JP2004114481A - ガラス・樹脂積層体の製造方法およびガラス・樹脂積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来は、樹脂板とガラス板を熱可塑性シートを介して接合し加熱することにより、ガラス・樹脂積層体を製造してきた。樹脂とガラスでは、線膨張係数が著しく異なるために、全体的に反りが発生する。
【解決手段】従来の方法で製造した積層体14を、図(b)に示すオーブン装置25で温めることで、平坦化する。次に、図(c)の片面強制冷却装置30により、樹脂板11のみを水スプレーで強制冷却する。
【効果】熱可塑性シート12が固化する前に樹脂板11をある程度収縮させると、樹脂板11の収縮量をガラス板13の収縮量に近づけることができる。この結果、ガラス・樹脂積層体における反りの発生を抑えることができる。
【選択図】 図2
【解決手段】従来の方法で製造した積層体14を、図(b)に示すオーブン装置25で温めることで、平坦化する。次に、図(c)の片面強制冷却装置30により、樹脂板11のみを水スプレーで強制冷却する。
【効果】熱可塑性シート12が固化する前に樹脂板11をある程度収縮させると、樹脂板11の収縮量をガラス板13の収縮量に近づけることができる。この結果、ガラス・樹脂積層体における反りの発生を抑えることができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス板に熱可塑性シートにより樹脂板を接着してなるガラス・樹脂積層体の製造技術の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラス板に熱可塑性シートにより樹脂板を接着してなるガラス・樹脂積層体に係る発明が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−323504号公報(請求項2)
【0004】
特許文献1に記載の請求項2は「ガラス板又はアクリル系樹脂板とポリカーボネート樹脂板とをウレタン系接着フィルムを介して積層し、この積層体を減圧雰囲気中で100〜150℃に加熱して1.5kg/cm2以下の圧力で圧着することを特徴とする透明複合板の製造方法。」である。
【0005】
上記特許文献1に記載の技術と同等の生産技術を、次図に基づき具体的に説明する。
図5は従来のガラス・樹脂積層体の製造工程図である。
(a)において、樹脂板101に接着フィルム102を介してガラス板103を重ねて、積層体104にする。
【0006】
(b)において、前記積層体104を、耐熱性袋105に収め、この耐熱性袋105内部を真空引きして減圧雰囲気にする。この減圧により、前記積層体はほぼ1.0kg/cm2で圧縮される。その上で、ヒータ106、106により、接着フィルム102が溶融する温度(100〜150℃)に加熱する。
【0007】
(c)において、得られた積層体104を冷却する。すなわち、樹脂板101およびガラス板103から下向き矢印および上向き矢印の如く放熱が起こり、時間経過と共に樹脂板101およびガラス板103の温度は下がる。
【0008】
(d)は、課題を示す図であり、樹脂板101が下方で、ガラス板103が上の場合には、上に凸になるように湾曲することが分かった。なお、図は強調して描いたが、反りの程度は比較的小さい。
樹脂板101がポリカーボネートであれば、その線膨張係数は70×10−6(/℃)であり、一方、板ガラスの線膨張係数は、8.5×10−6(/℃)である。両者の線膨張係数が著しく異なるため、その差に比例した反りが発生する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した通りに、従来の製造方法によれば、積層体に反りが発生し、製品品質が低下する。
加えて、反りに対応して残留応力が発生する。この残留応力が一定値を超えるとガラス板もしくは樹脂板の界面で剥離が発生し、場合によってはガラス板もしくは樹脂板の亀裂発生に繋がる。
【0010】
上記課題を解決するために、接着剤を常温硬化型接着剤に切替えることが考えられる。しかし、接着剤を塗布する段階で空気の混入は避けられず、この空気が気泡となってガラス板と樹脂板との間に残留する。気泡が残留すると、積層体の透明度が低下するなど、光学的な不具合を招き、積層体の製品品質は低下する。そこで、本発明の目的は、熱可塑性シートの使用を前提として、反りを減少させることのできる技術を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1のガラス・樹脂積層体の製造方法は、樹脂板に熱可塑性シートを介してガラス板を重ねて積層体にする工程と、この積層体を加圧・加熱することで前記熱可塑性シートを軟化させ、この軟化した熱可塑性シートでガラス板と樹脂板とを接着し、この後に冷却する接着・一体化工程と、得られた積層体を、前記熱可塑性シートが軟化するまで加熱する再加熱工程と、高温の積層体に外力を付与することにより平坦にする平坦化工程と、前記外力を付与したままで、ガラス板より樹脂板を急速冷却する不均等冷却工程と、からなる。
【0012】
ガラス板を重ねて積層体にする工程および接着・一体化工程を経て得られる積層体は、ガラス板側が凸になるような反りが発生する。そこで、積層体を再加熱する。この再加熱により、熱可塑性シートが軟化し、さらに外力を加えることで積層体を平坦にする。この平坦化した積層体において、ガラス板より樹脂板を急速冷却する。
【0013】
熱可塑性シートが固まる前に樹脂板を極力収縮させる。この結果、熱可塑性シートが固化した時点からの樹脂板の収縮量を減少させることができる。
