JP2004109089A - 触針式プローブ機構の制御方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】触針子2を被測定物に接触させて走査させるとき、バネ7が中立点にあるように移動ステージを制御する。さらに、設定値に応じた力を加えるようにアクチュエータ21を制御する。これにより、バネ7は中立点にあるため、バネ7からは接触力は得られず、アクチュエータ21によって触針子2に加えられる設定値に応じた力が、触針子2と被測定物との接触力となる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、触針式プローブ機構の制御方法及び装置に係わり、特に、触針子、触針子を支持するバネ及び触針子に対してその変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、触針式プローブを変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、微小形状を高精度に測定するために、触針式プローブを搭載した形状測定装置が開発されてきている。図6は触針式プローブ機構8の一例である。1は触針子2の先端に取り付けられ、被測定物と接触する真球である。触針子2は、吸気孔6から吸気される静圧空気軸受5によって非接触支持され、横方向には拘束され、上下方向には摺動抵抗なく動くことができる。
【0003】
7は触針子2を支持し、ハウジング4に固定されているバネである。3は触針子2の上下方向の変位を検出する変位計である。ハウジング4は触針子2の変位方向と同方向に駆動される不図示の移動ステージに搭載される。
【0004】
図6に示す触針式プローブ機構8の接触力の設定方法を説明する。触針子2の先端の真球1が被測定面に押し付けられ、触針子2は、バネ7の力と被測定面からの反力とが釣り合う位置に移動する。今、触針子2の重量mとバネ7のバネ力とが釣り合う中立点を初期位置dz0とし、上記被測定面からの反力とが釣り合う位置への移動により、バネ7が、この初期位置dz0から変位量dzrefだけ移動したとする。このとき、触針子2と測定面との接触力fpは式(1)のように表される。
fp=kp×dzref …(1)
kp:バネ7のバネ定数
【0005】
従って、fpに設定したい接触力の値を代入した変位量dzref=fp/kで変位計3の出力が一定になるようにして、ハウジング4を搭載した移動ステージを駆動すれば、被測定面と真球1との接触力を設定したい値に一定に保つことができる。
【0006】
次に、図6に示す触針式プローブを搭載した形状測定装置の測定原理の一例を図7において説明する。形状測定装置は、XY平面上に駆動するXY軸移動ステージ18と、Z軸方向に駆動するZ軸移動ステージ10とを備えている。Z軸移動ステージ10上には、上述した触針式プローブ機構8が、触針子2の上下方向がZ軸方向となるように、搭載されている。つまり、Z軸移動ステージ10が、図6について上述した触針子2の変位方向と同方向に駆動される移動ステージに相当する。
【0007】
触針子2の上下方向、つまり、Z軸方向の微小変位を検出する変位計3としては、ここでは光学式変位計が搭載されている。また、XY軸移動ステージ18及びZ軸移動ステージ10の変位を検出するためにZ軸移動ステージ10上には、X軸用レーザ測長器12とY軸用レーザ測長器13とZ軸用レーザ測長器14が搭載されている。15はX軸用レーザ測長器12用の基準ミラーであり、16はY軸用レーザ測長器13の基準ミラーであり、17はZ軸用レーザ測長器14の基準ミラーである。
【0008】
次に上述した形状測定装置の測定動作について説明する。まず、被測定物取付治具19上に取り付けられた被測定物20に触針子2を接触させる。その後、変位計3の出力が一定値となるようにZ軸移動ステージ10を駆動制御するZ軸追従制御を開始する。さらに、Z軸追従制御を行った状態で、XY軸移動ステージ18を駆動し、被測定物20上において、触針子2を走査させる走査制御を行う。
【0009】
このZ軸追従制御及び走査制御中のXY移動ステージ18及びZ軸移動ステージ10の移動軌跡を上述したX軸用レーザ測長器12、Y軸用レーザ測長器13及びZ軸用レーザ測長器14によって検出し、その値を被測定物20の表面形状とすることができる。
【0010】
このような測定原理の触針式プローブ機構8は、触針子2がバネ7で支持され、かつ摺動抵抗が少ない支持方法である。このため、触針子2の重量と支持するバネ7のバネ定数kp又はバネ定数Kpに被測定物との接触剛性を加算したバネ定数kcによって求まる式(2)で示す機械共振周波数ωで振動しやすく、減衰しにくいと言う問題がある。
【0011】
【数1】
非接触時k=kp、接触時k=kc
【0012】
触針子2が振動していると、触針子2の初期位置(=触針子2の自重がバネ7の発生する復元力と釣り合う中立点)を検出することが困難となるため、触針子2と被測定物20との接触力を精度良く制御することができず、形状測定の不安定要因となる。
