JP2004124868A - 内燃機関制御デバイスの故障診断装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内燃機関の冷間始動時から所定運転時間TRUNJUDより長く、機関運転が継続されると、故障診断の実施が許可される(S116,S122,S123,S125)。冷間始動時から所定運転時間TRUNJUDが経過する前に機関が停止された場合であっても、その停止時間TSOAKZ、または停止時間TSOAKZの積算値TSOAKが、判定時間TSOAKJUD以下であるときは(FLONGSOAK=0)、冷間始動時から運転時間の計測を開始した運転時間カウンタTRUNをリセットすることなく、温間再始動時に運転時間の計測が再開される(S117,S119)。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に取り付けられる制御デバイス、具体的には例えば蒸発燃料処理装置の故障診断を行う故障診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料タンク内で発生する蒸発燃料を一時的に貯蔵し、貯蔵した蒸発燃料を内燃機関に供給する蒸発燃料処理装置において、漏れが発生すると大気中に蒸発燃料が放出されるため、種々の漏れ判定手法が提案されている。例えば特許文献1には、燃料タンク内で発生する蒸発燃料の影響を排除して、より正確な判定を行うために、内燃機関の冷間始動直後にのみ漏れの判定を行う手法が示されている。
【0003】
蒸発燃料処理装置の故障(漏れ)はいつ発生するかは不明であるため、故障診断の実行頻度を高めて、故障の発生を迅速に検出することが要求されている。したがって、冷間始動直後のみに限定していると、この要求を満たすことはできない。例えば機関停止後においても、蒸発燃料処理装置の故障診断を行うことにより、故障診断の実行頻度を高めることが考えられる。機関停止後に蒸発燃料処理装置の故障診断を行う手法は、特許文献2に示されている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2699774号公報
【特許文献2】
特開平11−336626号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
機関停止後に故障診断を実行する場合に、診断の精度を向上させるためには、機関の運転により、燃料タンク内の温度が十分に上昇した状態で故障診断を実行することが必要である。そのため、冷間始動時から所定時間継続して機関が作動した場合に、機関停止後の故障診断の実行を許可することにより、故障診断の精度を向上させることができる。
【0006】
その故障診断実行条件を採用した場合に、前記所定時間に満たない短時間の運転が繰り返されると、機関が停止しても故障診断を実行できない状態が長くつづくことがある。
【0007】
図9は、このような状態を説明するためのタイムチャートであり、D1からD4が機関の運転期間を示す。運転期間D4は前記所定時間より長いため、故障診断実行条件が満たされ、時刻t7の直後に故障診断が実行される。一方を時刻t0からt5まで時間は、前記所定時間より長いが、運転の中断(t1〜t2,t3〜t4)があるため、故障診断実行条件が満たされず、故障診断が実行されない。
【0008】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、内燃機関の冷間始動時から所定時間運転が継続したとき故障診断実行条件が成立する場合に、故障診断の精度を低下させることなく実行頻度を高めることができる故障診断装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関の冷間始動時からの機関運転時間(TRUN)を計測する計測手段と、該計測手段により計測される機関運転時間(TRUN)が所定時間(TRUNJUD)を超えたとき、故障診断の実施を許可する診断許可手段と、イグニッションスイッチがオンされた時点から次にイグニッションスイッチがオンされるまでの期間を1ドライビングサイクルとして定義した場合において、前記診断許可手段により故障診断が許可された後、当該ドライビングサイクル中に1回、前記機関の制御デバイスの故障診断を実行する故障診断手段とを備える内燃機関制御デバイスの故障診断装置において、前記計測手段は、前記機関の温間