JP2004107442A - 環状オレフィン重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
分子量分布が極端に狭い環状オレフィンの単独重合体及び共重合体の製造方法を提供すること。
ノルボルネン含率が高く、ランダム性が高いエチレン/ノルボルネンランダム共重合体を提供すること。
【解決手段】(A)下記式(1)で示されるメタロセン化合物と、
(B)アルモキサン、又はボレート若しくはボラン化合物と
を組み合わせる触媒の存在下に、環状オレフィンを重合することを特徴とする環状オレフィン重合体の製造方法。
式(1)
(R1、R2およびR3は炭素原子数1〜5のアルキル基を、R4およびR5は炭素原子数1〜3のアルキル基もしくはハロゲンを示し、それぞれ同じでも異なってもよい。MはTi、Zr又はHfを示す。)
【選択図】 図9
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は環状オレフィン重合体の製造方法、エチレン/ノルボルネンランダム共重合体等に関する。特にメタロセン触媒を用いたノルボルネン系環状オレフィンのビニル付加重合に関する。
【0002】
【従来の技術】
ノルボルネンを代表とする環状オレフィンは各種の方法により重合される(例えば、特許文献1〜8、非特許文献1〜3を参照)。
例えば、特許文献1〜4には主にノルボルネン系環状オレフィンの単独重合体の製造方法、特許文献5〜8にはα−オレフィン等との共重合体の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献1〜3の「従来の技術」「発明が解決しようとする課題」に指摘されているように、一般に環状オレフィンの重合活性は低く、重合活性が高い触媒系が強く望まれている。特に、メタロセン系触媒においては、特許文献2や特許文献4に指摘されているように、ノルボルネンのビニル付加重合は必ずしも容易ではなく、エチレンとの共重合反応が促進されたとしてもノルボルネン単独重合の重合活性は極めて低い。
例えば、非特許文献2では、ジルコニウム系のメタロセン化合物を用いてノルボルネンとエチレンとの共重合体が重合されている。しかしながら、ノルボルネンの単独重合を行うと8日間で多くとも1gの重合体しか生成できず、重合スピードは極めて遅い(テーブル2参照)。
【0004】
また、ノルボルネンにエチレンを代表とするα−オレフィンを共重合する場合においても、ノルボルネン含率が50モル%を超えるランダム共重合体を製造することは一般に困難である。エチレンの重合活性がノルボルネンよりも高く、ノルボルネンダイアドが生成し難いため、各モノマーの濃度を調製したとしてもせいぜい交互共重合体となるからである。
例えば、非特許文献3では、チタニウム複合体を触媒としてノルボルネン含率が48.6モル%と44.5モル%のエチレン共重合体が製造されている。これらの共重合体中の交互共重合部分は91%とあり、非常に高い割合になっている。
また、特許文献5の特許第2868569号公報には、α−オレフィンと環状オレフィンランダム共重合体の製造方法が開示されている。しかしながら、実施例で製造されている共重合体のエチレン含率は63モル%(実施例1)、66モル%(実施例2)、73モル%(実施例3)であり、「環状オレフィンから導かれる構成単位は通常0.1〜90モル%好ましくは0.5〜80モル%の量で存在していることが望ましい」という記載があるものの、実際には環状オレフィンの構成単位は多くても37モル%(実施例1)の共重合体が製造出来ているに過ぎない。
さらに、特許文献6の特許第2730940号公報では、その目的に「環状オレフィンの共重合効率が高く、」とあり、また、共重合体中の環状オレフィン成分は、「通常0.1〜80モル%、好ましくは0.5〜70モル%、より好ましくは1〜50モル%の範囲である」との記載があるものの、エチレン含率が88モル%(実施例1)、エチレン含率72モル%(実施例2)、プロピレン含率67モル%の環状オレフィン共重合体が製造できているに過ぎず、環状オレフィン含率が50%を超えるほどの高い共重合効率があるとは言えない。
【0005】
これに対して、特許文献7には、ジルコニウム系のメタロセン触媒を使用し、ノルボルネンの塊状重合及び非常に高濃度なノルボルネン溶液中におけるエチレンとの共重合について開示している。そして、図1にて、共重合体の13CNMRスペクトルを挙げて、溶液重合により製造された共重合体と構造が異なることを示している。
特許文献8においても、ジルコニウム系のメタロセン触媒を使用して、液体ノルボルネン若しくは非常に高濃度なノルボルネン溶液中にてエチレンとの共重合を行い、ノルボルネン含率が約50%(実施例1)、5−メチルノルボルネン含率が41モル%(実施例23)であるノルボルネン系環状オレフィンとエチレンとの共重合体を開示し、図1に共重合体の13CNMRスペクトルを挙げている。
【0006】
なお、非特許文献1は、ノルボルネンのホモ重合に関する最近の総説である。また、非特許文献4は、ノルボルネン/エチレン共重合体の13CNMRスペクトルの帰属、そのピーク強度、ノルボルネン含率に関する最新の文献である。
本発明において、共重合体のノルボルネン含率は非特許文献4の方法により求める。
【0007】
【特許文献1】
特開平2001−59004号公報
【特許文献2】
特開平2000−302820号公報
【特許文献3】
特開平8−165309号公報
【特許文献4】
特開平2001−2721号公報
【特許文献5】
特許第2868569号公報
【特許文献6】