一方、ガラス板は冷却速度をできるだけ遅らせ、熱可塑性シートが固化したのちの収縮量を増大させる。
【0014】
熱応力は、(樹脂板の収縮量−ガラス板の収縮量)に比例する。樹脂板の収縮量を小さくし、ガラス板の収縮量を大きくすることにより、熱応力を格段に低下させることができる。熱応力が小さくなれば、比例的に反りは小さくなる。したがって、本発明によれば、反りの少ないガラス・樹脂積層体を得ることができる。
【0015】
請求項2のガラス・樹脂積層体の製造方法は、不均等冷却工程では、樹脂板に冷却用液体を接触させることを特徴とする。
液体は気体に比較して格段に冷却能力が大きい。そのため、液体で樹脂板を冷却すれば、樹脂板を効果的に冷却することができる。
【0016】
請求項3のガラス・樹脂積層体の製造方法では、冷却用液体は、水であることを特徴とする。
水は入手容易で、再利用可能で、安価な液体である。この様な水を冷却用液体に用いることにより、製造コストを下げることができる。
【0017】
請求項4のガラス・樹脂積層体の製造方法では、平坦化工程は、上下対のストレートローラを多段並べ、上下ローラ間に高温の積層体を挟みながら走行させることで実施することを特徴とする。
平坦化処理は積層体に外力を付与することで実施するが、この外力付与手段を上下対のストレートローラにすれば、積層体を連続的に処理することができ、生産性を高めることができる。
【0018】
請求項5のガラス・樹脂積層体は、請求項1〜4のいずれか1項記載のガラス・樹脂積層体の製造方法で製造したことを特徴とする。
本発明方法で製造したガラス・樹脂積層体は、残留応力が小さく、反りが少なく、製品品質が良好である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1(a)〜(d)は本発明に係るガラス・樹脂積層体の製造工程図(その1)である。
(a)において、樹脂板11に熱可塑性シート12を介してガラス板13を重ねることで、積層体14を造る。熱可塑性シート12としては、ポリウレタン(PUR)膜やポリビニルブチラール(PVB)膜が好適である。
【0020】
(b)において、積層体14を、耐熱性袋15に収め、この耐熱性袋15内部を真空引きして減圧雰囲気にする。この減圧により、前記積層体はほぼ1.0kg/cm2で圧縮される。
【0021】
(c)において、ヒータ16、16により、80℃前後に加熱する。真空中で加熱すると、熱可塑性シート12中の一部の成分がガス化し、同様に前記(a)の重ね合わせで、封じ込めた空気が膨張する。このガスや空気は、真空ポンプ17によって排気される。したがって、ガスや空気を除去することができる。このガスや空気を十分に排気しない場合には、これらが積層体14中に残存し、各種欠陥の発生要因となる。ガスや空気を除去することは、極めて重要な処理であると言える。
同時に、真空引きによるほぼ1.0kg/cm2の圧縮と、80℃の加熱により、ある程度の接着が進行する。この接着は仮接着と呼ぶことができる。
【0022】
(d)において、加圧加熱容器であるオートクレーブ18に積層体14を投入し、圧縮機19(又は高圧ガスボンベ)により、5.0kg/cm2(ゲージ圧)まで内圧を高め、その上でヒータ21、21により90℃まで加熱し、接着を完成する。この接着を本接着と呼ぶ。
【0023】
図2(a)〜(c)は本発明に係るガラス・樹脂積層体の製造工程図(その2)である。
(a)において、積層体14を耐熱性袋15から取り出す。この段階では、積層体14には、ガラス板13側が凸になるような反りが発生する。
【0024】
(b)において、樹脂板11にパンチングメタルと称する金属製の多孔板22を沿わせ、ガラス板13に別のガラス板23を沿わせる如くに、積層体14を多孔板22とガラス板23で挟み、且つ万力形状のクリップ24、24で全周を挟み、固定する。ただし、クリップ24、24の作用では、積層体14に存在する反りは解消しない。
【0025】
そこで、クリップ24、24で押さえた積層体14を、樹脂板11が下側になるようにして熱風循環式オーブン装置25に装入する。熱風循環式オーブン装置25は、例えば炉体26とヒータ27、27とダクト28、28と循環ファン29、29とからなり、これらのダクト28、28および循環ファン29、29で熱風を強制循環させることで、炉体26内部の温度を均一にすることができる。ヒータ27、27はダクト28、28に内蔵してもよい。
【0026】
なお、この加熱処理は、大気雰囲気で実施可能である。その理由を説明する。図1(c)では、加熱により発生するガスや残留空気を除去する必要があったので、真空引きを行った。
一方、図2ではガスや空気の除去は完了している。そのため、図2(b)の段階では、大気中の空気が熱可塑性シート12に浸透することや、熱可塑性シート12と樹脂板11との間に侵入することや、熱可塑性シート12とガラス板13との間に侵入することのいずれも無視できる程度に微量である。
したがって、図2では大気雰囲気で処理を行うこととした。大気中での処理であれば、製造コストを下げることができる。
【0027】
(b)で積層体14を、90℃で60分加熱処理する。この加熱により、熱可塑性シート12は軟化するため、樹脂板11およびガラス板13に加わっていた残留応力はゼロになり、積層体14は平坦になる。
【0028】
(c)において、支柱31、31およびこれらの支柱31、31の側方に配置した水スプレー管32・・・(・・・は複数を示す。以下同じ)から片面強制冷却装置30を構成し、この支柱31、31に、多孔板22が下方へなるように積層体14を載せ、水スプレー管32・・・から1分間程度スプレー水33・・・を吹き上げる。多孔板22を介して樹脂板11の下面にスプレー水33・・・を接触させる。この接触により、樹脂板11は強制冷却される。一方、上位のガラス板13は、大気により自然冷却される。
