JP2004125105A - スラスト軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】スラスト軸受の性能を上げる。
【解決手段】回転軸に設けられたスラストカラーを介して回転軸に働く荷重を支持するスラスト軸受であって、スラスト軸受本体に円周方向に沿って複数のパッド2を有し、各パッド2は、前記スラストカラーに対面するランド部3と、ランド部3に対し垂直な段差部4と、段差部4につながるテーパ部5とからなる。
【選択図】 図1
【解決手段】回転軸に設けられたスラストカラーを介して回転軸に働く荷重を支持するスラスト軸受であって、スラスト軸受本体に円周方向に沿って複数のパッド2を有し、各パッド2は、前記スラストカラーに対面するランド部3と、ランド部3に対し垂直な段差部4と、段差部4につながるテーパ部5とからなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラスト軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転機械の回転軸に作用するスラスト方向の力を受ける軸受としてスラスト軸受が使われる。スラスト軸受の一つのタイプとしてテーパランドスラスト軸受が知られている。この軸受の一例を図10及びその円周方向に沿う断面を図11に示す。
【0003】
このスラスト軸受101は、回転軸102に一体に設けられているスラストカラー103と微小隙間をもって対面させてハウジング104に設けられる。このスラスト軸受101は、環状の板の表面(軸受面)に円周方向に傾斜するテーパ部(傾斜溝)105を複数形成して構成される。テーパ部105同士の間の板の表面はランド部106であり、例えば、テーパ部105ランド部106とは円周方向に4:1の長さの割合で形成される。各テーパ部105の端には給油溝107が形成され、給油溝107には給油口108が開口される。なお、テーパ部105とランド部106との組み合わせパッドとよばれ、例えば10〜12個形成される。
【0004】
回転軸102の回転中、給油口108より給油溝107に潤滑油が供給される。供給された潤滑油はテーパ部104とスラストカラー103との間に入り、ここで絞られることにより圧力が上昇し、その圧力によりスラストカラー103即ち回転軸102が支持される。スラスト軸受の一例は特開2002−206522に開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−206522
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来のスラスト軸受において、回転軸102が高速となり、かつ回転軸102からの負荷が大きくなると、油との摩擦等により発熱が大きくなるが、回転軸102からの負荷がすべてのパッドに均等にかかっている場合には、各パッドの温度が均等にあがるのでそれほど問題ではない。しかし、回転軸102のカラー103とスラスト軸受101との関係が少しでも傾いていると、一部のパッドが大きな荷重を受けることになり、その部分が大きく温度上昇してしまう。特に、テーパ部とランド部とのつながり部あたりの温度上昇が高くなり、その部分が熱膨張する。テーパ部とランド部とのつながり部が熱膨張により盛り上がってしまうと、その部分に片当たりが生じてしまう。テーパランドスラスト軸受は固定型であるために柔軟性がなく片当たりに弱いので、片当たりを厳に回避したい。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する第1の発明(請求項1)に係る構成は、回転軸に作用するスラスト力を支持するスラスト軸受であって、前記回転軸の被支持部に対面するランド部と、このランド部につながる段差部と、この段差部につながるテーパ部とを有することを特徴とするスラスト軸受に存する。
上記回転軸の被支持部は回転軸の一部や回転軸上に設けられたスラストカラーである。前記テーパ部は、前記ランド部とのつながり部分から傾斜する傾斜面である。傾斜は、前記ランド部とのつながり部分から離れるに従って被支持部から離れるものである。
【0008】
