JP2004105052A - 二本鎖核酸断片の変異について解析する方法 - Google Patents
二本鎖核酸断片の変異について解析する方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】遺伝子変異、遺伝子挿入および遺伝子欠失等の塩基配列の違いを核酸レベルで捉え、一本鎖核酸のみならず、二本鎖核酸についても、変異の検出の可能な方法を提供する。
【解決手段】二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、(1)試料に含まれる二本鎖核酸断片を、光信号を生ずる標識物質で標識されたプライマーを用いて増幅する工程と、(2)前記(1)の工程で得られた増幅産物を一本鎖核酸に解離する工程と、(3)前記(2)の工程において生じる解離の前から解離の後までの期間における複数の時点において、継時的に前記標識物質の光信号の位置変化を測定する工程と、(4)前記(3)で得られた位置変化から、前記二本鎖核酸断片の変異についての情報を得る工程とを具備する二本鎖核酸断片の変異について解析する方法。
【選択図】 図1
【解決手段】二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、(1)試料に含まれる二本鎖核酸断片を、光信号を生ずる標識物質で標識されたプライマーを用いて増幅する工程と、(2)前記(1)の工程で得られた増幅産物を一本鎖核酸に解離する工程と、(3)前記(2)の工程において生じる解離の前から解離の後までの期間における複数の時点において、継時的に前記標識物質の光信号の位置変化を測定する工程と、(4)前記(3)で得られた位置変化から、前記二本鎖核酸断片の変異についての情報を得る工程とを具備する二本鎖核酸断片の変異について解析する方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療および検査または分子生物学の分野における遺伝子情報解析のための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、未知の遺伝子変異を検出する方法としては、例えば、以下に示すようなゲル上で展開して移動度の違いにより変異検出を行うPCR−SSCP法や直接配列を決定する塩基配列決定法などが使用されている。
【0003】
PCR−SSCP法では、先ず調べようとするゲノム上のDNA領域をPCRで増幅を行う。次に、増幅されたPCR産物に変性剤を加えて二本鎖から一本鎖に変性させ、ポリアクリルアミドゲル中で電気泳動を行う。もし、そこに遺伝子変異が起きていれば、遺伝子変異を持たないPCR産物との間で、ゲル上での移動度に差が生じる。これは、分子内相互作用によって塩基配列の違いにより生じる立体構造の違いを反映しているためである。ゲル上での展開は、銀染色法などの高感度の染色を行い検出する。SSCPは、ゲル状での展開で2〜3時間、染色で2時間程度必要とする。また、ゲル一枚で処理可能な検体数は、20検体程度と少数である。その上、実験条件の最適化を行う際には、更に、時間を要する。例えば、そのような場合、温度や泳動時間などの条件設定を行って、2種類の対立遺伝子の泳動度が変わるような条件を見出す。しかしながら、従来のゲル上でのPCR−SSCP法は、検出のために多数の条件を組み合わせなければいけないため、遺伝子変異検出等の遺伝子情報解析に最適な条件を見出すまでに時間を要する。
【0004】
一方、塩基配列決定法は、遺伝子変異が含まれる領域をクローニングまたはPCRなどにより増幅し、直接塩基配列の決定を行うものである。最近は、キャピラリータイプの塩基配列決定装置(シークエンサー)が開発されており、一検体あたり2時間程度で結果が出るが、実験に係るコストも高く、蛍光ラベルおよびその精製などの工程なども時間を要する。また、遺伝子変異は、頻度が少ないものもあるため、全ての検体についての塩基配列を決定することは効率がよくないと考えられる。
【0005】
他方、吸光度変化による計測も行われている。この場合、二本鎖DNAが一本鎖DNAに変性する際に、相補的な配列を持った場合と、遺伝子変異が合った場合では、変性曲線が異なることを利用して、その差を吸光度の違いとして捕らえる手法が知られている(非特許文献1を参照されたい)。また、PCRで増幅の際、ある二種類の蛍光プライマーを使用し二本鎖から一本鎖に変性する際に二蛍光のエネルギー移動により変性を検出するものである(特許文献1参照)。しかしながら、これらの方法によって検出できるのは、GC含有量の違いや塩基の欠失や挿入などであり、一塩基変異は検出が難しいとされている。
【0006】
このほかに、一本鎖DNA断片試料の吸光度変化を測定し、該変性条件変化に対する吸光度変化の曲線を解析することにより、DNA配列情報を得る手法も提案された(特許文献2参照)。この方法は、一塩基変異も検出可能であるが、一本鎖DNAのみでしか検出できないため、精製等の操作が必要になる。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−31500号公報
【0008】
【特許文献2】
特開8−187098号公報
【0009】
【非特許文献1】
I. V. Razlutuskii, et al.、Nucleic Acid Research、vol.15、No16、p6665−6676 1987
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況に鑑み、本発明の目的は、遺伝子変異、遺伝子挿入および遺伝子欠失等の塩基配列の違いを核酸レベルで捉え、一本鎖核酸のみならず、二本鎖核酸についても、変異の検出の可能な方法を提供することである。特に、一つの反応容器内の複数項目または複数検体において、迅速に効率よく遺伝子情報解析を行うことが可能な方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために次のような手段を達成した。即ち、
二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、
(1)試料に含まれる二本鎖核酸断片を、光信号を生ずる標識物質で標識されたプライマーを用いて増幅する工程と、
(2)前記(1)の工程で得られた増幅産物を一本鎖核酸に解離する工程と、
(3)前記(2)の工程において生じる解離の前から解離の後までの期間における複数の時点において、継時的に前記標識物質の光信号の位置変化を測定する工程と、
(4)前記(3)で得られた位置変化から、前記二本鎖核酸断片の変異についての情報を得る工程と、
を具備する二本鎖核酸断片の変異について解析する方法
である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の方法は、試料に含まれる二本鎖核酸断片を、光信号を生ずる標識物質で標識されたプライマーを用いて増幅し、得られた反応産物を一本鎖核酸に解離し、その解離の前若しくは解離の途中から解離の後までの間、または解離後における複数の経過時点において光信号を検出することによって当該一本鎖核酸の位置変化を測定し、その情報を解析することにより、得られた一本鎖核酸の種類、大きさおよび立体構造などについての情報を得て、それを基に当該二本鎖核酸断片の変異について解析する方法である。
【0013】
ここで使用される「試料」の語は、解析の対象となる二本鎖核酸断片を含む溶液であればよく、細胞、組織および器官などから、抽出およびホモジネートなどのそれ自身公知の方法によって調製されればよい。
【0014】
ここで使用される「二本鎖核酸断片」の語は、任意の長さの二本鎖の核酸断片であればよく、その長さは特に限定されるものではない。
【0015】
本発明の態様において使用され得る標識物質は、光学系検出器により検出可能な任意の光信号を生ずる何れの標識物質であってよい。例えば、それ自身公知の何れの蛍光物質、発光物質および色素などであればよく、好ましくは蛍光物質である。
【0016】
本発明の態様において使用され得る増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと記す)、RCA法(Rolling Circle Amplification)およびNASBA法(Nucleic Acid Sequence based Amplification)などそれ自身公知の一般的な増幅反応であればよい。
