JP2004136731A - 車両の制動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】緩減速時の運転性と急減速時の車両停止距離との両立を図ることを目的とする。
【解決手段】バッテリ8から供給される電力により稼動するモータ2を駆動源として備える車両において、前記モータの制御応答速度を車両の運転状態に応じて高速側制御応答速度と低速側制御応答速度とに制御する手段9と、車両の予測される制動状態を推定する手段9と、この制動状態推定手段が、急制動を予測したときにモータの制御応答速度として高速側制御応答速度を選択する手段9とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】バッテリ8から供給される電力により稼動するモータ2を駆動源として備える車両において、前記モータの制御応答速度を車両の運転状態に応じて高速側制御応答速度と低速側制御応答速度とに制御する手段9と、車両の予測される制動状態を推定する手段9と、この制動状態推定手段が、急制動を予測したときにモータの制御応答速度として高速側制御応答速度を選択する手段9とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータを駆動源として備える車両の制動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
障害物との距離や相対速度等から衝突の危険度を判断し、必要に応じて油圧式ブレーキに予圧をかけることによってブレーキ操作の応答性を高め、停止距離を短縮させる急制動時ブレーキシステムが提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−309257号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来の技術では、モータで走行する電気自動車やハイブリッド自動車や燃料電池車等において、このモータを回生させて行う回生制動の制御応答速度が油圧式ブレーキに比べて速いことから、制動トルクの急激な変動によるドライバーの不快感を防ぐために、この回生制動の制御応答速度を油圧式ブレーキと同程度になるように遅らせている。従って急制動が必要な急制動時ブレーキ中においても、モータによる回生制動の制御応答速度を遅らせているため、急制動時ブレーキ作動時の停止距離が長くなってしまう。
【0005】
本発明はこのような問題点を鑑みてなされたもので、ドライバーの制動トルクの変動による不快感と急制動時ブレーキ時の停止距離とを両立する制動制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両の制動制御装置は、バッテリから供給される電力により稼動するモータを駆動源として備える車両において、前記モータの制御応答速度を車両の運転状態に応じて高速側制御応答速度と低速側制御応答速度とに制御する手段と、車両の予測される制動状態を推定する手段と、この制動状態推定手段が、急制動を予測したときにモータの制御応答速度として高速側制御応答速度を選択する手段とを備える。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、緩減速時には低速側制御応答速度で制御されたモータの回生制動によりドライバーの感覚に合う減速度で車両が停止し、運転性を損なうことがない。一方、急減速時には停止距離を短くして危険を回避することが重要であり、モータの制御応答速度を高速側制御応答速度を選択して、モータの回生制動による減速加速度の立ち上がりを早め、車両の停止距離を短くするように制御する。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用するモータとエンジンとを駆動源とする、いわゆるハイブリッド車両のシステム図である。
【0009】
ハイブリッド車両の駆動源として、エンジン1とモータ2とが備えられ、エンジン1とモータ2は車両の走行状態に応じて、単独もしくは協働して駆動力を提供する。エンジン1とモータ2からの駆動力は、トルクコンバータ3を介し自動変速機4に伝達される。自動変速機4は、所定のトルクおよび出力軸回転速度に入力された駆動力を制御し、駆動力はディファレンシャルギア5を介して駆動輪6aを駆動する。
【0010】
ここでエンジン1は、例えば、直噴式ガソリンエンジンや閉弁時期可変式動弁機構を備えた低燃費エンジンが搭載される。モータ2は、三相同期電動機や三相誘導電動機等の力行運転と回生運転とが可能な交流式モータであり、自動変速機3は、例えば、ベルト式無段変速機が用いられる。
【0011】
モータ2にはインバータ7を介してバッテリ8の電力が供給され、一方、回生制動時にはモータ2から電力がバッテリ8に送られる。インバータ7はモータ2で発電された交流電流を直流電流に変換してバッテリ8に充電し、また、バッテリ8が放電した直流電流を交流電流に変換してモータ2に供給する。バッテリ8は、例えば、ニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池が搭載される。
【0012】
CPU、ROM、RAM、インターフェース回路及びインバータ回路等からなるコントローラ9は、車両を統合的に制御するために設置され、エンジン1の点火時期や燃料噴射量を制御するとともに、エンジン1の出力トルク変動や変速機4の変速ショックを抑制するようにモータ2の出力トルクや回転速度等を制御する。また、コントローラ9は、インバータ7を制御して、バッテリ8の充放電状態を制御する。
【0013】
コントローラ9には、エンジンの出力トルクを検出するセンサ10、バッテリ8の蓄電状態を検出するための電流センサ11、駆動輪6aと従動輪6bの回転速度を検出する車輪速センサ13、13、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルストロークセンサ14、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキストロークセンサ15、障害物との相対速度と相対距離を検出する障害物検出装置16、更には変速機の油温を検出するセンサ17等からの出力信号が入力される。コントローラ9は、これら入力信号に基づき、エンジン1の出力トルクや燃料噴射量の制御、モータ2への電力供給量あるいは回生発電量の制御、バッテリ8の電流センサ11から出力された信号を積算してバッテリ8の蓄電状態の演算、さらにエアコン18等補機類への電力供給量の制御を実施する。なお、障害物を検出する装置16は、車両前方に向けてレーザーやミリ波等の電磁波を発信してその反射波に基づいて前走車両等の物体と自車との相対距離及び相対速度を検出するレーダー装置を備えている。
