JP2004131767A - めっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】短期的な保守・点検作業を必要とせず,ライン速度の向上が可能で,長期連続運転に適し,かつ,不純物・異物等の混入・蓄積がなく,めっき金属イオンの流出もない,めっき液のクローズドシステム化がなされた簡略的な金属条の連続めっき装置を開発する。
【解決手段】不溶性陽極を使用した連続めっき装置であって,金属イオン供給手段として隔膜電解槽を有し,めっき液の回収・リサイクル手段として電気透析槽を有し,まためっき槽の前後に洗浄槽を設置することにより,不純物等の混入・蓄積もなく,安定しためっき金属イオン濃度の管理を可能とした。
【選択図】図1
【解決手段】不溶性陽極を使用した連続めっき装置であって,金属イオン供給手段として隔膜電解槽を有し,めっき液の回収・リサイクル手段として電気透析槽を有し,まためっき槽の前後に洗浄槽を設置することにより,不純物等の混入・蓄積もなく,安定しためっき金属イオン濃度の管理を可能とした。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,コネクタ,端子,ICリードフレームなどのリード材等の電子部品に用いられる長尺の金属条に金,ニッケル,錫,はんだ(錫−鉛,錫−銅,錫−ビスマス,錫−銀,錫−亜鉛,錫−アンチモン等)等の金属めっきを施すためのめっき装置であって,めっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来,コネクタ,端子,ICリードフレームなどのリード材等の電子部品に用いられる長尺金属条の連続めっき装置において,アノードは可溶性陽極(金属)を使用していた。この可溶性陽極はめっきにより消費されるため,高能率生産に適した陽極ではなく,近年のめっき高速化の流れを考えると,定期的な陽極の補充作業が必要となる可溶性陽極の使用は,連続めっき装置には適していなかった。
そこで近年,陽極を可溶性から不溶性に変えることにより,陽極の補充作業を必要としないめっき装置が多く使われつつある。ただし,この不溶性陽極を使用しためっき装置では,可溶性陽極に変わるめっきにより消費した金属分を補充するシステムが必要であり,この方法として次の4つの方法が公知技術として存在する。
▲1▼ 薬液補充法
▲2▼ 金属の腐食溶解法
▲3▼ 酸化溶解法
▲4▼ 隔膜電解法
【0003】
夫々の方法は以下の特徴がある。
▲1▼の薬液補充法は,消費した金属イオン分に対して薬液を直接投入することにより濃度調整する方法であるが,薬液を投入するため,薬品原料代コストが高騰し,また,めっき装置からめっき材などに付着して持ち出されるめっき液量が少量の場合には,電導塩濃度が薬液の補充量とともに増加する不都合があった。
▲2▼の腐食溶解法は,めっき液に対象金属を浸漬させ,腐食により溶出した金属イオン分を補充イオンとして使用する方法であるが,通常のめっき液に金属を浸漬させるだけでは金属の腐食速度が遅く,所定の時間内に十分な金属イオン濃度が得られない。そこで,液温度を上げたり,酸濃度を上げたり,金属粒子径を小さくするなどの改善が必要であり,そのための新たな設備投資が必要となる(例えば,特許文献1参照。)。
▲3▼の酸化溶解法は,めっき槽とは別個に設けた酸素富化槽内でめっき液に酸素含有気体を吹き込み,得られた酸素溶存めっき液を,めっき金属が保持された金属溶解槽に供給して金属を溶解させ,金属イオンを供給する方法であるが,大規模な酸素富化槽が必要であり,腐食溶解法と同様に新たな設備投資が必要である。
▲4▼の隔膜電解法は,めっき槽とは別個に設けた電解槽でアニオン交換膜を介して金属イオンを供給する方法であるが,腐食溶解法や酸化溶解法とは異なり,わずかな設備投資で行えるが,強酸のめっき液に耐えることができる交換膜がなく,実用化するのは難しかった。
【0004】
以上不溶性陽極を使用した金属条の連続めっき装置において,金属イオンを補給する方法は,新たな設備投資が必要であったり,薬品コストが高騰したり,実用化が困難であったりして,改善が望まれている。
また,金属条の連続めっき装置において,めっき液の一部はめっきした材料に付着し,めっき槽外へ持ち出される。このめっき液は,回収され,再利用される場合もあるが,大半はめっき材料の洗浄水により希釈され,金属イオン濃度が環境基準以下までさらに希釈され,廃水として排出されていた。
【0005】
めっき液を再利用する方法としては,以下の方法がある。
▲1▼ めっき洗浄水をそのままめっき槽に戻す方法
▲2▼ めっき洗浄水を蒸発・濃縮させ,めっき液として,めっき槽内に戻す方法
▲3▼ キレート樹脂やイオン交換樹脂により不純物金属イオンを除去した後,隔膜電解法にてめっき金属イオンを補充する方法(例えば特許文献2参照。)
▲4▼ めっき金属をキレート樹脂又はイオン交換樹脂により吸着回収する方法(例えば特許文献2参照。)
しかし,これらの方法は以下に述べるように夫々問題がある。
▲1▼の方法はめっき液の操業温度が十分に高く,液量の自然蒸発の十分見込める系で有効であり,操業温度が低い系では,めっき液の量が過剰になってしまう。
▲2▼の方法は加熱蒸発させる系が別に必要となり,ラインコストが増加し,効率的な方法ではない。
▲3▼,▲4▼におけるキレート樹脂又はイオン交換樹脂を用いる方法はキレート樹脂やイオン交換樹脂の短期的な樹脂の交換作業を必要とするため,めっき装置の通板速度を速くした運転や,長期間の連続運転には適した技術ではない。また,また強酸のめっき液の場合,隔膜の劣化が早く,その交換頻度が多く効率が悪かった。
