JP3785524B2 - 制御型磁気軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえばターボ分子ポンプなどに使用され、回転体を磁気軸受により非接触支持して回転させる制御型磁気軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の制御型磁気軸受装置として、機械本体と、機械本体にケーブルを介して接続されるコントローラとを備えているものが知られている。
【0003】
機械本体には、回転体の軸方向および径方向の変位を検出するための複数の変位センサ、回転体を対をなす電磁石の磁気吸引力により軸方向および径方向に非接触支持する複数組の磁気軸受、回転体を回転させる電動モータ、回転体の可動範囲を規制する保護軸受などが設けられている。保護軸受は、回転体の軸方向および径方向の可動範囲を規制し、磁気軸受による支持力がなくなったときに回転体を機械的に支持する。
【0004】
コントローラは、所定の制御パラメータを用い、変位センサの出力に基づいて電磁石に供給する励磁電流を制御する。
【0005】
このような磁気軸受装置においては、用途によって機械本体の形式が異なり、機械本体の形式が変わると、コントローラにおける制御パラメータを変える必要がある。機械本体の形式は、回転体の種類(重量、固有振動数、重心位置など)、電磁石の種類、回転体と電磁石および変位センサとの位置関係などによって変わる。このため、従来は、形式の異なる複数種類の機械本体と、制御パラメータの異なる複数種類のコントローラとを準備し、用途によりこれらを組合わせて使用していた。
【0006】
ところが、このようにすると、機械本体の形式に合わせて他種類のコントローラを準備する必要があり、不経済である。また、機械本体とコントローラとの組合わせを誤ると、制御パラメータが不適切で、磁気軸受による回転体の位置の制御が不安定になることがある。このような不都合をなくすには、機械本体とコントローラを接続したときに、コントローラにより機械本体の形式を自動的に識別して、コントローラが機械本体に適合したものであるかどうかをチェックできるようにするのが望ましいが、従来の磁気軸受装置は、コントローラにおける制御はアナログPID制御が主であり、変位センサからの入力信号に対する電磁石への出力信号を出力するだけの機能しか備えていないため、機械本体の形式の識別は不可能であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、機械本体の形式を自動的に識別でき、機械本体の形式に合わせて制御パラメータを変えることができる制御型磁気軸受装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
この発明による制御型磁気軸受装置は、回転体の変位を検出するための複数の変位センサおよび前記回転体を対をなす電磁石の磁気吸引力により所定の目標位置に非接触支持する複数組の磁気軸受を有する機械本体と、制御パラメータを用い前記変位センサの出力に基づいて前記電磁石に供給する励磁電流を制御する電磁石制御手段を有するコントローラとを備えている制御型磁気軸受装置において、前記電磁石制御手段が、前記制御パラメータを用い前記変位センサの出力から求められた前記回転体の変位を表わすディジタル変位信号に基づいて前記励磁電流を制御するためのディジタル制御信号を出力するソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段と、不揮発性記憶装置とを備え、前記不揮発性記憶装置に、識別用の仮の制御パラメータと、前記機械本体の各形式に対応する複数組の運転用の制御パラメータとが記憶されており、前記ディジタル処理手段が、前記機械本体の形式を識別し前記不揮発性記憶装置からその識別結果に対応する前記制御パラメータを選択する識別手段を備え、前記識別手段が、前記回転体を前記識別用の仮の制御パラメータを用いて前記磁気軸受により所定の目標位置に非接触支持したときの前記制御信号の積分成分に基づいて前記機械本体の形式を識別するものであることを特徴とするものである。
【0011】
ソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段としては、たとえばMPU(マイクロプロセッサ)、ディジタル信号処理プロセッサなどが使用される。ディジタル信号処理プロセッサ(Digital Signal Processor)とは、ディジタル信号を入力してディジタル信号を出力し、ソフトウェアプログラムが可能で、高速実時間処理が可能な専用ハードウェアをさす。なお、以下、これを「DSP」と略すことにする。
