JP2004137228A - 2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤を、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることにより、2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を高価な加圧設備を必要とすることなく、高収率かつ短時間での反応で得ることが出来る。さらに、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物を原料として、高価な加圧設備を必要とすることなく、高収率で2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を得ることが可能である。
【解決手段】2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤を、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることにより、2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を高価な加圧設備を必要とすることなく、高収率かつ短時間での反応で得ることが出来る。さらに、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物を原料として、高価な加圧設備を必要とすることなく、高収率で2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を得ることが可能である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物は、例えば、下記一般式(1)
(式中、R1は炭化水素残基、R2、R3、R4及びR5は水素原子または炭化水素残基、R6は水素原子または低級アルキル基を示す。)
で表され、循環器系治療剤「ピンドロール」およびその類縁体の合成中間体として有用なことが知られている。
【0003】
かかる化合物の合成方法として、次のような方法が提案されている。
▲1▼ 4−オキソテトラヒドロクマロン−カルボン酸を加圧下に無水メタノールでアミノ化剤と反応させる方法(特許文献1)。
▲2▼ シクロヘキサノン誘導体をアミノ化剤と反応させる方法(特許文献2)。
しかし、これらの公知方法では、一般に加圧下で反応が行われており、装置上、操作上の問題があった。また、反応性が低いため、反応に半日以上の長時間を必要としたり、反応速度を高めるため反応温度を上昇すると高沸点の副生物が増加するという問題があった。
【0004】
また、特許文献3には、原料として1−アセトニルシクロヘキサン−2,6−ジオンを、反応溶媒として水を用いて2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールを低圧で製造することが記載されているが、収率が低いという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭54−19971号公報
【特許文献2】
特開昭57−4970号公報
【特許文献3】
特開平2−15058号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような従来技術の問題点に鑑み、2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を低圧下で収率良く製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討したところ、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶剤中で反応させることにより、高圧設備を必要とすることなく、高収率で2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を製造することが出来ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明の2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の製造方法は、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤を、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることを特徴する
【0009】
そして、前記反応を40℃以上の温度で行うことが好ましい。
【0010】
また、本発明の第2の製造方法は、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物を(a)水素化触媒および(b)含フッ素有機酸の存在下に水素添加して得られた1,3−シクロヘキサンジオン化合物と、α−ハロケトン化合物とを反応させることにより2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を得、次に得られた2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させて2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を得る。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の製造方法は、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることを特徴する。
【0012】
ここで、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物は、例えば、下記一般式(2)で表される。
一般式(2)
(式中、R1は炭化水素残基、R2、R3、R4及びR5は水素原子または炭化水素残基を示す。)
【0013】
一般式(2)におけるR1、R2、R3、R4及びR5で示される炭化水素残基は、炭素数15以下のものが好ましく、炭素数5以下のアルキル基が特に好ましい。R1、R2、R3、R4及びR5の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、などのアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;フェネチル基、ベンジル基などのアラルキル基;などを挙げることができる。
【0014】
2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物の具体例としては、2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン;
【0015】
4−メチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4−エチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4−メチル−2−(2−オキソブチル)シクロヘキサン−1,3−ジオンなどの4−置換−2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物;
【0016】
5−メチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、5−エチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、5−メチル−2−(2−オキソブチル)シクロヘキサン−1,3−ジオンなどの5−置換−2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物;
【0017】
4,5−ジメチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4,5−ジエチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4、5−ジメチル−2−(2−オキソブチル)シクロヘキサン−1,3−ジオンなどの4,5−ジ置換−2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物;などが挙げられるが、これらの中でも2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオンが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法は、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応を行なうことを特徴とする。
【0019】
本発明で使用される炭素数2以上の有機極性溶媒としては、エタノール、プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール等の炭素数2以上のアルコール類;シクロペンチルメチルエーテル(以下CPMEと略す。)、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミルなどの炭素数2以上のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチルウレア、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルイミダゾリジノン等の炭素数2以上のアミド類などの溶媒が好適に用いられるが、これらの中でも炭素数2以上のアルコール類、エーテル類またはエステル類が好ましく、エタノール、プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、CPMEが特に好ましく、エタノールまたはCPMEがさらに好ましい。極性溶媒の使用量としては、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物に対して1〜30重量倍、好ましくは1〜20重量倍である。
