JP2004104845A - 四輪駆動車両の駆動力制御装置 - Google Patents

四輪駆動車両の駆動力制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】バッテリレスモータ四輪駆動車のモータと従駆動輪との間に介装されたクラッチ解放時に発生するショックを防止する。
【解決手段】アクセル開度APOが所定値APO1 以下であるとか、変速比(減速比)が所定値以下であるといったように、エンジンによる発電機の発電量が小さいときには、四輪駆動状態から二輪駆動状態への移行期に目標モータトルクを速やかに減少し、実際のモータトルクと目標値とのずれをなくしてクラッチ解放時のショックを抑制防止する。
【選択図】   図9

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主駆動輪を内燃機関(エンジン)によって駆動し、従駆動輪を電動機(モータ)で駆動可能とした四輪駆動車両の駆動力制御装置に関し、特にエンジンで発電機を駆動し、その電力をモータに供給するようにした、所謂バッテリレス四輪駆動車両の駆動力制御装置に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
このようなバッテリレス四輪駆動車両の駆動力制御装置としては、例えば15km/h程度に設定された所定走行速度以下の領域で、前後輪の速度差が所定値以上になると、即ち加速スリップ量が所定値以上となったときにモータと従駆動輪との間のクラッチを締結して当該モータを駆動したり、アクセル開度量に応じてモータを駆動したりして四輪駆動状態とするように構成されている(例えば特許文献1参照)。そして、例えばアクセル開度が所定値以上の領域では、エンジンの出力のうちの一定の配分量を発電機の駆動力とし、その駆動力で発電された電力をモータに供給して従駆動輪を駆動するようにしている。なお、四輪駆動状態から二輪駆動状態への移行時には、通常、モータトルクの指令値(目標モータトルク)を減少し、その目標モータトルクが所定値以下になったらクラッチを解放する。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−318472号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の四輪駆動車両の駆動力制御装置では、エンジンの出力のうちの一定の配分量を発電機の駆動力としているため、エンジンによる発電機駆動力が十分でない場合にはモータトルクが指令値、即ち目標モータトルクに達しない場合がある。例えば前記四輪駆動状態から二輪駆動状態への移行期に、このように目標モータトルクに実際のモータトルクが達しなくなると、クラッチを解放する前に、モータトルクが目標値を下回り、クラッチを解放するときには実際のモータトルクと前記モータトルク所定値とがずれ、クラッチ解放に伴ってショックが発生する恐れがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、四輪駆動状態から二輪駆動状態へのクラッチ解放時にショックが発生しない四輪駆動車両の駆動力制御装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の四輪駆動車両の駆動力制御装置は、エンジンによる発電機発電量を検出し、このエンジンによる発電機発電量に応じて、クラッチ解放を伴う四輪駆動状態から二輪駆動状態への移行期の減少される電動機トルクを設定する、具体的にはエンジンによる発電機発電量が小さいときに電動機トルクを速やかに減少設定する。
【0007】
【発明の効果】
本発明の四輪駆動車両の駆動力制御装置によれば、エンジンによる発電機発電量に応じて、クラッチ解放とをもなう四輪駆動状態から二輪駆動状態への移行期の減少される電動機トルクを設定する、具体的にはエンジンによる発電機発電量が小さいときに電動機トルクを速やかに減少設定することにより、電動機トルクが目標値を下回りにくくなり、クラッチ解放時の電動機トルクと目標値との差が小さくなってショックを回避することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る車両のシステム構成を説明する図である。
この図1に示すように、本実施形態の車両は、左右前輪1L、1Rが、内燃機関であるエンジン2によって駆動される主駆動輪であり、左右後輪3L、3Rが、モータ4によって駆動可能な従駆動輪である。
【0009】
すなわち、エンジン2の出力トルクTeが、トランスミッション30及びディファレンスギア31を通じて左右前輪1L、1Rに伝達されるようになっている。
