JP2004106689A - 車両の制御装置および制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジン100と、エンジン100をアシストするモータジェネレータ500と、それらから入力された駆動力を自動変速機300に伝達するフルードカップリング200とを搭載した車両の制御装置であって、車両に要求される加速度の度合いおよびフルードカップリングにおける入力回転数と出力回転数との比率に対応させて、モータジェネレータ500による駆動力のアシストの度合いを調整して、トラクション限界を越えないようなタイミングでトルクアシストするECT_ECU400とを含む。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発進時の加速性能を向上させる車両の制御装置および制御方法に関し、特に、フルードカップリングやトルクコンバータを備えた車両の制御装置および制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フルードカップリングやトルクコンバータは、流体継手として、自動車に搭載され、エンジンから出力されたトルクを必要に応じて変速機に伝達する。フルードカップリングは、トルクを増幅させないで伝達するのに対して、トルクコンバータは、内蔵されたステータによりトルクを増幅させて伝達する。このような流体継手の入力軸側の回転数と出力軸側の回転数の速度比は、出力軸の負荷状態に応じて変化する。この変化により車両の発進時のトルク変動やエンジンのトルク変動を好適に吸収する。
【0003】
このようなフルードカップリングを用いて、車両の発進時に十分な加速性能を得る技術がある。特開平1−220766号公報(特許文献1)は、フルードカップリングを備えた車両用無段変速装置を開示する。この公報に開示された変速装置は、エンジンに連結されたフルードカップリングと、そのエンジンからフルードカップリングを介して伝達された回転を無段階に変速して駆動輪へ伝達する変速機とを含む。このフルードカップリングは、その容量係数が、速度比が0.5またはその手前の状態で最大値として、その後その速度比が1に向かうに従って零へ向かって急速に低下する変化特性を発現するように製作されている。
【0004】
この伝達装置によると、フルードカップリングの入力回転数(すなわちエンジンからの出力回転数)に対する出力回転数(すなわち無段変速機への入力回転数)で表わされる速度比が、零付近である発進当初では、エンジン回転数が低くかつフルードカップリングの伝達トルクが小さいため、エンジン出力トルクはエンジン回転数を上昇させるために消費される割合が多い。エンジン回転数が高くなるに従って、フルードカップリングの伝達トルクが増加し、フルードカップリングの出力軸回転数の変化量すなわち車両加速度が増加する。
【0005】
フルードカップリングの容量係数は、速度比が0.5またはその手前の状態で最大値として、その後その速度比が1に向かうに従って零へ向かって急速に低下するように設定されている。このため、発進当初は比較的小さな容量係数によりエンジン回転数の上昇が速やかに行なわれて、その後、速度比の変化に伴う容量係数の増加に関連して入力軸回転数の上昇が抑制されて車両加速度が一時的に増大する。
【0006】
すなわち、発進直後の低速度比側でフルードカップリングの容量係数が小さいと、エンジンで発生したトルクは、連結される変速機に伝達される割合が少なく、エンジン自身の回転数を上昇させることに多く使われる。そのため、エンジンの回転数が上昇して、エンジンの回転数が上昇した状態になる。この状態になると、エンジンで発生するトルクも大きい。その後、速度比が上昇するに従って容量係数も上昇し、エンジンにより発生した大きなトルクが変速機に伝達されて、大きな加速度を得ることができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平1−220766号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した公報に記載された装置では、フルードカップリングの容量係数の特性は、フルードカップリングの構造により一義的に決まってしまうものである。高速度比側の容量係数が低下する領域においては、再びエンジン回転数が上昇するため、加速が十分得られないまま、加速度が急激に低下し、必要な加速性能を発現する所定の時間を維持できない。
【0009】
さらに、加速性能を向上させるために加速度を上昇させるだけでは、低μ路などにおいてはタイヤに伝達されたトルクがトラクション限界を超えてしまうと、タイヤが空転し、伝達されたトルクは加速性能を向上させることにならない。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、十分な加速性能を実現させる、車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る制御装置は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源からの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両の制御装置である。この制御装置は、流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段と、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御するための制御手段とを含む。
【0012】
第1の発明によると、設定手段は、たとえば、低速度比領域における加速度のピーク値を持続させるために第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。さらに設定手段は、たとえば、高速度比領域における加速度のピーク値を上げるために第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。すなわち、流体継手の速度比に応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度のピーク値を発生させることができる。制御手段は、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する。この制御手段により、たとえば、加速後の予め定められたタイミングで駆動力のアシストを開始するように制御して、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように(すなわち駆動輪がスリップしないように)する。その結果、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる。
【0013】
第2の発明に係る制御装置は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源からの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両の制御装置である。この制御装置は、流体継手の容量係数に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段と、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御するための制御手段とを含む。
【0014】
第2の発明によると、設定手段は、たとえば、低速度比側において、良好な加速度を実現するために、容量係数が大きいほど、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。さらに設定手段は、たとえば、高速度比側において、良好な加速度を実現するために、容量係数が小さいほど、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。すなわち、流体継手の容量係数に応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度を発生させることができる。制御手段は、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する。この制御手段により、たとえば、加速後の予め定められたタイミングで駆動力のアシストを開始するように制御して、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように(すなわち駆動輪がスリップしないように)する。その結果、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる第3の発明に係る制御装置は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源から駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御装置である。この制御装置は、車両が発進する際の変速機のギヤ比に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段と、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御するための制御手段とを含む。
【0015】
第3の発明によると、設定手段は、たとえば、車両が発進する際に用いられる変速機のギヤ比が大きいほど、第1の動力源による駆動輪へ伝達されるトルクが小さいので、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。すなわち、車両が発進する際の変速機のギヤ比に応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度を発生させることができる。制御手段は、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する。この制御手段により、たとえば、加速後の予め定められたタイミングで駆動力のアシストを開始するように制御して、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように(すなわち駆動輪がスリップしないように)する。その結果、十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる。
【0016】
第4の発明に係る制御装置は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源から駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御装置である。この制御装置は、第1の動力源から発生する駆動力に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段と、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御するための制御手段とを含む。
【0017】
第4の発明によると、設定手段は、たとえば、第1の動力源から発生する駆動力が小さいほど、第1の動力源による駆動輪へ伝達されるトルクが小さいので、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。すなわち、第1の動力源がたとえば吸排気バルブを電磁駆動弁により作動されるエンジンであって回転数−トルク特性が可変である場合、エンジンが発生するトルクに応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度を発生させることができる。制御手段は、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する。この制御手段により、たとえば、加速後の予め定められたタイミングで駆動力のアシストを開始するように制御して、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように(すなわち駆動輪がスリップしないように)する。その結果、十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる。
【0018】
第5の発明に係る制御装置は、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段は、第1の動力源および第2の動力源により伝達される車両の駆動輪の駆動力を算出するための第1の算出手段と、車両の駆動輪のトラクション限界を算出するための第2の算出手段と、駆動輪の駆動力とトラクション限界とを比較するための比較手段と、比較手段の比較結果に基づいて、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するためのタイミング変更手段とを含む。
【0019】
第5の発明によると、第1の算出手段により算出された第1の動力源および第2の動力源により伝達される車両の駆動輪の駆動力と、第2の算出手段により算出されたトラクション限界とを、比較手段により比較して、タイミング変更手段は、その結果に基づいて、たとえば、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更する。これにより、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、駆動輪のスリップなどによりエネルギロスを発生させることなく十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる。
【0020】
第6の発明に係る制御装置は、第5の発明の構成に加えて、第1の算出手段は、第1の動力源と車両の駆動輪との間の駆動力伝達要素の状態に基づいて、駆動輪の駆動力を算出するための手段を含む。
【0021】
第6の発明によると、第1の算出手段は、第1の動力源と車両の駆動輪との間にある、トルク比や発進ギヤ比やデフ比や伝達系効率などに基づいて、駆動輪の駆動力を算出することができる。
【0022】
第7の発明に係る制御装置は、第5の発明の構成に加えて、パートタイム4WDの車両に適用され、第2の算出手段は、車両の走行状態が4WDであるのか2WDであるのかに基づいて、トラクション限界を算出するための手段を含む。
【0023】
第7の発明によると、トラクション限界は駆動輪の数によって変わるので、第2の算出手段は、車両の走行状態が4WDであるのか2WDであるのかに基づいて、トラクション限界を算出することができる。
【0024】
第8の発明に係る制御装置は、第5の発明の構成に加えて、第2の算出手段は、車両が走行する路面の状態に基づいて、トラクション限界を算出するための手段を含む。
【0025】
第8の発明によると、トラクション限界は路面の状態(たとえば、路面μ値)によって変わるので、第2の算出手段は、路面の状態に基づいて、トラクション限界を算出することができる。
【0026】
第9の発明に係る制御装置は、第5〜8のいずれかの発明の構成に加えて、第2の動力源により第1の動力源をアシストするタイミングが異なる複数のタイミング特性を設定するための手段をさらに含む。タイミング変更手段は、比較手段の比較結果に基づいて、複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することにより、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するための手段を含む。
【0027】
第9の発明によると、設定手段は、第2の動力源により第1の動力源をアシストするタイミングが異なる複数のタイミング特性を設定させておく。このときに、駆動輪の駆動力はトラクション限界を越えないような複数のタイミング特性を設定する。タイミング変更手段は、駆動輪の駆動力とトラクション限界との比較結果に応じて、複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することにより、第2の動力源によるアシストのタイミングを変更する。これにより、駆動輪の駆動力とトラクション限界とに基づいて、最も適合する加速度が得られるようにアシストのタイミングを変更することができる。