再始動時においては、前記機関の停止時間(TSOAKZ)が所定停止時間(TSOAKJUD)より短いとき、または前記停止時間の積算値(TSOAK)が所定積算値(TSOAKJUD,TSOAKJUD2)より小さいときは、前回計測された機関運転時間を初期値として前記機関運転時間の計測を再開することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、冷間始動時からの機関運転時間が計測され、温間始動時において、機関停止時間が所定停止時間より短いとき、または前記停止時間の積算値が所定積算値より小さいときは、前回の機関運転時間を初期値として機関運転時間の計測が再開される。機関停止時間が所定停止時間より短いとき、または前記停止時間の積算値が所定積算値より小さいときは、機関停止を無視して機関運転時間を連続して計測しても、故障診断の精度は低下しない。したがって、そのようなときには、前回計測された機関運転時間を初期値として前記機関運転時間の計測を再開することにより、故障診断の実行頻度を増加させることができる。その結果、内燃機関制御デバイスで発生する故障を迅速に検出することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る蒸発燃料処理装置及び内燃機関の制御装置の構成を示す図である。同図において、1は例えば4気筒を有する内燃機関(以下単に「エンジン」という)であり、エンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。また、スロットル弁3にはスロットル弁開度(THA)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力して電子コントロールユニット(以下「ECU」という)5に供給する。
【0012】
燃料噴射弁6は、吸気管2の途中であってエンジン1とスロットル弁3との間の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられている。また、各燃料噴射弁6は燃料供給管7を介して燃料タンク9に接続されており、燃料供給管7の途中には燃料ポンプ8が設けられている。燃料タンク9は給油のための給油口10を有しており、給油口10にはフィラーキャップ11が取付けられている。
【0013】
燃料噴射弁6はECU5に電気的に接続され、該ECU5からの信号によりその開弁時間が制御される。吸気管2のスロットル弁3の下流側には吸気管内絶対圧PBAを検出する吸気管内絶対圧(PBA)センサ13、及び吸気温TAを検出する吸気温(TA)センサ14が装着されている。
【0014】
エンジン1の図示しないカム軸周囲又はクランク軸周囲にはエンジン回転数を検出するエンジン回転数(NE)センサ17が取付けられている。エンジン回転数センサ17はエンジン1のクランク軸の180度回転毎に所定のクランク角度位置でパルス(TDC信号パルス)を出力する。エンジン1の冷却水温TWを検出するエンジン水温センサ18及びエンジン1の排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ(以下「LAFセンサ」という)19が設けれられており、これらのセンサ13〜19の検出信号はECU5に供給される。LAFセンサ19は、排気中の酸素濃度(エンジン1に供給される混合気の空燃比)にほぼ比例する信号を出力する広域空燃比センサとして機能するものである。
【0015】
ECU5にはさらに、イグニッションスイッチ42が接続されており、イグニッションスイッチ42の切替信号がECU5に供給される。
燃料タンク9は、チャージ通路31を介してキャニスタ33に接続され、キャニスタ33は、吸気管2のスロットル弁3の下流側にパージ通路32を介して接続されている。
【0016】
チャージ通路31には、二方向弁35が設けられている。二方向弁35は、燃料タンク9内の圧力が大気圧より第1所定圧(例えば2.7kPa(20mmHg))以上高いとき開弁する正圧弁と、燃料タンク9内の圧力がキャニスタ33内の圧力より第2所定圧以上低いとき開弁する負圧弁とからなる。
【0017】
二方向弁35をバイパスするバイパス通路31aが設けられており、バイパス通路31aには、バイバス弁(開閉弁)36が設けられている。バイパス弁36は、通常は閉弁状態とされ、後述する故障診断実行中開閉される電磁弁であり、その動作はECU5により制御される。
