JP2004109032A - 温度計測方法および温度計測装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】顕微ラマン分光光度計の周囲温度などに起因するハード的な測定誤差、および試料の違いによる測定誤差がある場合でも、ラマン分光光度計を用いて測定したラマンスペクトルから精度良く温度を算出できる顕微ラマン分光光度計を用いた温度測定方法を提供する。
【解決手段】測定対象試料5にレーザ光2を照射したときに得られるラマンスペクトルから測定対象試料5の温度Tを求める温度測定方法であって、測定対象試料5を測定したときに得られる特定波数におけるラマンスペクトルLsの位置または形状から読み取った値ν,I,ω,Aを独立変数として重回帰分析することで、測定対象試料5の温度Tを求める。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、顕微ラマン分光光度計を用いて測定対象試料の温度を測定する温度計測方法および温度計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平7−318426号公報
【特許文献2】特開2001−85489号公報
【特許文献3】特開2001−66197号公報
従来より、シリコンウェーハなど半導体結晶よりなる試料の温度を測定する方法として、顕微ラマン分光光度計を用い、試料にレーザ光を照射したときに得られるラマンスペクトルから、測定対象試料の温度を求めることが行われている。図6は従来の顕微ラマン分光光度計によって測定できるラマンスペクトルの一例を示すものである。図6において、L0 は照射したレーザ光のスペクトル、Ls,Laはレーザ光L0 の照射に伴って生じるラマン散乱光のスペクトルであって、Lsはストークス線、Laはアンチストークス線である。
【0003】
前記ラマンスペクトルを用いて、測定対象試料の温度を測定する一つの方法としては、前記アンチストークス線Laとストークス線Lsとの強度比(Ia/Is)を用いる方法(例えば、特許文献1参照)がある。これは、測定対象試料の温度を2つの光La,Lsの強度比(Ia/Is)が熱平衡を仮定したボルツマン分布に従うことから算出する方法である。
【0004】
しかしながら、ラマン分光法は強度の安定性と再現性が良くないことが欠点であり、アンチストークス線Laとストークス線Lsとの強度比(Ia/Is)からの算出では、ラマンスペクトル強度のバラツキが大きいため算出される温度の精度が悪くならざるを得なかった。つまり、アンチストークス線Laは、ストークス線Lsよりも強度が極めて小さいため正確な強度を測定する場合、ある程度時間が必要である。また、ストークス線Lsとアンチストークス線Laとの強度比(Ia/Is)は、温度に対して指数関数的に変化する。したがって、とりわけ高温領域での温度測定は著しく精度が低下するという問題がある。
【0005】
測定対象試料の温度を測定する別の方法としては、前記ストークス線Lsのピーク位置の波数シフト量に基づいて算出する方法(例えば、特許文献2参照)も考えられている。すなわち、試料としての物体に波数ν0 のレーザ光L0 を照射したときに生ずるラマン散乱光スペクトルLs,Laは、波数ν0 ±Δνの部分に強いピーク(ラマンシフト)を持つものであり、このラマンシフトΔνの大きさが試料温度の変化に伴って幾らか変動することを利用したものである。
【0006】
一方、ラマン散乱光Ls,Laのピーク位置からの温度算出では、前記ラマンスペクトルのピーク位置の変動量dν(測定対象試料5が20℃,100℃のときのラマンシフトをそれぞれΔν20,Δν100 とするとdν=Δν100 −Δν20である)が極めて僅かであると共に、温度変化に敏感であることから、高分解能の分光器を用いる必要がある。しかし、分光器は、一般に、周囲の温度影響を受けやすく、同一試料5を測定してもばらつきが生じることは避けられなかった。このため、試料5を交換した際に算出される温度絶対値の再現性が悪かった。
【0007】
