JP2004125842A - 位相差フィルム、その製造方法および楕円偏光板 - Google Patents
位相差フィルム、その製造方法および楕円偏光板 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】良好な性能を有するとともに、容易且つ低コストで安定的に作製可能な位相差フィルムを提供する。
【解決手段】支持体上に、配向が固定された液晶性化合物から形成される層を少なくとも2層有する位相差フィルムであって、配向が固定された少なくとも一種の第一の液晶性化合物と少なくとも一種の重合性モノマーとから形成される第一の層と、その上に配向が固定された少なくとも一種の第二の液晶性化合物から形成される第二の層とを有し、第一の層と第二の層との間に実質的に配向膜がない位相差フィルムである。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に、配向が固定された液晶性化合物から形成される層を少なくとも2層有する位相差フィルムであって、配向が固定された少なくとも一種の第一の液晶性化合物と少なくとも一種の重合性モノマーとから形成される第一の層と、その上に配向が固定された少なくとも一種の第二の液晶性化合物から形成される第二の層とを有し、第一の層と第二の層との間に実質的に配向膜がない位相差フィルムである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも2層の光学異方性層を積層して得られる位相差フィルム、それを用いた楕円偏光板、およびその製造方法に関する。特に、2つの光学異方性層が液晶性化合物の配向を固定して得られた層であり、液晶性化合物からなる2つの光学異方性層を塗布する工程の間に配向膜層を形成するためだけの塗布工程を設けない(以下の文章で「配向膜の塗布を実質的に行わない」とはこのことを意味する)で製造する位相差フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光学異方性材料からなる位相差板は、LCD表示装置において必要な材料である。一種類の材料では所望とする光学性能が達成できない場合は複数の光学材料を使用する場合がある。例えば、反射型液晶表示装置においてλ/4板が使用されているが、かかる用途では、λ/4板には、赤(R)、緑(G)および青(B)のいずれの波長域においても波長の1/4の位相差を与えるような広帯域性が求められている。しかし、かかる光学性能を1種の材料で満足することは難しく、λ/2板とλ/4板の積層体が使用されている。これらの材料はおのおのが数十μm以上の厚みを有しておりそれを粘着剤等で貼り合せて使用している。
【0003】
これに対し、長尺状の支持体に液晶性化合物からなる光学異方性層を2層積層して広帯域λ/4板を作製する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、液晶化合物を固定化して得られる層を多層積層する技術についても提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術では、液晶化合物を固定化して得られる層の間に配向膜層を別途形成しており、液晶化合物を塗布するためには、必ずそのための配向膜を塗布する必要がある。つまり、液晶性化合物の配向を固定化して光学異方性層を1層形成するためには配向膜と液晶化合物を少なくとも2回塗布しなければならず、製造経費が高いものになってしまい、安価な製造技術が求められていた。さらに、塗布回数が増えれば増えるほど、塗布あるいは液晶化合物の配向の不具合によって製品故障が起きる確率が同じであっても最終的に得られる位相差板としては不具合の個所が多くなってしまい、目的の位相差板の得率が低下してしまう。そのため、製造時における得率を上げる意味からも塗布回数を減らすことが求められている。
【0004】
近年、ある種の添加剤を重合性液晶組成物に添加し、重合性液晶組成物を固定化する際に該添加剤が空気界面側に移行して該添加剤を多く含む表面層を形成させ、この表面層にラビングなどによって配向機能を付与し、その上に、更に液晶化合物からなる光学異方性層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献3および4参照)。しかしながら、これらの特許文献に記載の方法には、空気界面側の表面層にラビングを施して、更に重合性液晶組成物からなる光学異方性層を形成する技術に関しては何ら記載されていない。
また、重合性液晶組成物に表面を平滑にするために界面活性剤をレべリング剤として添加する技術についても提案されている(例えば、特許文献5および6参照)。前記特許文献には、レべリング剤の機能は液晶組成物の表面張力を低下させることにあり、表面張力を低下させることによって膜厚ムラに起因する光学的なムラを低減できることが出来ると記載されている。しかしながら、これらにおいても、更に重合性液晶組成物からなる光学異方性層を形成する技術に関しては何ら記載されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−4837号公報
【特許文献2】
米国特許第6,160,597号明細書
【特許文献3】
特開2000−105315号公報
【特許文献4】
特開2000−105315号公報
【特許文献5】
特開平11−148080号公報
【特許文献6】
特開平8−231958号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上層の液晶性化合物を配向させるための配向膜の塗布を実質的に行わずに、液晶性化合物の配向を固定化した層を複数有する位相差フィルムの製造方法を提供することを課題とする。より具体的には、本発明は、下層の液晶性化合物を塗布する際に用いる重合性液晶組成物に、配向膜として機能しうる重合性モノマーを添加することによって、新たに配向膜を塗布しなくても液晶層を積層可能にする方法を提供することを課題とし、さらに、かかる方法を利用して作製された、液晶層が複数積層された位相差フィルム、および楕円偏光板を提供することを課題とする。
また、本発明は、良好な性能を有するとともに、容易且つ低コストで安定的に作製可能な位相差フィルム、楕円偏光板、および該位相差フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は以下の方法によって解決された。
(1) 支持体上に、配向が固定された液晶性化合物から形成される層を少なくとも2層有する位相差フィルムであって、配向が固定された少なくとも一種の第一の液晶性化合物と少なくとも一種の重合性モノマーとから形成される第一の層と、その上に配向が固定された少なくとも一種の第二の液晶性化合物から形成される第二の層とを有し、第一の層と第二の層との間に実質的に配向膜がない位相差フィルム。
(2) さらに支持体上に配向膜を含む(1)に記載の位相差フィルム。
(3) さらに第一の層の上面がラビング処理された表面を有する(1)または(2)に記載の位相差フィルム。
(4) 第一の層の遅相軸と、第二の層の遅相軸とが同じでない(1)〜(3)のいずれかに記載の位相差フィルム。
(5) 第一の層の遅相軸と第二の層の遅相軸のなす角度が実質的に60度であり、一方の層の波長550nmにおける位相差が実質的にπであり、もう一方の層の波長550nmにおける位相差が実質的にπ/2である(1)〜(4)のいずれかに記載の位相差フィルム。
【0008】
(6) 重合性モノマーが、構造中に芳香族環を三環以上有する化合物である(1)〜(5)のいずれかに記載の位相差フィルム。
(7) 重合性モノマーが下記一般式(V)で表される化合物である(1)〜(6)のいずれかに記載の位相差フィルム。
一般式(V)
(Hb−L51−)nB51
(式中、Hbは、炭素原子数が6〜40の脂肪族基または炭素原子数が6〜40の脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を表し、L51は、単結合または二価の連結基を表し、B51は、少なくとも三つの環状構造を含む排除体積効果を有するn価の基を表し、nは2〜12のいずれかの整数を表す。但し、前記一般式(V)で表される化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性基を有する。)
【0009】
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の位相差フィルムと偏光膜とを有する楕円偏光板。
(9) 前記位相差フィルムのいずれかの液晶層が波長550nmにおける位相差がπであり、他の液晶層のいずれかが波長550nmにおける位相差がπ/2であり、波長550nmにおける位相差がπである液晶層側に、偏光の透過軸と位相差がπである液晶層の遅相軸のなす角が15°または75°になるように偏光膜を貼り合わせた(8)に記載の楕円偏光板。
(10) 支持体上に、配向が固定された液晶性化合物から形成される層を少なくとも2層有する位相差フィルムの製造方法であって、
少なくとも一種の第一の液晶性化合物と少なくとも一種の重合性モノマーとを含む塗布液を支持体上に塗布した後、第一の液晶性化合物の配向を固定化して第一の層を形成する工程と、
第一の層の上に少なくとも一種の第二の液晶性化合物を含む塗布液を塗布した後、第二の液晶性化合物の配向を固定化して第二の層を形成する工程と、を含む位相差フィルムの製造方法。
(11) 第一の層を形成する工程の前に、さらに支持体の上面に配向膜を形成する工程を含む(10)に記載の製造方法。
(12) 第二の層を形成する工程の前に、さらに第一の層の上面をラビング処理する工程を含む(10)または(11)に記載の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の位相差フィルムは、支持体上に、配向が固定された液晶性化合物から形成される層(以下「液晶層」という場合があるが、位相差フィルムにおいて液晶性を示さなくてもよい)を少なくとも2層有する。液晶層は、配向が固定された少なくとも一種の第一の液晶性化合物と上方の液晶層の配向膜として機能する少なくとも一種の重合性モノマー(重合性配向膜モノマー)とから形成される第一の層と、その上に、配向が固定された少なくとも一種の第二の液晶性化合物から形成される第二の層とからなり、第一の層と第二の層との間、すなわち各液晶層同士の間には実質的に配向膜がないことを特徴とする。さらに、支持体の上に配向膜を含む位相差フィルムであることが好ましい。また、第一の層の上面は、ラビング処理された表面であることが好ましい。
【0011】
本発明の位相差フィルムにおいて、液晶層が3層以上のとき、各液晶層同士の間には実質的に配向膜がない。さらに、一方の液晶層の上面に、他方の液晶層を有する場合(液晶層の積層)、下方に位置する液晶層は、少なくとも一種の液晶性化合物と、上方の液晶層の配向膜として機能する少なくとも一種の重合性モノマーとから形成される層であることが本発明では必須である。下方に位置する液晶層の上面は、ラビング処理された表面であることが好ましい。
【0012】
本発明の第一および第二の液晶性化合物は、各々一種であっても、複数種であってもよいが、各々一種であるのが好ましい。また第一および第二の液晶性化合物は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましく、棒状液晶性分子同士またはディスコティック液晶性分子同士から構成されている層であるのが好ましい。
【0013】
本発明の位相差フィルムおよびその製造方法は、広帯域のλ/4板およびその製造方法に適用することが好ましい。液晶性化合物の配向が固定された層を少なくとも2層有する位相差板としては、特開2001−4837号公報、同2001−21720号公報、同2000−206331号公報に広帯域λ/4板の技術が開示されている。以下に広帯域のλ/4板における発明の実施の形態を記載するが、本発明はλ/4板に限定されるものではない。
【0014】
[広帯域λ/4板の光学的性質]
広域帯λ/4とは、具体的には、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したレターデーション値/波長の値が、いずれも0.2〜0.3の範囲内であることを意味する。レターデーション値/波長の値は、0.21〜0.29の範囲内であることが好ましく、0.22〜0.28の範囲内であることがより好ましい。偏光膜、位相差πの光学異方性層および位相差π/2の光学異方性層を用いると、広い波長領域で円偏光を近似的に達成することができる。特開平10−68816号公報には、円偏光の達成について、ポアンカレ球による説明が記載されている。
【0015】
本発明の位相差フィルムは、配向状態で固定された液晶性化合物を含有する層を少なくとも2層含む。本発明の位相差フィルムを広帯域λ/4板に適用した態様では、2層のうち一方の層を、特定の波長において実質的にπの位相差を達成する光学異方性層とし、他方の層を、特定の波長において実質的にπ/2の位相差を達成する光学異方性層とするのが好ましい。但し、可視領域のほぼ中間の波長である550nmにおいて、それぞれの光学異方性層が位相差πおよびπ/2を達成していることが好ましい。特定波長(λ)において位相差πを達成するためには、特定波長(λ)において測定したレターデーション値をλ/2に調整すればよい。特定波長(λ)において位相差π/2を達成するためには、特定波長(λ)において測定したレターデーション値をλ/4に調整すればよい。
【0016】
特定波長(λ)を550nmとすると、位相差πの光学異方性層の波長550nmで測定したレターデーション値は、200〜290nmであることが好ましく、210〜280nmであることがより好ましい。特定波長(λ)を550nmとすると、位相差π/2の光学異方性層の波長550nmで測定したレターデーション値は、100〜145nmであることが好ましく、110〜140nmであることがより好ましい。
【0017】
レターデーション値は、光学異方性層の法線方向から入射した光に対する面内のレターデーション値を意味する。具体的には、下記式により定義される値である。
レターデーション値(Re)=(nx−ny)×d
式中、nxおよびnyは光学異方性層の面内の主屈折率であり、そしてdは光学異方性層の厚み(nm)である。
【0018】
広帯域λ/4板では、位相差がπである光学異方性層と位相差がπ/2である光学異方性層の交差角度が重要である。双方の遅相軸の交差角度は、60°±10であることが好ましく、60°±5であることがより好ましい。また、広帯域λ/4板と偏光板または偏光膜から円偏光板を作製する際は、偏光板(または偏光膜)、位相差がπである光学異方性層、位相差がπ/2である光学異方性層の順に積層することが好ましく、該偏光板(または偏光膜)の偏光透過軸と位相差がπである光学異方性層の遅相軸が15°±5であることが好ましく、15°±3であることがより好ましい。一般に入手可能な長尺状の偏光板は、長尺の長手方向に偏光の吸収軸があり、それに直交する方向に偏光透過軸がある。従って、円偏光板を偏光板と広帯域λ/4板から作製する場合には、位相差がπである光学異方性層を支持体の長手方向に対し実質的に75°にすることが好ましい。特開2002−86554号公報に偏光の吸収軸が長手方向に対し実質的に45°である偏光板の技術が開示されている。かかる偏光板を用いる場合には、位相差がπである光学異方性層の遅相軸を、偏光の吸収軸に対し15°または75°にすることが好ましい。
【0019】
[液晶性分子を含む光学異方性層]
液晶性分子としては、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子が好ましい。液晶性分子は、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性分子が固定されていることが最も好ましい。
【0020】
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性分子だけではなく、高分子液晶性分子も用いることができる。棒状液晶性分子を重合によって配向を固定することがより好ましく、重合性棒状液晶性分子としては、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特願2001−64627号などに記載の化合物を用いることができる。
【0021】
液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物を用いるのがより好ましい。
一般式(I)
Q1−L1−Cy1−L2−(Cy2−L3)n−Cy3−L4−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に重合性基であり、L1,およびL4はそれぞれ独立に二価の連結基であり、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基であり、Cy1、Cy2およびCy3は二価の環状基であり、nは0、1または2である。
【0022】
以下にさらに重合性棒状液晶性化合物について説明する。
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に重合性基である。重合性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0023】
【化1】
【0024】
L1およびL4はそれぞれ独立に二価の連結基である。L1およびL4はそれぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、二価の鎖状基、二価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。
組み合わせからなる二価の連結基の例を以下に示す。ここで、左側がQ1またはQ2に、右側がCy1またはCy3に結合する。
【0025】
L−1:−CO−O−二価の鎖状基−O−
L−2:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−
L−3:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−
L−4:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−
L−5:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−CO−O−
L−6:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−O−CO−
L−7:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−二価の鎖状基−
L−8:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−二価の鎖状基−CO−O−
L−9:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−二価の鎖状基−O−CO−
L−10:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−
L−11:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−CO−O−
L−12:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−O−CO−
L−13:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基−
L−14:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基−CO−O−
L−15:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基−O−CO−
L−16:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−
L−17:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−CO−O−
L−18:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−O−CO−
L−19:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基−
L−20:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基−CO−O−
L−21:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基−O−CO−
【0026】
二価の鎖状基は、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基,置換アルキニレン基を意味する。アルキレン基,置換アルキレン基,アルケニレン基,置換アルケニレン基が好ましく、アルキレン基およびアルケニレン基がさらに好ましい。
アルキレン基は,分岐を有していてもよい。アルキレン基の炭素数は1〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがもっとも好ましい。
置換アルキレン基のアルキレン部分は、上記アルキレン基と同様である。置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。
アルケニレン基は、分岐を有していてもよい。アルケニレン基の炭素数は2〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがもっとも好ましい。
置換アルキレン基のアルキレン部分は、上記アルキレン基と同様である。置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。