【0018】
チャージ通路31には、二方向弁35と燃料タンク9との間に圧力センサ15が設けられており、その検出信号はECU5に供給される。圧力センサ15の出力PTANKは、キャニスタ33及び燃料タンク9内の圧力が安定している定常状態では、燃料タンク内の圧力に等しくなるが、キャニスタ33または燃料タンク9内の圧力が変化しているとき、実際のタンク内圧とは異なる圧力を示す。以下の説明では、圧力センサ15の出力を「タンク内圧PTANK」という。
【0019】
キャニスタ33は、燃料タンク9内の蒸発燃料を吸着するための活性炭を内蔵する。キャニスタ33には、空気通路37が接続されており、キャニスタ33は空気通路37を介して大気に連通可能となっている。
空気通路37の途中にはベントシャット弁(開閉弁)38が設けられている。ベントシャット弁38は、ECU5によりその作動が制御される電磁弁であり、給油時またはパージ実行中に開弁される。またベントシャット弁38は、後述する故障診断実行時に開閉される。ベントシャット弁38は、駆動信号が供給されないときは、開弁する常開型の電磁弁である。
【0020】
パージ通路32のキャニスタ33と吸気管2との間には、パージ制御弁34が設けられている。パージ制御弁34は、その制御信号のオン−オフデューティ比(制御弁の開度)を変更することにより流量を連続的に制御することができるように構成された電磁弁であり、その作動はECU5により制御される。
燃料タンク9、チャージ通路31、バイパス通路31a、キャニスタ33、パージ通路32、二方向弁35、バイパス弁36、パージ制御弁34、空気通路37、及びベントシャット弁38により、蒸発燃料処理装置40が構成される。
【0021】
本実施形態では、イグニッションスイッチ42がオフされても、後述する故障診断を実行する期間中は、ECU5、バイパス弁36及びベントシャット弁38には電源が供給される。なおパージ制御弁34は、イグニッションスイッチ42がオフされると、電源が供給されなくなり、閉弁状態を維持する。
【0022】
燃料タンク9の給油時に蒸発燃料が大量に発生すると、二方向弁35が開弁し、キャニスタ33に蒸発燃料が貯蔵される。エンジン1の所定運転状態において、パージ制御弁34のデューティ制御が行われ、適量の蒸発燃料がキャニスタ33から吸気管2に供給される。
【0023】
ECU5は各種センサ等からの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)、CPUで実行される演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路のほか、燃料噴射弁6、パージ制御弁34、バイパス弁36及びベントシャット弁38に駆動信号を供給する出力回路等から構成される。
【0024】
ECU5のCPUは、エンジン回転数センサ17、吸気管内絶対圧センサ13、エンジン水温センサ18などの各種センサの出力信号に応じてエンジン1に供給する燃料量制御、パージ制御弁のデューティ制御等を行う。
【0025】
図2は、エンジン停止後に実行される故障診断を説明するためのタイムチャートである。なお、タンク内圧PTANKは実際には絶対圧として検出されるが、図2では大気圧を基準とした差圧で示されている。
エンジンが停止すると、バイパス弁(BPV)36が開弁され、ベントシャット弁(VSV)38の開弁状態が維持される(時刻t1)。これにより、蒸発燃料処理装置40が大気に開放され、タンク内圧PTANKは大気圧と等しくなる。なお、パージ制御弁34はエンジン停止時に閉弁する。
【0026】
時刻t2から第1判定モードが開始される。すなわち、ベントシャット弁38が閉弁され、蒸発燃料処理装置40が閉じた状態とされる。この状態は第1判定時間TPHASE1(例えば900秒)に亘って維持される。タンク内圧PTANKは破線L1で示すように第1所定タンク内圧PTANK1(例えば大気圧+1.3kPa(10mmHg))を越えて上昇したときは、直ちに蒸発燃料処理装置40は正常(漏れが無い)と判定される(時刻t3)。タンク内圧PTANKが実線L2で示すように変化したときは、最大タンク内圧PTANKMAXが記憶される(時刻t4)。
【0027】
次にベントシャット弁38が開弁され(時刻t4)、蒸発燃料処理装置が大気に開放される。
