JP2004131449A - 3−フェニルプロパナールの合成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】3−フェニルプロパナールの新規合成方法を提供する。
【解決手段】超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、3−フェニルプロパナールを合成する方法、反応温度が、35−65℃である上記方法、水素圧が2−4MPa、二酸化炭素圧が7.5−12MPaである上記方法、更に、上記3−フェニルプロパナールの酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成する方法。
【選択図】 なし
【解決手段】超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、3−フェニルプロパナールを合成する方法、反応温度が、35−65℃である上記方法、水素圧が2−4MPa、二酸化炭素圧が7.5−12MPaである上記方法、更に、上記3−フェニルプロパナールの酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成する方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、3−フェニルプロパナール(3−phenylpropanal)の新規合成方法に関するものであり、更に詳しくは、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドから3−フェニルプロパナールを合成する方法及び該3−フェニルプロパナールから3−フェニルプロピオン酸を合成する方法に関するものである。
本発明は、有機溶媒、添加物、助触媒等を用いることなく、高収率、高選択的に3−フェニルプロパナールおよび3−フェニルプロピオン酸を合成する方法を提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
本発明は、超臨界二酸化炭素中で担持パラジウム触媒を用いてケイ皮アルデヒドの水素化反応により3−フェニルプロパナールを合成した最初の例であるが、水溶液を使った同様なプロセスは、先行文献(例えば、特許文献1〜2参照)で報告されている。しかしながら、これらの方法は、酢酸カリウムと水の存在下でPd/CあるいはPd/Al2 O3 触媒を用いて行われるものであり、これらのプロセスは、水溶液が系内に存在するために生産性はそれほど高くない上、付加的な分離操作を必要とする。かくして、水溶液を用いたプロセスは、実用化の観点から劣っていることから、当該技術分野においては、何らの有機溶媒、添加物、助触媒等を用いることなく、3−フェニルプロパナールを合成することができる新しい合成方法を開発することが強く要請されていた。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第5,811,588号明細書
【特許文献2】
WO 96/11898号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、何らの有機溶媒、添加物、助触媒等を用いることなく、3−フェニルプロパナール等を合成することが可能な新しい合成方法を開発すること目標として鋭意研究を積み重ねた結果、環境に優しい超臨界二酸化炭素中で、何らの有機溶媒、添加物、助触媒を用いることなく、高収率、高選択的に上記化合物が合成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、超臨界二酸化炭素中で担持金属パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒド( C6 H5 CH=CHCHO)の水素化により、3−フェニルプロパナールを環境に配慮した方法で合成する方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、上記3−フェニルプロパナールの酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成する方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、3−フェニルプロパナールを合成することを特徴とする3−フェニルプロパナールの合成方法。
(2)反応温度が、35−65℃である、前記(1)記載の方法。
(3)水素圧が2−4MPa、二酸化炭素圧が7.5−12MPaである、前記(1)記載の方法。
(4)担持パラジウム触媒が、Pd/C、Pd/SiO2 又はPd/Al2 O3である、前記(1)記載の方法。
(5)反応溶媒として、超臨界二酸化炭素と有機溶媒を含む共溶媒を使用する、前記(1)記載の方法。
