JP2004131306A - 水素発生装置及び水素発生方法並びに水素回収装置及び水素回収方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率よく水素を回収可能な水素発生装置及び水素発生方法を提供する。
【解決手段】含水素原料を脱水素触媒の存在下に脱水素反応させるための脱水素触媒層10を有する反応室1と、前記脱水素触媒層の上方に気密に設けられた前記脱水素反応で生じた水素と副生成物との混合物から水素を分離するための水素分離膜2と、前記水素分離膜に透過した水素を回収するための回収室3とから構成された水素発生装置であって、前記水素分離膜2の上方は、所定の厚さの液膜30で覆われていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】含水素原料を脱水素触媒の存在下に脱水素反応させるための脱水素触媒層10を有する反応室1と、前記脱水素触媒層の上方に気密に設けられた前記脱水素反応で生じた水素と副生成物との混合物から水素を分離するための水素分離膜2と、前記水素分離膜に透過した水素を回収するための回収室3とから構成された水素発生装置であって、前記水素分離膜2の上方は、所定の厚さの液膜30で覆われていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素発生装置及び水素発生方法並びに水素回収装置及び水素回収方法に関する。より詳しく述べると、脱水素反応により発生した水素を効率よく回収可能な水素発生装置及び水素発生方法並びに水素回収装置及び水素回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気自動車の動力源として固体高分子型の燃料電池が注目されている。固体高分子型の燃料電池は、常温でも発電することが可能であり、様々な用途に実用化されつつある。
【0003】
この燃料電池は、水素を含有する燃料ガスを燃料電池のアノード極(燃料ガス極)に供給すると共に、酸素を含有する酸化剤ガスを燃料電池のカソード極(酸化剤ガス極)に供給して発電を行う。例えば前記酸化剤ガスとして空気を供給した場合は、以下の反応式で表される化学エネルギを電気エネルギとして取り出して外部の負荷に供給する。
アノード極;2H2→4H++4e−
カソード極;O2+4H++4e−→2H2O
全体;2H2+O2→2H2O
このとき、アノード極の反応で生成したプロトンは、固体高分子膜(電解質膜)中を通ってカソード極側に水と一緒に運ばれる。また、生成した電子は外部回路を通ってカソード極に運ばれる。カソード極に運ばれたプロトン及び電子は空気中の酸素と反応して水を生成する。
また、固体高分子膜型の燃料電池は、常に固体高分子膜(電解質膜)のプロトン導電性を維持するためには水が必要となるため、燃料電池へ供給される反応ガスは加湿されて供給される。
【0004】
このような燃料電池を搭載した燃料電池自動車が燃料となる水素を車両側で確保する方法としては、
(1)液体水素、或は高圧水素等の純水素を用いて、液体水素タンク、高圧タンク、或は水素吸蔵合金などの水素貯蔵材に水素補給を行って確保する方法(純水素式)、
(2)炭化水素を用い、例えば、メタノール水溶液を水蒸気改質等により水素生成を行う改質式や含水素化合物、例えばアルコール類(イソプロパノ−ル等)や水素芳香族化合物(シクロヘキサンやデカリン等)から脱水素反応により水素を取り出して確保する方法、
等が挙げられる。
【0005】
これらの燃料電池自動車の燃料となる水素を車両側で確保する方法のうち、含水素化合物、例えばイソプロパノールから脱水素反応により水素を取り出す反応器として、例えば特開2001−17855号公報に記載されたものがある。
この反応器100は、図3に示すように、液体の供給物質であるイソプロパノ−ル(以下、IPAという)を容器101内に導く供給口101aと、前記IPAを反応させる触媒層102と、反応により生成した反応生成物であるアセトン及び水素を容器101外に排出する排出口101b,101cとを有する反応器100であり、前記反応器100内に、前記触媒層102を水平に載置する載置手段103と、前記触媒層102を前記容器101内で移動させるための移動手段とを設けた反応器100である。
尚、前記移動手段は、熱媒体により回転する回転子105と前記回転子105の回転を動力として前記載置手段103に伝達する動力発生装置104とから形成される。
【0006】
このように構成される反応器100は、まずIPAが、供給口101aから反応器100内に供給される。
反応器100内に供給されたIPAは、触媒層102で下記の反応式(脱水素反応)によりアセトン(気体)と水素(気体)とに分解される。
(CH3)2CHOH⇔(CH3)2CO +H2−−−−−−−−−(1)
尚、式(1)に示したIPAの脱水素反応は、吸熱反応であり、反応に必要な熱は、熱媒体流路106内を流れる熱媒体と触媒層102間で熱交換器を介して熱交換することで供給される。
式(1)で示したIPAの脱水素反応によって触媒層102で生成されたアセトン(気体)と水素(気体)は、未反応のIPAと共にその後容器101の排出口101b,101cから系外に排出される。
【0007】
このようにして水素分離膜側の水素の分離効率を挙げる方法として、例えば特開2001−230317公報(特許文献2参照)には、改質器からの水素含有気体を水素分離膜により水素を分離するに当たって、水素分離側に水蒸気を流し水素分圧を下げることで水素分離性を向上させることが記載されている。また、例えば特開2002−201004号公報(特許文献3参照)には、改質ガスとパージガスとを分離膜を介して向流で流すことによって水素を効率良く回収する技術が記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−17855号公報(第1頁〜5頁、図1)