時刻t5から第2判定モードが開始される。すなわちベントシャット弁38が閉弁され、この状態が第2判定時間TPHASE2(例えば2400秒)に亘って維持される。タンク内圧PTANKが破線L3で示すように第2所定タンク内圧PTANK2(例えば大気圧−1.3kPa(10mmHg))より低くなったときは(時刻t6)、直ちに蒸発燃料処理装置40は正常(漏れが無い)と判定される。タンク内圧PTANKが実線L4で示すように変化したときは、最小タンク内圧PTANKMINが記憶される(時刻t7)。
【0028】
時刻t7においてバイパス弁36が閉弁されるとともに、ベントシャット弁38が開弁される。記憶した最大タンク内圧PTANKMAXと最小タンク内圧PTANKMINとの圧力差ΔPが判定閾値ΔPTHより大きいときは、蒸発燃料処理装置40は正常と判定され、圧力差ΔPが判定閾値ΔPTH以下であるときは、蒸発燃料処理装置40は故障した(漏れが有る)と判定される。漏れが有る場合には、タンク内圧PTANKは大気圧からの変化量が小さくなり、圧力差ΔPが小さくなるからである。
【0029】
図3は、故障診断実行条件の判定を行う処理のフローチャートである。この処理は、所定時間(例えば1秒)毎にECU5のCPUで実行される。
ステップS111では、エンジン1の運転モードが始動モードであるか否か、すなわちエンジン1のクランキング中であるか否かを判別する。始動モードであるときは、コールドスタート(冷間始動)か否かを判別する(ステップS112)。例えば、エンジン水温TWと吸気温TAとの差が所定温度差(例えば6°C)より小さく、かつ吸気温TAが所定温度(例えば30°C)以下であるとき、今回の始動はコールドスタートであると判定される。
【0030】
コールドスタートであるときは、コールドスタートフラグFCOLDSTARTを「1」に設定するとともに、診断未了フラグFMCNDEVPを「1」に設定する(ステップS113)。診断未了フラグFMCNDEVPは、故障診断が終了したとき、または比較的長いエンジン停止時間の後のホットリスタート時に「0」に設定される(ステップS128,S118参照)。
【0031】
ステップS114では、運転時間カウンタTRUNの値を「0」に設定する。一方コールドスタートではないとき、すなわちホットリスタート(温間再始動)であるときは、コールドスタートフラグFCOLDSTARTを「0」に設定する(ステップS115)。
【0032】
エンジン1の始動が完了すると、ステップS111からステップS116に進み、コールドスタートフラグFCOLDSTARTが「1」であるか否かを判別する。FCOLDSTART=1であってコールドスタート後であるときは、運転時間カウンタTRUNを「1」だけインクリメントする(ステップS122)。ステップS123では、運転時間カウンタTRUNの値が所定運転時間TRUNJUD(例えば5〜20分)より大きいか否かを判別する。TRUN≦TRUNJUDである間は、ステップS124に進み、第1の診断許可フラグFEVPLKM及び第2の診断許可フラグFEONVMをともに「0」に設定する。
【0033】
運転時間カウンタTRUNの値が所定運転時間TRUNJUDを超えると、ステップS123からステップS125に進み、第1及び第2の診断許可フラグFEVPLKM及びFEONVMをともに「1」に設定する。第1の診断許可フラグFEVPLKMが「1」に設定されると、エンジン運転中における蒸発燃料処理装置40の故障診断が許可され、第2の診断許可フラグFEONVMが「1」に設定されると、エンジン停止直後の蒸発燃料処理装置40の故障診断が許可される。
【0034】
ステップS126では、今回のドライビングサイクルにおいて故障診断が完了したか否かを判別し、完了していなければ直ちに本処理を終了する。故障診断が完了したときは、運転時間カウンタTRUNの値を「0」に戻す(ステップS127)とともに、診断未了フラグFMCNDEVPを「0」に設定する(ステップS128)。
【0035】
なお、本明細書中においては、「ドライビングサイクル」とは、イグニッションスイッチがオンされた時点から、次にイグニッションスイッチがオンされるまでの期間をいう。すなわち、1ドライビングサイクルは、エンジン1の1運転期間と、次に運転が開始されるまでの1停止期間とからなる。
【0036】
