JP2004114468A - インクジェット記録体 - Google Patents
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Abstract
【課題】インクジェットプリンターで印字した際、インク吸収性に優れ、銀塩写真同等の高い光沢度と画像鮮鋭度を有し、かつ、塗工層の粉落ちがなく、更に、インク受容性水性塗工層の塗工量を抑えてその塗工工程の生産性を向上させ、コストを低減したインクジェット記録体を提供する。
【解決手段】支持体上に溶融押出塗工された、一次粒子の平均粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性熱可塑性樹脂とを含む親水性樹脂組成物層と、その上に設けられた水性塗工層よりなるインク受容層を含むインクジェット記録体で、好ましくは、親水性熱可塑性樹脂層が無機微粒子を20〜80質量%、エチレン共重合体比率が40モル%以下のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含み、支持体が紙に耐水性樹脂組成物を被覆した耐水性樹脂被覆紙である。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に溶融押出塗工された、一次粒子の平均粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性熱可塑性樹脂とを含む親水性樹脂組成物層と、その上に設けられた水性塗工層よりなるインク受容層を含むインクジェット記録体で、好ましくは、親水性熱可塑性樹脂層が無機微粒子を20〜80質量%、エチレン共重合体比率が40モル%以下のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含み、支持体が紙に耐水性樹脂組成物を被覆した耐水性樹脂被覆紙である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録体に関し、特に、インク吸収性に優れ、銀塩写真と同等の高い光沢度と画像鮮鋭度を有し、かつ塗工層の粉落ちのないフォトグレードのインクジェット記録体に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々の方式によりインクの微少液滴を飛翔させて紙やプラスチックシート等の記録シートに付着させ、画像・文字等の記録を行うものであるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像−定着処理が不要等の特徴があり、パーソナルコンピューターの出力プリンターやファクシミリ、或いは複写機の出力方式として急速に普及している。更に、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して遜色のない記録を得ることが可能である。パーソナルコンピューターの高性能化やマルチメディアの普及により、文書だけでなくカラー画像のプリント出力が行われる機会が増加し、インク吸収性に優れ、銀塩写真と同等の高い光沢度と画像鮮鋭度を有する記録画像が得られるインクジェット記録体に対するニーズが高まっている。
【0003】
インクジェット記録方式に使用される記録用シートとして、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質インク吸収層を設けてなる記録用シートが知られている。
【0004】
従来の公開された技術として、シリカ等の含珪素多孔質顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗工して得られる記録シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、気相法による合成シリカ微粒子を水系バインダーと共に塗工して空隙の多いインク受容層を形成させ、カラー画像にも十分対応できるようインク吸収性を高める技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これら塗工紙タイプのインクジェット記録体は、紙にインク記録層を塗布乾燥する工程で、紙の地合ムラに基づく収縮ムラが発生し、表面にボコツキが現れるため光沢が不足したり、或いはインク吸収性顔料の配合量を多くすると、顔料粒子に起因したザラツキが生じて光沢が低下するなどの問題があった。また、インクジェット記録後の問題として、水性インクで印字された場合浸透してきたインクによって、支持体層の木材パルプが伸縮することにより凹凸が発生し、やはり光沢や官能的に評価される美観の低下となるという問題があった。
【0005】
また従来技術として、キャストコート方式により強光沢を有するインクジェット記録紙が開示されている(例えば、特許文献3参照)。このキャストコート方式で製造したインクジェット記録紙は、塗工層を鏡面ドラムに押しつけて乾燥するためボコツキの発生は少なく高い光沢が得られるが、インクジェット記録後にはインクの浸透によって木材パルプが伸縮することに起因する凹凸が発生し、光沢等の品位が低下することは、他の塗工紙タイプのインクジェット記録紙と同様であった。
【0006】
これらインクの基紙への浸透問題に対しては、従来、写真用原紙として使用されている耐水性樹脂被覆紙に類似した支持体を使用し、無機微粒子を含むインクジェット受容層を耐水性樹脂被覆紙に塗布してインク吸収性と耐水性を両立した発明が提案されている(例えば、特許文献4参照)。この様な耐水性樹脂被覆紙を使用した場合、写真印画紙に匹敵する高光沢のインクジェット紙が得られるものの、カラー画像記録に必要なインク量を吸収保持するのは耐水性樹脂被覆層上のインク受容層だけであるため、厚いインク受容層を設ける必要があり、およそ20g/m2 を超える塗工量にする必要がある。この様にインク吸収のための空隙を有する多量な塗工層を設けることにより、インクジェットプリンターでの処理中やその前後の取扱中に塗工層の粉落ちが生じやすいと言う問題があった。また、十分な塗工量を得るためには、塗料濃度を高めるか、或いはウエット塗工量を多くする必要があるが、これらの塗料は濃度を高めると粘度が急激に高くなるため、通常その濃度は20重量%程度が限度であり、従ってウエット塗工量を多くしなくてはならず、ウエット塗工量を多くすると、塗工機の乾燥負荷が高まり、急速に乾燥すればひび割れ等が生じて良好な塗工面が得られず、均一な塗工面が得られるよう徐々に乾燥すれば生産性が極めて低下してしまうという、生産上の大きなネックがあった。
【0007】
これに対し、親水性を有しかつ熱可塑性を有する樹脂を含有する層を溶融押出塗工法により形成し、これをインク受容層とする技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。なお、これら特許に記載された親水性を有する樹脂は包装用等のラミネート製品用に、また一部は写真印画紙等の記録紙の支持体用に溶融押出塗工されることは公知である。これら特許に記載された態様は、溶融押出塗工された親水性熱可塑性樹脂層に、インクを吸収する役割と、原紙層へのインクの浸透を抑制してボコツキを抑え表面光沢を確保する役割の両方の役割を持たせて、耐水性樹脂被覆紙上にインク受容性水性塗工層を設けたインクジェット記録紙と同等の性能を持たせたり、或いは親水性熱可塑性樹脂層の上に設けるインク受容性水性塗工層を軽度なものにして、インクジェット記録紙の塗工生産性を改善しようとするものであると解釈できる。しかしながら、親水性熱可塑性樹脂層によるインクの吸収はその樹脂の吸水膨潤によるものであるため、空隙を有するインク受容層に比して吸収速度は遅く、カラーインクジェットの如く多量のインクを短時間に吸収乾燥する上では到底満足されるものではない。また、親水性熱可塑性樹脂のインク吸収による膨潤とその後の水分放出による収縮過程を経て樹脂層は変形してボコツキを生じ、写真印画紙レベルの高い光沢を確保することはとても困難である。結局、インク吸収速度も光沢も中途半端な記録紙にとどまらざるを得ない。
【0008】
【特許文献1】
特開昭55−51583号公報(第2頁)
【特許文献2】
特公平3−56552号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開昭63−265680号公報(第3頁)
【特許文献4】
特開平9−323475号公報(第3頁)
【特許文献5】
