JP2004113903A - 遺棄化学兵器洗浄廃水の処理方法とその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】遺棄化学兵器洗浄廃水の処理の作業時に、その遺棄化学兵器を洗浄することによって生ずる洗浄廃水、或いは上記のような作業時に着用される防護服等を洗浄することによって生ずる洗浄廃水を処理するための処理方法と処理装置に関し、遺棄化学兵器等を洗浄することによって生ずる洗浄廃水や、遺棄化学兵器等の処理作業時に着用される防護服を洗浄することによって生ずる洗浄廃水を処理して無害化することを課題とする。
【解決手段】遺棄化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離して、前記洗浄廃水中の汚染物質を除去することを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】遺棄化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離して、前記洗浄廃水中の汚染物質を除去することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺棄化学兵器洗浄廃水の処理の作業時に、その遺棄化学兵器を洗浄することによって生ずる洗浄廃水、或いは上記のような作業時に着用される防護服等を洗浄することによって生ずる洗浄廃水を処理するための処理方法と処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
遺棄化学兵器は、1997年に発効した化学兵器禁止条約に基づき、処理が義務付けられているにもかかわらず、その処理方法が確立されていないこともあって、未だにその処理が難航している。
【0003】
このような遺棄化学兵器のうちでも、特に地中に埋蔵されていた化学兵器は、長期間の外壁の腐食劣化に伴い、内部から毒性化合物が漏洩するおそれがある。そこで、地中から掘り出した段階で、多量のさらし粉、次亜塩素酸ソーダ、或いはイソシアヌル酸ナトリウム等の塩素系洗浄剤をかけて漏出化学剤を分解し、水洗することで、次工程へのハンドリングができるようにしている。また、化学兵器で汚染された防護服についても、同様に除染剤をかけて水洗する手順がとられる。
【0004】
上記の作業で発生した遺棄化学兵器洗浄廃水には、未分解の化学兵器成分が残存している場合もあり、またその分解された有機化合物といえども決して無害なわけではなく、また無機系のものでも砒素化合物等の有毒な成分が含有されている。
従って、発掘された遺棄化学兵器を単に洗浄した廃水であっても、上記のような有害化合物等の汚染物質で汚染されているおそれがある。また同様に、このような遺棄化学兵器の処理作業時に着用された防護服を除染した場合にも、上記のような有害化合物が洗浄廃水に含有されているおそれがある。
【0005】
ところで、このような遺棄化学兵器の処理は、欧米を中心に実施されているものの、日本ではほとんど実施されたことがないので、かかる化学兵器の処理技術に関する我国の特許出願の件数は非常に少ない。
その中ではたとえば遺棄化学兵器砲弾の処理を電気化学的に行う下記特許文献1や、化学兵器用毒性化合物の燃焼分解を行う下記特許文献2等の出願がなされている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−162200号公報
【特許文献2】
特開平10−141637号公報
【0007】
しかし、これらの発明は、あくまで化学兵器それ自体を処理する技術、或いは化学兵器用毒性化合物を直接処理する技術であり、上記のように発掘、洗浄等の処理作業によって二次的に生ずる洗浄廃水のようなものを処理する技術ではない。実際、この種の洗浄廃水を処理する技術に関する特許出願は皆無に近い。
ちなみに、欧米の遺棄化学兵器は、ストックパイルと呼ばれる倉庫保管がなされていて、製造時の形状を保ったままのものが中心であるのに対し、我国が取り扱うべき遺棄化学兵器は、ノンストックパイルと呼ばれる放置されたものが中心であり、このことも、上記遺棄化学兵器の処理に関する特許出願が少なく、とりわけその洗浄廃水を処理する技術に関する特許出願が皆無に近いことの要因ともなっている。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、上記のような遺棄化学兵器等を洗浄することによって生ずる洗浄廃水や、遺棄化学兵器等の処理作業時に着用される防護服を洗浄することによって生ずる洗浄廃水を処理して無害化することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するために、化学兵器洗浄廃水の処理方法とその装置としてなされたもので、化学兵器洗浄廃水の処理方法としての特徴は、化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離して、前記洗浄廃水中の汚染物質を除去することである。
また、より具体的な化学兵器洗浄廃水の処理方法の特徴は、化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離し、濃縮水は蒸発乾燥して汚染物質とともに減容化し、廃棄、貯蔵に便利なようにし、透過水は前記化学兵器の洗浄水として再利用することである。
この場合、洗浄水として系外に排出し、貯留しておくことも可能である。
【0010】
さらに、遺棄化学兵器洗浄廃水の処理装置としての特徴は、遺棄化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、濃縮水と透過水とに分離して、前記洗浄廃水から汚染物質を除去する膜分離装置を具備することである。
【0011】
濃縮水を蒸発乾燥して得られた水は、凝縮して膜分離装置の前段側に返送することも可能である。
【0012】
膜分離装置としては、たとえば限外濾過膜装置を具備するFMモジュール装置と、逆浸透膜装置を具備するDTモジュール装置とで構成されたようなものが用いられる。かかる構成の膜分離装置を用いることで、先ずFMモジュール装置で懸濁性固形物(SS)成分を除去しておき、その後にDTモジュール装置で有害溶存成分を除去することができる。