【0012】
不揮発性記憶装置としては、たとえば、フラッシュメモリ、EPROMなど、適当なものが使用される。
【0013】
機械本体の形式が変わると、回転体を磁気軸受により目標位置に非接触支持したときの制御信号の積分成分の値が変わるので、このときの制御信号の積分成分の値を調べることにより、機械本体の形式を識別することができる。したがって、この発明によれば、コントローラの電磁石制御手段により機械本体の形式を自動的に識別することができる。そして、この機械本体の識別結果に基づいて、不揮発性記憶装置に記憶されている複数組の運転用の制御パラメータから機械本体に適合したものを自動的に選択して使用することができる。このため、1種類のコントローラを複数種類の機械本体に使用することができ、準備しておくコントローラの種類が少なくてすみ、経済的である。また、磁気軸受装置の運転を開始するときには、必ず回転体を目標位置に非接触支持しなければならないので、運転開始時に必要不可欠な動作を行っている間に機械本体の識別ができ、識別のために特別な動作を行わせる必要がない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は制御型磁気軸受装置の機械的部分の主要部を示す縦断面図、図2は同横断面図、図3はその電気的構成の1例を示すブロック図である。
【0017】
磁気軸受装置は、ケーブルにより接続された機械本体(1)およびコントローラ(2)を備えており、コントローラ(2)にパソコン(3)が接続されている。
【0018】
磁気軸受装置は、鉛直円筒状のケーシング(4)の内側で鉛直軸状の回転体(5)が回転する縦型のものである。以下の説明において、回転体(5)の軸方向(鉛直方 向)の制御軸(アキシアル制御軸)をZ軸、Z軸と直交するとともに互いに直交する2つの径方向(水平方向)の制御軸(ラジアル制御軸)をX軸およびY軸とする。
【0019】
機械本体(1)には、回転体(5)を軸方向に非接触支持する1組のアキシアル磁気軸受(6)、回転体(5)を径方向に非接触支持する上下2組のラジアル磁気軸受(7)(8)、回転体(5)の軸方向および径方向の変位を検出するための変位検出部(9)、回転体(5)を高速回転させるためのビルトイン型電動モータ(10)、ならびに回転体(5)の軸方向および径方向の可動範囲を規制して回転体(5)を磁気軸受(6)(7)(8)で支持できなくなったときなどに可動範囲の極限位置において回転体(5)を機械的 に支持する規制手段としての上下2組の保護軸受(11)(12)が設けられている。
【0020】
コントローラ(2)には、センサ回路(13)、磁気軸受駆動回路(14)、インバータ(15)、DSPボード(16)およびシリアル通信ボード(17)が設けられ、DSPボー ド(16)には、ディジタル処理手段としてのDSP(18)、ROM(31)、不揮発性記憶装置としてのフラッシュメモリ(19)、AD変換器(20)およびDA変換器(21)が設けられている。コントローラ(2)とパソコン(3)は互いに離れた場所に設置され、フラッシュメモリ(19)とパソコン(3)が通信ボード(17)とケーブル(22)を介し て接続されている。
【0021】
変位検出部(9)は、回転体(5)の軸方向の変位を検出するための1個のアキシアル変位センサ(23)、および回転体(5)の径方向の変位を検出するための上下2組 のラジアル変位センサユニット(24)(25)を備えている。
【0022】
アキシアル磁気軸受(6)は、回転体(5)の下部に一体に形成されたフランジ部(5a)をZ軸方向の両側から挟むように配置された1対のアキシアル電磁石(26a)(26b)を備えている。アキシアル電磁石は、符号(26)で総称する。
【0023】
アキシアル変位センサ(23)は、回転体(5)の下端面にZ軸方向の下側から対向 するように配置され、回転体(5)の下端面との距離(空隙)に比例する距離信号 を出力する。
【0024】
2組のラジアル磁気軸受(7)(8)は、アキシアル磁気軸受(6)の上側において上 下方向に所定の間隔をおいて配置されており、これらの間にモータ(10)が配置されている。上側のラジアル磁気軸受(7)は、回転体(5)をX軸方向の両側から挟むように配置された1対のラジアル電磁石(27a)(27b)、および回転体(5)をY軸方 向の両側から挟むように配置された1対のラジアル電磁石(27c)(27d)を備えている。これらのラジアル電磁石は、符号(27)で総称する。同様に、下側のラジアル電磁石(8)も、2対のラジアル電磁石(28a)(28b)(28c)(28d)を備えている。これ らのラジアル電磁石も、符号(28)で総称する。