【0013】
また、触針子2を走査するとき、被測定物20表面に付着したゴミや、形状、接触状態によって触針子2が機械共振周波数で振動してしまい、接触力を精度良く制御することができず、形状測定の不安定要因となる。
【0014】
そこで、粘性流体を用いて触針子2の振動を減衰させるものが特許文献1に記載されている。しかしながら、粘性流体を扱うためにはシール機構等が必要となり、触針式プローブの構成が複雑化してしまうという問題がある。また、減衰性能は粘性流体と触針式プローブとによって決定されてしまうため、アクティブに変化させることはできない。
【0015】
また、図6に示す触針式プローブのバネ7の表面にそのバネ7とは異なる材料を付着させ、バネ7の減衰性能を高めるものが特許文献2に記載されている。しかしながら、この場合も減衰性能をアクティブに変化させることはできない。しかも、このような構成のバネ7は高い減衰性能が得られにくい。
【0016】
【特許文献1】
特開平9−96518号公報
【特許文献2】
特開2000−298013公報
【特許文献3】
特開平8−43066号公報
【特許文献4】
特開平5−126553号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、触針子の外乱の影響による振動を抑制し、計測精度の向上を図ることができる触針式プローブ機構の制御方法及び装置を提供することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御方法であって、前記触針子を被測定物に接触させて走査させるとき、前記バネが中立点にあるように前記移動ステージを制御すると共に、設定値に応じた力を加えるようにアクチュエータを制御することを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法に存する。
【0019】
請求項1記載の発明によれば、触針子を被測定物に接触させて走査させるとき、バネが中立点にあるように移動ステージを制御する。さらに、設定値に応じた力を加えるようにアクチュエータを制御する。これにより、バネは中立点にあるため、バネからは接触力は得られず、アクチュエータによって触針子に加えられる設定値に応じた力が、触針子と被測定物との接触力となる。
【0020】
従って、触針子を被測定物に接触させて走査させるとき、バネが中立点にあるように移動ステージを制御することにより、触針子を、初期位置であるバネが中立点となる位置から設定接触力相当の変位まで移動させる必要がなく、移動範囲を小さくすることができ、触針子の外乱の影響による振動を抑制することができる。
【0021】
請求項2記載の発明は、触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御方法であって、前記触針子を被測定物に接触させて走査させるとき、前記バネが所定変位にあるように前記移動ステージを制御すると共に、前記触針子の振動を打ち消す力を加えるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法に存する。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、触針子を被測定物に接触させて走査させるとき、前記バネが所定変位にあるように前記移動ステージを制御する。さらに、触針子の振動を打ち消す力を加えるようにアクチュエータを制御する。これにより、バネから所定変位に応じた力が、触針子と被測定物との接触力となる。従って、触針子の振動を打ち消す力を加えるようにアクチュエータを制御することにより、触針子の外乱の影響による振動を制御することができる。
【0023】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の触針式プローブ機構の制御方法であって、前記バネの前記中立点からのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータを制御することを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法に存する。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、バネの中立点からのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータを制御する。バネが中立点にあるように移動ステージを制御するとき、移動ステージの応答の遅れが発生する場合がある。そして、この応答遅れに起因して、接触力に変化が発生してしまう。そこで、以上のように、バネの中立点からのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータを制御することにより、アクチュエータが加えるずれ量に応じた力が応答遅れに起因する接触力変化を補償することとなる。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の触針式プローブ機構の制御方法であって、前記バネの前記所定変位からのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータを制御することを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法に存する。