特開平9−216456号公報(第3〜4頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決し、インクジェットプリンターで印字した場合、インク吸収性に優れ、銀塩写真同等の高い光沢度と画像鮮鋭度を有し、かつ塗工層の粉落ちのないインクジェット記録体を提供する。更に、インク受容性水性塗工層の塗工量を抑えてその塗工工程の生産性を向上させ、コストを低減したインクジェット記録紙を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題を鋭意検討した結果、特定の無機微粒子を親水性熱可塑性樹脂層に含有させ溶融押出成形した塗工層を設けることによって、無機微粒子の多孔性と樹脂の吸水性とが適切に組み合わさってインクの吸収速度を高め、かつ樹脂のインクによる膨潤が抑制されてインクジェット記録体としての高い光沢を確保できることを見出し、本発明に至った。本発明は下記の態様を含む。
▲1▼ 支持体にインク受容層を設けたインクジェット記録体において、支持体上に溶融押出塗工された、一次粒子の平均粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性熱可塑性樹脂とを含む親水性樹脂組成物層と、その上に設けられた水性塗工層よりなるインク受容層を含むことを特徴とするインクジェット記録体。
【0011】
▲2▼ 無機微粒子を親水性熱可塑性樹脂に対し20質量%〜80質量%含有することを特徴とする▲1▼記載のインクジェット記録体。
【0012】
▲3▼ 無機微粒子が合成シリカであることを特徴とする▲1▼または▲2▼記載のインクジェット記録体
【0013】
▲4▼ 親水性熱可塑性樹脂層がエチレン共重合体比率が40モル%以下のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする▲1▼、▲2▼または▲3▼記載のインクジェット記録体。
【0014】
▲5▼ 水性塗工層中の塗工量が20g/m2以下であることを特徴とする▲1▼、▲2▼、▲3▼または▲4▼記載のインクジェット記録体。
【0015】
▲6▼ 支持体が紙に耐水性樹脂組成物を被覆した耐水性樹脂被覆紙であることを特徴とする▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼または▲5▼記載のインクジェット記録紙。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録体は、通常の押出ラミネーションと同様に、支持体の表面に無機微粒子を含み熱可塑性を有する親水性樹脂組成物を溶融押出塗工法により塗工し、塗工された溶融親水性樹脂組成物層を回転するクーリングロールの周面に押圧しながら冷却固化して樹脂塗工紙を得、その上に多孔質顔料とバインダーを含む水性塗工層を塗布して得られる。
【0017】
本発明に使用できる親水性熱可塑性樹脂は、溶融押出塗工適性があり、かつインクジェット記録用インクを吸収できる親水性樹脂であれば、その1種類或いは2種類以上を適宜選択して使用できる。押出塗工可能な親水性熱可塑性樹脂としては、従来から、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエチレングリコール共重合体樹脂等が知られており、これらの中からインクジェット記録用として適当なインク吸収性のある樹脂を適宜選択すればよい。この中でも、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂で、エチレンユニットのモル比率が40モル%以下であるものが好ましい。
【0018】
本発明に用いられる親水性熱可塑性樹脂に含有させる無機微粒子は、一次粒子の平均粒径が30nm以下の無機微粒子である。この様な微細な無機粒子は一次粒子が凝集して二次粒子を形成し、その内部に多量の空隙を含有しており、そのBET法による比表面積は100m2/g以上、好ましくは200m2/g以上ある。この空隙が適度にインク吸収の役割を果たし、親水性熱可塑性樹脂と一緒に溶融押出塗工してインク受容層として用いることにより、インク吸収速度を高めることができる。またこの無機微粒子の空隙へのインク吸収により親水性熱可塑性樹脂のインク吸収による膨潤を抑えることができ、また微粒子であるため樹脂層の表面を荒らすことがないので、高い光沢を達成することが出来るのである。ここで言うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものはBrunauer、Emmett、Tellerの式であって、BET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面でしめる面積を掛けて、表面積が得られる。
【0019】
本発明に用いられる平均一次粒径が30nm以下の無機微粒子としては、親水性熱可塑性樹脂中に分散することが出来るものであれば特に制限はないが、合成シリカを好ましく用いることが出来る。上記の平均一次粒子径を有する合成シリカは、一次粒子が凝集した二次粒子の内部にnm単位の空隙を多数含有し、また二次粒子が集まった集合体のあいだには1μm位までの大きさの空隙が存在しインクの吸収に好都合な構造となっている。合成シリカには湿式法と気相法によるものとがある。湿式シリカとしては▲1▼ケイ酸ナトリウムと硫酸を酸性領域で反応させて得られるゲルタイプのもの、▲2▼ケイ酸ナトリウムと硫酸をアルカリ領域で反応させて得られるゾルタイプのもの、▲3▼このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ等がある。ゲルタイプのものは、高い剪断力を受けても二次粒子が崩壊しにくいので、本発明の如く樹脂中に混練分散させて用いるにはより好ましい。乾式法シリカは日本シリカ株式会社等から市販されている。気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が知られている。気相法シリカは株式会社トクヤマ等から市販されている。
【0020】
本発明の実施に用いられる無機微粒子を押出塗工される親水性熱可塑性樹脂中に含有せしめる方法としては、予め無機微粒子を樹脂中に一定濃度に含有させた所謂マスターバッチを作成し、それを希釈用の樹脂で所望の割合に希釈混合して使用するか、或いは無機微粒子を所望の組成比だけ含有させた所謂コンパウンドを作成して使用するのが適当であるが、マスターバッチとして含有せしめるのが好ましい。無機微粒子を樹脂に含有させるに当たり樹脂中への分散性をよくするため、必要に応じてその無機微粒子の表面を予め無機化合物または有機化合物で被覆処理しても良い。このための無機化合物としては酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム等が、有機化合物としては多価アルコールやその誘導体、ポリオルガノシロキサンやその誘導体等が用いられる。表面被覆処理の量は無機微粒子に対し0.1質量%〜2.0質量%の範囲、好ましくは0.3質量%〜1.5質量%の範囲である。これらのマスターバッチ、コンパウンドを作成するには通常、バンバリーミキサー、ニーダー、混練用押出機、ロール練り機等が用いられる。また、これらの各種混練機を二種類以上組み合わせて使用しても良い。
【0021】
無機微粒子のマスターバッチまたはコンパウンドの調製に際し、適切な滑剤の存在下に調製を行うのが好ましい。具体的には、滑剤としてはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛等の脂肪族金属塩を用いるのが好ましく、特にステアリン酸亜鉛または/及びステアリン酸マグネシウムが好ましい。また、その存在量としては、無機微粒子に対して0.1質量%〜10質量%の範囲が有効であり、1質量%〜5質量%の範囲が好ましい。
【0022】
また、無機微粒子のマスターバッチまたはコンパウンドの調製に際し、適量の適切な酸化防止剤の存在下に調製を行うのが好ましい。具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、ヒンダードアミン等の各種酸化防止剤を適量存在せしめるのが好ましい。無機微粒子のマスターバッチまたはコンパウンドを調製中の酸化防止剤の存在量としては、50ppm〜1500ppmの範囲が好ましいが、120ppm〜950ppmの範囲が更に好ましい。
【0023】
本発明に用いられる無機微粒子の親水性熱可塑性樹脂中への配合量は樹脂量に対し20質量%〜80質量%の範囲が好ましく、30質量%〜60質量%の範囲がより好ましい。配合量が20質量%未満では無機微粒子によるインク吸収力が少なく、親水性熱可塑性樹脂の膨潤吸収に依存する度合いが多くなり、優れた吸収速度は得られない。配合量が80質量%を超えるとインク吸収力はより高まるが、樹脂中への均一な分散が困難となり、押出塗工された親水性熱可塑性樹脂組成物層の表面がざらつく等して必要な光沢が得にくくなる他、樹脂を押出塗工する押出機のダイスリップに汚れを生じて正常な塗工を困難にしてしまう。
【0024】
本発明の親水性熱可塑性樹脂と無機微粒子から成る親水性樹脂組成物には、必要に応じて汎用樹脂、天然高分子材料、顔料、各種添加剤等を適宜配合することが出来る。汎用樹脂または天然高分子材料の配合量は親水性熱可塑性樹脂に対して0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、配合により、樹脂組成物の溶融流動性を改善し、押出加工適性を向上すること等ができる。
