期および3000枚印刷した後のベタ画像上の白スジ(感光体円周周期)有無の変化を目視評価にて行った。
【0066】
3000枚印刷した後に白スジが確認されない場合を○、僅かに認められる場合を△、明らかに白スジが認められる場合を×とした。
結果を表1に記す。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法によると、高速化・高画質化に必要な高耐久性と十分なる高現像・転写効率を両立させたトナーを、効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱風による表面改質処理用装置の概略図
【符号の説明】
1 熱風供給装置(熱源)
2 熱風供給ノズル
3 処理槽
4 トナー供給装置
5 トナー供給ノズル
6 冷却風
7 圧空
8 サイクロン
9 製品トナー
10 圧空(冷却風)
11 バグフィルター、ブロアーへ
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真、静電印刷などに用いられる静電潜像現像用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機やプリンターの高速化・高画質化が進んでいる。トナーの性能には、高速化に伴うトナーへのストレス増大に耐えうる耐久性が必要とされるが、一般に高耐久性トナーは堅く、大きな力で粉砕する必要があるため、粉砕後のトナー形状には大きな凹凸が存在する。この凹凸はトナーの帯電性不良、トナー同士の凝集を増大させる原因となり、紙への画像形成のため行われる現像・転写工程において、しばしば部分的な現像・転写効率ムラを引き起こし、ベタムラ・文字欠けなどの画像欠陥を引き起こす問題があった。このことは高画質化要求とは相反するものであるため、かかる問題に対し、流動性向上剤なる添加剤を大量に添加し、現像・転写効率を向上させる検討もなされて来たが、未だ満足できるレベルではなく、逆に添加し過ぎた場合にはフィルミングという別の問題を引き起こす原因にもなっていた。
【0003】
一方、現像、転写効率に優れたトナーを製造する技術として、熱風処理を施すことでトナーを球形化する方法が開示されている(例えば、特許文献1 参照)が、表面を溶融させて球形化するというシステム上、バインダ樹脂の軟化点/ガラス転移点を高く設定することには限界があるため、高速現像に必要な耐久性が不足するという問題があった。また、熱風処理の際には、カップリング(表面が溶融したトナー同士の合一化)防止のため流動開始剤で前処理する技術も併用されるが、軟化点/ガラス転移点の高い樹脂の場合には十分満足できるレベルではなく、後の分級工程でカップリングした粗大粒子を取り除く必要があるため、生産行程が複雑になる上、生産コスト面でもデメリットであった。更には、カップリングした粗大粒子は帯電ブレードと現像スリーブの間に挟まり、しばしばトナー形成不良(スジ)を引き起こす原因となることが問題であった。
【0004】
以上の通り、高速化に必要な耐久性を有する軟化点/ガラス転移点の高いトナーを、カップリングを抑制しつつ球形化する充分な技術は完成されていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−295929号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述の従来技術に鑑みてなされたもので、従って、本発明は、高速化・高画質化に必要な高耐久性と十分なる現像・転写効率を両立したトナーを効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、耐久性を満足できるトナー、すなわち高軟化点/ガラス転移点を有するトナー母粒子であっても、特定の方法、条件で表面改質処理を行うことにより、カップリング発生量が少なく、後分級工程なしに球形化を達成することができ、トナーの耐久性と高画質化の両立化を達成し得る手法を見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、少なくともバインダ樹脂および着色剤からなるトナー用組成物を混合、溶融混練した後、微粉砕して得られたトナー母粒子を表面改質処理する静電潜像現像用トナーの製造方法において、トナー母粒子の軟化点が140℃以上であり、表面改質処理が熱風によるものであり、表面改質処理後のトナーの球形度が0.94以上であり、かつ下記(1)式で求められるカップリング発生量が0.04%以下であることを特徴とする静電潜像現像用トナーの製造方法、に存する。
【0009】
【数3】
カップリング発生量=[表面改質処理後の、(2×D)以上の粒子の個数割合]−[表面改質処理前の、(2×D)以上の粒子の個数割合]・・・・・・(1)
