JP2004114870A - 低床式車両のリヤクッション取付構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】低床式車両10は、低床の下方にエンジン100を搭載し、後輪用リヤクッション61を車体の略中心に配置したスクータ型自動二輪車である。シート58の下方に、シートの前後長と略同等の前後長を有する収納ボックス59を備え、この収納ボックスの下方に後輪用リヤクッションを横置きにして配置した。収納ボックスは、その底面に後輪用リヤクッションの点検用リッドを備える。エンジンは、ダイヤモンド型フレーム20に懸架したものである。後輪用リヤクッションは、ヘッドパイプから後下方へ延びたアッパフレームの後部に沿って配置する。
【選択図】 図24
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は低床式車両のリヤクッション取付構造の改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクータ型自動二・三輪車等の低床式車両において、車体フレームの下部にエンジンを搭載するとともに、その後方で車体の略中心に後輪用リヤクッションを配置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−88763公報(第3−4頁、図2)
【0004】
特許文献1に示される従来の低床式車両の概要を、次の図28に基づき説明する。
図28は従来の低床式車両の概要図であり、特開2001−88763公報の図2を再掲した。なお、符号は振り直した。
従来の低床式車両300は、ダブルクレードル型の車体フレーム310内に且つ低床318の下方にパワーユニット320を搭載した、スクータ型自動二輪車である。
【0005】
車体フレーム310は、ヘッドパイプ311から後下方へ延びた左右一対のアッパフレーム312,312(左のみ示す。以下同じ。)と、ヘッドパイプ311から下方へ延びた左右一対のダウンフレーム313,313と、ダウンフレーム313,313の延出途中から後上方へ延びた左右一対のセンタフレーム314,314と、ダウンフレーム313,313の下端から後方へ延びた左右一対のロアフレーム315,315と、ロアフレーム315,315の後端とセンタフレーム314,314の後端とを繋ぐ左右一対のリヤフレーム316,316と、からなる。
【0006】
アッパフレーム312,312の後端はセンタフレーム314,314の延出途中に繋いだものである。車体フレーム310によって、低床318を支持することができる。低床318は、乗員の足を載せるフロアである。
【0007】
パワーユニット320は、前部の前後V型エンジン321と後部の変速機ユニット331とからなる。V型エンジン321は、側面視で45°程度のバンク角θ10(気筒322,323間の挟み角θ10)となるように、前部の気筒322並びに後部の気筒323を備えた、水冷エンジンである。前部の気筒322は、前方へ略水平に延びる。後部の気筒323は、ヘッドパイプ311を指向するように延びる。この結果、バンク角θ10は側面視で45°程度の狭角になる。当然のことながら、バンク角θ10の二等分線L11は、ヘッドパイプ311と前輪351との間を通る。324はクランク軸である。
各気筒322,323に接続された排気管326,326は、エンジン321の下方を通って後方へ延びてマフラ327に至る。
【0008】
さらに低床式車両300は、ヘッドパイプ311と後部の気筒323との間のスペースにエアクリーナ340を配置し、エンジン321と前輪351との間にエンジン冷却用ラジエータ352を配置し、後部上部にシート353を配置し、シート353の下方に前部の燃料タンク354並びに後部の収納ボックス355を配置したものである。
【0009】
変速機ユニット331は、最終出力軸332をスイング基端として上下スイング可能な伝動ユニット333を備える。この伝動ユニット333に後輪334を取付けるとともに、伝動ユニット333をリヤクッション335を介して車体フレーム310に懸架することができる。リヤクッション335は、シート353の下方に且つ燃料タンク354と収納ボックス355との間に、縦置き配置されている。L12は、ヘッドパイプ311と最終出力軸332とを通る直線である。
【0010】
エアクリーナ340は、内部にフィルタエレメント341を備え、上部に吸気口342を設けるとともに、この吸気口342を上部のリッド343で塞いだものである。このようなエアクリーナ340に、それぞれ吸気連結管344,345にて各気筒322,323を接続することになる。前部の気筒322に接続された吸気連結管344は、気筒322,323間を通ってエアクリーナ340に至る。一方、後部の気筒323に接続された吸気連結管345は、後部の気筒323の上を通ってエアクリーナ340に至る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の低床式車両300は、車体フレーム310の下部にV型エンジン321を搭載するとともに、その後方で車体の略中心にリヤクッション335を配置することはできるものの、このリヤクッション335が縦置き配置されているので、リヤクッション335の上端の取付部近傍は、上下方向のスペースが狭くなってしまう。このため、シート353下方のスペースを有効利用するには、限界がある。例えば、シート353下方の燃料タンク354を別の位置に配置した場合であっても、縦置きのリヤクッション335があるので、収納ボックス355を前に延して収納スペースを拡大することはできない。収納ボックス355に長尺で径の大きい物を収納する収納スペースを確保するには、改良の余地がある。
【0012】
そこで本発明の目的は、後輪用リヤクッションを車体の略中心に配置した低床式車両において、シートの下方に配置された収納ボックスの収納スペースを拡大することができる技術を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、低床式車両の低床の下方にエンジンを搭載し、後輪用リヤクッションを車体の略中心に配置する低床式車両において、
低床式車両が、シートの下方に、シートの前後長と略同等の前後長を有する収納ボックスを備え、この収納ボックスの下方に後輪用リヤクッションを横置きにして配置したことを特徴とする低床式車両のリヤクッション取付構造である。
【0014】
収納ボックスの下方に後輪用リヤクッションを横置きにして配置したので、収納ボックスを前後に延しても、車体の略中心に在る後輪用リヤクッションに干渉しない。従って、シートの下方にシートの前後長と略同等の前後長を有する収納ボックスを配置することができる。このため、収納ボックスの前後長を大きくして収納スペースを拡大することによって、長尺で径の大きい物を収納する収納スペースを容易に確保することができる。
【0015】
請求項2は、収納ボックスの底面に後輪用リヤクッションの点検用リッドを備えたことを特徴とする。
収納ボックスの底面に後輪用リヤクッションの点検用リッドを備えたので、点検用リッドを外してリヤクッションの保守・点検をすることができる。収納ボックスや車体カバーを外すことなく、簡単に保守・点検作業をすることができるので、作業性が高まる。
【0016】
請求項3は、エンジンを、ヘッドパイプから後下方へ延出するアッパフレームと、ヘッドパイプから下方へ延出するダウンフレームとからなるダイヤモンド型フレームに懸架し、後輪用リヤクッションを、アッパフレームの後部に沿って配置したことを特徴とする。