そこで、前記ピーク位置(ν0 +Δν)のずれを補正するために、前記特許文献3に示す公報では、測定対象試料に励起用のレーザ光とは別途に照射するプラズマラインと呼ばれる微小な光を照射してこれを検出し、このプラズマラインからのラマンスペクトルの位置によって温度測定を行なうことを提案している。
【0008】
図7は、ストークス線Lsの波数に近い波数を有するレーザ光として、例えばアルゴンレーザを試料に別途照射してプラズマラインpを検出した場合のスペクトルを示す図である。図7において、符号a〜fで表わされる曲線は試料を温度調整器によってそれぞれ100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃に保持したときに得られるラマンスペクトル(ストークス線)を示し、pはプラズマラインである。
【0009】
図7に示すように、プラズマラインpは試料の温度にかかわらず一定の位置(波数νp)に表れる。すなわち、このプラズマラインpの波数νpを基準にしてラマンスペクトルa〜fの波数シフト量νを求めることにより、前記分光光度計の周囲温度および/または光学的な誤差の影響を少なくして、測定精度を向上させている。
【0010】
図8は100℃〜600℃までの温度範囲において、100℃間隔でそれぞれ4回測定したときのピーク位置のプラズマラインpからの位置(以降、波数シフト量νとする)を、それぞれ◇印(1回目)、□印(2回目)、△印(3回目)、×印(4回目)で示している。また、横軸は温度調整器の指示値である。図8が示すように、プラズマラインによる波数補正を用いれば非常に再現性良く温度を測定できることが分かる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記誤差の影響は測定対象試料の分光器の温度影響だけでなく、試料のちがいによって生じる光軸のわずかなずれなど、種々の誤差要因が関係するものであるから、特許文献3に示す方法で精度の高い波数シフト量νの検出を行ったとしても、温度の測定精度を十分に向上させることはできなかった。
【0012】
図9は、図8における◇印(1回目)のデータから波数シフト量νと温度Tとの関係を二次関数で表わした検量線を作成し、温度を算出したときの測定温度と温度調整器の指示温度とのずれ量(測定誤差)を示す図である。図9が示すように、高温側において最大で20.0℃(3%程度)の測定誤差が見受けられ、通常の温度測定では±1%程度の精度が要求されることを考えると、この値は比較的大きいことが分かる。
【0013】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、その目的は、顕微ラマン分光光度計の周囲温度などに起因するハード的な測定誤差、および試料の違いによる測定誤差がある場合でも、ラマン分光光度計を用いて測定したラマンスペクトルから精度良く温度を算出できる温度計測方法および温度計測装置を提供する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の温度計測方法は、測定対象試料にレーザ光を照射したときに得られるラマンスペクトルから測定対象試料の温度を求める温度測定方法であって、測定対象試料を測定したときに得られる特定波数におけるラマンスペクトルの位置または形状から読み取った値を独立変数として重回帰分析することで、測定対象試料の温度を求めることを特徴としている(請求項1)。
【0015】
すなわち、ラマンスペクトルの波数シフト量(すなわちピーク位置)のみならず、その形状から読み取った値を独立変数として用いることにより、一つのラマンスペクトルから得られる情報量を多くすることができる。そして、複数の独立変数を用いて重回帰分析することで誤差を小さくすることができ、それだけ、測定対象試料の温度をより正確に求めることができる。なお、前記ラマンスペクトルの波数シフト量とは、ラマンスペクトルの波長のシフト量の逆数を示すものであるが、この波数シフト量は波長または周波数のシフト量として扱うことも可能である。
【0016】
