JP2004127379A - 光情報記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

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田中 善喜
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高谷 佳弘
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Abstract

【課題】物理的なプリフォーマットが施されたトラックの偏心量を低減できる光ディスクを提供する。
【解決手段】光ディスク1は、記録層保持体3(透明基板11、ホログラム記録用の記録層9、透明基板13)上に、プリフォーマット基板5が貼り付けられている。プリフォーマット基板5は、ピット21により物理的なプリフォーマットが施されたトラックを有する。光ディスク1の軸差込部材7は、記録層保持体3の中心穴17、プリフォーマット基板5の中心穴19に挿入された状態で、プリフォーマット基板5に固定されている。軸差込部材7は、スピンドルが差し込まれるための差込穴29を有する。軸差込部材7と中心穴19との間に上記トラックの偏心を是正するための隙間35が形成されている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報がホログラフィにより記録される光情報記録媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ホログラフィによって情報をイメージ情報の形で光ディスクに高密度で記録する方式が知られている。この方式におけるイメージ情報の記録は、イメージ情報を担持する情報光と参照光とを光ディスクの記録層で重ね合わせ、情報光と参照光の干渉により生じる干渉縞パターンを記録層に書込むことにより実現される。再生照明光を干渉縞パターンが書込まれた記録層に照射すると、照射された光が干渉縞パターンによって回折されることによりイメージ情報が再生される。
【0003】
上記光ディスクは、記録層を保持している記録層保持体上にプリフォーマット基板を重ねた構造をしている。プリフォーマット基板は、物理的なプリフォーマット(セクターアドレスやトラックアドレスなどがピットの形で記録された)が施されたトラックを有する。光ディスクには、光ディスクの回転中心となる中心穴が設けられている。記録再生時における光ディスクの回転は、中心穴に光ディスク用ドライブ装置のスピンドル(軸)を差し込んで光ディスクをスピンドルに固定し、スピンドルを回転させることにより実現している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
さて、プリフォーマット基板の作製方法としては、次の二つの方法が一般的である。一つは、射出成型法である。この方法は、まず、厚さ0.3mm程度のスタンパが配置された金型を用意する。スタンパの表面には物理的なプリフォーマットが施されたトラックに対応する凹凸が形成されている。この金型を用いて射出成型すると、表面にスタンパの凹凸が転写された(つまり物理的なプリフォーマットが施されたトラックが形成された)基板が出来上がる。この基板のトラックの形成面にアルミニウムなどの反射層を蒸着することにより、プリフォーマット基板が完成する。
【0005】
もう一つの方法はいわゆる2P法である。この方法は、ガラス基板のような透明基板の上にUV(紫外線)硬化樹脂をプリフォーマットの凹凸の深さに相当する厚み分だけ塗布する。表面に物理的なプリフォーマットが施されたトラックに対応する凹凸が形成されスタンパをUV硬化樹脂に押し当てながら、反対側からUVを照射することにより物理的なプリフォーマットが施されたトラックを形成することができる。そして、トラックの形成面にアルミニウムなどの反射層を蒸着することにより、プリフォーマット基板が完成する。
【0006】
しかし、いずれの方法においても、プリフォーマット基板において、トラックの中心の位置と中心穴の中心の位置とのずれは不可避的に発生する。この中心穴は光ディスクの回転中心となるので、プリフォーマット基板のトラックに偏心(例えば10μm以上)が生じ、記録再生特性に悪影響を及ぼす。