(6)超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、3−フェニルプロパナールを合成する工程、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、3−フェニルプロパナールの酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成する工程、からなることを特徴とする3−フェニルプロピオン酸の合成方法。
(7)酸化反応の反応温度が、50−65℃である、前記(6)記載の方法。
(8)酸素圧が1.0−1.5MPa、二酸化炭素圧が0−8.0MPaである、前記(6)記載の方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明によるプロセスによって、超臨界二酸化炭素中でのケイ皮アルデヒドの水素化による3−フェニルプロパナールの合成が、高い生産性、高収率、高選択性で実現するだけでなく、触媒の再使用も可能になる(後記する実施例2参照)。本発明のプロセスの反応条件は、それほど過酷なものではなく、反応温度は、室温付近、好適には、例えば、35−65℃であるが、70℃以上に温度を上げると、フェニルプロパナールへの選択性は減少する。また、好適には、水素圧力は2−4MPa、二酸化炭素圧力は7.5−12MPaである。また、本発明で用いられる担持パラジウム触媒として、好適には、例えば、Pd/C、Pd/SiO2 、Pd/Al2 O3 が例示されるが、これらに制限されるものではなく、同効のものであれば同様に使用することができる。
【0007】
本発明では、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として使うことにより、目的化合物の収率と選択性の両方を改善することができる。この場合、この超臨界二酸化炭素に有機溶媒を含む共溶媒を使用することができる。本発明のプロセスは、有機溶媒や付加物の添加の必要のないクリーンプロセスであるが、収率、選択性ともに、有機溶媒中で行った場合よりも高い。水素化反応の終了後、触媒と溶媒の超臨界二酸化炭素からの生成物の分離は、相分離操作によって極めて容易であり、しかも、触媒は、再使用が可能であり、その際、活性の低下は観察されない。
【0008】
本発明の方法は、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、例えば、Pd/C等の担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、フェニルプロパナールを合成するための新規プロセスである。また、本発明の方法は、無触媒で、上記3−フェニルプロパナールの酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成するための新規プロセスである。本発明のプロセスは、有機溶媒や何らの付加物を用いない環境に優しい手法であり、室温付近で、3−フェニルプロパナール及び3−フェニルプロピオン酸を極めて高収率、高選択的に合成することができる。上記プロセスで、水素化によって合成された主生成物は、3−フェニルプロパナールであり、触媒や溶媒を用いなくても、ケイ皮アルデヒドが、3−フェニルプロピオン酸に、直接、酸化され、酸素雰囲気中での二酸化炭素の使用は、その活性を増大させる。本発明は、ケイ皮アルデヒドから3−フェニルプロピオン酸を高選択的に合成することが主旨である。
【0009】
反応終了後、混合物(気−液−固) は、簡単な相分離操作により精製することができ、使用した触媒は、繰り替えし使用が可能であり、その際の触媒劣化は見られない。90%の3−フェニルプロパナールを含む液体生成物は、何らの触媒や溶媒を用いることなく、酸素雰囲気下で、3−フェニルプロピオン酸(3−phenylpropionic acid:C6 H5 CH2 CH2 COOH)に容易に酸化される。超臨界二酸化炭素が酸化雰囲気で使われる時、触媒活性は増加する。
【0010】
酸化反応は、反応温度は40−65℃、好ましくは50−65℃、酸素圧は1.0−3.0MPa、好ましくは1.0−1.5MPa、二酸化炭素圧力は0−8.0MPaで好適に実施される。酸化反応の終了後、高純度の3−フェニルプロピオン酸の固体生成物が得られる。3−フェニルプロピオン酸は、抗エイズ剤のような薬物を合成する中間体として、工業的にも重要である。以下に、ケイ皮アルデヒドから3−フェニルプロパナール、及びこれから3−フェニルプロピオン酸を合成するプロセスのスキームを示す。
【0011】
【化1】
【0012】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)3−フェニルプロパナールの合成
