JP2004131890A - 高捲縮仮撚加工糸からなる編織物 - Google Patents
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Abstract
【課題】嵩高性、軽量性及び保温性に優れたセルロース系繊維の高捲縮仮撚加工糸からなる編織物を提供する。
【解決手段】セルロースフィラメントからなり、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上、沸水処理前の伸縮伸長率(S0)との比(SB/S0)が0.5以上である高捲縮仮撚加工糸からなる編織物。この高捲縮仮撚加工糸は、仮撚加工するに際し、供給糸に水分を付与した後に仮撚加工することにより得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】セルロースフィラメントからなり、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上、沸水処理前の伸縮伸長率(S0)との比(SB/S0)が0.5以上である高捲縮仮撚加工糸からなる編織物。この高捲縮仮撚加工糸は、仮撚加工するに際し、供給糸に水分を付与した後に仮撚加工することにより得られる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロース系繊維の高捲縮仮撚加工糸を用いてなる編織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロース系繊維は、発色性に優れて鮮明な色彩を呈する為、婦人のアウター衣料に幅広く供されている。横編セーター用途など、嵩高性の要求されるセルロース系繊維の嵩高加工としては、インターレース混繊、仮撚加工、デニット加工等が挙げられる。
【0003】
しかしながら、セルロース系繊維は水により膨潤して膨潤度が増大するので、嵩高性が消失しやすい。また、横編分野においては比較的太い繊度のセルロース系繊維を用いた嵩高加工糸が用いられるが、比重がポリアクリル系繊維やポリエステル系繊維より大きく、その上、染色中あるいは製品の洗濯などの湿潤状態での形態保持性に問題がある。即ち、嵩高性が消失したり、膨らみ感がなくなり、「ダラッ」とした重量感のある製品となる。特に洗濯した場合には、セルロース系繊維の嵩高性が消失してしまうことがあった。
【0004】
その対応策として、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル系などの合成繊維と複合して使用されることが多く、セルロース系繊維100%で嵩高性があり、かつ、軽量感や保温性のある製品は得られていないのが現状である。
【0005】
捲縮伸長率(本願発明で言う伸縮伸長率)/捲縮数で定義されるクリンプ係数が0.02〜0.20である再生セルロース長繊維糸条からなる仮撚加工糸が開示されている(例えば、特許文献1参照)が、本発明者らの追試によると、該加工糸は、沸水処理後の伸縮伸長率が3%以下と小さく、沸水処理前後の伸縮伸長率の比は0.5未満となり、十分な嵩高性は得られない。
【0006】
また、加撚−熱固定−解撚という、所謂、加撚−解撚法による堅牢性の高い捲縮糸が開示されている(例えば、特許文献2参照)が、熱固定が不十分で、沸水処理後の伸縮伸長率は5%未満と小さく、十分な嵩高性は得られないうえに、3工程という多くの工程を要するので生産性に劣る。
【0007】
また、メチロール化セルロース繊維において、メチロール化度0.05、膨潤度0.5〜3.5の湿潤セルロース糸に嵩高加工を施すことが開示されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3によれば、リンターパルプ、パラホルムアルデヒド、DMSOを原料とする原液を紡糸後、湿熱延伸を施した後に適度な水洗、乾燥を行い、仮撚加工に供したと記載されている。仮撚加工に供する時の該糸の水分率は定かでないが、仮撚加工に供する際のボビンあるいはコーンなどからの解舒性等を考慮すると、糸の水分率は公定水分率から13%程度の範囲内にあると推定される。更に、仮撚加工後、沸水処理により、完全に再生させて、セルロースII型の結晶構造にしたものである。即ち、ホルムアルデヒドのような架橋性の高い化合物を混入させ、低水分率下で仮撚加工を施したものである。従って、特許文献3に記載の発明は、繊維製造における原料が本発明と異なるうえ、製造条件も異なり、また、得られた繊維の結晶構造も本発明とは異なるものである。
【0008】
また、絹糸にアミノ酸溶液を付与してから仮撚加工する方法が開示されている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7参照)。これらの文献に記載の発明は、絹に対して親和性の高いアミノ酸による賦型効果にもとづくものであり、このような賦型効果は、アミノ酸と親和性の低い綿などのセルロース繊維や再生セルロース繊維に対しては期待できない。
【0009】
さらに、リヨセル繊維において、湿熱処理(60%水分率)により押し込み捲縮を付与する方法(例えば、特許文献8参照)や、セルロースからなる繊維を高圧蒸気で処理する方法で、デニット加工糸やギヤ加工糸の形状を記憶処理する方法(例えば、特許文献9参照)が開示されている。しかし、これらの方法は、ヤーン単位での捲縮であり、前述のものに比べて伸縮保持率は高いものの、沸水処理前後の伸縮伸長率の比は0.5未満であり、本発明で意図するような、沸水処理後に捲縮が大きく発現して、優れた嵩高感と軽量感が得られるというレベルには程遠い。また、フィラメント単位の捲縮にもなっていないので表面品位が悪くなる。
【0010】
従って、フィラメントの1本1本に捲縮がかかっている、所謂、仮撚加工糸であって、合成繊維の仮撚加工糸のように、精練や染色工程での熱水処理後に捲縮が大きく発現し、嵩高性があって、布帛としても軽量感や保温性に優れたセルロースフィラメントからなる高捲縮仮撚加工糸による編織物は未だ得られていないのが現状である。
【0011】
【特許文献1】
特許第2647153号公報
【特許文献2】
特公昭31−1950号公報
【特許文献3】
特開昭57−101006号公報
【特許文献4】
特開昭62−215029号公報
【特許文献5】
特開昭63−315627号公報
【特許文献6】
特開平1−183534号公報
【特許文献7】
特開平1−183535号公報
【特許文献8】
特表平9−509987号公報
【特許文献9】
特開平5−33259号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、布帛での精練や染色等の熱水処理工程で、捲縮を保持しさらには捲縮を大きく発現するようなセルロースフィラメントの高捲縮仮撚加工糸を用いてなり、嵩高性があり、布帛としての軽量感や保温性、洗濯耐久性に優れた編織物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来のセルロースに関する技術思想にはなかった、セルロース繊維内部の微細構造空間に着目して構造変化と物理的歪をコントロールすることにより、精練や染色時における熱水処理で捲縮が保持または大きく発現するという可能性を見出し、その知見に基づき技術開発を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は下記の通りである。
【0015】
1.セルロースフィラメントからなり、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上、沸水処理前の伸縮伸長率(S0)との比(SB/S0)が0.5以上である高捲縮仮撚加工糸からなる編織物。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明に用いるセルロースフィラメントとしては、例えば、ビスコースレーヨン、キュプラアンモニウムレーヨンなどの再生セルロース繊維等、セルロース繊維のフィラメントであればよい。セルロースフィラメントの繊度は所望により適宜選定すれば良く、例えば、単糸繊度としては0.8〜5.5dtex、フィラメント数20〜120本、トータル繊度は56〜330dtex程度のものが好ましく用いられる。
【0018】
本発明において、高捲縮仮撚加工糸は、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)は4%以上であり、好ましくは7%以上、50%以下である。伸縮伸長率はJIS−L−1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定した。SBが4%以上であると、十分な嵩高性と軽量感が得られる。尚、SBが大きすぎると、嵩高性は大きいものの、凹凸感のある編地となり外観が損なわれる傾向がある。
【0019】
本発明において、高捲縮仮撚加工糸は、沸水処理前後の伸縮伸長率比(SB/S0)が0.5以上であり、好ましくは0.7〜10以下である。SB/S0とは、沸水処理して乾燥した後の仮撚加工糸の伸縮伸長率(SB)と、沸水処理前の仮撚加工糸の伸縮伸長率(S0)との比である。SB/S0が0.5未満では、精練や染色に基づく熱水処理で嵩高性が損なわれる。SB/S0が大きい値となっても本発明の効果を達成することができるが、10を超えると、製品において凹凸感が目立ち、外観品位が低下する可能性がある。
【0020】
本発明において、高捲縮仮撚加工糸は、X線回析による算出法(後記する)にて、セルロースIV型結晶成分が20%以上,好ましくは20〜60%混在するのが好ましい。この範囲であると、セルロースIV型の特徴である湿潤処理による形態保持性が十分に発揮される。
【0021】