【0014】
駆動輪6aと従動輪6bには機械式制動装置として、たとえば油圧ディスク式ブレーキ装置19が各輪に設置され、モータ2による回生制動と併用されて車両を停止させる。
【0015】
次に図2を用いて、コントローラ9が実施するエンジン1、モータ2、バッテリ8及びブレーキ装置19の制御内容を運転状態毎に説明する。
▲1▼停車時
車両停止状態では、エンジン1、モータ2、バッテリ8、ブレーキ装置19は基本的には作動しないが、エンジン1の冷機時またはバッテリ8の蓄電容量低下時にはエンジン1が起動する。エンジン1の運転により、モータ2は発電状態となり、バッテリ8はモータが発電した電力を充電する。またブレーキ装置19は、車両が例えば、坂道に停車している場合には、車両を停止させるために緩制動状態となるように制御される。
▲2▼発進時
1)緩発進時には、車両はモータ2の駆動力のみで駆動され、エンジン1はモータ2の回転に連れ回される状態となる。バッテリ8は、モータ2へ電力を供給し、ブレーキ装置19は制動力を生じない解放状態となる。
2)急発進時には、モータ2の駆動力に加えて、エンジン1の駆動力が加わる。エンジン1は起動後に高出力運転へと移行する。このとき、バッテリ8とブレーキ装置19は緩発進時と同じ制御となる。
▲3▼エンジン起動時
エンジン1起動時には、モータ2はクランキングのために用いられる。そのための電力がモータ2にバッテリ8から供給される。
▲4▼定常走行時
1)低負荷走行時には、車両はモータ2の駆動力のみで駆動され、エンジン1はモータ2の回転に連れ回される状態となる。バッテリ8は、モータ2へ電力を供給し、ブレーキ装置19は制動力を生じない解放状態となる。但し、エンジン1の冷機時またはバッテリ8の蓄電容量低下時にはエンジン1が起動し、エンジン1の運転により、モータ2は発電状態となり、バッテリ8はモータが発電した電力を充電する。したがって、車両の駆動力はエンジン1により供給されるように切り換えられる。
2)中負荷走行時では、エンジンが高負荷運転域となるため、車両の駆動力はエンジン1のみが賄い、モータ2は発電し、発電した電力をバッテリ8に充電する。
3)高負荷走行時では、要求駆動力が大きくなるため、エンジン1とモータ2の両方から駆動力を供給する必要が生じる。バッテリ8はモータ2に必要電力を供給するが、充電容量が低下した場合には、モータは発電状態に切り換わる。
▲5▼急加速時
急加速時には、エンジン1は高出力運転を行い、モータ2も駆動力を供給して、大きな要求駆動力に対応する。このときバッテリ8は電力をモータ2に供給する。
▲6▼減速時
1)緩減速時には、モータ2の回生制動のみが行われ、エンジン1はモータ2に連れ回されて、バッテリ8は回生制動による発電電力を充電する。この時のモータ回生制動時の制御応答速度は、ブレーキ装置19と同じ遅い制御応答速度(低速側制御応答速度)として制御する。この状態ではブレーキ装置19は基本的には作動していない(制動力を発揮していない)が、緩減速時であっても、バッテリ8の蓄電容量が不足した場合には制動力を発揮する。
2)急減速時には、モータ2の回生制動とブレーキ装置19による制動の両方により急制動をかける。このときのモータの回生制動時の制御応答速度は、緩減速時より速い、モータ2の通常の制御応答速度(高速側制御応答速度)を用いて、回生制動を制御する。
3)このように減速時には、減速の要求度合、つまり、通常のブレーキ動作である緩減速時と事故回避行動時のような急減速時とでモータの回生制動の制御応答速度を変化させることにより、緩減速時、言い換えると緩制動時には低速側制御応答速度で制御されたモータの回生制動によりドライバーの感覚に合う減速度で車両が停止し、運転性を損なうことがない。一方、急減速時、言い換えると急制動時には停止距離を短くして危険を回避することが重要であり、そのため、モータの制御応答速度を高速側制御応答速度に切り換えて、モータ2の回生制動による減速加速度の立ち上がりを早め、車両の停止距離を短くするように制御する。
【0016】
次に、図2で説明したコントローラ9の急制動時のブレーキ制御内容を図3に示すフローチャートで説明する。ここでの急制動とは、事故回避のための緊急ブレーキ、いわゆるパニックブレーキを意味する。なお本実施例では駆動トルクを正値、制動トルクを負値として取り扱い、駆動トルク及び制動トルクともにその絶対値が大きいほど駆動及び制動するトルクがそれぞれ強いものとする。また、この制御開始時の制御応答速度は、モータ2の本来の制御応答速度、つまり上述の速い制御応答速度とする。
【0017】
ステップS10では、障害物検出装置16で検出された前方の障害物との相対速度Vrlが相対速度危険度判断閾値Vrlthより大きく、且つ障害物検出装置16で検出された前方障害物との相対距離Drlが相対距離危険度判断閾値Drlthより短い場合、ステップS11に進み、衝突予測フラグFfに1をセットする。即ちFfがセット中ならば前方障害物と接触の危険性があり、急制動の必要性があると判定する。
【0018】
一方、ステップS10において障害物検出装置16で検出された前方障害物との相対速度Vrlが相対速度危険度判断閾値Vrlth以下、或いは障害物検出装置16で検出された前方障害物との相対距離Drlが相対距離危険度判断閾値Drlth以上の場合には、ステップS12に進み、安全が確保されていると判定し、衝突予測フラグFfに0をセットする。
【0019】
このとき、車体速Vspが大きいと、制動による接触回避やステアリング操作による接触回避が困難であることに鑑み、車輪速センサ12、13で計測された各車輪速からコントローラ9で演算される推定車体速Vaspや推定車体速Vaspを時間微分して得られる推定車体加速度Aaspの大きさに基づき、前記各閾値Vrlth、Drlthを補正することにより、一層的確な判定を行うことができる。なお推定車体速Vaspの求め方としては従動輪6bの車輪速を推定車体速Vaspとする方法等がある。