すなわち、洗浄廃水には、未分解の化学兵器成分、砒素を含んだ分解成分の他に、洗浄剤中の多量の塩素成分等が溶存しており、廃水をそのまま系外に排出することはできない。また、廃水には土砂をベースとした多量のSS成分が含まれているために、通常の膜分離では閉塞を生ずるおそれがある。そこで、上記のようなFMモジュール装置とDTモジュール装置とで構成された膜分離装置が有用となるのである。
また、限外濾過膜装置としては、たとえば多数の平膜が積層されて略封筒状に構成された膜モジュールを具備するようなものが用いられる。さらに逆浸透膜装置としては、所定間隔を隔てて多数の平膜が配設されてなるとともに該平膜にスペーサーが取り付けられて構成されたようなものが用いられる。
【0013】
また膜分離装置に供給する前に、洗浄廃水中の除染剤を中和処理し、洗浄廃水のpH調整を行い、及び洗浄廃水に凝集剤を添加するための反応槽洗浄廃水をチオ硫酸ナトリウムによって中和処理する反応槽を、膜分離装置の前段側に設けることも可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に従って説明する。
【0015】
先ず、一実施形態としての、化学兵器洗浄廃水の処理装置について説明する。
【0016】
本実施形態の化学兵器洗浄廃水の処理装置は、図1に示すように、前処理を行うための前処理設備1と、限外濾過膜装置を具備したFMモジュール装置2と、逆浸透膜装置及びNF膜装置を具備したDTモジュール装置3と、蒸発乾燥装置4と、凝縮装置5とからなる。
【0017】
前処理設備1は、さらに、図2に示すように、沈砂池6と、バースクリーン7と、原水中継槽8及び原水中継ポンプ9と、2台の原水槽10,10 及び原水ポンプ11と、オートストレーナ12と、反応槽13と、FM原水槽14及びFM加圧ポンプ15を備えている。
【0018】
沈砂池6は、土砂、金属類、炸薬粒子などを除去するためのものであり、バースクリーン7は、大きい塵芥を除去するためのものである。さらに、反応槽13は、チオ硫酸ナトリウムによる除染剤の中和反応、水酸化ナトリウムと硫酸によるpHの調整、及びポリ塩化アルミニウムによる凝集反応を行わせるための槽である。
【0019】
FMモジュール装置2は、図3に示すように2つの限外濾過膜装置16,16を並列に配置した構成からなる。限外濾過膜装置16は、前記前処理設備1で前処理された処理液を、さらに固形スラッジ分(SS成分)と透過水とに分離するための装置であり、本実施形態の限外濾過膜装置16には、平膜モジュールを有する限外濾過膜が用いられている。
【0020】
より具体的には、図4及び図5に示すように、ABS樹脂製の支持板の両面にポリエチレン製の処理水スペーサーと平膜とが1枚ずつ重ね合わされ外周部がシールされて形成された封筒状平膜17が、多層に積層されて構成されている。そして、このように封筒状平膜17が多層に積層されたものが、図4に示すように1対の半割体18,18 からなる内側ケーシング19内に収容され、さらに図5に示すように、圧力容器20内に収容されている。
【0021】
圧力容器20の一端側には、前記前処理設備1で前処理された処理液の入口部21が形成され、圧力容器20の他端側には、濃縮水出口部22が形成されている。
【0022】
前記内側ケーシング19の内部であって、多層積層された封筒状平膜17の側方には、透過水排出路23が形成されている。そして、前記積層された封筒状平膜17には貫通孔24が穿設され、該貫通孔24が前記透過水排出路23に連通状態とされている。26は、入口部21側の近辺に設けられた整流板を示す。
【0023】
DTモジュール装置3は、2つの逆浸透膜装置27,27を直列に配置するとともに、1つのNF膜装置28を前記一方の逆浸透膜装置27に並列に接続した構成からなるものである。
【0024】
この、逆浸透膜装置27は、ディスクタイプの平膜がディンプルの付いたスペーサーと交互に積層された構造からなるものである。すなわち、この逆浸透膜装置は、図7に示すように、円筒状の装置本体29内に、円板状の平膜30が同じく円板状のスペーサ31の間に設けられた逆浸透膜部32が複数組積層されて構成されている。
【0025】
該逆浸透膜装置27の装置本体29の内周面には原水を導入する原水流路33が設けられ、該原水流路33から逆浸透膜の表面に原水が導入される。また、該逆浸透膜部32の上部にはエンドプレート34が設けられ、浸透圧以上の圧力に耐えられるようになっている。
【0026】
35は逆浸透膜部32の中央部に貫通された透過水パイプで、該透過水パイプ35は逆浸透膜によって分離された処理水を排出させる。また、36は濃縮水パイプで、各逆浸透膜によって濃縮された濃縮水を装置本体29外へ排出させる。
【0027】
蒸発乾燥装置4は、前記DTモジュール装置3によって分離された濃縮水を減圧して蒸発乾燥させるためのものである。また、凝縮装置5は、前記蒸発乾燥装置4で蒸発した水分を凝縮させるためのものである。
【0028】
蒸発乾燥装置4は、図8に示すように真空ポンプ37によって減圧蒸留されて蒸発乾燥させるものであり、また凝縮装置5は、冷却塔38によって冷却される。39は、蒸発した水分の汚染物質を吸着するための活性炭フィルターである。
【0029】
次に、上記のような洗浄廃水の処理装置を用いて、洗浄廃水を処理する方法の実施形態について説明する。
【0030】
先ず、原水である洗浄廃水の前処理を行う。洗浄廃水には、マスタードスルホン、VCAOA(2−クロロビニルアルソニック酸)、BDPAO(ディスジフェニルアルシネオキサイド)、ピクリン酸(炸薬の成分である)、塩化第二鉄等が含有されており、洗浄時の除染剤として用いられたさらし粉、次亜塩素酸ソーダ、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムも含有されている。さらに、土砂、金属粒子、炸薬粒子等が含有されている。
【0031】
