JP2004114094A - プリプレグシートのレーザによる穿孔方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱硬化性樹脂およびガラスクロスから成るプリプレグシートに対しレーザ光のパルスを複数回照射することにより貫通孔を穿孔するプリプレグシートのレーザによる穿孔方法において、レーザ光はエネルギー密度が0.3〜1J/cm2であるとともにパルスのエネルギーが2〜20mJであり、レーザ光のパルス幅は複数回の照射のうちいずれか1回の照射のみにおいて40μsec以下であることを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子収納用パッケージや電子部品を搭載する配線基板などに用いられるプリプレグシートに対して、上下に位置する配線導体層間を接続する貫通導体を形成するための貫通孔をレーザ光の照射により穿孔する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子収納用パッケージや配線基板の高密度化に伴い、これらに用いられるプリプレグシートへの微細な貫通孔の穿孔をレーザ光の照射により行なうことが多くなってきている。このようなレーザ光の照射による貫通孔の形成は、プリプレグシートの貫通孔が穿孔される位置にレーザ光のパルスを複数回照射することにより行なわれている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−118344号公報(第4頁、図19)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらプリプレグシートのような熱硬化性樹脂とガラスクロスとから成る複合材料は、各材料の加工に要するエネルギーのしきい値が大きく異なるため、レーザ光の照射により貫通孔を穿孔する場合、熱硬化性樹脂が密な領域とガラスクロスが密な領域(すなわち熱硬化性樹脂が疎な領域)での孔形が大きく異なってしまい、特にガラスクロスは熱硬化性樹脂と比較し加工性が悪く、ガラスクロスが密な領域での貫通孔の孔径が小さくなってしまうという問題点を有していた。
【0005】
また、例えばガラスクロスの密な領域を加工する場合、貫通孔の孔径を確保する上ではエネルギーのピークが高く幅が短いパルスが有効であるが、このようなパルスはエネルギーのピークが高いために熱硬化性樹脂へダメージを与え易く、貫通孔を穿孔する際の熱により貫通孔周辺の熱硬化性樹脂を変質させたり貫通孔を変形させてしまい、その結果、隣接する貫通孔同士がつながって、貫通孔に導電性ペーストを充填して貫通導体を形成する際に隣接する貫通導体間で短絡不良が発生してしまうという問題、および貫通孔内壁の熱硬化性樹脂の熱影響層において、除去の困難なスミアが残存しやすく、このスミアが貫通孔に充填される導電性ペースト中に入り込み、導通不良を発生させてしまうという問題を誘発していた。
【0006】
さらに、パルス幅が極端に短くなると、貫通孔に照射されるピークの高いエネルギーにより瞬間的に大量の加工熱が発生し、プリプレグシートの熱硬化性樹脂により大きなダメージを与えてしまうという問題を誘発していた。
【0007】
他方、エネルギーのピークが低く幅が長いパルスを用いた場合、パルスのエネルギーのピークが低いためにガラスクロスの加工性が低下し、ガラスクロスに所定の孔径の貫通孔を穿孔することが困難となったり、あるいは貫通孔のレーザ入射側の径に比べてレーザ出射側の径が小さくなり、その結果、貫通孔に導電性ペーストを充填して貫通導体を形成する際に導電性ペーストの充填不良により貫通導体の上下に位置する配線導体間で導通不良が発生したり、配線導体間の導通抵抗が大きくなってしまうという問題を誘発していた。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、プリント配線基板などに用いられる熱硬化性樹脂およびガラスクロスから成るプリプレグシートにレーザ光の照射により貫通孔を形成する方法において、貫通孔の孔径が良好に確保できるとともにプリプレグシートの変質や貫通孔の変形が軽減でき、さらに貫通孔周辺部のスミアが除去しやすい穿孔方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法は、熱硬化性樹脂およびガラスクロスから成るプリプレグシートに対しレーザ光のパルスを複数回照射することにより貫通孔を穿孔するプリプレグシートのレーザによる穿孔方法において、前記レーザ光はエネルギー密度が0.3〜1J/cm2であるとともに前記パルスのエネルギーが2〜20mJであり、前記レーザ光のパルス幅は前記複数回の照射のうちいずれか1回の照射のみにおいて40μsec以下であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法は、上記構成において、前記1回の照射以外の照射におけるパルス幅が90μsec以上であることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法は、上記構成において、前記1回の照射におけるパルス幅が20μsec以上であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法によれば、熱硬化性樹脂およびガラスクロスから成るプリプレグシートに対しレーザ光のパルスを複数回照射することにより貫通孔を穿孔するプリプレグシートのレーザによる穿孔方法において、レーザ光のエネルギー密度を0.3〜1J/cm2とするとともにパルスのエネルギーを2〜20mJとし、レーザ光のパルス幅を複数回の照射のうちいずれか1回の照射のみにおいて40μsec以下としたことから、ガラスクロスがパルス幅が40μsec以下と短い、すなわちエネルギーのピークが高いパルスによって良好に加工されるとともに、パルス幅が40μsec以下と短くエネルギーのピークが高いパルスの照射が1回のみであることからプリプレグシートの熱硬化性樹脂に大きなダメージを与えることもない。その結果、プリプレグシートにレーザ光によって貫通孔を穿孔する際の熱により、貫通孔周辺の熱硬化性樹脂を変質させたり貫通孔を変形させてしまうことはなく、隣接する貫通孔同士がつながって貫通孔に導電性ペーストを充填して貫通導体を形成する際に隣接する貫通導体間で短絡不良が発生することもない。
【0013】
また、本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法によれば、上記構成において、前記1回の照射以外の照射におけるパルス幅を90μsec以上とした場合には、前記1回の照射以外の照射におけるパルスの照射時間が長いことから貫通孔内壁の熱硬化性樹脂の熱影響層においてスミアとして残存する樹脂の炭化が促進され、スミアを粘着テープ等により容易に除去することができる。その結果、貫通孔に充填される導電性ペースト中にスミアが入り込んで導通不良が発生することもない。
【0014】
さらに、本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法によれば、上記構成において、前記1回の照射におけるパルス幅を20μsec以上とした場合には、プリプレグシートの熱硬化性樹脂に与えるダメージをより低減することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法について、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1はレーザ光を用いてプリプレグシートに貫通孔を形成する工程の概略図であり、1はプリプレグシート、2はレーザ光源、3はミラー、4はレーザ光、5はプリプレグシート1に形成された貫通孔、6は保護フィルムである。また、図2は、本実施例におけるレーザによる穿孔方法を説明するためのパルスのパターン図であり、7はパルス、8はパルス幅、9はパルスのピークである。
【0016】
そして、図1に示すように、所定のプリプレグシート1の表面にレーザ光源2からミラー3を経由してレーザ光4を誘導するとともにレーザ光4のパルス7を複数回照射することにより、プリプレグシート1に貫通孔5が形成される。このようなレーザ光4は、ミラー3の角度調整によって、プリプレグシート1の任意の箇所にレーザ光4を誘導できるように構成されている。なお、本実施例では、プリプレグシート1の上下面に保護フィルム6を被着した状態で貫通孔5を穿孔する場合の例について説明する。
【0017】
プリプレグシート1は、厚みが30〜200μmで、耐熱繊維であるガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸することにより形成され、これを複数積層し熱硬化することにより配線基板の絶縁層となる。なお、プリプレグシート1は、プリプレグシート1の全質量に対して、ガラスクロスを10〜90質量%含有しており、含有量が10質量%未満ではプリプレグシート1の強度が弱いものとなり、プリプレグシート1の取り扱いが困難となる傾向があり、90質量%を超えると熱硬化性樹脂の含有量が少なくなり、熱硬化性樹脂の充填不足となってプリプレグシート1表面の平坦度を確保することが困難となる傾向がある。従って、プリプレグシート1は、ガラスクロスを10〜90質量%含有することが好ましい。
