JP2004108464A - 制御型磁気軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電源部からの入力電圧の変動によるモータ電流の変動を抑制でき、しかも装置の小型化および低コスト化が可能な制御型磁気軸受装置を提供する。
【解決手段】制御型磁気軸受装置は、回転体1を非接触支持する複数組の制御型磁気軸受5と、回転体1を回転させる電動モータ6と、磁気軸受5を駆動する磁気軸受駆動回路9と、電動モータ6を駆動するインバータ10と、磁気軸受駆動回路9およびインバータ10を制御する主制御部13と、外部電源12と接続されて磁気軸受駆動回路9、インバータ10および主制御部13に電力を供給する電源部12とを備えており、主制御部13が、ソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段を有し、このディジタル処理手段により、電源部から12の入力電圧値に応じてインバータ10を制御するものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ターボ分子ポンプなどに使用される制御型磁気軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の磁気軸受装置では、回転体が複数組の制御型磁気軸受により非接触支持されて、インバータで駆動される電動モータにより回転される。また、インバータ、磁気軸受駆動回路、これらを制御する主制御部などに電力(直流)を供給する電源部には、外部電源である商用交流電源(200V)から電力が供給される。電源部は、商用電源からの交流を整流、平滑化して、インバータなどに供給する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の磁気軸受装置では、外部電源の電圧変動などによって電源部からインバータへの入力電圧が変動すると、それに合わせてモータ電流(実際に電動モータに流れる電流)も変動してしまい、それによってモータの回転速度が変動するため、ポンプの排気性能を一定に保てないという問題があった。
【0004】
従来の磁気軸受装置の主制御部では、たとえばPI制御演算部において、モータの回転速度目標値と回転速度検出値の差からモータに供給する電流値を演算し、この電流演算値を電流指令値としてインバータに出力している。このため、インバータに出力する電流指令値が一定であっても、電源部からインバータへの入力電圧が変動すると、モータ電流は変動してしまう。
【0005】
これを解決するには、主制御部に定電圧回路などのハードウェアを付加すればよいが、そうすると、装置が大型化し、また、製作コストも増大する。
【0006】
この発明の目的は、上記の問題を解決し、電源部からの入力電圧の変動によるモータ電流の変動を抑制でき、しかも装置の小型化および低コスト化が可能な制御型磁気軸受装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
この発明による制御型磁気軸受装置は、回転体を非接触支持する複数組の制御型磁気軸受と、回転体を回転させる電動モータと、磁気軸受を駆動する磁気軸受駆動回路と、電動モータを駆動するインバータと、磁気軸受駆動回路およびインバータを制御する主制御部と、外部電源と接続されて磁気軸受駆動回路、インバータおよび主制御部に電力を供給する電源部とを備えている制御型磁気軸受装置において、主制御部が、ソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段を有し、このディジタル処理手段により、電源部からの入力電圧値に応じてインバータを制御するものであることを特徴とするものである。
【0008】
ソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段としては、たとえば、MPU(マイクロプロセッサ)、ディジタル信号処理プロセッサなどが使用される。この明細書において、ディジタル信号処理プロセッサ(Digital Signal Processor)とは、ディジタル信号を入力してディジタル信号を出力し、ソフトウェアプログラムが可能で、高速演算処理が可能な専用ハードウェアを指す。なお、以下、これをDSPと略すことにする。
【0009】
主制御部およびインバータにおける電源部からの入力電圧値は互いに等しい。このため、主制御部が電源部からの入力電圧値に応じてインバータを制御することにより、電源部からインバータへの入力電圧値に応じてインバータを制御することになる。
【0010】
主制御部は、電源部からの入力電圧値が変動しても、モータ電流が変動しないように、インバータを制御する。
【0011】