前記ラマンスペクトルを近似する近似関数を求める場合には、従来の温度算出方法で用いられるラマンスペクトルへのカーブフィッティングの適用を行うことで、ラマンスペクトルの形状を捉えやすくなり、この近似関数を用いて、ラマンスペクトルの波数シフト量、半値幅、ピーク強度、バンド面積などの各量を容易に求めることができ、これらを用いた重回帰分析を行いやすくなる。
【0017】
前記値が特定波数におけるラマンスペクトルの波数シフト量、半値幅、ピーク強度、バンド面積のうち少なくとも2つである場合(請求項2)には、ラマンスペクトルの形状を的確に捉えてこれを数値化し、重回帰分析に用いることができる。つまり、試料表面状態の差や試料交換に伴う光学的誤差がある場合でも、従来のアンチストークス/ストークス強度比やシフト量から算出する場合よりも高い精度で温度を算出することができる。
【0018】
本発明の温度計測装置は、測定対象試料にレーザ光を照射するレーザ照射手段と、レーザ光の照射に伴って測定対象試料から生じる光を分光するための分光手段と、前記分光手段で分光されたラマンスペクトルのピーク位置の波数を検出するための検出手段とを備え、かつ、前記検出手段において検出されたピーク位置の波数を特定スペクトルのピーク位置の波数と比較してその波数シフト量を求め、この波数シフト量から測定対象試料の温度を求める温度計測装置であって、前記ラマンスペクトルの形状を示す値を前記波数シフト量と共に用いて重回帰分析することで、測定対象試料の温度を求めることを特徴としている。(請求項3)
【0019】
前記値が特定波数におけるラマンスペクトルの半値幅、ピーク強度、バンド面積のうち少なくとも1つである場合(請求項4)には、半値幅、ピーク強度、バンド面積に相関性のない波数シフト量を、半値幅、ピーク強度、バンド面積のうちの少なくとも1つと共に重回帰分析に用いることで、計算の簡略化と測定精度の向上を両立することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の温度測定方法を実施するための顕微ラマン分光光度計の構成を概略的に示す図であって、図1において、1はレーザ光源で、例えば波長4965Åのレーザ2を発する。3はハーフミラーで、その一方の側には対物レンズ4を介して試料5が設けられる。この試料5は温度調節機能を備えた試料保持部6によって所定の状態に保持される。7はハーフミラー3の他方の側(試料5と対向する側)に設けられる分光器で、試料5表面において発生したラマン散乱光を分光するもので、その出射側にはラマンスペクトルを測定するためのCCD検出器8が設けられている。
【0021】
CCD検出器8により検出された電気信号は信号処理部9に送られた後、演算装置10によって、予め求められている後述の検量線から温度Tを検出することができる。
【0022】
なお、本例の場合は、通常のラマン測定では除去されるプラズマラインpを基準として用いるため、通常は用いられる光学フィルタをレーザ光源1とハーフミラー3の光路から除去しているが、レイリー散乱光位置を基準として用いた場合には、前述のように光学フィルタを除去する必要はない。また、前記レーザ光源1にはこのプラズマラインpを検出するために、別途の例えばアルゴンレーザなどの微弱レーザ光を照射するためのレーザ光源を設けている。そして、本例のプラズマラインpは後述の波数シフト量νの基準となるものであり、試料の温度に影響されない波数の微弱レーザ光のスペクトルである。
【0023】
上記構成の顕微ラマン分光光度計を用いて、例えばシリコンウェーハの温度を測定する場合、試料保持部6にシリコンウェーハを測定対象試料5として保持させる。その状態でレーザ光源1からレーザ光2を発する。このレーザ光2は、ハーフミラー3および対物レンズ4を経てシリコンウェーハ5の表面に集光される。このレーザ光2の照射によってシリコンウェーハ5においてラマン散乱光が生じ、このラマン散乱光は、ハーフミラー3を経て分光器7に導入され、CCD検出器8に受光され、ラマンスペクトルが測定される。
【0024】