特許第2730940号公報
【特許文献7】
特許第3247130号公報
【特許文献8】
特開平5−17526号公報
【非特許文献1】
Christoph Janiak,他1名, The Vinyl Homopolymerization of Norbornene, Macromol. Rapid Commun., 2001,22 No.7 P.479−492
【非特許文献2】
W.Kaminsky 他1名, Copolymerization of Norbornene and ethene with homogenous zirconocenes/methylaluminoxane catalysts, Polymer Bulletin, 1993,31, p.175−182
【非特許文献3】
Yasunori Yoshida, 他4名,Living ethylene/norbornene copolymerisation catalyzed by titanium complexes having two pyrrolide−iminne clelate ligands, Chem.Commun.,2002, p.1298−1289
【非特許文献4】
Incoronata Tritto, 他4名, Ethylene−Norbornene Copolymer Microstructure.Assessment and Adances Based on Assignments of 13C NMR Spectra, Macromolecules, 2000, 33, p.8931−8944
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上述の観点に鑑み、メタロセン触媒について鋭意研究した結果、特定のメタロセン触媒系がノルボルネンを代表とする環状オレフィンの重合及びα−オレフィンとの共重合において非常に高い活性を示し、さらに高い環状オレフィン含率と高いランダム性を持つ共重合体を容易に与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の目的は、非常に高い触媒活性による、環状オレフィンの重合体及びα−オレフィンとの共重合体の製造方法を提供することである。
また、別の目的は、高い環状オレフィン含率と高いランダム性を持つ共重合体を容易に製造できる方法を提供するである。
さらに、別の目的は、分子量分布が狭い環状オレフィン重合体及びα−オレフィンとの共重合体を製造出来る方法を提供することである。また、その分子量も自由に制御でき、所望の分子量を有する重合体または共重合体を提供できる製造方法も提供する。
本発明により製造される上記重合体を、耐熱性を要求する用途や光学用途等の成形材料として提供することも目的とする。
さらに、本発明は、従来のエチレン/ノルボルネン共重合体とはミクロ構造が異なるエチレン/ノルボルネンランダム共重合体を提供し、各種用途に利用される樹脂組成物や成形材料を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、(A)下記式(1)で示されるメタロセン化合物と(B)アルモキサン、又はボレート若しくはボラン化合物とを組み合わせる触媒の存在下に、環状オレフィンを重合することを特徴とする環状オレフィン重合体の製造方法を提供するものである。
(B)成分は、メタロセン化合物を活性化させる活性化剤であり、 (1) アルモキサン、又は、 (2) ボレート若しくはボラン化合物である。
(2) ボレート若しくはボラン化合物は、メタロセン化合物と反応してメタロセン化合物をカチオン種に変換可能な活性化剤であり、必要に応じて有機アルミニウムと併用して用いる。
【化2】
式(1)
(R1、R2およびR3は炭素原子数1〜5のアルキル基を、R4およびR5は炭素原子数1〜3のアルキル基もしくはハロゲンを示し、それぞれ同じでも異なってもよい。MはTi、Zr又はHfを示す。)
【0011】
また、本発明は、前記環状オレフィンにα−オレフィンを共重合させてランダム共重合体を重合することを特徴とする上記の環状オレフィン重合体の製造方法を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、エチレン/ノルボルネンランダム共重合体のノルボルネン含有率が35モル%以上であって、下記測定条件による13CNMRスペクトルにおいて化学シフトが39.87ppmに対応するピークを有することを特徴とするエチレン/ノルボルネンランダム共重合体を提供するものである。
13CNMR測定条件:
溶媒:1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2、測定温度:120℃、化学シフトは1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2の三重線の中央を約74.47として求める。
【0013】
また、本発明は、上記のエチレン/ノルボルネンランダム共重合体を含有する樹脂組成物又は成形材料を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0015】
1.メタロセン化合物
重合用触媒成分として用いるメタロセン化合物は、下記式(1)で表される。下記式(1)において、R1、R2およびR3は炭素数1〜5のアルキル基を、R4およびR5は炭素数1〜3のアルキル基もしくはハロゲンを示し、それぞれ同じでも異なってもよい。