前処理工程として、先ず沈砂槽6で土砂、金属類、炸薬粒子を除去した後、バースクリーン7で大きい塵芥を除去する。
【0032】
次に、大きい塵芥や土砂、金属類、炸薬粒子等が除去された洗浄廃水を、
原水中継槽8及び原水中継ポンプ9を介して原水槽10,10 へ供給し、原水ポンプ11からオートストレーナ12を経て反応槽13へ供給する。
【0033】
原水槽10,10 では洗浄廃水が一旦貯留され、オートストレーナ12では前記バースクリーン7で除去されなかった塵芥が除去されることとなる。
【0034】
反応槽へは、チオ硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸、及びポリ塩化アルミニウムが添加される。
【0035】
チオ硫酸ナトリウムは、除染剤として用いられていたジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを中和するためのものであり、除染剤中の塩素によって膜を損傷しないようにしている。
【0036】
また、水酸化ナトリウムと硫酸は、反応槽内の洗浄廃水のpHを調整するためのものである。さらにポリ塩化アルミニウムは凝集剤であり、これを添加するとによって不純物が凝集することとなる。
【0037】
このような中和や凝集を終えた洗浄廃水は、FMモジュール装置2へ供給する。供給された洗浄廃水は、FMモジュール装置2の限外濾過膜装置16で濾過水(透過水)と濃縮水に分離され、透過水は次工程のDTモジュール装置3へ供給され、濃縮水は蒸発乾燥装置4へ供給される。
より具体的に説明すると、FMモジュール装置2へ供給された洗浄廃水は、入口部21から限外濾過膜装置16の内部に流入し、濾過水(透過水)は、透過水排出路23から外部に排出され、逆浸透膜装置27に供給され、固形分(SS分)を含んだ濃縮水は、濃縮水出口部22から排出されて蒸発乾燥装置へ供給されるのである。
この限外濾過膜装置16として、本実施形態では上記のような構造のものを用いたため、流路面積が大きいので閉塞しにくく、逆洗浄も可能であり、図9に示すように膜表面の堆積物を容易に除去することができる。また限外濾過膜装置のそれぞれのモジュールはカセットごとに分解でき、膜が破損した場合でも容易に交換することができる。
また、洗浄廃水に含有されていた固形分(SS分)は、上述のように濃縮水側に移行されるので、透過水からは好適に除去されることとなる。
上記FMモジュール装置2では、限外濾過膜に対して供給される水を全量濾過する、いわゆるデッドエンド方式が採用されている。
【0038】
次に、上記のようにFMモジュール装置2で浮遊固形物(SS分)が除去された透過水は、DTモジュール装置3へ供給されるが、そのDTモジュール装置3に供給された透過水には、各種の塩類や砒素イオン等が含有されている可能性がある。
【0039】
しかし、残存している各種の塩類や砒素イオン等は、DTモジュール装置3のそれぞれの逆浸透膜装置27やNF膜装置28で除去される。
【0040】
この逆浸透膜装置27における逆浸透膜(平膜)は、浸透圧以上の圧力をかけると分子レベルで濾過できる半透膜で、上記各種の塩類や砒素イオン等は、この逆浸透膜装置27で好適に除去される。
【0041】
上述のように、逆浸透膜装置27は、円板状の逆浸透膜が積層された構造で、該逆浸透膜の表面とスペーサの間を原水が流れる時に圧力をかけると逆浸透膜は水のみを透過して膜の内側に脱塩された処理水が溜まり、該処理水は装置本体の中央部に縦設された処理水パイプを経て逆浸透膜装置から処理水(脱塩水)として排出される。
【0042】
各種の塩類や砒素イオン等が除去された脱塩水は、系外に放流されることなく、前記前処理工程の前段側に返送されて、洗浄水として再利用される。
【0043】
一方、洗浄廃水は逆浸透膜30とスペーサー31の間を通り濃縮水パイプ36を経て、逆浸透膜装置27から濃縮水として排出される。
【0044】
DTモジュール装置3においては、2つの逆浸透膜装置27と1つのNF膜装置28が上述のように配設されているので、好適に濃縮水と脱塩水に分離される。
【0045】
排出された濃縮水は、蒸発乾燥装置へ供給される。
【0046】
このようにDTモジュール装置3からの濃縮水及び前記FMモジュール装置2からの濃縮水は、蒸発乾燥装置4で蒸発され、所定の水分濃度にまで乾燥されることとなる。蒸発乾燥装置4は、60torrの減圧下で、蒸気のジャケット加温によって装置内が55〜65℃となるように運転され、8〜10時間で乾燥が完了する。
【0047】
蒸発した水分は、凝縮装置5によって凝縮され、FMモジュール装置2の前段側に返送されて洗浄水として再利用される。
【0048】
また、蒸発乾固された固形物は、たとえば窒素等の不活性ガス雰囲気で350 ℃〜600 ℃の温度で還元加熱処理される。或いは、汚染物質を含む別の固形物とともに別途処理される。
【0049】
尚、洗浄廃水に含有されているピクリン酸は、乾燥させると爆発するおそれがあるので、安全のために上記DTモジュール装置3やFMモジュール装置2からの膜分離濃縮水を完全に乾燥させずに湿潤状態にすることも考えられる。
【0050】
ただし、洗浄時において、ピクリン酸はジクロロイソシアヌル酸ナトリウムにより中和されてクロロピクリンになり、さらに炭酸ナトリウムや亜硫酸ナトリウムを添加すると、クロロピクリンも分解され、ベンゼンスルフォン酸誘導体となり、無害化されることとなる。従って爆発等も防止されることとなるので、上記のように膜分離濃縮水を乾燥させず湿潤状態にする必要は必ずしもない。
【0051】
以上のように、本実施形態においては、洗浄廃水中の塵芥、土砂、金属類、炸薬粒子等の夾雑物が前処理工程で除去され、また懸濁物質(SS分等)がFMモジュール装置2で除去され、さらに塩類や砒素イオン等がDTモジュール装置3によって除去されるので、洗浄廃水の処理を好適に行うことが可能になる。
【0052】
また、DTモジュール装置3によって分離された透過水や凝縮装置5で蒸発した凝縮水が、系外に排出されることなく再利用されるので、化学兵器が遺棄されている場所が山中等、水の供給がされ難いような場所であっても支障を生ずるようなことがないのである。