本発明において、高捲縮仮撚加工糸は、仮撚加工する前の供給糸に水分を付与し、加撚時にヒーター温度180℃以上の高温で処理をすることにより製造される。
【0022】
本発明における高捲縮仮撚加工糸が、従来技術では達成し得なかったほどの、熱水処理前後における高い捲縮保持性を有すること、または熱水処理により捲縮の発現が更に増大するという能力を有することに関するメカニズムは完全に解明されているわけではないが、以下のように推定される。
【0023】
仮撚加工前にセルロースフィラメントに付与された水分は、非晶領域やそれを取り囲む結晶成分の界面にも存在しており、微細構造的には水分は無数のミクロな系内に閉じ込められた状態にある。このような状態のセルロースフィラメントが、仮撚機の加撚工程で、加撚による張力下での高温度の瞬間的な熱処理を受けると、ヒーターに接触したミクロな系内で水分は高温で高圧蒸気化と高温熱水化され、瞬時にして非晶成分と結晶成分からIV型の結晶が形成され、撚糸の形態変形が構造的に記憶されるものと推定される。
【0024】
事実、本発明における高捲縮仮撚加工糸のX線構造解析によると、通常のセルロースフィラメントには観察されないIV型結晶構造に起因する2θ=16°付近に、II型結晶に起因する2θ=12°よりも高い強度のピークが発現する。さらにヒーターから離れた位置にあるミクロな系ほどマイルドに処理されるため、繊維全体としては微細構造的には不均一で、極めて歪の大きい状態(ポテンシャルの高い状態)が瞬時に固定され(水素結合)、解撚工程を通って仮撚加工糸が形成され、巻き取られることになる。
【0025】
この仮撚加工糸は、精練工程や染色工程の湿潤状態で水素結合が切れ、繊維全体として最もポテンシャルの低い構造状態に落ち着こうとするため、トルクが発現し、驚くべきことに、捲縮が保持され、または大きな捲縮が発現するものと推定される。
【0026】
尚、このような高温処理によっても黄変しないのは驚くべきことであるが、その理由は、極めて短時間の処理であること、及び、たとえ黄変物質が発生しても、繊維内部のミクロな系から蒸気が圧力の低い繊維外部へ噴出する際に黄変物質が抽出され、吹き飛ばされるためと推測される。
【0027】
これに対して、従来技術の高圧蒸気処理では、繊維外部も含めた装置系全体を高圧にして、微細構造的には均一な構造変化が完結されるに十分な時間をかけて処理を行うため、歪の残らない構造が形成されてしまうので、SB/S0が0.5以上となるような高い捲縮保持性や大きな捲縮を発現する効果は得られない。また、本発明における製造方法に比べて長時間での処理となるため、黄変や強度劣化が避けられない。
【0028】
本発明における製造方法にて、付与する水分は、水のみ、または、水に浸透剤等の界面活性剤、あるいは目的に応じて各種の機能を付与するための加工剤を添加しても良い。特に、仮撚加工糸の捲縮伸長率をより均一にするためには、水と共に浸透剤等の界面活性剤を付与することが好ましい。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル系活性剤等の非イオン系活性剤やジアルキルサクシネート、ジオクチルスルホサクシネートなどのアニオン系活性剤等を使用する。使用量としては、好ましくは0.1〜20g/リットル、より好ましくは0.5〜10g/リットルである。使用量がこの範囲であると、浸透効果が十分であり、糸が粘着性になることもないので、毛羽が発生しない。また、水と共にグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピリングリコール等のポリアルキレングリコールなどを付与することにより、仮撚加工糸の強度低下を防止することができる。
【0029】
付与する水分は、常温でも温湯でも良いが、夏季や冬季等における水温の差による伸縮伸長率のばらつきが発生するのを防ぐために、15〜25℃に設定することが好ましい。
【0030】
水分の付与は、仮撚加工する前、即ち、クリール仕掛けをする前に別工程で実施しても良く、又、仮撚加工工程での第1ヒーター前でも良いが、経時による水分蒸散による水分率変化を防ぐためには、仮撚加工工程で第1ヒーターの直前で付与するのが好ましい。また、セルロースフィラメントの原糸製造工程における乾燥工程に仮撚機構を組み入れ、一次乾燥時に仮撚工程を組み入れて製造しても良い。
【0031】
水分を付与する方法は、供給糸を水中に走行させる浸漬法、水をノズルから噴出させて付与するノズル法、水で濡れたローラー表面に糸を接触させる単純ローラー法、また、ローラーの前で糸を水に浸漬させるデイップローラー法、走行中の糸に水をシャワーする噴霧法等、何れの方法でも良く、特に限定されないが、糸長方向及び糸断面方向への均一な水分付与の観点から、浸漬法やデイップローラー法が好ましい。
【0032】
付与する水分量は、第1ヒーターに入る前の供給糸の絶乾水分率を20〜130%にするのが好ましく、更に好ましくは30〜100%である。絶乾水分率がこの範囲であると、伸縮伸長率や伸縮伸長率比が大きく、嵩高性や軽量性が十分であり、糸に付与された水分のバラツキが小さいので未解撚が発生せず、高品質の糸が得られ、また、仮撚加工時の糸切れの発生や強伸度物性の低下もない。また、仮撚加工工程において、加撚ゾーンの長さには制限があるため、第1ヒーターに入る前の供給糸の絶乾水分率が高すぎると、処理速度を低下させることが必要となり、生産性の面でも好ましくない。尚、絶乾水分率は(株)ケット科学研究所製の赤外線水分計(FD−240)を用いて測定した。
【0033】
仮撚加工温度は、仮撚加工速度、即ち、湿潤した糸がヒーターゾーンを通過する加熱時間の影響が大きく、例えば、加工速度60〜100m/分、接触式ヒーターゾーンの通過時間が0.69〜1.15秒の場合、第1ヒーター温度は180〜260℃が好ましく、更に好ましくは220〜250℃である。第1ヒーター温度がこの範囲であると、十分な伸縮伸長率及び伸縮伸長率比が得られ、乾燥が十分であるため糸切れの発生や未解撚の発生がなく、高品質の糸が得られ、また、仮撚加工糸が黄変したり強度低下を起こすことがない。
【0034】
生産量を上げる為に、ヒーターゾーンを長くして加熱時間を増すことにより仮撚加工速度をアップすることも考えられるが、適正な加熱時間は0.5〜1.5秒であり、この場合、第1ヒーター通過直後の糸の絶乾水分率を0〜15%にするのが好ましく、5〜12%が更に好ましい。第1ヒーター通過直後の糸の絶乾水分率が15%以下であると乾燥が十分で糸切れの発生がない。
【0035】
また、仮撚加工速度をアップする為に、ヒーターゾーンに入る前に熱ローラーに接触させたり、熱風等にて予備乾燥をしても良い。
【0036】
尚、故意に糸の断面方向に水分付与のバラツキを作り、水分の付いた側と付かない側を生じさせて、バイメタル現象により、沸水処理後に70%以上の大きな伸縮を持った高捲縮仮撚加工糸を作成する事もできる。又、例えば、ローラー法にて故意に断続的にローラーを停止させる等により、糸長方向に水分付与の有無あるいは水分量のバラツキを作り、捲縮ムラのある特殊な高捲縮仮撚加工糸を作ることもできる。
【0037】
本発明における高捲縮仮撚加工糸は、ピン、ニップベルト、ディスク等によって撚をかける仮撚方式により加工することが好ましく、なかでも均一な捲縮を得るためにはピン仮撚方式が好ましい。
【0038】
本発明において、高捲縮仮撚加工糸を得るための好ましいその他の仮撚条件は、下記の通りである。即ち、
仮撚数=(24000/D1/2+590)×(0.6〜1.1)
式中、Dは供給糸の繊度(dtex)を表す。
【0039】
第1フィード率は−3〜10%、テイクアップ(TU)フィード率は1〜8%、加撚張力は0.05〜0.29cN/dtex、解撚張力は、(加撚張力)×(3.0〜8.0)倍である。
【0040】
尚、第2ヒーターを使用した2H仮撚加工糸にしても良い。
【0041】
供給するセルロースフィラメントの原糸は、無撚糸でも甘撚糸でもインターレース交絡した糸でも良く、また、ポリエステルに代表される合成繊維とのインターレース交絡等による複合糸でも良い。
【0042】
製編織するに際し、得られた高捲縮仮撚加工糸を更に追撚しても良く、本発明の目的を損なわない範囲内において、例えば、綿などの天然セルロース繊維やセルロースフィラメントの原糸、有撚糸や紡績糸と混用してもよく、また、合成繊維の原糸、有撚糸等の各種加工糸と混用してもよい。更には、スパンデックス糸を芯にしたカバリング糸など、目的とする編織物や風合いに応じて適宜選定すればよい。混用する場合、本発明における高捲縮仮撚加工糸を30wt%以上用いることが好ましく、さらに好ましくは50wt%以上である。
【0043】
本発明における高捲縮仮撚加工糸を用いた編織物は、染色加工後も捲縮が保持され、または、捲縮が発現することにより、
1.従来、出来なかった軽量性や保温性等に優れたセルロースフィラメントによる丸編地や横編地ができる。即ち、糸の太さ、生地の密度や染色仕上加工等により異なるが、比容積0.03〜0.08cm3/g程度の軽量性を有し、また、保温率20〜50%、接触冷温感(Qmax)70〜130W/m2・℃程度の保温性を有しており、従来のセルロースフィラメントでは考えられないような軽量性、保温性に優れた肌着、インナー、Tシャツ、セーター等が得られる。
【0044】
2.上記の後染めのみならず、有撚糸だけではなく無撚糸でのチーズ染色が可能となり、先染め糸による丸編地や横編地も同様に作ることができる。
【0045】
3.パイル編地では、パイルに原糸や水分を付与しない従来法の仮撚加工糸(以下、従来法仮撚加工糸という)を用いたものに比べ、膨らみが大きく、軽量性や保温性に優れると共に、パイルの保水量が多い等、吸水性に優れたパイル商品ができる。
【0046】