具体的に、R1、R2およびR3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、好ましくは、R1はプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、R2およびR3はメチル基、エチル基、プロピル基であり、特に好ましくは、R1はブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、R2およびR3はメチル基である。R4およびR5はメチル基、エチル基、プロピル基もしくはフッ素、塩素、臭素などのハロゲンであり、特にメチル基が好ましい。
MはTi、Zr、Hfを示し、好ましくはTiである。
【0016】
具体的な化合物としては、(i−PrNSiMe2Flu)TiMe2、(i−BuNSiMe2Flu)TiMe2、(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2、(i−PrNSiMe2Flu)TiCl2、(i−BuNSiMe2Flu)TiCl2、(t−BuNSiMe2Flu)TiCl2、(i−PrNSiMe2Flu)ZrMe2、(i−BuNSiMe2Flu)ZrMe2、(t−BuNSiMe2Flu)ZrMe2、(i−PrNSiMe2Flu)ZrCl2、(i−BuNSiMe2Flu)ZrCl2、(t−BuNSiMe2Flu)ZrCl2、(i−PrNSiMe2Flu)HfMe2、(i−BuNSiMe2Flu)HfMe2、(t−BuNSiMe2Flu)HfMe2、(i−PrNSiMe2Flu)HfCl2、(i−BuNSiMe2Flu)HfCl2、(t−BuNSiMe2Flu)HfCl2などが挙げられ、好ましくは(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2、(t−BuNSiMe2Flu)ZrMe2、(t−BuNSiMe2Flu)HfMe2である。
本発明において、特に好ましくは下記式(2)で表されるチタニウム錯体[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2]である。該チタニウム錯体は、例えば、「Macromolecules、第31巻、3184頁、1998年」の記載に基づき、容易に合成することができる。
【0017】
【化3】
式(1)
(式中、R1、R2およびR3は炭素数1〜5のアルキル基を、R4およびR5は炭素数1〜3のアルキル基もしくはハロゲンを示し、それぞれ同じでも異なっても良い。MはTi、ZrもしくはHfを示す。)
【0018】
【化4】
式(2)
(式中、Meはメチル基を、t−Buはターシャリーブチル基を示す。)
【0019】
2.アルモキサン
(i)アルモキサン
本発明で用いるアルモキサンは、下記式(3)または(4)で表される化合物である。
【0020】
【化5】
式(3)
【化6】
式(4)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。)
【0021】
上記式(3)および(4)で表されるアルモキサンは、トリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる生成物である。該アルモキサンとしては、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、プロピルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサンなどが例示できるが、この中で、メチルアルモキサンの使用が好ましい。メチルアルモキサンは、他のトリアルキルアルミニウムと水から得られるアルモキサン、例えば、上記のエチルアルモキサン、プロピルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサンなどと複数種、併用することもできる。
【0022】
上記メチルアルモキサンは公知の方法で調製することができ、具体的には以下のような方法が例示される。
(a)トリメチルアルミニウムをトルエン、ベンゼン、エーテルなどの適当な有機溶剤を用いて直接水と反応させる方法、
(b)トリメチルアルミニウムと結晶水を有する塩水和物、例えば硫酸銅、硫酸アルミニウムの水和物と反応させる方法、
(c)トリメチルアルミニウムとシリカゲルなどに含浸させた水分と反応させる方法、
(d)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを混合し、トルエン、ベンゼン、エーテルなどの適当な有機溶剤を用いて直接水と反応させる方法、
(e)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを混合し、結晶水を有する塩水和物、例えば硫酸銅、硫酸アルミニウムの水和物と加熱反応させる方法、
(f)シリカゲルなどに水分を含浸させ、トリイソブチルアルミニウムで処理した後、トリメチルアルミニウムで追加処理する方法、
(g)メチルアルモキサンおよびイソブチルアルモキサンを公知の方法で合成し、これら二成分を所定量混合し、加熱反応させる方法、
(h)ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素溶媒に硫酸銅5水塩などの結晶水を有する塩を入れ、−40〜40℃位の温度条件下でトリメチルアルミニウムと反応させる方法。この場合、使用する水の量は、トリメチルアルミニウムに対してモル比で通常0.5〜1.5である。