【0017】
複数の経過時点において当該標識物質の位置変化を測定するために、本発明の態様において使用され得る光信号検出装置は、複数の経過時点での標識物質の位置変化を光学的に測定可能な装置であればよい。例えば、蛍光物質を標識物質として使用する場合、蛍光自己相関分光法(以下、FCSと略す;Fluorescence Correlation Spectroscopy)、蛍光クロス相関分光法(Fluorescence Cross Correlation Spectroscopy)および蛍光自己相関解析と蛍光強度分布関数解析とを同時に解析可能な一分子蛍光分析法(Fluorescence Intensity Multile Distribution Analysis)などの解析方法に使用可能な装置を用いることが可能である。
【0018】
また、上記のような装置により測定された位置変化に関する情報から、蛍光自己相関分光法、蛍光クロス相関分光法および一分子蛍光分析法などの解析方法に従って、関数を用いることにより、標識物質を具備した分子の数、分子の大きさおよび/または立体構造などの物理量を算出することが可能である。
【0019】
例えば、基本的な測定計の構成は、特開2000−125900の記載に従って行ってもよい。当該方法は、フォーカシングされたレーザー光線は、試料溶液のほんの一点に集中され、顕微鏡視野下に極微小領域における平均数個の蛍光分子のブラウン運動に由来する蛍光のゆらぎ運動を通して、均一系の溶液に含まれる蛍光分子の濃度や分子間作用を物理的な分離過程を経ずにモニタリング出来る方法である。つまり、微小の測定視野内を出入りする標識分子を分子の活発度を揺らぎとして検出し、分子の大きさ、形状等の特性を判別するものである。
【0020】
以下、本発明に従う方法の例を説明する。
【0021】
(1)第一の態様
図1を用いて、第一の態様を説明する。ここでは、ゲノムの任意の領域がホモ接合であるか、ヘテロ接合であるかを調べる方法を例として示す。例えば、増幅される領域に1つの多型部位が存在し、その多型が2つの遺伝子型を取り得る場合について説明する。
【0022】
まず、対象からゲノムを抽出して二本鎖核酸断片1を調製する。次に、二本鎖核酸断片1を蛍光分子2で標識されたフォワードプライマー3とリバースプライマー4とを用いて、適切な増幅が可能な条件下で増幅反応を行う(図1のA)。当該増幅反応により得られる二本鎖核酸は、当該プライマーにより増幅される領域の配列に存在する塩基の種類に左右される。上述の通り、本例では、増幅される領域には1の多型部位が存在し、2つの遺伝子型を取り得る。従って、得られる増幅産物には次の3つの場合があると考えられる。
【0023】
即ち、当該多型が、父方の遺伝子と母方の遺伝子で等しい第一のホモ接合体である場合には、図1のB−1で示すように1種類の増幅産物5aが得られる。一方、父方の遺伝子と母方の遺伝子が異なる場合には、図1のB−2で示すように2種類の増幅産物5aと5bが得られる。図1のB−2では、異なる遺伝子型を星印の有無で識別して記載している。更に、父方の遺伝子と母方の遺伝子が等しく第二の遺伝子型である場合には、図1のB−3で示すように1種類の増幅産物5bが得られる。
【0024】
次に、得られた増幅産物を二本鎖核酸断片から一本鎖核酸断片に変性する。少なくとも一本鎖核酸断片について、以下で示すような蛍光相関分析装置により複数の経過時点での標識物質である蛍光分子2の蛍光信号を観察する。その結果、ホモ接合体であるB−1およびB−3の場合には、それぞれ、独立した2種類の揺らぎが観察される。一方、ヘテロ接合体の場合には、独立した4種類のゆらぎが観察される。このようなゆらぎの種類から、ゲノムの任意の領域がホモ接合であるか、ヘテロ接合であるかを明らかにすることが可能である。
【0025】
上述の第一の態様では、一本鎖に変性した後のゆらぎの種類から、対象のゲノムの任意の領域がホモ接合であるかヘテロ接合であるかを解析する方法を示した。このゆらぎの観察は、一本鎖に変性した後に限られるものではなく、増幅産物である二本鎖核酸を一本鎖核酸に解離する前から解離の後までの任意の期間における複数の時点において行えばよい。
【0026】
当該ゆらぎの種類には、そこに存在する塩基配列の種類、長さおよび立体構造の違いが反映される。従って、上述の例では、ゲノムにおける多型の遺伝子型について解析する例を示したが、遺伝子型に限らず、欠失、置換および付加などの変異を含み得る二本鎖核酸断片に関しても同様に解析することが可能である。
【0027】
ここにおいて、複数の経過時点において当該標識物質の位置変化を測定するための光信号検出装置は、これに限定するものではないが、例えば、第二の態様として説明する装置を使用することが可能である。
【0028】
(2)第二の態様
本発明の態様に従い、複数の経過時点での標識物質を観察するためには、例えば、以下のような蛍光相関分光法を利用し、且つ後述する蛍光相関分析装置を用いることが可能である。
【0029】
(a)蛍光相関分光法
本発明に従って使用される蛍光相関分光法(即ち、FCS)は、蛍光で標識した標的分子の媒質中におけるゆらぎ運動を測定し、自己相関関数(Autocorrelation function)を用いることにより、個々の標的分子の微小運動を正確に測定する技術である(参照文献:D.Magde and E.Elson, “Fluorescence correlation spectroscopy. II. An experimental realization”, Biopolymers 1974 13(1) 29−61)。
【0030】
本発明に従って使用されるFCSは、溶液中の蛍光分子のブラウン運動をレーザー共焦点顕微鏡系により微小領域で捉えることによって、蛍光強度のゆらぎから拡散時間を解析し、物理量(分子の数、大きさ)を測定することにより実行される。このような微小な領域で分子ゆらぎを捕えるFCSによる解析は、高感度、特異的に分子間相互作用を検出する上で有効である。
【0031】
本発明に従って実行されるFCSによる検出の原理を更に詳しく説明する。FCSでは、試料中の微小視野領域から発生する蛍光信号を検出解析する。この時、媒質中の蛍光標識した標的分子は常に運動している(即ち、ブラウン運動)。従って、標的分子がこの微小視野領域内に進入する頻度および前記領域内に留まる時間に応じて、検出される蛍光強度が変化する。例えば、二本鎖核酸が解離し、一本鎖核酸となって見かけの分子量が減少すれば、標的分子の運動は早くなり、見かけの分子数は増大する。その結果、微小視野領域内に入ってくる頻度は高くなり、観察される蛍光強度が変化する。このような蛍光強度の変化をモニターすることにより、標的分子の見かけの分子量変化が追跡できる。
【0032】
(b)蛍光相関分析装置
以下、本発明の方法において使用され得る蛍光相関分析装置の例を、図2を参照して説明する。図2に示すように、蛍光相関分光装置は、レーザー光源11と、前記レーザー光源11からの光ビームの強度を減弱する光強度調節手段(ここでは、NDフィルタ)12と、適切な光強度調節手段12を設定する光減弱選択装置(ここでは、NDフィルタチェンジャー)13と前記レーザ光源11からの光ビームを前記試料10に集光し、共焦点領域を形成する光学系14、15と、蛍光分子を含有する試料を載せたステージ16と、前記試料10からの蛍光を集光する光学系17〜21と、集光した蛍光を検出する光検出器22と、蛍光強度の変化を記録する蛍光強度記録手段23とからなる。蛍光相関分析装置は、共焦点レーザ顕微鏡系を応用したものである。図2において、レーザー光源11は、例えば、アルゴンレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、クリプトン、ヘリウム−カドミウムなど、何れであってもよい。
【0033】
