JP2004107448A - 側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体と、当該重合体を含有する活性エネルギー線硬化型組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】活性エネルギー線硬化型組成物に配合してさまざまな分野に適用が可能な、側鎖に二重結合を有する(共)重合体および当該重合体の簡便で実用的な製造方法を提供する。
【解決手段】環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)、およびラジカル重合開始剤(D)とを含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものから得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。更に、重合体(C)と多価チオール化合物(E)と光重合開始剤(G)とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)、およびラジカル重合開始剤(D)とを含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものから得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。更に、重合体(C)と多価チオール化合物(E)と光重合開始剤(G)とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、さまざま用途に応じた物性を付与することができ、硬化型材料として有用な重合体で、当該重合体と多価チオール化合物とを組み合わせることにより、従来の光ラジカル重合硬化型材料で問題となっている重合の酸素阻害を受けにくく、少ない活性エネルギー線照射で硬化可能で、生産性が高い活性エネルギー線硬化型組成物を提供することができる。本発明の組成物は、塗料などのコーティング剤、成形材、接着剤、インキなどの種々の用途に使用可能であり、これら技術分野で賞用され得るものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、無溶剤型で使用できるアクリレート系材料を用いたラジカル重合型の活性エネルギー線硬化型材料の検討が進められており、コーティング剤、接着剤、インキなどに有用に用いられている。アクリレート系材料は、一般的に硬化時間が短く、低温での硬化が可能であり、一液型で無溶剤化が可能であるため、省資源、環境汚染の低減化が図れるという利点を有している。
【0003】
しかしながら、ラジカル重合は、組成物中の溶存酸素や空気中の酸素などにより重合が阻害されるため、硬化が遅くなり生産性に問題が生じる場合がある。窒素ガスなどによる不活性雰囲気下でラジカル重合を行えば、この問題は解決できるものの、省スペース・省力化を目指した作業工程の短縮および簡略化などが強く求められている現状から、このような方法は実用的ではない。
【0004】
酸素による重合阻害をほとんど受けない光硬化システムとして、オレフィン化合物とチオール化合物とを組み合わせたラジカル付加反応型材料が封止材用途などで使用されており、これらの材料は硬化性が速く生産性を上げることができる技術として注目されている(例えば、非特許文献1参照)。
この技術の適用範囲を広げるために、さまざまな用途に応じて自在に所望の物性が付与できるようなオレフィン化合物の提供および当該オレフィン化合物の製造において容易で実用性の高いものが望まれている。
このようなオレフィン化合物として、分子内に複数個の二重結合を有する化合物を、または分子内に複数個の二重結合を有する化合物と分子内に一個の二重結合を有する化合物と共重合させることができれば、その多様性から広範な用途に使用できるものが得られると期待される。
【0005】
なお、側鎖に二重結合を有するようなオレフィン化合物は、近年、熱硬化型あるいは光硬化型材料の分野での検討が行われており、その製造方法についても報告されている。
例えば、α、β−不飽和カルボン酸無水物−ビニル化合物共重合体を骨格とする重合体の側鎖の酸無水物基および/またはカルボキシル基を不飽和アルコールによってエステル化した化合物などがあげられる(例えば特許文献1参照)。しかしながら、このような製造法は、官能基を持つモノマーの重合体または共重合体に、二重結合を有する化合物を付加させるといった、多段階の化学反応が必要であり、従って製品は必然的に高価なものとなってしまう。この結果、このような重合体は、限定された用途に一部用いられているにすぎない。このため、より簡便で実用的な製造方法が求められている。
【0006】
このような試みとして、分子内に複数個の(メタ)アクリル基を有するモノマーを長鎖の置換基を有するような(メタ)アクリレートモノマーと共重合させ、置換基の立体効果を利用することにより、分子間の架橋反応、すなわちゲル化を防ぐといった方法(例えば特許文献2参照)が挙げられる。しかし、このような方法では、複数個の二重結合を有するモノマーと共重合させうるモノマーは、長鎖置換基を有するモノマーの使用が不可欠である。このため、得られた共重合体の性能は、おのずと限られたものにならざるを得ないため、用途に合わせた物性を付与することが難しく、実用性に乏しいのが明らかである。
【0007】
そこで、共重合体の設計に多様性を付与するための方法として、4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンおよび分子状酸素を含むガスの存在下で、アリル(メタ)アクリレートと、それ以外のモノマーとをラジカル共重合させることにより、側鎖に二重結合としてアリル基を有する共重合体の製造方法(例えば特許文献3参照)が報告されている。しかし、この方法では側鎖に導入可能なアリル基の量に限界があり、且つ二重結合量を自在に設計することができない。
【0008】
側鎖に二重結合を有するようなオレフィン化合物として、脂環中に二重結合を有するもの(環内オレフィン)が報告されている。即ち、この化合物は、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートまたはジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートで有り、当該化合物とグリシジル基含有(メタ)アクリル酸のようなエポキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体が報告されている(例えば特許文献4参照)。当該共重合体は、脂環内に二重結合を有する基を有するものであるが、同時に存在するエポキシ基により組成物を重合させている。即ち、当該共重合体と多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸、官能性シランカップリング剤、エポキシ樹脂硬化促進剤とを含有する組成物を硬化させいてるものであり、脂環中の二重結合を活用していない。
【0009】
また、脂環中に二重結合を有するものをアルケニル基とし、これを含有するアクリル樹脂が報告されている。即ち、アルケニル基含有アクリル系モノマーの単独重合、またはその他のアクリル系モノマーなどとの共重合により得ることが記載されている(例えば特許文献5参照)。当該アルケニル基含有アクリル樹脂を得るためのアルケニル基含有アクリル系モノマーとして記載されているものの中に、(メタ)アクリル酸シクロヘキセニルメチルが記載されていて、そして3−メチル−3−ブテニルメタクリレート、シクロヘキセニルメチルメタクリレートおよび2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを2,2’−アゾビス(メチルイソブチレート)を用いて共重合させたものが報告されている。
しかし、この共重合体は、側鎖に脂環アルケニル基以外にアルケニル基および芳香属基をも有しているものであり、当該共重合体とヒドロシリル基含有化合物などと配合して白金触媒を用いて加熱重合させており、当該配合物を活性エネルギー線を用いて硬化させてはいない。
【0010】
側鎖中には(メタ)アクリロイル基や(メタ)アリル基を含まないで、脂環中に二重結合を含有するものを側鎖に導入したオレフィン化合物を用い、酸素阻害の影響が少なく、且つ生産性の高い活性エネルギー線硬化型組成物を得ようという発想は皆無であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平01−152112号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平04−252231号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平07−070242号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平11−131013号公報(特許請求の範囲、4〜5頁)
【特許文献5】
特開平09−010686号公報(8頁、12頁、18〜19頁)
【非特許文献1】
Christopher N. Bowman ら,“マクロモレキュラーズ(Macromolecules)”,2002年,35巻,p.5361−5365
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、活性エネルギー線硬化型組成物に配合してさまざまな分野に適用が可能な、側鎖に二重結合を有する(共)重合体および当該(共)重合体の簡便で実用的な製造方法を提供することにある。更に、当該(共)重合体を含有する、酸素阻害が小さく、少ない活性エネルギー線照射で硬化するような活性エネルギー線硬化型組成物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)、およびラジカル重合開始剤(D)とを含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものから得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)が、上記記載のような(共)重合体として色々な活性エネルギー線硬化型樹脂に配合してさまざまな分野に適用が可能なことを見出した。また、簡便で実用的な製造方法を提供できることも見出した。更に、重合体(C)と多価チオール化合物(E)と光重合開始剤(G)とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物は、酸素によるラジカル重合阻害が極めて少ないため硬化性に優れ、且つ生産性が高いことを見出し、本発明を完成した。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書では、アクリレートまたはメタクリレートを(メタ)アクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸を(メタ)アクリル酸、アリル化合物またはメタリル化合物のことを(メタ)アリル化合物などという。重合体および共重合体を(共)重合体と称する。
【0015】
本発明に用いる重合体(C)は、環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)の重合体、または化合物(A)と分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)との共重合体である。
【0016】
○化合物(A)
化合物(A)は、環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを同一分子内に有するものであり、A1とA2とをエーテル、エステルまたはメチレンで連結した化合物(A)である。なお、A1とA2とをエーテル結合、エステル結合またはメチレン結合などで結合させて化合物(A)とするときの結合中に、アルキレン、アルキレンオキシまたは/およびフェニレンなどを含有することもある。当該結合位置は、A1の環内二重結合以外の炭素から出るものである。
下記にA1、A2および化合物(A)を例示する。
【0017】
○環内オレフィンを有する脂環基(A1)について
化合物(A)のA1は、環内に二重結合を有する脂単環または二重結合を有する脂多環である。環内に二重結合を有する脂単環としては、シクロヘキセン、シクロペンテン、シクロプロペン、シクロブテンなどが挙げられる。また二重結合を有する脂多環としては、ビシクロ構造やトリシクロ構造を持つもの脂多環が挙げられ、ジシクロペンテニル、ノルボルネンが具体例として挙げられる。これらの環には、分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基やシクロアルキル基などの任意の置換基を有していても良い。
【0018】
○ラジカル重合性基(A2)について
化合物(A)のA2は、ラジカル重合性基であり、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、(メタ)アリル基、下記式(1)、下記式(2)などが例示できる。
【0019】
【化1】
【0020】
式(1)のR1は水素原子または炭素数1〜4までのアルキル基である。
【0021】
【化2】
【0022】
式(2)のR1は水素原子または炭素数1〜4までのアルキル基であり、R2は分岐を有してもよい炭素数2〜6のアルキレンでm=1、または分岐を有してもよいアルキレンオキシ変成体でm=1〜6の整数である。
