JP2004134206A - 非水電解液二次電池用電極の製造方法及び該電極を用いた非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】充放電サイクルに伴う容量の維持率の低下を抑制でき長寿命の非水電解液二次電池用電極の製造方法を提供する。
【解決手段】塗布工程でマンガン酸リチウムと熱硬化開始温度Aが120°Cの熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂組成物とを含む正極合材をアルミニウム箔に塗布した。乾燥工程で乾燥温度aを120°Cとして乾燥させ、熱プレス工程で加熱温度bを120°Cとして熱プレスした後、熱処理工程で熱処理温度cを130°Cとして熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて正極を作製した。非晶質炭素と熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂組成物とを含む負極合材を圧延銅箔に塗布し、正極と同じ条件で乾燥、熱プレスし、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて負極を作製した。電極作製時のひび割れを防止し、合材と集電体との密着性を向上させる。
【選択図】 図1
【解決手段】塗布工程でマンガン酸リチウムと熱硬化開始温度Aが120°Cの熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂組成物とを含む正極合材をアルミニウム箔に塗布した。乾燥工程で乾燥温度aを120°Cとして乾燥させ、熱プレス工程で加熱温度bを120°Cとして熱プレスした後、熱処理工程で熱処理温度cを130°Cとして熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて正極を作製した。非晶質炭素と熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂組成物とを含む負極合材を圧延銅箔に塗布し、正極と同じ条件で乾燥、熱プレスし、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて負極を作製した。電極作製時のひび割れを防止し、合材と集電体との密着性を向上させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解液二次電池用電極の製造方法及び非水電解液二次電池に係り、特に、集電体に活物質と熱硬化性バインダ樹脂組成物とを含む合材を塗布した非水電解液二次電池用電極の製造方法及び該電極を用いた非水電解液二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
非水電解液二次電池を代表するリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度であるメリットを活かして、主にVTRカメラやノートパソコン、携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。この電池の内部構造は、通常以下に示されるような捲回式構造とされている。電極は正極、負極共に活物質が金属箔に塗着された帯状であり、セパレータを挟んで正極、負極が直接接触しないように断面が渦巻状に捲回され、捲回群を形成している。この捲回群が電池容器となる円筒状の電池缶に収容され、電解液注液後、封口されている。
【0003】
一般的な円筒型リチウムイオン二次電池の寸法は、18650型と呼ばれる、直径が18mm、高さ65mmであり、小形民生用リチウムイオン二次電池として広く普及している。18650型リチウムイオン二次電池の正極活物質には、高容量、長寿命を特徴とするコバルト酸リチウムが主として用いられており、電池容量は、おおむね1.3Ah〜1.8Ah、出力はおよそ10W程度である。
【0004】
一方、自動車産業界においては環境問題に対応すべく、排出ガスのない、動力源を完全に電池のみにした電気自動車や、内燃機関エンジンと電池との両方を動力源とするハイブリッド(電気)自動車の開発が加速され、一部実用化の段階にきている。
【0005】
電気自動車の電源となる電池には当然高容量、高出力、高エネルギー密度であることが要求され、電池の内部抵抗を低減することが重要となっており、この要求にマッチした電池としてリチウムイオン二次電池が注目されている。電気自動車の普及のためには、電池の低価格化が必須であり、そのためには、低コスト電池材料が求められ、例えば、正極活物質であれば、資源的に豊富なマンガンの酸化物が特に注目され、電池の高性能化を狙った改善がなされてきた。また、正極活物質合剤には、例えば、特開2001−222996号公報に開示されているように、一般に、正極活物質を結着するためにポリフッ化ビニリデンがバインダとして含有されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−222996号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非水電解液二次電池を電気自動車の電源として用いるには、高容量だけではなく、加速性能などを左右する高出力化が求められることは勿論のこと、電気自動車の長期の使用期間に対応すべく電池の長寿命化が強く求められる。ここでいう長寿命化は、電池容量のみならず、出力の維持率の低下を抑制し、電気自動車を走行させるに必要な電気エネルギー供給能力を長期の使用期間に亘って満足することである。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、充放電サイクルに伴う容量の維持率の低下を抑制でき長寿命の非水電解液二次電池用電極の製造方法及び該電極を用いた非水電解液二次電池を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、集電体に活物質と熱硬化性バインダ樹脂組成物とを含む合材を塗布した非水電解液二次電池用電極の製造方法であって、前記バインダ樹脂組成物の熱硬化開始温度をA°C、前記集電体に前記合材を塗布後の乾燥温度をa°Cとしたときに、(乾燥温度a)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で、前記非水電解液二次電池用電極を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本態様では、熱硬化性バインダ樹脂組成物を含む合材が塗布されるので、合材と集電体との密着性を向上させ非水電解液二次電池用電極を長寿命とすることができると共に、(乾燥温度a)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で電極が乾燥されるので、乾燥時のバインダ樹脂組成物の熱硬化が防止され、電極のヒビ割れ、剥がれ等の劣化を抑制することができる。電極は、正極若しくは負極、又は、その両方であってもよい。
【0011】
本態様において、乾燥工程後の熱プレス工程で、(加熱温度b)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で熱プレスすれば、熱プレス時のバインダ樹脂組成物の熱硬化が防止されるので、電極のヒビ割れ等の劣化を抑制することができる。また、熱プレス工程後の熱処理工程で、(熱硬化開始温度A)≦(熱処理温度c)の温度下でバインダ樹脂組成物を熱硬化させれば、高温での軟化が抑制されるので、高温でも合材と集電体との結着力を維持することができる。熱硬化性バインダ樹脂組成物は、熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂とアクリル樹脂系可塑剤とを含有するようにしてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様は、集電体に活物質と熱硬化性バインダ樹脂組成物とを含む合材が塗布された電極を用いた非水電解液二次電池であって、前記電極は、前記バインダ樹脂組成物の熱硬化開始温度をA°C、前記集電体に前記合材を塗布後の乾燥温度をa°Cとしたときに、(乾燥温度a)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で乾燥させたものであることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明を電気自動車の電源となる円筒型リチウムイオン電池の製造方法に適用した実施の形態について説明する。
【0014】
<製造方法>
<正極作製>
(準備工程)