図2において、レーザー光源11からの光ビームを前記試料に集光し、共焦点領域を形成する光学系14、15は、具体的にはダイクロイックミラー14、および対物レンズ15であってよい。レーザ光源11からの光ビームは、図2中の矢印で示すような経路で、先ず、蛍光強度調節手段(ここでは、NDフィルタ)12の減弱度に従ってその強度が減弱され、次いでダイクロイックミラー14により入射光に対して90度のステージ方向に屈折し、対物レンズ15を通ってステージ16上の試料に照射される。このようにして光ビームは、微小な1点で前記試料に集光され共焦点領域が形成される。
【0034】
図2において、共焦点領域内の蛍光分子から放射された蛍光を集光する光学系17〜21は、具体的には、フィルタ17、チューブレンズ18を経て、反射鏡19により屈折し、ピンホール20に結像した後、レンズ21を通過して光検出器22に集光されてよい。
【0035】
集光された蛍光を検出する光検出器(ここでは、アバランシャルフォトダイオード)22は、受容した光信号を電気信号に変換し、蛍光強度記録手段(ここでは、コンピュータ)23に送信する。
【0036】
蛍光強度の変化を記録する蛍光強度記録手段23は、伝達された蛍光強度データの記録および/または解析を行う。具体的には、この蛍光強度データの解析により自己相関関数を設定する。蛍光分子の動きによる分子量の増大および分子数の減少、あるいは蛍光分子のDNA特定領域への結合による分子数の減少などは、自己相関関数の変化により検出することができる。
【0037】
このようなFCSを行うための装置も本発明の範囲に含まれる。
【0038】
(3)第三の態様
図3を用いて、本発明の第三の態様を、ゲノムの任意の領域がホモ接合であるか、ヘテロ接合であるかを調べる方法を一例として説明する。
【0039】
まず、対象からゲノムを抽出して二本鎖核酸断片1を調製する。次に、二本鎖核酸断片を蛍光分子2で標識されたフォワードプライマー3とリバースプライマー4とを用いて、適切な増幅が可能な条件下で増幅反応を行う(図3のA)。
【0040】
増幅反応を行った後に、二本鎖核酸を一本鎖核酸に融解することが可能な何れかの条件、例えば、温度、水素イオン濃度、並びにホルムアミドおよび尿素などの変性剤の濃度などの条件を変更しながら、当該蛍光分子2の光信号のゆらぎを断続または継続して観察する(図3のB)。
【0041】
続いて、当該二本鎖核酸から一本鎖核酸に解離するための融解条件および/または一試料における融解条件の数を特定する(図3のC)。これにより、当該試料に変異を含む二本鎖核酸断片が存在するか否か、またはどのような変異が当該試料に含まれる二本鎖核酸断片に存在しているのかを検出することが可能である。
【0042】
例えば、融解条件として温度を変更した場合には、融点を特定することにより、その塩基配列を判定することが可能である。また、融点の数を特定することにより、例えば、ヘテロ接合体である場合などのような複数種類の二本鎖核酸断片が試料に存在していることを検出することが可能である。
【0043】
例えば、二本鎖核酸から一本鎖核酸に解離したことは、光信号のゆらぎパターン(即ち、位置変化のパターン)の変化から判定することが可能である。
【0044】
このような第三の態様に従う方法を用いると、例えば、試料に存在する二本鎖核酸断片が、図3のB−1に示す第一のホモ接合体であるのか、それともB−3に示す第二のホモ接合体であるのかを解析することも可能である。しかしながら、これに限らず、第三の態様は種々の変異を検出および解析することが可能である。
【0045】
例えば、予め、全塩基配列が明かである標準核酸または特定の変異が明かである標準核酸について、その融解条件を決定しておき、その融解パターンと比較することにより、目的とする二本鎖核酸断片の変異の有無および/または変異の種類を解析してもよい。
【0046】
或いは、全塩基配列が明かである標準核酸または特定の変異が明かである標準核酸について、第一の蛍光物質により標識したプライマーを用いて増幅し、それとは別に目的とする二本鎖核酸断片を第二の蛍光物質ににより標識したプライマーを用いて増幅する。続いて、それらの増幅産物を同一の反応系に移し、蛍光信号を観察しながら融解のための条件を変化させる。それにより得られた融解点から、目的とする二本鎖核酸断片の変異の有無または変異の種類を特定することが可能である。
【0047】
ここにおいて、複数の経過時点において当該標識物質の位置変化を測定するための光信号検出装置は、これに限定するものではないが、例えば、第二の態様として説明した装置を使用することが可能である。
【0048】
(4)第四の態様
図4を用いて、本発明の第四の態様を、ゲノムの任意の領域がホモ接合であるか、ヘテロ接合であるかを調べる方法を一例として説明する。
【0049】
まず、対象からゲノムを抽出して二本鎖核酸断片1を調製する。次に、二本鎖核酸断片を蛍光分子2で標識されたフォワードプライマー3とリバースプライマー4とを用いて、適切な増幅が可能な条件下で増幅反応を行う(図4のA)。
【0050】
増幅反応を行った後に、二本鎖核酸を、例えば、1分間に50℃の割合で急速に90℃以上の温度にするなどの手段によって急激に変性し、一本鎖核酸にする。また或いは、例えば、96℃で10分間保持するなど、ある程度の変性時間があれば充分である。その後直ちに、例えば、1分間に50℃の割合で急速に4℃以下の温度に急冷し、当該一本鎖核酸6の立体構造を安定化する(図4のC)。続いて、室温まで温度を上げ、分子のゆらぎを観察する(図4のD)。立体構造は、その一本鎖核酸の塩基配列によって異なる。従って、安定して存在していた立体構造が、温度の変化により不安定になり変化していく過程を、分子のゆらぎを断続または継時的に観察することによって追跡し、それによって、当該試料に含まれる二本鎖核酸断片の変異の有無および/または変異の種類について解析することが可能である。
【0051】
このような第四の態様に従う方法を用いると、例えば、試料に存在する二本鎖核酸断片が、図4のB−1に示す第一のホモ接合体であるのか、それともB−3に示す第二のホモ接合体であるのかを解析することも可能である。しかしながら、第四の態様はこれに限らず、種々の変異を検出および解析することが可能である。
【0052】
例えば、予め、全塩基配列が明かである標準核酸または特定の変異が明かである標準核酸について、その立体構造の変化を決定しておき、その変化パターンと比較することにより、目的とする二本鎖核酸断片の変異の有無および/または変異の種類を解析してもよい。
【0053】
或いは、全塩基配列が明かである標準核酸または特定の変異が明かである標準核酸について、第一の蛍光物質により標識したプライマーを用いて増幅し、それとは別に目的とする二本鎖核酸断片を第二の蛍光物質により標識したプライマーを用いて増幅する。続いて、それらの増幅産物を同一の反応系に移し、上述と同様の操作を行う。それにより得られた変化のパターンを比較することによって、目的とする二本鎖核酸断片の変異の有無または変異の種類を特定することが可能である。
【0054】
複数の経過時点における物質の位置変化は、その物質の分子の立体構造に応じても変化する。従って、本発明に従うと、その位置変化を検出することにより、目的の遺伝子増幅産物の中に遺伝子変異を有する核酸が含まれるか否か、および/またはどのような変異を有する核酸であるかを検出でき得る。
【0055】
ここにおいて、複数の経過時点において当該標識物質の位置変化を測定するための光信号検出装置は、これに限定するものではないが、例えば、第二の態様として説明した装置を使用することが可能である。
【0056】
(5)第五の態様
上述した本発明に従う何れの態様を、複数のウェルを有するプレートを反応容器として使用してもよい。上述の第一の態様、第三の態様および第四の態様は、一つの反応系における変性条件を変更する方法を示した。しかしながら、本発明に従う方法は、これに限定するものではなく、一つ一つの反応系の条件は変更せず、複数の反応容器を用い、それらを互いに異なる条件に設定することにより、所望により多くの条件並行して検討しながら、多くの試料についての変異解析を効率よく行うことが可能である。
【0057】
第五の態様に従う方法は、例えば、図5に示すような複数のウェルを有するプレートを用いて以下のように行えばよい。
【0058】
まず、対象からゲノムを抽出して二本鎖核酸断片1を調製する。次に、二本鎖核酸断片1を蛍光分子2で標識されたフォワードプライマー3とリバースプライマー4とを用いて、適切な増幅が可能な条件下で増幅反応を行う。
