JP2004119276A - 燃料電池発電システム - Google Patents

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Abstract

【課題】水素燃料の貯蔵・運搬効率に優れた燃料電池発電システムを提供する。
【解決手段】水素分子化合物を内蔵した水素分子貯留槽2と、この水素分子貯留槽2からの水素が導入される燃料電池1とを備えた燃料電池発電システム。水素分子化合物としては、ホスト分子と水素分子との接触反応により水素分子を包接した水素分子包接化合物が用いられる。燃料電池1の排熱を水素分子貯留槽2に供給して水素分子化合物を加熱することにより水素を放出させることができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素を水素分子化合物として貯蔵し、貯蔵した水素を燃料電池の水素燃料として利用する燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、CO排出に伴う地球環境問題に対処する方策として、水素をエネルギー媒体とする新しいクリーンエネルギーシステムが提案されている。中でも燃料電池は、燃料が有するエネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置であり、電解質を挟んで設けられた一対の電極のうちの陽極に水素を含有する燃料ガスを供給すると共に、他方の陰極に酸素を含有する燃料ガスを供給し、これら一対の電極の電解質側の表面で生じる下記の化学反応エネルギーを電気エネルギーとして取り出すエネルギー変換技術であり、自動車のガソリンエンジンに替わる動力源、家庭用オンサイト発電、IT用の直流給電設備等として、次世代の最も重要な技術の1つとして注目されている。
【0003】
陽極反応:H→2H+2e
陰極反応:2H+2e+(1/2)O→H
【0004】
燃料電池には、使用する電解質の種類によってリン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型、固体高分子型がある。リン酸型はすでに実用化レベルにあり、工場、病院、オフィス、集合住宅、ホテルなど業務自家発電機として導入が進んでおり、小型の発電所用として1000kW級のものも開発されている。一方、固体高分子型は、電気自動車用電源として注目されており、自動車メーカーを中心に燃料電池自動車の開発が進められている。
【0005】
燃料の酸素源としては、空気が用いられている。一方、水素源としては、天然ガス、メタノール等と水蒸気との反応で得られる水素含有ガス(改質ガス)を用いるものと、水素ガスを直接用いるものとがあるが、メタノール等を水蒸気で改質して用いる燃料電池では、水素と共に二酸化炭素が発生するという問題がある。これに対して、水素ガスを直接用いる燃料電池であれば、二酸化炭素の発生の問題はなく、環境維持に有効である。
【0006】
しかしながら、水素燃料の最大の問題は、その貯蔵法と運搬法にある。即ち、従来、水素の貯蔵法としては、様々な方法が提案され、その一つとして、高圧ガスボンベに水素を気体として貯蔵する方法がある。しかし、このような高圧貯蔵は、単純ではあるが、厚肉の容器が必要であり、そのため容器の重量が重く、貯蔵・運搬効率が低いために、例えば軽量化が重視される自動車等への適用は困難である。一方、水素を液体として貯蔵する場合には、気体水素に比較して貯蔵・運搬効率は向上するが、液体水素の製造には高純度の水素が必要であること、また液化温度が−252.6℃という低温であり、このような超低温用の特殊な容器が必要であることなど、経済的に問題がある。また、水素貯蔵合金を用いることも提案されているが、合金自体の重量が重く、しかもMg系の軽量な水素貯蔵合金では水素を放出させる使用温度が300℃近い高温であるなどの問題がある。更には、カーボンナノチューブなどの多孔性炭素素材などを用いることも提案されているが、水素貯蔵の再現性が低く、高圧条件での貯蔵となるなど多くの問題がある。
【0007】
従来、上述のような水素貯蔵技術を利用した燃料電池発電システムも既に提案されており、例えば、特開平7−99707号公報には水素貯蔵合金を用いた燃料電池が、また、特開2001−59472号公報には、液体水素を燃料電池の水素源とすることが記載されているが、いずれも水素の貯蔵・運搬効率において問題が残されている。
【0008】
ところで、分子化合物は、2種類以上の化合物が水素結合やファンデルワールス力などに代表される、共有結合以外の比較的弱い相互作用によって結合した化合物であり、簡単な操作によってもとの各成分化合物に解離する性質を有するため、選択的分離、化学的安定化、不揮発化、徐放化、粉末化などの技術に応用することができる。そして、分子化合物の一つである包接化合物の技術により、複数成分からなるガス状流体から特定成分を分離回収する方法も報告されているが(特開平4−150917号公報)、水素に対する包接化についての提案はなされていない。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−99707号公報