リチウム遷移金属複酸化物のマンガン酸リチウム(LiMn2O4)粉末、導電材の黒鉛粉末(日本黒鉛工業(株)製、商品名:J−SP)及びアセチレンブラック(電気化学工業(株)製、商品名:デンカブラック)(以下、ABと略称する。)、並びに、バインダ(結着材)の熱硬化性可塑化ポリビニルアルコール樹脂組成物(以下、PVAと略称する。)を、マンガン酸リチウム89g、黒鉛粉末4.95g、AB0.75g、PVA5.3gの割合で配合し、均一になるよう混練した。この混練物に必要に応じて、分散溶媒のN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を加え、粘度を調整し、正極スラリ(正極合材)を作製した。
【0015】
PVAは、熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂からなる第一の樹脂成分と、アクリル樹脂系可塑剤からなる第二の樹脂成分とが、適当な溶媒中(例えば、NMP。)に混合溶解されているものを用いた。第一の樹脂成分である熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂は、平均重合度約2000程度のポリビニルアルコール系樹脂に、例えばコハク酸無水物等の環状酸無水物を、NMP等の有機溶剤中、トリエチルアミン等の触媒存在下で実質的に無水の状態で反応させて得られる。ポリビニルアルコール系樹脂と環状酸無水物の反応割合は、ポリビニルアルコール系樹脂のアルコール性ヒドロキシル基1当量に対し、環状酸無水物の無水物基が、約0.1当量とするのがよい。第二の樹脂成分であるアクリル樹脂系可塑剤は、ラウリルアクリレート/アクリル酸共重合物と二官能型エポキシ樹脂との反応物が相応しい。
【0016】
第一の樹脂成分は、次のようにして合成した。撹拌機、温度計、冷却管、留出管、窒素ガス導入管を装備したセパラブルフラスコに、けん化度約98%のポリビニルアルコール51g、NMP650g及びトルエン10gを投入し、窒素バブリングと撹拌をしながら約30分間かけて195°Cに昇温した。同温度で2時間保温し、トルエンを還流させることによって水分を共沸させ、フラスコ内の水分を留去させた。次いで、トルエンを留去して120°Cまで冷却し、同温度で保温しながら、コハク酸無水物7.7gを添加、1時間反応させた(ポリビニルアルコールのアルコール性ヒドロキシル基1当量に対し、酸無水物基が、約0.07当量)。室温まで冷却し、第一の樹脂成分が約8質量%のNMP溶液を得た。
【0017】
第二の樹脂成分は、次のようにして合成した。撹拌機、温度計、冷却管、留出管、窒素ガス導入管を装備したセパラブルフラスコに、重量平均分子量約3100の無溶剤型ラウリルアクリレート/アクリル酸共重合体を110gと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂71g(無溶剤型ラウリルアクリレート/アクリル酸共重合体のカルボキシル基1当量に対し、エポキシ基として約2当量)とを投入し、窒素バブリングと撹拌をしながら約15分間かけて150°Cに昇温した。同温度で2時間保温して反応を進めた後、NMP78gを添加、室温まで冷却して、第二の樹脂成分約70質量%のNMP溶液を得た。
【0018】
第一の樹脂成分8質量%のNMP溶液と第二の樹脂成分約70質量%のNMP溶液とを、それぞれの樹脂成分の質量換算で100:10の割合で混合し、PVAのNMP溶液を得た。得られたPVAの熱硬化開始温度A°Cは、120°Cである。
【0019】
(塗布工程)
図1に示すように、塗布工程では、ロールコータ(合材塗布装置)を用いて、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)に準備工程で作製した正極スラリを、後述する乾燥工程での乾燥後の重量で180g/m2となるようにほぼ均等に片面づつ両面に塗布する。このとき、正極長寸方向の一方の側縁に幅30mmの未塗布部を残す。なお、図1では、常温以上の温度条件のみを記載している。
【0020】
(乾燥工程)
次に、乾燥工程では、乾燥炉を用い、乾燥温度aをPVAの熱硬化開始温度A(120°C)以下の所定温度下で、正極合材を塗布した正極を乾燥させる(図1参照)。
【0021】
図2に示すように、乾燥炉30は、側断面が矩形状で長手方向の長さが約5mのチャンバを備えている。乾燥炉30内の下部位置には、長手方向と交差する複数の中空ローラ32が配設されている。中空ローラ32は、タイヤと同様に中心部が中空状とされた弾性機能を有しており、互いに平行に乾燥炉30のフレームに回転可能に軸支されている。中空ローラ32は、ギアやプーリを介して図示しないモータで駆動される。乾燥炉30の上流側には、上述したロールコータが配置されている。ロールコータから導出された電極31は、乾燥炉30に矢印D方向に搬入され、中空ローラ32に支持されて所定時間搬送された後、連続的に搬出される。乾燥炉30内には、図示を省略した熱源により所定温度に加熱された空気が風量1〜10m/minで導入されており、電極31は搬送スピード2〜10m/minで搬送される。このため、電極31は、乾燥炉30内で、所定温度に加熱空気にさらされることで、溶剤等を揮発放散して乾燥(溶媒除去)され、乾燥炉30の下流側に搬出される。なお、乾燥炉30内の雰囲気は、PVAの熱硬化開始温度A以下の乾燥温度aに保持される。
【0022】
(熱プレス工程)
次に、熱プレス工程では、熱プレス機を用い、加熱温度bをPVAの熱硬化開始温度A以下の温度下で、乾燥工程で乾燥させた正極を熱プレスする(図1参照)。なお、熱プレス機は、上述した乾燥炉30の下流側に配置されており、プレス圧(線圧)2×105〜7×105N/mで熱プレスすることで、正極を均一な厚みとする。
【0023】
図3に示すように、熱プレス機40は、矢印D方向に搬送される電極31と交差する方向に電極31を挟んで平行に配設されたプレスロール41a、41bが図示しないフレームに回転可能に軸支されている。プレスロール41a、41bは、ギアやプーリを介して図示しないモータで駆動され、互いに逆方向、すなわち、電極31の搬送方向と同一方向に回転される。乾燥炉30から搬出された電極31は、矢印D方向に搬送されプレスロール41a、41bの間を通過する。プレスロール41a、41bの内部にはヒータが内蔵されており、プレスロール41a、41bの表面は、PVAの熱硬化開始温度A以下の加熱温度bに保持される。このため、電極31は、プレスロール41a、41bにより加熱され一定の厚さにプレスされ、熱プレス機40の下流側に搬送される。なお、熱プレス後の正極は、正極合材層のかさ密度が2.65g/cm3となる。
【0024】
(裁断工程)
裁断工程では、裁断装置を用いて、熱プレス後の正極を、幅82mm、所定長さに裁断する。裁断装置は、上述した熱プレス機40の下流側に配置されており、セラミックス製の2枚の円形刃を固定したモータ駆動により回転される回転軸を有している。裁断工程では、裁断装置の刃の間隔を調整することで、正極を所定幅となるように幅方向両端が切断される。長さ方向の切断には、セラミックス製のハサミ状切断機が用いられる。
【0025】
(熱処理工程)
次に、熱処理工程では、裁断工程で裁断した正極を真空下で加熱し、正極のバインダに用いたPVAを熱硬化させる。熱処理工程では、PVAの熱硬化開始温度A以上の所定の熱処理温度cに保持された真空乾燥機内に、正極を16時間静置することで、PVAが熱硬化される(図1参照)。
【0026】
(リード片形成工程)
次いで、リード片形成工程では、正極側縁に残した未塗布部に切り欠きを入れ、切り欠き残部を正極リード片とする。リード片形成工程では、隣り合う正極リード片が50mm間隔、正極リード片の幅が5mmに切り欠かれる。
【0027】
<負極作製>
負極は、上述した正極の作製工程と同様の工程を経て作製される。以下、正極の作製工程と同一の工程についての説明を省略し、異なる箇所のみ説明する。
【0028】
準備工程では、非晶質炭素粉末(呉羽化学工業(株)製、商品名:カーボトロン)と、導電材の気相成長炭素繊維(昭和電工(株)製、商品名:VGCF)(以下、VGCFと略称する。)と、バインダのPVAのNMP希釈液とを、非晶質炭素88g、VGCF3g、PVA9gの割合で配合し、負極スラリ(負極合材)を作製する。塗布工程では、集電体に厚さ10μmの圧延銅箔を用い、乾燥工程での乾燥後の重量が90g/m2となるように負極合材を塗布する。熱プレス工程では、熱プレス後の負極合材層のかさ密度を1g/cm3とする。裁断工程では、負極を幅86mm、所定長さに裁断する。
【0029】
<電池作製>
図4に示すように、上述のように作製した正極と負極とを、これら両極が直接接触しないように幅90mm、厚さ40μmのポリエチレン製セパレータW5と共に捲回した。捲回の中心には、ポリプロピレン製の中空円筒状の軸芯1を用いた。このとき、正極リード片2と負極リード片3とが、それぞれ捲回群6の互いに反対側の両端面に位置するようにした。また、正極、負極、セパレータの長さを調整し、捲回群6の直径を38±0.1mmとした。
【0030】
