JP2004131658A - 無機微粒子複合化有機高分子材料およびその製造方法 - Google Patents

無機微粒子複合化有機高分子材料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機高分子材料の機能(表面硬度)の向上、或いは反射による電磁波遮蔽効果等の新機能の付与を目的とした有機高分子材料の表面に無機物質の微粒子を注入、分散させた無機微粒子複合化有機高分子材料、及びその製造方法、更には機能に持続性を有する複合材料を提供する。
【解決手段】有機高分子材料8と、無機物質の微粒子に変換される無機微粒子の前駆体9を溶解した高圧流体とを接触させることによって前記前駆体を有機高分子材料の表面近傍に注入し、次に、系内を減圧することによって、高圧流体中に溶解できなくなった前駆体を析出させて表面近傍の前駆体の注入量を増加させ、その後、前駆体を無機物質の微粒子に変換して、有機高分子材料の表面から100nmの深さまでの部分に無機物質の微粒子が注入、分散された複合化材料を製造することを特徴とする。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、汎用プラスチック、汎用エンジニアリングプラスチック、特殊エンジニアリングプラスチック等の有機高分子材料の機能を向上させ、或いは有機高分子材料への新しい機能の付与を目的として、有機高分子材料の表面に無機物質の微粒子を注入、分散させた無機微粒子複合化有機高分子材料、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、有機高分子材料の表面に、無機物質を分散させた分散層を形成することによって表面を改質することができる従来技術としては、高分子材料の表面へ金属を析出させる無電解メッキ法、金属の微粒子を沈着させる方法として蒸着法、スパッタリング、溶射法などがあるが、いずれの方法においても、コーティングされた膜と母材との密着強度、膜質の均一性などに課題がある。
【0003】
また、金属のイオンをガラスやプラスチックなどの固体の表面に高電圧で注入した後に熱処理して金属微粒子を形成するイオン注入法が光素子の創製の方法として研究されている。しかし、この方法は平滑な面の改質を主とするものがほとんどであり、微細な構造部分へ均一に微粒子を分散させることは困難である。
【0004】
さらに、金属や金属酸化物の微粒子を有機高分子材料に機械的に混合する混練法があるが、この方法は材料全体に渡って微粒子が分散するため、表面に必要な微粒子の分散状態を確保しようとすると、過剰の微粒子を必要としてしまう。さらに、過剰の微粒子の混入によって材料がもろくなり、強度が落ちるという問題点がある。
【0005】
最近では、有機高分子材料の可塑化効果を有する超臨界流体を利用して、材料内部に有機金属化合物を浸透させ、続いて後処理をし、有機金属化合物を金属に変換することによって、金属の微粒子を分散させる技術が発表されている。
【0006】
例えば、下記非特許文献1、2、3に示されているように、J. J. Watkinsらは、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)に対して白金錯体を注入した後、水素還元を行い、十数nm径の白金微粒子の分散層を形成した。
【0007】
【非特許文献1】
J. J. Watkins and T. J. McCarthy, Polym.Mater.Sci.Eng., 74, 402(1996)
【非特許文献2】
J. J. Watkins and T. J. McCarthy, Polym.Mater.Sci.Eng., 73, 158(1995)
【非特許文献3】
J. J. Watkins and T. J. McCarthy, Chem.Mater., 7, 1991(1995)
【0008】
また、下記非特許文献4、5のように、J. Rosolovsky らは、ポリイミド樹脂の薄膜表面に鏡面を形成するため、超臨界二酸化炭素を用いて銀錯体を注入後、熱処理を行っている。その結果、サンプル表面から数百nmの深さに、数十nm径のAgのクラスター分散層が形成された。
【0009】
【非特許文献4】
J. Rosolovsky, R. K. Boggess, A. F. Rubira, L. T. Taylor, D. M. Stoakley and A. K. St. Clair,  J.Mater.Res., Vol.12, No.11, 3127(1997)
【非特許文献5】
R. K. Boggess , L. T. Taylor, D. M. Stoakley and A. K. St. Clair, J. Appl. Polym. Sci., 64, 1309(1997)
【0010】
さらに、下記非特許文献6のように、N.Nazemらは、J. Rosolovsky らの方法と同様の方法でポリエーテルエーテルケトン樹脂に対してAg鏡面を形成した。
【非特許文献6】
N. Nazem, L. T. Taylor and A. F. Rubira, J.Supercritical Fluids, 23,43(2002)
【0011】