【0007】
よって、この偏心を補正するために、光ディスク用ドライブ装置の光ピックアップに備えられるサーボの制御範囲を大きめに設定する必要がある。サーボの制御範囲を大きくすることは、技術的な限界があると共にサーボ機構が高額になる。また、偏心量が大きいと、プリフォーマット基板のトラックの探索に光ピックアップが要する時間の増加や光ディスクの記録再生特性の劣化などが生じる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、物理的なプリフォーマットが施されたトラックの偏心を是正することができる光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光情報記録媒体は、情報がホログラフィにより記録される光情報記録媒体であって、ホログラム記録用の記録層を透明基板で保持してなり、中心穴を有する記録層保持体と、記録層保持体の上に配置され、記録層保持体側の面に同心円状又は螺旋状のトラックを規定する物理的なプリフォーマットが施された、中心穴を有するプリフォーマット基板と、記録層保持体の中心穴とプリフォーマット基板の中心穴とに所定の隙間を介して共通に緩挿されると共に記録層保持体またはプリフォーマット基板に固定され、光情報記録媒体を駆動するための軸が差し込まれる差込穴を有する軸差込部材と、を備え、軸差込部材は、差込穴の軸心とトラックにより形成される同心円または螺旋の中心とがほぼまたは完全に一致するように、隙間を利用して記録層保持体またはプリフォーマット基板に対して位置決めされていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る光情報記録媒体によれば、差込穴の軸心とトラックにより形成される同心円または螺旋の中心とがほぼまたは完全に一致するように、隙間を利用して軸差込部材を、記録層保持体またはプリフォーマット基板に対して位置決めしている。したがって、軸差込部材に対するプリフォーマット基板のトラックの偏心を是正することができる。よって、再生や記録時において、光情報記録媒体を回転させた際におけるプリフォーマット基板のトラックの偏心を小さく(好ましくはなくす)ことができる。
【0011】
また、本発明に係る光情報記録媒体によれば、光情報記録媒体を駆動するための軸が差し込まれる差込穴を有する軸差込部材を、記録層保持体やプリフォーマット基板と別に設けているので、光情報記録媒体を上記軸に確実に固定することができる。
【0012】
本発明に係る光情報記録媒体において、プリフォーマット基板の中心穴を、記録層保持体の中心穴よりも小さくしてもよい。これによれば、プリフォーマット基板と固定された軸差込部材に、記録層保持体の中心穴を確実に挿入できるので、記録層保持体とプリフォーマット基板との貼り合わせをする際に、記録層保持体の中心穴の側面により、貼り合わせが妨害されることはない。
【0013】
本発明に係る光情報記録媒体において、軸差込部材は、プリフォーマット基板に固定されるフランジを含んでもよい。これによれば、軸差込部材とプリフォーマット基板の中心穴との間に上記隙間を形成しても、軸差込部材をプリフォーマット基板に固定することができる。
【0014】
本発明に係る光情報記録媒体において、軸差込部材は、磁性体の性質を有してもよい。これによれば、光情報記録媒体を駆動するための軸に軸差込部材を磁力により吸着させることが可能となり、上記軸への光情報記録媒体の取り付けの安定性を高めることがでる。
【0015】
本発明に係る光情報記録媒体の製造方法は、上記光情報記録媒体の製造方法であって、回転テーブルの回転軸と同軸のピンが立設された回転テーブルに、ピンが差込穴に挿入されるように軸差込部材を装着する工程と、回転テーブルに装着された軸差込部材が、プリフォーマット基板の中心穴に挿入されるように、プリフォーマット基板を回転テーブルに装着する工程と、回転テーブルの回転中心とプリフォーマット基板のトラックにより形成される同心円または螺旋の中心とを位置合わせする工程と、位置合わせされたプリフォーマット基板と軸差込部材とを固定する工程と、プリフォーマット基板に記録層保持体を固定する工程と、を備えてなることを特徴とする。