上記トランスミッション30には、現在の変速のレンジを検出するシフト位置検出手段32が設けられ、該シフト位置検出手段32は、検出したシフト位置信号を四輪駆動(以下、4WDとも記す)コントローラ8に出力する。
【0010】
また、上記エンジン2の回転トルクTeの一部は、無端ベルト6を介して発電機7に伝達される。
上記発電機7は、エンジン2の回転数Neにプーリ比を乗じた回転数Nhで回転し、4WDコントローラ8によって調整される界磁電流Ifhに応じて、エンジン2に対し負荷となり、その負荷トルクに応じた電圧を発電する。
【0011】
その発電機7が発電した電力は、電線9を介してモータ4に供給可能となっている。その電線9の途中にはジャンクションボックス10が設けられている。上記モータ4の駆動軸は、減速機11及びクラッチ12を介して後輪3L、3Rに接続可能となっている。符号13はデフを表す。
上記エンジン2の吸気管路14(例えばインテークマニホールド)には、メインスロットルバルブ15とサブスロットルバルブ16が介装されている。メインスロットルバルブ15は、アクセル開度指示装置であるアクセルペダル17の踏込み量等に応じてスロットル開度が調整制御される。このメインスロットルバルブ15は、アクセルペダル17の踏込み量に機械的に連動するか、あるいは当該アクセルペダル17の踏み込み量を検出するアクセルセンサの踏込み量検出値に応じて、エンジンコントローラ18が電気的に調整制御することで、そのスロットル開度が調整される。上記アクセルセンサの踏込み量検出値は、4WDコントローラ8にも出力される。
【0012】
また、サブスロットルバルブ16は、ステップモータ19をアクチュエータとし、そのステップ数に応じた回転角により開度が調整制御される。上記ステップモータ19の回転角は、モータコントローラ20からの駆動信号によって調整制御される。なお、サブスロットルバルブ16にはスロットルセンサが設けられており、このスロットルセンサで検出されるスロットル開度検出値に基づいて、上記ステップモータ19のステップ数はフィードバック制御される。ここで、上記サブスロットルバルブ16のスロットル開度をメインスロットルバルブ15の開度以下等に調整することによって、運転者のアクセルペダルの操作とは独立して、エンジン2の出力トルクを制御することができる。
【0013】
また、エンジン2の回転数を検出するエンジン回転数検出センサ21を備え、エンジン回転数検出センサ21は、検出した信号をエンジンコントローラ18及び4WDコントローラ8に出力する。
また、符号34は制動指示操作部を構成するブレーキペダルであって、そのブレーキペダル34のストローク量がブレーキストロークセンサ35によって検出される。該ブレーキストロークセンサ35は、検出したブレーキストローク量を制動コントローラ36及び4WDコントローラ8に出力する。
【0014】
制動コントローラ36は、入力したブレーキストローク量に応じて、各車輪1L、1R、3L、3Rに装備したディスクブレーキなどの制動装置37FL、37FR、37RL、37RRを通じて、車両に作用する制動力を制御する。
また、上記発電機7は、図2に示すように、出力電圧Vを調整するための電圧調整器22(レギュレータ)を備え、4WDコントローラ8によって界磁電流Ifhが調整されることで、エンジン2に対する発電負荷トルクTh及び発電する電圧Vが制御される。電圧調整器22は、4WDコントローラ8から発電機制御指令c1(界磁電流値)を入力し、その発電機制御指令c1に応じた値に発電機7の界磁電流Ifhを調整すると共に、発電機7の出力電圧Vを検出して4WDコントローラ8に出力可能となっている。なお、発電機7の回転数Nhは、エンジン2の回転数Neからプーリ比に基づき演算することができる。
【0015】
また、上記ジャンクションボックス10内には電流センサ23が設けられ、該電流センサ23は、発電機7からモータ4に供給される電力の電流値Iaを検出し、当該検出した電機子電流信号を4WDコントローラ8に出力する。また、電線9を流れる電圧値(モータ4の電圧)が4WDコントローラ8で検出される。符号24は、リレーであり、4WDコントローラ8から指令によってモータ4に供給される電圧(電流)の遮断及び接続が制御される。
【0016】
また、モータ4は、4WDコントローラ8からの指令によって界磁電流Ifmが制御され、その界磁電流Ifmの調整によって駆動トルクTmが調整される。なお、符号25はモータ4の温度を測定するサーミスタである。
上記モータ4の駆動軸の回転数Nmを検出するモータ用回転数センサ26を備え、該モータ用回転数センサ26は、検出したモータ4の回転数信号を4WDコントローラ8に出力する。
【0017】
また、上記クラッチ12は、油圧クラッチや電磁クラッチであって、4WDコントローラ8からのクラッチ制御指令に応じて締結状態又は解放状態となる。