Dはトナー粒子の平均粒径(μm)を表す。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法について、詳細に説明する。本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子は、バインダ樹脂、着色剤、必要に応じて添加されるワックス、磁性粉、帯電制御剤、その他の物質等を混合、溶融混練し、微粉砕した粉末である。
【0011】
バインダ樹脂としては、トナーに適した公知の種々のものが使用できる。例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂並びにポリビニルブチラール樹脂等があるが、本発明に用いるのに特に好ましい樹脂としては、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0012】
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体及びスチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等、スチレンまたはスチレン置換体を含む単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0013】
ポリエステル系樹脂としては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させることにより得られるものが好ましい。
多価アルコール成分のうち2価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられ、中で、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコールのうち少なくとも何れかを含むものが好ましい。
【0014】
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0015】
また、多価カルボン酸成分のうち2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクチルコハク酸、およびこれらの酸の無水物あるいは低級アルキルエステルが挙げられ、中で、イソフタル酸、テレフタル酸のうち少なくとも何れかを含むものが好ましい。
【0016】
3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンボール二量体酸、およびこれらの酸の無水物、低級アルキルエステル等が挙げられ、中で、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの酸の無水物、低級アルキルエステル等のうち少なくとも1つ以上を含むものが好ましい。
【0017】
ポリエステル樹脂の酸価は、2〜50KOHmg/gが好ましく、3〜30KOHmg/gのものがより好ましい。酸価が前記範囲未満の場合は、着色剤や帯電制御剤の分散性が低下する場合や、トナー粒子の帯電量が低下する場合がある。また酸価が前記範囲を超過となると、特に湿度変動に対するトナー帯電量の安定性が損なわれる場合がある。なお、ポリエステル樹脂の酸価は、樹脂試料をトルエン等の溶媒に溶解し、指示薬を用いて滴定した値から算出したものである。
【0018】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの重縮合物などが好適に使用できる。例えば、三井化学社製のエポミックR362、R364、R365、R367、R369、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−012、YD−014、YD−904、YD−017、シェルケミカル社製のエピコート1002、1004、1007等、市販のものも使用できる。
【0019】
また、上記樹脂は単独で使用するに限らず、2種以上を併用することもできる。更に、特公昭50−23354号公報、特開昭50−44836号公報に記載される架橋系バインダ樹脂、あるいは特公昭55−6895号公報、特公昭63−32180号公報に記載される非架橋系バインダ樹脂等も使用できる。
該トナー用バインダ樹脂の軟化点は、フローテスタ法で測定した値が、120℃以上であるのが好ましく、また、160℃以下であるのが好ましい。バインダ樹脂の軟化点が120℃未満の場合、高速複写における耐久性に劣る場合があり、160℃を越える場合は、定着強度が悪化する場合がある。
【0020】
ここで、フローテスタ法とは、フローテスター(CFT−500:島津製作所社製など)を用い、試料1.0gをキャピラリダイス:径1mm×長さ10mmを用いて、加重30kgfの条件にて、80〜200℃の温度範囲を3℃/分で昇温した際の、流出開始温度と流出終了時の温度との中間温度として測定した値である。
【0021】
また、バインダ樹脂のガラス転移温度は、示差熱分析装置で測定したときの転移開始温度(変曲点)として50℃以上であるのが好ましい。ガラス転移温度が50℃未満の場合、長期保管時の熱安定性が悪く、トナーの凝集や固化を生じる場合がある。