アルキニレン基は、分岐を有していてもよい。アルキニレン基の炭素数は2〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがもっとも好ましい。
置換アルキニレン基のアルキニレン部分は、上記アルキニレン基と同様である。置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。
二価の鎖状基の具体例としては、エチレン、トリメチレン、プロピレン、ブタメチレン、1−メチル−ブタメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、2−ブテニレン、2−ブチニレンなどが上げられる。
【0027】
二価の環状基の定義および例は、後述するCy1、Cy2およびCy3の定義および例と同様である。
R2は、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることがもっとも好ましい。
【0028】
L2またはL3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基である。L2およびL3はそれぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、二価の鎖状基、二価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基または単結合であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。二価の鎖状基、および二価の環状基についてはL1およびL4の定義と同義である。
【0029】
式(I)において、nは0、1または2である。nが2の場合、二つのL3は同じであっても異なっていてもよく、二つのCy2も同じであっても異なっていてもよい。nは1または2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0030】
式(I)において、Cy1、Cy2およびCy3は、それぞれ独立に、二価の環状基である。
環状基に含まれる環は、5員環、6員環、または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることがもっとも好ましい。
環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。
ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレンが好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイルおよびナフタレン−2,6−ジイルが好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレンであることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイルが好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイルが好ましい。
環状基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数が1〜5のアルキル基、炭素原子数が1〜5のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜5のアルコキシ基、炭素原子数が1〜5のアルキルチオ基、炭素原子数が2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜6のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数が2〜6のアシルアミノ基が含まれる。
【0031】
以下に、式(I)で表される重合性液晶性化合物の例を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
【化4】
【0035】
【化5】
【0036】
本発明において、好ましいディスコティック液晶性分子について、さらに説明する。ディスコティック液晶性分子は、ポリマーフィルム面に対して実質的に垂直(50〜90度の範囲の平均傾斜角)に配向させることが好ましい。ディスコティック液晶性分子は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am.Chem. Soc.,vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性分子は、下記式(II)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0037】
一般式(II)
D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。式(II)中、円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LP(またはPL)は、二価の連結基(L)と重合性基(P)との組み合わせを意味する。
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
式(II)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ、アルコキシ基、アシルオキシ基)を有していてもよい。
【0046】
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(P)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基を意味し、ARはアリーレン基を意味する。
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
【0047】
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L21:−S−AL−
L22:−S−AL−O−
L23:−S−AL−O−CO−
L24:−S−AL−S−AL−
L25:−S−AR−AL−
【0048】
式(II)の重合性基(P)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(P)の例を以下に示す。
【0049】
【化13】
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
重合性基(P)は、不飽和重合性基(P1、P2、P3、P7、P8、P15、P16、P17)またはエポキシ基(P6、P18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(P1、P7、P8、P15、P16、P17)であることが最も好ましい。式(II)において、nは4〜12の整数である。具体的な数字は、ディスコティックコア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとPの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。二種類以上のディスコティック液晶性分子(例えば、二価の連結基に不斉炭素原子を有する分子と有していない分子)を併用してもよい。
【0056】
本発明の位相差フィルムは、透明支持体と、該透明支持体の上方に、配向状態に固定された液晶性化合物を含有する層を少なくとも2層有し、2層の間に実質的に配向膜がないことを特徴とする。液晶性化合物を含有する2層は、透明支持体を基準に、より透明支持体に近い下方に位置する層(以下「下層」という)と、上方に位置する層(以下、「上層」という)とに区別できる。本発明の位相差フィルムは、下層と上層との間に実質的に配向膜がなく、即ち、上層を形成するための配向膜を別途形成することなしに上層を形成したことを特徴とする。下層を形成するために配向膜を利用していてもよく、即ち、透明支持体と下層との間には配向膜を有していてもよい。
【0057】
下層は、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子および下記の重合性開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、透明支持体上に塗布することにより形成するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0058】
配向させた液晶性分子は、配向状態を維持して固定する。固定化は、液晶性分子に導入した重合性基(P)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0059】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
【0060】
[配向膜]
支持体と第一の層との間には、液晶性化合物を配向させるために配向膜を用いることが好ましい。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログループを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコ酸、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリル酸メチルなど)の累積のような手段で設けることが出来る。さらに電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により配向機能が生じる配向膜も知られている。ポリマーのラビング処理により形成する配向膜がとくに好ましい。ラビング処理はポリマー層の表面を紙や布で一定方向に数回こすることにより実施する。
配向膜に使用するポリマーの種類は,液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定する。
液晶性化合物を水平に配向させるためには配向膜の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。いずれの配向膜においても、液晶性化合物と透明支持体の密着性を改善する目的で、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向膜を用いることがより好ましく、かかる配向膜としては特開平9−152509号に記載されている。
配向膜の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。
なお、配向膜を用いて液晶性化合物を配向させてから、その配向状態のまま液晶性化合物を固定して光学異方性層を形成し、光学異方性層のみをポリマーフィルム等の透明支持体上に転写してもよい。配向状態の固定された液晶性化合物は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。
【0061】
棒状液晶性化合物の場合、棒状液層性分子の光軸を透明支持体の長軸方向に対して45°以上の角度で配向させる場合はラビング方向に対して直交方向に棒状液晶性分子の光軸が並ぶような配向膜(以下、直交配向膜という)を用いることが好ましい。45°より小さい角度で配向させる場合は液晶セルなどの配向に用いられる配向膜が好ましい。
【0062】
[直交配向膜]
直交配向膜について詳細に述べる。
直交配向膜に関しては、特願2000−246279号、同2000−174829号、同2001―64626号に記載されている。より具体的には下記一般式(PAIII)または(PAIV)で表される繰り返し単位と式(PAV)で表される繰り返し単位とを含む直交配向膜である。
【0063】
【化19】
【0064】
式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1から6のアルキル基であり、Mはプロトン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンであり、Cyは脂肪族環基、芳香族基、または複素環基であり、mは10から95モル%であり、nは90から5モル%である。
【0065】
以下、式(PAIII)および(PAV)について詳細に述べる。
前記式(PAIII)において、R1は水素原子(アクリル酸コポリマー)またはメチル基(メタクリル酸コポリマー)である。
前記式(PAIII)において、Mはプロトン、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K)イオン、またはアンモニウムイオンであり、アンモニウムイオンは、有機基(たとえば、メチル基、エチル基)により置換されていてもよい。
【0066】
前記式(PAV)において、R2は、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1〜6のアルキル基である。R2は、水素原子または炭素原子数が1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチルまたはエチルであることがさらに好ましく、水素原子またはメチルであることが最も好ましい。
【0067】
前記式(PAV)において、Cyは、脂肪族環基、芳香族基または複素環基である。
脂肪族環基の脂肪族環は、5員〜7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン環が含まれる。脂肪族環に、他の脂肪族環、芳香族環または複素環が縮合していてもよい。
芳香族基の芳香族環の例には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環およびナフタセン環が含まれる。芳香族環に、脂肪族環または複素環が縮合していてもよい。
複素環基の複素環は、5員〜7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。複素環は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和であり、好ましくは最多二重結合を有する。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環およびピラジン環が含まれる。複素環に、他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。
【0068】
脂肪族環基、芳香族基および複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、アルキル基(例、メチル、エチル、t−ブチル)、置換アルキル基(例、クロロメチル、ヒドロキシメチル、塩化トリメチルアンモニオ)、アルコキシ基(例、メトキシ)、ハロゲン原子(F、Cl、Br)、カルボキシル、アシル基(例、ホルミル)、アミノ、スルホ、アリール基(例、フェニル)、アリールオキシ基(例、フェノキシ)およびオキソが含まれる。
【0069】
前記式(PAV)において、nは、5〜90モル%である。
【0070】
以下に式(PAV)で表される繰り返し単位の例を示す。
【0071】
【化20】
【0072】
【化21】
【0073】
【化22】
【0074】
【化23】
【0075】
【化24】
【0076】
以下に、好ましいアクリル酸コポリマーまたはメタクリル酸コポリマーの例を示す。AAはアクリル酸から誘導される繰り返し単位であり、MAはメタクリル酸から誘導される繰り返し単位である。繰り返し単位の割合は、モル%である。
【0077】
PA101:−(AA)70−(PAV−1)30−
PA102:−(AA)60−(PAV−1)40−
PA103:−(AA)50−(PAV−1)50−
PA104:−(AA)40−(PAV−1)60−
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PA106:−(AA)60−(PAV−3)40−
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PA109:−(AA)40−(PAV−6)40−
PA110:−(AA)50−(PAV−7)50−
PA111:−(AA)70−(PAV−8)30−
【0078】
PA112:−(AA)60−(PAV−9)40−
PA113:−(AA)60−(PAV−10)40−
PA114:−(AA)60−(PAV−11)40−
PA115:−(AA)50−(PAV−12)50−
PA116:−(AA)50−(PAV−13)50−
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PA118:−(AA)50−(PAV−15)50−
PA119:−(AA)60−(PAV−16)40−
PA120:−(AA)60−(PAV−17)40−
PA121:−(AA)60−(PAV−18)40−
PA122:−(AA)60−(PAV−19)40−
【0079】
PA123:−(AA)75−(PAV−20)25−
PA124:−(AA)60−(PAV−20)40−
PA125:−(AA)70−(PAV−21)30−
PA126:−(AA)80−(PAV−22)20−
PA127:−(AA)70−(PAV−22)30−
PA128:−(AA)60−(PAV−22)40−
PA129:−(AA)70−(PAV−23)30−
PA130:−(AA)70−(PAV−24)30−
PA131:−(AA)80−(PAV−25)20−
PA132:−(AA)70−(PAV−25)30−
PA133:−(AA)60−(PAV−25)40−
【0080】
PA134:−(AA)60−(PAV−26)40−
PA135:−(AA)70−(PAV−27)30−
PA136:−(AA)80−(PAV−28)20−
PA137:−(AA)70−(PAV−29)30−
PA138:−(AA)60−(PAV−30)40−
PA139:−(AA)70−(PAV−31)30−
PA140:−(AA)70−(PAV−32)30−
PA141:−(AA)60−(PAV−33)40−
PA142:−(AA)70−(PAV−34)30−
PA143:−(AA)70−(PAV−35)30−
【0081】
PA201:−(MA)70−(PAV−1)30−
PA202:−(MA)60−(PAV−1)40−
PA203:−(MA)50−(PAV−1)50−
PA204:−(MA)40−(PAV−1)60−
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PA207:−(MA)60−(PAV−4)40−
PA208:−(MA)60−(PAV−5)40−
PA209:−(MA)40−(PAV−6)40−
PA210:−(MA)50−(PAV−7)50−
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【0082】
PA212:−(MA)60−(PAV−9)40−
PA213:−(MA)60−(PAV−10)40−
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PA215:−(MA)50−(PAV−12)50−
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【0083】
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【0084】
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PA238:−(MA)60−(PAV−30)40−
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PA242:−(MA)70−(PAV−34)30−
PA243:−(MA)70−(PAV−35)30−
【0085】
前記式(PAIV)で表される繰り返し単位を含む直交配向膜は、いわゆる変性ポリビニルアルコールであり、変性ポリビニルアルコールのポリビニルアルコール部分は、ケン化度が100%である必要はない。言い換えると、変性ポリビニルアルコールは、下記式(PAVI)で表される酢酸ビニルに対応する繰り返し単位を含むことができる。
【0086】
【化25】
【0087】
前記式(PAVI)において、kは、0.01〜20モル%である。
以下に、好ましい変性ポリビニルアルコールの例を示す。(PAIV)は、前記式(PAIV)で表されるビニルアルコールに対応する繰り返し単位であり、(PAVI)は、前記式(PAVI)で表される酢酸ビニルに対応する繰り返し単位である。繰り返し単位の割合は、モル%である。
【0088】
VA101:−(PAIV)58−(PAV−1)30−(PAVI)12−
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【0089】
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VA135:−(PAIV)58−(PAV−27)30−(PAVI)12−
VA136:−(PAIV)68−(PAV−28)20−(PAVI)12−
VA137:−(PAIV)58−(PAV−29)30−(PAVI)12−
VA138:−(PAIV)48−(PAV−30)40−(PAVI)12−
VA139:−(PAIV)58−(PAV−31)30−(PAVI)12−
VA140:−(PAIV)58−(PAV−32)30−(PAVI)12−
VA141:−(PAIV)48−(PAV−33)40−(PAVI)12−
VA142:−(PAIV)58−(PAV−34)30−(PAVI)12−
VA143:−(PAIV)58−(PAV−35)30−(PAVI)12−
【0092】
[垂直配向膜]