【0059】
次に、得られた増幅産物を図5のウェルに分注し、ウェル毎に温度勾配および/またはホルムアミド濃度に勾配を持たせ、それぞれのウェルに存在する分子の変異に関する情報を第一の態様、第三の態様または第四の態様に記載した方法に準じて、そこに存在する蛍光分子のゆらぎを観察することにより解析すればよい。例えば、ホルムアミド濃度の勾配は、溶液を追加するこにより行ってもよい。また、温度勾配は、ヒートブロックなどを使用することにより行ってもよい。
【0060】
本発明に従って使用される1プレートに含まれる複数のウェルの数は、複数であれば、特に限定されるものではない。
【0061】
このように複数のウェルを有するプレートを使用することにより、ハイスループットな解析を行うことが可能になる。
【0062】
以上の第一から第五の態様に示したような本発明の態様に従う方法によって、従来のPCR−SSCPで行われていたゲル電気泳動および検出のための染色操作等を省略することが可能になる。そのため、従来法と比較して、検査時間を短縮し、検査工程を簡便化することが可能である。
【0063】
従来、SSCP法で、ゲル組成やバッファーの温度、電気泳動時における電流の大きさ等、条件を組み合わせる時には、ゲル一枚毎に条件設定を行う必要がある。遺伝子変異検出に最適な条件を見出すには、各々の詳細な条件の組み合わせは膨大になるため、現実的には実施可能な範囲で条件の組み合わせを行っている。このように、詳細な条件検討の不足により、本来検出されるべき遺伝子変異等ができない可能性も考えられる。FCSにおいては、測定に必要な検体体積や試薬体積は微量であるため、384ウェルプレートや1536プレート等を容器として使用可能である。このように多数のウェルを有する容器を使用することで、従来の方法よりも詳細な解析条件などを組み合わせることができ、検出制度の向上に繋がる。
【0064】
本発明に従い使用される検出系は、溶液中の非常に狭い領域を観察する方法であるため、検体試料の必要量は微量である。そのため、試薬の低減により、省資源が図れるとともに、コストを低く抑えることが可能である。また、一項目当たりに必要とする検体試料が微量で済むため、今後増えてくると思われる遺伝子検査項目にも対応可能である。また、検査に用いる蛍光色素等に対応したレーザーを複数搭載すること、および使用するフィルターを変化させることで、同時に複数項目を検出することが可能である。
【0065】
FCSの検体の混合、変性、測定、データ解析のみの工程であるため、これまでのPCR−SSCPでは不可能であった全自動化が図れる可能性が高い。
【0066】
【実施例】
実施例1:FcγレセプターIIA遺伝子の遺伝子多型検査
近年、遺伝子多型と細胞機能との関連を示す研究が多数行われている。このFcγレセプターIIIA(FcγRIIIA)遺伝子についても多型により免疫複合体に対する貪食能の違いが生まれることが知られており、感染症発症後の予後を左右することが分かっている。
【0067】
FcγRIIIAは、エクソン4領域に遺伝子多型が存在しており、131番目のアミノ酸がアルギニンからヒスチジンに変化しており、それぞれ、R131、H131多型と呼ばれている。ヒト白血球細胞より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、この多型を含む領域をPCR反応により増幅する。PCR反応以降の工程について、図1に示す。蛍光検出が可能となるように、蛍光標識を行ったプライマーを使用している。これはPCR反応時に蛍光標識を行ったdNTPを取り込ませることでもよい。PCR条件は94℃、10分で変性後、94℃(1分)→60℃(1分)→72℃(1分)を30サイクル繰り返し、増幅を行う。このPCR産物に、ホルムアミド等の変性剤を加え、96℃10分程度熱変性をさせた後に急冷する。これにより一本鎖DNAが高次構造を保持したまま安定する。検出用容器として、例えば、384ウェルプレートを使用し、液量としては10μL程度あればよい。図1にR131とH131タイプの組み合わせを示してあるが、左から、染色体2本のうち、双方がR131であるタイプ、R131とH131を一本ずつ持つタイプ、双方がH131であるタイプの3タイプに別れる。PCR後、増幅されている一本鎖DNAとしては、R131とH131が両方存在する場合には、4種類の配列が検出されることとなる。二本鎖DNAとしてから一本鎖DNAに変性する際のサイズ変化や、同じ長さの配列でも変異を含むことによって、取り得る立体構造が異なるため、この構造の違いを揺らぎの差として検出することができる。
【0068】
遺伝子変異検出に最適な条件を見出すには、各々の詳細な条件の組み合わせを行うことが望ましい。例えば、図5に示すように、プレートの縦方向と横方向で2条件の組み合わせることで、これまでのゲルによるSSCPでは行うことが不可能であった詳細な条件検討が可能となる。検出条件の最適化の項目としては、例えば、温度条件、水素イオン濃度、ホルムアミド濃度などが上げられる。
【0069】
FCSでは、多数ウェルプレートでの解析を自動で行うことが可能であるため、膨大な条件の解析もハイスループットで行える。ひとたび検出条件が蹴って擂れば、一枚のプレートで多数検体について解析を行うとも可能である。
【0070】
この発明は、遺伝子多型のスクリーニングのみならず、遺伝子型判別法として有用な手法である。多検体を高速で解析でき、しかも検体および試料は微量で済む。これまでのSSCPでは難しかった多種類の条件により精度よく遺伝子多型を見つけることが可能となる。
【0071】
【発明の効果】
以上のような本発明により、遺伝子変異、遺伝子挿入および遺伝子欠失等の塩基配列の違いを核酸レベルで捉え、一本鎖核酸のみならず、二本鎖核酸についても、変異の検出の可能な方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の態様の概略を示すスキーム図。
【図2】本発明の第二の態様の概略を示すブロック図。
【図3】本発明の第三の態様の概略を示すスキーム図。
【図4】本発明の第四の態様の概略を示すスキーム図。
【図5】本発明の第五の態様において使用され得る多数ウェルプレートの例を示す図。
【符号の説明】
1.二本鎖核酸断片 2.蛍光分子 3.フォワードプライマー 4.リバースプライマー 5.増幅産物 6.一本鎖核酸 10.試料 11.レーザー光源 12.光強度調節手段 13.光減弱選択装置 14、15、17、18、19、20、21.光学系 16.ステージ 22.光検出器 23.蛍光強度記録手段 24.蛍光強度減衰率検出手段 25.コントローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療および検査または分子生物学の分野における遺伝子情報解析のための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、未知の遺伝子変異を検出する方法としては、例えば、以下に示すようなゲル上で展開して移動度の違いにより変異検出を行うPCR−SSCP法や直接配列を決定する塩基配列決定法などが使用されている。
【0003】
PCR−SSCP法では、先ず調べようとするゲノム上のDNA領域をPCRで増幅を行う。次に、増幅されたPCR産物に変性剤を加えて二本鎖から一本鎖に変性させ、ポリアクリルアミドゲル中で電気泳動を行う。もし、そこに遺伝子変異が起きていれば、遺伝子変異を持たないPCR産物との間で、ゲル上での移動度に差が生じる。これは、分子内相互作用によって塩基配列の違いにより生じる立体構造の違いを反映しているためである。ゲル上での展開は、銀染色法などの高感度の染色を行い検出する。SSCPは、ゲル状での展開で2〜3時間、染色で2時間程度必要とする。また、ゲル一枚で処理可能な検体数は、20検体程度と少数である。その上、実験条件の最適化を行う際には、更に、時間を要する。例えば、そのような場合、温度や泳動時間などの条件設定を行って、2種類の対立遺伝子の泳動度が変わるような条件を見出す。しかしながら、従来のゲル上でのPCR−SSCP法は、検出のために多数の条件を組み合わせなければいけないため、遺伝子変異検出等の遺伝子情報解析に最適な条件を見出すまでに時間を要する。