着色剤としては、従来から用いられるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、酸化チタン、亜鉛華、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、紺青、各種カーボンブラック、ランプブラック、フタロシアニンブルー、アニリンブルー、カルコイルブルー、ウルトラマリンブルー、メチレンブルークロリド、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、ローズベンガル、デュポンオイルレツド、トリアリルメタン系染料、アントラキノン染料、モノアゾ及びジスアゾ系染顔料などを相当するトナーの色に合わせて単独または適宜混合して用いる。
【0022】
着色剤の含有量は、現像により可視像を形成することができるようトナーを着色するに十分な量であればよく、例えばバインダ樹脂100重量部に対して3〜20重量部とするのが好ましい。
また、黒トナーの場合は、前記の着色剤以外に、着色剤の一部または全部を磁性体で置き換えることができる。このような磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト、鉄等、公知の磁性体微粒子が使用可能である。磁性粒子の平均粒径は製造時における分散性を得る意味において、好ましくは1μm以下、特に0.5μm以下が好ましい。黒色の非磁性トナーとしての特性を持たせつつ、飛散防止や帯電制御等の観点で添加する場合は、その添加量はバインダ樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部、より好ましくは1〜5重量部である。添加量が前記範囲を超えるとトナーに対する現像剤担持体(マグネットローラ内蔵)の磁気的拘束力が強くなって現像性が低下する場合がある。
【0023】
また、磁性トナーとして使用する場合の添加量は、バインダ樹脂100重量部に対して磁性体を20重量部以上、150重量部以下が好ましい。添加量が20重量部未満では、トナー飛散が増加する傾向にあり、150重量部を超えるとトナー帯電量が安定的に確保できず、画像品質の低下を引き起こす場合がある。
本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子には耐オフセット性等の特性を向上させるためにワックスを含有させてもよい。このようなワックスとしてはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、サゾールワックス、モンタン系エステルワックス、フィッシャートロプシュワックス等を挙げることができる。このようにトナーにワックスを含有させる場合は、その含有量をバインダ樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部とすることが、フィルミング等の問題を生じることなく添加による効果を得る上で好ましい。
【0024】
さらに、本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子には、目的に応じて帯電制御剤等の添加剤を含有させてもよい。帯電制御剤としては、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属錯体、アゾ系金属化合物のような含金属染料、マレイン酸を単量体成分として含む共重合体の如き高分子酸、第4級アンモニウム塩、ニグロシン等のアジン系染料等を添加することができる。
【0025】
本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子は、上記したバインダ樹脂、着色剤、必要に応じて添加されるワックス、磁性粉、帯電制御剤、その他の物質等を、常法により混合、溶融混練、粉砕し、必要に応じて分級して得ることができる。得られたトナー母粒子の粒径は、好ましくは4〜15μm、より好ましくは5〜9μmである。ここで、粒径はマルチサイザー(コールター社製)等を用いて測定することが出来る。
【0026】
こうして得られた本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子の軟化点は、前記のフローテスタ法で測定した値が140℃以上である。本発明の製造方法では、トナー母粒子の軟化点を140℃以上とすることにより、高速複写に適した耐久性を有し、更に定着での汚れ(いわゆる「ホットオフセット」現象)を抑制することができるものである。
【0027】
また、トナー母粒子のガラス転移温度は、示差熱分析装置で測定したときの転移開始温度(変曲点)として通常50℃以上、好ましくは60℃であるのが望ましい。ガラス転移温度が前記未満の場合、長期保管時の熱安定性が悪く、トナーの凝集や固化を生じる場合がある。