【0028】
第10の発明に係る制御装置は、第9の発明の構成に加えて、タイミング変更手段は、比較手段の比較結果に基づいて、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように、複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することにより、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するための手段を含む。
【0029】
第10の発明によると、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように、複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することができるので、駆動輪のスリップなどによりエネルギロスを発生させることなく十分な加速性能を実現させる車両の制御装置を提供することができる。
【0030】
第11の発明に係る制御方法は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源からの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両の制御方法である。この制御方法は、流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップと、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する制御ステップとを含む。
【0031】
第11の発明によると、設定ステップにて、たとえば、低速度比領域における加速度のピーク値を持続させるために第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。さらに設定ステップにて、たとえば、高速度比領域における加速度のピーク値を上げるために第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを高めるようにアシスト量を設定する。すなわち、流体継手の速度比に応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度のピーク値を発生させることができる。制御ステップにて、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する。この制御ステップにより、たとえば、加速後の予め定められたタイミングで駆動力のアシストを開始するように制御して、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように(すなわち駆動輪がスリップしないように)する。その結果、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる。
【0032】
第12の発明に係る制御方法は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源からの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両の制御方法である。この制御方法は、流体継手の容量係数に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップと、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する制御ステップとを含む。
【0033】
第12の発明によると、設定ステップにて、たとえば、低速度比側において、良好な加速度を実現するために、容量係数が大きいほど、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。さらに設定ステップにて、たとえば、高速度比側において、良好な加速度を実現するために、容量係数が小さいほど、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。すなわち、流体継手の容量係数に応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度を発生させることができる。制御ステップにて、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する。この制御ステップにより、たとえば、加速後の予め定められたタイミングで駆動力のアシストを開始するように制御して、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように(すなわち駆動輪がスリップしないように)する。その結果、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる
第13の発明に係る制御方法は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源から駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御方法である。この制御方法は、車両が発進する際の変速機のギヤ比に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップと、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する制御ステップとを含む。
【0034】
第13の発明によると、設定ステップにて、たとえば、車両が発進する際に用いられる変速機のギヤ比が大きいほど、第1の動力源による駆動輪へ伝達されるトルクが小さいので、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。すなわち、車両が発進する際の変速機のギヤ比に応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度を発生させることができる。制御ステップにて、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する。この制御ステップにより、たとえば、加速後の予め定められたタイミングで駆動力のアシストを開始するように制御して、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように(すなわち駆動輪がスリップしないように)する。その結果、十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる。
【0035】
第14の発明に係る制御方法は、第1の動力源と、第1の動力源をアシストする第2の動力源と、動力源から駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御方法である。この制御方法は、第1の動力源から発生する駆動力に応じて、第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップと、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する制御ステップとを含む。
【0036】
第14の発明によると、設定ステップは、たとえば、第1の動力源から発生する駆動力が小さいほど、第1の動力源による駆動輪へ伝達されるトルクが小さいので、第2の動力源により第1の動力源をアシストする度合いを大きくするようにアシスト量を設定する。すなわち、第1の動力源がたとえば吸排気バルブを電磁駆動弁により作動されるエンジンであって回転数−トルク特性が可変である場合、エンジンが発生するトルクに応じて第2の動力源により駆動力のアシストが行われることで、所望の加速度を発生させることができる。制御ステップにて、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する。この制御ステップにより、たとえば、加速後の予め定められたタイミングで駆動力のアシストを開始するように制御して、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように(すなわち駆動輪がスリップしないように)する。その結果、十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる。
【0037】
第15の発明に係る制御方法は、第11〜14のいずれかの発明の構成に加えて、制御ステップは、第1の動力源および第2の動力源により伝達される車両の駆動輪の駆動力を算出する第1の算出ステップと、車両の駆動輪のトラクション限界を算出する第2の算出ステップと、駆動輪の駆動力とトラクション限界とを比較する比較ステップと、比較ステップの比較結果に基づいて、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するタイミング変更ステップとを含む。
【0038】
第15の発明によると、第1の算出ステップにて算出された第1の動力源および第2の動力源により伝達される車両の駆動輪の駆動力と、第2の算出ステップにて算出されたトラクション限界とを、比較ステップにて比較して、タイミング変更ステップにて、その結果に基づいて、たとえば、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更する。これにより、フルードカップリングやトルクコンバータの流体継手を搭載した車両において、駆動輪のスリップなどによりエネルギロスを発生させることなく十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる。
【0039】
第16の発明に係る制御方法は、第15の発明の構成に加えて、第1の算出ステップは、第1の動力源と車両の駆動輪との間の駆動力伝達要素の状態に基づいて、駆動輪の駆動力を算出するステップを含む。
【0040】
第16の発明によると、第1の算出ステップにて、第1の動力源と車両の駆動輪との間にある、トルク比や発進ギヤ比やデフ比や伝達系効率などに基づいて、駆動輪の駆動力を算出することができる。
【0041】
第17の発明に係る制御方法は、第15の発明の構成に加えて、パートタイム4WDの車両に適用され、第2の算出ステップは、車両の走行状態が4WDであるのか2WDであるのかに基づいて、トラクション限界を算出するステップを含む。
【0042】
第17の発明によると、トラクション限界は駆動輪の数によって変わるので、第2の算出ステップにて、車両の走行状態が4WDであるのか2WDであるのかに基づいて、トラクション限界を算出することができる。
【0043】
第18の発明に係る制御方法は、第15の発明の構成に加えて、第2の算出ステップは、車両が走行する路面の状態に基づいて、トラクション限界を算出するステップを含む。
【0044】
第18の発明によると、トラクション限界は路面の状態(たとえば、路面μ値)によって変わるので、第2の算出ステップにて、路面の状態に基づいて、トラクション限界を算出することができる。
【0045】
第19の発明に係る制御方法は、第15〜18のいずれかの発明の構成に加えて、第2の動力源により第1の動力源をアシストするタイミングが異なる複数のタイミング特性を設定するステップをさらに含む。タイミング変更ステップは、比較ステップの比較結果に基づいて、複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することにより、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するステップを含む。
【0046】
第19の発明によると、設定ステップにて、第2の動力源により第1の動力源をアシストするタイミングが異なる複数のタイミング特性を設定しておく。このときに、駆動輪の駆動力はトラクション限界を越えないような複数のタイミング特性を設定する。タイミング変更ステップにて、駆動輪の駆動力とトラクション限界との比較結果に応じて、複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することにより、第2の動力源によるアシストのタイミングを変更する。これにより、駆動輪の駆動力とトラクション限界とに基づいて、最も適合する加速度が得られるようにアシストのタイミングを変更することができる。
【0047】
第20の発明に係る制御方法は、第19の発明の構成に加えて、タイミング変更ステップは、比較ステップの比較結果に基づいて、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように、複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することにより、第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するステップを含む。
【0048】
第20の発明によると、駆動輪の駆動力がトラクション限界を越えないように、複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を選択することができるので、駆動輪のスリップなどによりエネルギロスを発生させることなく十分な加速性能を実現させる車両の制御方法を提供することができる。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0050】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両のパワートレインについて説明する。以下の説明においては、流体継手をロックアップクラッチ付きフルードカップリングとして、変速機を自動変速機として説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。たとえば、流体継手はトルク増幅機能を有するトルクコンバータであってもよいし、変速機は無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよい。
【0051】
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレインについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECT_ECU((Electronic Controlled Automatic Transmission_Electronic Control Unit)400により実現される。
【0052】
図1に示すように、この車両は、エンジン100と、フルードカップリング200と、自動変速機300と、エンジン100をアシストするモータジェネレータ500と、モータジェネレータ500を制御するインバータ600とから構成される。エンジン100の出力軸は、模式的に表現されたエンジンイナーシャ110を介してフルードカップリング200の入力軸に接続される。エンジン100とフルードカップリング200とは回転軸150により連結されている。したがって、エンジン100の出力軸回転数N(E)とフルードカップリング200の入力軸回転数N(P)とは同じである。また、エンジン100の出力トルクをT(E)と、フルードカップリング200への入力トルクをT(P)として表わす。
【0053】
モータジェネレータ500は、エンジン100とフルードカップリング200とを接続する回転軸150にトルクを伝達するように構成される。このモータジェネレータ500は、車両の発進時に所望の加速度を得るためにモータとして作動してエンジン100をアシストする。また、回生制動時にはジェネレータとして作動して運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する。
