JP2004132614A - 異常検出方法、その方法に使用する異常検出装置、その装置を用いた制御システム - Google Patents
異常検出方法、その方法に使用する異常検出装置、その装置を用いた制御システム Download PDFInfo
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Abstract
【課題】状態値の異常信号を的確に検出できる異常検出方法を提供する。
【解決手段】正常時の安定値gs′を中心に状態値Xが大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動Hを検出するのに、状態値Xの測定値gと安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値の最近設定時間T′内における平均値又は積分値を判定用値Kとし、この判定用値Kと設定閾値Ksとの比較に基づき状態値異常振動Hか否かを判定する。そして、好ましくは、測定値gの最近設定時間T内における平均値を前記安定値gsとする。
【選択図】 図4
【解決手段】正常時の安定値gs′を中心に状態値Xが大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動Hを検出するのに、状態値Xの測定値gと安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値の最近設定時間T′内における平均値又は積分値を判定用値Kとし、この判定用値Kと設定閾値Ksとの比較に基づき状態値異常振動Hか否かを判定する。そして、好ましくは、測定値gの最近設定時間T内における平均値を前記安定値gsとする。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧力、温度、信号値などの状態値が正常時の安定値を中心に大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動を検出する異常検出方法、及び、その方法に使用する異常検出装置、並びに、その異常検出装置を用いた制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧力、温度、信号値などの状態値の異常を検出するには、図6(イ)に示す如く、状態値Xの測定値gが設定閾値gaを超えたとき異常であると判定する方式、あるいはまた、図6(ロ)に示す如く、状態値Xの測定値gが設定閾値gaを超えた状態が設定閾時間Tsにわたって継続したとき異常であると判定する方式が知られている(適当な先行技術文献がない)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ポンプ・ファン類ではサージングが発生すると搬送流体の圧力が正常時の安定値を中心に大きな振幅で振動的に変動し、また、対象室に対する給気量と排気量の収支を調整して対象室の室圧を目標値に調整する室圧制御では、何らかの原因で室圧が正常時の安定値(目標値の近傍値)を中心に大きな振幅で振動的に変動するハンチングが生じることがあり、これらポンプ・ファン類のサージングや室圧制御におけるハンチングを初め、圧力、温度、信号値などの状態値Xが図6(ハ)に示す如く正常時の安定値gs′を中心に大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動Hは、各種分野で発生が見られ種々の障害要因になっているが、前述の如き判定方式を採る従来の異常検出では、この種の状態値異常振動を的確に検出できない問題があった。
【0004】
すなわち、状態値Xの測定値gが設定閾値gaを超えたとき異常であると判定する図6(イ)の方式は、本来が測定値gの設定閾値ga超えを単純に検出するものであって、状態値Xの測定値gが単発的に設定閾値gaを超えたに過ぎない場合も異常と判定してしまう為、それと区別して図6(ハ)に示す如き状態値異常振動Hを的確に検出することができない問題がある。
【0005】
また、状態値Xの測定値gが設定閾値gaを超えた状態が設定閾時間Tsにわたって継続したとき異常であると判定する図6(ロ)の方式では、図6(ハ)に示す如く周波数が高くて一つ一つの振動波の頂部が設定閾値gaを超えた状態にある時間ΔTが設定閾時間Tsに満たない状態値異常振動Hを検出することができない問題があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な判定方式を採ることで、上記の如き状態値異常振動を的確に検出できるようにする点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
〔1〕請求項1に係る発明は異常検出方法に係り、その特徴は、
正常時の安定値を中心に状態値が大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動を検出するのに、
前記状態値の測定値と前記安定値との偏差の大きさを示す値の最近設定時間内における平均値又は積分値を判定用値とし、
この判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定する点にある。
【0008】
つまり、この方法では、状態値(測定値)の大きな変動が上記設定時間内において数多く生じるほど、すなわち、その大きな変動の設定時間内における反復回数が多いほど、判定用値の大きさ(絶対値)が大きくなることから、設定閾値に適当な大きさの値を選定しておけば、基本的には、判定用値が設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたとき(換言すれば、判定用値の絶対値が設定閾値の絶対値よりも大きくなったとき)、状態値が正常時の安定値を中心に大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動であると判定することができる。
【0009】
そして、状態値(測定値)の大きな変動が単発的なものにすぎず、その変動後、状態値が速やかに安定値に戻って安定するような場合には、判定用値の大きさの増大が小さなものに止まることから、判定用値が上記設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えることがなく、これにより、状態値(測定値)が単発的に大きく変動したにすぎない場合に状態値異常振動であると誤判定してしまうのを回避することができて、そのような単発的変動とは区別した状態で状態値異常振動を的確に検出することができる。
【0010】
また、状態値(測定値)が大きく変化して変化先で安定するような変動形態の場合には、その変化先での安定に伴う安定値そのものの変更(すなわち、変化先の値への変更)により判定用値の大きさの増大を小さなものに止めることができて、判定用値が上記設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えるのを回避することができ、これにより、状態値(測定値)が大きく変化して変化先で安定するような変動形態の場合についても、状態値異常振動であると誤判定してしまうのを回避することができて、そのような変化先安定形態の変動とも区別した状態で状態値異常振動を的確に検出することができる。
【0011】
しかも、上記方法によれば、周波数が多少相違する状態値異常振動であっても、それらの振幅が同程度であれば、ほぼ同等の判定結果を得ることができ、この点、汎用性の面でも優れた検出方法となる。
【0012】
なお、請求項1に係る発明の実施において、測定値と安定値との偏差の大きさを示す値としては、偏差の絶対値、偏差の2乗値、偏差の2乗平方根値、また場合によっては、それら偏差の絶対値や偏差の2乗値などに負の符号を付した値など、種々の形態の値を採用することができる。
【0013】
また、判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定するのに、その具体的な比較方式としては、判定用値と設定閾値との単純な絶対値比較に限らず、後述の請求項3又は4に係る発明の方式を初め、種々の比較方式を採ることができる。
【0014】
状態値は、測定値に基づく自動制御をもって目標値に調整する制御値、あるいは、そのような自動制御を施さない非制御値のいずれであってもよく、制御値を状態値とする場合には、安定値として自動制御上の目標値を用いるようにしてもよい。
【0015】
〔2〕請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記測定値の最近設定時間内における平均値を前記安定値とする点にある。
【0016】
つまり、この方法によれば、状態値(測定値)が大きく変化して変化先で安定するような変動形態の場合(例えば、測定値に基づく自動制御をもって目標値に調整する制御値を状態値とする場合において、その目標値が変更された場合など)に、その変化先での測定値の安定に対し、判定用値の算出に用いる安定値を自ずと追従させて更新することができ、この点、判定用値の算出に用いる安定値に固定値を用いる方式を採るに比べ、機能性や利便性の面で一層優れた検出方法となる。
【0017】
なお、請求項2に係る発明の実施において、測定値の平均値を採る設定時間(測定値の平均期間)は、請求項1に係る発明の実施において偏差の大きさを示す値の平均値又は積分値を採る設定時間(偏差の大きさを示す値の平均期間又は積分期間)と同じ長さのものであってもよく、また、異なる長さのものであってもよい。
