JP2004138057A - 内燃機関の排気構造及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本排気構造10,20は、ステンレス製のフロントパイプ4aやメインマフラ7を構成するステンレス製の各パイプ26a,26b,6bの外周にウェブ状のステンレスウールを巻き回してなる断熱層11,21を設けて構成される。本排気構造によると、各パイプに高温排気ガスが通過する場合であっても、各パイプが断熱される。また、排気構造をリサイクルする際、ステンレス製の各パイプ及び断熱層を分別処理する必要が無い。上記断熱層が、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子が付着された前記ステンレスウールからなることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
近年、自動車エンジンにおいては燃料の完全燃焼化が図られており、その結果、エンジンからの排気ガスの温度が従来に比べて高温化される傾向にある。即ち、排気マニホールド3を通過してフロントパイプ4aに進入する排気ガスの温度が約1200℃以上となっている。また、プリマフラ5に進入する排気ガスの温度が約800℃以上であり、メインマフラ7に進入する排気ガスの温度が約500℃以上となっている。
また、近年、車両設計に際してリサイクル性等の環境対策が重要視され、車両の排気システムに関しても、この例外でなく材料選定や廃却時の分別性等を考慮する必要がある。
1.内燃機関の排気管の外周にステンレスウールからなる断熱層を設けたことを特徴とする内燃機関の排気構造。
2.前記排気管が、周面に貫通孔が形成されている管である上記1.記載の内燃機関の排気構造。
3.前記排気管を通る排気ガスの温度が300〜1000℃である上記2.記載の内燃機関の排気構造。
4.前記排気管が、周面に貫通孔が形成されていない管である上記1.記載の内燃機関の排気構造。
5.前記排気管が、前記内燃機関に近接して配設されている上記4.記載の内燃機関の排気構造。
6.前記排気管を通る排気ガスの温度が1000〜1500℃である上記4.又は5.記載の内燃機関の排気構造。
7.前記断熱層が、ウェブ状の前記ステンレスウールを巻回してなる上記1.乃至6のいずれか一項に記載の内燃機関の排気構造。
8.前記断熱層の密度が50〜600kg/m3である上記7.記載の内燃機関の排気構造。
9.前記断熱層が、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子が付着された前記ステンレスウールからなる上記1.乃至8のいずれか一項に記載の内燃機関の排気構造。
10.前記断熱層の上に、更に、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子が付着されたグラスウールからなるグラスウール断熱層が設けられている上記9.記載の内燃機関の排気構造。
11.上記1.乃至10のいずれか一項に記載の内燃機関の排気構造の製造方法であって、
ステンレス繊維からなる集束繊維を解繊して解繊繊維束を得る工程と、該解繊繊維束を排気管に巻設して該排気管の外周に断熱層を形成する工程と、を備えることを特徴とする消音構造体の製造方法。
12.上記1.乃至10のいずれか一項に記載の内燃機関の排気構造の製造方法であって、
ステンレス繊維からなる集束繊維を解繊して解繊繊維束を得る工程と、該解繊繊維束を、排気管及び被覆管の一方端部側から該排気管及び該被覆管の間に供給して、該排気管及び該被覆管の間に断熱層を形成する工程と、を備えることを特徴とする消音構造体の製造方法。
13.前記解繊繊維束を得る工程が、前記集束繊維を解繊すると共に、無機高分子液を添加することにより、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を含有する前記解繊繊維束を得る上記11.又は12に記載の消音構造体の製造方法。
14.前記断熱層を形成する工程が、前記解繊繊維束を排気管に巻設すると共に、無機高分子液を添加することにより、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を含有する前記断熱層を形成する上記11.記載の消音構造体の製造方法。
15.前記断熱層を形成する工程が、前記解繊繊維束を、前記排気管及び前記被覆管の間に供給すると共に、無機高分子液を添加することにより、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を含有する前記断熱層を形成する上記12.記載の消音構造体の製造方法。