【特許文献2】
特開2001−59472号公報
【特許文献3】
特開平4−150917号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、水素燃料の貯蔵・運搬効率に優れた燃料電池発電システムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料電池発電システムは、水素分子化合物を内蔵した水素分子貯留槽と、該水素分子貯留槽からの水素が導入される燃料電池とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の燃料電池発電システムでは、水素を比較的軽量で常温に近い条件で安定に保持し得る水素分子化合物として貯蔵するため、貯蔵・運搬効率に優れる。しかも、水素分子化合物は、水素と水素分子化合物を形成する化合物(以下「成分化合物」と称す場合がある。)に水素を接触させるのみで容易に得ることができ、しかも、この水素分子化合物からは比較的低温の加熱等の簡単な操作で水素を放出させることができる。
【0013】
本発明の燃料電池発電システムでは、燃料電池の排熱を水素分子貯留槽に供給する手段を設け、燃料電池の排熱により水素分子化合物を加熱して水素を放出させるようにすることが好ましい。
【0014】
また、水素分子貯留槽に水素を供給する水素源を設け、水素源からの水素を水素分子貯留槽において安定に貯蔵・運搬するようにすることもできる。
【0015】
本発明に係る水素分子化合物としては、ホスト分子と水素分子との接触反応により水素分子を包接した水素分子包接化合物が挙げられ、この場合の好ましいホスト分子としては、多分子系ホスト化合物が挙げられる。
【0016】
燃料電池としては、固体高分子型、アルカリ水溶液電解質型、リン酸塩水溶液型、溶融炭酸塩電解質型、固体酸化物電解質型など各種のものを用いることができるが、自動車搭載用としては固体高分子型燃料電池が好適である。ただし、これに限定されるものではない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の燃料電池発電システムの実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1,2は本発明の燃料電池発電システムの実施の形態を示す系統図である。
【0019】
図1の燃料電池発電システムは、燃料電池と、水素分子貯留槽2とを備え、水素分子貯留槽2内には水素分子化合物が貯蔵されている。この水素分子貯留槽2には、燃料電池1からの排熱を有効利用するために、燃料電池1の高温の凝縮水等が配管12,13により循環されている。
【0020】
この燃料電池発電システムでは、水素分子貯留槽2内の水素分子化合物が燃料電池1からの循環温水により加熱されることにより水素を放出し、放出された水素に配管11より燃料電池1に供給される。燃料電池1では、この水素を水素燃料として用いて発電を行う。
【0021】
この燃料電池発電システムでは、発電により発生する温水を水素分子貯留槽2に循環させて水素分子貯留槽2内の水素分子化合物を加熱することにより、水素分子化合物から水素を放出させることができる。なお、燃料電池の排熱のみでは、水素の放出のための加熱エネルギーが不足する場合には、水素分子貯留槽2に別途加熱手段を設けても良い。
【0022】
この燃料電池発電システムでは、水素分子貯留槽2内の水素分子化合物から水素が放出され、水素放出能がなくなった場合には、水素分子貯留槽2内の水素分子化合物を、新たな水素分子化合物と交換しても良く、水素分子貯留槽2に水素を供給して水素分子貯留槽2内で水素と成分化合物とを接触させて水素分子化合物を生成させても良い。水素分子化合物を交換する場合には、水素分子貯留槽2をカセット式とし、水素分子化合物をカセットごと交換するようにするのが好ましい。また、水素分子貯留槽2に水素を供給して水素分子貯留槽2内に残留する成分化合物に水素を保持させる場合には、水素分子貯留槽2にこの水素供給のための供給口等を設けておくのが好ましい。
【0023】
図2は、1台の燃料電池1に対して2台の水素分子貯留槽2A,2Bを設けると共に、この水素分子貯留槽2A,2Bに水素を供給する水素供給源3を設け、バルブV,Vの切り換えにより、一方の水素分子貯留槽で水素を放出させ、他方の水素分子貯留槽で水素の貯蔵が行えるようにしたものである。
【0024】
例えば、燃料電池1からの循環温水を配管12A,13Aで循環させて水素分子貯留槽2A内の水素分子化合物を加熱して水素分子貯留槽2Aから水素を放出させ、放出させた水素を配管11A,11を経て燃料電池1に供給して発電を行う。一方、ポンプPを作動させて水素供給源3からの水素を配管14,14Bを経て水素分子貯留槽2Bに供給し、水素分子貯留槽2B内の成分化合物に水素を保持させる。このとき、配管12B,13Bの水素分子貯留槽2Bへの温水循環は停止する。水素分子貯留槽2Bの排ガス(残留水素)は、配管15B,15を経て水素供給源3に循環させる。