また,めっき槽外へ持ち出されためっき液は,大量の洗浄水により希釈されているため,めっき金属イオンの濃度が低く,回収装置を設置しても,回収効率が悪く,設備上のメリットがなく,めっきを含む洗浄水の回収,再利用は殆ど行われてなかった。
【0006】
一方近年では,めっき効率を向上させるため,ライン速度を速くし,長期間連続運転する場合,可溶性陽極を使用しためっきラインでは,金属溶解時にめっき槽に金属の不純物成分(Fe,Pb,Na,Cu,Bi,Zn,Al,As,Cd,Ag,In,Ni,Au等)が蓄積すると同時に,前工程からめっき用素材に付着して持ち込まれた異種のめっき金属イオン(Ni,Au等)をはじめ,めっき前の素材に付着したスラッジやライン上の汚れ等の異物がめっき槽内に入り蓄積されていた。一方,めっき槽中のめっき液は,めっき素材に付着して,めっき槽外へ持ち出され,再生されず,薬品原料代コストが高騰していた。そこで不純物の混入・蓄積がなく,めっき金属イオンの流出もない,めっき液がクローズドシステムになる技術が待ち望まれていた。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−59798号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平6−146098号公報(第2頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
こうした状況から,短期的な保守・点検作業を必要とせず,ライン速度の向上が可能で,長期連続運転に適し,かつ,不純物等の混入・蓄積がなく,めっき金属イオンの流出もない,めっき液のクローズドシステム化がなされた簡略的な金属条の連続めっき装置の開発が待ち望まれている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題に対し,鋭意検討した結果,不溶性陽極を使用した連続めっき装置であって,めっき槽の金属イオンの供給方法として,アニオン交換膜を介する隔膜電解法を用い,めっき槽から槽外へ持ちだされためっき液を電気透析法にて回収・再生する,めっき液のクローズドシステム化がなされた簡略的な金属条の連続めっき装置を開発した。また本装置は,めっき槽内への不純物の混入・蓄積を防止し,めっき槽から槽外へ持ち出されためっき金属イオンの回収を効率的に行うためにめっき槽の前後に二流体ノズルを設けた洗浄槽を設置してある。
【0010】
すなわち本発明は,
(1)金属条の連続めっき装置であって,不溶性陽極を用いて金属条にめっきを施し,金属イオンの供給源として隔膜電解槽を有し,めっきした金属条に付着してめっき槽外へ持ち出されためっき液を回収・再生する手段として電気透析層を有し,めっきの廃液を再利用することを特徴とするめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(2)金属条のめっき槽の入側及び出側に夫々洗浄槽を有し,入側の洗浄槽にてめっきの前処理槽で金属条に付着した金属イオンやスラッジ,ライン上の汚れ等を含有する前処理液を洗浄・除去し,出側の洗浄槽にてめっきした金属条に付着し,めっき槽から持ち出されためっき液を洗浄後回収し,めっき液へ不純物等の混入がないことを特徴とする(1)に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(3)めっき槽入側及び出側の洗浄槽には二流体ノズルが設置され,該二流体ノズルよりミスト状の純水と気体の混合物がめっき前後の金属条に噴霧することを特徴とする(2)に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(4)前記隔膜電解槽は,アニオン交換膜にて隔離された陰極室と陽極室と有機酸イオン回収室が順に備えられ,陰極室には陰極,陽極室にはめっき金属の可溶性陽極,有機酸イオン回収室は不溶性陽極が夫々設置され,金属条にめっきを行ってめっき金属イオンの含有量が低下し,かつ,有機酸イオン濃度が増加しためっき液が陽極室に導入され,該可溶性陽極からめっき金属イオンを供給し,同時に過剰の有機酸イオンがアニオン交換膜を透過して,有機酸イオン回収槽へ移動することにより,めっき液中のめっき金属イオン,有機酸イオンの濃度を調整し,再生めっき液としてめっき槽へ導入することを特徴とする(1)乃至(3)に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(5)電気透析槽はアニオン交換膜とカチオン交換膜が交互に複数配列されて隔室が形成され,両側の隔室を陽極室,陰極室とし,その間に脱塩室と濃縮室が交互に設けられ,脱塩室,濃縮室にはめっき槽出側にて洗浄され,希釈されためっき液が導入され,該めっき液中の金属イオンはカチオン交換膜,有機酸イオンはアニオン交換膜を透過して両者とも脱塩室から濃縮室へ移動し,希釈室内にてさらに希釈されためっき液は廃液としてめっき装置系外へ排出され,濃縮室にて金属イオン,有機酸イオン濃度が高くなった濃縮液は,再生めっき液としてめっき槽へ導入されることを特徴とする(1)乃至(4)に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(6)隔膜電解槽及び電気透析槽のカチオン交換膜はナトリウム基を配合した炭化水素系有機交換膜であり,アニオン交換膜は塩素基を配合した炭化水素系有機交換膜であって,これらの交換膜は補強材として,ポリプロピレンを使用することを特徴とする(1)乃至(5)に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(7)長時間使用し,目詰まりの発生した上記アニオン交換膜及びカチオン交換膜が5%NaOHと5%HClにより順に洗浄されることを特徴とする(1)乃至(6)記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明のめっき装置の概略図である。