【0026】
請求項4記載の発明によれば、バネの所定変位からのからのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータを制御する。バネが所定変位にあるように移動ステージを制御するとき、移動ステージの応答の遅れが発生する場合がある。そして、この応答遅れに起因して、接触力に変化が発生してしまう。そこで、以上のように、バネの所定変位からのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータを制御することにより、アクチュエータが加えるずれ量に応じた力が応答遅れに起因する接触力変化を補償することとなる。
【0027】
請求項5記載の発明は、触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御方法であって、前記触針子の変位方向における速度に応じた力を加えるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法に存する。
【0028】
請求項5記載の発明によれば、触針子の変位方向における速度に応じた力を加えるようにアクチュエータを制御する。従って、触針子の変位方向における速度に応じた力を加えることにより、触針子の振動を打ち消す力を加えることができ、触針子の外乱の影響による振動を抑制することができる。
【0029】
請求項6記載の発明は、触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御方法であって、前記触針子の目標位置からのずれ量に応じた力を加えるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法に存する。
【0030】
請求項6記載の発明によれば、触針子の目標位置からのずれ量に応じた力を加えるようにアクチュエータを制御する。従って、触針子の目標位置からのずれ量に応じた力を加えることにより、触針子の振動を打ち消す力を加えることができ、触針子の外乱の影響による振動を抑制することができる。
【0031】
請求項7記載の発明は、触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御装置であって、前記バネが中立点にあるように前記移動ステージを制御するステージ制御部と、前記触針子の変位方向における速度を演算する速度演算部と、前記演算した速度に応じた力と設定値に応じた力とを加算する加算部と、前記加算部が加算した力を加えるようにアクチュエータを制御するアクチュエータ制御部とを備えたことを特徴とする触針式プローブ機構の制御装置に存する。
【0032】
請求項7記載の発明によれば、ステージ制御部が、バネが中立点にあるように前記移動ステージを制御する。速度演算部が、触針子の変位方向における速度を演算する。加算部が、演算した速度に応じた力と予め定めた一定値に応じた力とを加算する。アクチュエータ制御部が、加算部が加算した力を加えるようにアクチュエータを制御する。これにより、バネは中立点にあるため、バネからは接触力は得られず、アクチュエータによって触針子に加えられる設定値に応じた力が、触針子と被測定物との接触力となる。
【0033】
従って、触針子を被測定物に接触させて走査させるとき、バネが中立点にあるように移動ステージを制御することにより、触針子を、初期位置であるバネが中立点となる位置から設定接触力相当の変位まで移動させる必要がなく、移動範囲を小さくすることができ、触針子の外乱の影響による振動を抑制することができる。しかも、触針子の変位方向における速度に応じた力を加えることにより、触針子の振動を打ち消す力を加えることができ、触針子の外乱の影響による振動をさらに抑制することができる。
【0034】
請求項8記載の発明は、触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御装置であって、前記触針子の目標位置と変位検出部が検出した前記触針子の変位との差を算出する差算出部と、前記差算出部が算出した差に応じた力を加えるように前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部とを備えたことを特徴とする触針式プローブ機構の制御装置に存する。
【0035】