また、各車輪1L、1R、3L、3Rには、車輪速センサ27FL、27FR、27RL、27RRが設けられている。各車輪速センサ27FL、27FR、27RL、27RRは、対応する車輪1L、1R、3L、3Rの回転速度に応じたパルス信号を車輪速検出値として4WDコントローラ8に出力する。
【0018】
4WDコントローラ8は、図3に示すように、発電機制御部8A、リレー制御部8B、モータ制御部8C、クラッチ制御部8D、余剰トルク演算部8E、目標トルク制限部8F、余剰トルク変換部8G、及びガタ詰め制御部8Hを備える。上記発電機制御部8Aは、電圧調整器22を通じて、発電機7の発電電圧Vをモニターしながら、当該発電機7の界磁電流Ifhを調整することで、発電機7の発電電圧Vを所要の電圧に調整する。
【0019】
リレー制御部8Bは、発電機7からモータ4への電力供給の遮断・接続を制御する。モータ制御部8Cは、モータ4の界磁電流Ifmを調整することで、当該モータ4のトルクを所要の値に調整する。このモータ制御部8Cが、本発明の電動機トルク制御手段を構成している。
クラッチ制御部8Dは、上記クラッチ12にクラッチ制御指令を出力することで、クラッチ12の状態を制御する。具体的には、前記モータ制御部8Cで設定される目標モータトルクTmがモータトルク所定値TTCL 以上であるとき、或いは後述する図8の演算処理によってクラッチ締結要請のあるときには、クラッチの入力側回転数であるモータ回転数と出力側回転数である平均後輪速との回転合わせを行い、両者が回転合わせされたときにクラッチを締結する。また、目標モータトルクTmがモータトルク所定値TTCL 以下となったら、クラッチを解放する。原則として、クラッチの締結時が四輪駆動状態であり、クラッチ解放時が二輪駆動状態である。このクラッチ制御部8Dが、本発明のクラッチ締結制御手段を構成している。
【0020】
また、所定のサンプリング時間毎に、入力した各信号に基づき、図4に示すように、余剰トルク演算部8E→目標トルク制限部8F→余剰トルク変換部8Gの順に循環して処理が行われる。
まず、余剰トルク演算部8Eでは、図5に示すような処理を行う。
すなわち、先ず、ステップS10において、車輪速センサ27FL、27FR、27RL、27RRからの信号に基づき演算した、前輪1L、1R(主駆動輪)の車輪速から後輪3L、3R(従駆動輪)の車輪速を減算することで、前輪1L、1Rの加速スリップ量であるスリップ速度ΔVFを求め、ステップS20に移行する。
【0021】
ここで、スリップ速度ΔVFの演算は、例えば、次のように行われる。
前輪1L、1Rにおける左右輪速の平均値である平均前輪速VWf、及び後輪3L、3Rにおける左右輪速の平均値である平均後輪速VWrを、それぞれ下記式により算出する。
VWf=(VWfl+VWfr)/2
VWr=(VWrl+VWrr)/2
次に、上記平均前輪速VWfと平均後輪速VWrとの偏差から、主駆動輪である前輪1L、1Rのスリップ速度(加速スリップ量)ΔVFを、下記式により算出する。
【0022】
ΔVF=VWf−VWr
ステップS20では、上記求めたスリップ速度ΔVFが所定値、例えばゼロより大きいか否かを判定する。スリップ速度ΔVFが0以下と判定した場合には、前輪1L、1Rが加速スリップしていないと推定されるので、ステップS30に移行し、Thにゼロを代入した後、復帰する。
【0023】
一方、ステップS20において、スリップ速度ΔVFが0より大きいと判定した場合には、前輪1L、1Rが加速スリップしていると推定されるので、ステップS40に移行する。
ステップS40では、前輪1L、1Rの加速スリップを抑えるために必要な吸収トルクTΔVFを、下記式によって演算してステップS50に移行する。この吸収トルクTΔVFは加速スリップ量に比例した量となる。
【0024】
TΔVF=K1×ΔVF
ここで、K1は、実験などによって求めたゲインである。
ステップS50では、現在の発電機7の負荷トルクTGを、下記式に基づき演算したのち、ステップS60に移行する。
Figure 2004104845
ここで、
V:発電機7の電圧
Ia:発電機7の電機子電流
Nh:発電機7の回転数
K3:効率
K2:係数
である。
【0025】
ステップS60では、下記式に基づき、余剰トルクつまり発電機7で負荷すべき目標の発電負荷トルクThを求め、復帰する。
Th=TG+TΔVF
次に、目標トルク制限部8Fの処理について、図6に基づいて説明する。
すなわち、まず、ステップS110で、上記目標発電負荷トルクThが、発電機7の最大負荷容量HQより大きいか否かを判定する。目標発電負荷トルクThが当該発電機7の最大負荷容量HQ以下と判定した場合には、復帰する。一方、目標発電負荷トルクThが発電機7の最大負荷容量HQよりも大きいと判定した場合には、ステップS120に移行する。
【0026】