しかしながら、このような超臨界流体を利用した方法は、平板形状の材料の表面に対して、鏡面を形成するために有機高分子材料の表面近傍に無機物の粒子を沈着させた結果についての報告がほとんどであり、表面から内部に渡って微粒子の分散のメカニズムを明確にした上で、特定の機能を付与すること等については明確にしていない。さらに、複雑な形状を有する材料に対する加工方法や、分散層の強度的安定性についても提示していない。また、このような超臨界流体を利用した方法は、ナノメートルサイズの微粒子を表面の近傍に集中して分散させた場合には、材料の使用条件や周囲の環境によっては、微粒子が有機性高分子の表面から離脱し、微粒子分散層が物理的に破損して損なわれるおそれがあるという新たな問題点を有している。
【0012】
本発明者等は、上記非特許文献1乃至6とは異なる機能性付与を目的とし、超臨界二酸化炭素を用いてポリメチルメタクリレート(PMMA)中にチタンイソプロポキシドを注入し、含水酸化チタンのクラスターを形成する技術を開発し、下記非特許文献7に発表したが、特定の機能の付与、および表面近傍に形成された微粒子分散層の強度的安定性について立証するには至っていない。また「表面のみに無機微粒子を集中して形成した場合、微粒子が有機性高分子の表面から離脱するおそれがある」という問題点を確実に解消しうるには至っていない。
【0013】
【非特許文献7】
高分子論文集(高分子学会編),Volume 58 Number 12 2001
「超臨界二酸化炭素を用いた高分子材料への有機金属化合物の注入(中西勉)」
【0014】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、複雑な形状の有機高分子材料に対してもナノメートルサイズの無機物質の微粒子を全表面に均一に注入、分散させることができ、しかも無機物質の微粒子を有機高分子材料の表面近傍に高濃度に分散させることによって有機高分子材料の表面の硬度が向上し、微粒子が有機性高分子の表面から離脱するのを防止することができ、また反射による電磁波遮蔽効果を有する等の特定の機能を付与することができ、さらに機能に持続性を有する複合材料を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するために、無機微粒子複合化有機高分子材料とその製造方法としてなされたもので、無機微粒子複合化有機高分子材料の特徴は、有機高分子材料の表面近傍であって、表面から100nmの深さまでの部分に無機物質の微粒子が注入、分散されていることである。
【0016】
「表面から100nmの深さまでの部分」としたのは、100nmの深さまでの部分に無機物質の微粒子を集中して分散させることにより、有機高分子材料の表面強度を向上させることができ、また反射による電磁波遮蔽効果が良好となるからである。
【0017】
無機物質の微粒子の有機高分子材料に対する体積含有率は、0.001%以上、50%以下であることが好ましい。0.001%未満であると、たとえば曲げ弾性や表面強度などの力学的強度の向上が見られず、また電磁波遮蔽効果の向上が見られない可能性がある。また50%を超えると、過剰の無機物質の微粒子によって有機高分子材料が脆くなり、力学的特性が損なわれる可能性があるからである。
ここで、「無機物質の微粒子の有機高分子材料に対する体積含有率」とは、無機物質の微粒子が分散している部分のみの有機高分子材料(有機高分子材料における一定の厚みを有する部分を想定している)の体積をV1 とし、その部分における無機物質の微粒子が占める全体積をV2 とした場合に、V2 /V1 ×100 (%)で表されるものをいう。
【0018】
無機微粒子の径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。無機微粒子が有機高分子材料の補強材であるという観点からすると、無機微粒子の径は小さい程、有機高分子材料との相互作用が強くなり、そのために有機高分子材料の流動性が小さくなり、結果として複合材料として強固な材料となる。一般に100nm以下の粒径のものがナノ粒子と称されており、ナノ粒子は、上記のような補強材としての観点からも優れた特性を有している。
【0019】
また、無機物質の微粒子の材質としては、たとえば金属、金属酸化物、ガラスのようなものが用いられる。金属を無機微粒子とした場合には、その金属微粒子で複合化された有機高分子材料は電磁波遮蔽効果が良好となる。またガラスの微粒子で複合化された有機高分子材料は、透明度が良好となる。
【0020】
さらに、無機微粒子複合化有機高分子材料の製造方法としての特徴は、有機高分子材料と、無機物質の微粒子に変換される無機微粒子の前駆体を溶解した高圧流体とを接触させて前記前駆体を有機高分子材料の表面近傍に注入し、次に、系内を減圧することによって、高圧流体中に溶解できなくなった前駆体を析出させて表面近傍の前駆体の注入量を増加させ、その後、前駆体を無機物質の微粒子に変換して、有機高分子材料の表面から100nmの深さまでの部分に無機物質の微粒子が注入、分散された複合化材料を製造することである。