ステップS116でFCOLDSTARTが「0」であるときは、すなわちホットリスタート後であるときは、図4の処理で設定される停止時間フラグFLONGSOAK「1」であるか否かをを判別する(ステップS117)。停止時間フラグFLONGSOAKは、エンジン1の停止時間TSOAKZ、または低時間TSOAKZの積算値TSOAKが、判定時間TSOAKJUDより長いとき「1」に設定される。
【0037】
ステップS117で、FLONGSOAK=0であって、停止時間TSOAKZまたは積算値TSOAKが判定時間TSOAKJUDより小さいときは、診断未了フラグFMCNDEVPが「1」であるか否かを判別する(ステップS119)。FMCNDEVP=1であって故障診断が完了していないときは、前記ステップS122に進む。これにより、ホットリスタート後であっても、エンジン1の停止時間TSOAKZまたは停止時間TSOAKZの積算値TSOAKが比較的小さいときは、コールドスタート時からの運転時間が継続してカウントされる。
【0038】
ステップS117でFLONGSOAK=1であって、エンジン停止時間が比較的長いときは、診断未了フラグFMCNDEVPを「0」に戻して(ステップS118)、ステップS120に進む。
ステップS119でFMCNDEVP=0であって、今回のドライビングサイクルにおける故障診断が完了しているときは、ステップS120に進み、運転時間カウンタTRUNの値を「0」に戻す。続くステップS121は、第1及び第2の診断許可フラグFEVPLKM及びFEONVMをともに「0」に設定する。
【0039】
図4は、図3のステップS117で参照される停止時間フラグFLONGSOAKの設定を行う処理のフローチャートである。この処理は、所定時間(例えば1秒)毎に、ECU5のCPUで実行される。
ステップS131では、エンジン停止直後のECUセルフシャットダウン処理中であるか否かを判別する。ECU5は、イグニッションスイッチ42がオフされると、セルフシャットダウン処理を実行し、その後電源の供給を停止させる。ただし、エンジン停止後に故障診断を実行するときは、故障診断終了後にセルフシャットダウン処理が実行される。
【0040】
セルフシャットダウン処理中であるときは、エンジンの停止時間を計測する停止時間タイマTMSTOPをリセットし(ステップS132)、次いで停止時間TSOAKZを「0」に設定する(ステップS141)。停止時間タイマTMSTOPは、ECU5内に設けられており、常時電源が供給されている。そして、ECU5のCPUは、停止時間タイマTMSTOPの値を読みとってメモリに格納すること、及び停止時間タイマTMSTOPのリセットを行う。停止時間タイマTMSTOPがリセットされるのは、イグニッションスイッチ42がオフされた直後にステップS132が実行されるときのみである。
【0041】
セルフシャットダウン処理中でないときは、エンジン1の運転モードが始動モードであるか否かを判別する(ステップS133)。始動モードであるときは、停止時間判定終了フラグFSKTMCALが「1」であるか否かを判別する(ステップS134)。最初は、FSKTMCAL=0であるので、ステップS135に進み、停止時間タイマTMSTOPの指示値を、停止時間TSOAKZとして読み込む。
【0042】
ステップS136では、吸気温TAに応じて図5(a)に示すTSOAKJUDテーブルを検索し、判定時間TSOAKJUDを算出する。TSOAKJUDテーブルは、吸気温TAが高くなるほど、判定時間TSOAKJUDが長くなるように設定されている。
【0043】
ステップS137では、停止時間TSOAKZが判定時間TSOAKJUDより長いか否かを判別し、TSOAKZ≦TSOAKJUDであるときは、下記式により、停止時間TSOAKZの積算値TSOAKを算出する(ステップS138)。積算値TSOAKは、イグニッションスイッチ42がオフされても、メモリに格納されている値が保持される。
TSOAK=TSOAK+TSOAKZ
【0044】
ステップS139では、積算値TSOAKが判定時間TSOAKJUDより大きいか否かを判別し、TSOAK≦TSOAKJUDであるときは、停止時間フラグFLONGSOAKを「0」に設定するとともに、停止時間判定終了フラグFSKTMCALを「1」に設定する(ステップS143)。
【0045】
一方、ステップS136またはS139の答が肯定(YES)であるとき、すなわちTSOAKZ>TSOAKJUDであるとき、またはTSOAK>TSOAKJUDであるときは、停止時間フラグFLONGSOAKを「1」に設定するとともに、停止時間判定終了フラグFSKTMCALを「1」に設定する(ステップS140)。ステップS141では、積算値TSOAKを「0」に設定し、前記ステップS142に進む。
