JP2004137190A - リパーゼ阻害剤 - Google Patents
リパーゼ阻害剤 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004137190A JP2004137190A JP2002302828A JP2002302828A JP2004137190A JP 2004137190 A JP2004137190 A JP 2004137190A JP 2002302828 A JP2002302828 A JP 2002302828A JP 2002302828 A JP2002302828 A JP 2002302828A JP 2004137190 A JP2004137190 A JP 2004137190A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- lipase
- lipase inhibitor
- curcumin
- added
- cosmetics
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)
- Cosmetics (AREA)
- Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)
Abstract
【課題】安全性が高く、味質に優れたリパーゼ阻害剤として、飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤に添加することができる天然物由来のリパーゼ阻害剤を提供すること。
【解決手段】クルクミンを含有してなるリパーゼ阻害剤並びに当該リパーゼ阻害剤を含有する飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤。
【選択図】 なし
【解決手段】クルクミンを含有してなるリパーゼ阻害剤並びに当該リパーゼ阻害剤を含有する飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲食品、化粧品または皮膚疾患治療剤に使用することができるクルクミンを有効成分として含有してなるリパーゼ阻害剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒトの生体内において、リパーゼはすい臓より分泌される消化酵素であり、経口摂取された脂質はリパーゼの作用により、グリセリンと遊離脂肪酸に加水分解されて体内へ吸収移行する。脂質はエネルギーが特に高く、近年の日本人における脂肪摂取量は増加する傾向にあり、肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす一因となっている。また、微生物が産生するリパーゼは、食品・化粧品等に混入した場合、含有されている脂質をグリセリンと遊離脂肪酸に分解し、変敗臭などの劣化の原因となり商品としての価値を減少させてしまう。ヒトの皮膚に常在する微生物が産生するリパーゼでは、皮膚上の脂質をグリセリンと遊離脂肪酸に分解し、この遊離脂肪酸の中には皮膚に対して悪影響を及ぼす物質もあり、ニキビなどの皮膚疾患の原因となることや遊離脂肪酸がさらに分解されて体臭の原因となることが知られている。このようなリパーゼに起因する問題を解決するため、リパーゼを阻害するリパーゼ阻害剤の開発が行われてきている。
【0003】
これまで、リパーゼ阻害剤として、各種生薬の抽出物が特開昭64−90131号公報、特許第2602387号公報、香辛料の抽出物が特開2001−120237号公報で開示されている。しかしながら、公報記載の生薬類や香辛料は入手しにくく価格の高いものが多い。また、これらの抽出物によるリパーゼ阻害剤は、苦味・渋味・辛味等の味質があり、飲食品等に添加する際に添加量が制限される場合があり、十分な効果を得ることが難しい。
ピーマン、かぼちゃ、しめじ、まいたけ、ひじき、緑茶、紅茶、ウーロン茶の水抽出物がリパーゼ阻害剤として特開平3−219872号公報で開示されている。また、緑茶中に含まれるエピカテキンガレート及び/またはエピガロカテキンガレートを配合する脂質消化吸収抑制食品が特開平3−228664号公報、各種のフラボノイド類を含有するリパーゼ阻害剤が特許2598873号公報、特開平9−143070号公報で開示されている。しかしながら、これらの茶等の水抽出物やフラボノイド類によるリパーゼ阻害剤は、その効果が十分でなく、独特の苦味・渋味があり、飲食品等に添加する際に添加量が制限される場合があり、十分な効果を得ることが難しい。