請求項8記載の発明によれば、変位検出部が、触針子の変位を検出する。差算出部が、目標位置と前記検出部が検出した変位との差を算出する。アクチュエータ制御部が、差算出部が算出した差に応じた力を加えるように前記アクチュエータを制御する。従って、差算出部が算出した差、つまり、触針子の目標位置からのずれ量に応じた力を加えることにより、触針子の振動を打ち消す力を加えることができ、触針子の外乱の影響による振動を抑制することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
第1実施形態
以下、本発明の触針式プローブ機構の制御方法及び装置について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の触針式プローブ機構の制御方法が実施される触針式プローブ機構8の一実施の形態を示す図である。
1は触針子2の先端に取り付けられ、被測定物と接触する真球である。触針子2は、吸気孔6から吸気される静圧空気軸受5によって非接触支持され、横方向には拘束され、上下方向には摺動抵抗なく動くことができる。
【0037】
7は、触針子2を支持し、ハウジング4に固定されているバネである。3は触針子2の上下方向の変位を検出する変位計(=変位検出部)である。ハウジング4は触針子2の変位方向と同方向に移動される不図示の移動ステージに搭載される。触針子2を支持するバネ7はコイルバネ、板バネ、ヒンジ、空気バネ、磁気式バネ等形式を問わず、変位によって力が発生する機構である。
【0038】
また、触針子2の横方向の支持機構は静圧空気軸受5に限定されず、平行板バネなどの横方向剛性の高い支持機構であればよい。変位計3は光学式、静電容量式、作動トランス式等形式は問わない。
【0039】
また、21は、触針子2に対して変位方向に力を加えるアクチュエータである。アクチュエータ21としては、ボイスコイルモータ等の電磁式アクチュエータやエアシリンダ、バイモノフ構造のPZT等からなり、所定の力を発生できるものであればよい。ここでは、ボイスコイルモータとして説明する。
【0040】
アクチュエータ21において、触針子2の先端に取り付けられた真球1とは反対にあるフランジの上下面に、ボイスコイルモータのコイル21aが取り付けられ、フランジの側面には、ボイスコイルモータの磁気回路21bが取り付けられている。
【0041】
上述した触針式プローブ機構8は、図7について従来で説明したように、Z軸移動ステージ10及びXY軸移動ステージ19に取り付けられ、形状測定装置を構成する。なお、図7中のZ軸移動ステージ10が、図1について上述した触針子2の変位方向と同方向に駆動される移動ステージに相当するものとする。
【0042】
次に、上述した触針式プローブ機構8の制御装置について、図2を参照して以下説明する。同図に示すように制御装置25は、上述した触針式プローブ機構8内の変位計3の出力が供給されるマイクロコンピュータ26(以下、μCOM26)と、アクチュエータ21を駆動するためのアクチュエータ駆動回路27と、Z軸移動ステージ10を駆動するためのZ軸移動ステージ駆動回路28とを備えている。
【0043】
上述したμCOM26は、予め定めたプログラムに従って動作を行うCPU26Aと、プログラムなどを格納した読み出し専用のメモリであるROM26Bと、各種のデータを格納すると共に、CPU26Aの処理作業に必要な各種エリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM26Cとを有している。
【0044】
上述したCPU26Aは、アクチュエータ駆動回路27及びZ軸移動ステージ駆動回路28に対して各々制御信号を出力することにより、アクチュエータ21及びZ軸移動ステージ10の制御を行う。なお、CPU26Aは、XY軸移動ステージ18の駆動制御など形状測定に必要な他の制御を行うことも考えられるが、説明を簡単にするため省略する。
【0045】
以下、上述した制御装置25による触針式プローブ機構8の制御について説明する。まず、CPU26Aは、触針子2が被測定物に接触していない状態で、触針子2の重量とバネ7とのバネ力とが釣り合う中立点である初期位置に、触針子2を停止させ、そのときの変位計3の出力を、初期位置での出力としてセットする初期位置検出処理を行う。初期位置検出処理において、CPU26Aは、変位計3の出力に基づき、触針子2が振動していると判断したとき、この振動を減衰させる振動減衰処理を行う。
【0046】
振動減衰処理において、CPU26Aは、変位計3の出力に基づき、触針子2の変位方向の速度を求める。そして、アクチュエータ21によって、触針子2に対して、求めた速度がゼロになるような力が加わるように、アクチュエータ駆動回路27を介してアクチュエータ21を制御する。
【0047】
このようなアクチュエータ21の制御により、触針子2には、アクチュエータ21から触針子2の振動を打ち消す力が加えられ、触針子2が振動していても、迅速に振動を抑制することができる。従って、触針子2を正確に、かつ、精度よく初期位置に停止することができる。
