JP2004127580A - 有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料及び燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】柔軟性を有し、低い含水率でも十分なプロトン伝導性があり、DMFC用として好適なメタノール透過性の低いプロトン伝導膜、及びそれを用いた燃料電池を提供する。
【解決手段】下記一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、R1は置換又は無置換のアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Xはハロゲン原子又はOR2を表し、R2は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、Lは2価の連結基を表し、mは0〜2の整数を表し、nは2〜10の整数を表し、Aは所定の連結基を表す。)で表される化合物を前駆体とし、前記前駆体のゾル−ゲル反応により得られる3次元架橋体とプロトン源を含むことを特徴とする有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料。
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、R1は置換又は無置換のアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Xはハロゲン原子又はOR2を表し、R2は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、Lは2価の連結基を表し、mは0〜2の整数を表し、nは2〜10の整数を表し、Aは所定の連結基を表す。)で表される化合物を前駆体とし、前記前駆体のゾル−ゲル反応により得られる3次元架橋体とプロトン源を含むことを特徴とする有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エネルギーデバイス、電気化学センサーや表示素子に広く利用される有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料及びそれを用いた固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、固体高分子型燃料電池は地球環境にやさしいクリーンな発電装置として、家庭用電源、車載用電源等への実用化が期待されている。これらの固体高分子型燃料電池では水素と酸素を燃料として使用するものが主流となっている。また、最近では燃料として水素の代わりにメタノールを用いる直接メタノール型燃料電池(DMFC)が提案され、リチウム2次電池に代わる携帯機器用高容量電池として期待され、活発に研究されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池用電解質膜(プロトン伝導膜)の重要な機能は、正極触媒電極に供給される燃料(水素、メタノール水溶液等)と負極に供給される酸化剤ガス(酸素等)を物理的に絶縁すること、正極と負極を電気的に絶縁すること、及び正極上で生じるプロトンを負極に伝達することである。これらの機能を満たすためには、ある程度の機械的強度と高いプロトン伝導性が要求される。
【0004】
固体高分子型燃料電池電解質膜には、一般的にナフィオン(登録商標)に代表されるスルホン酸基含有パーフルオロカーボン重合体が用いられている。これらの電解質膜はイオン伝導度に優れ、機械的強度も比較的高いものであるが、以下のような改善すべき点がある。すなわち、これらの電解質膜では膜に含まれる水とスルホン酸基により生成したクラスターチャンネルの中で水を介してプロトンが伝導するため、イオン伝導度が電池使用環境の湿度による膜含水率に大きく依存する。固体高分子燃料電池は、COによる触媒電極の被毒低減と触媒電極の高活性化の観点から、100〜150℃の温度領域で作動させるのが好ましい。しかし、このような中温度領域では電解質膜の含水率の低下とともにイオン伝導度が低下するため、期待した電池特性が得られないことが問題となっている。また、電解質膜の軟化点が120℃付近にあり、この温度域で作動させた場合には電解質膜の機械的強度も問題となる。一方、これらの電解質膜をDMFCに用いた場合には以下のような問題が生じる。すなわち、本質的に含水し易いこれらの膜は、燃料のメタノールに対するバリヤ性が低いため、正極に供給したメタノールが電解質膜を透過し負極に到達してしまう。これが原因となり電池出力が低下する、いわゆるメタノールクロスオーバー現象が大きな問題となっており、DMFC実用化のための解決すべき重要な課題の一つとなっている。
【0005】
このような状況下、ナフィオンに代わるプロトン伝導膜を開発する機運が高まり、幾つかの有望な電解質材料が提案されている。例えば、無機プロトン伝導材料としては、「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(Journal of Physical Chemistry)B」,1999年, 第103巻, p.9468、「フィジカル・レビュー(Physical Review)B」, 1997年 第55巻, p.12108、特開2000−272932号公報、特開2000−256007号公報,特開2000−357524号公報、特開2001−93543号公報等に記載のプロトン伝導性ガラスが知られている。これらは、テトラアルコキシシランを酸の存在下、ゾル−ゲル法により重合して得られるものであり、高温域での湿度依存性が小さいことが知られている。しかし、柔軟性が無く、極めて脆い材料であるため、大きな面積の膜を作製するのが困難であり、燃料電池用電解質としては適当でない。
【0006】
そこで、無機材料の特性を活かしながら製膜を容易にするための方策として、一つには高分子材料と複合したナノコンポジッド材料が提案されている。例えば、スルホン酸基を側鎖に持つ高分子化合物、ケイ素酸化物及びプロトン酸との複合化によりプロトン伝導膜を作製する方法等が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。他には有機ケイ素化合物を前駆体とし、プロトン酸存在下のゾル−ゲル反応により生成する有機−無機ナノハイブリッド型のプロトン伝導材料が提案されている(例えば、特許文献4及び非特許文献1〜2参照。)。これらの有機−無機コンポジッド及びハイブリッド型プロトン伝導材料は、ケイ酸とプロトン酸からなりプロトン伝導部位である無機成分と材料に柔軟性を付与する有機成分とにより構成されるが、膜のプロトン伝導度を高めるために無機成分を増やすと膜の機械的強度が低下し、膜の柔軟性を得るために有機成分を増やすとプロトン伝導度が低下するため、2つの特性を同時に満足する材料を得ることが困難である。また、DMFC用途として重要な特性であるメタノール透過性に関しては、十分な記載がない。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−69817号公報(第4−7頁)
【特許文献2】
特開平11−203936号公報(第6−10頁)
【特許文献3】
特開2001−307752号公報(第6−7頁)
【特許文献4】
特許第3103888号公報(第4−7頁)
【非特許文献1】
「エレクトロキミカ アクタ(Electrochimica Acta)」, 1998年, 第43巻, 第10−11号, p.1301
【非特許文献2】
「工業材料」, 日刊工業新聞社, 2002年, 第50巻, p.39
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、柔軟性を有し、低い含水率でも十分なプロトン伝導性があり、DMFC用として好適なメタノール透過性の低いプロトン伝導膜、及びそれを用いた燃料電池を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、ゾル−ゲル反応の前駆体として有機化合物の末端に加水分解性の金属アルコキシド又はその等価体を置換基として導入した化合物を用い、ゾル−ゲルプロセスによる重縮合反応及びプロトン源の添加により、柔軟性を有し、かつ十分なプロトン伝導性と低いメタノール透過性を示す有機−無機複合材料が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料は、下記一般式(1):
【化4】
(一般式(1)中、R1は置換又は無置換のアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Xはハロゲン原子又はOR2を表し、R2は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、Lは2価の連結基を表し、mは0〜2の整数を表し、nは2〜10の整数を表し、Aは下記一般式(2):
【化5】
で表される連結基、下記一般式(3):
【化6】
で表される連結基、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基を表す(一般式(2)及び一般式(3)中、n1及びn2は1〜20の整数を表し、R3及びR4はそれぞれ水素原子、置換又は無置換のアルキル基又はアリール基、或いは単結合を表し、R5〜R8はそれぞれ置換又は無置換のアルキル基又はアリール基を表す。n1が2以上のときR3及びR4はそれぞれ同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。n2が2以上のときR5及びR6はそれぞれ同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。)。)で表される化合物を前駆体とし、前記前駆体のゾル−ゲル反応により得られる3次元架橋体とプロトン源を含むことを特徴とする。
【0011】
一般式(1)で表される化合物を前駆体とする有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料は、燃料電池の電解質膜として好適である。
【0012】
本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料は、下記条件を満たすことにより一層優れた柔軟性、プロトン伝導性、メタノール透過性及び電池性能が得られる。
(1) XはOR2が好ましい。
(2) R2はアルキル基が好ましい。
(3) R1は置換又は無置換のアルキル基が好ましい。
(4) nは2〜4の整数が好ましい。
(5) Lはアルキレン基、−CO−、−NR’−(R’は水素原子又はアルキル基)及びこれらを2つ以上組み合わせてなるのが好ましい。