ディスコティック液晶性分子を垂直に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させることが重要である。具体的には、ポリマーの官能基により配向膜の表面エネルギーを低下させ、これによりディスコティック液晶性分子を立てた状態にする。配向膜の表面エネルギーを低下させる官能基としては、炭素原子数が10以上の炭化水素基が有効である。炭化水素基を配向膜の表面に存在させるために、ポリマーの主鎖よりも側鎖に炭化水素基を導入することが好ましい。炭化水素基は、脂肪族基、芳香族基またはそれらの組み合わせである。脂肪族基は、環状、分岐状あるいは直鎖状のいずれでもよい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基であってもよい)またはアルケニル基(シクロアルケニル基であってもよい)であることが好ましい。炭化水素基は、ハロゲン原子のような強い親水性を示さない置換基を有していてもよい。炭化水素基の炭素原子数は、10〜100であることが好ましく、10〜60であることがさらに好ましく、10〜40であることが最も好ましい。ポリマーの主鎖は、ポリイミド構造またはポリビニルアルコール構造を有することが好ましい。
【0093】
ポリイミドは、一般にテトラカルボン酸とジアミンとの縮合反応により合成する。二種類以上のテトラカルボン酸あるいは二種類以上のジアミンを用いて、コポリマーに相当するポリイミドを合成してもよい。炭化水素基は、テトラカルボン酸起源の繰り返し単位に存在していても、ジアミン起源の繰り返し単位に存在していても、両方の繰り返し単位に存在していてもよい。ポリイミドに炭化水素基を導入する場合、ポリイミドの主鎖または側鎖にステロイド構造を形成することが特に好ましい。側鎖に存在するステロイド構造は、炭素原子数が10以上の炭化水素基に相当し、ディスコティック液晶性分子を垂直に配向させる機能を有する。本明細書においてステロイド構造とは、シクロペンタノヒドロフェナントレン環構造またはその環の結合の一部が脂肪族環の範囲(芳香族環を形成しない範囲)で二重結合となっている環構造を意味する。
【0094】
炭素原子数が10以上の炭化水素基を有する変性ポリビニルアルコールも垂直配向膜に好ましく用いることができる。炭化水素基は、脂肪族基、芳香族基またはそれらの組み合わせである。脂肪族基は、環状、分岐状あるいは直鎖状のいずれでもよい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基であってもよい)またはアルケニル基(シクロアルケニル基であってもよい)であることが好ましい。炭化水素基は、ハロゲン原子のような強い親水性を示さない置換基を有していてもよい。炭化水素基の炭素原子数は、10〜100であることが好ましく、10〜60であることがさらに好ましく、10〜40であることが最も好ましい。炭化水素基を有する変性ポリビニルアルコールは、炭素原子数が10以上の炭化水素基を有する繰り返し単位を2〜80モル%の範囲で含むことが好ましく、3〜70モル%含むことがさらに好ましい。
【0095】
好ましい炭素原子数が10以上の炭化水素基を有する変性ポリビニルアルコールを、下記式(PAVII)で表す。
(PAVII)
−(VAl)x−(HyC)y−(VAc)z−
式中、VAlはビニルアルコール繰り返し単位であり、HyCは炭素原子数が10以上の炭化水素基を有する繰り返し単位であり、VAcは酢酸ビニル繰り返し単位であり、xは20〜95モル%(好ましくは25〜90モル%)であり、yは2〜80モル%(好ましくは3〜70モル%)であり、zは0〜30モル%(好ましくは2〜20モル%)である。
好ましい炭素原子数が10以上の炭化水素基を有する繰り返し単位(HyC)を、下記式(HyC−I)および(HyC−II)で表す。
【0096】
【化26】
【0097】
式中、L1は、−O−、−CO−、−SO2−、−NH−、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基であり、L2は単結合、または−O−、−CO−、−SO2−、−NH−、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基であり、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素原子数が10以上の炭化水素基である。上記の組み合わせにより形成される二価の連結基の例を、以下に示す。
【0098】
L1:−O−CO−
L2:−O−CO−アルキレン基−O−
L3:−O−CO−アルキレン基−CO−NH−
L4:−O−CO−アルキレン基−NH−SO2−アリーレン基−O−
L5:−アリーレン基−NH−CO−
L6:−アリーレン基−CO−O−
L7:−アリーレン基−CO−NH−
L8:−アリーレン基−O−
L9:−O−CO−NH−アリーレン基−NH−CO−
【0099】
垂直配向膜に用いるポリマーの重合度は、200〜5000であることが好ましく、300〜3000であることが好ましい。ポリマーの分子量は、9,000〜200,000であることが好ましく、13,000〜130,000であることがさらに好ましい。二種類以上のポリマーを併用してもよい。垂直配向膜の形成において、ラビング処理を実施することが好ましい。ラビング処理は、上記のポリマーを含む膜の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。なお、垂直配向膜を用いてディスコティック液晶性分子を垂直に配向させてから、その配向状態のままディスコティック液晶性分子を固定して光学異方性層を形成し、光学異方性層のみをポリマーフィルム等の透明支持体)上に転写してもよい。垂直配向状態で固定されたディスコティック液晶性分子は、垂直配向膜がなくても配向状態を維持することができる。
【0100】
いずれの配向膜においても、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。
【0101】
[透明支持体]
透明支持体としては、波長分散が小さいポリマーフィルムを用いることが好ましい。透明支持体は、光学異方性が小さいことも好ましい。支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。波長分散が小さいとは、具体的には、Re400/Re700の比が1.2未満であることが好ましい。光学異方性が小さいとは、具体的には、面内レターデーション(Re)が20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。長尺状の透明支持体は、ロール状または長方形のシート状の形状を有する。ロール状の透明支持体を用いて、光学異方性層を積層してから、必要な大きさに切断することが好ましい。ポリマーの例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートが含まれる。セルロースエステルが好ましく、アセチルセルロースがさらに好ましく、トリアセチルセルロースが最も好ましい。ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明支持体の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、垂直配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
【0102】
[上層の液晶性化合物の配向制御用重合性モノマー]
本明細書において、「重合性モノマー」とは特記がない限り、上層の液晶性化合物の配向制御用の重合性モノマーを意味する。
上層は、下層の形成用塗布液と同様の材料を用いて上層の形成用塗布液を調製し、該塗布液を下層の表面に塗布することにより作製することができる。下層の表面に実質的に配向膜を形成せずに、上層を形成するために、本発明では、下層中に上層の配向膜として機能する重合性モノマーを添加する。液晶性化合物と重合性モノマーとの混合物を塗布すると、重合性モノマーは下層の上部(空気界面側)に速やかに移動し、移動した重合性モノマーは、その後の重合により、下層の表面に上層の配向膜として機能し得る領域を形成する。本発明では、液晶性化合物と重合性モノマーとの混合物を用いることにより、混合物の相分離を速やかに生じさせ、該混合物を塗布、乾燥および重合による固定化後、引き続きラビングするという製造プロセスを効率よく行うことを可能としている。また、液晶性化合物は配向膜側はほぼ水平であっても空気界面側では傾斜角を持って配向するため、層中には、光学的にムラが生じる傾向がある。前記重合性モノマーは、空気界面側での液晶性化合物の傾斜配向の角度を低減する機能をも有する。その結果、実質的に配向膜を形成することなく、所望の配向状態にある液晶性化合物を含有する上層を迅速且つ安定的に形成することができる。
【0103】
本発明で用いる重合性モノマーとしては、芳香環を3つ以上有することが好ましく、更に好ましくは4つ以上である。なお、縮環構造を有する場合は縮環構造を構成している環のそれぞれを1つとみなす。重合性基としては前述の重合性液晶で挙げたものが好ましく、重合性モノマーとともに用いる液晶性化合物が重合性液晶の場合は、同一の重合方法により重合反応が進行し、固化する重合性基を有することが好ましい。重合性モノマーの重合性基の数としては分子内に1つ以上あればよい。また複数種の重合性モノマーを併用して用いてもよい。該重合性モノマーの分子量としては、相分離速度の観点から2,500以下が好ましく、更に好ましくは2,000以下、特に好ましくは1,500以下である。
なお、本発明において、重合性モノマーは液晶層の空気界面側に多く偏在し、重合した形態で存在する。
【0104】
前記重合性モノマーとしては、下記一般式(V)で表される化合物が好ましい。
一般式(V)
(Hb−L51−)nB51
前記一般式(V)で表される化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性基を有する。重合性基としては、前述の重合性棒状液晶性化合物の重合性基の例と同様である。
【0105】
式(V)において、Hbは、炭素原子数が6〜40の脂肪族基または炭素原子数が6〜40の脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を表す。Hbは、炭素原子数が6〜40の脂肪族基であることが好ましく、炭素原子数が6〜40のフッ素置換脂肪族基または炭素原子数が6〜40の分岐を有する脂肪族基であることがさらに好ましく、炭素原子数が6〜40のフッ素置換アルキル基もしくは炭素原子数が6〜40の分岐を有するアルキル基であることが最も好ましい。
【0106】
脂肪族基は、環状脂肪族基よりも鎖状脂肪族基の方が好ましい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、7〜35であることが好ましく、8〜30であることがより好ましく、9〜25であることがさらに好ましく、10〜20であることが最も好ましい。
脂肪族基には、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基および置換アルキニル基が含まれる。アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基および置換アルケニル基が好ましく、アルキル基および置換アルキル基がさらに好ましい。
脂肪族基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、置換アルコキシ基(例えば、オリゴアルコキシ基)、アルケニルオキシ基(例、ビニルオキシ)、アシル基(例、アクリロイル、メタクリロイル)、アシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ、ベンゾイルオキシ)、スルファモイル基、脂肪族置換スルファモイル基およびエポキシアルキル基(例、エポキシエチル)が含まれる。置換基としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がさらに好ましい。フッ素置換脂肪族基において、フッ素原子が脂肪族基の水素原子を置換している割合は、50〜100%であることが好ましく、60〜100%であることがより好ましく、70〜100%であることがさらに好ましく、80〜100%であることがさらにまた好ましく、85〜100%であることが最も好ましい。
【0107】
前記脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基の炭素原子数は、7〜35であることが好ましく、8〜30であることがより好ましく、9〜25であることがさらに好ましく、10〜20であることが最も好ましい。脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基は、下記式で表される。
R51−(Si(R52)2−O)q−
式中、R51は水素原子、ヒドロキシルまたは脂肪族基を表し;R52は水素原子、脂肪族基またはアルコキシ基を表し;そして、qは1〜12のいずれかの整数を表す。R51およびR52でそれぞれ表される脂肪族基は、環状脂肪族基よりも鎖状脂肪族基の方が好ましい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが特に好ましい。R51およびR52でそれぞれ表される脂肪族基には、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基および置換アルキニル基が含まれる。アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基および置換アルケニル基が好ましく、アルキル基および置換アルキル基がさらに好ましい。
R51およびR52でそれぞれ表される脂肪族基は、置換基を有していてもよく、該置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、置換アルコキシ基(例えば、オリゴアルコキシ基)、アルケニルオキシ基(例、ビニルオキシ)、アシル基(例、アクリロイル、メタクリロイル)、アシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ、ベンゾイルオキシ)、スルファモイル基、脂肪族置換スルファモイル基およびエポキシアルキル基(例、エポキシエチル)が含まれる。
【0108】
R52で表されるアルコキシ基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることがさらにまた好ましい。
以下に、Hbの例を示す。
【0109】
Hb1:n−C16H33−
Hb2:n−C20H41−
Hb3:n−C6 H13−CH(n−C4H9)−CH2−CH2−
Hb4:n−C12H25−
Hb5:n−C18H37−
Hb6:n−C14H29−
Hb7:n−C15H31−
Hb8:n−C10H21−
Hb9:n−C10H21−CH(n−C4H9)−CH2−CH2−
Hb10:n−C8F17−
【0110】
Hb11:n−C8H17−
Hb12:CH(CH3)2−{C3H6−CH(CH3)}3−C2H4−
Hb13:CH(CH3)2−{C3H6−CH(CH3)}2−C3H6−C(CH3)=CH−CH2−
Hb14:n−C8H17−CH(n−C6H13)−CH2−CH2−
Hb15:n−C6H13−CH(C2H5)−CH2−CH2−
Hb16:n−C8F17−CH(n−C4F9)−CH2−
Hb17:n−C8F17−CF(n−C6F13)−CF2−CF2−
Hb18:n−C3F7−CF(CF3)−CF2−
Hb19:Si(CH3)3−{Si(CH3)2−O}6−O−
Hb20:Si(OC3H7)(C16F33)(C2H4−SO2−NH−C8F17)−O−
【0111】
前記式(V)において、L51は、単結合または二価の連結基を表す。前記二価の連結基は、−アルキレン基−、−フッ素置換アルキレン基−、−O−、−S−、−CO−、−NR−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる基であることが好ましい。Rは、水素原子または炭素原子数が1〜20のアルキル基である。水素原子または炭素原子数が1〜15のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数が1〜12のアルキル基であることがより好ましい。
上記アルキレン基またはフッ素置換アルキレン基の炭素原子数は、1〜40であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることがさらに好ましく、1〜15であることがさらにまた好ましく、1〜12であることが最も好ましい。
以下に、L51の例を示す。左側がHbに結合し、右側がB51に結合する。
【0112】
L5110:単結合
L5111:−O−
L5112:−O−CO−
L5113:−CO−C4H8−O−
L5114:−O−C2H4−O−C2H4−O−
L5115:−S−
L5116:−N(n−C12H25)−
L5117:−SO2−N(n−C3H7)−CH2CH2−O−
L5118:−O−{CF(CF3)−CF2−O}3−CF(CF3)−
【0113】
前記式(V)において、nは2〜12のいずれかの整数を表す。nは2〜9のいずれかの整数であることが好ましく、2〜6のいずれかの整数であることがより好ましく、2、3または4であることがさらに好ましく、3または4であることが最も好ましい。
【0114】
前記式(V)において、B51は、少なくとも三つの環状構造を含む排除体積効果を有するn価の基である。B51は下記式(V−a)で表されるn価の基であることが好ましい。
一般式(V−a)
(−Cy51−L52−)nCy52
前記式(V−a)において、Cy51は二価の環状基を表す。Cy51は二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基を表すのが好ましく、二価の芳香族炭化水素基を表すのがより好ましい。
二価の芳香族炭化水素基とは、アリーレン基および置換アリーレン基を意味する。
アリーレン基の例には、フェニレン基、インデニレン基、ナフチレン基、フルオレニレン基、フェナントレニレン基、アントリレン基およびピレニレン基が含まれる。フェニレン基およびナフチレン基が好ましい。
置換アリーレン基の置換基の例には、脂肪族基、芳香族炭化水素基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、プロピルアミノ基)、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基)、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基およびウレイド基が含まれる。
二価の芳香族炭化水素基に、別の芳香族炭化水素環が単結合、ビニレン結合またはエチニレン結合を介して置換基として結合していると、液晶配向促進機能が得られる。
また、Hb−L51−に相当する基を、置換基として有してもよい。
【0115】
Cy51で表される二価の複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。前記複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。
【0116】
複素環に、他の複素環、脂肪族環または芳香族炭化水素環が縮合していてもよい。縮合複素環の例には、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、インドリン環、イソインドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、クロメン環、クロマン環、イソクロマン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、キサンテン環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、フェノキサジン環、チアントレン環、インドリジン環、キノリジン環、キヌクリジン環、ナフチリジン環、プリン環およびプテリジン環が含まれる。
二価の複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、置換アリーレン基の置換基の例と同様である。
二価の複素環基は、複素原子(例えば、ピペリジン環の窒素原子)で、L52または(L52が単結合の場合)分子中心の環状基(Cy52)と結合してもよい。また、結合する複素原子がオニウム塩(例、オキソニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩)を形成していてもよい。
【0117】
Cy51および後述するCy52の環状構造が、全体として平面構造を形成していてもよい。環状構造が全体として平面構造(すなわち円盤状構造)を形成していると、液晶配向促進機能が得られる。
以下に、Cy51の例を示す。複数のHb−L51−に相当する基が二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基に結合している場合、いずれか一つが前記式で定義するHb−L51−であって、残りは二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基の置換基である。
【0118】
【化27】
【0119】
【化28】
【0120】
【化29】
【0121】
【化30】
【0122】
【化31】
【0123】
【化32】
【0124】
【化33】
【0125】
式(V−a)において、L52は、単結合または−アルキレン基−、−アルケニレン基−、−アルキニレン基−、−O−、−S−、−CO−、−NR−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。Rは、水素原子または炭素原子数が1〜30のアルキル基を表す。L52は、−O−、−S−、−CO−、−NR−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。Rは水素原子または炭素原子数が1〜20のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数が1〜15のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子または炭素原子数が1〜12のアルキル基であることが最も好ましい。