ステップS120では、目標の発電負荷トルクThにおける最大負荷容量HQを越える超過トルクΔTbを下記式によって求め、ステップS130に移行する。
ΔTb=Th−HQ
ステップS130では、エンジン回転数検出センサ21及びスロットルセンサからの信号等に基づいて、現在のエンジントルクTeを演算してステップS140に移行する。
【0027】
ステップS140では、下記式のように、上記エンジントルクTeから上記超過トルクΔTbを減算したエンジントルク上限値TeMを演算し、求めたエンジントルク上限値TeMをエンジンコントローラ18に出力した後に、ステップS150に移行する。
TeM=Te−ΔTb
ステップS150では、目標発電負荷トルクThに最大負荷容量HQを代入した後に、復帰する。
【0028】
次に、余剰トルク変換部8Gの処理について、図7に基づいて説明する。
まず、ステップS200で、Thが0より大きいか否かを判定する。Th>0と判定されれば、前輪1L、1Rが加速スリップしているので、ステップS210に移行する。また、Th≦0と判定されれば、前輪1L、1Rは加速スリップしていない状態であるので、ステップS290に移行する。
【0029】
ステップS210では、モータ用回転数センサ21が検出したモータ4の回転数Nmを入力し、そのモータ4の回転数Nmに応じた目標モータ界磁電流Ifmを算出し、当該目標モータ界磁電流Ifmをモータ制御部8Cに出力した後、ステップS220に移行する。
ここで、上記モータ4の回転数Nmに対する目標モータ界磁電流Ifmは、回転数Nmが所定回転数以下の場合には一定の所定電流値とし、モータ4が所定の回転数以上になった場合には、公知の弱め界磁制御方式でモータ4の界磁電流Ifmを小さくする。すなわち、モータ4が高速回転になるとモータ誘起電圧Eの上昇によりモータトルクが低下することから、上述のように、モータ4の回転数Nmが所定値以上になったらモータ4の界磁電流Ifmを小さくして誘起電圧Eを低下させることでモータ4に流れる電流を増加させて所要モータトルクTmを得るようにする。この結果、モータ4が高速回転になってもモータ誘起電圧Eの上昇を抑えてモータトルクの低下を抑制するため、所要のモータトルクTmを得ることができる。また、モータ界磁電流Ifmを所定の回転数未満と所定の回転数以上との2段階で制御することで、連続的な界磁電流制御に比べ制御の電子回路を安価にできる。
【0030】
なお、所要のモータトルクTmに対しモータ4の回転数Nmに応じて界磁電流Ifmを調整することでモータトルクTmを連続的に補正するモータトルク補正手段を備えても良い。すなわち、2段階切替えに対し、モータ回転数Nmに応じてモータ4の界磁電流Ifmを調整すると良い。この結果、モータ4が高速回転になってもモータ4の誘起電圧Eの上昇を抑えモータトルクの低下を抑制するため、所要のモータトルクTmを得ることができる。また、なめらかなモータトルク特性にできるため、2段階制御に比べ車両は安定して走行できるし、常にモータ駆動効率が良い状態にすることができる。
【0031】
ステップS220では、上記目標モータ界磁電流Ifm及びモータ4の回転数Nmからモータ4の誘起電圧Eを算出して、ステップS230に移行する。
ステップS230では、上記余剰トルク演算部8Eが演算した発電負荷トルクThに基づき対応する目標モータトルクTmを算出して、ステップS240に移行する。
【0032】
ステップS240では、上記目標モータトルクTm及び目標モータ界磁電流Ifmを変数として対応する目標電機子電流Iaを算出して、ステップS250に移行する。
ステップS250では、下記式に基づき、上記目標電機子電流Ia、抵抗R、及び誘起電圧Eから発電機7の目標電圧Vを算出し、ステップS260に移行する。
【0033】
V=Ia×R+E
なお、抵抗Rは、電線9の抵抗及びモータ4のコイルの抵抗である。
ステップS260は、ガタ詰めフラグGATAFLGが「1」つまりガタ詰め処理中か否かを判定し、ガタ詰めフラグGATAFLGが「1」であればステップS270に移行し、「0」であれば、ステップS310に移行する。
【0034】
ステップS270及びステップS280では、Vとガタ詰め用目標電圧GaVとを比較し、ガタ詰め用目標電圧GaVの方が大きければ、Vにガタ詰め用目標電圧GaVを代入して、ステップS310に移行する。
ステップS310では、当該発電機7の目標電圧Vを発電機制御部8Aに出力したのち、復帰する。
【0035】
一方、ステップS200にて、Thが「0」の場合にはステップS290に移行する。ステップS200において、ガタ詰めフラグGATAFLGが「1」つまりガタ詰め処理があればステップS300に移行して、Vにガタ詰め用目標電圧GaVを代入して移行してステップS310に移行する。また、ガタ詰めフラグGATAFLGが「0」つまりガタ詰め処理中でなければ処理を終了して復帰する。