【0023】
ラジカル重合性基(A2)としては、重合性の観点から(メタ)アクリロイル基、スチリル基が好適なものとして挙げられる。通常のラジカル重合において、スチレン誘導体を含む系の共重合速度は、これを含まない(メタ)アクリレート共重合系と比べて大きく低下する。このようなことから考えて、ラジカル重合性基(A2)としては(メタ)アクリロイル基が好適に使用される。
【0024】
○化合物(A)について
A1とA2とを連結して化合物(A)を得るときの結合は、エーテル結合、エステル結合またはメチレン結合が例示できるが、エーテル結合またはエステル結合が好ましく、エステル結合が更に好ましく用いられる。
より具体的な化合物(A)の構造としては下記のようなものを挙げることができるが、本発明はこれら具体例に限定されるものではなく、任意のものを使用することができる。
【0025】
○シクロヘキセニル基またはその誘導体を有する(メタ)アクリレート
環内オレフィンとして、シクロヘキセニル基をまたはその誘導体を挙げることができる。これらを有する(メタ)アクリレートは下記一般式(3)または式(4)で表すことができる。
【0026】
【化3】
【0027】
但し、式(3)のR3は、水素原子またはメチル基、R4は、分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキサイド、R5〜R12はそれぞれ独立に水素原子または分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、またはシクロアルキル基であり、nは0〜6の整数である。
【0028】
式(3)について具体的には、たとえばR3が水素原子、R4がメチレン、nが1、R5〜R12がそれぞれ水素原子である、3−シクロヘキセニルメチルアクリレート、R3がメチル基、R4がメチレン、nが1、R5〜R12がそれぞれ水素原子である、3−シクロヘキセニルメチルメタクリレート、R3が水素原子、R4がメチレン、nが0、R5〜R12がそれぞれ水素原子である、3−シクロヘキセニルアクリレート、R3がメチル基、R4がメチレン、nが0、R5〜R12がそれぞれ水素原子である、3−シクロヘキセニルメタクリレートなどが挙げられる。
【0029】
【化4】
【0030】
但し、式(4)のR13は水素原子またはメチル基、R14は、分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキサイド、R15〜R22はそれぞれ独立に水素原子または分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、またはシクロアルキル基であり、nは0〜6の整数である。
【0031】
式(4)について具体的には、たとえばR13が水素原子、nが0、R15〜R22がそれぞれ水素原子である、2−シクロヘキセニルアクリレート、R13がメチル基、nが0、R15〜R22がそれぞれ水素原子である、2−シクロヘキセニルメタクリレートなどが挙げられる。
【0032】
○ジシクロペンテニル基を有する(メタ)アクリレート
環内オレフィンとして、ジシクロペンテニル基をまたはその誘導体を挙げることができる。これらを有する(メタ)アクリレートは下記一般式(5)で表すことができる。
【0033】
【化5】
【0034】
但し、式(5)のR23は、水素原子またはメチル基、R24は分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキサイド、nは0〜6の整数である。
【0035】
式(5)についてのものとしては、たとえばR23が水素原子、nが0である、ジシクロペンテニルアクリレート、R23がメチル基、nが0である、ジシクロペンテニルメタクリレート、R23が水素原子、R24がエチレンオキサイド、nが1である、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートなどが挙げられる。
【0036】
○ノルボルネニル基を有する(メタ)アクリレート
環内オレフィンとして、ノルボネニル基を挙げることができる。これらを有する(メタ)アクリレートは下記一般式(6)で表すことができる。
【0037】
【化6】
【0038】
但し、式(6)のR25は、水素原子またはメチル基、R26は分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキサイド、nは0〜6の整数である。
【0039】
式(6)についてのものとしては、たとえばR25が水素原子、R26がメチレン、nが1である、ノルボルネニルメチルアクリレート、R25がメチル基、R26がメチレン、nが1である、ノルボルネニルメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0040】
○分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)
本発明において化合物(B)は、重合体(C)の用途に応じた物性を付与する目的で使用される。化合物(B)としては可溶な重合体(C)を得る目的から、分子中に一個のラジカル重合性基を有する化合物が好ましい。このようなものとしては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドおよびN−メトキシブチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;フマル酸モノブチルエステルおよびマレイン酸モノブチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルおよび無水マレイン酸などが挙げられる。
これらの中でも、共重合性や汎用性などの観点から、(メタ)アクリレートが好適に使用される。
【0041】
(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i一ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレートおよびn−ラウリル(メタ)アクリレートなどの分岐を有してもよい炭素数1〜16のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体のモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら単量体は、2種以上を併用することもできる。
【0042】
化合物(B)の使用割合は、化合物(A)と化合物(B)との合計100質量部に対し、98質量部以下であり、好ましくは80質量部以下であり、更に好ましくは70質量部以下で用いられる。
【0043】
○重合体(C)
本発明で使用する重合体(C)は、化合物(A)または化合物(A)と化合物(B)とを構成単位とするものであり、側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を有していることを特徴とする。即ち、重合体(C)は、化合物(A)をラジカル重合させた重合体であり、化合物(A)と化合物(B)とをラジカル重合させた共重合体である。
なお、重合体(C)と異なる側鎖に二重結合を有していない重合物を用いて作成した活性エネルギー線硬化型組成物は、本発明の課題を解決することはできない。即ち、側鎖に二重結合を有していない重合物を活性エネルギー線硬化型組成物に配合しても重合に関与することができないことは明白である。また、環内オレフィンを有する脂環基を側鎖に有していない重合体、即ちアルケニル基を側鎖に有するものは、当該重合体を合成するコントロールが難しいため、希望とする分子量や性質を有するものを得ることが困難である。
このことから、重合体(C)には、側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を有していることが必須である。
【0044】
重合体(C)の分子量は、質量平均分子量で500〜40,000であることが好ましく、より好ましくは600〜30,000であり、更に好ましくは700〜20,000であり、特に好ましくは1000〜15,000である。重合体(C)の質量平均分子量が500に満たないと、臭気や皮膚刺激性が問題となったり、硬化性が低下するおそれがある。他方40,000を超えると、重合体(C)の粘度が高くなり過ぎ、取り扱いにくいうえ、多価チオールなど他成分との均一混合も困難になる場合がある。
【0045】
尚、本発明において、質量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下GPCと略す)により測定した分子量をポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
【0046】
重合体(C)中における二重結合の量は、重合体(C)100g中0.01〜3モルが好ましく、0.05〜2モルが更に好ましく、0.1〜1モルが特に好ましい。
【0047】
○ラジカル重合開始剤(D)
本発明で使用する重合体(C)は、化合物(A)を、または化合物(A)と化合物(B)とをラジカル重合により製造されるものであり、当該重合にはラジカル重合開始剤(D)が使用される。なお、本発明におけるラジカル重合開始剤(D)とは、熱、光、あるいはレドックス反応などによりラジカルを発生する化合物のことを指す。このようなものとしては、有機化過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤などが挙げられる。
【0048】
ラジカル重合開始剤(D)における有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド及びジクミルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0049】
ラジカル重合開始剤(D)におけるアゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、1,1’−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2− メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2− メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2− メチルマロノジニトリル、2,2’−アゾビス−2− メチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4− シアノ吉草酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4− ジメチルバレロニトリルなどを挙げることができる。
【0050】
ラジカル重合開始剤(D)におけるレドックス開始剤としては、例えば過酸化水素−鉄(II)塩、有機化酸化物−ジメチルアニリン、セリウム(IV)塩−アルコールなどの組み合わせを挙げることができる。
この他のラジカル重合開始剤(D)としては、テトラアルキルチウラムジスルフィドのような、S−S結合が熱により分解しやすいジアルキルジスルフィドも使用することができる。
【0051】
これらのラジカル重合開始剤(D)の中では、特にアゾ化合物が、重合を安定におこなえることから好適に使用される。ラジカル重合開始剤(D)は、重合温度や重合時間に応じて適切な分解特性をもつものを選択して用いればよい。
【0052】
ラジカル重合開始剤(D)の使用量は、化合物(A)100質量部に対して、または化合物(A)と化合物(B)との合計100質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。少なすぎると得られる重合体(C)の質量平均分子量が好適な範囲よりも大きくなったり、重合率が低くなることにより収量が低下し非経済的となったり、臭気の問題が発生したりすることがある。逆に多すぎると、ラジカル重合開始剤(D)の残存物や分解物が重合体(C)の物性に悪影響を及ぼすばかりでなく重合開始剤のコストが大きくなるために非経済的となり、本発明で使用される重合体(C)の製造方法の工業的意義が薄れてしまう。
【0053】
○重合体(C)の製造方法
重合体(C)を得るためのラジカル重合としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの方法が挙げられるが、これらの中で溶液重合法が好ましく挙げられる。
具体的な操作方法としては、使用する化合物(A),または化合物(A)と化合物(B)とを有機溶剤に溶解させ、ラジカル重合開始剤(D)の存在下に加熱攪拌するバッチ方法や、あらかじめ有機溶剤を仕込んで加熱した反応容器中に、化合物(A),または化合物(A)と化合物(B)とを連続的に供給するセミバッチ方式などが挙げられる。なかでも、重合体の質量平均分子量の調節や、重合体(C)の組成分布を極力狭くする目的でセミバッチ方式が好適に用いられる。セミバッチ方式で製造する場合において、化合物(A),または化合物(A)と化合物(B)との供給時間は、短すぎると質量平均分子量が高くなりすぎたり、(共)重合体の組成分布が広くなってしまい、逆に長すぎると経済的ではない。供給時間は重合条件により適宜変化するが、通常は30分〜10時間かけて、好ましくは2〜8時間かけて反応容器に供給されることが好ましい。供給後は、30分〜10時間、好ましくは2〜8時間熟成させる。
【0054】