【0020】
ステップS13では、ブレーキストロークセンサ15で検出されたブレーキペダルの踏み込み量Bpが急制動時ブレーキ踏み込み量閾値Bpthより大きい、或いはブレーキペダルの踏み込み量Bpの時間微分値である踏み込み変化量DBp(=d(Bp)・dt)が急制動時ブレーキ踏み込み変化量閾値DBpthより大きい場合、ステップS14に進み、衝突検知フラグFsに1をセットする。即ちFsがセット中ならば前方障害物と接触の危険性があり急制動の必要性があることをドライバーが察知したと判断できる。
【0021】
一方、ステップS13において前述の成立条件が不成立の場合に、ステップS15に進み、ドライバーがいまだ危険を察知していないとして、衝突検知フラグFsに0をセットする。
【0022】
このとき、車体速Vspが大きいと、制動による接触回避やステアリング操作による接触回避が困難であることに鑑み、前記各閾値Bpth、DBpthを推定車体速Vaspや推定車体加速度Aasp等の大きさに基づいて補正することにより、一層的確な判定を行うことができる。
【0023】
ステップS19では、アクセルペダルが踏まれている場合には図4に示すマップから目標駆動トルクTaを設定し、またブレーキペダルが踏まれている場合には図5に示すマップから目標駆動トルクTaを設定する。即ち、アクセルペダルが踏まれている場合にはアクセルペダルの踏み込み量Apと推定車体速Vaspからドライバーの目標駆動トルクTaを設定し、ブレーキペダルが踏まれている場合にはドライバーの目標駆動トルクTaをブレーキペダルの踏み込み量Bpに比例するように設定する。
【0024】
ステップS20では、ブレーキストロークセンサ15で検出されたブレーキペダルの踏み込み量Bpが0より大きい、即ちブレーキペダルが踏み込まれているかどうかを判定し、踏み込まれている場合には、ステップS21に進む。一方、ステップS20においてブレーキストロークセンサ15で検出されたブレーキペダルの踏み込み量Bpが0、即ちブレーキペダルが踏まれていない場合ならば、後述するステップS24に進む。
【0025】
ステップS21ではエンジン1の目標トルクTeを0に設定する、即ちエンジン1への燃料供給をカットする。
【0026】
ステップS22ではモータ2の回生性能、バッテリ8の蓄電性能や蓄電状況、及びエアコン18等の補機消費電力からモータ2の最大回生可能電力Pmを求め、式(1)の通りこの最大発電可能電力Pmでモータ2を回生した場合の最大回生制動トルクTmmax(負値)をモータ2の目標トルクTmと設定する。
【0027】
【数1】Tm = Tmmax … (1)
ただし、最大回生制動トルクTmmax(負値)とエンジン1のフリクショントルクTef(負値)との和が、ドライバーの目標駆動トルクTa(負値)より小さい場合、即ちドライバーの制動要求トルク(負値)より最大回生制動トルクTmmax(負値)とエンジン1のフリクショントルクTef(負値)との和の方が小さい場合には、式(2)の通りドライバーの目標駆動トルクTaからエンジン1のフリクショントルクTef(負値)を差し引いた値をモータ2の目標トルクTmと設定する。
【0028】
【数2】Tm = Ta − Tef … (2)
また、エンジン回転速度によって変化するエンジン1のフリクショントルクTef(負値)は実験或いはシミュレーションで予め求めた値であり、コントローラ9を製造する段階でフリクショントルクTef(負値)はコントローラ9のROMに記憶させておく。
【0029】
ステップS23では、ブレーキ装置19の目標制動トルクの合計Tbを下記式(3)により求める。
【0030】
【数3】Tb = Ta − Tm − Tef … (3)
ステップS24では、ドライバーの目標駆動トルクTaを実現することを前提に、バッテリ8の蓄電量及びエンジン1の運転点が最良燃費線上にあるようにエンジン1の目標トルクTeを設定する。
【0031】
ステップS25では、ドライバーの目標駆動トルクTaとエンジン1の目標トルクTeとの差をモータ2の目標トルクTm(Tm=Ta‐Te)に設定する。
【0032】
ステップS26では、ブレーキ装置19の目標制動トルクの合計Tbを0に設定する。
【0033】
ステップS27では、フラグFfが0ならば(ステップS27でYES)、ステップS28に進む。一方、ステップS27でフラグFfが1ならば(ステップS27でNO)、後述するステップS30に進む。
【0034】
ステップS28では、フラグFsが0ならば(ステップS28でYES)、後述するステップS30に進む。一方、ステップS28でフラグFsが1ならば(ステップS28でNO)、ステップS31に進む。
【0035】
ステップS30では、モータ2の目標トルクTmのなまし処理を行う。このなまし処理の目的は、上述したモータ2の制御応答速度をブレーキ装置19の制御応答速度をブレーキ装置19の応答速度と同等にするための処理である。このモータ2の目標トルクTmのなまし処理は、下記式(4)に示すようになまし処理の係数Ns(但し、0<Ns<1)を用いてモータ2の目標トルクTmの現在値Tm(n)と前回値Tm(n−1)の平均値を演算する。なまし処理の係数Nsはトルク変動による加減速がドライバーの不快感を招かないようにブレーキ装置19の応答速度を考慮して設定し、ステップS31に進む。
【0036】
【数4】Tm = [Ns・Tm(n) + (1−Ns)・Tm(n−1)]/2 …(4)
但し、ここで、0<Ns<1である。
【0037】
また、ステップS30ではモータ2の目標トルクTmの現在値Tm(n)と前回値Tm(n−1)との差ΔTm(n)による加減速が、ドライバーの不快感が起こらないようにモータ2の目標トルクTmを設定できる制御方法があれば代用しても良い。
【0038】
ステップS31では、エンジン1の目標トルクTeに応じてエンジン1を制御し、モータ2の目標トルクTmに応じてモータ2を制御し、ブレーキ装置19の目標制動トルクの合計Tbと車両の前後荷重及び左右荷重等に応じてブレーキ装置19を制御する。
【0039】
図6のフローチャートは、第2の実施形態を示し、コントローラ9による別の急制動時のブレーキ制御を示すものである。
【0040】