【0054】
フルードカップリング200は、ロックアップクラッチ210を含み、ポンプ羽根車220とタービン羽根車230とから構成される。フルードカップリング200と自動変速機300とは、回転軸250により接続される。フルードカップリング200の出力軸回転数をN(T)と、フルードカップリング200の出力トルクをT(T)として表わす。
【0055】
これらのパワートレインを制御するECT_ECU400には、ポンプ回転数N(P)、タービン回転数N(T)、アクセル開度、車速、車両加速度、スロットル開度、AT信号およびシフトポジション信号が入力される。また、ECT_ECU400から、フルードカップリング200のロックアップクラッチ210に対してロックアップクラッチ係合圧信号が出力される。ECT_ECU400から、自動変速機300に対してAT制御信号が出力される。ECT_ECU400から、インバータ600に対してアシスト量指示信号が出力される。
【0056】
図1において、エンジン100またはエンジン100およびモータジェネレータ500の動力は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリング200を備えた自動変速機300を介して連結される駆動輪に伝達される。フルードカップリング200は、エンジン100のクランク軸(フルードカップリング200の入力軸)150に固定されたポンプ羽根車220と、自動変速機300の入力軸(フルードカップリング200の出力軸)250に連結されたタービン羽根車230と、それらポンプ羽根車220および入力軸250を直結するロックアップクラッチ210を備えている。
【0057】
車両の発進時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップを解放して、ロックアップクラッチ210がスリップ制御されることにより、エンジン100から自動変速機300へ伝達されるトルクを滑らかに増大させる。車両の停止時においては、ロックアップクラッチ210のクラッチを切って、自動変速機300の回転および停止のいずれにもかかわらずエンジン100の回転を許容する。通常走行時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップ機能によりポンプ羽根車220およびタービン羽根車230を連結して回転損失を防止する。
【0058】
図2に自動変速機300のスケルトン図を、図3に自動変速機300の作動表を示す。図2に示すスケルトン図および図3に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC(0)〜C(2))や、ブレーキ要素(B(0)〜B(4))、ワンウェイクラッチ要素(F(0)〜F(2))が、どのギヤ段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C(0)、C(1))、ブレーキ要素(B(4))、ワンウェイクラッチ要素(F(0)、F(2))が係合する。
【0059】
なお、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400は、発進時における車両に所望の加速時間を与えるために、ロックアップクラッチ210のスリップ制御によりロックアップクラッチの容量係数Cを変化させるとともに、このような容量係数の制御では満足されない加速要求を満足させるためにモータジェネレータ500によりエンジン100をアシストする。このため、発進時においてロックアップクラッチ210は解放状態であることが前提である。このことは、車両の発進時においてロックアップクラッチ210をロックアップしているとエンストするので、ロックアップクラッチ210は解放状態であることと整合する。
【0060】
図4を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400の内部メモリに記憶される、高速度比領域における、速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数Cの容量係数特性曲線について説明する。本実施の形態に係る制御装置を実現するECT_ECU400においては、ロックアップクラッチ210付きのフルードカップリング220の容量係数Cを可変とするために、ロックアップクラッチ210のロックアップクラッチ係合圧を制御してロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。これにより、ロックアップクラッチ210の係合圧を可変とし、フルードカップリング200の容量係数Cを可変とする。
【0061】
図4に示すように、速度比eに対して、容量係数Cは、その高速度比領域において、通常の容量係数特性曲線(1)とは異なる、容量係数特性曲線(2)および容量係数特性曲線(3)の2つの特性をさらに記憶している。なお、本実施の形態においては、通常の特性曲線とは異なる特性曲線を2種類さらに持つものとして説明するが、これに限定されるものではない。また、このような特性曲線は、以下に示す他の特性曲線を含めて、マップで持つものであってもよいし、数式で持つものであってもよい。
【0062】
図4に示すように、通常の容量係数特性曲線(1)に対して容量係数特性曲線(2)および容量係数特性曲線(3)ともに、速度比eが0.5を超えても、容量係数Cが初期値をできるだけ長く持続する。
【0063】
ここで、容量係数Cは、フルードカップリング210の伝達トルクをT(P)、ポンプ羽根車220の回転数をN(P)とすると、C=T(P)/N(P)2で表わされる。また、速度比eは、フルードカップリング210の出力軸回転数をN(T)、フルードカップリング210の入力軸回転数N(P)とすると、e=N(T)/N(P)で表わされる。
【0064】
エンジン100の出力トルクT(E)とフルードカップリング210の入力トルクT(P)との関係について説明する。エンジン100のイナーシャをI、角速度をω、角加速度をdω/dtとすると、{T(E)−T(B)}=(I・dω/dt)の関係が成立する。角速度ωは{(2π/60)・N(E)}であって、角速度ωとエンジン回転数N(E)(=N(P))とは1対1の関係にあるから、T(P)と{C・ω2}とは比例関係にあることが導かれる。このことから、容量係数Cの大きさは、フルードカップリング210の入力トルクT(P)の大きさと対応すること、換言すれば、容量係数Cが大きいと同じ入力トルクT(P)に対して入力回転数N(P)は小さくなることがわかる。
【0065】
上述のように、{T(E)−T(P)}であらわされるトルクは、エンジンイナーシャ110に対して働き、エンジン100の回転数を上昇させるために使われたトルクである。すなわち、連結される駆動輪に伝達されなかったトルクである。図3に示す「1st」のギヤ比が5.0から6.0のような大きなギヤ比において、図4に示すように速度比eが大きな領域において容量係数Cが大きな値である時間を延ばすことにより、エンジン100で発生したトルクを、エンジンイナーシャ110に対して働かせてエンジン回転数N(E)を上昇させるために使われるのではなく、連結される駆動輪に伝達するために使われることになる。その結果、車両の発進直後において、比較的大きな加速度が車両に発生する時間を延ばすことができる。
【0066】
すなわち、図4に示すように、速度比eが大きな領域においては、速度比eが大きいほど、通常は、容量係数Cを小さくする。容量係数Cが小さくなると、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達されるよりも、エンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させることになる。高速度比側においては、容量係数を図4に示すように減少させずに大きい値を維持すると、エンジン100で発生したトルクは、エンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させることに使用されないので、連結される駆動輪に伝達されるようになる。そうすると、比較的大きな加速度が発生している時間を長引かせることができる。
【0067】
図5に示すように、容量係数Cが通常の容量係数特性曲線(1)である場合には、エンジンの回転数が上昇する(エンジン100で発生したトルクがエンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数が上昇する)ので、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達されず、加速度Gのピークが持続しない。一方、図4に示されるように容量係数特性曲線(2)または容量係数特性曲線(3)のように速度比eが大きな領域において、容量係数Cが小さくするタイミングを遅らせているため、エンジン100の回転数が上昇するタイミングが遅れる。これに伴い、図5に示すように、エンジン100で発生したトルクは、エンジンイナーシャ110に働いてエンジン100の回転数を上昇させるのではなく、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達されて、加速度Gのピークを持続させることになる。
【0068】
図6を参照して、加速要求度合いとロックアップクラッチスリップ量の関係について説明する。本実施の形態に係るECT_ECU400は、ロックアップクラッチ210の係合圧を制御して、ロックアップクラッチをスリップ制御させることにより、フルードカップリング200の容量係数Cを可変とするものである。図6に示すように、加速要求度合いが大きいほど、ロックアップクラッチ210のスリップ量を小さくして(スリップさせないで)、連結される駆動輪にエンジン100で発生したトルクをできるだけ伝達するようにスリップ制御される。逆に、加速要求度合いが小さい場合には、ロックアップクラッチ210のスリップ量を大きくして(スリップさせて)、エンジン100で発生したトルクをエンジンイナーシャ110に対して働かせて、エンジン100自体の回転数N(E)が上昇するようにスリップ制御される。
【0069】
図7を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400の内部メモリに記憶される、低速度比領域における、速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数Cの容量係数特性曲線について説明する。
【0070】
図7に示すように、速度比eに対して、容量係数Cは、その低速度比領域において、通常の容量係数特性曲線(1)とは異なる、容量係数特性曲線(2)および容量係数特性曲線(3)の2つの特性曲線をさらに記憶している。なお、本実施の形態においては、通常の特性曲線とは異なる特性曲線を2種類さらに持つものとして説明するが、これに限定されるものではない。
【0071】
図7に示すように、通常の容量係数特性曲線(1)に対して容量係数特性曲線(2)および容量係数特性曲線(3)ともに、速度比eが0.5付近を超えるまで、容量係数Cの上昇をできるだけ抑えている。低速度比領域においては、容量係数Cが小さいほどエンジン100の回転数が早く上昇して、エンジン100自身のトルクが大きくなる。低速度比領域において、容量係数Cを増加させないように抑えると、エンジン100の回転数が早く上昇して、速度比eが大きくなり、容量係数Cが徐々に上がり始める。その状態でトルクが伝達される。そのとき、回転数が十分に上昇しているので(トルクも大きくパワーも大きいので)、加速度のピーク値を大きくできる。
【0072】
図3に示す「1st」のギヤ比が2.0から3.0のような比較的小さなギヤ比において、図7に示すように速度比eが小さい領域において容量係数Cが小さい値であることにより、エンジン100で発生したトルクを、エンジンイナーシャ110に対して働かせてエンジン回転数N(E)を上昇させるために使うことができる。その結果、車両の発進直後において、車両に発生する加速度のピーク値を大きくさせることができる。
【0073】
すなわち、図7に示すように、速度比eが小さい領域においては、速度比eが大きくなると、通常は、容量係数Cを増加させる。容量係数Cが増加すると、エンジン100で発生したトルクはエンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させるよりも、連結される駆動輪に伝達されることになる。低速度比側においては、容量係数を図7に示すように増加させずに小さい値を維持すると、エンジン100で発生したトルクは、連結される駆動輪に伝達されることに使用されないで、エンジンイナーシャ110に対して働いてエンジン100の回転数N(E)を上昇させることに使用される。エンジン100の回転数が十分に上昇した状態でトルクが伝達されるので、加速度のピーク値を大きくさせることができる。
【0074】
図8に示すように、容量係数Cが通常の容量係数特性曲線(1)である場合には、エンジンの回転数が上昇しない(エンジン100で発生したトルクが連結される駆動輪に伝達されるのでエンジン100の回転数が上昇しない)ので、エンジン100で発生したトルクは連結される駆動輪に伝達される。加速度Gのピーク値が小さい。一方、図7に示されるように容量係数特性曲線(2)または容量係数特性曲線(3)のように速度比eが小さい領域において、容量係数Cを上昇させるタイミングを遅らせているため、エンジン100の回転数が上昇するタイミングが早まる。これに伴い、図8に示すように、エンジン100で発生したトルクは、エンジンイナーシャ110に働いてエンジン100の回転数を上昇させてからトルクを伝達するため、エンジン100で発生した大きなパワーおよびトルクを連結される駆動輪に伝達されて、加速度Gのピーク値を上昇させることになる。
【0075】
図9を参照して、低速度比領域における、加速要求度合いとロックアップクラッチスリップ量の関係について説明する。本実施の形態に係るECT_ECU400は、ロックアップクラッチ210の係合圧を制御して、ロックアップクラッチをスリップ制御させることにより、フルードカップリング200の容量係数Cを可変とするものである。図9に示すように、加速要求度合いが大きいほど、ロックアップクラッチ210のスリップ量を大きくして(スリップさせて)、エンジン100で発生したトルクをエンジン100回転数N(E)が上昇するようにスリップ制御される。逆に、加速要求度合いが小さい場合には、ロックアップクラッチ210のスリップ量を小さくして(スリップさせないで)、エンジン100で発生したトルクを連結される駆動輪へ伝達するようにスリップ制御される。
【0076】
図10を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0077】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECT_ECU400は、制御フラグおよび初期フラグを初期化(制御フラグ=0、初期フラグ=0)する。S110にて、ECT_ECU400は、制御の種類を判別する。このとき、ECT_ECU400は、高速度比制御および低速度比制御のいずれかを選択する。この選択は、予めECT_ECU400に内蔵されたメモリに記憶された内容に基づいて行なわれる。制御の種類が高速度比制御である場合には(S110にて高速度比制御)、処理はS120へ移される。もしそうでないと(S110にて低速度比制御)、処理はS130へ移される。
【0078】
S120にて、ECT_ECU400は、制御フラグをセット(制御フラグ=1)する。S130にて、ECT_ECU400は、車速を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力される車速検知信号に基づいて行なわれる。
【0079】