(6) プロトン源はH3PO4、H3PO3、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、タングストリン酸及びタングステンペルオキソ錯体からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
[1] 前駆体
本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料は、下記一般式(1)で表される化合物を前駆体としてゾル−ゲル反応により得られる。
【0014】
【化7】
【0015】
一般式(1)中、Xはハロゲン原子又はOR2を表す。Xがハロゲン原子の場合、Xは塩素、臭素、ヨウ素等が好ましく、塩素がより好ましい。XがOR2の場合、R2は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表す。アルキル基、アリール基及びシリル基は置換又は無置換のいずれでもよい。アルキル基の好ましい例としては、直鎖、分岐鎖又は環状アルキル基(例えば炭素数1〜20のアルキル基であり、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられる。アリール基の好ましい例としては、炭素数6〜20の置換又は無置換のフェニル基、炭素数10〜20の置換又は無置換のナフチル基等が挙げられる。シリル基の好ましい例としては、炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれた3つの基で置換したシリル基(例えばトリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリイソプロポキシシリル基等)又はポリシロキサン基(例えば−(Me2SiO)nH(n=10〜100)等)が挙げられる。
【0016】
R1は置換又は無置換のアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。R1で表されるアルキル基及びアリール基の好ましい例は、R2で表されるアルキル基及びアリール基の好ましい例と同様である。R1で表されるヘテロ環基の好ましい例としては、置換又は無置換のへテロ6員環(ピリジル、モルホリノ基等)、置換又は無置換のヘテロ5員環(フリル、チオフェン基等)等が挙げられる。
【0017】
R1及びR2で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロ環基及びシリル基がさらに置換基を有する場合、好ましい置換基としては以下の基が挙げられる。
【0018】
1.アルキル基
より好ましくは炭素数1〜24、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基、オクチルシクロヘキシル基等である。
【0019】
2.アリール基
アリール基は縮環していてもよい。より好ましくは炭素数6〜24のアリール基であり、例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−シアノフェニル基、2−クロロフェニル基、2−ナフチル基等である。
【0020】
3.複素環基
複素環基は縮環していてもよく、含窒素複素環基のときは環中の窒素が4級化していてもよい。より好ましくは炭素数2〜24の複素環基であり、例えば4−ピリジル基、2−ピリジル基、1−オクチルピリジニウム−4−イル基、2−ピリミジル基、2−イミダゾリル基、2−チアゾリル基等である。
【0021】
4.アルコキシ基
より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシペンタ(エチルオキシ)基、アクリロイルオキシエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、−O(CH2CH2O)nCH3等である。
【0022】
5.アシルオキシ基
より好ましくは炭素数1〜24のアシルオキシ基であり、例えばホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等である。
【0023】
6.アルコキシカルボニル基
より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等である。
【0024】
7.カルバモイルオキシ基
例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等である。
【0025】
8.アルコキシカルボニルオキシ基
例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等である。
【0026】
9.アリールオキシカルボニルオキシ基
例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等である。
【0027】
10.アミノ基
例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等である。
【0028】
11.アシルアミノ基
例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等である。
【0029】
12.アミノカルボニルアミノ基
例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等である。
【0030】
13.アルコキシカルボニルアミノ基
例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等である。
【0031】
14.アリールオキシカルボニルアミノ基
例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等である。
【0032】
15.スルファモイルアミノ基
例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等である。
【0033】
16.アルキル及びアリールスルホニルアミノ基
例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等である。
【0034】
17.スルファモイル基
例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等である。
【0035】
18.アルキル及びアリールスルフィニル基
例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等である。
【0036】
19.アルキル及びアリールスルホニル基
例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等である。
【0037】
20.アシル基
例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基等である。
【0038】
21.アリールオキシカルボニル基
例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等である。
【0039】
22.カルバモイル基
例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等である。
【0040】
23.シリル基
より好ましくは炭素数3〜30のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、トリアセトキシシリル基等である。
【0041】
24.シアノ基
25.フルオロ基
等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。
【0042】
Lは2価の連結基を表す。2価の連結基の例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR’−(R’は水素原子又はアルキル基)、−SO2−、これらを2つ以上組み合わせてなる基等が挙げられる。Lはアルキレン基、アリーレン基、−O−、−CO−、−NR’−(R’は水素原子又はアルキル基)及びこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基が好ましい。
【0043】
mは0〜2の整数を表し、好ましくは0又は1である。mが2のとき、R1は同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。nは2〜10の整数を表し、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4の整数である。
【0044】
Aは下記一般式(2):
【化8】
で表される連結基、下記一般式(3):
【化9】
で表される連結基、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基を表す。Aは好ましくは2価以上の連結基である。
【0045】
一般式(2)及び一般式(3)中、n1及びn2は1〜20の整数を表し、R3及びR4はそれぞれ水素原子、置換又は無置換のアルキル基又はアリール基、或いは単結合を表す。R5〜R8はそれぞれ置換又は無置換のアルキル基又はアリール基を表す。R3〜R8で表されるアルキル基及びアリール基はR2で表されるアルキル基及びアリール基と同義である。n1が2以上のときR3及びR4はそれぞれ同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。またn2が2以上のときR5及びR6はそれぞれ同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。
【0046】
一般式(2)で表される連結基同士、一般式(3)で表される連結基同士、又は一般式(2)で表される連結基と一般式(3)で表される連結基を組み合わせる場合、結合箇所はC、R3、R4、Si及びR5〜R8のいずれの箇所でもよい。
【0047】
以下、本発明の一般式(1)により表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
[2] ハイブリッド材料の作製法及び製膜法