この発明の制御型磁気軸受装置によれば、電源部からの入力電圧値に応じてインバータが制御されることにより、電源部からの入力電圧値が変動しても、それによるモータ電流の変動を抑制することができる。したがって、入力電圧値の変動によるモータ回転速度の変動を抑制することができ、たとえばターボ分子ポンプなどに適用した場合に、ポンプの排気性能を一定に保つことができる。しかも、主制御部がソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段を有し、このディジタル処理手段によりインバータが制御されるので、ソフトウェアの変更だけで対応することができ、定電圧回路などのハードウェアを付加する必要がない。このため、装置の小型化および低コスト化が可能である。
【0012】
たとえば、主制御部が、電源部からの電圧入力値に応じて、インバータに出力する電流指令値を制御する。
【0013】
主制御部は、たとえば、モータの回転速度目標値と回転速度検出値の差からモータに供給すべき電流値を演算し、電源部からの入力電圧値が変動しても、モータ電流値が電流演算値と等しくなるように、インバータに出力する電流指令値を制御する。つまり、入力電圧値が低下すると、電流演算値に対して電流指令値を増加させ、入力電圧値が増加すると、電流演算値に対する電流指令値を低下させる。同一の電流演算値に対して、たとえば、入力電圧値の増加につれて、電流指令値を直線的に低下させる。
【0014】
このようにすれば、入力電圧値が変動しても、同一電流指令値に対するモータ電流が変動しないようにすることができる。
【0015】
たとえば、主制御部が、電源部からの電圧入力値に応じて、インバータに出力する電流指令値の上限値を変更する。
【0016】
主制御部は、入力電圧値が変動しても、上限値を電流指令値として出力したときにモータ電流すなわちモータ電流の最大値が同一になるように、電流指令値の上限値を変更する。つまり、入力電圧値が低下すると、電流指令値上限値を増加させ、入力電圧値が増加すると、電流指令値上限値を低下させる。たとえば、入力電圧値の増加につれて、電流指令値上限値を直線的に低下させる。
【0017】
このようにすれば、入力電圧値が変動しても、モータ電流の最大値を一定にして、モータ電流の最大値の変動を抑制することができる。
【0018】
たとえば、主制御部が、電動モータの回転速度目標値と回転速度検出値の差から電動モータに供給する電流値を演算する制御演算部と、制御演算部からの電流演算値を所定の上限値以下の値に制限して電流指令値として出力する指令値出力部と、電源部からの入力電圧値に応じて指令値出力部における上限値を変更する上限値変更部とを備えている。
【0019】
この場合も、上記同様、入力電圧値が変動しても、モータ電流の最大値を一定にして、モータ電流の最大値の変動を抑制することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明をターボ分子ポンプに適用した実施形態について説明する。
【0021】
図1は、ターボ分子ポンプの概略構成を示している。
【0022】
ターボ分子ポンプは、ポンプ本体を構成する機械本体(1)および制御手段としてのポンプ制御部を構成するコントローラ(2)を備えている。
【0023】
機械本体(1)には、ポンプを構成する回転体(ポンプロータ)(3)、変位検出部(4)、制御型磁気軸受(5)、たとえば誘導機であるビルトイン型電動モータ(6)および回転速度検出手段としての回転速度センサ(7)が設けられている。
【0024】
コントローラ(2)には、変位演算回路(8)、磁気軸受駆動回路(9)、インバータ(10)、DSPボード(11)および電源部(12)が設けられ、DSPボード(11)には、主制御部(13)、AD変換器(14)およびDA変換器(15)が設けられている。
【0025】
磁気軸受(5)には、図示は省略したが、回転体(3)の軸方向の1箇所において回転体(3)をアキシアル制御軸方向に非接触支持する1組の制御型アキシアル磁気軸受と、回転体(3)の軸方向の2箇所においてそれぞれ回転体(3)を互いに直交する2つのラジアル制御軸方向に非接触支持する2組の制御型ラジアル磁気軸受とが含まれている。アキシアル磁気軸受は、回転体(3)をアキシアル制御軸方向の両側から挟むように配置された1対の電磁石(アキシアル電磁石)を備えている。各ラジアル磁気軸受は、各ラジアル制御軸について、回転体(3)をラジアル制御軸方向の両側から挟むように配置された1対の電磁石(ラジアル電磁石)を備えている。
【0026】