車体フレームをダイヤモンド型フレームとし、このダイヤモンド型フレームにエンジンを懸架したので、エンジンを車体フレームの一部とすることができる。このため、エンジンの下にフレームの部材を通す必要がない。従って、エンジンを最低地上高さまで下げることができる。エンジンを下げることで、低床式車両の低重心化を図って操縦安定性をより高めることができる。
さらには、後輪用リヤクッションを、ダイヤモンド型フレームのアッパフレームの後部に沿って配置したので、大きい剛性を有するアッパフレームによって、後輪用リヤクッションの剛性を十分に確保することができるとともに、小型の懸架構造とすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側、CLは車幅中心(車体中心)を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0018】
先ず、低床式車両10の全体構成について説明する。図1は本発明に係る低床式車両の左側面図(その1)であり、車体カバーを装着した構成を示す。図2は本発明に係る低床式車両の左側面図(その2)であり、車体カバーを外した構成を示す。図3は本発明に係る低床式車両の平面図であり、車体カバーを外した構成を示す。
【0019】
低床式車両10は、車体フレーム20と、車体フレーム20のヘッドパイプ21に取付けたフロントフォーク51と、フロントフォーク51に取付けた前輪52と、フロントフォーク51に連結したハンドル53と、車体フレーム20の下部に取付けたパワーユニット54と、車体フレーム20の前上部に取付けたラジエータ55、エアクリーナ56並びに燃料タンク57と、車体フレーム20の後上部に取付けたシート58と、シート58の下方で車体フレーム20の後部に取付けた収納ボックス59と、車体フレーム20の後部に後輪用リヤクッション61で懸架したスイングアーム62と、スイングアーム62に取付けた後輪63と、を主要な構成部材とし、車体全体を車体カバー(カウル)70で覆ったフルカウリングタイプの車両である。
【0020】
より具体的には、シート58は前後に2人乗りするタンデムシートであり、中央部に運転者用の可動式(調整可能な)シートバック64を備える。このようなシート58は、車体フレーム20の後上部から後方へ延したシートレール65によって、車体フレーム20に取付けることができる。
P1はホイールベース(前輪52と後輪63との中心間距離)の中間位置であり、距離X1と距離X2とは等しい。
【0021】
車体カバー70は、図1に示すように、ヘッドパイプ21の前部及び前輪52の上部を覆うフロントカバー71と、このフロントカバー71の後部を覆うインナカバー72と、運転者の足を載せるステップフロアとしての左右の低床73(左側のみ示す。以下同じ。)と、これら低床73の外縁から下方へ延ばした左右のフロアスカート74と、インナカバー72から後方へ延ばし車体フレーム20の長手中央を覆うセンターカバー75と、このセンターカバー75から後方へ延ばし車体フレーム20の後部、シートレール65、収納ボックス59を覆うサイドカバー76と、サイドカバー76の後方で車体後上部を覆うリヤカバー77とからなる。
【0022】
センターカバー75は、エアクリーナ56、燃料タンク57及びエンジン100、をも覆う部材である。
図中、81はウインドスクリーン、82はフロントフェンダ、83はヘッドランプ、84はウインカー、85はリヤスポイラ兼リヤグリップ、86はテールランプ、87はリヤフェンダ、88はナンバプレートである。
【0023】
次に、車体フレーム20について説明する。図4は本発明に係る車体フレームの左側面図、図5は本発明に係る車体フレームの平面図、図6は本発明に係る車体フレームの正面図、図7は本発明に係る車体フレームを左側方から見た斜視図、図8は本発明に係る車体フレームを右側方から見た斜視図である。
【0024】
車体フレーム20は、ヘッドパイプ21から後下方へ延出する左右一対のアッパフレーム22,22と、ヘッドパイプ21から下方へ延出してV型エンジン100(図2参照)のクランクケース104の前部に連結する左右一対のダウンフレーム23,23と、からなり、V型エンジン100を懸架する、ダイヤモンド型フレームである。
【0025】
詳しく説明すると、アッパフレーム22,22は、ヘッドパイプ21の上部から後下方へ傾斜しつつ略直線状に延び、その下傾端部22aから傾斜度合いを緩やかにして更に後下方へ延びたパイプ材である。ダウンフレーム23,23は、ヘッドパイプ21の下部から後下方へ、アッパフレーム22,22よりも大きい傾斜角で延びたパイプ材である。
【0026】
左のアッパフレーム22と左のダウンフレーム23との間、及び右のアッパフレーム22と右のダウンフレーム23との間は、トラス形状のフレーム構造(三角形状の骨組み構造)である。
【0027】
具体的には、トラス形状のフレーム構造は、ヘッドパイプ21とダウンフレーム23との接合部分からアッパフレーム22へ向かって略水平な第1補強材24を延ばし、アッパフレーム22と第1補強材24との接合部分からダウンフレーム23の下端部まで第2補強材25を延して接合し、さらに、アッパフレーム22の下傾端部22aの近傍と第2補強材25の延出途中との間に第3補強材26を掛け渡した構成とすることによって、側面視三角形状の3つの空間部27〜29を有したものである。これらの空間部27〜29は車幅方向に貫通している。
【0028】
すなわち、第1の空間部27は、ヘッドパイプ21とアッパフレーム22と第1補強材24とによって形成された空間である。第2の空間部28は、ダウンフレーム23と第1・第2補強材24,25とによって形成された空間である。第3の空間部29は、アッパフレーム22と第2・第3補強材25,26とによって形成された空間である。
【0029】
さらに車体フレーム20は、アッパフレーム22における下傾端部22aの近傍で、左右のアッパフレーム22,22間にクロスメンバ31を掛け渡し、左右のダウンフレーム23,23の延出途中間並びに下端部間に2つのクロスメンバ32,33を掛け渡すことによって、剛性を確保したものである。左右のアッパフレーム22,22間のクロスメンバ31は、クッション用ブラケット34を備える。
【0030】
車体フレーム20は、左のダウンフレーム23の下端部に左側第1ハンガプレート35を備え、左の第3補強材26に左側第2ハンガプレート36を備え、左のアッパフレーム22と左の第3補強材26との接合部分近傍に左側第3ハンガプレート37を備え、左のアッパフレーム22の後端部に左側第4ハンガプレート44を備えるとともに、図8に示すように、右のダウンフレーム23の下端部に右側ハンガ部23aを備え、右の第3補強材26に右側第1ハンガプレート38を備え、右のアッパフレーム22と右の第3補強材26との接合部分近傍に右側第2ハンガプレート39を備え、右のアッパフレーム22の後端部に右側第3ハンガプレート48を備える。
これらのハンガプレート35〜39,44,48は、車体フレーム20から取外し可能な連結部材である。
【0031】
本発明は、ダウンフレーム23,23の下部にステー47,47を介して固定されて前後に延在する左右の低床支持フレーム41,42により、低床73(図1参照)を支持したことを特徴とする。