4.また、このパイル編地のパイルをカットした起毛品では、パイルに従来法仮撚加工糸を使用したものは、染色にて捲縮が消失するため、シャーリング時に糸抜けが生じ、良好な品位のものが得られないのに対し、本発明における高捲縮仮撚加工糸を用いたものは、染色後も捲縮が保持される事より糸抜けが発生せず、外観品位や糸立ち性の良好な、ソフトタッチに優れたフリースやベロアとなる。
【0047】
パイル編地やこのような起毛品では、比容積0.04〜0.08cm3/g程度の軽量性を有し、また、保温率40〜70%、接触冷温感(Qmax)50〜100W/m2・℃程度の保温性に優れた物となる。
【0048】
5.織物では、例えば、裏地織物やアウター織物の場合、従来のセルロースフィラメント糸では得られなかった、膨らみ感があって、接触時の冷り感のない暖かみのある触感が得られる。また、従来、比較的不適であった秋冬もの分野展開が可能となると共に、ソフト風合いであるにも関わらず、課題であったバイアス時の生地変形が小さくなり取扱い性の向上が狙え、又、縫目滑脱の改善効果も得られる。併せて、本発明における高捲縮仮撚加工糸は、セルロースIV型の結晶成分が混在した構造となることにより、水膨潤度が低下する。従って、水洗濯時の寸法変化の改善効果も得られる。
【0049】
従って、裏地織物やアウター織物のみならず、例えば冬用のパジャマや寝具シーツ、カバー等の寝具等にも有用である。
【0050】
6.また、水膨潤度が低下することより、繰り返しの洗濯による目空き(隙間)が減少し、また、糸に捲縮がある為、羽毛抜けが改善されことより布団側地やダウンプルーフ生地用途などにも良好なものとなる。
【0051】
7.本発明における高捲縮仮撚加工糸をパイルに使用した起毛織物は、軽量性、保温性に優れた肌触りの良好な肌掛けやタオルケット等となり、また、パイル長を長くして水拭き用ふきんにしたものは、フィラメント1本1本に捲縮がある為、フィラメント間の水保持量が大きい等、吸水性能に優れると共に、前記の如く、本発明の高捲縮仮撚加工糸は、水膨潤度が低下する為、乾燥性にも優れ、ふきん等にも最適である。
【0052】
8.その他、仮撚方向と逆方向に、例えば、撚数=4500〜6400/√dtex程度に追撚した撚糸による丸編物、横編物では、ストレッチバック性に優れた肌着やポロシャツ、Tシャツ、トレーナー、パンツ、セーター等が得られ、又、スパンデックス糸を芯にカバリングしたシングル、ダブルカバリングによる経編物では目ズレのない品位良好な膨らみ感のあるランジェリーや肌着用の生地となる。
【0053】
以上、述べてきた特徴は、合成繊維の仮撚加工糸との交編、交織等による複合布帛にすることによって、より顕著なものに、また、より大きなものにすることも可能である。
【0054】
尚、編組織については、経編地であってもよく、ゲージも特に制限されるわけではなく、例えば12〜36GGの範囲で可能である。
【0055】
又、織組織については、平織、綾織、朱子織、及びこれらの変化組織の何れでも良い。
【0056】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0057】
尚、測定法、評価法は次の通りである。
【0058】
<糸の測定法>
(1)絶乾水分率
(株)ケット科学研究所製の赤外線水分計(FD−240)を用いて測定した。絶乾水分率は、設定温度90℃で、水分率変化が1分間当たり0.1%以内となる時間を恒量時とし、この時の質量を絶乾質量値とし、下記の式にて求めた。
【0059】
絶乾水分率(%)={(湿潤質量−絶乾質量)/絶乾質量}×100
(2)伸縮伸長率
得られた仮撚加工糸を20℃、65%RHの恒温恒湿の室内に約1週間放置した。その後、検尺機にて2cN/糸以下の張力で解舒して綛を作り、1昼夜リラックスさせた状態で調湿し、JIS−L−1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定を行い、5回の平均値を算出した。
【0060】
尚、沸水処理後の伸縮伸長率は、沸水処理前と同様に検尺機にて作った綛を1昼夜リラックスさせた後、綛の状態でガーゼに包み、JIS−L−1013フィラメント収縮率(B法)に準じて、沸騰水中に30分間浸漬させた後、綛を取り出して手で挟んで軽く水を切り、ガーゼを外した後、吊り干しの状態で20℃、65%RHの標準状態の室内にて乾燥及び調湿した後に測定した。
【0061】
(3)沸水処理前後の伸縮伸長率の比(SB/S0)
沸水処理前の仮撚加工糸の伸縮伸長率(S0)と、沸水処理後の仮撚加工糸の伸縮伸長率(SB)との比で表す。
【0062】
(4)セルロースIV型結晶成分の混在比率
X線回析装置(Rigaku−RINT2000広角ゴニオメーター)を使用して、X線源CuK−ALPHAI/40kv/200mA、発散スリット1deg、散乱スリット1deg、受光スリット0.15mm、スキャンスピード2°/min、スキャンステップ0.02°、走査軸2θ/θ、走査範囲5°〜45°の条件にて強度分布を作成し、分布図よりセルロースIV型結晶成分の混在比率を算出した。
【0063】
算出は以下の方法にて行った。
【0064】
図1(実施例1)を例にとって説明すると、図1に示す高捲縮仮撚加工糸の強度分布より、セルロースIV型は、II型では谷となる2θ=16°付近に高い強度のピークが発生することから、このピークが高い程、セルロースIV型の結晶成分が多いと判断される。そこで、図1に示す様に、2θ=10°、14°、17°に垂線を下ろし、この垂線と強度分布線が交わった点を結んだ直線で出来る、2θ=12°、16°をピークとする各々の面積をコンピュター解析にて求め、次式にて、セルロースIV型に起因する2θ=16°をピークとする面積率を求め、これをセルロースIV型結晶成分の混在比率とした。
【0065】
セルロースIV型の混在比率(%)={(16°ピークの面積)/〔(16°ピークの面積)+(12°ピークの面積)〕}×100
<編織物の評価法>
(5)嵩高性
高捲縮仮撚加工糸でスムース組織の丸編や袋天竺組織の横編地等を作成し、常法にて染色加工して染色前後の厚みを測定し、その変化率の大きさを下記の基準に従いランク付けして表した。
【0066】
厚みはJIS−L−1018法に準じて測定し、変化率を下記の式で求めた。
【0067】
厚み変化率(%)={(染色後の厚み)/(染色前の厚み)}×100
◎:120%以上で非常に嵩高性に優れる
○:100%以上、120%未満で嵩高性良好
×:100%未満で嵩高性不良
(6)軽量性(比容積)
上記(5)の染色品の目付をJIS−L−1018法に準じて測定し、単位質量当たりの容積(cm3/g)、即ち、比容積にて評価した。
【0068】
(7)接触冷温感
カトーテック(株)のKES−F7.THERMOLABO−2を用い、規定の熱勾配にある純銅板に試料が接した時に移動する熱量のピーク値、Qmax(W/m2・℃)を測定して評価した。Qmaxが小さい程、暖かみが感じられる。
【0069】
(8)保温率
JIS−L―1018―B法(冷却法)に準じ、保温性試験機を用い、熱源体を試料で覆い、熱源体が36℃から35℃まで1℃温度が降下するのに要する時間を測定した。これを熱源体が裸の場合と比較して下記式にて保温率を求めた。数値が大きい程、保温性がある。
【0070】
保温率(%)=(1−a/b)×100
a:熱源体が裸の場合に、36℃から35℃に冷却するのに要する時間(分)
b:熱源体に試料を取り付けた時、冷却するのに要する時間(分)
(9)品位・風合い
繊維の研究に携わる5人の検査員によって、外観検査による品位及び官能検査による風合いを下記の3段階にて評価し、判定結果を総合してランク付けで表した。
【0071】
◎:全く問題なく良好
○:問題なし
×:問題あり
〔実施例1〜4、比較例1及び2〕
キュプラアンモニウムレーヨンフィラメント84dtex/45f(旭化成製;沸水収縮率4.5%)を用い、仮撚加工機(石川製作所製:IVF−338、加撚機構はピン方式、接触式ヒーター、ヒーター長115cm)の条件を、加工速度100m/分、加熱時間0.69秒、スピンドル回転数230000rpm,仮撚数2300T/m(Z撚)、第1フィード率0%、TUフィード率4%に設定した。
【0072】
実施例1〜3は、クリールから供給された糸に2.9cN/糸の張力を掛け、第1ヒーター前にて水中を走行させる浸漬法で水分を付与した後、鋭角のセラミック板に接触させ、更に、エアーサクションを用いて付着水を除去して絶乾水分率を40%とした後、第1ヒーター温度を250、210、180℃に変化させて高捲縮仮撚加工糸を得た。また、実施例4は、ローラー方式による接触法で水分を付与して絶乾水分率を40%にし、ヒーター温度250℃にて仮撚加工して高捲縮仮撚加工糸を得た。得られた高捲縮仮撚加工糸は各々、沸水処理後の伸縮伸長率が21%、9.8%、4.2%、50%であった。
【0073】
尚、ローラー方式による接触法にて50%の大きな伸縮伸長率が得られたのは、接触式による水分の付与の為に、糸の断面方向で水の付いた面側と付かない面側が発生したことによるバイメタル現象と思われる。
【0074】
得られた加工糸にて、福原V−LEC6、28GG、30吋を用い、4口給糸、給糸張力3gにて、28GGムースを編成し、常法にて染色加工して編地を評価した。評価結果を表1に示す。
【0075】
実施例1と同じ原糸、仮撚機を用い、従来法の供給糸に水分を付与しないこと以外は、実施例1と同様の仮撚条件で仮撚加工して得られた仮撚加工糸(比較例1)、及び仮撚加工に用いた原糸(比較例2)を用いて、実施例1と同様にして28GGスムース編地を作成し評価した。評価結果を表2に示す。
【0076】