【特許文献2】
特開2001−230317号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】
特開2002−201004号公報(第1頁、図1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載の技術は改質ガスの分離側にパージガスを通過させる技術であり、特許文献1に記載のような脱水素反応により得られた水素を水素分離膜を介して効率よく分離する技術は記載されていない。
【0010】
すなわち、脱水素反応により得られた水素を水素分離膜を介して効率よく分離するためには、脱水素反応を行う反応系の圧力を、水素を回収する回収系での圧力よりも高くする必要がある。そのため、(1)反応系の圧力を増加する方法、(2)水素分離膜の回収系側を吸引ポンプ等の減圧手段により減圧する方法及び(3)水素分離膜の回収系側にスウィープガスを流す等の方法が考えられる。
【0011】
しかしながら、(1)及び(2)の方法では、圧力を操作するためのポンプ動力が大きくなってしまう。更に、(1)の方法では脱水素触媒と水素分離膜を一体化したメンブレンリアクタの場合、反応系によっては圧力を上げることによって平衡転化率が低下し、水素分圧があまり上がらない場合がある。また、(3)の方法は、スウィープガスとして水蒸気窒素を使用する場合は、気液分離により高純度の水素が得られるものの水の蒸発熱が大きいので、熱ロスらによるシステム効率の大幅な低下を招いてしまう。
【0012】
従って、本発明の課題は、従来技術の課題を克服し、効率よく水素を回収可能な水素発生装置及び水素発生方法を提供することである。
本発明の別の課題は、水素を効率よく回収可能な水素回収装置及び水素回収方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題に鑑み鋭意検討した結果、水素分離装置の回収側に所定の厚みを有する水等の液膜を設けると大量のスウィープガスを流すことなしに水素透過から水素を透過するための良好なドライビングフォースを確保することができることを見出して、本発明を創作するに至った。
【0014】
すなわち、請求項1に記載の発明は、脱水素反応により水素と副生成物とを生成する含水素原料を脱水素触媒の存在下に脱水素反応させるための脱水素触媒層を有する反応室と、
前記脱水素触媒層の上方に気密に設けられた前記脱水素反応で生じた水素と副生成物との混合物から水素を分離するための水素分離膜と、
前記水素分離膜を透過した水素を回収するための回収室とから構成された水素発生装置であって、
前記水素分離膜の上方は、所定の厚さの液膜で覆われていることを特徴とするものである。
【0015】
このように構成すると、従来、各種のメンブレンリアクタに所定の厚さを有する水等の液膜を形成するだけで、大量のスウィープガスを流すことなしに水素透過のドライビングフォースを確保することができ、少ないエネルギで水素を効率良く回収することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、脱水素反応により水素と副生成物とを生成する含水素原料を脱水素触媒の存在下で脱水素反応させる工程と、水素分離膜を介して得られた水素を副生成物と分離する工程を含む水素発生方法であって、更に分離した水素を、液膜を介して回収する工程を含むことを特徴とするものである。
このように構成すると、水素分離膜で分離した水素を更に液膜に通過させることによって発生した水素を効率よく回収することが可能である。
【0017】
請求項3に記載の発明は、水素含有気体から水素分離膜を介して水素を回収する水素回収装置であって、前記水素分離膜の水素回収側の表面に所定の厚さの液膜を有することを特徴とするものである。
このように構成することによって、簡単な構成で水素含有気体、例えば燃料電池システムにおける改質器からの気体から水素を効率よく回収することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、水素含有気体から水素分離膜を介して水素を回収する水素回収方法であって、水素含有気体を、一方の面に所定の厚さを有する液膜を有する水素分離膜の他方の面から通過させて水素を回収する工程を含むことを特徴ものである。
このように構成することによって、水素分離膜で分離した水素を更に液膜に通過させることによって発生した水素を効率よく回収することが可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。図1は、本発明の一実施形態に係る水素発生装置の略式断面図である。
尚、本実施形態ではイソプロパノ−ル(以下、IPAという)から脱水素反応により水素を取り出す反応に本発明の水素発生装置を適用し、そして本発明の水素発生装置を燃料電池システムに組み込んだ場合について説明する。
【0020】
本発明に係る水素発生装置Rは、図1に示すように、水素分離膜2を介して脱水素反応を行う反応室1と前記反応室1からの水素を回収する回収室3が気密に一体成形されている。すなわち、本発明に係る水素発生装置Rは、水素分離膜2により反応室1と回収室3に区画された構成を有している。
反応室1は、液状の含水素化合物であるIPAを貯蔵し、そして貯蔵したIPAを反応室1に配管及びポンプP1を介して送るための原料タンク4と、脱水素反応終了後の原料を含む液体を回収するための液体回収タンク5と液密に接続されている。そして、反応室1の上面には、脱水素反応を促すための脱水素触媒層10が、水素分離膜2と接触する形式で設けられている。
【0021】
反応室1に、原料タンク4から液状IPAが送られると、脱水素触媒層10を構成する脱水素触媒の触媒作用により、下記式(1)で表される脱水素反応が進行し、水素(気体)と副生成物であるアセトン(気体)が生成する。