【0029】
以上に述べた製造方法を整理すると次の通りになる。
本発明の製造方法は、樹脂板に熱可塑性シートを介してガラス板を重ねて積層体にする工程と(図1(a))、
この積層体を加圧・加熱することで前記熱可塑性シートを軟化させ、この軟化した熱可塑性シートでガラス板と樹脂板とを接着し、この後に冷却する接着・一体化工程と(図1(c)、(d))、
得られた積層体を、前記熱可塑性シートが軟化するまで加熱する再加熱工程と、
高温の積層体に外力を付与することにより平坦にする平坦化工程と(図2(b))、
前記外力を付与したままで、ガラス板より樹脂板を急速冷却する不均等冷却工程と(図2(c))、からなる。
【0030】
以上の図1、図2で説明した本発明の製造方法と、図5で説明した従来の製造方法と、の評価の比較を次に説明する。
図3は本発明方法と従来方法の比較図であり、(a)、(b)は従来の製造方法に基づく「比較例」、(c)、(d)は本発明の製造方法に基づく「実施例」を示す。
【0031】
前記図5(b)により樹脂板101、接着フィルム102およびガラス板103を90℃に均一に加熱し、図5(c)により、樹脂板101およびガラス板103を同時に冷却し始めたとする。図3(a)はそのときの温度変化を示すグラフであり、横軸の「冷却開始」点から、ガラス板と樹脂板がほぼ同一速度で冷却されることを示す。一方、PVB膜は温度降下が少し遅れる。
【0032】
PVBは、熱可塑性樹脂であり厳密な溶解温度(固化温度)を持たず、温度上昇と共に徐々に軟化していくが、現象を容易に理解するために、仮想固化温度を想定したモデルを考える。ここでは、仮想固化温度は80℃と想定したモデルを考える。
そこで、(a)の縦軸の80℃から横線を引き、PVB膜曲線との交点を固化開始、すなわち「拘束開始」点とする。
【0033】
(b)は縦軸が収縮率軸、横軸が時間軸であり、ガラス板の線膨張係数が8.5×10−6(/℃)、樹脂板の線膨張係数が70×10−6(/℃)と仮定すれば、熱膨張係数の小さなガラス板は温度降下と共に少しだけ収縮する。
拘束開始(80℃)から常温(20℃)までに、ガラス板はδgだけ収縮する。このδgは、60℃×8.5×10−6(/℃)の計算により、0.51×10−3となる。
【0034】
熱膨張係数の大きな樹脂板は、温度降下と共に大きく収縮する。拘束開始(80℃)から常温(20℃)までに、樹脂板はδpだけ収縮する。このδpは60℃×70×10−6(/℃)の計算により、4.2×10−3となる。
【0035】
一方、本発明では図2(c)で説明した通りに、樹脂板11は強制冷却し、ガラス板13は強制冷却しない。
この結果、図3(c)に示す通りに、樹脂板は急激に温度降下し、ガラス板は穏やかに温度降下する。中間のPVB膜は樹脂板とガラス板の中間の温度降下となる。
【0036】
(c)の温度降下曲線と、ガラス板の線膨張係数が8.5×10−6(/℃)、樹脂板の線膨張係数が70×10−6(/℃)であることから、(d)に示す収縮率の曲線を描くことができる。すなわち、ガラス板に対する曲線は(b)の曲線とほぼ同じであるが、樹脂板に対する曲線は(b)の曲線とは大きく異なり、短時間で収縮が進行するため、曲線は立った状態になる。
【0037】
この様な(d)に(c)の「拘束開始」から線を下げる。そして、拘束開始(80℃)から常温(20℃)までの収縮率を求めると、ガラス板の収縮率はΔg、樹脂板の収縮率はΔpとなる。
ここで重要なことは、Δpはδpより遙かに小さく、Δbはδgより若干大きいことである。
【0038】
従来発生していた積層体の反りは、不均等収縮、すなわち収縮率差(δp−δg)に比例的に発生する。
Δp<δp、δg<Δgであるから、本発明の収縮率差(Δp−Δg)は、(δp−δg)より大幅に小さくなった。
【0039】
比較例と実施例の反りを計測したので、その詳細を次に説明する。
ガラス板の寸法:2.1mm厚み×30mm幅×300mm長さ
PVB膜の寸法:0.8mm厚み×30mm幅×300mm長さ
PC板の寸法 :2.0mm厚み×30mm幅×300mm長さ
【0040】
比較例における反りは、1.75mm/300mm(サンプル数5の平均値)であった。
【0041】
上記積層体について、PC(ポリカーボネート)面に1.5mmのパンチングメタルを添え、ガラス板に5mm厚さの別のガラス板を添えて、本発明方法を実施した。この結果、実施例における反りは、0〜0.25mm/300mm(サンプル数5の平均値)であった。
すなわち、本発明方法により積層体の反りを大幅に減少することができるようになった。
【0042】
図4は図2の別実施例図である。すなわち、ストレートローラ35・・・と等ピッチで並べてなるローラテーブル中に、オーブン装置40、片面強制冷却装置50をこの順に並べる。
【0043】
オーブン装置40は、ストレートローラ35・・・の上下にヒータ41・・・を備え、これらを炉体42で囲ってなる。図2(b)に示すダクト28、28や循環ファン29、29を備えることは、なおよい。
【0044】
片面強制冷却装置50は、下半部が水槽51、上半部がカバー52である装置枠53と、水槽51に浸漬するようにしてストレートローラ35・・・に渡したフェルトコンベア54と、ストレートローラ35・・・の上方に配置したピンチローラ55・・・とからなる。必要に応じて、ヒータ56や水スプレー管57・・・を備える。ピンチローラ55もストレートローラである。
【0045】