このようにして得られたメチルアルモキサンは、上記に示す式(3)または(4)のRがメチル基である線状または環状の有機アルミニウムの重合体である。
【0023】
(ii)乾燥アルモキサン
上記のアルモキサン中には、式(3)または(4)に示すような線状または環状の有機アルミニウム重合体の他に、未反応のトリアルキルアルミニウムが含まれる。該トリアルキルアルミニウムは、リビング重合体の連鎖移動を引き起こし、リビング重合体の高分子量化を阻害する。
【0024】
本発明の製造方法をリビング重合で行う場合には、上記メタロセン化合物と組み合わせる重合用触媒として、上記アルモキサンを乾燥および精製した、乾燥アルモキサンの使用が好ましい。
乾燥アルモキサンとは、重ベンゼン中の1H−NMRによる測定において、アルキルアルミニウムに由来する共鳴線が観測されないものであり、そのように乾燥・精製されたものであれば、特にその製造方法は問わない。
例えば、その乾燥・精製手順として、
(a)アルモキサン溶液を脱気乾燥する。
(b)得られた個体を不活性溶媒にて洗浄する。
などの方法が挙げられる。
本発明において、好ましく使用される乾燥メチルアルモキサンの場合、
(a)メチルアルモキサンのトルエン溶液(Al濃度:9.4重量%)を真空ポンプにて、4時間減圧乾燥する
(b)得られた個体に対し、30重量倍の乾燥ヘキサンにて、4回洗浄する
ことにより得られる乾燥メチルアルモキサンは、重ベンゼン中の1H−NMRによる測定にて、トリメチルアルミニウムに由来する共鳴線が観測されないものである。
【0025】
本発明の製造方法のうちリビング重合を必要としない場合には、上記メタロセン化合物と組み合わせる活性化剤として、又はボレート若しくはボラン化合物を必要に応じて有機アルミニウムと組み合わせて用いることができる。
また、通常のメタロセン化合物の活性化剤として公知のイオン性化合物、ルイス酸、イオン交換性層状珪酸塩等を、必要に応じて有機アルミニウムと組み合わせて用いることもできる。
【0026】
なお、本発明に用いる上記メタロセン化合物とアルモキサンとを組み合わせた触媒系が0℃という低温下において立体規則性があるポリプロピレンのリビング重合活性を有することは公知である。
しかしながら、ある触媒系が0℃におけるポリプロピレン立体規則性リビング重合を行うからと言って、環状オレフィンの重合活性及び環状オレフィンとα−オレフィンとの重合活性が両方とも高いと予測することは到底出来ない。
また、一般にα−オレフィンの重合活性が高い触媒だからと言って、同じ触媒が環状オレフィンの重合活性又は環状オレフィンとα−オレフィンとの重合活性が高いと予測することは出来ない。α−オレフィンの重合、環状オレフィンの重合、環状オレフィンとα−オレフィンとの共重合のそれぞれのカテゴリーでは、触媒の重合活性についての共通性を提唱することは出来ない。
例えば、上述の特許文献2にも記載されているように、Organometallics,11, 2115(1992)には、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムクロライドとメチルアモキサンとを用いたエチレンの重合例が記載されており、25℃にて10000Kg−ポリマー/mol−Zr・hの高い活性を示している。これに対して、Macromol.Chem.190, 515(1989)には、同じ触媒によるノルボルネンの重合活性は20℃にて0.15Kg−ポリマー/mol−Zr・hであり、極めて低い重合活性である。
また、上述の非特許文献2にも記載されているように、ノルボルネンとエチレンとの共重合体を重合出来るジルコニウム系のメタロセン化合物であっても、ノルボルネンの単独重合を行うと8日間で多くとも1gの重合体しか生成できない。したがって、仮に重合活性があったとしても重合速度は極めて遅く、工業的には実用化できない。
上記触媒系を用いた本発明の製造方法は、環状オレフィンの単独重合及びα−オレフィンとの共重合のどちらにおいても、工業的に実用化できる重合速度があって、高い重合活性がある。
本発明の製造方法により得られる重合体は高分子量のものであり、また、分子量分布(Mw/Mn)も極めて小さいため(単独重合体で1.1程度、共重合体で1.3程度)、成形物として好ましく使用される。
エチレン等のα−オレフィンとの共重合体においても、環状オレフィン含率が高い共重合体(例えば、環状オレフィン含率が50モル%以上若しくは50モル%より大きく、或いは、55モル%以上あるいは60モル%以上であって、100%の単独重合体に近い含率まで)が容易に製造される。
本触媒系による上記効果は当業者にとって決して予測し得ない効果である。
さらに、本発明により製造される重合体は、o−ジクロロベンゼンなどの有機溶媒に可溶である。例えば、ジルコノセン系触媒により重合されるポリノルボルネンは溶解せず、有機溶媒に可溶な重合体を製造できるというのは本願発明の予期せぬ効果である。したがって、得られる重合体は、溶融成形のみならず、溶液キャスト法等によりフィルム化することが可能であり、各種用途に応用可能な成形材料を提供できる。
【0027】
ボレート若しくはボラン化合物は、例えば、テトラキスペンタフルオロフェニルトリチルボレート、ジメチルフェニルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリスペンタフルオロフェニルボランであり、市販の試薬を用いることが出来る。特にテトラキスペンタフルオロフェニルトリチルボレートをトリオクチルアルミニウム等の有機アルミニウムと組み合わせて用いることが好ましい。