【0020】
本発明では、アミノ化剤として水溶性アミノ化剤が用いられる。その具体的な例として、アンモニア;塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸アンモニウム塩;ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、酪酸アンモニウム、ラウリン酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、マロン酸アンモニウム、グルタル酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウムなどの有機酸アンモニウム塩;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどの低級アミン;等が挙げられるが、これらの中でも取り扱いの容易さの面からアンモニア以外の水溶性アミノ化剤が好ましく、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウムが特に好ましく、酢酸アンモニウムがさらに好ましい。
【0021】
水溶性アミノ化剤の使用量は2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物に対して、通常、1〜10当量、好ましくは1〜5当量であり、特に好ましくは1.5〜3.5当量である。水溶性アミノ化剤は多量使用しても特に差し支えないが、大過剰量使用しても格別の意味がなく製造コストが増大する。
【0022】
反応は前記2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と前記炭素数2以上の有機極性溶媒から得られた溶液中へ水溶性アミノ化剤を連続的あるいは断続的に添加していく方法、水溶性アミノ化剤を反応開始時に全量添加する方法、炭素数2以上の有機極性溶媒中へ2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤を同時に添加する方法、炭素数2以上の有機極性溶媒と水溶性アミノ化剤の混合溶液中に2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を連続的あるいは断続的に添加する方法等により行なわれる。
【0023】
本発明における反応は系が均一になるような温度条件下で行なわれる。反応系は高温になるほど均一化し易いので、反応温度は通常40℃以上、好ましくは50〜150℃、特に好ましくは50〜110℃である。反応温度が40℃より低いと反応速度が低下し、150℃を超えると副生物が増加する。反応圧力は、常圧もしくは加圧のいずれでもよいが、操作性及び装置コストの面から、好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは常圧下で反応を行なう。
【0024】
なお、前記式(1)で表される2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の具体例としては、2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール;
【0025】
2,5−ジメチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、5−エチル−2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、2−エチル−5−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールなどの2,5−ジ置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物;
【0026】
2,6−ジメチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、6−エチル−2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、2−エチル−6−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールなどの2,6−ジ置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物;
【0027】
2,5,6−トリメチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、5,6−ジエチル−2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、2−エチル−5,6−ジメチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールなどの2,5,6−トリ置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物;などが挙げられるが、これらの中でも2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールが好ましい。
【0028】
本発明の第2の製造方法は、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物を(a)水素化触媒および(b)含フッ素有機酸の存在下に水素添加して得られた1,3−シクロヘキサンジオン化合物と、α−ハロケトン化合物とを反応させることにより2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を得、次に得られた2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させて2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を得る。
【0029】
1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物は、例えば、下記一般式(3)で表される化合物であり、これを水素添加して、例えば、下記一般式(4)で表される1,3−シクロヘキサンジオン化合物を得ることが出来る。
【0030】
一般式(3)
(式中、R3、R4及びR5は前記と同じ意味を表し、R7はR3、R4及びR5と同様に水素原子または炭化水素残基を示す。)
【0031】
一般式(4)
(式中、R3、R4、R5及びR7は、前記と同じ意味を表す。)
【0032】
1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物の具体例としては、レゾルシノール;1,3−ジヒドロキシ−2−メチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2−エチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2−イソプロピルベンゼンなどの2−置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−4−メチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−4−エチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−4−n−ブチルベンゼンなどの4−置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−5−メチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−5−エチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−5−イソプロピルルベンゼンなどの5−置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−4,5−ジメチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−4,5−ジエチルベンゼンなどの4,5−ジ置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−2,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2−メチル−4−イソプロピルベンゼンなどの2,4−ジ置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−2,5−ジメチルベンゼンなどの2,5−ジ置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−4,5,6−トリメチルベンゼンなどの4,5,6−トリ置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;などが挙げられる。
【0033】
これらの中でも入手容易性および目的物が効率良く得られる観点から、レゾルシノール又はモノ置換1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物が好ましく、レゾルシノールが特に好ましい。
【0034】
水素添加反応は、(a)水素化触媒および(b)含フッ素有機酸の存在下に水素添加を行なう。
【0035】
