JP2004138659A - ブレード - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ゴム弾性を有するブレード部材と支持部材からなるブレードにおいて、該支持部材が、表面に亜鉛合金メッキ層とさらに該メッキ層の上にノンクロム表面処理層とを有する鋼板から形成された支持部材であることを特徴とするブレード。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光体上に形成した静電潜像を現像剤を用いて現像して可視化する画像形成装置に用いられるブレードに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置は、表面に光導電体層を設けた感光体を有しており、作動の際、上記感光体の外周面が一様に帯電され、ついで被模写体の被模写像を介してその外周面を露光することにより、静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、これを紙等に転写し、定着させるものである。
【0003】
この過程において、転写後の感光体の外周上、転写ベルト表面等に残留するトナーを除去したり、現像ロールの外周上にトナーを薄層で担持させたり、除去したトナーがこぼれ落ちないようにシールしたりするため、種々のブレードが使用されている。
【0004】
これらのブレードは、通常、ブレード部材と支持部材により形成され、ブレード部材は、ゴム板や金属性の薄板などの他、樹脂薄板やこれらを積層したものなどから構成されたものが提案されている。
【0005】
また、支持部材としては、亜鉛メッキした防錆処理鋼板をプレス加工して形成した支持部材、ステンレススチール、リン青銅等の金属箔などを用いて形成した支持部材、これら材料の全面あるいは一部を包み込むようにして荷電制御したシリコーンゴムやウレタンゴムなどの電荷付与層を接着あるいは多色成形などで積層したものを用いて形成した支持部材等が用いられている。
【0006】
しかしながら、電子写真プロセスを応用した画像の高画質化やフルカラー化においては、トナーの粒径が更に微粒子化するなど、トナー担持部材へのより均一な圧接が要求されるが、従来のブレードではトナー担持部材の軸長手方向への均一な圧接に限界があるため、均一な電荷付与性やトナー担持部材への均一な厚みのトナー塗布にも限界があり、その結果、画像ムラやスジなどの画像不良が発生するという問題があった。
【0007】
このため、均一な圧接が得られる高精度なブレードとして、現像装置に組み込んだ際にゆがみなどの変形がおきない強度を持たせた1.2〜1.6mmの厚さの鋼板を支持部材とし、この支持部材の一部にゴムが飛び出す形でゴムシートを貼ったものや、支持部材を金型にインサートしゴム原材料を射出成型して、一体成形したブレードを製造することが試みられている。この支持部材は、表面に防錆の目的で亜鉛メッキがほどこされている。ゴムシートを貼るより一体形成したほうがより高精度の弾性ブレードを得ることができる。しかしながら、支持部材を金型にインサートしゴム原材料を射出し一体成形することによりブレードを作製すると、射出時の圧力により支持部材が変形する場合がある。これを防止するために支持部材を型で挟んで成型する方法が一般に採られている。しかしながら、支持部材を型で挟む場合、その面圧で亜鉛メッキ層が基材表面から剥がれ、型に付着し、そのままこの型を用いてブレードの成形を続けると型に付着したメッキ層が徐々に増え、成型時にバリが発生したり成形物の寸法が変化するという問題があり、型の清浄操作が必要となっていた。
【0008】
また、成型されたブレードも支持部材の亜鉛メッキが剥がれ露出した基材が外気と直に接触するようになるため、ブレードを画像形成装置に組み込んだ後に外気との接触により基材に錆が発生することが分かった。錆が発生すると、現像装置に装着されたブレードから錆が浮遊する。マグネットローラーを内部に配置したトナー担持部材が用いられていると、浮遊した錆がトナー担持部材表面に磁気的に捕捉されて固定化されてしまう問題がある。特に、現像画像領域に捕捉されると、現像の際に感光ドラムの現像画像に現像ムラやスジ等の画像不良を引き起こす原因となっていた。マグネットローラを内部に配置していない場合においても、錆が現像部に付着すると画像不良を引き起こす。
【0009】
さらに、支持部材はメッキ層の防錆を目的として、クロメート処理などが一般的に行われている。このクロメート処理には電解型クロメート処理や反応型クロメート処理、さらには塗布後水洗することなく乾燥して形成される塗布型クロメート処理等がある。
【0010】