【0025】
配合可能な汎用樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等またはそれらの混合物が挙げられる。天然高分子材料としては、セルロース系高分子、澱粉系高分子、タンパク質系高分子等またはそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本発明の無機微粒子以外の配合可能な顔料としては、二酸化チタン、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、プラスチックピグメント等またはこれらの混合物が挙げられる。これらの顔料は本発明の無機微粒子の機能を損なわない範囲で配合できるが、親水性熱可塑性樹脂に対し、1質量%〜20質量%の範囲の配合量であることが好ましい。これらの顔料は、本発明の実施に用いられる無機微粒子のマスターバッチまたはコンパウンド中に併用含有せしめるか、或いは別途の樹脂のマスターバッチまたはコンパウンドとして含有せしめるのが好ましい。
【0027】
その他の添加剤として、染料、着色顔料、蛍光増白剤、滑剤、離型剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、耐水化剤等の1種類または2種類以上を適宜選択して、少量を配合することができる。これらの添加剤は、本発明の実施に用いられる無機微粒子のマスターバッチまたはコンパウンド中に併用含有せしめるか、或いは別途の樹脂のマスターバッチまたはコンパウンドとして含有せしめるのが好ましい。
【0028】
前記の親水性熱可塑性樹脂と無機微粒子を主体とする親水性樹脂組成物は、溶融押出機を用いて溶融され、走行する基紙上に押出機のスリットダイからフィルム状に流延して塗工される。その際、溶融フィルムの温度は180℃〜220℃の範囲であることが好ましい。この温度が180℃より低いと溶融押出機内での流動性やシート状溶融体の延展性に乏しく、また支持体との接着も弱く、加工に適さない。また、220℃より高いと、場合により樹脂が分解する恐れがある。本発明の実施に用いられる親水性熱可塑性樹脂の融点(JIS K7121)は溶融押出塗工できれば特に限定しないが、210℃以下が好ましい。また、親水性熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR、JIS K7210)は、温度190℃、荷重2160gにおいて1〜50g/10min、好ましくは2〜20g/10minである。MFRが小さいと、溶融押出機のトルクが大きくなりすぎたり、樹脂が熱劣化するなどの不都合が生じることがある。また、大きいと、押出樹脂量が不安定になり、安定操業できないなどの不都合が生じる場合がある。
【0029】
支持体上に形成される前記親水性樹脂組成物の塗工量は、特に限定しないが、10〜100g/m2の範囲で溶融押出塗工される。塗工量が少ないと、親水性樹脂組成物の製膜性が悪く均一な塗工面が得られなかったり、支持体との接着性が劣る場合がある。逆に塗工量が多いと、インク吸収性は向上するが、多くしてもそれ以上の効果は期待できないだけでなく、記録材料として厚くなりすぎ、必要以上にコストが高くなり実用的でない。実用的に見て好ましい範囲は20g/m2〜50g/m2である。
【0030】
前記親水性樹脂組成物とシート状支持体とを十分に接着させるため、必要に応じて、支持体表面に薬剤によるアンカー処理を施したり、支持体表面をコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理等で活性化処理することもできる。また、溶融押出塗工の際に、前記樹脂組成物の溶融フィルムの支持体と接する側の面にオゾン含有ガスを吹き付けた後、支持体に塗工することもできる。
【0031】
支持体としての紙基体の片面もしくは両面を耐水性樹脂組成物で被覆した樹脂被覆紙を用いた場合は、より高い光沢度や画像鮮鋭度が得られる。この被覆に用いられる耐水性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂、トリアセテート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等が用いられるが、被覆加工の容易性やコストからポリオレフィン樹脂が好ましい。特に好ましいポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びこれらの混合物である。これらの耐水性樹脂の大部分は溶融押出塗工法で紙基体への被覆を行うことができる。
【0032】
上記被覆層に用いられる耐水性樹脂組成物には、白色度、色調、隠蔽性等の性能を向上させる目的で、白色顔料、着色顔料、蛍光増白剤、酸化防止剤、滑剤、離型剤等の各種添加剤を配合することもできる。また、帯電防止、印字性、筆記性等を付与する目的で裏面側被覆層の表面にバックコート層を設けることもできる。
【0033】
紙基体上に耐水性樹脂組成物を被覆する工程、及びそうして製造された支持体上に親水性樹脂組成物を塗工する工程で使用する溶融押出装置としては、一般にラミネーターと呼ばれる溶融押出機を使用することができる。ラミネーターは熱可塑性樹脂組成物(耐水性樹脂組成物及び親水性樹脂組成物)を押出機、スリットダイを通してフィルム状に流延して支持体に塗工し、これを回転する金属性のクーリングロール周面にバックアップロールで圧着しながら冷却固化して樹脂塗工紙を得るものである。本発明のインクジェット記録体はコエクストルージョンラミネート法またはタンデムラミネート法を用いて、紙基体に耐水性樹脂被覆層と親水性樹脂組成物層とを同時に設けることができる。
【0034】
本発明のインクジェット記録体は、前記親水性樹脂組成物層の上に、インク受容性の水性塗工層を設けてなるが、このインク受容性水性塗工層としては、多孔質顔料と水溶性ないし水分散性バインダーからなるインク吸収性塗工層等、公知のものを適宜使用することができるが、本発明の目的である写真印画紙同等の高い光沢度と画像鮮鋭性をを得る上では、気相法合成シリカ微粒子とポリビニルアルコールバインダーを含んでなる水性塗工層が好ましい。水性塗工層には、この他に着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、硬膜剤、界面活性剤、レベリング剤等、公知の各種添加剤を添加できる。水性塗工層は1層または複数の層として適用することができる。塗工はブレード、エアナイフ、カーテン、スライドカーテン等の方法で行われる。水性塗工層と親水性樹脂組成物層との接着をよくするため、必要に応じて予め親水性樹脂組成物層の表面をコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等で活性化処理することもできる。
【0035】
本発明に用いられる水性塗工層の塗工量は、本発明の目的を達成するためには、インク吸収速度が満足される範囲でできるだけ少ないことが好ましく、具体的には20g/m2以下の範囲が好ましい。20g/m2を超えると、塗工層の粉落ちが生じる恐れがあると共に、塗工工程での乾燥負荷が大きくなって生産性が低下すると言う問題が生じる。水性塗工層の下層として設けられた本発明のインク吸収速度の高い親水性樹脂組成物層の助けで、この水性塗工層の設計を合理化し、生産性を飛躍的に高めることができる。
【0036】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に説明する。
【0037】
実施例1
LBKP80部とLBSP20部のパルプ配合からなる坪量150g/m2の紙を抄造し、その紙の表面に低密度ポリエチレン70部、高密度ポリエチレン20部及び酸化チタン10部から成る耐水性樹脂組成物25g/m2を、その紙の裏面に低密度ポリエチレン50部と高密度ポリエチレン50部から成る耐水性樹脂組成物25g/m2を、それぞれ溶融押出塗工して耐水性樹脂被覆紙を作成した。その際、二酸化チタンを含む表面の耐水性樹脂層の表面は鏡面に、裏の耐水性樹脂層の表面はマット面に加工した。
更にこの耐水性樹脂被覆紙の裏面耐水性樹脂層上に、コロナ放電処理後、ゼラチン:二酸化珪素マット化剤=3:1から成り、対ゼラチン15質量%のエポキシ系硬膜剤と適量の帯電防止剤を含むバックコート層を固形分で1g/m2となるよう塗工して、インクジェット記録紙用支持体を得た。
【0038】
次に、無機微粒子である一次粒子径30nmの合成シリカ((株)日本シリカ製湿式法シリカ、NIPSIL K−500、BET比表面積100m2/g)50部に親水性熱可塑性樹脂であるエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂((株)日本合成製、ソアノールDC3203,エチレン共重合体比率32モル%)48部、ステアリン酸亜鉛2部及び少量の酸化防止剤を混合して、バンバリーミキサーを用いて150℃にて混練し、冷却、ペレット化して、合成シリカのマスターバッチを得た。