以上のように、現在までに多くのリパーゼ阻害剤が開発されてきたが、飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤に添加する場合に重要となる安全性、味質、効果の面で充分満足できるものは未だ開発されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、安全性が高く、味質、効果に優れたリパーゼ阻害剤として、飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤に添加することができる天然物由来のリパーゼ阻害剤を提供すること、並びに飲食品として摂取し、脂質の体内吸収を抑制することにより、肥満や高脂血症の予防をすることができる物質を開発することである。さらに、リパーゼに起因する飲食品、化粧品中の脂質劣化の防止、リパーゼに起因する体臭、皮膚疾患を予防することができる物質を開発することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決して目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、天然物であるショウガ科ウコン(Curcuma longa L.)の根茎に由来するクルクミンにリパーゼ阻害作用があることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
即ち本発明は、クルクミンを有効成分として含有するリパーゼ阻害剤に関する。
【0007】
更に本発明は、上記のリパーゼ阻害剤を含有する飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において使用するクルクミンは、各種植物由来のものを使用することができる。例えば、ウコン(Curcuma longa L.)の他、キョウオウ(Curcuma aromatica)等の植物の根茎より、エタノール、油脂、プロピレングリコール、ヘキサン、アセトン等の溶媒で抽出することができる。本発明において、高度に精製された純度の高いクルクミンを使用することができるが、これに限定されず、通常飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤として使用するに当たり不適当とならないクルクミン以外の不純物を含有する上記植物の抽出物や半精製品、黄色色素として販売されているウコン色素を使用することができる。
【0009】
本発明に用いるクルクミンは、食品素材や生薬として飲食されているウコン(Curcuma longa L.)に由来し、また既存添加物であるウコン色素の主成分として使用されていて、安全性が非常に高いリパーゼ阻害剤であり、飲食品に添加することができ、所望のリパーゼ阻害作用を発揮することができる。
【0010】
このため、当該化合物を飲食品として日常的に摂取することにより、脂質摂取後の脂質の体内吸収を抑制して、肥満や高脂血症の予防をすることができると期待される。
【0011】
また、脂質を含む飲食品や化粧品中に微生物が混入した場合、微生物が産生するリパーゼによる脂質の分解を抑制し、変敗臭等の脂質の劣化を抑制することができると期待される。
【0012】
さらに、皮膚上において、皮膚常在菌が産生するリパーゼによる皮脂の分解を抑制し、遊離されてきた脂肪酸に起因する体臭や皮膚疾患を抑制することができると期待される。
【0013】
本発明のリパーゼ阻害剤は、例えば、油脂類、マーガリン、バター、ラード、調味料、クリーム類、乳製品、肉類、魚介類、卵類、ケーキ、チョコレート、アイスクリーム、コーヒー、ココア、紅茶、ミルクティー、フレーバーティー、清涼飲料水、炭酸飲料水、乳酸菌飲料、緑茶、烏龍茶、栄養ドリンク、ジャム、ヨーグルト、まんじゅう、ゼリー、キャンディー、タブレット、錠菓、健康食品、加工食品等の様々な飲食品に添加することができる。このときの添加量については、当該化合物によって期待される効果が有効に発揮される量であれば良く、特に制限はないが、全体量の0.00001〜10%、好ましくは0.00001〜1%、さらに好ましくは0.0001〜0.1%程度が適当である。
また、本発明のリパーゼ阻害剤を錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤等の形態にし、摂取することもできる。
【0014】