【0048】
上述した振動減衰処理の詳細な動作について、図3に示すCPU26Aの機能ブロック図を参照して以下説明する。まず、CPU26A内の速度演算部26A−1が、変位計3の出力dzに基づき、触針子2の変位方向の速度Vprbを演算する。
【0049】
次に、制御量演算部26A−2が、演算した速度Vprbがゼロになるような力を演算すると共に、アクチュエータ21が上記演算した力を発生させるのに必要な駆動電流Im1を演算する。そして、その演算結果である駆動電流Im1をアクチュエータ駆動回路27に対して出力する。アクチュエータ駆動回路27は、CPU26Aから出力された駆動電流Im1をアクチュエータ21内のコイル21aに流す。アクチュエータ21は、上記駆動電流Im1に応じた力を、触針子2に対して加える。なお、図3中dは、外乱により触針子2に加えられる力である。
【0050】
一方、変位計3の出力に基づき、触針子2が振動しておらず、すでに初期位置で停止していると判断したときは、直ちに、このときの変位計3の出力を初期位置としてセットした後、この状態を維持するために拘束処理を行う。この拘束処理におけるCPU26Aの動作を、図4に示すCPU26Aの機能ブロック図を用いて、以下説明する。
【0051】
まず、CPU26Aは、加算器26A−3により初期位置としてセットした出力dz0と、変位検出部3の反転出力−dzとを加算して、制御量演算部26A−4に供給する。加算器26A−3の出力(dz0−dz)は、初期位置としてセットした出力dz0と、変位検出部3の出力dzとの差であり、この差が、初期位置からの触針子2のずれ量に相当する。以上のことから明らかなように、加算器26A−3が請求項中の差算出部に相当する。
【0052】
制御量演算部26A−4は、加算器26A−3から供給された上記差がゼロになるような力を演算すると共に、アクチュエータ21が上記演算した力を発生されるのに必要な駆動電流Im1を演算する。そして、その演算結果である駆動電流Im1をアクチュエータ駆動回路27に対して出力する。以上のことから明らかなように、CPU26Aが請求項8のアクチュエータ制御部に相当することがわかる。
【0053】
アクチュエータ駆動回路27は、CPU26Aから出力された駆動電流Im1をアクチュエータ21内のコイル21aに流す。アクチュエータ21は、上記駆動電流Im1に応じた力、つまり、触針子2の振動を打ち消す力を、触針子2に対して加える。なお、図4中dも、外乱により触針子2に加えられる力である。これにより、触針子2が初期位置で停止している状態から、外乱dが加わって振動状態になったとしても、触針子2の振動を打ち消す力を加えることができ、初期位置に触針子2を拘束することができる。
【0054】
次に、触針子2を被測定物に接触させて走査させるときの制御について説明する。今、上述したように、初期位置としてセットした変位計3の出力をdz0とする。このとき、CPU26Aは、変位計3の出力がdz0となるように、すなわち、バネ7が中立点となるように、Z軸移動ステージ駆動回路28を介して、Z軸移動ステージ10を駆動する。以上のことから明らかなようにCPU26Aは、ステージ制御部を構成する。さらに、CPU26Aは、アクチュエータ21によって、触針子2に対して、予め定めた設定値に応じた力が加わるように、アクチュエータ駆動回路27を介してアクチュエータ21を制御する。
【0055】
以上の駆動制御により、バネ7は中立点にあるため、バネ7からは接触力は得られず、アクチュエータ21によって触針子2に加えられる設定値に応じた力が、触針子2と被測定物との接触力となる。つまり、従来の触針式プローブ機構では、バネ7の変位によって接触力を設定していたが、本実施形態では、アクチュエータ21が触針子2に加える力によって、接触力を設定できる。
【0056】
今、アクチュエータ21の推力定数をKf(N/A)、アクチュエータ21内のコイル21aに流す駆動電流をImとすると、式(3)に示すような接触力fpが得られる。
fp=Kf×Im …(3)
【0057】
従って、触針子2を被測定物に接触させて走査させるとき、バネ7が中立点にあるようにZ軸移動ステージ10を制御することにより、触針子2を、初期位置であるバネ7が中立点となる位置から設定接触力相当の変位まで移動させる必要がなく、移動範囲を小さくすることができ、触針子2の外乱の影響による振動を抑制することができる。
【0058】
CPU26Aは、また、変位計3の出力に基づき、触針子2の変位方向の速度を求め、アクチュエータ21によって、触針子2に対して、求めた速度がゼロになるような力がさらに加わるように、アクチュエータ駆動回路27を介してアクチュエータ21を制御する。つまり、この制御により、触針子2には、アクチュエータ21から触針子2の振動を打ち消す力を加えることができ、触針子2が振動してしまっても、振動を抑制することができる。
【0059】