このようなクロメート処理によって形成される防錆層は、そのバリヤー性の高さに加えて、6価クロムによる自己修復機能を有している。このため、傷を受けた部分においても優れた耐食性を有しており、亜鉛めっき鋼板等の防食に関する重要基盤技術として広く利用されている。しかし、近年の地球環境問題に対する関心の高まりを背景に6価クロムのような環境負荷物の削減が望まれている。また、クロメート処理を施した金属材料は、それがクロム含有の産業廃棄物となった時に、リサイクルができないという大きな欠点を有し、このことは社会的に問題になっている。
【0011】
一方、クロメート処理以外の表面処理方法としては有機系樹脂や無機系化合物を用いた防錆表面処理等の種々の方法が提案されている。
【0012】
ところで、支持部材に有機系樹脂を用いて表面処理を行う幾つかの方法が開示されている。例えば、特許文献1には、金属製ホルダーを有機潤滑皮膜鋼板で形成する方法が、特許文献2には、有機潤滑皮膜鋼板とダイマー酸ベースのポリアミド系樹脂を用いて接着剤層を形成させる方法が、特許文献3にはアクリル系からなる有機複合皮膜鋼板の皮膜を接着剤層とする技術が、さらに特許文献4にはエーテル・エステル系ウレタン樹脂層を支持板金の表面皮膜とする方法が、それぞれ開示されている。
【0013】
【特許文献1】
特開平07−334059号公報
【特許文献2】
特開平09−026735号公報
【特許文献3】
特開2001−201991号公報
【特許文献4】
特開2002−182535号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法で用いられる有機系皮膜は、潤滑性、接着性、耐食性等の効果は期待できるが、長時間高温下に曝されると皮膜の分解、劣化が生じ、耐熱性に問題がある。また、これらの有機系皮膜は、加工油等の塗油によって膨潤するため、その状態で表面が擦れると有機系皮膜が磨耗しやすく、皮膜の削れや剥離が生じやすい。特に、加工油の塗布された支持部材では輸送等により皮膜が著しく磨耗することもあり、その結果、耐食性、さらには接着性を損なう虞れがある。
【0015】
そこで、本発明は、長時間、高温下に曝されても表面処理層が変質せず、また、表面処理層の削れ、剥離が生じにくく、画像ムラやスジの原因となる錆の発生を防止でき、さらに6価クロムのような環境負荷物を含まないノンクロム表面処理層を有するブレードを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下に記載する種々の実施形態を包含する本発明によって達成することができる。
(1) 少なくともゴム弾性を有するブレード部材と支持部材からなるブレードにおいて、該支持部材が、表面に亜鉛合金メッキ層と、さらに該メッキ層の上にノンクロム表面処理層とを有する鋼板から形成された支持部材であることを特徴とするブレード。
(2) 前記亜鉛合金メッキ層が、亜鉛−ニッケルメッキ層または亜鉛−鉄メッキ層である上記(1)記載のブレード。
(3) 前記ノンクロム表面処理層が、無機系ノンクロム表面処理層である上記(1)または(2)記載のブレード。
(4) 前記無機系ノンクロム表面処理層が、リン酸系化合物を含む無機系ノンクロム表面処理層であって、その厚みが0.3μm〜0.6μmである上記(3)記載のブレード。
(5) 前記鋼板が、ノンクロム表面処理層の上にさらに潤滑性皮膜層を有する鋼板である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のブレード。
(6) 前記潤滑性皮膜層が、アルカリケイ酸塩を含む潤滑性皮膜層であって、その厚みが0.3μm〜0.6μmである上記(5)記載のブレード。
(7) 前記ゴム弾性を有するブレード部材が、シリコーンゴムから構成されているブレード部材である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のブレード。
(8) 少なくとも、前記支持部材と前記ゴム弾性を有するブレード部材との接合部が、該支持部材と該ブレード部材との間にプライマー層を有する接合部である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のブレード。
(9) 前記ゴム弾性を有するブレード部材が、前記支持部材の少なくとも一部を包み込んだ構成の接合部を有する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のブレード。
(10) 前記支持部材と前記ゴム弾性を有するブレード部材とが、一体成形され形成されたブレードであることを特徴とする上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のブレード。
【0017】