また、本発明のリパーゼ阻害剤は、例えば、保湿化粧品、肌荒れ防止化粧品、メークアップ化粧品、フケ防止化粧品、育毛用化粧品、かゆみ防止化粧品、洗浄用化粧品、日焼け防止化粧品、体臭防止化粧品、フレグランス化粧品、オーラルケア製品等の化粧品に添加することができる。このときの添加量については、当該化合物によって期待される効果が有効に発揮される量であれば良く、特に制限はないが、例えば、全体量の0.00001〜1%、好ましくは0.00001〜0.1%、さらに好ましくは0.0001〜0.01%程度が適当である。なお、化粧品に本発明のリパーゼ阻害剤を添加する場合、他の有効成分や薬学的に許容される賦形剤、色素や香料等を適宜組み合わせて用いることもできる。また、製品の形態についても任意であり、例えば液状、粉末状、クリーム状等のいずれも可能である。
【0015】
また、本発明のリパーゼ阻害剤は、ニキビ治療剤、皮膚炎治療剤等の皮膚疾患治療剤に添加することができる。このときの添加量については、当該化合物によって期待される効果が有効に発揮される量であれば良く、特に制限はないが、例えば、全体量の0.00001〜1%、好ましくは0.00001〜0.1%、さらに好ましくは0.0001〜0.01%程度が適当である。なお、皮膚疾患治療剤に本発明のリパーゼ阻害剤を添加する場合、他の有効成分や薬学的に許容される賦形剤、色素や香料等を適宜組み合わせて用いることもできる。また、製品の形態についても任意であり、例えば液状、粉末状、クリーム状等のいずれも可能である。
【0016】
【実施例】
以下に、実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
実施例1:ブタ膵臓リパーゼ阻害活性の測定
市販のクルクミン(カンコール社:含有量95%以上)について、市販ブタ膵臓リパーゼ(シグマ社製)を用いて、リパーゼに対する阻害活性を下記の方法で測定した。特許2598873号公報記載のリパーゼ阻害剤であるケルセチンと比較とした。
【0018】
(リパーゼ阻害活性の測定方法)
基質として4−メチルウンベリフェリルオレート(4−MeUmbO)を使用し、リパーゼにより遊離してくる4−メチルウンベリフェロン(4−MeUmb)の蛍光を測定し、クルクミン及びリパーゼ阻害剤として知られているケルセチンのリパーゼ阻害活性を評価した。
0.1mM 4−MeUmbO懸濁溶液を100μl、McIlvaine緩衝液(pH7.4)を40μl、試料を溶解したジメチルスルフォキシド(DMSO)溶液を10μl、79μg/mlブタ膵臓リパーゼ溶液を50μl添加し、37℃で20分間反応させた。0.1M塩酸1mlを加え、酵素反応を停止した後、0.1Mクエン酸ナトリウム2ml添加し、pHを約4.3にした。遊離してきた4−MeUmbの蛍光(励起波長を320nm、蛍光波長450nm)を蛍光光度計で測定した。対照には試料DMSO溶液の代わりにDMSOを添加した。また、4−MeUmbO溶液に含まれる4−MeUmbの影響を除くため、ブランクには、リパーゼ溶液の代わりに水を添加した。クルクミン及びケルセチンは蛍光を弱める作用があるため、5μM及び50μMに調製した4−MeUmb(和光純薬工業製)溶液を基質の代わりとし、反応液と同様に試料を添加して蛍光を測定し、検量線をそれぞれ作成し、補正を行った。得られた検量線より、遊離してくる4−MeUmb量を定量し、下式によりリパーゼ阻害率(%)を算出した。
阻害率(%)={(A−C)−(B−C)}/(A−C)×100
但し、A:対照溶液の遊離4−MeUmb量、B:試料溶液の遊離4−MeUmb量、C:ブランクの遊離4−MeUmb量、
阻害活性は、試料無添加の対照のリパーゼ活性を50%阻害する各試料の終濃度(IC50)ppmで示した。ブタ膵臓リパーゼ阻害活性の結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1から明らかなように、クルクミンは、ケルセチンよりもブタ膵臓リパーゼ阻害活性が優れており、脂質の体内吸収抑制効果が期待できる。
【0021】
実施例2:微生物由来リパーゼ阻害活性の測定
実施例1においてブタ膵臓リパーゼ溶液を0.28μg/ml微生物(Candida rugosa)由来リパーゼに変更した以外は同様に行って測定した。Candida rugosa由来リパーゼ阻害活性の結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
表2から明らかなように、クルクミンは、ケルセチンよりも微生物由来リパーゼ阻害活性が優れており、微生物等による脂質劣化抑制・皮脂分解抑制効果が期待できる。
【0024】
処方例1:オリーブ油の製造
オリーブ油1kgにクルクミン0.1gを溶解させたオリーブ油を製造した。