【0053】
尚、上記実施形態では、逆浸透膜装置3として円板状の多数の平膜を配設した逆浸透膜装置を使用したため、膜のファウリング等を好適に防止することができ、また前処理も省力できるという好ましい効果が得られたが、逆浸透膜装置3の種類は該実施形態に限定されるものではない。
【0054】
また、該実施形態では、限外濾過膜装置16として平膜を多数積層した構造のものを用いたため、上記のような好ましい効果が得られたが、限外濾過装置の種類も該実施形態に限定されない。
【0055】
尚、DTモジュール装置3として上記実施形態では2つの逆浸透膜装置27,27を直列に配置するとともに、1つのNF膜装置28を前記一方の逆浸透膜装置27に並列に接続した構成からなるものを用いたが、DTモジュール装置3の構成は該実施形態に限定されるものではなく、たとえば逆浸透膜装置とNF膜装置とを1つずつ備えたものであってもよく、また2つのの逆浸透膜装置を直列に配置した構成のものであってもよく、さらに1つの逆浸透膜装置のみからなるものであってもよい。
【0056】
また、FMモジュール装置2として、上記実施形態では2つの限外濾過膜装置を並列に配設したものを用いたが、これに限らずたとえば1つの限外濾過膜装置のみを具備したものを用いることも可能である。
【0057】
さらに、上記実施形態では、洗浄廃水として、マスタードスルホン、VCAOA(2−クロロビニルアルソニック酸)、BDPAO(ディスジフェニルアルシネオキサイド)、ピクリン酸(炸薬の成分である)、塩化第二鉄、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等を含有したものを用いたが、洗浄廃水の含有成分は該実施形態に限定されるものではなく、たとえばルイサイト、ホスゲン、シアン化水素、ジフェニルシアノアルシン、ジフェニルクロロアルシン、クロロアセトフェノン、トリクロロアルシン等を含有する洗浄廃水に適用することも可能である。
【0058】
さらに、上記実施形態では、FMモジュール装置2やDTモジュール装置3等の膜分離装置で膜分離を行った後に蒸発乾燥を行ったが、これに限らず、たとえば図10に示すように、蒸発乾燥装置4及び凝縮装置5を前段側に配置し、逆浸透膜装置27を後段側に配置して、蒸発乾燥及び凝縮を行った後に膜分離することも可能である。
【0059】
この場合は、膜分離後の濃縮水は蒸発乾燥装置4の前段側に返送され、膜分離後の透過水は反応槽13の前段側に返送されることとなる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離して、前記洗浄廃水から毒性有機化合物及び重金属類を除去するものであるため、従来において処理が難航していた化学兵器の洗浄廃水を、好適に無害化することが可能となった。
【0061】
また、化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離し、濃縮水は蒸発乾燥して毒性有機化合物及び重金属類を除去し、透過水は前記化学兵器の洗浄水として再利用する場合には、毒性有機化合物や重金属類が固形物として容易に処理できるとともに、透過水を洗浄水として再利用しうるので、化学兵器が遺棄されている場所が山中等、水の供給がされ難いような場所であっても、洗浄作業に支障を生ずることがないという効果がある。
【0062】
さらに、濃縮水の蒸発後に凝縮を行うとともに、蒸発後の凝縮水を膜分離装置の前段側に返送する場合には、この凝縮水も洗浄水として再利用できるので、洗浄作業がより好適に行えるという効果がある。
【0063】
また、膜分離装置として、所定間隔を隔てて多数の平膜が配設されてなるとともに該平膜にスペーサーが取り付けられて構成された逆浸透膜装置を用いた場合には、膜モジュールに閉塞が生じにくく、沈殿槽や砂濾過等の前処理を省略できるという効果がある。
【0064】
さらに、多数の平膜が積層されて略封筒状に構成された膜モジュールを具備する限外濾過膜装置を、逆浸透膜装置の前段側に設けた場合には、固液分離装置で分離された液に多く含まれているSS分を好適に除去することができるという効果がある。
【0065】
さらに、膜分離装置に供給する前に、洗浄廃水をチオ硫酸ナトリウム等によって中和処理する場合には、洗浄剤(除染剤)であるジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを好適に分解することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態としての洗浄廃水の処理装置全体のフローを示す概略ブロック図。
【図2】前処理工程の部分の概略ブロック図。
【図3】FMモジュール装置の概略配置図。
【図4】限外濾過膜装置の分解斜視図。
【図5】同限外濾過膜装置の断面図。
【図6】DTモジュール装置の概略配置図。
【図7】浄化装置中の逆浸透膜装置の半裁断面図。
【図8】蒸発乾燥及び凝縮装置の概略ブロック図。
【図9】限外濾過膜装置の作用を示す概略説明図。
【図10】他実施形態の概略ブロック図。
【符号の説明】
1…前処理設備 2…FMモジュール装置
3…DTモジュール装置 4…蒸発乾燥装置
5…凝縮装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺棄化学兵器洗浄廃水の処理の作業時に、その遺棄化学兵器を洗浄することによって生ずる洗浄廃水、或いは上記のような作業時に着用される防護服等を洗浄することによって生ずる洗浄廃水を処理するための処理方法と処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
遺棄化学兵器は、1997年に発効した化学兵器禁止条約に基づき、処理が義務付けられているにもかかわらず、その処理方法が確立されていないこともあって、未だにその処理が難航している。
【0003】