正極リード片2を変形させ、その全てを、捲回群6の軸芯1のほぼ延長線上にある正極集電リング4の周囲から一体に張り出している鍔部周辺付近に集合、接触させた後、正極リード片2と鍔部周辺とを超音波溶接して正極リード片2を鍔部周面に接続した。一方、負極集電リング5と負極リード片3との接続操作も、正極集電リング4と正極リード片2との接続操作と同様に実施した。
【0031】
その後、正極集電リング4の鍔部周面全周に絶縁被覆を施した。この絶縁被覆には、基材がポリイミドで、その片面にヘキサメタアクリレートからなる粘着剤を塗布した粘着テープを用いた。この粘着テープを鍔部周面から捲回群6外周面に亘って一重以上巻いて絶縁被覆とし、捲回群6を電池容器7内に挿入した。電池容器7には、外形40mm、内径39mmでニッケルメッキが施されたスチール製の容器を用いた。
【0032】
負極集電リング5には予め電気的導通のための負極リード板8を溶接しておき、電池容器7に捲回群6を挿入後、電池容器7の底部と負極リード板8とを溶接した。
【0033】
一方、正極集電リング4には、予め複数枚のアルミニウム製のリボンを重ね合わせて構成した正極リード9を溶接しておき、正極リード9の他端を、電池容器7を封口するための電池蓋の下面に溶接した。電池蓋には、円筒型リチウムイオン電池20の内圧上昇に応じて開裂する内圧開放機構として開裂弁11が設けられている。開裂弁11の開裂圧は、約9×105Paに設定した。電池蓋は、蓋ケース12と、蓋キャップ13と、気密を保つ弁押え14と、開裂弁(内部ガス排出弁)11とで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12の周縁をカシメることによって組立てられている。
【0034】
非水電解液を所定量電池容器7内に注液し、その後、正極リード9を折りたたむようにして電池蓋で電池容器7に蓋をし、EPDM樹脂製ガスケット10を介してカシメて密封することにより円筒型リチウムイオン電池20を完成させた。
【0035】
非水電解液には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1:1の混合溶媒中へ6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解したものを用いた。
【0036】
<作用等>
次に、本実施形態の製造方法により作製した円筒型リチウムイオン電池20の作用等について説明する。
【0037】
従来使用されてきたバインダでは、電池の充放電に伴い、合材が集電体から剥離、脱落し易く、特に、負極集電体の圧延銅箔の表面が平滑なことから、負極合材の剥離、脱落が生じ易いため、電池性能を長期間維持することが難しかった。本実施形態では、準備工程で、正極及び負極のバインダにPVAが用いられる。このため、正極合材とアルミニウム箔との密着性及び負極合材と圧延銅箔との密着性が向上されるので、正極合材のアルミニウム箔からの剥離、脱落及び負極合材の圧延銅箔からの剥離、脱落を抑制することができる。従って、得られるリチウムイオン電池20では、充放電を繰り返しても電池性能を長期間維持することができる。
【0038】
また、本実施形態では、乾燥工程での乾燥温度aがPVAの熱硬化開始温度A以下(a≦A)とされ、熱プレス工程での加熱温度bが熱硬化開始温度A以下(b≦A)とされる。このため、乾燥工程及び熱プレス工程でのPVAの熱硬化が抑制されるので、電極作製時、特に、熱プレス時の電極のひび割れや剥がれ等の劣化を生じることなく電池を作製することができる。
【0039】
更に、従来のバインダのPVDFは、熱に対する軟化点が低いため、特に高温での充放電サイクルにより合材と集電体との密着性が低下し、合剤同士の導電ネットワークの崩壊が生じることから、電池性能の維持が難しかった。本実施形態では、バインダに熱硬化性のPVAが用いられ、熱処理工程での熱処理温度cが熱硬化開始温度A以上(A≦c)とされる。このため、熱処理工程でPVAが十分に熱硬化して高温にさらされても軟化が起こりにくくなり、高温環境下での充放電においても正極合材及び負極合材とそれぞれの集電体との密着性を維持することができる。従って、得られるリチウムイオン電池20では、合材の剥離、脱落等の電極の劣化による電池性能の低下が抑制されるので、高温環境下でも電池性能を長期間維持することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、電気自動車の電源に用いられるリチウムイオン電池20について例示したが、本発明は、電池の大きさ、電池容量には限定されるものではなく、電池容量としておおむね3Ah乃至100Ah程度の電池について、効果を著しく発揮することが確認されている。また、本実施形態では円筒型電池を例示したが、本発明は電池の形状についても限定されるものではなく、角形、その他の多角形の電池や正負極を積層した積層タイプの電池にも適用可能である。更に、本発明の適用可能な形状としては、上述した有底筒状容器(缶)に電池上蓋がカシメによって封口されている構造の電池以外であっても構わない。このような構造の一例として正負極外部端子が電池蓋を貫通し電池容器内で軸芯を介して正負極外部端子が押し合っている状態の電池を挙げることができる。また更に、円筒型リチウムイオン電池20には、電池温度の上昇に応じて電気的に作動する、例えば、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子や、電池内圧の上昇に応じて正極又は負極の電気的リードが切断される電流遮断機構を必要に応じて設けることができる。
【0041】
また、本実施形態では、熱硬化性バインダ樹脂組成物として熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂とアクリル樹脂系可塑剤とを混合して用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本実施形態で例示した熱硬化性ポリビニルアルコール樹脂組成物の熱硬化開始温度は120°Cであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂とアクリル樹脂系可塑剤との混合割合等により所望の熱硬化開始温度とすることができる。
【0042】
更に、本実施形態では、リチウムイオン電池20の正極にマンガン酸リチウム、負極に非晶質炭素、非水電解液にエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1:1の混合溶媒中へ6フッ化リン酸リチウムを1モル/リットル溶解したものを用いたが、本発明の電池には特に制限はなく、また、導電材も通常用いられているいずれのものも使用可能である。
【0043】
また更に、本発明で用いることのできる正極活物質としては、リチウムを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムを挿入したリチウム遷移金属複酸化物のリチウムマンガン複酸化物が好ましく、層状構造又はスピネル構造を有したマンガン酸リチウムや、結晶中のマンガンやリチウムの一部をそれら以外の例えば、Fe、Co、Ni、Cr、A1、Mg、等の元素で置換又はドープした材料、結晶中の酸素の一部をS、P等の元素で置換又はドープした材料を使用するようにしてもよい。また、コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムをベースにした遷移金属複合酸化物や、電池電圧として5V級が可能な、リチウムマンガン複酸化物を用いても、本発明の効果には変わりない。なお、一般に、マンガン酸リチウムは、炭酸リチウム等の適当なリチウム塩と二酸化マンガン等の酸化マンガンとを混合、焼成して合成することができるが、リチウム塩と酸化マンガンとの仕込み比を制御することによって所望のLi/Mn比とすることができる。
【0044】
更にまた、本発明で用いることのできる負極活物質の炭素材としても、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークス、非晶質炭素などの炭素質材料等でよく、その粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に制限されるものではない。
【0045】
また、本発明で用いることのできる非水電解液としては、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が挙げられる。用いられるリチウム塩や有機溶媒は特に制限されない。例えば、電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、CH3SO3Li、CF3SO3Li等やこれらの混合物を用いることができる。非水電解液有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエ−テル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等又はこれらの2種類以上の混合溶媒を用いるようにしてもよく、混合配合比についても限定されるものではない。