ここで、系内の減圧によって前駆体が析出し、表面近傍の前駆体の注入量が増加するのは、有機高分子材料の表面近傍にすでに注入されていた前駆体を成長点(たとえば結晶成長が生ずる場合に、その結晶成長の起点となる核のようなものを意味する)にして、前記減圧により高圧流体中に溶解できなくなった前駆体が析出されることとなり、それによって、表面近傍の前駆体の注入量が増加するためと推定される。
【0021】
有機高分子材料と、前駆体を溶解した高圧流体とを接触させる前に、予め有機高分子材料に高圧流体を接触させることによって有機高分子材料の表面近傍を可塑化しておくことが望ましい。
【0022】
前駆体を有機高分子材料に注入する際に、高圧流体とともに、有機高分子材料又は前駆体の少なくともいずれかを溶解させ或いは可塑化させる溶剤を補助溶媒として添加することも可能である。補助溶媒が前駆体の良溶媒であれば、前駆体を好適に溶解して有機高分子材料に注入することができ、また補助溶媒が有機高分子材料の良溶媒であれば、有機高分子材料の可塑化がより好適に進行することとなり、その結果、前駆体が有機高分子材料に注入され易くなるのである。従って、補助溶媒は有機高分子材料又は無機微粒子前駆体の少なくともいずれかに対する良溶媒であればよいが、双方に対する良溶媒であってもよい。
【0023】
また、前駆体を有機高分子材料に注入した後、系内を減圧する前に、注入時の処理温度より低い温度まで有機高分子材料を冷却することも可能である。冷却することによって、可塑化がある程度抑制され、その後の減圧時に、すでに注入された前駆体が有機高分子材料から不用意に離脱するのが防止されることとなる。
【0024】
無機微粒子の前駆体を無機物質の微粒子に変化させる手段としては、たとえば有機高分子材料の温度を上昇させて前駆体を熱分解する手段や、水を補助溶剤として高圧流体に添加し、水と高圧流体との混合流体と、有機高分子材料とを接触させるような手段が採用される。前者の手段を採用する場合には、前駆体としてたとえば金属錯体が用いられ、後者の手段を採用する場合には、前駆体としてたとえば金属アルコキシドが用いられる。
【0025】
母材となる有機高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の汎用プラスチック、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の汎用エンジニアリングプラスチック、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、フッ素樹脂(PTFE、PCTFE、PVDFなど)などの、特殊エンジニアリングプラスチックを利用できるが、これらの混合物であるブレンドポリマーも使用できる。
【0026】
注入すべき無機物質の微粒子としては、たとえば金属、金属酸化物、ガラスなどがあり、それらの前駆体としては、金属アルコキシド、あるいは金属錯体などの炭素−金属間の結合を分子内に有する有機金属化合物を利用できる。金属の種類としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)などが利用できる。
【0027】
高圧流体としては、種々のものが利用できるが、有機高分子材料に対して浸透性の優れた、亜臨界流体や超臨界流体を用いるのが好ましい。流体の種類としては、例えば二酸化炭素(臨界温度:31.1℃、臨界圧力:7.38MPa)、亜酸化窒素(臨界温度:36.4℃、臨界圧力:7.24MPa)、トリフルオロメタン(臨界温度:25.9℃、臨界圧力:4.84MPa)、窒素(臨界温度:―147℃、臨界圧力:3.39MPa)、又はそれらの内の二種類以上の混合物を利用できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に従って説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、一実施形態としての無機微粒子複合化有機高分子材料の製造に用いる装置の概略ブロック図である。本実施形態の装置は、高圧ポンプ2、圧力計3、恒温槽4、背圧弁5、及び高圧セル6を具備している。
【0030】
高圧ポンプ2は、高圧流体を高圧セル6へ供給するためのポンプである。本実施形態では、日本分光社製のプランジャー式の高圧ポンプを用いたが、これ以外にも例えば日本精密機器社製、日機装社製、富士ポンプ社製等の、プランジャー式或いはダイヤフラム式の高圧ポンプを一般的に使用することができる。また高圧ポンプ2には、高圧流体供給用のボンベ1が接続されている。本実施形態では高圧流体として二酸化炭素が用いられる。
【0031】
圧力計3は、操作時の系内の圧力を検出し、表示するためのもので、計器内部の汚染を防止するために、高圧セル6の前段に設置するのが好ましい。例えば、長野計器社製、山崎計器社製などの圧力計が使用できる。なお、形式としては、ダイヤフラム式、ブルドン管式のものを使用できるが、汚染防止のためにはダイヤフラム式が好ましい。
【0032】
恒温槽4は、高圧セル6の温度を精密に調整するためのもので、熱伝導用の媒体は、空気、水、オイル、エチレングリコール、砂、その他これらの混合物が使用可能である。オイル、砂は100℃以上の高温条件で有効であり、水、エチレングリコール、それらの混合物は100℃以下の低温条件に有効である。空気は、両方の範囲に有効に適用可能である。本実施形態では、精密な温度制御が可能なGL−サイエンス社製の空気循環式恒温槽を用いた。