【0018】
〔3〕請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記判定用値が前記設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき、状態値異常振動であると判定する点にある。
【0019】
つまり、状態値の変動特性によっては、請求項1に係る発明の実施において、判定用値が極一時的に設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えるといったこと(すなわち、状態値異常振動は確かに発生したが極一時的なもので継続せず、その後、速やかに収束してしまうような場合や、そもそも状態値異常振動以外の要因で判定用値が極一時的に設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えるような場合、あるいはまた、状態値異常振動に近い状況にあるなかで判定用値が極一時的に設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えるような場合など)が生じ易いことも考えられるが、このような変動特性の場合において、単純に判定用値が設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたとき状態値異常振動であると判定する方式では、状態値異常振動であるとする判定が過度に為されて、却って不都合を生じることがある。
【0020】
これに対し、上記方法によれば、判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定するのに、判定用値が設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき状態値異常振動であると判定するから、判定用値が極一時的に設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたにすぎず、その後、判定用値が状態値異常振動の非発生側に速やかに戻ってしまうような場合にまで状態値異常振動であると判定してしまうことを防止でき、これにより、上記の如き変動特性の場合において、状態値異常振動であるとする判定が過度に為されることによる不都合を効果的に回避することができる。
【0021】
〔4〕請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係る発明の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記判定用値の最近設定時間内における平均値が前記設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたとき、又は、その超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき、状態値異常振動であると判定する点にある。
【0022】
つまり、この方法によれば、判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定するのに、判定用値の最近設定時間内における平均値が設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたとき、又は、その超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき状態値異常振動であると判定するから、判定用値が極一時的に設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたにすぎず、その後、判定用値が状態値異常振動の非発生側に速やかに戻ってしまうような場合にまで状態値異常振動であると判定してしまうことを防止でき、これにより、請求項3に係る発明と同様、前記の如き変動特性の場合において、状態値異常振動であるとする判定が過度に為されることによる不都合を効果的に回避することができる。
【0023】
〔5〕請求項5に係る発明は、請求項1又は2に係る異常検出方法に使用する異常検出装置に係り、その特徴は、
前記状態値を測定する測定手段、及び、この測定手段により測定される前記状態値の測定値に基づき前記判定用値を演算するとともに、その演算した判定用値と設定閾値との比較に基づき前記状態値異常振動か否かを判定する判定手段を備えている点にある。
【0024】
つまり、この構成によれば、測定手段により測定される状態値の測定値に基づき、判定用値の演算、及び、演算した判定用値と設定閾値との比較を判定手段に自動的に実行させて、状態値異常振動か否かの判定を自動的に行う(すなわち、請求項1又は2に係る異常検出方法を自動的に実施する)ことができ、これにより、正常時の安定値を中心に状態値が大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動の的確な検出を容易にすることができる。
【0025】
なお、請求項5に係る発明の実施において、演算した判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定手段に判定させるのに、その比較方式としては、請求項1に係る発明と同様、判定用値と設定閾値との単純な絶対値比較に限らず、先述の請求項3又は4に係る発明の方式を初め、種々の比較方式を採用することができる。
【0026】
〔6〕請求項6に係る発明は、請求項5に係る異常検出装置を用いた制御システムに係り、その特徴は、
前記測定手段と、前記判定手段と、前記測定手段により測定される前記状態値の測定値に基づき前記状態値を目標値に調整する制御手段とを備え、
前記判定手段を、前記測定値の最近設定時間内における平均値又は前記目標値を前記安定値として前記判定用値を演算する構成にしてある点にある。
【0027】
つまり、この構成によれば、測定手段により測定される状態値の測定値に基づき制御手段により状態値を目標値に調整する自動制御(例えば、冒記の室圧制御など)において、何らかの外乱要因により、状態値が目標値を中心に大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動(略言すれば、制御ハンチング)が発生したとき、その状態値異常振動の発生を判定手段による自動判定をもって的確かつ自動的に検出することができる。
【0028】
そして、この検出に基づき適当な処置を施すようにすることで、上記自動制御での状態値異常振動(制御ハンチング)による種々の障害を防止することができ、この点で、各種の自動制御分野において有用な制御システムとなる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は複数の対象室1に対する空調システムを示し、2は給気ファンFsを介装した給気側主風路、3は排気ファンFrを介装した排気側主風路であり、各対象室1は給気側分岐風路2aを介して給気側主風路2に対し並列に接続するとともに、排気側分岐風路3aを介して排気側主風路3に対し同じく並列に接続してある。また、4は対象室1への供給空気を温湿度調整する空調機である。
【0030】
Vsは給気側分岐風路2aの夫々に介装した給気側ダンパ、5は給気側分岐風路2aの通風量qsを検出する通風量センサ、6Aは給気側ダンパVsを制御する給気側ダンパ制御器であり、これら給気側ダンパ制御器6Aは、通風量センサ5による検出通風量qsと中央制御器CCから指定される目標通風量qssとの偏差Δqsに応じ給気側ダンパVsの開度を調整して各給気側分岐風路2aの通風量qs(すなわち、各対象室1の換気風量)を目標通風量qssに調整する給気側ダンパ制御を実行する。
【0031】
Vrは排気側分岐風路3aの夫々に介装した排気側ダンパ、7は対象室1の室圧p(具体的には基準圧力と室内圧力との差圧)を検出する室圧センサ、6Bは排気側ダンパVrを制御する排気側ダンパ制御器であり、これら排気側ダンパ制御器6Bは、室圧センサ7による検出室圧pと中央制御器CCから指定される目標室圧psとの偏差Δpに応じ排気側ダンパVrの開度を調整して各対象室1の室圧pを目標室圧psに調整する排気側ダンパ制御を実行する。
【0032】
8aは給気側主風路2の風路圧fsを検出する給気側圧力センサ、9Aは給気ファンFsを制御する給気側ファン制御器であり、この給気側ファン制御器9Aは、給気側圧力センサ8aによる検出風路圧fsと中央制御器CCから指定される給気側目標風路圧fssとの偏差Δfsに応じインバータ制御により給気ファンFsの出力を調整して給気側主風路2の風路圧fsを給気側目標風路圧fssに調整する給気側ファン制御を実行する。
【0033】
8bは排気側主風路3の風路圧frを検出する排気側圧力センサ、9Bは排気ファンFrを制御する排気側ファン制御器であり、この排気側ファン制御器9Bは、排気側圧力センサ8bによる検出風路圧frと中央制御器CCから指定される排気側目標風路圧frsとの偏差Δfrに応じインバータ制御により排気ファンFrの出力を調整して排気側主風路3の風路圧frを排気側目標風路圧frsに調整する排気側ファン制御を実行する。
【0034】