【0016】
本実施形態に係る光情報記録媒体の製造方法によれば、回転テーブルに装着された軸差込部材が、プリフォーマット基板の中心穴に挿入されるように、プリフォーマット基板を回転テーブルに装着した後、回転テーブルの回転中心とプリフォーマット基板のトラックにより形成される同心円または螺旋の中心とを位置合わせしている。よって、軸差込部材に対するプリフォーマット基板のトラックの偏心を是正することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態について説明する。まず、この実施形態に係る光ディスク(光情報記録媒体の一例)1の構造について、図1〜図3を用いて説明する。図1は光ディスク1の断面模式図である。図2は光ディスク1を分解した断面模式図である。図3は光ディスク1を光ディスク用ドライブ装置のスピンドルに固定した状態を示す断面模式図である。
【0018】
光ディスク1には、ホログラフィによりデジタル情報が記録される。光ディスク1は円盤状をしており、図2に示すように、記録層保持体3上にプリフォーマット基板5を重ねた構造に軸差込部材7が取り付けられている。
【0019】
記録層保持体3は、ホログラム記録用の記録層9を一対の透明基板11,13で挟んで保持した構造をしている。記録層保持体3は、光ディスク用ドライブ装置のスピンドル15(光情報記録媒体を駆動するための軸の一例)が差し込まれる箇所において、透明基板11、記録層9および透明基板13を貫通する中心穴17を有する。透明基板11,13の材料は、例えば、ガラス、水晶、ダイヤモンド、樹脂(ポリカーボネートなど)である。透明基板11,13は板状でもよいし、フィルム状や透明コート膜状でもよい。透明基板11,13の厚みは例えば5〜1200μmである。
【0020】
記録層9の材料は、情報光や参照光となるレーザ光が記録層9に所定時間照射されたとき、レーザ光の強度に応じて照射箇所の光学特性(屈折率、吸収率、透過度、蛍光発光性、反射率など)が変化するホログラム記録材料である。具体的には、例えば、デュポン(Dupont)社製のフォトポリマ(Photopolymers)HRF−600(製品名)である。記録層9の厚みは、例えば4〜1000μmである。
【0021】
プリフォーマット基板5は、ガラスや樹脂(ポリカーボネートなど)などの透明な材料で構成されており、厚みは例えば5〜1200μmである。プリフォーマット基板5には中心穴19が形成されている。中心穴19と中心穴17により光ディスク1の中心穴が構成される。中心穴19の大きさは中心穴17よりも小さく、例えば、中心穴19の径が3〜50mmの場合、中心穴17の径は5〜55mmである。なお、本実施形態では、中心穴17,19の形状が円形であるが、四角形など他の形状でもよい。
【0022】
プリフォーマット基板5の一方の面(記録層保持体側の面)には、サーボ情報、セクターやトラックのアドレス情報などを示すピット21が記録、つまり物理的なプリフォーマットが施されている。ピット21は光ディスクの製造時に予め形成されている。
【0023】
図4はプリフォーマット基板5の平面図である。プリフォーマット基板5には、その内周から外周にかけて連続する螺旋状のトラック23が形成されている。トラック23は、一周分を一つの単位とし、ピット21が形成されたピット領域とピット21が形成されていないミラー領域とが交互に並んで構成されている。記録層9のうちミラー領域部分に情報がホログラフィにより記録される。なお、螺旋状の替わりに同心円状のトラックが形成されたプリフォーマット基板5でもよい。
【0024】
再び、図1〜図3を参照すると、ピット21を覆うようにアルミニウム層25がプリフォーマット基板5の上に形成されている。アルミニウム層25はレーザ光を反射する層として機能する。プリフォーマット基板5のピット21の形成面は、両面テープなどにより透明基板13と接着されている。
【0025】
軸差込部材7は、中心穴17,19に共通に緩挿された状態でプリフォーマット基板5に固定されている。軸差込部材7の材料は、金属、特に鉄やニッケルのような磁性体が好ましいが、プラスチックなども用いることができる。軸差込部材7は円筒状をしており、一方の端部にはフランジ27が形成されている。フランジ27の径Dは中心穴19の径d2よりも大きく設定されている。軸差込部材7は、フランジ27が形成された端部と反対側の端部から中心穴19,17に挿入され、フランジ27においてプリフォーマット基板5に固定されている。なお、透明基板11において、フランジ27と記録層保持体3とを固定してもよい。