【0025】
上側のラジアル変位センサユニット(24)は、上側のラジアル磁気軸受(7)の近 傍に配置されており、X軸方向の電磁石(27a)(27b)の近傍においてX軸方向の両側から回転体(5)を挟むように配置された1対のラジアル変位センサ(29a)(29b) 、およびY軸方向の電磁石(27c)(27d)の近傍においてY軸方向の両側から回転体(5)を挟むように配置された1対のラジアル変位センサ(29c)(29d)を備えている 。これらのラジアル変位センサは、符号(29)で総称する。同様に、下側のラジアル変位センサユニット(25)は、下側のラジアル磁気軸受(8)の近傍に配置されて おり、2対のラジアル変位センサ(30a)(30b)(30c)(30d)を備えている。これらのラジアル変位センサも、符号(30)で総称する。各ラジアル変位センサ(29)(30)は、回転体(5)の外周面との距離に比例する距離信号を出力する。
【0026】
電磁石(26)(27)(28)および変位センサ(23)(29)(30)は、ケーシング(4)に固定 されている。
【0027】
コントローラ(2)のROM(31)には、DSP(18)における処理プログラムなど が格納されている。フラッシュメモリ(19)には、磁気軸受(6)(7)(8)の制御パラ メータを記憶した制御パラメータテーブル、後述するバイアス電流値を記憶したバイアス電流値テーブルなどが設けられている。制御パラメータテーブルには、識別用の仮の制御パラメータおよび機械本体(1)の複数の形式にそれぞれ対応す る複数組の運転用の制御パラメータが記憶されている。これらのテーブルの内容は、パソコン(3)を用いて書き替えることができる。
【0028】
センサ回路(13)は、変位検出部(9)の各変位センサ(23)(29)(30)を駆動し、各 変位センサ(23)(29)(30)の出力に基づいて、回転体(5)のZ軸方向の変位、なら びに上下のラジアル変位センサユニット(24)(25)の部分におけるX軸方向およびY軸方向の変位を演算し、その演算結果である変位信号をAD変換器(20)を介してDSP(18)に出力する。
【0029】
DSP(18)は、AD変換器(20)から入力する回転体(5)の変位を表わすディジ タル変位信号に基づいて、各磁気軸受(6)(7)(8)の各電磁石(26)(27)(28)に対す る励磁電流信号をDA変換器(21)を介して磁気軸受駆動回路(14)に出力する。そして、駆動回路(14)は、DSP(18)からの励磁電流信号に基づく励磁電流を対応する磁気軸受(6)(7)(8)の電磁石(26)(27)(28)に供給し、これにより、回転体(5)が所定の目標位置に非接触支持される。
【0030】
DSP(18)は、また、モータ(10)に対する回転数指令信号をインバータ(15)に出力し、インバータ(15)は、この信号に基づいて、モータ(10)の回転数を制御する。そして、その結果、回転体(5)が、磁気軸受(6)(7)(8)により目標位置に非接触支持された状態で、モータ(10)により高速回転させられる。
【0031】
コントローラ(2)により、変位センサ(23)(29)(30)の出力に基づいて各磁気軸 受(6)(7)(8)の電磁石(26)(27)(28)に供給する励磁電流を制御する電磁石制御手 段が構成されている。
【0032】
図4は、コントローラ(2)の構成のうち、アキシアル磁気軸受(6)における1対のアキシアル電磁石(26a)(26b)の制御に関する部分だけを示したものである。次に、図4を参照して、コントローラ(2)による上記の1対のアキシアル電磁石(26a)(26b)の制御について説明する。
【0033】