前記(a)水素化触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金からなる群から選ばれる金属の単体若しくは該金属の化合物の1種または2種以上を含む金属触媒を用いることが出来る。金属化合物としては、例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩などが挙げられる。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
また、前記金属触媒は、カーボン、アルミナ、シリカ等の担体に担持されているのが好ましい。担体の形状は、粉末でも、球状、ペレット状などの成形品でも良い。
【0037】
担体に対する金属または金属化合物の担持量は、通常、0.5〜20重量%であるが、担体が粉末であれば1〜20重量%が好ましく、担体が成形品であれば1〜10重量%が好ましい。水素化触媒の使用量は、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物100重量部に対して、通常0.001〜50重量部、好ましくは0.01〜20重量部である。
【0038】
前記(b)含フッ素有機酸としては、分子内にフッ素原子を少なくとも1個以上含む有機酸であれば特に限定されない。含フッ素有機酸を反応系に存在させることで、1段階で目的とする1,3−シクロヘキサンジオン化合物を収率良く得ることが出来る。
【0039】
前記含フッ素有機酸としては、含フッ素カルボン酸、含フッ素スルホン酸、含フッ素スルフィン酸、ベンゼン環に置換基としてフッ素原子を有するフェノール類などが挙げられるが、これらの中でも、より高収率で目的物を得ることができること、目的物の単離が容易であることなどの理由から、含フッ素カルボン酸または含フッ素スルホン酸の使用が好ましく、含フッ素脂肪族カルボン酸の使用がより好ましい。
【0040】
含フッ素脂肪族カルボン酸の具体例としては、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、2,2,2−トリフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ヘプタフルオロ酪酸などが挙げられるが、これらの中でもトリフルオロ酢酸が好適に用いられる。
【0041】
前記含フッ素有機酸の使用量は、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物1重量部に対して、通常0.001〜1,000重量部、好ましくは0.01〜100重量部である。
【0042】
水素添加反応は、無溶媒または水、メタノール、テトラヒドロフランなどの希釈剤中で行なうことが出来るが、液状の含フッ素有機酸を用いる場合には、他の溶媒を用いずに、すなわち、含フッ素有機酸中で水素添加反応を行なうのが好ましく、液状の含フッ素カルボン酸中で水素添加反応を行なうのがより好ましく、トリフルオロ酢酸中で水素添加反応を行なうのが特に好ましい。
【0043】
水素添加反応は、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物、含フッ素有機酸および水素化触媒の所定量を密閉式の反応器に入れ、反応器内を所定圧力の水素ガスで置換して、所定温度で攪拌することにより行なわれる。
【0044】
水素添加反応を行なう方法は特に制約されず、回分式、連続式のいづれも採用することが出来る。水素添加反応に用いる反応器は、腐食性を有する含フッ素有機酸を使用する場合には、少なくとも内壁が酸に対して耐腐食性を有する材質からなるものが好ましい。また、反応器の大きさは反応スケールに応じて適宜選択することが出来る。
【0045】
水素ガスの圧力は、通常0.01MPa〜10MPa、好ましくは0.1MPa〜1MPaである。水素添加反応温度は、通常−10℃〜+250℃、好ましくは0℃〜+100℃、より好ましくは+10℃〜+80℃である。また、水素添加反応時間は、通常0.5時間〜50時間である。
【0046】
水素添加反応の終了後は、必要により反応液から水素化触媒を濾別し、得られた濾液を通常の後処理操作により処理し、蒸留法、カラムクロマトグラフィー、再結晶法等の公知の分離・精製手段により、目的とする1,3−シクロヘキサンジオン化合物を得ることが出来る。
【0047】
以上のように、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物のベンゼン環の5,6位の炭素−炭素二重結合を選択的に水素化して、1,3−シクロヘキサンジオン化合物を得る。
【0048】
1,3−シクロヘキサンジオン化合物の具体例としては、1,3−シクロヘキサンジオン;2−メチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2−イソブチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの2−置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0049】
4−メチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4−イソプロピルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの4−置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0050】
5−メチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、5−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、5−ペンチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの5−置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0051】
4,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4,5−ジエチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4−メチル−5−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの4,5−ジ置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0052】
2,4−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2,4−ジエチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2−メチル−4−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの2,4−ジ置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0053】
2,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2,5−ジエチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2−メチル−5−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの2,5−ジ置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0054】
4,5,6−トリメチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの4,5,6−トリ置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;などが挙げられる。
【0055】
これらの中でも、モノ置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物が好ましく、シクロヘキサン−1,3−ジオンが特に好ましい。
【0056】
次に、前記1,3−シクロヘキサンジオン化合物を、例えば、下記一般式(5)で表されるα−ハロケトン化合物と塩基の存在下で縮合反応させて、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を得る。
【0057】
一般式(5)
(式中、R1およびR2は、前記と同じ意味を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【0058】
α−ハロケトン化合物としては、α−クロロアセトン、α−ブロモアセトン、α−ヨードアセトン、1−クロロエチルメチルケトン、1−ブロモエチルメチルケトン、1−ヨードエチルメチルケトン、1−クロロプロピルメチルケトン、1−ブロモプロピルメチルケトン、1−ヨードプロピルメチルケトン、1−クロロプロピルエチルケトン、1−ブロモプロピルエチルケトン、1−ヨードプロピルエチルケトンなどが挙げられるが、これらの中でもα−クロロアセトン、α−ブロモアセトン、α−ヨードアセトンが好ましく、α−クロロアセトンが特に好ましい。
【0059】
縮合反応は、塩基の存在下で反応を行なう。塩基としては、NaOH、KOHなどの無機塩基;イミダゾール、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの有機塩基が用いられるが、取り扱いの容易さ及び反応収率の観点から、NaOH、KOHなどの無機塩基が好ましく、KOHが特に好ましい。
【0060】
塩基の使用量は、1,3−シクロヘキサンジオン化合物に対して、通常1〜3当量、好ましくは1〜1.5当量である。なお、塩基としてNaOH、KOHなどの無機塩基を用いる場合は、水に溶解させた状態で使用することが好ましい。
【0061】