上記アルキレン基の炭素原子数は、1〜40であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることがさらに好ましく、1〜15であることがさらにまた好ましく、1〜12であることが最も好ましい。
上記アルケニレン基またはアルキニレン基の炭素原子数は、2〜40であることが好ましく、2〜30であることがより好ましく、2〜20であることがさらに好ましく、2〜15であることがさらにまた好ましく、2〜12であることが最も好ましい。
以下に、L52の例を示す。左側がCy51に結合し、右側がCy52に結合する。
【0126】
L20:単結合
L21:−S−
L22:−NH−
L23:−NH−SO2−NH−
L24:−NH−CO−NH−
L25:−SO2−
L26:−O−NH−
L27:−C≡C−
L28:−CH=CH−S−
L29:−CH2−O−
L30:−N(CH3)−
L31:−CO−O−
【0127】
前記式(V−a)において、nは2〜12のいずれかの整数を表す。nは2〜9のいずれかの整数であることが好ましく、2〜6のいずれかの整数であることがより好ましく、2、3または4であることがさらに好ましく、3または4であることが最も好ましい。
前記式(V−a)において、Cy52は、n価の環状基である。Cy52は、n価の芳香族炭化水素基またはn価の複素環基であることが好ましい。
Cy52で表される芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素環の例には、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環およびピレン環が含まれる。ベンゼン環およびナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
Cy52で表される芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、脂肪族基、芳香族炭化水素基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、プロピルアミノ基)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ基)、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基)、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基およびウレイド基が含まれる。
【0128】
Cy52で表される複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。前記複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。前記複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。前記複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。トリアジン環が好ましく、1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
前記複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族炭化水素環が縮合していてもよい。ただし、単環式複素環が好ましい。
以下に、Cy52の例を示す。
【0129】
【化34】
【0130】
【化35】
【0131】
【化36】
【0132】
【化37】
【0133】
重合性モノマーは、以上述べた疎水性基(Hb)、連結基(L51)および排除体積効果を有する基(B51)を組み合わせた化合物である。これらの組み合わせについて、特に制限はない。
以下に本発明に使用可能な重合性モノマーの例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0134】
【化38】
【0135】
【化39】
【0136】
【化40】
【0137】
【化41】
【0138】
本発明に用いられる重合性モノマーは、例えば特開2002−20363号公報に記載の方法等を参考にして合成することができる。
【0139】
前記重合性モノマーの添加量は、併用する液晶性化合物に対して、0.05質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%〜5質量%がより好ましい。
【0140】
上層形成用の塗布液を塗布する前には、下層の表面に、ラビング処理を実施することが好ましい。ラビング処理は、上記重合性モノマーを含有する下層(層中、重合性モノマーは重合された形態にある)の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施することができる。
【0141】
前記重合性モノマーは縮合剤と併用してもよい。縮合剤としてはイソシアネート基またはホルミル基を末端に有する化合物が好ましい。以下に具体的な化合物を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
ポリ(1,4−ブタンジオール)、イソホロンジイソシアネートターミネーテッド
ポリ(1,4−ブタンジオール)、トリレン2,4−ジイソシアネートターミネーテッド
ポリ(エチレンアジペート)、トリレン2,4−ジイソシアネートターミネーテッド
ポリ(プロピレングリコール)、トリレン2,4−ジイソシアネートターミネーテッド
1、6−ジイソシアナートヘキサン
1、8−ジイソシアナートオクタン
1、12−ジイソシアナートドデカン
イソホロンジイソシアナート
グリオキザール
【0143】
[楕円偏光板]
本発明において、円偏光板は楕円偏光板に含まれる。
本発明の位相差フィルムは、反射型液晶表示装置において使用されるλ/4板、光ディスクの書き込み用のピックアップに使用されるλ/4板、あるいは反射防止膜として利用されるλ/4板として、特に有利に用いることができる。λ/4板は、一般に偏光膜と組み合わせた楕円偏光板として使用される。よって、位相差フィルムと偏光膜とを組み合わせた楕円偏光板として構成しておくと、容易に反射型液晶表示装置のような用途とする装置に組み込むことができる。偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。偏光膜の透過軸は、フイルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。偏光膜は、一般に両側に保護膜を有する。ただし、本発明では、透明支持体を偏光膜の片側の保護膜として機能させることができる。透明支持体とは別に保護膜を用いる場合は、保護膜として光学的等方性が高いセルロースエステルフイルム、特にトリアセチルセルロースフイルムを用いることが好ましい。
【0144】
広域帯λ/4とは、具体的には、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したレターデーション値/波長の値が、いずれも0.2〜0.3の範囲内であることを意味する。レターデーション値/波長の値は、0.21〜0.29の範囲内であることが好ましく、0.22〜0.28の範囲内であることがより好ましい。
【0145】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[合成例]
(例示化合物(1)の合成)
【0146】
【化42】
【0147】
化合物I−a(22mmol)をメチルエチルケトン(50mL)に溶解し、氷水で冷却した。そこに化合物I−b(43mmol)のメチルエチルケトン(60mL)溶液とトリエチルアミン(44mmol)を30℃以下の温度を保つように滴下し、その後、反応液を3時間還流した。室温に冷却後、酢酸エチル(200mL)を加え、水洗した。有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/7(体積比))にて精製し、化合物I−cを62%の収率で得た。
【0148】
次に、化合物I−c(1mmol)と、化合物1−d(1mmol)の混合物をメチルエチルケトン(20mL)に溶かし、そこにトリエチルアミン(1.5mmol)を加え、4時間還流した。その後、酢酸エチル(100mL)を加え、水洗および濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/1(体積比))にて精製し、化合物I−eを60%の収率で得た。
得られた化合物1−e(0.3mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミド(5mL)に溶かし、そこにアクリル酸クロライド(0.9mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。酢酸エチル(40mL)を加え、水洗および濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/2(体積比))にて精製し、例示化合物(1)を36%の収率で得た。
【0149】
[実施例1]
厚さ100μm、幅150mm、長さ200mmの光学的に等方性のトリアセチルセルロースフィルムを透明支持体として用いた。配向膜(下記構造式のポリマー)の希釈液を透明支持体の片面に連続塗布し、厚さ0.5μmの配向膜を形成した。次いで、透明支持体の長手方向に対し左手30°の方向に連続的にラビング処理を実施した。
【0150】
配向膜用ポリマー
【化43】
【0151】
配向膜の上に、下記の組成の塗布液をバーコーターを用いて連続的に塗布、乾燥、および加熱(配向熟成、80℃/10秒)し、さらに紫外線照射して厚さ2.0μmの光学異方性層(A)を形成した。光学異方性層は透明支持体の長手方向に対して30°の方向に遅相軸を有していた。550nmにおけるレターデーション値(Re550)は265nmであった。
光学異方性層塗布液組成
下記の棒状液晶性化合物(1) 14.5質量部
下記の増感剤(1) 0.15質量部
下記の光重合開始剤(1) 0.29質量部
例示化合物(1) 2.00質量部
メチルエチルケトン 84.96質量部
【0152】
棒状液晶化合物(1)
【化44】
【0153】
増感剤(1)
【化45】
【0154】
光重合開始剤(1)
【化46】
【0155】
上記で作製した光学異方性層(A)の遅相軸に対し右手60°であり、かつ支持体の長手方向に対し右手30°になるように連続的にラビング処理を施した。
【0156】
該配向膜の上に、下記の組成の塗布液を、バーコーターを用いて連続的に塗布、乾燥、および加熱(配向熟成)し、さらに紫外線照射して厚さ1.0μmの光学異方性層(B)を形成することにより位相差フィルム95を作製した。
光学異方性層(B)塗布液組成
上記棒状液晶性化合物(1) 13.0質量部
上記増感剤(1) 0.13質量部
上記光重合開始剤(1) 0.39質量部
例示化合物(1) 2.00質量部
メチルエチルケトン 86.35質量部
【0157】
[比較例1]
例示化合物(1)の替わりに下記ポリマー型添加剤PX−1を0.15質量%添加し、実施例1と同様に光学異方性層(A)を作製した。次いで、該配向膜を、光学異方性層(A)の遅相軸に対し右手60°であり、かつ支持体の長手方向に対し右手30°になるように連続的にラビング処理を施し、以下実施例1と同様に光学異方性層(B)を形成することにより位相差フィルム95’を作製した。
【0158】
添加剤 PX−1 (式中の括弧の右下の数字はモル%を表す)
【化47】
【0159】
[比較例2]
(光学異方性層(A)と(B)との間に配向膜を設置した態様)
実施例1と同様に光学異方性層(A)を作製し、さらに実施例1で用いた配向膜の希釈液を光学異方性層(A)の上に連続塗布し、厚さ0.5μmの配向膜を形成した。次いで、該配向膜を、光学異方性層(A)の遅相軸に対し右手60°であり、かつ支持体の長手方向に対し右手30°になるように連続的にラビング処理を施し、以下実施例1と同様に光学異方性層(B)を形成することにより位相差フィルム95’’を作製した。
【0160】
[参考例1]
(光学異方性層(A)用の塗布液に配向制御剤を用いずに直接光学異方性層(B)を積層した態様)
実施例1の光学異方性層(A)用の塗布液の調製において、例示化合物(1)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして塗布液を調製し、光学異方性層(A)を形成した。得られた光学異方性層(A)を偏光顕微鏡で観察すると、ほぼモノドメインであるが海島状の欠陥が生じていた。得られた光学異方性層(A)を、光学異方性層(A)の遅相軸に対し右手60°であり、かつ支持体の長手方向に対し右手30°になるように連続的にラビング処理を施し、以下実施例1と同様に光学異方性層(B)を形成することにより位相差フィルム95’’’を作製した。
【0161】
[実施例2]
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、特開2002−86554号公報の図2の形態のテンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、テンターを延伸方向に対し特開2002−86554号公報の図2の如く屈曲させ、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱した。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心線のなす角は、46゜であった。ここで、|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口における実質延伸方向Ax−Cxは、次工程へ送られるフィルムの中心線22に対し45゜傾斜していた。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
さらに、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤としてケン化処理した富士写真フイルム(株)製フジタック(セルローストリアセテート、レターデーション値3.0nm)と貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して有効幅650mmの偏光板を得た。
得られた偏光板の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜していた。この偏光板の550nmにおける透過率は43.7%、偏光度は99.97%であった。さらに特開2002−86554号公報の図8の如く310×233mmサイズに裁断したところ、91.5%の面積効率で辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光板を得ることができた。
【0162】
次に、図1のように、上記で作製したヨウ素系偏光フィルム91の片面上に実施例1で作製した位相差フィルム95を設け、他方の面上にケン化処理した防眩性反射防止フィルム96を貼り合わせて、円偏光板92を作製した。このとき、偏光膜と位相差フィルムの長手方向が一致するように貼り合わせて、円偏光板を作製した。
【0163】
[比較例3]
位相差フィルム95に替えて、比較例1で作製した位相差フィルム95’を用いた以外は、円偏光板92と同様にして円偏光板101を作製した。このとき偏光膜と位相差フィルムの長手方向が一致するように貼り合わせて円偏光板を作製した。
[比較例4]
位相差フィルム95に替えて、比較例2で作製した位相差フィルム95’’を用いた以外は、円偏光板92と同様にして円偏光板102を作製した。このとき偏光膜と位相差フィルムの長手方向が一致するように貼り合わせて円偏光板を作製した。
[参考例2]
位相差フィルム95に替えて、参考例1で作製した位相差フィルム95’’’を用いた以外は、円偏光板92と同様にして円偏光板103を作製した。このとき偏光膜と位相差フィルムの長手方向が一致するように貼り合せて円偏光板を作製した。
【0164】
得られた円偏光板92、101〜103の防眩性反射防止フィルム側から光(測定波長は450nm、550nm、および650nm)を照射し、通過した光の位相差(レターデーション値:Re)を測定した。また、円偏光板に加工する前の位相差フィルムを偏光顕微鏡下で観察し、配向欠陥の数を調べた結果を下記表に示す
【0165】
【表1】
【0166】
表1に示す結果から、本発明の構成に従えば欠陥の少ない安定した円偏光板が作製できることがわかった。
添加剤として高分子を用いた比較例1では、液晶の配向および相分離が遅く、80℃/10秒の熟成時間では欠陥が多く、評価不能のサンプルしか得られなかった。中間に配向膜を設置せず、かつ、配向制御剤を用いずに光学異方性層をラビングしても第1光学異方性層と第2光学異方性層は目的の交差角で遅相軸が交差せずに目的の光学特性は得られなかった(参考例2)。
【0167】
[実施例3]
液晶化合物として下記PLC−1を用い、熟成時間を120℃/2分にした以外は実施例1と同様の方法で位相差フィルム110を作製した。この位相差フィルム110を用い、実施例2の方法に準じて円偏光板111を作製した。
その結果、実施例2と同様に欠陥の少ない、良好な円偏光板が作製できた。
【0168】
PLC−1
【化48】
【0169】
【発明の効果】
本発明によれば、上層の液晶性化合物を配向させるための配向膜の塗布を実質的に行わずに、液晶性化合物の配向を固定化した層を複数有する位相差フィルム、それを用いた楕円偏光板およびその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、良好な性能を有するとともに、別途配向膜を形成しないため製造プロセスが簡略化でき、容易且つ低コストで安定的に作製可能な位相差フィルム、それを用いた楕円偏光板および該位相差フィルムの製造方法を提供することができる。さらに、工程数が少なくなるため、歩留まりの向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で作製した円偏光板の層構成を示す断面概略図である。
【符号の説明】
91 実施例2で作製したヨウ素系偏光フィルム
92 実施例2で作製した円偏光板
95 実施例1で作製した位相差フィルム
96 防眩性反射防止フィルム
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも2層の光学異方性層を積層して得られる位相差フィルム、それを用いた楕円偏光板、およびその製造方法に関する。特に、2つの光学異方性層が液晶性化合物の配向を固定して得られた層であり、液晶性化合物からなる2つの光学異方性層を塗布する工程の間に配向膜層を形成するためだけの塗布工程を設けない(以下の文章で「配向膜の塗布を実質的に行わない」とはこのことを意味する)で製造する位相差フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光学異方性材料からなる位相差板は、LCD表示装置において必要な材料である。一種類の材料では所望とする光学性能が達成できない場合は複数の光学材料を使用する場合がある。例えば、反射型液晶表示装置においてλ/4板が使用されているが、かかる用途では、λ/4板には、赤(R)、緑(G)および青(B)のいずれの波長域においても波長の1/4の位相差を与えるような広帯域性が求められている。しかし、かかる光学性能を1種の材料で満足することは難しく、λ/2板とλ/4板の積層体が使用されている。これらの材料はおのおのが数十μm以上の厚みを有しておりそれを粘着剤等で貼り合せて使用している。
【0003】
これに対し、長尺状の支持体に液晶性化合物からなる光学異方性層を2層積層して広帯域λ/4板を作製する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、液晶化合物を固定化して得られる層を多層積層する技術についても提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術では、液晶化合物を固定化して得られる層の間に配向膜層を別途形成しており、液晶化合物を塗布するためには、必ずそのための配向膜を塗布する必要がある。つまり、液晶性化合物の配向を固定化して光学異方性層を1層形成するためには配向膜と液晶化合物を少なくとも2回塗布しなければならず、製造経費が高いものになってしまい、安価な製造技術が求められていた。さらに、塗布回数が増えれば増えるほど、塗布あるいは液晶化合物の配向の不具合によって製品故障が起きる確率が同じであっても最終的に得られる位相差板としては不具合の個所が多くなってしまい、目的の位相差板の得率が低下してしまう。そのため、製造時における得率を上げる意味からも塗布回数を減らすことが求められている。
【0004】
近年、ある種の添加剤を重合性液晶組成物に添加し、重合性液晶組成物を固定化する際に該添加剤が空気界面側に移行して該添加剤を多く含む表面層を形成させ、この表面層にラビングなどによって配向機能を付与し、その上に、更に液晶化合物からなる光学異方性層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献3および4参照)。しかしながら、これらの特許文献に記載の方法には、空気界面側の表面層にラビングを施して、更に重合性液晶組成物からなる光学異方性層を形成する技術に関しては何ら記載されていない。