左の低床支持フレーム41は、その後部を左のアッパフレーム22の後部にステー43並びに左側第4ハンガプレート44にて連結したパイプ材であって、後部にサイドスタンド46を一体に保持したものである。左側第4ハンガプレート44は、低床支持フレーム用ステーを兼ねる。
【0032】
詳しくは、左の低床支持フレーム41にブラケット45にてサイドスタンド46を起立及び格納可能に取付けた。図8に示すように、右の低床支持フレーム42は、その後部を想像線にて示す変速機ユニット130のブラケット172に連結したものである。
【0033】
以上の低床支持フレーム41,42の取付構造をまとめて述べる。
ダイヤモンド型フレームにおけるダウンフレーム23,23の下部に、前後に延在する低床支持フレーム41,42を固定し、これらの低床支持フレーム41,42により低床73(図1参照)を支持するようにした。このため、V型エンジン100(図2参照)を下げるように構成したにもかかわらず、低床73を確実に且つ安定的に、すなわち有効に支持することができる。
【0034】
さらには、左のダウンフレーム23の下部に固定した、左の低床支持フレーム41の後部を、さらに左のアッパフレーム22の後部にも連結した。このため、前後に長い左の低床支持フレーム41を、車体フレーム20により十分に固定することができる。この結果、低床支持フレーム41の剛性を高めることができ、低床73をより確実に且つより安定的に支持することができ、支持剛性を一層高めることができる。
【0035】
一方、図8に示すように、右のダウンフレーム23の下部に固定した、右の低床支持フレーム42の後部を、さらに、剛性が大きい変速機ユニット130にも連結した。このため、前後に長い右の低床支持フレーム42を、車体フレーム20や変速機ユニット130により、十分に固定することができる。この結果、低床支持フレーム42の剛性を高めることができ、低床73をより確実に且つより安定的に支持することができ、支持剛性を一層高めることができる。
【0036】
さらにまた、図4に示すように、左の低床支持フレーム41の後部に、サイドスタンド46を一体に保持させたので、低床支持フレーム41がサイドスタンド46を保持する役割を兼ねることができる。このため、他の機能部品との兼用化を達成することができ、サイドスタンド46を保持するブラケット45が小型ですみ、別部品からなる保持部品を設ける必要もない。しかも、前後に延びる低床支持フレーム41でサイドスタンド46を保持するのであるから、サイドスタンド46を前後方向の任意の位置に設定することができ、設計の自由度が高まる。
【0037】
次に、パワーユニット54周りの構成について説明する。図9は本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、エアクリーナ並びに燃料タンク周りの左側面図である。図10は本発明に係るパワーユニットの断面図であり、上から見たパワーユニット54を展開した断面構造として表した。図11は本発明に係るパワーユニットの前半部の断面図であり、図10に対応する。図12は本発明に係るパワーユニットの後半部の断面図であり、図10に対応する。図13は本発明に係るパワーユニットの後部並びに後輪用スイングアーム周りの平面図である。
【0038】
パワーユニット54は、前部の前後V型エンジン100と後部の変速機ユニット130とを組合わせたものである。すなわち、パワーユニット54に変速機ユニット130を備える。
【0039】
図9に示すように、V型エンジン100は、側面視でバンク角θ1(気筒101,102間の挟み角θ1)を略90°又は90°を上回る角度に設定した、2気筒エンジンである。V型エンジン100において、前バンクの気筒101、すなわち前部の気筒101は、前輪52(図2参照)の車軸上方を指向するように前方へ概ね水平に延びる。後バンクの気筒102、すなわち後部の気筒102は、アッパフレーム22の下傾端部22aを指向するように上方へ概ね垂直に延びる。本発明は、このようにしてバンク角θ1の二等分線L1をヘッドパイプ21に指向させて、V型エンジン100を配置したことを特徴とする。
【0040】
さらに図9は、V型エンジン100のクランク軸103を、ホイールベースの中間位置P1(図2参照)よりも前方に配置することにより、前バンクの気筒101を左右のダウンフレーム23,23よりも前方に配置したこと、及び、後バンクの気筒102を左右のアッパフレーム22,22間に配置した(図3も参照)ことを示す。
【0041】
前バンクの気筒101を、左右のダウンフレーム23,23よりも前方に配置することによって、V型エンジン100を極力前方へ配置することができる。この結果、低床式車両10の重心を前に設定することができるので、前輪52と後輪63(図2参照)とにかかる荷重を、より適正に配分することができる。
【0042】
さらには、前バンクの気筒101を前に配置することによって、V型エンジン100のクランク軸103の位置が前方へ移る。この場合であっても、バンク角θ1の二等分線L1はヘッドパイプ21に指向する。クランク軸103の位置が前方へ移った分、バンク角θ1の二等分線L1が起立するので、これに応じて後バンクの気筒102が車体後方へ傾く。従って、後バンクの気筒102の高さを下げることができる。このため、V型エンジン100の搭載の自由度がより高まる。
【0043】
さらにまた、後バンクの気筒102を左右のアッパフレーム22,22間に配置したので、アッパフレーム22,22を下げても後バンクの気筒102に干渉することはない。このため、アッパフレーム22,22を極力低い位置に通すことができる。従って、車体フレーム20の重心が下がるので、低床式車両10の低重心化を図ることができるとともに、振動低減もより可能になる。しかも、低床73(図1参照)をより低くできるので、低床式車両10の運転がより容易になる。さらには、アッパフレーム22,22を下げることにより、運転者が乗車するときに、車体フレーム20をより跨ぎ易くなる。
【0044】
V型エンジン100を前方に配置できるようにするために、上記図2に示すようにエンジン(水冷エンジン)100のためのラジエータ55をヘッドパイプ21の前方に配置した。従来、水冷エンジンの前に配置されていたラジエータ55を、ヘッドパイプ21の前方に移すことによって、V型エンジン100を極力前方へ配置することができる。
【0045】
V型エンジン100並びに変速機ユニット130は、下半部を低床支持フレーム41,42(この図では左のみ示す。)の下方へ下げて配置したものである。このため、低床支持フレーム41,42で下から支えられる低床73(図1参照)の下方に、V型エンジン100並びに変速機ユニット130を配置して低床式車両10に搭載することができる。クランク軸103は、低床73並びに低床支持フレーム41,42よりも下方にある。
【0046】
このようにすることで、ヘッドパイプ21の高さ中央の点P2と変速機ユニット130の最終出力軸138とを通る直線L2の下方のスペースS1に、V型エンジン100並びに吸気系190を配置した。しかも、バンク角θ1の二等分線L1をヘッドパイプ21に指向させることができる。
【0047】
ここで、吸気系190とは、V型エンジン100に燃焼用空気を供給する系統であって、エアクリーナ56並びにエアクリーナ56から各気筒101,102に接続する各吸気連結管191,191を含む。
【0048】