【0018】
保護フィルム6は、厚みが10〜50μmで、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレート・ポリカーボネート等から成り、プリプレグシート1の上下面に被着され、プリプレグシート1への異物の付着や取扱いによる傷の発生を防止する機能を有する。
【0019】
そして、プリプレグシート1表面の貫通孔5が穿孔される箇所に、レーザ光4のパルス7を複数回照射することにより、径が50〜200μmの貫通孔5が形成される。
【0020】
なお、このようなレーザとしては、炭酸ガスレーザやエキシマレーザ・YAGレーザ等従来周知のレーザが用いられる。
また、プリプレグシート1に貫通孔5を穿孔する場合、レーザ光4の1パルスのエネルギー量が少な過ぎると、貫通孔5を形成するのに多くの照射回数が必要となり、また、逆にエネルギーが大き過ぎると貫通孔5を形成する加工熱が大きなものとなり、プリプレグシート1に熱の淀みが発生しやすく熱硬化性樹脂の変質や貫通孔5の変形が生じ易くなる。従って、パルス7の照射回数を5回程度とし、かつ熱硬化性樹脂の変質や貫通孔5の変形を防止するという観点からは、レーザ光4のエネルギー密度を0.3〜1J/cm2とすることが重要であり、レーザ光4の1パルス当りのエネルギーを2〜20mJ、特に3〜10mJとすることが重要である。
【0021】
そして、本発明のプリプレグシート1のレーザによる穿孔方法においては、レーザ光4のパルス幅8は、複数回の照射のうちいずれか1回の照射のみにおいて40μsec以下となっている。また、このことが重要である。
【0022】
本発明のプリプレグシート1のレーザによる穿孔方法によれば、複数回の照射のうちいずれか1回の照射のみにおけるレーザ光4のパルス幅8を40μsec以下としたことから、ガラスクロスをパルス幅8が40μsec以下と短くエネルギーのピーク9が高いパルス7によって良好に加工することが可能となるとともに、パルス幅8が40μsec以下と短くエネルギーのピーク9が高いパルス7の照射が1回のみであることからプリプレグシート1の熱硬化性樹脂に大きなダメージを与えることもない。その結果、プリプレグシート1にレーザ光4によって貫通孔5を穿孔する際の熱により、貫通孔5周辺の熱硬化性樹脂を変質させたり貫通孔5を変形させてしまうことはなく、隣接する貫通孔5同士がつながって貫通孔5に導電性ペーストを充填する際に隣接する貫通導体間で短絡不良が発生することもない。
【0023】
なお、上述のレーザ光4のパルス幅8は、複数回の照射のうちいずれか1回の照射のみにおいて40μsec以下となっているとは、図2に示すように、n回のレーザ光4の照射のうち、例えばn回目の照射のパルス幅8のみが40μsec以下となっていることをいう。また、この図の例ではn回の照射のうちn回目の照射におけるパルス幅8のみが40μsec以下となっている例を示したが、パルス幅8が40μsec以下のパルスの照射が、1回目〜n回目のいずれであってもよい。
【0024】
また、複数個の貫通孔5を穿孔する場合、貫通孔5を1個ずつ穿孔してもよいが、例えば複数の貫通孔5が穿孔されるプリプレグシート1の表面にレーザ光4のパルス7を各1回ずつ照射し、これを複数回繰り返すとともに、複数回の照射のうちいずれか1回の照射におけるパルス幅8のみを40μsec以下としてもよい。また、このように複数の貫通孔5が穿孔されるプリプレグシート1の表面にレーザ光4のパルス7を各1回ずつ照射することにより、プリプレグシート1の各貫通孔5周辺に蓄積されるレーザ光4の熱を良好に放散することが可能となり、貫通孔5周辺の熱硬化性樹脂の変質や貫通孔5を変形をより良好に防止することが可能となる。
【0025】
