JP2004107763A - 薄膜形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の薄膜形成装置は、所定の基板5に対して薄膜を形成するための真空槽2と、蒸発源3と、基板5と蒸発源3との間の空間を仕切る仕切り部7とを有している。仕切り部7の上部に、基板5の蒸着領域を制限するためのアパーチャー70が設けられている。基板5の近傍には、長方形形状の開口部を複数有するマスク6が配設されている。アパーチャー70は、基板5に対し、アパーチャー70の幅方向で、かつ、マスク6の開口部60の長手方向に移動するように構成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、有機LED素子の発光層に用いられる有機薄膜を蒸着によって形成するための薄膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、フルカラーフラットパネルディスプレイ用の素子として、有機LED素子が注目されている。有機LED素子は、蛍光性有機化合物を電気的に励起して発光させる自発光型素子で、高輝度、高視野角、面発光、薄型で多色発光が可能であり、しかも数Vという低電圧の直流印加で発光する全固体素子で、かつ低温においてもその特性の変化が少ないという特徴を有している。
【0003】
図4は、従来の有機LED素子を作成するための真空蒸着装置の概略構成図である。
図4に示すように、この有機薄膜形成装置101にあっては、真空槽102の下部に蒸発源103が配設されるとともに、この蒸発源103の上方に成膜対象物である基板104が配置されている。そして、蒸発源104から蒸発される有機材料の蒸気を、マスク105を介して基板104に蒸着させることによって所定パターンの有機薄膜を形成するようになっている(例えば特開平11−124667号公報参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−124667号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、マスクのピッチのファイン化に伴い、従来の技術では均一な膜厚分布を得ることが困難で、このため、画素の発光にむらが生ずるとともに、膜厚の薄い領域において電流が流れ過ぎることによって素子の劣化を引き起こし、これにより有機LED素子の寿命が制限されるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、均一な膜厚分布の有機薄膜を形成しうる薄膜形成装置及び薄膜形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、所定の成膜対象物に対して薄膜を形成するための真空槽と、前記成膜対象物の近傍に配設され、縦横の幅が異なる開口部を有するマスクと、前記真空槽内に配設され、所定の蒸発材料を蒸発させるための蒸発源と、前記マスクと対向するように配設され、前記成膜対象物と前記蒸発源との間の空間を仕切る仕切り部とを備え、前記仕切り部に、前記成膜対象物の蒸着領域を制限するための細長形状のアパーチャーが設けられ、前記アパーチャーと前記成膜対象物とが、当該アパーチャーの幅方向で、かつ、当該マスクの開口部の長手方向に相対的に移動するように構成されていることを特徴とする薄膜形成装置である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記マスクに、複数の開口部が設けられていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記マスクの複数の開口部が、一定方向を向くように配列されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の発明において、前記アパーチャーと前記成膜対象物のうち、前記アパーチャーが移動するように構成されていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記蒸発源が、前記アパーチャーとともに移動するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成を有する本発明の場合、アパーチャーと成膜対象物とが、アパーチャーの幅方向で、かつ、マスクの開口部の長手方向に相対的に移動するように構成されていることから、アパーチャーから流出する蒸着材料の蒸気が成膜対象物の表面に均一に蒸着するようになるため、成膜対象物に対して確実に膜厚分布の均一化を図ることが可能になる。
【0009】
その結果、本発明によれば、画素の発光むらを防止することができるとともに、長寿命の有機LED素子を効率良く製造することができる。
【0010】
また、本発明においては、蒸発源とマスクの間の空間において、アパーチャー以外の部分は仕切り部によって仕切られているため、蒸発源からの熱がマスクに伝わりにくく、これによりマスクの変形に起因する蒸着領域のずれを防止することが可能になる。
【0011】
さらに、本発明によれば、複数の開口部が設けられたマスクを用い、大型の成膜対象物に複数のパターンの成膜を行う場合や、複数の成膜対象物に対して同時に成膜を行う場合であっても、成膜対象物の各部分について、また各成膜対象物に対して確実に膜厚分布の均一化を図ることが可能になる。
【0012】