本発明では、金属アルコキシド又はその等価体を置換基として含む化合物を前駆体とし、一般にゾル−ゲル法と呼ばれる金属アルコキシドの加水分解、重合、乾燥、(場合によっては焼成)等によって固体を得る方法を用いる(例えば、非特許文献2参照)。その際、加水分解及び重合を調節する触媒として酸やアルカリを用いる。アルカリとしては、NaOH、KOH等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア等を用いるのが一般的である。酸を用いる方法としては、例えば、特開2000−272932号公報、特開2000−256007号公報、特開2000−357524号公報、特開2001−93543号公報、「エレクトロキミカ アクタ(Electrochimica Acta)」,1998年, 第43巻, 第10−11号, p.1301、特許第3103888号公報等に記載されている方法を用いることができるが、ここでは、典型的な方法を述べる。[1]に記載した前駆体の化合物を任意の溶媒に溶解し、そこに水と酸を添加することによりアルコキシシリル基の加水分解と縮重合反応(ゾル−ゲル反応)が進行する。その際、反応混合液(ゾル)の粘度が徐々に増し、溶媒を留去、乾燥すると固体(ゲル)が得られる。流動性がある段階でゾルを所望の容器に流し込むか、支持体等に塗布した後、溶媒留去、乾燥すれば、板状、膜状等の所望の形状の固体を得ることができる。また、得られた固体を粉砕後、圧縮して板状に成型することも可能である。生成する金属−酸素結合のネットワークをより緻密にするため、必要に応じ乾燥後さらに加熱することも可能である。
【0051】
ゾル−ゲル反応に用いる溶媒は、前駆体の化合物を溶解するものであれば特に制限はないが、好ましくはカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、N−メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン極性物質(ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン等)、塩素系溶媒(メチレンクロリド、エチレンクロリド等)、水等を用いることができる。中でも、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が特に好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0052】
乾燥速度を制御する目的で、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジオキサン等の沸点が100℃以上の溶媒を上記溶媒に添加しても良い。全溶媒量は、前駆体化合物1gに対し好ましくは0.1〜100 gであり、より好ましくは1〜10 gである。
【0053】
ゾル−ゲル反応における前駆体の反応性を制御する目的で、金属原子にキレート化しうる化学改質剤を用いてもよい。化学改質剤としては、例えばアセト酢酸エステル類(アセト酢酸エチル等)、1,3−ジケトン類(アセチルアセトン等)、アセトアセタミド類(N,N’−ジメチルアミノアセトアセタミド等)等が挙げられる。
【0054】
ゾル−ゲル反応の酸触媒としては無機又は有機のプロトン酸を用いることができる。無機プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硼酸、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロ硼酸、ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸等が挙げられる。有機プロトン酸としては、酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。これらを2種以上併用することも可能である。
【0055】
本発明では高いプロトン伝導性を発現させるため、反応混合液中にゾル−ゲル反応の酸触媒として用いるプロトン酸以外にプロトン源をさらに添加する。プロトン源は、反応後も生成した固体中に留まりプロトン伝導性付与剤として機能するため、固体中に多く保持されなければならない。そのため、プロトン源としてはゾル−ゲル反応後のネットワーク中で化学結合(M−O−P、Mは金属原子を表す)を形成するリン化合物(好ましくはリン酸類、リン酸エステル類等)、水への溶解性が低い有機酸類、溶出しにくいプロトン酸部位を有する高分子化合物、又はネットワーク中で物理的に相互作用し保持される固体酸(α−Zr(HPO4)2・nH2O、γ−Zr(PO4)(H2PO4)・2H2O、α−Zrスルホフェニルリン酸塩、γ−Zrスルホフェニルリン酸塩等の層状化合物、SnO2・2H2O、Sb2O5・5.4H2O等の水和酸化物、H4SiW12O40・nH2O、H3PW12O40・nH2O等のヘテロポリ酸等)を用いるのが好ましい。中でも、H3PO4、H3PO3、リン酸エステル類(例えば炭素数1〜30のリン酸エステル類であり、リン酸メチルエステル、リン酸プロピルエステル、リン酸ドデシルエステル、リン酸フェニルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジドデシルエステル等)、亜リン酸エステル類(例えば炭素数1〜30の亜リン酸エステル類であり、亜リン酸メチルエステル、亜リン酸ドデシルエステル、亜リン酸ジエチルエステル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジドデシルエステル等)等のリン化合物、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート(特開2001−114834号公報)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(特開平6−93111号公報)、スルホン化ポリエーテルスルホン(特開平10−45913号公報)、スルホン化ポリスルホン(特開平9−245818号公報)等の耐熱芳香族高分子のスルホン化物等のプトロン酸部位を有する高分子化合物、タングストリン酸、タングステンペルオキソ錯体等の固体酸等が特に好ましい。酸の量は、前駆体の金属原子Mに対し0.1〜10モル当量が好ましく、0.5〜5モル当量がより好ましい。プロトン源は、ゾル−ゲル反応の酸触媒を兼ねて使用してもよい。
【0056】
ゾル−ゲル反応温度は反応速度に関連し、前駆体の反応性と酸の種類及び量に応じて選択することができる。好ましくは−20〜150℃であり、より好ましくは0〜80℃であり、さらに好ましくは20〜60℃である。
【0057】
膜特性を向上させるため、必要に応じて他の金属化合物を添加しても良い。金属化合物の例としては、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0058】
【化12】
【0059】
一般式(4)中、R9は置換又は無置換のアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Zはハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素等)又はOR10を表し、R10は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、M1はSi、B、Al、Ti、Ta又はZrを表す。qはM1のとりうる価数を表し、rは0〜qの整数を表し、r及び/又はq−rが2以上のときR9及びZはそれぞれ同一でも異なってもよい。また、R9、R9上の置換基又はZにより互いに連結してもよく、多量体を形成してもよい。
【0060】
rは0又は1が好ましく、ZはOR10が好ましく、R10はアルキル基が好ましい。M1はSi、Ti、Al又はTaが好ましい。以下一般式(4)により表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
【化13】
【0062】
【化14】
【0063】
一般式(4)で表される化合物を併用する場合、一般式(1)で表される前駆体に対して1〜500モル%の範囲で用いるのが好ましく、10〜350モル%の範囲で用いるのがより好ましい。
【0064】
本発明において、ゾル−ゲル反応混合物を塗布する際の支持体は特に限定されないが、好ましい例としてはガラス基板、金属基板、高分子フイルム、反射板等を挙げることができる。高分子フイルムとしては、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロース系高分子フイルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のエステル系高分子フイルム、PTFE(ポリトリフルオロエチレン)等のフッ素系高分子等が挙げられる。塗布方式は公知の方法でよく、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。
【0065】
細孔を有する基材上にゾル−ゲル反応液を塗布して膜を形成してもよいし、基材をゾル−ゲル反応液に浸漬し、細孔内にプロトン伝導材料を満して膜を形成してもよい。細孔を有する基材の好ましい例としては、多孔性ポリプロピレン、多孔性ポリテトラフルオロエチレン、多孔性架橋型耐熱性ポリエチレン、多孔性ポリイミド膜等が挙げられる。
【0066】
支持体より剥離して得られた有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導膜の厚さは、10〜500μmが好ましく、25〜300μmが特に好ましい。
【0067】
本発明では、膜の特性(例えば、機械的強度、イオン伝導性等)を改良するため無機微粒子(無機フィラー)を添加してもよい。無機微粒子は、シリカ(酸化ケイ素)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン等の無機酸化物が好ましく、二種以上を混合して用いてもよい。無機微粒子の粒子サイズは、一次粒子の平均径が好ましくは500 nm以下、より好ましくは200 nm以下、特に好ましくは、2〜200 nmである。無機微粒子は、結晶であっても非晶質であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0068】
無機微粒子として、ジメチルシリコーンオイル、シランカップリング剤等で表面処理したものを用いてもよい。例えばシリカの場合、粉末状の二酸化ケイ素を主成分とするアモルファスシリカ表面をメチル基、オクチルシリル基又はトリメチルシリル基で処理した疏水化アモルファスシリカ等を用いることができる。
【0069】
[3] 燃料電池
本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導膜を用いた燃料電池について説明する。図1は燃料電池で使用する触媒電極接合体(以下「MEA」と呼ぶ)10を示す。MEA10はプロトン伝導膜11と、それを挟んで対向するカソード側電極12及びアノード側電極13を有する。
【0070】