本発明の製造方法における静電潜像現像用トナーの母粒子は、軟化点および/またはガラス転移温度の異なる2種以上のバインダ樹脂を配合することによっても良いが、この場合も、トナー母粒子の軟化点および/またはガラス転移温度が前記範囲となるように配合すればよい。
【0028】
また、トナー母粒子の軟化点/ガラス転移温度は、母粒子に使用するバインダ樹脂の軟化点/ガラス転移温度に大きく依存するが、一義的には規定されず、母粒子を構成する着色剤、必要に応じて添加されるワックス、磁性粉、帯電制御剤、その他の物質等の影響を受け、更には溶融混練の条件によっても影響を受ける。
【0029】
本発明の製造方法では、軟化点の高いトナー母粒子に熱風による表面改質処理を施すこと、及び、該処理後のトナーの球形度が0.94以上、かつ前記式(1)で求められるカップリング発生量0.04%以下となる条件で表面改質処理を行うことを特徴とする。この特徴によって、高速複写に適した耐久性を有し、更に定着の際の汚れを抑制することができる。
【0030】
軟化点の高いトナー母粒子を表面改質処理するためには、トナー母粒子の流動性をできる限り上げた状態で表面改質処理することが好ましい。熱処理前のトナー母粒子の流動性を上げることにより、トナー母粒子一つ一つが処理槽の気相中で単独に存在することが可能となるので、カップリングを抑制出来るため好ましい。
【0031】
この流動性を確保するためには、流動化処理剤でトナー母粒子を前処理しておくことが好ましく、具体的には、BET値が120m2/g以上、好ましくは140m2/g以上、更に好ましくは160m2/g以上の流動化処理剤で前処理することが望ましい。BET値が120m2/g未満の流動化処理剤で前処理を施した場合、静電潜像の現像時にフィルミングやカブリ等を発生させる場合がある。これは、高温・高圧という過酷条件の中では、BET値の小さな処理剤はトナー母粒子からの脱離が起こる結果、さらなる流動化処理剤等の脱落を誘発したり、感光体を傷つけたり、トナー母粒子表面での流動化処理剤の不均一化等を引き起こすためと考えられる。なお、前記BET値は、島津製作所社製フローソーブ2300を用いてN2吸着比表面積を測定した値とする。BET値の異なる複数の流動性処理剤を併用する場合は、これを所定量混合した状態で測定したBET値が前記範囲であればよい。
【0032】
また、流動化処理剤のトナー母粒子への被覆率は、(2)式で算出される値として好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上になるように添加することが望ましい。トナー母粒子への被覆率が前記以上であると、カップリング発生量を抑制することが可能となり、高速複写に適した耐久性を有し、更に定着での汚れを抑制することが出来るため好ましい。トナー母粒子の被覆率が前記範囲未満の場合は、熱処理槽中で十分な分散ができず、溶融したトナー同士が接する確率が増大するため、カップリング発生量が増加する傾向がある。
【0033】
【数4】
【0034】
Dt:母粒子の体積平均粒径 (μm)
ρt:母粒子の真密度 (g/cm3)
Dn:流動化処理剤nの体積平均粒径(μm)
ρn:流動化処理剤nの真密度 (g/cm3)
Wn:流動化処理剤nの添加部数 (母粒子を100としたときの重量部)
a :流動化処理剤の種類数
ここで、母粒子の体積平均粒径(Dt)は、たとえば、マルチサイザー(コールター社製)等により求めることができる。また、流動化処理剤の体積平均粒径(Dn)は、例えば、透過型電子顕微鏡による観察によって得られた画像から、必要に応じて自動計算を行う画像処理装置を用いることにより求めることができる。母粒子の真密度(ρt)および流動化処理剤nの真密度(ρn)は、たとえば、差圧式、浮沈式、浸漬式等の一般的な密度測定法より適宜選択して求めることができる。
【0035】
流動化処理剤は、各種無機/有機微粒子の中から適宜選択して使用することができる。無機の微粒子としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の各種炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物、リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸、滑石、ベントナイト等の各種非磁性無機微粒子を単独であるいは組み合わせて用いることができる。
【0036】
有機微粒子としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等の微粒子を用いることができる。