このスラスト軸受では、テーパ部に供給される潤滑油は、テーパ部に沿って上向きに流れ、段差部に当たった後ランド部と回転軸の被支持部との隙間に入る。ランド部と被支持部との間の油膜の圧力により回転軸に作用するスラスト力は受けられる。ランド部とテーパ部とのつながり部に段差部を設けたので、この部分の熱膨張を抑えることができる。また、段差部を設けたことによりテーパ部と被支持部との間の空間が大きくなり、この部分に流れる潤滑油量が多くなり、しかも段差部に潤滑油が当たることによりランド部の冷却効果が高まる。
【0009】
上記課題を解決する第2の発明(請求項2)に係る構成は、回転軸に作用するスラスト力を支持するスラスト軸受であって、前記回転軸の被支持部に対面する第1のランド部と、この第1のランド部につながる段差部と、この段差部につながる第2のランド部と、この第2のランド部につながるテーパ部とを有することを特徴とするスラスト軸受に存する。
この発明に係るスラスト軸受は、従前のテーパランド型として形成したのち、テーパ部の一部を切除することにより、段差部付きのスラスト軸受とするものである。
【0010】
上記課題を解決する第3の発明(請求項3)に係る構成は、上記第1又は第2の発明において、前記段差部と前記テーパ部又は前記第2のランド部とを円弧面(R部)でつないだことを特徴とするスラスト軸受に存する。
この発明に係るスラスト軸受では、潤滑油は円弧面によってスムーズにランド部と被支持部との間に導かれる。また、テーパ部からランド部へかけての加工も容易となる。
【0011】
上記課題を解決する第4の発明(請求項4)に係る構成は、前記テーパ部の表面が凹状に形成されていることを特徴とするスラスト軸受に存する。
【0012】
上記課題を解決する第5の発明(請求項5)に係る構成は、前記凹状が円筒面状又はV字状であることを特徴とするスラスト軸受に存する。
【0013】
第4及び第5の発明に係るスラスト軸受においては、テーパ部の表面が円弧状又はV字状に窪んでいるので、潤滑油はこの凹状部分に確保かつ案内されて段差部、ランド部に至る。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係るスラスト軸受の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1には一実施形態に係るスラスト軸受の側断面を示し、図2には平面を示す。図2のI−I矢視断面図が図1である。
【0015】
スラスト軸受本体1は環状円板となっており、その表面にパッド2が円周方向に複数(この実施形態では10個)形成されている。パッド2は、回転軸の被支持部、つまり回転軸の一部又は回転軸上に設けられたスラストカラー(図10参照)に微小な隙間をもって対面するランド部3と、ランド部3に対し垂直な段差部4と、段差部4につながるテーパ部5とからなる。テーパ部5は、回転軸上のスラストカラーから離れる方向に傾斜している。つまり、テーパ部5に対しランド部3が出っ張っている形状となっているのである。軸受の大きさによって異なるが、前記段差部4の高さhは、例えば数十から数百μmくらいとされる。
【0016】
テーパ部5の端には給油溝6が形成され、給油溝6内には給油口7が開口されている。給油口7には、軸受本体1及び軸受本体1を支持するハウジング(図10参照)に形成された給油路が接続される。給油路は潤滑油溜めにつながり、ポンプにより潤滑油が供給されるようになっている。
【0017】
上記構成のスラスト軸受において、回転軸の回転中、潤滑油溜めより給油路、給油口7を経て給油溝6に潤滑油が供給される。潤滑油はテーパ部5を登り、段差部4に当たって上方に行き、ランド部3とスラストカラーとの間に入って油膜を形成し、スラストカラーを支持する。潤滑油はテーパ部5を登ることにより絞られるので圧力が上昇し、更に段差部4にせき止められてスラストカラーに当たることにより大きな圧力が生じ、高い負荷能力を発揮する。
【0018】
従来のテーパランド型スラスト軸受では、テーパ部とランド部とのつながり部分(ランド部の入り口部分)が熱膨張していたが、その部分が段差部4により削り落されているので、熱膨張の影響は抑制される。つまり、熱変形量が小さくなるのである。
【0019】
更に、スラストカラーとテーパ部5との隙間は、従来のテーパランド型軸受より広くなっているので、十分な潤滑油量が確保でき、ランド部入り口部分の冷却効果が高まり、やはり、熱変形量は抑えられる。
【0020】
なお、ランド部とスラストカラーとの間に供給され、潤滑及び支持に供された後の潤滑油は排出され、潤滑油溜めに戻される。つまり、潤滑油は循環供給され、繰り返し使用されるのである。
【0021】