また、重合性液晶組成物に表面を平滑にするために界面活性剤をレべリング剤として添加する技術についても提案されている(例えば、特許文献5および6参照)。前記特許文献には、レべリング剤の機能は液晶組成物の表面張力を低下させることにあり、表面張力を低下させることによって膜厚ムラに起因する光学的なムラを低減できることが出来ると記載されている。しかしながら、これらにおいても、更に重合性液晶組成物からなる光学異方性層を形成する技術に関しては何ら記載されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−4837号公報
【特許文献2】
米国特許第6,160,597号明細書
【特許文献3】
特開2000−105315号公報
【特許文献4】
特開2000−105315号公報
【特許文献5】
特開平11−148080号公報
【特許文献6】
特開平8−231958号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上層の液晶性化合物を配向させるための配向膜の塗布を実質的に行わずに、液晶性化合物の配向を固定化した層を複数有する位相差フィルムの製造方法を提供することを課題とする。より具体的には、本発明は、下層の液晶性化合物を塗布する際に用いる重合性液晶組成物に、配向膜として機能しうる重合性モノマーを添加することによって、新たに配向膜を塗布しなくても液晶層を積層可能にする方法を提供することを課題とし、さらに、かかる方法を利用して作製された、液晶層が複数積層された位相差フィルム、および楕円偏光板を提供することを課題とする。
また、本発明は、良好な性能を有するとともに、容易且つ低コストで安定的に作製可能な位相差フィルム、楕円偏光板、および該位相差フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は以下の方法によって解決された。
(1) 支持体上に、配向が固定された液晶性化合物から形成される層を少なくとも2層有する位相差フィルムであって、配向が固定された少なくとも一種の第一の液晶性化合物と少なくとも一種の重合性モノマーとから形成される第一の層と、その上に配向が固定された少なくとも一種の第二の液晶性化合物から形成される第二の層とを有し、第一の層と第二の層との間に実質的に配向膜がない位相差フィルム。
(2) さらに支持体上に配向膜を含む(1)に記載の位相差フィルム。
(3) さらに第一の層の上面がラビング処理された表面を有する(1)または(2)に記載の位相差フィルム。
(4) 第一の層の遅相軸と、第二の層の遅相軸とが同じでない(1)〜(3)のいずれかに記載の位相差フィルム。
(5) 第一の層の遅相軸と第二の層の遅相軸のなす角度が実質的に60度であり、一方の層の波長550nmにおける位相差が実質的にπであり、もう一方の層の波長550nmにおける位相差が実質的にπ/2である(1)〜(4)のいずれかに記載の位相差フィルム。
【0008】
(6) 重合性モノマーが、構造中に芳香族環を三環以上有する化合物である(1)〜(5)のいずれかに記載の位相差フィルム。
(7) 重合性モノマーが下記一般式(V)で表される化合物である(1)〜(6)のいずれかに記載の位相差フィルム。
一般式(V)
(Hb−L51−)nB51
(式中、Hbは、炭素原子数が6〜40の脂肪族基または炭素原子数が6〜40の脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を表し、L51は、単結合または二価の連結基を表し、B51は、少なくとも三つの環状構造を含む排除体積効果を有するn価の基を表し、nは2〜12のいずれかの整数を表す。但し、前記一般式(V)で表される化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性基を有する。)
【0009】
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の位相差フィルムと偏光膜とを有する楕円偏光板。
(9) 前記位相差フィルムのいずれかの液晶層が波長550nmにおける位相差がπであり、他の液晶層のいずれかが波長550nmにおける位相差がπ/2であり、波長550nmにおける位相差がπである液晶層側に、偏光の透過軸と位相差がπである液晶層の遅相軸のなす角が15°または75°になるように偏光膜を貼り合わせた(8)に記載の楕円偏光板。
(10) 支持体上に、配向が固定された液晶性化合物から形成される層を少なくとも2層有する位相差フィルムの製造方法であって、
少なくとも一種の第一の液晶性化合物と少なくとも一種の重合性モノマーとを含む塗布液を支持体上に塗布した後、第一の液晶性化合物の配向を固定化して第一の層を形成する工程と、
第一の層の上に少なくとも一種の第二の液晶性化合物を含む塗布液を塗布した後、第二の液晶性化合物の配向を固定化して第二の層を形成する工程と、を含む位相差フィルムの製造方法。
(11) 第一の層を形成する工程の前に、さらに支持体の上面に配向膜を形成する工程を含む(10)に記載の製造方法。
(12) 第二の層を形成する工程の前に、さらに第一の層の上面をラビング処理する工程を含む(10)または(11)に記載の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の位相差フィルムは、支持体上に、配向が固定された液晶性化合物から形成される層(以下「液晶層」という場合があるが、位相差フィルムにおいて液晶性を示さなくてもよい)を少なくとも2層有する。液晶層は、配向が固定された少なくとも一種の第一の液晶性化合物と上方の液晶層の配向膜として機能する少なくとも一種の重合性モノマー(重合性配向膜モノマー)とから形成される第一の層と、その上に、配向が固定された少なくとも一種の第二の液晶性化合物から形成される第二の層とからなり、第一の層と第二の層との間、すなわち各液晶層同士の間には実質的に配向膜がないことを特徴とする。さらに、支持体の上に配向膜を含む位相差フィルムであることが好ましい。また、第一の層の上面は、ラビング処理された表面であることが好ましい。
【0011】
本発明の位相差フィルムにおいて、液晶層が3層以上のとき、各液晶層同士の間には実質的に配向膜がない。さらに、一方の液晶層の上面に、他方の液晶層を有する場合(液晶層の積層)、下方に位置する液晶層は、少なくとも一種の液晶性化合物と、上方の液晶層の配向膜として機能する少なくとも一種の重合性モノマーとから形成される層であることが本発明では必須である。下方に位置する液晶層の上面は、ラビング処理された表面であることが好ましい。
【0012】
本発明の第一および第二の液晶性化合物は、各々一種であっても、複数種であってもよいが、各々一種であるのが好ましい。また第一および第二の液晶性化合物は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましく、棒状液晶性分子同士またはディスコティック液晶性分子同士から構成されている層であるのが好ましい。
【0013】
本発明の位相差フィルムおよびその製造方法は、広帯域のλ/4板およびその製造方法に適用することが好ましい。液晶性化合物の配向が固定された層を少なくとも2層有する位相差板としては、特開2001−4837号公報、同2001−21720号公報、同2000−206331号公報に広帯域λ/4板の技術が開示されている。以下に広帯域のλ/4板における発明の実施の形態を記載するが、本発明はλ/4板に限定されるものではない。
【0014】
[広帯域λ/4板の光学的性質]
広域帯λ/4とは、具体的には、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したレターデーション値/波長の値が、いずれも0.2〜0.3の範囲内であることを意味する。レターデーション値/波長の値は、0.21〜0.29の範囲内であることが好ましく、0.22〜0.28の範囲内であることがより好ましい。偏光膜、位相差πの光学異方性層および位相差π/2の光学異方性層を用いると、広い波長領域で円偏光を近似的に達成することができる。特開平10−68816号公報には、円偏光の達成について、ポアンカレ球による説明が記載されている。
【0015】
本発明の位相差フィルムは、配向状態で固定された液晶性化合物を含有する層を少なくとも2層含む。本発明の位相差フィルムを広帯域λ/4板に適用した態様では、2層のうち一方の層を、特定の波長において実質的にπの位相差を達成する光学異方性層とし、他方の層を、特定の波長において実質的にπ/2の位相差を達成する光学異方性層とするのが好ましい。但し、可視領域のほぼ中間の波長である550nmにおいて、それぞれの光学異方性層が位相差πおよびπ/2を達成していることが好ましい。特定波長(λ)において位相差πを達成するためには、特定波長(λ)において測定したレターデーション値をλ/2に調整すればよい。特定波長(λ)において位相差π/2を達成するためには、特定波長(λ)において測定したレターデーション値をλ/4に調整すればよい。
【0016】
特定波長(λ)を550nmとすると、位相差πの光学異方性層の波長550nmで測定したレターデーション値は、200〜290nmであることが好ましく、210〜280nmであることがより好ましい。特定波長(λ)を550nmとすると、位相差π/2の光学異方性層の波長550nmで測定したレターデーション値は、100〜145nmであることが好ましく、110〜140nmであることがより好ましい。
【0017】
レターデーション値は、光学異方性層の法線方向から入射した光に対する面内のレターデーション値を意味する。具体的には、下記式により定義される値である。
レターデーション値(Re)=(nx−ny)×d
式中、nxおよびnyは光学異方性層の面内の主屈折率であり、そしてdは光学異方性層の厚み(nm)である。
【0018】
広帯域λ/4板では、位相差がπである光学異方性層と位相差がπ/2である光学異方性層の交差角度が重要である。双方の遅相軸の交差角度は、60°±10であることが好ましく、60°±5であることがより好ましい。また、広帯域λ/4板と偏光板または偏光膜から円偏光板を作製する際は、偏光板(または偏光膜)、位相差がπである光学異方性層、位相差がπ/2である光学異方性層の順に積層することが好ましく、該偏光板(または偏光膜)の偏光透過軸と位相差がπである光学異方性層の遅相軸が15°±5であることが好ましく、15°±3であることがより好ましい。一般に入手可能な長尺状の偏光板は、長尺の長手方向に偏光の吸収軸があり、それに直交する方向に偏光透過軸がある。従って、円偏光板を偏光板と広帯域λ/4板から作製する場合には、位相差がπである光学異方性層を支持体の長手方向に対し実質的に75°にすることが好ましい。特開2002−86554号公報に偏光の吸収軸が長手方向に対し実質的に45°である偏光板の技術が開示されている。かかる偏光板を用いる場合には、位相差がπである光学異方性層の遅相軸を、偏光の吸収軸に対し15°または75°にすることが好ましい。
【0019】
[液晶性分子を含む光学異方性層]
液晶性分子としては、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子が好ましい。液晶性分子は、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性分子が固定されていることが最も好ましい。
【0020】
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性分子だけではなく、高分子液晶性分子も用いることができる。棒状液晶性分子を重合によって配向を固定することがより好ましく、重合性棒状液晶性分子としては、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特願2001−64627号などに記載の化合物を用いることができる。
【0021】
液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物を用いるのがより好ましい。
一般式(I)
Q1−L1−Cy1−L2−(Cy2−L3)n−Cy3−L4−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に重合性基であり、L1,およびL4はそれぞれ独立に二価の連結基であり、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基であり、Cy1、Cy2およびCy3は二価の環状基であり、nは0、1または2である。
【0022】
以下にさらに重合性棒状液晶性化合物について説明する。
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に重合性基である。重合性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0023】
【化1】
【0024】
L1およびL4はそれぞれ独立に二価の連結基である。L1およびL4はそれぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、二価の鎖状基、二価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。
組み合わせからなる二価の連結基の例を以下に示す。ここで、左側がQ1またはQ2に、右側がCy1またはCy3に結合する。
【0025】
L−1:−CO−O−二価の鎖状基−O−
L−2:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−
L−3:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−
L−4:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−
L−5:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−CO−O−
L−6:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−O−CO−
L−7:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−二価の鎖状基−
L−8:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−二価の鎖状基−CO−O−
L−9:−CO−O−二価の鎖状基−O−二価の環状基−二価の鎖状基−O−CO−
L−10:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−
L−11:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−CO−O−
L−12:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−O−CO−
L−13:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基−
L−14:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基−CO−O−
L−15:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基−O−CO−
L−16:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−
L−17:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−CO−O−
L−18:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−O−CO−
L−19:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基−
L−20:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基−CO−O−
L−21:−CO−O−二価の鎖状基−O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基−O−CO−
【0026】
二価の鎖状基は、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基,置換アルキニレン基を意味する。アルキレン基,置換アルキレン基,アルケニレン基,置換アルケニレン基が好ましく、アルキレン基およびアルケニレン基がさらに好ましい。
アルキレン基は,分岐を有していてもよい。アルキレン基の炭素数は1〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがもっとも好ましい。
置換アルキレン基のアルキレン部分は、上記アルキレン基と同様である。置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。
アルケニレン基は、分岐を有していてもよい。アルケニレン基の炭素数は2〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがもっとも好ましい。
置換アルキレン基のアルキレン部分は、上記アルキレン基と同様である。置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。
アルキニレン基は、分岐を有していてもよい。アルキニレン基の炭素数は2〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがもっとも好ましい。
置換アルキニレン基のアルキニレン部分は、上記アルキニレン基と同様である。置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。
二価の鎖状基の具体例としては、エチレン、トリメチレン、プロピレン、ブタメチレン、1−メチル−ブタメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、2−ブテニレン、2−ブチニレンなどが上げられる。
【0027】
二価の環状基の定義および例は、後述するCy1、Cy2およびCy3の定義および例と同様である。
R2は、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることがもっとも好ましい。
【0028】
L2またはL3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基である。L2およびL3はそれぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、二価の鎖状基、二価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基または単結合であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。二価の鎖状基、および二価の環状基についてはL1およびL4の定義と同義である。
【0029】
式(I)において、nは0、1または2である。nが2の場合、二つのL3は同じであっても異なっていてもよく、二つのCy2も同じであっても異なっていてもよい。nは1または2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0030】
式(I)において、Cy1、Cy2およびCy3は、それぞれ独立に、二価の環状基である。
環状基に含まれる環は、5員環、6員環、または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることがもっとも好ましい。
環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。
ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレンが好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイルおよびナフタレン−2,6−ジイルが好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレンであることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイルが好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイルが好ましい。
環状基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数が1〜5のアルキル基、炭素原子数が1〜5のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜5のアルコキシ基、炭素原子数が1〜5のアルキルチオ基、炭素原子数が2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜6のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数が2〜6のアシルアミノ基が含まれる。
【0031】
以下に、式(I)で表される重合性液晶性化合物の例を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
【化4】
【0035】
【化5】
【0036】
本発明において、好ましいディスコティック液晶性分子について、さらに説明する。ディスコティック液晶性分子は、ポリマーフィルム面に対して実質的に垂直(50〜90度の範囲の平均傾斜角)に配向させることが好ましい。ディスコティック液晶性分子は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am.Chem. Soc.,vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性分子は、下記式(II)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0037】
一般式(II)