この場合、マスクの複数の開口部を一定方向を向くように配列しておけば、アパーチャーと成膜対象物の相対移動方向を一定にすることができ、これにより効率良く成膜を行うことが可能になる。
【0013】
また、アパーチャーと成膜対象物のうち、アパーチャーが移動するように構成すれば、簡素な構成で小型の薄膜形成装置を得ることが可能になる。
【0014】
さらにまた、蒸発源をアパーチャーとともに移動させることにより、蒸発源とアパーチャーとの相対的な位置関係を調整することができ、これにより成膜対象物に対して斜め方向から入射する蒸着成分をカットすることができるため、より膜厚分布の均一化を図ることが可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る薄膜形成装置の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る薄膜形成装置の好ましい実施の形態の正面側断面図、図2(a)は、同薄膜形成装置の側面側断面図、図2(b)は、同実施の形態の仕切り部の平面図、図3は、アパーチャーとマスクとの関係を示す説明図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の薄膜形成装置1は、図示しない真空排気系に接続された真空槽2を有し、この真空槽2の下方には蒸発源3が配設されている。
【0017】
図2に示すように、本実施の形態の場合、蒸発源3は、長方体形状の容器30を有し、この容器30内に所定の有機系の蒸着材料(例えばAlq3)40が収容されている。そして、容器30の上方近傍に設けたヒータ31、32によって蒸着材料40を加熱するように構成されている。
【0018】
一方、真空槽2の上部には、基板ホルダー4が設けられ、この基板ホルダー4に、蒸着膜を形成すべき基板(成膜対象物)5が固定されている。そして、基板5の下方近傍にはマスク6が設けられている。
【0019】
図3に示すように、本実施の形態の場合、マスク6には、基板5上に所定の薄膜を蒸着するための複数のパターン状の開口部60が形成されている。
【0020】
さらに、本実施の形態においては、真空槽2内における基板5と蒸発源3との間の空間を仕切る仕切り部7が設けられている。
【0021】
ここで、仕切り部7は、例えばアルミニウム(Al)等の材料からなるもので、上述した蒸発源3の上側部分を覆うように、所定の大きさの例えば長方体箱型形状に形成されている。
【0022】
また、この仕切り部7は、図示しない冷却水等を循環させることによって冷却するように構成されている。
【0023】
そして、図1及び図2(a)(b)に示すように、蒸発源3の鉛直上方で、仕切り部7の上部の中央部分に、細長いスリット形状のアパーチャー70が、上述したマスク6と対向するように設けられている。
【0024】
図3に示すように、本実施の形態のアパーチャー70は、その長さが成膜対象となる基板5の幅より長くなるようにX方向の長さが設定されている。
【0025】
また、アパーチャー70の幅は、膜厚の均一の観点から、蒸発源3と基板5との間の距離より小さくすることが好ましく、より好ましくは、蒸発源3と基板5との間の距離の1/3以上1/3以下である。
【0026】
一方、本実施の形態の場合、マスク6の開口部60は、縦横の幅が異なる長方形形状に形成されている。
【0027】
この場合、各開口部60は、X方向の長さDxよりY方向の長さDyが大きくなるようにその大きさが設定され、さらに、各開口部60は、一定方向(本実施の形態の場合はY方向)を向くように平行に配列されている。
【0028】
なお、マスク6の開口部60は、X方向の長さDxが30mn程度、Y方向の長さDyが60mn程度である。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態においては、蒸発源3と仕切り部7が、例えば図示しないボールねじ等を有する移動機構を用いて、共に同一方向に同期して移動するように構成されている。
【0030】
この場合、蒸発源3及び仕切り部7が移動する方向は、アパーチャー70の幅方向で、かつ、マスク6の開口部60の長手方向(図3の矢印Y+方向又はY−方向)である。
【0031】
また、蒸発源3及び仕切り部7の移動範囲は、図1の2点鎖線で示すホームポジションからアパーチャー70が基板5の全面を横切るまでの範囲である。
【0032】
ここで、図1の矢印は、仕切り部7のアパーチャー70の中心軸線の移動範囲を示すものである。
【0033】
このような構成を有する本実施の形態においては、まず、基板5を真空槽2内に搬入し、真空槽内を所定の圧力にした後、仕切り部7が待機位置に位置している状態でヒータ31、32への通電を行い、蒸着材料40の蒸発を開始する。
【0034】
そして、仕切り部7のアパーチャー70から流出する蒸着材料40の成膜速度を図示しない膜厚センサによって検出し、その値が所定の値に到達した時点で蒸発源3及び仕切り部7を成膜位置に向って矢印P方向へ移動させる。
【0035】
この移動の直後に、蒸発源3のヒータ31、32の温度を制御して蒸着材料40の温度を所定の温度に保持し、これにより蒸着材料40の成膜速度を一定の速度に制御して成膜を行う。
【0036】
そして、仕切り部7のアパーチャー70が基板5の全面を横切った後、蒸発源3及び仕切り部7を待機位置に向って矢印Q方向へ移動させる。この場合、仕切り部7のアパーチャー70が基板5の全面を横切るまで上記蒸発源3のヒータ31、32の温度制御を行う。