この実施形態は、第1の実施形態に対して、バッテリ8の蓄電状態がフル充電の状態のために回生制動を実施できない場合の制御内容を、図3に示す第1の実施形態のフローチャートのステップS19とステップS20との間に追加したフローチャートである。
【0041】
まず、ステップS19に続くステップS40では、衝突予測フラグFfが1かどうかを判定する。衝突予測フラグFfが1ならば、後述するステップS42に進む。即ち、前方障害物と接触の危険性があると予測されている場合にはステップS42に進む。一方ステップS40でフラグFfが0ならば、安全が確保されているとしてステップS41に進む。
【0042】
ステップS41では、衝突検知フラグFsが1かどうかを判定し、衝突検知フラグFsが1ならば、ステップS42に進む。即ち、前方障害物と接触の危険性があるとドライバーが察知している場合にはステップS42に進む。
【0043】
一方、ステップS41でフラグFsが0ならば、後述するステップS44に進む。
【0044】
ステップS42ではバッテリ8の蓄電状況の制限等から、モータ2が回生制動できない状態かどうかを判定し、回生制動できない場合にはステップS43に進む。一方、モータ2が回生制動できる場合には後述するステップS44に進む。
【0045】
ステップS43では車両の走行に支障を生じない範囲でエアコン等の補機の消費電力Phをできる限り増大させる。具体的にはエアコン18の出力を増大させ温度や風量等を調節した空気を車両内部だけでなく車外に排出する、ヘッドライトを装備する車両ではヘッドライトの光量を増大させる等の手段によってバッテリ8の蓄電量の減少を促進し、且つエアコン18等の補機消費電力Phを増大させる。
【0046】
ステップS44では補機消費電力をドライバーの要求に応じ且つ燃費を考慮した値に設定する。具体的にはエアコン18の出力をドライバーが要求した温度や風量等に設定し温度や風量等を調節した空気を車両内部だけに排出する、また、ヘッドライトを装備する車両ではヘッドライトの光量をドライバーが要求した光量に設定する。
【0047】
したがって、この実施形態においては、急制動時に補機類の消費電力を増大させてモータ2の回生電力を増大でき、急制動時の制動力を向上することができる。
【0048】
図7のフローチャートは第3の実施形態を示し、コントローラ9による更に別の急制動時のブレーキ制御を示すものである。この実施形態は、第2の実施形態に対し、急制動が必要な状況であるにもかかわらず、回生制動ができない場合には、補機類の消費電力量を増大させることで、モータが回生制動時に発電した電力を消費するように制御するものである。
【0049】
以下、図7に示すフローチャート図に対する追加ステップに付き説明する。
【0050】
まず、ステップS43に続くステップS45では、補機出力増大フラグFbに1をセットする。即ち、補機出力増大フラグFbがセット中ならば前方の障害物と接触の危険性があり、急制動の必要性がある状態であるにもかかわらず、バッテリ8の蓄電状態がモータ2による回生制動による発電量を充電できないことを表している。
【0051】
また、ステップS44に続くステップS46では、急制動の必要がない状態として、補機出力増大フラグFbに0をセットする。
【0052】
ステップS21に続くステップS50では、補機出力増大フラグFbが0かどうかを判定し、補機出力増大フラグFbが0ならば、前述のステップS22に進む。一方、ステップS50で補機出力増大フラグFbが1ならば、ステップS51に進む。
【0053】
ステップS51では、エアコン18等の補機で消費される電力Phと回生制動時に回生される発電量とが一致するように、回生制動トルクTlをモータ2の目標トルクTmと設定し、モータ2で回生した電力をバッテリ8に蓄電せず、エアコン18等の補機で直接消費するようコントローラ9の制御を切り換える。即ちモータ2で回生した電力を、出力を増大した補機で直接消費するようにする。
【0054】
ただし回生制動トルクTl(負値)とエンジン1のフリクショントルクTef(負値)との和がドライバーの目標駆動トルクTa(負値)より小さい場合、即ちドライバーの制動要求トルク(負値)より回生制動トルクTl(負値)とエンジン1のフリクショントルクTef(負値)との和の方が小さい場合には、ドライバーの目標駆動トルクTaからエンジン1のフリクショントルクTef(負値)を差し引いた値をモータ2の目標トルクTmと設定する。
【0055】
したがって、この実施形態においては、急制動時にエアコン18等補機類の消費電力を増大させ、この消費電力をモータ2の回生電力で賄うよう制御したので、バッテリ8の蓄電状態によらず、モータ2の回生制動を速い制御応答速度で行うことができ、車両の停止距離を向上することができる。
【0056】
なお、上記の実施例はハイブリッド車に限らず、モータ2によって走行する車両、例えば上記実施例にてエンジン1を有さない電気自動車や、エンジン1を有さず水素等を燃料として電力を発生する燃料電池を搭載する燃料電池車においても適用可能である。
【0057】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用するハイブリッド車両のシステム図である。
【図2】種々の制動状態下における各構成要素の制御内容を説明する図である。
【図3】本発明の第1の実施形態としての急制動時の制御内容を説明するフローチャート図である。
【図4】アクセルペダルの踏み込み量と車体速に応じたドライバーの目標駆動トルクを示すマップである。
【図5】ブレーキペダルの踏み込み量に応じたドライバーの目標駆動トルクを示すマップである。
【図6】第2の実施形態としての急制動時の制御内容を説明するフローチャート図である。
【図7】第3の実施形態としての急制動時の制御内容を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 モータ
3 トルクコンバータ
4 変速機
5 ディファレンシャルギア
6a 駆動輪
6b 従動輪
7 インバータ
8 バッテリ
9 コントローラ
16 障害物検出装置
18 エアコン
19 ブレーキ装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータを駆動源として備える車両の制動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