【0046】
【実施例】
次に、本実施形態に従って作製した円筒型リチウムイオン電池20の実施例について説明する。実施例1〜実施例11には、負極のバインダをPVAとし、正極のバインダにはPVAに代えてポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFという。)を用いた電池を、実施例12〜実施例22には、正極のバインダをPVAとし、負極のバインダにPVDFを用いた電池を、実施例23には、正負極のバインダにPVAを用いた電池をそれぞれ示す。なお、比較のために作製した比較例の電池についても併記する。
【0047】
(実施例1)
下表1に示すように、実施例1では、正極バインダにPVDFを、負極バインダにPVAをそれぞれ用いた。負極の乾燥温度aを100°Cとし、加熱温度bを120°Cとし、熱処理を行わずに負極を作製した。正極の乾燥温度aを120°Cとし、加熱温度bを120°Cとした。
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例2〜3)
表1に示すように、実施例2〜実施例3では、負極の乾燥温度aを変える以外は、実施例1と同様にした。実施例2では110°Cとし、実施例3では120°Cとした。
【0050】
(実施例4〜7)
表1に示すように、実施例4〜実施例7では、負極の加熱温度bを変える以外は、実施例3と同様にした。実施例4では25°Cとし、実施例5では100°Cとし、実施例6では130°Cとし、実施例7では140°Cとした。
【0051】
(実施例8〜11)
表1に示すように、実施例8〜実施例11では、負極の熱処理温度cを変えて熱処理を行う以外は、実施例3と同様にした。実施例8では110°Cとし、実施例9では120°Cとし、実施例10では130°Cとし、実施例11では150°Cとした。
【0052】
(実施例12)
表1に示すように、実施例12では、正極バインダにPVAを、負極バインダにPVDFをそれぞれ用いた。正極の乾燥温度aを100°Cとし、加熱温度bを120°Cとし、熱処理を行わずに正極を作製した。負極の乾燥温度aを120°Cとし、加熱温度bを120°Cとした。
【0053】
(実施例13〜14)
表1に示すように、実施例13〜実施例14では、正極の乾燥温度aを変える以外は、実施例12と同様にした。実施例13では110°Cとし、実施例14では120°Cとした。
【0054】
(実施例15〜18)
表1に示すように、実施例15〜実施例18では、正極の加熱温度bを変える以外は、実施例14と同様にした。実施例15では25°Cとし、実施例16では100°Cとし、実施例17では130°Cとし、実施例18では140°Cとした。
【0055】
(実施例19〜22)
表1に示すように、実施例19〜実施例22では、正極の熱処理温度cを変えて熱処理を行う以外は、実施例14と同様にした。実施例19では110°Cとし、実施例20では120°Cとし、実施例21では130°Cとし、実施例22では150°Cとした。
【0056】
(実施例23)
表1に示すように、実施例23では、正極及び負極のバインダにPVAを用いた。正極は実施例21の正極と同様に作製し、負極は実施例10の負極と同様に作製し、電池を作製した。
【0057】
(比較例1)
表1に示すように、比較例1では、正極及び負極のバインダにPVDFを用いた。正極の乾燥温度aを120°C、加熱温度bを120°Cとし、負極の乾燥温度aを120°C、加熱温度bを120°Cとした。
【0058】
(比較例2〜3)
表1に示すように、比較例2〜比較例3では、負極の乾燥温度aを変える以外は実施例1と同様にした。比較例2では130°Cとし、比較例3では140°Cとした。
【0059】
(比較例4〜5)
表1に示すように、比較例4〜比較例5では、正極の乾燥温度aを変える以外は実施例12と同様にした。比較例4では130°Cとし、比較例5では140°Cとした。
【0060】
<試験・評価>
次に、以上のようにして作製した実施例及び比較例の各電池及び電極作製中に採取した正極、負極の試料について、以下の一連の試験を実施した。
【0061】
正極、負極の試料は、上述した熱処理工程後に採取した。それぞれの電極を、直径1cmの丸棒に沿わせて屈曲させる折り曲げ試験を実施した。下表2に電極の状態を目視にて判定した結果を示す。なお、表2において、電極状態の良好なものを○印、わずかにスジが認められるもの又はヒビが多いものを△印、合材が剥がれたものを×印で示している。
【0062】
各電池については、充電した後放電し、初期の放電容量を測定した。充電条件は、4.2V定電圧、制限電流5A、4.5時間とした。放電条件は、5A定電流、終止電圧2.7Vとした。
【0063】
次に、各電池を50°Cの恒温槽に入れ、上述した条件で充放電を500回繰り返した後、同様にして放電容量を測定した。初期の放電容量に対する500回後の放電容量の割合を百分率で求め、放電容量維持率とした。放電容量の測定は、いずれも環境温度25±1°Cの雰囲気下で行った。下表2に放電容量維持率の結果を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表2に示すように、正極のバインダにPVDFを用い、負極のバインダにPVAを用いた電池の場合に、負極の乾燥温度aが、PVAの熱硬化開始温度Aの120°Cを超える130°C、140°Cとした比較例2及び比較例3の電池では、電極の状態が悪く、放電容量維持率も低かったのに対し、乾燥温度aを100〜120°Cとした実施例1〜実施例3の電池では、良好な電極状態であり、容量維持率も優れていた。また、加熱温度bが、130°C、140°Cの実施例6及び実施例7の電池では、電極状態が悪く、容量維持率が低下するのに対し、加熱温度bを25°C、100°Cとした実施例4及び実施例5の電池では、容量維持率が高くなった。更に、熱処理を行った実施例8〜実施例11の電池では、容量維持率が向上し、特に、熱処理温度cを120〜150°Cとした実施例9〜実施例11の電池では、85%以上の容量維持率を示した。
【0066】
また、正極のバインダにPVAを用い、負極のバインダにPVDFを用いた電池の場合に、正極の乾燥温度aを100〜120°Cとした実施例12〜実施例14の電池では、乾燥温度aを130°C、140°Cとした比較例4及び比較例5の電池より高い容量維持率を示した。また、正極の加熱温度bを25°C、100°Cとした実施例15及び実施例16の電池では、加熱温度bを130°C、140°Cとした実施例17及び実施例18の電池より高い容量維持率を示した。更に、熱処理を行うことで容量維持率が向上し、特に、熱処理温度cを120〜150°Cとした実施例20〜実施例22の電池が優れた容量維持率を示した。
【0067】
更に、正極及び負極のバインダにPVAを用いた電池の場合に、正極、負極共に乾燥温度aを120°Cとし、加熱温度bを120°Cとし、熱処理温度cを130°Cとした実施例23の電池では、容量維持率が94%の極めて高い結果を示した。
【0068】
本実施形態のリチウムイオン電池20では、正極及び負極の少なくとも一方のバインダにPVAを用いることで、電極と集電体との密着性が向上されるため、容量維持率の低下を抑制することができた。また、乾燥温度aをa≦Aとし、加熱温度bをb≦Aとすることで、乾燥時及び熱プレス時の熱硬化が抑制されるので、電極のヒビ割れ、剥がれを生じることなく電極を作製することができた。更に、熱処理温度cをA≦cとすることで、PVAが確実に熱硬化されるので、高温下でも合材と集電体との結着力を維持することができた。従って、高温で充放電を繰り返しても、合材の集電体からの剥離、脱落が防止されるので、容量維持率の低下を抑制することができ、長寿命の電池を実現することができた。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、熱硬化性バインダ樹脂組成物を含む合材が塗布されるので、合材と集電体との密着性を向上させ非水電解液二次電池用電極を長寿命とすることができると共に、(乾燥温度a)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で電極が乾燥されるので、乾燥時のバインダ樹脂組成物の熱硬化が防止され、電極のヒビ割れ、剥がれ等の劣化を抑制することができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の非水電解液二次電池用電極の製造工程の要部を示す工程図である。
【図2】実施形態の非水電解液二次電池用電極の製造に用いられる乾燥炉を模式的に示す側断面図である。
【図3】実施形態の非水電解液二次電池用電極の製造に用いられるプレス機を模式的に示す側断面図である。
【図4】実施形態の製造工程を経て作製した円筒型リチウムイオン電池の断面図である。