【0036】
ここで、上記余剰トルク変換部8Gでは、モータ側の制御を考慮して目標の発電負荷トルクThに応じた発電機7での目標電圧Vを算出しているが、上記目標発電負荷トルクThから直接に、当該目標発電負荷トルクThとなる電圧値Vを算出しても構わない。
次に、ガタ詰め処理部8Hの処理について説明する。
【0037】
ガタ詰め処理部では、所定のサンプリング時間毎に、入力した各信号に基づき、図8に示す処理が行われる。
まず、ステップ410にて、ガタ詰めフラグGATAFLGが「0」か否か、つまり、ガタ詰め処理中か否かを判定し、「0」すなわちガタ詰め処理中でないと判定した場合にはステップS420に移行し、「1」すなわちガタ詰め処理中と判定した場合にはステップS540に移行する。
【0038】
ステップS420では、シフト位置検出手段31からの信号に基づいて、変速が駆動レンジ(D・R・1・2)つまり、パーキングやニュートラル以外のレンジか否かを判定し、駆動レンジつまりエンジン2から前輪1L、1Rにトルク伝達されている状態と判定した場合には、ステップS430に移行する。一方、非駆動レンジと判定した場合には処理を終了して、復帰する。
【0039】
ステップS430では、主駆動輪で前輪1L、1Rの車輪速が、ゼロ若しくはほぼゼロか否かを判定し、ゼロ若しくはほぼゼロと判定した場合、つまり車両発進時と判定した場合にはステップS440に移行する。車両発進時で無いと判定した場合にはステップS430に移行する。
ここで、本実施形態では、S430の処理のように車両発進時にだけガタ詰め処理を行うようにしているが、走行中についてもガタ詰め処理を行う場合には、ステップS430の処理を、走行速度等に基づき、モータ4の回転数が許容回転数以下か否かを判定し、モータ許容回転数を越えている場合にはガタ詰め処理を行わないという処理とすれば良い。
【0040】
ステップS440では、ブレーキストロークセンサ35からの信号に基づき、ブレーキペダル34が戻される方向に変位、つまり制動指示が小さくなる方向に変位すると判定するとステップS450に移行し、そうでない場合には、処理を終了して復帰する。
また、ブレーキペダル34が解放されたか否かを判定し、解放された時にステップS450へ移行し、そうでない場合には処理を終了して復帰するようにしてもよい。
【0041】
ステップS450では、上記ブレーキストロークセンサ35からの信号に基づきブレーキストロークの緩め量の変化(減少速度)を求め、その減少速度に応じたガタ詰め用目標モータトルクGaTmを予め設定したマップや関数から算出し、ステップS460に移行する。本実施形態では、上記減少量が所定値以上の場合には、ガタ詰め用目標モータトルクGaTmを上記減少量に比例した値としている。もっとも、上記ガタ詰め用目標モータトルクGaTmを上記減少量の関係なく一定としても良い。
【0042】
ステップS460では、上記ガタ詰め用目標モータトルクGaTmを変数として対応するガタ詰めに用いる目標電機子電流GaIaを算出し、続いてステップS470で、所定値に固定したモータ界磁電流Imfとモータの回転数Nmからモータの誘起電圧G−Eを算出し、ステップS480に移行する。なお、車両発進時にのみガタ詰め制御を実施するのであれば、モータの誘起電圧G−Eの変動を無視して、モータの誘起電圧G−Eの算出を行うことなく所定値として処理をしても構わない。
【0043】
ステップS480では、発電機のガタ詰め用目標電圧GaVを算出し、続いて、ステップS490で、上記目標電圧GaVを変数として対応する目標発電負荷トルクGaThを算出し、ステップS500にて出力した後、ステップS510に移行する。
ステップS510では、ガタ詰めフラグGATAFLGを「1」にした後、ステップS530に移行する。ガタ詰めフラグGATAFLGを「1」とすることで、余剰トルク変換部8Gなどによって上記出力した目標電圧GaVや目標発電負荷トルクGaThに応じたモータトルクなどの処理が行われる。すなわち、ガタ詰めのために、モータ4が微小トルク発生状態となる。
【0044】
ステップS530では、クラッチ制御部8Dを介して、前記クラッチの入力側回転数であるモータ回転数と出力側回転数である平均後輪速との回転合わせを行い、両者が回転合わせされた状態でクラッチを締結制御した後、処理を終了して復帰する。
一方、ステップS410でガタ詰めフラグGATAFLG=0でない、つまりガタ詰め処理中と判定した場合にはステップS540に移行する。ステップS540では、アクセルセンサからの信号に基づき、加速指示量であるアクセル開度を求め、該アクセル開度が5%を越えているか否かを判定し、アクセル開度が5%を越えていると判定すると、ステップS550に移行しガタ詰フラグGATAFLGに「0」を代入して処理を終了し、復帰する。