【0025】
水素分子貯留槽2A内の水素分子化合物が水素を放出し、水素放出能がなくなった場合には、バルブV,Vを切り換え、水素分子貯留槽2Aへの温水循環を停止すると共に水素供給源からの水素を配管14,14A、水素分子貯留槽2A及び配管15A,15に循環させて、水素分子貯留槽2A内の成分化合物に水素を保持させる。一方、水素分子貯留槽2Bには燃料電池1からの温水の循環を行って、水素分子化合物から水素を放出させ、放出させた水素を配管11B,11を経て燃料電池1に供給して発電を行う。
【0026】
図2の燃料電池発電システムにおいて、水素供給源3としては、水の電気分解、炭化水素系燃料(メタン、LPG、都市ガスなど)の水蒸気改質等による水素発生装置等を用いることができる。
【0027】
この燃料電池発電システムにあっても、水素分子貯留槽2A,2Bが燃料電池1からの排熱のみでは水素分子化合物から水素を放出させるための加熱エネルギーが不足する場合には別途加熱手段を設けても良い。
【0028】
図1の燃料電池発電システムは、燃料電池1に対して、それ自体軽量で、しかも、貯蔵容器として耐圧容器等が不要な水素分子化合物を貯蔵した水素分子貯留槽2を取り付けた、軽量かつコンパクトな燃料電池発電システムであるため、自動車等に搭載する燃料電池発電システムとして好適である。
【0029】
一方、図2に示す燃料電池発電システムは、水素供給源を備えるものであるが、水素の放出と貯蔵とを2台の水素分子貯留槽で交互に行うことにより、安定な水素供給を行える。
【0030】
なお、図1の燃料電池発電システムにあっても、水素供給源を備えていても良く、この場合、例えば、昼間に太陽電池により水素供給源で水の電気分解を起こし、水素を発生させ、発生した水素を水素分子貯留槽2内の水素分子化合物に保持させ、夜間において、この水素を利用して燃料電池1にて発電を行うというような使用形態が可能であり、発電コストの低減に有効である。
【0031】
本発明において、水素分子貯留槽の構造としては特に制限はないが、水素の放出(及び水素の貯蔵)を効率的に行うことができるように、水素分子化合物(及び成分化合物)の撹拌手段を備えるものが好ましい。
【0032】
このような水素分子貯留槽2Aの一例を図3を参照して説明するが、本発明で用いる水素分子貯留槽は何ら図3に示す構成のものに限定されるものではない。
【0033】
図3の水素分子貯留槽2Aは、円筒形の容器本体2a内の下部及び上部に、気体の流通が可能で、かつ成分化合物を保持し得る多孔板よりなる仕切板2C,2Dが設けられ、下部仕切板2C上に水素分子化合物又は成分化合物16の粉体が貯蔵されている。この本体2a内には、この粉体を撹拌するための撹拌機17が設けられ、また、燃料電池からの排熱媒体(温水)が流通する熱交換用のコイル状配管18が設けられている。
【0034】
容器本体2aの下部には水素の導入管14Aが接続され、上部には、排出管19が接続されている。この排出管19には三方弁Vが設けられ、燃料電池へ水素を送給する配管11Aと、水素供給源へ排ガスを循環させるための配管15Aとの流路切り換えができるように構成されている。
【0035】
容器本体2a内の成分化合物に水素を保持させるためには三方弁Vを配管15A側へ流路選択し、水素を配管14Aから容器本体2aの下部から導入させると共に、撹拌機17により成分化合物粉体を撹拌し、成分化合物16と水素とを十分に接触させて成分化合物16に水素を保持させる。排ガスは容器本体2aの上部から、配管19,15Aを経て水素供給源に循環させる。所定の時間、水素と成分化合物16とを接触させることにより、容器本体2a内に水素分子化合物が形成される。
【0036】
この容器本体2a内の水素分子化合物から水素を放出させるには、三方弁Vを配管11A側へ流路選択すると共に、燃料電池からの排熱媒体の循環を行って、容器本体2a内の水素分子化合物16を所定温度に加熱する。この水素放出時にも、水素分子化合物16から円滑に水素が放出されるように、撹拌機17による撹拌を行うことが好ましい。このように撹拌下、加熱されることにより、容器本体2a内の水素分子化合物16は水素を放出し、放出された水素は配管11Aより燃料電池に送給される。
【0037】
なお、このようにして水素を放出した後の成分化合物は、水素と接触させることにより、容易に水素分子化合物を形成するため、前述の操作で水素を供給することにより水素分子貯留槽内の成分化合物を繰り返し使用することができる。
【0038】
次に、本発明で用いる水素分子化合物について説明する。
【0039】