請求項1の発明は,陽極の保守・点検作業の頻度を少なくできるよう不溶性陽極を使用しためっき槽であり,めっきにより消費する金属イオンを補うために,めっき槽と直列につないだ隔膜電解槽を用いてめっき金属イオンを溶解補充させる。また,めっき素材に付着してめっき槽外へ持ち出されためっき液を回収・リサイクルするためにめっき後の洗浄により希釈されためっき液を電気透析槽にて,濃縮させ,めっき液として再利用することにより,めっき液がクローズドシステム化されることを特徴とする。なお,不溶性陽極としては,一般的にめっきで使用されるPt−Ti電極等で可能である。
【0012】
一般に連続めっきラインでは,当該めっき金属イオンをめっきする前に,前処理(脱脂・酸洗)や耐食性や密着性等を向上させる目的で下地めっきが施されることがあるが,これら処理で使用する溶液がめっき用素材に付着してそのままめっき槽中へ持ち込まれ,該溶液の成分が混入する場合がある。たとえば,金めっきにはニッケル下地めっきを施すことが多くあるが,金めっき液中に下地めっき液に含有されるニッケルイオンが持ち込まれると電流効率が低下し,ある濃度以上になるとラインを停止し,めっき液を更新しなければならなくなる。また,めっき後の素材に付着してめっき槽外に持ち出されるめっき液量は,ライン速度の高速化に伴い増加し,そして持ち出されためっき液は回収・再生されず,薬品原料代が高騰する一要因となる。
【0013】
そこで請求項2の発明は,めっき槽の金属条の出入側に洗浄槽を各々設置し,入側の洗浄槽ではめっきの前処理液の付着等から混入する金属イオンやスラッジ,ライン上の汚れ等の異物の混入を防止し,出側の洗浄槽では金属条に付着して持ちだされためっき液を回収する。
さらにこれらの洗浄槽には,二流体ノズルを設け(請求項3),該ノズルからミスト状の純水と気体の混合物を噴霧する。該ミストの噴霧により夫々の洗浄槽での洗浄効率は格段と向上し,めっき槽入側の洗浄槽ではめっきの前処理液の付着等から混入する金属イオンやスラッジ,ライン上の汚れ等の異物を効率よく除去でき,また,洗浄効率が向上することにより,めっき槽出側では洗浄に必要な純水量を低減することが可能となり,該洗浄水中のめっき金属イオン濃度を高め,効率的にめっき金属イオンを再生することが可能となる。二流体ノズルを使用する場合,水と気体(空気等)の混合比は1:0.5〜1:2であり,圧力0.1kg/cm2以上にて噴霧することが好ましい噴霧条件である。
【0014】
次に請求項4の発明について説明する。めっきを施すことにより該めっき金属イオンが消費し,該金属イオン濃度が低くなっためっき液は,めっき槽と直列につながった隔膜電解槽へと導入される。隔膜電解槽は,アニオン交換膜にて隔離された陰極室,陽極室,有機酸イオン回収室からなり,該めっき液は陽極室へ導入され可溶性陽極からめっき金属イオンが供給される。一方陽極室では,陰極室から有機酸イオンがアニオン交換膜を透過し,移動してくるため,めっき液中の有機酸イオン濃度が上昇する。その対応として,有機酸イオンは,陽極室にアニオン交換膜を介して隣接した,不溶性陽極を有する有機酸イオン回収槽へ,該アニオン交換膜を透過して移動することにより回収される。有機酸イオン回収槽にて回収された有機酸イオンは,再び隔膜電解槽の陰極室液として利用される。
【0015】
請求項5の発明は,めっき液が付着しためっき後の金属条を洗浄した後の,希釈されためっき液の回収・リサイクルに関する。この希釈されためっき液を濃縮する電気透析槽は,アニオン交換膜とカチオン交換膜が交互に多数配列されて隔室が形成され,両側の隔室を陽極室,陰極室とし,その間の隔室が,脱塩室と濃縮室とに交互に設けられている。希釈されためっき液は,電気透析槽の脱塩室と濃縮室に導入され,導入された該希釈めっき液中のイオンは,めっき金属イオンがカチオン交換膜,有機酸イオンがアニオン交換膜を透過し,夫々対向して隣接する濃縮室へ移動する。また,濃縮室からは脱塩室へのイオンの移動はない。そのため,濃縮室ではめっき金属イオンと有機酸イオンが濃縮され,脱塩室ではこれらのイオンは環境基準以下まで希釈される。イオンが濃縮された濃縮室内の濃縮液は,再生めっき液としてめっき槽へ導入され,イオンがさらに希釈された脱塩室内の希釈液は,めっき系外へ廃液として排出される。以上のプロセスにより,めっき後の金属条に付着し,めっき槽外へ一度は持ち出されためっき液は,回収・再生される。
【0016】
請求項6の発明は,隔膜電解槽及び電気透析槽で用いる隔膜の材質に関するもので,カチオン交換膜はナトリウム基を配合した炭化水素系有機交換膜であり,アニオン交換膜は塩素基を配合した炭化水素系有機交換膜で,両者のイオン交換膜の補強剤とて,ポリプロピレン(以下PP)を用いたことを特長とする。イオン交換膜補強材として一般的に用いられるポリ塩化ビニル(PVC)は,強酸のめっき液には耐久性が悪く,長期に安定した操業には適していない。しかし,PPは耐酸性があり,補強剤として使用すると,強酸のめっき液にも適用が可能である。また炭化水素系の有機交換膜を使用したのは,他にフッ素系のイオン交換膜があるが,フッ素系交換膜は非常に耐久性が優れているものの,交換膜のコストが炭化水素系と比較すると約20倍かかるため,安価な炭化水素系有機交換膜を選定した。
【0017】