(CH3)2CHOH⇔(CH3)2CO +H2−−−−−−−−−(1)
この反応は、反応律速の平衡反応であり、アセトンを生成することからアセトン−IPA系の脱水素反応と言われている。
【0022】
尚、このようなアセトン−IPA系の脱水素反応の場合、脱水素触媒層10は、触媒活性金属としてルテニウム(例えば20wt%)、担体として活性炭を用いた触媒から構成できる。この場合の反応室における反応温度は一般に70〜140℃程度であることが好ましい。例えば反応温度が90℃である場合、平衡転化率は約10%である
【0023】
前記脱水素反応が惹起すると、水素ガスとアセトンガスとの混合気体が発生する。この際に、前記混合気体は、上方に配置された水素分離膜2の方向に移動するが、図1に実線の矢印で示す通り水素は、水素分離膜2を透過して上方の回収室側に移動する。一方、図1に破線で示す通りアセトンは、水素分離膜を透過することができず液体中に戻される。
このようにして、脱水素反応により生成した水素を選択的に水素を回収室で回収することができる。
【0024】
このように水素分離膜2により水素を透過することにより反応が右側に進行し、転化率を向上することが可能となる。
本発明において使用される水素分離膜2は、水素を含有する気体から水素を選択的に透過することが可能なものであれば当該技術分野に周知の水素分離膜から適宜選択することが可能であり、一般にはパラジウム又はパラジウム合金から構成された膜が使用される。
【0025】
また、反応室1側に戻されたアセトンは、含水素原料に溶解し、しかる後未反応のIPAとともに廃液タンク6に移送される。移送されたIPAとアセトンとの混合物を、当該技術分野に公知の方法により、IPAとアセトンとに分離・回収することが好ましい。
尚、原料タンク4からのIPAの補充と、使用済IPA/アセトン混合液の原料回収タンク5への移送は、例えば水素発生量をモニタする等の当該技術分野に公知の種々の方法により行うことができる。
【0026】
このような構成の水素発生装置は、水素分離膜を有する従来公知の脱水素反応に基づく水素発生装置、例えば、従来技術の欄で記載した特許文献1に開示されたものと同様の構成を有することができる。
本発明に係る水素発生装置Rの特徴は、水素分離膜2の回収室3側の表面全体に所定の厚さを有する液膜を有することである。
【0027】
すなわち、本発明に係る水素発生装置Rにおいて、水素分離膜2を透過した水素ガスは、所定の厚さを有する液膜30を通過する。水素ガスが液膜を通過すると、水素ガスは、液膜30中で気泡状となり、そして液膜30の表面全体から均一にかつ効率よく上方の回収室3へと抜けていく。
すなわち、液膜30を有さない従来の水素発生装置においては、水素分離膜を透過する水素ガスは、水素分離膜の偏った箇所から発生する可能性があり、また反応室側の分圧を、回収室側の分圧よりも大きくするような制御は不能である。
【0028】
これに対して、本発明に係る水素発生装置Rは、所定の厚さを有する液膜30を回収室3側の水素透過膜2の表面全体に設けることにより、水素分離膜2を透過した水素ガスは、液膜30中で拡散されて均一に上方の回収室に移動する。
【0029】
そのため、回収室3側の水素分圧を低くすることができる。例えば、反応室1側の水素濃度が40%であり、回収室側の水素濃度がそれ以上であっても、水素分離膜2は、反応室1の反対側である回収室3側の表面全体に液膜30が設けられているので、回収室3側の水素分圧を低く抑えることができ、反応室1側の水素は回収室3側へと移動することとなる。すなわち、従来スウィープガスを回収室側に流して水素分離膜2の回収側表面の水素分圧を低く抑えるのに代えて、液膜を介することにより水素分圧を低く抑えることが可能となる。
【0030】
更に、回収室3側の水素分離膜2には、液膜30が設けられているので、何らかの関係で(例えば回収室3側の水素分圧が反応室1側よりも高くなったとしても)、回収室3側の水素は、反応室1側へは移動することはない。
また、後述する特定の実施の形態に記載の通り、回収室3で回収された水素を背圧レギュレータ6を介して水素消費系に送る構成とすると、水素消費系側から回収室3側への背圧により、回収室3の圧力を上げて、液膜30の蒸発を抑え、液膜の形成を維持しつつ、水素分離膜2の温度を上げることができ、水素透過量を増すことができる。
【0031】
尚、本発明において使用することができる液膜を構成する液体は、水素に対して不活性な液体であれば特に限定されるものではないが入手の容易性から水であることが好ましい。例えば、液膜30を構成する液体(例えば水)に液膜30から気体の離脱を促進する目的で(水素の抜けを良くする目的で)、界面活性剤等を添加しても良い。更に、液膜の粘度を増加させて液膜を安定化させる目的で、液膜を構成する液体に、前記液体と相溶性の増粘剤を添加してもよい。また、電気的平衡をシフトさせる目的で、液膜を構成する液体に、電解質を添加してもよい。
【0032】
特に本発明に係る水素発生装置Rを、本実施形態のように燃料電池の水素発生源として使用する場合には、燃料電池が発電を行う際に生成する生成水を使用することが好ましい(生成水の発生については、従来技術の第0003段落を参照のこと)。
【0033】
このようにして、回収室3内に発生した水素は、次いで背圧レギュレータ6を介して図示しない水素消費系(例えば、燃料電池システムの場合には燃料電池)へと供給される。
【0034】
以上述べた通り、本発明に係る水素発生装置Rは、水素分離膜2を介して脱水素反応を行う反応室1と前記反応室1で発生した水素を回収する回収室3とに隔壁された構成を有する水素発生装置において、前記水素膜2の表面に所定の厚さを有する液膜30を設けたことを特徴とするものであるが、以下に液膜30の構成について、燃料電池の水素発生源として本発明に係る水素発生装置Rを適用し、水から成る液膜を例にとり、図1に基づいて詳細に説明する。