縮合反応は、反応溶媒を用いて行なうことが好ましい。使用する反応溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、CPME、酢酸エチルなどの極性溶媒;n−ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素などの無極性溶媒が挙げられるが、極性溶媒が好ましい。
【0062】
溶媒の使用量は、通常、1,3−シクロヘキサンジオン化合物に対して1〜30重量部、好ましくは1〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0063】
縮合反応は、(1)1,3−シクロヘキサンジオン化合物、溶媒及び塩基から得られた溶液中へα−ハロケトン化合物を連続的あるいは断続的に添加していく方法、またはα−ハロケトン化合物を反応開始時に全量添加する方法、(2)溶媒及び塩基から得られた溶液中へ1,3−シクロヘキサンジオン化合物とα−ハロケトン化合物を同時に添加する方法、(3)1,3−シクロヘキサンジオン化合物及び溶媒から得られた溶液中へ塩基を連続的に全量添加した後、α−ハロケトン化合物を連続的に添加する方法、などが挙げられるが、収率向上の観点から前記(3)の方法が好ましい。
【0064】
縮合反応の温度は、通常20℃〜90℃、好ましくは40℃〜70℃である。反応温度が低過ぎると反応に長時間を要し、反応温度が高すぎると副反応が起こるため収率が低下する。また、反応圧力は、常圧もしくは加圧のいずれでもよいが、操作性及び装置コストの面から、好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは常圧下で反応を行なう。
【0065】
縮合反応の終了後は、必要により反応液から析出した塩を濾別し、得られた濾液を通常の後処理操作により処理し、蒸留法、カラムクロマトグラフィー、再結晶法等の公知の分離・精製手段により目的とする2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を得る。また、炭素数2以上の有機極性溶媒を用いて前記縮合反応を行なった場合には、縮合反応の終了後の反応溶液をそのまま水溶性アミノ化剤との反応に供給することも可能である。
【0066】
そして、得られた2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることにより2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を得ることが出来る。
【0067】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその範囲を限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において用いる部は、特に断りのない限り重量基準である。
【0068】
また、以下の実施例において、純度はHPLC分析により求めた。
分析条件は次のとうりである。
(カラム)Wakosil 5IL(和光純薬社製)
4.6mmφ×250mm
No.28038
(カラム温度)40℃
(カラム圧力)90bar
(溶離液)酢酸エチル:n―ヘキサン=3:1
(流量)1ml/分
【0069】
実施例1
ガラス製の二口フラスコに、攪拌子およびエタノール1570部を入れた。そこへ、2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン112部(純度80%)を添加して溶解させ、酢酸アンモニウム79部をさらに加えた。常圧下、60℃で2時間攪拌して反応を終了させた後、溶媒を減圧下で留去した。残留物に蒸留水500部を加えた後、酢酸エチル2000部で抽出する操作を4回繰り返した。次に、集めた有機層に芒硝を加えて乾燥させた後、該有機層を減圧下で濃縮乾固し、黄土色固体(生成物である2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール)82部(収率82%、純度98%以上)を得た。
【0070】
このものをシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより分析(展開液は酢酸エチル:トルエン=4:1)したところ、生成物は単一物であり、そのRf値は0.30であった。なお、Rf値は、試料(生成物)を最初に塗布した展開原点から試料の発色スポット中心までの距離を、展開原点から展開溶媒の展開先端までの距離で割った値である。
【0071】
また、得られた生成物の物性データは下記のとうりであった。
FAB−MS m/z:150(M+H)+
融点 205〜207℃
1H−NMR(400MHz,CDCl3,TMS)δppm:2.13(2H,m),2.24(3H,br s),2.45(2H,dd,J=6.0&7.0),2.76(2H,t,J=6.0),6.20(1H,br s),8.11(1H,br s)
【0072】
実施例2
エタノールに代えてCPME950部を用い、2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオンを101部(純度90%)、酢酸アンモニウムを69部および芒硝に代えて硫酸マグネシウムを使用した以外は、実施例1と同様にして反応および濃縮乾固を行なったところ、2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール63部(収率70.4%、純度100%)を得た。
【0073】
実施例3
ガラス製の二口フラスコに、攪拌子およびトリフルオロ酢酸1500部を入れた。そこへ、レゾルシノール101部を添加して溶解させ、5重量%白金担持アルミナ触媒(Aldrich社製)10部を加えた。フラスコ内部を窒素ガス、次いで水素ガスで置換した後、反応混合物を常圧の水素雰囲気下、室温で12時間激しく攪拌した。反応終了後、反応液をセライト濾過することにより触媒を除去し、濾液から溶媒(トリフルオロ酢酸)を減圧留去して、淡黄色固体(生成物)を91.1部(レゾルシノールから1,3−シクロヘキサンジオンへの収率88%)を得た。このものをシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより分析したところ、生成物は単一物であり、そのRf値は標品(1,3−シクロヘキサンジオン)と一致した。また、得られた生成物の1H−NMRおよびマススペクトルを確認することにより、このものは1,3−シクロヘキサンジオンであることを確認した。
【0074】
次に、ガラス製の二口フラスコに、攪拌子および前記淡黄色固体(生成物)90部を入れ、さらにメタノール250部加えて溶解させた後、室温下で攪拌しながらKOH水溶液(34重量%)130部を40分で全量滴下した。次にクロルアセトン73.7部を室温下で攪拌しながら30分で全量滴下し、さらに60℃で3時間加熱攪拌した後、室温下で一晩反応を継続した。反応開始から反応終了まで、圧力は常圧に保たれていた。反応終了後、析出したKClを濾別し、濾液にNaOH水溶液(40重量%)を加えてpHを8〜9に調節してからメタノール、水を減圧留去し、濃縮された濾液残渣292部を得た。この濾液残渣にトルエン45部を加えて十分に攪拌後、静置して二層分離させ、水層を分取する操作を合計3回繰り返した。このようにして得られた水層に、HCl水溶液(35重量%)を加えてpHを約2に調節し、遊離するオイル状物を分取したところ、158部の2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオンを得た。(純度80%、1,3−シクロヘキサンジオンから2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオンへの収率94%)
【0075】
さらに、前記オイル状物112部(純度80%)を用い、実施例1と同様にして反応を行い、黄土色固体(生成物である2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール)82部(収率82%、純度98%以上)を得た。
【0076】
なお、レゾルシノールから、2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールまでの収率は68%であり、入手容易な原料であるレゾルシノールから目的とする2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールを高収率で得ることが出来た。
【0077】
比較例1
攪拌機及びコンデンサーを備えた反応器に2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン112部(純度80%)、水900部及び酢酸アンモニウム103部を入れ、攪拌しながら加熱し、還流下(100℃)で15時間反応させた。反応終了後、5℃まで冷却し析出した結晶を濾別し、水洗、乾燥したところ2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール)58部(収率65%)を得たが、実施例1と比較して反応に長時間を要し、また収率も低かった。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤を、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることにより2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を高価な加圧設備を必要とすることなく、高収率かつ短時間での反応で得ることが出来る。さらに、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物を原料として、高価な加圧設備を必要とすることなく、高収率で2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を得ることが可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物は、例えば、下記一般式(1)