S140にて、ECT_ECU400は、検知した車速が発進しきい値以下であるか否かを判断する。発進しきい値は、ECT_ECU400に内蔵されるメモリに予め記憶されている。車速が発進しきい値以下である場合には(S140にてYES)、処理はS150へ移される。もしそうでないと(S140にてNO)、処理はS230へ移される。
【0080】
S150にて、ECT_ECU400は、アクセル開度を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力されるアクセル開度信号に基づいて行なわれる。S160にて、ECT_ECU400は、検知したアクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であるか否かを判断する。この開度しきい値は、ECT_ECU400に内蔵されたメモリに予め記憶されている。アクセル開度が、開度しきい値より大きい場合には(S160にてYES)、処理はS170へ移される。もしそうでないと(S160にてNO)、処理はS230へ移される。
【0081】
S170にて、ECT_ECU400は、アクセル開度変化率を算出する。この算出は、検知したアクセル開度と、ECT_ECU400に含まれるクロックが発生するクロック信号に基づいて、アクセル開度の時間変化率を算出することにより行なわれる。
【0082】
S180にて、ECT_ECU400は、算出したアクセル開度変化率が、第1の開度変化率しきい値よりも小さいか否かを判断する。アクセル開度変化率が予め定められた第1の開度変化率しきい値以下である場合には(S180にてYES)処理はS230へ移される。もしそうでないと(S180にてNO)、処理はS190へ移される。
【0083】
S190にて、ECT_ECU400は、アクセル開度変化率が、第2の開度変化率しきい値以下であるか否かを判断する。アクセル開度変化率が、予め定められた第2の開度変化率しきい値以下である場合には(S190にてYES)、処理はS200へ移される。もしそうでないと(S190にてNO)、処理はS210へ移される。
【0084】
S200にて、ECT_ECU400は、初期フラグを2にセットする。その後処理は図11のS240へ移される。
【0085】
S210にて、ECT_ECU400は、アクセル開度変化率が第3の開度変化率しきい値以下であるか否かを判断する。アクセル開度変化率が、予め定められた第3の開度変化率しきい値以下である場合には(S210にてYES)、処理はS220へ移される。
【0086】
S220にて、ECT_ECU400は、処理フラグに1をセットする。その後処理は図11のS240へ移される。
【0087】
S180、S190およびS210における第1の開度変化率しきい値、第2の開度変化率しきい値および第3の開度変化率しきい値は、ECT_ECU400に内蔵されたメモリに予め記憶されている。なお、第1の開度変化率しきい値は、第2の開度変化率しきい値よりも小さく、第2の開度変化率しきい値は、第3の開度変化率しきい値よりも小さい。
【0088】
S230にて、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500によるトルクアシスト処理なしと設定する。その後この処理は終了する。
【0089】
図11を参照して、S240にてECT_ECU400は、制御フラグが0であるか否かを判断する。制御フラグが0であると(S240にてYES)、処理はS250へ移される。もしそうでないと(S240にてNO)、処理はS300へ移される。
【0090】
S250にて、ECT_ECU400は、処理フラグが0であるか否かを判断する。処理フラグが0であると(S250にてYES)、処理はS260へ移される。もしそうでないと(S250にてNO)、処理はS270へ移される。
【0091】
S260にて、ECT_ECU400は、低速度比制御のアシスト特性Aを選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。
【0092】
S270にて、ECT_ECU400は、処理フラグが1であるか否かを判断する。処理フラグが1であると(S270にてYES)、処理はS280へ移される。
【0093】
S280にて、ECT_ECU400は、低速度比制御のアシスト特性Bを選択してモータジェネレータ500を制御する。
【0094】
S290にて、ECT_ECU400は、低速度比制御のアシスト特性Cを選択してモータジェネレータ500を制御する。
【0095】
なお、S260、S280およびS290の処理後、このモータアシスト処理は終了する。
【0096】
S300にて、ECT_ECU400は、処理フラグが0であるか否かを判断する。処理フラグが0であると(S300にてYES)、処理はS310へ移される。もしそうでないと(S300にてNO)、処理はS320へ移される。
【0097】
S310にて、ECT_ECU400は、高速度比制御のアシスト特性Aを選択してモータジェネレータ500を制御する。
【0098】
S320にて、ECT_ECU400は、処理フラグが1であるか否かを判断する。処理フラグが1であると(S320にてYES)、処理はS330へ移される。
【0099】
S330にて、ECT_ECU400は、高速度比制御のアシスト特性Bを選択して、モータジェネレータ500を制御する。
【0100】
S340にて、ECT_ECU400は、高速度比制御のアシスト特性Cを選択して、モータジェネレータ500を制御する。
【0101】
なお、S310、S330およびS340の処理後、このモータアシスト処理は終了する。
【0102】
図12を参照して、このようなフローチャートに基づき行なわれる処理を分類して説明する。制御フラグは、速度比が低速度比である場合には0が、高速度比である場合には1がセットされる。処理フラグは、加速要求が大きいと0がセットされ、加速要求が中位であると1がセットされ、加速要求が小さいと2がセットされる。
【0103】
図12に示すように、低速度比領域において加速要求が大きいと(制御フラグ=0、処理フラグ=0)、低速度比のトルクアシスト特性曲線(A)が選択されてモータジェネレータ500が制御される。低速度比領域において加速要求が中位(制御フラグ=0、処理フラグ=1)であると、低速度比制御のトルクアシスト特性曲線(B)が選択され、モータジェネレータ500が制御される。低速度比領域において加速要求が小さいと(制御フラグ=0、処理フラグ=2)、低速度比制御のトルクアシスト特性曲線(C)が選択されモータジェネレータ500が制御される。
【0104】
また、高速度比領域において加速要求が大きいと(制御フラグ=1、処理フラグ=0)、高速度比制御のトルクアシスト特性曲線(A)が選択されモータジェネレータ500が制御される。高速度比領域において加速要求が中位であると(制御フラグ=1、処理フラグ=1)、高速度比制御のトルクアシスト特性曲線(B)が選択されモータジェネレータ500が制御される。高速度比領域において、加速要求が小さいと(制御フラグ=1、処理フラグ=2)、高速度比制御のトルクアシスト特性曲線(C)が選択されモータジェネレータ500が制御される。
【0105】
図13(ア)を参照して、低速度比領域における低速度比制御のトルクアシスト特性曲線(A)、(B)および(C)について説明する。図13(ア)に示すように、これらのトルクアシスト特性曲線は、速度比eが小さい領域(低速度比領域)における、トルクアシスト量を規定する。トルクアシスト特性曲線(A)は全体的に大きく高速度比側になるに従って0に近づき、トルクアシスト特性曲線(C)は初期値においてはトルクアシスト特性曲線(A)の約半分であるが徐々に上昇し速度比e=1になると0に収束する。トルクアシスト特性曲線(B)は、トルクアシスト特性曲線(A)とトルクアシスト特性曲線(C)の中間に位置する。このような図13(ア)に示すように3つのトルクアシスト特性曲線(A)〜(C)がECT_ECU400の内部メモリに記憶されている。
【0106】
図13(イ)〜(エ)に、図13(ア)によりトルクアシストがされたときの時間tに対する加速度Gの変化を示す。
【0107】
図13(イ)に示す加速度特性曲線(1)は、図8に示す加速度特性曲線(1)である。図8に対応する図7に示すように、このような加速度特性曲線(1)を発現する速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数Cは容量係数特性曲線(1)で表わされる。
【0108】
図13(ウ)に示す加速度特性曲線(2)は、図8に示す加速度特性曲線(2)である。図8に対応する図7に示すように、このような加速度特性曲線(2)を発現する速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数Cは容量係数特性曲線(2)で表わされる。
【0109】
図13(エ)に示す加速度特性曲線(3)は、図8に示す加速度特性曲線(3)である。図8に対応する図7に示すように、このような加速度特性曲線(3)を発現する速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数Cは容量係数特性曲線(3)で表わされる。
【0110】
すなわち、図7に示す速度比eに対する容量係数Cの特性曲線に基づき、図8に示す加速度特性曲線が発現する。図8に示す加速度特性曲線のそれぞれに対応して、速度比eにより定まるトルクアシストをモータジェネレータ500を用いて実行する。その結果、図13(イ)に示すように、加速度特性曲線(1)で示される場合、図7に示すように速度比eが低速度比領域においても容量係数が小さくならず加速度Gのピーク値が小さい。それに対して、図13(ア)に示すようにトルクアシスト量をトルクアシスト特性曲線(A)で示すように大きく与えてやると、図13(イ)に示すように、加速度特性曲線は加速度のピークが早く大きく変更される。
【0111】
図13(エ)に示すように、加速度特性曲線(3)は図8に示す加速度特性曲線(3)であり、図7に示すように速度比eに対して低速度比領域での容量係数Cの増加を抑えるようにしてある。そのため、加速度特性曲線は、図8に示すように、より大きなピーク値を発現できる。図13(エ)に示すような加速度特性曲線(3)の場合には、図13(ア)に示すトルクアシスト特性曲線(C)に基づいてモータジェネレータ500によるトルクアシストを実行し、加速度特性曲線のピーク値を少しだけ大きくしてある。
【0112】
図13(ウ)の場合には、図13(イ)と図13(エ)の中間の状態を示す。図14(ア)を参照して、高速度比領域におけるトルクアシスト特性曲線(A)、(B)および(C)について説明する。
【0113】
図14(ア)に示すように、トルクアシスト曲線は、速度比eの関数であって、高速度比領域において、ステップ関数的に立上がり、特性曲線Aが最も大きなトルクアシスト量であり、続いてトルクアシスト特性曲線(B)、トルクアシスト特性曲線(C)の順で小さくなる。また、トルクアシストが開始される速度比eの値は、トルクアシスト特性曲線(A)、トルクアシスト特性曲線(B)、トルクアシスト特性曲線(C)の順に遅くなる。いずれのトルクアシスト特性曲線においても、速度比eが1.0の状態で0となる。
【0114】
図14(イ)、(ウ)および(エ)に示す、時間に対する加速度特性曲線は、図5に示した加速度特性曲線に対応する。
【0115】
図14(イ)に示す加速度特性曲線(1)は、図5に示す加速度特性曲線(1)と同じであり、図5に対応する図4の速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数Cの特性曲線(1)に対応する。
【0116】
図14(ウ)に示す加速度特性曲線(2)は、図5に示す加速度特性曲線(2)と同じであり、図5に対応する図4に示す速度比eに対するフルードカップリング200の容量係数の特性曲線(2)に対応する。
【0117】
図14(エ)に示す加速度特性曲線(3)は、図5に示す加速度特性曲線(3)と同じであり、図5に対応する図4の速度比eに対するフルードカップリング200の容量特性係数Cの特性曲線(3)に対応する。
【0118】
図14(イ)に示す加速度特性曲線(1)に対しては図14(ア)に示すトルクアシスト特性曲線(A)が適用され、図14(イ)に示すように、加速度特性曲線における加速度のピーク値が長くかつ大きくなる。図14(エ)に示すように、加速度特性曲線(3)に対応して図14(ア)に示すトルクアシスト特性曲線(C)が適用される。その結果、図14(エ)に示すように、加速度特性曲線における加速度のピーク値が大きくなる。図14(ウ)に示す場合には、図14(イ)と図14(エ)の中間の状態を示す。
【0119】
なお、図13および図14を用いた、加速度特性曲線に対するトルクアシスト特性曲線の組合せは、これらに限定されるものではなく、任意に組合されてよい。
【0120】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るパワートレインの動作について説明する。
【0121】
制御が開始されるとフラグが初期化(制御フラグ=0、処理フラグ=0)される(S100)。制御の種類が判定され、高速度比制御の場合には制御フラグに1がセットされる(S120)。低速度比制御の場合には制御フラグが0のままである。
【0122】
車速が検知され(S130)、車速が発進しきい値以下であると、車両の発進時であると判断され(S140にてYES)、アクセル開度が検知される(S150)。アクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であると(S160にてYES)、アクセル開度変化率が算出される(S170)。アクセル開度変化率が第1の開度変化率しきい値よりも大きく第2の開度変化率しきい値未満の場合に(S180にてNO、S190にてYES)、処理フラグに2がセットされる(S200)。アクセル開度変化率が第2の開度変化率しきい値よりも大きく第3の開度変化率しきい値未満の場合には(S190にてNO、S210にてYES)、処理フラグに1がセットされる(S220)。アクセル開度変化率が第3の開度変化率しきい値よりも大きい場合には(S210にてNO)、処理フラグは0のままである。すなわち、第1の開度変化率しきい値、第2の開度変化率しきい値、第3の開度変化率しきい値の順で開度変化率しきい値を大きく設定しておくことにより、処理フラグが0である場合に加速度要求が最も強く、処理フラグが2である場合に加速度要求が最も小さくなるように処理フラグがセットされる。
【0123】
制御フラグが0である場合には(S240にてYES)、低速度比制御と判断される。この場合において、処理フラグが0であると(S250にてYES)、低速度比制御のトルクアシスト特性曲線(A)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S260)。
【0124】
処理フラグが1であると(S270にてYES)、低速度比制御のトルクアシスト特性曲線(B)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S280)。処理フラグが0であると(S270にてNO)、低速度比制御のトルクアシスト特性曲線(C)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S290)。
【0125】
制御フラグが1である場合には(S240にてNO)、高速度比制御であると判断される。この場合において処理フラグが0であると(S300にてYES)、高速度比制御のトルクアシスト特性曲線(A)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S310)。
【0126】
処理フラグが1であると(S320にてYES)、高速度比制御のトルクアシスト特性曲線(B)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S330)。
【0127】