障害物との距離や相対速度等から衝突の危険度を判断し、必要に応じて油圧式ブレーキに予圧をかけることによってブレーキ操作の応答性を高め、停止距離を短縮させる急制動時ブレーキシステムが提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−309257号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来の技術では、モータで走行する電気自動車やハイブリッド自動車や燃料電池車等において、このモータを回生させて行う回生制動の制御応答速度が油圧式ブレーキに比べて速いことから、制動トルクの急激な変動によるドライバーの不快感を防ぐために、この回生制動の制御応答速度を油圧式ブレーキと同程度になるように遅らせている。従って急制動が必要な急制動時ブレーキ中においても、モータによる回生制動の制御応答速度を遅らせているため、急制動時ブレーキ作動時の停止距離が長くなってしまう。
【0005】
本発明はこのような問題点を鑑みてなされたもので、ドライバーの制動トルクの変動による不快感と急制動時ブレーキ時の停止距離とを両立する制動制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両の制動制御装置は、バッテリから供給される電力により稼動するモータを駆動源として備える車両において、前記モータの制御応答速度を車両の運転状態に応じて高速側制御応答速度と低速側制御応答速度とに制御する手段と、車両の予測される制動状態を推定する手段と、この制動状態推定手段が、急制動を予測したときにモータの制御応答速度として高速側制御応答速度を選択する手段とを備える。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、緩減速時には低速側制御応答速度で制御されたモータの回生制動によりドライバーの感覚に合う減速度で車両が停止し、運転性を損なうことがない。一方、急減速時には停止距離を短くして危険を回避することが重要であり、モータの制御応答速度を高速側制御応答速度を選択して、モータの回生制動による減速加速度の立ち上がりを早め、車両の停止距離を短くするように制御する。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用するモータとエンジンとを駆動源とする、いわゆるハイブリッド車両のシステム図である。
【0009】
ハイブリッド車両の駆動源として、エンジン1とモータ2とが備えられ、エンジン1とモータ2は車両の走行状態に応じて、単独もしくは協働して駆動力を提供する。エンジン1とモータ2からの駆動力は、トルクコンバータ3を介し自動変速機4に伝達される。自動変速機4は、所定のトルクおよび出力軸回転速度に入力された駆動力を制御し、駆動力はディファレンシャルギア5を介して駆動輪6aを駆動する。
【0010】
ここでエンジン1は、例えば、直噴式ガソリンエンジンや閉弁時期可変式動弁機構を備えた低燃費エンジンが搭載される。モータ2は、三相同期電動機や三相誘導電動機等の力行運転と回生運転とが可能な交流式モータであり、自動変速機3は、例えば、ベルト式無段変速機が用いられる。
【0011】
モータ2にはインバータ7を介してバッテリ8の電力が供給され、一方、回生制動時にはモータ2から電力がバッテリ8に送られる。インバータ7はモータ2で発電された交流電流を直流電流に変換してバッテリ8に充電し、また、バッテリ8が放電した直流電流を交流電流に変換してモータ2に供給する。バッテリ8は、例えば、ニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池が搭載される。
【0012】
CPU、ROM、RAM、インターフェース回路及びインバータ回路等からなるコントローラ9は、車両を統合的に制御するために設置され、エンジン1の点火時期や燃料噴射量を制御するとともに、エンジン1の出力トルク変動や変速機4の変速ショックを抑制するようにモータ2の出力トルクや回転速度等を制御する。また、コントローラ9は、インバータ7を制御して、バッテリ8の充放電状態を制御する。
【0013】
コントローラ9には、エンジンの出力トルクを検出するセンサ10、バッテリ8の蓄電状態を検出するための電流センサ11、駆動輪6aと従動輪6bの回転速度を検出する車輪速センサ13、13、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルストロークセンサ14、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキストロークセンサ15、障害物との相対速度と相対距離を検出する障害物検出装置16、更には変速機の油温を検出するセンサ17等からの出力信号が入力される。コントローラ9は、これら入力信号に基づき、エンジン1の出力トルクや燃料噴射量の制御、モータ2への電力供給量あるいは回生発電量の制御、バッテリ8の電流センサ11から出力された信号を積算してバッテリ8の蓄電状態の演算、さらにエアコン18等補機類への電力供給量の制御を実施する。なお、障害物を検出する装置16は、車両前方に向けてレーザーやミリ波等の電磁波を発信してその反射波に基づいて前走車両等の物体と自車との相対距離及び相対速度を検出するレーダー装置を備えている。
【0014】
駆動輪6aと従動輪6bには機械式制動装置として、たとえば油圧ディスク式ブレーキ装置19が各輪に設置され、モータ2による回生制動と併用されて車両を停止させる。
【0015】
次に図2を用いて、コントローラ9が実施するエンジン1、モータ2、バッテリ8及びブレーキ装置19の制御内容を運転状態毎に説明する。
▲1▼停車時
車両停止状態では、エンジン1、モータ2、バッテリ8、ブレーキ装置19は基本的には作動しないが、エンジン1の冷機時またはバッテリ8の蓄電容量低下時にはエンジン1が起動する。エンジン1の運転により、モータ2は発電状態となり、バッテリ8はモータが発電した電力を充電する。またブレーキ装置19は、車両が例えば、坂道に停車している場合には、車両を停止させるために緩制動状態となるように制御される。
▲2▼発進時
1)緩発進時には、車両はモータ2の駆動力のみで駆動され、エンジン1はモータ2の回転に連れ回される状態となる。バッテリ8は、モータ2へ電力を供給し、ブレーキ装置19は制動力を生じない解放状態となる。
