JP2004137429A - 熱可塑性樹脂の変性方法および変性熱可塑性樹脂 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱可塑性樹脂を押出機内で反応変性する製造方法、及び変性熱可塑性樹脂の提供。
【解決手段】本発明は、モノメタクリレート類、モノアクリレート類、ジメタクリレート類、ジアクリレート類、多官能性トリアジン類、トリエステル類から選ばれ、かつ分子量が150以上である化合物(a)の存在下に、分子量が150未満の不飽和カルボン酸またはその誘導体(b)を熱可塑性樹脂にグラフトさせることを特徴とする熱可塑性樹脂の変性方法である。 また本発明は、その方法により得られる熱可塑性樹脂である。 前記変性方法は、熱可塑性樹脂100重量部当たり2〜200重量部の二酸化炭素の存在下に、熱可塑性樹脂を押出機内で変性することが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明は、モノメタクリレート類、モノアクリレート類、ジメタクリレート類、ジアクリレート類、多官能性トリアジン類、トリエステル類から選ばれ、かつ分子量が150以上である化合物(a)の存在下に、分子量が150未満の不飽和カルボン酸またはその誘導体(b)を熱可塑性樹脂にグラフトさせることを特徴とする熱可塑性樹脂の変性方法である。 また本発明は、その方法により得られる熱可塑性樹脂である。 前記変性方法は、熱可塑性樹脂100重量部当たり2〜200重量部の二酸化炭素の存在下に、熱可塑性樹脂を押出機内で変性することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂に不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフトさせる変性方法、及び変性熱可塑性樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂を反応変性する製造方法は周知技術である。例えば、無水マレイン酸等のモノマーをグラフトする場合、ブルマジン型(BrumagineType)、パドル型(Paddle Type)、ファウドラ型(Pfaudler Type)、プロペラ型(Propeller Type)、タービン型(Turbine Type)等の攪拌機を用い溶液中でグラフトさせる方法、または、予め混練機で混練してペレット状に成形しておきこのペレットを成形機のホッパーに投入する方法、熱可塑性重合体と物質を成形機のホッパーに同時に供給する方法、成形機の途中から物質を有機溶剤に希釈して注入する方法等がある。このようにして得られるグラフト化ポリオレフィンは、例えば塗料改質、極性材料との接着などの用途に広く用いられている。特にエチレン性不飽和カルボン酸、及びその誘導体をグラフトしたポリオレフィンは、優れた改質性能を示し、中でも無水マレイン酸グラフトポリオレフィンは、良好な性能を持つ接着性樹脂として、食品包材をはじめ広く利用されている。(例えば特許文献1参照。)
【0003】
【特許文献1】特開平9−202846
【0004】
上記文献では、変性に関する事柄が述べられている。しかしグラフト率の観点から見ると1%以下の低い値である。
このように、既存の変性法は、グラフト率が低いことく、また、未反応成分が製品中に残留しやすいこと等が課題であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、熱可塑性樹脂を反応変性する製造方法において、グラフト率を向上させ、また、製品中の未反応成分を大幅に低下させる熱可塑性樹脂の変性方法、及び得られる変性熱可塑性樹脂を提供するためになされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、系内で熱可塑性樹脂を反応変性する際に、特定の化合物を添加することで、反応効率、及び反応均一性を大幅に向上させ、また、製品中の未反応成分を大幅に低下させることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、モノメタクリレート類、モノアクリレート類、ジメタクリレート類、ジアクリレート類、多官能性トリアジン類、トリエステル類から選ばれ、かつ分子量が150以上である化合物(a)(以下、変性用添加剤と記すことがある。)の存在下に、分子量が150未満の不飽和カルボン酸またはその誘導体(b)(以下、(b)不飽和カルボン酸(誘導体)と記すことがある。)を熱可塑性樹脂にグラフトさせることを特徴とする熱可塑性樹脂の変性方法である。上記の反応変性は、熱可塑性樹脂100重量部当たり2〜200重量部の二酸化炭素の存在下に、熱可塑性樹脂の変性を押出機内で行なうのが好ましい。
また、本発明は、上記製造方法により得られる変性熱可塑性樹脂である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、熱可塑性樹脂と、
(a)モノメタクリレート類、モノアクリレート類、ジメタクリレート類、ジアクリレート類、多官能性トリアジン類、トリエステル類から選ばれ、かつ分子量が150以上である化合物と、
(b)分子量が150未満の不飽和カルボン酸またはその誘導体と、
開始剤とをグラフト反応条件に付して熱可塑性樹脂を変性する。
【0009】
(熱可塑性樹脂)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが好ましい。
ポリオレフィンとしては、特に制限なく使用でき、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(ホモプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレンなど)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン−ブテン共重合体、ポリ4−メチルペンテン、アイオノマー樹脂(例えばエチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂等)、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数混合して用いても良い。上記の重合体のうちではポリプロピレンがより好ましい。
【0010】