上記の構成を有する本発明に係るブレードにおいて、支持部材の表面は、亜鉛合金メッキ層とさらにその上にノンクロム表面処理層とを有している。ノンクロム表面処理層はリン酸系化合物を含む無機系ノンクロム表面処理層が好ましく、かかる無機系ノンクロム表面処理層は、長時間、高温下に曝露しても変質しない。また、本発明の一実施形態のブレードに用いられる無機系ノンクロム表面処理層は表面の耐溶剤性および耐磨耗性が良好であり、皮膜の膨潤もほとんど無く、表面処理層の削れや剥れが生じにくく、防錆効果が維持され、画像ムラやスジの発生を防止することができる。さらに、本発明に係る他の実施形態のブレードにおいては、支持部材の表面は、亜鉛合金メッキ層とノンクロム表面処理層および潤滑性皮膜層を有している。潤滑性皮膜層は、好ましくは、アルカリケイ酸塩を含む皮膜で形成され、潤滑性が増し、ノンクロム表面処理層の保護を図ることができるために、耐食性のさらなる向上が期待できる。なお、この潤滑性皮膜層は、シリコーンゴムから構成されたブレード部材と高い親和性を示すことが予想され、ブレード部材と支持部材との接合部の接着性を一層強化することができる。加えて、これらの各層は6価クロムのような環境負荷物を含まないので、環境保護に大きく貢献することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、像担持体上に形成した静電潜像を現像剤を用いて現像して可視化する画像形成装置に用いられるブレードに関するものであり、本発明の実施形態の一例であるブレードを例にして、図に基づいて詳しく説明する。なお、本発明は、この実施形態のブレードに限らず他のブレードにおいても展開が可能であることはいうまでもない。
【0019】
(支持部材)
図1は、本発明の実施形態のブレードの1例を示す。このブレード1は、支持部材2にゴム弾性を有するブレード部材3が一体成形されており、ゴム弾性を有するブレード部材が、両部材の接合部において、支持部材の一部を包み込んでいる。
【0020】
一般に、支持部材にゴム弾性を有するブレード部材を一体成型する場合、成型時の型温度が高いほど、基材である鋼板とメッキ層との接着強度が低下する傾向が見られるところから、本発明の支持部材を構成するメッキ層を有する鋼板としては、この接着力の低下の少ないもの、または、成型時に付加される圧力に対しても剥離することなく十分な接着力を維持するものが好ましい。この点で、本発明の支持部材を構成することのできる亜鉛合金メッキ層を有する鋼板(亜鉛合金メッキ鋼板と表わすことがある)としては、亜鉛―ニッケルメッキ鋼板、亜鉛―鉄メッキ鋼板、亜鉛―クロムメッキ鋼板、亜鉛―アルミニウムメッキ鋼板、亜鉛―チタンメッキ鋼板、亜鉛―マグネシウムメッキ鋼板、亜鉛―マンガンメッキ鋼板等が考えられるが、亜鉛−ニッケルメッキ鋼板が、高温下で金型内で圧をかけて支持部材を狭持圧接してもメッキ層の剥がれがほとんどなく好ましい。
【0021】
本発明で使用する亜鉛合金メッキ層を有する鋼板の厚みとしては、1.2〜1.6mm程度のものが強度面およびプレス加工性の両面から好ましい。また、各面のメッキ層のメッキ付着量は10〜50g/m2が好ましい。
【0022】
このような亜鉛合金メッキ層を有する鋼板にノンクロム表面処理層を形成し、所望の場合には、さらにその上に潤滑性皮膜層を形成し、金属プレス加工にて剪断打ち抜き、曲げ加工、および基準穴抜き加工等を施し、好ましくは脱脂洗浄後、ゴム弾性を有するブレード部材との接合部へプライマーを塗布し、乾燥、加熱焼き付け後、所望の温度に加熱された型にインサートしてゴム弾性を有するブレード部材を形成するためのゴム原材料を射出成形しブレードを作製する。
【0023】
(ノンクロム表面処理層)
本発明で使用されるノンクロム表面処理層は、無機系ノンクロム表面処理層であり、リン酸系化合物を含む無機系ノンクロム表面処理層が好ましい。
【0024】
リン酸系化合物としては、オルトリン酸、縮合リン酸、種々の金属のオルトリン酸塩または縮合リン酸塩、五酸化リン、リン酸塩鉱物、市販の複合リン酸塩顔料、またはこれらの混合物が挙げられる。ここで言うオルトリン酸塩の中には、その一水素塩(HPO4 2− の塩)、二水素塩(H2 PO4 − の塩)も含むものとする。また縮合リン酸塩の中にも水素塩を含むこととする。また縮合リン酸塩にはメタリン酸塩も含み、通常のポリリン酸塩、ポリメタリン酸塩も含むものとする。
【0025】