【符号の説明】
6 捲回群
20 円筒型リチウムイオン電池(非水電解液二次電池)
W2 正極合材
W4 負極合材
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解液二次電池用電極の製造方法及び非水電解液二次電池に係り、特に、集電体に活物質と熱硬化性バインダ樹脂組成物とを含む合材を塗布した非水電解液二次電池用電極の製造方法及び該電極を用いた非水電解液二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
非水電解液二次電池を代表するリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度であるメリットを活かして、主にVTRカメラやノートパソコン、携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。この電池の内部構造は、通常以下に示されるような捲回式構造とされている。電極は正極、負極共に活物質が金属箔に塗着された帯状であり、セパレータを挟んで正極、負極が直接接触しないように断面が渦巻状に捲回され、捲回群を形成している。この捲回群が電池容器となる円筒状の電池缶に収容され、電解液注液後、封口されている。
【0003】
一般的な円筒型リチウムイオン二次電池の寸法は、18650型と呼ばれる、直径が18mm、高さ65mmであり、小形民生用リチウムイオン二次電池として広く普及している。18650型リチウムイオン二次電池の正極活物質には、高容量、長寿命を特徴とするコバルト酸リチウムが主として用いられており、電池容量は、おおむね1.3Ah〜1.8Ah、出力はおよそ10W程度である。
【0004】
一方、自動車産業界においては環境問題に対応すべく、排出ガスのない、動力源を完全に電池のみにした電気自動車や、内燃機関エンジンと電池との両方を動力源とするハイブリッド(電気)自動車の開発が加速され、一部実用化の段階にきている。
【0005】
電気自動車の電源となる電池には当然高容量、高出力、高エネルギー密度であることが要求され、電池の内部抵抗を低減することが重要となっており、この要求にマッチした電池としてリチウムイオン二次電池が注目されている。電気自動車の普及のためには、電池の低価格化が必須であり、そのためには、低コスト電池材料が求められ、例えば、正極活物質であれば、資源的に豊富なマンガンの酸化物が特に注目され、電池の高性能化を狙った改善がなされてきた。また、正極活物質合剤には、例えば、特開2001−222996号公報に開示されているように、一般に、正極活物質を結着するためにポリフッ化ビニリデンがバインダとして含有されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−222996号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非水電解液二次電池を電気自動車の電源として用いるには、高容量だけではなく、加速性能などを左右する高出力化が求められることは勿論のこと、電気自動車の長期の使用期間に対応すべく電池の長寿命化が強く求められる。ここでいう長寿命化は、電池容量のみならず、出力の維持率の低下を抑制し、電気自動車を走行させるに必要な電気エネルギー供給能力を長期の使用期間に亘って満足することである。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、充放電サイクルに伴う容量の維持率の低下を抑制でき長寿命の非水電解液二次電池用電極の製造方法及び該電極を用いた非水電解液二次電池を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、集電体に活物質と熱硬化性バインダ樹脂組成物とを含む合材を塗布した非水電解液二次電池用電極の製造方法であって、前記バインダ樹脂組成物の熱硬化開始温度をA°C、前記集電体に前記合材を塗布後の乾燥温度をa°Cとしたときに、(乾燥温度a)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で、前記非水電解液二次電池用電極を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本態様では、熱硬化性バインダ樹脂組成物を含む合材が塗布されるので、合材と集電体との密着性を向上させ非水電解液二次電池用電極を長寿命とすることができると共に、(乾燥温度a)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で電極が乾燥されるので、乾燥時のバインダ樹脂組成物の熱硬化が防止され、電極のヒビ割れ、剥がれ等の劣化を抑制することができる。電極は、正極若しくは負極、又は、その両方であってもよい。
【0011】
本態様において、乾燥工程後の熱プレス工程で、(加熱温度b)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で熱プレスすれば、熱プレス時のバインダ樹脂組成物の熱硬化が防止されるので、電極のヒビ割れ等の劣化を抑制することができる。また、熱プレス工程後の熱処理工程で、(熱硬化開始温度A)≦(熱処理温度c)の温度下でバインダ樹脂組成物を熱硬化させれば、高温での軟化が抑制されるので、高温でも合材と集電体との結着力を維持することができる。熱硬化性バインダ樹脂組成物は、熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂とアクリル樹脂系可塑剤とを含有するようにしてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様は、集電体に活物質と熱硬化性バインダ樹脂組成物とを含む合材が塗布された電極を用いた非水電解液二次電池であって、前記電極は、前記バインダ樹脂組成物の熱硬化開始温度をA°C、前記集電体に前記合材を塗布後の乾燥温度をa°Cとしたときに、(乾燥温度a)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で乾燥させたものであることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明を電気自動車の電源となる円筒型リチウムイオン電池の製造方法に適用した実施の形態について説明する。
【0014】
<製造方法>
<正極作製>
(準備工程)
リチウム遷移金属複酸化物のマンガン酸リチウム(LiMn2O4)粉末、導電材の黒鉛粉末(日本黒鉛工業(株)製、商品名:J−SP)及びアセチレンブラック(電気化学工業(株)製、商品名:デンカブラック)(以下、ABと略称する。)、並びに、バインダ(結着材)の熱硬化性可塑化ポリビニルアルコール樹脂組成物(以下、PVAと略称する。)を、マンガン酸リチウム89g、黒鉛粉末4.95g、AB0.75g、PVA5.3gの割合で配合し、均一になるよう混練した。この混練物に必要に応じて、分散溶媒のN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を加え、粘度を調整し、正極スラリ(正極合材)を作製した。
【0015】
PVAは、熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂からなる第一の樹脂成分と、アクリル樹脂系可塑剤からなる第二の樹脂成分とが、適当な溶媒中(例えば、NMP。)に混合溶解されているものを用いた。第一の樹脂成分である熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂は、平均重合度約2000程度のポリビニルアルコール系樹脂に、例えばコハク酸無水物等の環状酸無水物を、NMP等の有機溶剤中、トリエチルアミン等の触媒存在下で実質的に無水の状態で反応させて得られる。ポリビニルアルコール系樹脂と環状酸無水物の反応割合は、ポリビニルアルコール系樹脂のアルコール性ヒドロキシル基1当量に対し、環状酸無水物の無水物基が、約0.1当量とするのがよい。第二の樹脂成分であるアクリル樹脂系可塑剤は、ラウリルアクリレート/アクリル酸共重合物と二官能型エポキシ樹脂との反応物が相応しい。
【0016】
第一の樹脂成分は、次のようにして合成した。撹拌機、温度計、冷却管、留出管、窒素ガス導入管を装備したセパラブルフラスコに、けん化度約98%のポリビニルアルコール51g、NMP650g及びトルエン10gを投入し、窒素バブリングと撹拌をしながら約30分間かけて195°Cに昇温した。同温度で2時間保温し、トルエンを還流させることによって水分を共沸させ、フラスコ内の水分を留去させた。次いで、トルエンを留去して120°Cまで冷却し、同温度で保温しながら、コハク酸無水物7.7gを添加、1時間反応させた(ポリビニルアルコールのアルコール性ヒドロキシル基1当量に対し、酸無水物基が、約0.07当量)。室温まで冷却し、第一の樹脂成分が約8質量%のNMP溶液を得た。