また、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じ上記の重合体にその他の樹脂を混合して用いることもできる。混合して用いることのできる樹脂としては、例えば、上記以外のスチレン系樹脂(ポリスチレン、ブタジエン−スチレン共重合体(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等)、飽和ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸のようなヒドロキシカルボン酸縮合物、ポリブチレンサクシネートのようなジオールとカルボン酸の縮合物等)、
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、
ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーなどが挙げられる。
【0011】
(変性用添加剤)
本発明の変性用添加剤は、モノメタクリレート類、モノアクリレート類、ジメタクリレート類、ジアクリレート類、多官能性トリアジン類、トリエステル類から選ばれ、かつ分子量が150以上、好ましくは200以上、より好ましくは200〜350の化合物である。
変性用添加剤の具体例としては、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレ−ト、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、等のモノメタクリレート類、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール400アクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート、等のモノアクリレート類、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1.3ブチレングリコールジメタクリレート、1.6ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ1.3ジメタクリロキシプロパン、2.2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、、2.2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2.2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン等のジメタクリレート類、ポリエチレングリコールジアクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプレピレングリコール、2.2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ1−アクリロキシ3−メタクリロキシプロパン等のジアクリレート類、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のトリエステル類、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等の多官能性トリアジン類が含まれる。
【0012】
変性用添加剤は、熱可塑性樹脂100重量部当たり、0.01〜20重量部添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜5.0重量部添加することである。
変性用添加剤が熱可塑性樹脂100重量部当たり0.01重量部以上であると、反応効率向上、反応均一性向上、及び未反応成分抽出率向上の効果が大きい。また、変性用添加剤添加量が熱可塑性樹脂100重量部当たり20重量部以下であると、反応過剰による物性低下等が少ないので好ましい。
【0013】
変性用添加剤を添加する効果として、変性用添加剤が熱可塑性樹脂の分裂反応よりも早く熱可塑性樹脂に結合し、且つ、結合した変性用添加剤中にラジカルを発生させる、このラジカルは立体障害の大きい熱可塑性樹脂と結合することなく、立体障害の小さい、不飽和カルボン酸又はその誘導体と優先的に反応する為、変性反応のグラフト化率を向上させるものと推定される。
【0014】
(開始剤)
本発明に用いられる開始剤としては、特に制限なく使用でき、例えば、ラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤は、熱によって分解し、フリーラジカルを発生することによって開始される。ラジカル開始剤としては有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、半減期1分を得るための分解温度が30℃〜400℃であることが好ましい。
分解温度が上記範囲であると、有機過酸化物が十分分散した状態で分解反応が始まり、また、系内滞留時間内で十分な反応が達成できる。
【0015】
有機過酸化物の具体例としては、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1,3,3−テトラメチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、α,α‘ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルジパーオキシイソフタレート、n−ブチル−4,4−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)バレレート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート、ターシャリーブチルパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の1種、又は2種以上からなる有機過酸化物が挙げられる。
【0016】
ラジカル開始剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部当たり、0.01〜3重量部が好ましい。
0.01重量部以上であると、反応が進行しやすく、短時間で変性熱可塑性樹脂が製造可能である。また3重量部以下であると、ゲル等の不要成分の発生が少なくなり、変性熱可塑性樹脂製品の物性、外観等が良好である。また、熱可塑性樹脂の分解反応又は架橋反応が進行しにくいため、安定した押出成形ができる。
【0017】
(b)不飽和カルボン酸(誘導体)
