JP2004123399A - 無機質板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セメント系無機材料とケイ酸含有物質とを主成分とする基材層と、セメント系無機材料とケイ酸含有物質を主成分とし基材層の上に形成される表面層とからなる無機質板において、基材層には補強繊維として針葉樹パルプと新聞故紙とを添加し、表面層には補強繊維として広葉樹パルプを添加している。
これにより、表面層は振動プレスする際に振動によって繊維が配向することがなく、ランダムな方向に向く傾向があり、その為表面に巣穴等の問題が起きない。
また、基材層には針葉樹パルプと新聞故紙が添加されているので、コストアップにならずにしかも強度等の物性に優れた無機質板を得ることが出来る。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は型枠プレス方式によって製造された無機質板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、無機質板の湿式製造方法としては、ハチェック式や長網式などの抄造方法と型枠プレス方式が主として採用されている。
このうち、型枠プレス方式は、例えば特開平11−105020号のように、スラリ−を流し込み、均し、脱水した後にプレス成型する方式であり、薄い基材の層を積み重ねて所望の厚みの基材にする必要がなく、所望の基材に対して必要量のスラリ−を型枠に投入すれば良いため、厚物の生産に適しているとともに、プレス前の基材の含水率を高く設定できるため、深いエンボスを付与できるという長所がある。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−105020号
【特許文献2】
特公平6−72039号
【特許文献3】
特公平6−88821号
【特許文献4】
特許第3282930号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この型枠プレス方式は従来の抄造方法と比べて極端に生産効率が低いという欠点があった。
【0005】
すなわち、型枠プレス方式では連続的に基材を生産できないばかりか、所望形状の柄付けを行うためには、プレス前の基材の含水率を200質量%前後に調整して流動性を確保する必要があり、そのためプレス時の脱水に時間を要する。
また、無機質板の生産効率を高めるためプレス速度を上げると、型枠とプレスとの隙間からスラリ−が噴出したり、表面に水走りが発生したりして意匠性が低下するため、プレス速度をあまり上げることもできない。
その結果、型枠プレス方式では無機質板の生産性を高めるにも限界が生じる。
【0006】
また、従来から、無機質板の補強繊維として、木質パルプが用いられている。木質パルプには、針葉樹未晒しパルプ(NUKP)、針葉樹晒しパルプ(NBKP)、広葉樹未晒しパルプ(LUKP)、広葉樹晒しパルプ(LBKP)等があり、これらを単独または併用して用いられている。
例えば、特公平6−72039号や特公平6−88821号には、針葉樹と広葉樹とを繊維長を特定した押出成形方法が開示されており、特許第3282930号には、広葉樹未晒硫酸塩パルプを特定した無機質板が開示されている。
しかしながらこれらは、基材層の含水率を高くする必要がある型枠プレス方式での振動プレスを用いた製造方法ではない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、柄付け容易性を損なうことなく生産性を向上させることが可能な型枠プレス方式による無機質板の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本請求項1に記載の発明は、セメント系無機材料とケイ酸含有物質とを主成分とする基材層と、セメント系無機材料とケイ酸含有物質を主成分とし基材層の上に形成される表面層とからなる無機質板において、基材層には補強繊維として針葉樹パルプと新聞故紙とが添加され、表面層には補強繊維として広葉樹パルプが添加されている。
上記の構成によれば、表面層には繊維長が短い広葉樹パルプが添加されているので、振動プレスする際に振動によって繊維が配向することがなく、ランダムな方向に向く傾向があり、その為表面に巣穴等の問題が起きない。