これら微粒子の中では、特にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛等が好適に使用される。これら微粒子は、さらに、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニス等の疎水化処理剤、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アルミニウム塩基を有するカップリング剤、変性シリコーンオイル等の処理剤によって表面処理されているものを使用することもできる。
【0037】
これら流動化処理剤は、2種以上を併用することができる。また、疎水化処理をしたものと疎水化処理していないもの、その他表面処理をしたものと表面処理していないもの、あるいは正帯電性のものと負帯電性のもの等を適宜組み合わせて使用することができる。
これら流動化処理剤の添加量は、前記の被覆率となるように適宜設定されるが、トナー母粒子100重量部に対して、0.1〜6重量部が好ましく、0.5〜3重量部が更に好ましい。流動化処理剤の添加量が前記範囲未満の場合は、カップリング発生量が増大する場合があり、前記範囲を越える場合は、静電潜像の現像時にフィルミングやカブリ等を発生させる場合がある。
【0038】
上記の流動化処理には、公知の混合機等を用いることにより処理することができる。
なお、前記の流動化処理剤として記載した化合物は、流動化以外の目的を含め、本発明の効果を損なわない範囲で、前記したバインダ樹脂、着色剤、必要に応じて添加されるワックス、磁性粉、帯電制御剤、その他の物質等とともに、溶融混練の際の成分として含有することもできる。
【0039】
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法では、前記のトナー母粒子を熱風によって表面改質処理を行う。
以下に、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法に用いる表面改質処理装置の仕組みの概略を、構成図1を例示して説明する。図1の熱風供給装置1に圧空7を通過させて高圧熱風を発生させ、熱風供給ノズル2より処理槽3へ向けて熱風を供給する。一方、トナー母粒子はトナー供給装置4から所定量の圧空7(加圧エアー)により搬送され、トナー供給ノズル5から処理槽3に供給される。
【0040】
ここで、トナー供給ノズル5の取り付け角度は、噴射されたトナー母粒子が熱風気流に効率よく触れ、またトナー母粒子同士が衝突してカップリングが生じないように処理槽3の形状に応じて適宜最適化する。おおよそは水平面と処理槽3壁面がなす角度の1/2〜3/4の角度を水平面に対して下方向に設定する。
また、トナー供給ノズル5は複数本設置することが好ましく、通常4本以上、好ましくは6本以上を設置することが望ましい。さらには、複数本のノズルを、処理層の水平面の中心に対して対称に設置することが好ましい。4本以上のトナー供給ノズルを対称に設置することにより、熱風気流中へのトナー母粒子の均一な分散供給が可能となり、カップリングを抑制することが可能となるため望ましい。カップリング抑制に最適なノズル本数および配置は、処理槽3の形状および大きさに応じて選択される。
【0041】
複数本設置したノズルからのトナー供給量は、通常は各々同量のトナーを供給するが、処理槽3の形状および熱風の噴射状況によっては、各ノズルからのトナー供給量または供給速度を変化させることにより、均一な分散供給を達成し、カップリングを抑制することも出来る。
処理槽3では熱風によりトナー母粒子を球形化し、且つその後の溶融トナー粒子同士の衝突によるカップリングが発生しないよう、素早い加熱・冷却工程が必要となる。そのため、加熱処理時間は短い方が良く、処理槽3の大きさにより異なるが、遅くとも1秒以下、好ましくは0.7秒以下、より好ましくは0.5秒以下が望ましい。
【0042】
ここで、処理時間とは、トナー粒子がトナー供給ノズル5から噴射されてから、処理槽3より排出されるまでの滞留時間を意味する。
熱風供給装置1より得られる熱風の風量は、処理するトナー母粒子に十分な熱を均一に付与するために大きい方が好ましい。
熱風供給装置1より得られる熱風の温度は、熱風供給ノズルから供給される時点の温度として、トナー母粒子の軟化点より好ましくは160℃高い温度以上、より好ましくは170℃高い温度以上、更に好ましくは180℃高い温度以上が好ましい。熱風の温度が前記温度未満である場合は、トナー母粒子表面におけるバインダ樹脂の軟化に対する熱供給が小さいために充分に球形化されない場合や、処理時間を要するためにカップリングが多くなる場合がある。一方、熱風の温度は、熱風供給ノズルから供給される時点の温度として、トナー母粒子の軟化点より好ましくは300℃高い温度以下、より好ましくは290℃高い温度以下、更に好ましくは280℃高い温度以下が好ましい。熱風の温度が前記温度を越える場合は、冷却不良からカップリング発生を引き起こす場合がある。
【0043】
上記の表面改質処理装置としては、処理槽内に熱風を発生させることができる装置であれば機構および形状は限定されないが、例えばサーフュージングシステム(日本ニューマチック工業社製)等を用いることができる。