10A,10Bは中央制御器CCにおける給気側及び排気側の風路圧調整部であり、給気側の風路圧調整部10Aは、給気側ダンパ制御器6Aによる前記の給気側ダンパ制御において給気側ダンパVsが所定の適正開度状態(本実施形態では図2に示す如く上下限値x1,x2ともに中間開度値に設定してある給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内に全ての給気側ダンパVsの開度a1〜a3が入っている状態)になるように、給気側ダンパVs夫々の検出開度a1〜a3に応じ給気側目標風路圧fssを変更する給気側の風路圧調整制御を実行する。
【0035】
また、排気側の風路圧調整部10Bは、給気側と同様、排気側ダンパ制御器6Bによる前記の排気側ダンパ制御において排気側ダンパVrが所定の適正開度状態(本実施形態では同図2に示す如く上下限値y1,y2ともに中間開度値に設定してある排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内に全ての排気側ダンパVrの開度b1〜b3が入っている状態)になるように、排気側ダンパVr夫々の検出開度b1〜b3に応じ排気側目標風路圧frsを変更する排気側の風路圧調整制御を実行する。
【0036】
つまり、本実施形態では、給気側分岐風路2aの通風量qsを調整する給気側ダンパ制御の実施下において、上記の如き給気側の風路圧調整制御及び給気側ファン制御により給気側ダンパVsの開度a1〜a3が全て給気側の目標中間開度範囲X(ダンパ特性上で風量調整機能に優れた開度範囲)に入るようにすることで、その給気側ダンパ制御による通風量調整(対象室1に対する換気風量調整)を感度面及び精度面で良好に行なえるようにする。
【0037】
また同様に、対象室1の室圧pを調整する排気側ダンパ制御の実施下において、上記の如き排気側の風路圧調整制御及び排気側ファン制御により排気側ダンパVrの開度b1〜b3が全て排気側の目標中間開度範囲Y(ダンパ特性上で室圧調整機能に優れた開度範囲)に入るようにすることで、その排気側ダンパ制御による室圧調整を感度面及び精度面で良好に行なえるようにする。
【0038】
給気側の風路圧調整制御において給気側の風路圧調整部10Aは、具体的には、給気側ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最大のものが給気側の目標中間開度範囲Xを大開度側に逸脱しているとき給気側目標風路圧fssを上昇側に変更し、給気側ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最小のものが給気側の目標中間開度範囲Xを小開度側に逸脱しているとき給気側目標風路圧fssを低下側に変更し、給気側ダンパVsの検出開度a1〜a3が全て給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内にあるとき(図2に示す状態)には給気側目標風路圧fssを現状値に維持する。
【0039】
すなわち、給気側ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最大のものが給気側の目標中間開度範囲Xを大開度側に逸脱しているときは、給気側目標風路圧fssを上昇側へ変更することにより、給気側ファン制御上で給気ファンFsの出力を上昇側に調整させて、この上昇側へのファン出力調整に対し給気側ダンパ制御上で給気側ダンパVsの夫々が閉じ側に開度調整されるようにし、また逆に、給気側ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最小のものが給気側の目標中間開度範囲Xを小開度側に逸脱しているときは、給気側目標風路圧fssを低下側へ変更することにより、給気側ファン制御上で給気ファンFsの出力を低下側に調整させて、この低下側へのファン出力調整に対し給気側ダンパ制御上で給気側ダンパVsの夫々が開き側に開度調整されるようにし、これにより、給気側ダンパVsの開度a1〜a3が全て給気側の目標中間開度範囲Xに入るように(すなわち、給気側ダンパVsが適正開度状態になるように)する。
【0040】
一方、排気側の風路圧調整制御において排気側の風路圧調整部10Bは、具体的には、排気側ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最大のものが排気側の目標中間開度範囲Yを大開度側に逸脱しているとき排気側目標風路圧frsを低下側に変更し、排気側ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最小のものが排気側の目標中間開度範囲Yを小開度側に逸脱しているとき排気側目標風路圧frsを上昇側に変更し、排気側ダンパVrの検出開度b1〜b3が全て排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内にあるとき(図2に示す状態)には排気側目標風路圧frsを現状値に維持する。
【0041】
すなわち、排気側ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最大のものが排気側の目標中間開度範囲Yを大開度側に逸脱しているときは、排気側目標風路圧frsを低下側へ変更することにより、排気側ファン制御上で排気ファンFrの出力を上昇側に調整させて、この上昇側へのファン出力調整に対し排気側ダンパ制御上で排気側ダンパVrの夫々が閉じ側に開度調整されるようにし、また逆に、排気側ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最小のものが排気側の目標中間開度範囲Yを小開度側に逸脱しているときは、排気側目標風路圧frsを上昇側へ変更することにより、排気側ファン制御上で排気ファンFrの出力を低下側に調整させて、この低下側へのファン出力調整に対し排気側ダンパ制御上で排気側ダンパVrの夫々が開き側に開度調整されるようにし、これにより、排気側ダンパVrの開度b1〜b3が全て排気側の目標中間開度範囲Yに入るように(すなわち、排気側ダンパVrが適正開度状態になるように)する。
【0042】
同図1及び図3に示す如く、ローカル制御器LCである給気側及び排気側のダンパ制御器6A,6B、並びに、給気側及び排気側のファン制御器9A,9Bには、それらローカル制御器LCの調整対象である状態値X(給気側ダンパ制御器6Aについては通風量qs、排気側ダンパ制御器6Bについては室圧p、給気側ファン制御器9Aについては給気側主風路2の風路圧fs、排気側ファン制御器9Bについては排気側主風路3の風路圧fr)が図4に示す如く正常時の安定値gs′を中心に大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動Hの発生(すなわち、自動制御上での制御ハンチングの発生)を検出するとともに、状態値異常振動Hが検出されたときハンチング抑止処理を実行するハンチング抑止部11を個々に装備してあり、また、中央制御器CCには、いずれかのローカル制御器LCにおいて状態値異常振動Hが検出されたとき、そのローカル制御器LCからの信号hを受けて警報を発するとともに、データ保存処理を実行するハンチング対応部12を装備してある。
【0043】
そして、各ローカル制御器LCにおけるハンチング抑止部11は、具体的には、状態値異常振動Hを次の(イ)〜(ハ)の判定処理により検出するとともに、ハンチング抑止処理として次の(ニ)の処理を実行する構成にしてある(図4,図5参照)
【0044】
(イ)対応センサS(給気側ダンパ制御器6Aについては通風量センサ5、排気側ダンパ制御器6Bについては室圧センサ7、給気側ファン制御器9Aについては給気側圧力センサ8a,排気側ファン制御器9Bについては排気側圧力センサ8b)による対象状態値Xの測定において、その測定値g(検出通風量qs、、検出室圧p、検出風路圧fs,fr)の最近設定時間T内における平均値Σg/T(いわゆる時間移動平均)を逐次演算し、その演算した測定値gについての平均値Σg/Tを各時点における対象状態値Xの安定値gs′(=Σg/T)とする。
【0045】
(ロ)各時点における上記測定値gと安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値として、その偏差Δgの絶対値│Δg│(=│g−gs′│)を逐次演算するとともに、その絶対値│Δg│の最近設定時間内T′内における平均値Σ│Δg│/T′(時間移動平均)を逐次演算し、その演算した絶対値│Δg│についての平均値Σ│Δg│/T′を各時点における判定用値K(=Σ│Δg│/T′)とする。
【0046】
(ハ)各時点において、その時の判定用値K(正値)と設定閾値Ks(正値)とを大小比較し、その比較結果として判定用値Kが設定閾値Ksよりも大きい状態(K>Ks)が設定閾時間Tsにわたって継続したとき、状態値異常振動Hであると判定し、中央制御器CCのハンチング対応部12に対し検出信号hを発信する。
【0047】
(ニ)また、上記の如く状態値異常振動Hであると判定したとき、ハンチング抑止処理として、そのローカル制御器LCにおける制御係数を、それまで採用していた通常時用の制御係数から予め設定されているハンチング抑止用の制御係数に切り換え、これにより、状態値異常振動Hの抑止を図る。
【0048】
一方、中央制御器CCにおけるハンチング対応部12は、上記検出信号hを受信すると、警報を発するとともに、データ保存処理として次の(ホ)の処理を実行する。
【0049】