本発明でいう分子化合物とは、単独で安定に存在することのできる化合物の2種類以上の化合物が水素結合やファンデルワールス力などに代表される、共有結合以外の比較的弱い相互作用によって結合した化合物であり、水化物、溶媒化物、付加化合物、包接化合物などが含まれる。このような水素分子化合物は、水素分子化合物を形成する成分化合物と水素との接触反応により形成することができ、比較的軽量で常温常圧に近い状態で水素を貯蔵することができ、かつ簡単な加熱等で水素を放出することが可能である。
【0040】
水素分子化合物のうち、水素分子をホスト分子で包接した水素分子包接化合物を形成するホスト分子については、水素を包接できるものであれば良く、特に限定はされない。
【0041】
ホスト分子としては、単分子系、多分子系、高分子系、無機系ホスト化合物などが知られている。
【0042】
単分子系ホスト化合物としては、シクロデキストリン類、クラウンエーテル類、クリプタンド類、シクロファン類、アザシクロファン類、カリックスアレン類、シクロトリべラトリレン類、スフェランド類、環状オリゴペプチド類などが挙げられる。また多分子系ホスト化合物としては、尿素類、チオ尿素類、デオキシコール酸類、ペルヒドロトリフェニレン類、トリ−o−チモチド類、ビアンスリル類、スピロビフルオレン類、シクロフォスファゼン類、モノアルコール類、ジオール類、アセチレンアルコール類、ヒドロキシベンゾフェノン類、フェノール類、ビスフェノール類、トリスフェノール類、テトラキスフェノール類、ポリフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、ジフェニルメタノール類、カルボン酸アミド類、チオアミド類、ビキサンテン類、カルボン酸類、イミダゾール類、ヒドロキノン類などが挙げられる。また、高分子系ホスト化合物としては、セルロース類、デンプン類、キチン類、キトサン類、ポリビニルアルコール類、1,1,2,2−テトラキスフェニルエタンをコアとするポリエチレングリコールアーム型ポリマー類、α,α,α’,α’−テトラキスフェニルキシレンをコアとするポリエチレングリコールアーム型ポリマー類などが挙げられる。さらに、無機系ホスト化合物としては、粘土鉱物類、モンモリロナイト類、ゼオライト類などが挙げられる。
【0043】
これらのホスト化合物のうち、包接能力がゲスト化合物の分子の大きさに左右されにくい多分子系ホスト化合物が好適である。
【0044】
多分子系ホスト化合物としては、具体的には、1,1,6,6−テトラフェニル−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、1,1−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール、1,1,4,4−テトラフェニル−2−ブチン−1,4−ジオール、1,1,6,6−テトラキス(2,4−ジメチルフェニル)−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、9,10−ジフェニル−9,10−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオール、9,10−ビス(4−メチルフェニル)−9,10−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオール、1,1,2,2−テトラフェニルエタン−1,2−ジオール、4−メトキシフェノール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−スルホニルビスフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−エチリデンビスフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、3,6,3’,6’−テトラメトキシ−9,9’−ビ−9H−キサンテン、3,6,3’,6’−テトラアセトキシ−9,9’−ビ−9H−キサンテン、3,6,3’,6’−テトラヒドロキシ−9,9’−ビ−9H−キサンテン、没食子酸、没食子酸メチル、カテキン、ビス−β−ナフトール、α,α,α’,α’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジメタノール、ジフェン酸ビスジシクロヘキシルアミド、フマル酸ビスジシクロヘキシルアミド、コール酸、デオキシコール酸、1,1,2,2−テトラキス(4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−カルボキシフェニル)エタン、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、1,2,4,5−テトラフェニルイミダゾール、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ビス(2,4−ジメチルフェニル)ヒドロキノン、などが挙げられるが、中でも1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなフェノール系のホスト化合物が包接能力、及び工業的な入手の面で有利である。