8.8mmolケイ皮アルデヒド0.01g、10重量%Pd/C触媒(含有Pd量:0.0094mol)を50ml高圧反応器に挿入後、2.0MPaの二酸化炭素で3回フラッシュした後、323Kに昇温した。4.0MPaになるまで水素を反応器に導入した後、二酸化炭素をポンプによって全圧12.0MPaになるまで導入し、昇圧させた。反応は60分間攪拌しながら行った。その後、反応器を氷浴中で10分間冷却した後、二酸化炭素と水素を徐々にパージし、次いで、液体の反応生成物をろ過によって触媒から分離した。反応物をガスクロによって分析した結果、ケイ皮アルデヒドの転化率は100%、3−フェニルプロパナールの選択性及び収率は88%、TOF2010h−1を得た。
【0013】
(2)3−フェニルプロピオン酸の合成
3−フェニルプロパナールの酸化反応を50ml高圧反応器中で行った。18.8mmolの3−フェニルプロパナールを挿入した高圧反応器を323Kに昇温した後、酸素を1.1MPa、次いで、二酸化炭素を導入し、全圧が9.0MPaになるように調整した。反応は120分間攪拌しながら行った。その後、反応器を氷浴中で10分間冷却した後、二酸化炭素と酸素を徐々にパージした。反応物をガスクロによって分析した結果、3−フェニルプロピオン酸の収率は99%であった。
【0014】
(3)結果
1)3−フェニルプロパナールの合成
3−フェニルプロパナールの合成実験の結果を表1に示す。
超臨界二酸化炭素中では、主に、3−フェニルプロパナールが生成した。 反応速度は、二酸化炭素圧力と水素圧力の増加とともに、増大した。 3−フェニルプロパナールへの反応速度と選択性は、プロパノール中に比べて、超臨界二酸化炭素中で向上した。同様な条件下(No.7、11)で、プロパノール中で転化率が75%であったものが、超臨界二酸化炭素中では100%に増加し、収率についても、53%から88%に増加した。3−フェニルプロパナールへの選択性は、超臨界二酸化炭素(No.10、3)中では, 溶媒を使用しない時のそれと変わらなかったが、反応速度は向上した。収率は、溶媒無添加の47%から、超臨界二酸化炭素中では73%に増加した。
【0015】
共溶媒を使用すると、反応速度、選択性とも向上し、収率は、52%から73%に増加した(No.11、12)。TOFは、超臨界二酸化炭素中では顕著に増大し、水素圧力4MPa、二酸化炭素圧力8MPa、反応温度50 ℃、反応時間60分(No.7)の条件で最大収率88%が得られた。反応速度は、温度とともに著しく増加するが、選択性はわずかに変化し、50℃で最大の選択性を示した。
【0016】
【表1】
【0017】
2)3−フェニルプロピオン酸の合成
3−フェニルプロピオン酸の合成実験の結果を表2に示す。
3−フェニルプロパノールの3−フェニルプロピオン酸への酸化反応は、超臨界二酸化炭素と溶媒無添加で高選択的(99%)に進行した。反応速度は、酸素圧力1−1.5MPa、反応温度50℃の条件下で、超臨界二酸化炭素を用いることによって増加した。
【0018】
【表2】
【0019】
実施例2
ケイ皮アルデヒド1.0g、10%Pd/C触媒0.01g、水素分圧4.0MPa、二酸化炭素分圧12.0MPa、温度323K、反応時間60分の条件下で反応を行った後、触媒をろ過後、何等の処理を加えることなく、上記と同条件下で再利用を試みた。本操作を3回くり返したが、3−フェニルプロパナールの収率は、1回目の操作では85%、2回目では83%、3回目では84%とほとんど変化がなかった。
【0020】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、3−フェニルプロパナールを合成する方法及び該化合物の酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成する方法に係るものであり、本発明により、以下のような作用効果が奏される。
(1)何らの有機溶媒、添加物、助触媒等を用いることなく、3−フェニルプロパナールを合成できる。
(2)高収率、及び高い選択性で目的化合物を合成できる。
(3)環境に優しい超臨界二酸化炭素中で、例えば、35−65℃の低温度条件下で目的化合物を合成できる。
(4)本発明を利用することにより、ケイ皮アルデヒドから3−フェニルプロパナール及び3−フェニルプロピオン酸を高選択率で合成することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、3−フェニルプロパナール(3−phenylpropanal)の新規合成方法に関するものであり、更に詳しくは、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドから3−フェニルプロパナールを合成する方法及び該3−フェニルプロパナールから3−フェニルプロピオン酸を合成する方法に関するものである。