(ホ)中央制御器CCが各ローカル制御器LCから逐次送信される最新の状況データD(具体的には、検出通風量qs,検出室圧p、ダンパ開度a1〜a3,b1〜b3,検出風路圧fs,frなど)をエンドレス記憶手段13に最古記録データへの上書き形態で書き込み記録するデータ記録処理を継続して実行しているのに対し、いずれかのローカル制御器LCから上記の検出信号hを受けると、エンドレス記憶手段13に対する新たな状況データDの書き込み記録を停止し、その時点でエンドレス記憶手段13に記録されている状況データD(すなわち、状態値異常振動Hの発生過程を示す状況データ)を保存する。
【0050】
つまり、給気側主風路2や排気側主風路3に対し風路外部開口を通じて作用する外風圧(外部の風の圧力)など何らかの外乱要因により、いずれかのローカル制御器LCが実施する制御(すなわち、測定値gに基づき状態値Xを目標値gs(qss,ps,fss,frs)に調整する制御)において状態値異常振動Hが発生すると、相互干渉により各ローカル制御器LCが実施する全ての制御について状態値異常振動Hが波及的に発生し、この為に、各対象室1の室圧pを目標室圧psに調整することはもとより、各対象室1の室圧上下関係を室内清浄度維持などのために要求される最低限の必要関係に保つことさえ難しくなる事態を招く虞があるが、本実施形態の空調システムでは、各ローカル制御器LCに装備したハンチング防止部11により、各ローカル制御器LCが実施する制御において、状態値異常振動Hを個別に検出するとともに、その検出時に上記のハンチング抑止処理を個別に実行することで、各ローカル制御器LCが実施する全ての制御について状態値異常振動Hが波及的に発生する事態に至るのを未然に防止するようにしてある。
【0051】
また、いずれかのローカル制御器LCが実施する制御において状態値異常振動Hが検出されたとき、中央制御器CCにおけるエンドレス記憶手段13への新たな状況データDの書き込みを停止して、その時点でエンドレス記憶手段13に記録されている状況データDを保存することにより、その保存データDの解析をもって状態値異常振動Hの発生原因を解明できるようにしてある。
【0052】
なお、中央制御器CCは、空調目的の変更指令があると、給気側ダンパ制御器6Aに対して指定する目標通風量qssや排気側ダンパ制御器6Bに対して指定する目標室圧psを新たな空調目的に応じた値に変更し、また、空調システムの起動時には、給気側ファン制御器9Aに対して指定する給気側目標風路圧fss、及び、排気側ファン制御器9Bに対して指定する排気側目標風路圧frsを常圧から必要圧へ漸次的に変更するとともに、給気側ダンパ制御器6Aに対して指定する目標通風量qssを0から空調目的に応じた必要通風量へ漸次的に変更し、逆に、空調システムの停止時には、給気側ファン制御器9Aに対して指定する給気側目標風路圧fss、及び、排気側ファン制御器9Bに対して指定する排気側目標風路圧frsを定常運転中の必要圧から常圧へ漸次的に変更するとともに、給気側ダンパ制御器6Aに対して指定する目標通風量qssを定常運転中の空調目的に応じた必要通風量から0へ漸次的に変更する。
【0053】
また、各ローカル制御器LCにおけるハンチング抑止部11は、ハンチング抑止処理としてローカル制御器LCにおける制御係数を通常時用の制御係数から予め設定されているハンチング抑止用の制御係数に切り換えるのに、その切り換えの為に測定値gと目標値gsとの偏差が急増するなどの制御状況の急変が生じることを回避し得る切り換え方式(いわゆるバンプレス方式)をもって制御係数の切り換えを行う構成にしてある。
【0054】
以上、本実施形態において、センサS(通風量センサ5、室圧センサ7、圧力センサ8a、圧力センサ8bの夫々)は状態値Xを測定する測定手段を構成し、ローカル制御器LC(給気側ダンパ制御器6A、排気側ダンパ制御器6B、給気側ファン制御器9A、排気側ファン制御器9Bの夫々)は、測定手段Sにより測定される状態値Xの測定値gに基づき状態値Xを目標値gsに調整する制御手段を構成し、
ローカル制御器LCにおけるハンチング抑止部11は、測定手段Sにより測定される状態値Xの測定値gに基づき判定用値Kを演算するとともに、その演算した判定用値Kと設定閾値Ksとの比較に基づき状態値異常振動Hか否かを判定する判定手段を構成する。
そして、判定手段としてのハンチング抑止部11は、状態値Xの測定値gと状態値Xの正常時における安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値(本実施形態では絶対値)│Δg│の最近設定時間内T′内における平均値Σ│Δg│/T′を判定用値Kとすることにおいて、測定値gの最近設定時間T内における平均値Σg/Tを安定値gs′として判定用値Kを演算する構成にしてある。
【0055】
〔別の実施形態〕
次に別実施形態を列記する。
【0056】
前述の実施形態では、状態値Xの測定値gと安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値の最近設定時間T′内における平均値を判定用値Kとしたが、これに代え、状態値Xの測定値gと安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値の最近設定時間T′内における積分値を判定用値Kとしてもよい。
【0057】
また、測定値gと安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値は、偏差Δgの絶対値に限られるものではなく、偏差Δgの2乗値や偏差Δgの2乗平方根値、また場合によっては、それら偏差Δgの絶対値や偏差Δgの2乗値などに負の符号を付した値などであってもよい。
【0058】
前述の実施形態では、測定値gの最近設定時間T内における平均値を、判定用値Kの算出に用いる安定値gs′としたが、測定値gに基づく自動制御をもって目標値gsに調整する制御値を対象状態値Xとする場合において、その目標値gsを判定用値Kの算出に用いる安定値gs′とするなど、判定用値Kの算出に用いる安定値gs′は固定値であってもよい。
【0059】
判定用値Kと設定閾値Ksとの比較に基づき状態値異常振動Hか否かを判定するのに、前述の実施形態では、判定用値Kが設定閾値Ksを状態値異常振動Hの発生側に超えた状態が設定閾時間Tsにわたって継続したとき状態値異常振動Hであると判定する判定形態を採用したが、対象状態値Xの変動特性によっては、判定用値Kが設定閾値Ksを状態値異常振動Hの発生側に超えたとき状態値異常振動Hであると判定する判定形態(判定用値Kと設定閾値Ksとの単純な絶対値比較)を採用してもよい。
【0060】
また、判定用値Kの最近設定時間内における平均値が設定閾値Ksを状態値異常振動Hの発生側に超えたとき状態値異常振動Hであると判定する判定形態や、判定用値Kの最近設定時間内における平均値が設定閾値Ksを状態値異常振動Hの発生側に超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき状態値異常振動Hであると判定する判定形態を採用してもよく、対象状態値Xの変動特性に応じて適当な判定形態を採用すればよい。
【0061】
対象の状態値Xは、圧力、温度、信号値など、状態値異常振動Hの発生可能性がある値であれば、どのようなものであってもよく、測定値gに基づく自動制御をもって目標値gsに調整する制御値、あるいは、そのような自動制御を施さない非制御値のいずれであってもよい。
【0062】
前述の実施形態では、制御値を対象の状態値Xとする場合の一例として室圧制御における状態値異常振動H(制御ハンチング)の検出に本発明を適用した場合を示したが、これに限らず、本発明は、測定値gに基づき状態値Xを目標値gsに調整する種々の自動制御において発生する状態値異常振動H(制御ハンチング)の検出に適用することができ、また、自動制御を施さない非制御値を対象の状態値Xとする場合についても、ポンプ類・ファン類・圧縮機類のサージング検出を初め、各種分野で発生する状態値異常振動Hの検出に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】空調システムの全体構成図
【図2】風路圧(ファン出力)の調整形態を説明する図
【図3】ローカル制御器のブロック図
【図4】状態値異常振動、及び、判定用値の推移を示すグラフ
【図5】フローチャート
【図6】(イ)従来の異常判定方式を示すグラフ
(ロ)従来における他の異常判定方式を示すグラフ
(ハ)状態値異常振動を示すグラフ
【符号の説明】
11 判定手段
g 測定値
gs 目標値
gs′ 安定値
Δg 偏差
H 状態値異常振動
K 判定用値
Ks 設定閾値
LC 制御手段
S 測定手段
T,T′ 設定時間
Ts 設定閾時間
X 状態値