また、基材層には針葉樹パルプと新聞故紙が添加されているので、コストアップにならずにしかも強度等の物性に優れた無機質板を得ることが出来る。
【0009】
また、本請求項2に記載の発明は、上記基材層には針葉樹パルプが3〜6質量%、新聞故紙が3〜6質量%添加され、上記表面層には広葉樹パルプが6〜12質量%添加されている無機質板である。
上記の構成によれば、無機質板としての補強効果を保ちながら、無機質板の表面性を向上することが出来る。
基材層に添加される針葉樹パルプが3質量%未満だと、無機質板としての強度が維持出来ず、6質量%を超えるとコストがアップする。
また、基材層に添加される新聞故紙が3質量%未満だと、コストダウンにならず、6質量%を超えるとかさ高になり、そのため諸物性が劣化する。
また、表面層に添加される広葉樹パルプが6質量%未満だと、基材層から生じる余剰水分を吸収しずらく、その為、表面性が悪化し、逆に12質量%を超えると表面が異物を含んだように表面性が悪化する。
【0010】
また、本請求項3に記載の発明は、セメント系無機材料とケイ酸含有物質とを主成分とする基材原料に水を添加してスラリ−とし、このスラリ−を型枠に流し込み、このスラリ−を脱水して基材層を形成し、この基材層の上にセメント系無機原料とケイ酸含有物質を主成分とする粉体原料を散布して表面層として積層マットを形成し、この積層マットの上および/または下から振動を与えながら母型を押し付けて積層マットをプレス成型し、このプレス成型物を硬化養生させるようにした無機質板の製造方法において、基材原料には補強繊維として針葉樹パルプと新聞故紙が添加され、粉体原料には補強繊維として広葉樹パルプが添加されている。
基材原料は含水率が高く設定されるスラリ−として型枠に流し込み脱水されるので、補強繊維として針葉樹パルプが添加されていると、厚み方向に平行に針葉樹パルプが配向し、無機質板としての厚み方向への強度に寄与する。
また、新聞故紙は繊維長が短く、また一度抄造されているので、強度的にはあまり寄与しないが、水分の保持やつなぎ効果に寄与する。
粉体原料は粉体に添加する水が少なく、その為補強繊維が長いと繊維どうしが絡み合ういわゆるダマになりやすく表面性が悪くなる。
また、振動の際、繊維が一方向に配向しようとするので、特に母型にて凹凸柄を形成する場合は、表面に巣穴が生じやすい。
広葉樹パルプは繊維長が短いので、表面に巣穴を生じることがなく、また、新聞故紙ほど繊維長が短くはないので、凹凸の成形性に寄与し、表面の凸部や凹部の角部分の欠けがない。
【0011】
また、本請求項4に記載の発明は、上記基材原料には針葉樹パルプが3〜6質量%、新聞故紙が3〜6質量%添加され、上記粉体原料には広葉樹パルプが6〜12質量%添加されている無機質板の製造方法である。
上記の構成によれば、無機質板としての補強効果を保ちながら、表面性を向上する無機質板を製造することが出来る。
基材層に添加される針葉樹パルプが3質量%未満だと、無機質板としての強度が維持出来ず、6質量%を超えるとコストがアップする。
また、基材層に添加される新聞故紙が3質量%未満だと、コストダウンにならず、6質量%を超えるとかさ高になるので、含水率を高くする必要がありそのため諸物性が劣化する。
また、表面層に添加される広葉樹パルプが6質量%未満だと、基材層から生じる余剰水分を吸収しずらく、その為、表面性が悪化し、逆に12質量%を超えると表面が異物を含んだように表面性が悪化する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0013】
[セメント系無機材料]
本発明に使用されるセメント系無機材料とは、ケイ酸カルシウムを主成分とした水硬性の無機材料であり、このような無機材料としては例えばポルトランドセメント、高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント、白色セメント等のセメント類がある。
上記セメント類は二種以上混合使用されてもよい。
【0014】
[ケイ酸含有物質]
本発明に使用されるケイ酸含有物質としては、スラグ、フライアッシュ、ケイ砂、ケイ石粉、シリカフュ−ム、珪藻土等がある。
上記ケイ酸含有物質は二種類以上混合されてもよい。
【0015】
[その他の原料]