重合体(C)を得るときの重合温度は、使用する有機溶剤、化合物(A)および化合物(B)の沸点、製造時間、所望の分子量、ラジカル重合開始剤の分解特性、天井温度などに応じて適宜選択できる。
【0055】
重合体(C)を重合するときに用いる有機溶剤としては、化合物(A)、化合物(B)および重合体(C)に対して十分な溶解性を持っているものを使用する。このようなものとしては、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどが挙げられる。これらは1種類で用いても2種類以上を用いても良い。
【0056】
重合体(C)の質量平均分子量を所望の範囲内に調節するためには、用いる有機溶剤の連鎖移動定数は大きいものが良い。連鎖移動定数が大きい溶剤を使用すれば、別途連鎖移動剤を添加する必要がなく、製造工程が簡略化できるうえに、重合体(C)中に残存する連鎖移動剤に起因する臭気の問題を避けることができる。さらには連鎖移動剤に基づく末端構造が、重合体(C)の使用工程で悪影響を及ぼす可能性もなくなる。このような溶剤としては、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール類、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼンなどが挙げられる。なかでも、安価であり、重合後の溶剤の除去が容易であることから、アルコール類が好ましく、イソプロピルアルコールが好適に使用される。
【0057】
有機溶剤の使用量としては、重合終了時の重合体(C)濃度が10〜50質量%となることが好ましい。有機溶剤が多すぎると、重合後の溶剤除去に手間がかかるばかりでなく、得られる重合体(C)の収量が少なく経済性に問題がある。逆に少なすぎると所望の分子量が得られなくなる。
【0058】
また、必要であれば、重合体(C)の物性を低下させない範囲で別途連鎖移動剤を添加することもできる。このようなものとしては、四塩化炭素、四臭化炭素、ドデシルメルカプタン、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールなどが挙げられる。
【0059】
○多価チオール化合物(E)
多価チオール化合物(E)としては、アルキル基にメルカプト基が結合したチオール、チオグリコール酸誘導体、メルカプトプロピオン酸誘導体などが挙げられる。なかでも、チオグリコール酸誘導体や、メルカプトプロピオン酸誘導体は、任意のポリオールと、チオグリコール酸やメルカプトプロピオン酸とのエステル化により、さまざまな構造の多価チオール化合物が得られることから、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に適したものを選定できるというメリットがある。
【0060】
アルキル基にメルカプト基が結合したチオールとしては、o−,m−あるいはp−キシレンジチオールなどが挙げられる。
【0061】
チオグリコール酸誘導体としては、エチレングリコールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートなどが挙げられる。
【0062】
メルカプトプロピオン酸誘導体としては、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリヒドロキシエチルトリイソシアヌール酸トリスチオプロピオネート等が挙げられる。
【0063】
活性エネルギー線硬化型組成物に対する多価チオール化合物(E)の配合割合は、メルカプト基と活性エネルギー線硬化型組成物中の二重結合のモル換算とから換算する。即ち、メルカプト基1モルに対し、活性エネルギー線硬化型組成物中の二重結合が0.2〜2モルが好ましく、0.4〜1.5モルがより好ましい。0.2モル以下の場合、硬化物の塗膜強度が低下する場合があり、2モル以上の場合、硬化性が低下する場合がある。
【0064】
○分子中に一個以上の二重結合を有する化合物(F)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、組成物の粘度を低減したり、硬化物の性能を高めたり、または硬化速度を調整するために、分子中に一個以上の二重結合を有する化合物(F)を配合しても良い。このものは、主として塗膜性能を向上させる目的であり、分子中に二個以上の二重結合を有するものがより好ましく使用される。
【0065】
このような化合物(F)の例として、(メタ)アリル化合物、ノルボルネン化合物、ビニルエーテルなどを挙げることができる。このようなもの以外にも、必要に応じて、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系オリゴマー等も用いることもできる。
【0066】
(メタ)アリル化合物としては、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルビスフェノールA、ジメタリルビスフェノール等が挙げられる。
【0067】
ノルボルネン化合物としては、トリメチロールプロパントリノルボルネンカルボキシレート、ビスフェノールAジノルボルネンカルボキシレート等が挙げられる。
【0068】
ビニルエーテルとしては、例えばブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、テトラメチロールプロパントリビニルエーテル等を挙げることができる。
【0069】
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどのポリオールおよびそのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0070】
この他に化合物(F)として、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーおよびエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0071】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に対して、さらにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた反応物などが挙げられる。ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエチレングリコールおよびポリエステルポリオールなどがあり、低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノールおよび3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどが挙げられ、ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオールまたは/およびポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびテレフタル酸などの二塩基酸またはその無水物などの酸成分との反応物が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0072】
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオールおよびトリメチロールプロパンなどの低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物などのポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびテレフタル酸などの二塩基酸またはその無水物などの酸成分とからの反応物などが挙げられる。
【0073】
エポキシアクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を付加反応させたもので、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、フェノールあるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加反応体などが挙げられる。
【0074】
これらの化合物の中でも、入手のしやすさ、硬化性などの観点から、化合物(F)として分子中に二個以上の(メタ)アリル基を有する化合物((メタ)アリル化合物)が好ましく、特に分子中に二個の(メタ)アリル基を有する化合物((メタ)アリル化合物)が好適に使用される。
【0075】
化合物(F)の配合割合としては、重合体(C)100質量部に対して900質量部以下が好ましく、更に好ましくは500質量部以下、特に好ましくは200質量部以下で使用される。
【0076】
○光重合開始剤(G)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線で硬化するものであるが、この活性エネルギー線としては、紫外線、X線および電子線などが挙げられる。活性エネルギー線として紫外線を用いるときは、これによる硬化を効率よくする目的で、光重合開始剤(G)を添加しすることが好ましい。光重合開始剤(G)を使用する場合は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、重合体(C)、多価チオール化合物(E)、化合物(F)の合計100質量部に対し、光重合開始剤(G)は0.05〜15質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部の範囲内であることがより好ましい。使用量が少なすぎる場合には、目的の効果が得られず、多すぎると経済性に問題があるばかりでなく、硬化にも悪影響をおよぼすおそれがある。
【0077】
光重合開始剤(G)の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインプロピルエーテルなどのベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンおよびN,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどのアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンおよび2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンおよび2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタールおよびベンジルジメチルケタールなどのケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトンおよび4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイドなどのベンゾフェノン;並びに2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0078】
光重合開始剤(G)は単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
光重合開始剤(G)には、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエチルアミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0079】
○他の成分
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、上記記載の成分の他に、熱重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、無機充填剤などを各種特性を改良する目的で配合することもできる。
適当な熱重合防止剤としてはハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩などがあげられる。
酸化防止剤としては、Irganox1010、1035、1076、1222(以上商品名、チバガイギー(株)製)などが挙げらる。
紫外線吸収剤としては、Tinuvin P、234、320、326、327、328、213(以上商品名、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上商品名、住友化学工業(株)製)などが挙げらる。
光安定剤としては、Tinvuin292、144、622LD(以上商品名、チバガイギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上商品名、三共化成工業(株)製)などが挙げらる。
老化防止剤としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW(以上商品名、住友化学工業(株)製)などが挙げられる。