この化合物は、メタロセン化合物と反応してメタロセン化合物をカチオン種に変換可能な活性化剤である。
【0028】
3:モノマー
環状オレフィンとは、シクロペンテン等のモノシクロアルケンやノルボルネンなどの環状ポリエンであり、上述の特許文献に例示されている。例えば、前記特許文献5の特許第2868569号公報に広く例示されている。
本発明はノルボルネン系環状オレフィンの重合体の製造に特に好ましく利用される。具体的なモノマーには、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン等が挙げられる。
共重合体に供するα−オレフィンはエチレン、プロピレン等が挙げられる。エチレンが好ましい。
重合系(溶液重合の場合は重合溶媒中)におけるモノマーの仕込み量は特に制限はなく適宜決定される。溶液重合においては、溶媒中の環状オレフィンとα−オレフィンとの飽和濃度によって共重合体中の環状オレフィン含率を適宜調製できる。通常、環状オレフィン20〜99モル%、α−オレフィン1〜80モル%の範囲で適宜決定される。例えば、重合溶媒中の環状オレフィンのノルボルネンがおよそ84モル%、α−オレフィンのエチレンがおよそ16モル%で、ノルボルネン含率がおよそ44モル%の共重合体が製造できる。また、ノルボルネンがおよそ95モル%、α−オレフィンのエチレンがおよそ5モル%で、ノルボルネン含率がおよそ57モル%の共重合体が製造できる。これらのモノマーの仕込み量は、希望する環状オレフィン含率に応じて当業者により容易に適宜決定される。
なお、本発明の製造方法において、得られる環状オレフィン重合体及びα−オレフィンとの共重合体が架橋出来るように、反応性置換基を有する環状オレフィン(例えば、5−ビニル−2−ノルボルネン等)をモノマーとして適量仕込み、官能化重合体を製造することが出来る。このような官能化重合体は塗料用樹脂として好ましく利用される。また、リビング重合においては、反応性置換基を有する化合物を連鎖移動剤に用い、重合を停止して重合体末端に官能基を有する官能化重合体を製造することが出来る。
【0029】
4.重合体の製造方法
重合反応は、例えば、バッチ方式でも、セミ−バッチ方式で行ってもよい。重合容器は窒素置換することが好ましい。
重合溶媒としては、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素中で行うことができる。
重合溶媒中における環状オレフィン及びα−オレフィンのモノマー濃度は適宜決定される。
なお、本発明は、前述した特許文献7及び8において示されているバルク重合や極めて高濃度の環状オレフィン溶液を使用しなくても、環状オレフィン含率が高い共重合体が得られるという利点がある。
重合温度は、通常10℃以上で溶媒の沸点以下の温度範囲であり、10〜80℃、好ましくは20〜40℃の範囲である。低温下で重合する必要がなく、室温で重合できる利点がある。低温下で(例えば、0℃)で重合すると重合活性は落ちる。
反応容器内の重合圧力は適宜決定される。例えば1〜60気圧でよい。
【0030】
重合系におけるメタロセン化合物の濃度は、0.01〜100ミリモル/l、好ましくは0.1〜50ミリモル/lである。
アルモキサン又は乾燥アルモキサンの使用量は、メタロセン化合物1モル当たり、50〜1000モル、好ましくは100〜500モルである。
ボレート若しくはボラン化合物の使用量は、メタロセン化合物1モル当たり、1〜50モル、好ましくは1〜5モルである。なお、有機アルミニウムを用いる場合は、ボレート若しくはボラン化合物1モル当り、1モル〜1000モル、好ましくは10〜100モル使用される。
本発明の製造方法における触媒系は、下記(A)と(B)とが重合系の中に添加されて共存している系である。
(A)式(1)で示されるメタロセン化合物
(B)アルモキサン又はボレート若しくはボラン化合物(必要に応じて有機アルミニウムと共存させる。)
【0031】
5.共重合体、樹脂組成物、成形材料
本発明の共重合体は、エチレン/ノルボルネンランダム共重合体のノルボルネン含有率が35モル%以上であって、下記測定条件による13CNMRスペクトルにおいて化学シフトが39.87ppmに対応するピークを有することを特徴とするエチレン/ノルボルネンランダム共重合体である
13CNMRスペクトル測定条件
溶媒:1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2、測定温度:120℃、化学シフトは1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2の三重線の中央を約74.47として求める。
本発明においては、13CNMR装置に、日本電子(株)製 JEOL λ−500を用いて、上記測定条件で求めた。この場合、1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2の三重線の中央の化学シフトは74.47ppmである。
また、共重合体中のノルボルネン含率は、非特許文献4の「Macromolecules、第33巻、8931頁、2000年」記載の方法により求まる数値である。
【0032】
本発明の製造方法による上記共重合体はノルボルネン含率が高く、Tgが高い。したがって、耐熱性を要求される成形材料として好ましく利用される。好ましくはノルボルネン含率が50%より大きい共重合体である。現在、市販されているエチレン−ノルボルネン共重合体はノルボルネン含率が50モル%未満のものが多い。例えば、50モル%未満のノルボルエン含率のエチレン共重合体は三井化学株式会社からAPEL(登録商標)の商品名で市販されている。