処理フラグが0であると(S320にてNO)、高速度比制御のトルクアシスト特性曲線(C)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S340)。
【0128】
このような動作により、図12に示すように制御フラグと処理フラグとの組合せで、低速度比制御であるのか高速度比制御であるのかのいずれかが判断されるとともに、加速要求の大きさに従って、モータジェネレータ500によるアシストの特性が選択される。
【0129】
低速度比制御の場合には、図13(ア)のトルクアシスト特性曲線(A)〜(C)のいずれかが選択され、それぞれの速度比に対応する加速度特性曲線のピーク値を早くしたり大きくしたりする。また、図14に示すように、高速度比領域においては、図14(ア)に示すトルクアシスト特性曲線(A)〜(C)のいずれかが選択され、加速度特性曲線のピーク値が長く持続したり大きくしたりなる。
【0130】
以上のようにして、本実施の形態に係るパワートレインによると、速度比に対応してフルードカップリングの容量係数を変化させる。このとき、低速度比領域と高速度比領域とに分けて容量係数の特性が記憶される。それらの容量係数の特性に従って、車両に発生する加速度が決定される。一方、速度比に対してエンジンをアシストするモータのトルクアシスト特性を規定しておく。このとき、低速度比領域と高速度比領域とに分けて規定する。ECT_ECUは、速度比に対応して規定された容量係数により発現する加速度を運転者が要求する加速度の度合いに対応してモータによるアシストを実行させる。このとき、低速度比領域と高速度比領域とを分けるとともに、車両の運転者が要求した加速要求度合いによりトルクアシスト特性を分けている。その結果、ロックアップクラッチ付きのフルードカップリングを搭載した車両において、運転者が要求する十分な加速性能を実現させる車両のパワートレインを提供することができる。
【0131】
なお、上述した実施の形態においては、その説明の都合上、1台の車両について、低速度比領域におけるモータアシスト制御と、高速度比領域におけるモータアシスト制御とを、切換えて実行するとしたが、本発明はこれに限定されない。低速度領域のみにおけるモータアシスト制御、高速度領域のみにおけるモータアシスト制御のいずれかを実行するものでも構わない。
【0132】
<第1の実施の形態 第1の変形例>
以下、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る制御装置であるECT_ECUについて説明する。本変形例に係るECT_ECUは、前述の第1の実施の形態において示したパワートレインと同じパワートレインを制御する。本変形例に係るECT_ECUの内部のメモリに記憶されるトルクアシスト特性曲線が、前述の第1の実施の形態に係るトルクアシスト特性曲線と異なる。それ以外のハードウェア構成、ソフトウェア構成は、前述の第1の実施の形態と同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0133】
図15を参照して、本変形例に係るECT_ECUにより制御されるトルクアシストされる前の加速度特性曲線を示す。この加速度特性曲線は、前述の図5の加速度特性曲線(1)と同じである。
【0134】
図16を参照して、本変形例に係るECT_ECUの内部のメモリに記憶されるトルクアシスト特性曲線について説明する。図16(ア)に示すように、トルクアシスト特性曲線は(A)〜(C)の3種類がある。トルクアシスト特性曲線(A)は、前述の図13(ア)のトルクアシスト特性曲線(A)に等しい。それに対して、図16(ア)に示すトルクアシスト特性曲線(B)は、速度比e=0の状態でステップ状に立上がり、速度比e=0.2付近で立下がる矩形により表わされるステップ関数である。図16(ア)に示すようにトルクアシスト特性曲線(C)は、速度比eが0から徐々に立上がり、速度比eが0.4付近でピークになり、その後速度比e=1.0に向けて上に凸な曲線により表わされる。
【0135】
図16(イ)に、図15に示す加速度特性曲線に、図16(ア)に示すトルクアシスト特性曲線(A)を、図16(ウ)に加速度特性曲線に図16(ア)に示すトルクアシスト特性曲線(B)を、図16(エ)に図15に示す加速度特性曲線に図16(ア)のトルクアシスト特性曲線(C)を、それぞれ適用した例を示す。
【0136】
図16(イ)に示すように、加速度特性曲線は、トルクアシストされる前に比べて、その加速度のピーク値が早く大きくなっている。図16(ウ)に示すように、トルクアシストされた加速度特性曲線は、トルクアシストされる場合に比べて早く加速度のパーク値を迎えている。図16(エ)に示すように、トルクアシストされた加速度特性曲線は、そのピーク値が大きく変更されている。
【0137】
以上のようにして、本変形例に係るパワートレインにおいては、前述の第1の実施の形態の効果に加えて、加速度特性曲線を車両の運転者が要求する所望の形状に変更させることができる。
【0138】
<第1の実施の形態 第2の変形例>
以下、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る制御装置を搭載した車両のパワートレインについて説明する。本変形例に係るパワートレインは、前述の第1の実施の形態に係るパワートレインのロックアップクラッチ付きフルードカップリングに代えて、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータを備えるものである。それ以外のハードウェア構成およびソフトウェア構成は前述の第1の実施の形態と同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0139】
図17に、トルクアシストされる前の時間tに対する車両の加速度特性曲線を示す。図17に示すように、本変形例においてはトルクコンバータを使用しているため既に加速度のピーク値が現れている。これは、トルクコンバータのステータ部により発現されるものである。
【0140】
図18(ア)を参照して、本変形例に係る制御装置であるECT_ECUの内部メモリに記憶されるトルクアシスト特性曲線について説明する。図18(ア)に示すように、トルクアシスト特性曲線(A)は速度比eが0.4付近からステップ状に立上がり、その後直線的に小さくなり、速度比eが1.0のときにステップ状に立下がる特性を有する。トルクアシスト特性曲線(B)は、トルクアシスト特性曲線(A)の相似形であって、その大きさを縮小したものである。トルクアシスト特性曲線(C)は、速度比e=0で立上がり、速度比eが0.2付近で立下がる矩形状のステップ形状を有する。
【0141】
図18(イ)に、図17に示す加速度特性曲線に図18(ア)に示すトルクアシスト特性曲線(A)を適用した場合の加速度特性曲線を、図18(ウ)に、図17に示す加速度特性曲線に図18(ア)に示すトルクアシスト特性曲線(A)を適用した場合を、図18(エ)に図17に示す加速度特性曲線に図18(ア)に示すトルクアシスト特性曲線(C)を適用した場合をそれぞれ示す。
【0142】
図18(イ)に示すように、トルクアシストされた後の加速度特性曲線は、加速度のピーク値からなだらかに小さくなるように変更される。図18(ウ)に示すように、加速度特性曲線は、図18(イ)の場合に比べて、そのトルクアシスト量が小さいため加速度のピーク値からの立下がりが早くなっている。図18(エ)に示すように、トルクアシストされた後の加速度特性曲線は、加速度のピーク値が早く発現するように変更されている。
【0143】
以上のようにして、本変形例に係るパワートレインによると、フルードカップリングに代えてトルクコンバータを用いても、エンジンに対してモータによりトルクのアシストを行なうことにより、車両の運転者が要求する所望の加速度を実現させることができる。
【0144】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態の制御装置であるECT_ECUについて説明する。本実施の形態に係るECT_ECUは、前述の第1の実施の形態において示したパワートレインと同じパワートレインを制御する。本実施の形態に係るECT_ECUは、流体継手の速度比に基づいてモータによるアシストトルク量を規定するのではなく、流体継手の容量係数に基づいてモータによるアシストトルク量を規定するものである。それ以外のハードウェア構成、ソフトウェア構成は、前述の第1の実施の形態と同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0145】
図19を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0146】
S2100にて、ECT_ECU400は、制御フラグおよび初期フラグを初期化(制御フラグ=0、初期フラグ=0)する。S2110にて、ECT_ECU400は、制御の種類を判別する。このとき、ECT_ECU400は、高速度比側容量係数制御および低速度比側容量係数制御のいずれかを選択する。この選択は、予めECT_ECU400に内蔵されたメモリに記憶された内容に基づいて行なわれる。制御の種類が高速度比側容量係数制御である場合には(S2110にて高速度比側容量係数制御)、処理はS2120へ移される。もしそうでないと(S2110にて低速度比側容量係数制御)、処理はS2130へ移される。
【0147】
S2120にて、ECT_ECU400は、制御フラグをセット(制御フラグ=1)する。S2130にて、ECT_ECU400は、車速を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力される車速検知信号に基づいて行なわれる。
【0148】
S2140にて、ECT_ECU400は、検知した車速が発進しきい値以下であるか否かを判断する。発進しきい値は、ECT_ECU400に内蔵されるメモリに予め記憶されている。車速が発進しきい値以下である場合には(S2140にてYES)、処理はS2150へ移される。もしそうでないと(S2140にてNO)、処理はS2230へ移される。
【0149】
S2150にて、ECT_ECU400は、アクセル開度を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力されるアクセル開度信号に基づいて行なわれる。S2160にて、ECT_ECU400は、検知したアクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であるか否かを判断する。この開度しきい値は、ECT_ECU400に内蔵されたメモリに予め記憶されている。アクセル開度が、開度しきい値より大きい場合には(S2160にてYES)、処理はS2170へ移される。もしそうでないと(S2160にてNO)、処理はS2230へ移される。
【0150】
S2170にて、ECT_ECU400は、アクセル開度変化率を算出する。この算出は、検知したアクセル開度と、ECT_ECU400に含まれるクロックが発生するクロック信号に基づいて、アクセル開度の時間変化率を算出することにより行なわれる。
【0151】
S2180にて、ECT_ECU400は、算出したアクセル開度変化率が、第1の開度変化率しきい値よりも小さいか否かを判断する。アクセル開度変化率が予め定められた第1の開度変化率しきい値以下である場合には(S2180にてYES)、処理はS2230へ移される。もしそうでないと(S2180にてNO)、処理はS2190へ移される。
【0152】
S2190にて、ECT_ECU400は、アクセル開度変化率が、第2の開度変化率しきい値以下であるか否かを判断する。アクセル開度変化率が、予め定められた第2の開度変化率しきい値以下である場合には(S2190にてYES)、処理はS2200へ移される。もしそうでないと(S2190にてNO)、処理はS2210へ移される。
【0153】
S2200にて、ECT_ECU400は、初期フラグを2にセットする。その後処理は図20のS2240へ移される。
【0154】
S2210にて、ECT_ECU400は、アクセル開度変化率が第3の開度変化率しきい値以下であるか否かを判断する。アクセル開度変化率が、予め定められた第3の開度変化率しきい値以下である場合には(S2210にてYES)、処理はS2220へ移される。
【0155】
S2220にて、ECT_ECU400は、処理フラグに1をセットする。その後処理は図20のS2240へ移される。
【0156】
S2180、S2190およびS2210における第1の開度変化率しきい値、第2の開度変化率しきい値および第3の開度変化率しきい値は、ECT_ECU400に内蔵されたメモリに予め記憶されている。なお、第1の開度変化率しきい値は、第2の開度変化率しきい値よりも小さく、第2の開度変化率しきい値は、第3の開度変化率しきい値よりも小さい。
【0157】
S2230にて、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500によるトルクアシスト処理なしと設定する。その後この処理は終了する。
【0158】
図20を参照して、S2240にてECT_ECU400は、制御フラグが0であるか否かを判断する。制御フラグが0であると(S2240にてYES)、処理はS2250へ移される。もしそうでないと(S2240にてNO)、処理はS2300へ移される。
【0159】
S2250にて、ECT_ECU400は、処理フラグが0であるか否かを判断する。処理フラグが0であると(S2250にてYES)、処理はS2260へ移される。もしそうでないと(S2250にてNO)、処理はS2270へ移される。
【0160】
S2260にて、ECT_ECU400は、低速度比側容量係数制御のアシスト特性Aを選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。
【0161】
S2270にて、ECT_ECU400は、処理フラグが1であるか否かを判断する。処理フラグが1であると(S2270にてYES)、処理はS2280へ移される。
【0162】
S2280にて、ECT_ECU400は、低速度比側容量係数制御のアシスト特性Bを選択してモータジェネレータ500を制御する。
【0163】
S2290にて、ECT_ECU400は、低速度比側容量係数制御のアシスト特性Cを選択してモータジェネレータ500を制御する。
【0164】
なお、S2260、S2280およびS2290の処理後、このモータアシスト処理は終了する。
【0165】
S2300にて、ECT_ECU400は、処理フラグが0であるか否かを判断する。処理フラグが0であると(S2300にてYES)、処理はS2310へ移される。もしそうでないと(S2300にてNO)、処理はS2320へ移される。
【0166】
S2310にて、ECT_ECU400は、高速度比側容量係数制御のアシスト特性Aを選択してモータジェネレータ500を制御する。
【0167】
S2320にて、ECT_ECU400は、処理フラグが1であるか否かを判断する。処理フラグが1であると(S2320にてYES)、処理はS2330へ移される。
【0168】
S2330にて、ECT_ECU400は、高速度比側容量係数制御のアシスト特性Bを選択して、モータジェネレータ500を制御する。
【0169】
S2340にて、ECT_ECU400は、高速度比側容量係数制御のアシスト特性Cを選択して、モータジェネレータ500を制御する。
【0170】
なお、S2310、S2330およびS2340の処理後、このモータアシスト処理は終了する。
【0171】
図21を参照して、このようなフローチャートに基づき行なわれる処理を分類して説明する。制御フラグは、速度領域が低速度比側である場合には0が、高速度比側である場合には1がセットされる。処理フラグは、加速要求が大きいと0がセットされ、加速要求が中位であると1がセットされ、加速要求が小さいと2がセットされる。
【0172】