すなわち、片面強制冷却装置50は、上下対のストレートローラ35、55を多段並べ、上下ローラ間に高温の積層体14を挟みながら走行させることができる装置である。
【0046】
以上の構成における作用を説明する。
耐熱性袋15から取り出した積層体14を、ローラテーブルの入口側に載せる。このときにはガラス板13を上に、樹脂板11を下にする。
そして、オーブン装置40へ移動し、そこで90℃程度に加熱する。これで、積層体14に発生していた反りは一旦、ゼロになる。30〜60分経過したら、積層体14を片面強制冷却装置50へ移動する。
【0047】
片面強制冷却装置50では、積層体14をストレートローラ35・・・とピンチローラ55・・・とで挟持しながら、コンベア積層体14の下面をフェルトコンベア54で強制冷却する。すなわち、フェルトコンベア54は、フェルトに水を含ませてあるので、直接水を吹き付けるよりは、マイルドな冷却が実施できる。また、水スプレー管57・・・から水を噴射し、フェルトコンベア54に補給して、冷却能力を増強することは差し支えない。
一方、積層体14の上面はできるだけ冷却しないようにする。例えば、ヒータ56で温めてもよい。
【0048】
このガラス・樹脂積層体の製造方法では、平坦化工程は、上下対のストレートローラを多段並べ、上下ローラ間に高温の積層体を挟みながら走行させることで実施することを特徴とする。
平坦化処理は積層体に外力を付与することで実施するが、この外力付与手段を上下対のストレートローラにすれば、積層体を連続的に処理することができ、生産性を高めることができる。
【0049】
なお、図5(c)の段階で、下面を強制冷却し、上面を自然冷却することでも、本発明の目的は達成できる。しかし、耐熱性袋から積層体を取り出す間に、積層体が自然に冷却されるため、迅速な作業が不可欠となり、高速化のために装置を改良する必要があり、設備コストが嵩む。この点、本発明では、従来の方法で製造した積層体を、改めてオーブン装置で加熱するため、作業の高速化は必要なく、装置の簡便化を図ることができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、ガラス板を重ねて積層体にする工程および接着・一体化工程を経て得られる積層体は、ガラス板側が凸になるような反りが発生する。そこで、積層体を再加熱する。この再加熱により、熱可塑性シートが軟化し、さらに外力を加えることで積層体を平坦にする。この平坦化した積層体において、ガラス板より樹脂板を急速冷却する。
【0051】
熱可塑性シートが固まる前に樹脂板を極力収縮させる。この結果、熱可塑性シートが固化した時点からの樹脂板の収縮量を減少させることができる。
一方、ガラス板は冷却速度をできるだけ遅らせ、熱可塑性シートが固化したのちの収縮量を増大させる。
【0052】
熱応力は、(樹脂板の収縮量−ガラス板の収縮量)に比例する。樹脂板の収縮量を小さくし、ガラス板の収縮量を大きくすることにより、熱応力を格段に低下させることができる。熱応力が小さくなれば、比例的に反りは小さくなる。したがって、本発明によれば、反りの少ないガラス・樹脂積層体を得ることができる。
【0053】
請求項2のガラス・樹脂積層体の製造方法は、不均等冷却工程では、樹脂板に冷却用液体を接触させることを特徴とする。
液体は気体に比較して格段に冷却能力が大きい。そのため、液体で樹脂板を冷却すれば、樹脂板を効果的に冷却することができる。ここで用いる冷却用液体は、水や薬液を混入したクーラントが適当である。
【0054】
請求項3のガラス・樹脂積層体の製造方法では、冷却用液体は、水であることを特徴とする。
水は入手容易で、再利用可能で、安価な液体である。この様な水を冷却用液体に用いることにより、製造コストを下げることができる。
【0055】
請求項4のガラス・樹脂積層体の製造方法では、平坦化工程は、上下対のストレートローラを多段並べ、上下ローラ間に高温の積層体を挟みながら走行させることで実施することを特徴とする。
平坦化処理は積層体に外力を付与することで実施するが、この外力付与手段を上下対のストレートローラにすれば、積層体を連続的に処理することができ、生産性を高めることができる。
【0056】
請求項5のガラス・樹脂積層体は、請求項1〜4のいずれか1項記載のガラス・樹脂積層体の製造方法で製造したことを特徴とする。
本発明方法で製造したガラス・樹脂積層体は、残留応力が小さく、反りが少なく、製品品質が良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るガラス・樹脂積層体の製造工程図(その1)
【図2】本発明に係るガラス・樹脂積層体の製造工程図(その2)
【図3】本発明方法と従来方法の比較図
【図4】図2の別実施例図
【図5】従来のガラス・樹脂積層体の製造工程図
【符号の説明】
11…樹脂板、12…熱可塑性シート、13…ガラス板、14…積層体、25、40…オーブン装置、30、50…片面強制冷却装置、35…ストレートローラ、55…ピンチローラ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス板に熱可塑性シートにより樹脂板を接着してなるガラス・樹脂積層体の製造技術の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラス板に熱可塑性シートにより樹脂板を接着してなるガラス・樹脂積層体に係る発明が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−323504号公報(請求項2)
【0004】