そして、前記ラマンスペクトルは、コンピュータなどの演算装置10に入力され、ラマンスペクトルの曲線近似(カーブフィッティング)を行うことにより、ラマンスペクトルについての後述する近似関数F(ν)を求める。すなわち、ラマンスペクトルを曲線近似する関数を求めるステップを有する。この曲線近似については、例えばガウス分布関数やローレンツ関数などが用いられる。次いで、求められた近似関数F(ν)を用いてシリコンウェーハ5の温度Tを求めることができる。
【0025】
図2はカーブフィッティングによって求められた近似関数F(ν)をプロットした曲線の一例を示す図である。ここで、演算装置10は測定したラマンスペクトル(ストークス線Ls)を一旦近似関数F(ν)に変換しているので、このラマンスペクトルに含まれるノイズによる影響をカーブフィッティングの段階でキャンセルすることができる。なお、以下の説明においては近似関数F(ν)をプロットした曲線をストークス線Lsとして説明する。
【0026】
顕微ラマン分光光度計の装置全体が周囲温度などにより影響を受けている場合、図2に示すように、前記近似関数における近似曲線に加えてプラズマラインp’の位置も、仮想線に示すようにアルゴンレーザの波数から求められる本来の位置pより前記周囲温度に見合う分だけずれている。
【0027】
そこで、前記プラズマラインの本来の位置pと温度影響によってずれた位置p’とのずれ量Δpに基づいて前記近似関数F(ν)を調整して、近似曲線(ストークス線Ls)の形状を補正(波数方向に平行移動)することにより、温度影響を補償した近似関数F(ν)に基づく近似曲線Lsを求めることができる。
【0028】
本発明の顕微ラマン分光光度計を用いた温度測定方法は、波数シフト量ν(プラズマラインpの波数との差)に加えて、前記半値幅ω、ピーク強度I、バンド面積Aのうち少なくとも何れか1つを独立変数として用いて重回帰分析することで、測定対象試料5の温度を求めるものである。したがって、演算装置10は近似関数を用いて必要に応じて、近似曲線Laの半値幅ω、ピーク強度I、バンド面積Aの計算を行なう。
【0029】
また、ラマンスペクトルのピーク強度Iは、測定対象試料5の交換などに伴う光学配置の僅かなずれや測定対象試料5の表面状態によって大きく変動するものであり、それぞれの測定対象試料5でバラツキの少ないピーク強度Iを測定することは困難である。
【0030】
そこで、本発明ではラマンスペクトルのピーク強度Iが顕著に異なる場合には、重回帰分析を行って温度を算出する際に、予め基準となる任意の温度(例えば20℃)で測定対象試料5にレイリー光を照射して生じるラマンスペクトルのピーク強度I20(20℃のときのピーク強度I)を測定し、このピーク強度I20で規格化することができる。さらに、バンド面積Sはピーク強度Iで規格化した値を用いて検量線を作成し、温度算出時にもそれらの値を用いれば、スペクトル強度Iの絶対値が大きく異なる場合でも精度良く温度を算出できる。
【0031】
図3は波数シフト量νに加えて、半値幅ωを独立変数として用いて重回帰分析する場合に、100℃〜600℃までの温度範囲において、100℃間隔でそれぞれ4回測定したときに、1回目のデータで波数シフト量νと半値幅ωの値から、重回帰分析するための検量線を求める例を示す図である。図3には、1回目のデータを基に求めた検量線を用いて、それぞれ、記号◇(1回目),□(2回目),△(3回目),×(4回目)で1〜4回目のデータを用いて求めた試料の測定温度Tと、温度調節機能付き試料保持部6の設定温度との差を求めた誤差の大きさを示している。
【0032】
なお、本例の場合、検量線は以下の式(1)に示すように表すことができる。
T=f(ν,ω)                    … 式(1)
【0033】
また、前記式(1)をより具体的に表すと、例えば式(2)のような一次式の和とすることができる。この場合、1回目の各値ν,ωに対する温度Tの値から検量線を構成する各係数a0 〜a2 の値を求めることができる。
T=a0 +a1 ν+a2 ω                … 式(2)
【0034】
図4は波数シフト量νに加えて、半値幅ω、ピーク強度Iを独立変数として用いた場合の誤差の大きさを示す図である。その他は図3と同じであるが、本例の場合の検量線は以下の式(3)に示すようになり、より詳細には、例えば式(4)に示すように1次式の和によって表すことができる。