図21に示すように、低速度比側の領域において加速要求が大きいと(制御フラグ=0、処理フラグ=0)、低速度比側のトルクアシスト特性曲線(A)が選択されてモータジェネレータ500が制御される。低速度比側の領域において加速要求が中位(制御フラグ=0、処理フラグ=1)であると、低速度比側のトルクアシスト特性曲線(B)が選択され、モータジェネレータ500が制御される。低速度比側の領域において加速要求が小さいと(制御フラグ=0、処理フラグ=2)、低速度比側のトルクアシスト特性曲線(C)が選択されモータジェネレータ500が制御される。
【0173】
また、高速度比側の領域において加速要求が大きいと(制御フラグ=1、処理フラグ=0)、高速度比側のトルクアシスト特性曲線(A)が選択されモータジェネレータ500が制御される。高速度比側の領域において加速要求が中位であると(制御フラグ=1、処理フラグ=1)、高速度比側のトルクアシスト特性曲線(B)が選択されモータジェネレータ500が制御される。高速度比側の領域において、加速要求が小さいと(制御フラグ=1、処理フラグ=2)、高速度比側のトルクアシスト特性曲線(C)が選択されモータジェネレータ500が制御される。
【0174】
図22を参照して、低速度比側の領域における容量係数制御のトルクアシスト特性曲線(A)、(B)および(C)について説明する。
【0175】
図22に示すように、これらのトルクアシスト特性曲線は、速度比が小さい領域(低速度比側の領域)における、容量係数に対するトルクアシスト量を規定する。トルクアシスト特性曲線(A)は全体的に大きく、容量係数が大きくなるに従ってトルクアシスト量が大きく、トルクアシスト特性曲線(B)はトルクアシスト特性曲線(A)よりも小さく、容量係数が大きくなるに従ってトルクアシスト量が大きく、トルクアシスト特性曲線(C)はトルクアシスト特性曲線(B)よりも小さく、容量係数が大きくなるに従ってトルクアシスト量が大きく、かつ下に凸の円弧を描く。このような図22に示すように3つのトルクアシスト特性曲線(A)〜(C)がECT_ECU400の内部メモリに記憶されている。
【0176】
なお、図22に示すトルクアシスト特性曲線は一例であって、これに限定されない。
【0177】
図23を参照して、高速度比側の領域における容量係数制御のトルクアシスト特性曲線(A)、(B)および(C)について説明する。
【0178】
図23に示すように、これらのトルクアシスト特性曲線は、速度比が大きい領域(高速度比側の領域)における、容量係数に対するトルクアシスト量を規定する。
トルクアシスト特性曲線(A)は全体的に大きく、容量係数が小さくなるに従ってトルクアシスト量が大きく、トルクアシスト特性曲線(B)はトルクアシスト特性曲線(A)よりも小さく、容量係数が小さくなるに従ってトルクアシスト量が大きく、トルクアシスト特性曲線(C)はトルクアシスト特性曲線(B)よりも小さく、容量係数が小さくなるに従ってトルクアシスト量が大きく、かつ下に凸の円弧を描く。このような図23に示すように3つのトルクアシスト特性曲線(A)〜(C)がECT_ECU400の内部メモリに記憶されている。
【0179】
なお、図23に示すトルクアシスト特性曲線は一例であって、これに限定されない。
【0180】
なお、図22および図23を用いた、加速度特性曲線に対するトルクアシスト特性曲線の組合せは、これらに限定されるものではなく、任意に組合されてよい。
【0181】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るパワートレインの動作について説明する。
【0182】
制御が開始されるとフラグが初期化(制御フラグ=0、処理フラグ=0)される(S2100)。制御の種類が判定され、高速度比側容量係数制御の場合には制御フラグに1がセットされる(S2120)。低速度比側容量係数制御の場合には制御フラグが0のままである。
【0183】
車速が検知され(S2130)、車速が発進しきい値以下であると、車両の発進時であると判断され(S2140にてYES)、アクセル開度が検知される(S2150)。アクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であると(S2160にてYES)、アクセル開度変化率が算出される(S2170)。アクセル開度変化率が第1の開度変化率しきい値よりも大きく第2の開度変化率しきい値未満の場合に(S2180にてNO、S2190にてYES)、処理フラグに2がセットされる(S2200)。アクセル開度変化率が第2の開度変化率しきい値よりも大きく第3の開度変化率しきい値未満の場合には(S2190にてNO、S2210にてYES)、処理フラグに1がセットされる(S2220)。アクセル開度変化率が第3の開度変化率しきい値よりも大きい場合には(S2210にてNO)、処理フラグは0のままである。すなわち、第1の開度変化率しきい値、第2の開度変化率しきい値、第3の開度変化率しきい値の順で開度変化率しきい値を大きく設定しておくことにより、処理フラグが0である場合に加速度要求が最も強く、処理フラグが2である場合に加速度要求が最も小さくなるように処理フラグがセットされる。
【0184】
制御フラグが0である場合には(S2240にてYES)、低速度比側の容量係数制御と判断される。この場合において、処理フラグが0であると(S2250にてYES)、低速度比側の容量係数制御のトルクアシスト特性曲線(A)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S2260)。
【0185】
処理フラグが1であると(S2270にてYES)、低速度比側の容量係数制御のトルクアシスト特性曲線(B)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S2280)。処理フラグが0であると(S2270にてNO)、低速度比側の容量係数制御のトルクアシスト特性曲線(C)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S2290)。
【0186】
制御フラグが1である場合には(S2240にてNO)、高速度比側の容量係数制御であると判断される。この場合において処理フラグが0であると(S2300にてYES)、高速度比側の容量係数制御のトルクアシスト特性曲線(A)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S2310)。
【0187】
処理フラグが1であると(S2320にてYES)、高速度比側の容量係数制御のトルクアシスト特性曲線(B)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S2330)。
【0188】
処理フラグが0であると(S2320にてNO)、高速度比側の容量係数制御のトルクアシスト特性曲線(C)が選択されてモータジェネレータ500が制御される(S2340)。
【0189】
このような動作により、図21に示すように制御フラグと処理フラグとの組合せで、低速度比側の容量係数制御であるのか高速度比側の容量係数制御であるのかのいずれかが判断されるとともに、加速要求の大きさに従って、モータジェネレータ500によるアシストの特性が選択される。
【0190】
図22に示すように、低速度比側の容量係数制御の場合には、図22のトルクアシスト特性曲線(A)〜(C)のいずれかが選択され、それぞれの速度比に対応する加速度特性曲線のピーク値を早くしたり大きくしたりする。また、図23に示すように、高速度側の容量係数制御の場合には、図23に示すトルクアシスト特性曲線(A)〜(C)のいずれかが選択され、加速度特性曲線のピーク値が長く持続したり大きくしたりなる。
【0191】
以上のようにして、本実施の形態に係るパワートレインによると、速度比に対応してフルードカップリングの容量係数を変化させる。このとき、低速度比領域と高速度比領域とに分けて容量係数の特性が記憶される。それらの容量係数の特性に従って、車両に発生する加速度が決定される。一方、容量係数に対してエンジンをアシストするモータのトルクアシスト特性を規定しておく。このとき、低速度比側の領域と高速度比側の領域とに分けて規定する。ECT_ECUは、速度比に対応して規定された容量係数により発現する加速度を運転者が要求する加速度の度合いに対応してモータによるアシストを実行させる。このとき、低速度比側の領域と高速度比側の領域とを分けるとともに、車両の運転者が要求した加速要求度合いによりトルクアシスト特性を分けている。その結果、ロックアップクラッチ付きのフルードカップリングを搭載した車両において、運転者が要求する十分な加速性能を実現させる車両のパワートレインを提供することができる。
【0192】
なお、上述した実施の形態においては、その説明の都合上、1台の車両について、低速度比側の領域におけるモータアシスト制御と、高速度比側の領域におけるモータアシスト制御とを、切換えて実行するとしたが、本発明はこれに限定されない。低速度比側の領域のみにおけるモータアシスト制御、高速度比側の領域のみにおけるモータアシスト制御のいずれかを実行するものでも構わない。
【0193】
また、上述した実施の形態においては、本発明に係る制御装置をロックアップクラッチ付きフルードカップリングに適用した例について説明したが、本発明の制御装置はこれに限定されない。たとえば、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングに代えて、本発明に係る制御装置をロックアップクラッチ付きトルクコンバータに適用してもよい。フルードカップリングに代えてトルクコンバータを用いても、エンジンに対してモータによりトルクのアシストを行なうことにより、車両の運転者が要求する所望の加速度を実現させることができる。
【0194】
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態の制御装置であるECT_ECUについて説明する。本実施の形態に係るECT_ECUは、前述の第1の実施の形態において示したパワートレインと同じパワートレインを制御する。本実施の形態に係るECT_ECUは、流体継手の速度比に基づいてモータによるアシストトルク量を規定するのではなく、車両が発進する際の自動変速機のギヤ比(発進ギヤ比)に基づいてモータによるアシストトルク量を規定するものである。それ以外のハードウェア構成、ソフトウェア構成は、前述の第1の実施の形態と同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0195】
図24を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400の内部メモリに記憶される、速度比とトルクアシスト量との関係について説明する。図24に示すように、トルクアシスト量は速度比の関数であるとともに、発進時のギヤ比によりトルクアシスト量が異なる。最もギヤ比が大きい場合のトルクアシスト量は、特性曲線(1)で示され、最もギヤ比が小さい場合のトルクアシスト量は、特性曲線(6)で示される。他の特性曲線については、特性曲線(2)、特性曲線(3)、特性曲線(4)、特性曲線(5)の順にギヤ比が大きくなる。この車両は、発進時に「1st」〜「5th」のいずれかのギヤを用いる。この発進時のギヤ比に応じてトルクアシスト量が異なる。
【0196】
図25および図26を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400の内部メモリに記憶される、1stギヤ比とトルクアシスト量との関係について説明する。図25および図26に示すように、発進時のギヤ比によりトルクアシスト量が異なる。1stギヤ比を横軸に設定すると、トルクアシスト量は右下がり特性になる。また、図25に示すように、低速側容量係数あるいは駆動力源トルク(エンジントルク)に対して、これらが大きいほど、トルクアシスト量は小さくなる傾向を有する。さらに図26に示すように、高速側容量係数の変化に対するトルクアシスト量は、エンジンおよびモータのイナーシャの影響を受ける。このため、イナーシャが比較的小さい場合、高速度側の容量係数が大きくなるとトルクアシスト量が小さくなる。一方、イナーシャが比較的大きい場合、トルクアシスト量が大きくなる。
【0197】
図27を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU400で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0198】
S3010にて、ECT_ECU400は、車速を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力される車速検知信号に基づいて行なわれる。
【0199】
S3012にて、ECT_ECU400は、検知した車速が発進しきい値以下であるか否かを判断する。発進しきい値は、ECT_ECU400に内蔵されるメモリに予め記憶されている。車速が発進しきい値以下である場合には(S3012にてYES)、処理はS3014へ移される。もしそうでないと(S3012にてNO)、処理はS3038へ移される。
【0200】
S3014にて、ECT_ECU400は、アクセル開度を検知する。この検知は、ECT_ECU400に入力されるアクセル開度信号に基づいて行なわれる。S3016にて、ECT_ECU400は、検知したアクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であるか否かを判断する。この開度しきい値は、ECT_ECU400に内蔵されたメモリに予め記憶されている。アクセル開度が、開度しきい値より大きい場合には(S3016にてYES)、処理はS3018へ移される。もしそうでないと(S3016にてNO)、処理はS3038へ移される。
【0201】
S3018にて、ECT_ECU400は、アクセル開度変化率を算出する。この算出は、検知したアクセル開度と、ECT_ECU400に含まれるクロックが発生するクロック信号に基づいて、アクセル開度の時間変化率を算出することにより行なわれる。
【0202】
S3020にて、ECT_ECU400は、算出したアクセル開度変化率が、予め定められた開度変化率しきい値よりも小さいか否かを判断する。アクセル開度変化率が予め定められた開度変化率しきい値以下である場合には(S3020にてYES)処理はS3038へ移される。もしそうでないと(S3020にてNO)、処理はS3022へ移される。
【0203】
S3022にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比を識別する。この発進ギヤ比は、ECT_ECU400自体が決定する。S3024にて、ECT_ECU400は、識別した発進ギヤ比に応じて処理を移す。たとえば、発進ギヤ比が「1st」であると、処理はS3026へ移される。
【0204】
S3026にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(1)(図24の特性曲線(1))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0205】
S3028にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(2)(図24の特性曲線(2))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0206】
S3030にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(3)(図24の特性曲線(3))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0207】
S3032にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(4)(図24の特性曲線(4))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0208】