【0004】
一方、塩基配列決定法は、遺伝子変異が含まれる領域をクローニングまたはPCRなどにより増幅し、直接塩基配列の決定を行うものである。最近は、キャピラリータイプの塩基配列決定装置(シークエンサー)が開発されており、一検体あたり2時間程度で結果が出るが、実験に係るコストも高く、蛍光ラベルおよびその精製などの工程なども時間を要する。また、遺伝子変異は、頻度が少ないものもあるため、全ての検体についての塩基配列を決定することは効率がよくないと考えられる。
【0005】
他方、吸光度変化による計測も行われている。この場合、二本鎖DNAが一本鎖DNAに変性する際に、相補的な配列を持った場合と、遺伝子変異が合った場合では、変性曲線が異なることを利用して、その差を吸光度の違いとして捕らえる手法が知られている(非特許文献1を参照されたい)。また、PCRで増幅の際、ある二種類の蛍光プライマーを使用し二本鎖から一本鎖に変性する際に二蛍光のエネルギー移動により変性を検出するものである(特許文献1参照)。しかしながら、これらの方法によって検出できるのは、GC含有量の違いや塩基の欠失や挿入などであり、一塩基変異は検出が難しいとされている。
【0006】
このほかに、一本鎖DNA断片試料の吸光度変化を測定し、該変性条件変化に対する吸光度変化の曲線を解析することにより、DNA配列情報を得る手法も提案された(特許文献2参照)。この方法は、一塩基変異も検出可能であるが、一本鎖DNAのみでしか検出できないため、精製等の操作が必要になる。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−31500号公報
【0008】
【特許文献2】
特開8−187098号公報
【0009】
【非特許文献1】
I. V. Razlutuskii, et al.、Nucleic Acid Research、vol.15、No16、p6665−6676 1987
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況に鑑み、本発明の目的は、遺伝子変異、遺伝子挿入および遺伝子欠失等の塩基配列の違いを核酸レベルで捉え、一本鎖核酸のみならず、二本鎖核酸についても、変異の検出の可能な方法を提供することである。特に、一つの反応容器内の複数項目または複数検体において、迅速に効率よく遺伝子情報解析を行うことが可能な方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために次のような手段を達成した。即ち、
二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、
(1)試料に含まれる二本鎖核酸断片を、光信号を生ずる標識物質で標識されたプライマーを用いて増幅する工程と、
(2)前記(1)の工程で得られた増幅産物を一本鎖核酸に解離する工程と、
(3)前記(2)の工程において生じる解離の前から解離の後までの期間における複数の時点において、継時的に前記標識物質の光信号の位置変化を測定する工程と、
(4)前記(3)で得られた位置変化から、前記二本鎖核酸断片の変異についての情報を得る工程と、
を具備する二本鎖核酸断片の変異について解析する方法
である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の方法は、試料に含まれる二本鎖核酸断片を、光信号を生ずる標識物質で標識されたプライマーを用いて増幅し、得られた反応産物を一本鎖核酸に解離し、その解離の前若しくは解離の途中から解離の後までの間、または解離後における複数の経過時点において光信号を検出することによって当該一本鎖核酸の位置変化を測定し、その情報を解析することにより、得られた一本鎖核酸の種類、大きさおよび立体構造などについての情報を得て、それを基に当該二本鎖核酸断片の変異について解析する方法である。
【0013】
ここで使用される「試料」の語は、解析の対象となる二本鎖核酸断片を含む溶液であればよく、細胞、組織および器官などから、抽出およびホモジネートなどのそれ自身公知の方法によって調製されればよい。
【0014】
ここで使用される「二本鎖核酸断片」の語は、任意の長さの二本鎖の核酸断片であればよく、その長さは特に限定されるものではない。
【0015】
本発明の態様において使用され得る標識物質は、光学系検出器により検出可能な任意の光信号を生ずる何れの標識物質であってよい。例えば、それ自身公知の何れの蛍光物質、発光物質および色素などであればよく、好ましくは蛍光物質である。
【0016】
本発明の態様において使用され得る増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと記す)、RCA法(Rolling Circle Amplification)およびNASBA法(Nucleic Acid Sequence based Amplification)などそれ自身公知の一般的な増幅反応であればよい。
【0017】
複数の経過時点において当該標識物質の位置変化を測定するために、本発明の態様において使用され得る光信号検出装置は、複数の経過時点での標識物質の位置変化を光学的に測定可能な装置であればよい。例えば、蛍光物質を標識物質として使用する場合、蛍光自己相関分光法(以下、FCSと略す;Fluorescence Correlation Spectroscopy)、蛍光クロス相関分光法(Fluorescence Cross Correlation Spectroscopy)および蛍光自己相関解析と蛍光強度分布関数解析とを同時に解析可能な一分子蛍光分析法(Fluorescence Intensity Multile Distribution Analysis)などの解析方法に使用可能な装置を用いることが可能である。
【0018】
また、上記のような装置により測定された位置変化に関する情報から、蛍光自己相関分光法、蛍光クロス相関分光法および一分子蛍光分析法などの解析方法に従って、関数を用いることにより、標識物質を具備した分子の数、分子の大きさおよび/または立体構造などの物理量を算出することが可能である。
【0019】
例えば、基本的な測定計の構成は、特開2000−125900の記載に従って行ってもよい。当該方法は、フォーカシングされたレーザー光線は、試料溶液のほんの一点に集中され、顕微鏡視野下に極微小領域における平均数個の蛍光分子のブラウン運動に由来する蛍光のゆらぎ運動を通して、均一系の溶液に含まれる蛍光分子の濃度や分子間作用を物理的な分離過程を経ずにモニタリング出来る方法である。つまり、微小の測定視野内を出入りする標識分子を分子の活発度を揺らぎとして検出し、分子の大きさ、形状等の特性を判別するものである。
【0020】
以下、本発明に従う方法の例を説明する。
【0021】
(1)第一の態様
図1を用いて、第一の態様を説明する。ここでは、ゲノムの任意の領域がホモ接合であるか、ヘテロ接合であるかを調べる方法を例として示す。例えば、増幅される領域に1つの多型部位が存在し、その多型が2つの遺伝子型を取り得る場合について説明する。
【0022】
まず、対象からゲノムを抽出して二本鎖核酸断片1を調製する。次に、二本鎖核酸断片1を蛍光分子2で標識されたフォワードプライマー3とリバースプライマー4とを用いて、適切な増幅が可能な条件下で増幅反応を行う(図1のA)。当該増幅反応により得られる二本鎖核酸は、当該プライマーにより増幅される領域の配列に存在する塩基の種類に左右される。上述の通り、本例では、増幅される領域には1の多型部位が存在し、2つの遺伝子型を取り得る。従って、得られる増幅産物には次の3つの場合があると考えられる。
【0023】
即ち、当該多型が、父方の遺伝子と母方の遺伝子で等しい第一のホモ接合体である場合には、図1のB−1で示すように1種類の増幅産物5aが得られる。一方、父方の遺伝子と母方の遺伝子が異なる場合には、図1のB−2で示すように2種類の増幅産物5aと5bが得られる。図1のB−2では、異なる遺伝子型を星印の有無で識別して記載している。更に、父方の遺伝子と母方の遺伝子が等しく第二の遺伝子型である場合には、図1のB−3で示すように1種類の増幅産物5bが得られる。