本発明に使用される他の原料としては、パ−ライト、バ−ミキュライト、シラスバル−ン、セメント板の廃材粉砕物等の軽量骨材が使用されてもよい。
上記原料は二種以上混合されてもよい。
また、所望なれば更に硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、アルミン酸塩類、水ガラス、ギ酸カルシウム等の硬化促進剤やロウ、ワックス、パラフィン、界面活性剤、シリコン等の防水剤や撥水剤等が混合されてもよい。
【0016】
[補強繊維]
補強繊維としては、基材層には、針葉樹パルプ、新聞故紙が添加される。
特に、針葉樹パルプの中でも、針葉樹未晒しパルプ(NUKP)が好ましい。これは、繊維長が長いことにより、十分な補強効果が得られ、また、未晒しであるために晒し済みのパルプと比べて安価に手に入れることが可能である。
また、新聞故紙は補強効果はあまり期待できないが、水分の保持や粉体のつなぎ効果があり、しかも非常に安価で手に入れることが可能である。
そして、表面層には広葉樹パルプが添加される。
特に広葉樹パルプの中でも、広葉樹未晒しパルプ(LUKP)が好ましい。
これは、繊維長が短いため、原料混合の際に良好な繊維分散状況が得られ、表面性に優れた無機質板の製造が可能となる。
また、これ以外に木粉、木毛、木質繊維束、ドライパルプ等の木質補強材や、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維等の合成繊維、セピオライト、ワラストナイト等の鉱物繊維が使用されてもよい。
上記補強材は二種以上混合されてもよい。
【0017】
[無機質板の製造方法]
本発明の無機質板の製造方法を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係る無機質板の製造方法の一実施形態が適用される無機質板の製造設備を示す図である。
【0019】
この無機質板の製造設備1は、図1に示すように、スラリ−流入装置2、吸引脱水装置5、粉体散布装置3,振動プレス脱水装置6、2本の搬送ベルト7、9などから構成されている。
【0020】
すなわち、スラリ−流入装置2はスラリ−貯留槽21を具備しており、吸引脱水装置5は吸引機51を具備している。
また、粉体散布装置3は粉体貯留槽31を備えており、粉体貯留槽31内には粉体原料12が貯留されている。
【0021】
他方、振動プレス脱水装置6はプレス61を有しており、このプレス61は上盤62および下盤63を備えている。
ここで、下盤63は固定されているのに対し、上盤62は昇降駆動自在に支持されている。
さらに、上盤62の下面には母型65が下向きに装着されている。
さらに、上盤62の上面には振動装置66が装着されている。
そして、下盤63には脱水装置67が備えられている。
そして、これらスラリ−流入装置2、吸引脱水装置5、粉体散布装置3、振動プレス脱水装置6を順次つなぐ形で布製の搬送ベルト7が回転駆動自在に張設されており、この搬送ベルト7の近傍(図1右方)には別の搬送ベルト9が回転駆動自在に張設されている。
【0022】
無機質板の製造設備1は以上のような構成を有するので、本発明を適用して無機質板を製造する際には次の手順による。
まず、含水率が250〜500質量%のスラリ−をスラリ−流入装置2のスラリ−貯留槽21に供給するとともに、粉体散布装置3の粉体貯留槽31に粉体原料12を供給する。
このスラリ−はセメント系無機材料とケイ酸含有物質とを主成分とし、これに軽量骨材、補強繊維等の副成分を適宜配合した基材原料に適量の水を添加してスラリ−状としたものである。
また、粉体原料12は、セメント系無機材料とケイ酸含有物質とを主成分とし、これに軽量骨材、補強繊維等の副成分を適宜配合して水硬性の固形成分を調製し、この固形成分に適量の水を添加して混練したものである。
【0023】
ここで、基材原料に添加する補強繊維としては、針葉樹パルプ、特に針葉樹未晒しパルプ(NUKP)と、新聞故紙が添加される。
NUKPは3〜6質量%が添加されることが好ましく、新聞故紙は3〜6質量%添加される。
また、ここで用いられるNUKPは1.5〜4.0mmの繊維長が好ましく、2.0〜2.5mmの繊維長で叩解度はカナディアンスタンダ−ドフリ−ネス(CSF)450〜650ccであることがさらに好ましい。
NUKPの繊維長が上記より長いと、繊維の凝集(パルプフロック)を起こし、無機質板の均一性を損ない、その結果、耐凍性等の物性が劣化する。