D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。式(II)中、円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LP(またはPL)は、二価の連結基(L)と重合性基(P)との組み合わせを意味する。
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
式(II)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ、アルコキシ基、アシルオキシ基)を有していてもよい。
【0046】
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(P)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基を意味し、ARはアリーレン基を意味する。
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
【0047】
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L21:−S−AL−
L22:−S−AL−O−
L23:−S−AL−O−CO−
L24:−S−AL−S−AL−
L25:−S−AR−AL−
【0048】
式(II)の重合性基(P)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(P)の例を以下に示す。
【0049】
【化13】
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
重合性基(P)は、不飽和重合性基(P1、P2、P3、P7、P8、P15、P16、P17)またはエポキシ基(P6、P18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(P1、P7、P8、P15、P16、P17)であることが最も好ましい。式(II)において、nは4〜12の整数である。具体的な数字は、ディスコティックコア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとPの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。二種類以上のディスコティック液晶性分子(例えば、二価の連結基に不斉炭素原子を有する分子と有していない分子)を併用してもよい。
【0056】
本発明の位相差フィルムは、透明支持体と、該透明支持体の上方に、配向状態に固定された液晶性化合物を含有する層を少なくとも2層有し、2層の間に実質的に配向膜がないことを特徴とする。液晶性化合物を含有する2層は、透明支持体を基準に、より透明支持体に近い下方に位置する層(以下「下層」という)と、上方に位置する層(以下、「上層」という)とに区別できる。本発明の位相差フィルムは、下層と上層との間に実質的に配向膜がなく、即ち、上層を形成するための配向膜を別途形成することなしに上層を形成したことを特徴とする。下層を形成するために配向膜を利用していてもよく、即ち、透明支持体と下層との間には配向膜を有していてもよい。
【0057】
下層は、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子および下記の重合性開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、透明支持体上に塗布することにより形成するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0058】
配向させた液晶性分子は、配向状態を維持して固定する。固定化は、液晶性分子に導入した重合性基(P)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0059】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
【0060】
[配向膜]
支持体と第一の層との間には、液晶性化合物を配向させるために配向膜を用いることが好ましい。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログループを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコ酸、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリル酸メチルなど)の累積のような手段で設けることが出来る。さらに電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により配向機能が生じる配向膜も知られている。ポリマーのラビング処理により形成する配向膜がとくに好ましい。ラビング処理はポリマー層の表面を紙や布で一定方向に数回こすることにより実施する。
配向膜に使用するポリマーの種類は,液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定する。
液晶性化合物を水平に配向させるためには配向膜の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。いずれの配向膜においても、液晶性化合物と透明支持体の密着性を改善する目的で、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向膜を用いることがより好ましく、かかる配向膜としては特開平9−152509号に記載されている。
配向膜の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。
なお、配向膜を用いて液晶性化合物を配向させてから、その配向状態のまま液晶性化合物を固定して光学異方性層を形成し、光学異方性層のみをポリマーフィルム等の透明支持体上に転写してもよい。配向状態の固定された液晶性化合物は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。
【0061】
棒状液晶性化合物の場合、棒状液層性分子の光軸を透明支持体の長軸方向に対して45°以上の角度で配向させる場合はラビング方向に対して直交方向に棒状液晶性分子の光軸が並ぶような配向膜(以下、直交配向膜という)を用いることが好ましい。45°より小さい角度で配向させる場合は液晶セルなどの配向に用いられる配向膜が好ましい。
【0062】
[直交配向膜]
直交配向膜について詳細に述べる。
直交配向膜に関しては、特願2000−246279号、同2000−174829号、同2001―64626号に記載されている。より具体的には下記一般式(PAIII)または(PAIV)で表される繰り返し単位と式(PAV)で表される繰り返し単位とを含む直交配向膜である。
【0063】
【化19】
【0064】
式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1から6のアルキル基であり、Mはプロトン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンであり、Cyは脂肪族環基、芳香族基、または複素環基であり、mは10から95モル%であり、nは90から5モル%である。
【0065】
以下、式(PAIII)および(PAV)について詳細に述べる。
前記式(PAIII)において、R1は水素原子(アクリル酸コポリマー)またはメチル基(メタクリル酸コポリマー)である。
前記式(PAIII)において、Mはプロトン、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K)イオン、またはアンモニウムイオンであり、アンモニウムイオンは、有機基(たとえば、メチル基、エチル基)により置換されていてもよい。
【0066】
前記式(PAV)において、R2は、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1〜6のアルキル基である。R2は、水素原子または炭素原子数が1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチルまたはエチルであることがさらに好ましく、水素原子またはメチルであることが最も好ましい。
【0067】
前記式(PAV)において、Cyは、脂肪族環基、芳香族基または複素環基である。
脂肪族環基の脂肪族環は、5員〜7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン環が含まれる。脂肪族環に、他の脂肪族環、芳香族環または複素環が縮合していてもよい。
芳香族基の芳香族環の例には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環およびナフタセン環が含まれる。芳香族環に、脂肪族環または複素環が縮合していてもよい。
複素環基の複素環は、5員〜7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。複素環は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和であり、好ましくは最多二重結合を有する。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環およびピラジン環が含まれる。複素環に、他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。
【0068】
脂肪族環基、芳香族基および複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、アルキル基(例、メチル、エチル、t−ブチル)、置換アルキル基(例、クロロメチル、ヒドロキシメチル、塩化トリメチルアンモニオ)、アルコキシ基(例、メトキシ)、ハロゲン原子(F、Cl、Br)、カルボキシル、アシル基(例、ホルミル)、アミノ、スルホ、アリール基(例、フェニル)、アリールオキシ基(例、フェノキシ)およびオキソが含まれる。
【0069】
前記式(PAV)において、nは、5〜90モル%である。
【0070】
以下に式(PAV)で表される繰り返し単位の例を示す。
【0071】
【化20】
【0072】
【化21】
【0073】
【化22】
【0074】
【化23】
【0075】
【化24】
【0076】
以下に、好ましいアクリル酸コポリマーまたはメタクリル酸コポリマーの例を示す。AAはアクリル酸から誘導される繰り返し単位であり、MAはメタクリル酸から誘導される繰り返し単位である。繰り返し単位の割合は、モル%である。
【0077】
PA101:−(AA)70−(PAV−1)30−
PA102:−(AA)60−(PAV−1)40−
PA103:−(AA)50−(PAV−1)50−
PA104:−(AA)40−(PAV−1)60−
PA105:−(AA)60−(PAV−2)40−
PA106:−(AA)60−(PAV−3)40−
PA107:−(AA)60−(PAV−4)40−
PA108:−(AA)60−(PAV−5)40−
PA109:−(AA)40−(PAV−6)40−
PA110:−(AA)50−(PAV−7)50−
PA111:−(AA)70−(PAV−8)30−
【0078】
PA112:−(AA)60−(PAV−9)40−
PA113:−(AA)60−(PAV−10)40−
PA114:−(AA)60−(PAV−11)40−
PA115:−(AA)50−(PAV−12)50−
PA116:−(AA)50−(PAV−13)50−
PA117:−(AA)70−(PAV−14)30−
PA118:−(AA)50−(PAV−15)50−
PA119:−(AA)60−(PAV−16)40−
PA120:−(AA)60−(PAV−17)40−
PA121:−(AA)60−(PAV−18)40−
PA122:−(AA)60−(PAV−19)40−
【0079】
PA123:−(AA)75−(PAV−20)25−
PA124:−(AA)60−(PAV−20)40−
PA125:−(AA)70−(PAV−21)30−
PA126:−(AA)80−(PAV−22)20−
PA127:−(AA)70−(PAV−22)30−
PA128:−(AA)60−(PAV−22)40−
PA129:−(AA)70−(PAV−23)30−
PA130:−(AA)70−(PAV−24)30−
PA131:−(AA)80−(PAV−25)20−
PA132:−(AA)70−(PAV−25)30−
PA133:−(AA)60−(PAV−25)40−
【0080】
PA134:−(AA)60−(PAV−26)40−
PA135:−(AA)70−(PAV−27)30−
PA136:−(AA)80−(PAV−28)20−
PA137:−(AA)70−(PAV−29)30−
PA138:−(AA)60−(PAV−30)40−
PA139:−(AA)70−(PAV−31)30−
PA140:−(AA)70−(PAV−32)30−
PA141:−(AA)60−(PAV−33)40−
PA142:−(AA)70−(PAV−34)30−
PA143:−(AA)70−(PAV−35)30−
【0081】
PA201:−(MA)70−(PAV−1)30−
PA202:−(MA)60−(PAV−1)40−
PA203:−(MA)50−(PAV−1)50−
PA204:−(MA)40−(PAV−1)60−
PA205:−(MA)60−(PAV−2)40−
PA206:−(MA)60−(PAV−3)40−
PA207:−(MA)60−(PAV−4)40−
PA208:−(MA)60−(PAV−5)40−
PA209:−(MA)40−(PAV−6)40−
PA210:−(MA)50−(PAV−7)50−
PA211:−(MA)70−(PAV−8)30−
【0082】
PA212:−(MA)60−(PAV−9)40−
PA213:−(MA)60−(PAV−10)40−
PA214:−(MA)60−(PAV−11)40−
PA215:−(MA)50−(PAV−12)50−
PA216:−(MA)50−(PAV−13)50−
PA217:−(MA)70−(PAV−14)30−
PA218:−(MA)50−(PAV−15)50−
PA219:−(MA)60−(PAV−16)40−
PA220:−(MA)60−(PAV−17)40−
PA221:−(MA)60−(PAV−18)40−
PA222:−(MA)60−(PAV−19)40−
【0083】
PA223:−(MA)75−(PAV−20)25−
PA224:−(MA)60−(PAV−20)40−
PA225:−(MA)70−(PAV−21)30−
PA226:−(MA)80−(PAV−22)20−
PA227:−(MA)70−(PAV−22)30−
PA228:−(MA)60−(PAV−22)40−
PA229:−(MA)70−(PAV−23)30−
PA230:−(MA)70−(PAV−24)30−
PA231:−(MA)80−(PAV−25)20−
PA232:−(MA)70−(PAV−25)30−
PA233:−(MA)60−(PAV−25)40−
【0084】
PA234:−(MA)60−(PAV−26)40−
PA235:−(MA)70−(PAV−27)30−
PA236:−(MA)80−(PAV−28)20−
PA237:−(MA)70−(PAV−29)30−
PA238:−(MA)60−(PAV−30)40−
PA239:−(MA)70−(PAV−31)30−
PA240:−(MA)70−(PAV−32)30−
PA241:−(MA)60−(PAV−33)40−
PA242:−(MA)70−(PAV−34)30−
PA243:−(MA)70−(PAV−35)30−
【0085】
前記式(PAIV)で表される繰り返し単位を含む直交配向膜は、いわゆる変性ポリビニルアルコールであり、変性ポリビニルアルコールのポリビニルアルコール部分は、ケン化度が100%である必要はない。言い換えると、変性ポリビニルアルコールは、下記式(PAVI)で表される酢酸ビニルに対応する繰り返し単位を含むことができる。
【0086】
【化25】
【0087】
前記式(PAVI)において、kは、0.01〜20モル%である。
以下に、好ましい変性ポリビニルアルコールの例を示す。(PAIV)は、前記式(PAIV)で表されるビニルアルコールに対応する繰り返し単位であり、(PAVI)は、前記式(PAVI)で表される酢酸ビニルに対応する繰り返し単位である。繰り返し単位の割合は、モル%である。
【0088】
VA101:−(PAIV)58−(PAV−1)30−(PAVI)12−
VA102:−(PAIV)48−(PAV−1)40−(PAVI)12−
VA103:−(PAIV)38−(PAV−1)50−(PAVI)12−
VA104:−(PAIV)28−(PAV−1)60−(PAVI)12−
VA105:−(PAIV)48−(PAV−2)40−(PAVI)12−
VA106:−(PAIV)12−(PAV−3)40−(PAVI)12−
VA107:−(PAIV)12−(PAV−4)40−(PAVI)12−
VA108:−(PAIV)12−(PAV−5)40−(PAVI)12−
VA109:−(PAIV)28−(PAV−6)40−(PAVI)12−
VA110:−(PAIV)38−(PAV−7)50−(PAVI)12−
VA111:−(PAIV)58−(PAV−8)30−(PAVI)12−
【0089】
VA112:−(PAIV)12−(PAV−9)40−(PAVI)12−
VA113:−(PAIV)12−(PAV−10)40−(PAVI)12−
VA114:−(PAIV)12−(PAV−11)40−(PAVI)12−
VA115:−(PAIV)38−(PAV−12)50−(PAVI)12−
VA116:−(PAIV)38−(PAV−13)50−(PAVI)12−
VA117:−(PAIV)58−(PAV−14)30−(PAVI)12−
VA118:−(PAIV)38−(PAV−15)50−(PAVI)12−
VA119:−(PAIV)48−(PAV−16)40−(PAVI)12−
VA120:−(PAIV)48−(PAV−17)40−(PAVI)12−
VA121:−(PAIV)48−(PAV−18)40−(PAVI)12−
VA122:−(PAIV)48−(PAV−19)40−(PAVI)12−
【0090】
VA123:−(PAIV)63−(PAV−20)25−(PAVI)12−
VA124:−(PAIV)48−(PAV−20)40−(PAVI)12−
VA125:−(PAIV)58−(PAV−21)30−(PAVI)12−
VA126:−(PAIV)68−(PAV−22)20−(PAVI)12−
VA127:−(PAIV)58−(PAV−22)30−(PAVI)12−
VA128:−(PAIV)48−(PAV−22)40−(PAVI)12−
VA129:−(PAIV)58−(PAV−23)30−(PAVI)12−
VA130:−(PAIV)58−(PAV−24)30−(PAVI)12−
VA131:−(PAIV)68−(PAV−25)20−(PAVI)12−
VA132:−(PAIV)58−(PAV−25)30−(PAVI)12−
VA133:−(PAIV)48−(PAV−25)40−(PAVI)12−
【0091】
VA134:−(PAIV)48−(PAV−26)40−(PAVI)12−
VA135:−(PAIV)58−(PAV−27)30−(PAVI)12−
VA136:−(PAIV)68−(PAV−28)20−(PAVI)12−
VA137:−(PAIV)58−(PAV−29)30−(PAVI)12−
VA138:−(PAIV)48−(PAV−30)40−(PAVI)12−
VA139:−(PAIV)58−(PAV−31)30−(PAVI)12−
VA140:−(PAIV)58−(PAV−32)30−(PAVI)12−
VA141:−(PAIV)48−(PAV−33)40−(PAVI)12−
VA142:−(PAIV)58−(PAV−34)30−(PAVI)12−
VA143:−(PAIV)58−(PAV−35)30−(PAVI)12−
【0092】
[垂直配向膜]
ディスコティック液晶性分子を垂直に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させることが重要である。具体的には、ポリマーの官能基により配向膜の表面エネルギーを低下させ、これによりディスコティック液晶性分子を立てた状態にする。配向膜の表面エネルギーを低下させる官能基としては、炭素原子数が10以上の炭化水素基が有効である。炭化水素基を配向膜の表面に存在させるために、ポリマーの主鎖よりも側鎖に炭化水素基を導入することが好ましい。炭化水素基は、脂肪族基、芳香族基またはそれらの組み合わせである。脂肪族基は、環状、分岐状あるいは直鎖状のいずれでもよい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基であってもよい)またはアルケニル基(シクロアルケニル基であってもよい)であることが好ましい。炭化水素基は、ハロゲン原子のような強い親水性を示さない置換基を有していてもよい。炭化水素基の炭素原子数は、10〜100であることが好ましく、10〜60であることがさらに好ましく、10〜40であることが最も好ましい。ポリマーの主鎖は、ポリイミド構造またはポリビニルアルコール構造を有することが好ましい。
【0093】
ポリイミドは、一般にテトラカルボン酸とジアミンとの縮合反応により合成する。二種類以上のテトラカルボン酸あるいは二種類以上のジアミンを用いて、コポリマーに相当するポリイミドを合成してもよい。炭化水素基は、テトラカルボン酸起源の繰り返し単位に存在していても、ジアミン起源の繰り返し単位に存在していても、両方の繰り返し単位に存在していてもよい。ポリイミドに炭化水素基を導入する場合、ポリイミドの主鎖または側鎖にステロイド構造を形成することが特に好ましい。側鎖に存在するステロイド構造は、炭素原子数が10以上の炭化水素基に相当し、ディスコティック液晶性分子を垂直に配向させる機能を有する。本明細書においてステロイド構造とは、シクロペンタノヒドロフェナントレン環構造またはその環の結合の一部が脂肪族環の範囲(芳香族環を形成しない範囲)で二重結合となっている環構造を意味する。