図3、図4には第2の実施の形態を示す。図3には側断面を示し、図4には平面を示す。図4のIII−III矢視断面図が図3である。
この実施の形態は主に加工のしやすさを考慮したものである。環状の円板であるスラスト軸受本体1に、パッド10として、先ず従来のテーパランド型スラスト軸受のランド部とテーパ部に相当する第1ランド部11とテーパ部12とを機械加工する。ただし、第1ランド部11は、環状の円板の表面がそのものである。
【0022】
次いで、テーパ部12の第1ランド部11とのつながり部近くを切除する。切除することにより段差部13と第2ランド部14とが形成される。第1の実施の形態のように、テーパ部5の端に数十〜数百μmの段差部4を形成するのに比べて機械加工が容易となる。段差部13の高さhは数十〜数百μmである。つまり、第1のランド部11は、第2のランド部14に対し数十〜数百μm出っ張った形状となっているのである。その他の構成、つまりテーパ部12の端に給油溝が設けられ、そこに給油口が開口しているのは第1の実施の形態と同じである。
【0023】
このスラスト軸受によれば、第1の実施形態と同様の作用により、スラストカラーは支持される。第2ランド部14に大きな量の潤滑油が入り込むことから、大きな負荷能力、冷却能力が担保される。
【0024】
図5には第3の実施の形態の、図1と同様の側断面を示す。
この実施の形態は、図1、図2に示した実施の形態とほぼ同様の構成であるが、段差部4とテーパ部5とを湾曲面(R部)15によりつないだものである。テーパ部5の端に給油溝が設けられ、そこに給油口が開口しているのは第1の実施の形態と同じである。
このスラスト軸受による作用は、図1、図2に示したものと同じであるが、潤滑油はR部15によりスラストカラーに向かって導かれやすくなる。また、テーパ部5とランド部3とのつながり部分の機械加工もしやすくなる。
【0025】
図6〜9には第4の実施の形態に係るスラスト軸受を示す。図6は平面を示し、図7はそのVII−VII矢視断面であり、図8はVIII−VIII矢視断面、図9はIX−IX矢視断面である。
【0026】
このスラスト軸受における、スラスト軸受本体1に形成されるパッド21は、ランド部22と、このランド部22につながるテーパ部23とからなり、このテーパ部23の表面は当該スラスト軸受の円周方向に沿って凹状の湾曲面(円筒面)24とされている。つまり、樋状となっているのである。湾局面24は、その中央部では例えば数μm〜数百μm窪んでいる。テーパ部23の表面が凹状となっているので、図9に示すように、ランド部22との接続部である段差部25は、その底部が弓状となる。
【0027】
このスラスト軸受では、テーパ部23に供給された潤滑油は湾曲面24を登り、段差部25に当たってスラストカラーに向かって流れる。潤滑油は樋で案内されるように流れるので油量が確保され、負荷能力が上がる。つまり、潤滑油は遠心力により半径方向外側に流れようとするが、テーパ部23の表面が樋状となっていることから、半径方向外側に流れようとする潤滑油は、テーパ部23のエッジ部23aで遮られ、十分な油量が段差部25、ランド部22に供給されることになる。
【0028】
また、テーパ部23はその中央部が最も熱の影響を受け、その部分に多くの潤滑油が流れるので、テーパ部23の熱による変形も抑えられる。
【0029】
この実施の形態では、テーパ部23の表面を円筒状に凹状としているが、V字状に凹状としてもよい。その他の形状も可能である。
【0030】
本発明に係るスラスト軸受は、回転機械全般に適用されるが、特に大型過給機やターボ機械に適用される。
【0031】
【発明の効果】
第1の発明に係るスラスト軸受によれば、回転軸に作用するスラスト力を支持するスラスト軸受であって、前記回転軸の被支持部に対面するランド部と、このランド部につながる段差部と、この段差部につながるテーパ部とを有するものとなっているので、テーパ部とランド部とのつながり部の熱膨張を抑えることができ、また、段差部を設けたことによりテーパ部と被支持部との間の空間が大きくなり、この部分に流れ込む潤滑油量が多くなって負荷能力が高くなり、更に段差部に潤滑油が当たることによりランド部の冷却効果が高まる。よって、特に高面圧時、高速時に軸受が安全に支持できる荷重が大きくなる。
【0032】