また、前記排気管が、周面に貫通孔が形成されている管である場合は、ステンレスウールからなる断熱層によって排気管が断熱されると共に、貫通孔を介して断熱層に進入する排気ガスが吸音される。また、ステンレスウールはグラスウールに比べて耐熱性に優れている。特に、400〜1000℃の高温排気ガスが排気管を通る場合であっても、良好な断熱性、吸音性及び耐熱性を発揮することができる。
また、前記排気管が、周面に貫通孔が形成されていない管である場合は、ステンレスウールからなる断熱層によって排気管が断熱される。特に、1000〜1500℃の高温排気ガスが、内燃機関に近接して配設される排気管を通る場合であっても、良好な断熱性を発揮することができる。
また、前記断熱層が、ウェブ状の前記ステンレスウールを巻回してなる場合は、容易に製造することができる。
また、前記断熱層の密度が50〜600kg/m3である場合は、より容易に製造することができる。
また、前記断熱層が、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子が付着された前記ステンレスウールからなる場合は、ステンレス単繊維自身の高温での酸化防止、ステンレス単繊維間接点の接着固定による型崩れ防止、及び断熱層内部に含浸充填し生成させた耐熱・断熱性の複合セラミックス層などのうち1又は2以上の複合作用により、耐熱・断熱性をより一層向上させると共に、消音効果を向上させることができる。
また、前記断熱層の上に、更に、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子が付着されたグラスウールからなるグラスウール断熱層が設けられている場合は、断熱特性を生かすと共に、衝撃などによるセラミック層の破損・脱落の防止効果を付与することができる。
他の本発明の内燃機関の排気構造の製造方法によると、断熱性に優れる簡易な構造の内燃機関の排気構造を得ることができる。
また、前記解繊繊維束を得る工程が、前記集束繊維を解繊すると共に、無機高分子液を添加することにより、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を含有する前記解繊繊維束を得る場合は、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子によって解繊された繊維束を各単繊維の接点で固着することにより、繊維束のボリュームが減少したり、変化したりすることを抑制できる。その結果、耐熱・断熱性に優れ且つ型崩れが少なく消音効果に優れる排気構造を得ることができる。
また、前記断熱層を形成する工程が、前記解繊繊維束を排気管に巻設すると共に、無機高分子液を添加することにより、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を含有する前記断熱層を形成する場合は、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子によって解繊された繊維束を各単繊維の接点で固着することにより、繊維束のボリュームが減少したり、変化したりすることを抑制できる。その結果、耐熱・断熱性に優れ且つ型崩れが少なく消音効果に優れる排気構造を得ることができる。
さらに、前記断熱層を形成する工程が、前記解繊繊維束を、前記排気管及び前記被覆管の間に供給すると共に、無機高分子液を添加することにより、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を含有する前記断熱層を形成する場合は、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子によって解繊された繊維束を各単繊維の接点で固着することにより、繊維束のボリュームが減少したり、変化したりすることを抑制できる。その結果、耐熱・断熱性に優れ且つ型崩れが少なく消音効果に優れる排気構造を得ることができる。
本発明に係る内燃機関の排気構造は、内燃機関に連なる排気管の外周に後述する断熱層を設けてなる。
また、上記排気管は、例えば、周面に主に消音機能のための貫通孔が形成されていない管であることができる。この場合、この排気管を通る排気ガスの温度が1000〜1500℃、更に1050〜1450℃、特に1100〜1400℃であることが好ましい。即ち、上述のような温度幅の高温排気ガスがこの排気管を通ったとしても、良好な断熱性を発揮することができる。また、この排気管としては、例えば、後述の実施例で示す排気マニホールド、フロントパイプ、リアパイプ等を挙げることができる。特に、より良好な断熱性を発揮できるといった観点から、上記排気管が内燃機関に近接して配置される管(例えば、車両の排気マニホールドやフロントパイプ等)であることが好ましい。
尚、上記排気管は、通常、ステンレス製である。