無機充填剤として代表的なものには、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、炭酸バリウム、石膏、アルミナ白、シリカ、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム シリカパウダー、コロイダルシリカ、アスベスト粉末、水酸化アルミニウム、ステアリ酸亜鉛の如き体質顔料;黄鉛、ジンククロメートもしくはモリブデート・オレンジの如きクロム酸塩、紺青の如きフェロシアン化物、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化鉄、炭化クロムグリーンの如き金属酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッドもしくは硫化水銀の如き金属硫化物、セレン化物もしくは硫酸鉛の如き硫酸塩、群青の如き珪酸塩、あるいは炭酸塩、コバルト・バイオレッドもしくはマンガン紫の如き燐酸塩またはアルミニウム粉、亜鉛末、真鍮粉、マグネシウム粉、鉄粉、銅粉もしくはニッケル粉の如き金属粉、さらには、カーボンブラックなどの無機顔料;あるいは、アゾ顔料、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーンの如き銅フタロシアニン系顔料またはキナクリドン系顔料のような有機顔料などがある。
【0080】
○組成物の使用方法
本発明の重合体(C)を配合した活性エネルギー線硬化型組成物の使用方法としては、基材に硬化性組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射する方法などが挙げられる。当該基材としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどの成形樹脂加工品(プラスチック)、金属、ガラス、コンクリート、自然の木材および合成木材などの木材、石材並びに紙などが挙げられる。
【0081】
○組成物の硬化方法
活性エネルギー線硬化型組成物を塗布した基材を、活性エネルギー線照射装置にセットし、一定時間活性エネルギー線照射をおこなったり、あるいはコンベアを備えた装置にて活性エネルギー線の照射時間を設定することにより組成物を硬化させることができる。活性エネルギー線としては、紫外線、X線および電子線などが挙げられる。紫外線により硬化させる場合に使用できる光源としては、様々なものを使用することができ、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプあるいはカーボンアーク灯などが挙げられる。本発明では、安価な装置を使用できることから、組成物の硬化には紫外線を使用することが好ましい。
【0082】
○実施の形態
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)、およびラジカル重合開始剤(D)とを含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものからアルコール類を重合溶媒として得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とをエーテル、エステルまたはメチレンで連結した化合物(A)、ラジカル重合開始剤(D)を含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものから得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)、アルコール類およびラジカル重合開始剤(D)としてアゾ化合物を含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものから得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)が、シクロヘキセニル基またはジシクロペンテニル基であることを特徴とする重合体(C)。
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とをエーテルまたはエステルで連結した化合物(A)とラジカル重合開始剤(D)とを含有ものから得られる側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)をエステル結合で含有する重合体(C)と多価チオール化合物(E)と光重合開始剤(G)とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物。
*活性エネルギー線硬化型組成物中における二重結合1モルに対して多価チオール化合物(E)のメルカプト基の割合が0.4〜2モルであることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型組成物
【0083】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明においては、実施例に示すものに限定されず、目的および用途に応じて本発明の範囲内で種々条件を変更することができる。なお、「部」とは質量部を意味する。
【0084】
○実施例1〔共重合体の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器および滴下ロートを備えたフラスコに、イソプロピルアルコール(以下IPAという)1000gを仕込み、78℃に昇温した。別途、3−シクロヘキセニルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製;以下3−CHMAという)130g、n−ブチルアクリレート(以下BAという)270g、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNという)4g、IPA400gからなる混合溶液を調製し、上記滴下ロートから4時間かけてフラスコ内に連続的に滴下して重合を行った。滴下終了後さらにAIBN4gを添加して、80℃で3時間半熟成を行った。
重合終了後、減圧下で反応液から未反応単量体および溶剤などの揮発成分を除去した。
得られた液状の共重合体は、数平均分子量1,800、質量平均分子量4,300(GPCにより測定。カラムは、TSKgel MultiporeHx1−M(東ソー(株)製)、溶媒はTHF使用)であった。
また、共重合体の二重結合量を、JIS K6235に準じて測定したところ、共重合体100g中に、0.165モルの二重結合を有していることがわかった。更に共重合体の1H−NMR(図1にスペクトルを記載)から、5.7ppm付近に、二重結合に基づくピークが確認された。
【0085】
○実施例2〔共重合体の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器および滴下ロートを備えたフラスコに、IPA1000gを仕込み、78℃に昇温した。別途、3−CHMA234g、BA166g、AIBN4g、IPA400gからなる混合溶液を調製し、上記滴下ロートから4時間かけてフラスコ内に連続的に滴下して重合を行った。滴下終了後さらにAIBN4gを添加して、80℃で3時間半熟成を行った。
重合終了後、減圧下で反応液から未反応単量体および溶剤などの揮発成分を除去した。
得られた液状の共重合体は、数平均分子量2,600、質量平均分子量8,200(GPC測定は実施例1に記載の方法を用いた)であった。
また、共重合体の二重結合量を、JIS K6235に準じて測定したところ、共重合体100g中に、0.29モルの二重結合を有していることがわかった。更に、共重合体の1H−NMR(図2にスペクトルを記載)からも、5.7ppm付近に、二重結合に基づくピークが確認された。
【0086】
○実施例3〔重合体の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器および滴下ロートを備えたフラスコに、IPA114g、メチルエチルケトン(以下MEKという)22g、メルカプトエタノール1gを仕込み、78℃に昇温した。別途、ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成(株)製)100g、AIBN4g、MEK17gからなる混合溶液を調製し、上記滴下ロートから4時間かけてフラスコ内に連続的に滴下して重合を行った。同時に別の滴下ロートを用いて、メルカプトエタノール4g、IPA4gの混合物を4時間かけてフラスコ内に連続的に滴下した。滴下終了後さらにAIBN1.6gを添加して、80℃で4時間熟成を行った。
重合終了後、減圧下で反応液から未反応単量体および溶剤などの揮発成分を除去した。
得られた液状の重合体は、数平均分子量1,400、質量平均分子量2,900(GPC測定は実施例1に記載の方法を用いた)であった。
また、重合体の二重結合量を、JIS K6235に準じて測定したところ、重合体100g中に、0.465モルの二重結合を有していることがわかった。更に、重合体の1H−NMR(図3にスペクトルを記載)からも、5.4〜5.7ppm付近に、二重結合に基づくピークが確認された。
【0087】
○比較例1〔重合体の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器を備えたフラスコに、トルエン100g、アリルメタクリレート100g、AIBN0.5gを仕込み、80℃に昇温した。重合開始から約10分ほどでゲル化してしまい、溶媒に可溶な重合体を得ることはできなかった。
【0088】
○硬化性試験〔実施例4〜16〕
表1〜3に示す各成分を常法に従い攪拌・混合し組成物を調製した。即ち、重合体(C)と光重合開始剤(G)とを、あらかじめ80℃に保った乾燥機中に15分間放置して溶解させた後に、これに多価チオール化合物(E)、および必要に応じて化合物(F)を室温で攪拌・混合し、活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。
バーコーターを用いて、鉄板上に厚さ約10μmで、得られた組成物を塗布し、照射強度13.5mW/cm2の紫外線ランプを用いて硬化させ、タックがなくなるまでの紫外線照射量(mJ/cm2)を求めた。この結果を表1〜3に記載した。
【0089】
表1〜3中の数値は質量部を示す。そして、重合体(C)、多価チオール化合物(E)および必要により化合物(F)の合計を100質量部とし、この100質量部に対し光重合開始剤(G)を表1〜3に記載の質量部を添加した。
下記に表1〜3で用いた略号を記載する。
○多価チオール化合物(E)
TMTP:トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート(淀化学(株)製)
BDTP:ブタンジオールビスチオプロピオネート(淀化学(株)製)
PETP:ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(淀化学(株)製)
○光重合開始剤(G)
BP:ベンゾフェノン
Irg500:商品名(チバスペシャルティケミカル(株)製)
○化合物(F)
DAP:ジアリルフタレート(ダイソー(株)製)
T−20:トリメチロールプロパンジアリルエーテル(ダイソー(株)製)
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
本発明の重合体(C)は、1H−NMRスペクトルおよびJIS K6235に準じて測定して分かるように分子中に二重結合を有し、この二重結合は、主に環内にあるものである。そして、実施例4〜7および実施例14〜16から分かるように、重合体(C)、多価チオール化合物(E)と光重合開始剤(G)からなる組成物は、紫外線により硬化する。このことは、重合体(C)中に重合性基があることを示している。更に、実施例8〜13は、重合体(C)、多価チオール化合物(E)、光重合開始剤(G)および化合物(F)からなる組成物であり、実施例4〜7に比べ少ない紫外線量で硬化する。このことは、主に重合体(C)および化合物(F)の影響と考えられる。
このように、本発明の組成物は、異なる活性エネルギー線量で硬化させることができることから、各種用途に用いることができる。また、重合体(C)は、化合物(A)または化合物(A)と化合物(B)とをラジカル重合開始剤(D)を用いて作製するものであることから、種々の性質をおよび必要とする性質を有するものを簡単に作製することができる。
なお、化合物(A)を用いないで重合体を得ようとした比較例1では、溶媒に可溶な重合体を得ることができず、これでは、さまざまな分野に適用できるものを得ることはできない。
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、任意の割合で側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を導入した重合体を得ることができる。このような重合体は硬化性材料として各種用途のものに使用可能なものである。しかも、任意のラジカル重合性基を有する化合物との共重合により、さまざまな用途に応じた物性を付与した(共)重合体を得ることができ、産業上きわめて有用である。そのうえ、その製造方法は従来技術と比べてきわめて簡便であり、実用性の高いものである。さらに、この(共)重合体を多価チオール化合物と組み合わせることにより得られる活性エネルギー線硬化型組成物は、従来のアクリレート系硬化材料とは異なり、酸素阻害を受けにくく、より少ない活性エネルギー線照射で硬化するために生産性が高いものである。本発明は塗料などのコーティング剤、成形材、インキおよびレジストなどの種々の用途に使用可能であり、これら技術分野で賞用され得るものである。
【0095】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作製した共重合体の1H−NMRスペクトル
【図2】実施例2で作製した共重合体の1H−NMRスペクトル
【図3】実施例3で作製した重合体の1H−NMRスペクトル
【発明の属する技術分野】