変位検出部(4)には、図示は省略したが、アキシアル変位検出部とラジアル変位検出部が含まれている。アキシアル変位検出部は、回転体(3)のアキシアル制御軸方向の変位を検出する1個のアキシアル変位センサを備えている。ラジアル変位検出部は、各ラジアル磁気軸受の部分における各ラジアル制御軸について、回転体(3)をラジアル制御軸方向の両側から挟むように配置された1対のラジアル変位センサを備えている。変位演算回路(8)は、アキシアル制御軸について、アキシアル変位センサの出力から回転体(3)のアキシアル制御軸方向の変位を演算するとともに、各ラジアル制御軸について、1対のラジアル変位センサの出力に基づいて回転体(3)のラジアル制御軸方向の変位を演算し、これらの変位演算値に対応する変位信号をAD変換器(14)を介して主制御部(13)に出力する。変位検出部(4)と変位演算回路(8)により、回転体(3)の変位を検出する変位検出手段が構成されている。
【0027】
主制御部(13)は、ソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段であるDSPよりなり、後述するように、磁気軸受駆動回路(9)、インバータ(10)などを制御する。
【0028】
電源部(12)は、外部電源である200V商用電源(16)に接続され、電源(16)からの交流を整流、平滑化して、直流電力を磁気軸受駆動回路(9)、インバータ(10)、主制御部(13)などに供給する。
【0029】
主制御部(13)は、AD変換器(14)から入力する変位信号に基づいて、磁気軸受(5)の各電磁石に対する励磁電流値を演算し、これに対応する励磁電流信号をDA変換器(15)を介して磁気軸受駆動回路(9)に出力する。
【0030】
磁気軸受駆動回路(9)は、磁気軸受(5)の電磁石に対応する複数の電力増幅器を備えており、DA変換器(15)から出力される励磁電流信号に比例する励磁電流を磁気軸受(5)の対応する電磁石に供給する。これにより、回転体(3)が所定の目標位置に非接触支持される。
【0031】
モータ(6)は、磁気軸受(5)により非接触支持された回転体(3)を回転駆動するものである。回転速度センサ(7)は、回転体(3)の回転速度を検出するためのものであり、たとえば、回転体(3)の1回転当たり一定数(たとえば1つ)のパルス信号を主制御部(13)に出力する。主制御部(13)は、後に詳しく説明するように、回転速度センサ(7)のパルス信号から回転体(3)の回転速度を演算し、これに基づいて、モータ(6)の回転速度を制御するための電流指令信号をインバータ(10)に出力する。インバータ(10)は、主制御部(13)からの電流指令信号に基づいて、たとえばPWM方式により、モータ(6)の回転速度を制御する。これにより、定常運転状態において、回転体(3)の回転速度がほぼ一定に保たれる。
【0032】
主制御部(13)は、また、電源部(12)からの入力電圧値を一定時間(たとえば5秒)ごとにサンプリングし、この入力電圧値に応じて、インバータ(10)に出力する電流指令値を制御する。
【0033】
図2は、主制御部(13)のうちのモータ制御部(モータ回転速度制御の部分)の機能の1例を示す機能ブロック図である。次に、この図を参照して、モータ制御部によるモータ(6)の回転速度制御の1例について説明する。
【0034】
モータ制御部はモータ(6)の回転速度をPI制御するものであり、比例動作部(17)および積分動作部(18)を有するPI制御演算部(30)を備えている。
【0035】
図2において、D1はモータ制御部内部で設定される回転速度目標値、D2は回転速度センサ(7)により検出されたモータ(6)の回転速度検出値である。
【0036】
モータ制御部では、まず、目標値制限部(31)において、回転速度目標値が設定可能最高回転速度D3maxおよび設定可能最低回転速度D3minと比較され、D1をD3maxとD3minの間に制限した値D4が回転速度目標値として減算部(19)に入力する。減算部(19)では、回転速度目標値D4と回転速度検出値D2との差D5が演算され、これが比例動作部(17)および積分動作部(18)に入力する。比例動作部(17)では、差D5に比例する比例出力値D6が出力され、加算部(20)に入力する。積分動作部(18)では、差D5の積分値に比例する積分出力値D7が出力される。積分出力値D7は、積分出力制限部(32)において、許容最高積分出力値D8maxおよび許容最低積分出力値D8minと比較され、D7をD8maxとD8minの間に制限した値D9が制限積分出力値として加算部(20)に入力する。許容最高積分出力値D8maxは正の値、許容最低積分出力値D8minは負の値であり、通常、両者の絶対値は互いに等しい。加算部(20)では、比例出力値D6と積分出力値D9の和D10が演算される。このD10が電流演算値であり、演算部(30)から出力される。
【0037】