【0035】
本発明に係る水素発生装置Rにおいて、水素分離膜2の表面に形成する液膜30には、最適な厚さがあり、その最適な厚さを保持する必要がある。この厚さは、水素発生装置Rの寸法、特に水素分離膜の表面積や脱水素反応により生成する水素の生成量(生成速度)に依存して適宜選択されるが、例えば、水素発生量5cc/分、水素分離膜の表面積が10cm2の水素発生装置の場合、液膜の厚さ、すなわち高さを1mm程度に保持することが好ましい。
【0036】
この最適値を下回る場合には、水素分離膜を透過した水素を均一に気泡化することができず目的とする透過ドライビングフォースを得ることができない。逆に、最適値を上回る場合には、水素の抜けが悪くなり、平衡反応が右側に進行する傾向があるので好ましくない。
このような装置に依存した最適値は、予備実験等により適宜決定することが可能である。
【0037】
本発明に係る水素発生装置Rの操作温度が例えば、100℃である場合には、水から構成された液膜30において、水が蒸発して液膜の厚さが減少することとなる。そこで、液膜30の厚さを最適な状態に保持するために、例えば水素消費系への排出管に背圧レギュレータ6を設けて、背圧を加えることにより水の蒸発を抑えることができる。また、液面からの水の蒸発分を補うために蒸発した分の水を水ポンプP2により補う構成とすることも可能であり、両者を組合せて液膜の厚さを最適な状態に保持することも可能である。
【0038】
尚、図示しないが、最適な液膜の位置に排水孔を設け、水ポンプP2と組合せることによって、水ポンプP2から供給された過剰の水をオーバーフローさせる構成とすることも可能である。この際に、背圧レギュレータ6の設けられた方向の逆側に排水孔を設けると、背圧レギュレータからの背圧により過剰の液体が効率よく除去されて、液膜の厚さを一定に保つので好ましい。
【0039】
次に、本発明に係る水素発生方法について、図2を用いて説明する。図2は、本発明に係る水素発生方法のフローを示すフローチャートである。
本発明に係る水素発生方法は、閉鎖系において行われる脱水素反応及び脱水素反応により生成した水素を水素透過膜に透過させて水素を回収する方法である。まず、図2に示す通り、含水素原料、例えばIPAを前記した触媒の存在下で反応させて、水素ガス及び副生成物であるアセトンを生成させる(S1)(反応条件、使用する脱水素触媒等については前記水素発生装置の欄を参照のこと)。
【0040】
次に、工程S2において、パラジウム(合金)等の水素透過膜を介して水素を選択的に透過させて、水素と副生成物であるアセトンとを分離する(S2)。
この際に、分離されたアセトンは含水素原料中に溶け込み、反応終了後に未反応のIPAとともに回収され、図示しないIPAとアセトンとの分離工程を経て再利用に供されることが好ましい。
【0041】
次いで、工程S3において、所定の液体から構成された所定の厚さを有する液膜に水素を通過させる。液膜に水素を通過させると、水素は液膜上に均一に分散して水素が均一に発生する。この際に、液膜を加圧すると、平衡反応である脱水素反応は、生成側に移行し、水素を効率的に回収することが可能である。そして、工程S4により、このようにして均一に分散した水素を効率よく回収することが可能となる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態に係る水素発生装置Rについて、説明したが本発明は、このような実施の形態に限定されるものではない。
例えば、前記の実施の形態では、脱水素反応に供する含水素原料としてアセトン/IPA系に基づいて説明したが、本発明はこのような特定の含水素化合物に限定されるものではなく、デカリン/ナフタレン系等の当該技術に公知の脱水素反応により水素を発生する化合物を使用することも本発明の範囲内である。
【0043】
また、本発明に係る水素発生装置及び水素発生方法は、水素を含有する気体、例えば従来技術に記載した通りの炭化水素を用い、例えば、メタノール水溶液を水蒸気改質等により水素生成を行う改質ガスから、水素分離膜を介して水素を回収する際に、所定の厚さを有する液膜を介して水素を回収する装置及び方法も本発明の範囲内である。この場合、図2で示した工程S1を水蒸気改質とし、そして生成物分離工程を続ければよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明は、以下の優れた効果を奏する。
請求項1によると、従来、各種のメンブレンリアクタに所定の厚さを有する水等の液膜を形成するだけで、大量のスウィープガスを流すことなしに水素透過のドライビングフォースを確保することができ、少ないエネルギで水素を効率良く回収することが可能となる。
【0045】
請求項2によると、水素分離膜で分離した水素を更に液膜に通過させることによって発生した水素を効率よく回収することが可能である。
請求項3によると簡単な構成で水素含有気体、例えば燃料電池システムにおける改質器からの気体から水素を効率よく回収することが可能となる。
請求項4によると、水素分離膜で分離した水素を更に液膜に通過させることによって発生した水素を効率よく回収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る水素発生装置の略式断面図である。
【図2】本発明の水素発生方法を示すフローチャートである。
【図3】従来の水素発生装置の略式断面図である。
【符号の説明】
R 水素発生装置
1 反応室
10 脱水素触媒層
2 水素分離膜
3 回収室
30 液膜
4 原料タンク
5 液体回収タンク
6 背圧レギュレータ
P1、P2 ポンプ