(式中、R1は炭化水素残基、R2、R3、R4及びR5は水素原子または炭化水素残基、R6は水素原子または低級アルキル基を示す。)
で表され、循環器系治療剤「ピンドロール」およびその類縁体の合成中間体として有用なことが知られている。
【0003】
かかる化合物の合成方法として、次のような方法が提案されている。
▲1▼ 4−オキソテトラヒドロクマロン−カルボン酸を加圧下に無水メタノールでアミノ化剤と反応させる方法(特許文献1)。
▲2▼ シクロヘキサノン誘導体をアミノ化剤と反応させる方法(特許文献2)。
しかし、これらの公知方法では、一般に加圧下で反応が行われており、装置上、操作上の問題があった。また、反応性が低いため、反応に半日以上の長時間を必要としたり、反応速度を高めるため反応温度を上昇すると高沸点の副生物が増加するという問題があった。
【0004】
また、特許文献3には、原料として1−アセトニルシクロヘキサン−2,6−ジオンを、反応溶媒として水を用いて2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールを低圧で製造することが記載されているが、収率が低いという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭54−19971号公報
【特許文献2】
特開昭57−4970号公報
【特許文献3】
特開平2−15058号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような従来技術の問題点に鑑み、2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を低圧下で収率良く製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討したところ、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶剤中で反応させることにより、高圧設備を必要とすることなく、高収率で2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を製造することが出来ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明の2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の製造方法は、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤を、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることを特徴する
【0009】
そして、前記反応を40℃以上の温度で行うことが好ましい。
【0010】
また、本発明の第2の製造方法は、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物を(a)水素化触媒および(b)含フッ素有機酸の存在下に水素添加して得られた1,3−シクロヘキサンジオン化合物と、α−ハロケトン化合物とを反応させることにより2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を得、次に得られた2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させて2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を得る。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の製造方法は、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることを特徴する。
【0012】
ここで、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物は、例えば、下記一般式(2)で表される。
一般式(2)
(式中、R1は炭化水素残基、R2、R3、R4及びR5は水素原子または炭化水素残基を示す。)
【0013】
一般式(2)におけるR1、R2、R3、R4及びR5で示される炭化水素残基は、炭素数15以下のものが好ましく、炭素数5以下のアルキル基が特に好ましい。R1、R2、R3、R4及びR5の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、などのアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;フェネチル基、ベンジル基などのアラルキル基;などを挙げることができる。
【0014】
2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物の具体例としては、2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン;
【0015】
4−メチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4−エチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4−メチル−2−(2−オキソブチル)シクロヘキサン−1,3−ジオンなどの4−置換−2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物;
【0016】
5−メチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、5−エチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、5−メチル−2−(2−オキソブチル)シクロヘキサン−1,3−ジオンなどの5−置換−2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物;
【0017】
4,5−ジメチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4,5−ジエチル−2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4、5−ジメチル−2−(2−オキソブチル)シクロヘキサン−1,3−ジオンなどの4,5−ジ置換−2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物;などが挙げられるが、これらの中でも2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオンが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法は、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応を行なうことを特徴とする。
【0019】
本発明で使用される炭素数2以上の有機極性溶媒としては、エタノール、プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール等の炭素数2以上のアルコール類;シクロペンチルメチルエーテル(以下CPMEと略す。)、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミルなどの炭素数2以上のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチルウレア、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルイミダゾリジノン等の炭素数2以上のアミド類などの溶媒が好適に用いられるが、これらの中でも炭素数2以上のアルコール類、エーテル類またはエステル類が好ましく、エタノール、プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、CPMEが特に好ましく、エタノールまたはCPMEがさらに好ましい。極性溶媒の使用量としては、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物に対して1〜30重量倍、好ましくは1〜20重量倍である。
【0020】
本発明では、アミノ化剤として水溶性アミノ化剤が用いられる。その具体的な例として、アンモニア;塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸アンモニウム塩;ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、酪酸アンモニウム、ラウリン酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、マロン酸アンモニウム、グルタル酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウムなどの有機酸アンモニウム塩;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどの低級アミン;等が挙げられるが、これらの中でも取り扱いの容易さの面からアンモニア以外の水溶性アミノ化剤が好ましく、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウムが特に好ましく、酢酸アンモニウムがさらに好ましい。
【0021】
水溶性アミノ化剤の使用量は2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物に対して、通常、1〜10当量、好ましくは1〜5当量であり、特に好ましくは1.5〜3.5当量である。水溶性アミノ化剤は多量使用しても特に差し支えないが、大過剰量使用しても格別の意味がなく製造コストが増大する。