【0045】
一方、ステップS540にてアクセル開度が5%以下と判定した場合には、ステップS530に移行し、まだクラッチ12が締結状態でなければクラッチ12を締結状態として処理を終了する。
次に、前記モータトルク制御部8Cで行われる図9の演算処理について説明する。この演算処理は、前記四輪駆動状態から二輪駆動状態への移行期にクラッチ解放に先立って行われるものであり、具体的には減少される目標モータトルクの減少勾配を設定するものである。従って、この演算処理で設定される目標モータトルクTmが、前記モータトルク所定値TTCL 以下になったときにクラッチが解放される。
【0046】
この演算処理では、まずステップS71で前記図7の演算処理等で設定された目標モータトルクTmがモータトルク前回値Tm0 より小さいか否かを判定し、当該目標モータトルクTmがモータトルク前回値Tm0 より小さい場合にはステップS72に移行し、そうでない場合にはステップS73に移行する。
前記ステップS72では、前記アクセルセンサで検出されたアクセルペダルの踏込み量(操作量)、即ちアクセル開度APOが、予め設定された比較的小さな所定値APO1 より大きいか否かを判定し、当該アクセル開度APOが所定値APO1 より大きい場合にはステップS74に移行し、そうでない場合、即ちアクセルペダル開度APOが所定値APO1 以下である場合にはステップS75に移行する。
【0047】
前記ステップS74では、前記トランスミッションでの現在の変速段が、所謂減速比(変速比)の最も大きい、“1”速であるか否かを判定し、現在の変速段が“1”速である、即ち減速比(変速比)が“1”速相当の所定値未満である場合にはステップS76に移行し、そうでない場合、即ち減速比(変速比)が“1”速相当の所定値以下である場合にはステップS77に移行する。
【0048】
前記ステップS76では、前記モータトルク前回値Tm0 から比較的小さな所定値ΔTm1 を減じた値を目標モータトルクTmに設定してから前記ステップS73に移行する。
また、前記ステップS77では、前記モータトルク前回値Tm0 から比較的大きな所定値ΔTm2 を減じた値を目標モータトルクTmに設定してから前記ステップS73に移行する。
【0049】
また、前記ステップS76では、前記モータトルク前回値Tm0 から比較的大きな所定値ΔTm3 を減じた値を目標モータトルクTmに設定してから前記ステップS73に移行する。
前記ステップS73では、前記設定された目標モータトルクTmを出力してからステップS78に移行する。
【0050】
前記ステップS78では、前記設定された目標モータトルクTmをモータトルク前回値Tm0 に更新記憶してからメインプログラムに復帰する。
この演算処理によれば、アクセル開度APOが所定値APO1 以下であるといったようにエンジンの出力自体が小さいとか、或いは変速比が所定値以下であるといったように、エンジンによる発電機発電量が小さいときには、目標モータトルクTmを前記比較的大きな所定値ΔTm2 、ΔTm3 ずつ減少、つまり速やかに減少設定する、換言すれば大きな減少勾配で減少する、或いは大きな減少変化率で減少する。従って、このようにエンジンによる発電機発電量が小さいときの発電力不足に伴い、モータトルクが目標値を下回らないようにしてクラッチ解放時の電動機トルクと目標値との差を小さくし、もってクラッチ解放時のショックを回避することができる。なお、エンジン出力が同等であるときに、例えばアップシフト等により、変速比が小さくなると、より多くのエンジントルクが車輪駆動に消費され、合わせてエンジン回転数が減少することになり、エンジンによる発電機発電量は相対的に小さくなる。
【0051】
次に、エンジンコントローラ18の処理について説明する。
エンジンコントローラ18では、所定のサンプリング時間毎に、入力した各信号に基づいて図10に示すような処理が行われる。
すなわち、まずステップS610で、アクセルセンサ20からの検出信号に基づいて、運転者の要求する目標出力トルクTeNを演算して、ステップS620に移行する。
【0052】
ステップS620では、4WDコントローラ8から制限出力トルクTeMの入力があるか否かを判定する。入力が有ると判定するとステップS630に移行する。一方、入力が無いと判定した場合にはステップS650に移行する。
ステップS630では、制限出力トルクTeMが目標出力トルクTeNよりも大きいか否かを判定する。制限出力トルクTeMの方が大きいと判定した場合には、ステップS640に移行する。一方、制限出力トルクTeMの方が小さいか目標出力トルクTeNと等しければステップS650に移行する。
【0053】
ステップS640では、目標出力トルクTeNに制限出力トルクTeMを代入することで目標出力トルクTeNを増大して、ステップS650に移行する。