バンク角θ1の二等分線L1をヘッドパイプ21に指向させて、V型エンジン100を配置したので、バンク角θ1を略90°以上の広角に設定することができる。バンク角θ1を大きくすることにより、V型エンジン100の振動に対してもより有利にすることができるとともに、各気筒101,102のための吸気連結管191,191並びにエアクリーナ56を含む吸気系190を配置する、大きいスペースを確保することができる。従って、吸気系190の設計の自由度が高まる。
【0049】
さらには、バンク角θ1の二等分線L1がヘッドパイプ21に指向しているので、Vバンク間とヘッドパイプ21との間に、大きいスペースを確保することができる。このようなVバンク間の大きいスペースに、吸気連結管191,191並びにエアクリーナ56を含む吸気系190を、ヘッドパイプ21に指向させて配置するので、吸気系190及びV型エンジン100を効率良く連結することができ、V型エンジン100の性能向上を図ることができる。また、吸気系190を比較的低い位置に小型化して集約できる。このため、低い吸気系190の上部に燃料タンク57を容易に配置して、質量を前部に集中させることができる。
【0050】
低床式車両10の前部に燃料タンク57を配置することにより、低床式車両10の重心を前に設定することができるので、前輪52と後輪63とにかかる荷重を、より適正に配分することができる。しかも、シート58(図2参照)の下方に燃料タンク57を配置しなくてすむので、シート58下に大きいスペースを確保して、収納スペースの大きい収納ボックス59(図2参照)を配置するなど、多大な効果を発揮する。
【0051】
さらにまた、ヘッドパイプ21と変速機ユニット130の最終出力軸138とを通る直線L2の下方のスペースS1に、V型エンジン100並びに吸気系190を配置したので、エアクリーナ56の上方のスペースS2を有効に利用することができる。従って、エアクリーナ56の上方に機能部品としての燃料タンク57を容易に配置することができる。
【0052】
なお、後バンクの気筒102の先端並びに吸気系190のエアクリーナ56の上端は、直線L2よりも若干上方へ突き出てはいるものの、アッパフレーム22,22の上側の輪郭線と概ね一致する範囲内であり、実質的にはヘッドパイプ21と最終出力軸138とを通る直線L2の下方のスペースS1に配置されているものと、みなすことができる。
【0053】
図10〜図12にはパワーユニット54の断面構成を示す。なお、V型エンジン100については後バンクの気筒102を省略して表した。
V型エンジン100は、左右二分割形式のクランクケース104、クランクケース104に連結した前バンクの気筒101並びに後バンクの気筒102(図9参照)、これらの気筒101,102の先端に連結したヘッド105並びにヘッドカバー106、車幅方向に延びてクランクケース104内に回転可能に収納されたクランク軸103、クランク軸103にコネクティングロッド107にて連結されたピストン108、カム室109に収納された動弁機構111、点火プラグ112等からなり、水冷ジャケットを有する水冷式エンジンである。
【0054】
図中、113はカムチェーン、114は冷却水ポンプ用駆動ギヤ、115は右サイドカバー、116は交流発電機、117はスタータモータ(後述する)によるクランク軸駆動用ギヤである。
クランクケース104の左側部に左サイドカバー118を被せることで、クランク軸103の左端部、交流発電機116、後述する第1伝動軸136の左端部周りを大きく覆っている。
【0055】
変速機ユニット130は、V型エンジン100の一側部(右側R)でエンジン100に結合し、低床式車両10の一側部(右側R)にて後方へ延在し、後輪用スイングアーム62のピボット部分で、低床式車両10の他側部(左側L)から後輪63を駆動するように構成したものである。
このようにして、クランクケース104と変速機ユニット130とを、平面視略コ字状に組合わせてパワーユニット54を構成し、低床式車両10の他側部(左側L)に平面視略コ字状の開口を設けることができる。
このように構成したので、V型エンジン100或いは変速機ユニット130のみの変更が可能となり、汎用性の高いパワーユニット54となる。
【0056】
詳しく説明すると、変速機ユニット130は、クランクケース104の後部右面に取付けるとともに後方へ延びた主ケース131、主ケース131の右側開口を塞ぐ第1カバー132、主ケース131と第1カバー132とによって形成した第1変速機室133、主ケース131の後部左側部に重ね合わせた副ケース134、主ケース131と副ケース134とによって形成した第2変速機室135、クランクケース104内の後部から第1変速機室133内へ車幅方向に延びる第1伝動軸136、第1変速機室133内の後部から第2変速機室135内へ車幅方向に延びる第2伝動軸137、第2変速機室135内から副ケース134を貫通して左外方へ延びる最終出力軸138、クランク軸103の左端部から第1伝動軸136の左端部へ動力を伝達する第1ギヤ機構139、第1伝動軸136の右端部から第2伝動軸137の右端部へ動力を伝達するベルト式無段変速機構141並びに遠心クラッチ142、第2伝動軸137の左端部から最終出力軸138へ動力を伝達する第2ギヤ機構143、等からなる。
【0057】
ベルト式無段変速機構141は、図示せぬサーボモータによって変速用ギヤ147を介して変速制御される、モータ制御方式を採用したものである。
144はバランサ、145はリラクタ、146はパルサ(クランク軸の角度センサ)であってエンジン100の点火制御並びに燃料噴射制御用に用いるものである。
【0058】
さらに図13を参照しつつ説明すると、最終出力軸138の左端に伝動軸151をスプライン結合し、伝動軸151に駆動スプロケット152を取付け、一方、後輪63用車軸153に被動スプロケット154を取付け、これらの駆動・被動スプロケット152,154間にチェーン155を掛けることで、V型エンジン100の動力を変速機ユニット130からチェーンドライブ機構150によって、後輪63に伝達することができる。
【0059】
ところで、最終出力軸138の軸心C1は後輪用スイングアーム62のピボット中心C1(スイング中心C1)でもある。
スイングアーム62は、左アーム161と右アーム162とこれら左・右アーム161,162間を繋ぐクロスメンバ163とからなる、平面視略H字状の部材であり、後端部に後輪63を回転自在に支承することができる。
【0060】
このようなスイングアーム62は、主ケース131の後部右側面と副ケース134の後部左側面とを、左・右アーム161,162の前端間で挟み込むように配置したものである。左アーム161の前端に有する左被支承部161aを、副ケース134の後部左側部に左ピボット164にて支承するとともに、右アーム162の前端に有する右被支承部162aを、主ケース131の後部右側部に右ピボット165にて支承することによって、スイングアーム62を上下スイング可能に取付けることができる。
【0061】
なお、ピボット165は主ケース131に出没可能にねじ込む雄ねじである。主ケース131にピボット165をねじ込むことで予め引き込んでおき、スイングアーム62をピボット中心C1に位置合わせした後に、ピボット165の先端を露出させて、右被支承部162aに嵌合することにより、主ケース131に右被支承部162aを取付けることができる。
【0062】
左アーム161はチェーンケースを兼ね、この左アーム161の左側開口をチェーンカバー166によって覆うことで、駆動・被動スプロケット152,154並びにチェーン155を収納することができる。