更に、この無機高分子等は、(1)塗布されその後乾燥されて繊維上に付着配置されたものでもよいし、(2)それが加熱等による反応により又は加熱溶融されて繊維表面に被覆膜(皮膜)が形成されたものでもよいし、(3)使用時の熱により上記(1)の状態が上記(2)の状態に変わったものであってもよい。
これにより、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子によって、被覆等されたステンレス単繊維自身の高温での酸化を抑制できると共に、解繊された繊維束を各ステンレス単繊維の接点で固着することにより、繊維束のボリュームが減少したり、変化したりすることを抑制できる。その結果、耐熱・断熱性に優れ且つ型崩れが少なく消音効果に優れる排気構造とすることができる。特に、無機高分子を含浸、塗布又は含浸充填させたステンレスウールからなることが好ましい。この場合、後述する排気構造の製造方法で説明するように、溶液又はスラリー状の無機高分子液の組成や濃度を調整することによって、ステンレスウールを構成するステンレス単繊維の表面被覆による高温での酸化防止、ステンレス単繊維相互間の接着固定による型崩れ防止、及び断熱層の上層部及び/又は断熱層全体に含浸充填し、内部に耐熱・断熱性の複合セラミック層を生成させる等のうち1又は2以上の複合作用により、より高度な耐熱・断熱性を得るものである。
また、上記断熱層は、例えば、上記排気管の軸方向の全長にわたって設けたり、上記排気管の軸方向の一部に設けたりすることができる。
上記気乾型組成物は、例えば、ケイ酸ナトリウム等の水溶性ケイ酸塩を主成分とするもの(水ガラス)であり、水を蒸発させて硬化させることができる。
上記低融点ガラス含有組成物としては、軟化温度が1000℃以下のガラス成分を含むものが好ましい。そのガラス成分としては、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、更には、ホウ−ケイ酸塩、ホウ−リン酸塩、ケイ−リン酸塩等が挙げられ、これらの誘導体であってもよい。具体的には、PbO−B2O3−SiO2、PbO−B2O3−ZnO、PbO−B2O3−ZnO−SiO2、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3−ZnO等のPbO−B2O3系ガラスや、ZnO−B2O3系ガラス等の結晶性はんだガラス(「ガラスハンドブック」〔発行所;株式会社朝倉書店、1981年第4刷発行〕143頁〜151頁参照)。
等が挙げられる。
上記結合剤としては、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸第4級アンモニウム等のケイ酸塩;リン酸塩(オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、トリメタリン酸塩、ポリリン酸塩を含む。金属元素は、例えば、Al、Mg、Ca、Cu、Zn等である。)、コロイダルシリカ、アルキルシリケート等が挙げられる。コロイダルシリカは、微細なシリカのコロイド粒子が水中に分散したものであり、微粒子の直径は、通常、20μm以下、表面積は、数百m3/gであり、粒子表面は、Na+で安定化されていることが好ましい。このコロイダルシリカを用いた組成部としては、コロイダルシリカに硬化剤と骨材とを配合し、水、アルコール等に分散させたもの等が市販されている。
また、上記硬化剤としては、金属、金属酸化物、金属水酸化物、ケイフッ化ナトリウム、リン酸塩、ホウ酸塩等が挙げられる。上記各成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記反応型組成物は、1液型であってもよいし、使用前に主剤と硬化剤とを混合する2液型であってもよい。更には、原料粉末に水を加えてペースト状としたものであってもよい。
この無機高分子を形成可能な組成物としては、例えば、三協薬品株式会社製の商品名「NK−ボンドGF−10」、「NK−ボンドGF−50」等が挙げられる。
また、無機−有機ハイブリッド接着剤等を用いることもでき、水性樹脂エマルジョン及び/又は合成ゴムラテックスと、無機高分子を形成する無機化合物とを含む組成物等が挙げられる。
上記「ステンレスウール」は、通常、ステンレス鋼棒体を削って作られるステンレス繊維の集合体である。これらステンレス繊維を撚って糸状のステンレスウールを形成したり、ステンレス繊維の互いの絡み合いによりウェブ状のステンレスウールを形成したりできる。また、上記「ウェブ状のステンレスウール」は、通常、そのウェブ幅が50〜70mm程度であり、そのウェブ長さが4000〜30000mm程度であり、ロール状に巻回された状態で使用される。
上記「内燃機関の排気構造」は、通常、上記排気管の外周側に上記断熱層を被覆する被覆管が設けられた2重管構造をなしている。この被覆管は、通常、ステンレス製である。また、被覆管の形状としては、例えば、円筒状、角筒状、テーパ筒状等を挙げることができる。また、被覆管の軸方向端側は、例えば、テーパ面状(図2参照)であったり、平板面状であったりできる。尚、通常、上記排気構造を排気マニホールドに適用する場合、通常、この被覆管が設けられない。