2)急発進時には、モータ2の駆動力に加えて、エンジン1の駆動力が加わる。エンジン1は起動後に高出力運転へと移行する。このとき、バッテリ8とブレーキ装置19は緩発進時と同じ制御となる。
▲3▼エンジン起動時
エンジン1起動時には、モータ2はクランキングのために用いられる。そのための電力がモータ2にバッテリ8から供給される。
▲4▼定常走行時
1)低負荷走行時には、車両はモータ2の駆動力のみで駆動され、エンジン1はモータ2の回転に連れ回される状態となる。バッテリ8は、モータ2へ電力を供給し、ブレーキ装置19は制動力を生じない解放状態となる。但し、エンジン1の冷機時またはバッテリ8の蓄電容量低下時にはエンジン1が起動し、エンジン1の運転により、モータ2は発電状態となり、バッテリ8はモータが発電した電力を充電する。したがって、車両の駆動力はエンジン1により供給されるように切り換えられる。
2)中負荷走行時では、エンジンが高負荷運転域となるため、車両の駆動力はエンジン1のみが賄い、モータ2は発電し、発電した電力をバッテリ8に充電する。
3)高負荷走行時では、要求駆動力が大きくなるため、エンジン1とモータ2の両方から駆動力を供給する必要が生じる。バッテリ8はモータ2に必要電力を供給するが、充電容量が低下した場合には、モータは発電状態に切り換わる。
▲5▼急加速時
急加速時には、エンジン1は高出力運転を行い、モータ2も駆動力を供給して、大きな要求駆動力に対応する。このときバッテリ8は電力をモータ2に供給する。
▲6▼減速時
1)緩減速時には、モータ2の回生制動のみが行われ、エンジン1はモータ2に連れ回されて、バッテリ8は回生制動による発電電力を充電する。この時のモータ回生制動時の制御応答速度は、ブレーキ装置19と同じ遅い制御応答速度(低速側制御応答速度)として制御する。この状態ではブレーキ装置19は基本的には作動していない(制動力を発揮していない)が、緩減速時であっても、バッテリ8の蓄電容量が不足した場合には制動力を発揮する。
2)急減速時には、モータ2の回生制動とブレーキ装置19による制動の両方により急制動をかける。このときのモータの回生制動時の制御応答速度は、緩減速時より速い、モータ2の通常の制御応答速度(高速側制御応答速度)を用いて、回生制動を制御する。
3)このように減速時には、減速の要求度合、つまり、通常のブレーキ動作である緩減速時と事故回避行動時のような急減速時とでモータの回生制動の制御応答速度を変化させることにより、緩減速時、言い換えると緩制動時には低速側制御応答速度で制御されたモータの回生制動によりドライバーの感覚に合う減速度で車両が停止し、運転性を損なうことがない。一方、急減速時、言い換えると急制動時には停止距離を短くして危険を回避することが重要であり、そのため、モータの制御応答速度を高速側制御応答速度に切り換えて、モータ2の回生制動による減速加速度の立ち上がりを早め、車両の停止距離を短くするように制御する。
【0016】
次に、図2で説明したコントローラ9の急制動時のブレーキ制御内容を図3に示すフローチャートで説明する。ここでの急制動とは、事故回避のための緊急ブレーキ、いわゆるパニックブレーキを意味する。なお本実施例では駆動トルクを正値、制動トルクを負値として取り扱い、駆動トルク及び制動トルクともにその絶対値が大きいほど駆動及び制動するトルクがそれぞれ強いものとする。また、この制御開始時の制御応答速度は、モータ2の本来の制御応答速度、つまり上述の速い制御応答速度とする。
【0017】
ステップS10では、障害物検出装置16で検出された前方の障害物との相対速度Vrlが相対速度危険度判断閾値Vrlthより大きく、且つ障害物検出装置16で検出された前方障害物との相対距離Drlが相対距離危険度判断閾値Drlthより短い場合、ステップS11に進み、衝突予測フラグFfに1をセットする。即ちFfがセット中ならば前方障害物と接触の危険性があり、急制動の必要性があると判定する。
【0018】
一方、ステップS10において障害物検出装置16で検出された前方障害物との相対速度Vrlが相対速度危険度判断閾値Vrlth以下、或いは障害物検出装置16で検出された前方障害物との相対距離Drlが相対距離危険度判断閾値Drlth以上の場合には、ステップS12に進み、安全が確保されていると判定し、衝突予測フラグFfに0をセットする。
【0019】
このとき、車体速Vspが大きいと、制動による接触回避やステアリング操作による接触回避が困難であることに鑑み、車輪速センサ12、13で計測された各車輪速からコントローラ9で演算される推定車体速Vaspや推定車体速Vaspを時間微分して得られる推定車体加速度Aaspの大きさに基づき、前記各閾値Vrlth、Drlthを補正することにより、一層的確な判定を行うことができる。なお推定車体速Vaspの求め方としては従動輪6bの車輪速を推定車体速Vaspとする方法等がある。
【0020】
ステップS13では、ブレーキストロークセンサ15で検出されたブレーキペダルの踏み込み量Bpが急制動時ブレーキ踏み込み量閾値Bpthより大きい、或いはブレーキペダルの踏み込み量Bpの時間微分値である踏み込み変化量DBp(=d(Bp)・dt)が急制動時ブレーキ踏み込み変化量閾値DBpthより大きい場合、ステップS14に進み、衝突検知フラグFsに1をセットする。即ちFsがセット中ならば前方障害物と接触の危険性があり急制動の必要性があることをドライバーが察知したと判断できる。
【0021】
一方、ステップS13において前述の成立条件が不成立の場合に、ステップS15に進み、ドライバーがいまだ危険を察知していないとして、衝突検知フラグFsに0をセットする。
【0022】
このとき、車体速Vspが大きいと、制動による接触回避やステアリング操作による接触回避が困難であることに鑑み、前記各閾値Bpth、DBpthを推定車体速Vaspや推定車体加速度Aasp等の大きさに基づいて補正することにより、一層的確な判定を行うことができる。
【0023】
ステップS19では、アクセルペダルが踏まれている場合には図4に示すマップから目標駆動トルクTaを設定し、またブレーキペダルが踏まれている場合には図5に示すマップから目標駆動トルクTaを設定する。即ち、アクセルペダルが踏まれている場合にはアクセルペダルの踏み込み量Apと推定車体速Vaspからドライバーの目標駆動トルクTaを設定し、ブレーキペダルが踏まれている場合にはドライバーの目標駆動トルクTaをブレーキペダルの踏み込み量Bpに比例するように設定する。