【0022】
反応は前記2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と前記炭素数2以上の有機極性溶媒から得られた溶液中へ水溶性アミノ化剤を連続的あるいは断続的に添加していく方法、水溶性アミノ化剤を反応開始時に全量添加する方法、炭素数2以上の有機極性溶媒中へ2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤を同時に添加する方法、炭素数2以上の有機極性溶媒と水溶性アミノ化剤の混合溶液中に2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を連続的あるいは断続的に添加する方法等により行なわれる。
【0023】
本発明における反応は系が均一になるような温度条件下で行なわれる。反応系は高温になるほど均一化し易いので、反応温度は通常40℃以上、好ましくは50〜150℃、特に好ましくは50〜110℃である。反応温度が40℃より低いと反応速度が低下し、150℃を超えると副生物が増加する。反応圧力は、常圧もしくは加圧のいずれでもよいが、操作性及び装置コストの面から、好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは常圧下で反応を行なう。
【0024】
なお、前記式(1)で表される2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の具体例としては、2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール;
【0025】
2,5−ジメチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、5−エチル−2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、2−エチル−5−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールなどの2,5−ジ置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物;
【0026】
2,6−ジメチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、6−エチル−2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、2−エチル−6−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールなどの2,6−ジ置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物;
【0027】
2,5,6−トリメチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、5,6−ジエチル−2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール、2−エチル−5,6−ジメチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールなどの2,5,6−トリ置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物;などが挙げられるが、これらの中でも2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールが好ましい。
【0028】
本発明の第2の製造方法は、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物を(a)水素化触媒および(b)含フッ素有機酸の存在下に水素添加して得られた1,3−シクロヘキサンジオン化合物と、α−ハロケトン化合物とを反応させることにより2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を得、次に得られた2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させて2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を得る。
【0029】
1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物は、例えば、下記一般式(3)で表される化合物であり、これを水素添加して、例えば、下記一般式(4)で表される1,3−シクロヘキサンジオン化合物を得ることが出来る。
【0030】
一般式(3)
(式中、R3、R4及びR5は前記と同じ意味を表し、R7はR3、R4及びR5と同様に水素原子または炭化水素残基を示す。)
【0031】
一般式(4)
(式中、R3、R4、R5及びR7は、前記と同じ意味を表す。)
【0032】
1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物の具体例としては、レゾルシノール;1,3−ジヒドロキシ−2−メチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2−エチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2−イソプロピルベンゼンなどの2−置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−4−メチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−4−エチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−4−n−ブチルベンゼンなどの4−置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−5−メチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−5−エチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−5−イソプロピルルベンゼンなどの5−置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−4,5−ジメチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−4,5−ジエチルベンゼンなどの4,5−ジ置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−2,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2−メチル−4−イソプロピルベンゼンなどの2,4−ジ置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−2,5−ジメチルベンゼンなどの2,5−ジ置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;1,3−ジヒドロキシ−4,5,6−トリメチルベンゼンなどの4,5,6−トリ置換−1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物;などが挙げられる。
【0033】
これらの中でも入手容易性および目的物が効率良く得られる観点から、レゾルシノール又はモノ置換1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物が好ましく、レゾルシノールが特に好ましい。
【0034】
水素添加反応は、(a)水素化触媒および(b)含フッ素有機酸の存在下に水素添加を行なう。
【0035】
前記(a)水素化触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金からなる群から選ばれる金属の単体若しくは該金属の化合物の1種または2種以上を含む金属触媒を用いることが出来る。金属化合物としては、例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩などが挙げられる。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
また、前記金属触媒は、カーボン、アルミナ、シリカ等の担体に担持されているのが好ましい。担体の形状は、粉末でも、球状、ペレット状などの成形品でも良い。
【0037】
担体に対する金属または金属化合物の担持量は、通常、0.5〜20重量%であるが、担体が粉末であれば1〜20重量%が好ましく、担体が成形品であれば1〜10重量%が好ましい。水素化触媒の使用量は、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物100重量部に対して、通常0.001〜50重量部、好ましくは0.01〜20重量部である。
【0038】
前記(b)含フッ素有機酸としては、分子内にフッ素原子を少なくとも1個以上含む有機酸であれば特に限定されない。含フッ素有機酸を反応系に存在させることで、1段階で目的とする1,3−シクロヘキサンジオン化合物を収率良く得ることが出来る。
【0039】
前記含フッ素有機酸としては、含フッ素カルボン酸、含フッ素スルホン酸、含フッ素スルフィン酸、ベンゼン環に置換基としてフッ素原子を有するフェノール類などが挙げられるが、これらの中でも、より高収率で目的物を得ることができること、目的物の単離が容易であることなどの理由から、含フッ素カルボン酸または含フッ素スルホン酸の使用が好ましく、含フッ素脂肪族カルボン酸の使用がより好ましい。
【0040】