また、NUKPの繊維長が上記未満だと、十分な補強効果が得られない。
ここで用いられる新聞故紙は0.3〜1.5mmの繊維長が好ましく、0.7〜1.1mmの繊維長で叩解度はCSF200〜400ccであることがさらに好ましい。
【0024】
そして、粉体原料12に添加する補強繊維は広葉樹パルプ、特に広葉樹パルプの中でも、広葉樹未晒しパルプ(LUKP)が添加される。
LUKPは6〜12質量%添加されることが好ましい。
ここで用いられるLUKPは0.3〜1.5mmの繊維長が好ましく、0.7〜1.1mmの繊維長で叩解度はCSF300〜400ccであることがさらに好ましい。
LUKPの繊維長が上記より長いと、表面性が劣化し、逆に上記よりも短いと、表面の成形性が劣化する。
粉体原料12に新聞故紙ではなく、LUKPを添加するのは、表面の凹凸成形性の為であり、一度抄造された新聞故紙は1本1本の繊維が弱くなっており、同じ長さ、叩解度でも繊維のかさが小さい。
表面の凹凸成形には原料のある程度のかさが必要で(表面の凹凸成形に付随する弾力性)、LUKPと同じかさを得ようとすると新聞故紙はかなりの質量が必要となり、他の粉体が実質的に減るので、凹凸部分で粉体が充填されない部分が出てきてしまう。
これに対し、LUKPは少ない質量でかさを得ることが出来る。
また、新聞故紙が一度製品となり、表面にインク等の化学処理がなされているので、吸水性が悪いが、LUKPは未晒しなので、吸水性が良く、従って、基材層からの余剰水分を素早く吸水するので、粉体原料12と基材層11とのなじみがよい。
【0025】
次に、型枠10にスラリ−を流し込んで基材層11を形成する。
それには、スラリ−流入装置2のスラリ−貯留槽21の下方で搬送ベルト7上に型枠10を載置した後、スラリ−貯留槽21から型枠10内に所定量のスラリ−を流し込み、このスラリ−を均した後、吸引脱水装置5の吸引機51を駆動してスラリ−の下面から吸引脱水する。
すると、含水率150〜200質量%の平板状の基材層11が型枠10内に形成される。
【0026】
基材層11の含水率は150〜200質量%とすることが好ましい。
基材層11の含水率が150質量%未満では、基材層11の含水率が低すぎて硬くなっているため、振動プレス時に基材層11と粉体原料12がなじみにくくなることから、両者の密着性が悪くなって層間強度が低下するため、耐凍害性試験において厚み膨潤率が大きくなり、界面剥離が発生しやすくなる。
逆に、基材層11の含水率が200質量%を超えると、基材層11が軟らか過ぎて振動プレス時に粉体原料12が基材層11に深く食い込み、粉体原料12の充填が不十分となって表面性が悪化すると同時に、脱水に要する時間が長くなり、生産性が低下する。
この際、基材層11には、針葉樹パルプと新聞故紙とが添加されているので、厚み方向に平行に針葉樹パルプが配向し、無機質板としての厚み方向への強度に寄与する。
また、新聞故紙は繊維長が短く、また一度抄造されているので、強度的にはあまり寄与しないが、水分の保持やつなぎ効果に寄与する。
【0027】
その後、搬送ベルト7を回転させて基材層11を型枠10とともに粉体散布装置3近傍に移送し、基材層11上に粉体散布装置3の粉体貯留槽31から粉体原料12を均一に散布して表面層を形成し、積層マット13とする。
ここで、粉体原料12の散布量は全固形分に対して15〜30質量%の散布量とすることが好ましい。
粉体原料12の散布量が15質量%未満だと、粉体原料12が基材層11を十分に隠ぺいすることが出来ないため、プレス成型後の粉体原料12の充填が不十分となり、振動プレス後の板面に空隙が生じて表面性が悪くなる。
一方、粉体原料12の散布量が30質量%を超えると、振動プレス時に基材層11から発生する余剰水分が不足し、粉体原料12が十分な流動性を発現することが出来ないため、表面性は悪化する。
【0028】
また、粉体原料12の含水率は15〜25質量%とすることが好ましい。
また、粉体原料12の含水率が15質量%未満であると、粉体原料12が飛散しやすくなるため取り扱いが難しくなるばかりでなく、広葉樹パルプ等の補強繊維の分散が悪くなることに加えて粉体原料12がその水分不足によって十分な流動性を発現できなくなるため、表面性が悪化してしまう。