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧力、温度、信号値などの状態値が正常時の安定値を中心に大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動を検出する異常検出方法、及び、その方法に使用する異常検出装置、並びに、その異常検出装置を用いた制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧力、温度、信号値などの状態値の異常を検出するには、図6(イ)に示す如く、状態値Xの測定値gが設定閾値gaを超えたとき異常であると判定する方式、あるいはまた、図6(ロ)に示す如く、状態値Xの測定値gが設定閾値gaを超えた状態が設定閾時間Tsにわたって継続したとき異常であると判定する方式が知られている(適当な先行技術文献がない)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ポンプ・ファン類ではサージングが発生すると搬送流体の圧力が正常時の安定値を中心に大きな振幅で振動的に変動し、また、対象室に対する給気量と排気量の収支を調整して対象室の室圧を目標値に調整する室圧制御では、何らかの原因で室圧が正常時の安定値(目標値の近傍値)を中心に大きな振幅で振動的に変動するハンチングが生じることがあり、これらポンプ・ファン類のサージングや室圧制御におけるハンチングを初め、圧力、温度、信号値などの状態値Xが図6(ハ)に示す如く正常時の安定値gs′を中心に大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動Hは、各種分野で発生が見られ種々の障害要因になっているが、前述の如き判定方式を採る従来の異常検出では、この種の状態値異常振動を的確に検出できない問題があった。
【0004】
すなわち、状態値Xの測定値gが設定閾値gaを超えたとき異常であると判定する図6(イ)の方式は、本来が測定値gの設定閾値ga超えを単純に検出するものであって、状態値Xの測定値gが単発的に設定閾値gaを超えたに過ぎない場合も異常と判定してしまう為、それと区別して図6(ハ)に示す如き状態値異常振動Hを的確に検出することができない問題がある。
【0005】
また、状態値Xの測定値gが設定閾値gaを超えた状態が設定閾時間Tsにわたって継続したとき異常であると判定する図6(ロ)の方式では、図6(ハ)に示す如く周波数が高くて一つ一つの振動波の頂部が設定閾値gaを超えた状態にある時間ΔTが設定閾時間Tsに満たない状態値異常振動Hを検出することができない問題があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な判定方式を採ることで、上記の如き状態値異常振動を的確に検出できるようにする点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
〔1〕請求項1に係る発明は異常検出方法に係り、その特徴は、
正常時の安定値を中心に状態値が大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動を検出するのに、
前記状態値の測定値と前記安定値との偏差の大きさを示す値の最近設定時間内における平均値又は積分値を判定用値とし、
この判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定する点にある。
【0008】
つまり、この方法では、状態値(測定値)の大きな変動が上記設定時間内において数多く生じるほど、すなわち、その大きな変動の設定時間内における反復回数が多いほど、判定用値の大きさ(絶対値)が大きくなることから、設定閾値に適当な大きさの値を選定しておけば、基本的には、判定用値が設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたとき(換言すれば、判定用値の絶対値が設定閾値の絶対値よりも大きくなったとき)、状態値が正常時の安定値を中心に大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動であると判定することができる。
【0009】
そして、状態値(測定値)の大きな変動が単発的なものにすぎず、その変動後、状態値が速やかに安定値に戻って安定するような場合には、判定用値の大きさの増大が小さなものに止まることから、判定用値が上記設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えることがなく、これにより、状態値(測定値)が単発的に大きく変動したにすぎない場合に状態値異常振動であると誤判定してしまうのを回避することができて、そのような単発的変動とは区別した状態で状態値異常振動を的確に検出することができる。
【0010】
また、状態値(測定値)が大きく変化して変化先で安定するような変動形態の場合には、その変化先での安定に伴う安定値そのものの変更(すなわち、変化先の値への変更)により判定用値の大きさの増大を小さなものに止めることができて、判定用値が上記設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えるのを回避することができ、これにより、状態値(測定値)が大きく変化して変化先で安定するような変動形態の場合についても、状態値異常振動であると誤判定してしまうのを回避することができて、そのような変化先安定形態の変動とも区別した状態で状態値異常振動を的確に検出することができる。
【0011】
しかも、上記方法によれば、周波数が多少相違する状態値異常振動であっても、それらの振幅が同程度であれば、ほぼ同等の判定結果を得ることができ、この点、汎用性の面でも優れた検出方法となる。
【0012】
なお、請求項1に係る発明の実施において、測定値と安定値との偏差の大きさを示す値としては、偏差の絶対値、偏差の2乗値、偏差の2乗平方根値、また場合によっては、それら偏差の絶対値や偏差の2乗値などに負の符号を付した値など、種々の形態の値を採用することができる。
【0013】
また、判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定するのに、その具体的な比較方式としては、判定用値と設定閾値との単純な絶対値比較に限らず、後述の請求項3又は4に係る発明の方式を初め、種々の比較方式を採ることができる。
【0014】
状態値は、測定値に基づく自動制御をもって目標値に調整する制御値、あるいは、そのような自動制御を施さない非制御値のいずれであってもよく、制御値を状態値とする場合には、安定値として自動制御上の目標値を用いるようにしてもよい。
【0015】
〔2〕請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記測定値の最近設定時間内における平均値を前記安定値とする点にある。
【0016】
つまり、この方法によれば、状態値(測定値)が大きく変化して変化先で安定するような変動形態の場合(例えば、測定値に基づく自動制御をもって目標値に調整する制御値を状態値とする場合において、その目標値が変更された場合など)に、その変化先での測定値の安定に対し、判定用値の算出に用いる安定値を自ずと追従させて更新することができ、この点、判定用値の算出に用いる安定値に固定値を用いる方式を採るに比べ、機能性や利便性の面で一層優れた検出方法となる。
【0017】
なお、請求項2に係る発明の実施において、測定値の平均値を採る設定時間(測定値の平均期間)は、請求項1に係る発明の実施において偏差の大きさを示す値の平均値又は積分値を採る設定時間(偏差の大きさを示す値の平均期間又は積分期間)と同じ長さのものであってもよく、また、異なる長さのものであってもよい。
【0018】
〔3〕請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記判定用値が前記設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき、状態値異常振動であると判定する点にある。
【0019】
つまり、状態値の変動特性によっては、請求項1に係る発明の実施において、判定用値が極一時的に設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えるといったこと(すなわち、状態値異常振動は確かに発生したが極一時的なもので継続せず、その後、速やかに収束してしまうような場合や、そもそも状態値異常振動以外の要因で判定用値が極一時的に設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えるような場合、あるいはまた、状態値異常振動に近い状況にあるなかで判定用値が極一時的に設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えるような場合など)が生じ易いことも考えられるが、このような変動特性の場合において、単純に判定用値が設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたとき状態値異常振動であると判定する方式では、状態値異常振動であるとする判定が過度に為されて、却って不都合を生じることがある。
【0020】
これに対し、上記方法によれば、判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定するのに、判定用値が設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき状態値異常振動であると判定するから、判定用値が極一時的に設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたにすぎず、その後、判定用値が状態値異常振動の非発生側に速やかに戻ってしまうような場合にまで状態値異常振動であると判定してしまうことを防止でき、これにより、上記の如き変動特性の場合において、状態値異常振動であるとする判定が過度に為されることによる不都合を効果的に回避することができる。
【0021】