【0033】
背圧弁5は、高圧セル6内の圧力を一定に保つための弁であり、手動、あるいは自動の背圧弁が使用できる。例えば、AKICO社製、東洋高圧社製、日本分光社製などの背圧弁が使用できるが、減圧速度の微細な調整、圧力変動の低減などの観点から、自動制御式の背圧弁が好ましい。
【0034】
高圧セル6は、材料8に無機微粒子の前駆体9を注入するための容器である。高圧セル内部には、材料を固定するための架台と、セル内の流体を攪拌するための攪拌設備が具備されている。攪拌設備は、攪拌翼式、流体循環式の何れも使用できる。また、図示はされていないが、高圧セル6内部の状況を観察し易くするために、内部観察用の可視窓を取り付けても良い。
【0035】
その他、本実施形態の装置では、各装置が耐圧性の配管で接続され、さらに、配管の経路の途中部分には、流体の流量調整や、流路の開閉のために耐圧バルブが適宜具備されている(耐圧バルブは図面上は省略している。)。例えば、スェッジロック社製や、オートクレーブ社製の耐圧バルブが使用できる。また耐圧性の構成機器の材質は特に限定されないが、SUS314、SUS316、SUS316L、ハステロイ、インコネル、モネル鋼等の耐圧、及び耐腐食性の材質であることが望ましい。
【0036】
次に、この様な装置を用いて、無機微粒子複合化有機高分子材料を製造する方法の実施形態について説明する。
【0037】
先ず、無機微粒子を注入、分散させるための有機高分子材料(以下、単に材料ともいう)8を高圧セル6内の材料固定用架台に固定し、無機微粒子の前駆体9と、攪拌用の攪拌子7とともに高圧セル6に封入する。本実施形態では、材料8として、汎用プラスチックであり光機能性材料として重要なポリメチルメタアクリレート(PMMA)を用いた。無機微粒子としては、生体に対する影響が少なくかつ電磁波遮蔽性及び導電性の付与が期待できる銀を選んだ。その銀の前駆体8として、銀の錯体である(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタネジアネート)銀を用いた(略号AgFOD)。
【0038】
次に、ボンベ1から二酸化炭素を高圧セル6に供給し、高圧セル6内の残存空気をパージした後、高圧ポンプ2を用いて二酸化炭素を高圧セル6に供給するとともに、温度と圧力を調整した。温度は恒温槽4で調整し、圧力は背圧弁5で調整した。温度と圧力は、使用する高圧流体が、亜臨界流体、もしくは超臨界流体になる条件であれば良い。本実施形態では高圧流体として二酸化炭素(臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38MPa)を利用するため、温度範囲は25℃から80℃、圧力は6MPaから50MPaが好ましい。
【0039】
所定の温度と圧力の条件に到達した後、高圧ポンプ1を停止し、攪拌子7によって高圧セル6内の攪拌を開始し、二酸化炭素と前駆体9を混合した。なお、攪拌子7の回転には、図示しないが、マグネット式の撹拌装置を使用した。攪拌の開始後、所定時間のあいだ注入処理を行った。
【0040】
二酸化炭素の超臨界流体が材料8に接触すると、材料8の内部に二酸化炭素が浸透する。そのため、材料8は膨潤・可塑化し、ガラス転移温度の低下、粘度の低下が起こり、特に材料8の表面近傍部分が可塑化することによって、表面が粗面化する。さらに、前駆体9は超臨界流体の二酸化炭素に溶解するため、二酸化炭素を媒体にして、前駆体9を、材料8の表面の粗化部分及び表面近傍に浸透させることができる。このときの処理時間は、0.1時間から4時間が好ましい。
【0041】
注入処理後、一旦、温度を25℃以下の低温に冷却することによって材料8の内部の物質の移動度を小さくし、次工程の減圧の際に、内部の前駆体9が、二酸化炭素に同伴して外部に流出することを防止する。
【0042】
冷却工程の後、背圧弁5を開いて高圧セル6内の圧力を大気圧まで減圧する。このとき、系内の二酸化炭素濃度が減少することによって、二酸化炭素に溶解しきれない前駆体9が、材料8の粗化部分に浸透している前駆体9を成長点にして成長しつつ析出する。この結果、材料8の表面近傍における前駆体の注入量が増加することとなる。また、このとき0.1MPa/minより速い速度で減圧すると、外部に放出される二酸化炭素に同伴して前駆体9が外部に流出するため、この速度以下で減圧することが好ましい。さらに、材料8の内部に残存する二酸化炭素によって材料8が発泡する。材料8を発泡させずに減圧する場合にも、0.1MPa/minより遅い速度で減圧することが好ましい。
【0043】
さらに、高圧セル6の内部に材料8を保持したまま、恒温槽4によって加熱処理することによって、材料8の内部の前駆体9を金属微粒子に還元し、無機微粒子複合化有機高分子材料を製造した。
【0044】