本発明における(b)分子量150未満の不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、等からなる不飽和カルボン酸、又はその誘導体が挙げられる。誘導体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸無水物等を例示でき、酸無水物が好ましい。中でも無水マレイン酸が好ましい。
(b)不飽和カルボン酸(誘導体)の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部当たり、0.1〜10重量部が好ましい。0.1重量部以上では、改質性能が高く、また10重量部以下では、基材である熱可塑性樹脂自体の物性が保たれやすい。本発明の変性方法により得られる変性熱可塑性樹脂は、(b)不飽和カルボン酸(誘導体)のグラフト率が2.0重量%以上であることが好ましい。
【0018】
本発明においては、目的を損なわない範囲で、樹脂組成物中に、必要に応じて、顔料、染料、滑剤、抗酸化剤、充填剤、可塑剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、架橋剤、抗菌剤、発泡剤、発泡核剤、収縮防止剤、結晶核剤等を添加することができる。
本発明において添加剤を添加する方法、添加する場所、および添加するタイミングは、特に制限なく、通常公知の方法を採用することができる。
【0019】
本発明に使用する反応装置は、特に制限はなく、公知に使用される攪拌機(溶液法)、又は押出機(溶融法)を適用することができる。例えば、撹拌機としてはブルマジン型(BrumagineType)、パドル型(Paddle Type)、ファウドラ型(Pfaudler Type)、プロペラ型(Propeller Type)、タービン型(Turbine Type)等いずれのものでもよい。また押出機では、スクリューが1本の単軸押出機、スクリューが2本の二軸押出機、スクリューが3本以上のの多軸押出機、押出機が1台のシングル押出機、押出機が2台繋がったタンデム押出機、押出機が3台以上繋がった多段押出機等、特に限定されない。又、本発明は、二酸化炭素を添加し、二酸化炭素媒体下において反応させるプロセス(特開2002−256042)についても適用できる。
【0020】
本発明の原料の製造方法については、特に制限なく、通常公知の方法を採用することができる。例えば、熱可塑性樹脂とラジカル開始剤等の添加剤を攪拌機等で均一混合した状態で使用することができる。また、均一混合した後、十分な混練能力のある一軸あるいは多軸の押出機、混合ロール、ニーダー、ブラベンダー等で溶融混練する方法等でも製造できる。
【0021】
二酸化炭素を用いる場合、熱可塑性樹脂に完全に溶解拡散するためには、高圧状態を必要とすることから、単軸押出機が好ましい、その中でも、単軸押出機が2台以上繋がった押出機が好ましい。また、未反応成分を除去するための脱気口を設けていることが好ましい。
本発明で使用される二酸化炭素の供給方法としては、特に制限なく、通常公知の方法を採用することができる。例えば、二酸化炭素ボンベから減圧弁を介し、供給部の圧力を制御することによりガス状態で供給する方法、二酸化炭素ボンベから定量ポンプを介し、二酸化炭素流量を制御し、液体状態、または超臨界状態で供給する方法等、特に限定されない。中でも液体状態、または超臨界状態で供給する方法が好ましい。
【0022】
本発明法で製造される変性熱可塑性樹脂は、その製品形状、押出形態、ダイ形態においても特に限定されるものではない。ペレット状、パウダー状、ストランド状、フィラメント状、フィルム状、シート状、板状、角材状、パイプ状、チューブ状、円柱状、楕円状、ネット状、発泡押出、多層押出、異形押出、インフレーション押出、ラム押出等、特に限定されない。
【0023】
本発明の一態様である変性熱可塑性樹脂を製造する一例を図1により以下に説明する。
熱可塑性樹脂(1)、不飽和カルボン酸又はその誘導体と変性用添加剤の有機溶媒溶解液(2)、ラジカル開始剤の有機溶媒溶解液(3)を二酸化炭素(4)(5)を用い、第一押出機(6)、第ニ押出機(7)より供給し、加熱混練し溶融させる。二酸化炭素の供給方法としては、液化二酸化炭素ボンベ(4)(5)より、二酸化炭素を液体状態に維持したまま定量ポンプ(8)(9)に注入し、定量ポンプ(8)(9)の吐出圧力を二酸化炭素の臨界圧力(7.4MPa)〜50MPaの範囲内で一定圧力となるよう保圧弁(10)(11)で制御し吐出した後、液体状態、もしくは超臨界状態で溶融した熱可塑性樹脂組成物に供給する方法が好ましい。このとき供給する樹脂圧力は、3〜50MPaの範囲が好ましい。供給する樹脂圧力が3Mpa以上では、供給した全ての二酸化炭素を溶解拡散させることができるため、反応効率向上、反応均一性向上、及び未反応成分抽出率向上の効果が高まる。また、供給する樹脂圧力が50Mpa以下であると、製造装置からのガス漏れの恐れが少なく、特殊で高価なガス漏れ防止装置を設けなくてよいので、安全性、安定生産性、製造コスト等を考え合わせると好ましい。
【0024】
第1押出機(6)のスクリュー形状は、二酸化炭素供給部で熱可塑性樹脂組成物が既に溶融している形状であれば、特に制限されるものではない。特に、二酸化炭素供給部手前に、バレルとのクリアランスを小さくしたリングや、ユニメルト等を設けているスクリューが好ましい。添加した二酸化炭素は、該添加量が適量で、熱可塑性樹脂組成物が完全に溶融状態であれば、溶融樹脂自身のメルトシールにより、ホッパー側へのバックフローはしない。
【0025】
二酸化炭素が溶解拡散した溶融熱可塑性樹脂組成物は、反応に適した温度に設定された第2押出機(7)へ移送され、変性反応が進行する。この第2押出機(7)での温度、圧力については、熱可塑性樹脂の種類とラジカル開始剤種類とその組み合わせによっても、目的とする変性熱可塑性樹脂によっても、また、製造する装置によっても、異なるため、適宜選択することができる。
第2押出機(7)のスクリュー形状は、特に限定されるものではない。使用する熱可塑性樹脂によっても、反応条件によっても、異なるため、スクリュー形状は適宜選択することができる。例えば、押出機内の圧力を高くしたい場合には、溝が浅く、多条フライトタイプを使用するのが好ましい。また滞留時間を長くしたい場合には、多条フライトで、フライトが切りかき型になっているタイプを使用するのが好ましい。
【0026】
第2押出機(7)出口に接続されたダイ(12)を通じてストランド状に押し出される。押し出された変性熱可塑性樹脂組成物は、水槽(13)で冷却した後、カッター(14)で切断し、ペレット状変性熱可塑性樹脂組成物(15)として得る。