T=f(ν,ω,I)                  … 式(3)
T=a0 +a1 ν+a2 ω+a3 I            … 式(4)
【0035】
さらに、図5は波数シフト量νに加えて、バンド面積Aを独立変数として用いた場合の誤差の大きさを示す図であり、その他は図3,4と同じである。本例の場合の検量線は以下の式(5)に示すようになり、より詳細には、例えば式(6)に示すように1次式の和によって表すことができる。
T=f(ν,A)                    … 式(5)
T=a0 +a1 ν+a4 A                … 式(6)
【0036】
図3〜図5が示すように、前記重回帰分析を用いた検量線の式(2),式(4),式(5)を用いた試料の測定温度Tと、温度調節機能付き試料保持部6の設定温度との差は、何れの場合においても、飛躍的に小さくなることが分かる。本例の場合、温度Tの絶対値のずれは、図3では最大で7.0℃、図4では5.7℃、図5では7.3℃となっていることが分かる。これは図9に示す波数シフト量νのみの検量線から算出した温度のずれの約1/3であり、100〜600℃の範囲でほぼ1%の精度となっていることが分かる。
【0037】
上述の式(2),(4),(6)では、波長シフト量(波数シフト量)νに加えて前記半値幅ω、ピーク強度I、バンド面積Aのうち1つまたは2つを一次関数の独立変数として用いて重回帰分析することで、いわば、係数a1 〜a4 を重み付けとしているが、本発明はこの点に限定されるものではない。すなわち、各独立変数ν,ω,I,Aを2次関数以上の高次の関数で表わして、測定対象試料5に合わせたより精度の高い検量線を設定するようにしてもよい。これはとりわけ測定対象試料5の材質が分かっている場合に有用である。
【0038】
また、前記半値幅ω、ピーク強度I、バンド面積Aは何れも、近似曲線Lsの形状に関係する量であるから、互いに幾らかの相関性があるが、波数シフト量νはこれらの量ω,I,Aに相関性がないと考えられる。したがって、より精度の高い測定を行うためには、波数シフト量νとこれらの量ω,I,Aのうちの1つ以上の量を用いて重回帰分析することが好ましい。加えて、前記式(1),(3),(5)に示した検量線は各量ω,I,Aが互いに補完するような式とすることも可能である。
【0039】
さらに、本例ではストークス線Lsの波高値Isをピーク強度Iとしたり、このストークス線Lsの波数シフト量ν,半値幅ω,バンド面積Aを重回帰分析の独立変数とする例を示しており、一般的にストークス線Lsはアンチストークス線Laに比べてピーク強度Isが強いので、測定誤差を少なくするために有用であるが、本発明はこの点に限定されるものではない。すなわち、ストークス線Lsに変えてアンチストークス線La(図6参照)の波数シフト量ν,ピーク強度I,半値幅ω,バンド面積Aを重回帰分析の独立変数としてもよい。この場合、分光器7はアンチストークス線Laを検出できる波数領域の光を分光するものである。
【0040】
加えて、前記分光器7を2つ設けるなどして、前記ストークス線Lsとアンチストークス線Laの両方が検出される2つの波数領域の光を分光できる構成とすることにより、アンチストークス線Laのピーク強度Iaとストークス線Lsのピーク強度Isの比(Ia/Is)を重回帰分析のための独立変数とすることも可能である。また、ストークス線Lsとアンチストークス線Laの両方の波数シフト量ν,半値幅ω,バンド面積Aをそれぞれ求めて、両方共重回帰分析のための独立変数として用いることで、更なる精度の向上を図ることも可能である。
【0041】
前記波数シフト量ν,半値幅ω,バンド面積A,ピーク強度Iは何れも、ラマンスペクトルの形状を表わす種々の量の一例であるが、本発明はこれらの量に限定されるものではない。たとえば、半値幅ωとして、上述した半値全幅(FWHM:full width at half maximum )のみならず、半値半幅(HWHM:half width at half maximum )を用いることも可能である。バンド面積Aはピーク強度Iで除算されることにより、規格化されていることが望ましいが、バンド面積Aをそのまま用いてもよい。