第2の発明(請求項2)に係るスラスト軸受によれば、回転軸に作用するスラスト力を支持するスラスト軸受であって、前記回転軸の被支持部に対面する第1のランド部と、この第1のランド部につながる段差部と、この段差部につながる第2のランド部と、この第2のランド部につながるテーパ部とを有するものとしたので、第1の発明に係るスラスト軸受の効果に加え、加工しやすくなるという効果を奏する。
【0033】
第3の発明(請求項3)に係るスラスト軸受によれば、上記第1又は第2の発明において、前記段差部と前記テーパ部又は第2のランド部とを円弧面でつなぐようにしたので、潤滑油は、円弧面によってよりスムーズにランド部と被支持との間に導かれるようになる。また、ランド部とテーパ部とを段差部を介してつなぐ機械加工も容易となる。
【0034】
第4及びの発明(請求項4)及び第5の発明(請求項5)に係るスラスト軸受によれば、前記テーパ部の表面が凹状(円弧状又はV字)に形成されているので、この部分により油量が確保され、負荷能力が向上すると共に、テーパ部の熱変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスラスト軸受の第1の実施形態の側断面図であり、図2のI−I矢視断面図である。
【図2】第1の実施の形態の平面図である。
【図3】第2の実施の形態に係るスラスト軸受の側断面図であり、図4のIII−III矢視断面図である。
【図4】第2の実施の形態の平面図である。
【図5】第3の実施の形態の側断面図である。
【図6】第4の実施の形態に係るスラスト軸受の平面図である。
【図7】図6のVII−VII矢視断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII矢視断面図である。
【図9】図6のIX−IX矢視断面図である。
【図10】スラスト軸受の一例の概略図である。
【図11】図10に示したスラスト軸受の円周方向に沿う一部の断面図である。
【符号の説明】
1 スラスト軸受本体
2 パッド
3 ランド部
4 段差部
5 テーパ部
6 給油溝
7 給油口
10 パッド
11 第1ランド部
12 テーパ部
13 段差部
14 第2ランド部
15 R部
21 パッド
22 ランド部
23 テーパ部
24 湾曲面
25 段差部
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラスト軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転機械の回転軸に作用するスラスト方向の力を受ける軸受としてスラスト軸受が使われる。スラスト軸受の一つのタイプとしてテーパランドスラスト軸受が知られている。この軸受の一例を図10及びその円周方向に沿う断面を図11に示す。
【0003】
このスラスト軸受101は、回転軸102に一体に設けられているスラストカラー103と微小隙間をもって対面させてハウジング104に設けられる。このスラスト軸受101は、環状の板の表面(軸受面)に円周方向に傾斜するテーパ部(傾斜溝)105を複数形成して構成される。テーパ部105同士の間の板の表面はランド部106であり、例えば、テーパ部105ランド部106とは円周方向に4:1の長さの割合で形成される。各テーパ部105の端には給油溝107が形成され、給油溝107には給油口108が開口される。なお、テーパ部105とランド部106との組み合わせパッドとよばれ、例えば10〜12個形成される。
【0004】
回転軸102の回転中、給油口108より給油溝107に潤滑油が供給される。供給された潤滑油はテーパ部104とスラストカラー103との間に入り、ここで絞られることにより圧力が上昇し、その圧力によりスラストカラー103即ち回転軸102が支持される。スラスト軸受の一例は特開2002−206522に開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−206522