〔4〕請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係る発明の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記判定用値の最近設定時間内における平均値が前記設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたとき、又は、その超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき、状態値異常振動であると判定する点にある。
【0022】
つまり、この方法によれば、判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定するのに、判定用値の最近設定時間内における平均値が設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたとき、又は、その超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき状態値異常振動であると判定するから、判定用値が極一時的に設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたにすぎず、その後、判定用値が状態値異常振動の非発生側に速やかに戻ってしまうような場合にまで状態値異常振動であると判定してしまうことを防止でき、これにより、請求項3に係る発明と同様、前記の如き変動特性の場合において、状態値異常振動であるとする判定が過度に為されることによる不都合を効果的に回避することができる。
【0023】
〔5〕請求項5に係る発明は、請求項1又は2に係る異常検出方法に使用する異常検出装置に係り、その特徴は、
前記状態値を測定する測定手段、及び、この測定手段により測定される前記状態値の測定値に基づき前記判定用値を演算するとともに、その演算した判定用値と設定閾値との比較に基づき前記状態値異常振動か否かを判定する判定手段を備えている点にある。
【0024】
つまり、この構成によれば、測定手段により測定される状態値の測定値に基づき、判定用値の演算、及び、演算した判定用値と設定閾値との比較を判定手段に自動的に実行させて、状態値異常振動か否かの判定を自動的に行う(すなわち、請求項1又は2に係る異常検出方法を自動的に実施する)ことができ、これにより、正常時の安定値を中心に状態値が大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動の的確な検出を容易にすることができる。
【0025】
なお、請求項5に係る発明の実施において、演算した判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定手段に判定させるのに、その比較方式としては、請求項1に係る発明と同様、判定用値と設定閾値との単純な絶対値比較に限らず、先述の請求項3又は4に係る発明の方式を初め、種々の比較方式を採用することができる。
【0026】
〔6〕請求項6に係る発明は、請求項5に係る異常検出装置を用いた制御システムに係り、その特徴は、
前記測定手段と、前記判定手段と、前記測定手段により測定される前記状態値の測定値に基づき前記状態値を目標値に調整する制御手段とを備え、
前記判定手段を、前記測定値の最近設定時間内における平均値又は前記目標値を前記安定値として前記判定用値を演算する構成にしてある点にある。
【0027】
つまり、この構成によれば、測定手段により測定される状態値の測定値に基づき制御手段により状態値を目標値に調整する自動制御(例えば、冒記の室圧制御など)において、何らかの外乱要因により、状態値が目標値を中心に大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動(略言すれば、制御ハンチング)が発生したとき、その状態値異常振動の発生を判定手段による自動判定をもって的確かつ自動的に検出することができる。
【0028】
そして、この検出に基づき適当な処置を施すようにすることで、上記自動制御での状態値異常振動(制御ハンチング)による種々の障害を防止することができ、この点で、各種の自動制御分野において有用な制御システムとなる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は複数の対象室1に対する空調システムを示し、2は給気ファンFsを介装した給気側主風路、3は排気ファンFrを介装した排気側主風路であり、各対象室1は給気側分岐風路2aを介して給気側主風路2に対し並列に接続するとともに、排気側分岐風路3aを介して排気側主風路3に対し同じく並列に接続してある。また、4は対象室1への供給空気を温湿度調整する空調機である。
【0030】
Vsは給気側分岐風路2aの夫々に介装した給気側ダンパ、5は給気側分岐風路2aの通風量qsを検出する通風量センサ、6Aは給気側ダンパVsを制御する給気側ダンパ制御器であり、これら給気側ダンパ制御器6Aは、通風量センサ5による検出通風量qsと中央制御器CCから指定される目標通風量qssとの偏差Δqsに応じ給気側ダンパVsの開度を調整して各給気側分岐風路2aの通風量qs(すなわち、各対象室1の換気風量)を目標通風量qssに調整する給気側ダンパ制御を実行する。
【0031】
Vrは排気側分岐風路3aの夫々に介装した排気側ダンパ、7は対象室1の室圧p(具体的には基準圧力と室内圧力との差圧)を検出する室圧センサ、6Bは排気側ダンパVrを制御する排気側ダンパ制御器であり、これら排気側ダンパ制御器6Bは、室圧センサ7による検出室圧pと中央制御器CCから指定される目標室圧psとの偏差Δpに応じ排気側ダンパVrの開度を調整して各対象室1の室圧pを目標室圧psに調整する排気側ダンパ制御を実行する。
【0032】
8aは給気側主風路2の風路圧fsを検出する給気側圧力センサ、9Aは給気ファンFsを制御する給気側ファン制御器であり、この給気側ファン制御器9Aは、給気側圧力センサ8aによる検出風路圧fsと中央制御器CCから指定される給気側目標風路圧fssとの偏差Δfsに応じインバータ制御により給気ファンFsの出力を調整して給気側主風路2の風路圧fsを給気側目標風路圧fssに調整する給気側ファン制御を実行する。
【0033】
8bは排気側主風路3の風路圧frを検出する排気側圧力センサ、9Bは排気ファンFrを制御する排気側ファン制御器であり、この排気側ファン制御器9Bは、排気側圧力センサ8bによる検出風路圧frと中央制御器CCから指定される排気側目標風路圧frsとの偏差Δfrに応じインバータ制御により排気ファンFrの出力を調整して排気側主風路3の風路圧frを排気側目標風路圧frsに調整する排気側ファン制御を実行する。
【0034】
10A,10Bは中央制御器CCにおける給気側及び排気側の風路圧調整部であり、給気側の風路圧調整部10Aは、給気側ダンパ制御器6Aによる前記の給気側ダンパ制御において給気側ダンパVsが所定の適正開度状態(本実施形態では図2に示す如く上下限値x1,x2ともに中間開度値に設定してある給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内に全ての給気側ダンパVsの開度a1〜a3が入っている状態)になるように、給気側ダンパVs夫々の検出開度a1〜a3に応じ給気側目標風路圧fssを変更する給気側の風路圧調整制御を実行する。
【0035】
また、排気側の風路圧調整部10Bは、給気側と同様、排気側ダンパ制御器6Bによる前記の排気側ダンパ制御において排気側ダンパVrが所定の適正開度状態(本実施形態では同図2に示す如く上下限値y1,y2ともに中間開度値に設定してある排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内に全ての排気側ダンパVrの開度b1〜b3が入っている状態)になるように、排気側ダンパVr夫々の検出開度b1〜b3に応じ排気側目標風路圧frsを変更する排気側の風路圧調整制御を実行する。
【0036】
つまり、本実施形態では、給気側分岐風路2aの通風量qsを調整する給気側ダンパ制御の実施下において、上記の如き給気側の風路圧調整制御及び給気側ファン制御により給気側ダンパVsの開度a1〜a3が全て給気側の目標中間開度範囲X(ダンパ特性上で風量調整機能に優れた開度範囲)に入るようにすることで、その給気側ダンパ制御による通風量調整(対象室1に対する換気風量調整)を感度面及び精度面で良好に行なえるようにする。
【0037】
また同様に、対象室1の室圧pを調整する排気側ダンパ制御の実施下において、上記の如き排気側の風路圧調整制御及び排気側ファン制御により排気側ダンパVrの開度b1〜b3が全て排気側の目標中間開度範囲Y(ダンパ特性上で室圧調整機能に優れた開度範囲)に入るようにすることで、その排気側ダンパ制御による室圧調整を感度面及び精度面で良好に行なえるようにする。
【0038】
給気側の風路圧調整制御において給気側の風路圧調整部10Aは、具体的には、給気側ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最大のものが給気側の目標中間開度範囲Xを大開度側に逸脱しているとき給気側目標風路圧fssを上昇側に変更し、給気側ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最小のものが給気側の目標中間開度範囲Xを小開度側に逸脱しているとき給気側目標風路圧fssを低下側に変更し、給気側ダンパVsの検出開度a1〜a3が全て給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内にあるとき(図2に示す状態)には給気側目標風路圧fssを現状値に維持する。