【0039】
次いで、前記支持体の表側ポリエチレン樹脂被覆層の表面に、コロナ放電処理を施した後、親水性熱可塑性樹脂であるエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂((株)日本合成製、ソアノールDC3203エチレン共重合体比率32モル%)と前記合成シリカの親水性熱可塑性樹脂ベースのマスターバッチとを、合成シリカの親水性熱可塑性樹脂に対する配合比率が40質量%となるように混合して、100℃で2時間乾燥した後,L/D=30,圧縮比=3の溶融押出機に供給し、溶融温度220℃、加工速度100m/分にて塗工量30g/m2となるよう溶融押出塗工すると共に、鏡面仕上げを施したコーリングロールに圧接、冷却して鏡面光沢のある親水性樹脂組成物層を形成した。
【0040】
更に、上記親水性樹脂組成物層の表面に、コロナ放電処理を施した後、気相法シリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル380)100部、ポリビニルアルコール((株)クラレ製,PVA235)20部、硼酸(特級試薬)3部及び両性界面活性剤0.3部から成るインク受容性水性塗工液をカーテンコーターにて固形分が20g/m2となるよう塗工して、インクジェット記録体を得た。この塗工液の製造は、水:エチルアルコール=20:1の分散媒に気相法シリカを高圧ホモジナイザーで分散した後硼酸、ポリビニルアルコール、界面活性剤を添加して塗工液(合計の固形分濃度10重量%)を作った。
【0041】
実施例2
前記実施例1の合成シリカを一次粒子径10nmである(株)日本シリカ製湿式法シリカのNIPGEL AZ−200に代える以外同様にして作成した。
【0042】
実施例3
前記実施例1の合成シリカを一次粒子径6nmである(株)日本シリカ製湿式法シリカのNIPGEL BZ−200に代える以外同様にして作成した。
【0043】
実施例4
前記実施例1の合成シリカを一次粒子径15nmのγ形酸化アルミニウム(三井住友化学(株)製 AKP−G015)に代える以外同様にして作成した。
【0044】
実施例5
前記実施例1の耐水性樹脂被覆紙である支持体の代わりに,耐水性樹脂被紙の基紙に用いたと同じLBKP80部とLBSP20部のパルプ配合からなる150g/m2の紙を支持体として用いた以外、同様にして作成した。
【0045】
比較例1
前記実施例1の合成シリカを一次粒子径60nmである(株)日本シリカ製湿式法シリカのNIPSIL E−75に代える以外同様にして作成した。
【0046】
比較例2
前記実施例1の合成シリカを一次粒子径55nmのγ形酸化アルミニウム(Condea Chemie社製 Puralox SBa)に代える以外同様にして作成した。
【0047】
比較例3
前記実施例1において、合成シリカのマスターバッチを配合せずにエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂のみを溶融押出塗工して親水性樹脂組成物層を形成した以外は同様にして作成した。
【0048】
比較例4
前記実施例1で使用したポリエチレン樹脂被覆紙からなるインクジェット記録紙用支持体を使用し、その表側ポリエチレン樹脂被覆層の表面に、コロナ放電処理を施した後、実施例1で用いたと同じインク受容性水性塗工層を、固形分塗工量が40g/m2となるようカーテンコーターで塗工して、インクジェット記録体を得た。
【0049】
比較例5
前記比較例4の水性塗工層の固形分塗工量を20g/m2とした以外は、比較例4と同様に作成した。
【0050】
評価
得られたインクジェト記録体について、下記の評価を行った。なお、インクジェット記録はセイコーエプソン(株)製PM−770Cカラープリンターを用いて20℃,65%RHの条件下で行った。その結果を表1に示す。
【0051】
インク吸収性
インクジェット記録直後の重色印刷部分を指で擦り、インク部分の擦れ汚れからインクの乾燥性を目視で判定した。
【0052】
光沢
インクジェット記録シートの画像部及び非画像部の光沢を目視で判定した。
【0053】
画像鮮鋭度
画像をインクジェット記録して元の画像と対比し、その鮮鋭度を目視で判定した。
【0054】
塗工層の粉落ち
インクジェット記録をする前の記録シートの表面を指で擦って、その表面からの粉落ちの程度を目視で判定した。
【0055】
上記品質評価の評価基準は、次の通りである。
◎:問題点がなく、優れている。
○:良好である。
△:実用限界内である。
×:劣る。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果から、耐水性樹脂被覆紙を支持体に用い、一次粒子の平均粒径が30nm以下の無機微粒子を親水性樹脂組成物層に用いた本発明によるインクジェット記録体は、インク吸収性、光沢、画像鮮鋭性、塗層粉落ちが良好であり、特に一次粒子径が15nm以下の無機微粒子を用いた場合はそれらの品質が優れていることが分かる。また、紙を支持体に用いた同様の本発明のインクジェット記録体は、耐水性樹脂被覆紙を支持体に用いた場合よりは劣るが、実用限度内であることが分かる。
比較例1,2の一次粒子が30nmを超える平均粒径である無機微粒子を用いた場合は、インク吸収性は良いが光沢等が不十分であり、比較例3の無機微粒子を配合しない親水性樹脂組成物を適用した場合は満足な品質は得られないことが分かる。
更に比較例4,5の耐水性樹脂被覆紙に直接インク受容性水性塗工層を設けたものは、その水性塗工層の塗工量が40g/m2と多いものではインク吸収性や光沢は優れるが塗層粉落ちに問題があり、塗工量が20g/m2と少ないものでは、粉落ちは良くてもインクジェット記録紙としての必要性能が得られないことが分かる。
【0058】
実施例6〜10
前記実施例2の一次粒子径10nmの合成シリカを使用し、その合成シリカの親水性熱可塑性樹脂に対する配合量を表2に記載した配合量とした以外は実施例2と同様に実施した。
得られた結果を実施例2の結果を加えて表2に示す。評価方法及び評価基準はは前記の実施例1〜5及び比較例1〜5の場合と同じである。
【0059】
【表2】
【0060】
表2の結果から、本発明における無機微粒子の親水性熱可塑性樹脂に対する配合率は、20質量%〜80質量%の範囲が好ましく、40質量%〜60質量%の範囲が特に好ましいことが分かる。
【0061】
実施例11
前記実施例2の親水性熱可塑性樹脂であるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ソアノールDC3203の代わりにソアノールA4412(エチレン共重合体比率44モル%)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0062】
実施例12
前記実施例2の親水性熱可塑性樹脂であるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ソアノールDC3203の代わりにソアノールD2908(エチレン共重合体比率29モル%)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
実施例11,12の結果を実施例2の結果を加えて表3に示す。評価方法及び評価基準は前記の実施例1〜5及び比較例1〜5の場合と同じである。
【0063】
【表3】
【0064】
表3の結果から、本発明における親水性熱可塑性樹脂であるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂のエチレン共重合体比率は、本発明のインクジェット記録体としての性能上、40モル%以下が好ましいことが分かる。
【0065】
実施例13〜15
前記実施例2のインク受容性水性塗工層の塗工量を、表4に記載した塗工量とした以外は、実施例2と同様に実施した。
得られた結果を実施例2及び比較例4、5の結果を加えて表4に示す。評価方法及び評価基準は前記の実施例1〜5及び比較例1〜5の場合と同じである。
【0066】
【表4】
【0067】
表4の結果から、本発明におけるインク受容性水性塗工層の塗工量は、塗工層の粉落ちの点から,20g/m2以下であることが好ましいことが分かる。
また,本発明は水性塗工層塗工量が20g/m2以下で所期の品質性能を発揮できるので、塗工工程の乾燥負荷が小さくなり、その生産性を大幅に向上させることができる。