例示した実施形態では、押し出す前に二酸化炭素を除去するとしているが、完全に除去せず、一部を発泡剤として利用し、変性熱可塑性樹脂組成物を発泡体として得ることもできる。
【0027】
【実施例】
次に本発明を実施例、及び比較例より説明する。
実施例1
押出機として、図1に示したスクリュー径30mmの第1押出機(6)とスクリュー径40mmの第2押出機(7)を有する多段押出機を使用した。二酸化炭素供給口(16)(17)は、押出機(6)(7)の中央付近に設けた。熱可塑性樹脂(1)として、ホモポリプロピレン(三井住友ポリオレフィン社製 商品名 三井住友ポリプロJ101PT)100重量部と、不飽和カルボン酸として顆粒状無水マレイン酸(日本油脂製 商品名クリスタルマンAB)を3.5重量部、変性用添加剤としてトリアリルイソシアヌレート(日本化成製 商品名TAIC、分子量249)を3重量部、ラジカル開始剤として、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂製 商品名パーヘキシン25B)を2.0重量部用いた。
【0028】
二酸化炭素は、サイホン式の液化二酸化炭素ボンベ(4)(5)を使用し、液相部分から直接取り出せるようにした。ボンベ(4)(5)から定量ポンプ(8)(9)までの流路を冷媒循環機を用いて、−12℃に調節したエチレングリコール水溶液で冷却し、二酸化炭素を液体状態で定量ポンプ(8)(9)まで送液できるようにした。次に送液した液状二酸化炭素を0.2kg/時間となるよう、確認しながら定量ポンプ(8)(9)を制御し、定量ポンプ(8)(9)の吐出圧力を30MPaとなるよう保圧弁(10)(11)にて調整した。このとき、定量ポンプ(8)(9)の容積効率は、65%で一定となった。次に保圧弁(10)(11)から押出機(6)(7)の二酸化炭素供給口(16)(17)までのラインを50℃となるよう調整し、二酸化炭素を押出機内(6)(7)に供給した。このときの二酸化炭素供給部の溶融樹脂圧力は15MPaであった。つまり、この溶融した熱可塑性樹脂に溶解する直前の二酸化炭素は、温度が50℃以上、圧力が15MPaである超臨界状態の二酸化炭素となっている。
このようにして、溶融した熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して超臨界二酸化炭素を計20重量部の割合で押出機(6)(7)に供給し、スクリューで均一に溶解拡散させた。
【0029】
第2押出機(7)で変性反応した変性熱可塑性樹脂組成物は、第2押出機(7)出口に接続されたダイ(12)を通じてストランド状に1kg/時間の押出量で押し出した。押し出されたストランド状変性熱可塑性樹脂組成物は、水槽(13)で冷却した後、カッター(14)により切断し、ペレット状の変性熱可塑性樹脂組成物(15)を得た。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して2.7重量%であった。
【0030】
実施例2
本実施例は、二酸化炭素を供給しない以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して2.4重量%であった。
【0031】
実施例3
本実施例は、変性用添加剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート(第一工業製薬製 商品名NFバイソマー・TMPTMA、分子量338)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して3.0重量%であった。
【0032】
実施例4
本実施例は、二酸化炭素を供給しない以外は、実施例3と同様に実施した。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して2.6重量%であった。
【0033】
比較例1
本比較例は、変性用添加剤を供給しない以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して1.7重量%であった。
【0034】
比較例2
本比較例は、二酸化炭素を供給しない以外は、比較例1と同様に実施した。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して1.4重量%であった。
上記、実施例1,2及び比較例1,2の結果を下記表に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
上記結果より、変性用添加剤を用いたものでは、グラフト率が2.0%以上となっていることがわかる、また二酸化炭素を用いたものは、特にグラフト率が高いことがわかる。一方、変性用添加剤を用いていないものでは、二酸化炭素を用いても、グラフト率が2.0%未満となっていることがわかる。
この理由として次のことが考えられる。押出機内で変性反応を行う場合、二酸化炭素を用いることにより、不飽和カルボン酸又はその誘導体、開始剤、変性用添加剤が均一に分散しグラフト率が向上するものと考えられる。また、図2に示すように、系内では、開始剤により、ポリマー内にラジカルが発生し、このラジカルに変性用添加剤がグラフトすると同時に自分子内にラジカルをつくる。このラジカルに結合するには立体障害が小さいものが圧倒的に有利であるため、分子量が小さい不飽和カルボン酸またはその誘導体が優先的且つ選択的にグラフトする。従って、グラフト率が高いものと推定される。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、熱可塑性樹脂を反応変性する製造方法において、反応効率、及び反応均一性を大幅に向上させ、高いグラフト効率を得ることができる手法である。また、本発明の方法により得られる変性熱可塑性樹脂は、不飽和カルボン酸(誘導体)のグラフト率が高く、未反応成分の残留が少ないため、優れた改質性能(接着性等)を発現しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の変性熱可塑性樹脂の製造方法の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明の変性用添加剤反応機構図。
【符号の説明】
(1)熱可塑性樹脂
(2)不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び変性用添加剤の有機溶媒溶解液