また、従来の製造方法においては、ノルボルネン共重合体は条件により交互共重合体が生成しやすい。実際には交互共重合体が100%生成されるのは困難で、エチレン連鎖を有する部分が生成するため、ノルボルネン含率がトータルで50%未満であり、またノルボルネンダイアドが全くないかほとんどないエチレン共重合体が工業的に容易に製造されている。
一方、ノルボルネン含率があまり大きすぎると成型加工性が困難になる。したがって、本発明のランダム共重合体を成形材料として利用する場合、好ましいノルボルネン含率は、35モル%以上好ましくは50モル%より大きく、80モル%以下好ましくは60モル%以下程度である。エチレン含率は20モル%以上65%以下、好ましくは40モル%以上50モル%未満程度である。また、本発明の共重合体のノルボルネンダイアド含率は好ましくは10%以上20%以下程度である。
【0033】
本発明のランダム共重合体はノルボルネン含率及びノルボルネンダイアド含率が高く、ランダム性が高い。本発明の共重合体は、13CNMRスペクトルにおいて、化学シフト39.87に特徴的な一定強度のピークが観察される。このピークは、従来の共重合体、特に本発明のように高いノルボルネン含率を有する共重合体には見られない。この特徴的ピークを図4に矢印で示す。
なお、このピークの他に特徴的なピークとして、本発明の共重合体においては、化学シフト35.12、35.27、36.33、39.87、41.45、41.93、47.49、50.38、51.28にピークが観察される。
これらのピークは、共重合体のピークの帰属に関する最新の非特許文献4では観測されず、明確に記載されていないので断定出来ないが、立体規則性の異なるノルボルネンダイアドおよびノルボルネントリアド、若しくは従来の共重合体には存在しない部分的モノマー連鎖構造に基づくと考えられる。非特許文献4において述べられているように、高いノルボルネン含率の共重合体スペクトルは非常に複雑であり、該文献記載の研究範囲を超えるものである。本発明のランダム共重合体中のノルボルネンダイアド含率、ノルボルネントリアド含率、あるいは従来の共重合体には存在しない部分的モノマー連鎖構造の含率は、13CNMRスペクトルのピーク強度から決定されるべき数値である。
特許文献7で製造されるノルボルネンエチレン共重合体の13CNMRスペクトル(図1)を本願の図6に示す。
また、特許文献8の実施例1の共重合体(ノルボルネン含率が約50モル%、Tg145℃:段落番号0065参照)の13CNMRスペクトル(図1)を本願の図7に示す。さらに、非特許文献4記載のFig5及びFig6を本願の図8に示す。
しかしながら、特許文献7、特許文献8、非特許文献4に示されている共重合体の上記スペクトルには、化学シフト39.87に対応する特徴的なピークがない。
また、本発明の共重合体に観察される化学シフト35.12、35.27、36.33、39.87、41.45、41.93、47.49、50.38、51.28に対応するピークもなく、明らかにミクロ構造が異なる共重合体であることが理解できる。図9は、これらのピークを×で示している13CNMRスペクトルである。なお、化学シフト49.51、48.90、48.22、42.75、42.23、40.36、39.29、33.90、32.87、32.48、31.72、30.70、29.93、28.63などのピークは、従来の共重合体にも観察されるエチレン/ノルボルネン共重合体のピークである。
したがって、本発明のランダム共重合体は従来の共重合体とは異なり、異なるミクロ構造を有するエチレン/ノルボルネンランダム共重合体である。
【0034】
一方、特許文献8の段落番号0055において、共重合体の多分散性Mw/Mnは2.0〜3.5とあり極端に狭く、射出成形に適したポリマーである旨が記載されている。また、段落番号0056において、図1の13CNMRスペクトルに示す共重合体の微細構造が、従来の慣用のメタロセン触媒を用いた共重合体の微細構造と異なる旨、さらにこの違いがエチレンとノルボルネンとの交互共重合によるとの記載がある。
本願発明の製造方法による共重合体は、多分散性Mw/Mnはおよそ1.3程度であり、特許文献8の上記に比べて極めて小さい。したがって、分子量の違いによる高分子の物性のばらつきが少ない均質な成形物が得られる。
また、本発明の製造方法によれば、モノマーの供給量に応じて、任意の分子量を有する共重合体を製造できる。
分子量分布が狭い共重合体をブレンドすることにより、任意の分子量分布や分子量を有する樹脂組成物を提供出来る。例えば、高分子量のピークと低分子量のピークを有する樹脂組成物を自由に調製できる。
さらに、本発明の共重合体は、ノルボルネンダイアドの含率が高く、また、ランダム性も高い。したがって、エチレンとの交互共重合部分が多い従来の共重合体とは異なる性質を有する。
本発明の共重合体は、厳密な物性が要求される光学用途において、物性的に改良された樹脂組成物又は成形材料として利用されることが期待される。
【0035】
成形材料又は樹脂組成物の用途は、耐熱性用途(医療用器具、実験用器具など)、光学用材料(光ディスク、光ディスク用ピックアップレンズ、導光板、位相差補償フィルム、液晶タッチパネルなど)、ライト関係の自動車部品、自動車用塗料樹脂、船舶用塗料樹脂、建築構造物用塗料樹脂、それらの塗膜、トナー用樹脂組成物などの各種用途に使用される。
応用可能な具体的用途は特開平9−183832号公報の段落番号0039に広く例示されている。なお、特開平9−157130号公報記載のノルボルネン樹脂は開環メタセシス重合による樹脂であるが、本発明の共重合体は水素添加を行う必要がないという製造上の利点を有する。