【0045】
このようなホスト化合物に水素を包接させて水素分子包接化合物を製造する方法としては、水素とホスト化合物を直接接触させる方法、水素雰囲気の状態でホスト化合物を粉砕しながら直接反応させる方法、ホスト化合物を溶媒に溶解して再結晶する際に水素と接触反応させる方法などがあるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0046】
このようにして得られる水素分子包接化合物は、用いたホスト化合物の種類、水素との接触条件等によっても異なるが、通常ホスト化合物1モルに対して水素分子0.2〜20モルを包接した水素分子包接化合物である。
【0047】
この水素分子包接化合物は、常温常圧において、長期に亘り水素を安定に包接する。しかも、この水素分子包接化合物は、水素貯蔵合金と比べ、軽量で取り扱い性にも優れ、この水素分子包接化合物はガラス、金属、プラスチック等の容器に入れて容易に貯蔵・運搬することができる。
【0048】
このような水素分子包接化合物は、固体状であるため、粒径0.01〜1mm程度の粉体として、図3に示すような水素分子貯留槽に貯蔵して用いることができる。
【0049】
そして、この水素分子包接化合物から水素を放出させるには、ホスト化合物の種類にもよるが、30〜200℃、特に40〜100℃程度に加熱すれば良く、これにより容易に水素分子包接化合物中から水素を放出させて燃料電池の水素燃料として用いることができる。
【0050】
水素分子包接化合物から水素を放出した後のホスト化合物は、水素の選択的包接能を有し、有効に再利用可能である。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0052】
実施例1
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン1モルに水素10モルを包接させた水素分子包接化合物を、図3に示す水素分子貯留槽に入れ、水素燃料源として用い、固体高分子型燃料電池の発電試験を行った。
【0053】
水素分子貯留槽内の水素分子包接化合物を撹拌下、50℃に加熱することにより、水素ガスを放出させ、この水素ガスを0.17mg/minの割合で燃料電池に供給した。その結果、0.08W/hrの電力を取り出すことができた。
【0054】
【発明の効果】
本発明の燃料電池発電システムは、水素供給源として水素分子化合物を利用するものであり、
▲1▼ 水素を比較的簡単に軽量に、常温、常圧条件で貯蔵することができる。
▲2▼ 水素分子化合物として貯蔵した水素を、比較的低い温度の加熱等により放出させて、燃料電池に供給することができる。
▲3▼ 水素分子化合物からの水素の放出に必要な熱は、燃料電池の排熱を利用することができ、エネルギーコストを低減することができる。
▲4▼ 混合ガス中の水素分子を選択的に取り込ませることもでき、水素分子化合物への水素補給も容易に行える。
▲5▼ 水素が放出した後の化合物は、水素と反応させることにより再度水素分子化合物を得ることができ、再利用可能である。
といった優れた効果を有し、特に軽量化が重視される自動車等の燃料電池発電システムとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池発電システムの実施の形態を示す系統図である。
【図2】本発明の燃料電池発電システムの別の実施の形態を示す系統図である。
【図3】本発明に好適な水素分子貯留槽の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 燃料電池
2,2A,2B 水素分子貯留槽
2a 容器本体
3 水素供給源
17 撹拌機

Claims (5)

  1. 水素分子化合物を内蔵した水素分子貯留槽と、該水素分子貯留槽からの水素が導入される燃料電池とを備えたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  2. 燃料電池の排熱を水素分子貯留槽に供給する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電システム。
  3. 水素分子貯留槽に水素を供給する水素源を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池発電システム。
  4. 水素分子化合物は、ホスト分子と水素分子との接触反応により水素分子を包接した水素分子包接化合物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の燃料電池発電システム。
  5. ホスト分子は、多分子系ホスト化合物であることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池発電システム。
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