カソード側電極12とアノード側電極13は、多孔質導電材料(例えばカーボンペーパー)12a、13aと触媒層12b、13bからなる。触媒層は、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子(例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等)をプロトン伝導材料(例えばナフィオン等)に分散させた分散物からなる。触媒層12b、13bをプロトン伝導膜11に密着させるために、多孔質導電材料12a、13aに触媒層12b、13bを塗設したものをプロトン伝導膜11にホットプレス法(好ましくは120〜130℃、2〜100 kg/cm2)で圧着するか、適当な支持体に触媒層12b、13bを塗設したものをプロトン伝導膜11に転写しながら圧着した後、多孔質導電材料12a、13aで挟み込む方法を一般に用いる。
【0071】
図2は燃料電池単セルの一例を示す。燃料電池はMEA10と、MEA10を挟持する一対のセパレータ21、22と、セパレータ21、22に取り付けられたステンレスネットからなる集電体17及びパッキン14とを有する。カソード極側のセパレータ21にはカソード極側開口部15が設けられ、アノード極側のセパレータ22にはアノード極側開口部16が設けられている。カソード極側開口部15からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料又はアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、アノード極側開口部16からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
【0072】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0073】
合成例1
(1) (1−1)の合成
窒素気流下でイソシアン酸−3−(トリエトキシシリルプロピル) 24.7 gをアセトニトリルに溶解し、室温で1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン12.4 gを徐々に滴下した。室温で3時間撹拌した後、減圧下で溶媒を留去し、36 gの固体状の(1−1)を得た。
【0074】
(2) (1−2)の合成
1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンの代わりに下記構造の化合物A(信越化学工業(株)製)45 gを用いた以外(1)と同様にして、64 gの液状の(1−2)を得た。
【0075】
【化15】
【0076】
(3) (1−6)の合成
窒素気流下でイソホロンジイソシアネート11.1 gをアセトニトリルに溶解し、室温で3−アミノプロピルトリエトキシシラン17.9 gを徐々に滴下した。室温で3時間撹拌した後、減圧下で溶媒を留去し、28 gの(1−6)を得た。
【0077】
(4) (1−8)の合成
窒素気流下でイソシアン酸−3−(トリエトキシシリルプロピル) 24.7 g及び下記構造の化合物B(信越化学工業(株)製)47.5 gをアセトニトリルに溶解し、3日間加熱還流した。減圧下で溶媒及び揮発成分を留去し、70 gの液状の(1−8)を得た。
【0078】
【化16】
【0079】
実施例1
(1) 前駆体(1−1)及び(X−2)を用いたプロトン伝導材料(E−1)の作製
前駆体(1−1)1g及び(X−2)1gをエタノール6mlに溶解し、25℃で1.0%塩酸水0.50 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.73 g)/エタノール2ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ230μmの無色透明シート(E−1)を得た。
【0080】
(2) 前駆体(1−1)を用いたプロトン伝導材料(E−2)の作製
前駆体(1−1)2gをエタノール6mlに溶解し、25℃で0.7%塩酸水0.30 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.53 g)/エタノール2ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ230μmの無色透明シート(E−2)を得た。
【0081】
(3) 前駆体(1−2)及び(X−5)を用いたプロトン伝導膜(E−3)の作製
前駆体(1−2) 1.6 g及び(X−5) 0.4 gをエタノール6mlに溶解し、25℃で1.1%塩酸水0.27 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.49 g)/エタノール2ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ220μmの無色透明シート(E−3)を得た。
【0082】
(4) 前駆体(1−6)を用いたプロトン伝導膜(E−4)の作製
前駆体(1−6) 2gをエタノール6mlに溶解し、25℃で0.9%塩酸水0.33 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.59 g)/エタノール2ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ200μmの無色透明シート(E−4)を得た。
【0083】
(5) 前駆体(1−8)を用いたプロトン伝導膜(E−5)の作製
前駆体(1−8)2gをエタノール5mlに溶解し、25℃で0.7%塩酸水0.15 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.26 g)/エタノール1ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ210μmの無色透明シート(E−5)を得た。
【0084】
比較例1
(1) 化合物Cを用いたプロトン伝導膜(R−1)の作製
下記構造の化合物C2gをエタノール3mlに溶解し、25℃で1.0%塩酸水0.20 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.36 g)/エタノール1ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ200μmの無色透明シート(R−1)を得た。
【0085】
【化17】
【0086】
(2) 化合物C及び(X−5)を用いたプロトン伝導膜(R−2)の作製
化合物C1.6 g及び(X−5) 0.4 gをエタノール3mlに溶解し、25℃で1.2%塩酸水0.25 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.45 g)/エタノール1ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ200μmの無色透明シート(R−2)を得た。
【0087】
実施例2
実施例1及び比較例1で得られた本発明のプロトン伝導材料(E−1)〜(E−5)と比較サンプル(R−1)〜(R−2)を直径13 mmの円形に打ち抜き、2枚のステンレス板で挟み、交流インピーダンス法により25℃、相対湿度60%の時のイオン伝導度を測定した。また、膜の柔軟性を折り曲げ試験で定性的に評価した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
(*1)○・・・柔軟な膜、△・・・比較的柔軟な膜
(*2)特許第3103888号公報に記載の化合物
【0089】
一般式(1)で表される化合物を前駆体に用いたプロトン伝導膜(E−1)〜(E−5)は、比較例の膜(R−1)及び(R−2)に比べ、同等以上の柔軟性を有し、かつ高いイオン伝導度を示すことがわかる。
【0090】
実施例3
(1) 触媒膜の作製
白金担持カーボン(VulcanXC72に白金50wt%が担持)2gとナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15 gを混合し、超音波分散器で30分間分散させた。分散物の平均粒子径は約500 nmであった。得られた分散物をカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜いた。
【0091】
(2) MEAの作製
実施例1及び比較例1で作製したプロトン伝導膜の両面に、(1)で得られた触媒膜を塗布面がプロトン伝導膜に接するように貼り合わせ、120℃、50 kg/cm2でホットプレスし、MEAを作製した。
【0092】
(3) 燃料電池特性
(2)で得られたMEAを図2に示す燃料電池にセットし、カソード側開口部15に50質量%のメタノール水溶液を注入した。この時アノード側開口部16は大気と接するようにした。カソード電極12とアノード電極13間に、ガルバノスタットで5mA/cm2の定電流を通電し、この時のセル電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
プロトン伝導膜(R−1)及び(R−2)を用いたMEA−6及びMEA−7により作製した電池C−6及びC−7は、初期電圧が低く、さらに経時的に電圧が低下した。この経時的な電圧低下は、カソード電極側に供給された燃料のメタノールがプロトン伝導膜を通過してアノード電極側に漏れる、いわゆるメタノールクロスオーバー現象による。それに対し、MEA−1〜5により作製した本発明の電池C−1〜5では、より高い電圧を維持できることがわかった。
【0095】
【発明の効果】
上記の通り、金属アルコキシド又はその等価体を置換基として含む化合物を前駆体とし、ゾル−ゲル反応により得られる本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料は、柔軟性を有し、室温でのイオン伝導度が高く、メタノールクロスオーバーを低減することができる。そのため、直接メタノール型燃料電池に用いた場合には、従来のプロトン伝導膜より高い出力を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料を用いた触媒電極接合膜を示す断面図である。
【図2】本発明の燃料電池の構造の一例を示す分解断面図である。
【符号の説明】
10・・・触媒電極接合膜(MEA)
11・・・プロトン伝導膜
12・・・カソード電極
12a・・・カソード極多孔質導電シート
12b・・・カソード極触媒層
13・・・アノード電極
13a・・・アノード極多孔質導電シート
13b・・・アノード極触媒層
14・・・パッキン
15・・・カソード極側開口部
16・・・アノード極側開口部
17・・・集電体
21,22・・・セパレータ
【発明の属する技術分野】