【0017】
第二の樹脂成分は、次のようにして合成した。撹拌機、温度計、冷却管、留出管、窒素ガス導入管を装備したセパラブルフラスコに、重量平均分子量約3100の無溶剤型ラウリルアクリレート/アクリル酸共重合体を110gと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂71g(無溶剤型ラウリルアクリレート/アクリル酸共重合体のカルボキシル基1当量に対し、エポキシ基として約2当量)とを投入し、窒素バブリングと撹拌をしながら約15分間かけて150°Cに昇温した。同温度で2時間保温して反応を進めた後、NMP78gを添加、室温まで冷却して、第二の樹脂成分約70質量%のNMP溶液を得た。
【0018】
第一の樹脂成分8質量%のNMP溶液と第二の樹脂成分約70質量%のNMP溶液とを、それぞれの樹脂成分の質量換算で100:10の割合で混合し、PVAのNMP溶液を得た。得られたPVAの熱硬化開始温度A°Cは、120°Cである。
【0019】
(塗布工程)
図1に示すように、塗布工程では、ロールコータ(合材塗布装置)を用いて、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)に準備工程で作製した正極スラリを、後述する乾燥工程での乾燥後の重量で180g/m2となるようにほぼ均等に片面づつ両面に塗布する。このとき、正極長寸方向の一方の側縁に幅30mmの未塗布部を残す。なお、図1では、常温以上の温度条件のみを記載している。
【0020】
(乾燥工程)
次に、乾燥工程では、乾燥炉を用い、乾燥温度aをPVAの熱硬化開始温度A(120°C)以下の所定温度下で、正極合材を塗布した正極を乾燥させる(図1参照)。
【0021】
図2に示すように、乾燥炉30は、側断面が矩形状で長手方向の長さが約5mのチャンバを備えている。乾燥炉30内の下部位置には、長手方向と交差する複数の中空ローラ32が配設されている。中空ローラ32は、タイヤと同様に中心部が中空状とされた弾性機能を有しており、互いに平行に乾燥炉30のフレームに回転可能に軸支されている。中空ローラ32は、ギアやプーリを介して図示しないモータで駆動される。乾燥炉30の上流側には、上述したロールコータが配置されている。ロールコータから導出された電極31は、乾燥炉30に矢印D方向に搬入され、中空ローラ32に支持されて所定時間搬送された後、連続的に搬出される。乾燥炉30内には、図示を省略した熱源により所定温度に加熱された空気が風量1〜10m/minで導入されており、電極31は搬送スピード2〜10m/minで搬送される。このため、電極31は、乾燥炉30内で、所定温度に加熱空気にさらされることで、溶剤等を揮発放散して乾燥(溶媒除去)され、乾燥炉30の下流側に搬出される。なお、乾燥炉30内の雰囲気は、PVAの熱硬化開始温度A以下の乾燥温度aに保持される。
【0022】
(熱プレス工程)
次に、熱プレス工程では、熱プレス機を用い、加熱温度bをPVAの熱硬化開始温度A以下の温度下で、乾燥工程で乾燥させた正極を熱プレスする(図1参照)。なお、熱プレス機は、上述した乾燥炉30の下流側に配置されており、プレス圧(線圧)2×105〜7×105N/mで熱プレスすることで、正極を均一な厚みとする。
【0023】
図3に示すように、熱プレス機40は、矢印D方向に搬送される電極31と交差する方向に電極31を挟んで平行に配設されたプレスロール41a、41bが図示しないフレームに回転可能に軸支されている。プレスロール41a、41bは、ギアやプーリを介して図示しないモータで駆動され、互いに逆方向、すなわち、電極31の搬送方向と同一方向に回転される。乾燥炉30から搬出された電極31は、矢印D方向に搬送されプレスロール41a、41bの間を通過する。プレスロール41a、41bの内部にはヒータが内蔵されており、プレスロール41a、41bの表面は、PVAの熱硬化開始温度A以下の加熱温度bに保持される。このため、電極31は、プレスロール41a、41bにより加熱され一定の厚さにプレスされ、熱プレス機40の下流側に搬送される。なお、熱プレス後の正極は、正極合材層のかさ密度が2.65g/cm3となる。
【0024】
(裁断工程)
裁断工程では、裁断装置を用いて、熱プレス後の正極を、幅82mm、所定長さに裁断する。裁断装置は、上述した熱プレス機40の下流側に配置されており、セラミックス製の2枚の円形刃を固定したモータ駆動により回転される回転軸を有している。裁断工程では、裁断装置の刃の間隔を調整することで、正極を所定幅となるように幅方向両端が切断される。長さ方向の切断には、セラミックス製のハサミ状切断機が用いられる。
【0025】
(熱処理工程)
次に、熱処理工程では、裁断工程で裁断した正極を真空下で加熱し、正極のバインダに用いたPVAを熱硬化させる。熱処理工程では、PVAの熱硬化開始温度A以上の所定の熱処理温度cに保持された真空乾燥機内に、正極を16時間静置することで、PVAが熱硬化される(図1参照)。
【0026】
(リード片形成工程)
次いで、リード片形成工程では、正極側縁に残した未塗布部に切り欠きを入れ、切り欠き残部を正極リード片とする。リード片形成工程では、隣り合う正極リード片が50mm間隔、正極リード片の幅が5mmに切り欠かれる。
【0027】
<負極作製>
負極は、上述した正極の作製工程と同様の工程を経て作製される。以下、正極の作製工程と同一の工程についての説明を省略し、異なる箇所のみ説明する。
【0028】
準備工程では、非晶質炭素粉末(呉羽化学工業(株)製、商品名:カーボトロン)と、導電材の気相成長炭素繊維(昭和電工(株)製、商品名:VGCF)(以下、VGCFと略称する。)と、バインダのPVAのNMP希釈液とを、非晶質炭素88g、VGCF3g、PVA9gの割合で配合し、負極スラリ(負極合材)を作製する。塗布工程では、集電体に厚さ10μmの圧延銅箔を用い、乾燥工程での乾燥後の重量が90g/m2となるように負極合材を塗布する。熱プレス工程では、熱プレス後の負極合材層のかさ密度を1g/cm3とする。裁断工程では、負極を幅86mm、所定長さに裁断する。
【0029】
<電池作製>
図4に示すように、上述のように作製した正極と負極とを、これら両極が直接接触しないように幅90mm、厚さ40μmのポリエチレン製セパレータW5と共に捲回した。捲回の中心には、ポリプロピレン製の中空円筒状の軸芯1を用いた。このとき、正極リード片2と負極リード片3とが、それぞれ捲回群6の互いに反対側の両端面に位置するようにした。また、正極、負極、セパレータの長さを調整し、捲回群6の直径を38±0.1mmとした。
【0030】
正極リード片2を変形させ、その全てを、捲回群6の軸芯1のほぼ延長線上にある正極集電リング4の周囲から一体に張り出している鍔部周辺付近に集合、接触させた後、正極リード片2と鍔部周辺とを超音波溶接して正極リード片2を鍔部周面に接続した。一方、負極集電リング5と負極リード片3との接続操作も、正極集電リング4と正極リード片2との接続操作と同様に実施した。
【0031】
その後、正極集電リング4の鍔部周面全周に絶縁被覆を施した。この絶縁被覆には、基材がポリイミドで、その片面にヘキサメタアクリレートからなる粘着剤を塗布した粘着テープを用いた。この粘着テープを鍔部周面から捲回群6外周面に亘って一重以上巻いて絶縁被覆とし、捲回群6を電池容器7内に挿入した。電池容器7には、外形40mm、内径39mmでニッケルメッキが施されたスチール製の容器を用いた。
【0032】
負極集電リング5には予め電気的導通のための負極リード板8を溶接しておき、電池容器7に捲回群6を挿入後、電池容器7の底部と負極リード板8とを溶接した。
【0033】
一方、正極集電リング4には、予め複数枚のアルミニウム製のリボンを重ね合わせて構成した正極リード9を溶接しておき、正極リード9の他端を、電池容器7を封口するための電池蓋の下面に溶接した。電池蓋には、円筒型リチウムイオン電池20の内圧上昇に応じて開裂する内圧開放機構として開裂弁11が設けられている。開裂弁11の開裂圧は、約9×105Paに設定した。電池蓋は、蓋ケース12と、蓋キャップ13と、気密を保つ弁押え14と、開裂弁(内部ガス排出弁)11とで構成されており、これらが積層されて蓋ケース12の周縁をカシメることによって組立てられている。
【0034】
非水電解液を所定量電池容器7内に注液し、その後、正極リード9を折りたたむようにして電池蓋で電池容器7に蓋をし、EPDM樹脂製ガスケット10を介してカシメて密封することにより円筒型リチウムイオン電池20を完成させた。
【0035】
非水電解液には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1:1の混合溶媒中へ6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解したものを用いた。
【0036】
<作用等>
次に、本実施形態の製造方法により作製した円筒型リチウムイオン電池20の作用等について説明する。