【0026】
軸差込部材7は上記のとおり円筒形状をしており、円筒で囲まれる空間が差込穴29となる。図3に示すように、差込穴29にスピンドル15の円柱部31が差し込まれることにより、光ディスク1がスピンドル15に固定される。なお、スピンドル15の円柱部31の一方端部には、フランジ33が形成されている。フランジ33は、光ディスクが載置されるターンテーブルとして機能する。
【0027】
本実施形態では、プリフォーマットが記録されたトラック23(図4)を有するプリフォーマット基板5と、光ディスク1の回転中心となる軸差込部材7とを別部材にしている。そして、軸差込部材7とプリフォーマット基板5の中心穴19との間に所定の隙間35ができるように、軸差込部材7の外径d1が中心穴19の径d2よりも十分に小さく設定されている。これにより、光ディスク1の半径方向におけるプリフォーマット基板5と軸差込部材7との相対位置を光ディスク1の作製時に調整することができる。これにより、光ディスク1の作製時、軸差込部材7に対するプリフォーマット基板5のトラック23の偏心を是正してから、軸差込部材7をプリフォーマット基板5に固定することができる。
【0028】
詳しくは、隙間35を利用して、図1に示す差込穴29の軸心C1(つまり光ディスク1の回転中心)の位置を、図1および図4に示す螺旋状のトラック23の中心C2の位置に、ほぼまたは完全に一致するように合わせ込んで、軸差込部材7をプリフォーマット基板5に固定できる。以上により、本実施形態によれば、光ディスク1を回転させた時、トラック23の偏心を小さくする(好ましくはなくす)ことができる。
【0029】
ところで、隙間35の大きさは、軸差込部材7の外径d1とプリフォーマット基板5の中心穴19の径d2により決まる。ここで、d1とd2との関係の一例を挙げる。
【0030】
d1≦d2−(2×r+a)
r:中心穴19の中心を基準とするトラック23の偏心量(半径方向のずれ)
a:中心穴19の径d2が許容される誤差
この関係を利用してd1,d2を決定することにより、隙間35の大きさをトラック23の偏心の是正のために必要な値にすることができる。なお、2×rとしたのは、rが中心穴19の中心と螺旋状のトラック23の中心との間のずれ量であり、光ディスク1の一回転のトラック23の振れ量に直して考えるとrを二倍する必要があるからである。
【0031】
本実施形態では、中心穴19の径d2よりも大きい径Dのフランジ27を軸差込部材7に設け、フランジ27において軸差込部材7をプリフォーマット基板5に固定している。よって、軸差込部材7と中心穴19との間に隙間35を形成しても、軸差込部材7をプリフォーマット基板5に固定することができる。なお、フランジ27が形成されていない筒状の軸差込部材でも可能であり、この場合は、隙間35を接着性の樹脂などで埋めることにより、軸差込部材7をプリフォーマット基板5に固定する。
【0032】
次に、ホログラフィの一つの態様であるボリュームホログラフィを利用して、光ディスク1に情報を記録する方法を図5により簡単に説明する。図5は光ディスク1の一部を拡大した図である。図5において、図1中の符号が示す要素と同一の要素については同一符号を付している。上記記録によれば、光ディスク1の記録層9に干渉縞パターンを三次元的に書込むことができ、記録密度を更に増加させることができる。
【0033】
情報光L1および参照光L2は、光ヘッドのレンズ37を通過したレーザ光である。透明基板11側から情報光L1と参照光L2とを同時に記録層9に照射して、記録層9に干渉縞パターンPを記録する。記録層9のうち干渉縞パターンが記録された箇所をスポットSという。図6はスポット群の一部の平面図である。光ディスク1を僅かに回転させて、先ほど形成されたスポットS(例えばスポットS1とする)と平面的に一部が重なる新たなスポットS(この場合はスポットS2となる)を記録層9に形成する。これを繰り返すことにより、記録層9に干渉縞パターンを多重記録する。