【0025】
処方例2:バタークリームの製造
砂糖120g、乳糖100g、脱脂粉乳200g、クルクミン0.05g、水80gを混合し、これを約60℃にて加熱し、混合物を作成した。次いで、該混合液にマーガリン500gとバニラエッセンス1gを混合し、バニラ風味のバタークリームを製造した。
【0026】
処方例3:ミルクティーの製造
生クリーム(脂肪分47%)21g、砂糖40g、乳化剤1g、紅茶抽出物350g、水588g、クルクミン0.01gを混合して均質化し、重曹を用いてpHを6.8に調製した後加熱殺菌を行い、ミルクティーを製造した。
【0027】
処方例4:タブレットの製造
クルクミン5g、乳糖73g、結晶セルロース14g、カルボキシメチルセルロース4g、ステアリン酸マグネシウム4gを均一に混合し、水を加えて混練りした後、押し出し造粒基造粒機にて造粒し、乾燥、整粒して、顆粒を調製した。次いで、単発式打錠機にてタブレットを製造した。
【0028】
処方例5:いわしすり身の製造
いわしの身250gをすり身にし、ショウガ10gのしぼり汁、赤みそ15g、小麦粉5g、クルクミン0.01gを均一に混合して、いわしすり身を調製した。
【0029】
処方例6:ギョウザ用の具の製造
ブタ挽肉250gと白菜300g、ゆでタケノコ100g、ネギ30g、ショウガ10gをそれぞれみじん切りにしたもの、醤油15g、ごま油5g、クルクミン0.01gを均一に混合し、ギョウザ用の具を調製した。
【0030】
処方例7:スキンクリームの製造
本発明に係るクルクミンを有効成分とするスキンクリームを表3に示した処方により作成した。すなわち、A、Bの各成分を秤量し、それぞれを均一となるように加熱溶解した。なお、溶解物の温度は80℃とした。
次いで、A成分にB成分を撹拌しながら徐々に添加して乳化した後、撹拌しながら冷却し、温度が50℃以下になった時点でC成分を添加した。C成分を添加したのち、さらに温度を30℃まで冷却して製品とした。
【0031】
【表3】
【0032】
【発明の効果】
本発明においてリパーゼ阻害剤の有効成分として用いるクルクミンは、天然物に由来するものであるため、人体に対する安全性が高く、かつリパーゼ阻害効果に優れているため、飲食品として日常的に摂取することにより、脂質の体内吸収を抑制して、肥満や高脂血症の予防をすることができると期待される。また、微生物リパーゼに起因する飲食品、化粧品中の脂質の劣化を抑制することが期待される。さらに、皮膚常在菌産生リパーゼに起因する体臭、皮膚疾患を抑制することが期待される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲食品、化粧品または皮膚疾患治療剤に使用することができるクルクミンを有効成分として含有してなるリパーゼ阻害剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒトの生体内において、リパーゼはすい臓より分泌される消化酵素であり、経口摂取された脂質はリパーゼの作用により、グリセリンと遊離脂肪酸に加水分解されて体内へ吸収移行する。脂質はエネルギーが特に高く、近年の日本人における脂肪摂取量は増加する傾向にあり、肥満、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす一因となっている。また、微生物が産生するリパーゼは、食品・化粧品等に混入した場合、含有されている脂質をグリセリンと遊離脂肪酸に分解し、変敗臭などの劣化の原因となり商品としての価値を減少させてしまう。ヒトの皮膚に常在する微生物が産生するリパーゼでは、皮膚上の脂質をグリセリンと遊離脂肪酸に分解し、この遊離脂肪酸の中には皮膚に対して悪影響を及ぼす物質もあり、ニキビなどの皮膚疾患の原因となることや遊離脂肪酸がさらに分解されて体臭の原因となることが知られている。このようなリパーゼに起因する問題を解決するため、リパーゼを阻害するリパーゼ阻害剤の開発が行われてきている。
【0003】
これまで、リパーゼ阻害剤として、各種生薬の抽出物が特開昭64−90131号公報、特許第2602387号公報、香辛料の抽出物が特開2001−120237号公報で開示されている。しかしながら、公報記載の生薬類や香辛料は入手しにくく価格の高いものが多い。また、これらの抽出物によるリパーゼ阻害剤は、苦味・渋味・辛味等の味質があり、飲食品等に添加する際に添加量が制限される場合があり、十分な効果を得ることが難しい。