本発明は、有機溶媒、添加物、助触媒等を用いることなく、高収率、高選択的に3−フェニルプロパナールおよび3−フェニルプロピオン酸を合成する方法を提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
本発明は、超臨界二酸化炭素中で担持パラジウム触媒を用いてケイ皮アルデヒドの水素化反応により3−フェニルプロパナールを合成した最初の例であるが、水溶液を使った同様なプロセスは、先行文献(例えば、特許文献1〜2参照)で報告されている。しかしながら、これらの方法は、酢酸カリウムと水の存在下でPd/CあるいはPd/Al2 O3 触媒を用いて行われるものであり、これらのプロセスは、水溶液が系内に存在するために生産性はそれほど高くない上、付加的な分離操作を必要とする。かくして、水溶液を用いたプロセスは、実用化の観点から劣っていることから、当該技術分野においては、何らの有機溶媒、添加物、助触媒等を用いることなく、3−フェニルプロパナールを合成することができる新しい合成方法を開発することが強く要請されていた。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第5,811,588号明細書
【特許文献2】
WO 96/11898号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、何らの有機溶媒、添加物、助触媒等を用いることなく、3−フェニルプロパナール等を合成することが可能な新しい合成方法を開発すること目標として鋭意研究を積み重ねた結果、環境に優しい超臨界二酸化炭素中で、何らの有機溶媒、添加物、助触媒を用いることなく、高収率、高選択的に上記化合物が合成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、超臨界二酸化炭素中で担持金属パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒド( C6 H5 CH=CHCHO)の水素化により、3−フェニルプロパナールを環境に配慮した方法で合成する方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、上記3−フェニルプロパナールの酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成する方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、3−フェニルプロパナールを合成することを特徴とする3−フェニルプロパナールの合成方法。
(2)反応温度が、35−65℃である、前記(1)記載の方法。
(3)水素圧が2−4MPa、二酸化炭素圧が7.5−12MPaである、前記(1)記載の方法。
(4)担持パラジウム触媒が、Pd/C、Pd/SiO2 又はPd/Al2 O3である、前記(1)記載の方法。
(5)反応溶媒として、超臨界二酸化炭素と有機溶媒を含む共溶媒を使用する、前記(1)記載の方法。
(6)超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、3−フェニルプロパナールを合成する工程、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、3−フェニルプロパナールの酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成する工程、からなることを特徴とする3−フェニルプロピオン酸の合成方法。
(7)酸化反応の反応温度が、50−65℃である、前記(6)記載の方法。
(8)酸素圧が1.0−1.5MPa、二酸化炭素圧が0−8.0MPaである、前記(6)記載の方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明によるプロセスによって、超臨界二酸化炭素中でのケイ皮アルデヒドの水素化による3−フェニルプロパナールの合成が、高い生産性、高収率、高選択性で実現するだけでなく、触媒の再使用も可能になる(後記する実施例2参照)。本発明のプロセスの反応条件は、それほど過酷なものではなく、反応温度は、室温付近、好適には、例えば、35−65℃であるが、70℃以上に温度を上げると、フェニルプロパナールへの選択性は減少する。また、好適には、水素圧力は2−4MPa、二酸化炭素圧力は7.5−12MPaである。また、本発明で用いられる担持パラジウム触媒として、好適には、例えば、Pd/C、Pd/SiO2 、Pd/Al2 O3 が例示されるが、これらに制限されるものではなく、同効のものであれば同様に使用することができる。