これらのリン酸系化合物の具体例としては、例えば、モネタイト、トルフィル石、ウィトロック石、ゼノタイム、スターコライト、ストルーブ石、ラン鉄鉱等のリン酸塩鉱物や、例えば、ポリリン酸シリカ等の市販の複合リン酸塩顔料や、例えば、ピロリン酸、メタリン酸等の縮合リン酸や、例えば、メタリン酸塩、テトラメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、酸性ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩等の縮合リン酸塩や、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
リン酸塩を形成する金属種は特に限定されず、アルカリ金属、アルカリ土類金属、その他の典型元素の金属種または遷移金属であってもよい。好ましい金属種の例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、鉛、スズ等が挙げられる。この他にバナジル、チタニル、ジルコニル等のオキソカチオンも含まれる。特に好ましいのはカルシウム、マグネシウムである。
【0027】
また、ホスホン酸やホスホン酸塩、フィチン酸やフィチン酸塩のような有機燐酸系化合物も使用することができる。
【0028】
本発明で使用されるノンクロム表面処理層は、上記リン酸系化合物以外に、さらにコロイダルシリカ、シリカゲル、アエロジル粉末、シリカ粒子等の水分散性シリカ等を用いることができる。
【0029】
本発明で使用されるノンクロム表面処理層は、ノンクロム表面処理層を構成する全成分の総量をベースとして、リン酸系化合物を、一般的には10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%含有することができる。
【0030】
上記ノンクロム表面処理層を形成するための塗工液は、所望の原料を、通常、水に分散し、または溶剤に溶解もしくは分散して調製することができる。
【0031】
上記塗工液の調製に使用することのできる溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、2−エトキシエチルアセテートなどのエステル系溶剤、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、ソルベッソー100、ソルベッソー200などの石油系溶剤といった有機溶剤を挙げることができる。
【0032】
環境保護、作業性の観点から、水に溶解または分散して塗工液を調製するのが好ましい。
【0033】
上記塗工液から表面処理層を形成する方法は特に限定されず、スプレーコーター、カーテンコーター、フローコーター、ロールコーター、バーコーター、刷毛塗り、浸漬およびエアナイフ絞り等の方法によって塗布し、これを熱風乾燥炉等で乾燥して、ノンクロム表面処理層を亜鉛合金メッキ鋼板上に形成することができる。乾燥温度は特に限定されず、用いた溶剤等に応じて適切な条件を選択すればよい。
【0034】
このようにして、ノンクロム表面処理層を形成すると、亜鉛合金メッキ層の表面にこれらが吸着してリン酸系化合物を主成分とするアモルファスのノンクロム表面処理層が形成される。このノンクロム表面処理層は酸素還元電流密度を低下させて防錆性を向上させることができる。
【0035】
また、ノンクロム表面処理層の厚さは、通常、0.3〜0.6μmであり、より好ましくは0.4〜0.6μmであり、さらに好ましくは0.4〜0.5μmである。ノンクロム表面処理層の厚さを0.3μm以上とすると、十分な耐食性が得られ、0.6μm以下とすると、耐食性に優れると共に接着性等の性能に優れ、製造コストをも低減することができるので好ましい。
【0036】
(潤滑性皮膜層)
本発明で好ましく使用される潤滑性皮膜層は、アルカリケイ酸塩化合物を含む潤滑性皮膜層である。
【0037】
アルカリケイ酸塩化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、またはバリウム等から選んだ1種または2種以上のアルカリ金属、もしくはアルカリ土類金属のケイ酸塩を挙げることができる。
【0038】
本発明で好ましく使用される潤滑性皮膜層は、これらのアルカリケイ酸塩化合物以外に、ポリオレフィン、変性ポリオレフィンおよびエチレン/(メタ)アクリル酸共重合体等の水性エマルジョンまたは水分散体を用いることができる。
【0039】
本発明で使用される潤滑性皮膜層は、潤滑性皮膜層を構成する全成分の総量をベースとして、これらのアルカリケイ酸塩化合物を、一般的には0〜100質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%含有することができる。
【0040】
上記潤滑性皮膜層を形成するための塗工液は、所望の原料を、通常、水に分散し、または溶剤に溶解もしくは分散して調製することができる。
【0041】