逆に、粉体原料12の含水率が25質量%を超える場合、粉体原料12が粒状になって加圧成型後の板の表面性が悪くなる。
上記の構成によれば、振動プレス時に基材から生じる余剰水分を適切に粉体原料12に吸収させることが出来、その為基材層11と粉体原料12とのなじみが良くなるので層間強度、耐凍害性が向上し、界面剥離が発生しにくい。
【0029】
この状態で、積層マット13の上から振動プレス脱水装置6の母型65を押し付け、振動を与えながらプレス成型物14を成型する。
それには、型枠10を取り外して積層マット13のみを搬送ベルト7上に残し、搬送ベルト7を回転させて積層マット13を振動プレス脱水装置6近傍に移送した後、積層マット13がプレス61の上盤62と下盤63との間に位置決めされた状態で、振動装置66を作動させながら、上盤62を所定のストロ−クだけ下降させる。
プレス圧力は2.0〜5.0MPaで行うことが好ましい。
すると、積層マット13が加圧脱水され、表面には母型65によって凹凸状の柄付けが行われる。
【0030】
粉体原料12は粉体に添加する水が少なく、その為補強繊維が長いとダマになりやすく表面性が悪くなり、また、振動の際、繊維が一方向に配向しようとするので、特に母型にて凹凸柄を形成する場合は、表面に巣穴が生じやすいが、ここでは粉体原料12に広葉樹パルプが添加されているので、表面に巣穴を生じることがなく、また、新聞故紙ほど繊維長が短くはないので、凹凸の成形性に寄与し、表面の凸部や凹部の角部分の欠けがない。
また、このとき、基材層11は含水率が高くて流動性に富むので、母型65への追従性が良好となり、たとえ母型65の凹凸が深くても、それを忠実に反映した深い凹凸模様が積層マット13に付与されることになる。
粉体原料12についても、振動プレス時に発生する余剰水分を吸収して流動性を持つようになるため、母型65の凹凸に追従し、積層マット13への凹凸模様付与に悪影響を及ぼすことはない。
また、基材層11から生じる余剰水分を粉体原料12が吸収するため、プレス速度を上げても、スラリ−の噴出や水走りが発生しにくいばかりか、基材層11の脱水に要する時間が短くて済み、プレス成型物14の生産効率が高まる。
また、上盤62の上の振動装置66を作動させているので、粉体原料12が基材層11上で均一にならされ、また基材層11から生じる余剰水分を粉体原料12に均一に吸収させることが出来、表面層が均一になり、粉体原料12が欠如することで起こる表面の巣穴がなくなり、また、粉体原料12が塊状となることで、起こる表面の異物感もなくなる。
また、下盤63の脱水装置67により吸引脱水されているので、振動により必要以上に余剰水分が浮き上がることを防止する。
【0031】
また、振動装置66は、振動条件が周波数20〜60Hz、振幅0.01〜0.1mmで作動させることが好ましい。
このことで、振動が簡単に伝わり、また、原料を早く均一化させようとする力が働くのでプレス圧を従来よりも下げることが出来、粉体原料12と基材層11との密着は非常に強固になる。
【0032】
最後に、上盤62を所定のストロ−クだけ上昇させて解圧し、プレス成型物14を搬送ベルト7から搬送ベルト9に載せ換えた後、搬送ベルト9を回転させてプレス成型物14を硬化養生装置(図示せず)まで移送し、そこで、プレス成型物14を所定時間だけ硬化養生させる。
硬化養生としては、一次硬化後または一次硬化なしで、常温養生またはオ−トクレ−ブ養生する。
一次硬化において適用される温度は通常50〜100℃である。
常温養生は、通常常温で4〜10日間行われ、オ−トクレ−ブ養生は、130〜180℃の温度で10〜18時間行われる。
常温養生またはオ−トクレ−ブ養生後は、乾燥工程を経て表面塗装等を行い、最終製品の無機質板を得る。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0034】
[実施例1]
まず、普通ポルトランドセメント35質量%、ケイ砂29質量%、フライアッシュ14質量%、パ−ライト3質量%、廃材粉砕物10質量%、新聞故紙4.5質量%、NUKP4.5質量%を混合し(表1参照)、含水率300質量%になるように水を添加してスラリ−を調製した。
このスラリ−を型枠に流し込み、均し、基材の含水率が150質量%になるように脱水した。
【0035】