【0094】
炭素原子数が10以上の炭化水素基を有する変性ポリビニルアルコールも垂直配向膜に好ましく用いることができる。炭化水素基は、脂肪族基、芳香族基またはそれらの組み合わせである。脂肪族基は、環状、分岐状あるいは直鎖状のいずれでもよい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基であってもよい)またはアルケニル基(シクロアルケニル基であってもよい)であることが好ましい。炭化水素基は、ハロゲン原子のような強い親水性を示さない置換基を有していてもよい。炭化水素基の炭素原子数は、10〜100であることが好ましく、10〜60であることがさらに好ましく、10〜40であることが最も好ましい。炭化水素基を有する変性ポリビニルアルコールは、炭素原子数が10以上の炭化水素基を有する繰り返し単位を2〜80モル%の範囲で含むことが好ましく、3〜70モル%含むことがさらに好ましい。
【0095】
好ましい炭素原子数が10以上の炭化水素基を有する変性ポリビニルアルコールを、下記式(PAVII)で表す。
(PAVII)
−(VAl)x−(HyC)y−(VAc)z−
式中、VAlはビニルアルコール繰り返し単位であり、HyCは炭素原子数が10以上の炭化水素基を有する繰り返し単位であり、VAcは酢酸ビニル繰り返し単位であり、xは20〜95モル%(好ましくは25〜90モル%)であり、yは2〜80モル%(好ましくは3〜70モル%)であり、zは0〜30モル%(好ましくは2〜20モル%)である。
好ましい炭素原子数が10以上の炭化水素基を有する繰り返し単位(HyC)を、下記式(HyC−I)および(HyC−II)で表す。
【0096】
【化26】
【0097】
式中、L1は、−O−、−CO−、−SO2−、−NH−、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基であり、L2は単結合、または−O−、−CO−、−SO2−、−NH−、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基であり、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素原子数が10以上の炭化水素基である。上記の組み合わせにより形成される二価の連結基の例を、以下に示す。
【0098】
L1:−O−CO−
L2:−O−CO−アルキレン基−O−
L3:−O−CO−アルキレン基−CO−NH−
L4:−O−CO−アルキレン基−NH−SO2−アリーレン基−O−
L5:−アリーレン基−NH−CO−
L6:−アリーレン基−CO−O−
L7:−アリーレン基−CO−NH−
L8:−アリーレン基−O−
L9:−O−CO−NH−アリーレン基−NH−CO−
【0099】
垂直配向膜に用いるポリマーの重合度は、200〜5000であることが好ましく、300〜3000であることが好ましい。ポリマーの分子量は、9,000〜200,000であることが好ましく、13,000〜130,000であることがさらに好ましい。二種類以上のポリマーを併用してもよい。垂直配向膜の形成において、ラビング処理を実施することが好ましい。ラビング処理は、上記のポリマーを含む膜の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。なお、垂直配向膜を用いてディスコティック液晶性分子を垂直に配向させてから、その配向状態のままディスコティック液晶性分子を固定して光学異方性層を形成し、光学異方性層のみをポリマーフィルム等の透明支持体)上に転写してもよい。垂直配向状態で固定されたディスコティック液晶性分子は、垂直配向膜がなくても配向状態を維持することができる。
【0100】
いずれの配向膜においても、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。
【0101】
[透明支持体]
透明支持体としては、波長分散が小さいポリマーフィルムを用いることが好ましい。透明支持体は、光学異方性が小さいことも好ましい。支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。波長分散が小さいとは、具体的には、Re400/Re700の比が1.2未満であることが好ましい。光学異方性が小さいとは、具体的には、面内レターデーション(Re)が20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。長尺状の透明支持体は、ロール状または長方形のシート状の形状を有する。ロール状の透明支持体を用いて、光学異方性層を積層してから、必要な大きさに切断することが好ましい。ポリマーの例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートが含まれる。セルロースエステルが好ましく、アセチルセルロースがさらに好ましく、トリアセチルセルロースが最も好ましい。ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明支持体の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、垂直配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
【0102】
[上層の液晶性化合物の配向制御用重合性モノマー]
本明細書において、「重合性モノマー」とは特記がない限り、上層の液晶性化合物の配向制御用の重合性モノマーを意味する。
上層は、下層の形成用塗布液と同様の材料を用いて上層の形成用塗布液を調製し、該塗布液を下層の表面に塗布することにより作製することができる。下層の表面に実質的に配向膜を形成せずに、上層を形成するために、本発明では、下層中に上層の配向膜として機能する重合性モノマーを添加する。液晶性化合物と重合性モノマーとの混合物を塗布すると、重合性モノマーは下層の上部(空気界面側)に速やかに移動し、移動した重合性モノマーは、その後の重合により、下層の表面に上層の配向膜として機能し得る領域を形成する。本発明では、液晶性化合物と重合性モノマーとの混合物を用いることにより、混合物の相分離を速やかに生じさせ、該混合物を塗布、乾燥および重合による固定化後、引き続きラビングするという製造プロセスを効率よく行うことを可能としている。また、液晶性化合物は配向膜側はほぼ水平であっても空気界面側では傾斜角を持って配向するため、層中には、光学的にムラが生じる傾向がある。前記重合性モノマーは、空気界面側での液晶性化合物の傾斜配向の角度を低減する機能をも有する。その結果、実質的に配向膜を形成することなく、所望の配向状態にある液晶性化合物を含有する上層を迅速且つ安定的に形成することができる。
【0103】
本発明で用いる重合性モノマーとしては、芳香環を3つ以上有することが好ましく、更に好ましくは4つ以上である。なお、縮環構造を有する場合は縮環構造を構成している環のそれぞれを1つとみなす。重合性基としては前述の重合性液晶で挙げたものが好ましく、重合性モノマーとともに用いる液晶性化合物が重合性液晶の場合は、同一の重合方法により重合反応が進行し、固化する重合性基を有することが好ましい。重合性モノマーの重合性基の数としては分子内に1つ以上あればよい。また複数種の重合性モノマーを併用して用いてもよい。該重合性モノマーの分子量としては、相分離速度の観点から2,500以下が好ましく、更に好ましくは2,000以下、特に好ましくは1,500以下である。
なお、本発明において、重合性モノマーは液晶層の空気界面側に多く偏在し、重合した形態で存在する。
【0104】
前記重合性モノマーとしては、下記一般式(V)で表される化合物が好ましい。
一般式(V)
(Hb−L51−)nB51
前記一般式(V)で表される化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性基を有する。重合性基としては、前述の重合性棒状液晶性化合物の重合性基の例と同様である。
【0105】
式(V)において、Hbは、炭素原子数が6〜40の脂肪族基または炭素原子数が6〜40の脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を表す。Hbは、炭素原子数が6〜40の脂肪族基であることが好ましく、炭素原子数が6〜40のフッ素置換脂肪族基または炭素原子数が6〜40の分岐を有する脂肪族基であることがさらに好ましく、炭素原子数が6〜40のフッ素置換アルキル基もしくは炭素原子数が6〜40の分岐を有するアルキル基であることが最も好ましい。
【0106】
脂肪族基は、環状脂肪族基よりも鎖状脂肪族基の方が好ましい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、7〜35であることが好ましく、8〜30であることがより好ましく、9〜25であることがさらに好ましく、10〜20であることが最も好ましい。
脂肪族基には、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基および置換アルキニル基が含まれる。アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基および置換アルケニル基が好ましく、アルキル基および置換アルキル基がさらに好ましい。
脂肪族基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、置換アルコキシ基(例えば、オリゴアルコキシ基)、アルケニルオキシ基(例、ビニルオキシ)、アシル基(例、アクリロイル、メタクリロイル)、アシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ、ベンゾイルオキシ)、スルファモイル基、脂肪族置換スルファモイル基およびエポキシアルキル基(例、エポキシエチル)が含まれる。置換基としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がさらに好ましい。フッ素置換脂肪族基において、フッ素原子が脂肪族基の水素原子を置換している割合は、50〜100%であることが好ましく、60〜100%であることがより好ましく、70〜100%であることがさらに好ましく、80〜100%であることがさらにまた好ましく、85〜100%であることが最も好ましい。
【0107】
前記脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基の炭素原子数は、7〜35であることが好ましく、8〜30であることがより好ましく、9〜25であることがさらに好ましく、10〜20であることが最も好ましい。脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基は、下記式で表される。
R51−(Si(R52)2−O)q−
式中、R51は水素原子、ヒドロキシルまたは脂肪族基を表し;R52は水素原子、脂肪族基またはアルコキシ基を表し;そして、qは1〜12のいずれかの整数を表す。R51およびR52でそれぞれ表される脂肪族基は、環状脂肪族基よりも鎖状脂肪族基の方が好ましい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが特に好ましい。R51およびR52でそれぞれ表される脂肪族基には、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基および置換アルキニル基が含まれる。アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基および置換アルケニル基が好ましく、アルキル基および置換アルキル基がさらに好ましい。
R51およびR52でそれぞれ表される脂肪族基は、置換基を有していてもよく、該置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、置換アルコキシ基(例えば、オリゴアルコキシ基)、アルケニルオキシ基(例、ビニルオキシ)、アシル基(例、アクリロイル、メタクリロイル)、アシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ、ベンゾイルオキシ)、スルファモイル基、脂肪族置換スルファモイル基およびエポキシアルキル基(例、エポキシエチル)が含まれる。
【0108】
R52で表されるアルコキシ基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることがさらにまた好ましい。
以下に、Hbの例を示す。
【0109】
Hb1:n−C16H33−
Hb2:n−C20H41−
Hb3:n−C6 H13−CH(n−C4H9)−CH2−CH2−
Hb4:n−C12H25−
Hb5:n−C18H37−
Hb6:n−C14H29−
Hb7:n−C15H31−
Hb8:n−C10H21−
Hb9:n−C10H21−CH(n−C4H9)−CH2−CH2−
Hb10:n−C8F17−
【0110】
Hb11:n−C8H17−
Hb12:CH(CH3)2−{C3H6−CH(CH3)}3−C2H4−
Hb13:CH(CH3)2−{C3H6−CH(CH3)}2−C3H6−C(CH3)=CH−CH2−
Hb14:n−C8H17−CH(n−C6H13)−CH2−CH2−
Hb15:n−C6H13−CH(C2H5)−CH2−CH2−
Hb16:n−C8F17−CH(n−C4F9)−CH2−
Hb17:n−C8F17−CF(n−C6F13)−CF2−CF2−
Hb18:n−C3F7−CF(CF3)−CF2−
Hb19:Si(CH3)3−{Si(CH3)2−O}6−O−
Hb20:Si(OC3H7)(C16F33)(C2H4−SO2−NH−C8F17)−O−
【0111】
前記式(V)において、L51は、単結合または二価の連結基を表す。前記二価の連結基は、−アルキレン基−、−フッ素置換アルキレン基−、−O−、−S−、−CO−、−NR−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる基であることが好ましい。Rは、水素原子または炭素原子数が1〜20のアルキル基である。水素原子または炭素原子数が1〜15のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数が1〜12のアルキル基であることがより好ましい。
上記アルキレン基またはフッ素置換アルキレン基の炭素原子数は、1〜40であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることがさらに好ましく、1〜15であることがさらにまた好ましく、1〜12であることが最も好ましい。
以下に、L51の例を示す。左側がHbに結合し、右側がB51に結合する。
【0112】
L5110:単結合
L5111:−O−
L5112:−O−CO−
L5113:−CO−C4H8−O−
L5114:−O−C2H4−O−C2H4−O−
L5115:−S−
L5116:−N(n−C12H25)−
L5117:−SO2−N(n−C3H7)−CH2CH2−O−
L5118:−O−{CF(CF3)−CF2−O}3−CF(CF3)−
【0113】
前記式(V)において、nは2〜12のいずれかの整数を表す。nは2〜9のいずれかの整数であることが好ましく、2〜6のいずれかの整数であることがより好ましく、2、3または4であることがさらに好ましく、3または4であることが最も好ましい。
【0114】
前記式(V)において、B51は、少なくとも三つの環状構造を含む排除体積効果を有するn価の基である。B51は下記式(V−a)で表されるn価の基であることが好ましい。
一般式(V−a)
(−Cy51−L52−)nCy52
前記式(V−a)において、Cy51は二価の環状基を表す。Cy51は二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基を表すのが好ましく、二価の芳香族炭化水素基を表すのがより好ましい。
二価の芳香族炭化水素基とは、アリーレン基および置換アリーレン基を意味する。
アリーレン基の例には、フェニレン基、インデニレン基、ナフチレン基、フルオレニレン基、フェナントレニレン基、アントリレン基およびピレニレン基が含まれる。フェニレン基およびナフチレン基が好ましい。
置換アリーレン基の置換基の例には、脂肪族基、芳香族炭化水素基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、プロピルアミノ基)、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基)、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基およびウレイド基が含まれる。
二価の芳香族炭化水素基に、別の芳香族炭化水素環が単結合、ビニレン結合またはエチニレン結合を介して置換基として結合していると、液晶配向促進機能が得られる。
また、Hb−L51−に相当する基を、置換基として有してもよい。
【0115】
Cy51で表される二価の複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。前記複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。
【0116】
複素環に、他の複素環、脂肪族環または芳香族炭化水素環が縮合していてもよい。縮合複素環の例には、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、インドリン環、イソインドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、クロメン環、クロマン環、イソクロマン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、キサンテン環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、フェノキサジン環、チアントレン環、インドリジン環、キノリジン環、キヌクリジン環、ナフチリジン環、プリン環およびプテリジン環が含まれる。
二価の複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、置換アリーレン基の置換基の例と同様である。
二価の複素環基は、複素原子(例えば、ピペリジン環の窒素原子)で、L52または(L52が単結合の場合)分子中心の環状基(Cy52)と結合してもよい。また、結合する複素原子がオニウム塩(例、オキソニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩)を形成していてもよい。
【0117】
Cy51および後述するCy52の環状構造が、全体として平面構造を形成していてもよい。環状構造が全体として平面構造(すなわち円盤状構造)を形成していると、液晶配向促進機能が得られる。
以下に、Cy51の例を示す。複数のHb−L51−に相当する基が二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基に結合している場合、いずれか一つが前記式で定義するHb−L51−であって、残りは二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基の置換基である。
【0118】
【化27】
【0119】
【化28】
【0120】
【化29】
【0121】
【化30】
【0122】
【化31】
【0123】
【化32】
【0124】
【化33】
【0125】
式(V−a)において、L52は、単結合または−アルキレン基−、−アルケニレン基−、−アルキニレン基−、−O−、−S−、−CO−、−NR−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。Rは、水素原子または炭素原子数が1〜30のアルキル基を表す。L52は、−O−、−S−、−CO−、−NR−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。Rは水素原子または炭素原子数が1〜20のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数が1〜15のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子または炭素原子数が1〜12のアルキル基であることが最も好ましい。
上記アルキレン基の炭素原子数は、1〜40であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜20であることがさらに好ましく、1〜15であることがさらにまた好ましく、1〜12であることが最も好ましい。
上記アルケニレン基またはアルキニレン基の炭素原子数は、2〜40であることが好ましく、2〜30であることがより好ましく、2〜20であることがさらに好ましく、2〜15であることがさらにまた好ましく、2〜12であることが最も好ましい。
以下に、L52の例を示す。左側がCy51に結合し、右側がCy52に結合する。
【0126】
L20:単結合
L21:−S−
L22:−NH−
L23:−NH−SO2−NH−
L24:−NH−CO−NH−
L25:−SO2−
L26:−O−NH−
L27:−C≡C−
L28:−CH=CH−S−
L29:−CH2−O−
L30:−N(CH3)−
L31:−CO−O−
【0127】
前記式(V−a)において、nは2〜12のいずれかの整数を表す。nは2〜9のいずれかの整数であることが好ましく、2〜6のいずれかの整数であることがより好ましく、2、3または4であることがさらに好ましく、3または4であることが最も好ましい。