これをより具体的に説明すると、図3にプリプレグシート1の平面図に示すように、プリプレグシート1に縦L個×横M個の複数の貫通孔5を穿孔する場合、穿孔ポイントp1から外側に向かって同心円状もしくは渦巻き状にレーザ光4の照射位置を順次移動させつつ、エリア内すべての貫通孔5に1パルスのレーザ光4を照射することを1工程とし、すべての貫通孔5に1パルスのレーザ光4を照射した後、再び穿孔ポイントp1から設定数nまでこの工程を繰り返す。その際、例えば1回目から(n−1)回目のレーザ光4の照射において、レーザ光4のパルス幅8を40μsecを超えるものとし、n回目のレーザ光4の照射においてのみパルス幅8を40μsec以下とする。
【0026】
また、本発明のプリプレグシート1のレーザによる穿孔方法においては、1回の照射以外の照射におけるパルス幅8を90μsec以上とすることが好ましい。本発明のプリプレグシート1のレーザによる穿孔方法によれば、1回の照射以外の照射におけるパルス幅8を90μsec以上とした場合には、レーザ光4の前記1回の照射以外の照射におけるパルス7の照射時間が長くなり、貫通孔5内壁の熱硬化性樹脂の熱影響層においてスミアとして残存する樹脂の炭化が促進され、スミアが粘着テープ等により容易に除去可能なものとなる。その結果、スミアが貫通孔5に充填される導電性ペースト中に入り込んで導通不良が発生することもない。
【0027】
さらに、本発明のプリプレグシート1のレーザによる穿孔方法においては、前記1回の照射におけるパルス幅8を20μsec以上とすることが好ましい。前記1回の照射におけるパルス幅8の下限値を20μsecとした場合には、貫通孔5に照射されるパルス7のエネルギーにより瞬間的に大量の加工熱が発生することはなく、プリプレグシート1の熱硬化性樹脂に大きなダメージを与えてしまうことはない。
【0028】
また、プリプレグシート1の両面に保護フィルム6を被着した状態でプリプレグシート1および保護フィルム6に貫通孔5を形成する場合、前記1回の照射におけるパルス7のピーク9値が制限されることにより、保護フィルム6の熱影響による焦げ・変質が軽減される。これにより貫通孔5に導電性ペーストを充填して貫通導体を形成する際に、導電性ペーストの充填不良により、隣接の貫通孔5と部分的につながり、電気的に短絡してしまうことを抑制できる。
【0029】
かくして、本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法によれば、熱硬化性樹脂およびガラスクロスから成るプリプレグシート1に対しレーザ光4のパルス7を複数回照射することにより貫通孔5を穿孔するプリプレグシート1のレーザによる穿孔方法において、レーザ光4のエネルギー密度を0.3〜1J/cm2とするとともにパルス7のエネルギーを2〜20mJとし、レーザ光4のパルス幅8を複数回の照射のうちいずれか1回の照射のみにおいて40μsec以下としたことから、ガラスクロスがパルス幅8が40μsec以下と短い、すなわちエネルギーのピークが高いパルスによって良好に加工されるとともに、パルス幅8が40μsec以下と短くエネルギーのピーク9が高いパルス7の照射が1回のみであることからプリプレグシート1の熱硬化性樹脂に大きなダメージを与えることもない。その結果、プリプレグシート1にレーザ光4によって貫通孔5を穿孔する際の熱により、貫通孔5周辺の熱硬化性樹脂を変質させたり貫通孔5を変形させてしまうことはなく、隣接する貫通孔5同士がつながって貫通孔5に導電性ペーストを充填して貫通導体を形成する際に隣接する貫通導体間で短絡不良が発生することもない。
【0030】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば上述の実施例ではガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて成るプリプレグシートを用いているが、薄型のプリント基板の剛性を向上するために、熱硬化性樹脂に対して、シリカやアルミナ・ムライト・ジルコニアなどの無機粉末を5〜70体積%の割合で添加したプリプレグシートを用いてもよい。
【0031】
【実施例】
本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法の効果を確認するため、次の試料を作成し、レーザ光の入射径・出射径の測定およびプリプレグシートの焦げの有無の観察を行なって評価した。
【0032】
(実施例1)
まず、ガラス繊維に未硬化のポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させた厚みが100μmのプリプレグシートを用意する。次に、両面に保護フィルムを被着させたプリプレグシートを載物台上に載置する。
【0033】