特許文献1に記載の請求項2は「ガラス板又はアクリル系樹脂板とポリカーボネート樹脂板とをウレタン系接着フィルムを介して積層し、この積層体を減圧雰囲気中で100〜150℃に加熱して1.5kg/cm2以下の圧力で圧着することを特徴とする透明複合板の製造方法。」である。
【0005】
上記特許文献1に記載の技術と同等の生産技術を、次図に基づき具体的に説明する。
図5は従来のガラス・樹脂積層体の製造工程図である。
(a)において、樹脂板101に接着フィルム102を介してガラス板103を重ねて、積層体104にする。
【0006】
(b)において、前記積層体104を、耐熱性袋105に収め、この耐熱性袋105内部を真空引きして減圧雰囲気にする。この減圧により、前記積層体はほぼ1.0kg/cm2で圧縮される。その上で、ヒータ106、106により、接着フィルム102が溶融する温度(100〜150℃)に加熱する。
【0007】
(c)において、得られた積層体104を冷却する。すなわち、樹脂板101およびガラス板103から下向き矢印および上向き矢印の如く放熱が起こり、時間経過と共に樹脂板101およびガラス板103の温度は下がる。
【0008】
(d)は、課題を示す図であり、樹脂板101が下方で、ガラス板103が上の場合には、上に凸になるように湾曲することが分かった。なお、図は強調して描いたが、反りの程度は比較的小さい。
樹脂板101がポリカーボネートであれば、その線膨張係数は70×10−6(/℃)であり、一方、板ガラスの線膨張係数は、8.5×10−6(/℃)である。両者の線膨張係数が著しく異なるため、その差に比例した反りが発生する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した通りに、従来の製造方法によれば、積層体に反りが発生し、製品品質が低下する。
加えて、反りに対応して残留応力が発生する。この残留応力が一定値を超えるとガラス板もしくは樹脂板の界面で剥離が発生し、場合によってはガラス板もしくは樹脂板の亀裂発生に繋がる。
【0010】
上記課題を解決するために、接着剤を常温硬化型接着剤に切替えることが考えられる。しかし、接着剤を塗布する段階で空気の混入は避けられず、この空気が気泡となってガラス板と樹脂板との間に残留する。気泡が残留すると、積層体の透明度が低下するなど、光学的な不具合を招き、積層体の製品品質は低下する。そこで、本発明の目的は、熱可塑性シートの使用を前提として、反りを減少させることのできる技術を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1のガラス・樹脂積層体の製造方法は、樹脂板に熱可塑性シートを介してガラス板を重ねて積層体にする工程と、この積層体を加圧・加熱することで前記熱可塑性シートを軟化させ、この軟化した熱可塑性シートでガラス板と樹脂板とを接着し、この後に冷却する接着・一体化工程と、得られた積層体を、前記熱可塑性シートが軟化するまで加熱する再加熱工程と、高温の積層体に外力を付与することにより平坦にする平坦化工程と、前記外力を付与したままで、ガラス板より樹脂板を急速冷却する不均等冷却工程と、からなる。
【0012】
ガラス板を重ねて積層体にする工程および接着・一体化工程を経て得られる積層体は、ガラス板側が凸になるような反りが発生する。そこで、積層体を再加熱する。この再加熱により、熱可塑性シートが軟化し、さらに外力を加えることで積層体を平坦にする。この平坦化した積層体において、ガラス板より樹脂板を急速冷却する。
【0013】
熱可塑性シートが固まる前に樹脂板を極力収縮させる。この結果、熱可塑性シートが固化した時点からの樹脂板の収縮量を減少させることができる。
一方、ガラス板は冷却速度をできるだけ遅らせ、熱可塑性シートが固化したのちの収縮量を増大させる。
【0014】
熱応力は、(樹脂板の収縮量−ガラス板の収縮量)に比例する。樹脂板の収縮量を小さくし、ガラス板の収縮量を大きくすることにより、熱応力を格段に低下させることができる。熱応力が小さくなれば、比例的に反りは小さくなる。したがって、本発明によれば、反りの少ないガラス・樹脂積層体を得ることができる。
【0015】
請求項2のガラス・樹脂積層体の製造方法は、不均等冷却工程では、樹脂板に冷却用液体を接触させることを特徴とする。
液体は気体に比較して格段に冷却能力が大きい。そのため、液体で樹脂板を冷却すれば、樹脂板を効果的に冷却することができる。
【0016】
請求項3のガラス・樹脂積層体の製造方法では、冷却用液体は、水であることを特徴とする。
水は入手容易で、再利用可能で、安価な液体である。この様な水を冷却用液体に用いることにより、製造コストを下げることができる。
【0017】
請求項4のガラス・樹脂積層体の製造方法では、平坦化工程は、上下対のストレートローラを多段並べ、上下ローラ間に高温の積層体を挟みながら走行させることで実施することを特徴とする。
平坦化処理は積層体に外力を付与することで実施するが、この外力付与手段を上下対のストレートローラにすれば、積層体を連続的に処理することができ、生産性を高めることができる。
【0018】
請求項5のガラス・樹脂積層体は、請求項1〜4のいずれか1項記載のガラス・樹脂積層体の製造方法で製造したことを特徴とする。
本発明方法で製造したガラス・樹脂積層体は、残留応力が小さく、反りが少なく、製品品質が良好である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1(a)〜(d)は本発明に係るガラス・樹脂積層体の製造工程図(その1)である。
(a)において、樹脂板11に熱可塑性シート12を介してガラス板13を重ねることで、積層体14を造る。熱可塑性シート12としては、ポリウレタン(PUR)膜やポリビニルブチラール(PVB)膜が好適である。