【0034】
次に、光ディスク1の製造方法の一例を詳細に説明する。まず、プリフォーマット基板5のトラック23(図4)の偏心を是正する。図7〜図9はこれを説明するための工程図であり、偏心の是正に利用する回転テーブル41の断面が模式的に表されている。
【0035】
図7に示すように、回転テーブル41は回転軸43を中心に回転可能であり、回転テーブル41の中心部に位置する領域45には、軸差込部材7のフランジ27の厚みと等しい深さの段差が形成されている。領域45の中心には回転軸43と同軸のピン46が立設されている。ピン46の中心が回転軸43に対して偏心が十分小さくなるように調整がされている。
【0036】
まず、軸差込部材7の差込穴29をフランジ27側からピン46に挿入し、領域45上に軸差込部材7を装着する。ピン46の径は差込穴29の径より数ミクロン小さいだけなので、差込穴29とピン46の隙間は極めて小さい。よって、回転軸43の中心に対する軸差込部材7の偏心量を数ミクロン程度に抑えることができる。
【0037】
次に、図8に示すように、アルミニウム層25を上にして、プリフォーマット基板5の中心穴19をピン46に差し込まれた状態の軸差込部材7に挿入して、回転テーブル41上にプリフォーマット基板5を装着する。
【0038】
フランジ27は領域45内の段差内にはまり込んでいるので、フォーマット基板5の下面が回転テーブル41の上面42と同一平面上に位置し、これによりプリフォーマット基板5の配置が不安定になるのを防止できる。軸差込部材7と中心穴19との間には隙間35が形成されている。プリフォーマット基板5のピット21の形成面において、ピット21により特定される螺旋状のトラック23の最外周と最内周との間が、図4に示すトラック23の形成領域となるトラック領域47である。
【0039】
次に、図9に示すように、トラック領域47の最外周付近の上方に、顕微鏡の対物レンズ49を配置して、トラック領域47の最外周付近に焦点を合わせる。この顕微鏡は例えばCCDカメラのような撮像素子と接続されており、この顕微鏡により見える像がモニター画面に表示される。
【0040】
図10はモニター画面に表示された像を示している。モニター画面には水平軸および垂直軸が表示されている。水平軸と垂直軸との交差点が原点となる。これにより、原点とトラック領域47の一番外側のトラックに形成されたピット21aとのずれが分かる。これは、回転テーブル41を回転させたとき、この原点の光ディスク1上での軌跡となる円に対する最外周のトラック23のずれ(偏心)である。まず、図10に示す状態で、ピット21aが原点からどの程度水平方向にずれているかを測定する。この測定値を例えば−Aとする。
【0041】
次に、回転テーブル41を180度回転させる。その時に映し出されるモニター画面が例えば図11である。この状態で、ピット21aが原点からどの程度水平方向にずれているかを測定する。この測定値を例えば+Bとする。−Aと+Bの平均値を算出して、その値だけ、図9に示すように、対物レンズ49の光軸51と回転テーブル41の回転中心53とを結ぶ線Lに沿って、回転テーブル41上でプリフォーマット基板5を移動させる。中心穴19と軸差込部材7との間には隙間35があるので、上記移動は可能である。この時に映し出されるモニター画面が例えば図12であり、ピット21aが原点に近づいている。これは、軸差込部材7の中心に対するトラックの偏心量が減少していることを示している。
【0042】
次に、回転テーブル41を90度回転させた状態およびそこから180度回転させた状態においても、上記と同様にする。これを複数回繰り返すことにより、ピット21aを原点に近づける(好ましくは一致させる)。言い換えれば、回転テーブル41の回転中心とプリフォーマット基板5のトラック23により形成される螺旋の中心とを位置合わせする。例えば、モニター画面上では、トラック領域47を500倍程度まで拡大することができる。本実施形態では400倍とし、原点とピット21aとのずれをモニター画面上で1mmになるまで調節する。このとき、軸差込部材7の中心に対するトラック23の偏心量は2.5μmとなる。
【0043】