【0007】
本発明では、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として使うことにより、目的化合物の収率と選択性の両方を改善することができる。この場合、この超臨界二酸化炭素に有機溶媒を含む共溶媒を使用することができる。本発明のプロセスは、有機溶媒や付加物の添加の必要のないクリーンプロセスであるが、収率、選択性ともに、有機溶媒中で行った場合よりも高い。水素化反応の終了後、触媒と溶媒の超臨界二酸化炭素からの生成物の分離は、相分離操作によって極めて容易であり、しかも、触媒は、再使用が可能であり、その際、活性の低下は観察されない。
【0008】
本発明の方法は、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、例えば、Pd/C等の担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、フェニルプロパナールを合成するための新規プロセスである。また、本発明の方法は、無触媒で、上記3−フェニルプロパナールの酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成するための新規プロセスである。本発明のプロセスは、有機溶媒や何らの付加物を用いない環境に優しい手法であり、室温付近で、3−フェニルプロパナール及び3−フェニルプロピオン酸を極めて高収率、高選択的に合成することができる。上記プロセスで、水素化によって合成された主生成物は、3−フェニルプロパナールであり、触媒や溶媒を用いなくても、ケイ皮アルデヒドが、3−フェニルプロピオン酸に、直接、酸化され、酸素雰囲気中での二酸化炭素の使用は、その活性を増大させる。本発明は、ケイ皮アルデヒドから3−フェニルプロピオン酸を高選択的に合成することが主旨である。
【0009】
反応終了後、混合物(気−液−固) は、簡単な相分離操作により精製することができ、使用した触媒は、繰り替えし使用が可能であり、その際の触媒劣化は見られない。90%の3−フェニルプロパナールを含む液体生成物は、何らの触媒や溶媒を用いることなく、酸素雰囲気下で、3−フェニルプロピオン酸(3−phenylpropionic acid:C6 H5 CH2 CH2 COOH)に容易に酸化される。超臨界二酸化炭素が酸化雰囲気で使われる時、触媒活性は増加する。
【0010】
酸化反応は、反応温度は40−65℃、好ましくは50−65℃、酸素圧は1.0−3.0MPa、好ましくは1.0−1.5MPa、二酸化炭素圧力は0−8.0MPaで好適に実施される。酸化反応の終了後、高純度の3−フェニルプロピオン酸の固体生成物が得られる。3−フェニルプロピオン酸は、抗エイズ剤のような薬物を合成する中間体として、工業的にも重要である。以下に、ケイ皮アルデヒドから3−フェニルプロパナール、及びこれから3−フェニルプロピオン酸を合成するプロセスのスキームを示す。
【0011】
【化1】
【0012】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)3−フェニルプロパナールの合成
8.8mmolケイ皮アルデヒド0.01g、10重量%Pd/C触媒(含有Pd量:0.0094mol)を50ml高圧反応器に挿入後、2.0MPaの二酸化炭素で3回フラッシュした後、323Kに昇温した。4.0MPaになるまで水素を反応器に導入した後、二酸化炭素をポンプによって全圧12.0MPaになるまで導入し、昇圧させた。反応は60分間攪拌しながら行った。その後、反応器を氷浴中で10分間冷却した後、二酸化炭素と水素を徐々にパージし、次いで、液体の反応生成物をろ過によって触媒から分離した。反応物をガスクロによって分析した結果、ケイ皮アルデヒドの転化率は100%、3−フェニルプロパナールの選択性及び収率は88%、TOF2010h−1を得た。
【0013】
(2)3−フェニルプロピオン酸の合成
3−フェニルプロパナールの酸化反応を50ml高圧反応器中で行った。18.8mmolの3−フェニルプロパナールを挿入した高圧反応器を323Kに昇温した後、酸素を1.1MPa、次いで、二酸化炭素を導入し、全圧が9.0MPaになるように調整した。反応は120分間攪拌しながら行った。その後、反応器を氷浴中で10分間冷却した後、二酸化炭素と酸素を徐々にパージした。反応物をガスクロによって分析した結果、3−フェニルプロピオン酸の収率は99%であった。
【0014】
(3)結果
1)3−フェニルプロパナールの合成
3−フェニルプロパナールの合成実験の結果を表1に示す。