本発明は、エネルギーデバイス、電気化学センサーや表示素子に広く利用される有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料及びそれを用いた固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、固体高分子型燃料電池は地球環境にやさしいクリーンな発電装置として、家庭用電源、車載用電源等への実用化が期待されている。これらの固体高分子型燃料電池では水素と酸素を燃料として使用するものが主流となっている。また、最近では燃料として水素の代わりにメタノールを用いる直接メタノール型燃料電池(DMFC)が提案され、リチウム2次電池に代わる携帯機器用高容量電池として期待され、活発に研究されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池用電解質膜(プロトン伝導膜)の重要な機能は、正極触媒電極に供給される燃料(水素、メタノール水溶液等)と負極に供給される酸化剤ガス(酸素等)を物理的に絶縁すること、正極と負極を電気的に絶縁すること、及び正極上で生じるプロトンを負極に伝達することである。これらの機能を満たすためには、ある程度の機械的強度と高いプロトン伝導性が要求される。
【0004】
固体高分子型燃料電池電解質膜には、一般的にナフィオン(登録商標)に代表されるスルホン酸基含有パーフルオロカーボン重合体が用いられている。これらの電解質膜はイオン伝導度に優れ、機械的強度も比較的高いものであるが、以下のような改善すべき点がある。すなわち、これらの電解質膜では膜に含まれる水とスルホン酸基により生成したクラスターチャンネルの中で水を介してプロトンが伝導するため、イオン伝導度が電池使用環境の湿度による膜含水率に大きく依存する。固体高分子燃料電池は、COによる触媒電極の被毒低減と触媒電極の高活性化の観点から、100〜150℃の温度領域で作動させるのが好ましい。しかし、このような中温度領域では電解質膜の含水率の低下とともにイオン伝導度が低下するため、期待した電池特性が得られないことが問題となっている。また、電解質膜の軟化点が120℃付近にあり、この温度域で作動させた場合には電解質膜の機械的強度も問題となる。一方、これらの電解質膜をDMFCに用いた場合には以下のような問題が生じる。すなわち、本質的に含水し易いこれらの膜は、燃料のメタノールに対するバリヤ性が低いため、正極に供給したメタノールが電解質膜を透過し負極に到達してしまう。これが原因となり電池出力が低下する、いわゆるメタノールクロスオーバー現象が大きな問題となっており、DMFC実用化のための解決すべき重要な課題の一つとなっている。
【0005】
このような状況下、ナフィオンに代わるプロトン伝導膜を開発する機運が高まり、幾つかの有望な電解質材料が提案されている。例えば、無機プロトン伝導材料としては、「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(Journal of Physical Chemistry)B」,1999年, 第103巻, p.9468、「フィジカル・レビュー(Physical Review)B」, 1997年 第55巻, p.12108、特開2000−272932号公報、特開2000−256007号公報,特開2000−357524号公報、特開2001−93543号公報等に記載のプロトン伝導性ガラスが知られている。これらは、テトラアルコキシシランを酸の存在下、ゾル−ゲル法により重合して得られるものであり、高温域での湿度依存性が小さいことが知られている。しかし、柔軟性が無く、極めて脆い材料であるため、大きな面積の膜を作製するのが困難であり、燃料電池用電解質としては適当でない。
【0006】
そこで、無機材料の特性を活かしながら製膜を容易にするための方策として、一つには高分子材料と複合したナノコンポジッド材料が提案されている。例えば、スルホン酸基を側鎖に持つ高分子化合物、ケイ素酸化物及びプロトン酸との複合化によりプロトン伝導膜を作製する方法等が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。他には有機ケイ素化合物を前駆体とし、プロトン酸存在下のゾル−ゲル反応により生成する有機−無機ナノハイブリッド型のプロトン伝導材料が提案されている(例えば、特許文献4及び非特許文献1〜2参照。)。これらの有機−無機コンポジッド及びハイブリッド型プロトン伝導材料は、ケイ酸とプロトン酸からなりプロトン伝導部位である無機成分と材料に柔軟性を付与する有機成分とにより構成されるが、膜のプロトン伝導度を高めるために無機成分を増やすと膜の機械的強度が低下し、膜の柔軟性を得るために有機成分を増やすとプロトン伝導度が低下するため、2つの特性を同時に満足する材料を得ることが困難である。また、DMFC用途として重要な特性であるメタノール透過性に関しては、十分な記載がない。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−69817号公報(第4−7頁)
【特許文献2】
特開平11−203936号公報(第6−10頁)
【特許文献3】
特開2001−307752号公報(第6−7頁)
【特許文献4】
特許第3103888号公報(第4−7頁)
【非特許文献1】
「エレクトロキミカ アクタ(Electrochimica Acta)」, 1998年, 第43巻, 第10−11号, p.1301
【非特許文献2】
「工業材料」, 日刊工業新聞社, 2002年, 第50巻, p.39
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、柔軟性を有し、低い含水率でも十分なプロトン伝導性があり、DMFC用として好適なメタノール透過性の低いプロトン伝導膜、及びそれを用いた燃料電池を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、ゾル−ゲル反応の前駆体として有機化合物の末端に加水分解性の金属アルコキシド又はその等価体を置換基として導入した化合物を用い、ゾル−ゲルプロセスによる重縮合反応及びプロトン源の添加により、柔軟性を有し、かつ十分なプロトン伝導性と低いメタノール透過性を示す有機−無機複合材料が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料は、下記一般式(1):
【化4】
(一般式(1)中、R1は置換又は無置換のアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Xはハロゲン原子又はOR2を表し、R2は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、Lは2価の連結基を表し、mは0〜2の整数を表し、nは2〜10の整数を表し、Aは下記一般式(2):
【化5】
で表される連結基、下記一般式(3):
【化6】
で表される連結基、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基を表す(一般式(2)及び一般式(3)中、n1及びn2は1〜20の整数を表し、R3及びR4はそれぞれ水素原子、置換又は無置換のアルキル基又はアリール基、或いは単結合を表し、R5〜R8はそれぞれ置換又は無置換のアルキル基又はアリール基を表す。n1が2以上のときR3及びR4はそれぞれ同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。n2が2以上のときR5及びR6はそれぞれ同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。)。)で表される化合物を前駆体とし、前記前駆体のゾル−ゲル反応により得られる3次元架橋体とプロトン源を含むことを特徴とする。
【0011】
一般式(1)で表される化合物を前駆体とする有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料は、燃料電池の電解質膜として好適である。
【0012】
本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料は、下記条件を満たすことにより一層優れた柔軟性、プロトン伝導性、メタノール透過性及び電池性能が得られる。
(1) XはOR2が好ましい。
(2) R2はアルキル基が好ましい。
(3) R1は置換又は無置換のアルキル基が好ましい。
(4) nは2〜4の整数が好ましい。
(5) Lはアルキレン基、−CO−、−NR’−(R’は水素原子又はアルキル基)及びこれらを2つ以上組み合わせてなるのが好ましい。
(6) プロトン源はH3PO4、H3PO3、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、タングストリン酸及びタングステンペルオキソ錯体からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
[1] 前駆体
本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料は、下記一般式(1)で表される化合物を前駆体としてゾル−ゲル反応により得られる。
【0014】
【化7】
【0015】
一般式(1)中、Xはハロゲン原子又はOR2を表す。Xがハロゲン原子の場合、Xは塩素、臭素、ヨウ素等が好ましく、塩素がより好ましい。XがOR2の場合、R2は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表す。アルキル基、アリール基及びシリル基は置換又は無置換のいずれでもよい。アルキル基の好ましい例としては、直鎖、分岐鎖又は環状アルキル基(例えば炭素数1〜20のアルキル基であり、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられる。アリール基の好ましい例としては、炭素数6〜20の置換又は無置換のフェニル基、炭素数10〜20の置換又は無置換のナフチル基等が挙げられる。シリル基の好ましい例としては、炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれた3つの基で置換したシリル基(例えばトリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリイソプロポキシシリル基等)又はポリシロキサン基(例えば−(Me2SiO)nH(n=10〜100)等)が挙げられる。
【0016】
R1は置換又は無置換のアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。R1で表されるアルキル基及びアリール基の好ましい例は、R2で表されるアルキル基及びアリール基の好ましい例と同様である。R1で表されるヘテロ環基の好ましい例としては、置換又は無置換のへテロ6員環(ピリジル、モルホリノ基等)、置換又は無置換のヘテロ5員環(フリル、チオフェン基等)等が挙げられる。
【0017】