本発明は、さまざま用途に応じた物性を付与することができ、硬化型材料として有用な重合体で、当該重合体と多価チオール化合物とを組み合わせることにより、従来の光ラジカル重合硬化型材料で問題となっている重合の酸素阻害を受けにくく、少ない活性エネルギー線照射で硬化可能で、生産性が高い活性エネルギー線硬化型組成物を提供することができる。本発明の組成物は、塗料などのコーティング剤、成形材、接着剤、インキなどの種々の用途に使用可能であり、これら技術分野で賞用され得るものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、無溶剤型で使用できるアクリレート系材料を用いたラジカル重合型の活性エネルギー線硬化型材料の検討が進められており、コーティング剤、接着剤、インキなどに有用に用いられている。アクリレート系材料は、一般的に硬化時間が短く、低温での硬化が可能であり、一液型で無溶剤化が可能であるため、省資源、環境汚染の低減化が図れるという利点を有している。
【0003】
しかしながら、ラジカル重合は、組成物中の溶存酸素や空気中の酸素などにより重合が阻害されるため、硬化が遅くなり生産性に問題が生じる場合がある。窒素ガスなどによる不活性雰囲気下でラジカル重合を行えば、この問題は解決できるものの、省スペース・省力化を目指した作業工程の短縮および簡略化などが強く求められている現状から、このような方法は実用的ではない。
【0004】
酸素による重合阻害をほとんど受けない光硬化システムとして、オレフィン化合物とチオール化合物とを組み合わせたラジカル付加反応型材料が封止材用途などで使用されており、これらの材料は硬化性が速く生産性を上げることができる技術として注目されている(例えば、非特許文献1参照)。
この技術の適用範囲を広げるために、さまざまな用途に応じて自在に所望の物性が付与できるようなオレフィン化合物の提供および当該オレフィン化合物の製造において容易で実用性の高いものが望まれている。
このようなオレフィン化合物として、分子内に複数個の二重結合を有する化合物を、または分子内に複数個の二重結合を有する化合物と分子内に一個の二重結合を有する化合物と共重合させることができれば、その多様性から広範な用途に使用できるものが得られると期待される。
【0005】
なお、側鎖に二重結合を有するようなオレフィン化合物は、近年、熱硬化型あるいは光硬化型材料の分野での検討が行われており、その製造方法についても報告されている。
例えば、α、β−不飽和カルボン酸無水物−ビニル化合物共重合体を骨格とする重合体の側鎖の酸無水物基および/またはカルボキシル基を不飽和アルコールによってエステル化した化合物などがあげられる(例えば特許文献1参照)。しかしながら、このような製造法は、官能基を持つモノマーの重合体または共重合体に、二重結合を有する化合物を付加させるといった、多段階の化学反応が必要であり、従って製品は必然的に高価なものとなってしまう。この結果、このような重合体は、限定された用途に一部用いられているにすぎない。このため、より簡便で実用的な製造方法が求められている。
【0006】
このような試みとして、分子内に複数個の(メタ)アクリル基を有するモノマーを長鎖の置換基を有するような(メタ)アクリレートモノマーと共重合させ、置換基の立体効果を利用することにより、分子間の架橋反応、すなわちゲル化を防ぐといった方法(例えば特許文献2参照)が挙げられる。しかし、このような方法では、複数個の二重結合を有するモノマーと共重合させうるモノマーは、長鎖置換基を有するモノマーの使用が不可欠である。このため、得られた共重合体の性能は、おのずと限られたものにならざるを得ないため、用途に合わせた物性を付与することが難しく、実用性に乏しいのが明らかである。
【0007】
そこで、共重合体の設計に多様性を付与するための方法として、4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンおよび分子状酸素を含むガスの存在下で、アリル(メタ)アクリレートと、それ以外のモノマーとをラジカル共重合させることにより、側鎖に二重結合としてアリル基を有する共重合体の製造方法(例えば特許文献3参照)が報告されている。しかし、この方法では側鎖に導入可能なアリル基の量に限界があり、且つ二重結合量を自在に設計することができない。
【0008】
側鎖に二重結合を有するようなオレフィン化合物として、脂環中に二重結合を有するもの(環内オレフィン)が報告されている。即ち、この化合物は、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートまたはジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートで有り、当該化合物とグリシジル基含有(メタ)アクリル酸のようなエポキシ基含有(メタ)アクリレートとの共重合体が報告されている(例えば特許文献4参照)。当該共重合体は、脂環内に二重結合を有する基を有するものであるが、同時に存在するエポキシ基により組成物を重合させている。即ち、当該共重合体と多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸、官能性シランカップリング剤、エポキシ樹脂硬化促進剤とを含有する組成物を硬化させいてるものであり、脂環中の二重結合を活用していない。
【0009】
また、脂環中に二重結合を有するものをアルケニル基とし、これを含有するアクリル樹脂が報告されている。即ち、アルケニル基含有アクリル系モノマーの単独重合、またはその他のアクリル系モノマーなどとの共重合により得ることが記載されている(例えば特許文献5参照)。当該アルケニル基含有アクリル樹脂を得るためのアルケニル基含有アクリル系モノマーとして記載されているものの中に、(メタ)アクリル酸シクロヘキセニルメチルが記載されていて、そして3−メチル−3−ブテニルメタクリレート、シクロヘキセニルメチルメタクリレートおよび2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを2,2’−アゾビス(メチルイソブチレート)を用いて共重合させたものが報告されている。
しかし、この共重合体は、側鎖に脂環アルケニル基以外にアルケニル基および芳香属基をも有しているものであり、当該共重合体とヒドロシリル基含有化合物などと配合して白金触媒を用いて加熱重合させており、当該配合物を活性エネルギー線を用いて硬化させてはいない。
【0010】
側鎖中には(メタ)アクリロイル基や(メタ)アリル基を含まないで、脂環中に二重結合を含有するものを側鎖に導入したオレフィン化合物を用い、酸素阻害の影響が少なく、且つ生産性の高い活性エネルギー線硬化型組成物を得ようという発想は皆無であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平01−152112号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平04−252231号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平07−070242号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平11−131013号公報(特許請求の範囲、4〜5頁)
【特許文献5】
特開平09−010686号公報(8頁、12頁、18〜19頁)
【非特許文献1】
Christopher N. Bowman ら,“マクロモレキュラーズ(Macromolecules)”,2002年,35巻,p.5361−5365
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、活性エネルギー線硬化型組成物に配合してさまざまな分野に適用が可能な、側鎖に二重結合を有する(共)重合体および当該(共)重合体の簡便で実用的な製造方法を提供することにある。更に、当該(共)重合体を含有する、酸素阻害が小さく、少ない活性エネルギー線照射で硬化するような活性エネルギー線硬化型組成物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)、およびラジカル重合開始剤(D)とを含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものから得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)が、上記記載のような(共)重合体として色々な活性エネルギー線硬化型樹脂に配合してさまざまな分野に適用が可能なことを見出した。また、簡便で実用的な製造方法を提供できることも見出した。更に、重合体(C)と多価チオール化合物(E)と光重合開始剤(G)とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物は、酸素によるラジカル重合阻害が極めて少ないため硬化性に優れ、且つ生産性が高いことを見出し、本発明を完成した。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書では、アクリレートまたはメタクリレートを(メタ)アクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸を(メタ)アクリル酸、アリル化合物またはメタリル化合物のことを(メタ)アリル化合物などという。重合体および共重合体を(共)重合体と称する。
【0015】
本発明に用いる重合体(C)は、環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)の重合体、または化合物(A)と分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)との共重合体である。
【0016】
○化合物(A)
化合物(A)は、環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを同一分子内に有するものであり、A1とA2とをエーテル、エステルまたはメチレンで連結した化合物(A)である。なお、A1とA2とをエーテル結合、エステル結合またはメチレン結合などで結合させて化合物(A)とするときの結合中に、アルキレン、アルキレンオキシまたは/およびフェニレンなどを含有することもある。当該結合位置は、A1の環内二重結合以外の炭素から出るものである。
下記にA1、A2および化合物(A)を例示する。
【0017】
○環内オレフィンを有する脂環基(A1)について
化合物(A)のA1は、環内に二重結合を有する脂単環または二重結合を有する脂多環である。環内に二重結合を有する脂単環としては、シクロヘキセン、シクロペンテン、シクロプロペン、シクロブテンなどが挙げられる。また二重結合を有する脂多環としては、ビシクロ構造やトリシクロ構造を持つもの脂多環が挙げられ、ジシクロペンテニル、ノルボルネンが具体例として挙げられる。これらの環には、分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基やシクロアルキル基などの任意の置換基を有していても良い。
【0018】
○ラジカル重合性基(A2)について
化合物(A)のA2は、ラジカル重合性基であり、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、(メタ)アリル基、下記式(1)、下記式(2)などが例示できる。
【0019】
【化1】
【0020】
式(1)のR1は水素原子または炭素数1〜4までのアルキル基である。
【0021】
【化2】
【0022】
式(2)のR1は水素原子または炭素数1〜4までのアルキル基であり、R2は分岐を有してもよい炭素数2〜6のアルキレンでm=1、または分岐を有してもよいアルキレンオキシ変成体でm=1〜6の整数である。
【0023】
ラジカル重合性基(A2)としては、重合性の観点から(メタ)アクリロイル基、スチリル基が好適なものとして挙げられる。通常のラジカル重合において、スチレン誘導体を含む系の共重合速度は、これを含まない(メタ)アクリレート共重合系と比べて大きく低下する。このようなことから考えて、ラジカル重合性基(A2)としては(メタ)アクリロイル基が好適に使用される。
【0024】
○化合物(A)について
A1とA2とを連結して化合物(A)を得るときの結合は、エーテル結合、エステル結合またはメチレン結合が例示できるが、エーテル結合またはエステル結合が好ましく、エステル結合が更に好ましく用いられる。
より具体的な化合物(A)の構造としては下記のようなものを挙げることができるが、本発明はこれら具体例に限定されるものではなく、任意のものを使用することができる。
【0025】
○シクロヘキセニル基またはその誘導体を有する(メタ)アクリレート
環内オレフィンとして、シクロヘキセニル基をまたはその誘導体を挙げることができる。これらを有する(メタ)アクリレートは下記一般式(3)または式(4)で表すことができる。
【0026】
【化3】
【0027】
但し、式(3)のR3は、水素原子またはメチル基、R4は、分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキサイド、R5〜R12はそれぞれ独立に水素原子または分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、またはシクロアルキル基であり、nは0〜6の整数である。
【0028】