【0024】
次に、得られた増幅産物を二本鎖核酸断片から一本鎖核酸断片に変性する。少なくとも一本鎖核酸断片について、以下で示すような蛍光相関分析装置により複数の経過時点での標識物質である蛍光分子2の蛍光信号を観察する。その結果、ホモ接合体であるB−1およびB−3の場合には、それぞれ、独立した2種類の揺らぎが観察される。一方、ヘテロ接合体の場合には、独立した4種類のゆらぎが観察される。このようなゆらぎの種類から、ゲノムの任意の領域がホモ接合であるか、ヘテロ接合であるかを明らかにすることが可能である。
【0025】
上述の第一の態様では、一本鎖に変性した後のゆらぎの種類から、対象のゲノムの任意の領域がホモ接合であるかヘテロ接合であるかを解析する方法を示した。このゆらぎの観察は、一本鎖に変性した後に限られるものではなく、増幅産物である二本鎖核酸を一本鎖核酸に解離する前から解離の後までの任意の期間における複数の時点において行えばよい。
【0026】
当該ゆらぎの種類には、そこに存在する塩基配列の種類、長さおよび立体構造の違いが反映される。従って、上述の例では、ゲノムにおける多型の遺伝子型について解析する例を示したが、遺伝子型に限らず、欠失、置換および付加などの変異を含み得る二本鎖核酸断片に関しても同様に解析することが可能である。
【0027】
ここにおいて、複数の経過時点において当該標識物質の位置変化を測定するための光信号検出装置は、これに限定するものではないが、例えば、第二の態様として説明する装置を使用することが可能である。
【0028】
(2)第二の態様
本発明の態様に従い、複数の経過時点での標識物質を観察するためには、例えば、以下のような蛍光相関分光法を利用し、且つ後述する蛍光相関分析装置を用いることが可能である。
【0029】
(a)蛍光相関分光法
本発明に従って使用される蛍光相関分光法(即ち、FCS)は、蛍光で標識した標的分子の媒質中におけるゆらぎ運動を測定し、自己相関関数(Autocorrelation function)を用いることにより、個々の標的分子の微小運動を正確に測定する技術である(参照文献:D.Magde and E.Elson, “Fluorescence correlation spectroscopy. II. An experimental realization”, Biopolymers 1974 13(1) 29−61)。
【0030】
本発明に従って使用されるFCSは、溶液中の蛍光分子のブラウン運動をレーザー共焦点顕微鏡系により微小領域で捉えることによって、蛍光強度のゆらぎから拡散時間を解析し、物理量(分子の数、大きさ)を測定することにより実行される。このような微小な領域で分子ゆらぎを捕えるFCSによる解析は、高感度、特異的に分子間相互作用を検出する上で有効である。
【0031】
本発明に従って実行されるFCSによる検出の原理を更に詳しく説明する。FCSでは、試料中の微小視野領域から発生する蛍光信号を検出解析する。この時、媒質中の蛍光標識した標的分子は常に運動している(即ち、ブラウン運動)。従って、標的分子がこの微小視野領域内に進入する頻度および前記領域内に留まる時間に応じて、検出される蛍光強度が変化する。例えば、二本鎖核酸が解離し、一本鎖核酸となって見かけの分子量が減少すれば、標的分子の運動は早くなり、見かけの分子数は増大する。その結果、微小視野領域内に入ってくる頻度は高くなり、観察される蛍光強度が変化する。このような蛍光強度の変化をモニターすることにより、標的分子の見かけの分子量変化が追跡できる。
【0032】
(b)蛍光相関分析装置
以下、本発明の方法において使用され得る蛍光相関分析装置の例を、図2を参照して説明する。図2に示すように、蛍光相関分光装置は、レーザー光源11と、前記レーザー光源11からの光ビームの強度を減弱する光強度調節手段(ここでは、NDフィルタ)12と、適切な光強度調節手段12を設定する光減弱選択装置(ここでは、NDフィルタチェンジャー)13と前記レーザ光源11からの光ビームを前記試料10に集光し、共焦点領域を形成する光学系14、15と、蛍光分子を含有する試料を載せたステージ16と、前記試料10からの蛍光を集光する光学系17〜21と、集光した蛍光を検出する光検出器22と、蛍光強度の変化を記録する蛍光強度記録手段23とからなる。蛍光相関分析装置は、共焦点レーザ顕微鏡系を応用したものである。図2において、レーザー光源11は、例えば、アルゴンレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、クリプトン、ヘリウム−カドミウムなど、何れであってもよい。
【0033】
図2において、レーザー光源11からの光ビームを前記試料に集光し、共焦点領域を形成する光学系14、15は、具体的にはダイクロイックミラー14、および対物レンズ15であってよい。レーザ光源11からの光ビームは、図2中の矢印で示すような経路で、先ず、蛍光強度調節手段(ここでは、NDフィルタ)12の減弱度に従ってその強度が減弱され、次いでダイクロイックミラー14により入射光に対して90度のステージ方向に屈折し、対物レンズ15を通ってステージ16上の試料に照射される。このようにして光ビームは、微小な1点で前記試料に集光され共焦点領域が形成される。
【0034】
図2において、共焦点領域内の蛍光分子から放射された蛍光を集光する光学系17〜21は、具体的には、フィルタ17、チューブレンズ18を経て、反射鏡19により屈折し、ピンホール20に結像した後、レンズ21を通過して光検出器22に集光されてよい。
【0035】
集光された蛍光を検出する光検出器(ここでは、アバランシャルフォトダイオード)22は、受容した光信号を電気信号に変換し、蛍光強度記録手段(ここでは、コンピュータ)23に送信する。
【0036】
蛍光強度の変化を記録する蛍光強度記録手段23は、伝達された蛍光強度データの記録および/または解析を行う。具体的には、この蛍光強度データの解析により自己相関関数を設定する。蛍光分子の動きによる分子量の増大および分子数の減少、あるいは蛍光分子のDNA特定領域への結合による分子数の減少などは、自己相関関数の変化により検出することができる。
【0037】
このようなFCSを行うための装置も本発明の範囲に含まれる。
【0038】
(3)第三の態様
図3を用いて、本発明の第三の態様を、ゲノムの任意の領域がホモ接合であるか、ヘテロ接合であるかを調べる方法を一例として説明する。
【0039】
まず、対象からゲノムを抽出して二本鎖核酸断片1を調製する。次に、二本鎖核酸断片を蛍光分子2で標識されたフォワードプライマー3とリバースプライマー4とを用いて、適切な増幅が可能な条件下で増幅反応を行う(図3のA)。
【0040】
増幅反応を行った後に、二本鎖核酸を一本鎖核酸に融解することが可能な何れかの条件、例えば、温度、水素イオン濃度、並びにホルムアミドおよび尿素などの変性剤の濃度などの条件を変更しながら、当該蛍光分子2の光信号のゆらぎを断続または継続して観察する(図3のB)。
【0041】
続いて、当該二本鎖核酸から一本鎖核酸に解離するための融解条件および/または一試料における融解条件の数を特定する(図3のC)。これにより、当該試料に変異を含む二本鎖核酸断片が存在するか否か、またはどのような変異が当該試料に含まれる二本鎖核酸断片に存在しているのかを検出することが可能である。
【0042】
例えば、融解条件として温度を変更した場合には、融点を特定することにより、その塩基配列を判定することが可能である。また、融点の数を特定することにより、例えば、ヘテロ接合体である場合などのような複数種類の二本鎖核酸断片が試料に存在していることを検出することが可能である。
【0043】
例えば、二本鎖核酸から一本鎖核酸に解離したことは、光信号のゆらぎパターン(即ち、位置変化のパターン)の変化から判定することが可能である。
【0044】
このような第三の態様に従う方法を用いると、例えば、試料に存在する二本鎖核酸断片が、図3のB−1に示す第一のホモ接合体であるのか、それともB−3に示す第二のホモ接合体であるのかを解析することも可能である。しかしながら、これに限らず、第三の態様は種々の変異を検出および解析することが可能である。
【0045】