R1及びR2で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロ環基及びシリル基がさらに置換基を有する場合、好ましい置換基としては以下の基が挙げられる。
【0018】
1.アルキル基
より好ましくは炭素数1〜24、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基、オクチルシクロヘキシル基等である。
【0019】
2.アリール基
アリール基は縮環していてもよい。より好ましくは炭素数6〜24のアリール基であり、例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−シアノフェニル基、2−クロロフェニル基、2−ナフチル基等である。
【0020】
3.複素環基
複素環基は縮環していてもよく、含窒素複素環基のときは環中の窒素が4級化していてもよい。より好ましくは炭素数2〜24の複素環基であり、例えば4−ピリジル基、2−ピリジル基、1−オクチルピリジニウム−4−イル基、2−ピリミジル基、2−イミダゾリル基、2−チアゾリル基等である。
【0021】
4.アルコキシ基
より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシペンタ(エチルオキシ)基、アクリロイルオキシエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、−O(CH2CH2O)nCH3等である。
【0022】
5.アシルオキシ基
より好ましくは炭素数1〜24のアシルオキシ基であり、例えばホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等である。
【0023】
6.アルコキシカルボニル基
より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等である。
【0024】
7.カルバモイルオキシ基
例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等である。
【0025】
8.アルコキシカルボニルオキシ基
例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等である。
【0026】
9.アリールオキシカルボニルオキシ基
例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等である。
【0027】
10.アミノ基
例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等である。
【0028】
11.アシルアミノ基
例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等である。
【0029】
12.アミノカルボニルアミノ基
例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等である。
【0030】
13.アルコキシカルボニルアミノ基
例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等である。
【0031】
14.アリールオキシカルボニルアミノ基
例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等である。
【0032】
15.スルファモイルアミノ基
例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等である。
【0033】
16.アルキル及びアリールスルホニルアミノ基
例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等である。
【0034】
17.スルファモイル基
例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等である。
【0035】
18.アルキル及びアリールスルフィニル基
例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等である。
【0036】
19.アルキル及びアリールスルホニル基
例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等である。
【0037】
20.アシル基
例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基等である。
【0038】
21.アリールオキシカルボニル基
例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等である。
【0039】
22.カルバモイル基
例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等である。
【0040】
23.シリル基
より好ましくは炭素数3〜30のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、トリアセトキシシリル基等である。
【0041】
24.シアノ基
25.フルオロ基
等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。
【0042】
Lは2価の連結基を表す。2価の連結基の例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR’−(R’は水素原子又はアルキル基)、−SO2−、これらを2つ以上組み合わせてなる基等が挙げられる。Lはアルキレン基、アリーレン基、−O−、−CO−、−NR’−(R’は水素原子又はアルキル基)及びこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基が好ましい。
【0043】
mは0〜2の整数を表し、好ましくは0又は1である。mが2のとき、R1は同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。nは2〜10の整数を表し、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4の整数である。
【0044】
Aは下記一般式(2):
【化8】
で表される連結基、下記一般式(3):
【化9】
で表される連結基、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基を表す。Aは好ましくは2価以上の連結基である。
【0045】
一般式(2)及び一般式(3)中、n1及びn2は1〜20の整数を表し、R3及びR4はそれぞれ水素原子、置換又は無置換のアルキル基又はアリール基、或いは単結合を表す。R5〜R8はそれぞれ置換又は無置換のアルキル基又はアリール基を表す。R3〜R8で表されるアルキル基及びアリール基はR2で表されるアルキル基及びアリール基と同義である。n1が2以上のときR3及びR4はそれぞれ同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。またn2が2以上のときR5及びR6はそれぞれ同じでも異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。
【0046】
一般式(2)で表される連結基同士、一般式(3)で表される連結基同士、又は一般式(2)で表される連結基と一般式(3)で表される連結基を組み合わせる場合、結合箇所はC、R3、R4、Si及びR5〜R8のいずれの箇所でもよい。
【0047】
以下、本発明の一般式(1)により表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
[2] ハイブリッド材料の作製法及び製膜法
本発明では、金属アルコキシド又はその等価体を置換基として含む化合物を前駆体とし、一般にゾル−ゲル法と呼ばれる金属アルコキシドの加水分解、重合、乾燥、(場合によっては焼成)等によって固体を得る方法を用いる(例えば、非特許文献2参照)。その際、加水分解及び重合を調節する触媒として酸やアルカリを用いる。アルカリとしては、NaOH、KOH等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア等を用いるのが一般的である。酸を用いる方法としては、例えば、特開2000−272932号公報、特開2000−256007号公報、特開2000−357524号公報、特開2001−93543号公報、「エレクトロキミカ アクタ(Electrochimica Acta)」,1998年, 第43巻, 第10−11号, p.1301、特許第3103888号公報等に記載されている方法を用いることができるが、ここでは、典型的な方法を述べる。[1]に記載した前駆体の化合物を任意の溶媒に溶解し、そこに水と酸を添加することによりアルコキシシリル基の加水分解と縮重合反応(ゾル−ゲル反応)が進行する。その際、反応混合液(ゾル)の粘度が徐々に増し、溶媒を留去、乾燥すると固体(ゲル)が得られる。流動性がある段階でゾルを所望の容器に流し込むか、支持体等に塗布した後、溶媒留去、乾燥すれば、板状、膜状等の所望の形状の固体を得ることができる。また、得られた固体を粉砕後、圧縮して板状に成型することも可能である。生成する金属−酸素結合のネットワークをより緻密にするため、必要に応じ乾燥後さらに加熱することも可能である。
【0051】
ゾル−ゲル反応に用いる溶媒は、前駆体の化合物を溶解するものであれば特に制限はないが、好ましくはカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、N−メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン極性物質(ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン等)、塩素系溶媒(メチレンクロリド、エチレンクロリド等)、水等を用いることができる。中でも、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が特に好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0052】
乾燥速度を制御する目的で、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジオキサン等の沸点が100℃以上の溶媒を上記溶媒に添加しても良い。全溶媒量は、前駆体化合物1gに対し好ましくは0.1〜100 gであり、より好ましくは1〜10 gである。
【0053】
ゾル−ゲル反応における前駆体の反応性を制御する目的で、金属原子にキレート化しうる化学改質剤を用いてもよい。化学改質剤としては、例えばアセト酢酸エステル類(アセト酢酸エチル等)、1,3−ジケトン類(アセチルアセトン等)、アセトアセタミド類(N,N’−ジメチルアミノアセトアセタミド等)等が挙げられる。