【0063】
以上の説明から明らかなように、パワーユニット54は、クランクケース104の後端部と、変速機ユニット130の主・副ケース131,134の左側部と、スイングアーム62の左アーム161の前端部と、によって囲んだ平面視略コ字状の開口を、低床式車両10の他側部(左側L)に設けることができる。
【0064】
次に、車体フレーム20とパワーユニット54との関係について説明する。図14は本発明に係る車体フレーム並びにパワーユニット周りを左前方から見た斜視図である。図15は本発明に係る車体フレーム、パワーユニット並びにエアクリーナ周りを左後方から見た斜視図である。図16は本発明に係る車体フレーム、パワーユニット並びにエアクリーナ周りを右前方から見た斜視図である。
図17は本発明に係る車体フレーム並びにパワーユニット周りを右後方から見た斜視図である。
【0065】
図14〜図17は、ダイヤモンド型フレームである車体フレーム20にV型エンジン100並びに変速機ユニット130を懸架したことを示す。
V型エンジン100については、クランクケース104の左側部を、左側第1・第2・第3ハンガプレート35,36,37を介して車体フレーム20に取付けるとともに、クランクケース104の右側部を、右側ハンガ部23a及び右側第1ハンガプレート38を介して車体フレーム20に取付けた。
【0066】
一方、変速機ユニット130については、主ケース131の左側部の上部を、左側第3・第4ハンガプレート37,44を介して車体フレーム20に取付けるとともに、主ケース131の右側部の上部を、右側第2・第3ハンガプレート39,48を介して車体フレーム20に取付けた。
なお、クロスメンバ32,33は、エンジン用ガード部材の役割を兼ねる。
【0067】
車体フレーム20をダイヤモンド型フレームとし、このダイヤモンド型フレームにV型エンジン100を懸架したので、エンジン100を車体フレーム20の一部とすることができる。このため、V型エンジン100の下にフレームの部材を通す必要がない。従って、V型エンジン100を最低地上高さまで下げることができる。この結果、図9に示すように、V型エンジン100のクランク軸103も下がるので、その分、低床73(図1参照)の上方のスペースを広くとることができる。さらには、V型エンジン100を下げることで、クランクケース104の上方に低床73を配置し、ステップ幅(低床73の幅)を狭くすることができる。
【0068】
一般的には、クランク軸103が下がればバンク角θ1は小さくなる。本発明のレイアウトは、幅の狭いV型エンジン100を採用することにより、バンク角θ1を確保している。
このようにして、略90°又は90°を上回るバンク角θ1を有するV型エンジン100の搭載自由度を、より高めることができる。しかも、V型エンジン100を下げることで、低床式車両10の低重心化を図ることができる。
【0069】
図9を参照しつつ説明すると、アッパフレーム22,22は、V型エンジン100の後バンクの気筒102近傍まで後下方へ傾斜しつつ略直線状に延びた後に、傾斜度合いを緩やかにして、後輪用スイングアーム62のピボット(最終出力軸138の位置)近傍まで延びている。
【0070】
このようにして、アッパフレーム22,22を前後方向に概ね直線状に延すことができる。このため、アッパフレーム22,22の剛性をより高めることができ、この結果、車体フレーム20の剛性をより高めることができる。
このように、アッパフレーム22,22の前部は吸気系190の安定に寄与し、アッパフレーム22,22の後部は後輪63からの荷重を有効に受け止めるように機能することができる。従って、小型・軽量な構成によって車体フレーム20の剛性を有効に保持することができる。
【0071】
図15に示すように、車体フレーム20における左右の第1補強材24,24を外方へ湾曲するように形成したことにより、エアクリーナ56の容量を増すことができるとともに、エアクリーナ56を前方へ配置しても、ヘッドパイプ21に干渉したり、フロントフォーク51(図2参照)の最大旋回範囲で干渉しないようにすることができる。
【0072】
図15において、148は無段変速比可変用サーボモータであり、上記図11に示す変速用ギヤ147を介してベルト式無段変速機構141の無段変速比を制御するものである。図16において、121はエンジン冷却水用ポンプである。さらに図16及び図17は、クランクケース104の右側面に変速機ユニット130の右上部のブラケット172を取外し可能に取付けたことを示す。
【0073】
ところで、上記図9に示すように、クランクケース104と変速機ユニット130とを、左側第3ハンガプレート37並びに連結部材173にて,上下で連結するとともに、これらの左側第3ハンガプレート37並びに連結部材173を、パワーユニット54の平面視略コ字状の開口側に設けたことを示す。左側第3ハンガプレート37は、連結部材の役割を果たす。
【0074】
詳しくは、クランクケース104の左後下部に連結部材173の前部を2個のボルト174,174で取付けるとともに、変速機ユニット130の左前下部に連結部材173の後部を1個のボルト175で取付けた。
また、クランクケース104の左後上部に左側第3ハンガプレート37(連結部材37)の前部を1個のボルト178で取付けるとともに、変速機ユニット130の左前上部に左側第3ハンガプレート37の後部を1個のボルト179で取付けた。
【0075】
このようにすることで、パワーユニット54の剛性を十分に確保することができる。従って、車体フレーム20の一部となるエンジン100並びに変速機ユニット130からなるパワーユニット54の剛性が高まるので、車体フレーム20の剛性をも、より高めることができる。
【0076】
さらには、上下の連結部材37,173をパワーユニット54の平面視略コ字状の開口側に設けることによって、開口部分を上下の連結部材37,173で補強することができるので、効率的に所望の剛性を確保することができ、剛性の確保に自由度がでるとともに、連結部材37,173が車体から突出しないので低床式車両10の外観性が高まる。
【0077】
さらに連結部材173は、上記図4〜図6に示すように、メインスタンド(スタンド部材)176を保持するように構成したものである。すなわち、正面視略門型のメインスタンド176の左上部を連結部材173の下端部に連結するとともに、メインスタンド176の右上部をステー177を介して変速機ユニット130の下部に連結することで、メインスタンド176を起立及び格納可能に取付けた。
【0078】
パワーユニット54の剛性を確保するための連結部材173が、メインスタンド176を保持する役割を兼ねるので、他の機能部品との兼用化を達成することができ、低床式車両10を、部品数が少なく軽量・小型の構成にすることができる。
【0079】
次に、吸気系190について説明する。図18は本発明に係る車体フレーム、V型エンジン、吸気系周りの左側面図であり、エアクリーナ56を断面して表した。図19は本発明に係るエアクリーナ並びに車体カバー周りの背面断面図、図20は本発明に係るエアクリーナの分解図、図21は本発明に係るエアクリーナの作用図である。
【0080】
上記図9及び図18を参照しつつ説明すると、V型エンジン100の上方に吸気連結管191,191並びにエアクリーナ56を含む吸気系190を配置し、エアクリーナ56の上部に、車両用付属品としての燃料タンク57を配置するスペースS2を設けたことが示されている。