そして、この両面に保護フィルムが被着したプリプレグシートに、形成する複数の貫通孔の中心部に位置する貫通孔の穿孔位置をレーザ光の照射位置の始点とし、この始点から外側へ向かって、レーザ光のパルスを1回ずつ照射する操作を5回繰り返すことにより貫通孔を形成した。なお、レーザ光のエネルギー密度を0.2〜1.1J/cm2、1パルスのエネルギーを1〜21mJの範囲で設定し、また、レーザ光のパルス幅を60μsecとして穿孔を行なった。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
レーザ光のエネルギー密度を0.2、0.3、1.0、1.1J/cm2とし、それぞれのエネルギー密度でパルスのエネルギーを変化させた試料(試料No.1〜24)では、レーザ光のエネルギー密度が0.2J/cm2(試料No.1〜4)では、エネルギー密度が小さいため、貫通孔を所定の径に形成することができず、レーザ光のエネルギー密度が1.1J/cm2(試料No.13〜16)では、エネルギー密度が高すぎ、貫通孔周辺に樹脂の変質に伴う変形が確認された。また、レーザ光のエネルギー密度が0.3J/cm2(試料No.5〜8)および1.0J/cm2(試料No.9〜12)では、レーザ光のエネルギーが1mJの試料(試料No.5、9)では貫通孔を所定の径に形成することができず、21mJの試料(試料No.8、12)では貫通孔周辺に樹脂の変質に伴う変形が確認された。それに対して、レーザ光のエネルギー密度が0.3〜1.0J/cm2で、レーザ光のエネルギーが2〜20mJとした試料(試料No.6、7、10、11)では、所定の径の貫通孔を良好に形成することができ、貫通孔周辺に樹脂の変質等も見られなかった。
【0036】
(実施例2)
次に、繰り返し照射する5回のパルスのうち、最初の2回のパルス幅を60μsecとし、残り3回の照射におけるパルス幅を35〜60μsecの範囲内で変化させて貫通孔を穿孔し、実体顕微鏡で貫通孔のレーザ入射側およびレーザ出射側の径を測定するとともにその差を計算し、さらにプリプレグシートの焦げの有無を観察した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例2の結果、繰り返し照射する5回のうち、すべての照射におけるパルス幅を40μsecを超える値とした試料(試料No.17、22)では、ガラスクロス部での加工性が低下し、貫通孔のレーザ入射側の径とレーザ出射側の径の差が35μm以上と大きくなった。また、繰り返し照射する5回のうち、パルス幅が40μsec以下である照射を2回以上とした試料(試料No.9、20、23、25)では、ガラスクロス部での加工性は向上するが、プリプレグシートに焦げが発生することがわかった。
【0039】
これに対して、繰り返し照射する5回のうち、最初の4回の照射におけるパルス幅を40μsecを超えるものとし、最後の照射のパルス幅を40μsec以下とした試料(試料No.8、21、24)では、貫通孔のレーザ入射側の径とレーザ出射側の径の差が35μm未満と小さくなるとともに、プリプレグシートの焦げも見られなかった。
【0040】
(実施例3)
次に、繰り返し照射する5回の工程のうち、最初の2回の照射におけるパルス幅を90μsec以上とし、残りの工程のレーザ条件のパルス幅を40〜100μsecとして貫通孔を形成した後、粘着テープにより貫通孔周辺部の加工屑等を取り除き、貫通孔部に残存している樹脂屑を観察した。その結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表3から、繰り返し照射する5回の照射のうち、5回目の照射におけるパルス幅を40μsecとし、他の4回の照射のうちでパルス幅が90μsec未満のパルス幅がある試料(試料No.28、29、30)については樹脂残が観察された。それに対して、最後の1工程のレーザ照射のパルス幅を40μsecとし、他の4工程のレーザ照射のパルス幅を90μsec以上とした試料(試料No.26、27)では、樹脂残は見られなかった。
【0043】
(実施例4)
次に、繰り返し照射する5回のうち、最初の4回の照射のパルス幅を60もしくは90μsecとし、5回目のレーザ照射におけるパルス幅を15〜25μsecとして貫通孔を形成し、プリプレグシートの焦げの有無を観察した。結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