(3)ラジカル開始剤の有機溶媒溶解液
(4)液化二酸化炭素ボンベ
(5)液化二酸化炭素ボンベ
(6)第一押出機
(7)第ニ押出機
(8)定量ポンプ
(9)定量ポンプ
(10)保圧弁
(11)保圧弁
(12)ダイ
(13)水槽
(14)カッター
(15)変性熱可塑性樹脂組成物
(16)二酸化炭素供給口
(17)二酸化炭素供給口
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂に不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフトさせる変性方法、及び変性熱可塑性樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂を反応変性する製造方法は周知技術である。例えば、無水マレイン酸等のモノマーをグラフトする場合、ブルマジン型(BrumagineType)、パドル型(Paddle Type)、ファウドラ型(Pfaudler Type)、プロペラ型(Propeller Type)、タービン型(Turbine Type)等の攪拌機を用い溶液中でグラフトさせる方法、または、予め混練機で混練してペレット状に成形しておきこのペレットを成形機のホッパーに投入する方法、熱可塑性重合体と物質を成形機のホッパーに同時に供給する方法、成形機の途中から物質を有機溶剤に希釈して注入する方法等がある。このようにして得られるグラフト化ポリオレフィンは、例えば塗料改質、極性材料との接着などの用途に広く用いられている。特にエチレン性不飽和カルボン酸、及びその誘導体をグラフトしたポリオレフィンは、優れた改質性能を示し、中でも無水マレイン酸グラフトポリオレフィンは、良好な性能を持つ接着性樹脂として、食品包材をはじめ広く利用されている。(例えば特許文献1参照。)
【0003】
【特許文献1】特開平9−202846
【0004】
上記文献では、変性に関する事柄が述べられている。しかしグラフト率の観点から見ると1%以下の低い値である。
このように、既存の変性法は、グラフト率が低いことく、また、未反応成分が製品中に残留しやすいこと等が課題であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、熱可塑性樹脂を反応変性する製造方法において、グラフト率を向上させ、また、製品中の未反応成分を大幅に低下させる熱可塑性樹脂の変性方法、及び得られる変性熱可塑性樹脂を提供するためになされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、系内で熱可塑性樹脂を反応変性する際に、特定の化合物を添加することで、反応効率、及び反応均一性を大幅に向上させ、また、製品中の未反応成分を大幅に低下させることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、モノメタクリレート類、モノアクリレート類、ジメタクリレート類、ジアクリレート類、多官能性トリアジン類、トリエステル類から選ばれ、かつ分子量が150以上である化合物(a)(以下、変性用添加剤と記すことがある。)の存在下に、分子量が150未満の不飽和カルボン酸またはその誘導体(b)(以下、(b)不飽和カルボン酸(誘導体)と記すことがある。)を熱可塑性樹脂にグラフトさせることを特徴とする熱可塑性樹脂の変性方法である。上記の反応変性は、熱可塑性樹脂100重量部当たり2〜200重量部の二酸化炭素の存在下に、熱可塑性樹脂の変性を押出機内で行なうのが好ましい。
また、本発明は、上記製造方法により得られる変性熱可塑性樹脂である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、熱可塑性樹脂と、
(a)モノメタクリレート類、モノアクリレート類、ジメタクリレート類、ジアクリレート類、多官能性トリアジン類、トリエステル類から選ばれ、かつ分子量が150以上である化合物と、
(b)分子量が150未満の不飽和カルボン酸またはその誘導体と、
開始剤とをグラフト反応条件に付して熱可塑性樹脂を変性する。
【0009】
(熱可塑性樹脂)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが好ましい。
ポリオレフィンとしては、特に制限なく使用でき、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(ホモプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレンなど)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン−ブテン共重合体、ポリ4−メチルペンテン、アイオノマー樹脂(例えばエチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂等)、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数混合して用いても良い。上記の重合体のうちではポリプロピレンがより好ましい。
【0010】
また、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じ上記の重合体にその他の樹脂を混合して用いることもできる。混合して用いることのできる樹脂としては、例えば、上記以外のスチレン系樹脂(ポリスチレン、ブタジエン−スチレン共重合体(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等)、飽和ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸のようなヒドロキシカルボン酸縮合物、ポリブチレンサクシネートのようなジオールとカルボン酸の縮合物等)、
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、
ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーなどが挙げられる。
【0011】
(変性用添加剤)
本発明の変性用添加剤は、モノメタクリレート類、モノアクリレート類、ジメタクリレート類、ジアクリレート類、多官能性トリアジン類、トリエステル類から選ばれ、かつ分子量が150以上、好ましくは200以上、より好ましくは200〜350の化合物である。