詳しくは、V型エンジン100のVバンク間(気筒101,102間)に、ヘッドパイプ21に指向させて吸気系190を配置するとともに、この吸気系190の上部に燃料タンク57を配置した。
【0081】
より具体的に説明すると、V型エンジン100は、各気筒101,102をエアクリーナ56に連結する吸気連結管191,191をそれぞれ備える。各吸気連結管191,191は、それぞれスロットル弁192,192及び燃料噴射弁193,193を備えるとともに、エアクリーナ56内に延びる送気管(ファンネル)194,194を各々備える。送気管194,194は、吸気連結管191,191の各一端に接続し、側面視略ハ字状に配列したものである。これらの送気管194,194の間にフィルタエレメント206を配置した。
【0082】
図中、149はセルモータである。195はエアクリーナ56内の吸気温度を検出吸気温度センサであり、燃料噴射弁193,193の噴射量を演算制御するときに、吸気温度で補正するために用いるものである。
【0083】
図18〜図20に示すように、エアクリーナ56は、低床式車両10の側方から保守・点検することが可能な構成である。エアクリーナ56の具体的な構成は、クリーナケース201と、クリーナケース201の下端開口202を塞ぐ脱着可能な底板203と、底板203からケース内に延びる2個の送気管194,194と、クリーナケース201の後上部に設けた点検口204を塞ぐ脱着可能な点検用リッド205と、クリーナケース201の内部に収納した筒状のフィルタエレメント206と、クリーナケース201の左側部又は右側部に設けたフィルタ点検孔207と、このフィルタ点検孔207を塞ぐ脱着可能な蓋部材208と、蓋部材208に設けた略L字状の吸気管209と、からなる。
【0084】
蓋部材208は、吸気管209の一端を脱着可能に取付け、吸気管209に連通する連通管211を備え、連通管211に連通するフィルタエレメント206の一端を脱着可能に取付けたものである。このようにして、エアクリーナ56は、内部にフィルタエレメント206を備え、エアクリーナ56の側部の蓋部材208により脱着可能に構成することができる。
【0085】
エアクリーナ56を覆ったセンターカバー75(車体カバー70の一部)は、点検用孔75aを設けるとともに、この点検用孔75aを塞ぐ脱着可能な点検用リッド212を設けたものである。点検用リッド212は、蓋部材208に対向する位置にある。
【0086】
吸気管209から取り入れられた空気は、連通管211、フィルタエレメント206、クリーナケース201、送気管194,194、吸気連結管191,191を通って、図8に示すV型エンジン100の各気筒101,102に入る。
【0087】
フィルタエレメント206を保守・点検するには、図21に示すように、先ず、ビス213を外すとともに点検用リッド212の一端の係止溝212aを点検用孔75aの縁から引き抜く。これで、センターカバー75から点検用リッド212が外れる。
次に、ビス214を外して蓋部材208を点検用孔75aを通して外す。この結果、蓋部材208と共に、吸気管209及びフィルタエレメント206も外れる。
フィルタエレメント206を元に戻すには、上記取外し手順と逆手順にすればよい。
【0088】
以上の説明から明らかなように、エアクリーナ56を、低床式車両10の側方から保守・点検することが可能な構成にしたので、エアクリーナ56の上部から保守・点検をする必要はない。このため、エアクリーナ56の上部に有効利用可能な広いスペースを十分に確保することができる。
【0089】
さらには、エアクリーナ56の内部に備えたフィルタエレメント206を、エアクリーナ56の側部の蓋部材208により脱着可能に構成し、この蓋部材208に対向する点検用リッド212を、エアクリーナ56を覆った車体カバー70に設けたので、点検用リッド212を外した後に蓋部材208を外すことで、エアクリーナ56の側部からフィルタエレメント206を簡単に脱着することができる。このため、フィルタエレメント206の保守・点検作業が容易であり、作業性が高まる。
【0090】
さらにまた、図18に示すように、エアクリーナ56内に延びる複数の送気管194,194の間に、フィルタエレメント206を配置したので、エアクリーナ56の側部からフィルタエレメント206を脱着するときに、フィルタエレメント206が送気管194,194に干渉することはない。このため、干渉を防止するためにエアクリーナ56を大型にする必要もない。従って、エアクリーナ56の小型化を図ることができ、この結果、エアクリーナ56を低床式車両10に搭載する設計の自由度が高まる。
【0091】
また、エアクリーナの上部に、燃料タンク57(図9参照)等の車両用付属品を配置するスペースS2を設けたことで、スペースS2を有効利用して車両用付属品を容易に配置することができるとともに、荷重配分についても設計の自由度を高めることができる。例えば、低床式車両10の前部にエアクリーナ56並びに燃料タンク57を配置することにより、低床式車両10の重心を前に設定することができるので、前輪52と後輪63とにかかる荷重を、より適正に配分することができる。
【0092】
ところで、図18に示すように各々の吸気連結管191,191は、アッパフレーム22並びにダウンフレーム23にほぼ沿わせて配置したことを特徴とする。すなわち、前バンクの気筒101に接続された吸気連結管191をダウンフレーム23にほぼ沿わせて配置するとともに、後バンクの気筒102に接続された吸気連結管191をアッパフレーム22にほぼ沿わせて配置した。
【0093】
このため、各吸気連結管191,191を略直線状に構成することができる。略直線状の各吸気連結管191,191を採用することによって、各吸気連結管191,191から各気筒101,102へ、空気をより円滑に供給することができる。この結果、吸気効率をより向上させることができ、V型エンジン100の出力性能を、より高めることができる。
【0094】
しかも、このような構成をとることにより、車体フレーム20の内側のスペースを有効に使ってコンパクトに配置することができるので、設計の自由度を増すことができ、低床式車両10の外観性を高めることもできる。さらには、運転者が乗車するときに、車体フレーム20の跨ぎ易さを向上することができる。
【0095】
上述のように、各々の吸気連結管191,191の側面に対向するアッパフレーム22とダウンフレーム23との間は、トラス形状のフレーム構造である。このため、車体フレーム20のうち、各吸気連結管191,191の延在方向の剛性をより一層高めることができる。このため、車体フレーム20に懸架されたV型エンジン100の出力性能を、より一層向上させることができる。
【0096】
このトラス形状のフレーム構造に有する三角形状の第2の空間部28は、エアクリーナ56のフィルタエレメント206を出し入れすることのできる空間である。第2の空間部28を有するので、エアクリーナ56の側方からフィルタエレメント206を簡単に脱着することができる。このため、フィルタエレメント206の保守・点検作業が容易であり、作業性が高まる。しかも、エアクリーナ56の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0097】
なお、図19において、221,222はエレメント押え部である。図20において、223,223は送気管接続ジョイント、224,224は送気管接続フランジ、225・・・はビス、226,227はパッキンである。