このような遺棄化学兵器のうちでも、特に地中に埋蔵されていた化学兵器は、長期間の外壁の腐食劣化に伴い、内部から毒性化合物が漏洩するおそれがある。そこで、地中から掘り出した段階で、多量のさらし粉、次亜塩素酸ソーダ、或いはイソシアヌル酸ナトリウム等の塩素系洗浄剤をかけて漏出化学剤を分解し、水洗することで、次工程へのハンドリングができるようにしている。また、化学兵器で汚染された防護服についても、同様に除染剤をかけて水洗する手順がとられる。
【0004】
上記の作業で発生した遺棄化学兵器洗浄廃水には、未分解の化学兵器成分が残存している場合もあり、またその分解された有機化合物といえども決して無害なわけではなく、また無機系のものでも砒素化合物等の有毒な成分が含有されている。
従って、発掘された遺棄化学兵器を単に洗浄した廃水であっても、上記のような有害化合物等の汚染物質で汚染されているおそれがある。また同様に、このような遺棄化学兵器の処理作業時に着用された防護服を除染した場合にも、上記のような有害化合物が洗浄廃水に含有されているおそれがある。
【0005】
ところで、このような遺棄化学兵器の処理は、欧米を中心に実施されているものの、日本ではほとんど実施されたことがないので、かかる化学兵器の処理技術に関する我国の特許出願の件数は非常に少ない。
その中ではたとえば遺棄化学兵器砲弾の処理を電気化学的に行う下記特許文献1や、化学兵器用毒性化合物の燃焼分解を行う下記特許文献2等の出願がなされている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−162200号公報
【特許文献2】
特開平10−141637号公報
【0007】
しかし、これらの発明は、あくまで化学兵器それ自体を処理する技術、或いは化学兵器用毒性化合物を直接処理する技術であり、上記のように発掘、洗浄等の処理作業によって二次的に生ずる洗浄廃水のようなものを処理する技術ではない。実際、この種の洗浄廃水を処理する技術に関する特許出願は皆無に近い。
ちなみに、欧米の遺棄化学兵器は、ストックパイルと呼ばれる倉庫保管がなされていて、製造時の形状を保ったままのものが中心であるのに対し、我国が取り扱うべき遺棄化学兵器は、ノンストックパイルと呼ばれる放置されたものが中心であり、このことも、上記遺棄化学兵器の処理に関する特許出願が少なく、とりわけその洗浄廃水を処理する技術に関する特許出願が皆無に近いことの要因ともなっている。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、上記のような遺棄化学兵器等を洗浄することによって生ずる洗浄廃水や、遺棄化学兵器等の処理作業時に着用される防護服を洗浄することによって生ずる洗浄廃水を処理して無害化することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するために、化学兵器洗浄廃水の処理方法とその装置としてなされたもので、化学兵器洗浄廃水の処理方法としての特徴は、化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離して、前記洗浄廃水中の汚染物質を除去することである。
また、より具体的な化学兵器洗浄廃水の処理方法の特徴は、化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離し、濃縮水は蒸発乾燥して汚染物質とともに減容化し、廃棄、貯蔵に便利なようにし、透過水は前記化学兵器の洗浄水として再利用することである。
この場合、洗浄水として系外に排出し、貯留しておくことも可能である。
【0010】
さらに、遺棄化学兵器洗浄廃水の処理装置としての特徴は、遺棄化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、濃縮水と透過水とに分離して、前記洗浄廃水から汚染物質を除去する膜分離装置を具備することである。
【0011】
濃縮水を蒸発乾燥して得られた水は、凝縮して膜分離装置の前段側に返送することも可能である。
【0012】
膜分離装置としては、たとえば限外濾過膜装置を具備するFMモジュール装置と、逆浸透膜装置を具備するDTモジュール装置とで構成されたようなものが用いられる。かかる構成の膜分離装置を用いることで、先ずFMモジュール装置で懸濁性固形物(SS)成分を除去しておき、その後にDTモジュール装置で有害溶存成分を除去することができる。
すなわち、洗浄廃水には、未分解の化学兵器成分、砒素を含んだ分解成分の他に、洗浄剤中の多量の塩素成分等が溶存しており、廃水をそのまま系外に排出することはできない。また、廃水には土砂をベースとした多量のSS成分が含まれているために、通常の膜分離では閉塞を生ずるおそれがある。そこで、上記のようなFMモジュール装置とDTモジュール装置とで構成された膜分離装置が有用となるのである。
また、限外濾過膜装置としては、たとえば多数の平膜が積層されて略封筒状に構成された膜モジュールを具備するようなものが用いられる。さらに逆浸透膜装置としては、所定間隔を隔てて多数の平膜が配設されてなるとともに該平膜にスペーサーが取り付けられて構成されたようなものが用いられる。
【0013】
また膜分離装置に供給する前に、洗浄廃水中の除染剤を中和処理し、洗浄廃水のpH調整を行い、及び洗浄廃水に凝集剤を添加するための反応槽洗浄廃水をチオ硫酸ナトリウムによって中和処理する反応槽を、膜分離装置の前段側に設けることも可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に従って説明する。
【0015】
先ず、一実施形態としての、化学兵器洗浄廃水の処理装置について説明する。
【0016】
本実施形態の化学兵器洗浄廃水の処理装置は、図1に示すように、前処理を行うための前処理設備1と、限外濾過膜装置を具備したFMモジュール装置2と、逆浸透膜装置及びNF膜装置を具備したDTモジュール装置3と、蒸発乾燥装置4と、凝縮装置5とからなる。
【0017】
前処理設備1は、さらに、図2に示すように、沈砂池6と、バースクリーン7と、原水中継槽8及び原水中継ポンプ9と、2台の原水槽10,10 及び原水ポンプ11と、オートストレーナ12と、反応槽13と、FM原水槽14及びFM加圧ポンプ15を備えている。
【0018】