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素発生装置及び水素発生方法並びに水素回収装置及び水素回収方法に関する。より詳しく述べると、脱水素反応により発生した水素を効率よく回収可能な水素発生装置及び水素発生方法並びに水素回収装置及び水素回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気自動車の動力源として固体高分子型の燃料電池が注目されている。固体高分子型の燃料電池は、常温でも発電することが可能であり、様々な用途に実用化されつつある。
【0003】
この燃料電池は、水素を含有する燃料ガスを燃料電池のアノード極(燃料ガス極)に供給すると共に、酸素を含有する酸化剤ガスを燃料電池のカソード極(酸化剤ガス極)に供給して発電を行う。例えば前記酸化剤ガスとして空気を供給した場合は、以下の反応式で表される化学エネルギを電気エネルギとして取り出して外部の負荷に供給する。
アノード極;2H2→4H++4e−
カソード極;O2+4H++4e−→2H2O
全体;2H2+O2→2H2O
このとき、アノード極の反応で生成したプロトンは、固体高分子膜(電解質膜)中を通ってカソード極側に水と一緒に運ばれる。また、生成した電子は外部回路を通ってカソード極に運ばれる。カソード極に運ばれたプロトン及び電子は空気中の酸素と反応して水を生成する。
また、固体高分子膜型の燃料電池は、常に固体高分子膜(電解質膜)のプロトン導電性を維持するためには水が必要となるため、燃料電池へ供給される反応ガスは加湿されて供給される。
【0004】
このような燃料電池を搭載した燃料電池自動車が燃料となる水素を車両側で確保する方法としては、
(1)液体水素、或は高圧水素等の純水素を用いて、液体水素タンク、高圧タンク、或は水素吸蔵合金などの水素貯蔵材に水素補給を行って確保する方法(純水素式)、
(2)炭化水素を用い、例えば、メタノール水溶液を水蒸気改質等により水素生成を行う改質式や含水素化合物、例えばアルコール類(イソプロパノ−ル等)や水素芳香族化合物(シクロヘキサンやデカリン等)から脱水素反応により水素を取り出して確保する方法、
等が挙げられる。
【0005】
これらの燃料電池自動車の燃料となる水素を車両側で確保する方法のうち、含水素化合物、例えばイソプロパノールから脱水素反応により水素を取り出す反応器として、例えば特開2001−17855号公報に記載されたものがある。
この反応器100は、図3に示すように、液体の供給物質であるイソプロパノ−ル(以下、IPAという)を容器101内に導く供給口101aと、前記IPAを反応させる触媒層102と、反応により生成した反応生成物であるアセトン及び水素を容器101外に排出する排出口101b,101cとを有する反応器100であり、前記反応器100内に、前記触媒層102を水平に載置する載置手段103と、前記触媒層102を前記容器101内で移動させるための移動手段とを設けた反応器100である。
尚、前記移動手段は、熱媒体により回転する回転子105と前記回転子105の回転を動力として前記載置手段103に伝達する動力発生装置104とから形成される。
【0006】
このように構成される反応器100は、まずIPAが、供給口101aから反応器100内に供給される。
反応器100内に供給されたIPAは、触媒層102で下記の反応式(脱水素反応)によりアセトン(気体)と水素(気体)とに分解される。
(CH3)2CHOH⇔(CH3)2CO +H2−−−−−−−−−(1)
尚、式(1)に示したIPAの脱水素反応は、吸熱反応であり、反応に必要な熱は、熱媒体流路106内を流れる熱媒体と触媒層102間で熱交換器を介して熱交換することで供給される。
式(1)で示したIPAの脱水素反応によって触媒層102で生成されたアセトン(気体)と水素(気体)は、未反応のIPAと共にその後容器101の排出口101b,101cから系外に排出される。
【0007】
このようにして水素分離膜側の水素の分離効率を挙げる方法として、例えば特開2001−230317公報(特許文献2参照)には、改質器からの水素含有気体を水素分離膜により水素を分離するに当たって、水素分離側に水蒸気を流し水素分圧を下げることで水素分離性を向上させることが記載されている。また、例えば特開2002−201004号公報(特許文献3参照)には、改質ガスとパージガスとを分離膜を介して向流で流すことによって水素を効率良く回収する技術が記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−17855号公報(第1頁〜5頁、図1)
【特許文献2】
特開2001−230317号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】
特開2002−201004号公報(第1頁、図1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載の技術は改質ガスの分離側にパージガスを通過させる技術であり、特許文献1に記載のような脱水素反応により得られた水素を水素分離膜を介して効率よく分離する技術は記載されていない。
【0010】
すなわち、脱水素反応により得られた水素を水素分離膜を介して効率よく分離するためには、脱水素反応を行う反応系の圧力を、水素を回収する回収系での圧力よりも高くする必要がある。そのため、(1)反応系の圧力を増加する方法、(2)水素分離膜の回収系側を吸引ポンプ等の減圧手段により減圧する方法及び(3)水素分離膜の回収系側にスウィープガスを流す等の方法が考えられる。
【0011】
しかしながら、(1)及び(2)の方法では、圧力を操作するためのポンプ動力が大きくなってしまう。更に、(1)の方法では脱水素触媒と水素分離膜を一体化したメンブレンリアクタの場合、反応系によっては圧力を上げることによって平衡転化率が低下し、水素分圧があまり上がらない場合がある。また、(3)の方法は、スウィープガスとして水蒸気窒素を使用する場合は、気液分離により高純度の水素が得られるものの水の蒸発熱が大きいので、熱ロスらによるシステム効率の大幅な低下を招いてしまう。