まず、センサ回路(13)は、アキシアル変位センサ(23)の出力信号より、回転体(5)のZ軸方向の目標位置(=0)に対する変位を求め、この変位に比例した変 位信号ΔZを出力する。センサ回路(13)からの変位信号ΔZは、AD変換器(20)によりディジタル値に変換されて、DSP(18)に入力する。DSP(18)は、後述するように、ディジタル変位信号ΔZに基づいて、1対の電磁石(36)にそれぞれ対応する制御信号としての1対の励磁電流信号をDA変換器(21)に出力する。第1の励磁電流信号(Io+Ic)はDA変換器(21)によりアナログ信号に変換されて、第1の励磁電流信号(Io+Ic)として磁気軸受駆動回路(14)の第1の電力増幅器(35)に供給され、第1の電力増幅器(35)は第1の励磁電流信号(Io+Ic)を増幅し、これに比例する励磁電流を第1の電磁石(26a)に供給する。第2の 励磁電流値(Io−Ic)はDA変換器(21)によりアナログ信号に変換されて、第2の励磁電流信号(Io−Ic)として磁気軸受駆動回路(14)の第2の電力増幅器(36)に供給され、第2の電力増幅器(36)は第2の励磁電流信号(Io−Ic)を増幅し、これに比例する励磁電流を第2の電磁石(26a)に供給する。その結果、回 転体(5)が、Z軸方向の目標位置に支持される。
【0034】
図5は、図4に示されているコントローラ(2)の部分において、DSP(18)の 動作を機能ブロックで表わしたものである。DSP(18)は、機能的には、識別手段(32)、制御電流演算手段(37)および励磁電流演算手段(38)を備えている。制御電流演算手段(37)は、AD変換器(20)からの変位信号ΔZに基づいて、たとえばPID演算により、電磁石(26a)(26b)に対する制御電流値Icを演算するもので あり、積分演算部(40)、比例・微分演算部(41)および加算部(42)より構成されている。積分演算部(40)は、積分演算制御パラメータを用い、変位信号ΔZに基づいて制御電流値Icの成分成分Iciを演算する。比例・微分演算部(41)は、比例 演算制御パラメータおよび微分演算制御パラメータを用い、変位信号ΔZに基づいて制御電流値Icの比例・微分成分Icpdを演算する。加算部(42)は、上記の積分成分Iciと比例・微分成分Icpdを加算することによって制御電流値Icを求め、これを励磁電流演算手段(38)に出力する。なお、比例・微分演算部(41)を比例演算部と微分演算部とに分け、比例演算部の出力である比例成分と、微分演算部の出力である微分成分と、上記の積分演算部(40)の出力である積分成分Iciとを加算することにより制御電流値Icを求めるようにしてもよい。励磁電流演算手 段(38)は、フラッシュメモリ(19)のテーブル(34)に記憶されているバイアス電流値Ioに制御電流演算手段(37)からの制御電流値Icを加算し、その結果得られた値(Io+Ic)を第1の励磁電流値としてDA変換器(21)に出力するとともに、上記バイアス電流値Ioから上記制御電流値Icを減算し、その結果得られた値(Io−Ic)を第2の励磁電流値としてDA変換器(21)に出力する。識別手段(32)は、後述する機械本体(1)の形式の識別を行う。
【0035】
図6は、コントローラ(2)の構成のうち、上側のラジアル磁気軸受(7)におけるX軸方向の1対のラジアル電磁石(27a)(27b)の制御に関する部分だけを示したものである。この場合、センサ回路(13)は、上側のラジアル位置センサユニット(24)のX軸方向の1対のラジアル位置センサ(29a)(29b)のうちの一方の出力信号から他方の出力信号を減算することにより、上側のラジアル磁気軸受(7)の部分に おける回転体(5)のX軸方向の目標位置(=0)に対する変位を求め、この変位 に比例した変位信号ΔXを出力する。センサ回路(13)からの変位信号ΔXは、AD変換器(20)によりディジタル値(ディジタル変位信号)に変換されて、DSP(18)に入力する。後は、図4の場合と同様であり、対応する部分には同一の符号を付している。なお、この場合は、DSP(18)に図5の識別手段(32)を設けなくてもよい。
【0036】
上側のラジアル磁気軸受(7)におけるY軸方向の1対のラジアル電磁石(27c)(27d)の制御に関する部分、下側のラジアル磁気軸受(8)におけるX軸方向の1対のラジアル電磁石(28a)(28b)の制御に関する部分およびY軸方向の1対のラジアル電磁石(28c)(28d)の制御に関する部分についても、同様である。
【0037】
上記の磁気軸受装置において、コントローラ(2)の電源が投入されていないと きは、磁気軸受(6)(7)(8)およびモータ(10)は駆動されておらず、回転体(5)は保護軸受(11)(12)により機械的に支持されて停止している。このとき、回転体(5) は、重力により、Z軸方向については最下端の極限位置に停止している。
【0038】
コントローラ(2)の電源が投入されると、次のように、DSP(18)の識別手段(32)により、機械本体(1)の識別が行われる。