本発明に係る内燃機関の排気構造の製造方法は、以下に述べる、解繊繊維束取得工程、及び断熱層形成工程を備える(図6参照)。
上記「解繊繊維束取得工程」は、ステンレス繊維からなる集束繊維を解繊して解繊維維束を得る工程である限り、その解繊形態等は特に問わない。
上記「ステンレス繊維」の長さ、繊維径、繊維長及び束ねる本数については特に限定はない。例えば、上記ステンレス繊維の一本の繊維径は、通常20〜300μm、好ましくは30〜200μm、より好ましくは40〜150μm、更により好ましくは50〜100μmの繊維とすることができる。また、上記「集束繊維」は、適当な集束材にて複数本のステンレス繊維を束ねたものであってもよいし、又は互いに複数本のステンレス繊維を物理的に絡ませること等により集束させたものであってもよい。
この「無機高分子前駆体及び/又は無機高分子」としては、例えば、上述の排気構造で説明した無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を適用することができる。また、上記「無機高分子液」としては、例えば、上述の排気構造で説明した無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を含む溶液、分散液又はスラリーであることができる。
この場合、例えば、前記集束繊維を解繊すると同時に、その解繊した集束繊維に無機高分子液を添加することができるが、その解繊と無機高分子液の添加の順序、時間差については特に限定はない。解繊繊維束を得た後に、その解繊繊維束に無機高分子液を添加してもよい。
上記「断熱層形成工程」は、解繊繊維束を排気管の外周側に巻設して排気管の外周に断熱層を形成する工程である限り、その巻設形態等は特に問わない。
この断熱層形成工程において、解繊繊維束を巻設する方法としては、いずれの手段を用いてもよいが、排気管の軸芯を中心として排気管を回転しつつ、この排気管に解繊繊維束を供給すると、均一な密度で容易に解繊繊維束を排気管に巻設させることができるので好ましい。この場合、排気管の回転手段は特に限定されず、所望の回転手段によって行い、また、解繊繊維束の供給手段としては、いずれの手段であってもよいが、特にトラバース機構により解繊繊維束を排気管の軸方向に往復移動させて供給すると、解繊繊維束を均一な密度で容易に巻設させることができるために好ましい。また、この解繊繊維束の巻設量は、適宜排気管や用途に応じて選択される。特にトラバース機構により往復回数を適宜設定すれば、容易に解繊繊維束の巻設量を一重、二重、又は三重以上に変更することができる。
この場合、例えば、上記解繊繊維束を排気管に巻設すると同時に、その解繊繊維束に無機高分子液を添加することができるが、その巻設と無機高分子液の添加の順序、時間差については特に限定はない。断熱層を形成した後に、この断熱層に無機高分子液を添加してもよい。
また、内燃機関の排気構造体としては、例えば、上述の本発明に係る排気構造の製造方法(2−a)により得られるものであることを特徴とすることができる。これにより、消音層の収縮による消音層の体積の減少、充填密度の不均一等による型崩れ等を防止し、消音性能の低下を防止し得る排気構造体を提供することができる。
他の本発明に係る排気構造の製造方法は、以下に述べる、解繊繊維束取得工程、及び断熱層形成工程を備える(図7参照)。
上記「解繊繊維束取得工程」は、ステンレス繊維からなる集束繊維を解繊して解繊維維束を得る工程である限り、その解繊形態等は特に問わない。この解繊繊維束取得工程としては、例えば、上述の排気構造の製造方法(2−a)で説明したもの等を適用することができる。
上記「断熱層形成工程」は、上記解繊繊維束を、排気管及び被覆管の一方端部側から排気管及び被覆管の間に供給して断熱層を形成する工程である限り、その供給形態等は特に問わない。この供給形態としては、例えば、(1)解繊繊維束を、排気管及び被覆管の一方端部側から排気管及び被覆管の間に吹き込む形態、(2)解繊繊維束を、排気管及び被覆管の一方端部側から排気管及び被覆管の間に供給すると共に、排気管及び被覆管の他方端部側から気体を吸引する形態、(3)解繊繊維束を、排気管及び被覆管の一方端部側から排気管及び被覆管の間に吹き込むと共に、排気管及び被覆管の他方端部側から気体を吸引する形態等を挙げることができる。
この場合、例えば、上記解繊繊維束を供給すると同時に、その解繊繊維束に無機高分子体を添加することができるが、その供給と無機高分子体の添加の順序、時間差については特に限定はない。断熱層を形成した後に、この断熱層に無機高分子体を添加してもよい。