【0012】
従って、本発明の課題は、従来技術の課題を克服し、効率よく水素を回収可能な水素発生装置及び水素発生方法を提供することである。
本発明の別の課題は、水素を効率よく回収可能な水素回収装置及び水素回収方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題に鑑み鋭意検討した結果、水素分離装置の回収側に所定の厚みを有する水等の液膜を設けると大量のスウィープガスを流すことなしに水素透過から水素を透過するための良好なドライビングフォースを確保することができることを見出して、本発明を創作するに至った。
【0014】
すなわち、請求項1に記載の発明は、脱水素反応により水素と副生成物とを生成する含水素原料を脱水素触媒の存在下に脱水素反応させるための脱水素触媒層を有する反応室と、
前記脱水素触媒層の上方に気密に設けられた前記脱水素反応で生じた水素と副生成物との混合物から水素を分離するための水素分離膜と、
前記水素分離膜を透過した水素を回収するための回収室とから構成された水素発生装置であって、
前記水素分離膜の上方は、所定の厚さの液膜で覆われていることを特徴とするものである。
【0015】
このように構成すると、従来、各種のメンブレンリアクタに所定の厚さを有する水等の液膜を形成するだけで、大量のスウィープガスを流すことなしに水素透過のドライビングフォースを確保することができ、少ないエネルギで水素を効率良く回収することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、脱水素反応により水素と副生成物とを生成する含水素原料を脱水素触媒の存在下で脱水素反応させる工程と、水素分離膜を介して得られた水素を副生成物と分離する工程を含む水素発生方法であって、更に分離した水素を、液膜を介して回収する工程を含むことを特徴とするものである。
このように構成すると、水素分離膜で分離した水素を更に液膜に通過させることによって発生した水素を効率よく回収することが可能である。
【0017】
請求項3に記載の発明は、水素含有気体から水素分離膜を介して水素を回収する水素回収装置であって、前記水素分離膜の水素回収側の表面に所定の厚さの液膜を有することを特徴とするものである。
このように構成することによって、簡単な構成で水素含有気体、例えば燃料電池システムにおける改質器からの気体から水素を効率よく回収することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、水素含有気体から水素分離膜を介して水素を回収する水素回収方法であって、水素含有気体を、一方の面に所定の厚さを有する液膜を有する水素分離膜の他方の面から通過させて水素を回収する工程を含むことを特徴ものである。
このように構成することによって、水素分離膜で分離した水素を更に液膜に通過させることによって発生した水素を効率よく回収することが可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。図1は、本発明の一実施形態に係る水素発生装置の略式断面図である。
尚、本実施形態ではイソプロパノ−ル(以下、IPAという)から脱水素反応により水素を取り出す反応に本発明の水素発生装置を適用し、そして本発明の水素発生装置を燃料電池システムに組み込んだ場合について説明する。
【0020】
本発明に係る水素発生装置Rは、図1に示すように、水素分離膜2を介して脱水素反応を行う反応室1と前記反応室1からの水素を回収する回収室3が気密に一体成形されている。すなわち、本発明に係る水素発生装置Rは、水素分離膜2により反応室1と回収室3に区画された構成を有している。
反応室1は、液状の含水素化合物であるIPAを貯蔵し、そして貯蔵したIPAを反応室1に配管及びポンプP1を介して送るための原料タンク4と、脱水素反応終了後の原料を含む液体を回収するための液体回収タンク5と液密に接続されている。そして、反応室1の上面には、脱水素反応を促すための脱水素触媒層10が、水素分離膜2と接触する形式で設けられている。
【0021】
反応室1に、原料タンク4から液状IPAが送られると、脱水素触媒層10を構成する脱水素触媒の触媒作用により、下記式(1)で表される脱水素反応が進行し、水素(気体)と副生成物であるアセトン(気体)が生成する。
(CH3)2CHOH⇔(CH3)2CO +H2−−−−−−−−−(1)
この反応は、反応律速の平衡反応であり、アセトンを生成することからアセトン−IPA系の脱水素反応と言われている。
【0022】
尚、このようなアセトン−IPA系の脱水素反応の場合、脱水素触媒層10は、触媒活性金属としてルテニウム(例えば20wt%)、担体として活性炭を用いた触媒から構成できる。この場合の反応室における反応温度は一般に70〜140℃程度であることが好ましい。例えば反応温度が90℃である場合、平衡転化率は約10%である
【0023】
前記脱水素反応が惹起すると、水素ガスとアセトンガスとの混合気体が発生する。この際に、前記混合気体は、上方に配置された水素分離膜2の方向に移動するが、図1に実線の矢印で示す通り水素は、水素分離膜2を透過して上方の回収室側に移動する。一方、図1に破線で示す通りアセトンは、水素分離膜を透過することができず液体中に戻される。
このようにして、脱水素反応により生成した水素を選択的に水素を回収室で回収することができる。
【0024】
このように水素分離膜2により水素を透過することにより反応が右側に進行し、転化率を向上することが可能となる。
本発明において使用される水素分離膜2は、水素を含有する気体から水素を選択的に透過することが可能なものであれば当該技術分野に周知の水素分離膜から適宜選択することが可能であり、一般にはパラジウム又はパラジウム合金から構成された膜が使用される。