ピーマン、かぼちゃ、しめじ、まいたけ、ひじき、緑茶、紅茶、ウーロン茶の水抽出物がリパーゼ阻害剤として特開平3−219872号公報で開示されている。また、緑茶中に含まれるエピカテキンガレート及び/またはエピガロカテキンガレートを配合する脂質消化吸収抑制食品が特開平3−228664号公報、各種のフラボノイド類を含有するリパーゼ阻害剤が特許2598873号公報、特開平9−143070号公報で開示されている。しかしながら、これらの茶等の水抽出物やフラボノイド類によるリパーゼ阻害剤は、その効果が十分でなく、独特の苦味・渋味があり、飲食品等に添加する際に添加量が制限される場合があり、十分な効果を得ることが難しい。
以上のように、現在までに多くのリパーゼ阻害剤が開発されてきたが、飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤に添加する場合に重要となる安全性、味質、効果の面で充分満足できるものは未だ開発されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、安全性が高く、味質、効果に優れたリパーゼ阻害剤として、飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤に添加することができる天然物由来のリパーゼ阻害剤を提供すること、並びに飲食品として摂取し、脂質の体内吸収を抑制することにより、肥満や高脂血症の予防をすることができる物質を開発することである。さらに、リパーゼに起因する飲食品、化粧品中の脂質劣化の防止、リパーゼに起因する体臭、皮膚疾患を予防することができる物質を開発することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決して目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、天然物であるショウガ科ウコン(Curcuma longa L.)の根茎に由来するクルクミンにリパーゼ阻害作用があることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
即ち本発明は、クルクミンを有効成分として含有するリパーゼ阻害剤に関する。
【0007】
更に本発明は、上記のリパーゼ阻害剤を含有する飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において使用するクルクミンは、各種植物由来のものを使用することができる。例えば、ウコン(Curcuma longa L.)の他、キョウオウ(Curcuma aromatica)等の植物の根茎より、エタノール、油脂、プロピレングリコール、ヘキサン、アセトン等の溶媒で抽出することができる。本発明において、高度に精製された純度の高いクルクミンを使用することができるが、これに限定されず、通常飲食品、化粧品、皮膚疾患治療剤として使用するに当たり不適当とならないクルクミン以外の不純物を含有する上記植物の抽出物や半精製品、黄色色素として販売されているウコン色素を使用することができる。
【0009】
本発明に用いるクルクミンは、食品素材や生薬として飲食されているウコン(Curcuma longa L.)に由来し、また既存添加物であるウコン色素の主成分として使用されていて、安全性が非常に高いリパーゼ阻害剤であり、飲食品に添加することができ、所望のリパーゼ阻害作用を発揮することができる。
【0010】
このため、当該化合物を飲食品として日常的に摂取することにより、脂質摂取後の脂質の体内吸収を抑制して、肥満や高脂血症の予防をすることができると期待される。
【0011】
また、脂質を含む飲食品や化粧品中に微生物が混入した場合、微生物が産生するリパーゼによる脂質の分解を抑制し、変敗臭等の脂質の劣化を抑制することができると期待される。
【0012】
さらに、皮膚上において、皮膚常在菌が産生するリパーゼによる皮脂の分解を抑制し、遊離されてきた脂肪酸に起因する体臭や皮膚疾患を抑制することができると期待される。
【0013】
本発明のリパーゼ阻害剤は、例えば、油脂類、マーガリン、バター、ラード、調味料、クリーム類、乳製品、肉類、魚介類、卵類、ケーキ、チョコレート、アイスクリーム、コーヒー、ココア、紅茶、ミルクティー、フレーバーティー、清涼飲料水、炭酸飲料水、乳酸菌飲料、緑茶、烏龍茶、栄養ドリンク、ジャム、ヨーグルト、まんじゅう、ゼリー、キャンディー、タブレット、錠菓、健康食品、加工食品等の様々な飲食品に添加することができる。このときの添加量については、当該化合物によって期待される効果が有効に発揮される量であれば良く、特に制限はないが、全体量の0.00001〜10%、好ましくは0.00001〜1%、さらに好ましくは0.0001〜0.1%程度が適当である。