また、上記断熱層形成工程は、例えば、上記断熱層を形成した後に、加熱により上記低融点ガラスを軟化させて解繊繊維束を固着させることができる。
また、内燃機関の排気構造体としては、例えば、上述の他の本発明に係る排気構造の製造方法(2−b)により得られるものであることを特徴とすることができる。これにより、消音層の収縮による消音層の体積の減少、充填密度の不均一等による型崩れ等を防止し、消音性能の低下を防止し得る排気構造体を提供することができる。
本実施例に係る排気システム1は、図1に示すように、ステンレス製のフロントパイプ4aに設けられる排気構造10と、メインマフラ7内の後述の各パイプに設けられる排気構造20とを備えている。
先ず、排気構造10について説明する。フロントパイプ4aは、図2に示すように、周面に消音機能を発揮するための多数の貫通孔が形成されておらず、フロントパイプ4aの内部空間は外気から機密に隔離された状態となっている。また、フロントパイプ4aの外周には、その軸方向の所定部位にウェブ状のステンレスウールを巻き回してなる断熱層11(密度:80〜120kg/m3、層厚さ:30mm)が設けられている。この断熱層11では、ステンレスウールに、シリカ及びアルミノシリケートを主成分とする無機バインダー(例えば、シリカ含有無機バインダー;三協薬品株式会社製「NK−ボンドGF−10」等)を含浸充填することにより、ステンレス単繊維間の接点が固定された状態であると共に、断熱層11の上層部に耐熱・断熱性に優れる複合セラミック層(図示せず)が形成されている。また、フロントパイプ4aの外周には、断熱層11を被覆するステンレス製の被覆管12が設けられ、排気構造は2重管構造をなしている。
尚、本実施例では、上記連通パイプ26aに排気構造20aが設けられ、連通パイプ26bに各排気構造20b,20cが設けられ、リアパイプ6bに各排気構造20d,20e,20fが設けられている。
次に、上記排気システム1の作用について説明する。図1に示すように、自動車エンジン2の排気マニホールド3を通過してフロントパイプ4aに進入する排気ガスは約1200℃の高温排気ガスとなっている。そして、この高温排気ガスにより高温化されたフロントパイプ4aは、排気構造10の断熱層11によって断熱される。その後、高温排気ガスは、触媒装置8によって排気ガス中の有害成分が無害化されてからフロントパイプ4bを通過する。そして、約800℃の高温排気ガスが、フロントパイプ4bに比べてやや膨らんだ形状のプリマフラ5に進入・通過し、このプリマフラ5によってある程度吸音される。その後、約500℃の高温排気ガスが、リアパイプ6aを介してメインマフラ7内に進入することとなる。
以上のように、本実施例では、フロントパイプ4aの外周にウェブ状のステンレスウールを巻き回してなる断熱層11を設けて排気構造10を構成したので、このフロントパイプ4a内を通過する排気ガスが1200℃以上の高温排気ガスであっても、断熱層11によってフロントパイプ4aが断熱される。従って、高温排気ガスによって高温化されたフロントパイプ4aの熱が周囲に悪影響を及ぼすことを抑制でき、従来のように、車体床下に複雑な断熱カバー構造等を設ける必要がなく、フロントパイプ4a周辺の設計自由度を高めることができる。さらに、排気システム1をリサイクルする際、ステンレス製のフロントパイプ4a、被覆管12及び断熱層11を分別処理する必要がなく、極めてリサイクル性に優れている。
本試験例1では、無機高分子体(ケイ酸塩ガラス系)でコーティングしてなるステンレスウールのウェブ(平均繊維径:80μm)を試験サンプルとした。この試験サンプルにおいて、ステンレスウールの表面の所定部位をトーチランプで直接加熱(1500℃で180秒間)し、変化の様子を観察した。
その結果、図8に示すように、加熱の中心部では酸化による変色(黒変)が見られるものの、加熱の周辺部では酸化による変色がほとんど見られず、ステンレスウールの酸化による脆化が抑制されていた。
本比較例1では、表面コーティングを何ら施していないステンレスウールのウェブ(平均繊維径:80μm)を試験サンプルとした。この試験サンプルにおいて、ステンレスウールの表面の所定部位をトーチランプで直接加熱(1500℃で180秒間)し、変化の様子を観察した。
その結果、図9に示すように、加熱の中心部では一部に溶融痕が見られると共に、その周辺部での広範囲では酸化による変色(茶褐色)が見られた。
本試験例2では、図10に示すように、ステンレス製のインナーパイプの外周にステンレスウールのウェブ(平均繊維径:80μm)を巻設してなる巻設物を用意し、この巻設物のステンレスウールに、無機高分子体(ケイ酸塩ガラス系)を含浸・乾燥させ、試験サンプルとした。尚、無機高分子体の含浸量は固形分で30%である。そして、この試験サンプルにおいて、ステンレスウールの表面の所定部位をトーチランプで直接加熱(1500℃で180秒間)し、変化の様子を観察した。