変性用添加剤の具体例としては、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレ−ト、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、等のモノメタクリレート類、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール400アクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート、等のモノアクリレート類、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1.3ブチレングリコールジメタクリレート、1.6ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ1.3ジメタクリロキシプロパン、2.2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、、2.2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2.2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン等のジメタクリレート類、ポリエチレングリコールジアクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプレピレングリコール、2.2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ1−アクリロキシ3−メタクリロキシプロパン等のジアクリレート類、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のトリエステル類、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等の多官能性トリアジン類が含まれる。
【0012】
変性用添加剤は、熱可塑性樹脂100重量部当たり、0.01〜20重量部添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜5.0重量部添加することである。
変性用添加剤が熱可塑性樹脂100重量部当たり0.01重量部以上であると、反応効率向上、反応均一性向上、及び未反応成分抽出率向上の効果が大きい。また、変性用添加剤添加量が熱可塑性樹脂100重量部当たり20重量部以下であると、反応過剰による物性低下等が少ないので好ましい。
【0013】
変性用添加剤を添加する効果として、変性用添加剤が熱可塑性樹脂の分裂反応よりも早く熱可塑性樹脂に結合し、且つ、結合した変性用添加剤中にラジカルを発生させる、このラジカルは立体障害の大きい熱可塑性樹脂と結合することなく、立体障害の小さい、不飽和カルボン酸又はその誘導体と優先的に反応する為、変性反応のグラフト化率を向上させるものと推定される。
【0014】
(開始剤)
本発明に用いられる開始剤としては、特に制限なく使用でき、例えば、ラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤は、熱によって分解し、フリーラジカルを発生することによって開始される。ラジカル開始剤としては有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、半減期1分を得るための分解温度が30℃〜400℃であることが好ましい。
分解温度が上記範囲であると、有機過酸化物が十分分散した状態で分解反応が始まり、また、系内滞留時間内で十分な反応が達成できる。
【0015】
有機過酸化物の具体例としては、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1,3,3−テトラメチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、α,α‘ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルジパーオキシイソフタレート、n−ブチル−4,4−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)バレレート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート、ターシャリーブチルパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の1種、又は2種以上からなる有機過酸化物が挙げられる。
【0016】
ラジカル開始剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部当たり、0.01〜3重量部が好ましい。
0.01重量部以上であると、反応が進行しやすく、短時間で変性熱可塑性樹脂が製造可能である。また3重量部以下であると、ゲル等の不要成分の発生が少なくなり、変性熱可塑性樹脂製品の物性、外観等が良好である。また、熱可塑性樹脂の分解反応又は架橋反応が進行しにくいため、安定した押出成形ができる。
【0017】
(b)不飽和カルボン酸(誘導体)
本発明における(b)分子量150未満の不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、等からなる不飽和カルボン酸、又はその誘導体が挙げられる。誘導体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸無水物等を例示でき、酸無水物が好ましい。中でも無水マレイン酸が好ましい。
(b)不飽和カルボン酸(誘導体)の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部当たり、0.1〜10重量部が好ましい。0.1重量部以上では、改質性能が高く、また10重量部以下では、基材である熱可塑性樹脂自体の物性が保たれやすい。本発明の変性方法により得られる変性熱可塑性樹脂は、(b)不飽和カルボン酸(誘導体)のグラフト率が2.0重量%以上であることが好ましい。
【0018】
本発明においては、目的を損なわない範囲で、樹脂組成物中に、必要に応じて、顔料、染料、滑剤、抗酸化剤、充填剤、可塑剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、架橋剤、抗菌剤、発泡剤、発泡核剤、収縮防止剤、結晶核剤等を添加することができる。