また、本発明の共重合体は、o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、テトラクロロエタンなどの有機溶媒に可溶である。共重合体を有機溶媒に溶解させ、流延した後、有機溶媒を蒸発させればフィルム化できる。したがって、溶融成形のみならず、溶液キャスト法等によりフィルム化することが可能であり、例えば位相差補償フィルム等の用途に好ましい成形材料として活用される。
【0036】
樹脂組成物又は成形材料に用いる本発明のエチレン/ノルボルネンランダム共重合体は、反応性置換基を有する環状オレフィン(例えば、5−ビニル−2−ノルボルネン等)をモノマー単位に含んだ官能化共重合体であってもよい。官能化重合体は架橋が必要な塗料用樹脂の塗膜として好ましく利用される。また、反応性置換基を有する化合物を共重合体末端に有するものであってもよい。
また、本発明の樹脂組成物又は成形材料は、上記エチレン/ノルボルネンランダム共重合体からなる樹脂だけでなく、他の樹脂や可塑剤等の添加剤を適宜混合したものであってもよい。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を示し本発明を具体的に説明する。本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0038】
得られた重合体は、次の方法にて物性を測定した。
「分子量および分子量分布」
ウオーターズ社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)150CVを用いた。溶媒はo−ジクロロベンゼン、測定温度は140℃、単分散ポリスチレン標準試料を用いて検量線を求め、ポリスチレン換算により求めた。
【0039】
「ミクロ構造」
単独重合体の1H−NMRは、日本電子(株)製 JEOL λ−500を用い、溶媒はC2D2Cl4、温度120℃にて測定を行った。化学シフトは、C2H2Cl4の共鳴線を5.90ppmとして求めた。
共重合体の13C−NMRは、日本電子(株)製 JEOL λ−500を用い、溶媒はC2D2Cl4、温度120℃にて測定を行った。化学シフトは、C2D2Cl4の中心の共鳴線を77.47ppmとして求めた。共重合体中の環状オレフィン含率は、「Macromolecules、第33巻、8931頁、2000年」記載の方法により求めた。
【0040】
「ガラス転移点」
SeikoI&EDTA−220、SeikoDSC−220(製)を用い、サンプル数mgをアルミ製のパンに秤量後封かんした。ノルボルネン単独重合体の場合は、窒素雰囲気下、10℃/分で室温から400℃まで昇温、50℃/分で室温まで降温した後、再度10℃/分で昇温した。共重合体の場合は、280℃まで昇温、10℃/分で室温まで降温した後、再度10℃/分で昇温した。ガラス転移温度は2度目の昇温時の転移の中点より求めた。
【0041】
触媒の調製
式(1)のメタロセン化合物として、[(t−BuNSiMe2Flu)TiMe2]を、「Macromolecules、第31巻、3184頁、1998年」の記載に基づき調製した。−20℃にてヘキサン中で再結晶して精製して以下の重合に用いた。
乾燥アルミノキサンは、「Macromolecules、第34巻、3142頁、2001年」の記載に基づき調製し、以下の重合に用いた。
【0042】
「実施例1〜5:環状オレフィンの重合」
100mlの摺り合わせガラス栓付きガラス反応容器に磁気撹拌子を入れ、十分に窒素置換を行った。この反応容器に、乾燥アルミノキサン0.464gを入れ、次に所定量のノルボルネンのトルエン溶液(濃度5.14M)を添加した。全体が29mlになるまでトルエンで希釈し、「表1」に示す所定のノルボルネン濃度に調製した。氷又はオイルバスで所定の温度に保持した。
反応容器にメタロセン化合物のトルエン溶液(濃度0.02M)を1ml添加し重合を開始し、所定時間重合を行った後、酸性メタノールを加えて重合を停止した。重合中は所定の温度を維持した。塩酸酸性メタノール中にポリマーを沈殿させ、メタノールで十分に洗浄し、減圧下に60℃で6時間乾燥した。
【0043】
「実施例6:環状オレフィンのポスト重合」
実施例4と同じ条件で30分間重合を行った後、同量のノルボルネンを加えてさらに60分重合間を行った。
【0044】
「実施例7:環状オレフィンの重合」
乾燥アルミノキサンの代わりにテトラキスペンタフルオロフェニルトリチルボレート{ Ph3CB(C6F5)4 }20μmol、トリオクチルアルミニウム400μmolを用いた以外は、実施例2と同様に行った。
【0045】
結果を「表1」に示す。
重合スキームを図1に示す。
実施例2の1H−NMRスペクトルを、図2に示す。
実施例4、6のGPCカーブを図3に示す。
【表1】
上記「表1」から、本発明の製造方法は極めて高い重合活性を示し、極めて狭い分子量分布を有する重合体を与える。図2において、二重結合に由来する水素の共鳴線5〜6ppmは全く観察されていない。したがって、重合体は図1に示す付加重合体である。実施例4、5、6の比較ならびに図3より、本実施例はモノマーを消費した後もモノマーを再添加することにより再び重合が進行しモノマーの添加量に比例して、単分散を保ったまま分子量が増大するリビング重合系であることを示している。したがって、本発明の製造方法は仕込みモノマーの量に応じて、任意の分子量の重合体を自由に提供できる。