式(3)について具体的には、たとえばR3が水素原子、R4がメチレン、nが1、R5〜R12がそれぞれ水素原子である、3−シクロヘキセニルメチルアクリレート、R3がメチル基、R4がメチレン、nが1、R5〜R12がそれぞれ水素原子である、3−シクロヘキセニルメチルメタクリレート、R3が水素原子、R4がメチレン、nが0、R5〜R12がそれぞれ水素原子である、3−シクロヘキセニルアクリレート、R3がメチル基、R4がメチレン、nが0、R5〜R12がそれぞれ水素原子である、3−シクロヘキセニルメタクリレートなどが挙げられる。
【0029】
【化4】
【0030】
但し、式(4)のR13は水素原子またはメチル基、R14は、分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキサイド、R15〜R22はそれぞれ独立に水素原子または分岐を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、またはシクロアルキル基であり、nは0〜6の整数である。
【0031】
式(4)について具体的には、たとえばR13が水素原子、nが0、R15〜R22がそれぞれ水素原子である、2−シクロヘキセニルアクリレート、R13がメチル基、nが0、R15〜R22がそれぞれ水素原子である、2−シクロヘキセニルメタクリレートなどが挙げられる。
【0032】
○ジシクロペンテニル基を有する(メタ)アクリレート
環内オレフィンとして、ジシクロペンテニル基をまたはその誘導体を挙げることができる。これらを有する(メタ)アクリレートは下記一般式(5)で表すことができる。
【0033】
【化5】
【0034】
但し、式(5)のR23は、水素原子またはメチル基、R24は分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキサイド、nは0〜6の整数である。
【0035】
式(5)についてのものとしては、たとえばR23が水素原子、nが0である、ジシクロペンテニルアクリレート、R23がメチル基、nが0である、ジシクロペンテニルメタクリレート、R23が水素原子、R24がエチレンオキサイド、nが1である、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートなどが挙げられる。
【0036】
○ノルボルネニル基を有する(メタ)アクリレート
環内オレフィンとして、ノルボネニル基を挙げることができる。これらを有する(メタ)アクリレートは下記一般式(6)で表すことができる。
【0037】
【化6】
【0038】
但し、式(6)のR25は、水素原子またはメチル基、R26は分岐を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキサイド、nは0〜6の整数である。
【0039】
式(6)についてのものとしては、たとえばR25が水素原子、R26がメチレン、nが1である、ノルボルネニルメチルアクリレート、R25がメチル基、R26がメチレン、nが1である、ノルボルネニルメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0040】
○分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)
本発明において化合物(B)は、重合体(C)の用途に応じた物性を付与する目的で使用される。化合物(B)としては可溶な重合体(C)を得る目的から、分子中に一個のラジカル重合性基を有する化合物が好ましい。このようなものとしては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドおよびN−メトキシブチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;フマル酸モノブチルエステルおよびマレイン酸モノブチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルおよび無水マレイン酸などが挙げられる。
これらの中でも、共重合性や汎用性などの観点から、(メタ)アクリレートが好適に使用される。
【0041】
(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i一ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレートおよびn−ラウリル(メタ)アクリレートなどの分岐を有してもよい炭素数1〜16のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体のモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら単量体は、2種以上を併用することもできる。
【0042】
化合物(B)の使用割合は、化合物(A)と化合物(B)との合計100質量部に対し、98質量部以下であり、好ましくは80質量部以下であり、更に好ましくは70質量部以下で用いられる。
【0043】
○重合体(C)
本発明で使用する重合体(C)は、化合物(A)または化合物(A)と化合物(B)とを構成単位とするものであり、側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を有していることを特徴とする。即ち、重合体(C)は、化合物(A)をラジカル重合させた重合体であり、化合物(A)と化合物(B)とをラジカル重合させた共重合体である。
なお、重合体(C)と異なる側鎖に二重結合を有していない重合物を用いて作成した活性エネルギー線硬化型組成物は、本発明の課題を解決することはできない。即ち、側鎖に二重結合を有していない重合物を活性エネルギー線硬化型組成物に配合しても重合に関与することができないことは明白である。また、環内オレフィンを有する脂環基を側鎖に有していない重合体、即ちアルケニル基を側鎖に有するものは、当該重合体を合成するコントロールが難しいため、希望とする分子量や性質を有するものを得ることが困難である。
このことから、重合体(C)には、側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を有していることが必須である。
【0044】
重合体(C)の分子量は、質量平均分子量で500〜40,000であることが好ましく、より好ましくは600〜30,000であり、更に好ましくは700〜20,000であり、特に好ましくは1000〜15,000である。重合体(C)の質量平均分子量が500に満たないと、臭気や皮膚刺激性が問題となったり、硬化性が低下するおそれがある。他方40,000を超えると、重合体(C)の粘度が高くなり過ぎ、取り扱いにくいうえ、多価チオールなど他成分との均一混合も困難になる場合がある。
【0045】
尚、本発明において、質量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下GPCと略す)により測定した分子量をポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
【0046】
重合体(C)中における二重結合の量は、重合体(C)100g中0.01〜3モルが好ましく、0.05〜2モルが更に好ましく、0.1〜1モルが特に好ましい。
【0047】
○ラジカル重合開始剤(D)
本発明で使用する重合体(C)は、化合物(A)を、または化合物(A)と化合物(B)とをラジカル重合により製造されるものであり、当該重合にはラジカル重合開始剤(D)が使用される。なお、本発明におけるラジカル重合開始剤(D)とは、熱、光、あるいはレドックス反応などによりラジカルを発生する化合物のことを指す。このようなものとしては、有機化過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤などが挙げられる。
【0048】
ラジカル重合開始剤(D)における有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド及びジクミルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0049】
ラジカル重合開始剤(D)におけるアゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、1,1’−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2− メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2− メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2− メチルマロノジニトリル、2,2’−アゾビス−2− メチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4− シアノ吉草酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4− ジメチルバレロニトリルなどを挙げることができる。
【0050】
ラジカル重合開始剤(D)におけるレドックス開始剤としては、例えば過酸化水素−鉄(II)塩、有機化酸化物−ジメチルアニリン、セリウム(IV)塩−アルコールなどの組み合わせを挙げることができる。
この他のラジカル重合開始剤(D)としては、テトラアルキルチウラムジスルフィドのような、S−S結合が熱により分解しやすいジアルキルジスルフィドも使用することができる。
【0051】
これらのラジカル重合開始剤(D)の中では、特にアゾ化合物が、重合を安定におこなえることから好適に使用される。ラジカル重合開始剤(D)は、重合温度や重合時間に応じて適切な分解特性をもつものを選択して用いればよい。
【0052】
ラジカル重合開始剤(D)の使用量は、化合物(A)100質量部に対して、または化合物(A)と化合物(B)との合計100質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。少なすぎると得られる重合体(C)の質量平均分子量が好適な範囲よりも大きくなったり、重合率が低くなることにより収量が低下し非経済的となったり、臭気の問題が発生したりすることがある。逆に多すぎると、ラジカル重合開始剤(D)の残存物や分解物が重合体(C)の物性に悪影響を及ぼすばかりでなく重合開始剤のコストが大きくなるために非経済的となり、本発明で使用される重合体(C)の製造方法の工業的意義が薄れてしまう。
【0053】
○重合体(C)の製造方法
重合体(C)を得るためのラジカル重合としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの方法が挙げられるが、これらの中で溶液重合法が好ましく挙げられる。
具体的な操作方法としては、使用する化合物(A),または化合物(A)と化合物(B)とを有機溶剤に溶解させ、ラジカル重合開始剤(D)の存在下に加熱攪拌するバッチ方法や、あらかじめ有機溶剤を仕込んで加熱した反応容器中に、化合物(A),または化合物(A)と化合物(B)とを連続的に供給するセミバッチ方式などが挙げられる。なかでも、重合体の質量平均分子量の調節や、重合体(C)の組成分布を極力狭くする目的でセミバッチ方式が好適に用いられる。セミバッチ方式で製造する場合において、化合物(A),または化合物(A)と化合物(B)との供給時間は、短すぎると質量平均分子量が高くなりすぎたり、(共)重合体の組成分布が広くなってしまい、逆に長すぎると経済的ではない。供給時間は重合条件により適宜変化するが、通常は30分〜10時間かけて、好ましくは2〜8時間かけて反応容器に供給されることが好ましい。供給後は、30分〜10時間、好ましくは2〜8時間熟成させる。
【0054】
重合体(C)を得るときの重合温度は、使用する有機溶剤、化合物(A)および化合物(B)の沸点、製造時間、所望の分子量、ラジカル重合開始剤の分解特性、天井温度などに応じて適宜選択できる。
【0055】
重合体(C)を重合するときに用いる有機溶剤としては、化合物(A)、化合物(B)および重合体(C)に対して十分な溶解性を持っているものを使用する。このようなものとしては、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどが挙げられる。これらは1種類で用いても2種類以上を用いても良い。
【0056】
重合体(C)の質量平均分子量を所望の範囲内に調節するためには、用いる有機溶剤の連鎖移動定数は大きいものが良い。連鎖移動定数が大きい溶剤を使用すれば、別途連鎖移動剤を添加する必要がなく、製造工程が簡略化できるうえに、重合体(C)中に残存する連鎖移動剤に起因する臭気の問題を避けることができる。さらには連鎖移動剤に基づく末端構造が、重合体(C)の使用工程で悪影響を及ぼす可能性もなくなる。このような溶剤としては、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール類、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼンなどが挙げられる。なかでも、安価であり、重合後の溶剤の除去が容易であることから、アルコール類が好ましく、イソプロピルアルコールが好適に使用される。
【0057】
有機溶剤の使用量としては、重合終了時の重合体(C)濃度が10〜50質量%となることが好ましい。有機溶剤が多すぎると、重合後の溶剤除去に手間がかかるばかりでなく、得られる重合体(C)の収量が少なく経済性に問題がある。逆に少なすぎると所望の分子量が得られなくなる。