恒温槽4の操作条件は、前駆体9であるAgFODの分解温度である160℃とし、処理時間は2時間で行った。前駆体9を熱分解することによって、有機物から無機物質へ変換することができるが、このとき、前駆体9の種類によって熱分解温度が異なるため、その種類に合わせて適宜、処理温度を選択することができる。例えば、銀のアセチルアセトン錯体は100℃、銅のアセチルアセトン錯体は286℃、ニッケルのアセチルアセトン錯体は240℃、白金のアセチルアセトン錯体は251℃、パラジウムのアセチルアセトン錯体は260℃、などである。
【0045】
(実施形態2)
本実施形態の設備では、図2に示すように、高圧ポンプ2、圧力計3、恒温槽4、背圧弁5、高圧セル6の他に溶剤ポンプ10が具備され、その溶剤ポンプ10に、溶剤貯留槽11が接続されている。すなわち、本実施形態では流体として二酸化炭素を使用し、補助溶媒として溶剤が使用される。
【0046】
次に、操作手順について実施形態1との比較の上で、異なる部分のみ示す。
【0047】
材料8と前駆体9とを高圧セル6に封入し、残存空気をパージした後、二酸化炭素を流通させて所定の温度と圧力に設定し、続いて、溶剤としてのアセトンを溶剤ポンプ10を用いて、所定量を高圧セル6に投入する。アセトンの投入後、高圧ポンプ6及び溶剤ポンプ10を停止し、所定時間、注入処理する。アセトンの投入量は、所定の温度と圧力条件での二酸化炭素の投入量に対し、モル比で0.5%から10%までが好ましい。
【0048】
前駆体9の注入処理以外の操作手順は、前記実施形態1と同じであるためここでは説明を省略する。
【0049】
本実施形態では、高圧流体としての二酸化炭素とともに補助溶媒としての溶剤を用いたため、その材料8の表面をより可塑化、粗面化させ易くなり、また材料8の内部に前駆体9をより浸透し易くなるという効果がある。また、二酸化炭素に対して前駆体9の溶解度を増加させることによって材料8の表面近傍に浸透する前駆体9の量を増加させることができるという効果がある。さらに、これら二つの効果によって、目的とする量の前駆体9を注入する処理時間が、補助溶媒を添加しない場合と比べて短縮できるという効果もある。
【0050】
このような効果を奏させる観点から、溶剤を選択する基準としては、材料8の良溶媒、無機微粒子の前駆体9の良溶媒であることが望ましい。本実施形態では、溶剤としてアセトンを使用したが、補助溶媒と、前駆体9や材料8との相互作用を事前に調べ、前駆体9に対する良溶媒か、材料8に対する良溶媒か、或いは前駆体9と材料8の両方の良溶媒かを確認しておくことによって、アセトン以外の溶剤も適宜選択することができる。たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールを使用することができる。
【0051】
(実施形態3)
本実施形態では、図3に示すように、無機微粒子の前駆体9の溶解・抽出専用の高圧セル6aと、材料8の処理専用の高圧セル6bとの2つの高圧セルを設け、それぞれの高圧セルに恒温槽4a,4bをそれぞれ設置し、さらに、系内の攪拌のために、循環ポンプ12とその循環ライン22が設置されている。
【0052】
上記実施形態1及び2では、1つの高圧セル内で前駆体9の溶解と、材料8の可塑化の処理を行ったが、本実施形態では高圧セル6a内での前駆体9の溶解,抽出の処理と、高圧セル6b内での材料8の可塑化処理とを行うこととした。
【0053】
より具体的に説明すると、先ず、バルブ13及びバルブ18並びに高圧セル6bとの入口部と出口部のバルブ16,17を開の状態とし、高圧セル6aの入口部と出口部のバルブ14,15及び他のバルブ19,20,21を閉の状態として、高圧セル6b内の残存空気をパージした後、所定の温度、圧力になるまで高圧ポンプ2を用いてボンベ1から二酸化炭素を高圧セル6bに供給する。高圧流体となった二酸化炭素が供給されると、高圧セル6b内の材料8の表面が可塑化、粗面化されることとなる。
【0054】
次に、バルブ18を閉の状態にするとともに、高圧セル6aの入口部と出口部のバルブ14,15を開の状態にする。これによって、高圧流体は高圧セル6aに供給され、その高圧流体が無機微粒子の前駆体9を溶解するとともに高圧セル6bに供給されて高圧セル6b内の材料8に接触する。
【0055】
その後、高圧ポンプ2を停止し、その高圧ポンプ2側のバルブ13を閉の状態とし、循環ライン22中のバルブ20,21を開の状態にして、循環ポンプ12を作動させる。これによって、高圧流体は循環ライン22を循環するとともに高圧セル6a,6bに供給され、その高圧流体が前駆体9を効率的に溶解するとともに、効率的に材料8に接触することとなる。
【0056】
このようにして、前駆体9が材料8に注入された後、再度バルブ13及びバルブ18並びに高圧セル6bとの入口部と出口部のバルブ16,17を開の状態とし、高圧セル6aの入口部と出口部のバルブ14,15及び他のバルブ19,20,21を閉の状態として、高圧セル6b内を減圧する。このとき、背圧弁5は徐々に開いて0.1MPa/minより遅い速度で減圧することで、実施形態1と同様に前駆体9の注入量が材料の粗化部分でさらに増加する。
【0057】
そして、背圧弁5を開いて大気圧まで減圧し、高圧セル6b内の二酸化炭素を除去し、高圧セル6bを開き、新たな材料8を高圧セル6b内に入れて設置し、同様に処理を行う。この場合において、前駆体9は、材料8が収容された高圧セル6bと別の高圧セル6aに収容されているので、高圧セル6b内部の材料8のみを取り替えることによって、高圧セル6aの内部の前駆体9は、最初に仕込んだものを次の新たな材料の処理にも有効に使用することができる。