表1、2に示す様に、本発明における高捲縮仮撚加工糸を用いた場合は、品位が良好で、染色後も捲縮が保持され、または、捲縮が発現することにより、嵩高性があり軽量感に優れたものとなると共に、接触冷温感(Qmax)が小さく暖かみのある触感で保温率も大きい等、保温性に優れたものとなった。
【0077】
一方、従来法により供給糸に水分を付与しないで製造した仮撚加工糸(従来法仮撚加工糸)を用いた場合は、捲縮が大きく減少し、原糸を用いた場合と同様、嵩高性の劣った、冷り感のある保温性に欠けたものとなった。
【0078】
実施例1〜4で得られた高捲縮仮撚加工糸について、X線測定を行なったところ、図1(実施例1)に示す様に、2θ=16°付近に、通常のセルロースフィラメントには観察されないIV型結晶構造に起因するピークが発現しており、このピークはII型結晶に起因する2θ=12°のピークよりも高い強度であった。
【0079】
このことから、該高捲縮仮撚加工糸は、セルロースII型とIV型の結晶成分が混在したものとなっていることが確認された。又、その混在比率は、各々、58.8%、30.3%、22.5%、28.5%であった。尚、比較例1、2を併せて測定したところ、図2(比較例1)に示す様に、2θ=16°付近にセルロースIV型に起因するピークはなく、明らかにセルロースII型の構造(セルロースIV型の混在比率が0%)であった。
【0080】
〔実施例5、比較例3〕
福原ZPL、30吋、44本給糸にて、基布にはエステルウーリー84dtex/36f、パイル糸に実施例1で得た高捲縮仮撚加工糸、比較例1で得た従来法仮撚加工糸を用いて、各々、パイル長2.7mmの28GGシンカーパイルを編成し、常法にて染色加工した。評価結果を表1、2に示す。
【0081】
表1、2に示す様に、パイルに高捲縮仮撚加工糸を用いた場合は、膨らみが大きく、軽量性や保温性に優れると共に、パイル部の保水量が多い等、吸水性に優れたものとなったが、従来法仮撚加工糸を用いた場合は、膨らみ感のない、保温性の劣ったものとなった。
【0082】
〔実施例6、比較例4〕
実施例5、比較例3で得た28GGシンカーパイルを染色加工した後、パイルをシャーリング仕上げして、それぞれ、実施例6、比較例4のフリース生地を得た。性能評価結果を表1、2に示す。
【0083】
表1、2に示す様に、高捲縮仮撚加工糸を用いたフリースは、膨らみ感のあるソフトタッチに優れ、又、染色後も捲縮が保持される事より糸抜け発生のない外観品位の綺麗な良好なものであった。
【0084】
一方、従来法仮撚加工糸をパイルに使用した場合は、膨らみ感に欠け、染色にて捲縮が消失するため、シャーリング時に糸抜けが生じたり、糸立ち乱れが目立つ等、品位の劣ったものとなった。
【0085】
〔実施例7及び8、比較例5〕
実施例1で得た高捲縮仮撚加工糸、及び、比較例1で得た従来法仮撚加工糸を、それぞれ経糸、緯糸に用いて、経糸84dtex/緯糸84dtex、2/1ツイル組織の裏地織物を作成した。尚、経糸はサイザーでPVAを約3.5%omf付与し、緯糸はエアジェツト織機、500rpmにて緯入れし、得られた生機を常法にて染色加工した。評価結果を表1、2に示す。
【0086】
表1、2に示す様に、高捲縮仮撚加工糸による裏地織物は、膨らみ感があって、接触時の冷り感のない暖かみのあるものであった。また、生地にバイアス方向に力を加えた時の生地変形が小さく、延反や裁断等、縫製時での取扱い性が向上すると共に縫目滑脱の改善効果が得られた。一方、従来法仮撚加工糸による裏地織物は、薄っぺらで冷り感のある触感となると共に、バイアス方向の生地変形が大きく縫製時に取り扱いにくいもであった。
【0087】
尚、実施例7の織物表面には、品位上問題とならない程度の極めて軽微で細やかなカスリ状の緯ムラが見られた。
【0088】
実施例8は、付与する水の中にテキスポートSN―10(日華化学(株)製:脂肪酸系アルキルエーテル系浸透剤)を10g/リットル含有させた以外は、実施例7と同様にして仮撚加工した。得られた高捲縮仮撚加工糸を緯糸に使用して裏地織物を作製した結果、実施例7と同様の特徴や性能を有しており、また、浸透剤の添加により水の浸透性が向上して、糸長方向により均一に水分が付与される為、カスリ状の緯ムラも発生しない高品位な裏地織物となった。
【0089】
〔実施例9、比較例6〕
経糸、綿60/−の緯糸に、実施例1で得た高捲縮仮撚加工糸、比較例1にて水分を付与しないで得た従来法仮撚加工糸を、それぞれ用いて、羽毛布団側生地を作成し、常法にて染色加工仕上した。この生地について、羽毛抜けの代用評価である通気度をJIS−L−1096に準じて評価した。その結果、従来法仮撚加工糸を用いたものは、洗濯1回後で2.2cc/cm2/secとなり、一般的規準の2cc以下を上回った。これに対し、高捲縮仮撚加工糸を用いたものは、水膨潤度が低下することや洗濯後も捲縮が残ること等より、繰り返しの洗濯による目空き(隙間)が少なく、洗濯10回で1.6ccと規準以下となり、ダウンプルーフ生地としても良好なものとなった。
【0090】
また、表1、2に示す様に、実施例1の高捲縮仮撚加工糸を用いたものは、Qmax値が小さく暖かみのある触感であるのに対し、従来法仮撚加工糸を用いたものは冷り感のあるものであった。
【0091】
〔実施例10、比較例7〕
2重ビロード織物の経糸に綿40/2、パイル経糸に実施例1で得た高捲縮仮撚加工糸、比較例1にて水分を付与しないで得た従来法の仮撚加工糸を、それぞれ用い、緯糸にTC20/−を打ち込み、機上でパイルカットしてカット長4mmの片面モケットを作成し、常法にてウィンス染色、タンブラー乾燥した後、シャーリング加工した。評価結果を表1、2に示す。
【0092】
表1、2に示す様に、高捲縮仮撚加工糸を用いたものは、嵩高性に富んだ軽量性、保温性に優れた肌触りの良好な肌掛けとなった。また、カット部のフィラメント1本1本に大きな捲縮がある為、フィラメント間の水保持量が大きく吸水性能に優れ、また、セルロースIV型の結晶成分が混在している為、水膨潤度が小さく乾燥性に優れていることより、水拭き用のふきん等にも適したものとなった。
【0093】
一方、従来法仮撚加工糸を用いたものは、膨らみ感のない肌触り感の硬い劣ったものであった。
【0094】
〔実施例11及び12、比較例8〕
ビスコースレーヨンフィラメント167dtex/50f(旭化成製;沸水収縮率6.5%)を用い、実施例1と同様の仮撚機を用い、加工速度60m/分、加熱時間1.15秒、スピンドル回転数114000rpm、仮撚数1900T/m(Z撚)、第1フィード率0%、TUフィード率4%に設定した。
【0095】
実施例1と同様の方法で供給糸の絶乾水分率を40%とした後、第1ヒーター温度を250℃にて仮撚加工し、沸水処理後の伸縮伸長率31%の高捲縮仮撚加工糸を実施例11とした。この加工糸を用いて、2本給糸による14GG天竺組織の横編地を作成し、定法にて染色仕上げし、編地の嵩高性、軽量性及び保温性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0096】
実施例12は、定量ポンプにて、2.5cc/分の吐出量でノズルを介して水を付与し、供給糸の絶乾水分率を40%にした以外は、実施例11と同様の仮撚加工を行った。この仮撚加工糸は、ノズルから吐出される水分がポンプの脈打ち作動により、断続的に付与される為、糸長方向に付いた部分と付かない部分、また、多く付いた部分や少ない部分を有した不均一な水分付与となった。これは、捩れやバイメタル現象因と思われるが、これまで得たことのない、伸縮伸長率の比が9.3で沸水処理後70.3%と言う大きな伸縮伸長率の高捲縮仮撚加工糸となった。得られた仮撚加工糸を用いて、実施例11と同様に横編地を得た。評価結果を表1に示す。
【0097】
表1に示す様に、本発明の高捲縮仮撚加工糸を用いたものは、何れも、嵩高性があり軽量感に優れ、また、保温性に優れたものとなった。
【0098】
実施例11で得られた高捲縮仮撚加工糸についてX線測定した結果、セルロースIV型の結晶成分が55.1%混在していることが確認された。
【0099】
比較例8は、実施例11と同じ原糸、仮撚機を用い、従来法の供給糸に水分を付与しないこと以外は、実施例11と同様の仮撚条件で仮撚加工した。得られた仮撚加工糸を用いた横編地は、嵩高性に劣り、保温性に欠けたものとなった。
【0100】
〔実施例13、比較例9〕
実施例11で得た、熱水処理後の伸縮伸長率31%の高捲縮仮撚加工糸、及び比較例8で得た従来法仮撚加工糸を用いて、それぞれ、巻密度0.2g/cm3の500gソフト巻きチーズを作成し、常法にて直接染料によるチーズ染色を行った。
【0101】
得られた染色糸の伸縮伸長率を測定すると共に、実施例11、比較例8と同様にして横編地を作成し、編地の嵩高性、軽量性及び保温性を評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0102】
実施例13では、高捲縮仮撚加工糸を用いた染色糸の伸縮伸長率は4%であり、表1に示すように、嵩高性のある軽量性と保温性に優れたものとなった。一方、比較例9では、従来法仮撚加工糸の染色糸は伸縮伸長率は消失してゼロとなり、膨らみ感の全くない薄っぺらな横編地となった。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【発明の効果】
本発明の高捲縮仮撚加工糸は、捲縮の形態保持性と耐久性に優れているので、染色後も仮撚加工糸の捲縮が十分に生かされ、膨らみ感があり、嵩高性、軽量性及び保温性に富む編織物が得られる。
【0106】
また、本発明の高捲縮仮撚加工糸は、セルロース系繊維で構成されている為、発色性に優れており鮮明な色彩を呈するので、特に婦人のアウター衣料や裏地織物として、また、吸放湿に優れていることより、肌着等のインナー分野や寝具等、各種の用途分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明(実施例1)における高捲縮仮撚加工糸のX線チャート図である。