【0058】
また、必要であれば、重合体(C)の物性を低下させない範囲で別途連鎖移動剤を添加することもできる。このようなものとしては、四塩化炭素、四臭化炭素、ドデシルメルカプタン、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールなどが挙げられる。
【0059】
○多価チオール化合物(E)
多価チオール化合物(E)としては、アルキル基にメルカプト基が結合したチオール、チオグリコール酸誘導体、メルカプトプロピオン酸誘導体などが挙げられる。なかでも、チオグリコール酸誘導体や、メルカプトプロピオン酸誘導体は、任意のポリオールと、チオグリコール酸やメルカプトプロピオン酸とのエステル化により、さまざまな構造の多価チオール化合物が得られることから、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に適したものを選定できるというメリットがある。
【0060】
アルキル基にメルカプト基が結合したチオールとしては、o−,m−あるいはp−キシレンジチオールなどが挙げられる。
【0061】
チオグリコール酸誘導体としては、エチレングリコールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートなどが挙げられる。
【0062】
メルカプトプロピオン酸誘導体としては、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリヒドロキシエチルトリイソシアヌール酸トリスチオプロピオネート等が挙げられる。
【0063】
活性エネルギー線硬化型組成物に対する多価チオール化合物(E)の配合割合は、メルカプト基と活性エネルギー線硬化型組成物中の二重結合のモル換算とから換算する。即ち、メルカプト基1モルに対し、活性エネルギー線硬化型組成物中の二重結合が0.2〜2モルが好ましく、0.4〜1.5モルがより好ましい。0.2モル以下の場合、硬化物の塗膜強度が低下する場合があり、2モル以上の場合、硬化性が低下する場合がある。
【0064】
○分子中に一個以上の二重結合を有する化合物(F)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、組成物の粘度を低減したり、硬化物の性能を高めたり、または硬化速度を調整するために、分子中に一個以上の二重結合を有する化合物(F)を配合しても良い。このものは、主として塗膜性能を向上させる目的であり、分子中に二個以上の二重結合を有するものがより好ましく使用される。
【0065】
このような化合物(F)の例として、(メタ)アリル化合物、ノルボルネン化合物、ビニルエーテルなどを挙げることができる。このようなもの以外にも、必要に応じて、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系オリゴマー等も用いることもできる。
【0066】
(メタ)アリル化合物としては、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルビスフェノールA、ジメタリルビスフェノール等が挙げられる。
【0067】
ノルボルネン化合物としては、トリメチロールプロパントリノルボルネンカルボキシレート、ビスフェノールAジノルボルネンカルボキシレート等が挙げられる。
【0068】
ビニルエーテルとしては、例えばブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、テトラメチロールプロパントリビニルエーテル等を挙げることができる。
【0069】
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどのポリオールおよびそのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0070】
この他に化合物(F)として、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーおよびエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0071】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオールと有機ポリイソシアネート反応物に対して、さらにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた反応物などが挙げられる。ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエチレングリコールおよびポリエステルポリオールなどがあり、低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノールおよび3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどが挙げられ、ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオールまたは/およびポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびテレフタル酸などの二塩基酸またはその無水物などの酸成分との反応物が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0072】
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオールおよびトリメチロールプロパンなどの低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物などのポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびテレフタル酸などの二塩基酸またはその無水物などの酸成分とからの反応物などが挙げられる。
【0073】
エポキシアクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を付加反応させたもので、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、フェノールあるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加反応体などが挙げられる。
【0074】
これらの化合物の中でも、入手のしやすさ、硬化性などの観点から、化合物(F)として分子中に二個以上の(メタ)アリル基を有する化合物((メタ)アリル化合物)が好ましく、特に分子中に二個の(メタ)アリル基を有する化合物((メタ)アリル化合物)が好適に使用される。
【0075】
化合物(F)の配合割合としては、重合体(C)100質量部に対して900質量部以下が好ましく、更に好ましくは500質量部以下、特に好ましくは200質量部以下で使用される。
【0076】
○光重合開始剤(G)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線で硬化するものであるが、この活性エネルギー線としては、紫外線、X線および電子線などが挙げられる。活性エネルギー線として紫外線を用いるときは、これによる硬化を効率よくする目的で、光重合開始剤(G)を添加しすることが好ましい。光重合開始剤(G)を使用する場合は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、重合体(C)、多価チオール化合物(E)、化合物(F)の合計100質量部に対し、光重合開始剤(G)は0.05〜15質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部の範囲内であることがより好ましい。使用量が少なすぎる場合には、目的の効果が得られず、多すぎると経済性に問題があるばかりでなく、硬化にも悪影響をおよぼすおそれがある。
【0077】
光重合開始剤(G)の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインプロピルエーテルなどのベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンおよびN,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどのアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンおよび2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンおよび2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタールおよびベンジルジメチルケタールなどのケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトンおよび4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイドなどのベンゾフェノン;並びに2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0078】
光重合開始剤(G)は単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
光重合開始剤(G)には、必要に応じて光増感剤を併用することができる。光増感剤としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエチルアミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0079】
○他の成分
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、上記記載の成分の他に、熱重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、無機充填剤などを各種特性を改良する目的で配合することもできる。
適当な熱重合防止剤としてはハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩などがあげられる。
酸化防止剤としては、Irganox1010、1035、1076、1222(以上商品名、チバガイギー(株)製)などが挙げらる。
紫外線吸収剤としては、Tinuvin P、234、320、326、327、328、213(以上商品名、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上商品名、住友化学工業(株)製)などが挙げらる。
光安定剤としては、Tinvuin292、144、622LD(以上商品名、チバガイギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上商品名、三共化成工業(株)製)などが挙げらる。
老化防止剤としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW(以上商品名、住友化学工業(株)製)などが挙げられる。
無機充填剤として代表的なものには、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、炭酸バリウム、石膏、アルミナ白、シリカ、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム シリカパウダー、コロイダルシリカ、アスベスト粉末、水酸化アルミニウム、ステアリ酸亜鉛の如き体質顔料;黄鉛、ジンククロメートもしくはモリブデート・オレンジの如きクロム酸塩、紺青の如きフェロシアン化物、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化鉄、炭化クロムグリーンの如き金属酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッドもしくは硫化水銀の如き金属硫化物、セレン化物もしくは硫酸鉛の如き硫酸塩、群青の如き珪酸塩、あるいは炭酸塩、コバルト・バイオレッドもしくはマンガン紫の如き燐酸塩またはアルミニウム粉、亜鉛末、真鍮粉、マグネシウム粉、鉄粉、銅粉もしくはニッケル粉の如き金属粉、さらには、カーボンブラックなどの無機顔料;あるいは、アゾ顔料、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーンの如き銅フタロシアニン系顔料またはキナクリドン系顔料のような有機顔料などがある。
【0080】
○組成物の使用方法
本発明の重合体(C)を配合した活性エネルギー線硬化型組成物の使用方法としては、基材に硬化性組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射する方法などが挙げられる。当該基材としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどの成形樹脂加工品(プラスチック)、金属、ガラス、コンクリート、自然の木材および合成木材などの木材、石材並びに紙などが挙げられる。
【0081】
○組成物の硬化方法