含フッ素脂肪族カルボン酸の具体例としては、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、2,2,2−トリフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ヘプタフルオロ酪酸などが挙げられるが、これらの中でもトリフルオロ酢酸が好適に用いられる。
【0041】
前記含フッ素有機酸の使用量は、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物1重量部に対して、通常0.001〜1,000重量部、好ましくは0.01〜100重量部である。
【0042】
水素添加反応は、無溶媒または水、メタノール、テトラヒドロフランなどの希釈剤中で行なうことが出来るが、液状の含フッ素有機酸を用いる場合には、他の溶媒を用いずに、すなわち、含フッ素有機酸中で水素添加反応を行なうのが好ましく、液状の含フッ素カルボン酸中で水素添加反応を行なうのがより好ましく、トリフルオロ酢酸中で水素添加反応を行なうのが特に好ましい。
【0043】
水素添加反応は、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物、含フッ素有機酸および水素化触媒の所定量を密閉式の反応器に入れ、反応器内を所定圧力の水素ガスで置換して、所定温度で攪拌することにより行なわれる。
【0044】
水素添加反応を行なう方法は特に制約されず、回分式、連続式のいづれも採用することが出来る。水素添加反応に用いる反応器は、腐食性を有する含フッ素有機酸を使用する場合には、少なくとも内壁が酸に対して耐腐食性を有する材質からなるものが好ましい。また、反応器の大きさは反応スケールに応じて適宜選択することが出来る。
【0045】
水素ガスの圧力は、通常0.01MPa〜10MPa、好ましくは0.1MPa〜1MPaである。水素添加反応温度は、通常−10℃〜+250℃、好ましくは0℃〜+100℃、より好ましくは+10℃〜+80℃である。また、水素添加反応時間は、通常0.5時間〜50時間である。
【0046】
水素添加反応の終了後は、必要により反応液から水素化触媒を濾別し、得られた濾液を通常の後処理操作により処理し、蒸留法、カラムクロマトグラフィー、再結晶法等の公知の分離・精製手段により、目的とする1,3−シクロヘキサンジオン化合物を得ることが出来る。
【0047】
以上のように、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物のベンゼン環の5,6位の炭素−炭素二重結合を選択的に水素化して、1,3−シクロヘキサンジオン化合物を得る。
【0048】
1,3−シクロヘキサンジオン化合物の具体例としては、1,3−シクロヘキサンジオン;2−メチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2−イソブチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの2−置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0049】
4−メチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4−イソプロピルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの4−置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0050】
5−メチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、5−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、5−ペンチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの5−置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0051】
4,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4,5−ジエチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、4−メチル−5−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの4,5−ジ置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0052】
2,4−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2,4−ジエチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2−メチル−4−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの2,4−ジ置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0053】
2,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2,5−ジエチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2−メチル−5−エチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの2,5−ジ置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;
【0054】
4,5,6−トリメチルシクロヘキサン−1,3−ジオンなどの4,5,6−トリ置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物;などが挙げられる。
【0055】
これらの中でも、モノ置換−1,3−シクロヘキサンジオン化合物が好ましく、シクロヘキサン−1,3−ジオンが特に好ましい。
【0056】
次に、前記1,3−シクロヘキサンジオン化合物を、例えば、下記一般式(5)で表されるα−ハロケトン化合物と塩基の存在下で縮合反応させて、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を得る。
【0057】
一般式(5)
(式中、R1およびR2は、前記と同じ意味を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【0058】
α−ハロケトン化合物としては、α−クロロアセトン、α−ブロモアセトン、α−ヨードアセトン、1−クロロエチルメチルケトン、1−ブロモエチルメチルケトン、1−ヨードエチルメチルケトン、1−クロロプロピルメチルケトン、1−ブロモプロピルメチルケトン、1−ヨードプロピルメチルケトン、1−クロロプロピルエチルケトン、1−ブロモプロピルエチルケトン、1−ヨードプロピルエチルケトンなどが挙げられるが、これらの中でもα−クロロアセトン、α−ブロモアセトン、α−ヨードアセトンが好ましく、α−クロロアセトンが特に好ましい。
【0059】
縮合反応は、塩基の存在下で反応を行なう。塩基としては、NaOH、KOHなどの無機塩基;イミダゾール、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの有機塩基が用いられるが、取り扱いの容易さ及び反応収率の観点から、NaOH、KOHなどの無機塩基が好ましく、KOHが特に好ましい。
【0060】
塩基の使用量は、1,3−シクロヘキサンジオン化合物に対して、通常1〜3当量、好ましくは1〜1.5当量である。なお、塩基としてNaOH、KOHなどの無機塩基を用いる場合は、水に溶解させた状態で使用することが好ましい。
【0061】
縮合反応は、反応溶媒を用いて行なうことが好ましい。使用する反応溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、CPME、酢酸エチルなどの極性溶媒;n−ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素などの無極性溶媒が挙げられるが、極性溶媒が好ましい。
【0062】
溶媒の使用量は、通常、1,3−シクロヘキサンジオン化合物に対して1〜30重量部、好ましくは1〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0063】
縮合反応は、(1)1,3−シクロヘキサンジオン化合物、溶媒及び塩基から得られた溶液中へα−ハロケトン化合物を連続的あるいは断続的に添加していく方法、またはα−ハロケトン化合物を反応開始時に全量添加する方法、(2)溶媒及び塩基から得られた溶液中へ1,3−シクロヘキサンジオン化合物とα−ハロケトン化合物を同時に添加する方法、(3)1,3−シクロヘキサンジオン化合物及び溶媒から得られた溶液中へ塩基を連続的に全量添加した後、α−ハロケトン化合物を連続的に添加する方法、などが挙げられるが、収率向上の観点から前記(3)の方法が好ましい。
【0064】
縮合反応の温度は、通常20℃〜90℃、好ましくは40℃〜70℃である。反応温度が低過ぎると反応に長時間を要し、反応温度が高すぎると副反応が起こるため収率が低下する。また、反応圧力は、常圧もしくは加圧のいずれでもよいが、操作性及び装置コストの面から、好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは常圧下で反応を行なう。
【0065】
縮合反応の終了後は、必要により反応液から析出した塩を濾別し、得られた濾液を通常の後処理操作により処理し、蒸留法、カラムクロマトグラフィー、再結晶法等の公知の分離・精製手段により目的とする2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を得る。また、炭素数2以上の有機極性溶媒を用いて前記縮合反応を行なった場合には、縮合反応の終了後の反応溶液をそのまま水溶性アミノ化剤との反応に供給することも可能である。