沈砂池6は、土砂、金属類、炸薬粒子などを除去するためのものであり、バースクリーン7は、大きい塵芥を除去するためのものである。さらに、反応槽13は、チオ硫酸ナトリウムによる除染剤の中和反応、水酸化ナトリウムと硫酸によるpHの調整、及びポリ塩化アルミニウムによる凝集反応を行わせるための槽である。
【0019】
FMモジュール装置2は、図3に示すように2つの限外濾過膜装置16,16を並列に配置した構成からなる。限外濾過膜装置16は、前記前処理設備1で前処理された処理液を、さらに固形スラッジ分(SS成分)と透過水とに分離するための装置であり、本実施形態の限外濾過膜装置16には、平膜モジュールを有する限外濾過膜が用いられている。
【0020】
より具体的には、図4及び図5に示すように、ABS樹脂製の支持板の両面にポリエチレン製の処理水スペーサーと平膜とが1枚ずつ重ね合わされ外周部がシールされて形成された封筒状平膜17が、多層に積層されて構成されている。そして、このように封筒状平膜17が多層に積層されたものが、図4に示すように1対の半割体18,18 からなる内側ケーシング19内に収容され、さらに図5に示すように、圧力容器20内に収容されている。
【0021】
圧力容器20の一端側には、前記前処理設備1で前処理された処理液の入口部21が形成され、圧力容器20の他端側には、濃縮水出口部22が形成されている。
【0022】
前記内側ケーシング19の内部であって、多層積層された封筒状平膜17の側方には、透過水排出路23が形成されている。そして、前記積層された封筒状平膜17には貫通孔24が穿設され、該貫通孔24が前記透過水排出路23に連通状態とされている。26は、入口部21側の近辺に設けられた整流板を示す。
【0023】
DTモジュール装置3は、2つの逆浸透膜装置27,27を直列に配置するとともに、1つのNF膜装置28を前記一方の逆浸透膜装置27に並列に接続した構成からなるものである。
【0024】
この、逆浸透膜装置27は、ディスクタイプの平膜がディンプルの付いたスペーサーと交互に積層された構造からなるものである。すなわち、この逆浸透膜装置は、図7に示すように、円筒状の装置本体29内に、円板状の平膜30が同じく円板状のスペーサ31の間に設けられた逆浸透膜部32が複数組積層されて構成されている。
【0025】
該逆浸透膜装置27の装置本体29の内周面には原水を導入する原水流路33が設けられ、該原水流路33から逆浸透膜の表面に原水が導入される。また、該逆浸透膜部32の上部にはエンドプレート34が設けられ、浸透圧以上の圧力に耐えられるようになっている。
【0026】
35は逆浸透膜部32の中央部に貫通された透過水パイプで、該透過水パイプ35は逆浸透膜によって分離された処理水を排出させる。また、36は濃縮水パイプで、各逆浸透膜によって濃縮された濃縮水を装置本体29外へ排出させる。
【0027】
蒸発乾燥装置4は、前記DTモジュール装置3によって分離された濃縮水を減圧して蒸発乾燥させるためのものである。また、凝縮装置5は、前記蒸発乾燥装置4で蒸発した水分を凝縮させるためのものである。
【0028】
蒸発乾燥装置4は、図8に示すように真空ポンプ37によって減圧蒸留されて蒸発乾燥させるものであり、また凝縮装置5は、冷却塔38によって冷却される。39は、蒸発した水分の汚染物質を吸着するための活性炭フィルターである。
【0029】
次に、上記のような洗浄廃水の処理装置を用いて、洗浄廃水を処理する方法の実施形態について説明する。
【0030】
先ず、原水である洗浄廃水の前処理を行う。洗浄廃水には、マスタードスルホン、VCAOA(2−クロロビニルアルソニック酸)、BDPAO(ディスジフェニルアルシネオキサイド)、ピクリン酸(炸薬の成分である)、塩化第二鉄等が含有されており、洗浄時の除染剤として用いられたさらし粉、次亜塩素酸ソーダ、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムも含有されている。さらに、土砂、金属粒子、炸薬粒子等が含有されている。
【0031】
前処理工程として、先ず沈砂槽6で土砂、金属類、炸薬粒子を除去した後、バースクリーン7で大きい塵芥を除去する。
【0032】
次に、大きい塵芥や土砂、金属類、炸薬粒子等が除去された洗浄廃水を、
原水中継槽8及び原水中継ポンプ9を介して原水槽10,10 へ供給し、原水ポンプ11からオートストレーナ12を経て反応槽13へ供給する。
【0033】
原水槽10,10 では洗浄廃水が一旦貯留され、オートストレーナ12では前記バースクリーン7で除去されなかった塵芥が除去されることとなる。
【0034】
反応槽へは、チオ硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸、及びポリ塩化アルミニウムが添加される。
【0035】
チオ硫酸ナトリウムは、除染剤として用いられていたジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを中和するためのものであり、除染剤中の塩素によって膜を損傷しないようにしている。
【0036】
また、水酸化ナトリウムと硫酸は、反応槽内の洗浄廃水のpHを調整するためのものである。さらにポリ塩化アルミニウムは凝集剤であり、これを添加するとによって不純物が凝集することとなる。
【0037】
このような中和や凝集を終えた洗浄廃水は、FMモジュール装置2へ供給する。供給された洗浄廃水は、FMモジュール装置2の限外濾過膜装置16で濾過水(透過水)と濃縮水に分離され、透過水は次工程のDTモジュール装置3へ供給され、濃縮水は蒸発乾燥装置4へ供給される。
より具体的に説明すると、FMモジュール装置2へ供給された洗浄廃水は、入口部21から限外濾過膜装置16の内部に流入し、濾過水(透過水)は、透過水排出路23から外部に排出され、逆浸透膜装置27に供給され、固形分(SS分)を含んだ濃縮水は、濃縮水出口部22から排出されて蒸発乾燥装置へ供給されるのである。