加速の場合、第1の指令値出力部(33)の電流値制限部(34)において、電流演算値D10が上限値である許容最高電流値D11maxおよび下限値である加速時許容最低電流値D11minと比較され、D10をD11maxとD11minの間に制限した値D12が加算部(21)に入力する。このD12が、加速時の電流指令値である。加算部(21)では、D12と一定値D13が加算され、加算値D14が、電流指令信号として指令値出力部(33)からインバータ(10)に出力される。
【0038】
減速の場合、第2の指令値出力部(35)の電流値制限部(36)において、D10が許容最高電流値D11maxおよび下限値である減速時許容最低電流値D15minと比較され、D10をD11maxとD15minの間に制限した値D16が値が加算部(22)に入力する。このD16が、減速時の電流指令値である。加算部(22)では、D16と一定値D13が加算され、加算値D17が、電流指令信号として指令値出力部(34)からインバータ(10)に出力される。
【0039】
一方、電源部(12)からの入力電圧値D18が、上限値変更部(37)の積算部(23)に入力する。積算部(23)では、D18と一定値D19の積D20が演算され、この積D20が減算部(24)に入力する。減算部(24)では、D20と一定値D21との差D22が演算され、これが積算部(25)に入力する。積算部(25)では、D22と一定値D23の積が演算される。この積算値が前記の許容最高電流値D11maxであり、上限値変更部(37)から電流値制限部(34)(36)に出力される。
【0040】
上記のように上限値変更部(37)において演算された上限値D11maxは、次の式(1)で表わされる。
【0041】
D11max=D23×(D21−D19×D18) … (1)
D23、D21およびD19は一定値であるから、これらをそれぞれa、bおよびcとすると、上記の式(1)は次の式(2)のようになる。
【0042】
D11max=a×(b−c×D18) … (2)
この式(2)は、入力電圧値D18が大きくなるにつれて、上限値D11が直線的に小さくなることを示している。
【0043】
インバータ(10)への電流指令値として上限値が出力されたときに、モータ電流が最大になる。上記の定数a、bおよびcは、入力電圧値D18が変動しても、上限値D11maxを電流指令値D12、D16として出力したときにモータ電流すなわちモータ電流の最大値が同一になるように定められる。このようにすることにより、入力電圧値が変動しても、モータ電流の最大値を一定にして、モータ電流の最大値の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明をターボ分子ポンプに適用した実施形態を示す制御型磁気軸受装置の概略構成図である。
【図2】図2は、主制御部におけるモータ回転速度制御処理の1例を示す機能ブロック線図である。
【符号の説明】
(3)        回転体
(5)        磁気軸受
(6)        電動モータ
(7)        回転速度センサ
(9)        磁気軸受駆動回路
(10)       インバータ
(12)       電源部
(13)       主制御部
(16)       商用電源
(30)       制御演算部
(33)(35)     指令値出力部
(37)       上限値変更部

Claims (4)

  1. 回転体を非接触支持する複数組の制御型磁気軸受と、回転体を回転させる電動モータと、磁気軸受を駆動する磁気軸受駆動回路と、電動モータを駆動するインバータと、磁気軸受駆動回路およびインバータを制御する主制御部と、外部電源と接続されて磁気軸受駆動回路、インバータおよび主制御部に電力を供給する電源部とを備えている制御型磁気軸受装置において、
    主制御部が、ソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段を有し、このディジタル処理手段により、電源部からの入力電圧値に応じてインバータを制御するものであることを特徴とする制御型磁気軸受装置。
  2. 主制御部が、電源部からの電圧入力値に応じて、インバータに出力する電流指令値を制御することを特徴とする請求項1の制御型磁気軸受装置。
  3. 主制御部が、電源部からの電圧入力値に応じて、インバータに出力する電流指令値の上限値を変更することを特徴とする請求項1の制御型磁気軸受装置。
  4. 主制御部が、電動モータの回転速度目標値と回転速度検出値の差から電動モータに供給する電流値を演算する制御演算部と、制御演算部からの電流演算値を所定の上限値以下の値に制限して電流指令値として出力する指令値出力部と、電源部からの入力電圧値に応じて指令値出力部における上限値を変更する上限値変更部とを備えていることを特徴とする請求項1の制御型磁気軸受装置。
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