ステップS650では、ガタ詰めフラグGATAFLG=1つまりガタ詰め処理中であるか否かを判定する。ガタ詰め処理中と判定した場合には、ステップS660に移行する。一方、ガタ詰め処理中でないと判定した場合にはステップS670に移行する。
【0054】
ステップS660では、目標出力トルクTeNをガタ詰め用目標負荷トルクGaTh分だけ増大してステップS670に移行する。
ステップS670では、スロットル開度やエンジン回転数などに基づき、現在の出力トルクTeを算出してステップS680に移行する。
ステップS680では、現在の出力トルクTeに対する目標出力トルクTeNのの偏差分ΔTe′を下記式に基づき出力して、ステップS690に移行する。
【0055】
ΔTe′=TeN−Te
ステップS690では、その偏差分ΔTeに応じたスロットル開度θの変化分Δθを演算し、その開度の変化分Δθに対応する開度信号を上記ステップモータ19に出力して、復帰する。
次に、上記構成の装置における作用などについて説明する。
【0056】
路面μが小さいためや運転者によるアクセルペダル17の踏み込み量が大きいなどによって、エンジン2から前輪1L、1Rに伝達されたトルクが路面反力限界トルクよりも大きくなると、つまり、主駆動輪である前輪1L、1Rが加速スリップすると、その加速スリップ量に応じた発電負荷トルクThで発電機7が発電することで、前輪1L、1Rに伝達される駆動トルクが、当該前輪1L、1Rの路面反力限界トルクに近づくように調整される。この結果、主駆動輪である前輪1L、1Rでの加速スリップが抑えられる。
【0057】
しかも、発電機7で発電した余剰の電力によってモータ4が駆動されて従駆動輪である後輪3L、3Rも駆動されることで、車両の加速性が向上する。
このとき、主駆動輪1L、1Rの路面反力限界トルクを越えた余剰のトルクでモータ4を駆動するため、エネルギー効率が向上し、燃費の向上に繋がる。
ここで、常時、後輪3L、3Rを駆動状態とした場合には、力学的エネルギー→電気的エネルギー→力学的エネルギーと何回かエネルギー変換を行うために、変換効率分のエネルギー損失が発生することで、前輪1L、1Rだけで駆動した場合に比べて車両の加速性が低下する。このため、後輪3L、3Rの駆動は原則として抑えることが望まれる。これに対し、本実施形態では、滑り易い路面等では前輪1L、1Rに全てのエンジン2の出力トルクTeを伝達しても全てが駆動力として使用されないことに鑑みて、前輪1L、1Rで有効利用できない駆動力を後輪3L、3Rに出力して加速性を向上させるものである。
【0058】
また、発進時などにおいて、車両の加速等のために、踏み込まれていたブレーキペダルが戻されると、その戻し始めのブレーキペダルのストローク速度に比例したガタ詰め用目標モータトルクGaTmに応じたモータ4の目標電圧GaVが算出されてモータ4が微小トルク発生状態となると共にクラッチ12が接続状態となる。この結果、従駆動輪である後輪3L、3Rを駆動できるほどではない微小トルクが、モータから後輪3L、Rまでのトルク伝達経路に作用して、当該トルク伝達経路中にあるクラッチ12、減速機11、ディファレンシャル・ギヤ3などの機構に存在するガタが詰められた状態となる。
【0059】
その後、前輪1L、1Rに加速スリップが生じて4輪駆動状態に移行する際には、上記ガタ詰めが行われているので、上記動力伝達系のバックラッシュなどに起因するショックの発生が防止できるばかりか、動力伝達系のガタが詰められた状態となっているので、モータ駆動による後輪3L、3Rの応答が向上、つまり4輪駆動状態への移行する際の応答が向上する。そして、4輪駆動のためのモータトルクが上記微小のモータトルクGaThよりも大きくなると、4輪駆動のためのモータトルクに実際のモータトルクが移行する。
【0060】
このとき、ブレーキペダルの戻り始めの速度が速い場合には、すぐにアクセルペダル17が踏まれて加速開始・発進開始つまり、4輪駆動状態への移行が早期に行われる可能性が高いが、本実施形態では、ブレーキペダル34の戻り始めの速度が速いほどモータの微小トルクGaThを大きくして早めにガタ詰めを行うことで、上記早期の4輪駆動状態への移行であっても対応可能としている。
【0061】
また、エンジン2が駆動状態であっても、エンジン2の出力トルクが主駆動輪である前輪1R、1Lにトルクが伝達されない非駆動レンジ状態では、ガタ詰めをする必要がない。したがって、上記ステップS420でガタ詰め処理に移行することを防止することで、無用に微小トルク発生をしない、すなわち、発電機で微小電流を発生することを防止して、電気エネルギーの無駄を防ぐ。なお、ガタ詰め処理中であっても、例えばステップS540の位置で、駆動レンジか否かを判定し、非駆動レンジの場合にステップS550に移行してガタ詰め処理を中止しても良い。