上記塗工液の調製に使用することのできる溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、2−エトキシエチルアセテートなどのエステル系溶剤、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、ソルベッソー100、ソルベッソー200などの石油系溶剤といった有機溶剤を挙げることができる。
【0042】
環境保護、作業性の観点から、水に溶解または分散して塗工液を調製するのが好ましい。
【0043】
上記塗工液から潤滑性皮膜層を形成する方法は特に限定されず、スプレーコーター、カーテンコーター、フローコーター、ロールコーター、バーコーター、刷毛塗り、浸漬およびエアナイフ絞り等の方法によって塗布し、これを熱風乾燥炉等で乾燥して、潤滑性皮膜層をノンクロム表面処理層上に形成することができる。乾燥温度は特に限定されず、用いた溶剤等に応じて適切な条件を選択すればよい。
【0044】
このようにして、潤滑性皮膜層を形成すると、表面の動摩擦係数が低下し、耐磨耗性を向上させることができる。さらに、耐磨耗性に加えて耐食性を一層向上させることができる。
【0045】
上記潤滑性皮膜層の厚さは、通常、0.3〜0.6μmであり、より好ましくは0.4〜0.6μmであり、さらに好ましくは0.4〜0.5μmである。潤滑性皮膜層の厚さを0.3μm以上とすると十分な耐磨耗性に加え耐食性を得ることができ、0.6μm以下とすると耐磨耗性に加え接着性等にも優れ、また、製造コストも低減することができるので好ましい。
【0046】
なお、上記ノンクロム表面処理層の上に上記潤滑性皮膜層を設けると防錆効果が損なわれることもなく好ましい。
【0047】
上記無機系ノンクロム表面処理層を有する市販の表面処理鋼板を、本発明のブレードの支持部材の作製に使用することができる。本発明に使用することのできる市販の表面処理鋼板としては、例えば、ジンコート21(新日本製鐵社製;商品名)、シルバージンク21(新日本製鐵社製;商品名)、コーベジンクグリーンコート(神戸製鋼所社製;商品名)、ジオフロンティアコート(日本鋼管社製;商品名)、スミジンクNEOコート(住友金属工業社製;商品名)などを挙げることができる。
【0048】
(ゴム弾性を有するブレード部材)
ゴム弾性を有するブレード部材の調製には、JIS K 6253に基づくデュロメータ硬さ試験機タイプAを用いて測定した硬さがA80以下のゴムが好ましく用いられる。これらのゴムは、射出成形可能なゴム原材料、例えば、シリコーン系ゴム原材料であるHTVミラブルゴムやLTV液状シリコーンゴムなどのゴム原材料を用い射出成形等を行うことにより調製することができる。上記ゴム原材料は、いずれでも良いが、射出成形のし易さからは、LTV液状シリコーンゴムがより好ましい。
【0049】
(プライマ―)
前記したように、射出一体成形することにより本発明のブレードを製造する際には、支持部材を予めプライマー処理するのが好ましい。本発明に使用することのできるプライマーとしては、シリコーン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、あるいはシリケート剤の混合物等を挙げることができる。プライマーの処理方法は、特に限定されず、本発明に適した公知の方法を採用すればよい。例えば、支持部材の表面を溶剤で脱脂洗浄し、ゴム弾性を有するブレード部材との接合部にスプレーあるいは刷毛やスポンジ等で適量のプライマーを塗布し、風乾し、焼き付けることによりプライマー処理することができる。
【0050】
(ブレードの成形)
本発明のブレードの成型方法は、特に限定されるものではなく、通常、用いられる方法で行うことができる。例えば、支持部材を金型にインサートしてブレード部材を形成させるゴム原材料を射出し一体成型ブレードを作製する方法、ウレタンエラストマーシート等のゴム弾性を有するブレード部材と支持板金を接着剤を用いて加熱加圧接着する方法、あるいは支持部材をブレード部材成型金型に保持し、この金型にウレタン原料液を注入し、硬化反応させ同時に接着する成型方法等を採用することができる。これらのなかでは、高精度なブレードを得ることができる射出成型法が好ましく、射出成型のし易さから、ブレード部材を形成させるゴム原材料としてLTV液状シリコーンゴムを用いた射出成型法がさらに好ましい。
【0051】
本発明のブレードを射出成型法により成形する方法の一実施形態として、ゴム原材料、例えば、主剤と硬化剤成分との2成分を含有する液状シリコーンゴム原材料をスタティックミキサーなどの静的撹拌機により攪拌し射出成型機(LIMあるいはLIMS成型機)の射出シリンダーに送り、予め支持部材をインサートし所定の温度に加熱した金型内に射出し成形する方法を挙げることができる。金型温度は、一般的には、100℃〜220℃であり、成形時間の短縮という点から150℃〜180℃とするのが好ましい。