【0058】
以上のように、本実施形態では、溶解・抽出専用の高圧セル6aと、材料8の処理専用の高圧セル6bとの2つの高圧セルを設け、系内の攪拌を循環ポンプ7により行うことによって、高圧セル6a内部で、高圧流体に溶解した前駆体9が効率的に材料8に接触し、次の減圧工程では、高圧セル6a内に残存する前駆体9を予め高圧セル6a外へ除去せずに高圧セル6bのみに二酸化炭素を連続的に通すことによって、より短時間に高圧セル6b内の減圧を行うことができ、しかも高圧セル6b内部の材料8のみを取り替えることによって、最初に仕込んだ前駆体9を、次工程で有効に使用することができるのである。
【0059】
(実施形態4)
本実施形態の装置では、図4に示すように実施形態3の構成要素の他に溶剤貯留槽10及び溶剤ポンプ11を具備させている。従って、本実施形態では、流体として、二酸化炭素を高圧流体として、溶剤を補助溶媒として使用する。二酸化炭素の他に溶剤を用いたことによる作用効果は、上記実施形態2と同じである。
【0060】
次に、操作手順について実施形態3との比較の上で、異なる部分のみ示す。すなわち、材料8と、無機微粒子の前駆体9とをそれぞれ高圧セル6aと6bに封入し、残存空気をパージした後、二酸化炭素を流通させて所定の温度と圧力に設定し、続いて、溶剤としてのアセトンを溶剤ポンプ11を用いて、所定量を高圧セル6a及び高圧セル6bに供給する。アセトンの供給後、高圧ポンプ2を停止し、所定時間、注入処理する。この際、循環ポンプ12を作動させ、系内の流体を均一に攪拌することができる。
【0061】
アセトンの供給量は、前記実施形態2と同じく、所定の温度と圧力条件での二酸化炭素の投入量に対し、モル比で0.5から10%までが好ましい。本実施形態では高圧ポンプ2側のみならず、溶剤ポンプ10側にもバルブ23を設けている。その他の工程は、前記実施形態1乃至3と同じであるためここでは説明を省略する。
【0062】
(実施形態5)
本実施形態では、無機微粒子の前駆体9として、上記実施形態1乃至4の有機金属錯体に代えて金属アルコキシドを用いた。より具体的には、チタンイソプロポキシドを用いた。そして、この前駆体9を材料8に注入した後、二酸化炭素とともに水を流通させる。これによって、チタンイソプロポキシドは加水分解されて酸化チタンとなり、結果的に酸化チタンの微粒子が材料内に注入、分散されることとなった。使用した装置や材料は実施形態1乃至4と同様のものであり、実施形態1乃至4と同様の操作手順によって、酸化チタンの微粒子を注入、分散させた材料を得た。
【0063】
(実施形態6)
本実施形態では、有機高分子材料として、上記実施形態1乃至4のポリメチルメタアクリレート(PMMA)に代えてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。無機微粒子の前駆体9は実施形態1乃至4と同様の銀の錯体を用い、実施形態1乃至4と同様の装置を使用し、同様の操作手順によって、銀の微粒子を分散させた材料を得ることができた。
【0064】
(その他の実施形態)
尚、配管の途中に位置する高圧バルブの形式は、ニードル式、ダイヤフラム式、ボール弁式などの形式のものを使用することができる。圧力調整用にはニードル式のものを用い、流路の効率的な開閉にはボール弁式のものを用いることが好ましい。また、バルブ内部への不純物の流入を防止するためにはダイヤフラム式が好ましい。
【0065】
さらに、高圧セルについては、内部の材料8あるいは流体の変化を観察するため、可視窓を具備していることが好ましい。また、高圧セル内部の反応物が可視窓の内面に付着することを防止するために、可視窓の内面に雲母などの保護カバーを取り付けることが好ましい。さらに、本発明の無機微粒子複合化有機高分子材料の用途は問うものではないが、たとえば電磁波の遮蔽効果を利用した電磁波シールド材料、材料の表面を高強度化して耐摩耗性を向上させた摺動部品用材料などに適用することができる。
【0066】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0067】
(実施例1)
本実施例では、上記実施形態1の装置を用いた。操作手順は、次の通りである。先ず、材料としてPETの試験片(15mm×18mm×1mm)を準備して試料架台に固定し、前駆体として試験片の重量に対してAgで15wt%分のAgFOD(アルドリッチ社製)を、攪拌子と共に高圧セル内に封入した。
【0068】
続いて、二酸化炭素で高圧セル内の残存空気をパージした後、温度を50℃、圧力を20MPaに調整した。所定の条件に到達した後、高圧セル内の攪拌を開始し、2時間、注入処理を行った。
【0069】
注入処理後、圧力一定で25℃に冷却した後、高圧セル内を大気圧まで減圧した。この場合、0.1MPa/minより遅い速度で減圧を行った。大気圧に到達後、160℃で2時間、熱分解することによって、AgFODを金属のAgに変換した。尚、160℃を分解温度として選定したのは、予め熱分析(TG−DTA)の結果から、前駆体のAgFODは140℃以上で分解による発熱ピークと重量減少が観察され160℃でほぼ完全に分解することを確認していたためである。