【0039】
すなわち、給気側ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最大のものが給気側の目標中間開度範囲Xを大開度側に逸脱しているときは、給気側目標風路圧fssを上昇側へ変更することにより、給気側ファン制御上で給気ファンFsの出力を上昇側に調整させて、この上昇側へのファン出力調整に対し給気側ダンパ制御上で給気側ダンパVsの夫々が閉じ側に開度調整されるようにし、また逆に、給気側ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最小のものが給気側の目標中間開度範囲Xを小開度側に逸脱しているときは、給気側目標風路圧fssを低下側へ変更することにより、給気側ファン制御上で給気ファンFsの出力を低下側に調整させて、この低下側へのファン出力調整に対し給気側ダンパ制御上で給気側ダンパVsの夫々が開き側に開度調整されるようにし、これにより、給気側ダンパVsの開度a1〜a3が全て給気側の目標中間開度範囲Xに入るように(すなわち、給気側ダンパVsが適正開度状態になるように)する。
【0040】
一方、排気側の風路圧調整制御において排気側の風路圧調整部10Bは、具体的には、排気側ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最大のものが排気側の目標中間開度範囲Yを大開度側に逸脱しているとき排気側目標風路圧frsを低下側に変更し、排気側ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最小のものが排気側の目標中間開度範囲Yを小開度側に逸脱しているとき排気側目標風路圧frsを上昇側に変更し、排気側ダンパVrの検出開度b1〜b3が全て排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内にあるとき(図2に示す状態)には排気側目標風路圧frsを現状値に維持する。
【0041】
すなわち、排気側ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最大のものが排気側の目標中間開度範囲Yを大開度側に逸脱しているときは、排気側目標風路圧frsを低下側へ変更することにより、排気側ファン制御上で排気ファンFrの出力を上昇側に調整させて、この上昇側へのファン出力調整に対し排気側ダンパ制御上で排気側ダンパVrの夫々が閉じ側に開度調整されるようにし、また逆に、排気側ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最小のものが排気側の目標中間開度範囲Yを小開度側に逸脱しているときは、排気側目標風路圧frsを上昇側へ変更することにより、排気側ファン制御上で排気ファンFrの出力を低下側に調整させて、この低下側へのファン出力調整に対し排気側ダンパ制御上で排気側ダンパVrの夫々が開き側に開度調整されるようにし、これにより、排気側ダンパVrの開度b1〜b3が全て排気側の目標中間開度範囲Yに入るように(すなわち、排気側ダンパVrが適正開度状態になるように)する。
【0042】
同図1及び図3に示す如く、ローカル制御器LCである給気側及び排気側のダンパ制御器6A,6B、並びに、給気側及び排気側のファン制御器9A,9Bには、それらローカル制御器LCの調整対象である状態値X(給気側ダンパ制御器6Aについては通風量qs、排気側ダンパ制御器6Bについては室圧p、給気側ファン制御器9Aについては給気側主風路2の風路圧fs、排気側ファン制御器9Bについては排気側主風路3の風路圧fr)が図4に示す如く正常時の安定値gs′を中心に大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動Hの発生(すなわち、自動制御上での制御ハンチングの発生)を検出するとともに、状態値異常振動Hが検出されたときハンチング抑止処理を実行するハンチング抑止部11を個々に装備してあり、また、中央制御器CCには、いずれかのローカル制御器LCにおいて状態値異常振動Hが検出されたとき、そのローカル制御器LCからの信号hを受けて警報を発するとともに、データ保存処理を実行するハンチング対応部12を装備してある。
【0043】
そして、各ローカル制御器LCにおけるハンチング抑止部11は、具体的には、状態値異常振動Hを次の(イ)〜(ハ)の判定処理により検出するとともに、ハンチング抑止処理として次の(ニ)の処理を実行する構成にしてある(図4,図5参照)
【0044】
(イ)対応センサS(給気側ダンパ制御器6Aについては通風量センサ5、排気側ダンパ制御器6Bについては室圧センサ7、給気側ファン制御器9Aについては給気側圧力センサ8a,排気側ファン制御器9Bについては排気側圧力センサ8b)による対象状態値Xの測定において、その測定値g(検出通風量qs、、検出室圧p、検出風路圧fs,fr)の最近設定時間T内における平均値Σg/T(いわゆる時間移動平均)を逐次演算し、その演算した測定値gについての平均値Σg/Tを各時点における対象状態値Xの安定値gs′(=Σg/T)とする。
【0045】
(ロ)各時点における上記測定値gと安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値として、その偏差Δgの絶対値│Δg│(=│g−gs′│)を逐次演算するとともに、その絶対値│Δg│の最近設定時間内T′内における平均値Σ│Δg│/T′(時間移動平均)を逐次演算し、その演算した絶対値│Δg│についての平均値Σ│Δg│/T′を各時点における判定用値K(=Σ│Δg│/T′)とする。
【0046】
(ハ)各時点において、その時の判定用値K(正値)と設定閾値Ks(正値)とを大小比較し、その比較結果として判定用値Kが設定閾値Ksよりも大きい状態(K>Ks)が設定閾時間Tsにわたって継続したとき、状態値異常振動Hであると判定し、中央制御器CCのハンチング対応部12に対し検出信号hを発信する。
【0047】
(ニ)また、上記の如く状態値異常振動Hであると判定したとき、ハンチング抑止処理として、そのローカル制御器LCにおける制御係数を、それまで採用していた通常時用の制御係数から予め設定されているハンチング抑止用の制御係数に切り換え、これにより、状態値異常振動Hの抑止を図る。
【0048】
一方、中央制御器CCにおけるハンチング対応部12は、上記検出信号hを受信すると、警報を発するとともに、データ保存処理として次の(ホ)の処理を実行する。
【0049】
(ホ)中央制御器CCが各ローカル制御器LCから逐次送信される最新の状況データD(具体的には、検出通風量qs,検出室圧p、ダンパ開度a1〜a3,b1〜b3,検出風路圧fs,frなど)をエンドレス記憶手段13に最古記録データへの上書き形態で書き込み記録するデータ記録処理を継続して実行しているのに対し、いずれかのローカル制御器LCから上記の検出信号hを受けると、エンドレス記憶手段13に対する新たな状況データDの書き込み記録を停止し、その時点でエンドレス記憶手段13に記録されている状況データD(すなわち、状態値異常振動Hの発生過程を示す状況データ)を保存する。
【0050】
つまり、給気側主風路2や排気側主風路3に対し風路外部開口を通じて作用する外風圧(外部の風の圧力)など何らかの外乱要因により、いずれかのローカル制御器LCが実施する制御(すなわち、測定値gに基づき状態値Xを目標値gs(qss,ps,fss,frs)に調整する制御)において状態値異常振動Hが発生すると、相互干渉により各ローカル制御器LCが実施する全ての制御について状態値異常振動Hが波及的に発生し、この為に、各対象室1の室圧pを目標室圧psに調整することはもとより、各対象室1の室圧上下関係を室内清浄度維持などのために要求される最低限の必要関係に保つことさえ難しくなる事態を招く虞があるが、本実施形態の空調システムでは、各ローカル制御器LCに装備したハンチング防止部11により、各ローカル制御器LCが実施する制御において、状態値異常振動Hを個別に検出するとともに、その検出時に上記のハンチング抑止処理を個別に実行することで、各ローカル制御器LCが実施する全ての制御について状態値異常振動Hが波及的に発生する事態に至るのを未然に防止するようにしてある。
【0051】
また、いずれかのローカル制御器LCが実施する制御において状態値異常振動Hが検出されたとき、中央制御器CCにおけるエンドレス記憶手段13への新たな状況データDの書き込みを停止して、その時点でエンドレス記憶手段13に記録されている状況データDを保存することにより、その保存データDの解析をもって状態値異常振動Hの発生原因を解明できるようにしてある。
【0052】