表面改質処理を行う際のトナー母粒子の分散濃度は、カップリング抑制という観点から、できる限り小さくしたほうが良い。すなわち、処理槽内での単位体積あたりのトナー母粒子存在密度(=分散濃度)を小さくして衝突確率を減少させたほうが好ましく、分散濃度が好ましくは75g/m3以下、更に好ましくは60g/m3以下、特に好ましくは45g/m3以下である。分散濃度を前記範囲とすることにより、カップリング発生量を抑制することが可能となり、高速複写に適した耐久性を有し、更に定着での汚れを抑制することが出来るため好ましい。分散濃度が前記濃度を越える場合は、カップリングした粒子が多くなり、トナー形成不良(スジ)を引き起こす場合がある。
【0044】
熱風により球形化処理されたトナーは、冷却風導入部より取り入れられる冷却風6により冷却される。該冷却はできる限り低い温度のほうが冷却効率が高いため好ましく、具体的には冷却風温度が、トナーに接触する時点で30℃以下、好ましくは20℃以下である。一方で冷却風温度が低過ぎる場合は、配管内部やトナーの結露を引き起こす可能性があるため、冷却風を除湿するなど注意が必要である。
【0045】
冷却風6によって冷却されたトナーは、処理槽3から排出され、圧空10によってサイクロン8に移送される。ここで圧空10は、冷却風6と同様に冷却されていてもよい。サイクロン8に移送されたトナーは製品トナー9として回収され、移送のための圧空10はバグフィルター、ブロアー11へ流れる。
こうして得られた表面改質処理後のトナーは、前記の条件で表面改質処理することによって、球形度は0.94以上、特に好ましくは0.945以上となる。球形度が高いほど静電潜像現像時の画像欠陥が少ないため望ましいが、前記未満の場合は現像・転写ムラを引き起こすため好ましくない。なお、球形度は、粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子の投影像の周囲長により算出される値の平均値とした。球形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(FPIA−2100;東亞医用電子株式会社製など)等を使用することができる。
【0046】
さらに、表面改質処理を経たトナー粒子は、(1)式で示されるカップリング発生量が、0.04%以下、さらに好ましくは0.03%以下、特に好ましくは0.025以下である。カップリング発生量が低いほどトナー形成不良(スジ)が少ないため望ましく、前記の値を越える場合は、カップリングした粒子を分級等の操作で取り除く必要が生じるため好ましくない。
【0047】
【数5】
カップリング発生量=[表面改質処理後の、(2×D)以上の粒子の個数割合]−[表面改質処理前の、(2×D)以上の粒子の個数割合]・・・・・・(1)
Dはトナー粒子の平均粒径(μm)を表す。
【0048】
ここで、「(2×D)以上の粒子の個数割合」とは、平均粒径の2倍以上の粒径をもつ粒子の個数割合を意味する。なお、粒径分布の測定は、例えば、マルチサイザー(コールター社製)などを使用して求めることができる。
さらに、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法では、表面改質処理の後に流動化処理を行うこともできる。ここで使用する流動化処理剤は、前記の、表面改質処理前に添加する流動化処理剤と同じ物質の中から適宜選択することができ、2種以上を併用することもできる。表面改質処理後の添加の場合は、トナー100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部が更に好ましい。
【0049】
表面改質処理後の流動化処理に使用する処理剤としては、BET値が、島津製作所社製フローソーブ2300を用いてN2吸着比表面積を測定した値として、好ましくは120m2/g以上、より好ましくは140m2/g以上であることが望ましい。BET値が120m2/g未満の流動化処理剤で前処理を施した場合、静電潜像の現像時にフィルミングやカブリ等を発生させる場合がある。なお、BET値の異なる複数の流動性処理剤を併用する場合は、これを所定量混合した状態で測定したBET値が前記範囲であればよい。
【0050】
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法では、前記の通りのカップリング率を達成することにより粗大粒子が少ないため、粗大粒子を除去する目的で表面改質処理後に分級操作を行うことを必須としないが、粗大粒子以外の異物等を除去するために篩別する操作等を加えることができる。
こうして得られた熱処理後のトナーの粒径は、好ましくは4〜15μm、より好ましくは5〜9μmである。
【0051】