【0037】
従来使用されてきたバインダでは、電池の充放電に伴い、合材が集電体から剥離、脱落し易く、特に、負極集電体の圧延銅箔の表面が平滑なことから、負極合材の剥離、脱落が生じ易いため、電池性能を長期間維持することが難しかった。本実施形態では、準備工程で、正極及び負極のバインダにPVAが用いられる。このため、正極合材とアルミニウム箔との密着性及び負極合材と圧延銅箔との密着性が向上されるので、正極合材のアルミニウム箔からの剥離、脱落及び負極合材の圧延銅箔からの剥離、脱落を抑制することができる。従って、得られるリチウムイオン電池20では、充放電を繰り返しても電池性能を長期間維持することができる。
【0038】
また、本実施形態では、乾燥工程での乾燥温度aがPVAの熱硬化開始温度A以下(a≦A)とされ、熱プレス工程での加熱温度bが熱硬化開始温度A以下(b≦A)とされる。このため、乾燥工程及び熱プレス工程でのPVAの熱硬化が抑制されるので、電極作製時、特に、熱プレス時の電極のひび割れや剥がれ等の劣化を生じることなく電池を作製することができる。
【0039】
更に、従来のバインダのPVDFは、熱に対する軟化点が低いため、特に高温での充放電サイクルにより合材と集電体との密着性が低下し、合剤同士の導電ネットワークの崩壊が生じることから、電池性能の維持が難しかった。本実施形態では、バインダに熱硬化性のPVAが用いられ、熱処理工程での熱処理温度cが熱硬化開始温度A以上(A≦c)とされる。このため、熱処理工程でPVAが十分に熱硬化して高温にさらされても軟化が起こりにくくなり、高温環境下での充放電においても正極合材及び負極合材とそれぞれの集電体との密着性を維持することができる。従って、得られるリチウムイオン電池20では、合材の剥離、脱落等の電極の劣化による電池性能の低下が抑制されるので、高温環境下でも電池性能を長期間維持することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、電気自動車の電源に用いられるリチウムイオン電池20について例示したが、本発明は、電池の大きさ、電池容量には限定されるものではなく、電池容量としておおむね3Ah乃至100Ah程度の電池について、効果を著しく発揮することが確認されている。また、本実施形態では円筒型電池を例示したが、本発明は電池の形状についても限定されるものではなく、角形、その他の多角形の電池や正負極を積層した積層タイプの電池にも適用可能である。更に、本発明の適用可能な形状としては、上述した有底筒状容器(缶)に電池上蓋がカシメによって封口されている構造の電池以外であっても構わない。このような構造の一例として正負極外部端子が電池蓋を貫通し電池容器内で軸芯を介して正負極外部端子が押し合っている状態の電池を挙げることができる。また更に、円筒型リチウムイオン電池20には、電池温度の上昇に応じて電気的に作動する、例えば、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子や、電池内圧の上昇に応じて正極又は負極の電気的リードが切断される電流遮断機構を必要に応じて設けることができる。
【0041】
また、本実施形態では、熱硬化性バインダ樹脂組成物として熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂とアクリル樹脂系可塑剤とを混合して用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本実施形態で例示した熱硬化性ポリビニルアルコール樹脂組成物の熱硬化開始温度は120°Cであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂とアクリル樹脂系可塑剤との混合割合等により所望の熱硬化開始温度とすることができる。
【0042】
更に、本実施形態では、リチウムイオン電池20の正極にマンガン酸リチウム、負極に非晶質炭素、非水電解液にエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1:1の混合溶媒中へ6フッ化リン酸リチウムを1モル/リットル溶解したものを用いたが、本発明の電池には特に制限はなく、また、導電材も通常用いられているいずれのものも使用可能である。
【0043】
また更に、本発明で用いることのできる正極活物質としては、リチウムを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムを挿入したリチウム遷移金属複酸化物のリチウムマンガン複酸化物が好ましく、層状構造又はスピネル構造を有したマンガン酸リチウムや、結晶中のマンガンやリチウムの一部をそれら以外の例えば、Fe、Co、Ni、Cr、A1、Mg、等の元素で置換又はドープした材料、結晶中の酸素の一部をS、P等の元素で置換又はドープした材料を使用するようにしてもよい。また、コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムをベースにした遷移金属複合酸化物や、電池電圧として5V級が可能な、リチウムマンガン複酸化物を用いても、本発明の効果には変わりない。なお、一般に、マンガン酸リチウムは、炭酸リチウム等の適当なリチウム塩と二酸化マンガン等の酸化マンガンとを混合、焼成して合成することができるが、リチウム塩と酸化マンガンとの仕込み比を制御することによって所望のLi/Mn比とすることができる。
【0044】
更にまた、本発明で用いることのできる負極活物質の炭素材としても、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークス、非晶質炭素などの炭素質材料等でよく、その粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に制限されるものではない。
【0045】
また、本発明で用いることのできる非水電解液としては、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が挙げられる。用いられるリチウム塩や有機溶媒は特に制限されない。例えば、電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、CH3SO3Li、CF3SO3Li等やこれらの混合物を用いることができる。非水電解液有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエ−テル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等又はこれらの2種類以上の混合溶媒を用いるようにしてもよく、混合配合比についても限定されるものではない。
【0046】
【実施例】
次に、本実施形態に従って作製した円筒型リチウムイオン電池20の実施例について説明する。実施例1〜実施例11には、負極のバインダをPVAとし、正極のバインダにはPVAに代えてポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFという。)を用いた電池を、実施例12〜実施例22には、正極のバインダをPVAとし、負極のバインダにPVDFを用いた電池を、実施例23には、正負極のバインダにPVAを用いた電池をそれぞれ示す。なお、比較のために作製した比較例の電池についても併記する。
【0047】
(実施例1)
下表1に示すように、実施例1では、正極バインダにPVDFを、負極バインダにPVAをそれぞれ用いた。負極の乾燥温度aを100°Cとし、加熱温度bを120°Cとし、熱処理を行わずに負極を作製した。正極の乾燥温度aを120°Cとし、加熱温度bを120°Cとした。
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例2〜3)
表1に示すように、実施例2〜実施例3では、負極の乾燥温度aを変える以外は、実施例1と同様にした。実施例2では110°Cとし、実施例3では120°Cとした。
【0050】
(実施例4〜7)
表1に示すように、実施例4〜実施例7では、負極の加熱温度bを変える以外は、実施例3と同様にした。実施例4では25°Cとし、実施例5では100°Cとし、実施例6では130°Cとし、実施例7では140°Cとした。
【0051】
(実施例8〜11)
表1に示すように、実施例8〜実施例11では、負極の熱処理温度cを変えて熱処理を行う以外は、実施例3と同様にした。実施例8では110°Cとし、実施例9では120°Cとし、実施例10では130°Cとし、実施例11では150°Cとした。
【0052】
(実施例12)
表1に示すように、実施例12では、正極バインダにPVAを、負極バインダにPVDFをそれぞれ用いた。正極の乾燥温度aを100°Cとし、加熱温度bを120°Cとし、熱処理を行わずに正極を作製した。負極の乾燥温度aを120°Cとし、加熱温度bを120°Cとした。
【0053】