【図2】水分を付与しないで製造した(比較例1)従来法仮撚加工糸のX線チャート図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロース系繊維の高捲縮仮撚加工糸を用いてなる編織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロース系繊維は、発色性に優れて鮮明な色彩を呈する為、婦人のアウター衣料に幅広く供されている。横編セーター用途など、嵩高性の要求されるセルロース系繊維の嵩高加工としては、インターレース混繊、仮撚加工、デニット加工等が挙げられる。
【0003】
しかしながら、セルロース系繊維は水により膨潤して膨潤度が増大するので、嵩高性が消失しやすい。また、横編分野においては比較的太い繊度のセルロース系繊維を用いた嵩高加工糸が用いられるが、比重がポリアクリル系繊維やポリエステル系繊維より大きく、その上、染色中あるいは製品の洗濯などの湿潤状態での形態保持性に問題がある。即ち、嵩高性が消失したり、膨らみ感がなくなり、「ダラッ」とした重量感のある製品となる。特に洗濯した場合には、セルロース系繊維の嵩高性が消失してしまうことがあった。
【0004】
その対応策として、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル系などの合成繊維と複合して使用されることが多く、セルロース系繊維100%で嵩高性があり、かつ、軽量感や保温性のある製品は得られていないのが現状である。
【0005】
捲縮伸長率(本願発明で言う伸縮伸長率)/捲縮数で定義されるクリンプ係数が0.02〜0.20である再生セルロース長繊維糸条からなる仮撚加工糸が開示されている(例えば、特許文献1参照)が、本発明者らの追試によると、該加工糸は、沸水処理後の伸縮伸長率が3%以下と小さく、沸水処理前後の伸縮伸長率の比は0.5未満となり、十分な嵩高性は得られない。
【0006】
また、加撚−熱固定−解撚という、所謂、加撚−解撚法による堅牢性の高い捲縮糸が開示されている(例えば、特許文献2参照)が、熱固定が不十分で、沸水処理後の伸縮伸長率は5%未満と小さく、十分な嵩高性は得られないうえに、3工程という多くの工程を要するので生産性に劣る。
【0007】
また、メチロール化セルロース繊維において、メチロール化度0.05、膨潤度0.5〜3.5の湿潤セルロース糸に嵩高加工を施すことが開示されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3によれば、リンターパルプ、パラホルムアルデヒド、DMSOを原料とする原液を紡糸後、湿熱延伸を施した後に適度な水洗、乾燥を行い、仮撚加工に供したと記載されている。仮撚加工に供する時の該糸の水分率は定かでないが、仮撚加工に供する際のボビンあるいはコーンなどからの解舒性等を考慮すると、糸の水分率は公定水分率から13%程度の範囲内にあると推定される。更に、仮撚加工後、沸水処理により、完全に再生させて、セルロースII型の結晶構造にしたものである。即ち、ホルムアルデヒドのような架橋性の高い化合物を混入させ、低水分率下で仮撚加工を施したものである。従って、特許文献3に記載の発明は、繊維製造における原料が本発明と異なるうえ、製造条件も異なり、また、得られた繊維の結晶構造も本発明とは異なるものである。
【0008】
また、絹糸にアミノ酸溶液を付与してから仮撚加工する方法が開示されている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7参照)。これらの文献に記載の発明は、絹に対して親和性の高いアミノ酸による賦型効果にもとづくものであり、このような賦型効果は、アミノ酸と親和性の低い綿などのセルロース繊維や再生セルロース繊維に対しては期待できない。
【0009】
さらに、リヨセル繊維において、湿熱処理(60%水分率)により押し込み捲縮を付与する方法(例えば、特許文献8参照)や、セルロースからなる繊維を高圧蒸気で処理する方法で、デニット加工糸やギヤ加工糸の形状を記憶処理する方法(例えば、特許文献9参照)が開示されている。しかし、これらの方法は、ヤーン単位での捲縮であり、前述のものに比べて伸縮保持率は高いものの、沸水処理前後の伸縮伸長率の比は0.5未満であり、本発明で意図するような、沸水処理後に捲縮が大きく発現して、優れた嵩高感と軽量感が得られるというレベルには程遠い。また、フィラメント単位の捲縮にもなっていないので表面品位が悪くなる。
【0010】
従って、フィラメントの1本1本に捲縮がかかっている、所謂、仮撚加工糸であって、合成繊維の仮撚加工糸のように、精練や染色工程での熱水処理後に捲縮が大きく発現し、嵩高性があって、布帛としても軽量感や保温性に優れたセルロースフィラメントからなる高捲縮仮撚加工糸による編織物は未だ得られていないのが現状である。
【0011】
【特許文献1】
特許第2647153号公報
【特許文献2】
特公昭31−1950号公報
【特許文献3】
特開昭57−101006号公報
【特許文献4】
特開昭62−215029号公報
【特許文献5】
特開昭63−315627号公報
【特許文献6】
特開平1−183534号公報
【特許文献7】
特開平1−183535号公報
【特許文献8】
特表平9−509987号公報
【特許文献9】
特開平5−33259号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、布帛での精練や染色等の熱水処理工程で、捲縮を保持しさらには捲縮を大きく発現するようなセルロースフィラメントの高捲縮仮撚加工糸を用いてなり、嵩高性があり、布帛としての軽量感や保温性、洗濯耐久性に優れた編織物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来のセルロースに関する技術思想にはなかった、セルロース繊維内部の微細構造空間に着目して構造変化と物理的歪をコントロールすることにより、精練や染色時における熱水処理で捲縮が保持または大きく発現するという可能性を見出し、その知見に基づき技術開発を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は下記の通りである。
【0015】
1.セルロースフィラメントからなり、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上、沸水処理前の伸縮伸長率(S0)との比(SB/S0)が0.5以上である高捲縮仮撚加工糸からなる編織物。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明に用いるセルロースフィラメントとしては、例えば、ビスコースレーヨン、キュプラアンモニウムレーヨンなどの再生セルロース繊維等、セルロース繊維のフィラメントであればよい。セルロースフィラメントの繊度は所望により適宜選定すれば良く、例えば、単糸繊度としては0.8〜5.5dtex、フィラメント数20〜120本、トータル繊度は56〜330dtex程度のものが好ましく用いられる。
【0018】
本発明において、高捲縮仮撚加工糸は、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)は4%以上であり、好ましくは7%以上、50%以下である。伸縮伸長率はJIS−L−1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定した。SBが4%以上であると、十分な嵩高性と軽量感が得られる。尚、SBが大きすぎると、嵩高性は大きいものの、凹凸感のある編地となり外観が損なわれる傾向がある。
【0019】
本発明において、高捲縮仮撚加工糸は、沸水処理前後の伸縮伸長率比(SB/S0)が0.5以上であり、好ましくは0.7〜10以下である。SB/S0とは、沸水処理して乾燥した後の仮撚加工糸の伸縮伸長率(SB)と、沸水処理前の仮撚加工糸の伸縮伸長率(S0)との比である。SB/S0が0.5未満では、精練や染色に基づく熱水処理で嵩高性が損なわれる。SB/S0が大きい値となっても本発明の効果を達成することができるが、10を超えると、製品において凹凸感が目立ち、外観品位が低下する可能性がある。
【0020】
本発明において、高捲縮仮撚加工糸は、X線回析による算出法(後記する)にて、セルロースIV型結晶成分が20%以上,好ましくは20〜60%混在するのが好ましい。この範囲であると、セルロースIV型の特徴である湿潤処理による形態保持性が十分に発揮される。
【0021】
本発明において、高捲縮仮撚加工糸は、仮撚加工する前の供給糸に水分を付与し、加撚時にヒーター温度180℃以上の高温で処理をすることにより製造される。
【0022】
本発明における高捲縮仮撚加工糸が、従来技術では達成し得なかったほどの、熱水処理前後における高い捲縮保持性を有すること、または熱水処理により捲縮の発現が更に増大するという能力を有することに関するメカニズムは完全に解明されているわけではないが、以下のように推定される。
【0023】
仮撚加工前にセルロースフィラメントに付与された水分は、非晶領域やそれを取り囲む結晶成分の界面にも存在しており、微細構造的には水分は無数のミクロな系内に閉じ込められた状態にある。このような状態のセルロースフィラメントが、仮撚機の加撚工程で、加撚による張力下での高温度の瞬間的な熱処理を受けると、ヒーターに接触したミクロな系内で水分は高温で高圧蒸気化と高温熱水化され、瞬時にして非晶成分と結晶成分からIV型の結晶が形成され、撚糸の形態変形が構造的に記憶されるものと推定される。
【0024】