また、実施例の重合体は、120℃のクロロベンゼンに溶解し、フィルムが成形できる。
Tgは400℃まで観察されなかった。
【0046】
「比較例1〜2」
比較例として、本発明のメタロセン化合物と類似のメタロセン化合物を用いて同様に重合を行った。
下記式(5)にて示されるチタニウム錯体((t−BuNSiMe2C5Me5)TiMe2)を用いた以外は、実施例と同様にして重合した。チタニウム錯体は、米国特許第401345号の記載に基づき調製した。
【化7】
式(5)
【0047】
「実施例8〜12:α−オレフィンとの共重合」
100mlの摺り合わせガラス栓付きガラス反応容器に磁気撹拌子を入れ、十分に窒素置換を行った。この反応容器に、乾燥アルミノキサン0.464gを入れ、次に所定量のノルボルネンのトルエン溶液(濃度5.14M)を添加した。全体が29mlになるまでトルエンで希釈し、「表2」に示す所定のノルボルネン濃度に調製した。オイルバスで重合温度に保持し、系内を数回減圧脱気した後、1気圧のエチレンを導入し飽和させた。反応容器にメタロセン化合物のトルエン溶液(濃度0.02M)を1ml添加し重合を開始し、所定時間重合を行った後、酸性メタノールを加えて重合を停止した。重合中は所定の温度を維持した。塩酸酸性メタノール中にポリマーを沈殿させ、メタノールで十分に洗浄し、減圧下に60℃で6時間乾燥した。
【0048】
「比較例3」
比較例として、本発明のメタロセン化合物と類似のメタロセン化合物を用いて同様に重合を行った。
上記式(5)にて示されるチタニウム錯体((t−BuNSiMe2C5Me5)TiMe2)を用いた以外は、実施例と同様にして重合した。チタニウム錯体は、米国特許第401345号の記載に基づき調製した。
【0049】
結果を「表2」に示す。
「表2」から、本発明の製造方法は、極めて高い重合活性を示し、また極めて狭い分子量分布を有する共重合体を与えることが分かる。
本発明の共重合体は、ノルボルネン含率が高く、ノルボルネン−ノルボルネン連鎖分率も高く、ランダム性に優れた共重合体である。
実施例8〜12の13C−NMRスペクトルを図4に示す。
化学シフト39.87ppmの特徴的ピークを矢印で示した。また、このピークのほかに、特徴的なピークとして化学シフト35.12、35.27、36.33、39.87、41.45、41.93、47.49、50.38、51.28ppmのピークが、実施例8〜12の共重合体の特徴的ピークとして観察される。これらのピークを図9(実施例12)において×で示した。
なお、実施例の共重合体は、120℃のO−ジクロロベンゼンに溶解し、フィルムが成形できる。
【0050】
【表2】
【0051】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、環状オレフィンの単独重合体及び共重合体を極めて高い触媒活性で容易に製造できる。また、モノマーの供給量に応じて、任意の分子量を有する重合体を製造できるという優れた利点がある。
得られる重合体は、分子量分布が極端に狭く(例えばMw/Mnが1.1)、単分散樹脂であり、樹脂組成物や成形材料として好ましい。すなわち、分子量の違いによる高分子物性のばらつきが少ない均質な成形物が得られる。また、分子量分布が狭い重合体をブレンドすることにより、任意の分子量分布や分子量を有する樹脂組成物(例えば、2つ以上のピークを有する、高い分子量と低い分子量の重合体組成物)が容易に得られる。
また、本発明の製造方法は、ノルボルネン含率が35%以上好ましくは50モル%より大きいエチレン/ノルボルネンランダム共重合体を容易に製造出来る。この共重合体は、交互共重合部分が少なくランダム性が大きい。さらに、分子量分布も狭く、ガラス転移点も高いので、耐熱性材料や光学材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリノルボルネンのビニル付加重合スキームである。
【図2】実施例2の1H−NMRスペクトルである。
【図3】実施例4、6のGPCカーブである。
【図4】実施例8〜12の共重合体の13C−NMRである。
【図5】実施例8〜12の共重合体のDSC曲線である。
【図6】特許文献7記載の共重合体の13C−NMRである。
【図7】特許文献8記載の共重合体の13C−NMRである。
【図8】非特許文献4記載の共重合体の13C−NMRである。
【図9】実施例12の共重合体の13C−NMR及びピークの化学シフトである。
Claims (4)
- 前記環状オレフィンにα−オレフィンを共重合させてランダム共重合体を重合することを特徴とする請求項1記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
- エチレン/ノルボルネンランダム共重合体のノルボルネン含有率が35モル%以上であって、下記測定条件による13CNMRスペクトルにおいて化学シフトが39.87ppmに対応するピークを有することを特徴とするエチレン/ノルボルネンランダム共重合体。
13CNMR測定条件:
溶媒:1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2、測定温度:120℃、化学シフトは1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2の三重線の中央を74.47として求める。 - 請求項3記載のエチレン/ノルボルネンランダム共重合体を含有する樹脂組成物又は成形材料。
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