活性エネルギー線硬化型組成物を塗布した基材を、活性エネルギー線照射装置にセットし、一定時間活性エネルギー線照射をおこなったり、あるいはコンベアを備えた装置にて活性エネルギー線の照射時間を設定することにより組成物を硬化させることができる。活性エネルギー線としては、紫外線、X線および電子線などが挙げられる。紫外線により硬化させる場合に使用できる光源としては、様々なものを使用することができ、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプあるいはカーボンアーク灯などが挙げられる。本発明では、安価な装置を使用できることから、組成物の硬化には紫外線を使用することが好ましい。
【0082】
○実施の形態
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)、およびラジカル重合開始剤(D)とを含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものからアルコール類を重合溶媒として得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とをエーテル、エステルまたはメチレンで連結した化合物(A)、ラジカル重合開始剤(D)を含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものから得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)、アルコール類およびラジカル重合開始剤(D)としてアゾ化合物を含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものから得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)が、シクロヘキセニル基またはジシクロペンテニル基であることを特徴とする重合体(C)。
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とをエーテルまたはエステルで連結した化合物(A)とラジカル重合開始剤(D)とを含有ものから得られる側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。
*環内オレフィンを有する脂環基(A1)をエステル結合で含有する重合体(C)と多価チオール化合物(E)と光重合開始剤(G)とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物。
*活性エネルギー線硬化型組成物中における二重結合1モルに対して多価チオール化合物(E)のメルカプト基の割合が0.4〜2モルであることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型組成物
【0083】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明においては、実施例に示すものに限定されず、目的および用途に応じて本発明の範囲内で種々条件を変更することができる。なお、「部」とは質量部を意味する。
【0084】
○実施例1〔共重合体の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器および滴下ロートを備えたフラスコに、イソプロピルアルコール(以下IPAという)1000gを仕込み、78℃に昇温した。別途、3−シクロヘキセニルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製;以下3−CHMAという)130g、n−ブチルアクリレート(以下BAという)270g、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNという)4g、IPA400gからなる混合溶液を調製し、上記滴下ロートから4時間かけてフラスコ内に連続的に滴下して重合を行った。滴下終了後さらにAIBN4gを添加して、80℃で3時間半熟成を行った。
重合終了後、減圧下で反応液から未反応単量体および溶剤などの揮発成分を除去した。
得られた液状の共重合体は、数平均分子量1,800、質量平均分子量4,300(GPCにより測定。カラムは、TSKgel MultiporeHx1−M(東ソー(株)製)、溶媒はTHF使用)であった。
また、共重合体の二重結合量を、JIS K6235に準じて測定したところ、共重合体100g中に、0.165モルの二重結合を有していることがわかった。更に共重合体の1H−NMR(図1にスペクトルを記載)から、5.7ppm付近に、二重結合に基づくピークが確認された。
【0085】
○実施例2〔共重合体の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器および滴下ロートを備えたフラスコに、IPA1000gを仕込み、78℃に昇温した。別途、3−CHMA234g、BA166g、AIBN4g、IPA400gからなる混合溶液を調製し、上記滴下ロートから4時間かけてフラスコ内に連続的に滴下して重合を行った。滴下終了後さらにAIBN4gを添加して、80℃で3時間半熟成を行った。
重合終了後、減圧下で反応液から未反応単量体および溶剤などの揮発成分を除去した。
得られた液状の共重合体は、数平均分子量2,600、質量平均分子量8,200(GPC測定は実施例1に記載の方法を用いた)であった。
また、共重合体の二重結合量を、JIS K6235に準じて測定したところ、共重合体100g中に、0.29モルの二重結合を有していることがわかった。更に、共重合体の1H−NMR(図2にスペクトルを記載)からも、5.7ppm付近に、二重結合に基づくピークが確認された。
【0086】
○実施例3〔重合体の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器および滴下ロートを備えたフラスコに、IPA114g、メチルエチルケトン(以下MEKという)22g、メルカプトエタノール1gを仕込み、78℃に昇温した。別途、ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成(株)製)100g、AIBN4g、MEK17gからなる混合溶液を調製し、上記滴下ロートから4時間かけてフラスコ内に連続的に滴下して重合を行った。同時に別の滴下ロートを用いて、メルカプトエタノール4g、IPA4gの混合物を4時間かけてフラスコ内に連続的に滴下した。滴下終了後さらにAIBN1.6gを添加して、80℃で4時間熟成を行った。
重合終了後、減圧下で反応液から未反応単量体および溶剤などの揮発成分を除去した。
得られた液状の重合体は、数平均分子量1,400、質量平均分子量2,900(GPC測定は実施例1に記載の方法を用いた)であった。
また、重合体の二重結合量を、JIS K6235に準じて測定したところ、重合体100g中に、0.465モルの二重結合を有していることがわかった。更に、重合体の1H−NMR(図3にスペクトルを記載)からも、5.4〜5.7ppm付近に、二重結合に基づくピークが確認された。
【0087】
○比較例1〔重合体の製造〕
攪拌機、温度計、冷却器を備えたフラスコに、トルエン100g、アリルメタクリレート100g、AIBN0.5gを仕込み、80℃に昇温した。重合開始から約10分ほどでゲル化してしまい、溶媒に可溶な重合体を得ることはできなかった。
【0088】
○硬化性試験〔実施例4〜16〕
表1〜3に示す各成分を常法に従い攪拌・混合し組成物を調製した。即ち、重合体(C)と光重合開始剤(G)とを、あらかじめ80℃に保った乾燥機中に15分間放置して溶解させた後に、これに多価チオール化合物(E)、および必要に応じて化合物(F)を室温で攪拌・混合し、活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。
バーコーターを用いて、鉄板上に厚さ約10μmで、得られた組成物を塗布し、照射強度13.5mW/cm2の紫外線ランプを用いて硬化させ、タックがなくなるまでの紫外線照射量(mJ/cm2)を求めた。この結果を表1〜3に記載した。
【0089】
表1〜3中の数値は質量部を示す。そして、重合体(C)、多価チオール化合物(E)および必要により化合物(F)の合計を100質量部とし、この100質量部に対し光重合開始剤(G)を表1〜3に記載の質量部を添加した。
下記に表1〜3で用いた略号を記載する。
○多価チオール化合物(E)
TMTP:トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート(淀化学(株)製)
BDTP:ブタンジオールビスチオプロピオネート(淀化学(株)製)
PETP:ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(淀化学(株)製)
○光重合開始剤(G)
BP:ベンゾフェノン
Irg500:商品名(チバスペシャルティケミカル(株)製)
○化合物(F)
DAP:ジアリルフタレート(ダイソー(株)製)
T−20:トリメチロールプロパンジアリルエーテル(ダイソー(株)製)
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
本発明の重合体(C)は、1H−NMRスペクトルおよびJIS K6235に準じて測定して分かるように分子中に二重結合を有し、この二重結合は、主に環内にあるものである。そして、実施例4〜7および実施例14〜16から分かるように、重合体(C)、多価チオール化合物(E)と光重合開始剤(G)からなる組成物は、紫外線により硬化する。このことは、重合体(C)中に重合性基があることを示している。更に、実施例8〜13は、重合体(C)、多価チオール化合物(E)、光重合開始剤(G)および化合物(F)からなる組成物であり、実施例4〜7に比べ少ない紫外線量で硬化する。このことは、主に重合体(C)および化合物(F)の影響と考えられる。
このように、本発明の組成物は、異なる活性エネルギー線量で硬化させることができることから、各種用途に用いることができる。また、重合体(C)は、化合物(A)または化合物(A)と化合物(B)とをラジカル重合開始剤(D)を用いて作製するものであることから、種々の性質をおよび必要とする性質を有するものを簡単に作製することができる。
なお、化合物(A)を用いないで重合体を得ようとした比較例1では、溶媒に可溶な重合体を得ることができず、これでは、さまざまな分野に適用できるものを得ることはできない。
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、任意の割合で側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を導入した重合体を得ることができる。このような重合体は硬化性材料として各種用途のものに使用可能なものである。しかも、任意のラジカル重合性基を有する化合物との共重合により、さまざまな用途に応じた物性を付与した(共)重合体を得ることができ、産業上きわめて有用である。そのうえ、その製造方法は従来技術と比べてきわめて簡便であり、実用性の高いものである。さらに、この(共)重合体を多価チオール化合物と組み合わせることにより得られる活性エネルギー線硬化型組成物は、従来のアクリレート系硬化材料とは異なり、酸素阻害を受けにくく、より少ない活性エネルギー線照射で硬化するために生産性が高いものである。本発明は塗料などのコーティング剤、成形材、インキおよびレジストなどの種々の用途に使用可能であり、これら技術分野で賞用され得るものである。
【0095】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作製した共重合体の1H−NMRスペクトル
【図2】実施例2で作製した共重合体の1H−NMRスペクトル
【図3】実施例3で作製した重合体の1H−NMRスペクトル
Claims (4)
- 環内オレフィンを有する脂環基(A1)とラジカル重合性基(A2)とを有する化合物(A)、およびラジカル重合開始剤(D)とを含有し、分子中に少なくとも一個のラジカル重合性基を有する化合物(B)を含有することもあるものから得られる質量平均分子量が500〜40,000であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。
- 請求項1記載の環内オレフィンを有する脂環基(A1)が環内オレフィンを有する脂単環性基またはジシクロペンテニル基であり、ラジカル重合性基(A2)が(メタ)アクリロイル基であることを特徴とする側鎖に環内オレフィンを有する脂環基を含有する重合体(C)。
- 請求項1または請求項2に記載の重合体(C)と多価チオール化合物(E)と光重合開始剤(G)とを含有する活性エネルギー線硬化型組成物。
- 分子中に一個以上の(メタ)アリル基を有する化合物(F)を、重合体(C)100質量部に対して900質量部以下含有する請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型組成物
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WO2018047589A1 (ja) * | 2016-09-06 | 2018-03-15 | 株式会社大阪ソーダ | チオール化合物で変性したポリマー、及び当該ポリマー含有光硬化性組成物とその用途 |
-
2002
- 2002-09-17 JP JP2002270441A patent/JP2004107448A/ja active Pending
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