【0054】
ゾル−ゲル反応の酸触媒としては無機又は有機のプロトン酸を用いることができる。無機プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硼酸、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロ硼酸、ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸等が挙げられる。有機プロトン酸としては、酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。これらを2種以上併用することも可能である。
【0055】
本発明では高いプロトン伝導性を発現させるため、反応混合液中にゾル−ゲル反応の酸触媒として用いるプロトン酸以外にプロトン源をさらに添加する。プロトン源は、反応後も生成した固体中に留まりプロトン伝導性付与剤として機能するため、固体中に多く保持されなければならない。そのため、プロトン源としてはゾル−ゲル反応後のネットワーク中で化学結合(M−O−P、Mは金属原子を表す)を形成するリン化合物(好ましくはリン酸類、リン酸エステル類等)、水への溶解性が低い有機酸類、溶出しにくいプロトン酸部位を有する高分子化合物、又はネットワーク中で物理的に相互作用し保持される固体酸(α−Zr(HPO4)2・nH2O、γ−Zr(PO4)(H2PO4)・2H2O、α−Zrスルホフェニルリン酸塩、γ−Zrスルホフェニルリン酸塩等の層状化合物、SnO2・2H2O、Sb2O5・5.4H2O等の水和酸化物、H4SiW12O40・nH2O、H3PW12O40・nH2O等のヘテロポリ酸等)を用いるのが好ましい。中でも、H3PO4、H3PO3、リン酸エステル類(例えば炭素数1〜30のリン酸エステル類であり、リン酸メチルエステル、リン酸プロピルエステル、リン酸ドデシルエステル、リン酸フェニルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジドデシルエステル等)、亜リン酸エステル類(例えば炭素数1〜30の亜リン酸エステル類であり、亜リン酸メチルエステル、亜リン酸ドデシルエステル、亜リン酸ジエチルエステル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジドデシルエステル等)等のリン化合物、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート(特開2001−114834号公報)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(特開平6−93111号公報)、スルホン化ポリエーテルスルホン(特開平10−45913号公報)、スルホン化ポリスルホン(特開平9−245818号公報)等の耐熱芳香族高分子のスルホン化物等のプトロン酸部位を有する高分子化合物、タングストリン酸、タングステンペルオキソ錯体等の固体酸等が特に好ましい。酸の量は、前駆体の金属原子Mに対し0.1〜10モル当量が好ましく、0.5〜5モル当量がより好ましい。プロトン源は、ゾル−ゲル反応の酸触媒を兼ねて使用してもよい。
【0056】
ゾル−ゲル反応温度は反応速度に関連し、前駆体の反応性と酸の種類及び量に応じて選択することができる。好ましくは−20〜150℃であり、より好ましくは0〜80℃であり、さらに好ましくは20〜60℃である。
【0057】
膜特性を向上させるため、必要に応じて他の金属化合物を添加しても良い。金属化合物の例としては、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0058】
【化12】
【0059】
一般式(4)中、R9は置換又は無置換のアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Zはハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素等)又はOR10を表し、R10は水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表し、M1はSi、B、Al、Ti、Ta又はZrを表す。qはM1のとりうる価数を表し、rは0〜qの整数を表し、r及び/又はq−rが2以上のときR9及びZはそれぞれ同一でも異なってもよい。また、R9、R9上の置換基又はZにより互いに連結してもよく、多量体を形成してもよい。
【0060】
rは0又は1が好ましく、ZはOR10が好ましく、R10はアルキル基が好ましい。M1はSi、Ti、Al又はTaが好ましい。以下一般式(4)により表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
【化13】
【0062】
【化14】
【0063】
一般式(4)で表される化合物を併用する場合、一般式(1)で表される前駆体に対して1〜500モル%の範囲で用いるのが好ましく、10〜350モル%の範囲で用いるのがより好ましい。
【0064】
本発明において、ゾル−ゲル反応混合物を塗布する際の支持体は特に限定されないが、好ましい例としてはガラス基板、金属基板、高分子フイルム、反射板等を挙げることができる。高分子フイルムとしては、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロース系高分子フイルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のエステル系高分子フイルム、PTFE(ポリトリフルオロエチレン)等のフッ素系高分子等が挙げられる。塗布方式は公知の方法でよく、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。
【0065】
細孔を有する基材上にゾル−ゲル反応液を塗布して膜を形成してもよいし、基材をゾル−ゲル反応液に浸漬し、細孔内にプロトン伝導材料を満して膜を形成してもよい。細孔を有する基材の好ましい例としては、多孔性ポリプロピレン、多孔性ポリテトラフルオロエチレン、多孔性架橋型耐熱性ポリエチレン、多孔性ポリイミド膜等が挙げられる。
【0066】
支持体より剥離して得られた有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導膜の厚さは、10〜500μmが好ましく、25〜300μmが特に好ましい。
【0067】
本発明では、膜の特性(例えば、機械的強度、イオン伝導性等)を改良するため無機微粒子(無機フィラー)を添加してもよい。無機微粒子は、シリカ(酸化ケイ素)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン等の無機酸化物が好ましく、二種以上を混合して用いてもよい。無機微粒子の粒子サイズは、一次粒子の平均径が好ましくは500 nm以下、より好ましくは200 nm以下、特に好ましくは、2〜200 nmである。無機微粒子は、結晶であっても非晶質であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0068】
無機微粒子として、ジメチルシリコーンオイル、シランカップリング剤等で表面処理したものを用いてもよい。例えばシリカの場合、粉末状の二酸化ケイ素を主成分とするアモルファスシリカ表面をメチル基、オクチルシリル基又はトリメチルシリル基で処理した疏水化アモルファスシリカ等を用いることができる。
【0069】
[3] 燃料電池
本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導膜を用いた燃料電池について説明する。図1は燃料電池で使用する触媒電極接合体(以下「MEA」と呼ぶ)10を示す。MEA10はプロトン伝導膜11と、それを挟んで対向するカソード側電極12及びアノード側電極13を有する。
【0070】
カソード側電極12とアノード側電極13は、多孔質導電材料(例えばカーボンペーパー)12a、13aと触媒層12b、13bからなる。触媒層は、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子(例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等)をプロトン伝導材料(例えばナフィオン等)に分散させた分散物からなる。触媒層12b、13bをプロトン伝導膜11に密着させるために、多孔質導電材料12a、13aに触媒層12b、13bを塗設したものをプロトン伝導膜11にホットプレス法(好ましくは120〜130℃、2〜100 kg/cm2)で圧着するか、適当な支持体に触媒層12b、13bを塗設したものをプロトン伝導膜11に転写しながら圧着した後、多孔質導電材料12a、13aで挟み込む方法を一般に用いる。
【0071】
図2は燃料電池単セルの一例を示す。燃料電池はMEA10と、MEA10を挟持する一対のセパレータ21、22と、セパレータ21、22に取り付けられたステンレスネットからなる集電体17及びパッキン14とを有する。カソード極側のセパレータ21にはカソード極側開口部15が設けられ、アノード極側のセパレータ22にはアノード極側開口部16が設けられている。カソード極側開口部15からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料又はアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、アノード極側開口部16からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
【0072】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0073】
合成例1
(1) (1−1)の合成
窒素気流下でイソシアン酸−3−(トリエトキシシリルプロピル) 24.7 gをアセトニトリルに溶解し、室温で1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン12.4 gを徐々に滴下した。室温で3時間撹拌した後、減圧下で溶媒を留去し、36 gの固体状の(1−1)を得た。
【0074】
(2) (1−2)の合成
1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンの代わりに下記構造の化合物A(信越化学工業(株)製)45 gを用いた以外(1)と同様にして、64 gの液状の(1−2)を得た。
【0075】
【化15】
【0076】
(3) (1−6)の合成