【0025】
また、反応室1側に戻されたアセトンは、含水素原料に溶解し、しかる後未反応のIPAとともに廃液タンク6に移送される。移送されたIPAとアセトンとの混合物を、当該技術分野に公知の方法により、IPAとアセトンとに分離・回収することが好ましい。
尚、原料タンク4からのIPAの補充と、使用済IPA/アセトン混合液の原料回収タンク5への移送は、例えば水素発生量をモニタする等の当該技術分野に公知の種々の方法により行うことができる。
【0026】
このような構成の水素発生装置は、水素分離膜を有する従来公知の脱水素反応に基づく水素発生装置、例えば、従来技術の欄で記載した特許文献1に開示されたものと同様の構成を有することができる。
本発明に係る水素発生装置Rの特徴は、水素分離膜2の回収室3側の表面全体に所定の厚さを有する液膜を有することである。
【0027】
すなわち、本発明に係る水素発生装置Rにおいて、水素分離膜2を透過した水素ガスは、所定の厚さを有する液膜30を通過する。水素ガスが液膜を通過すると、水素ガスは、液膜30中で気泡状となり、そして液膜30の表面全体から均一にかつ効率よく上方の回収室3へと抜けていく。
すなわち、液膜30を有さない従来の水素発生装置においては、水素分離膜を透過する水素ガスは、水素分離膜の偏った箇所から発生する可能性があり、また反応室側の分圧を、回収室側の分圧よりも大きくするような制御は不能である。
【0028】
これに対して、本発明に係る水素発生装置Rは、所定の厚さを有する液膜30を回収室3側の水素透過膜2の表面全体に設けることにより、水素分離膜2を透過した水素ガスは、液膜30中で拡散されて均一に上方の回収室に移動する。
【0029】
そのため、回収室3側の水素分圧を低くすることができる。例えば、反応室1側の水素濃度が40%であり、回収室側の水素濃度がそれ以上であっても、水素分離膜2は、反応室1の反対側である回収室3側の表面全体に液膜30が設けられているので、回収室3側の水素分圧を低く抑えることができ、反応室1側の水素は回収室3側へと移動することとなる。すなわち、従来スウィープガスを回収室側に流して水素分離膜2の回収側表面の水素分圧を低く抑えるのに代えて、液膜を介することにより水素分圧を低く抑えることが可能となる。
【0030】
更に、回収室3側の水素分離膜2には、液膜30が設けられているので、何らかの関係で(例えば回収室3側の水素分圧が反応室1側よりも高くなったとしても)、回収室3側の水素は、反応室1側へは移動することはない。
また、後述する特定の実施の形態に記載の通り、回収室3で回収された水素を背圧レギュレータ6を介して水素消費系に送る構成とすると、水素消費系側から回収室3側への背圧により、回収室3の圧力を上げて、液膜30の蒸発を抑え、液膜の形成を維持しつつ、水素分離膜2の温度を上げることができ、水素透過量を増すことができる。
【0031】
尚、本発明において使用することができる液膜を構成する液体は、水素に対して不活性な液体であれば特に限定されるものではないが入手の容易性から水であることが好ましい。例えば、液膜30を構成する液体(例えば水)に液膜30から気体の離脱を促進する目的で(水素の抜けを良くする目的で)、界面活性剤等を添加しても良い。更に、液膜の粘度を増加させて液膜を安定化させる目的で、液膜を構成する液体に、前記液体と相溶性の増粘剤を添加してもよい。また、電気的平衡をシフトさせる目的で、液膜を構成する液体に、電解質を添加してもよい。
【0032】
特に本発明に係る水素発生装置Rを、本実施形態のように燃料電池の水素発生源として使用する場合には、燃料電池が発電を行う際に生成する生成水を使用することが好ましい(生成水の発生については、従来技術の第0003段落を参照のこと)。
【0033】
このようにして、回収室3内に発生した水素は、次いで背圧レギュレータ6を介して図示しない水素消費系(例えば、燃料電池システムの場合には燃料電池)へと供給される。
【0034】
以上述べた通り、本発明に係る水素発生装置Rは、水素分離膜2を介して脱水素反応を行う反応室1と前記反応室1で発生した水素を回収する回収室3とに隔壁された構成を有する水素発生装置において、前記水素膜2の表面に所定の厚さを有する液膜30を設けたことを特徴とするものであるが、以下に液膜30の構成について、燃料電池の水素発生源として本発明に係る水素発生装置Rを適用し、水から成る液膜を例にとり、図1に基づいて詳細に説明する。
【0035】
本発明に係る水素発生装置Rにおいて、水素分離膜2の表面に形成する液膜30には、最適な厚さがあり、その最適な厚さを保持する必要がある。この厚さは、水素発生装置Rの寸法、特に水素分離膜の表面積や脱水素反応により生成する水素の生成量(生成速度)に依存して適宜選択されるが、例えば、水素発生量5cc/分、水素分離膜の表面積が10cm2の水素発生装置の場合、液膜の厚さ、すなわち高さを1mm程度に保持することが好ましい。
【0036】
この最適値を下回る場合には、水素分離膜を透過した水素を均一に気泡化することができず目的とする透過ドライビングフォースを得ることができない。逆に、最適値を上回る場合には、水素の抜けが悪くなり、平衡反応が右側に進行する傾向があるので好ましくない。
このような装置に依存した最適値は、予備実験等により適宜決定することが可能である。
【0037】
本発明に係る水素発生装置Rの操作温度が例えば、100℃である場合には、水から構成された液膜30において、水が蒸発して液膜の厚さが減少することとなる。そこで、液膜30の厚さを最適な状態に保持するために、例えば水素消費系への排出管に背圧レギュレータ6を設けて、背圧を加えることにより水の蒸発を抑えることができる。また、液面からの水の蒸発分を補うために蒸発した分の水を水ポンプP2により補う構成とすることも可能であり、両者を組合せて液膜の厚さを最適な状態に保持することも可能である。