(実施例13〜14)
表1に示すように、実施例13〜実施例14では、正極の乾燥温度aを変える以外は、実施例12と同様にした。実施例13では110°Cとし、実施例14では120°Cとした。
【0054】
(実施例15〜18)
表1に示すように、実施例15〜実施例18では、正極の加熱温度bを変える以外は、実施例14と同様にした。実施例15では25°Cとし、実施例16では100°Cとし、実施例17では130°Cとし、実施例18では140°Cとした。
【0055】
(実施例19〜22)
表1に示すように、実施例19〜実施例22では、正極の熱処理温度cを変えて熱処理を行う以外は、実施例14と同様にした。実施例19では110°Cとし、実施例20では120°Cとし、実施例21では130°Cとし、実施例22では150°Cとした。
【0056】
(実施例23)
表1に示すように、実施例23では、正極及び負極のバインダにPVAを用いた。正極は実施例21の正極と同様に作製し、負極は実施例10の負極と同様に作製し、電池を作製した。
【0057】
(比較例1)
表1に示すように、比較例1では、正極及び負極のバインダにPVDFを用いた。正極の乾燥温度aを120°C、加熱温度bを120°Cとし、負極の乾燥温度aを120°C、加熱温度bを120°Cとした。
【0058】
(比較例2〜3)
表1に示すように、比較例2〜比較例3では、負極の乾燥温度aを変える以外は実施例1と同様にした。比較例2では130°Cとし、比較例3では140°Cとした。
【0059】
(比較例4〜5)
表1に示すように、比較例4〜比較例5では、正極の乾燥温度aを変える以外は実施例12と同様にした。比較例4では130°Cとし、比較例5では140°Cとした。
【0060】
<試験・評価>
次に、以上のようにして作製した実施例及び比較例の各電池及び電極作製中に採取した正極、負極の試料について、以下の一連の試験を実施した。
【0061】
正極、負極の試料は、上述した熱処理工程後に採取した。それぞれの電極を、直径1cmの丸棒に沿わせて屈曲させる折り曲げ試験を実施した。下表2に電極の状態を目視にて判定した結果を示す。なお、表2において、電極状態の良好なものを○印、わずかにスジが認められるもの又はヒビが多いものを△印、合材が剥がれたものを×印で示している。
【0062】
各電池については、充電した後放電し、初期の放電容量を測定した。充電条件は、4.2V定電圧、制限電流5A、4.5時間とした。放電条件は、5A定電流、終止電圧2.7Vとした。
【0063】
次に、各電池を50°Cの恒温槽に入れ、上述した条件で充放電を500回繰り返した後、同様にして放電容量を測定した。初期の放電容量に対する500回後の放電容量の割合を百分率で求め、放電容量維持率とした。放電容量の測定は、いずれも環境温度25±1°Cの雰囲気下で行った。下表2に放電容量維持率の結果を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表2に示すように、正極のバインダにPVDFを用い、負極のバインダにPVAを用いた電池の場合に、負極の乾燥温度aが、PVAの熱硬化開始温度Aの120°Cを超える130°C、140°Cとした比較例2及び比較例3の電池では、電極の状態が悪く、放電容量維持率も低かったのに対し、乾燥温度aを100〜120°Cとした実施例1〜実施例3の電池では、良好な電極状態であり、容量維持率も優れていた。また、加熱温度bが、130°C、140°Cの実施例6及び実施例7の電池では、電極状態が悪く、容量維持率が低下するのに対し、加熱温度bを25°C、100°Cとした実施例4及び実施例5の電池では、容量維持率が高くなった。更に、熱処理を行った実施例8〜実施例11の電池では、容量維持率が向上し、特に、熱処理温度cを120〜150°Cとした実施例9〜実施例11の電池では、85%以上の容量維持率を示した。
【0066】
また、正極のバインダにPVAを用い、負極のバインダにPVDFを用いた電池の場合に、正極の乾燥温度aを100〜120°Cとした実施例12〜実施例14の電池では、乾燥温度aを130°C、140°Cとした比較例4及び比較例5の電池より高い容量維持率を示した。また、正極の加熱温度bを25°C、100°Cとした実施例15及び実施例16の電池では、加熱温度bを130°C、140°Cとした実施例17及び実施例18の電池より高い容量維持率を示した。更に、熱処理を行うことで容量維持率が向上し、特に、熱処理温度cを120〜150°Cとした実施例20〜実施例22の電池が優れた容量維持率を示した。
【0067】
更に、正極及び負極のバインダにPVAを用いた電池の場合に、正極、負極共に乾燥温度aを120°Cとし、加熱温度bを120°Cとし、熱処理温度cを130°Cとした実施例23の電池では、容量維持率が94%の極めて高い結果を示した。
【0068】
本実施形態のリチウムイオン電池20では、正極及び負極の少なくとも一方のバインダにPVAを用いることで、電極と集電体との密着性が向上されるため、容量維持率の低下を抑制することができた。また、乾燥温度aをa≦Aとし、加熱温度bをb≦Aとすることで、乾燥時及び熱プレス時の熱硬化が抑制されるので、電極のヒビ割れ、剥がれを生じることなく電極を作製することができた。更に、熱処理温度cをA≦cとすることで、PVAが確実に熱硬化されるので、高温下でも合材と集電体との結着力を維持することができた。従って、高温で充放電を繰り返しても、合材の集電体からの剥離、脱落が防止されるので、容量維持率の低下を抑制することができ、長寿命の電池を実現することができた。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、熱硬化性バインダ樹脂組成物を含む合材が塗布されるので、合材と集電体との密着性を向上させ非水電解液二次電池用電極を長寿命とすることができると共に、(乾燥温度a)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で電極が乾燥されるので、乾燥時のバインダ樹脂組成物の熱硬化が防止され、電極のヒビ割れ、剥がれ等の劣化を抑制することができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の非水電解液二次電池用電極の製造工程の要部を示す工程図である。
【図2】実施形態の非水電解液二次電池用電極の製造に用いられる乾燥炉を模式的に示す側断面図である。
【図3】実施形態の非水電解液二次電池用電極の製造に用いられるプレス機を模式的に示す側断面図である。
【図4】実施形態の製造工程を経て作製した円筒型リチウムイオン電池の断面図である。
【符号の説明】
6 捲回群
20 円筒型リチウムイオン電池(非水電解液二次電池)
W2 正極合材
W4 負極合材
Claims (5)
- 集電体に活物質と熱硬化性バインダ樹脂組成物とを含む合材を塗布した非水電解液二次電池用電極の製造方法であって、前記バインダ樹脂組成物の熱硬化開始温度をA°C、前記集電体に前記合材を塗布後の乾燥温度をa°Cとしたときに、(乾燥温度a)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で、前記非水電解液二次電池用電極を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする製造方法。
- 前記乾燥工程後に、前記電極を加熱加圧する熱プレス工程を更に含み、該熱プレス工程での加熱温度をb°Cとしたときに、(加熱温度b)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で熱プレスすることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記熱プレス工程後に、前記バインダ樹脂組成物を熱硬化させる熱処理工程を更に含み、該熱処理工程での熱処理温度をc°Cとしたときに、(熱硬化開始温度A)≦(熱処理温度c)の温度下で熱硬化させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
- 前記バインダ樹脂組成物が、熱硬化性ポリビニルアルコール系樹脂とアクリル樹脂系可塑剤とを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 集電体に活物質と熱硬化性バインダ樹脂組成物とを含む合材が塗布された電極を用いた非水電解液二次電池であって、前記電極は、前記バインダ樹脂組成物の熱硬化開始温度をA°C、前記集電体に前記合材を塗布後の乾燥温度をa°Cとしたときに、(乾燥温度a)≦(熱硬化開始温度A)の温度下で乾燥させたものであることを特徴とする非水電解液二次電池。
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-
2002
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