また、本発明のリパーゼ阻害剤を錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤等の形態にし、摂取することもできる。
【0014】
また、本発明のリパーゼ阻害剤は、例えば、保湿化粧品、肌荒れ防止化粧品、メークアップ化粧品、フケ防止化粧品、育毛用化粧品、かゆみ防止化粧品、洗浄用化粧品、日焼け防止化粧品、体臭防止化粧品、フレグランス化粧品、オーラルケア製品等の化粧品に添加することができる。このときの添加量については、当該化合物によって期待される効果が有効に発揮される量であれば良く、特に制限はないが、例えば、全体量の0.00001〜1%、好ましくは0.00001〜0.1%、さらに好ましくは0.0001〜0.01%程度が適当である。なお、化粧品に本発明のリパーゼ阻害剤を添加する場合、他の有効成分や薬学的に許容される賦形剤、色素や香料等を適宜組み合わせて用いることもできる。また、製品の形態についても任意であり、例えば液状、粉末状、クリーム状等のいずれも可能である。
【0015】
また、本発明のリパーゼ阻害剤は、ニキビ治療剤、皮膚炎治療剤等の皮膚疾患治療剤に添加することができる。このときの添加量については、当該化合物によって期待される効果が有効に発揮される量であれば良く、特に制限はないが、例えば、全体量の0.00001〜1%、好ましくは0.00001〜0.1%、さらに好ましくは0.0001〜0.01%程度が適当である。なお、皮膚疾患治療剤に本発明のリパーゼ阻害剤を添加する場合、他の有効成分や薬学的に許容される賦形剤、色素や香料等を適宜組み合わせて用いることもできる。また、製品の形態についても任意であり、例えば液状、粉末状、クリーム状等のいずれも可能である。
【0016】
【実施例】
以下に、実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
実施例1:ブタ膵臓リパーゼ阻害活性の測定
市販のクルクミン(カンコール社:含有量95%以上)について、市販ブタ膵臓リパーゼ(シグマ社製)を用いて、リパーゼに対する阻害活性を下記の方法で測定した。特許2598873号公報記載のリパーゼ阻害剤であるケルセチンと比較とした。
【0018】
(リパーゼ阻害活性の測定方法)
基質として4−メチルウンベリフェリルオレート(4−MeUmbO)を使用し、リパーゼにより遊離してくる4−メチルウンベリフェロン(4−MeUmb)の蛍光を測定し、クルクミン及びリパーゼ阻害剤として知られているケルセチンのリパーゼ阻害活性を評価した。
0.1mM 4−MeUmbO懸濁溶液を100μl、McIlvaine緩衝液(pH7.4)を40μl、試料を溶解したジメチルスルフォキシド(DMSO)溶液を10μl、79μg/mlブタ膵臓リパーゼ溶液を50μl添加し、37℃で20分間反応させた。0.1M塩酸1mlを加え、酵素反応を停止した後、0.1Mクエン酸ナトリウム2ml添加し、pHを約4.3にした。遊離してきた4−MeUmbの蛍光(励起波長を320nm、蛍光波長450nm)を蛍光光度計で測定した。対照には試料DMSO溶液の代わりにDMSOを添加した。また、4−MeUmbO溶液に含まれる4−MeUmbの影響を除くため、ブランクには、リパーゼ溶液の代わりに水を添加した。クルクミン及びケルセチンは蛍光を弱める作用があるため、5μM及び50μMに調製した4−MeUmb(和光純薬工業製)溶液を基質の代わりとし、反応液と同様に試料を添加して蛍光を測定し、検量線をそれぞれ作成し、補正を行った。得られた検量線より、遊離してくる4−MeUmb量を定量し、下式によりリパーゼ阻害率(%)を算出した。
阻害率(%)={(A−C)−(B−C)}/(A−C)×100
但し、A:対照溶液の遊離4−MeUmb量、B:試料溶液の遊離4−MeUmb量、C:ブランクの遊離4−MeUmb量、
阻害活性は、試料無添加の対照のリパーゼ活性を50%阻害する各試料の終濃度(IC50)ppmで示した。ブタ膵臓リパーゼ阻害活性の結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1から明らかなように、クルクミンは、ケルセチンよりもブタ膵臓リパーゼ阻害活性が優れており、脂質の体内吸収抑制効果が期待できる。
【0021】
実施例2:微生物由来リパーゼ阻害活性の測定
実施例1においてブタ膵臓リパーゼ溶液を0.28μg/ml微生物(Candida rugosa)由来リパーゼに変更した以外は同様に行って測定した。Candida rugosa由来リパーゼ阻害活性の結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