図9のように、偏心是正後、隙間35に瞬間接着剤(例えば、東亞合成株式会社製のアロンアルファ)を滴下し、フランジ27とプリフォーマット基板5とを接着することにより、プリフォーマット基板5に軸差込部材7を固定する。瞬間接着剤以外でも、溶剤型接着剤、イソシアネート系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤などを利用することができる。また、接着剤をフランジ27の上に予め塗布しておいてもよい。
【0044】
接着終了後、プリフォーマット基板5と記録層保持体3との貼り合わせをする。これを図13〜図15で説明する。図13および図15はこれを説明するための工程図であり、上記貼り合わせに利用するジグ55の断面を模式的に表している。図14はジグ55の平面図である。
【0045】
図13および図14に示すように、ジグ55には4本のピン57が配置されている。ピン57はプリフォーマット基板5の位置決めピンである。このため、各ピン57に内接する円の径がプリフォーマット基板5の径よりも僅かに(例えば0.05mm)大きくなるようにされている。軸差込部材7が固定されたプリフォーマット基板5を、これら4本のピン57で位置決めして、ジグ55上に載置する。
【0046】
次に、図15に示すように、プリフォーマット基板5のアルミニウム層25の外周部および内周部上に、例えば、幅1mmで厚さ50μmのリング状の両面接着テープ59の一方の面を貼り付ける。外径が例えば120mm、中心穴17の径が例えば16mmの記録層保持体3を用意する。記録層保持体3の外径の大きさはプリフォーマット基板5の外径と同じである。
【0047】
記録層保持体3の作製方法の一例を簡単に説明すると以下の通りである。予め中心穴17に相当する中心穴が形成された透明基板11,13を用意する。透明基板11,13を記録層9の厚みに相当するギャップを設けて対向配置する。このギャップに、液状またはゲル状のホログラム記録材料を充填することにより、記録層9を形成することにより、記録層保持体3が完成する。
【0048】
プリフォーマット基板5の外周と記録層保持体3の外周を基準として、記録層保持体3をプリフォーマット基板5に重ね合わせて押圧することにより、両面接着テープ59の他方の面に記録層保持体3を貼り付ける。つまり、プリフォーマット基板5に記録層保持体3を固定する。以上により、光ディスク1が完成する。
【0049】
本実施形態の主な効果を説明する。図15を参照して、記録層9の材料は液状またはゲル状なので、記録層保持体3の作製のとき、記録層保持体3の中心穴17の側面から記録層9がはみでることにより、その部分において中心穴17の大きさが多少小さくなることがある。本実施形態によれば、プリフォーマット基板5の中心穴19が記録層保持体3の中心穴17よりも小さい。よって、中心穴17の大きさが多少小さくなっても、プリフォーマット基板5と固定された軸差込部材7に記録層保持体3の中心穴17を確実に挿入できる。したがって、記録層保持体3とプリフォーマット基板5との貼り合わせの際に、中心穴17の側面により、貼り合わせが妨害されることはない。
【0050】
また、本実施形態において、プリフォーマット基板5の径と記録層保持体3の径とは同じ大きさなので、記録層保持体3の外周をプリフォーマット基板5の外周に合わせるだけで、記録層保持体3を容易に位置決めすることができる。
【0051】
また、従来の光ディスクは、記録層を保持するための一対の透明基板やプリフォーマット基板に、光ディスク用ドライブ装置のスピンドルが差し込まれる穴を予め設けて、これらの基板を重ね合わせて作製するのが一般的である。重ね合わせ時に各基板の位置合わせ精度が悪いと、各基板の穴の中心がずれて光ディスクの中心穴にスピンドルを差し込むことができなくなる。これに対して、本実施形態に係る光ディスク1によれば、記録層保持体3やプリフォーマット基板5と別に設けられた軸差込部材7の差込穴29にスピンドル15(図3)を差し込むようにしている。差込穴29の径は、光ディスク1を作製する際における基板5,11,13の位置合わせの影響を受けないので、差込穴29にスピンドル15を確実に差し込むことができる。
【0052】