【0042】
上述の各例においては、温度の測定対象試料としてシリコンウェーハを用いる例を示しているが、測定対象試料としては、半導体結晶やその他のラマン散乱を起こしやすい結晶であればその種類を限定する必要はない。また、レーザ光2の波長は上記4965Åに限られるものではなく、任意のものに設定できる。さらに、基準となる位置をプラズマラインpの位置ではなく、レイリー散乱光の検出位置を用いてもよい。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の顕微ラマン分光光度計を用いた温度測定方法によれば、測定対象試料交換に伴う光学的なずれや試料表面の違いによる誤差の影響を受けることなく、試料の温度を精度良く算出することができる。また、周囲温度によって変化するラマンスペクトルのピーク位置(波数シフト量)、半値幅、ピーク強度、あるいはバンド面積を変数として考慮して温度を算出することで、分光光度計の測定誤差によって生じるスペクトル強度のバラツキの影響あるいは試料交換によって生じるスペクトルシフトの影響を軽減し、温度絶対値のずれやバラツキの少ないデータが取得できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の顕微ラマン分光光度計を用いた温度測定方法に用いる装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】シリコンウェーハにおけるラマンスペクトルの一例を示す図である。
【図3】波数シフト量と半値幅を独立変数として重回帰分析したときの測定結果を示す図である。
【図4】波数シフト量と半値幅とピーク強度を独立変数として重回帰分析したときの測定結果を示す図である。
【図5】波数シフト量とバンド面積を独立変数として重回帰分析したときの測定結果を示す図である。
【図6】レイリー光とラマンスペクトルの関係を示す図である。
【図7】プラズマラインと各温度におけるラマンスペクトルの関係を示す図である。
【図8】従来における温度変化に伴うラマンスペクトルのピーク位置とプラズマラインとの間隔の変化を示す図である。
【図9】従来の顕微ラマン分光光度計を用いた温度測定方法による測定結果を示す図である。
【符号の説明】
2…レーザ光、5…測定対象試料、A…バンド面積、F(ν)…近似関数、I…ピーク強度、Ls…ラマンスペクトル、p…プラズマライン、T…温度、ω…半値幅。

Claims (4)

  1. 測定対象試料にレーザ光を照射したときに得られるラマンスペクトルから測定対象試料の温度を求める温度測定方法であって、
    測定対象試料を測定したときに得られる特定波数におけるラマンスペクトルの位置または形状から読み取った値を独立変数として重回帰分析することで、測定対象試料の温度を求めることを特徴とする温度計測方法。
  2. 前記値が特定波数におけるラマンスペクトルの波数シフト量、半値幅、ピーク強度、バンド面積のうち少なくとも2つである請求項1に記載の温度計測方法。
  3. 測定対象試料にレーザ光を照射するレーザ照射手段と、
    レーザ光の照射に伴って測定対象試料から生じる光を分光するための分光手段と、
    前記分光手段で分光されたラマンスペクトルのピーク位置の波数を検出するための検出手段とを備え、かつ、
    前記検出手段において検出されたピーク位置の波数を特定スペクトルのピーク位置の波数と比較してその波数シフト量を求め、この波数シフト量から測定対象試料の温度を求める温度計測装置であって、
    前記ラマンスペクトルの形状を示す値を前記波数シフト量と共に用いて重回帰分析することで、測定対象試料の温度を求めることを特徴とする温度計測装置。
  4. 前記値が特定波数におけるラマンスペクトルの半値幅、ピーク強度、バンド面積のうち少なくとも1つである請求項3に記載の温度計測装置。
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