【0024】
ステップS20では、ブレーキストロークセンサ15で検出されたブレーキペダルの踏み込み量Bpが0より大きい、即ちブレーキペダルが踏み込まれているかどうかを判定し、踏み込まれている場合には、ステップS21に進む。一方、ステップS20においてブレーキストロークセンサ15で検出されたブレーキペダルの踏み込み量Bpが0、即ちブレーキペダルが踏まれていない場合ならば、後述するステップS24に進む。
【0025】
ステップS21ではエンジン1の目標トルクTeを0に設定する、即ちエンジン1への燃料供給をカットする。
【0026】
ステップS22ではモータ2の回生性能、バッテリ8の蓄電性能や蓄電状況、及びエアコン18等の補機消費電力からモータ2の最大回生可能電力Pmを求め、式(1)の通りこの最大発電可能電力Pmでモータ2を回生した場合の最大回生制動トルクTmmax(負値)をモータ2の目標トルクTmと設定する。
【0027】
【数1】Tm = Tmmax … (1)
ただし、最大回生制動トルクTmmax(負値)とエンジン1のフリクショントルクTef(負値)との和が、ドライバーの目標駆動トルクTa(負値)より小さい場合、即ちドライバーの制動要求トルク(負値)より最大回生制動トルクTmmax(負値)とエンジン1のフリクショントルクTef(負値)との和の方が小さい場合には、式(2)の通りドライバーの目標駆動トルクTaからエンジン1のフリクショントルクTef(負値)を差し引いた値をモータ2の目標トルクTmと設定する。
【0028】
【数2】Tm = Ta − Tef … (2)
また、エンジン回転速度によって変化するエンジン1のフリクショントルクTef(負値)は実験或いはシミュレーションで予め求めた値であり、コントローラ9を製造する段階でフリクショントルクTef(負値)はコントローラ9のROMに記憶させておく。
【0029】
ステップS23では、ブレーキ装置19の目標制動トルクの合計Tbを下記式(3)により求める。
【0030】
【数3】Tb = Ta − Tm − Tef … (3)
ステップS24では、ドライバーの目標駆動トルクTaを実現することを前提に、バッテリ8の蓄電量及びエンジン1の運転点が最良燃費線上にあるようにエンジン1の目標トルクTeを設定する。
【0031】
ステップS25では、ドライバーの目標駆動トルクTaとエンジン1の目標トルクTeとの差をモータ2の目標トルクTm(Tm=Ta‐Te)に設定する。
【0032】
ステップS26では、ブレーキ装置19の目標制動トルクの合計Tbを0に設定する。
【0033】
ステップS27では、フラグFfが0ならば(ステップS27でYES)、ステップS28に進む。一方、ステップS27でフラグFfが1ならば(ステップS27でNO)、後述するステップS30に進む。
【0034】
ステップS28では、フラグFsが0ならば(ステップS28でYES)、後述するステップS30に進む。一方、ステップS28でフラグFsが1ならば(ステップS28でNO)、ステップS31に進む。
【0035】
ステップS30では、モータ2の目標トルクTmのなまし処理を行う。このなまし処理の目的は、上述したモータ2の制御応答速度をブレーキ装置19の制御応答速度をブレーキ装置19の応答速度と同等にするための処理である。このモータ2の目標トルクTmのなまし処理は、下記式(4)に示すようになまし処理の係数Ns(但し、0<Ns<1)を用いてモータ2の目標トルクTmの現在値Tm(n)と前回値Tm(n−1)の平均値を演算する。なまし処理の係数Nsはトルク変動による加減速がドライバーの不快感を招かないようにブレーキ装置19の応答速度を考慮して設定し、ステップS31に進む。
【0036】
【数4】Tm = [Ns・Tm(n) + (1−Ns)・Tm(n−1)]/2 …(4)
但し、ここで、0<Ns<1である。
【0037】
また、ステップS30ではモータ2の目標トルクTmの現在値Tm(n)と前回値Tm(n−1)との差ΔTm(n)による加減速が、ドライバーの不快感が起こらないようにモータ2の目標トルクTmを設定できる制御方法があれば代用しても良い。
【0038】
ステップS31では、エンジン1の目標トルクTeに応じてエンジン1を制御し、モータ2の目標トルクTmに応じてモータ2を制御し、ブレーキ装置19の目標制動トルクの合計Tbと車両の前後荷重及び左右荷重等に応じてブレーキ装置19を制御する。
【0039】
図6のフローチャートは、第2の実施形態を示し、コントローラ9による別の急制動時のブレーキ制御を示すものである。
【0040】
この実施形態は、第1の実施形態に対して、バッテリ8の蓄電状態がフル充電の状態のために回生制動を実施できない場合の制御内容を、図3に示す第1の実施形態のフローチャートのステップS19とステップS20との間に追加したフローチャートである。
【0041】
まず、ステップS19に続くステップS40では、衝突予測フラグFfが1かどうかを判定する。衝突予測フラグFfが1ならば、後述するステップS42に進む。即ち、前方障害物と接触の危険性があると予測されている場合にはステップS42に進む。一方ステップS40でフラグFfが0ならば、安全が確保されているとしてステップS41に進む。
【0042】
ステップS41では、衝突検知フラグFsが1かどうかを判定し、衝突検知フラグFsが1ならば、ステップS42に進む。即ち、前方障害物と接触の危険性があるとドライバーが察知している場合にはステップS42に進む。
【0043】
一方、ステップS41でフラグFsが0ならば、後述するステップS44に進む。
【0044】
ステップS42ではバッテリ8の蓄電状況の制限等から、モータ2が回生制動できない状態かどうかを判定し、回生制動できない場合にはステップS43に進む。一方、モータ2が回生制動できる場合には後述するステップS44に進む。
【0045】
ステップS43では車両の走行に支障を生じない範囲でエアコン等の補機の消費電力Phをできる限り増大させる。具体的にはエアコン18の出力を増大させ温度や風量等を調節した空気を車両内部だけでなく車外に排出する、ヘッドライトを装備する車両ではヘッドライトの光量を増大させる等の手段によってバッテリ8の蓄電量の減少を促進し、且つエアコン18等の補機消費電力Phを増大させる。