【0046】
始動モードでないとき、または停止時間判定終了フラグFSKTMCALが「1」に設定されたときは、ステップS144に進み、今回のドライビングサイクルにおける故障診断が完了したか否かを判別する。完了していないときは直ちに本処理を終了する。完了したときは、積算値TSOAK及び停止時間TSOAKZをともに「0」に戻す(ステップS145)。
【0047】
以上のように図3及び図4の処理によれば、エンジン1のコールドスタート時から所定運転時間TRUNJUDより長くエンジン運転が継続されると、故障診断の実施が許可される。また、コールドスタート時から所定運転時間TRUNJUDが経過する前にエンジン1が停止された場合であっても、その停止時間TSOAKZ、または積算値TSOAKが、判定時間TSOAKJUD以下であるときは(FLONGSOAK=0)、コールドスタート時から運転時間の計測を開始した運転時間カウンタTRUNをリセットすることなく(前回運転時までに計測された運転時間を初期値として)、ホットリスタート時に運転時間の計測が再開される。したがって、例えば図9の時刻t0〜t5に示すような運転が行われた場合でも、時刻t5の直後に故障診断が実行され、故障診断の実行頻度を高めることができる。
【0048】
図6及び7はエンジン停止後に故障診断を実行する処理のフローチャートである。この処理は、所定時間(例えば100ミリ秒)毎にECU5のCPUで実行される。
ステップS21では、エンジン1が停止したか否かを判別する。エンジン1が作動中であるときは、第1アップカウントタイマTM1の値を「0」にセットし(ステップS23)、本処理を終了する。エンジン1が停止すると、ステップS21からステップS22に進み、第2の診断許可フラグFEONVMが「1」であるか否かを判別する。FEONVM=0であるときは前記ステップS23に進み、FEONVM=1であるときは、第1アップカウントタイマTM1の値が第1大気開放時間TOTA1(例えば120秒)を越えたか否かを判別する(ステップS24)。最初はこの答は否定(NO)であるので、バイパス弁36を開弁し、ベントシャット弁38の開弁状態を維持する(ステップS25)(図2,時刻t1)。次いで第2アップカウントタイマTM2の値を「0」に設定し(ステップS26)、本処理を終了する。
【0049】
第1アップカウントタイマTM1の値が第1大気開放時間TOTA1に達すると(時刻t2)、ステップS24からステップS27に進み、第2アップカウントタイマTM2の値が第1判定時間TPHASE1より大きいか否かを判別する。最初はこの答は否定(NO)であるので、ベントシャット弁38を閉弁し(ステップS28)、タンク内圧PTANKが第1所定タンク内圧PTANK1より高いか否かを判別する(ステップS29)。最初はこの答は否定(NO)となるので、第3アップカウントタイマTM3の値を「0」に設定し(ステップS31)、タンク内圧PTANKが最大タンク内圧PTANKMAXより高いか否かを判別する(ステップS32)。最大タンク内圧PTANKMAXの初期値は、大気圧より低い値に設定されているため、最初はこの答は肯定(YES)となり、そのときのタンク内圧PTANKが最大タンク内圧PTANKMAXに設定される(ステップS33)。ステップS32の答が否定(NO)であるときは、直ちに本処理を終了する。ステップS32及びS33により、第1判定モードにおける最大タンク内圧PTANKMAXが得られる。
【0050】
ステップS29の答が肯定(YES)となったときは(図2,破線L1,時刻t3参照)、タンク内圧PTANKの上昇速度が大きいので蒸発燃料処理装置40は正常(漏れは無い)と判定し(ステップS30)、故障診断を終了する。
第2アップカウントタイマTM2の値が第1判定時間TPHASE1に達すると(時刻t4)、ステップS27からステップS34に進む。ステップS34では、第3アップカウントタイマTM3の値が第2大気開放時間TOTA2(例えば120秒)より大きいか否かを判別する。この答は最初は否定(NO)であるので、ベントシャット弁38を開弁し(ステップS35)、第4アップカウントタイマTM4の値を「0」に設定し(ステップS36)、本処理を終了する。
【0051】