請求項7の発明は,電気透析槽で用いる隔膜の隔膜特性劣化時の回復方法であり,5%NaOHと5%HClを順に用い,アルカリ・酸洗浄により回復させることを特徴とする。電気透析槽の脱塩室は,めっきの脱塩が進むとめっき液のpHが上昇するため,水酸化塩が発生し,その水酸化塩が交換膜に付着する目詰まりが生じる場合がある。そのときは目詰まりした交換膜が設置された槽に5%NaOH水溶液を24h,次に5%HClを24h槽内を循環させることにより,膜上の付着物が溶解し,交換膜特性が回復する。
以上,これら不溶性陽極を用いためっき槽と隔膜電解槽及び電気透析槽,洗浄槽を設けることにより,めっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき設備になる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の実態形態を錫めっきについて,具体的例をもって説明する。
本発明の連続めっきラインにて35mm幅の金属条を通板速度15m/minで運転し,全面にめっきする場合,めっき槽中のめっき金属イオンは2つの要因により減少する。
▲1▼ めっきによる減少:0.48kg/h
▲2▼ めっきした材料に付着して持ち出されることによる減少:0.38kg/hこの内▲2▼による減少は,めっき後の洗浄後液を電気透析槽に回収した後濃縮し,0.38kg/hのめっき金属イオンが再生され,めっき槽へ循環する。よってめっき槽のめっき金属イオン濃度を一定にするためには▲1▼の減少分(0.48kg/h)の供給が必要であり,これは隔膜電解槽の陽極室にて供給される。
【0019】
一方有機酸イオンについては,めっき槽内では次の2つの因子により,増減する。
▲1▼ めっきによる増加:0.78kg/h
▲2▼ めっきした材料に付着して持ち出されることによる減少:1.14kg/h
この内▲2▼による減少はめっき金属イオンと同様に電気透析槽へ回収され1.14kg/hの有機酸イオンが再生され,めっき槽へ循環する。また,▲1▼にて有機酸イオン濃度が上昇する理由は,金属条にめっきを施し,めっき液中のめっき金属イオン濃度が低下する結果,フリーな有機酸イオンが増加するためである。その量はこの場合,0.78kg/hであり,こうして有機酸イオンが濃縮しためっき液は隔膜電解槽の陽極室に導入される。陽極室では,さらに陰極室から0.48kg/hの有機酸イオンが移動して供給されるが,余剰の有機酸イオンは,陽極室とアニオン交換膜にて隔離されて隣接している,不溶性陽極を有する有機酸イオン回収槽へアニオン交換膜を透過し移動する。以上によりめっき液中の有機酸イオン濃度を一定に保つことが可能となる。
また,めっき槽入側にある洗浄槽では,洗浄液中にNi,Cu,Au,Sb,Feなどのイオンが検出された。しかし,これらの金属イオンは二流体ノズルを設置すると,効果的に洗浄が行われ,めっき槽内のめっき液中にはほとんど存在しなかった。
【0020】
一方,めっき槽出側の洗浄槽では,めっき素材に付着しためっき液の付着量は1mL/dm2であり,錫めっき条件から算出しためっき液の持ち出し量は6.3L/hであるが,これを従来は700mL/minの洗浄水でめっき素材を洗浄し,めっき洗浄水の錫濃度は0.5〜3g/Lになっていた。即ち,めっき素材に付着しためっき液を希釈し,系外へ全て排出する場合は約100g/h前後の錫が排出される。
【0021】
本発明ではこの洗浄に二流体ノズルを用いることにより,1/10の水量で洗浄することが可能となり,洗浄により希釈されためっき液中のイオン濃度を高くし,効率良く再生することができる。
これらの設備によりめっき液がクローズドシステム化されることがわかる。
【0022】
【発明の効果】
本発明では,不溶性陽極を使用した連続めっき装置に,金属イオン供給方法として隔膜電解を用い,めっき液の回収・リサイクル方法として電気透析を用い,まためっき槽の前後に洗浄槽を用いることにより,不純物等の混入・蓄積のない,強酸のめっき液に適し,長期連続運転に適しためっき液のクローズドシステム化がなされた簡略的な金属条の連続めっき装置が提供可能となった。
この装置は,薬品原料代が安く,液バランスがとれ,めっき品質に対して最良のめっき装置である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシステムの概略図である。
【符号の説明】
1,3.洗浄槽
2.不溶性陽極を用いためっき槽
4.隔膜電解槽
5.陰極室
6.陽極室
7.有機酸イオン回収槽
8.陰極
9.可溶性陽極(金属陽極)
10.不溶性陽極
11.電気透析槽
12.アニオン交換膜
13.カチオン交換膜
14.濃縮槽
15.脱塩槽
【発明の属する技術分野】
本発明は,コネクタ,端子,ICリードフレームなどのリード材等の電子部品に用いられる長尺の金属条に金,ニッケル,錫,はんだ(錫−鉛,錫−銅,錫−ビスマス,錫−銀,錫−亜鉛,錫−アンチモン等)等の金属めっきを施すためのめっき装置であって,めっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来,コネクタ,端子,ICリードフレームなどのリード材等の電子部品に用いられる長尺金属条の連続めっき装置において,アノードは可溶性陽極(金属)を使用していた。この可溶性陽極はめっきにより消費されるため,高能率生産に適した陽極ではなく,近年のめっき高速化の流れを考えると,定期的な陽極の補充作業が必要となる可溶性陽極の使用は,連続めっき装置には適していなかった。
そこで近年,陽極を可溶性から不溶性に変えることにより,陽極の補充作業を必要としないめっき装置が多く使われつつある。ただし,この不溶性陽極を使用しためっき装置では,可溶性陽極に変わるめっきにより消費した金属分を補充するシステムが必要であり,この方法として次の4つの方法が公知技術として存在する。
▲1▼ 薬液補充法