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来のスラスト軸受において、回転軸102が高速となり、かつ回転軸102からの負荷が大きくなると、油との摩擦等により発熱が大きくなるが、回転軸102からの負荷がすべてのパッドに均等にかかっている場合には、各パッドの温度が均等にあがるのでそれほど問題ではない。しかし、回転軸102のカラー103とスラスト軸受101との関係が少しでも傾いていると、一部のパッドが大きな荷重を受けることになり、その部分が大きく温度上昇してしまう。特に、テーパ部とランド部とのつながり部あたりの温度上昇が高くなり、その部分が熱膨張する。テーパ部とランド部とのつながり部が熱膨張により盛り上がってしまうと、その部分に片当たりが生じてしまう。テーパランドスラスト軸受は固定型であるために柔軟性がなく片当たりに弱いので、片当たりを厳に回避したい。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する第1の発明(請求項1)に係る構成は、回転軸に作用するスラスト力を支持するスラスト軸受であって、前記回転軸の被支持部に対面するランド部と、このランド部につながる段差部と、この段差部につながるテーパ部とを有することを特徴とするスラスト軸受に存する。
上記回転軸の被支持部は回転軸の一部や回転軸上に設けられたスラストカラーである。前記テーパ部は、前記ランド部とのつながり部分から傾斜する傾斜面である。傾斜は、前記ランド部とのつながり部分から離れるに従って被支持部から離れるものである。
【0008】
このスラスト軸受では、テーパ部に供給される潤滑油は、テーパ部に沿って上向きに流れ、段差部に当たった後ランド部と回転軸の被支持部との隙間に入る。ランド部と被支持部との間の油膜の圧力により回転軸に作用するスラスト力は受けられる。ランド部とテーパ部とのつながり部に段差部を設けたので、この部分の熱膨張を抑えることができる。また、段差部を設けたことによりテーパ部と被支持部との間の空間が大きくなり、この部分に流れる潤滑油量が多くなり、しかも段差部に潤滑油が当たることによりランド部の冷却効果が高まる。
【0009】
上記課題を解決する第2の発明(請求項2)に係る構成は、回転軸に作用するスラスト力を支持するスラスト軸受であって、前記回転軸の被支持部に対面する第1のランド部と、この第1のランド部につながる段差部と、この段差部につながる第2のランド部と、この第2のランド部につながるテーパ部とを有することを特徴とするスラスト軸受に存する。
この発明に係るスラスト軸受は、従前のテーパランド型として形成したのち、テーパ部の一部を切除することにより、段差部付きのスラスト軸受とするものである。
【0010】
上記課題を解決する第3の発明(請求項3)に係る構成は、上記第1又は第2の発明において、前記段差部と前記テーパ部又は前記第2のランド部とを円弧面(R部)でつないだことを特徴とするスラスト軸受に存する。
この発明に係るスラスト軸受では、潤滑油は円弧面によってスムーズにランド部と被支持部との間に導かれる。また、テーパ部からランド部へかけての加工も容易となる。
【0011】
上記課題を解決する第4の発明(請求項4)に係る構成は、前記テーパ部の表面が凹状に形成されていることを特徴とするスラスト軸受に存する。
【0012】
上記課題を解決する第5の発明(請求項5)に係る構成は、前記凹状が円筒面状又はV字状であることを特徴とするスラスト軸受に存する。
【0013】
第4及び第5の発明に係るスラスト軸受においては、テーパ部の表面が円弧状又はV字状に窪んでいるので、潤滑油はこの凹状部分に確保かつ案内されて段差部、ランド部に至る。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係るスラスト軸受の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1には一実施形態に係るスラスト軸受の側断面を示し、図2には平面を示す。図2のI−I矢視断面図が図1である。
【0015】
スラスト軸受本体1は環状円板となっており、その表面にパッド2が円周方向に複数(この実施形態では10個)形成されている。パッド2は、回転軸の被支持部、つまり回転軸の一部又は回転軸上に設けられたスラストカラー(図10参照)に微小な隙間をもって対面するランド部3と、ランド部3に対し垂直な段差部4と、段差部4につながるテーパ部5とからなる。テーパ部5は、回転軸上のスラストカラーから離れる方向に傾斜している。つまり、テーパ部5に対しランド部3が出っ張っている形状となっているのである。軸受の大きさによって異なるが、前記段差部4の高さhは、例えば数十から数百μmくらいとされる。
【0016】
テーパ部5の端には給油溝6が形成され、給油溝6内には給油口7が開口されている。給油口7には、軸受本体1及び軸受本体1を支持するハウジング(図10参照)に形成された給油路が接続される。給油路は潤滑油溜めにつながり、ポンプにより潤滑油が供給されるようになっている。
【0017】