事実、本発明における高捲縮仮撚加工糸のX線構造解析によると、通常のセルロースフィラメントには観察されないIV型結晶構造に起因する2θ=16°付近に、II型結晶に起因する2θ=12°よりも高い強度のピークが発現する。さらにヒーターから離れた位置にあるミクロな系ほどマイルドに処理されるため、繊維全体としては微細構造的には不均一で、極めて歪の大きい状態(ポテンシャルの高い状態)が瞬時に固定され(水素結合)、解撚工程を通って仮撚加工糸が形成され、巻き取られることになる。
【0025】
この仮撚加工糸は、精練工程や染色工程の湿潤状態で水素結合が切れ、繊維全体として最もポテンシャルの低い構造状態に落ち着こうとするため、トルクが発現し、驚くべきことに、捲縮が保持され、または大きな捲縮が発現するものと推定される。
【0026】
尚、このような高温処理によっても黄変しないのは驚くべきことであるが、その理由は、極めて短時間の処理であること、及び、たとえ黄変物質が発生しても、繊維内部のミクロな系から蒸気が圧力の低い繊維外部へ噴出する際に黄変物質が抽出され、吹き飛ばされるためと推測される。
【0027】
これに対して、従来技術の高圧蒸気処理では、繊維外部も含めた装置系全体を高圧にして、微細構造的には均一な構造変化が完結されるに十分な時間をかけて処理を行うため、歪の残らない構造が形成されてしまうので、SB/S0が0.5以上となるような高い捲縮保持性や大きな捲縮を発現する効果は得られない。また、本発明における製造方法に比べて長時間での処理となるため、黄変や強度劣化が避けられない。
【0028】
本発明における製造方法にて、付与する水分は、水のみ、または、水に浸透剤等の界面活性剤、あるいは目的に応じて各種の機能を付与するための加工剤を添加しても良い。特に、仮撚加工糸の捲縮伸長率をより均一にするためには、水と共に浸透剤等の界面活性剤を付与することが好ましい。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル系活性剤等の非イオン系活性剤やジアルキルサクシネート、ジオクチルスルホサクシネートなどのアニオン系活性剤等を使用する。使用量としては、好ましくは0.1〜20g/リットル、より好ましくは0.5〜10g/リットルである。使用量がこの範囲であると、浸透効果が十分であり、糸が粘着性になることもないので、毛羽が発生しない。また、水と共にグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピリングリコール等のポリアルキレングリコールなどを付与することにより、仮撚加工糸の強度低下を防止することができる。
【0029】
付与する水分は、常温でも温湯でも良いが、夏季や冬季等における水温の差による伸縮伸長率のばらつきが発生するのを防ぐために、15〜25℃に設定することが好ましい。
【0030】
水分の付与は、仮撚加工する前、即ち、クリール仕掛けをする前に別工程で実施しても良く、又、仮撚加工工程での第1ヒーター前でも良いが、経時による水分蒸散による水分率変化を防ぐためには、仮撚加工工程で第1ヒーターの直前で付与するのが好ましい。また、セルロースフィラメントの原糸製造工程における乾燥工程に仮撚機構を組み入れ、一次乾燥時に仮撚工程を組み入れて製造しても良い。
【0031】
水分を付与する方法は、供給糸を水中に走行させる浸漬法、水をノズルから噴出させて付与するノズル法、水で濡れたローラー表面に糸を接触させる単純ローラー法、また、ローラーの前で糸を水に浸漬させるデイップローラー法、走行中の糸に水をシャワーする噴霧法等、何れの方法でも良く、特に限定されないが、糸長方向及び糸断面方向への均一な水分付与の観点から、浸漬法やデイップローラー法が好ましい。
【0032】
付与する水分量は、第1ヒーターに入る前の供給糸の絶乾水分率を20〜130%にするのが好ましく、更に好ましくは30〜100%である。絶乾水分率がこの範囲であると、伸縮伸長率や伸縮伸長率比が大きく、嵩高性や軽量性が十分であり、糸に付与された水分のバラツキが小さいので未解撚が発生せず、高品質の糸が得られ、また、仮撚加工時の糸切れの発生や強伸度物性の低下もない。また、仮撚加工工程において、加撚ゾーンの長さには制限があるため、第1ヒーターに入る前の供給糸の絶乾水分率が高すぎると、処理速度を低下させることが必要となり、生産性の面でも好ましくない。尚、絶乾水分率は(株)ケット科学研究所製の赤外線水分計(FD−240)を用いて測定した。
【0033】
仮撚加工温度は、仮撚加工速度、即ち、湿潤した糸がヒーターゾーンを通過する加熱時間の影響が大きく、例えば、加工速度60〜100m/分、接触式ヒーターゾーンの通過時間が0.69〜1.15秒の場合、第1ヒーター温度は180〜260℃が好ましく、更に好ましくは220〜250℃である。第1ヒーター温度がこの範囲であると、十分な伸縮伸長率及び伸縮伸長率比が得られ、乾燥が十分であるため糸切れの発生や未解撚の発生がなく、高品質の糸が得られ、また、仮撚加工糸が黄変したり強度低下を起こすことがない。
【0034】
生産量を上げる為に、ヒーターゾーンを長くして加熱時間を増すことにより仮撚加工速度をアップすることも考えられるが、適正な加熱時間は0.5〜1.5秒であり、この場合、第1ヒーター通過直後の糸の絶乾水分率を0〜15%にするのが好ましく、5〜12%が更に好ましい。第1ヒーター通過直後の糸の絶乾水分率が15%以下であると乾燥が十分で糸切れの発生がない。
【0035】
また、仮撚加工速度をアップする為に、ヒーターゾーンに入る前に熱ローラーに接触させたり、熱風等にて予備乾燥をしても良い。
【0036】
尚、故意に糸の断面方向に水分付与のバラツキを作り、水分の付いた側と付かない側を生じさせて、バイメタル現象により、沸水処理後に70%以上の大きな伸縮を持った高捲縮仮撚加工糸を作成する事もできる。又、例えば、ローラー法にて故意に断続的にローラーを停止させる等により、糸長方向に水分付与の有無あるいは水分量のバラツキを作り、捲縮ムラのある特殊な高捲縮仮撚加工糸を作ることもできる。
【0037】
本発明における高捲縮仮撚加工糸は、ピン、ニップベルト、ディスク等によって撚をかける仮撚方式により加工することが好ましく、なかでも均一な捲縮を得るためにはピン仮撚方式が好ましい。
【0038】
本発明において、高捲縮仮撚加工糸を得るための好ましいその他の仮撚条件は、下記の通りである。即ち、
仮撚数=(24000/D1/2+590)×(0.6〜1.1)
式中、Dは供給糸の繊度(dtex)を表す。
【0039】
第1フィード率は−3〜10%、テイクアップ(TU)フィード率は1〜8%、加撚張力は0.05〜0.29cN/dtex、解撚張力は、(加撚張力)×(3.0〜8.0)倍である。
【0040】
尚、第2ヒーターを使用した2H仮撚加工糸にしても良い。
【0041】
供給するセルロースフィラメントの原糸は、無撚糸でも甘撚糸でもインターレース交絡した糸でも良く、また、ポリエステルに代表される合成繊維とのインターレース交絡等による複合糸でも良い。
【0042】
製編織するに際し、得られた高捲縮仮撚加工糸を更に追撚しても良く、本発明の目的を損なわない範囲内において、例えば、綿などの天然セルロース繊維やセルロースフィラメントの原糸、有撚糸や紡績糸と混用してもよく、また、合成繊維の原糸、有撚糸等の各種加工糸と混用してもよい。更には、スパンデックス糸を芯にしたカバリング糸など、目的とする編織物や風合いに応じて適宜選定すればよい。混用する場合、本発明における高捲縮仮撚加工糸を30wt%以上用いることが好ましく、さらに好ましくは50wt%以上である。
【0043】
本発明における高捲縮仮撚加工糸を用いた編織物は、染色加工後も捲縮が保持され、または、捲縮が発現することにより、
1.従来、出来なかった軽量性や保温性等に優れたセルロースフィラメントによる丸編地や横編地ができる。即ち、糸の太さ、生地の密度や染色仕上加工等により異なるが、比容積0.03〜0.08cm3/g程度の軽量性を有し、また、保温率20〜50%、接触冷温感(Qmax)70〜130W/m2・℃程度の保温性を有しており、従来のセルロースフィラメントでは考えられないような軽量性、保温性に優れた肌着、インナー、Tシャツ、セーター等が得られる。
【0044】
2.上記の後染めのみならず、有撚糸だけではなく無撚糸でのチーズ染色が可能となり、先染め糸による丸編地や横編地も同様に作ることができる。
【0045】
3.パイル編地では、パイルに原糸や水分を付与しない従来法の仮撚加工糸(以下、従来法仮撚加工糸という)を用いたものに比べ、膨らみが大きく、軽量性や保温性に優れると共に、パイルの保水量が多い等、吸水性に優れたパイル商品ができる。
【0046】
4.また、このパイル編地のパイルをカットした起毛品では、パイルに従来法仮撚加工糸を使用したものは、染色にて捲縮が消失するため、シャーリング時に糸抜けが生じ、良好な品位のものが得られないのに対し、本発明における高捲縮仮撚加工糸を用いたものは、染色後も捲縮が保持される事より糸抜けが発生せず、外観品位や糸立ち性の良好な、ソフトタッチに優れたフリースやベロアとなる。
【0047】
パイル編地やこのような起毛品では、比容積0.04〜0.08cm3/g程度の軽量性を有し、また、保温率40〜70%、接触冷温感(Qmax)50〜100W/m2・℃程度の保温性に優れた物となる。
【0048】
5.織物では、例えば、裏地織物やアウター織物の場合、従来のセルロースフィラメント糸では得られなかった、膨らみ感があって、接触時の冷り感のない暖かみのある触感が得られる。また、従来、比較的不適であった秋冬もの分野展開が可能となると共に、ソフト風合いであるにも関わらず、課題であったバイアス時の生地変形が小さくなり取扱い性の向上が狙え、又、縫目滑脱の改善効果も得られる。併せて、本発明における高捲縮仮撚加工糸は、セルロースIV型の結晶成分が混在した構造となることにより、水膨潤度が低下する。従って、水洗濯時の寸法変化の改善効果も得られる。