【0020】
(b)において、積層体14を、耐熱性袋15に収め、この耐熱性袋15内部を真空引きして減圧雰囲気にする。この減圧により、前記積層体はほぼ1.0kg/cm2で圧縮される。
【0021】
(c)において、ヒータ16、16により、80℃前後に加熱する。真空中で加熱すると、熱可塑性シート12中の一部の成分がガス化し、同様に前記(a)の重ね合わせで、封じ込めた空気が膨張する。このガスや空気は、真空ポンプ17によって排気される。したがって、ガスや空気を除去することができる。このガスや空気を十分に排気しない場合には、これらが積層体14中に残存し、各種欠陥の発生要因となる。ガスや空気を除去することは、極めて重要な処理であると言える。
同時に、真空引きによるほぼ1.0kg/cm2の圧縮と、80℃の加熱により、ある程度の接着が進行する。この接着は仮接着と呼ぶことができる。
【0022】
(d)において、加圧加熱容器であるオートクレーブ18に積層体14を投入し、圧縮機19(又は高圧ガスボンベ)により、5.0kg/cm2(ゲージ圧)まで内圧を高め、その上でヒータ21、21により90℃まで加熱し、接着を完成する。この接着を本接着と呼ぶ。
【0023】
図2(a)〜(c)は本発明に係るガラス・樹脂積層体の製造工程図(その2)である。
(a)において、積層体14を耐熱性袋15から取り出す。この段階では、積層体14には、ガラス板13側が凸になるような反りが発生する。
【0024】
(b)において、樹脂板11にパンチングメタルと称する金属製の多孔板22を沿わせ、ガラス板13に別のガラス板23を沿わせる如くに、積層体14を多孔板22とガラス板23で挟み、且つ万力形状のクリップ24、24で全周を挟み、固定する。ただし、クリップ24、24の作用では、積層体14に存在する反りは解消しない。
【0025】
そこで、クリップ24、24で押さえた積層体14を、樹脂板11が下側になるようにして熱風循環式オーブン装置25に装入する。熱風循環式オーブン装置25は、例えば炉体26とヒータ27、27とダクト28、28と循環ファン29、29とからなり、これらのダクト28、28および循環ファン29、29で熱風を強制循環させることで、炉体26内部の温度を均一にすることができる。ヒータ27、27はダクト28、28に内蔵してもよい。
【0026】
なお、この加熱処理は、大気雰囲気で実施可能である。その理由を説明する。図1(c)では、加熱により発生するガスや残留空気を除去する必要があったので、真空引きを行った。
一方、図2ではガスや空気の除去は完了している。そのため、図2(b)の段階では、大気中の空気が熱可塑性シート12に浸透することや、熱可塑性シート12と樹脂板11との間に侵入することや、熱可塑性シート12とガラス板13との間に侵入することのいずれも無視できる程度に微量である。
したがって、図2では大気雰囲気で処理を行うこととした。大気中での処理であれば、製造コストを下げることができる。
【0027】
(b)で積層体14を、90℃で60分加熱処理する。この加熱により、熱可塑性シート12は軟化するため、樹脂板11およびガラス板13に加わっていた残留応力はゼロになり、積層体14は平坦になる。
【0028】
(c)において、支柱31、31およびこれらの支柱31、31の側方に配置した水スプレー管32・・・(・・・は複数を示す。以下同じ)から片面強制冷却装置30を構成し、この支柱31、31に、多孔板22が下方へなるように積層体14を載せ、水スプレー管32・・・から1分間程度スプレー水33・・・を吹き上げる。多孔板22を介して樹脂板11の下面にスプレー水33・・・を接触させる。この接触により、樹脂板11は強制冷却される。一方、上位のガラス板13は、大気により自然冷却される。
【0029】
以上に述べた製造方法を整理すると次の通りになる。
本発明の製造方法は、樹脂板に熱可塑性シートを介してガラス板を重ねて積層体にする工程と(図1(a))、
この積層体を加圧・加熱することで前記熱可塑性シートを軟化させ、この軟化した熱可塑性シートでガラス板と樹脂板とを接着し、この後に冷却する接着・一体化工程と(図1(c)、(d))、
得られた積層体を、前記熱可塑性シートが軟化するまで加熱する再加熱工程と、
高温の積層体に外力を付与することにより平坦にする平坦化工程と(図2(b))、
前記外力を付与したままで、ガラス板より樹脂板を急速冷却する不均等冷却工程と(図2(c))、からなる。
【0030】
以上の図1、図2で説明した本発明の製造方法と、図5で説明した従来の製造方法と、の評価の比較を次に説明する。
図3は本発明方法と従来方法の比較図であり、(a)、(b)は従来の製造方法に基づく「比較例」、(c)、(d)は本発明の製造方法に基づく「実施例」を示す。
【0031】
前記図5(b)により樹脂板101、接着フィルム102およびガラス板103を90℃に均一に加熱し、図5(c)により、樹脂板101およびガラス板103を同時に冷却し始めたとする。図3(a)はそのときの温度変化を示すグラフであり、横軸の「冷却開始」点から、ガラス板と樹脂板がほぼ同一速度で冷却されることを示す。一方、PVB膜は温度降下が少し遅れる。
【0032】
PVBは、熱可塑性樹脂であり厳密な溶解温度(固化温度)を持たず、温度上昇と共に徐々に軟化していくが、現象を容易に理解するために、仮想固化温度を想定したモデルを考える。ここでは、仮想固化温度は80℃と想定したモデルを考える。
そこで、(a)の縦軸の80℃から横線を引き、PVB膜曲線との交点を固化開始、すなわち「拘束開始」点とする。
【0033】