▲2▼ 金属の腐食溶解法
▲3▼ 酸化溶解法
▲4▼ 隔膜電解法
【0003】
夫々の方法は以下の特徴がある。
▲1▼の薬液補充法は,消費した金属イオン分に対して薬液を直接投入することにより濃度調整する方法であるが,薬液を投入するため,薬品原料代コストが高騰し,また,めっき装置からめっき材などに付着して持ち出されるめっき液量が少量の場合には,電導塩濃度が薬液の補充量とともに増加する不都合があった。
▲2▼の腐食溶解法は,めっき液に対象金属を浸漬させ,腐食により溶出した金属イオン分を補充イオンとして使用する方法であるが,通常のめっき液に金属を浸漬させるだけでは金属の腐食速度が遅く,所定の時間内に十分な金属イオン濃度が得られない。そこで,液温度を上げたり,酸濃度を上げたり,金属粒子径を小さくするなどの改善が必要であり,そのための新たな設備投資が必要となる(例えば,特許文献1参照。)。
▲3▼の酸化溶解法は,めっき槽とは別個に設けた酸素富化槽内でめっき液に酸素含有気体を吹き込み,得られた酸素溶存めっき液を,めっき金属が保持された金属溶解槽に供給して金属を溶解させ,金属イオンを供給する方法であるが,大規模な酸素富化槽が必要であり,腐食溶解法と同様に新たな設備投資が必要である。
▲4▼の隔膜電解法は,めっき槽とは別個に設けた電解槽でアニオン交換膜を介して金属イオンを供給する方法であるが,腐食溶解法や酸化溶解法とは異なり,わずかな設備投資で行えるが,強酸のめっき液に耐えることができる交換膜がなく,実用化するのは難しかった。
【0004】
以上不溶性陽極を使用した金属条の連続めっき装置において,金属イオンを補給する方法は,新たな設備投資が必要であったり,薬品コストが高騰したり,実用化が困難であったりして,改善が望まれている。
また,金属条の連続めっき装置において,めっき液の一部はめっきした材料に付着し,めっき槽外へ持ち出される。このめっき液は,回収され,再利用される場合もあるが,大半はめっき材料の洗浄水により希釈され,金属イオン濃度が環境基準以下までさらに希釈され,廃水として排出されていた。
【0005】
めっき液を再利用する方法としては,以下の方法がある。
▲1▼ めっき洗浄水をそのままめっき槽に戻す方法
▲2▼ めっき洗浄水を蒸発・濃縮させ,めっき液として,めっき槽内に戻す方法
▲3▼ キレート樹脂やイオン交換樹脂により不純物金属イオンを除去した後,隔膜電解法にてめっき金属イオンを補充する方法(例えば特許文献2参照。)
▲4▼ めっき金属をキレート樹脂又はイオン交換樹脂により吸着回収する方法(例えば特許文献2参照。)
しかし,これらの方法は以下に述べるように夫々問題がある。
▲1▼の方法はめっき液の操業温度が十分に高く,液量の自然蒸発の十分見込める系で有効であり,操業温度が低い系では,めっき液の量が過剰になってしまう。
▲2▼の方法は加熱蒸発させる系が別に必要となり,ラインコストが増加し,効率的な方法ではない。
▲3▼,▲4▼におけるキレート樹脂又はイオン交換樹脂を用いる方法はキレート樹脂やイオン交換樹脂の短期的な樹脂の交換作業を必要とするため,めっき装置の通板速度を速くした運転や,長期間の連続運転には適した技術ではない。また,また強酸のめっき液の場合,隔膜の劣化が早く,その交換頻度が多く効率が悪かった。
また,めっき槽外へ持ち出されためっき液は,大量の洗浄水により希釈されているため,めっき金属イオンの濃度が低く,回収装置を設置しても,回収効率が悪く,設備上のメリットがなく,めっきを含む洗浄水の回収,再利用は殆ど行われてなかった。
【0006】
一方近年では,めっき効率を向上させるため,ライン速度を速くし,長期間連続運転する場合,可溶性陽極を使用しためっきラインでは,金属溶解時にめっき槽に金属の不純物成分(Fe,Pb,Na,Cu,Bi,Zn,Al,As,Cd,Ag,In,Ni,Au等)が蓄積すると同時に,前工程からめっき用素材に付着して持ち込まれた異種のめっき金属イオン(Ni,Au等)をはじめ,めっき前の素材に付着したスラッジやライン上の汚れ等の異物がめっき槽内に入り蓄積されていた。一方,めっき槽中のめっき液は,めっき素材に付着して,めっき槽外へ持ち出され,再生されず,薬品原料代コストが高騰していた。そこで不純物の混入・蓄積がなく,めっき金属イオンの流出もない,めっき液がクローズドシステムになる技術が待ち望まれていた。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−59798号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平6−146098号公報(第2頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
こうした状況から,短期的な保守・点検作業を必要とせず,ライン速度の向上が可能で,長期連続運転に適し,かつ,不純物等の混入・蓄積がなく,めっき金属イオンの流出もない,めっき液のクローズドシステム化がなされた簡略的な金属条の連続めっき装置の開発が待ち望まれている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題に対し,鋭意検討した結果,不溶性陽極を使用した連続めっき装置であって,めっき槽の金属イオンの供給方法として,アニオン交換膜を介する隔膜電解法を用い,めっき槽から槽外へ持ちだされためっき液を電気透析法にて回収・再生する,めっき液のクローズドシステム化がなされた簡略的な金属条の連続めっき装置を開発した。また本装置は,めっき槽内への不純物の混入・蓄積を防止し,めっき槽から槽外へ持ち出されためっき金属イオンの回収を効率的に行うためにめっき槽の前後に二流体ノズルを設けた洗浄槽を設置してある。