【0068】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録体は、支持体上に溶融押出塗工された、一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性熱可塑性樹脂とを含む親水性樹脂組成物と、その上に設けられた水性塗工層よりなるインク受容層によって形成されることにより、インク吸収性が良く、写真印画紙同等の高い光沢と画像鮮鋭度を有し、かつ塗層粉落ちの生じない優れたインクジェット記録体を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録体に関し、特に、インク吸収性に優れ、銀塩写真と同等の高い光沢度と画像鮮鋭度を有し、かつ塗工層の粉落ちのないフォトグレードのインクジェット記録体に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々の方式によりインクの微少液滴を飛翔させて紙やプラスチックシート等の記録シートに付着させ、画像・文字等の記録を行うものであるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像−定着処理が不要等の特徴があり、パーソナルコンピューターの出力プリンターやファクシミリ、或いは複写機の出力方式として急速に普及している。更に、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して遜色のない記録を得ることが可能である。パーソナルコンピューターの高性能化やマルチメディアの普及により、文書だけでなくカラー画像のプリント出力が行われる機会が増加し、インク吸収性に優れ、銀塩写真と同等の高い光沢度と画像鮮鋭度を有する記録画像が得られるインクジェット記録体に対するニーズが高まっている。
【0003】
インクジェット記録方式に使用される記録用シートとして、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質インク吸収層を設けてなる記録用シートが知られている。
【0004】
従来の公開された技術として、シリカ等の含珪素多孔質顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗工して得られる記録シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、気相法による合成シリカ微粒子を水系バインダーと共に塗工して空隙の多いインク受容層を形成させ、カラー画像にも十分対応できるようインク吸収性を高める技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これら塗工紙タイプのインクジェット記録体は、紙にインク記録層を塗布乾燥する工程で、紙の地合ムラに基づく収縮ムラが発生し、表面にボコツキが現れるため光沢が不足したり、或いはインク吸収性顔料の配合量を多くすると、顔料粒子に起因したザラツキが生じて光沢が低下するなどの問題があった。また、インクジェット記録後の問題として、水性インクで印字された場合浸透してきたインクによって、支持体層の木材パルプが伸縮することにより凹凸が発生し、やはり光沢や官能的に評価される美観の低下となるという問題があった。
【0005】
また従来技術として、キャストコート方式により強光沢を有するインクジェット記録紙が開示されている(例えば、特許文献3参照)。このキャストコート方式で製造したインクジェット記録紙は、塗工層を鏡面ドラムに押しつけて乾燥するためボコツキの発生は少なく高い光沢が得られるが、インクジェット記録後にはインクの浸透によって木材パルプが伸縮することに起因する凹凸が発生し、光沢等の品位が低下することは、他の塗工紙タイプのインクジェット記録紙と同様であった。
【0006】
これらインクの基紙への浸透問題に対しては、従来、写真用原紙として使用されている耐水性樹脂被覆紙に類似した支持体を使用し、無機微粒子を含むインクジェット受容層を耐水性樹脂被覆紙に塗布してインク吸収性と耐水性を両立した発明が提案されている(例えば、特許文献4参照)。この様な耐水性樹脂被覆紙を使用した場合、写真印画紙に匹敵する高光沢のインクジェット紙が得られるものの、カラー画像記録に必要なインク量を吸収保持するのは耐水性樹脂被覆層上のインク受容層だけであるため、厚いインク受容層を設ける必要があり、およそ20g/m2 を超える塗工量にする必要がある。この様にインク吸収のための空隙を有する多量な塗工層を設けることにより、インクジェットプリンターでの処理中やその前後の取扱中に塗工層の粉落ちが生じやすいと言う問題があった。また、十分な塗工量を得るためには、塗料濃度を高めるか、或いはウエット塗工量を多くする必要があるが、これらの塗料は濃度を高めると粘度が急激に高くなるため、通常その濃度は20重量%程度が限度であり、従ってウエット塗工量を多くしなくてはならず、ウエット塗工量を多くすると、塗工機の乾燥負荷が高まり、急速に乾燥すればひび割れ等が生じて良好な塗工面が得られず、均一な塗工面が得られるよう徐々に乾燥すれば生産性が極めて低下してしまうという、生産上の大きなネックがあった。
【0007】
これに対し、親水性を有しかつ熱可塑性を有する樹脂を含有する層を溶融押出塗工法により形成し、これをインク受容層とする技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。なお、これら特許に記載された親水性を有する樹脂は包装用等のラミネート製品用に、また一部は写真印画紙等の記録紙の支持体用に溶融押出塗工されることは公知である。これら特許に記載された態様は、溶融押出塗工された親水性熱可塑性樹脂層に、インクを吸収する役割と、原紙層へのインクの浸透を抑制してボコツキを抑え表面光沢を確保する役割の両方の役割を持たせて、耐水性樹脂被覆紙上にインク受容性水性塗工層を設けたインクジェット記録紙と同等の性能を持たせたり、或いは親水性熱可塑性樹脂層の上に設けるインク受容性水性塗工層を軽度なものにして、インクジェット記録紙の塗工生産性を改善しようとするものであると解釈できる。しかしながら、親水性熱可塑性樹脂層によるインクの吸収はその樹脂の吸水膨潤によるものであるため、空隙を有するインク受容層に比して吸収速度は遅く、カラーインクジェットの如く多量のインクを短時間に吸収乾燥する上では到底満足されるものではない。また、親水性熱可塑性樹脂のインク吸収による膨潤とその後の水分放出による収縮過程を経て樹脂層は変形してボコツキを生じ、写真印画紙レベルの高い光沢を確保することはとても困難である。結局、インク吸収速度も光沢も中途半端な記録紙にとどまらざるを得ない。
【0008】
【特許文献1】
特開昭55−51583号公報(第2頁)
【特許文献2】
特公平3−56552号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開昭63−265680号公報(第3頁)
【特許文献4】
特開平9−323475号公報(第3頁)
【特許文献5】
特開平9−216456号公報(第3〜4頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決し、インクジェットプリンターで印字した場合、インク吸収性に優れ、銀塩写真同等の高い光沢度と画像鮮鋭度を有し、かつ塗工層の粉落ちのないインクジェット記録体を提供する。更に、インク受容性水性塗工層の塗工量を抑えてその塗工工程の生産性を向上させ、コストを低減したインクジェット記録紙を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題を鋭意検討した結果、特定の無機微粒子を親水性熱可塑性樹脂層に含有させ溶融押出成形した塗工層を設けることによって、無機微粒子の多孔性と樹脂の吸水性とが適切に組み合わさってインクの吸収速度を高め、かつ樹脂のインクによる膨潤が抑制されてインクジェット記録体としての高い光沢を確保できることを見出し、本発明に至った。本発明は下記の態様を含む。
▲1▼ 支持体にインク受容層を設けたインクジェット記録体において、支持体上に溶融押出塗工された、一次粒子の平均粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性熱可塑性樹脂とを含む親水性樹脂組成物層と、その上に設けられた水性塗工層よりなるインク受容層を含むことを特徴とするインクジェット記録体。
【0011】
▲2▼ 無機微粒子を親水性熱可塑性樹脂に対し20質量%〜80質量%含有することを特徴とする▲1▼記載のインクジェット記録体。
【0012】
▲3▼ 無機微粒子が合成シリカであることを特徴とする▲1▼または▲2▼記載のインクジェット記録体
【0013】
▲4▼ 親水性熱可塑性樹脂層がエチレン共重合体比率が40モル%以下のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする▲1▼、▲2▼または▲3▼記載のインクジェット記録体。
【0014】
▲5▼ 水性塗工層中の塗工量が20g/m2以下であることを特徴とする▲1▼、▲2▼、▲3▼または▲4▼記載のインクジェット記録体。