以上述べた制御の詳細について、図5に示すCPU26Aの機能ブロック図を参照して説明する。まず、CPU26A内の速度演算部26A−5が、変位計3の出力に基づき、触針子2の変位方向の速度Vprbを演算する。次に、制御量演算部26A−6が、演算した速度Vprbがゼロになるような力を演算すると共に、アクチュエータ21が上記演算した力を発生させるのに必要な駆動電流Im1を演算する。そして、その演算結果である駆動電流Im1を加算器26A−7(=加算部)に対して出力する。
【0060】
その後、加算器26A−7が、制御量演算部26A−4からの駆動電流Im1と、上述した設定値に応じた力をアクチュエータ21が発生させるのに必要な駆動電流Im3とを加算し、アクチュエータ駆動回路27に対して出力する。アクチュエータ駆動回路27は、加算された駆動電流(Im1+Im2)をアクチュエータ21に出力する。アクチュエータ21は、上記駆動電流(Im1+Im2)に応じた力、つまり、設定値に応じた力と触針子2の振動を打ち消す力とを、触針子2に対して加える。以上のことから明らかなように、CPU26Aが請求項7のアクチュエータ制御部に相当することがわかる。
【0061】
図3や図5に示した制御のように、速度フィードバックを行うと、(4)式の減衰項を変化させることと等価となり、減衰効果を向上できる。
【数2】
F:力、m:重量、c:減衰係数、k:バネ定数、x:変位、ドットは微分を表す。
【0062】
また、図3及び図5の速度演算部26A−1及び26A−5の演算としては、サンプリング時間をts、1サンプリング前のデータをdz(n−1)、現在のサンプリングデータをdz(n)とすると、(5)式を演算することによって実現できる。実際は、ノイズ除去のためにソフトウェア的なフィルタ処理をすることもある。
【数3】
Vprb(n):nサンプリング時の触針子速度
【0063】
図3及び図5の制御量演算部26A−2及び26A−6の演算としては、サンプリング時間tsで離散化された状態空間方程式(6)式と、出力方程式(7)の演算を行うことによって実現できる。
x(n+1)=ad・x(n)+bd・u(n) …(6)
y(n)=cd・x(n)+dd・u(n) …(7)
ad、bd、cd、dd:tsで離散化後の定数
x(n):nサンプリングの状態定数
u(n):nサンプリング時の入力
y(n):nサンプリング時の出力
【0064】
上述したように制御量演算部26A−2及び26A−6は(6)、(7)式の演算によって構築でき、(6)、(7)式の定数を調整することによって制御帯域を設定できる。
【0065】
今、触針子2が非接触状態である場合、触針子2を支持するバネ7のばね定数kpと触針子2の重量mから(2)式によって、プローブの機械共振周波数ωp(rad/s)が求まる。そこで、図3の制御量演算部26A−2においては、その制御帯域ωo1が前記プローブの機械共振周波数ωp(rad/s)よりも十分に高いものとなるように(6)、(7)式の定数が設定されている。
【0066】
一方、触針子2が接触状態である場合、触針子2と被対象物の接触剛性から算出されるばね定数kcと触針子2の重量mpから(1)式によって、プローブの機械共振周波数ωc(rad/s)が求まる。そこで、図5の制御量演算部26A−6においては、制御帯域ωo1が前記プローブの機械共振周波数ωc(rad/s)よりも十分に高いものとなるように(6)、(7)式の定数が設定されている。
【0067】
なお、上述した第1実施形態では、触針子2の変位方向がZ軸方向となるように、触針式プローブがZ軸移動ステージ10に搭載されていた。つまり、Z軸移動ステージ10が、上述した触針子2の変位方向と同方向に駆動される移動ステージに相当していた。
【0068】
しかしながら、触針子2の変位方向がX軸やY軸方向となるように、触針式プローブをX軸Y軸ステージ18に搭載することも考えられる。この場合、X軸Y軸移動ステージが、上述した触針子2の変位方向と同方向に駆動される移動ステージとなる。このとき、バネ7の中立点はバネ7の自然長となる。
【0069】
第2実施形態
なお、上述した第1実施形態では、触針子2を被測定物に接触させて走査させるとき、バネ7が中立点にあるようにZ軸移動ステージ10を制御すると共に、設定値に応じた力を加えるようにアクチュエータ21を制御していた。
【0070】
しかしながら、従来のようにバネ7が所定変位にあるようにZ軸移動ステージ10を制御し、さらに、第1実施形態で説明したように触針子2に振動を打ち消す力のみを加えるようにすることが考えられる。この場合、従来のように、所定変位に応じた力が接触力となる。
【0071】
この場合の触針子2を被測定物に接触させて走査させるときのCPU26Aの機能ブロック図は、図3とほぼ同じになる。異なる部分は、第2実施形態においては従来と同様にバネ7の変位が接触力となるため、触針子2には、アクチュエータ21からの力や、外乱dの他に、点線で示すように、バネ7の所定変位に応じた力f2がさらに加わることになる。
【0072】