他方、普通ポルトランドセメント35質量%、ケイ砂18質量%、フライアッシュ18質量%、パ−ライト3質量%、廃材粉砕物17質量%、LUKP9質量%を混合し(表1参照)、含水率20質量%になるように水を添加して粉体原料を得た。
【0036】
【表1】
【0037】
そして、この粉体原料を基材上に全固形分に対して25質量%散布し、これを周波数40Hz振幅0.02mmの振動条件で振動しながら凹凸模様の付された母型を押し付けつつ、上盤と下盤の間にて圧力4.0MPaでプレス成型し、さらに170℃で10時間オ−トクレ−ブ養生して無機質板を製造した。
【0038】
[実施例2]
表1の配合にて、他の条件は実施例1と同様にして無機質板を製造した。
【0039】
[実施例3]
表1の配合にて、他の条件は実施例1と同様にして無機質板を製造した。
【0040】
[比較例1]
表1の配合にて、他の条件は実施例1と同様にして無機質板を製造した。
【0041】
[比較例2]
表1の配合にて、他の条件は実施例1と同様にして無機質板を製造した。
【0042】
[比較例3]
表1の配合にて、他の条件は実施例1と同様にして無機質板を製造した。
【0043】
[比較例4]
表1の配合にて、他の条件は実施例1と同様にして無機質板を製造した。
【0044】
[比較例5]
表1の配合にて、他の条件は実施例1と同様にして無機質板を製造した。
【0045】
[比較例6]
表1の配合にて、他の条件は実施例1と同様にして無機質板を製造した。
【0046】
[比較例7]
表1の配合にて、他の条件は実施例1と同様にして無機質板を製造した。
【0047】
こうして得られた各種の無機質板(実施例1〜3、比較例1〜7)について、表面性、耐凍害性、曲げ強度を確認した。(表2参照)
なお、耐凍害性はJIS A 1435、曲げ強度はJIS A 1408に準処して測定した。
【0048】
【表2】
【0049】
表2から明らかなように、基材層に補強繊維として新聞故紙とNUKPをそれぞれ3〜6質量%添加し、粉体原料に補強繊維としてLUKPを6〜12質量%添加した実施例1〜3は、表面性、諸物性、生産性に問題なく無機質板を得ることが出来た。
【0050】
これに対して、基材層の新聞故紙、NUKPの添加量がそれぞれ3質量%未満で、粉体原料のLUKPの添加量が6質量%未満の比較例1は、表面に余剰水分を吸収する繊維分が少ないので、表面がばらついたような巣穴が目立ち、特に凹凸模様の角部に巣穴が多く発生した。
また逆に、基材層の新聞故紙、NUKPの添加量がそれぞれ6質量%を超えており、粉体原料のLUKPの添加量が12質量%を超えている比較例2は、補強繊維が多いために表面が異物を含んだようにでこぼこしており、また、界面の密着性に問題が生じた。
また、基材層に新聞故紙が添加されず、NUKPのみが添加されている比較例3は、表面性、諸物性ともに問題はなかったが、コストが高くなり生産性に問題がある。
また、基材層にNUKPが添加されず、新聞故紙のみが添加されている比較例4は、表面性に問題はなかったが、補強性が十分でないので、曲げ強度が低い値となった。
また、粉体原料のLUKPが6質量%未満の比較例5も比較例1同様の結果となった
また、基材層にNUKPの替わりにLUKPが4.5質量%添加されている比較例6は、比較例4同様に十分な曲げ強度が得られなかった。
また、粉体原料にLUKPの替わりにNUKPが9質量%添加されている比較例7は、粉体原料に補強繊維を添加する段階で原料がダマになりやすく、また、振動の際、NUKPが振動により配向する傾向があり、そのため特に凹凸部の表面性が悪化した。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、セメント系無機材料とケイ酸含有物質とを主成分とする基材層と、セメント系無機材料とケイ酸含有物質を主成分とし基材層の上に形成される表面層とからなる無機質板において、基材層には補強繊維として針葉樹パルプと新聞故紙とが添加され、表面層には補強繊維として広葉樹パルプが添加されているので、表面層は振動プレスする際に振動によって繊維が配向することがなく、ランダムな方向に向く傾向があり、その為表面に巣穴等の問題が起きない。
また、基材層には針葉樹パルプと新聞故紙が添加されているので、コストアップにならずにしかも強度等の物性に優れた無機質板を得ることが出来る。
【0052】