【0015】
▲6▼ 支持体が紙に耐水性樹脂組成物を被覆した耐水性樹脂被覆紙であることを特徴とする▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼または▲5▼記載のインクジェット記録紙。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録体は、通常の押出ラミネーションと同様に、支持体の表面に無機微粒子を含み熱可塑性を有する親水性樹脂組成物を溶融押出塗工法により塗工し、塗工された溶融親水性樹脂組成物層を回転するクーリングロールの周面に押圧しながら冷却固化して樹脂塗工紙を得、その上に多孔質顔料とバインダーを含む水性塗工層を塗布して得られる。
【0017】
本発明に使用できる親水性熱可塑性樹脂は、溶融押出塗工適性があり、かつインクジェット記録用インクを吸収できる親水性樹脂であれば、その1種類或いは2種類以上を適宜選択して使用できる。押出塗工可能な親水性熱可塑性樹脂としては、従来から、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエチレングリコール共重合体樹脂等が知られており、これらの中からインクジェット記録用として適当なインク吸収性のある樹脂を適宜選択すればよい。この中でも、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂で、エチレンユニットのモル比率が40モル%以下であるものが好ましい。
【0018】
本発明に用いられる親水性熱可塑性樹脂に含有させる無機微粒子は、一次粒子の平均粒径が30nm以下の無機微粒子である。この様な微細な無機粒子は一次粒子が凝集して二次粒子を形成し、その内部に多量の空隙を含有しており、そのBET法による比表面積は100m2/g以上、好ましくは200m2/g以上ある。この空隙が適度にインク吸収の役割を果たし、親水性熱可塑性樹脂と一緒に溶融押出塗工してインク受容層として用いることにより、インク吸収速度を高めることができる。またこの無機微粒子の空隙へのインク吸収により親水性熱可塑性樹脂のインク吸収による膨潤を抑えることができ、また微粒子であるため樹脂層の表面を荒らすことがないので、高い光沢を達成することが出来るのである。ここで言うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものはBrunauer、Emmett、Tellerの式であって、BET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面でしめる面積を掛けて、表面積が得られる。
【0019】
本発明に用いられる平均一次粒径が30nm以下の無機微粒子としては、親水性熱可塑性樹脂中に分散することが出来るものであれば特に制限はないが、合成シリカを好ましく用いることが出来る。上記の平均一次粒子径を有する合成シリカは、一次粒子が凝集した二次粒子の内部にnm単位の空隙を多数含有し、また二次粒子が集まった集合体のあいだには1μm位までの大きさの空隙が存在しインクの吸収に好都合な構造となっている。合成シリカには湿式法と気相法によるものとがある。湿式シリカとしては▲1▼ケイ酸ナトリウムと硫酸を酸性領域で反応させて得られるゲルタイプのもの、▲2▼ケイ酸ナトリウムと硫酸をアルカリ領域で反応させて得られるゾルタイプのもの、▲3▼このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ等がある。ゲルタイプのものは、高い剪断力を受けても二次粒子が崩壊しにくいので、本発明の如く樹脂中に混練分散させて用いるにはより好ましい。乾式法シリカは日本シリカ株式会社等から市販されている。気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が知られている。気相法シリカは株式会社トクヤマ等から市販されている。
【0020】
本発明の実施に用いられる無機微粒子を押出塗工される親水性熱可塑性樹脂中に含有せしめる方法としては、予め無機微粒子を樹脂中に一定濃度に含有させた所謂マスターバッチを作成し、それを希釈用の樹脂で所望の割合に希釈混合して使用するか、或いは無機微粒子を所望の組成比だけ含有させた所謂コンパウンドを作成して使用するのが適当であるが、マスターバッチとして含有せしめるのが好ましい。無機微粒子を樹脂に含有させるに当たり樹脂中への分散性をよくするため、必要に応じてその無機微粒子の表面を予め無機化合物または有機化合物で被覆処理しても良い。このための無機化合物としては酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム等が、有機化合物としては多価アルコールやその誘導体、ポリオルガノシロキサンやその誘導体等が用いられる。表面被覆処理の量は無機微粒子に対し0.1質量%〜2.0質量%の範囲、好ましくは0.3質量%〜1.5質量%の範囲である。これらのマスターバッチ、コンパウンドを作成するには通常、バンバリーミキサー、ニーダー、混練用押出機、ロール練り機等が用いられる。また、これらの各種混練機を二種類以上組み合わせて使用しても良い。
【0021】
無機微粒子のマスターバッチまたはコンパウンドの調製に際し、適切な滑剤の存在下に調製を行うのが好ましい。具体的には、滑剤としてはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛等の脂肪族金属塩を用いるのが好ましく、特にステアリン酸亜鉛または/及びステアリン酸マグネシウムが好ましい。また、その存在量としては、無機微粒子に対して0.1質量%〜10質量%の範囲が有効であり、1質量%〜5質量%の範囲が好ましい。
【0022】
また、無機微粒子のマスターバッチまたはコンパウンドの調製に際し、適量の適切な酸化防止剤の存在下に調製を行うのが好ましい。具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、ヒンダードアミン等の各種酸化防止剤を適量存在せしめるのが好ましい。無機微粒子のマスターバッチまたはコンパウンドを調製中の酸化防止剤の存在量としては、50ppm〜1500ppmの範囲が好ましいが、120ppm〜950ppmの範囲が更に好ましい。
【0023】
本発明に用いられる無機微粒子の親水性熱可塑性樹脂中への配合量は樹脂量に対し20質量%〜80質量%の範囲が好ましく、30質量%〜60質量%の範囲がより好ましい。配合量が20質量%未満では無機微粒子によるインク吸収力が少なく、親水性熱可塑性樹脂の膨潤吸収に依存する度合いが多くなり、優れた吸収速度は得られない。配合量が80質量%を超えるとインク吸収力はより高まるが、樹脂中への均一な分散が困難となり、押出塗工された親水性熱可塑性樹脂組成物層の表面がざらつく等して必要な光沢が得にくくなる他、樹脂を押出塗工する押出機のダイスリップに汚れを生じて正常な塗工を困難にしてしまう。
【0024】
本発明の親水性熱可塑性樹脂と無機微粒子から成る親水性樹脂組成物には、必要に応じて汎用樹脂、天然高分子材料、顔料、各種添加剤等を適宜配合することが出来る。汎用樹脂または天然高分子材料の配合量は親水性熱可塑性樹脂に対して0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、配合により、樹脂組成物の溶融流動性を改善し、押出加工適性を向上すること等ができる。
【0025】
配合可能な汎用樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等またはそれらの混合物が挙げられる。天然高分子材料としては、セルロース系高分子、澱粉系高分子、タンパク質系高分子等またはそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本発明の無機微粒子以外の配合可能な顔料としては、二酸化チタン、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、プラスチックピグメント等またはこれらの混合物が挙げられる。これらの顔料は本発明の無機微粒子の機能を損なわない範囲で配合できるが、親水性熱可塑性樹脂に対し、1質量%〜20質量%の範囲の配合量であることが好ましい。これらの顔料は、本発明の実施に用いられる無機微粒子のマスターバッチまたはコンパウンド中に併用含有せしめるか、或いは別途の樹脂のマスターバッチまたはコンパウンドとして含有せしめるのが好ましい。
【0027】
その他の添加剤として、染料、着色顔料、蛍光増白剤、滑剤、離型剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、耐水化剤等の1種類または2種類以上を適宜選択して、少量を配合することができる。これらの添加剤は、本発明の実施に用いられる無機微粒子のマスターバッチまたはコンパウンド中に併用含有せしめるか、或いは別途の樹脂のマスターバッチまたはコンパウンドとして含有せしめるのが好ましい。