次に、本実施形態に係る光ディスクに情報を記録・再生する装置(以下、ドライブ装置と記載する。)61について説明する。図16はこのドライブ装置61の構成を示すブロック図である。ドライブ装置61は、記録および再生機能うち少なくとも一方の機能を有する。
【0053】
ドライブ装置61は、回転軸63にスピンドル15が固定されたモータ65を備える。本実施形態に係る光ディスク1の軸差込部材7の差込穴にスピンドル15を差し込むことにより、光ディスク1がスピンドル15に固定され、スピンドル15の回転により光ディスク1が回転する。
【0054】
図17はスピンドル15が軸差込部材7の差込穴29に差し込まれた状態を示す断面図である。フランジ33の上面には磁石67が取り付けられている。軸差込部材7の材料は、鉄やニッケルのような強磁性体なので、光ディスク1の軸差込部材7をスピンドル15の磁石67に吸着させることができる。よって、記録再生時において光ディスク1の回転の安定性を高めることができ、ドライブ装置61の記録や再生などの特性を向上させることができる。なお、フランジ33を強磁性材料にして軸差込部材7を磁石とした態様でもよいし、軸差込部材7を磁石としフランジ33に磁石を取り付けた態様もよい。
【0055】
ドライブ装置61のその他の構成について簡単に説明する。スピンドルサーボ回路69は、スピンドル15の回転数を適正な値に保つようにモータ65を制御する。光ヘッド71は、半導体レーザおよび各種光学機器(レンズ、ミラーなど)により構成される。記録時において、光ヘッド71は情報光と参照光を光ディスク1に照射する。再生時において、光ヘッド71は参照光と同様の光を光ディスク1に照射すると共にこれにより再生されたイメージ情報を検出する。これらの光を図16では光Lで示している。移動機構73は、スピンドル15を光ディスク1の軸差込部材7に差し込んだ状態で、光ヘッド71を光ディスク1の半径方向に移動させる。
【0056】
制御回路75は、フォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御、追跡サーボ制御、スライドサーボ制御などの各種制御をする。フォーカスサーボ制御は、光ディスク1に対する光ヘッド71のフォーカス調整をする制御である。トラッキングサーボ制御は、光ディスク1に対する光ヘッド71のトラッキング調整をする制御である。追跡サーボ制御は、情報光と参照光の照射位置が所定時間ずれないように光ヘッド71を追従させる制御である。これらの制御は、光ヘッド71のレンズを移動させることによりなされる。スライドサーボ制御は、移動機構73により光ヘッド71を光ディスク1の半径方向に移動させる制御である。
【0057】
なお、本実施形態に係る光ディスク(光情報記録媒体)の形状は円盤状であればよく、例えば、外形が三角形、四角形や六角形等であり、大きさが名刺程度のカード状容器の中に円盤状の記録エリアを有する光情報記録媒体についても本実施形態を適用することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る光情報記録媒体によれば、光情報記録媒体を回転させた時のプリフォーマット基板のトラックの偏心を小さく(好ましくはなくす)ことができる。
【0059】
本発明に係る光情報記録媒体の製造方法によれば、軸差込部材に対するプリフォーマット基板のトラックの偏心を是正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る光ディスクの断面模式図である。
【図2】図1の光ディスクを分解した断面模式図である。
【図3】図1の光ディスクをドライブ装置のスピンドルに固定した状態を示す断面模式図である。
【図4】図1の光ディスクのプリフォーマット基板の平面図である。
【図5】図1の光ディスクの一部を拡大した図である。
【図6】図1の光ディスクの記録層に形成されたスポット群の一部の平面図である。
【図7】図1の光ディスクを製造する方法の一例の第1工程図である。
【図8】図1の光ディスクを製造する方法の一例の第2工程図である。
【図9】図1の光ディスクを製造する方法の一例の第3工程図である。
【図10】図9のトラック領域を模式的に示すモニター画面の一例である。
【図11】図9のトラック領域を模式的に示すモニター画面の他の例である。