例えば、予め、全塩基配列が明かである標準核酸または特定の変異が明かである標準核酸について、その融解条件を決定しておき、その融解パターンと比較することにより、目的とする二本鎖核酸断片の変異の有無および/または変異の種類を解析してもよい。
【0046】
或いは、全塩基配列が明かである標準核酸または特定の変異が明かである標準核酸について、第一の蛍光物質により標識したプライマーを用いて増幅し、それとは別に目的とする二本鎖核酸断片を第二の蛍光物質ににより標識したプライマーを用いて増幅する。続いて、それらの増幅産物を同一の反応系に移し、蛍光信号を観察しながら融解のための条件を変化させる。それにより得られた融解点から、目的とする二本鎖核酸断片の変異の有無または変異の種類を特定することが可能である。
【0047】
ここにおいて、複数の経過時点において当該標識物質の位置変化を測定するための光信号検出装置は、これに限定するものではないが、例えば、第二の態様として説明した装置を使用することが可能である。
【0048】
(4)第四の態様
図4を用いて、本発明の第四の態様を、ゲノムの任意の領域がホモ接合であるか、ヘテロ接合であるかを調べる方法を一例として説明する。
【0049】
まず、対象からゲノムを抽出して二本鎖核酸断片1を調製する。次に、二本鎖核酸断片を蛍光分子2で標識されたフォワードプライマー3とリバースプライマー4とを用いて、適切な増幅が可能な条件下で増幅反応を行う(図4のA)。
【0050】
増幅反応を行った後に、二本鎖核酸を、例えば、1分間に50℃の割合で急速に90℃以上の温度にするなどの手段によって急激に変性し、一本鎖核酸にする。また或いは、例えば、96℃で10分間保持するなど、ある程度の変性時間があれば充分である。その後直ちに、例えば、1分間に50℃の割合で急速に4℃以下の温度に急冷し、当該一本鎖核酸6の立体構造を安定化する(図4のC)。続いて、室温まで温度を上げ、分子のゆらぎを観察する(図4のD)。立体構造は、その一本鎖核酸の塩基配列によって異なる。従って、安定して存在していた立体構造が、温度の変化により不安定になり変化していく過程を、分子のゆらぎを断続または継時的に観察することによって追跡し、それによって、当該試料に含まれる二本鎖核酸断片の変異の有無および/または変異の種類について解析することが可能である。
【0051】
このような第四の態様に従う方法を用いると、例えば、試料に存在する二本鎖核酸断片が、図4のB−1に示す第一のホモ接合体であるのか、それともB−3に示す第二のホモ接合体であるのかを解析することも可能である。しかしながら、第四の態様はこれに限らず、種々の変異を検出および解析することが可能である。
【0052】
例えば、予め、全塩基配列が明かである標準核酸または特定の変異が明かである標準核酸について、その立体構造の変化を決定しておき、その変化パターンと比較することにより、目的とする二本鎖核酸断片の変異の有無および/または変異の種類を解析してもよい。
【0053】
或いは、全塩基配列が明かである標準核酸または特定の変異が明かである標準核酸について、第一の蛍光物質により標識したプライマーを用いて増幅し、それとは別に目的とする二本鎖核酸断片を第二の蛍光物質により標識したプライマーを用いて増幅する。続いて、それらの増幅産物を同一の反応系に移し、上述と同様の操作を行う。それにより得られた変化のパターンを比較することによって、目的とする二本鎖核酸断片の変異の有無または変異の種類を特定することが可能である。
【0054】
複数の経過時点における物質の位置変化は、その物質の分子の立体構造に応じても変化する。従って、本発明に従うと、その位置変化を検出することにより、目的の遺伝子増幅産物の中に遺伝子変異を有する核酸が含まれるか否か、および/またはどのような変異を有する核酸であるかを検出でき得る。
【0055】
ここにおいて、複数の経過時点において当該標識物質の位置変化を測定するための光信号検出装置は、これに限定するものではないが、例えば、第二の態様として説明した装置を使用することが可能である。
【0056】
(5)第五の態様
上述した本発明に従う何れの態様を、複数のウェルを有するプレートを反応容器として使用してもよい。上述の第一の態様、第三の態様および第四の態様は、一つの反応系における変性条件を変更する方法を示した。しかしながら、本発明に従う方法は、これに限定するものではなく、一つ一つの反応系の条件は変更せず、複数の反応容器を用い、それらを互いに異なる条件に設定することにより、所望により多くの条件並行して検討しながら、多くの試料についての変異解析を効率よく行うことが可能である。
【0057】
第五の態様に従う方法は、例えば、図5に示すような複数のウェルを有するプレートを用いて以下のように行えばよい。
【0058】
まず、対象からゲノムを抽出して二本鎖核酸断片1を調製する。次に、二本鎖核酸断片1を蛍光分子2で標識されたフォワードプライマー3とリバースプライマー4とを用いて、適切な増幅が可能な条件下で増幅反応を行う。
【0059】
次に、得られた増幅産物を図5のウェルに分注し、ウェル毎に温度勾配および/またはホルムアミド濃度に勾配を持たせ、それぞれのウェルに存在する分子の変異に関する情報を第一の態様、第三の態様または第四の態様に記載した方法に準じて、そこに存在する蛍光分子のゆらぎを観察することにより解析すればよい。例えば、ホルムアミド濃度の勾配は、溶液を追加するこにより行ってもよい。また、温度勾配は、ヒートブロックなどを使用することにより行ってもよい。
【0060】
本発明に従って使用される1プレートに含まれる複数のウェルの数は、複数であれば、特に限定されるものではない。
【0061】
このように複数のウェルを有するプレートを使用することにより、ハイスループットな解析を行うことが可能になる。
【0062】
以上の第一から第五の態様に示したような本発明の態様に従う方法によって、従来のPCR−SSCPで行われていたゲル電気泳動および検出のための染色操作等を省略することが可能になる。そのため、従来法と比較して、検査時間を短縮し、検査工程を簡便化することが可能である。
【0063】
従来、SSCP法で、ゲル組成やバッファーの温度、電気泳動時における電流の大きさ等、条件を組み合わせる時には、ゲル一枚毎に条件設定を行う必要がある。遺伝子変異検出に最適な条件を見出すには、各々の詳細な条件の組み合わせは膨大になるため、現実的には実施可能な範囲で条件の組み合わせを行っている。このように、詳細な条件検討の不足により、本来検出されるべき遺伝子変異等ができない可能性も考えられる。FCSにおいては、測定に必要な検体体積や試薬体積は微量であるため、384ウェルプレートや1536プレート等を容器として使用可能である。このように多数のウェルを有する容器を使用することで、従来の方法よりも詳細な解析条件などを組み合わせることができ、検出制度の向上に繋がる。
【0064】
本発明に従い使用される検出系は、溶液中の非常に狭い領域を観察する方法であるため、検体試料の必要量は微量である。そのため、試薬の低減により、省資源が図れるとともに、コストを低く抑えることが可能である。また、一項目当たりに必要とする検体試料が微量で済むため、今後増えてくると思われる遺伝子検査項目にも対応可能である。また、検査に用いる蛍光色素等に対応したレーザーを複数搭載すること、および使用するフィルターを変化させることで、同時に複数項目を検出することが可能である。
【0065】
FCSの検体の混合、変性、測定、データ解析のみの工程であるため、これまでのPCR−SSCPでは不可能であった全自動化が図れる可能性が高い。
【0066】
【実施例】
実施例1:FcγレセプターIIA遺伝子の遺伝子多型検査
近年、遺伝子多型と細胞機能との関連を示す研究が多数行われている。このFcγレセプターIIIA(FcγRIIIA)遺伝子についても多型により免疫複合体に対する貪食能の違いが生まれることが知られており、感染症発症後の予後を左右することが分かっている。
【0067】