表2から明らかなように、クルクミンは、ケルセチンよりも微生物由来リパーゼ阻害活性が優れており、微生物等による脂質劣化抑制・皮脂分解抑制効果が期待できる。
【0024】
処方例1:オリーブ油の製造
オリーブ油1kgにクルクミン0.1gを溶解させたオリーブ油を製造した。
【0025】
処方例2:バタークリームの製造
砂糖120g、乳糖100g、脱脂粉乳200g、クルクミン0.05g、水80gを混合し、これを約60℃にて加熱し、混合物を作成した。次いで、該混合液にマーガリン500gとバニラエッセンス1gを混合し、バニラ風味のバタークリームを製造した。
【0026】
処方例3:ミルクティーの製造
生クリーム(脂肪分47%)21g、砂糖40g、乳化剤1g、紅茶抽出物350g、水588g、クルクミン0.01gを混合して均質化し、重曹を用いてpHを6.8に調製した後加熱殺菌を行い、ミルクティーを製造した。
【0027】
処方例4:タブレットの製造
クルクミン5g、乳糖73g、結晶セルロース14g、カルボキシメチルセルロース4g、ステアリン酸マグネシウム4gを均一に混合し、水を加えて混練りした後、押し出し造粒基造粒機にて造粒し、乾燥、整粒して、顆粒を調製した。次いで、単発式打錠機にてタブレットを製造した。
【0028】
処方例5:いわしすり身の製造
いわしの身250gをすり身にし、ショウガ10gのしぼり汁、赤みそ15g、小麦粉5g、クルクミン0.01gを均一に混合して、いわしすり身を調製した。
【0029】
処方例6:ギョウザ用の具の製造
ブタ挽肉250gと白菜300g、ゆでタケノコ100g、ネギ30g、ショウガ10gをそれぞれみじん切りにしたもの、醤油15g、ごま油5g、クルクミン0.01gを均一に混合し、ギョウザ用の具を調製した。
【0030】
処方例7:スキンクリームの製造
本発明に係るクルクミンを有効成分とするスキンクリームを表3に示した処方により作成した。すなわち、A、Bの各成分を秤量し、それぞれを均一となるように加熱溶解した。なお、溶解物の温度は80℃とした。
次いで、A成分にB成分を撹拌しながら徐々に添加して乳化した後、撹拌しながら冷却し、温度が50℃以下になった時点でC成分を添加した。C成分を添加したのち、さらに温度を30℃まで冷却して製品とした。
【0031】
【表3】
【0032】
【発明の効果】
本発明においてリパーゼ阻害剤の有効成分として用いるクルクミンは、天然物に由来するものであるため、人体に対する安全性が高く、かつリパーゼ阻害効果に優れているため、飲食品として日常的に摂取することにより、脂質の体内吸収を抑制して、肥満や高脂血症の予防をすることができると期待される。また、微生物リパーゼに起因する飲食品、化粧品中の脂質の劣化を抑制することが期待される。さらに、皮膚常在菌産生リパーゼに起因する体臭、皮膚疾患を抑制することが期待される。
Claims (4)
- クルクミンを含有してなるリパーゼ阻害剤。
- 請求項1に記載のリパーゼ阻害剤を含有する飲食品。
- 請求項1に記載のリパーゼ阻害剤を含有する化粧品。
- 請求項1に記載のリパーゼ阻害剤を含有する皮膚疾患治療剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002302828A JP2004137190A (ja) | 2002-10-17 | 2002-10-17 | リパーゼ阻害剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002302828A JP2004137190A (ja) | 2002-10-17 | 2002-10-17 | リパーゼ阻害剤 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004137190A true JP2004137190A (ja) | 2004-05-13 |
Family
ID=32450786
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002302828A Pending JP2004137190A (ja) | 2002-10-17 | 2002-10-17 | リパーゼ阻害剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004137190A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010502700A (ja) * | 2006-09-06 | 2010-01-28 | ヘング,マダリン,シー.ワイ. | アクネを治療する医薬品、加齢および日焼けの症状を回復する医薬品、及び、これを用いた方法 |