超臨界二酸化炭素中では、主に、3−フェニルプロパナールが生成した。 反応速度は、二酸化炭素圧力と水素圧力の増加とともに、増大した。 3−フェニルプロパナールへの反応速度と選択性は、プロパノール中に比べて、超臨界二酸化炭素中で向上した。同様な条件下(No.7、11)で、プロパノール中で転化率が75%であったものが、超臨界二酸化炭素中では100%に増加し、収率についても、53%から88%に増加した。3−フェニルプロパナールへの選択性は、超臨界二酸化炭素(No.10、3)中では, 溶媒を使用しない時のそれと変わらなかったが、反応速度は向上した。収率は、溶媒無添加の47%から、超臨界二酸化炭素中では73%に増加した。
【0015】
共溶媒を使用すると、反応速度、選択性とも向上し、収率は、52%から73%に増加した(No.11、12)。TOFは、超臨界二酸化炭素中では顕著に増大し、水素圧力4MPa、二酸化炭素圧力8MPa、反応温度50 ℃、反応時間60分(No.7)の条件で最大収率88%が得られた。反応速度は、温度とともに著しく増加するが、選択性はわずかに変化し、50℃で最大の選択性を示した。
【0016】
【表1】
【0017】
2)3−フェニルプロピオン酸の合成
3−フェニルプロピオン酸の合成実験の結果を表2に示す。
3−フェニルプロパノールの3−フェニルプロピオン酸への酸化反応は、超臨界二酸化炭素と溶媒無添加で高選択的(99%)に進行した。反応速度は、酸素圧力1−1.5MPa、反応温度50℃の条件下で、超臨界二酸化炭素を用いることによって増加した。
【0018】
【表2】
【0019】
実施例2
ケイ皮アルデヒド1.0g、10%Pd/C触媒0.01g、水素分圧4.0MPa、二酸化炭素分圧12.0MPa、温度323K、反応時間60分の条件下で反応を行った後、触媒をろ過後、何等の処理を加えることなく、上記と同条件下で再利用を試みた。本操作を3回くり返したが、3−フェニルプロパナールの収率は、1回目の操作では85%、2回目では83%、3回目では84%とほとんど変化がなかった。
【0020】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、3−フェニルプロパナールを合成する方法及び該化合物の酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成する方法に係るものであり、本発明により、以下のような作用効果が奏される。
(1)何らの有機溶媒、添加物、助触媒等を用いることなく、3−フェニルプロパナールを合成できる。
(2)高収率、及び高い選択性で目的化合物を合成できる。
(3)環境に優しい超臨界二酸化炭素中で、例えば、35−65℃の低温度条件下で目的化合物を合成できる。
(4)本発明を利用することにより、ケイ皮アルデヒドから3−フェニルプロパナール及び3−フェニルプロピオン酸を高選択率で合成することができる。
Claims (8)
- 超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、3−フェニルプロパナールを合成することを特徴とする3−フェニルプロパナールの合成方法。
- 反応温度が、35−65℃である、請求項1記載の方法。
- 水素圧が2−4MPa、二酸化炭素圧が7.5−12MPaである、請求項1記載の方法。
- 担持パラジウム触媒が、Pd/C、Pd/SiO2 又はPd/Al2 O3 である、請求項1記載の方法。
- 反応溶媒として、超臨界二酸化炭素と有機溶媒を含む共溶媒を使用する、請求項1記載の方法。
- 超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、担持パラジウム触媒を用いて、ケイ皮アルデヒドの水素化反応により、3−フェニルプロパナールを合成する工程、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として、3−フェニルプロパナールの酸化反応により、3−フェニルプロピオン酸を合成する工程、からなることを特徴とする3−フェニルプロピオン酸の合成方法。
- 酸化反応の反応温度が、50−65℃である、請求項6記載の方法。
- 酸素圧が1.0−1.5MPa、二酸化炭素圧が0−8.0MPaである、請求項6記載の方法。
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JP2002299816A JP2004131449A (ja) | 2002-10-15 | 2002-10-15 | 3−フェニルプロパナールの合成方法 |
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- 2002-10-15 JP JP2002299816A patent/JP2004131449A/ja active Pending
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