【0070】
次に、試料中のAgの化学形態をX線回折測定装置で分析した。装置はリガク製、RINT2500型のX線回折測定装置を用い、管電圧40kV、管電流200mA、走査速度5°/minの条件で分析した。また、無機微粒子の分散状況は、試料片の断面の透過電子顕微鏡観察を行うことによって観察した。装置は、日立製H−7100型透過電子顕微鏡を用い、加速電圧125kVで観察した。試料は、ウルトラミクロトーム(ダイヤモンドナイフ使用)で超薄切片を作成した後、切片を銅メッシュに積載し、補強処理としてカーボン蒸着処理を施してTEM検鏡用試料とした。得られたTEM像を図5に示す。
【0071】
図5からも明らかなように、PETの表面から100nmの深さまでの部分に金属Agの粒子が分散していることが分かった。また、得られたTEM像から500個以上の粒子の粒径を計測し、その平均粒子径を求めた。平均粒子径は60nmであり、粒径の幅は、4nmから100nmであった。さらにAg微粒子の母材に対する体積含有率は45%であった。
【0072】
次に、Ag微粒子を分散させたPETの機能性の一つとして電磁波の遮蔽性を調べた。その結果、500MHzから18GHzの領域の電磁波において、ヒューレットパッカード社のネットワークアナライザーを用いて調べた結果、最大50dB(電磁波の減衰率で99.7%)の反射による電磁波遮蔽効果を有することが分かった。さらに、薬品による微粒子分散層の剥離の有無を確認するため、上記試験片の表面をアセトンでさらに拭き取り、同様に電磁波遮蔽効果を調べた。実験の結果、拭き取りの前後で差は見られなかった。この結果から、薬剤によっても分散層からの微粒子の脱離は見られないことが確認できた。従って、このようなAg微粒子で複合化されたPETからなる繊維で被服等を編成、織成した場合、安定して電磁波遮蔽効果を有する被服等を提供することができる。
【0073】
(実施例2)
本実施例は、材料としてPMMAの試験片(15mm×18mm×1mm)を用いた。装置、その他の試薬、および操作方法は、実施例1と同じであるのでその説明を省略する。
【0074】
分析の結果、PMMAの場合も、表面から100nmの範囲内に金属Agの微粒子が分散していることが分かった。
【0075】
PMMAへのAg微粒子の分散体について、機能性の一つとして表面の硬度について、ビッカース硬度計を用いて調べた。その結果、本実施例では、最大10%以上の硬度の向上が見られた。
【0076】
さらに、当該試験片の表面をアセトンでさらに拭き取り、同様に硬度の変化を調べた結果、拭き取りの前後で、硬度の差は見られなかった。
【0077】
(実施例3)
本実施例では、前駆体としてチタンイソプロポキシドを用いた。チタンイソプロポキシドの重量は、試験片の重量に対してTiで15%分のものを用いた。試験片の材質と大きさは実施例1と同様のものを用いた。温度、圧力も実施例1と同じ条件で行った。二酸化炭素の流通速度や減圧速度、処理時間も実施例1と同じとした。ただし、二酸化炭素とともに、水を流通させた。
【0078】
注入後の後処理として、水と高圧流体との混合流体を、注入後の試験片に接触させた。混合比、温度、圧力、処理時間は注入時の条件と同じである。処理の結果、チタンイソプロポキシドは、流通させた水によって加水分解され、酸化チタンに変換された。
【0079】
(その他実施例)
PETとPMMAを用いて、温度を、25℃から80℃まで、圧力を6MPaから30MPaまで、アセトンの添加率を0.5%から10%まで変化させて前記実施例1と同様の実験を行い、試料の分析を行った。その結果、Ag粒子の体積含有率が0.001%以上50%以下であること、粒子径は、1nmから100nmの範囲であることが確認された。
【0080】
さらに、平板状の試料の他に、同芯円筒状の試料、繊維状の試料について同様の条件で実験した結果、各試料について、全表面に微粒子分散層が形成されていることを確認できた。
【0081】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、有機高分子材料の表面近傍であって、表面から100nmの深さまでの部分に無機物質の微粒子を注入、分散させて複合材料を製造することができるため、その表面の硬度が向上する等の機能性を付与するに至った。
【0082】
特に、本発明の無機微粒子複合化有機高分子材料の製造方法においては、有機高分子材料と、無機物質の微粒子に変換される無機微粒子の前駆体を溶解した高圧流体とを接触させて前記前駆体を有機高分子材料に注入した後に系内の圧力を減圧するので、系内の高圧流体の濃度が減少し、それに伴って前駆体の濃度が減少し、その結果、有機高分子材料の表面近傍にすでに注入された前駆体を成長点にして、前記減圧により高圧流体中に溶解できなくなった前駆体が析出されることとなり、それによって、表面近傍の前駆体の注入量が増加することとなる。従って、その後に前駆体を無機物質の微粒子に変換することで、有機高分子材料の表面から100nmの深さまでの部分に集中して無機物質の微粒子が分散するために、表面近傍における無機微粒子の濃度が高く、しかも上記のような前躯体析出という特異的な態様の微粒子分散状態の複合化材料を提供でき、その結果、上記のような表面硬度の向上のみならず、微粒子の離脱を防止でき且つ反射による電磁波遮蔽効果を有する等の機能性が付与された無機微粒子複合化有機高分子材料を得ることができる。