本発明の製造方法で得られたトナーは、用いる現像方法に限定はなく、磁性トナー、非磁性トナーの何れに用いてもよく、一成分系現像用、二成分系現像用の何れに用いてもよい。また、接触帯電方式の現像であっても非接触帯電方式の現像であってもよい。また、黒色トナー、単色カラートナー、フルカラートナー用の何れにも使用できる。中で、本発明の製造方法で得られたトナーは、非磁性一成分現像用のトナーとして好適であり、フルカラー用トナーとして好適に用いることができる。
【0052】
以上の通り、本発明の製造方法で得られた静電潜像現像用トナーは、軟化点が高く、球形度が高く、カップリングした粒子が少ないため、高速化・高画質化に必要な高耐久性と十分なる現像・転写効率を両立したトナーを効率良く提供することができる。
【0053】
【実施例】
以下に、実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
[トナー母粒子の製造]
(1)トナー母粒子A
以上の材料を混合機で混合した後、二軸混練機(池貝鉄工製PCM−30)で混練し、ジェットミルで粉砕して平均粒径8.5μm、軟化点144.9℃、ガラス転移点66.7℃のトナー母粒子Aを得た。
(2)トナー母粒子B
ポリエステル樹脂にFC1233(三菱レイヨン(株)製、軟化点142℃、ガラス転移点62℃)を使用する以外、上記トナー母粒子Aと同様にして、平均粒径8.8μm、軟化点140.6℃、ガラス転移点65.1℃のトナー母粒子Bを得た。
(3)トナー母粒子C
ポリエステル樹脂にFC684(三菱レイヨン(株)製、軟化点130℃、ガラス転移点:61℃)を使用する以外、上記トナー母粒子Aと同様にして、平均粒径8.5μm、軟化点129.0℃、ガラス転移点61.5℃のトナー母粒子Cを得た。
【0054】
[表面改質処理前の流動化処理]
(流動化前処理1) トナー母粒子100重量部に対してBET値170m2/gのシリカ(R974:日本アエロジル(株)製)1.25重量部を添加し、混合機で混合した。
(流動化前処理2) トナー母粒子100重量部に対してBET値170m2/gのシリカ(R974:日本アエロジル(株)製)1.50重量部を添加し、混合機で混合した。
(流動化前処理3) トナー母粒子100重量部に対してBET値170m2/gのシリカ(R974:日本アエロジル(株)製)0.20重量部を添加し、混合機で混合した。
(流動化前処理4) トナー母粒子100重量部に対してBET値170m2/gのシリカ(R974:日本アエロジル(株)製)1.25重量部およびBET値30m2/gのシリカ(NY50:日本アエロジル(株)製)1.0重量部を添加し、混合機で混合した。
[表面改質処理]
サーフュージングシステム(日本ニューマチック工業社製)を使用し、トナー母粒子を以下に示す分散濃度および熱風温度の条件の何れかを選択して処理を行った。加熱処理時間は0.5秒、冷却風の温度は20℃とした。
【0055】
・分散濃度: 39、77、154g/cm3
・熱風温度: 300、330、360、400、440℃
[表面改質処理後の流動化処理]
(流動化後処理a) 表面改質処理後のトナー粒子100重量部に対して、BET値170m2/gのシリカ(R974:日本アエロジル(株)製)0.5重量部を添加し、混合機で混合した。
(流動化後処理b) 表面改質処理後のトナー粒子100重量部に対して、BET値30m2/gのシリカ(NY50:日本アエロジル(株)製)1.0重量部を添加し、混合機で混合した。
[測定条件等]
(1)平均粒径の測定:マルチサイザー(コールター社製)を使用。
(2)軟化点の測定 :フローテスター(CFT−500:島津製作所社製)を使用して以下の条件で測定し、流出開始温度と流出終了時の温度との中間温度を軟化点とした。
【0056】
・試料: 1.0g
・キャピラリダイス: 径1mm×長さ10mm
・負荷加重: 30kgf
・昇温速度: 3℃/min
・温度範囲: 80〜200℃
・予熱時間: 300秒
(3)ガラス転移点の測定:示差走査熱量計(DSC−2200:セイコー電子社製)を使用し、一旦、30℃から100℃間を昇温後、降温させ、再度昇温させた際の転移開始(変曲点)温度をガラス転移点とした。
【0057】
・リファレンス:アルミナ
・昇温速度: 10℃/min
・降温速度: 10℃/min
(4)流動化処理剤の被覆率の測定
被覆率は(2)式より算出した。母粒子の体積平均粒径(Dt)は、マルチサイザー(コールター社製)により求めた。流動化処理剤の体積平均粒径(Dn)は、透過型電子顕微鏡による観察によって得られた画像から、自動計算を行う画像処理装置を用いることにより求めた。
【0058】
【数6】
【0059】
Dt:母粒子の体積平均粒径 (μm)
ρt:母粒子の真密度 (g/cm3)
Dn:流動化処理剤nの体積平均粒径(μm)
ρt:流動化処理剤nの真密度 (g/cm3)
Wn:流動化処理剤nの添加部数(母粒子を100としたときの重量部)
a :流動化処理剤の種類数
実施例1:
母粒子Aを使用し、流動化前処理1を施すことにより、流動化処理剤の被覆率73%の母粒子を得た。これを、分散濃度39g/m3、熱風温度330℃の条件で表面改質処理を行った。得られたトナーの球形度は0.945、カップリング率は0.018%であった。
【0060】
このトナー100重量部に対して流動化後処理aを施した後、200メッシュの篩いで篩別した。3000枚印刷テストした際の現像・転写ムラ、スジ発生、フィルミング発生は良好であった。
実施例2〜4、比較例1〜7
表1に記載する通りに、使用する母粒子、表面改質処理前の流動化処理の種類、表面改質処理時の分散濃度、熱風温度、表面改質処理後の流動化処理の種類を変更した以外は実施例1と同様の方法で球形化処理を行った。
【0061】
得られたトナーを実施例1と同様に測定した被覆率、トナーの球形度、カップリング率、3000枚印刷テストした際の現像・転写ムラ、スジ発生、フィルミング発生の結果を表1に示す。
比較例8
母粒子Cを使用し、実施例1と同様の流動化前処理を施すことにより、流動化処理剤の被覆率88%の母粒子を得た。これを、実施例1と同様に表面改質処理を行った。しかしながら、トナー母粒子のカップリングが激しいばかりでなく、表面改質処理槽の内壁への付着も見られ、適当に表面改質処理を行うことが出来なかった。このため、表面改質処理したトナーの評価および流動化後処理、印刷適正の評価は行わなかった。
【0062】
参考1、参考2
表1に記載する通り、表面改質処理前の流動化処理のみを行った母粒子A、Bを、それぞれ参考1、参考2とした。得られたトナーを実施例1と同様に測定した被覆率、トナーの球形度の結果を表1に示す。
[評価方法]
(A)球形度
フロー式粒子像分析装置(FPIA−2100;東亞医用電子株式会社製)を使用し、粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子の投影像の周囲長により算出される値の平均値とした。
(B)カップリング率
粒度分布はマルチサイザー(コールター社製)を使用して測定し、(1)式により算出した。
【0063】
【数7】
カップリング発生量=[熱風処理後の、(2×D)以上の粒子の個数割合]−[熱風処理前の、(2×D)以上の粒子の個数割合]・・・・・・(1)
Dはトナー粒子の平均粒径(μm)を表す。
(C)現像・転写ムラ有無
非磁性一成分方式のプリンタを使用し、印刷初期および3000枚印刷した後のベタ画像のムラ、文字欠け有無の変化を目視評価にて行った。
【0064】
3000枚印刷した後のベタ画像のムラ、文字欠けが確認されない場合を○、僅かに認められる場合を△、明らかに印刷初期と差異を生じている場合を×とした。
(D)現像スリーブ上のスジ発生有無
非磁性一成分方式のプリンタを使用し、印刷初期および3000枚印刷した後の現像スリーブ上のスジ有無の変化を目視評価にて行った。
【0065】
3000枚印刷した後にスジが確認されない場合を○、僅かに認められる場合を△、明らかにスジが認められる場合を×とした。
(E)フィルミング有無
非磁性一成分方式のプリンタを使用し、印刷初期および3000枚印刷した後のベタ画像上の白スジ(感光体円周周期)有無の変化を目視評価にて行った。
【0066】
3000枚印刷した後に白スジが確認されない場合を○、僅かに認められる場合を△、明らかに白スジが認められる場合を×とした。
結果を表1に記す。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法によると、高速化・高画質化に必要な高耐久性と十分なる高現像・転写効率を両立させたトナーを、効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱風による表面改質処理用装置の概略図
【符号の説明】
1 熱風供給装置(熱源)
2 熱風供給ノズル
3 処理槽
4 トナー供給装置
5 トナー供給ノズル
6 冷却風
7 圧空
8 サイクロン
9 製品トナー
10 圧空(冷却風)
11 バグフィルター、ブロアーへ
Claims (6)
- 改質処理槽内のトナー母粒子の分散濃度が75g/m3以下で表面改質処理することを特徴とする請求項1記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
- トナー母粒子の軟化点より160〜300℃高い温度で表面改質処理することを特徴とする請求項1または2に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
- 表面改質処理の前に流動化処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
- BET値が120m2/g以上の流動化処理剤のみで流動化処理することを特徴とする請求項4に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
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