【0046】
ステップS44では補機消費電力をドライバーの要求に応じ且つ燃費を考慮した値に設定する。具体的にはエアコン18の出力をドライバーが要求した温度や風量等に設定し温度や風量等を調節した空気を車両内部だけに排出する、また、ヘッドライトを装備する車両ではヘッドライトの光量をドライバーが要求した光量に設定する。
【0047】
したがって、この実施形態においては、急制動時に補機類の消費電力を増大させてモータ2の回生電力を増大でき、急制動時の制動力を向上することができる。
【0048】
図7のフローチャートは第3の実施形態を示し、コントローラ9による更に別の急制動時のブレーキ制御を示すものである。この実施形態は、第2の実施形態に対し、急制動が必要な状況であるにもかかわらず、回生制動ができない場合には、補機類の消費電力量を増大させることで、モータが回生制動時に発電した電力を消費するように制御するものである。
【0049】
以下、図7に示すフローチャート図に対する追加ステップに付き説明する。
【0050】
まず、ステップS43に続くステップS45では、補機出力増大フラグFbに1をセットする。即ち、補機出力増大フラグFbがセット中ならば前方の障害物と接触の危険性があり、急制動の必要性がある状態であるにもかかわらず、バッテリ8の蓄電状態がモータ2による回生制動による発電量を充電できないことを表している。
【0051】
また、ステップS44に続くステップS46では、急制動の必要がない状態として、補機出力増大フラグFbに0をセットする。
【0052】
ステップS21に続くステップS50では、補機出力増大フラグFbが0かどうかを判定し、補機出力増大フラグFbが0ならば、前述のステップS22に進む。一方、ステップS50で補機出力増大フラグFbが1ならば、ステップS51に進む。
【0053】
ステップS51では、エアコン18等の補機で消費される電力Phと回生制動時に回生される発電量とが一致するように、回生制動トルクTlをモータ2の目標トルクTmと設定し、モータ2で回生した電力をバッテリ8に蓄電せず、エアコン18等の補機で直接消費するようコントローラ9の制御を切り換える。即ちモータ2で回生した電力を、出力を増大した補機で直接消費するようにする。
【0054】
ただし回生制動トルクTl(負値)とエンジン1のフリクショントルクTef(負値)との和がドライバーの目標駆動トルクTa(負値)より小さい場合、即ちドライバーの制動要求トルク(負値)より回生制動トルクTl(負値)とエンジン1のフリクショントルクTef(負値)との和の方が小さい場合には、ドライバーの目標駆動トルクTaからエンジン1のフリクショントルクTef(負値)を差し引いた値をモータ2の目標トルクTmと設定する。
【0055】
したがって、この実施形態においては、急制動時にエアコン18等補機類の消費電力を増大させ、この消費電力をモータ2の回生電力で賄うよう制御したので、バッテリ8の蓄電状態によらず、モータ2の回生制動を速い制御応答速度で行うことができ、車両の停止距離を向上することができる。
【0056】
なお、上記の実施例はハイブリッド車に限らず、モータ2によって走行する車両、例えば上記実施例にてエンジン1を有さない電気自動車や、エンジン1を有さず水素等を燃料として電力を発生する燃料電池を搭載する燃料電池車においても適用可能である。
【0057】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用するハイブリッド車両のシステム図である。
【図2】種々の制動状態下における各構成要素の制御内容を説明する図である。
【図3】本発明の第1の実施形態としての急制動時の制御内容を説明するフローチャート図である。
【図4】アクセルペダルの踏み込み量と車体速に応じたドライバーの目標駆動トルクを示すマップである。
【図5】ブレーキペダルの踏み込み量に応じたドライバーの目標駆動トルクを示すマップである。
【図6】第2の実施形態としての急制動時の制御内容を説明するフローチャート図である。
【図7】第3の実施形態としての急制動時の制御内容を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 モータ
3 トルクコンバータ
4 変速機
5 ディファレンシャルギア
6a 駆動輪
6b 従動輪
7 インバータ
8 バッテリ
9 コントローラ
16 障害物検出装置
18 エアコン
19 ブレーキ装置
Claims (5)
- バッテリから供給される電力により稼動するモータを駆動源として備える車両において、
前記モータの制御応答速度を車両の運転状態に応じて高速側制御応答速度と低速側制御応答速度とに制御する手段と、
車両の予測される制動状態を推定する手段と、
この制動状態推定手段が、急制動を予測したときにモータの制御応答速度として高速側制御応答速度を選択する手段とを備えたことを特徴とする車両の制動制御装置。 - 前記バッテリからの電力により運転される補機を備え、
前記制動状態推定手段が、急制動を推定したときに前記補機の消費電力を増大させる手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両の制動制御装置。 - 前記制動状態推定手段が急制動を推定したときに、前記モータの回生制動時の発電により前記補機の増大した電力を賄うように制御する手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の車両の制動制御装置。
- 前記制動状態推定手段は、自車と前方の物体との相対距離と相対速度に基づき制動状態を推定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車両の制動制御装置。
- 油圧により制動力を発生する機械式制動装置を備え、
前記モータの制御応答速度は、前記機械式制動装置の応答速度と略同等の低速側制御応答速度と、前記機械式制動装置の応答速度より速い高速側制御応答速度とからなることを特徴とする請求項1に記載の車両の制動制御装置。
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