【0098】
次に、V型エンジン100の排気系240について説明する。図22は本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、排気系周りの左側面図、図23は本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、排気系周りの平面図である。
【0099】
上記図14〜図17も参照しつつ説明すると、V型エンジン100の排気系240は、後バンクの気筒102に接続された第1の排気管241、前バンクの気筒101に接続された第2の排気管242、第1の排気管241の後端と第2の排気管242の後端とを集合する集合管243、集合管243の後端に延長管244を介して接続した消音器245とからなる。消音器245は触媒246(図22参照)を内蔵し、後輪63の右上側に配置したものである。
【0100】
後バンクの気筒102に接続された第1の排気管241は、後バンクの気筒102よりも後方(具体的には左後方)へ延出し、その後端を下方へ延して、パワーユニット54における平面視略コ字状の開口のスペースS4を通し、その下端を後方(具体的には右後方)へ延ばしてパワーユニット54の下を通し、その後端を集合管243を介して第2の排気管242に接続したものである。
【0101】
パワーユニット54の平面視略コ字状の開口部分のスペースS4に、V型エンジン100の後バンク102の気筒に接続された第1の排気管241を通したので、コ字状の開口部分のスペースS4を有効利用することができる。このため、第1の排気管241が車体から突出しないので、低床式車両10の外観性が高まる。
【0102】
前バンクの気筒101に接続された第2の排気管242は、前バンクの気筒101から下方へ延ばし、その下端を右へ延ばし、その右端をパワーユニット54の右下部に沿って後方へ延ばし、その後端を集合管243に接続したものである。
【0103】
図14に示すように、第2の排気管242は、V型エンジン100の前面一側部(右側)を通り、V型エンジン100の他側部(左側)のエンジン前面のクランクケース104には、オイルフィルタ122及び又はオイルクーラ123を設けた。すなわち、クランクケース104の左半体における前部に、オイルフィルタ122やオイルクーラ123を備える。
【0104】
ところで、変速機ユニット130は、図11に示すように右側部に吸気口251を設けるとともに、ベルト式無段変速機構141のプーリ252にファン253を設け、外気を吸引して変速機ユニット130内を空冷する構成である。冷却した後の排風は、図14〜図16に示すように変速機ユニット130の後上部に備えた排風部材254によって大気に放出されることになる。
【0105】
排風部材254は、側面視で上下逆U字状のダクトであり、排風を第1・第2の排気管241,242に当てるように構成したものである。第1・第2の排気管241,242における排風が当たる部分は、第1の排気管241と第2の排気管242との集合部分、すなわち集合管243又はその近傍である。第1・第2の排気管241,242における排風が当たる部分に、上記排気センサ255を設けた。すなわち、集合管243の後部に排気センサ255を設けた。排風によって排気センサ255を冷却するので、排気センサ255の機能や性能を保持する上で有利となる。
【0106】
この排気センサ255は、排ガス中の酸素量を検出するものである。この検出データに基づいて、燃料噴射弁193,193(図18参照)の噴射量をフィードバック制御することができる。例えば、検出された酸素量が多いときには、空気供給量に対する燃料供給量の割合が小さいとして、燃料噴射弁193,193噴射量を増大させるように制御することになる。
【0107】
このように、第1・第2の排気管241,242における排風が当たる部分に排気センサ255を設けたので、排風によって排気センサ255を冷却することができる。排ガスによる排気センサ255の熱影響を軽減することができるので、排気センサ255の機能や性能を保持する上で有利となる。例えば、排気センサ255によって燃料噴射弁193,193(図18参照)を常に良好に噴射制御することができる。
【0108】
以上の排気系240をまとめて述べる。
パワーユニット54を平面視略コ字状に構成したので、V型エンジン100の後バンクの気筒102に接続された第1の排気管241を、気筒102よりも後方へ延出し、その後端を下方へ延して平面視略コ字状の開口のスペースS4を通し、その下端を後方へ延ばし、その後端をV型エンジン100の前バンクの気筒101に接続された第2の排気管242に接続することができる。
【0109】
このように、後バンクの気筒102に接続された第1の排気管241をパワーユニット54の上を通し、さらに平面視略コ字状の開口のスペースS4を通して下へ延ばすことで、このスペースS4を有効利用し、前バンクの気筒101に接続された第2の排気管242と接続することができる。従って、前後V型エンジンのための複数の排気管を効率良く配置することができる。
【0110】
さらには、変速機ユニット130の後部に備えた排風部材254の排風を、第1・第2の排気管241,242に当てるように構成したので、排風によって第1・第2の排気管241,242及び管内の排ガスを所望の温度に制御することができる。特に、変速機ユニット130を冷却した後の排風によって第1・第2の排気管241,242や排ガスを冷却するようにすることで、両方を同時に冷却することができ、別個の冷却手段を設ける必要がなく、低床式車両10の小型化を図ることができる。
【0111】
さらにまた、第1の排気管241と第2の排気管242との集合部分の近傍に、排風部材254の排風を当てるようにしたので、第1・第2の排気管241,242内の排ガスを一緒に冷却して温度制御することができるので、効率が良い。
【0112】
また、図14に示すように、V型エンジン100の前面の一側部には第2の排気管242を通すが、V型エンジン100の前面の他側部におけるクランクケース104には、第1・第2の排気管241,242を通さない。排気管241,242が通らない空いたスペースを有効利用して、V型エンジン100の前面の他側部におけるクランクケース104に、エンジン用オイル潤滑・冷却系の機能部品である、オイルフィルタ122やオイルクーラ123を設けることができるので、低床式車両10の小型化を図ることができる。
【0113】
次に、後輪用リヤクッション61の配置構成について説明する。
図24は本発明に係る低床式車両の概要図であり、シート58の下方に、シート58の前後長と略同等の前後長を有する収納ボックス59を備え、この収納ボックス59の下方に後輪用リヤクッション61を横置きにして配置したことを示す。図13を参照すると、リヤクッション61は、車体の略中心(車幅方向中心)に配置していることが判る。
【0114】
図25は本発明に係る収納ボックス並びに後輪用リヤクッション周りの左側面図、図26は図25の26−26線断面図である。
後輪用リヤクッション61は、アッパフレーム22の後部に沿って配置されている。詳しくは、アッパフレーム22のクッション用ブラケット34にリヤクッション61の一端部を連結し、スイングアーム62のクッション用ブラケット167にリヤクッション61の他端部を連結することで、アッパフレーム22の上に且つアッパフレーム22に略平行に、リヤクッション61を配置した。