【0028】
前記の親水性熱可塑性樹脂と無機微粒子を主体とする親水性樹脂組成物は、溶融押出機を用いて溶融され、走行する基紙上に押出機のスリットダイからフィルム状に流延して塗工される。その際、溶融フィルムの温度は180℃〜220℃の範囲であることが好ましい。この温度が180℃より低いと溶融押出機内での流動性やシート状溶融体の延展性に乏しく、また支持体との接着も弱く、加工に適さない。また、220℃より高いと、場合により樹脂が分解する恐れがある。本発明の実施に用いられる親水性熱可塑性樹脂の融点(JIS K7121)は溶融押出塗工できれば特に限定しないが、210℃以下が好ましい。また、親水性熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR、JIS K7210)は、温度190℃、荷重2160gにおいて1〜50g/10min、好ましくは2〜20g/10minである。MFRが小さいと、溶融押出機のトルクが大きくなりすぎたり、樹脂が熱劣化するなどの不都合が生じることがある。また、大きいと、押出樹脂量が不安定になり、安定操業できないなどの不都合が生じる場合がある。
【0029】
支持体上に形成される前記親水性樹脂組成物の塗工量は、特に限定しないが、10〜100g/m2の範囲で溶融押出塗工される。塗工量が少ないと、親水性樹脂組成物の製膜性が悪く均一な塗工面が得られなかったり、支持体との接着性が劣る場合がある。逆に塗工量が多いと、インク吸収性は向上するが、多くしてもそれ以上の効果は期待できないだけでなく、記録材料として厚くなりすぎ、必要以上にコストが高くなり実用的でない。実用的に見て好ましい範囲は20g/m2〜50g/m2である。
【0030】
前記親水性樹脂組成物とシート状支持体とを十分に接着させるため、必要に応じて、支持体表面に薬剤によるアンカー処理を施したり、支持体表面をコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理等で活性化処理することもできる。また、溶融押出塗工の際に、前記樹脂組成物の溶融フィルムの支持体と接する側の面にオゾン含有ガスを吹き付けた後、支持体に塗工することもできる。
【0031】
支持体としての紙基体の片面もしくは両面を耐水性樹脂組成物で被覆した樹脂被覆紙を用いた場合は、より高い光沢度や画像鮮鋭度が得られる。この被覆に用いられる耐水性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂、トリアセテート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等が用いられるが、被覆加工の容易性やコストからポリオレフィン樹脂が好ましい。特に好ましいポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びこれらの混合物である。これらの耐水性樹脂の大部分は溶融押出塗工法で紙基体への被覆を行うことができる。
【0032】
上記被覆層に用いられる耐水性樹脂組成物には、白色度、色調、隠蔽性等の性能を向上させる目的で、白色顔料、着色顔料、蛍光増白剤、酸化防止剤、滑剤、離型剤等の各種添加剤を配合することもできる。また、帯電防止、印字性、筆記性等を付与する目的で裏面側被覆層の表面にバックコート層を設けることもできる。
【0033】
紙基体上に耐水性樹脂組成物を被覆する工程、及びそうして製造された支持体上に親水性樹脂組成物を塗工する工程で使用する溶融押出装置としては、一般にラミネーターと呼ばれる溶融押出機を使用することができる。ラミネーターは熱可塑性樹脂組成物(耐水性樹脂組成物及び親水性樹脂組成物)を押出機、スリットダイを通してフィルム状に流延して支持体に塗工し、これを回転する金属性のクーリングロール周面にバックアップロールで圧着しながら冷却固化して樹脂塗工紙を得るものである。本発明のインクジェット記録体はコエクストルージョンラミネート法またはタンデムラミネート法を用いて、紙基体に耐水性樹脂被覆層と親水性樹脂組成物層とを同時に設けることができる。
【0034】
本発明のインクジェット記録体は、前記親水性樹脂組成物層の上に、インク受容性の水性塗工層を設けてなるが、このインク受容性水性塗工層としては、多孔質顔料と水溶性ないし水分散性バインダーからなるインク吸収性塗工層等、公知のものを適宜使用することができるが、本発明の目的である写真印画紙同等の高い光沢度と画像鮮鋭性をを得る上では、気相法合成シリカ微粒子とポリビニルアルコールバインダーを含んでなる水性塗工層が好ましい。水性塗工層には、この他に着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、硬膜剤、界面活性剤、レベリング剤等、公知の各種添加剤を添加できる。水性塗工層は1層または複数の層として適用することができる。塗工はブレード、エアナイフ、カーテン、スライドカーテン等の方法で行われる。水性塗工層と親水性樹脂組成物層との接着をよくするため、必要に応じて予め親水性樹脂組成物層の表面をコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等で活性化処理することもできる。
【0035】
本発明に用いられる水性塗工層の塗工量は、本発明の目的を達成するためには、インク吸収速度が満足される範囲でできるだけ少ないことが好ましく、具体的には20g/m2以下の範囲が好ましい。20g/m2を超えると、塗工層の粉落ちが生じる恐れがあると共に、塗工工程での乾燥負荷が大きくなって生産性が低下すると言う問題が生じる。水性塗工層の下層として設けられた本発明のインク吸収速度の高い親水性樹脂組成物層の助けで、この水性塗工層の設計を合理化し、生産性を飛躍的に高めることができる。
【0036】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に説明する。
【0037】
実施例1
LBKP80部とLBSP20部のパルプ配合からなる坪量150g/m2の紙を抄造し、その紙の表面に低密度ポリエチレン70部、高密度ポリエチレン20部及び酸化チタン10部から成る耐水性樹脂組成物25g/m2を、その紙の裏面に低密度ポリエチレン50部と高密度ポリエチレン50部から成る耐水性樹脂組成物25g/m2を、それぞれ溶融押出塗工して耐水性樹脂被覆紙を作成した。その際、二酸化チタンを含む表面の耐水性樹脂層の表面は鏡面に、裏の耐水性樹脂層の表面はマット面に加工した。
更にこの耐水性樹脂被覆紙の裏面耐水性樹脂層上に、コロナ放電処理後、ゼラチン:二酸化珪素マット化剤=3:1から成り、対ゼラチン15質量%のエポキシ系硬膜剤と適量の帯電防止剤を含むバックコート層を固形分で1g/m2となるよう塗工して、インクジェット記録紙用支持体を得た。
【0038】
次に、無機微粒子である一次粒子径30nmの合成シリカ((株)日本シリカ製湿式法シリカ、NIPSIL K−500、BET比表面積100m2/g)50部に親水性熱可塑性樹脂であるエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂((株)日本合成製、ソアノールDC3203,エチレン共重合体比率32モル%)48部、ステアリン酸亜鉛2部及び少量の酸化防止剤を混合して、バンバリーミキサーを用いて150℃にて混練し、冷却、ペレット化して、合成シリカのマスターバッチを得た。
【0039】
次いで、前記支持体の表側ポリエチレン樹脂被覆層の表面に、コロナ放電処理を施した後、親水性熱可塑性樹脂であるエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂((株)日本合成製、ソアノールDC3203エチレン共重合体比率32モル%)と前記合成シリカの親水性熱可塑性樹脂ベースのマスターバッチとを、合成シリカの親水性熱可塑性樹脂に対する配合比率が40質量%となるように混合して、100℃で2時間乾燥した後,L/D=30,圧縮比=3の溶融押出機に供給し、溶融温度220℃、加工速度100m/分にて塗工量30g/m2となるよう溶融押出塗工すると共に、鏡面仕上げを施したコーリングロールに圧接、冷却して鏡面光沢のある親水性樹脂組成物層を形成した。
【0040】
更に、上記親水性樹脂組成物層の表面に、コロナ放電処理を施した後、気相法シリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル380)100部、ポリビニルアルコール((株)クラレ製,PVA235)20部、硼酸(特級試薬)3部及び両性界面活性剤0.3部から成るインク受容性水性塗工液をカーテンコーターにて固形分が20g/m2となるよう塗工して、インクジェット記録体を得た。この塗工液の製造は、水:エチルアルコール=20:1の分散媒に気相法シリカを高圧ホモジナイザーで分散した後硼酸、ポリビニルアルコール、界面活性剤を添加して塗工液(合計の固形分濃度10重量%)を作った。