【0010】
すなわち本発明は,
(1)金属条の連続めっき装置であって,不溶性陽極を用いて金属条にめっきを施し,金属イオンの供給源として隔膜電解槽を有し,めっきした金属条に付着してめっき槽外へ持ち出されためっき液を回収・再生する手段として電気透析層を有し,めっきの廃液を再利用することを特徴とするめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(2)金属条のめっき槽の入側及び出側に夫々洗浄槽を有し,入側の洗浄槽にてめっきの前処理槽で金属条に付着した金属イオンやスラッジ,ライン上の汚れ等を含有する前処理液を洗浄・除去し,出側の洗浄槽にてめっきした金属条に付着し,めっき槽から持ち出されためっき液を洗浄後回収し,めっき液へ不純物等の混入がないことを特徴とする(1)に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(3)めっき槽入側及び出側の洗浄槽には二流体ノズルが設置され,該二流体ノズルよりミスト状の純水と気体の混合物がめっき前後の金属条に噴霧することを特徴とする(2)に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(4)前記隔膜電解槽は,アニオン交換膜にて隔離された陰極室と陽極室と有機酸イオン回収室が順に備えられ,陰極室には陰極,陽極室にはめっき金属の可溶性陽極,有機酸イオン回収室は不溶性陽極が夫々設置され,金属条にめっきを行ってめっき金属イオンの含有量が低下し,かつ,有機酸イオン濃度が増加しためっき液が陽極室に導入され,該可溶性陽極からめっき金属イオンを供給し,同時に過剰の有機酸イオンがアニオン交換膜を透過して,有機酸イオン回収槽へ移動することにより,めっき液中のめっき金属イオン,有機酸イオンの濃度を調整し,再生めっき液としてめっき槽へ導入することを特徴とする(1)乃至(3)に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(5)電気透析槽はアニオン交換膜とカチオン交換膜が交互に複数配列されて隔室が形成され,両側の隔室を陽極室,陰極室とし,その間に脱塩室と濃縮室が交互に設けられ,脱塩室,濃縮室にはめっき槽出側にて洗浄され,希釈されためっき液が導入され,該めっき液中の金属イオンはカチオン交換膜,有機酸イオンはアニオン交換膜を透過して両者とも脱塩室から濃縮室へ移動し,希釈室内にてさらに希釈されためっき液は廃液としてめっき装置系外へ排出され,濃縮室にて金属イオン,有機酸イオン濃度が高くなった濃縮液は,再生めっき液としてめっき槽へ導入されることを特徴とする(1)乃至(4)に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(6)隔膜電解槽及び電気透析槽のカチオン交換膜はナトリウム基を配合した炭化水素系有機交換膜であり,アニオン交換膜は塩素基を配合した炭化水素系有機交換膜であって,これらの交換膜は補強材として,ポリプロピレンを使用することを特徴とする(1)乃至(5)に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
(7)長時間使用し,目詰まりの発生した上記アニオン交換膜及びカチオン交換膜が5%NaOHと5%HClにより順に洗浄されることを特徴とする(1)乃至(6)記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明のめっき装置の概略図である。
請求項1の発明は,陽極の保守・点検作業の頻度を少なくできるよう不溶性陽極を使用しためっき槽であり,めっきにより消費する金属イオンを補うために,めっき槽と直列につないだ隔膜電解槽を用いてめっき金属イオンを溶解補充させる。また,めっき素材に付着してめっき槽外へ持ち出されためっき液を回収・リサイクルするためにめっき後の洗浄により希釈されためっき液を電気透析槽にて,濃縮させ,めっき液として再利用することにより,めっき液がクローズドシステム化されることを特徴とする。なお,不溶性陽極としては,一般的にめっきで使用されるPt−Ti電極等で可能である。
【0012】
一般に連続めっきラインでは,当該めっき金属イオンをめっきする前に,前処理(脱脂・酸洗)や耐食性や密着性等を向上させる目的で下地めっきが施されることがあるが,これら処理で使用する溶液がめっき用素材に付着してそのままめっき槽中へ持ち込まれ,該溶液の成分が混入する場合がある。たとえば,金めっきにはニッケル下地めっきを施すことが多くあるが,金めっき液中に下地めっき液に含有されるニッケルイオンが持ち込まれると電流効率が低下し,ある濃度以上になるとラインを停止し,めっき液を更新しなければならなくなる。また,めっき後の素材に付着してめっき槽外に持ち出されるめっき液量は,ライン速度の高速化に伴い増加し,そして持ち出されためっき液は回収・再生されず,薬品原料代が高騰する一要因となる。
【0013】
そこで請求項2の発明は,めっき槽の金属条の出入側に洗浄槽を各々設置し,入側の洗浄槽ではめっきの前処理液の付着等から混入する金属イオンやスラッジ,ライン上の汚れ等の異物の混入を防止し,出側の洗浄槽では金属条に付着して持ちだされためっき液を回収する。
さらにこれらの洗浄槽には,二流体ノズルを設け(請求項3),該ノズルからミスト状の純水と気体の混合物を噴霧する。該ミストの噴霧により夫々の洗浄槽での洗浄効率は格段と向上し,めっき槽入側の洗浄槽ではめっきの前処理液の付着等から混入する金属イオンやスラッジ,ライン上の汚れ等の異物を効率よく除去でき,また,洗浄効率が向上することにより,めっき槽出側では洗浄に必要な純水量を低減することが可能となり,該洗浄水中のめっき金属イオン濃度を高め,効率的にめっき金属イオンを再生することが可能となる。二流体ノズルを使用する場合,水と気体(空気等)の混合比は1:0.5〜1:2であり,圧力0.1kg/cm2以上にて噴霧することが好ましい噴霧条件である。