【0049】
従って、裏地織物やアウター織物のみならず、例えば冬用のパジャマや寝具シーツ、カバー等の寝具等にも有用である。
【0050】
6.また、水膨潤度が低下することより、繰り返しの洗濯による目空き(隙間)が減少し、また、糸に捲縮がある為、羽毛抜けが改善されことより布団側地やダウンプルーフ生地用途などにも良好なものとなる。
【0051】
7.本発明における高捲縮仮撚加工糸をパイルに使用した起毛織物は、軽量性、保温性に優れた肌触りの良好な肌掛けやタオルケット等となり、また、パイル長を長くして水拭き用ふきんにしたものは、フィラメント1本1本に捲縮がある為、フィラメント間の水保持量が大きい等、吸水性能に優れると共に、前記の如く、本発明の高捲縮仮撚加工糸は、水膨潤度が低下する為、乾燥性にも優れ、ふきん等にも最適である。
【0052】
8.その他、仮撚方向と逆方向に、例えば、撚数=4500〜6400/√dtex程度に追撚した撚糸による丸編物、横編物では、ストレッチバック性に優れた肌着やポロシャツ、Tシャツ、トレーナー、パンツ、セーター等が得られ、又、スパンデックス糸を芯にカバリングしたシングル、ダブルカバリングによる経編物では目ズレのない品位良好な膨らみ感のあるランジェリーや肌着用の生地となる。
【0053】
以上、述べてきた特徴は、合成繊維の仮撚加工糸との交編、交織等による複合布帛にすることによって、より顕著なものに、また、より大きなものにすることも可能である。
【0054】
尚、編組織については、経編地であってもよく、ゲージも特に制限されるわけではなく、例えば12〜36GGの範囲で可能である。
【0055】
又、織組織については、平織、綾織、朱子織、及びこれらの変化組織の何れでも良い。
【0056】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0057】
尚、測定法、評価法は次の通りである。
【0058】
<糸の測定法>
(1)絶乾水分率
(株)ケット科学研究所製の赤外線水分計(FD−240)を用いて測定した。絶乾水分率は、設定温度90℃で、水分率変化が1分間当たり0.1%以内となる時間を恒量時とし、この時の質量を絶乾質量値とし、下記の式にて求めた。
【0059】
絶乾水分率(%)={(湿潤質量−絶乾質量)/絶乾質量}×100
(2)伸縮伸長率
得られた仮撚加工糸を20℃、65%RHの恒温恒湿の室内に約1週間放置した。その後、検尺機にて2cN/糸以下の張力で解舒して綛を作り、1昼夜リラックスさせた状態で調湿し、JIS−L−1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定を行い、5回の平均値を算出した。
【0060】
尚、沸水処理後の伸縮伸長率は、沸水処理前と同様に検尺機にて作った綛を1昼夜リラックスさせた後、綛の状態でガーゼに包み、JIS−L−1013フィラメント収縮率(B法)に準じて、沸騰水中に30分間浸漬させた後、綛を取り出して手で挟んで軽く水を切り、ガーゼを外した後、吊り干しの状態で20℃、65%RHの標準状態の室内にて乾燥及び調湿した後に測定した。
【0061】
(3)沸水処理前後の伸縮伸長率の比(SB/S0)
沸水処理前の仮撚加工糸の伸縮伸長率(S0)と、沸水処理後の仮撚加工糸の伸縮伸長率(SB)との比で表す。
【0062】
(4)セルロースIV型結晶成分の混在比率
X線回析装置(Rigaku−RINT2000広角ゴニオメーター)を使用して、X線源CuK−ALPHAI/40kv/200mA、発散スリット1deg、散乱スリット1deg、受光スリット0.15mm、スキャンスピード2°/min、スキャンステップ0.02°、走査軸2θ/θ、走査範囲5°〜45°の条件にて強度分布を作成し、分布図よりセルロースIV型結晶成分の混在比率を算出した。
【0063】
算出は以下の方法にて行った。
【0064】
図1(実施例1)を例にとって説明すると、図1に示す高捲縮仮撚加工糸の強度分布より、セルロースIV型は、II型では谷となる2θ=16°付近に高い強度のピークが発生することから、このピークが高い程、セルロースIV型の結晶成分が多いと判断される。そこで、図1に示す様に、2θ=10°、14°、17°に垂線を下ろし、この垂線と強度分布線が交わった点を結んだ直線で出来る、2θ=12°、16°をピークとする各々の面積をコンピュター解析にて求め、次式にて、セルロースIV型に起因する2θ=16°をピークとする面積率を求め、これをセルロースIV型結晶成分の混在比率とした。
【0065】
セルロースIV型の混在比率(%)={(16°ピークの面積)/〔(16°ピークの面積)+(12°ピークの面積)〕}×100
<編織物の評価法>
(5)嵩高性
高捲縮仮撚加工糸でスムース組織の丸編や袋天竺組織の横編地等を作成し、常法にて染色加工して染色前後の厚みを測定し、その変化率の大きさを下記の基準に従いランク付けして表した。
【0066】
厚みはJIS−L−1018法に準じて測定し、変化率を下記の式で求めた。
【0067】
厚み変化率(%)={(染色後の厚み)/(染色前の厚み)}×100
◎:120%以上で非常に嵩高性に優れる
○:100%以上、120%未満で嵩高性良好
×:100%未満で嵩高性不良
(6)軽量性(比容積)
上記(5)の染色品の目付をJIS−L−1018法に準じて測定し、単位質量当たりの容積(cm3/g)、即ち、比容積にて評価した。
【0068】
(7)接触冷温感
カトーテック(株)のKES−F7.THERMOLABO−2を用い、規定の熱勾配にある純銅板に試料が接した時に移動する熱量のピーク値、Qmax(W/m2・℃)を測定して評価した。Qmaxが小さい程、暖かみが感じられる。
【0069】
(8)保温率
JIS−L―1018―B法(冷却法)に準じ、保温性試験機を用い、熱源体を試料で覆い、熱源体が36℃から35℃まで1℃温度が降下するのに要する時間を測定した。これを熱源体が裸の場合と比較して下記式にて保温率を求めた。数値が大きい程、保温性がある。
【0070】
保温率(%)=(1−a/b)×100
a:熱源体が裸の場合に、36℃から35℃に冷却するのに要する時間(分)
b:熱源体に試料を取り付けた時、冷却するのに要する時間(分)
(9)品位・風合い
繊維の研究に携わる5人の検査員によって、外観検査による品位及び官能検査による風合いを下記の3段階にて評価し、判定結果を総合してランク付けで表した。
【0071】
◎:全く問題なく良好
○:問題なし
×:問題あり
〔実施例1〜4、比較例1及び2〕
キュプラアンモニウムレーヨンフィラメント84dtex/45f(旭化成製;沸水収縮率4.5%)を用い、仮撚加工機(石川製作所製:IVF−338、加撚機構はピン方式、接触式ヒーター、ヒーター長115cm)の条件を、加工速度100m/分、加熱時間0.69秒、スピンドル回転数230000rpm,仮撚数2300T/m(Z撚)、第1フィード率0%、TUフィード率4%に設定した。
【0072】
実施例1〜3は、クリールから供給された糸に2.9cN/糸の張力を掛け、第1ヒーター前にて水中を走行させる浸漬法で水分を付与した後、鋭角のセラミック板に接触させ、更に、エアーサクションを用いて付着水を除去して絶乾水分率を40%とした後、第1ヒーター温度を250、210、180℃に変化させて高捲縮仮撚加工糸を得た。また、実施例4は、ローラー方式による接触法で水分を付与して絶乾水分率を40%にし、ヒーター温度250℃にて仮撚加工して高捲縮仮撚加工糸を得た。得られた高捲縮仮撚加工糸は各々、沸水処理後の伸縮伸長率が21%、9.8%、4.2%、50%であった。
【0073】
尚、ローラー方式による接触法にて50%の大きな伸縮伸長率が得られたのは、接触式による水分の付与の為に、糸の断面方向で水の付いた面側と付かない面側が発生したことによるバイメタル現象と思われる。
【0074】
得られた加工糸にて、福原V−LEC6、28GG、30吋を用い、4口給糸、給糸張力3gにて、28GGムースを編成し、常法にて染色加工して編地を評価した。評価結果を表1に示す。
【0075】
実施例1と同じ原糸、仮撚機を用い、従来法の供給糸に水分を付与しないこと以外は、実施例1と同様の仮撚条件で仮撚加工して得られた仮撚加工糸(比較例1)、及び仮撚加工に用いた原糸(比較例2)を用いて、実施例1と同様にして28GGスムース編地を作成し評価した。評価結果を表2に示す。
【0076】
表1、2に示す様に、本発明における高捲縮仮撚加工糸を用いた場合は、品位が良好で、染色後も捲縮が保持され、または、捲縮が発現することにより、嵩高性があり軽量感に優れたものとなると共に、接触冷温感(Qmax)が小さく暖かみのある触感で保温率も大きい等、保温性に優れたものとなった。
【0077】
一方、従来法により供給糸に水分を付与しないで製造した仮撚加工糸(従来法仮撚加工糸)を用いた場合は、捲縮が大きく減少し、原糸を用いた場合と同様、嵩高性の劣った、冷り感のある保温性に欠けたものとなった。
【0078】
実施例1〜4で得られた高捲縮仮撚加工糸について、X線測定を行なったところ、図1(実施例1)に示す様に、2θ=16°付近に、通常のセルロースフィラメントには観察されないIV型結晶構造に起因するピークが発現しており、このピークはII型結晶に起因する2θ=12°のピークよりも高い強度であった。
【0079】
このことから、該高捲縮仮撚加工糸は、セルロースII型とIV型の結晶成分が混在したものとなっていることが確認された。又、その混在比率は、各々、58.8%、30.3%、22.5%、28.5%であった。尚、比較例1、2を併せて測定したところ、図2(比較例1)に示す様に、2θ=16°付近にセルロースIV型に起因するピークはなく、明らかにセルロースII型の構造(セルロースIV型の混在比率が0%)であった。