(b)は縦軸が収縮率軸、横軸が時間軸であり、ガラス板の線膨張係数が8.5×10−6(/℃)、樹脂板の線膨張係数が70×10−6(/℃)と仮定すれば、熱膨張係数の小さなガラス板は温度降下と共に少しだけ収縮する。
拘束開始(80℃)から常温(20℃)までに、ガラス板はδgだけ収縮する。このδgは、60℃×8.5×10−6(/℃)の計算により、0.51×10−3となる。
【0034】
熱膨張係数の大きな樹脂板は、温度降下と共に大きく収縮する。拘束開始(80℃)から常温(20℃)までに、樹脂板はδpだけ収縮する。このδpは60℃×70×10−6(/℃)の計算により、4.2×10−3となる。
【0035】
一方、本発明では図2(c)で説明した通りに、樹脂板11は強制冷却し、ガラス板13は強制冷却しない。
この結果、図3(c)に示す通りに、樹脂板は急激に温度降下し、ガラス板は穏やかに温度降下する。中間のPVB膜は樹脂板とガラス板の中間の温度降下となる。
【0036】
(c)の温度降下曲線と、ガラス板の線膨張係数が8.5×10−6(/℃)、樹脂板の線膨張係数が70×10−6(/℃)であることから、(d)に示す収縮率の曲線を描くことができる。すなわち、ガラス板に対する曲線は(b)の曲線とほぼ同じであるが、樹脂板に対する曲線は(b)の曲線とは大きく異なり、短時間で収縮が進行するため、曲線は立った状態になる。
【0037】
この様な(d)に(c)の「拘束開始」から線を下げる。そして、拘束開始(80℃)から常温(20℃)までの収縮率を求めると、ガラス板の収縮率はΔg、樹脂板の収縮率はΔpとなる。
ここで重要なことは、Δpはδpより遙かに小さく、Δbはδgより若干大きいことである。
【0038】
従来発生していた積層体の反りは、不均等収縮、すなわち収縮率差(δp−δg)に比例的に発生する。
Δp<δp、δg<Δgであるから、本発明の収縮率差(Δp−Δg)は、(δp−δg)より大幅に小さくなった。
【0039】
比較例と実施例の反りを計測したので、その詳細を次に説明する。
ガラス板の寸法:2.1mm厚み×30mm幅×300mm長さ
PVB膜の寸法:0.8mm厚み×30mm幅×300mm長さ
PC板の寸法 :2.0mm厚み×30mm幅×300mm長さ
【0040】
比較例における反りは、1.75mm/300mm(サンプル数5の平均値)であった。
【0041】
上記積層体について、PC(ポリカーボネート)面に1.5mmのパンチングメタルを添え、ガラス板に5mm厚さの別のガラス板を添えて、本発明方法を実施した。この結果、実施例における反りは、0〜0.25mm/300mm(サンプル数5の平均値)であった。
すなわち、本発明方法により積層体の反りを大幅に減少することができるようになった。
【0042】
図4は図2の別実施例図である。すなわち、ストレートローラ35・・・と等ピッチで並べてなるローラテーブル中に、オーブン装置40、片面強制冷却装置50をこの順に並べる。
【0043】
オーブン装置40は、ストレートローラ35・・・の上下にヒータ41・・・を備え、これらを炉体42で囲ってなる。図2(b)に示すダクト28、28や循環ファン29、29を備えることは、なおよい。
【0044】
片面強制冷却装置50は、下半部が水槽51、上半部がカバー52である装置枠53と、水槽51に浸漬するようにしてストレートローラ35・・・に渡したフェルトコンベア54と、ストレートローラ35・・・の上方に配置したピンチローラ55・・・とからなる。必要に応じて、ヒータ56や水スプレー管57・・・を備える。ピンチローラ55もストレートローラである。
【0045】
すなわち、片面強制冷却装置50は、上下対のストレートローラ35、55を多段並べ、上下ローラ間に高温の積層体14を挟みながら走行させることができる装置である。
【0046】
以上の構成における作用を説明する。
耐熱性袋15から取り出した積層体14を、ローラテーブルの入口側に載せる。このときにはガラス板13を上に、樹脂板11を下にする。
そして、オーブン装置40へ移動し、そこで90℃程度に加熱する。これで、積層体14に発生していた反りは一旦、ゼロになる。30〜60分経過したら、積層体14を片面強制冷却装置50へ移動する。
【0047】
片面強制冷却装置50では、積層体14をストレートローラ35・・・とピンチローラ55・・・とで挟持しながら、コンベア積層体14の下面をフェルトコンベア54で強制冷却する。すなわち、フェルトコンベア54は、フェルトに水を含ませてあるので、直接水を吹き付けるよりは、マイルドな冷却が実施できる。また、水スプレー管57・・・から水を噴射し、フェルトコンベア54に補給して、冷却能力を増強することは差し支えない。
一方、積層体14の上面はできるだけ冷却しないようにする。例えば、ヒータ56で温めてもよい。
【0048】
このガラス・樹脂積層体の製造方法では、平坦化工程は、上下対のストレートローラを多段並べ、上下ローラ間に高温の積層体を挟みながら走行させることで実施することを特徴とする。
平坦化処理は積層体に外力を付与することで実施するが、この外力付与手段を上下対のストレートローラにすれば、積層体を連続的に処理することができ、生産性を高めることができる。
【0049】
なお、図5(c)の段階で、下面を強制冷却し、上面を自然冷却することでも、本発明の目的は達成できる。しかし、耐熱性袋から積層体を取り出す間に、積層体が自然に冷却されるため、迅速な作業が不可欠となり、高速化のために装置を改良する必要があり、設備コストが嵩む。この点、本発明では、従来の方法で製造した積層体を、改めてオーブン装置で加熱するため、作業の高速化は必要なく、装置の簡便化を図ることができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、ガラス板を重ねて積層体にする工程および接着・一体化工程を経て得られる積層体は、ガラス板側が凸になるような反りが発生する。そこで、積層体を再加熱する。この再加熱により、熱可塑性シートが軟化し、さらに外力を加えることで積層体を平坦にする。この平坦化した積層体において、ガラス板より樹脂板を急速冷却する。