【図12】図9のトラック領域を模式的に示すモニター画面のさらに他の例である。
【図13】図1の光ディスクを製造する方法の一例の第4工程図である。
【図14】図13のジグの平面図である。
【図15】図1の光ディスクを製造する方法の一例の第5工程図である。
【図16】図1の光ディスクに情報を記録・再生する装置の構成を示すブロック図である。
【図17】図16のスピンドルが図1の光ディスクの軸差込部材の差込穴に差し込まれた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・光ディスク、3・・・記録層保持体、5・・・プリフォーマット基板、7・・・軸差込部材、9・・・記録層、11,13・・・透明基板、15・・・スピンドル、17・・・中心穴、19・・・中心穴、21・・・ピット、23・・・トラック、25・・・アルミニウム層、27・・・フランジ、29・・・差込穴、31・・・円柱部、33・・・フランジ、35・・・隙間、37・・・レンズ、41・・・回転テーブル、42・・・上面、43・・・回転軸、45・・・領域、46・・・ピン、47・・・トラック領域、49・・・対物レンズ、51・・・光軸、53・・・回転中心、55・・・ジグ、57・・・ピン、59・・・両面接着テープ、61・・・ドライブ装置、63・・・回転軸、65・・・モータ、67・・・磁石、69・・・スピンドルサーボ回路、71・・・光ヘッド、73・・・移動機構、75・・・制御回路

Claims (5)

  1. 情報がホログラフィにより記録される光情報記録媒体であって、
    ホログラム記録用の記録層を透明基板で保持してなり、中心穴を有する記録層保持体と、
    前記記録層保持体の上に配置され、前記記録層保持体側の面に同心円状又は螺旋状のトラックを規定する物理的なプリフォーマットが施された、中心穴を有するプリフォーマット基板と、
    前記記録層保持体の中心穴と前記プリフォーマット基板の中心穴とに所定の隙間を介して共通に緩挿されると共に前記記録層保持体または前記プリフォーマット基板に固定され、前記光情報記録媒体を駆動するための軸が差し込まれる差込穴を有する軸差込部材と、
    を備え、
    前記軸差込部材は、前記差込穴の軸心と前記トラックにより形成される同心円または螺旋の中心とがほぼまたは完全に一致するように、前記隙間を利用して前記記録層保持体または前記プリフォーマット基板に対して位置決めされている
    ことを特徴とする光情報記録媒体。
  2. 前記プリフォーマット基板の中心穴は、前記記録層保持体の中心穴よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
  3. 前記軸差込部材は、前記プリフォーマット基板に固定されるフランジを含むことを特徴とする請求項1または2記載の光情報記録媒体。
  4. 前記軸差込部材は、磁性体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光情報記録媒体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の光情報記録媒体の製造方法であって、
    回転テーブルの回転軸と同軸のピンが立設された前記回転テーブルに、前記ピンが前記差込穴に挿入されるように前記軸差込部材を装着する工程と、
    前記回転テーブルに装着された前記軸差込部材が、前記プリフォーマット基板の中心穴に挿入されるように、前記プリフォーマット基板を前記回転テーブルに装着する工程と、
    前記回転テーブルの回転中心と前記プリフォーマット基板のトラックにより形成される同心円または螺旋の中心とを位置合わせする工程と、
    位置合わせされた前記プリフォーマット基板と前記軸差込部材とを固定する工程と、
    前記プリフォーマット基板に前記記録層保持体を固定する工程と、
    を備えてなることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016201161A (ja) * 2015-04-14 2016-12-01 三菱化学株式会社 ホログラム記録媒体

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