第3アップカウントタイマTM3の値が第2大気開放時間TOTA2に達すると(時刻t5)、ステップS34からステップS41(図7)に進み、第4アップカウントタイマTM4の値が第2判定時間TPHASE2より大きいか否かを判別する。最初はこの答は否定(NO)であるので、ベントシャット弁38を閉弁し(ステップS42)、タンク内圧PTANKが第2所定タンク内圧PTANK2より低いか否かを判別する(ステップS43)。最初はこの答は否定(NO)となるので、タンク内圧PTANKが最小タンク内圧PTANKMINより低いか否かを判別する(ステップS45)。最小タンク内圧PTANKMINの初期値は、大気圧より高い値に設定されているため、最初はこの答は肯定(YES)となり、そのときのタンク内圧PTANKが最小タンク内圧PTANKMINに設定される(ステップS46)。ステップS45の答が否定(NO)であるときは、直ちに本処理を終了する。ステップS45及びS46により、第2判定モードにおける最小タンク内圧PTANKMINが得られる。
【0052】
ステップS43の答が肯定(YES)となったときは(図2,破線L3,時刻t6参照)、タンク内圧PTANKの減少速度が大きいので蒸発燃料処理装置40は正常(漏れは無い)と判定し(ステップS44)、故障診断を終了する。
第4アップカウントタイマTM4の値が第2判定時間TPHASE2に達すると(時刻t7)、バイパス弁36を閉弁するとともにベントシャット弁38を開弁する(ステップS47)。次いで最大タンク内圧PTANKMAXと最小タンク内圧PTANKMINとの圧力差ΔP(PTANKMAX−PTANKMIN)を算出し(ステップS48)、圧力差ΔPが判定閾値ΔPTHより大きいか否かを判別する(ステップS49)。その結果、ΔP>ΔPTHであるときは、蒸発燃料処理装置40は正常と判定して故障診断を終了し(ステップS50)、ΔP≦ΔPTHであるときは、蒸発燃料処理装置40は故障した(漏れが有る)と判定して故障診断を終了する(ステップS51)。
【0053】
図8は、異常検出フラグFCSの設定を行う処理のフローチャートである。この処理は、ECU5のCPUで所定時間(例えば100ミリ秒)毎に実行される。
ステップS61では、図6及び7の故障診断処理を実行しているか否かを判別し、実行してないときは直ちに本処理を終了する。故障診断処理を実行しているときは、ステップS62〜S81の処理を実行する。
【0054】
ステップS62では、圧力センサ15の断線・ショート検知処理を実行する。この処理では、圧力センサ15の出力電圧及び出力電流から、断線またはショートの発生が検出される。ステップS63では、バイパス弁36の断線・ショート検知処理を実行する。この処理では、バイパス弁36の入力電圧及び入力電流から、断線またはショートの発生が検出される。ステップS64では、ベントシャット弁38の断線・ショート検知処理を実行する。この処理では、ベントシャット弁38の入力電圧及び入力電流から、断線またはショートの発生が検出される。
【0055】
次いで圧力センサ15の断線が検出されたか否かを判別し(ステップS65)、検出されていないときは圧力センサ15のショートが検出されたか否かを判別する(ステップS66)。この答が否定(NO)であるときは、バイパス弁36の断線が検出されたか否かを判別し(ステップS67)、検出されていないときはバイパス弁36のショートが検出されたか否かを判別する(ステップS68)。この答が否定(NO)であるときは、ベントシャット弁38の断線が検出されたか否かを判別し(ステップS69)、検出されていないときはベントシャット弁38のショートが検出されたか否かを判別する(ステップS70)。
【0056】
そして、ステップS65〜S70のいずれかの答が肯定(YES)であるときは、異常検出フラグFCSを「1」に設定し(ステップS81)、ステップS65〜S70の全ての答が否定(NO)であるときは、異常検出フラグFCSを「0」に設定する(ステップS80)。
【0057】
このように、故障診断の実行に直接関わる圧力センサ15、バイパス弁36またはベントシャット弁38の断線またはショートが検出されたときは、異常検出フラグFCSが「1」に設定され、故障診断が禁止されるので、圧力センサ15、バイパス弁36またはベントシャット弁38の故障によって、誤判定が発生することを防止することができる。
【0058】