以上のように、触針子2の振動を打ち消す力を加えるようにアクチュエータを制御することにより、触針子2が振動してしまっても、振動を抑制することができるという効果を得られる。
【0073】
第3実施形態
第1及び第2実施形態に示すようにバネ7が中立点や所定位置にあるようにZ軸移動ステージを制御するとき、Z軸移動ステージ10の応答遅れが発生する場合がある。そして、この応答遅れに起因して、接触力が変化してしまう。そこで、バネ7の中立点や、所定変位からのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータ21を制御し、アクチュエータ21が触針子2に加える上記ずれ量に応じた力によって、応答遅れに起因する接触力変化を補償することが考えられる。
【0074】
詳しい動作を説明すると、CPU26Aは、変位計3からの出力に基づき、中立点や所定変位からの触針子2のずれ量Δdzを演算する。次に、CPU26Aは、応答遅れに起因する接触力変化を補償する力を演算する。今、ずれ量Δdzときの接触力の変化量Δfpは、式(8)に示すようになる。
Δfp=kp×Δdz …(8)
kp:バネ定数
【0075】
従って、CPU26Aは、式(8)に示すΔfpに相当する力を、応答遅れに起因する接触力変化を補償する力として演算する。次に、CPU26Aは、アクチュエータ21がΔfpに相当する力を発生させるのに必要な駆動電流ΔImを式(9)を用いて演算する。
ΔIm=Δfp/Kf …(9)
Kf:アクチュエータの推力定数
【0076】
そして、第1実施形態に適用する場合には、式(9)に示す駆動電流ΔImを図5に示す加算器26A−7でさらに加える構成となる。一方、第2実施形態で適用する場合には、図3に示す制御量演算部26A−2の後段に加算器を設け、制御量演算部26A−2が出力する駆動電流Imと、さらに式(9)に示す駆動電流ΔImとを加算して、アクチュエータ駆動回路27に出力する構成となる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、触針子を被測定物に接触させて走査させるとき、バネが中立点にあるように移動ステージを制御することにより、触針子を、初期位置であるバネが中立点となる位置から設定接触力相当の変位まで移動させる必要がなく、移動範囲を小さくすることができ、触針子の外乱の影響による振動を抑制することができるので、計測精度向上を図った触針式プローブ機構の制御方法を得ることができる。
【0078】
請求項2記載の発明によれば、触針子の振動を打ち消す力を加えるようにアクチュエータを制御することにより、触針子の外乱の影響による振動を制御することができるので、計測精度向上を図った触針式プローブ機構の制御方法を得ることができる。
【0079】
請求項3記載の発明によれば、バネの中立点からのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータを制御することにより、アクチュエータが加えるずれ量に応じた力が応答遅れに起因する接触力変化を補償することとなるので、接触力を常に一定に保つことができ、より一層、計測精度向上を図った触針式プローブ機構の制御方法を得ることができる。
【0080】
請求項4記載の発明によれば、バネの所定変位からのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータを制御することにより、アクチュエータが加えるずれ量に応じた力が応答遅れに起因する接触力変化を補償することとなるので、接触力を常に一定に保つことができ、より一層、計測精度向上を図った触針式プローブ機構の制御方法を得ることができる。
【0081】
請求項5記載の発明によれば、触針子の変位方向における速度に応じた力を加えることにより、触針子の振動を打ち消す力を加えることができ、触針子の外乱の影響による振動を抑制することができるので、計測精度向上を図った触針式プローブ機構の制御方法を得ることができる。
【0082】
請求項6記載の発明によれば、触針子の目標位置からのずれ量に応じた力を加えることにより、触針子の振動を打ち消す力を加えることができ、触針子の外乱の影響による振動を抑制することができるので、計測精度向上を図った触針式プローブ機構の制御方法を得ることができる。
【0083】
請求項7記載の発明によれば、触針子を被測定物に接触させて走査させるとき、バネが中立点にあるように移動ステージを制御することにより、触針子を、初期位置であるバネが中立点となる位置から設定接触力相当の変位まで移動させる必要がなく、移動範囲を小さくすることができ、触針子の外乱の影響による振動を抑制することができる。しかも、触針子の変位方向における速度に応じた力を加えることにより、触針子の振動を打ち消す力を加えることができ、触針子の外乱の影響による振動をさらに抑制することができるので、計測精度向上を図った触針式プローブ機構の制御装置を得ることができる。
【0084】