WO2015170681A1 (ja) * | 2014-05-09 | 2015-11-12 | サントリーホールディングス株式会社 | 黒ショウガ油脂抽出物及びその製造方法 |
-
2002
- 2002-10-17 JP JP2002302828A patent/JP2004137190A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010502700A (ja) * | 2006-09-06 | 2010-01-28 | ヘング,マダリン,シー.ワイ. | アクネを治療する医薬品、加齢および日焼けの症状を回復する医薬品、及び、これを用いた方法 |
WO2015170681A1 (ja) * | 2014-05-09 | 2015-11-12 | サントリーホールディングス株式会社 | 黒ショウガ油脂抽出物及びその製造方法 |
CN106455665A (zh) * | 2014-05-09 | 2017-02-22 | 三得利控股株式会社 | 黑姜油脂提取物及其制造方法 |
JPWO2015170681A1 (ja) * | 2014-05-09 | 2017-04-20 | サントリーホールディングス株式会社 | 黒ショウガ油脂抽出物及びその製造方法 |
AU2015256995B2 (en) * | 2014-05-09 | 2019-02-07 | Suntory Holdings Limited | Fat or oil extract of black ginger and method for producing same |
CN106455665B (zh) * | 2014-05-09 | 2020-06-30 | 三得利控股株式会社 | 黑姜油脂提取物及其制造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6377764B2 (ja) | スルフォラファン含有量が増大されたブロッコリを生成する方法及びこの方法で生成したブロッコリの利用方法 | |
KR101948398B1 (ko) | 다가 불포화 지방산 함유 유지 조성물 | |
EP2799083A1 (en) | Muscular atrophy preventing agent | |
JP2013241354A (ja) | ホスホジエステラーゼ2阻害剤 | |
JPH10155459A (ja) | アスタキサンチン含有飲食物 | |
JP5261808B2 (ja) | 脂肪蓄積抑制剤、医薬品及び脂肪蓄積抑制作用を新たに付与する方法 | |
JP7522153B2 (ja) | 飲食品組成物 | |
JPWO2005074907A1 (ja) | 遺伝子発現調節剤 | |
JP2003040788A (ja) | 冷え性改善剤、冷え性改善用組成物、及びこれらを含む冷え性改善用飲食物 | |
KR20040095263A (ko) | 체온상승제 | |
JP2011132151A (ja) | 脂質代謝改善用組成物 | |
KR20060119706A (ko) | 생활 습관병 예방ㆍ개선용의 유지 가공 조성물 | |
JP2008143811A (ja) | 脂質代謝促進組成物 | |
JP7423731B2 (ja) | 疲労感、意欲低下または眠気の改善剤 | |
JP2010265215A (ja) | メチオニナーゼ阻害剤 | |
WO2012157290A1 (ja) | 非アルコール性脂肪性肝炎の予防改善剤 | |
JP4830130B2 (ja) | キトサン配合組成物及び食品 | |
JP2005047851A (ja) | ユビデカレノン含有組成物 | |
JP2004137190A (ja) | リパーゼ阻害剤 | |
JP2003321351A (ja) | リパーゼ阻害剤 | |
JP2006104094A (ja) | α−グルコシダーゼ阻害剤 | |
JP2006219389A (ja) | 低比重リポタンパク酸化抑制剤 | |
JP2008094797A (ja) | 肥満抑制剤及び該肥満抑制剤を含む高脂肪含有飲食品 | |
JP6978103B2 (ja) | 網膜保護組成物 | |
TW201701889A (zh) | 泌尿器官症狀改善劑 |