【0052】
また、射出圧による支持部材の変形防止、バリ防止の観点から、射出圧は、一般的には、10〜100MPa、好ましくは30〜80MPa、より好ましくは40〜60MPaとし、射出圧に応じて、支持部材を型で狭持する面圧を2〜20MPaの範囲の適切な面圧に調整することが好ましい。
【0053】
本発明のブレードは、ゴム弾性を有するブレード部材と支持部材との接合部において、支持部材の少なくとも一部をゴム弾性ブレード部材により包み込むのが好ましい。支持部材をゴム弾性ブレード部材で包み込む場合は、ブレード部材と支持部材の接着力を確保するため、少なくとも1mm以上の接着しろを設けるのが好ましい。またブレード部材との接合部は支持部材とブレード部材との接触面に気泡等の混入がないように接着されていることが好ましい。上記のようなブレードを成型するためには、使用するゴム原材料や支持部材の形状等に応じて成型方法を選択すればよい。
【0054】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
本実施例および比較例における接着力は次の方法によって評価した。
【0056】
(接着力の測定法)
製造したブレードのブレード部材を10mm幅で切断する。次に図2に示すように支持部材2を引張試験機のチャック4に固定し、10mm幅に切断したブレード部材をチャック5で保持して図中矢印の方向に200mm/minの速度で引張り、その引張強度を測定して、接着力を評価した。
【0057】
実施例1
鋼板の両面にメッキ層が形成されており、メッキ付着量が20g/m2、メッキ層の厚みが約2.7μmであり、メッキ層上に、0.5μmの層厚みのリン酸系化合物を含む無機系ノンクロム表面処理層を有する、1.6mm厚の亜鉛−ニッケルメッキ鋼板(新日本製鐵(株)製)を用い打抜き加工し、プレスでくの字に曲げ加工して支持部材を作製した。これを、炭化水素系洗浄溶剤(アクトレル1130L;商品名、エクソン・モービル社製)で脱脂洗浄し、シリコーンゴム用プライマー(Xプライマー、Yプライマー;商品名、東レ・ダウコーニング社製)をスプレーで塗布し、風乾し、220℃で20分焼き付け支持部材を得た。
【0058】
この支持部材を、予め170℃に加熱した鏡面を有する金型内に配置し、型締力1500kN/cm2で狭持し、この金型内にLTVシリコーンゴム(商品名:LSR−DY35−7002:東レ・ダウコーニング社製)をLIM射出成型機より射出圧50MPaで射出し、40秒後に成型物を型から取り出し、100℃、4時間熱風乾燥炉を用いて熱処理して、図1に示される形状のブレードを形成した。
【0059】
形成されたブレードの外観を目視により観察し、メッキ層の剥がれを評価し、次に接着力を測定した。評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例2
鋼板の両面にメッキ層が形成されており、メッキ付着量が20g/m2、メッキ層の厚みが約2.7μmであり、メッキ層上に、0.5μmの層厚みのリン酸系化合物を含む無機系ノンクロム表面処理層、さらに0.5μmの層厚みのアルカリケイ酸塩を含む潤滑性皮膜層を有する、1.6mm厚の亜鉛−ニッケルメッキ鋼板(新日本製鐵(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてブレードを形成した。
【0061】
得られたブレードを、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
1.6mm厚の亜鉛−ニッケルメッキ鋼板(メッキ付着量が20g/m2である約2.7μm厚のメッキ層が鋼板の両面に形成されており、メッキ層の上には、約0.05μm厚のクロメート処理コーティングを持つ)(商品名:ZL−C、新日本製鐵(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてブレードを形成した。
【0063】
得られたブレードを、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例2
1.6mm厚の亜鉛メッキ処理鋼板(メッキ付着量が20g/m2である約2.7μm厚のメッキ層が鋼板の両面に形成されており、メッキ層の上には、約0.8μm厚の有機系表面処理層を持つ)(商品名:EGC−QS、新日本製鐵(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてブレードを形成した。
【0065】