その結果、図11に示すように、加熱部分は殆ど変化を示さず、酸化防止効果と著しい耐熱性の向上を示した。
本比較例2では、図12に示すように、ステンレス製のインナーパイプの外周にステンレスウールのウェブ(平均繊維径:80μm)を巻設してなる試験サンプルを用意した。この試験サンプルにおいて、ステンレスウールの表面の所定部位をトーチランプで直接加熱(1500℃で180秒間)し、変化の様子を観察した。
その結果、図13に示すように、加熱部分の広範囲で茶褐色に大きく変色し、加熱の中心部分では一部に溶融痕が見られた。
本試験例1では、ステンレスウールの積層物(平均繊維径;80μm、密度;350kg/m2、積層厚;45mm、空気層厚;0mm)を用意し、この積層物に、無機高分子体(ケイ酸塩ガラス系)を含浸・乾燥させ、試験サンプル(1)した。尚、無機高分子体の含浸量は固形分で32%である。
そして、この試験サンプル(1)を、残響室法により所定の周波数毎の吸音率を測定した。その結果を図14及び図15に示す。
本比較例1では、ステンレスウールの積層物(平均繊維径;80μm、密度;350kg/m2、積層厚;45mm、空気層厚;0mm)を試験サンプル(2)とした。
そして、この試験サンプル(2)を、残響室法により所定の周波数毎の吸音率を測定した。その結果を図14及び図15に示す。
Claims (15)
- 内燃機関の排気管の外周にステンレスウールからなる断熱層を設けたことを特徴とする内燃機関の排気構造。
- 前記排気管が、周面に貫通孔が形成されている管である請求項1記載の内燃機関の排気構造。
- 前記排気管を通る排気ガスの温度が300〜1000℃である請求項2記載の内燃機関の排気構造。
- 前記排気管が、周面に貫通孔が形成されていない管である請求項1記載の内燃機関の排気構造。
- 前記排気管が、前記内燃機関に近接して配設されている請求項4記載の内燃機関の排気構造。
- 前記排気管を通る排気ガスの温度が1000〜1500℃である請求項4又は5記載の内燃機関の排気構造。
- 前記断熱層が、ウェブ状の前記ステンレスウールを巻回してなる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の内燃機関の排気構造。
- 前記断熱層の密度が50〜600kg/m3である請求項7記載の内燃機関の排気構造。
- 前記断熱層が、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子が付着された前記ステンレスウールからなる請求項1乃至8のいずれか一項に記載の内燃機関の排気構造。
- 前記断熱層の上に、更に、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子が付着されたグラスウールからなるグラスウール断熱層が設けられている請求項9記載の内燃機関の排気構造。
- 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の内燃機関の排気構造の製造方法であって、
ステンレス繊維からなる集束繊維を解繊して解繊繊維束を得る工程と、該解繊繊維束を排気管に巻設して該排気管の外周に断熱層を形成する工程と、を備えることを特徴とする消音構造体の製造方法。 - 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の内燃機関の排気構造の製造方法であって、
ステンレス繊維からなる集束繊維を解繊して解繊繊維束を得る工程と、該解繊繊維束を、排気管及び被覆管の一方端部側から該排気管及び該被覆管の間に供給して、該排気管及び該被覆管の間に断熱層を形成する工程と、を備えることを特徴とする消音構造体の製造方法。 - 前記解繊繊維束を得る工程が、前記集束繊維を解繊すると共に、無機高分子液を添加することにより、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を含有する前記解繊繊維束を得る請求項11又は12に記載の消音構造体の製造方法。
- 前記断熱層を形成する工程が、前記解繊繊維束を排気管に巻設すると共に、無機高分子液を添加することにより、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を含有する前記断熱層を形成する請求項11記載の消音構造体の製造方法。
- 前記断熱層を形成する工程が、前記解繊繊維束を、前記排気管及び前記被覆管の間に供給すると共に、無機高分子液を添加することにより、無機高分子前駆体及び/又は無機高分子を含有する前記断熱層を形成する請求項12記載の消音構造体の製造方法。
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