5回目の照射におけるパルス幅を20μsec未満とした試料(試料No.31、34)はプリプレグシートの焦げが観察された。それに対して、レーザのパルス幅を20μsec以上とした試料(試料No.32、33、35、36)はプリプレグシートの焦げが観察されなかった。
【0046】
【発明の効果】
本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法によれば、 本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法によれば、熱硬化性樹脂およびガラスクロスから成るプリプレグシートに対しレーザ光のパルスを複数回照射することにより貫通孔を穿孔するプリプレグシートのレーザによる穿孔方法において、レーザ光のエネルギー密度を0.3〜1J/cm2とするとともにパルスのエネルギーを2〜20mJとし、レーザ光のパルス幅を複数回の照射のうちいずれか1回の照射のみにおいて40μsec以下としたことから、ガラスクロスがパルス幅が40μsec以下と短い、すなわちエネルギーのピークが高いパルスによって良好に加工されるとともに、パルス幅が40μsec以下と短くエネルギーのピークが高いパルスの照射が1回のみであることからプリプレグシートの熱硬化性樹脂に大きなダメージを与えることもない。その結果、プリプレグシートにレーザ光によって貫通孔を穿孔する際の熱により、貫通孔周辺の熱硬化性樹脂を変質させたり貫通孔を変形させてしまうことはなく、隣接する貫通孔同士がつながって貫通孔に導電性ペーストを充填して貫通導体を形成する際に隣接する貫通導体間で短絡不良が発生することもない。
【0047】
また、本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法によれば、上記構成において、前記1回の照射以外の照射におけるパルス幅を90μsec以上とした場合には、前記1回の照射以外の照射におけるパルスの照射時間が長いことから貫通孔内壁の熱硬化性樹脂の熱影響層においてスミアとして残存する樹脂の炭化が促進され、スミアを粘着テープ等により容易に除去することができる。その結果、貫通孔に充填される導電性ペースト中にスミアが入り込んで導通不良が発生することもない。
【0048】
さらに、本発明のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法によれば、上記構成において、前記1回の照射におけるパルス幅を20μsec以上とした場合には、プリプレグシートの熱硬化性樹脂に与えるダメージをより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、レーザ光を用いてプリプレグシートに貫通孔を形成する工程を説明するための概略図である。
【図2】図2は、レーザ光のパルス幅を説明するためのパルスのパターン図である。
【図3】図3は、プリプレグシートにレーザ光で貫通孔を穿孔する方法を説明するためのプリプレグシートの平面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・プリプレグシート
2・・・・・・・・レーザ光源
3・・・・・・・・ミラー
4・・・・・・・・レーザ光
5・・・・・・・・貫通孔
6・・・・・・・・保護フィルム
7・・・・・・・・パルス
8・・・・・・・・パルス幅
9・・・・・・・・パルスのピーク
Claims (3)
- 熱硬化性樹脂およびガラスクロスから成るプリプレグシートに対しレーザ光のパルスを複数回照射することにより貫通孔を穿孔するプリプレグシートのレーザによる穿孔方法において、前記レーザ光はエネルギー密度が0.3〜1J/cm2であるとともに前記パルスのエネルギーが2〜20mJであり、前記レーザ光のパルス幅は前記複数回の照射のうちいずれか1回の照射のみにおいて40μsec以下であることを特徴とするプリプレグシートのレーザによる穿孔方法。
- 前記1回の照射以外の照射におけるパルス幅が90μsec以上であることを特徴とする請求項1記載のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法。
- 前記1回の照射におけるパルス幅が20μsec以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のプリプレグシートのレーザによる穿孔方法。
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