得られたブレードを、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0066】
比較例3
1.6mm厚の亜鉛メッキ鋼板(メッキ付着量が20g/m2である約2.7μm厚のメッキ層が鋼板の両面に形成されており、メッキ層の上に、約0.8μm厚のクロメート処理コーティングを持つ)(商品名:EGC−E,新日本製鐵(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてブレードを形成した。
【0067】
得られたブレードを、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例1では支持部材を亜鉛−ニッケルメッキ鋼板を用いて作製し、その上にリン酸系化合物を含む無機系ノンクロム表面処理層を設けたことで、高温下での成型時にもメッキが剥がれることなく、接着力が高い。
【0070】
また、実施例2では支持部材にリン酸系化合物を含む無機系ノンクロム表面処理層を設け、さらにアルカリケイ酸塩を含む潤滑性皮膜層を有することで、高温下での成形にもメッキが剥れることがないのみならず、ゴム弾性を有するブレード部材との接着性が一層向上している。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、ブレードの支持部材として、従来の電気亜鉛メッキ鋼板から亜鉛合金メッキ鋼板に変えること、また、クロメート処理層や有機表面処理層に代えてリン酸系化合物を含む無機系ノンクロム表面処理層、さらに、その上に潤滑性皮膜層を設けることにより、射出成型時に、高温の金型中で加圧狭持し圧接してもメッキ層が剥がれることなく、ブレード部材と支持部材との接着性にさらに優れたブレードを製造することが可能となった。
【0072】
加えて、環境負荷物質である6価クロムを含まないことから地球環境にやさしいブレードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のブレードの概略図である。
【図2】本発明のブレードの接合部の接着力の評価方法を示す図である。
【符号の説明】
1 ブレード
2 支持部材
3 ブレード部材
4 固定用チャック
5 引張用チャック
Claims (10)
- 少なくともゴム弾性を有するブレード部材と支持部材からなるブレードにおいて、該支持部材が、表面に亜鉛合金メッキ層と、さらに該メッキ層の上にノンクロム表面処理層とを有する鋼板から形成された支持部材であることを特徴とするブレード。
- 前記亜鉛合金メッキ層が、亜鉛−ニッケルメッキ層または亜鉛−鉄メッキ層である請求項1記載のブレード。
- 前記ノンクロム表面処理層が、無機系ノンクロム表面処理層である請求項1または2記載のブレード。
- 前記無機系ノンクロム表面処理層が、リン酸系化合物を含む無機系ノンクロム表面処理層であって、その厚みが0.3μm〜0.6μmである請求項3記載のブレード。
- 前記鋼板が、ノンクロム表面処理層の上にさらに潤滑性皮膜層を有する鋼板である請求項1ないし4のいずれかに記載のブレード。
- 前記潤滑性皮膜層が、アルカリケイ酸塩を含む潤滑性皮膜層であって、その厚みが0.3μm〜0.6μmである請求項5記載のブレード。
- 前記ゴム弾性を有するブレード部材が、シリコーンゴムから構成されているブレード部材である請求項1ないし6のいずれかに記載のブレード。
- 少なくとも、前記支持部材と前記ゴム弾性を有するブレード部材との接合部が、該支持部材と該ブレード部材との間にプライマー層を有する接合部である請求項1ないし7のいずれかに記載のブレード。
- 前記ゴム弾性を有するブレード部材が、前記支持部材の少なくとも一部を包み込んだ構成の接合部を有する請求項1ないし8のいずれかに記載のブレード。
- 前記支持部材と前記ゴム弾性を有するブレード部材とが、一体成形され形成されたブレードであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のブレード。
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JP5872057B2 (ja) * | 2012-09-28 | 2016-03-01 | バンドー化学株式会社 | 電子写真装置用ブレード、及び、その製造方法 |
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2002
- 2002-10-15 JP JP2002300709A patent/JP2004138659A/ja active Pending
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