本発明において添加剤を添加する方法、添加する場所、および添加するタイミングは、特に制限なく、通常公知の方法を採用することができる。
【0019】
本発明に使用する反応装置は、特に制限はなく、公知に使用される攪拌機(溶液法)、又は押出機(溶融法)を適用することができる。例えば、撹拌機としてはブルマジン型(BrumagineType)、パドル型(Paddle Type)、ファウドラ型(Pfaudler Type)、プロペラ型(Propeller Type)、タービン型(Turbine Type)等いずれのものでもよい。また押出機では、スクリューが1本の単軸押出機、スクリューが2本の二軸押出機、スクリューが3本以上のの多軸押出機、押出機が1台のシングル押出機、押出機が2台繋がったタンデム押出機、押出機が3台以上繋がった多段押出機等、特に限定されない。又、本発明は、二酸化炭素を添加し、二酸化炭素媒体下において反応させるプロセス(特開2002−256042)についても適用できる。
【0020】
本発明の原料の製造方法については、特に制限なく、通常公知の方法を採用することができる。例えば、熱可塑性樹脂とラジカル開始剤等の添加剤を攪拌機等で均一混合した状態で使用することができる。また、均一混合した後、十分な混練能力のある一軸あるいは多軸の押出機、混合ロール、ニーダー、ブラベンダー等で溶融混練する方法等でも製造できる。
【0021】
二酸化炭素を用いる場合、熱可塑性樹脂に完全に溶解拡散するためには、高圧状態を必要とすることから、単軸押出機が好ましい、その中でも、単軸押出機が2台以上繋がった押出機が好ましい。また、未反応成分を除去するための脱気口を設けていることが好ましい。
本発明で使用される二酸化炭素の供給方法としては、特に制限なく、通常公知の方法を採用することができる。例えば、二酸化炭素ボンベから減圧弁を介し、供給部の圧力を制御することによりガス状態で供給する方法、二酸化炭素ボンベから定量ポンプを介し、二酸化炭素流量を制御し、液体状態、または超臨界状態で供給する方法等、特に限定されない。中でも液体状態、または超臨界状態で供給する方法が好ましい。
【0022】
本発明法で製造される変性熱可塑性樹脂は、その製品形状、押出形態、ダイ形態においても特に限定されるものではない。ペレット状、パウダー状、ストランド状、フィラメント状、フィルム状、シート状、板状、角材状、パイプ状、チューブ状、円柱状、楕円状、ネット状、発泡押出、多層押出、異形押出、インフレーション押出、ラム押出等、特に限定されない。
【0023】
本発明の一態様である変性熱可塑性樹脂を製造する一例を図1により以下に説明する。
熱可塑性樹脂(1)、不飽和カルボン酸又はその誘導体と変性用添加剤の有機溶媒溶解液(2)、ラジカル開始剤の有機溶媒溶解液(3)を二酸化炭素(4)(5)を用い、第一押出機(6)、第ニ押出機(7)より供給し、加熱混練し溶融させる。二酸化炭素の供給方法としては、液化二酸化炭素ボンベ(4)(5)より、二酸化炭素を液体状態に維持したまま定量ポンプ(8)(9)に注入し、定量ポンプ(8)(9)の吐出圧力を二酸化炭素の臨界圧力(7.4MPa)〜50MPaの範囲内で一定圧力となるよう保圧弁(10)(11)で制御し吐出した後、液体状態、もしくは超臨界状態で溶融した熱可塑性樹脂組成物に供給する方法が好ましい。このとき供給する樹脂圧力は、3〜50MPaの範囲が好ましい。供給する樹脂圧力が3Mpa以上では、供給した全ての二酸化炭素を溶解拡散させることができるため、反応効率向上、反応均一性向上、及び未反応成分抽出率向上の効果が高まる。また、供給する樹脂圧力が50Mpa以下であると、製造装置からのガス漏れの恐れが少なく、特殊で高価なガス漏れ防止装置を設けなくてよいので、安全性、安定生産性、製造コスト等を考え合わせると好ましい。
【0024】
第1押出機(6)のスクリュー形状は、二酸化炭素供給部で熱可塑性樹脂組成物が既に溶融している形状であれば、特に制限されるものではない。特に、二酸化炭素供給部手前に、バレルとのクリアランスを小さくしたリングや、ユニメルト等を設けているスクリューが好ましい。添加した二酸化炭素は、該添加量が適量で、熱可塑性樹脂組成物が完全に溶融状態であれば、溶融樹脂自身のメルトシールにより、ホッパー側へのバックフローはしない。
【0025】
二酸化炭素が溶解拡散した溶融熱可塑性樹脂組成物は、反応に適した温度に設定された第2押出機(7)へ移送され、変性反応が進行する。この第2押出機(7)での温度、圧力については、熱可塑性樹脂の種類とラジカル開始剤種類とその組み合わせによっても、目的とする変性熱可塑性樹脂によっても、また、製造する装置によっても、異なるため、適宜選択することができる。
第2押出機(7)のスクリュー形状は、特に限定されるものではない。使用する熱可塑性樹脂によっても、反応条件によっても、異なるため、スクリュー形状は適宜選択することができる。例えば、押出機内の圧力を高くしたい場合には、溝が浅く、多条フライトタイプを使用するのが好ましい。また滞留時間を長くしたい場合には、多条フライトで、フライトが切りかき型になっているタイプを使用するのが好ましい。
【0026】
第2押出機(7)出口に接続されたダイ(12)を通じてストランド状に押し出される。押し出された変性熱可塑性樹脂組成物は、水槽(13)で冷却した後、カッター(14)で切断し、ペレット状変性熱可塑性樹脂組成物(15)として得る。
例示した実施形態では、押し出す前に二酸化炭素を除去するとしているが、完全に除去せず、一部を発泡剤として利用し、変性熱可塑性樹脂組成物を発泡体として得ることもできる。
【0027】
【実施例】
次に本発明を実施例、及び比較例より説明する。
実施例1
押出機として、図1に示したスクリュー径30mmの第1押出機(6)とスクリュー径40mmの第2押出機(7)を有する多段押出機を使用した。二酸化炭素供給口(16)(17)は、押出機(6)(7)の中央付近に設けた。熱可塑性樹脂(1)として、ホモポリプロピレン(三井住友ポリオレフィン社製 商品名 三井住友ポリプロJ101PT)100重量部と、不飽和カルボン酸として顆粒状無水マレイン酸(日本油脂製 商品名クリスタルマンAB)を3.5重量部、変性用添加剤としてトリアリルイソシアヌレート(日本化成製 商品名TAIC、分子量249)を3重量部、ラジカル開始剤として、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂製 商品名パーヘキシン25B)を2.0重量部用いた。
【0028】