【0039】
コントローラ(2)の電源が投入されると、まず、DSP(18)が識別用の仮の制 御パラメータを用いて各磁気軸受(6)(7)(8)の電磁石(26)(27)(28)の励磁電流を 制御することにより、回転体(5)が所定の目標位置に非接触支持され、そのとき の制御電流値Icの積分成分Iciの値に基づいて機械本体(1)の形式が識別される。そして、この識別結果に対応する運転用の制御パラメータが選択され、以後は、この制御パラメータを用いて磁気軸受(6)(7)(8)の制御が行われる。なお、回 転体(5)が磁気軸受(6)(7)(8)により非接触支持されていない状態を接触支持状態といい、回転体(5)が接触支持状態から磁気軸受(6)(7)(8)により目標位置に非接触支持されることを磁気浮上ということにする。
【0040】
次に、図4、図5および図7を参照して、上記の識別時のDSP(18)のアキシアル磁気軸受(6)の制御に関する部分の動作についてさらに詳細に説明する。図 7は、回転体(5)の磁気浮上時の制御電流値Icの積分成分Iciの時間変化を示しており、横軸が時間t、縦軸が積分成分Iciを表わしている。
【0041】
コントローラ(2)の電源が投入されると、まず、識別手段(32)が、フラッシュ メモリ(19)から識別用の仮の制御パラメータを読み込んで、これをフラッシュメモリ(19)の所定の位置にセットする。制御パラメータのセットが終了すると、制御電流演算手段(37)の積分演算部(40)が、仮の積分演算制御パラメータを用い、変位信号ΔZに基づいて、制御電流値Icの積分成分Iciを演算するとともに、 比例・微分演算部(41)が、仮の比例演算制御パラメータおよび微分演算制御パラメータを用い、変位信号ΔZに基づいて、制御電流値Icの比例・微分成分Icpdを演算し、加算部(42)がこれらから制御電流値Icを演算する。後は前述のとお りであり、これにより、回転体(5)は、仮の制御パラメータを用いて、Z軸方向 の所定の目標位置に非接触支持される。
【0042】
このように回転体(5)が磁気浮上させられたときに、識別手段(32)が、積分演 算部(40)の出力である制御電流値Icの積分成分Iciを調べ、これに基づいて機 械本体(1)の形式を識別する。
【0043】
回転体(5)を磁気浮上させたときの制御電流値Icの積分成分Iciは図7のようになり、磁気浮上開始後のある時点で一定値の定常状態になる。そして、この定常状態における積分成分Iciの値は、機械本体(1)の形式によって変わる。図7 において、Aは形式Aの機械本体(1)の場合、Bは形式Bの機械本体(1)の場合の応答をそれぞれ示している。このような場合、たとえば、時点toにおいて磁気 浮上を開始した後に、適当な時点t1において定常状態の積分成分Iciの値を求 め、これを所定のしきい値Isと比較することにより、機械本体形式がAとBの いずれであるかを識別することができる。
【0044】
識別手段(32)は、機械本体(1)の識別が終わると、識別結果の機械本体(1)の形式に対応する制御パラメータをフラッシュメモリ(19)のテーブルから読み込み、これをフラッシュメモリの所定の位置にセットする。これにより、回転体(5)は 、機械本体(1)の形式に対応した制御パラメータを用いて、所定の目標位置に非 接触支持される。そして、このように回転体(5)が非接触支持されたならば、モ ータ(10)が駆動され、回転体(5)が高速回転させられる。
【0045】
図7には機械本体(1)の形式が2つの場合を示しているが、機械本体(1)の形式が3つ以上の場合でも、同様にこれを識別することができる。
【0046】
上記実施形態では、励磁電流値の演算もDSP(18)で行っているが、DSP(18)は制御電流値の演算までを行って、これを制御信号として出力し、励磁電流の演算はハードウェア回路で行うようにすることもできる。
【0048】
上記のようにZ軸が鉛直である場合は、この鉛直なZ軸方向の制御電流値の積分成分の値に基づいて機械本体(1)の形式の識別を行うようにするのが好ましい が、X軸方向あるいはY軸方向の制御電流値の積分成分の値に基づいて機械本体(1)の形式の識別を行うようにすることもできる。また、X軸、Y軸およびZ軸 の3つの制御軸のうちのいずれか2つの方向の制御電流値の積分成分に基づいて機械本体(1)の形式の識別を行うようにすることもできる。さらに、上記の3つ の制御軸方向の制御電流値の積分成分に基づいて機械本体(1)の形式の識別を行 うようにすることもできる。