【0037】
そして、仕切り部7のアパーチャー70が基板5の全面を横切った後、ヒータ31、32への通電を停止する。
【0038】
その後、基板5を真空槽2から搬出し、新たな基板5を真空槽2内へ搬入して上述した工程を繰り返す。
【0039】
以上述べたように本実施の形態によれば、アパーチャー70と基板5とが、アパーチャー70の幅方向で、かつ、マスク6の開口部60の長手方向に相対的に移動するように構成されていることから、アパーチャー70から流出する蒸着材料の蒸気が基板5の表面に均一に蒸着するようになるため、特に膜厚分布の均一化を図ることが可能になる。
【0040】
その結果、本実施の形態によれば、画素の発光むらを防止することができるとともに、長寿命の有機LED素子を効率良く製造することができる。
【0041】
また、本実施の形態においては、蒸発源とマスク6の間の空間において、アパーチャー70以外の部分は仕切り部によって仕切られているため、蒸発源からの熱がマスク6に伝わりにくく、これによりマスク6の変形に起因する蒸着領域のずれを防止することが可能になる。
【0042】
さらに、本実施の形態によれば、上記複数の開口部60が設けられたマスク6を用い、大型の基板5に複数の素子パターンの成膜を行う場合や、複数基板(図示せず)に対して同時に成膜を行う場合であっても、基板5の各部分について、また各基板に対して確実に膜厚分布の均一化を図ることができる。
【0043】
また、マスク6の複数の開口部60を一定方向を向くように配列しておくことにより、アパーチャー70と基板5の相対移動方向を一定にすることができ、これにより効率良く成膜を行うことができる。
【0044】
また、アパーチャー70と基板5のうち、アパーチャー70が移動するように構成されているので、簡素な構成で小型の薄膜形成装置を得ることができる。
【0045】
さらにまた、本実施の形態においては、蒸発源3をアパーチャー70とともに移動させることにより、蒸発源3とアパーチャー70との位置関係を固定して基板5に対し斜め方向から入射する蒸着成分をカットすることができるため、より膜厚分布の均一化を図ることができる。
【0046】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態においては、仕切り部を移動させてアパーチャーを移動させるようにしたが、本発明はこれに限られず、基板側を移動させるようにすることも可能である。
【0047】
また、アパーチャーの形状については、細長形状であれば、楕円形状、円形状、四角形状等にすることも可能である。
【0048】
さらに、上記実施の形態においては、成膜時に仕切り部及び蒸発源を1往復させるようにしたが、2往復以上させるようにしてもよい。
【0049】
さらにまた、本発明は有機LED素子の有機薄膜を形成するための装置に限られず、種々の蒸着装置に適用することができる。ただし、本発明は有機材料を用いて有機LED素子の有機薄膜を形成する場合に特に有効なものである。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、均一な膜厚分布の有機薄膜を形成しうるとともに、蒸発源からの熱の影響を防止しうる薄膜形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る薄膜形成装置の好ましい実施の形態の正面側断面図
【図2】(a):同薄膜形成装置の側面側断面図
(b):同実施の形態の仕切り部の平面図
【図3】アパーチャーとマスクとの関係を示す説明図
【図4】従来の有機LED素子を作成するための真空蒸着装置の概略構成図
【符号の説明】
1…薄膜形成装置 2…真空槽2 3…蒸発源 5…基板(成膜対象物) 6…マスク 7…仕切り部 40…蒸着材料 60…開口部 70…アパーチャー
Claims (5)
- 所定の成膜対象物に対して薄膜を形成するための真空槽と、
前記成膜対象物の近傍に配設され、縦横の幅が異なる開口部を有するマスクと、
前記真空槽内に配設され、所定の蒸発材料を蒸発させるための蒸発源と、
前記マスクと対向するように配設され、前記成膜対象物と前記蒸発源との間の空間を仕切る仕切り部とを備え、
前記仕切り部に、前記成膜対象物の蒸着領域を制限するための細長形状のアパーチャーが設けられ、
前記アパーチャーと前記成膜対象物とが、当該アパーチャーの幅方向で、かつ、当該マスクの開口部の長手方向に相対的に移動するように構成されていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 前記マスクに、複数の開口部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
- 前記マスクの複数の開口部が、一定方向を向くように配列されていることを特徴とする請求項2記載の薄膜形成装置。
- 前記アパーチャーと前記成膜対象物のうち、前記アパーチャーが移動するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
- 前記蒸発源が、前記アパーチャーとともに移動するように構成されていることを特徴とする請求項4記載の薄膜形成装置。
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