【0014】
次に請求項4の発明について説明する。めっきを施すことにより該めっき金属イオンが消費し,該金属イオン濃度が低くなっためっき液は,めっき槽と直列につながった隔膜電解槽へと導入される。隔膜電解槽は,アニオン交換膜にて隔離された陰極室,陽極室,有機酸イオン回収室からなり,該めっき液は陽極室へ導入され可溶性陽極からめっき金属イオンが供給される。一方陽極室では,陰極室から有機酸イオンがアニオン交換膜を透過し,移動してくるため,めっき液中の有機酸イオン濃度が上昇する。その対応として,有機酸イオンは,陽極室にアニオン交換膜を介して隣接した,不溶性陽極を有する有機酸イオン回収槽へ,該アニオン交換膜を透過して移動することにより回収される。有機酸イオン回収槽にて回収された有機酸イオンは,再び隔膜電解槽の陰極室液として利用される。
【0015】
請求項5の発明は,めっき液が付着しためっき後の金属条を洗浄した後の,希釈されためっき液の回収・リサイクルに関する。この希釈されためっき液を濃縮する電気透析槽は,アニオン交換膜とカチオン交換膜が交互に多数配列されて隔室が形成され,両側の隔室を陽極室,陰極室とし,その間の隔室が,脱塩室と濃縮室とに交互に設けられている。希釈されためっき液は,電気透析槽の脱塩室と濃縮室に導入され,導入された該希釈めっき液中のイオンは,めっき金属イオンがカチオン交換膜,有機酸イオンがアニオン交換膜を透過し,夫々対向して隣接する濃縮室へ移動する。また,濃縮室からは脱塩室へのイオンの移動はない。そのため,濃縮室ではめっき金属イオンと有機酸イオンが濃縮され,脱塩室ではこれらのイオンは環境基準以下まで希釈される。イオンが濃縮された濃縮室内の濃縮液は,再生めっき液としてめっき槽へ導入され,イオンがさらに希釈された脱塩室内の希釈液は,めっき系外へ廃液として排出される。以上のプロセスにより,めっき後の金属条に付着し,めっき槽外へ一度は持ち出されためっき液は,回収・再生される。
【0016】
請求項6の発明は,隔膜電解槽及び電気透析槽で用いる隔膜の材質に関するもので,カチオン交換膜はナトリウム基を配合した炭化水素系有機交換膜であり,アニオン交換膜は塩素基を配合した炭化水素系有機交換膜で,両者のイオン交換膜の補強剤とて,ポリプロピレン(以下PP)を用いたことを特長とする。イオン交換膜補強材として一般的に用いられるポリ塩化ビニル(PVC)は,強酸のめっき液には耐久性が悪く,長期に安定した操業には適していない。しかし,PPは耐酸性があり,補強剤として使用すると,強酸のめっき液にも適用が可能である。また炭化水素系の有機交換膜を使用したのは,他にフッ素系のイオン交換膜があるが,フッ素系交換膜は非常に耐久性が優れているものの,交換膜のコストが炭化水素系と比較すると約20倍かかるため,安価な炭化水素系有機交換膜を選定した。
【0017】
請求項7の発明は,電気透析槽で用いる隔膜の隔膜特性劣化時の回復方法であり,5%NaOHと5%HClを順に用い,アルカリ・酸洗浄により回復させることを特徴とする。電気透析槽の脱塩室は,めっきの脱塩が進むとめっき液のpHが上昇するため,水酸化塩が発生し,その水酸化塩が交換膜に付着する目詰まりが生じる場合がある。そのときは目詰まりした交換膜が設置された槽に5%NaOH水溶液を24h,次に5%HClを24h槽内を循環させることにより,膜上の付着物が溶解し,交換膜特性が回復する。
以上,これら不溶性陽極を用いためっき槽と隔膜電解槽及び電気透析槽,洗浄槽を設けることにより,めっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき設備になる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の実態形態を錫めっきについて,具体的例をもって説明する。
本発明の連続めっきラインにて35mm幅の金属条を通板速度15m/minで運転し,全面にめっきする場合,めっき槽中のめっき金属イオンは2つの要因により減少する。
▲1▼ めっきによる減少:0.48kg/h
▲2▼ めっきした材料に付着して持ち出されることによる減少:0.38kg/hこの内▲2▼による減少は,めっき後の洗浄後液を電気透析槽に回収した後濃縮し,0.38kg/hのめっき金属イオンが再生され,めっき槽へ循環する。よってめっき槽のめっき金属イオン濃度を一定にするためには▲1▼の減少分(0.48kg/h)の供給が必要であり,これは隔膜電解槽の陽極室にて供給される。
【0019】
一方有機酸イオンについては,めっき槽内では次の2つの因子により,増減する。
▲1▼ めっきによる増加:0.78kg/h
▲2▼ めっきした材料に付着して持ち出されることによる減少:1.14kg/h
この内▲2▼による減少はめっき金属イオンと同様に電気透析槽へ回収され1.14kg/hの有機酸イオンが再生され,めっき槽へ循環する。また,▲1▼にて有機酸イオン濃度が上昇する理由は,金属条にめっきを施し,めっき液中のめっき金属イオン濃度が低下する結果,フリーな有機酸イオンが増加するためである。その量はこの場合,0.78kg/hであり,こうして有機酸イオンが濃縮しためっき液は隔膜電解槽の陽極室に導入される。陽極室では,さらに陰極室から0.48kg/hの有機酸イオンが移動して供給されるが,余剰の有機酸イオンは,陽極室とアニオン交換膜にて隔離されて隣接している,不溶性陽極を有する有機酸イオン回収槽へアニオン交換膜を透過し移動する。以上によりめっき液中の有機酸イオン濃度を一定に保つことが可能となる。