【0051】
熱可塑性シートが固まる前に樹脂板を極力収縮させる。この結果、熱可塑性シートが固化した時点からの樹脂板の収縮量を減少させることができる。
一方、ガラス板は冷却速度をできるだけ遅らせ、熱可塑性シートが固化したのちの収縮量を増大させる。
【0052】
熱応力は、(樹脂板の収縮量−ガラス板の収縮量)に比例する。樹脂板の収縮量を小さくし、ガラス板の収縮量を大きくすることにより、熱応力を格段に低下させることができる。熱応力が小さくなれば、比例的に反りは小さくなる。したがって、本発明によれば、反りの少ないガラス・樹脂積層体を得ることができる。
【0053】
請求項2のガラス・樹脂積層体の製造方法は、不均等冷却工程では、樹脂板に冷却用液体を接触させることを特徴とする。
液体は気体に比較して格段に冷却能力が大きい。そのため、液体で樹脂板を冷却すれば、樹脂板を効果的に冷却することができる。ここで用いる冷却用液体は、水や薬液を混入したクーラントが適当である。
【0054】
請求項3のガラス・樹脂積層体の製造方法では、冷却用液体は、水であることを特徴とする。
水は入手容易で、再利用可能で、安価な液体である。この様な水を冷却用液体に用いることにより、製造コストを下げることができる。
【0055】
請求項4のガラス・樹脂積層体の製造方法では、平坦化工程は、上下対のストレートローラを多段並べ、上下ローラ間に高温の積層体を挟みながら走行させることで実施することを特徴とする。
平坦化処理は積層体に外力を付与することで実施するが、この外力付与手段を上下対のストレートローラにすれば、積層体を連続的に処理することができ、生産性を高めることができる。
【0056】
請求項5のガラス・樹脂積層体は、請求項1〜4のいずれか1項記載のガラス・樹脂積層体の製造方法で製造したことを特徴とする。
本発明方法で製造したガラス・樹脂積層体は、残留応力が小さく、反りが少なく、製品品質が良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るガラス・樹脂積層体の製造工程図(その1)
【図2】本発明に係るガラス・樹脂積層体の製造工程図(その2)
【図3】本発明方法と従来方法の比較図
【図4】図2の別実施例図
【図5】従来のガラス・樹脂積層体の製造工程図
【符号の説明】
11…樹脂板、12…熱可塑性シート、13…ガラス板、14…積層体、25、40…オーブン装置、30、50…片面強制冷却装置、35…ストレートローラ、55…ピンチローラ。
Claims (5)
- 樹脂板に熱可塑性シートを介してガラス板を重ねて積層体にする工程と、
この積層体を加圧・加熱することで前記熱可塑性シートを軟化させ、この軟化した熱可塑性シートでガラス板と樹脂板とを接着し、この後に冷却する接着・一体化工程と、
得られた積層体を、前記熱可塑性シートが軟化するまで加熱する再加熱工程と、
高温の積層体に外力を付与することにより平坦にする平坦化工程と、
前記外力を付与したままで、ガラス板より樹脂板を急速冷却する不均等冷却工程と、からなるガラス・樹脂積層体の製造方法。 - 前記不均等冷却工程では、樹脂板に冷却用液体を接触させることを特徴とする請求項1記載のガラス・樹脂積層体の製造方法。
- 前記冷却用液体は、水であることを特徴とする請求項2記載のガラス・樹脂積層体の製造方法。
- 前記平坦化工程は、上下対のストレートローラを多段並べ、上下ローラ間に高温の積層体を挟みながら走行させることで実施することを特徴とする請求項1記載のガラス・樹脂積層体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載のガラス・樹脂積層体の製造方法で製造したことを特徴とするガラス・樹脂積層体。
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---|---|---|---|
JP2002280467A JP2004114481A (ja) | 2002-09-26 | 2002-09-26 | ガラス・樹脂積層体の製造方法およびガラス・樹脂積層体 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007029541A1 (ja) * | 2005-09-01 | 2007-03-15 | Sekisui Chemical Co., Ltd. | 一部がプラスチック板からなる合わせガラスの製造方法、および合わせガラス |
JP2013037207A (ja) * | 2011-08-09 | 2013-02-21 | Nitto Denko Corp | 表示装置用保護基板 |
-
2002
- 2002-09-26 JP JP2002280467A patent/JP2004114481A/ja active Pending
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WO2007029541A1 (ja) * | 2005-09-01 | 2007-03-15 | Sekisui Chemical Co., Ltd. | 一部がプラスチック板からなる合わせガラスの製造方法、および合わせガラス |
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