FcγRIIIAは、エクソン4領域に遺伝子多型が存在しており、131番目のアミノ酸がアルギニンからヒスチジンに変化しており、それぞれ、R131、H131多型と呼ばれている。ヒト白血球細胞より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、この多型を含む領域をPCR反応により増幅する。PCR反応以降の工程について、図1に示す。蛍光検出が可能となるように、蛍光標識を行ったプライマーを使用している。これはPCR反応時に蛍光標識を行ったdNTPを取り込ませることでもよい。PCR条件は94℃、10分で変性後、94℃(1分)→60℃(1分)→72℃(1分)を30サイクル繰り返し、増幅を行う。このPCR産物に、ホルムアミド等の変性剤を加え、96℃10分程度熱変性をさせた後に急冷する。これにより一本鎖DNAが高次構造を保持したまま安定する。検出用容器として、例えば、384ウェルプレートを使用し、液量としては10μL程度あればよい。図1にR131とH131タイプの組み合わせを示してあるが、左から、染色体2本のうち、双方がR131であるタイプ、R131とH131を一本ずつ持つタイプ、双方がH131であるタイプの3タイプに別れる。PCR後、増幅されている一本鎖DNAとしては、R131とH131が両方存在する場合には、4種類の配列が検出されることとなる。二本鎖DNAとしてから一本鎖DNAに変性する際のサイズ変化や、同じ長さの配列でも変異を含むことによって、取り得る立体構造が異なるため、この構造の違いを揺らぎの差として検出することができる。
【0068】
遺伝子変異検出に最適な条件を見出すには、各々の詳細な条件の組み合わせを行うことが望ましい。例えば、図5に示すように、プレートの縦方向と横方向で2条件の組み合わせることで、これまでのゲルによるSSCPでは行うことが不可能であった詳細な条件検討が可能となる。検出条件の最適化の項目としては、例えば、温度条件、水素イオン濃度、ホルムアミド濃度などが上げられる。
【0069】
FCSでは、多数ウェルプレートでの解析を自動で行うことが可能であるため、膨大な条件の解析もハイスループットで行える。ひとたび検出条件が蹴って擂れば、一枚のプレートで多数検体について解析を行うとも可能である。
【0070】
この発明は、遺伝子多型のスクリーニングのみならず、遺伝子型判別法として有用な手法である。多検体を高速で解析でき、しかも検体および試料は微量で済む。これまでのSSCPでは難しかった多種類の条件により精度よく遺伝子多型を見つけることが可能となる。
【0071】
【発明の効果】
以上のような本発明により、遺伝子変異、遺伝子挿入および遺伝子欠失等の塩基配列の違いを核酸レベルで捉え、一本鎖核酸のみならず、二本鎖核酸についても、変異の検出の可能な方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の態様の概略を示すスキーム図。
【図2】本発明の第二の態様の概略を示すブロック図。
【図3】本発明の第三の態様の概略を示すスキーム図。
【図4】本発明の第四の態様の概略を示すスキーム図。
【図5】本発明の第五の態様において使用され得る多数ウェルプレートの例を示す図。
【符号の説明】
1.二本鎖核酸断片 2.蛍光分子 3.フォワードプライマー 4.リバースプライマー 5.増幅産物 6.一本鎖核酸 10.試料 11.レーザー光源 12.光強度調節手段 13.光減弱選択装置 14、15、17、18、19、20、21.光学系 16.ステージ 22.光検出器 23.蛍光強度記録手段 24.蛍光強度減衰率検出手段 25.コントローラ
Claims (8)
- 二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、
(1)試料に含まれる二本鎖核酸断片を、光信号を生ずる標識物質で標識されたプライマーを用いて増幅する工程と、
(2)前記(1)の工程で得られた増幅産物を一本鎖核酸に解離する工程と、
(3)前記(2)の工程において生じる解離の前から解離の後までの期間における複数の時点において、継時的に前記標識物質の光信号の位置変化を測定する工程と、
(4)前記(3)で得られた位置変化から、前記二本鎖核酸断片の変異についての情報を得る工程と、
を具備する二本鎖核酸断片の変異について解析する方法。 - 請求項1に記載の二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、前記(2)の工程における解離が、温度変化、水素イオン濃度変化および変性剤の添加からなる群より選択される手段によって行われることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、前記(3)の位置変化を測定する工程が、少なくとも前記増幅産物が一本鎖核酸に解離する前から解離が生じるまでに行われることと、前記(4)の工程が、前記(3)で得られた位置変化に関する情報から前記二本鎖核酸断片の融解温度を得て、それによって、前記二本鎖核酸断片の変異が解析されることとを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、前記(2)の工程における解離が温度変化により行われ、前記(3)の位置変化を測定する工程が、少なくとも前記増幅産物が一本鎖核酸に解離された後に行われ、且つ前記(3)の工程が更に、
(a)温度を変更することによって当該一本鎖核酸の立体構造を安定化する工程と、
(b)前記(a)の工程の後に、温度を室温にし、その後の複数の時点において、継時的に前記標識物質の光信号の位置変化を測定する工程と、
を具備することを特徴とする方法。 - 請求項1から4の何れか一項に記載の二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、前記(4)の工程が、前記(3)で得られた位置変化を、位置変化と変異との相関が明らかな標準核酸の場合に得られる位置変化と比較することによって、当該二本鎖核酸断片の変異についての情報を得ることを特徴とする方法。
- 二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、
(1)試料に含まれる二本鎖核酸断片を、光信号を生ずる第一の標識物質で標識された第一のプライマーを用いて増幅し、試料に含まれる標準核酸を光信号を生ずる第二の標識物質で標識された第二のプライマーを用いて増幅する工程と、
(2)前記(1)の工程で得られた全ての増幅産物を一つの反応容器内で一本鎖核酸に解離する工程と、
(3)前記(2)の工程において生じる解離の前から解離の後までの期間における複数の時点において、継時的に第一および第二の標識物質の光信号の位置変化を測定する工程と、
(4)前記(3)で得られた第一の標識物質の位置変化と第二の標識物質の光信号の位置変化を比較することにより、前記二本鎖核酸断片の変異についての情報を得る工程と、
を具備する二本鎖核酸断片の変異について解析する方法。 - 請求項1から6の何れか一項に記載の二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、前記二本鎖核酸断片がゲノム核酸であり、前記変異が挿入、欠失および置換からなる群より選択されることを特徴とする方法。
- 請求項1から7の何れか一項に記載の二本鎖核酸断片の変異について解析する方法であって、前記光信号の位置変化の測定が、蛍光自己相関分光法、蛍光クロス相関分光法および一分子蛍光分析法からなる群より選択される手段により行われることを特徴とする方法。
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JP2002270528A JP2004105052A (ja) | 2002-09-17 | 2002-09-17 | 二本鎖核酸断片の変異について解析する方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008520975A (ja) * | 2004-11-16 | 2008-06-19 | ヘリコス バイオサイエンシーズ コーポレイション | Tirf単分子分析および核酸を配列決定する方法 |
-
2002
- 2002-09-17 JP JP2002270528A patent/JP2004105052A/ja not_active Withdrawn
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