【0083】
また、有機高分子材料に高圧流体を接触させることによって有機高分子材料の表面近傍を予め可塑化させておけば、析出される前駆体の成長点となるものが、可塑化された有機高分子材料の表面近傍に注入され易く、その結果、有機高分子材料の表面から100nmまでの深さの部分に無機物質の微粒子をより確実に分散させることができるという効果がある。
【0084】
さらに、前駆体を有機高分子材料に注入する際に、高圧流体とともに、有機高分子材料又は前駆体の少なくともいずれかを溶解あるいは可塑化させうる良溶媒を補助溶媒として添加する場合には、有機高分子材料の可塑化をより確実に進行させることができ、或いは前駆体をより好適に溶解させることができるので、有機高分子材料への前駆体の注入をより確実に行うことができるという効果がある。
【0085】
さらに、前駆体を有機高分子材料に注入した後、系内を減圧する前に、注入時の処理温度より低い温度まで有機高分子材料を冷却する場合には、有機高分子材料の可塑化がある程度抑制され、その後の減圧時に、すでに注入された前駆体が有機高分子材料から不用意に離脱するのが防止されるという効果がある。
【0086】
さらに、二酸化炭素のような常温常圧で気体である流体をプロセス溶媒として用いて処理する場合には、複合材料と溶媒としての二酸化炭素との分離が容易であり、プロセスの簡略化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態としての無機微粒子複合化有機高分子材料の製造装置の概略ブロック図
【図2】一実施形態としての無機微粒子複合化有機高分子材料の製造装置の概略ブロック図
【図3】一実施形態としての無機微粒子複合化有機高分子材料の製造装置の概略ブロック図
【図4】一実施形態としての無機微粒子複合化有機高分子材料の製造装置の概略ブロック図
【図5】一実施例としての無機微粒子の分散状態を示す透過電子顕微鏡写真。

Claims (12)

  1. 有機高分子材料の表面近傍であって、表面から100nmの深さまでの部分に無機物質の微粒子が注入、分散されていることを特徴とする無機微粒子複合化有機高分子材料。
  2. 無機物質の微粒子の体積含有率が0.001%以上50%以下である請求項1記載の無機微粒子複合化有機高分子材料。
  3. 無機物質の微粒子の粒子径が1nm以上100nm以下である請求項1又は2記載の無機微粒子複合化有機高分子材料。
  4. 無機物質の微粒子が、金属、金属酸化物、又はガラスである請求項1乃至3のいずれかに記載の無機微粒子複合化有機高分子材料。
  5. 有機高分子材料と、無機物質の微粒子に変換される無機微粒子の前駆体を溶解した高圧流体とを接触させることによって前記前駆体を有機高分子材料の表面近傍に注入し、次に、系内を減圧することによって、高圧流体中に溶解できなくなった前駆体を析出させて表面近傍の前駆体の注入量を増加させ、その後、前駆体を無機物質の微粒子に変換して、有機高分子材料の表面から100nmの深さまでの部分に無機物質の微粒子が注入、分散された複合化材料を製造することを特徴とする無機微粒子複合化有機高分子材料の製造方法。
  6. 有機高分子材料と、無機物質の微粒子に変換される無機微粒子の前駆体を溶解した高圧流体とを接触させる前に、予め有機高分子材料に高圧流体を接触させることによって有機高分子材料の表面近傍を可塑化する請求項5記載の無機微粒子複合化有機高分子材料の製造方法。
  7. 無機微粒子の前駆体を有機高分子材料に注入する際に、高圧流体とともに、有機高分子材料又は無機微粒子前駆体の少なくともいずれかを溶解又は可塑化させうる溶剤を補助溶媒として添加する請求項5又は6記載の無機微粒子複合化有機高分子材料の製造方法。
  8. 無機微粒子の前駆体を有機高分子材料に注入した後、系内を減圧する前に、注入時の処理温度より低い温度まで有機高分子材料を冷却する請求項5乃至7のいずれかに記載の無機微粒子複合化有機高分子材料の製造方法。
  9. 無機微粒子の前駆体を無機物質の微粒子に変換させる手段が、有機高分子材料の温度を上昇させて前記前駆体を熱分解する手段である請求項5乃至8のいずれかに記載の無機微粒子複合化有機高分子材料の製造方法。
  10. 前記無機微粒子の前駆体が、金属錯体である請求項9記載の無機微粒子複合化有機高分子材料の製造方法。
  11. 無機微粒子の前駆体を無機物質の微粒子に変換させる手段が、水を補助溶剤として高圧流体に添加し、水と高圧流体との混合流体と、有機高分子材料とを接触させる手段である請求項5乃至8のいずれかに記載の無機微粒子複合化有機高分子材料の製造方法。
  12. 無機微粒子の前駆体が、金属アルコキシドである請求項11記載の無機微粒子複合化有機高分子材料の製造方法。
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