【0049】
磁気軸受装置には、上記のように回転体(5)が鉛直に支持される縦型のものと 、回転体が水平に支持される横型のものとがあるが、この発明は、横型の磁気軸受装置にも適用できる。なお、縦型の場合と横型の場合とで、各制御軸について、磁気浮上時の制御電流値の積分成分の値は変わるが、いずれの型の場合も、機械本体の形式によっても制御電流値の積分成分の値が変わるので、それによって機械本体の形式を識別することができる。通常は、磁気軸受装置が縦型と横型のいずれであるかは予めわかっているので、その型に応じたコントローラを用いればよい。あるいは、1つのコントローラに、縦型用の制御パラメータの組(仮の制御パラメータおよび複数組の運転用の制御パラメータ)と横型用の制御パラメータの組とを記憶させておき、磁気軸受装置の型に応じて、対応する制御パラメータの組を選択するようにしてもよい。さらに、磁気軸受装置の型がわかっていないような場合には、たとえば、特開平9−166139号公報に記載されているような方法により磁気軸受装置の型(姿勢)を自動的に判別し、その後、上記のように機械本体の識別を行うようにすることもできる。なお、このような場合も、上記のように、鉛直な制御軸方向の制御電流値の積分成分の値に基づいて回転体(5)の形式の識別を行うようにするのが好ましいが、他の1つの制御軸方向 、任意の2つの制御軸方向あるいは3つの制御軸方向の制御電流値の積分成分の値に基づいて機械本体(1)の形式の識別を行うようにすることもできる。
【0050】
上記実施形態には、回転体(5)が固定部分であるケーシング(4)の内側で回転するインナロータ型の磁気軸受装置を示したが、この発明は、回転体が固定部分の外側で回転するアウタロータ型の磁気軸受装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の実施形態を示す磁気軸受装置の機械的部分の主要部の縦断面図である。
【図2】図2は、同横断面図である。
【図3】図3は、同磁気軸受装置の電気的構成の1例を示すブロック図である。
【図4】図4は、図3のコントローラの1対のアキシアル電磁石に関する部分を示すブロック図である。
【図5】図5は、図4のDSPの部分の機能を示すブロック図である。
【図6】図6は、図3のコントローラの1対のラジアル電磁石に関する部分を示すブロック図である。
【図7】図7は、磁気浮上時の制御電流値の積分成分の時間変化の1例を示すグラフである。
【符号の説明】
(1) 機械本体
(2) コントローラ
(5) 回転体
(6) アキシアル磁気軸受
(7)(8) ラジアル磁気軸受
(18) ディジタル信号処理プロセッサ(DSP)
(19) フラッシュメモリ
(23) アキシアル変位センサ
(26a)(26b) アキシアル電磁石
(27a)(27b)(27c)(27d) ラジアル電磁石
(28a)(28b)(28c)(28d) ラジアル電磁石
(29a)(29b)(29c)(29d) ラジアル変位センサ
(30a)(30b)(30c)(30d) ラジアル変位センサ
(32) 識別手段
Claims (1)
- 回転体の変位を検出するための複数の変位センサおよび前記回転体を対をなす電磁石の磁気吸引力により所定の目標位置に非接触支持する複数組の磁気軸受を有する機械本体と、制御パラメータを用い前記変位センサの出力に基づいて前記電磁石に供給する励磁電流を制御する電磁石制御手段を有するコントローラとを備えている制御型磁気軸受装置において、
前記電磁石制御手段が、前記制御パラメータを用い前記変位センサの出力から求められた前記回転体の変位を表わすディジタル変位信号に基づいて前記励磁電流を制御するためのディジタル制御信号を出力するソフトウェアプログラムが可能なディジタル処理手段と、不揮発性記憶装置とを備え、前記不揮発性記憶装置に、識別用の仮の制御パラメータと、前記機械本体の各形式に対応する複数組の運転用の制御パラメータとが記憶されており、前記ディジタル処理手段が、前記機械本体の形式を識別し前記不揮発性記憶装置からその識別結果に対応する前記制御パラメータを選択する識別手段を備え、前記識別手段が、前記回転体を前記識別用の仮の制御パラメータを用いて前記磁気軸受により所定の目標位置に非接触支持したときの前記制御信号の積分成分に基づいて前記機械本体の形式を識別するものであることを特徴とする制御型磁気軸受装置。
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