二酸化炭素は、サイホン式の液化二酸化炭素ボンベ(4)(5)を使用し、液相部分から直接取り出せるようにした。ボンベ(4)(5)から定量ポンプ(8)(9)までの流路を冷媒循環機を用いて、−12℃に調節したエチレングリコール水溶液で冷却し、二酸化炭素を液体状態で定量ポンプ(8)(9)まで送液できるようにした。次に送液した液状二酸化炭素を0.2kg/時間となるよう、確認しながら定量ポンプ(8)(9)を制御し、定量ポンプ(8)(9)の吐出圧力を30MPaとなるよう保圧弁(10)(11)にて調整した。このとき、定量ポンプ(8)(9)の容積効率は、65%で一定となった。次に保圧弁(10)(11)から押出機(6)(7)の二酸化炭素供給口(16)(17)までのラインを50℃となるよう調整し、二酸化炭素を押出機内(6)(7)に供給した。このときの二酸化炭素供給部の溶融樹脂圧力は15MPaであった。つまり、この溶融した熱可塑性樹脂に溶解する直前の二酸化炭素は、温度が50℃以上、圧力が15MPaである超臨界状態の二酸化炭素となっている。
このようにして、溶融した熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して超臨界二酸化炭素を計20重量部の割合で押出機(6)(7)に供給し、スクリューで均一に溶解拡散させた。
【0029】
第2押出機(7)で変性反応した変性熱可塑性樹脂組成物は、第2押出機(7)出口に接続されたダイ(12)を通じてストランド状に1kg/時間の押出量で押し出した。押し出されたストランド状変性熱可塑性樹脂組成物は、水槽(13)で冷却した後、カッター(14)により切断し、ペレット状の変性熱可塑性樹脂組成物(15)を得た。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して2.7重量%であった。
【0030】
実施例2
本実施例は、二酸化炭素を供給しない以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して2.4重量%であった。
【0031】
実施例3
本実施例は、変性用添加剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート(第一工業製薬製 商品名NFバイソマー・TMPTMA、分子量338)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して3.0重量%であった。
【0032】
実施例4
本実施例は、二酸化炭素を供給しない以外は、実施例3と同様に実施した。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して2.6重量%であった。
【0033】
比較例1
本比較例は、変性用添加剤を供給しない以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して1.7重量%であった。
【0034】
比較例2
本比較例は、二酸化炭素を供給しない以外は、比較例1と同様に実施した。
得られた変性熱可塑性樹脂組成物の無水マレイン酸のグラフト率は、変性熱可塑性樹脂組成物100重量%に対して1.4重量%であった。
上記、実施例1,2及び比較例1,2の結果を下記表に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
上記結果より、変性用添加剤を用いたものでは、グラフト率が2.0%以上となっていることがわかる、また二酸化炭素を用いたものは、特にグラフト率が高いことがわかる。一方、変性用添加剤を用いていないものでは、二酸化炭素を用いても、グラフト率が2.0%未満となっていることがわかる。
この理由として次のことが考えられる。押出機内で変性反応を行う場合、二酸化炭素を用いることにより、不飽和カルボン酸又はその誘導体、開始剤、変性用添加剤が均一に分散しグラフト率が向上するものと考えられる。また、図2に示すように、系内では、開始剤により、ポリマー内にラジカルが発生し、このラジカルに変性用添加剤がグラフトすると同時に自分子内にラジカルをつくる。このラジカルに結合するには立体障害が小さいものが圧倒的に有利であるため、分子量が小さい不飽和カルボン酸またはその誘導体が優先的且つ選択的にグラフトする。従って、グラフト率が高いものと推定される。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、熱可塑性樹脂を反応変性する製造方法において、反応効率、及び反応均一性を大幅に向上させ、高いグラフト効率を得ることができる手法である。また、本発明の方法により得られる変性熱可塑性樹脂は、不飽和カルボン酸(誘導体)のグラフト率が高く、未反応成分の残留が少ないため、優れた改質性能(接着性等)を発現しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の変性熱可塑性樹脂の製造方法の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明の変性用添加剤反応機構図。
【符号の説明】
(1)熱可塑性樹脂
(2)不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び変性用添加剤の有機溶媒溶解液
(3)ラジカル開始剤の有機溶媒溶解液
(4)液化二酸化炭素ボンベ
(5)液化二酸化炭素ボンベ
(6)第一押出機
(7)第ニ押出機
(8)定量ポンプ
(9)定量ポンプ
(10)保圧弁
(11)保圧弁
(12)ダイ
(13)水槽
(14)カッター
(15)変性熱可塑性樹脂組成物
(16)二酸化炭素供給口
(17)二酸化炭素供給口
Claims (3)
- モノメタクリレート類、モノアクリレート類、ジメタクリレート類、ジアクリレート類、多官能性トリアジン類、トリエステル類から選ばれ、かつ分子量が150以上である化合物(a)の存在下に、分子量が150未満の不飽和カルボン酸またはその誘導体(b)を熱可塑性樹脂にグラフトさせることを特徴とする熱可塑性樹脂の変性方法。
- 熱可塑性樹脂100重量部当たり2〜200重量部の二酸化炭素の存在下に、熱可塑性樹脂を押出機内で反応変性することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂の変性方法。
- 請求項1ないし2のいずれかに記載の方法により得られる変性熱可塑性樹脂。
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