【0066】
そして、得られた2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることにより2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を得ることが出来る。
【0067】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその範囲を限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において用いる部は、特に断りのない限り重量基準である。
【0068】
また、以下の実施例において、純度はHPLC分析により求めた。
分析条件は次のとうりである。
(カラム)Wakosil 5IL(和光純薬社製)
4.6mmφ×250mm
No.28038
(カラム温度)40℃
(カラム圧力)90bar
(溶離液)酢酸エチル:n―ヘキサン=3:1
(流量)1ml/分
【0069】
実施例1
ガラス製の二口フラスコに、攪拌子およびエタノール1570部を入れた。そこへ、2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン112部(純度80%)を添加して溶解させ、酢酸アンモニウム79部をさらに加えた。常圧下、60℃で2時間攪拌して反応を終了させた後、溶媒を減圧下で留去した。残留物に蒸留水500部を加えた後、酢酸エチル2000部で抽出する操作を4回繰り返した。次に、集めた有機層に芒硝を加えて乾燥させた後、該有機層を減圧下で濃縮乾固し、黄土色固体(生成物である2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール)82部(収率82%、純度98%以上)を得た。
【0070】
このものをシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより分析(展開液は酢酸エチル:トルエン=4:1)したところ、生成物は単一物であり、そのRf値は0.30であった。なお、Rf値は、試料(生成物)を最初に塗布した展開原点から試料の発色スポット中心までの距離を、展開原点から展開溶媒の展開先端までの距離で割った値である。
【0071】
また、得られた生成物の物性データは下記のとうりであった。
FAB−MS m/z:150(M+H)+
融点 205〜207℃
1H−NMR(400MHz,CDCl3,TMS)δppm:2.13(2H,m),2.24(3H,br s),2.45(2H,dd,J=6.0&7.0),2.76(2H,t,J=6.0),6.20(1H,br s),8.11(1H,br s)
【0072】
実施例2
エタノールに代えてCPME950部を用い、2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオンを101部(純度90%)、酢酸アンモニウムを69部および芒硝に代えて硫酸マグネシウムを使用した以外は、実施例1と同様にして反応および濃縮乾固を行なったところ、2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール63部(収率70.4%、純度100%)を得た。
【0073】
実施例3
ガラス製の二口フラスコに、攪拌子およびトリフルオロ酢酸1500部を入れた。そこへ、レゾルシノール101部を添加して溶解させ、5重量%白金担持アルミナ触媒(Aldrich社製)10部を加えた。フラスコ内部を窒素ガス、次いで水素ガスで置換した後、反応混合物を常圧の水素雰囲気下、室温で12時間激しく攪拌した。反応終了後、反応液をセライト濾過することにより触媒を除去し、濾液から溶媒(トリフルオロ酢酸)を減圧留去して、淡黄色固体(生成物)を91.1部(レゾルシノールから1,3−シクロヘキサンジオンへの収率88%)を得た。このものをシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより分析したところ、生成物は単一物であり、そのRf値は標品(1,3−シクロヘキサンジオン)と一致した。また、得られた生成物の1H−NMRおよびマススペクトルを確認することにより、このものは1,3−シクロヘキサンジオンであることを確認した。
【0074】
次に、ガラス製の二口フラスコに、攪拌子および前記淡黄色固体(生成物)90部を入れ、さらにメタノール250部加えて溶解させた後、室温下で攪拌しながらKOH水溶液(34重量%)130部を40分で全量滴下した。次にクロルアセトン73.7部を室温下で攪拌しながら30分で全量滴下し、さらに60℃で3時間加熱攪拌した後、室温下で一晩反応を継続した。反応開始から反応終了まで、圧力は常圧に保たれていた。反応終了後、析出したKClを濾別し、濾液にNaOH水溶液(40重量%)を加えてpHを8〜9に調節してからメタノール、水を減圧留去し、濃縮された濾液残渣292部を得た。この濾液残渣にトルエン45部を加えて十分に攪拌後、静置して二層分離させ、水層を分取する操作を合計3回繰り返した。このようにして得られた水層に、HCl水溶液(35重量%)を加えてpHを約2に調節し、遊離するオイル状物を分取したところ、158部の2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオンを得た。(純度80%、1,3−シクロヘキサンジオンから2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオンへの収率94%)
【0075】
さらに、前記オイル状物112部(純度80%)を用い、実施例1と同様にして反応を行い、黄土色固体(生成物である2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール)82部(収率82%、純度98%以上)を得た。
【0076】
なお、レゾルシノールから、2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールまでの収率は68%であり、入手容易な原料であるレゾルシノールから目的とする2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドールを高収率で得ることが出来た。
【0077】
比較例1
攪拌機及びコンデンサーを備えた反応器に2−アセトニルシクロヘキサン−1,3−ジオン112部(純度80%)、水900部及び酢酸アンモニウム103部を入れ、攪拌しながら加熱し、還流下(100℃)で15時間反応させた。反応終了後、5℃まで冷却し析出した結晶を濾別し、水洗、乾燥したところ2−メチル−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール)58部(収率65%)を得たが、実施例1と比較して反応に長時間を要し、また収率も低かった。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤を、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることにより2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を高価な加圧設備を必要とすることなく、高収率かつ短時間での反応で得ることが出来る。さらに、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物を原料として、高価な加圧設備を必要とすることなく、高収率で2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物を得ることが可能である。
Claims (3)
- 2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させることを特徴する2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の製造方法。
- 前記反応を40℃以上の温度で行う請求項1記載の製造方法。
- 1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物を(a)水素化触媒および(b)含フッ素有機酸の存在下に水素添加して得られた1,3−シクロヘキサンジオン化合物と、α−ハロケトン化合物とを反応させることにより2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物を得、次に得られた2−アシルメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン化合物と水溶性アミノ化剤とを、炭素数2以上の有機極性溶媒中で反応させる2−置換−4−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロインドール化合物の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2006133634A1 (fr) * | 2005-06-14 | 2006-12-21 | Beijing Gylongly Biodemtech Co., Ltd | Dérivés tétrahydroindole et dérivés tétrahydroindazole et leur utilisation |
-
2002
- 2002-10-21 JP JP2002305313A patent/JP2004137228A/ja active Pending
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