前記式(V−a)において、Cy52は、n価の環状基である。Cy52は、n価の芳香族炭化水素基またはn価の複素環基であることが好ましい。
Cy52で表される芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素環の例には、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環およびピレン環が含まれる。ベンゼン環およびナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
Cy52で表される芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、脂肪族基、芳香族炭化水素基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、プロピルアミノ基)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ基)、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基)、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基およびウレイド基が含まれる。
【0128】
Cy52で表される複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。前記複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。前記複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。前記複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。トリアジン環が好ましく、1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
前記複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族炭化水素環が縮合していてもよい。ただし、単環式複素環が好ましい。
以下に、Cy52の例を示す。
【0129】
【化34】
【0130】
【化35】
【0131】
【化36】
【0132】
【化37】
【0133】
重合性モノマーは、以上述べた疎水性基(Hb)、連結基(L51)および排除体積効果を有する基(B51)を組み合わせた化合物である。これらの組み合わせについて、特に制限はない。
以下に本発明に使用可能な重合性モノマーの例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0134】
【化38】
【0135】
【化39】
【0136】
【化40】
【0137】
【化41】
【0138】
本発明に用いられる重合性モノマーは、例えば特開2002−20363号公報に記載の方法等を参考にして合成することができる。
【0139】
前記重合性モノマーの添加量は、併用する液晶性化合物に対して、0.05質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%〜5質量%がより好ましい。
【0140】
上層形成用の塗布液を塗布する前には、下層の表面に、ラビング処理を実施することが好ましい。ラビング処理は、上記重合性モノマーを含有する下層(層中、重合性モノマーは重合された形態にある)の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施することができる。
【0141】
前記重合性モノマーは縮合剤と併用してもよい。縮合剤としてはイソシアネート基またはホルミル基を末端に有する化合物が好ましい。以下に具体的な化合物を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
ポリ(1,4−ブタンジオール)、イソホロンジイソシアネートターミネーテッド
ポリ(1,4−ブタンジオール)、トリレン2,4−ジイソシアネートターミネーテッド
ポリ(エチレンアジペート)、トリレン2,4−ジイソシアネートターミネーテッド
ポリ(プロピレングリコール)、トリレン2,4−ジイソシアネートターミネーテッド
1、6−ジイソシアナートヘキサン
1、8−ジイソシアナートオクタン
1、12−ジイソシアナートドデカン
イソホロンジイソシアナート
グリオキザール
【0143】
[楕円偏光板]
本発明において、円偏光板は楕円偏光板に含まれる。
本発明の位相差フィルムは、反射型液晶表示装置において使用されるλ/4板、光ディスクの書き込み用のピックアップに使用されるλ/4板、あるいは反射防止膜として利用されるλ/4板として、特に有利に用いることができる。λ/4板は、一般に偏光膜と組み合わせた楕円偏光板として使用される。よって、位相差フィルムと偏光膜とを組み合わせた楕円偏光板として構成しておくと、容易に反射型液晶表示装置のような用途とする装置に組み込むことができる。偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。偏光膜の透過軸は、フイルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。偏光膜は、一般に両側に保護膜を有する。ただし、本発明では、透明支持体を偏光膜の片側の保護膜として機能させることができる。透明支持体とは別に保護膜を用いる場合は、保護膜として光学的等方性が高いセルロースエステルフイルム、特にトリアセチルセルロースフイルムを用いることが好ましい。
【0144】
広域帯λ/4とは、具体的には、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したレターデーション値/波長の値が、いずれも0.2〜0.3の範囲内であることを意味する。レターデーション値/波長の値は、0.21〜0.29の範囲内であることが好ましく、0.22〜0.28の範囲内であることがより好ましい。
【0145】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[合成例]
(例示化合物(1)の合成)
【0146】
【化42】
【0147】
化合物I−a(22mmol)をメチルエチルケトン(50mL)に溶解し、氷水で冷却した。そこに化合物I−b(43mmol)のメチルエチルケトン(60mL)溶液とトリエチルアミン(44mmol)を30℃以下の温度を保つように滴下し、その後、反応液を3時間還流した。室温に冷却後、酢酸エチル(200mL)を加え、水洗した。有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/7(体積比))にて精製し、化合物I−cを62%の収率で得た。
【0148】
次に、化合物I−c(1mmol)と、化合物1−d(1mmol)の混合物をメチルエチルケトン(20mL)に溶かし、そこにトリエチルアミン(1.5mmol)を加え、4時間還流した。その後、酢酸エチル(100mL)を加え、水洗および濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/1(体積比))にて精製し、化合物I−eを60%の収率で得た。
得られた化合物1−e(0.3mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミド(5mL)に溶かし、そこにアクリル酸クロライド(0.9mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。酢酸エチル(40mL)を加え、水洗および濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/2(体積比))にて精製し、例示化合物(1)を36%の収率で得た。
【0149】
[実施例1]
厚さ100μm、幅150mm、長さ200mmの光学的に等方性のトリアセチルセルロースフィルムを透明支持体として用いた。配向膜(下記構造式のポリマー)の希釈液を透明支持体の片面に連続塗布し、厚さ0.5μmの配向膜を形成した。次いで、透明支持体の長手方向に対し左手30°の方向に連続的にラビング処理を実施した。
【0150】
配向膜用ポリマー
【化43】
【0151】
配向膜の上に、下記の組成の塗布液をバーコーターを用いて連続的に塗布、乾燥、および加熱(配向熟成、80℃/10秒)し、さらに紫外線照射して厚さ2.0μmの光学異方性層(A)を形成した。光学異方性層は透明支持体の長手方向に対して30°の方向に遅相軸を有していた。550nmにおけるレターデーション値(Re550)は265nmであった。
光学異方性層塗布液組成
下記の棒状液晶性化合物(1) 14.5質量部
下記の増感剤(1) 0.15質量部
下記の光重合開始剤(1) 0.29質量部
例示化合物(1) 2.00質量部
メチルエチルケトン 84.96質量部
【0152】
棒状液晶化合物(1)
【化44】
【0153】
増感剤(1)
【化45】
【0154】
光重合開始剤(1)
【化46】
【0155】
上記で作製した光学異方性層(A)の遅相軸に対し右手60°であり、かつ支持体の長手方向に対し右手30°になるように連続的にラビング処理を施した。
【0156】
該配向膜の上に、下記の組成の塗布液を、バーコーターを用いて連続的に塗布、乾燥、および加熱(配向熟成)し、さらに紫外線照射して厚さ1.0μmの光学異方性層(B)を形成することにより位相差フィルム95を作製した。
光学異方性層(B)塗布液組成
上記棒状液晶性化合物(1) 13.0質量部
上記増感剤(1) 0.13質量部
上記光重合開始剤(1) 0.39質量部
例示化合物(1) 2.00質量部
メチルエチルケトン 86.35質量部
【0157】
[比較例1]
例示化合物(1)の替わりに下記ポリマー型添加剤PX−1を0.15質量%添加し、実施例1と同様に光学異方性層(A)を作製した。次いで、該配向膜を、光学異方性層(A)の遅相軸に対し右手60°であり、かつ支持体の長手方向に対し右手30°になるように連続的にラビング処理を施し、以下実施例1と同様に光学異方性層(B)を形成することにより位相差フィルム95’を作製した。
【0158】
添加剤 PX−1 (式中の括弧の右下の数字はモル%を表す)
【化47】
【0159】
[比較例2]
(光学異方性層(A)と(B)との間に配向膜を設置した態様)
実施例1と同様に光学異方性層(A)を作製し、さらに実施例1で用いた配向膜の希釈液を光学異方性層(A)の上に連続塗布し、厚さ0.5μmの配向膜を形成した。次いで、該配向膜を、光学異方性層(A)の遅相軸に対し右手60°であり、かつ支持体の長手方向に対し右手30°になるように連続的にラビング処理を施し、以下実施例1と同様に光学異方性層(B)を形成することにより位相差フィルム95’’を作製した。
【0160】
[参考例1]
(光学異方性層(A)用の塗布液に配向制御剤を用いずに直接光学異方性層(B)を積層した態様)
実施例1の光学異方性層(A)用の塗布液の調製において、例示化合物(1)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして塗布液を調製し、光学異方性層(A)を形成した。得られた光学異方性層(A)を偏光顕微鏡で観察すると、ほぼモノドメインであるが海島状の欠陥が生じていた。得られた光学異方性層(A)を、光学異方性層(A)の遅相軸に対し右手60°であり、かつ支持体の長手方向に対し右手30°になるように連続的にラビング処理を施し、以下実施例1と同様に光学異方性層(B)を形成することにより位相差フィルム95’’’を作製した。
【0161】
[実施例2]
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、特開2002−86554号公報の図2の形態のテンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、テンターを延伸方向に対し特開2002−86554号公報の図2の如く屈曲させ、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱した。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心線のなす角は、46゜であった。ここで、|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口における実質延伸方向Ax−Cxは、次工程へ送られるフィルムの中心線22に対し45゜傾斜していた。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
さらに、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤としてケン化処理した富士写真フイルム(株)製フジタック(セルローストリアセテート、レターデーション値3.0nm)と貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して有効幅650mmの偏光板を得た。
得られた偏光板の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜していた。この偏光板の550nmにおける透過率は43.7%、偏光度は99.97%であった。さらに特開2002−86554号公報の図8の如く310×233mmサイズに裁断したところ、91.5%の面積効率で辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光板を得ることができた。
【0162】
次に、図1のように、上記で作製したヨウ素系偏光フィルム91の片面上に実施例1で作製した位相差フィルム95を設け、他方の面上にケン化処理した防眩性反射防止フィルム96を貼り合わせて、円偏光板92を作製した。このとき、偏光膜と位相差フィルムの長手方向が一致するように貼り合わせて、円偏光板を作製した。
【0163】
[比較例3]
位相差フィルム95に替えて、比較例1で作製した位相差フィルム95’を用いた以外は、円偏光板92と同様にして円偏光板101を作製した。このとき偏光膜と位相差フィルムの長手方向が一致するように貼り合わせて円偏光板を作製した。
[比較例4]
位相差フィルム95に替えて、比較例2で作製した位相差フィルム95’’を用いた以外は、円偏光板92と同様にして円偏光板102を作製した。このとき偏光膜と位相差フィルムの長手方向が一致するように貼り合わせて円偏光板を作製した。
[参考例2]
位相差フィルム95に替えて、参考例1で作製した位相差フィルム95’’’を用いた以外は、円偏光板92と同様にして円偏光板103を作製した。このとき偏光膜と位相差フィルムの長手方向が一致するように貼り合せて円偏光板を作製した。
【0164】
得られた円偏光板92、101〜103の防眩性反射防止フィルム側から光(測定波長は450nm、550nm、および650nm)を照射し、通過した光の位相差(レターデーション値:Re)を測定した。また、円偏光板に加工する前の位相差フィルムを偏光顕微鏡下で観察し、配向欠陥の数を調べた結果を下記表に示す
【0165】
【表1】
【0166】
表1に示す結果から、本発明の構成に従えば欠陥の少ない安定した円偏光板が作製できることがわかった。
添加剤として高分子を用いた比較例1では、液晶の配向および相分離が遅く、80℃/10秒の熟成時間では欠陥が多く、評価不能のサンプルしか得られなかった。中間に配向膜を設置せず、かつ、配向制御剤を用いずに光学異方性層をラビングしても第1光学異方性層と第2光学異方性層は目的の交差角で遅相軸が交差せずに目的の光学特性は得られなかった(参考例2)。
【0167】
[実施例3]
液晶化合物として下記PLC−1を用い、熟成時間を120℃/2分にした以外は実施例1と同様の方法で位相差フィルム110を作製した。この位相差フィルム110を用い、実施例2の方法に準じて円偏光板111を作製した。
その結果、実施例2と同様に欠陥の少ない、良好な円偏光板が作製できた。
【0168】
PLC−1
【化48】
【0169】
【発明の効果】
本発明によれば、上層の液晶性化合物を配向させるための配向膜の塗布を実質的に行わずに、液晶性化合物の配向を固定化した層を複数有する位相差フィルム、それを用いた楕円偏光板およびその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、良好な性能を有するとともに、別途配向膜を形成しないため製造プロセスが簡略化でき、容易且つ低コストで安定的に作製可能な位相差フィルム、それを用いた楕円偏光板および該位相差フィルムの製造方法を提供することができる。さらに、工程数が少なくなるため、歩留まりの向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で作製した円偏光板の層構成を示す断面概略図である。
【符号の説明】
91 実施例2で作製したヨウ素系偏光フィルム
92 実施例2で作製した円偏光板
95 実施例1で作製した位相差フィルム
96 防眩性反射防止フィルム
Claims (11)
- 支持体上に、配向が固定された液晶性化合物から形成される層を少なくとも2層有する位相差フィルムであって、配向が固定された少なくとも一種の第一の液晶性化合物と少なくとも一種の重合性モノマーとから形成される第一の層と、その上に配向が固定された少なくとも一種の第二の液晶性化合物から形成される第二の層とを有し、第一の層と第二の層との間に実質的に配向膜がない位相差フィルム。
- さらに支持体上に配向膜を含む請求項1に記載の位相差フィルム。
- さらに第一の層の上面がラビング処理された表面を有する請求項1または2に記載の位相差フィルム。
- 第一の層の遅相軸と、第二の層の遅相軸とが同じでない請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 第一の層の遅相軸と第二の層の遅相軸のなす角度が実質的に60度であり、一方の層の波長550nmにおける位相差が実質的にπであり、もう一方の層の波長550nmにおける位相差が実質的にπ/2である請求項1〜4のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 重合性モノマーが、構造中に芳香族環を三環以上有する化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 重合性モノマーが下記一般式(V)で表される化合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
一般式(V)
(Hb−L51−)nB51
(式中、Hbは、炭素原子数が6〜40の脂肪族基または炭素原子数が6〜40の脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を表し、L51は、単結合または二価の連結基を表し、B51は、少なくとも三つの環状構造を含む排除体積効果を有するn価の基を表し、nは2〜12のいずれかの整数を表す。但し、前記一般式(V)で表される化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性基を有する。) - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の位相差フィルムと偏光膜とを有する楕円偏光板。
- 支持体上に、配向が固定された液晶性化合物から形成される層を少なくとも2層有する位相差フィルムの製造方法であって、
少なくとも一種の第一の液晶性化合物と少なくとも一種の重合性モノマーとを含む塗布液を支持体上に塗布した後、第一の液晶性化合物の配向を固定化して第一の層を形成する工程と、
第一の層の上に少なくとも一種の第二の液晶性化合物を含む塗布液を塗布した後、第二の液晶性化合物の配向を固定化して第二の層を形成する工程と、を含む位相差フィルムの製造方法。 - 第一の層を形成する工程の前に、さらに支持体の上面に配向膜を形成する工程を含む請求項9に記載の製造方法。
- 第二の層を形成する工程の前に、さらに第一の層の上面をラビング処理する工程を含む請求項9または10に記載の製造方法。
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JP2002285565A JP2004125842A (ja) | 2002-09-30 | 2002-09-30 | 位相差フィルム、その製造方法および楕円偏光板 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2012090785A1 (ja) | 2010-12-27 | 2012-07-05 | Dic株式会社 | 立体画像表示装置用複屈折レンズ材料、及び、立体画像表示装置用複屈折レンズの製造方法 |
JP2015197526A (ja) * | 2014-03-31 | 2015-11-09 | 大日本印刷株式会社 | 位相差フィルム |
US9625629B2 (en) | 2013-12-05 | 2017-04-18 | Sumitomo Chemical Company, Limited | Process for producing optically anisotropic film |
WO2023036720A1 (en) * | 2021-09-07 | 2023-03-16 | Merck Patent Gmbh | Selective self-assembled monolayers via spin-coating method for use in dsa |
-
2002
- 2002-09-30 JP JP2002285565A patent/JP2004125842A/ja active Pending
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