S3034にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(5)(図24の特性曲線(5))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0209】
S3036にて、ECT_ECU400は、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(6)(図24の特性曲線(6))を選択してモータジェネレータ500を制御する。このとき、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600に対してアシスト量のトルクを発生するように指示信号を出力する。その後、この処理は終了する。
【0210】
S3038にて、ECT_ECU400は、モータジェネレータ500によるトルクアシスト処理なしと設定する。その後この処理は終了する。
【0211】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るパワートレインの動作について説明する。
【0212】
制御が開始されると車速が検知され(S3010)、車速が発進しきい値以下であると、車両の発進時であると判断され(S3012にてYES)、アクセル開度が検知される(S3014)。アクセル開度が予め定められた開度しきい値以上であると(S3016にてYES)、アクセル開度変化率が算出される(S3018)。アクセル開度変化率が予め定められた開度変化率しきい値よりも大きいと(S3020にてYES)、発進ギヤ比が検知される(S3022)。
【0213】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(1)であると(S3024で「1」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(1)(図24の特性曲線(1))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S3026)。
【0214】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(2)であると(S3024で「2」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(2)(図24の特性曲線(2))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S3028)。
【0215】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(3)であると(S3024で「3」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(3)(図24の特性曲線(3))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S3030)。
【0216】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(4)であると(S3024で「4」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(4)(図24の特性曲線(4))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S3032)。
【0217】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(5)であると(S3024で「5」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(5)(図24の特性曲線(5))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S3034)。
【0218】
発進ギヤ比から求められる発進ギヤ比識別番号が(6)であると(S3024で「6」)、ECT_ECU400により、発進ギヤ比制御のトルクアシスト特性(6)(図24の特性曲線(6))が選択されて、モータジェネレータ500が制御される(S3036)。
【0219】
このように、発進ギヤ比の違いによってトルクアシスト量を変更する。図7の通常の容量係数特性曲線(1)に対して、発進ギヤ比に基づいて、図24の特性曲線(1)〜(6)を適切に選択することにより、発進ギヤの違いを補填して、同じような加速性能を実現することができる。
【0220】
以上のようにして、本実施の形態に係るパワートレインによると、速度比に対応してフルードカップリングの容量係数を変化させる。このとき、低速度比領域と高速度比領域とに分けて容量係数の特性が記憶される。それらの容量係数の特性に従って、車両に発生する加速度が決定される。一方、発進時のギヤ比に対してエンジンをアシストするモータのトルクアシスト特性を規定しておく。このとき、発進時のギヤ比毎に分けて規定する。ECT_ECUは、速度比に対応して規定された容量係数により発現する加速度を発進ギヤ比に対応してモータによるアシストを実行させる。このとき、ギヤ比の大小を分けてトルクアシスト特性を分けている。その結果、ロックアップクラッチ付きのフルードカップリングを搭載した車両において、発進時のギヤ比にかかわらず、十分な加速性能を実現させる車両のパワートレインを提供することができる。
【0221】
また、上述した実施の形態においては、本発明に係る制御装置をロックアップクラッチ付きフルードカップリングに適用した例について説明したが、本発明の制御装置はこれに限定されない。たとえば、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングに代えて、本発明に係る制御装置をロックアップクラッチ付きトルクコンバータに適用してもよい。フルードカップリングに代えてトルクコンバータを用いても、エンジンに対してモータによりトルクのアシストを行なうことにより、発進ギヤ比の違いを補填して、所望の加速度を実現させることができる。
【0222】
<第4の実施の形態>
以下、本発明の第4の実施の形態の制御装置であるECT_ECUについて説明する。本実施の形態に係るECT_ECUは、前述の第1の実施の形態において示したパワートレインと同じパワートレインを制御する。本実施の形態に係るECT_ECUは、流体継手の速度比に基づいてモータによるアシストトルク量を規定するのではなく、モータによるトルクアシストを受けるエンジンの発生トルクに基づいてモータによるアシストトルク量を規定するものである。それ以外のハードウェア構成、ソフトウェア構成は、前述の第1の実施の形態と同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0223】
本実施の形態に係るECT_ECU100が搭載される車両のエンジン100は、エンジン100の吸排気バルブをカムにより駆動させるのではなく、たとえば、電磁駆動弁などにより駆動させる。これにより、従来の、回転数に対するトルク特性曲線を変更することができる。
【0224】
ただし、トルク特性曲線を変更させる方法については、この電磁駆動弁によるものに限定されない。たとえば、第1の動力源がエンジンではなくモータである場合、そのモータを駆動する電池のSOC(States Of Charge)や電池温度の状態などによりトルク特性が変化する。
【0225】
図28に示すように、このエンジン100のトルク特性は、トルク特性曲線(1)〜(4)で示されるように、電磁駆動弁を制御することにより、本質的にエンジン回転数に対して特性曲線(1)で表わされるようなトルク特性を、特性曲線(2)〜(4)で表わされるようなトルク特性に変更できる。
【0226】
エンジン100がこのようなトルク特性を有する場合、このエンジン100をアシストするモータジェネレータ500のアシストトルク量を、特性曲線(1)で示される場合には、特性曲線(4)で示される場合よりも大きく設定する。特性曲線(1)、特性曲線(2)、特性曲線(3)、特性曲線(4)の順でアシストトルク量を小さくする。エンジン100のトルク特性に対応させて、モータジェネレータ500によるアシストトルク量を設定する。エンジン100のトルクが大きいほど、モータジェネレータ500によるアシストトルク量を小さく、エンジン100のトルクが小さいほど、モータジェネレータ500によるアシストトルク量を大きくする。
【0227】
以上のようにして、本実施の形態に係るパワートレインによると、第1の動力源であるエンジンや電気モータにおけるトルク特性に対応させて、第2の動力源であるモータジェネレータによるアシストトルク量を設定することができる。その結果、第1の動力源から発生するトルクに対応付けて、第2の動力源によりアシストするトルク量を設定でき、良好な加速性能を実現できる。
【0228】
<第5の実施の形態>
以下、本発明の第5の実施の形態の制御装置であるECT_ECUについて説明する。本実施の形態に係るECT_ECUは、前述の第1〜第4の実施の形態において示したパワートレインと同じパワートレインを制御する。本実施の形態に係るECT_ECUは、エンジン100をモータジェネレータ500がトルクアシストするタイミングを制御する。
【0229】
本実施の形態に係るトルクアシストのタイミング制御は、流体継手の速度比に基づいてモータによるアシストトルク量が規定された第1の実施の形態、流体継手の容量係数に基づいてモータによるアシストトルク量が規定された第2の実施の形態、車両の発進時のギヤ比に基づいてモータによるアシストトルク量が規定された第3の実施の形態、モータによるトルクアシストを受けるエンジンの発生トルクに基づいてモータによるアシストトルク量が規定された第4の実施の形態にそれぞれ記載されたパワートレインに、限定されることなく適用されるものである。
【0230】
それ以外のハードウェア構成、ソフトウェア構成は、前述の第1の実施の形態と同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0231】
本実施の形態に係るECT_ECU400は、図11のS260、S280,S290、S310、S330およびS340、図20のS2260、S2280,S2290、S2310、S2330およびS2340、図27のS3026〜S3036において、予め選択されたトルク特性に基づいて、モータジェネレータ500のアシストタイミングを制御する。以下においては、アシストトルク量が速度比に基づいて設定される第1の実施の形態に係るパワートレインを例として説明する。ただし、本実施の形態に係るECT_ECU400で実行されるトルクアシストタイミング制御は、上述した通り、これに限定されない。
【0232】
図29を参照して、図13(ア)に示す速度比とアシストされるトルク量との関係に基づいて算出されたアシストトルク量を、モータジェネレータ500からアシストするタイミングと、発生する加速度との関係について説明する。図29の上段の加速特性(1)は、トルクアシストタイミングを制御しなかった場合の特性である。図29には、トラクション限界が示されている。タイヤのトラクションが十分にある場合には、本実施の形態に係るECT_ECUによるアシストタイミング制御を実行する必要はない。雨や積雪や凍結などで路面が滑りやすい状態になると(低μ路であると)、タイヤにトルクを伝達しても、タイヤがスリップして伝達したトルクが路面に伝わらず、良好な加速性能を実現できない。さらに、トルク自体がかなり大きくなると、たとえ低μ路でなくても、1本のタイヤにより路面に伝えられるトルクには限界があるので、トラクション限界を超えることによりタイヤがスリップする。
【0233】
ECT_ECU400は、路面状態からトラクション限界を算出するとともに、エンジントルク量とアシストトルク量とからタイヤに伝達されて発生するトルクを算出する。ECT_ECU400は、タイヤに発生するトルクがトラクション限界を越えるか否かを判断して。トラクション限界を超える場合には、トルクアシストするタイミングを変更するように、モータジェネレータ500に接続されたインバータ600を制御する。このようにすることにより、タイヤに発生するトルクをトラクション限界が超えないようにすることができ、タイヤのスリップによるエネルギロスを抑制できる。
【0234】
ECT_ECU400は、タイヤトルクT(R)をT(R)=[T(E)+T(M)]×トルク比×発進ギヤ比×デフ比×伝達系効率により算出する。このとき、T(E)はエンジン100のトルク、T(M)はモータジェネレータ500のトルクである。ECT_ECU400は、タイヤトラクション限界TLを、TL=f(駆動輪数、路面μ、車重)により算出する。ここでfは、関数であることを表わす。また、関数fは、駆動輪数の関数であるので、4WDと2WDとで、タイヤトラクション限界TLが異なる。したがって、車両がパートタイム4WDである場合、ECT_ECU400は、車両が2WDの走行状態であるのか4WDの走行状態であるのかを判断して、タイヤトラクション限界TLを算出することになる。
【0235】
ECT_ECU400は、タイヤトルクT(R)とトラクション限界TLとを比較して、タイヤがスリップするか否かを判断して、スリップすると判断されると、図29の下段に示すタイミング特性(2)〜(4)のように、トルクをアシストするタイミングを制御して、トラクション限界を大きく越えないように制御する。原則的には、発進あるいは加速開始の直後からモータジェネレータ500によりエンジン100をアシストすることが、良好な加速性能を実現するためには適している。しかしながら、そのようにすると、タイヤトルクT(R)がトラクション限界TLを越えることがあり、エネルギロスを招くことがあるので、これを回避する。
【0236】
図29の下段のタイミング特性(2)に示すように、低速側でトルクアシストを実行すると、図29の上段の加速特性(2)に示すように、発進初期の加速度が早く立ちあがる。図29の下段のタイミング特性(3)に示すように、やや低速側からトルクアシストを実行して、トルクアシストを長く持続すると、図29の上段の加速特性(3)に示すように、加速特性における加速度の絶対値が上昇する。これは、もともとエンジン100のトルクのピークによる加速度のピークに、モータジェネレータ500によるトルクのアシストが重畳されて大きな加速度を発現するものである。この場合、加速特性(3)をトラクション限界を少し越えているが、これを越えないようにトルクをアシストするタイミングをさらに制御するようにする。これを以下に説明する。
【0237】
図29の下段のタイミング特性(4)に示すように、中速域からトルクアシストを実行すると、図29の上段の加速特性(4)に示すように、トラクション限界を越えることなく、ピーク加速度の持続時間を長くすることができる。したがって、トラクション限界を超えるような場合には、図29の下段のタイミング特性(3)ではなく、タイミング特性(4)を選択するようにするとよい。
【0238】
以上のようにして、本実施の形態に係るパワートレインによると、第1の動力源であるエンジンに対して、モータジェネレータによりトルクアシストするタイミングを制御する。このとき、タイヤトルクが、トラクション限界を越えないようにタイミングが制御される。これにより、低μ路であっても、エネルギロスを抑制して、良好な加速性能を実現できる。
【0239】
<第5の実施の形態 変形例>
以下、本発明の第5の実施の形態の変形例に係る制御装置を搭載した車両のパワートレインについて説明する。本変形例に係るパワートレインは、前述の第5の実施の形態に係るパワートレインのロックアップクラッチ付きフルードカップリングに代えて、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータを備えるものである。それ以外のハードウェア構成およびソフトウェア構成は前述の第5の実施の形態と同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0240】