なお、第1の診断許可FEVPLKMが「1」に設定されると、エンジン1の運転中に所定の診断実行条件が満たされたときに、蒸発燃料処理装置40の故障診断が実行される。
【0059】
本実施形態では、ECU5が計測手段、診断許可手段、及び故障診断手段を構成する。より具体的には、図3のステップS112〜S114,S116及びS122が計測手段に相当し、同図のステップS123及びS125が診断許可手段に相当し、図6及び図7処理が故障診断手段に相当する。
【0060】
なお上述した実施形態では、図4のステップS137及びS139で参照される判定時間TSOAKJUDを吸気温TAに応じて設定するようにたが、図5(b)に示すように、エンジン1により駆動される車両の走行時間TDRV、または走行距離DDRV、または燃料消費量QFUELに応じて設定するようにしてもよい。
また図4のステップS139では、判定時間TSOAKより大きい第2の判定時間TSOAKJUD2を採用し、積算値TSOAKが、第2の判定時間TSOAKJUD2より大きいか否かを判別するようにしてもよい。第2の判定時間TSOAKJUD2も、吸気温TA、走行時間TDRV、走行距離DDRV、または燃料消費量QFUELに応じて、図5に示すように設定される。
【0061】
また、圧力センサ15はチャージ通路31に設けたが、燃料タンク9に設けるようにしてもよい。
また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンなどの制御デバイスの故障診断にも適用が可能である。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1に記載の発明によれば、冷間始動時からの機関運転時間が計測され、温間始動時において、機関停止時間が所定停止時間より短いとき、または前記停止時間の積算値が所定積算値より小さいときは、前回の機関運転時間を初期値として機関運転時間の計測が再開される。機関停止時間が所定停止時間より短いとき、または前記停止時間の積算値が所定積算値より小さいときは、機関停止を無視して機関運転時間を連続して計測しても、故障診断の精度は低下しない。したがって、そのようなときには、前回計測された機関運転時間を初期値として前記機関運転時間の計測を再開することにより、故障診断の実行頻度を増加させることができる。その結果、内燃機関制御デバイスで発生する故障を迅速に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる蒸発燃料処理装置及び内燃機関の制御装置の構成を示す図である。
【図2】故障診断の概要を説明するためのタイムチャートである。
【図3】故障診断実行条件を判定する処理のフローチャートである。
【図4】図3の処理で参照されるフラグ(FLONGSOAK)の設定を行う処理のフローチャートである。
【図5】図4の処理で使用されるテーブルを示す図である。
【図6】故障診断を実行する処理のフローチャートである。
【図7】故障診断を実行する処理のフローチャートである。
【図8】異常検出フラグ(FCS)の設定を行う処理のフローチャートである。
【図9】発明が解決すべき課題を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 吸気管
5 電子コントロールユニット(計測手段、診断許可手段、故障診断手段)
40 蒸発燃料処理装置(機関制御デバイス)
42 イグニッションスイッチ
Claims (1)
- 内燃機関の冷間始動時からの機関運転時間を計測する計測手段と、該計測手段により計測される機関運転時間が所定時間を超えたとき、故障診断の実施を許可する診断許可手段と、イグニッションスイッチがオンされた時点から次にイグニッションスイッチがオンされるまでの期間を1ドライビングサイクルとして定義した場合において、前記診断許可手段により故障診断が許可された後、当該ドライビングサイクル中に1回、前記機関の制御デバイスの故障診断を実行する故障診断手段とを備える内燃機関制御デバイスの故障診断装置において、
前記計測手段は、前記機関の温間再始動時においては、前記機関の停止時間が所定停止時間より短いとき、または前記停止時間の積算値が所定積算値より小さいときは、前回計測された機関運転時間を初期値として前記機関運転時間の計測を再開することを特徴とする内燃機関制御デバイスの故障診断装置。
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