【0080】
〔実施例5、比較例3〕
福原ZPL、30吋、44本給糸にて、基布にはエステルウーリー84dtex/36f、パイル糸に実施例1で得た高捲縮仮撚加工糸、比較例1で得た従来法仮撚加工糸を用いて、各々、パイル長2.7mmの28GGシンカーパイルを編成し、常法にて染色加工した。評価結果を表1、2に示す。
【0081】
表1、2に示す様に、パイルに高捲縮仮撚加工糸を用いた場合は、膨らみが大きく、軽量性や保温性に優れると共に、パイル部の保水量が多い等、吸水性に優れたものとなったが、従来法仮撚加工糸を用いた場合は、膨らみ感のない、保温性の劣ったものとなった。
【0082】
〔実施例6、比較例4〕
実施例5、比較例3で得た28GGシンカーパイルを染色加工した後、パイルをシャーリング仕上げして、それぞれ、実施例6、比較例4のフリース生地を得た。性能評価結果を表1、2に示す。
【0083】
表1、2に示す様に、高捲縮仮撚加工糸を用いたフリースは、膨らみ感のあるソフトタッチに優れ、又、染色後も捲縮が保持される事より糸抜け発生のない外観品位の綺麗な良好なものであった。
【0084】
一方、従来法仮撚加工糸をパイルに使用した場合は、膨らみ感に欠け、染色にて捲縮が消失するため、シャーリング時に糸抜けが生じたり、糸立ち乱れが目立つ等、品位の劣ったものとなった。
【0085】
〔実施例7及び8、比較例5〕
実施例1で得た高捲縮仮撚加工糸、及び、比較例1で得た従来法仮撚加工糸を、それぞれ経糸、緯糸に用いて、経糸84dtex/緯糸84dtex、2/1ツイル組織の裏地織物を作成した。尚、経糸はサイザーでPVAを約3.5%omf付与し、緯糸はエアジェツト織機、500rpmにて緯入れし、得られた生機を常法にて染色加工した。評価結果を表1、2に示す。
【0086】
表1、2に示す様に、高捲縮仮撚加工糸による裏地織物は、膨らみ感があって、接触時の冷り感のない暖かみのあるものであった。また、生地にバイアス方向に力を加えた時の生地変形が小さく、延反や裁断等、縫製時での取扱い性が向上すると共に縫目滑脱の改善効果が得られた。一方、従来法仮撚加工糸による裏地織物は、薄っぺらで冷り感のある触感となると共に、バイアス方向の生地変形が大きく縫製時に取り扱いにくいもであった。
【0087】
尚、実施例7の織物表面には、品位上問題とならない程度の極めて軽微で細やかなカスリ状の緯ムラが見られた。
【0088】
実施例8は、付与する水の中にテキスポートSN―10(日華化学(株)製:脂肪酸系アルキルエーテル系浸透剤)を10g/リットル含有させた以外は、実施例7と同様にして仮撚加工した。得られた高捲縮仮撚加工糸を緯糸に使用して裏地織物を作製した結果、実施例7と同様の特徴や性能を有しており、また、浸透剤の添加により水の浸透性が向上して、糸長方向により均一に水分が付与される為、カスリ状の緯ムラも発生しない高品位な裏地織物となった。
【0089】
〔実施例9、比較例6〕
経糸、綿60/−の緯糸に、実施例1で得た高捲縮仮撚加工糸、比較例1にて水分を付与しないで得た従来法仮撚加工糸を、それぞれ用いて、羽毛布団側生地を作成し、常法にて染色加工仕上した。この生地について、羽毛抜けの代用評価である通気度をJIS−L−1096に準じて評価した。その結果、従来法仮撚加工糸を用いたものは、洗濯1回後で2.2cc/cm2/secとなり、一般的規準の2cc以下を上回った。これに対し、高捲縮仮撚加工糸を用いたものは、水膨潤度が低下することや洗濯後も捲縮が残ること等より、繰り返しの洗濯による目空き(隙間)が少なく、洗濯10回で1.6ccと規準以下となり、ダウンプルーフ生地としても良好なものとなった。
【0090】
また、表1、2に示す様に、実施例1の高捲縮仮撚加工糸を用いたものは、Qmax値が小さく暖かみのある触感であるのに対し、従来法仮撚加工糸を用いたものは冷り感のあるものであった。
【0091】
〔実施例10、比較例7〕
2重ビロード織物の経糸に綿40/2、パイル経糸に実施例1で得た高捲縮仮撚加工糸、比較例1にて水分を付与しないで得た従来法の仮撚加工糸を、それぞれ用い、緯糸にTC20/−を打ち込み、機上でパイルカットしてカット長4mmの片面モケットを作成し、常法にてウィンス染色、タンブラー乾燥した後、シャーリング加工した。評価結果を表1、2に示す。
【0092】
表1、2に示す様に、高捲縮仮撚加工糸を用いたものは、嵩高性に富んだ軽量性、保温性に優れた肌触りの良好な肌掛けとなった。また、カット部のフィラメント1本1本に大きな捲縮がある為、フィラメント間の水保持量が大きく吸水性能に優れ、また、セルロースIV型の結晶成分が混在している為、水膨潤度が小さく乾燥性に優れていることより、水拭き用のふきん等にも適したものとなった。
【0093】
一方、従来法仮撚加工糸を用いたものは、膨らみ感のない肌触り感の硬い劣ったものであった。
【0094】
〔実施例11及び12、比較例8〕
ビスコースレーヨンフィラメント167dtex/50f(旭化成製;沸水収縮率6.5%)を用い、実施例1と同様の仮撚機を用い、加工速度60m/分、加熱時間1.15秒、スピンドル回転数114000rpm、仮撚数1900T/m(Z撚)、第1フィード率0%、TUフィード率4%に設定した。
【0095】
実施例1と同様の方法で供給糸の絶乾水分率を40%とした後、第1ヒーター温度を250℃にて仮撚加工し、沸水処理後の伸縮伸長率31%の高捲縮仮撚加工糸を実施例11とした。この加工糸を用いて、2本給糸による14GG天竺組織の横編地を作成し、定法にて染色仕上げし、編地の嵩高性、軽量性及び保温性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0096】
実施例12は、定量ポンプにて、2.5cc/分の吐出量でノズルを介して水を付与し、供給糸の絶乾水分率を40%にした以外は、実施例11と同様の仮撚加工を行った。この仮撚加工糸は、ノズルから吐出される水分がポンプの脈打ち作動により、断続的に付与される為、糸長方向に付いた部分と付かない部分、また、多く付いた部分や少ない部分を有した不均一な水分付与となった。これは、捩れやバイメタル現象因と思われるが、これまで得たことのない、伸縮伸長率の比が9.3で沸水処理後70.3%と言う大きな伸縮伸長率の高捲縮仮撚加工糸となった。得られた仮撚加工糸を用いて、実施例11と同様に横編地を得た。評価結果を表1に示す。
【0097】
表1に示す様に、本発明の高捲縮仮撚加工糸を用いたものは、何れも、嵩高性があり軽量感に優れ、また、保温性に優れたものとなった。
【0098】
実施例11で得られた高捲縮仮撚加工糸についてX線測定した結果、セルロースIV型の結晶成分が55.1%混在していることが確認された。
【0099】
比較例8は、実施例11と同じ原糸、仮撚機を用い、従来法の供給糸に水分を付与しないこと以外は、実施例11と同様の仮撚条件で仮撚加工した。得られた仮撚加工糸を用いた横編地は、嵩高性に劣り、保温性に欠けたものとなった。
【0100】
〔実施例13、比較例9〕
実施例11で得た、熱水処理後の伸縮伸長率31%の高捲縮仮撚加工糸、及び比較例8で得た従来法仮撚加工糸を用いて、それぞれ、巻密度0.2g/cm3の500gソフト巻きチーズを作成し、常法にて直接染料によるチーズ染色を行った。
【0101】
得られた染色糸の伸縮伸長率を測定すると共に、実施例11、比較例8と同様にして横編地を作成し、編地の嵩高性、軽量性及び保温性を評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0102】
実施例13では、高捲縮仮撚加工糸を用いた染色糸の伸縮伸長率は4%であり、表1に示すように、嵩高性のある軽量性と保温性に優れたものとなった。一方、比較例9では、従来法仮撚加工糸の染色糸は伸縮伸長率は消失してゼロとなり、膨らみ感の全くない薄っぺらな横編地となった。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【発明の効果】
本発明の高捲縮仮撚加工糸は、捲縮の形態保持性と耐久性に優れているので、染色後も仮撚加工糸の捲縮が十分に生かされ、膨らみ感があり、嵩高性、軽量性及び保温性に富む編織物が得られる。
【0106】
また、本発明の高捲縮仮撚加工糸は、セルロース系繊維で構成されている為、発色性に優れており鮮明な色彩を呈するので、特に婦人のアウター衣料や裏地織物として、また、吸放湿に優れていることより、肌着等のインナー分野や寝具等、各種の用途分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明(実施例1)における高捲縮仮撚加工糸のX線チャート図である。
【図2】水分を付与しないで製造した(比較例1)従来法仮撚加工糸のX線チャート図である。
Claims (1)
- セルロースフィラメントからなり、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上、沸水処理前の伸縮伸長率(S0)との比(SB/S0)が0.5以上である高捲縮仮撚加工糸からなる編織物。
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JP2019065449A (ja) * | 2017-10-02 | 2019-04-25 | Tbカワシマ株式会社 | 液体センサー布帛、及び、繊維製品 |
-
2002
- 2002-10-11 JP JP2002299371A patent/JP2004131890A/ja active Pending
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