また、請求項2に記載の発明によれば、上記基材層には針葉樹パルプが3〜6質量%、新聞故紙が3〜6質量%添加され、上記表面層には広葉樹パルプが6〜12質量%添加されている無機質板であるので、無機質板としての補強効果を保ちながら、無機質板の表面性を向上することが出来る。
【0053】
また、請求項3に記載の発明によれば、セメント系無機材料とケイ酸含有物質とを主成分とする基材原料に水を添加してスラリ−とし、このスラリ−を型枠に流し込み、このスラリ−を脱水して基材層を形成し、この基材層の上にセメント系無機原料とケイ酸含有物質を主成分とする粉体原料を散布して表面層として積層マットを形成し、この積層マットの上および/または下から振動を与えながら母型を押し付けて積層マットをプレス成型し、このプレス成型物を硬化養生させるようにした無機質板の製造方法において、基材原料には補強繊維として針葉樹パルプと新聞故紙が添加され、粉体原料には補強繊維として広葉樹パルプが添加されている。
従って、基材原料は含水率が高く設定されるスラリ−として型枠に流し込み脱水されるので、補強繊維として針葉樹パルプが添加されていると、厚み方向に平行に針葉樹パルプが配向し、無機質板としての厚み方向への強度に寄与する。
また、新聞故紙は繊維長が短く、また一度抄造されているので、強度的にはあまり寄与しないが、水分の保持やつなぎ効果に寄与する。
粉体原料は粉体に添加する水が少なく、その為補強繊維が長いと繊維どうしが絡み合ういわゆるダマになりやすく表面性が悪くなる。
また、振動の際、繊維が一方向に配向しようとするので、特に母型にて凹凸柄を形成する場合は、表面に巣穴が生じやすい。
広葉樹パルプは繊維長が短いので、表面に巣穴を生じることがなく、また、新聞故紙ほど繊維長が短くはないので、凹凸の成形性に寄与し、表面の凸部や凹部の角部分の欠けがない。
【0054】
また、請求項4に記載の発明によれば、上記基材原料には針葉樹パルプが3〜6質量%、新聞故紙が3〜6質量%添加され、上記粉体原料には広葉樹パルプが6〜12質量%添加されている無機質板の製造方法であるので、無機質板としての補強効果を保ちながら、表面性を向上する無機質板を製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る無機質板の製造方法の一実施形態が適用される無機質板の製造設備を示す図
【符号の説明】
1 無機質板の製造設備
2 スラリ−流入装置
21 スラリ−貯留槽
3 粉体散布装置
31 粉体貯留槽
5 吸引脱水装置
51 吸引機
6 振動プレス脱水装置
61 プレス
62 上盤
63 下盤
65 母型
66 振動装置
67 脱水装置
7 搬送ベルト
9 搬送ベルト
10 型枠
11 基材層
12 粉体原料
13 積層マット
14 プレス成型物
Claims (4)
- セメント系無機材料とケイ酸含有物質とを主成分とする基材層と、セメント系無機材料とケイ酸含有物質を主成分とし基材層の上に形成される表面層とからなる無機質板において、基材層には補強繊維として針葉樹パルプと新聞故紙とが添加され、表面層には補強繊維として広葉樹パルプが添加されていることを特徴とする無機質板
- 上記基材層には針葉樹パルプが3〜6質量%、新聞故紙が3〜6質量%添加され、上記表面層には広葉樹パルプが6〜12質量%添加されていることを特徴とする請求項1に記載の無機質板
- セメント系無機材料とケイ酸含有物質とを主成分とする基材原料に水を添加してスラリ−とし、このスラリ−を型枠に流し込み、このスラリ−を脱水して基材層を形成し、この基材層の上にセメント系無機原料とケイ酸含有物質を主成分とする粉体原料を散布して表面層として積層マットを形成し、この積層マットの上および/または下から振動を与えながら母型を押し付けて積層マットをプレス成型し、このプレス成型物を硬化養生させるようにした無機質板の製造方法において、基材原料には補強繊維として針葉樹パルプと新聞故紙が添加され、粉体原料には補強繊維として広葉樹パルプが添加されていることを特徴とする無機質板の製造方法
- 上記基材原料には針葉樹パルプが3〜6質量%、新聞故紙が3〜6質量%添加され、上記粉体原料には広葉樹パルプが6〜12質量%添加されていることを特徴とする請求項3に記載の無機質板の製造方法
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