この限外濾過膜装置16として、本実施形態では上記のような構造のものを用いたため、流路面積が大きいので閉塞しにくく、逆洗浄も可能であり、図9に示すように膜表面の堆積物を容易に除去することができる。また限外濾過膜装置のそれぞれのモジュールはカセットごとに分解でき、膜が破損した場合でも容易に交換することができる。
また、洗浄廃水に含有されていた固形分(SS分)は、上述のように濃縮水側に移行されるので、透過水からは好適に除去されることとなる。
上記FMモジュール装置2では、限外濾過膜に対して供給される水を全量濾過する、いわゆるデッドエンド方式が採用されている。
【0038】
次に、上記のようにFMモジュール装置2で浮遊固形物(SS分)が除去された透過水は、DTモジュール装置3へ供給されるが、そのDTモジュール装置3に供給された透過水には、各種の塩類や砒素イオン等が含有されている可能性がある。
【0039】
しかし、残存している各種の塩類や砒素イオン等は、DTモジュール装置3のそれぞれの逆浸透膜装置27やNF膜装置28で除去される。
【0040】
この逆浸透膜装置27における逆浸透膜(平膜)は、浸透圧以上の圧力をかけると分子レベルで濾過できる半透膜で、上記各種の塩類や砒素イオン等は、この逆浸透膜装置27で好適に除去される。
【0041】
上述のように、逆浸透膜装置27は、円板状の逆浸透膜が積層された構造で、該逆浸透膜の表面とスペーサの間を原水が流れる時に圧力をかけると逆浸透膜は水のみを透過して膜の内側に脱塩された処理水が溜まり、該処理水は装置本体の中央部に縦設された処理水パイプを経て逆浸透膜装置から処理水(脱塩水)として排出される。
【0042】
各種の塩類や砒素イオン等が除去された脱塩水は、系外に放流されることなく、前記前処理工程の前段側に返送されて、洗浄水として再利用される。
【0043】
一方、洗浄廃水は逆浸透膜30とスペーサー31の間を通り濃縮水パイプ36を経て、逆浸透膜装置27から濃縮水として排出される。
【0044】
DTモジュール装置3においては、2つの逆浸透膜装置27と1つのNF膜装置28が上述のように配設されているので、好適に濃縮水と脱塩水に分離される。
【0045】
排出された濃縮水は、蒸発乾燥装置へ供給される。
【0046】
このようにDTモジュール装置3からの濃縮水及び前記FMモジュール装置2からの濃縮水は、蒸発乾燥装置4で蒸発され、所定の水分濃度にまで乾燥されることとなる。蒸発乾燥装置4は、60torrの減圧下で、蒸気のジャケット加温によって装置内が55〜65℃となるように運転され、8〜10時間で乾燥が完了する。
【0047】
蒸発した水分は、凝縮装置5によって凝縮され、FMモジュール装置2の前段側に返送されて洗浄水として再利用される。
【0048】
また、蒸発乾固された固形物は、たとえば窒素等の不活性ガス雰囲気で350 ℃〜600 ℃の温度で還元加熱処理される。或いは、汚染物質を含む別の固形物とともに別途処理される。
【0049】
尚、洗浄廃水に含有されているピクリン酸は、乾燥させると爆発するおそれがあるので、安全のために上記DTモジュール装置3やFMモジュール装置2からの膜分離濃縮水を完全に乾燥させずに湿潤状態にすることも考えられる。
【0050】
ただし、洗浄時において、ピクリン酸はジクロロイソシアヌル酸ナトリウムにより中和されてクロロピクリンになり、さらに炭酸ナトリウムや亜硫酸ナトリウムを添加すると、クロロピクリンも分解され、ベンゼンスルフォン酸誘導体となり、無害化されることとなる。従って爆発等も防止されることとなるので、上記のように膜分離濃縮水を乾燥させず湿潤状態にする必要は必ずしもない。
【0051】
以上のように、本実施形態においては、洗浄廃水中の塵芥、土砂、金属類、炸薬粒子等の夾雑物が前処理工程で除去され、また懸濁物質(SS分等)がFMモジュール装置2で除去され、さらに塩類や砒素イオン等がDTモジュール装置3によって除去されるので、洗浄廃水の処理を好適に行うことが可能になる。
【0052】
また、DTモジュール装置3によって分離された透過水や凝縮装置5で蒸発した凝縮水が、系外に排出されることなく再利用されるので、化学兵器が遺棄されている場所が山中等、水の供給がされ難いような場所であっても支障を生ずるようなことがないのである。
【0053】
尚、上記実施形態では、逆浸透膜装置3として円板状の多数の平膜を配設した逆浸透膜装置を使用したため、膜のファウリング等を好適に防止することができ、また前処理も省力できるという好ましい効果が得られたが、逆浸透膜装置3の種類は該実施形態に限定されるものではない。
【0054】
また、該実施形態では、限外濾過膜装置16として平膜を多数積層した構造のものを用いたため、上記のような好ましい効果が得られたが、限外濾過装置の種類も該実施形態に限定されない。
【0055】
尚、DTモジュール装置3として上記実施形態では2つの逆浸透膜装置27,27を直列に配置するとともに、1つのNF膜装置28を前記一方の逆浸透膜装置27に並列に接続した構成からなるものを用いたが、DTモジュール装置3の構成は該実施形態に限定されるものではなく、たとえば逆浸透膜装置とNF膜装置とを1つずつ備えたものであってもよく、また2つのの逆浸透膜装置を直列に配置した構成のものであってもよく、さらに1つの逆浸透膜装置のみからなるものであってもよい。
【0056】
また、FMモジュール装置2として、上記実施形態では2つの限外濾過膜装置を並列に配設したものを用いたが、これに限らずたとえば1つの限外濾過膜装置のみを具備したものを用いることも可能である。
【0057】
さらに、上記実施形態では、洗浄廃水として、マスタードスルホン、VCAOA(2−クロロビニルアルソニック酸)、BDPAO(ディスジフェニルアルシネオキサイド)、ピクリン酸(炸薬の成分である)、塩化第二鉄、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等を含有したものを用いたが、洗浄廃水の含有成分は該実施形態に限定されるものではなく、たとえばルイサイト、ホスゲン、シアン化水素、ジフェニルシアノアルシン、ジフェニルクロロアルシン、クロロアセトフェノン、トリクロロアルシン等を含有する洗浄廃水に適用することも可能である。
【0058】