なお、中央制御器CCは、空調目的の変更指令があると、給気側ダンパ制御器6Aに対して指定する目標通風量qssや排気側ダンパ制御器6Bに対して指定する目標室圧psを新たな空調目的に応じた値に変更し、また、空調システムの起動時には、給気側ファン制御器9Aに対して指定する給気側目標風路圧fss、及び、排気側ファン制御器9Bに対して指定する排気側目標風路圧frsを常圧から必要圧へ漸次的に変更するとともに、給気側ダンパ制御器6Aに対して指定する目標通風量qssを0から空調目的に応じた必要通風量へ漸次的に変更し、逆に、空調システムの停止時には、給気側ファン制御器9Aに対して指定する給気側目標風路圧fss、及び、排気側ファン制御器9Bに対して指定する排気側目標風路圧frsを定常運転中の必要圧から常圧へ漸次的に変更するとともに、給気側ダンパ制御器6Aに対して指定する目標通風量qssを定常運転中の空調目的に応じた必要通風量から0へ漸次的に変更する。
【0053】
また、各ローカル制御器LCにおけるハンチング抑止部11は、ハンチング抑止処理としてローカル制御器LCにおける制御係数を通常時用の制御係数から予め設定されているハンチング抑止用の制御係数に切り換えるのに、その切り換えの為に測定値gと目標値gsとの偏差が急増するなどの制御状況の急変が生じることを回避し得る切り換え方式(いわゆるバンプレス方式)をもって制御係数の切り換えを行う構成にしてある。
【0054】
以上、本実施形態において、センサS(通風量センサ5、室圧センサ7、圧力センサ8a、圧力センサ8bの夫々)は状態値Xを測定する測定手段を構成し、ローカル制御器LC(給気側ダンパ制御器6A、排気側ダンパ制御器6B、給気側ファン制御器9A、排気側ファン制御器9Bの夫々)は、測定手段Sにより測定される状態値Xの測定値gに基づき状態値Xを目標値gsに調整する制御手段を構成し、
ローカル制御器LCにおけるハンチング抑止部11は、測定手段Sにより測定される状態値Xの測定値gに基づき判定用値Kを演算するとともに、その演算した判定用値Kと設定閾値Ksとの比較に基づき状態値異常振動Hか否かを判定する判定手段を構成する。
そして、判定手段としてのハンチング抑止部11は、状態値Xの測定値gと状態値Xの正常時における安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値(本実施形態では絶対値)│Δg│の最近設定時間内T′内における平均値Σ│Δg│/T′を判定用値Kとすることにおいて、測定値gの最近設定時間T内における平均値Σg/Tを安定値gs′として判定用値Kを演算する構成にしてある。
【0055】
〔別の実施形態〕
次に別実施形態を列記する。
【0056】
前述の実施形態では、状態値Xの測定値gと安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値の最近設定時間T′内における平均値を判定用値Kとしたが、これに代え、状態値Xの測定値gと安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値の最近設定時間T′内における積分値を判定用値Kとしてもよい。
【0057】
また、測定値gと安定値gs′との偏差Δgの大きさを示す値は、偏差Δgの絶対値に限られるものではなく、偏差Δgの2乗値や偏差Δgの2乗平方根値、また場合によっては、それら偏差Δgの絶対値や偏差Δgの2乗値などに負の符号を付した値などであってもよい。
【0058】
前述の実施形態では、測定値gの最近設定時間T内における平均値を、判定用値Kの算出に用いる安定値gs′としたが、測定値gに基づく自動制御をもって目標値gsに調整する制御値を対象状態値Xとする場合において、その目標値gsを判定用値Kの算出に用いる安定値gs′とするなど、判定用値Kの算出に用いる安定値gs′は固定値であってもよい。
【0059】
判定用値Kと設定閾値Ksとの比較に基づき状態値異常振動Hか否かを判定するのに、前述の実施形態では、判定用値Kが設定閾値Ksを状態値異常振動Hの発生側に超えた状態が設定閾時間Tsにわたって継続したとき状態値異常振動Hであると判定する判定形態を採用したが、対象状態値Xの変動特性によっては、判定用値Kが設定閾値Ksを状態値異常振動Hの発生側に超えたとき状態値異常振動Hであると判定する判定形態(判定用値Kと設定閾値Ksとの単純な絶対値比較)を採用してもよい。
【0060】
また、判定用値Kの最近設定時間内における平均値が設定閾値Ksを状態値異常振動Hの発生側に超えたとき状態値異常振動Hであると判定する判定形態や、判定用値Kの最近設定時間内における平均値が設定閾値Ksを状態値異常振動Hの発生側に超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき状態値異常振動Hであると判定する判定形態を採用してもよく、対象状態値Xの変動特性に応じて適当な判定形態を採用すればよい。
【0061】
対象の状態値Xは、圧力、温度、信号値など、状態値異常振動Hの発生可能性がある値であれば、どのようなものであってもよく、測定値gに基づく自動制御をもって目標値gsに調整する制御値、あるいは、そのような自動制御を施さない非制御値のいずれであってもよい。
【0062】
前述の実施形態では、制御値を対象の状態値Xとする場合の一例として室圧制御における状態値異常振動H(制御ハンチング)の検出に本発明を適用した場合を示したが、これに限らず、本発明は、測定値gに基づき状態値Xを目標値gsに調整する種々の自動制御において発生する状態値異常振動H(制御ハンチング)の検出に適用することができ、また、自動制御を施さない非制御値を対象の状態値Xとする場合についても、ポンプ類・ファン類・圧縮機類のサージング検出を初め、各種分野で発生する状態値異常振動Hの検出に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】空調システムの全体構成図
【図2】風路圧(ファン出力)の調整形態を説明する図
【図3】ローカル制御器のブロック図
【図4】状態値異常振動、及び、判定用値の推移を示すグラフ
【図5】フローチャート
【図6】(イ)従来の異常判定方式を示すグラフ
(ロ)従来における他の異常判定方式を示すグラフ
(ハ)状態値異常振動を示すグラフ
【符号の説明】
11 判定手段
g 測定値
gs 目標値
gs′ 安定値
Δg 偏差
H 状態値異常振動
K 判定用値
Ks 設定閾値
LC 制御手段
S 測定手段
T,T′ 設定時間
Ts 設定閾時間
X 状態値
Claims (6)
- 正常時の安定値を中心に状態値が大きな振幅で振動的に変動する状態値異常振動を検出するのに、
前記状態値の測定値と前記安定値との偏差の大きさを示す値の最近設定時間内における平均値又は積分値を判定用値とし、
この判定用値と設定閾値との比較に基づき状態値異常振動か否かを判定する異常検出方法。 - 前記測定値の最近設定時間内における平均値を前記安定値とする請求項1記載の異常検出方法。
- 前記判定用値が前記設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき、状態値異常振動であると判定する請求項1又は2記載の異常検出方法。
- 前記判定用値の最近設定時間内における平均値が前記設定閾値を状態値異常振動の発生側に超えたとき、又は、その超えた状態が設定閾時間にわたって継続したとき、状態値異常振動であると判定する請求項1又は2記載の異常検出方法。
- 請求項1又は2記載の異常検出方法に使用する異常検出装置であって、
前記状態値を測定する測定手段、及び、この測定手段により測定される前記状態値の測定値に基づき前記判定用値を演算するとともに、その演算した判定用値と設定閾値との比較に基づき前記状態値異常振動か否かを判定する判定手段を備えている異常検出装置。 - 請求項5記載の異常検出装置を用いた制御システムであって、前記測定手段と、前記判定手段と、前記測定手段により測定される前記状態値の測定値に基づき前記状態値を目標値に調整する制御手段とを備え、
前記判定手段を、前記測定値の最近設定時間内における平均値又は前記目標値を前記安定値として前記判定用値を演算する構成にしてある制御システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002297736A JP2004132614A (ja) | 2002-10-10 | 2002-10-10 | 異常検出方法、その方法に使用する異常検出装置、その装置を用いた制御システム |
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JP2002297736A JP2004132614A (ja) | 2002-10-10 | 2002-10-10 | 異常検出方法、その方法に使用する異常検出装置、その装置を用いた制御システム |
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JP2021025685A (ja) * | 2019-08-02 | 2021-02-22 | 株式会社大気社 | 室圧制御システム |
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-
2002
- 2002-10-10 JP JP2002297736A patent/JP2004132614A/ja active Pending
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JP7363001B2 (ja) | 2019-09-17 | 2023-10-18 | 株式会社竹中工務店 | 室圧制御装置及びプログラム |
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