上記構成のスラスト軸受において、回転軸の回転中、潤滑油溜めより給油路、給油口7を経て給油溝6に潤滑油が供給される。潤滑油はテーパ部5を登り、段差部4に当たって上方に行き、ランド部3とスラストカラーとの間に入って油膜を形成し、スラストカラーを支持する。潤滑油はテーパ部5を登ることにより絞られるので圧力が上昇し、更に段差部4にせき止められてスラストカラーに当たることにより大きな圧力が生じ、高い負荷能力を発揮する。
【0018】
従来のテーパランド型スラスト軸受では、テーパ部とランド部とのつながり部分(ランド部の入り口部分)が熱膨張していたが、その部分が段差部4により削り落されているので、熱膨張の影響は抑制される。つまり、熱変形量が小さくなるのである。
【0019】
更に、スラストカラーとテーパ部5との隙間は、従来のテーパランド型軸受より広くなっているので、十分な潤滑油量が確保でき、ランド部入り口部分の冷却効果が高まり、やはり、熱変形量は抑えられる。
【0020】
なお、ランド部とスラストカラーとの間に供給され、潤滑及び支持に供された後の潤滑油は排出され、潤滑油溜めに戻される。つまり、潤滑油は循環供給され、繰り返し使用されるのである。
【0021】
図3、図4には第2の実施の形態を示す。図3には側断面を示し、図4には平面を示す。図4のIII−III矢視断面図が図3である。
この実施の形態は主に加工のしやすさを考慮したものである。環状の円板であるスラスト軸受本体1に、パッド10として、先ず従来のテーパランド型スラスト軸受のランド部とテーパ部に相当する第1ランド部11とテーパ部12とを機械加工する。ただし、第1ランド部11は、環状の円板の表面がそのものである。
【0022】
次いで、テーパ部12の第1ランド部11とのつながり部近くを切除する。切除することにより段差部13と第2ランド部14とが形成される。第1の実施の形態のように、テーパ部5の端に数十〜数百μmの段差部4を形成するのに比べて機械加工が容易となる。段差部13の高さhは数十〜数百μmである。つまり、第1のランド部11は、第2のランド部14に対し数十〜数百μm出っ張った形状となっているのである。その他の構成、つまりテーパ部12の端に給油溝が設けられ、そこに給油口が開口しているのは第1の実施の形態と同じである。
【0023】
このスラスト軸受によれば、第1の実施形態と同様の作用により、スラストカラーは支持される。第2ランド部14に大きな量の潤滑油が入り込むことから、大きな負荷能力、冷却能力が担保される。
【0024】
図5には第3の実施の形態の、図1と同様の側断面を示す。
この実施の形態は、図1、図2に示した実施の形態とほぼ同様の構成であるが、段差部4とテーパ部5とを湾曲面(R部)15によりつないだものである。テーパ部5の端に給油溝が設けられ、そこに給油口が開口しているのは第1の実施の形態と同じである。
このスラスト軸受による作用は、図1、図2に示したものと同じであるが、潤滑油はR部15によりスラストカラーに向かって導かれやすくなる。また、テーパ部5とランド部3とのつながり部分の機械加工もしやすくなる。
【0025】
図6〜9には第4の実施の形態に係るスラスト軸受を示す。図6は平面を示し、図7はそのVII−VII矢視断面であり、図8はVIII−VIII矢視断面、図9はIX−IX矢視断面である。
【0026】
このスラスト軸受における、スラスト軸受本体1に形成されるパッド21は、ランド部22と、このランド部22につながるテーパ部23とからなり、このテーパ部23の表面は当該スラスト軸受の円周方向に沿って凹状の湾曲面(円筒面)24とされている。つまり、樋状となっているのである。湾局面24は、その中央部では例えば数μm〜数百μm窪んでいる。テーパ部23の表面が凹状となっているので、図9に示すように、ランド部22との接続部である段差部25は、その底部が弓状となる。
【0027】
このスラスト軸受では、テーパ部23に供給された潤滑油は湾曲面24を登り、段差部25に当たってスラストカラーに向かって流れる。潤滑油は樋で案内されるように流れるので油量が確保され、負荷能力が上がる。つまり、潤滑油は遠心力により半径方向外側に流れようとするが、テーパ部23の表面が樋状となっていることから、半径方向外側に流れようとする潤滑油は、テーパ部23のエッジ部23aで遮られ、十分な油量が段差部25、ランド部22に供給されることになる。
【0028】