【0115】
収納ボックス59は、その底面59aにリヤクッション61のための点検用リッド261を備える。リヤクッション61は、クッション性を調整するための調整部材61aを備える。収納ボックス59の底面59aは調整部材61aの真上にある。
リヤクッション61の調整時には、底面59aに弾性係合にて脱着可能に取付けられた点検用リッド261を外し、底面59aの点検用孔59bから工具262を差し込んで、調整部材61aを調整すればよい。調整作業が簡単である。
【0116】
以上のリヤクッション61の取付構造をまとめて述べる。
収納ボックス59の下方に後輪用リヤクッション61を横置きにして配置したので、収納ボックス59を前後に延しても、車体の略中心に在る後輪用リヤクッション61に干渉しない。従って、シート58の下方にシート58の前後長と略同等の前後長を有する収納ボックス59を配置することができる。このため、収納ボックス59の前後長を大きくして収納スペースを拡大することによって、長尺で径の大きい物を収納する収納スペースを容易に確保することができる。
【0117】
さらには、収納ボックス59の底面に後輪用リヤクッション61の点検用リッド261を備えたので、点検用リッド261を外してリヤクッション61の保守・点検をすることができる。収納ボックス59や車体カバー70(図1参照)を外すことなく、簡単に保守・点検作業をすることができるので、作業性が高まる。
【0118】
さらにまた、後輪用リヤクッション61を、ダイヤモンド型フレーム20のアッパフレーム22の後部に沿って配置したので、大きい剛性を有するアッパフレーム22によって、後輪用リヤクッション61の剛性を十分に確保することができるとともに、小型の懸架構造とすることができる。
【0119】
図27は本発明に係る収納ボックスの変形例図であり、上記図25に示す実施例に対応する。変形例の収納ボックス59は、底面59aに備えた点検用リッド263が、ヒンジ264にて開閉するヒンジ構造であることを特徴とする。他の構成については、上記図24〜図26と同じであり、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0120】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、収納ボックスの下方に後輪用リヤクッションを横置きにして配置したので、収納ボックスを前後に延しても、車体の略中心に在る後輪用リヤクッションに干渉しない。従って、シートの下方にシートの前後長と略同等の前後長を有する収納ボックスを配置することができる。このため、収納ボックスの前後長を大きくして収納スペースを拡大することによって、長尺で径の大きい物を収納する収納スペースを容易に確保することができる。
【0121】
請求項2は、収納ボックスの底面に後輪用リヤクッションの点検用リッドを備えたので、点検用リッドを外してリヤクッションの保守・点検をすることができる。収納ボックスや車体カバーを外すことなく、簡単に保守・点検作業をすることができるので、作業性が高まる。
【0122】
請求項3は、車体フレームをダイヤモンド型フレームとし、このダイヤモンド型フレームにエンジンを懸架したので、エンジンを車体フレームの一部とすることができる。このため、エンジンの下にフレームの部材を通す必要がない。従って、エンジンを最低地上高さまで下げることができる。エンジンを下げることで、低床式車両の低重心化を図って操縦安定性をより高めることができる。
さらには、後輪用リヤクッションを、ダイヤモンド型フレームのアッパフレームの後部に沿って配置したので、大きい剛性を有するアッパフレームによって、後輪用リヤクッションの剛性を十分に確保することができるとともに、小型の懸架構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る低床式車両の左側面図(その1)
【図2】本発明に係る低床式車両の左側面図(その2)
【図3】本発明に係る低床式車両の平面図
【図4】本発明に係る車体フレームの左側面図
【図5】本発明に係る車体フレームの平面図
【図6】本発明に係る車体フレームの正面図
【図7】本発明に係る車体フレームを左側方から見た斜視図
【図8】本発明に係る車体フレームを右側方から見た斜視図
【図9】本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、エアクリーナ並びに燃料タンク周りの左側面図
【図10】本発明に係るパワーユニットの断面図
【図11】本発明に係るパワーユニットの前半部の断面図
【図12】本発明に係るパワーユニットの後半部の断面図
【図13】本発明に係るパワーユニットの後部並びに後輪用スイングアーム周りの平面図
【図14】本発明に係る車体フレーム並びにパワーユニット周りを左前方から見た斜視図
【図15】本発明に係る車体フレーム、パワーユニット並びにエアクリーナ周りを左後方から見た斜視図
【図16】本発明に係る車体フレーム、パワーユニット並びにエアクリーナ周りを右前方から見た斜視図
【図17】本発明に係る車体フレーム並びにパワーユニット周りを右後方から見た斜視図
【図18】本発明に係る車体フレーム、V型エンジン、吸気系周りの左側面図
【図19】本発明に係るエアクリーナ並びに車体カバー周りの背面断面図
【図20】本発明に係るエアクリーナの分解図
【図21】本発明に係るエアクリーナの作用図
【図22】本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、排気系周りの左側面図図
【図23】本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、排気系周りの平面図
【図24】本発明に係る低床式車両の概要図
【図25】本発明に係る収納ボックス並びに後輪用リヤクッション周りの左側面図
【図26】図25の26−26線断面図
【図27】本発明に係る収納ボックスの変形例図
【図28】従来の低床式車両の概要図
【符号の説明】
10…低床式車両、20…ダイヤモンド型フレーム(車体フレーム)、21…ヘッドパイプ、22…アッパフレーム、23…ダウンフレーム、58…シート、59…収納ボックス、61…後輪用リヤクッション、62…後輪用スイングアーム、63…後輪、73…低床、100…前後V型エンジン、261,263…点検用リッド。
Claims (3)
- 低床式車両の低床の下方にエンジンを搭載し、後輪用リヤクッションを車体の略中心に配置する低床式車両において、
前記低床式車両は、シートの下方に、シートの前後長と略同等の前後長を有する収納ボックスを備え、この収納ボックスの下方に前記後輪用リヤクッションを横置きにして配置したことを特徴とする低床式車両のリヤクッション取付構造。 - 前記収納ボックスは、その底面に前記後輪用リヤクッションの点検用リッドを備えたことを特徴とする請求項1記載の低床式車両のリヤクッション取付構造。
- 前記エンジンは、ヘッドパイプから後下方へ延出するアッパフレームと、前記ヘッドパイプから下方へ延出するダウンフレームとからなるダイヤモンド型フレームに懸架され、
前記後輪用リヤクッションは、前記アッパフレームの後部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1記載の低床式車両のリヤクッション取付構造。
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