また,めっき槽入側にある洗浄槽では,洗浄液中にNi,Cu,Au,Sb,Feなどのイオンが検出された。しかし,これらの金属イオンは二流体ノズルを設置すると,効果的に洗浄が行われ,めっき槽内のめっき液中にはほとんど存在しなかった。
【0020】
一方,めっき槽出側の洗浄槽では,めっき素材に付着しためっき液の付着量は1mL/dm2であり,錫めっき条件から算出しためっき液の持ち出し量は6.3L/hであるが,これを従来は700mL/minの洗浄水でめっき素材を洗浄し,めっき洗浄水の錫濃度は0.5〜3g/Lになっていた。即ち,めっき素材に付着しためっき液を希釈し,系外へ全て排出する場合は約100g/h前後の錫が排出される。
【0021】
本発明ではこの洗浄に二流体ノズルを用いることにより,1/10の水量で洗浄することが可能となり,洗浄により希釈されためっき液中のイオン濃度を高くし,効率良く再生することができる。
これらの設備によりめっき液がクローズドシステム化されることがわかる。
【0022】
【発明の効果】
本発明では,不溶性陽極を使用した連続めっき装置に,金属イオン供給方法として隔膜電解を用い,めっき液の回収・リサイクル方法として電気透析を用い,まためっき槽の前後に洗浄槽を用いることにより,不純物等の混入・蓄積のない,強酸のめっき液に適し,長期連続運転に適しためっき液のクローズドシステム化がなされた簡略的な金属条の連続めっき装置が提供可能となった。
この装置は,薬品原料代が安く,液バランスがとれ,めっき品質に対して最良のめっき装置である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシステムの概略図である。
【符号の説明】
1,3.洗浄槽
2.不溶性陽極を用いためっき槽
4.隔膜電解槽
5.陰極室
6.陽極室
7.有機酸イオン回収槽
8.陰極
9.可溶性陽極(金属陽極)
10.不溶性陽極
11.電気透析槽
12.アニオン交換膜
13.カチオン交換膜
14.濃縮槽
15.脱塩槽
Claims (7)
- 金属条の連続めっき装置であって,不溶性陽極を用いて金属条にめっきを施し,金属イオンの供給源として隔膜電解槽を有し,めっきした金属条に付着してめっき槽外へ持ち出されためっき液を回収・再生する手段として電気透析層を有し,めっきの廃液を再利用することを特徴とするめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
- 金属条のめっき槽の入側及び出側に夫々洗浄槽を有し,入側の洗浄槽にてめっきの前処理槽で金属条に付着した金属イオンやスラッジ,ライン上の汚れ等を含有する前処理液を洗浄・除去し,出側の洗浄槽にてめっきした金属条に付着し,めっき槽から持ち出されためっき液を洗浄後回収し,めっき液へ不純物等の混入がないことを特徴とする請求項1に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
- めっき槽入側及び出側の洗浄槽には二流体ノズルが設置され,該二流体ノズルよりミスト状の純水と気体の混合物がめっき前後の金属条に噴霧することを特徴とする請求項2に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
- 前記隔膜電解槽は,アニオン交換膜にて隔離された陰極室と陽極室と有機酸イオン回収室が順に備えられ,陰極室には陰極,陽極室にはめっき金属の可溶性陽極,有機酸イオン回収室は不溶性陽極が夫々設置され,金属条にめっきを行ってめっき金属イオンの含有量が低下し,かつ,有機酸イオン濃度が増加しためっき液が陽極室に導入され,該可溶性陽極からめっき金属イオンを供給し,同時に過剰の有機酸イオンがアニオン交換膜を透過して,有機酸イオン回収槽へ移動することにより,めっき液中のめっき金属イオン,有機酸イオンの濃度を調整し,再生めっき液としてめっき槽へ導入することを特徴とする請求項1乃至3に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
- 電気透析槽はアニオン交換膜とカチオン交換膜が交互に複数配列されて隔室が形成され,両側の隔室を陽極室,陰極室とし,その間に脱塩室と濃縮室が交互に設けられ,脱塩室,濃縮室にはめっき槽出側にて洗浄され,希釈されためっき液が導入され,該めっき液中の金属イオンはカチオン交換膜,有機酸イオンはアニオン交換膜を透過して両者とも脱塩室から濃縮室へ移動し,希釈室内にてさらに希釈されためっき液は廃液としてめっき装置系外へ排出され,濃縮室にて金属イオン,有機酸イオン濃度が高くなった濃縮液は,再生めっき液としてめっき槽へ導入されることを特徴とする請求項1乃至4に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
- 隔膜電解槽及び電気透析槽のカチオン交換膜はナトリウム基を配合した炭化水素系有機交換膜であり,アニオン交換膜は塩素基を配合した炭化水素系有機交換膜であって,これらの交換膜は補強材として,ポリプロピレンを使用することを特徴とする請求項1乃至5に記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
- 長時間使用し,目詰まりの発生した上記アニオン交換膜及びカチオン交換膜が5%NaOHと5%HClにより順に洗浄されることを特徴とする請求項1乃至6記載のめっき液のクローズドシステム化がなされた金属条の連続めっき装置。
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