【0038】
尚、図示しないが、最適な液膜の位置に排水孔を設け、水ポンプP2と組合せることによって、水ポンプP2から供給された過剰の水をオーバーフローさせる構成とすることも可能である。この際に、背圧レギュレータ6の設けられた方向の逆側に排水孔を設けると、背圧レギュレータからの背圧により過剰の液体が効率よく除去されて、液膜の厚さを一定に保つので好ましい。
【0039】
次に、本発明に係る水素発生方法について、図2を用いて説明する。図2は、本発明に係る水素発生方法のフローを示すフローチャートである。
本発明に係る水素発生方法は、閉鎖系において行われる脱水素反応及び脱水素反応により生成した水素を水素透過膜に透過させて水素を回収する方法である。まず、図2に示す通り、含水素原料、例えばIPAを前記した触媒の存在下で反応させて、水素ガス及び副生成物であるアセトンを生成させる(S1)(反応条件、使用する脱水素触媒等については前記水素発生装置の欄を参照のこと)。
【0040】
次に、工程S2において、パラジウム(合金)等の水素透過膜を介して水素を選択的に透過させて、水素と副生成物であるアセトンとを分離する(S2)。
この際に、分離されたアセトンは含水素原料中に溶け込み、反応終了後に未反応のIPAとともに回収され、図示しないIPAとアセトンとの分離工程を経て再利用に供されることが好ましい。
【0041】
次いで、工程S3において、所定の液体から構成された所定の厚さを有する液膜に水素を通過させる。液膜に水素を通過させると、水素は液膜上に均一に分散して水素が均一に発生する。この際に、液膜を加圧すると、平衡反応である脱水素反応は、生成側に移行し、水素を効率的に回収することが可能である。そして、工程S4により、このようにして均一に分散した水素を効率よく回収することが可能となる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態に係る水素発生装置Rについて、説明したが本発明は、このような実施の形態に限定されるものではない。
例えば、前記の実施の形態では、脱水素反応に供する含水素原料としてアセトン/IPA系に基づいて説明したが、本発明はこのような特定の含水素化合物に限定されるものではなく、デカリン/ナフタレン系等の当該技術に公知の脱水素反応により水素を発生する化合物を使用することも本発明の範囲内である。
【0043】
また、本発明に係る水素発生装置及び水素発生方法は、水素を含有する気体、例えば従来技術に記載した通りの炭化水素を用い、例えば、メタノール水溶液を水蒸気改質等により水素生成を行う改質ガスから、水素分離膜を介して水素を回収する際に、所定の厚さを有する液膜を介して水素を回収する装置及び方法も本発明の範囲内である。この場合、図2で示した工程S1を水蒸気改質とし、そして生成物分離工程を続ければよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明は、以下の優れた効果を奏する。
請求項1によると、従来、各種のメンブレンリアクタに所定の厚さを有する水等の液膜を形成するだけで、大量のスウィープガスを流すことなしに水素透過のドライビングフォースを確保することができ、少ないエネルギで水素を効率良く回収することが可能となる。
【0045】
請求項2によると、水素分離膜で分離した水素を更に液膜に通過させることによって発生した水素を効率よく回収することが可能である。
請求項3によると簡単な構成で水素含有気体、例えば燃料電池システムにおける改質器からの気体から水素を効率よく回収することが可能となる。
請求項4によると、水素分離膜で分離した水素を更に液膜に通過させることによって発生した水素を効率よく回収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る水素発生装置の略式断面図である。
【図2】本発明の水素発生方法を示すフローチャートである。
【図3】従来の水素発生装置の略式断面図である。
【符号の説明】
R 水素発生装置
1 反応室
10 脱水素触媒層
2 水素分離膜
3 回収室
30 液膜
4 原料タンク
5 液体回収タンク
6 背圧レギュレータ
P1、P2 ポンプ
Claims (4)
- 脱水素反応により水素と副生成物とを生成する含水素原料を脱水素触媒の存在下に脱水素反応させるための脱水素触媒層を有する反応室と、
前記脱水素触媒層の上方に気密に設けられた前記脱水素反応で生じた水素と副生成物との混合物から水素を分離するための水素分離膜と、
前記水素分離膜を透過した水素を回収するための回収室とから構成された水素発生装置であって、
前記水素分離膜の上方は、所定の厚さの液膜で覆われていることを特徴とする水素発生装置。 - 脱水素反応により水素と副生成物とを生成する含水素原料を脱水素触媒の存在下で脱水素反応させる工程と、
水素分離膜を介して、得られた水素を副生成物と分離する工程と
を含む水素発生方法であって、
更に分離した水素を、液膜を介して回収する工程を含む水素発生方法。 - 水素含有気体から水素分離膜を介して水素を回収する水素回収装置であって、
前記水素分離膜の水素回収側の表面に所定の厚さの液膜を有することを特徴とする水素回収装置。 - 水素含有気体から水素分離膜を介して水素を回収する水素回収方法であって、
水素含有気体を、一方の面に所定の厚さを有する液膜を有する水素分離膜の他方の面から通過させて水素を回収する工程を含むことを特徴とする水素回収方法。
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Legal Events
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041130 |
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