図30に、図29に対応する加速特性曲線とタイミング特性曲線とを示す。図29の上段に示す加速特性(1)に示すように、本変形例に係るパワートレインではトルクコンバータを使用しているため、トルクアシストがなくても既に加速度のピーク値が現れている。これは、トルクコンバータのステータ部により発現されるものである。このトルクコンバータのトルク増幅特性では、十分な加速特性を得られない場合に、トルクアシストするタイミングを制御しつつ、モータジェネレータ500によりトルクアシストを実行する。
【0241】
図30の上段の加速特性(2)〜(5)は、図30の下段のタイミング特性(2)〜(5)にそれぞれ対応している。この場合には、加速ピーク値が持続する良好な加速特性を得るために、タイミング特性(2)よりも、タイミング特性(3)、(4)が選択される。さらに、タイミング特性(5)は、トルクアシストを長く実行するので、エンジンのトルクのピーク値との重畳効果もあって、タイヤトルクがトラクション限界を越えてしまう。したがって、タイミング特性(5)よりも、タイミング特性(3)、(4)が選択される。
【0242】
なお、図30に示す加速特性については、アシストするタイミングの相違以外に、加速特性(5)の方が加速特性(2)の場合よりも、アシストトルク量が大きい。また、図30に示す加速特性については、アシストするタイミングの相違以外に、加速特性(4)の方が加速特性(3)の場合よりも、アシストトルク量が大きい
以上のようにして、本変形例に係るパワートレインによると、フルードカップリングに代えてトルクコンバータを用いても、エンジンに対してモータによりトルクのアシストを行なうことにより、車両の運転者が要求する所望の加速度を実現させることができる。
【0243】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る制御装置が搭載された車両のパワートレインの構成を示す図である。
【図2】図1に示す自動変速機のスケルトン図である。
【図3】図1に示す自動変速機の作動係合状態を表わす図である。
【図4】低速度比領域における速度比に対するフルードカップリングの容量係数の関係を示す図である。
【図5】低速度比領域における時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図6】加速要求度合いに対するフルードカップリングのロックアップクラッチのスリップ量の関係を示す図である。
【図7】高速度比領域における速度比に対するフルードカップリングの容量係数の関係を示す図である。
【図8】高速度比領域における時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図9】高速度比領域における加速要求度合いに対するフルードカップリングのロックアップクラッチのスリップ量の関係を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係るECT_ECUで実行される処理の制御構造を示すフローチャート(その1)である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係るECT_ECUで実行される処理の制御構造を示すフローチャート(その2)である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る制御のパターンの分類を表わす図である。
【図13】アシストされた場合の低速度比領域における時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図14】アシストされた場合の高速度比領域における時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図15】時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図16】アシストされた加速度の変化を示す図である。
【図17】流体継手がトルクコンバータである場合についての時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図18】流体継手がトルクコンバータである場合についてのアシストされた加速度の変化を示す図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係るECT_ECUで実行される処理の制御構造を示すフローチャート(その1)である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係るECT_ECUで実行される処理の制御構造を示すフローチャート(その2)である。
【図21】本発明の第2の実施の形態に係る制御のパターンの分類を表わす図である。
【図22】アシストされた場合の低速度比側の領域における時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図23】アシストされた場合の高速度比側の領域における時間に対する加速度の変化を示す図である。
【図24】本発明の第3の実施の形態に係る制御装置に記憶される、速度比に対するトルクアシスト特性曲線を示す図である。
【図25】本発明の第3の実施の形態に係る制御装置に記憶される、1stギヤ比に対するトルクアシスト特性曲線(その1)を示す図である。
【図26】本発明の第3の実施の形態に係る制御装置に記憶される、1stギヤ比に対するトルクアシスト特性曲線(その2)を示す図である。
【図27】本発明の第3の実施の形態に係るECT_ECUで実行される処理の制御構造を示すフローチャートである。
【図28】本発明の第4の実施の形態におけるエンジン回転数とエンジントルクとの関係を表わす図である。
【図29】本発明の第5の実施の形態に係るECT_ECUをフルードカップリングに適用した場合のアシストされた加速度の時間に対する変化を示す図である。
【図30】本発明の第5の実施の形態に係るECT_ECUをトルクコンバータに適用した場合のアシストされた加速度の時間に対する変化を示す図である。
【符号の説明】
100 エンジン、110 エンジンイナーシャ、200 フルードカップリング、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、300 自動変速機、400 ECT_ECU、500 モータジェネレータ、600 インバータ。
Claims (20)
- 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源からの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両の制御装置であって、
前記流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に応じて、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段と、
前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御するための制御手段とを含む、制御装置。 - 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源からの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両の制御装置であって、
前記流体継手の容量係数に応じて、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段と、
前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御するための制御手段とを含む、制御装置。 - 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源から駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御装置であって、
前記車両が発進する際の前記変速機のギヤ比に応じて、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段と、
前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御するための制御手段とを含む、制御装置。 - 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源から駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御装置であって、
前記第1の動力源から発生する駆動力に応じて、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定するための設定手段と、
前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御するための制御手段とを含む、制御装置。 - 前記制御手段は、
前記第1の動力源および前記第2の動力源により伝達される前記車両の駆動輪の駆動力を算出するための第1の算出手段と、
前記車両の駆動輪のトラクション限界を算出するための第2の算出手段と、
前記駆動輪の駆動力と前記トラクション限界とを比較するための比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するためのタイミング変更手段とを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の制御装置。 - 前記第1の算出手段は、前記第1の動力源と前記車両の駆動輪との間の駆動力伝達要素の状態に基づいて、前記駆動輪の駆動力を算出するための手段を含む、請求項5に記載の制御装置。
- 前記車両は、パートタイム4WDであって、
前記第2の算出手段は、前記車両の走行状態が4WDであるのか2WDであるのかに基づいて、前記トラクション限界を算出するための手段を含む、請求項5に記載の制御装置。 - 前記第2の算出手段は、前記車両が走行する路面の状態に基づいて、前記トラクション限界を算出するための手段を含む、請求項5に記載の制御装置。
- 前記制御装置は、前記第2の動力源により前記第1の動力源をアシストするタイミングが異なる複数のタイミング特性を設定するための手段をさらに含み、
前記タイミング変更手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することにより、前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するための手段を含む、請求項5〜8のいずれかに記載の制御装置。 - 前記タイミング変更手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力が前記トラクション限界を越えないように、前記複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することにより、前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するための手段を含む、請求項9に記載の制御装置。
- 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源からの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両の制御方法であって、
前記流体継手の入力回転数に対する出力回転数の比率に応じて、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップと、
前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する制御ステップとを含む、制御方法。 - 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源からの駆動力を変速機に伝達する流体継手とを搭載した車両の制御方法であって、
前記流体継手の容量係数に応じて、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップと、
前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する制御ステップとを含む、制御方法。 - 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源から駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御方法であって、
前記車両が発進する際の前記変速機のギヤ比に応じて、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップと、
前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する制御ステップとを含む、制御方法。 - 第1の動力源と、前記第1の動力源をアシストする第2の動力源と、前記動力源から駆動力が伝達される変速機とを搭載した車両の制御方法であって、
前記第1の動力源から発生する駆動力に応じて、前記第2の動力源による駆動力のアシストの度合いを設定する設定ステップと、
前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを制御する制御ステップとを含む、制御方法。 - 前記制御ステップは、
前記第1の動力源および前記第2の動力源により伝達される前記車両の駆動輪の駆動力を算出する第1の算出ステップと、
前記車両の駆動輪のトラクション限界を算出する第2の算出ステップと、
前記駆動輪の駆動力と前記トラクション限界とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップの比較結果に基づいて、前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するタイミング変更ステップとを含む、請求項11〜14のいずれかに記載の制御方法。 - 前記第1の算出ステップは、前記第1の動力源と前記車両の駆動輪との間の駆動力伝達要素の状態に基づいて、前記駆動輪の駆動力を算出するステップを含む、請求項15に記載の制御方法。
- 前記車両は、パートタイム4WDであって、
前記第2の算出ステップは、前記車両の走行状態が4WDであるのか2WDであるのかに基づいて、前記トラクション限界を算出するステップを含む、請求項15に記載の制御方法。 - 前記第2の算出ステップは、前記車両が走行する路面の状態に基づいて、前記トラクション限界を算出するステップを含む、請求項15に記載の制御方法。
- 前記制御方法は、前記第2の動力源により前記第1の動力源をアシストするタイミングが異なる複数のタイミング特性を設定するステップをさらに含み、
前記タイミング変更ステップは、前記比較ステップの比較結果に基づいて、前記複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することにより、前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するステップを含む、請求項15〜18のいずれかに記載の制御方法。 - 前記タイミング変更ステップは、前記比較ステップの比較結果に基づいて、前記駆動輪の駆動力が前記トラクション限界を越えないように、前記複数のタイミング特性の中から1のタイミング特性を設定することにより、前記第2の動力源による駆動力のアシストのタイミングを変更するステップを含む、請求項19に記載の制御方法。
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