【0041】
実施例2
前記実施例1の合成シリカを一次粒子径10nmである(株)日本シリカ製湿式法シリカのNIPGEL AZ−200に代える以外同様にして作成した。
【0042】
実施例3
前記実施例1の合成シリカを一次粒子径6nmである(株)日本シリカ製湿式法シリカのNIPGEL BZ−200に代える以外同様にして作成した。
【0043】
実施例4
前記実施例1の合成シリカを一次粒子径15nmのγ形酸化アルミニウム(三井住友化学(株)製 AKP−G015)に代える以外同様にして作成した。
【0044】
実施例5
前記実施例1の耐水性樹脂被覆紙である支持体の代わりに,耐水性樹脂被紙の基紙に用いたと同じLBKP80部とLBSP20部のパルプ配合からなる150g/m2の紙を支持体として用いた以外、同様にして作成した。
【0045】
比較例1
前記実施例1の合成シリカを一次粒子径60nmである(株)日本シリカ製湿式法シリカのNIPSIL E−75に代える以外同様にして作成した。
【0046】
比較例2
前記実施例1の合成シリカを一次粒子径55nmのγ形酸化アルミニウム(Condea Chemie社製 Puralox SBa)に代える以外同様にして作成した。
【0047】
比較例3
前記実施例1において、合成シリカのマスターバッチを配合せずにエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂のみを溶融押出塗工して親水性樹脂組成物層を形成した以外は同様にして作成した。
【0048】
比較例4
前記実施例1で使用したポリエチレン樹脂被覆紙からなるインクジェット記録紙用支持体を使用し、その表側ポリエチレン樹脂被覆層の表面に、コロナ放電処理を施した後、実施例1で用いたと同じインク受容性水性塗工層を、固形分塗工量が40g/m2となるようカーテンコーターで塗工して、インクジェット記録体を得た。
【0049】
比較例5
前記比較例4の水性塗工層の固形分塗工量を20g/m2とした以外は、比較例4と同様に作成した。
【0050】
評価
得られたインクジェト記録体について、下記の評価を行った。なお、インクジェット記録はセイコーエプソン(株)製PM−770Cカラープリンターを用いて20℃,65%RHの条件下で行った。その結果を表1に示す。
【0051】
インク吸収性
インクジェット記録直後の重色印刷部分を指で擦り、インク部分の擦れ汚れからインクの乾燥性を目視で判定した。
【0052】
光沢
インクジェット記録シートの画像部及び非画像部の光沢を目視で判定した。
【0053】
画像鮮鋭度
画像をインクジェット記録して元の画像と対比し、その鮮鋭度を目視で判定した。
【0054】
塗工層の粉落ち
インクジェット記録をする前の記録シートの表面を指で擦って、その表面からの粉落ちの程度を目視で判定した。
【0055】
上記品質評価の評価基準は、次の通りである。
◎:問題点がなく、優れている。
○:良好である。
△:実用限界内である。
×:劣る。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果から、耐水性樹脂被覆紙を支持体に用い、一次粒子の平均粒径が30nm以下の無機微粒子を親水性樹脂組成物層に用いた本発明によるインクジェット記録体は、インク吸収性、光沢、画像鮮鋭性、塗層粉落ちが良好であり、特に一次粒子径が15nm以下の無機微粒子を用いた場合はそれらの品質が優れていることが分かる。また、紙を支持体に用いた同様の本発明のインクジェット記録体は、耐水性樹脂被覆紙を支持体に用いた場合よりは劣るが、実用限度内であることが分かる。
比較例1,2の一次粒子が30nmを超える平均粒径である無機微粒子を用いた場合は、インク吸収性は良いが光沢等が不十分であり、比較例3の無機微粒子を配合しない親水性樹脂組成物を適用した場合は満足な品質は得られないことが分かる。
更に比較例4,5の耐水性樹脂被覆紙に直接インク受容性水性塗工層を設けたものは、その水性塗工層の塗工量が40g/m2と多いものではインク吸収性や光沢は優れるが塗層粉落ちに問題があり、塗工量が20g/m2と少ないものでは、粉落ちは良くてもインクジェット記録紙としての必要性能が得られないことが分かる。
【0058】
実施例6〜10
前記実施例2の一次粒子径10nmの合成シリカを使用し、その合成シリカの親水性熱可塑性樹脂に対する配合量を表2に記載した配合量とした以外は実施例2と同様に実施した。
得られた結果を実施例2の結果を加えて表2に示す。評価方法及び評価基準はは前記の実施例1〜5及び比較例1〜5の場合と同じである。
【0059】
【表2】
【0060】
表2の結果から、本発明における無機微粒子の親水性熱可塑性樹脂に対する配合率は、20質量%〜80質量%の範囲が好ましく、40質量%〜60質量%の範囲が特に好ましいことが分かる。
【0061】
実施例11
前記実施例2の親水性熱可塑性樹脂であるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ソアノールDC3203の代わりにソアノールA4412(エチレン共重合体比率44モル%)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0062】
実施例12
前記実施例2の親水性熱可塑性樹脂であるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ソアノールDC3203の代わりにソアノールD2908(エチレン共重合体比率29モル%)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
実施例11,12の結果を実施例2の結果を加えて表3に示す。評価方法及び評価基準は前記の実施例1〜5及び比較例1〜5の場合と同じである。
【0063】
【表3】
【0064】
表3の結果から、本発明における親水性熱可塑性樹脂であるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂のエチレン共重合体比率は、本発明のインクジェット記録体としての性能上、40モル%以下が好ましいことが分かる。
【0065】
実施例13〜15
前記実施例2のインク受容性水性塗工層の塗工量を、表4に記載した塗工量とした以外は、実施例2と同様に実施した。
得られた結果を実施例2及び比較例4、5の結果を加えて表4に示す。評価方法及び評価基準は前記の実施例1〜5及び比較例1〜5の場合と同じである。
【0066】
【表4】
【0067】
表4の結果から、本発明におけるインク受容性水性塗工層の塗工量は、塗工層の粉落ちの点から,20g/m2以下であることが好ましいことが分かる。
また,本発明は水性塗工層塗工量が20g/m2以下で所期の品質性能を発揮できるので、塗工工程の乾燥負荷が小さくなり、その生産性を大幅に向上させることができる。
【0068】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録体は、支持体上に溶融押出塗工された、一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性熱可塑性樹脂とを含む親水性樹脂組成物と、その上に設けられた水性塗工層よりなるインク受容層によって形成されることにより、インク吸収性が良く、写真印画紙同等の高い光沢と画像鮮鋭度を有し、かつ塗層粉落ちの生じない優れたインクジェット記録体を提供できる。
Claims (6)
- 支持体にインク受容層を設けたインクジェット記録体において、支持体上に溶融押出塗工された、一次粒子の平均粒子径が30nm以下の無機微粒子と親水性熱可塑性樹脂とを含む親水性樹脂組成物層と、その上に設けられた水性塗工層よりなるインク受容層を含むことを特徴とするインクジェット記録体。
- 無機微粒子を親水性熱可塑性樹脂に対し20質量%〜80質量%含有する事を特徴とする請求項1記載のインクジェット記録体。
- 無機微粒子が合成シリカであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のインクジェット記録体。
- 親水性熱可塑性樹脂層がエチレン共重合体比率が40モル%以下のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする請求項1、2または請求項3記載のインクジェット記録体。
- 水性塗工層の塗工量が20g/m2以下であることを特徴とする請求項1、2、3または請求項4記載のインクジェット記録体。
- 支持体が紙に耐水性樹脂組成物を被覆した耐水性樹脂被覆紙であることを特徴とする請求項1、2、3、4または請求項5記載のインクジェット記録体。
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