また、テーパ部23はその中央部が最も熱の影響を受け、その部分に多くの潤滑油が流れるので、テーパ部23の熱による変形も抑えられる。
【0029】
この実施の形態では、テーパ部23の表面を円筒状に凹状としているが、V字状に凹状としてもよい。その他の形状も可能である。
【0030】
本発明に係るスラスト軸受は、回転機械全般に適用されるが、特に大型過給機やターボ機械に適用される。
【0031】
【発明の効果】
第1の発明に係るスラスト軸受によれば、回転軸に作用するスラスト力を支持するスラスト軸受であって、前記回転軸の被支持部に対面するランド部と、このランド部につながる段差部と、この段差部につながるテーパ部とを有するものとなっているので、テーパ部とランド部とのつながり部の熱膨張を抑えることができ、また、段差部を設けたことによりテーパ部と被支持部との間の空間が大きくなり、この部分に流れ込む潤滑油量が多くなって負荷能力が高くなり、更に段差部に潤滑油が当たることによりランド部の冷却効果が高まる。よって、特に高面圧時、高速時に軸受が安全に支持できる荷重が大きくなる。
【0032】
第2の発明(請求項2)に係るスラスト軸受によれば、回転軸に作用するスラスト力を支持するスラスト軸受であって、前記回転軸の被支持部に対面する第1のランド部と、この第1のランド部につながる段差部と、この段差部につながる第2のランド部と、この第2のランド部につながるテーパ部とを有するものとしたので、第1の発明に係るスラスト軸受の効果に加え、加工しやすくなるという効果を奏する。
【0033】
第3の発明(請求項3)に係るスラスト軸受によれば、上記第1又は第2の発明において、前記段差部と前記テーパ部又は第2のランド部とを円弧面でつなぐようにしたので、潤滑油は、円弧面によってよりスムーズにランド部と被支持との間に導かれるようになる。また、ランド部とテーパ部とを段差部を介してつなぐ機械加工も容易となる。
【0034】
第4及びの発明(請求項4)及び第5の発明(請求項5)に係るスラスト軸受によれば、前記テーパ部の表面が凹状(円弧状又はV字)に形成されているので、この部分により油量が確保され、負荷能力が向上すると共に、テーパ部の熱変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスラスト軸受の第1の実施形態の側断面図であり、図2のI−I矢視断面図である。
【図2】第1の実施の形態の平面図である。
【図3】第2の実施の形態に係るスラスト軸受の側断面図であり、図4のIII−III矢視断面図である。
【図4】第2の実施の形態の平面図である。
【図5】第3の実施の形態の側断面図である。
【図6】第4の実施の形態に係るスラスト軸受の平面図である。
【図7】図6のVII−VII矢視断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII矢視断面図である。
【図9】図6のIX−IX矢視断面図である。
【図10】スラスト軸受の一例の概略図である。
【図11】図10に示したスラスト軸受の円周方向に沿う一部の断面図である。
【符号の説明】
1 スラスト軸受本体
2 パッド
3 ランド部
4 段差部
5 テーパ部
6 給油溝
7 給油口
10 パッド
11 第1ランド部
12 テーパ部
13 段差部
14 第2ランド部
15 R部
21 パッド
22 ランド部
23 テーパ部
24 湾曲面
25 段差部
Claims (5)
- 回転軸に作用するスラスト力を支持するスラスト軸受であって、前記回転軸の被支持部に対面するランド部と、このランド部につながる段差部と、この段差部につながるテーパ部とを有することを特徴とするスラスト軸受。
- 回転軸に作用するスラスト力を支持するスラスト軸受であって、前記回転軸の被支持部に対面する第1のランド部と、この第1のランド部につながる段差部と、この段差部につながる第2のランド部と、この第2のランド部につながるテーパ部とを有することを特徴とするスラスト軸受。
- 前記段差部と前記テーパ部又は前記第2のランド部とを円弧面でつないだことを特徴とする請求項1又は2に記載のスラスト軸受。
- 前記テーパ部の表面が凹状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスラスト軸受。
- 前記凹状が円筒面状又はV字状であることを特徴とする請求項4に記載のスラスト軸受。
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