さらに、上記実施形態では、FMモジュール装置2やDTモジュール装置3等の膜分離装置で膜分離を行った後に蒸発乾燥を行ったが、これに限らず、たとえば図10に示すように、蒸発乾燥装置4及び凝縮装置5を前段側に配置し、逆浸透膜装置27を後段側に配置して、蒸発乾燥及び凝縮を行った後に膜分離することも可能である。
【0059】
この場合は、膜分離後の濃縮水は蒸発乾燥装置4の前段側に返送され、膜分離後の透過水は反応槽13の前段側に返送されることとなる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離して、前記洗浄廃水から毒性有機化合物及び重金属類を除去するものであるため、従来において処理が難航していた化学兵器の洗浄廃水を、好適に無害化することが可能となった。
【0061】
また、化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離し、濃縮水は蒸発乾燥して毒性有機化合物及び重金属類を除去し、透過水は前記化学兵器の洗浄水として再利用する場合には、毒性有機化合物や重金属類が固形物として容易に処理できるとともに、透過水を洗浄水として再利用しうるので、化学兵器が遺棄されている場所が山中等、水の供給がされ難いような場所であっても、洗浄作業に支障を生ずることがないという効果がある。
【0062】
さらに、濃縮水の蒸発後に凝縮を行うとともに、蒸発後の凝縮水を膜分離装置の前段側に返送する場合には、この凝縮水も洗浄水として再利用できるので、洗浄作業がより好適に行えるという効果がある。
【0063】
また、膜分離装置として、所定間隔を隔てて多数の平膜が配設されてなるとともに該平膜にスペーサーが取り付けられて構成された逆浸透膜装置を用いた場合には、膜モジュールに閉塞が生じにくく、沈殿槽や砂濾過等の前処理を省略できるという効果がある。
【0064】
さらに、多数の平膜が積層されて略封筒状に構成された膜モジュールを具備する限外濾過膜装置を、逆浸透膜装置の前段側に設けた場合には、固液分離装置で分離された液に多く含まれているSS分を好適に除去することができるという効果がある。
【0065】
さらに、膜分離装置に供給する前に、洗浄廃水をチオ硫酸ナトリウム等によって中和処理する場合には、洗浄剤(除染剤)であるジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを好適に分解することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態としての洗浄廃水の処理装置全体のフローを示す概略ブロック図。
【図2】前処理工程の部分の概略ブロック図。
【図3】FMモジュール装置の概略配置図。
【図4】限外濾過膜装置の分解斜視図。
【図5】同限外濾過膜装置の断面図。
【図6】DTモジュール装置の概略配置図。
【図7】浄化装置中の逆浸透膜装置の半裁断面図。
【図8】蒸発乾燥及び凝縮装置の概略ブロック図。
【図9】限外濾過膜装置の作用を示す概略説明図。
【図10】他実施形態の概略ブロック図。
【符号の説明】
1…前処理設備 2…FMモジュール装置
3…DTモジュール装置 4…蒸発乾燥装置
5…凝縮装置
Claims (13)
- 遺棄化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離して、前記洗浄廃水中の汚染物質を除去することを特徴とする遺棄化学兵器洗浄廃水の処理方法。
- 遺棄化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、膜分離装置で濃縮水と透過水とに分離し、濃縮水は蒸発乾燥して汚染物質とともに減容化し、透過水は前記遺棄化学兵器の洗浄水として再利用することを特徴とする遺棄化学兵器洗浄廃水の処理方法。
- 濃縮水を蒸発乾燥して得られた水を凝縮し、その凝縮水を膜分離装置の前段側に返送する請求項1又は2記載の遺棄化学兵器洗浄廃水の処理方法。
- 膜分離装置が、限外濾過膜装置(16)を具備するFMモジュール装置(2) と、逆浸透膜装置(27)を具備するDTモジュール装置(3) とで構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の遺棄化学兵器洗浄廃水の処理方法。
- 膜分離装置に供給する前に、洗浄廃水中の除染剤を中和処理する請求項1乃至4のいずれかに記載の遺棄化学兵器洗浄廃水の処理方法。
- 膜分離装置に供給する前に、洗浄廃水のpH調整を行う請求項1乃至5のいずれかに記載の遺棄化学兵器洗浄廃水の処理方法。
- 膜分離装置に供給する前に、洗浄廃水に凝集剤を添加する請求項1乃至6のいずれかに記載の遺棄化学兵器洗浄廃水の処理方法。
- 遺棄化学兵器を洗浄した洗浄廃水を、濃縮水と透過水とに分離して、前記洗浄廃水から汚染物質を除去する膜分離装置を具備することを特徴とする遺棄化学兵器洗浄廃水の処理装置。
- 濃縮水を蒸発乾燥する蒸発乾燥装置(4) が、膜分離装置の後段側に設けられている請求項8記載の遺棄化学兵器洗浄廃水の処理装置。
- 膜分離装置が、限外濾過膜装置(16)を具備するFMモジュール装置(2) と、逆浸透膜装置(27)を具備するDTモジュール装置(3) とで構成されている請求項8又は9記載の遺棄化学兵器洗浄廃水の処理装置。
- 限外濾過膜装置(16)が、多数の平膜が積層されて略封筒状に構成された膜モジュールを具備するものである請求項8乃至10のいずれかに記載の遺棄化学兵器洗浄廃水の処理装置。
- 逆浸透膜装置(27)が、所定間隔を隔てて多数の平膜(30)が配設されてなるとともに該平膜(30)にスペーサー(31)が取り付けられて構成されたものである請求項8乃至11のいずれかに記載の遺棄化学兵器洗浄廃水の処理装置。
- 洗浄廃水中の除染剤を中和処理し、洗浄廃水のpH調整を行い、及び洗浄廃水に凝集剤を添加するための反応槽(13)が、膜分離装置の前段側に設けられている請求項8乃至12のいずれかに記載の遺棄化学兵器洗浄廃水の処理装置。
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