窒素気流下でイソホロンジイソシアネート11.1 gをアセトニトリルに溶解し、室温で3−アミノプロピルトリエトキシシラン17.9 gを徐々に滴下した。室温で3時間撹拌した後、減圧下で溶媒を留去し、28 gの(1−6)を得た。
【0077】
(4) (1−8)の合成
窒素気流下でイソシアン酸−3−(トリエトキシシリルプロピル) 24.7 g及び下記構造の化合物B(信越化学工業(株)製)47.5 gをアセトニトリルに溶解し、3日間加熱還流した。減圧下で溶媒及び揮発成分を留去し、70 gの液状の(1−8)を得た。
【0078】
【化16】
【0079】
実施例1
(1) 前駆体(1−1)及び(X−2)を用いたプロトン伝導材料(E−1)の作製
前駆体(1−1)1g及び(X−2)1gをエタノール6mlに溶解し、25℃で1.0%塩酸水0.50 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.73 g)/エタノール2ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ230μmの無色透明シート(E−1)を得た。
【0080】
(2) 前駆体(1−1)を用いたプロトン伝導材料(E−2)の作製
前駆体(1−1)2gをエタノール6mlに溶解し、25℃で0.7%塩酸水0.30 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.53 g)/エタノール2ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ230μmの無色透明シート(E−2)を得た。
【0081】
(3) 前駆体(1−2)及び(X−5)を用いたプロトン伝導膜(E−3)の作製
前駆体(1−2) 1.6 g及び(X−5) 0.4 gをエタノール6mlに溶解し、25℃で1.1%塩酸水0.27 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.49 g)/エタノール2ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ220μmの無色透明シート(E−3)を得た。
【0082】
(4) 前駆体(1−6)を用いたプロトン伝導膜(E−4)の作製
前駆体(1−6) 2gをエタノール6mlに溶解し、25℃で0.9%塩酸水0.33 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.59 g)/エタノール2ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ200μmの無色透明シート(E−4)を得た。
【0083】
(5) 前駆体(1−8)を用いたプロトン伝導膜(E−5)の作製
前駆体(1−8)2gをエタノール5mlに溶解し、25℃で0.7%塩酸水0.15 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.26 g)/エタノール1ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ210μmの無色透明シート(E−5)を得た。
【0084】
比較例1
(1) 化合物Cを用いたプロトン伝導膜(R−1)の作製
下記構造の化合物C2gをエタノール3mlに溶解し、25℃で1.0%塩酸水0.20 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.36 g)/エタノール1ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ200μmの無色透明シート(R−1)を得た。
【0085】
【化17】
【0086】
(2) 化合物C及び(X−5)を用いたプロトン伝導膜(R−2)の作製
化合物C1.6 g及び(X−5) 0.4 gをエタノール3mlに溶解し、25℃で1.2%塩酸水0.25 mlを添加した。25℃で20分間攪拌した後、リン酸エタノール溶液(リン酸(H3PO4、0.45 g)/エタノール1ml)を滴下した。反応液をテフロンシート上にアプリケータを用いて塗布し、室温で2時間静置後、50℃で2時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱した。その後テフロンシートから剥がし、厚さ200μmの無色透明シート(R−2)を得た。
【0087】
実施例2
実施例1及び比較例1で得られた本発明のプロトン伝導材料(E−1)〜(E−5)と比較サンプル(R−1)〜(R−2)を直径13 mmの円形に打ち抜き、2枚のステンレス板で挟み、交流インピーダンス法により25℃、相対湿度60%の時のイオン伝導度を測定した。また、膜の柔軟性を折り曲げ試験で定性的に評価した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
(*1)○・・・柔軟な膜、△・・・比較的柔軟な膜
(*2)特許第3103888号公報に記載の化合物
【0089】
一般式(1)で表される化合物を前駆体に用いたプロトン伝導膜(E−1)〜(E−5)は、比較例の膜(R−1)及び(R−2)に比べ、同等以上の柔軟性を有し、かつ高いイオン伝導度を示すことがわかる。
【0090】
実施例3
(1) 触媒膜の作製
白金担持カーボン(VulcanXC72に白金50wt%が担持)2gとナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15 gを混合し、超音波分散器で30分間分散させた。分散物の平均粒子径は約500 nmであった。得られた分散物をカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜いた。
【0091】
(2) MEAの作製
実施例1及び比較例1で作製したプロトン伝導膜の両面に、(1)で得られた触媒膜を塗布面がプロトン伝導膜に接するように貼り合わせ、120℃、50 kg/cm2でホットプレスし、MEAを作製した。
【0092】
(3) 燃料電池特性
(2)で得られたMEAを図2に示す燃料電池にセットし、カソード側開口部15に50質量%のメタノール水溶液を注入した。この時アノード側開口部16は大気と接するようにした。カソード電極12とアノード電極13間に、ガルバノスタットで5mA/cm2の定電流を通電し、この時のセル電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
プロトン伝導膜(R−1)及び(R−2)を用いたMEA−6及びMEA−7により作製した電池C−6及びC−7は、初期電圧が低く、さらに経時的に電圧が低下した。この経時的な電圧低下は、カソード電極側に供給された燃料のメタノールがプロトン伝導膜を通過してアノード電極側に漏れる、いわゆるメタノールクロスオーバー現象による。それに対し、MEA−1〜5により作製した本発明の電池C−1〜5では、より高い電圧を維持できることがわかった。
【0095】
【発明の効果】
上記の通り、金属アルコキシド又はその等価体を置換基として含む化合物を前駆体とし、ゾル−ゲル反応により得られる本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料は、柔軟性を有し、室温でのイオン伝導度が高く、メタノールクロスオーバーを低減することができる。そのため、直接メタノール型燃料電池に用いた場合には、従来のプロトン伝導膜より高い出力を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料を用いた触媒電極接合膜を示す断面図である。
【図2】本発明の燃料電池の構造の一例を示す分解断面図である。
【符号の説明】
10・・・触媒電極接合膜(MEA)
11・・・プロトン伝導膜
12・・・カソード電極
12a・・・カソード極多孔質導電シート
12b・・・カソード極触媒層
13・・・アノード電極
13a・・・アノード極多孔質導電シート
13b・・・アノード極触媒層
14・・・パッキン
15・・・カソード極側開口部
16・・・アノード極側開口部
17・・・集電体
21,22・・・セパレータ
Claims (3)
- 下記一般式(1):
- 請求項1に記載の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料において、前記プロトン源がH3PO4、H3PO3、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、タングストリン酸及びタングステンペルオキソ錯体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料。
- 請求項1又は2に記載の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料を用いることを特徴とする燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002286860A JP2004127580A (ja) | 2002-09-30 | 2002-09-30 | 有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料及び燃料電池 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002286860A JP2004127580A (ja) | 2002-09-30 | 2002-09-30 | 有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料及び燃料電池 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004127580A true JP2004127580A (ja) | 2004-04-22 |
Family
ID=32279823
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2002286860A Pending JP2004127580A (ja) | 2002-09-30 | 2002-09-30 | 有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料及び燃料電池 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004127580A (ja) |
-
2002
- 2002-09-30 JP JP2002286860A patent/JP2004127580A/ja active Pending
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