請求項8記載の発明によれば、差算出部が算出した差、つまり、触針子の目標位置からのずれ量に応じた力を加えることにより、触針子の振動を打ち消す力を加えることができ、触針子の外乱の影響による振動を抑制することができるので、計測精度向上を図った触針式プローブ機構の制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の触針式プローブ機構の制御方法が実施される触針式プローブ機構8の一実施の形態を示す図である。
【図2】図1に示す触針式プローブ機構の制御装置を示す図である。
【図3】第1実施形態における振動減衰処理時及び第2実施形態において、触針子2を被測定物に接触させて走査させるときのCPU26Aの機能ブロック図である。
【図4】第1実施形態における拘束処理時のCPU26Aの機能ブロック図である。
【図5】第1実施形態において、触針子2を被測定物に接触させて走査させるときのCPU26Aの機能ブロック図である。
【図6】従来の触針式プローブの一例を示す図である。
【図7】図6に示す触針式プローブを搭載した形状測定装置を示す図である。
【符号の説明】
2 触針子
3 変位計(変位検出部)
7 バネ
8 触針式プローブ機構
10 Z軸移動ステージ(移動ステージ)
21 アクチュエータ
26A アクチュエータ制御部
26A−3 加算器(差算出部)
26A−7 加算器(加算部)
Claims (8)
- 触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御方法であって、
前記触針子を被測定物に接触させて走査させるとき、前記バネが中立点にあるように前記移動ステージを制御すると共に、設定値に応じた力を加えるようにアクチュエータを制御する
ことを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法。 - 触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御方法であって、
前記触針子を被測定物に接触させて走査させるとき、前記バネが所定変位にあるように前記移動ステージを制御すると共に、前記触針子の振動を打ち消す力を加えるように前記アクチュエータを制御する
ことを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法。 - 請求項1記載の触針式プローブ機構の制御方法であって、
前記バネの前記中立点からのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータを制御する
ことを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法。 - 請求項2記載の触針式プローブ機構の制御方法であって、
前記バネの前記所定変位からのずれ量に応じた力をさらに加えるようにアクチュエータを制御する
ことを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法。 - 触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御方法であって、
前記触針子の変位方向における速度に応じた力を加えるように前記アクチュエータを制御する
ことを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法。 - 触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御方法であって、
前記触針子の目標位置からのずれ量に応じた力を加えるように前記アクチュエータを制御する
ことを特徴とする触針式プローブ機構の制御方法。 - 触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御装置であって、
前記バネが中立点にあるように前記移動ステージを制御するステージ制御部と、
前記触針子の変位方向における速度を演算する速度演算部と、
前記演算した速度に応じた力と設定値に応じた力とを加算する加算部と、
前記加算部が加算した力を加えるようにアクチュエータを制御するアクチュエータ制御部とを
備えたことを特徴とする触針式プローブ機構の制御装置。 - 触針子、該触針子を支持するバネ及び前記触針子に対して当該変位方向に力を加えるアクチュエータを有する触針式プローブと、該触針式プローブを前記変位方向に駆動する移動ステージとを備えた触針式プローブ機構の制御装置であって、
前記触針子の目標位置と変位検出部が検出した前記触針子の変位との差を算出する差算出部と、
前記差算出部が算出した差に応じた力を加えるように前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と
を備えたことを特徴とする触針式プローブ機構の制御装置。
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