【0062】
また、アクセル開度が所定量(ステップS540では5%を例示)を越えると、ガタ詰め処理を中止する。ここで、上記アクセル開度の所定量は、0%でもよいが少し車両が動いてから加速スリップ発生し4WDになる場合、ガタ詰めしておいたにも関わらず少し動く間にガタが出る可能性がある。このため、少しアクセルペダルが踏まれて車両が発進し始めるか加速スリップが起き始めるであろう5%とした。すなわち、上記所定量としては、一般に、少しアクセルペダルが踏まれて車両が発進し始めるか加速スリップが起き始めるであろうアクセル開度とすることが好ましい。
【0063】
図11に、上記処理のタイムチャートを示す。
図11中の、実線も破線も上記処理を実施した場合のものである。破線は、実線に対し、ブレーキを緩める速度が速く、かつアクセルを踏み込むタイミングが早い場合を示している。いずれにしても、応答良く4輪駆動状態となっている。次に、前記図9の演算処理による作用について図12のタイミングチャートを用いて説明する。このタイミングチャートは、変速比(変速段)は“1”速のまま、アクセルペダルを解放した停止状態から、時刻t01でアクセルペダルを一定量だけ踏込み(APO>APO1 )、その結果、四輪駆動状態となって、ある一定の目標モータトルクTmでモータが駆動され、その後、二輪駆動状態に移行すべく、時刻t02以後、目標モータトルクTmが減少設定され、時刻t03で目標モータトルクTmが“0”となると共に、ほぼ同時に当該目標モータトルクTmが前記モータトルク所定値TTCL 以下となったため、当該時刻t03でクラッチを解放して二輪駆動状態に移行したものである。
【0064】
このシミュレーションでは、アクセル開度APOが前記所定値APO1 より大きな値に維持され、且つ変速比(変速段)が“1”速のままである、つまり変速比が大きいため、前記図9の演算処理で減少設定される目標モータトルクTmは、前記サンプリング時間毎に前記比較的小さな所定値ΔTm1 ずつ減少されることになる。従って、図に破線で示す傾き制限前の目標モータトルクに対し、最終的な目標モータトルクTmは比較的緩やかに減少する、換言すれば小さな減少勾配で減少する、或いは小さな減少変化率で減少する。このようにアクセル開度が大きいときや、変速比が大きいときには、前述のようにエンジンによる発電機発電量が大きいため、十分な発電力が得られ、それにより目標とするモータトルクが得易いので、目標モータトルクを緩やかに減少しても、実際のモータトルクが目標値を下回ることはない。そして、このようにモータトルクが緩やかに減少しているときにクラッチを解放すれば、クラッチ解放時のショックを最小限に抑制防止することができる。
【0065】
一方、図13のタイミングチャートは、変速比(変速段)は“1”速のまま、アクセルペダルを解放した停止状態から、時刻t11でアクセルペダルを一定量だけ踏込み(APO>APO1 )、その結果、四輪駆動状態となって、ある一定の目標モータトルクTmでモータが駆動され、その後、二輪駆動状態に移行すべく、時刻t12以後、目標モータトルクTmが減少設定され、更にその後、時刻t13でアクセルペダルを解放し(APO<APO1 )、時刻t14で目標モータトルクTmが“0”となると共に、ほぼ同時に当該目標モータトルクTmが前記モータトルク所定値TTCL 以下となったため、当該時刻t14でクラッチを解放して二輪駆動状態に移行したものである。
【0066】
このシミュレーションでは、前記時刻t12からアクセルオフとなる時刻t13までの間、アクセル開度APOが前記所定値APO1 より大きな値に維持され、且つ変速比(変速段)が“1”速のままである、つまり変速比が大きいため、前記図9の演算処理で減少設定される目標モータトルクTmは、前記サンプリング時間毎に前記比較的小さな所定値ΔTm1 ずつ減少されることになる。しかしながら、前記時刻t13でアクセルペダルを解放すると、アクセル開度APOが前記所定値APO1 以下となるため、これ以後、前記図9の演算処理で減少設定される目標モータトルクTmは、前記サンプリング時間毎に前記比較的大きな所定値ΔTm3 ずつ減少されることになる。従って、図に破線で示す傾き制限前の目標モータトルクに対し、最終的な目標モータトルクTmは比較的速やかに減少する、換言すれば大きな減少勾配で減少する、或いは大きな減少変化率で減少する。このようにアクセル開度が小さいときには、前述のようにエンジンによる発電機発電量が小さいため、十分な発電力が得られず、それにより目標とするモータトルクが得難いので、実際のモータトルクが目標値を下回る恐れがある。そこで、このような状況下では、目標モータトルクTmを速やかに減少させることにより実際のモータトルクとのずれをなくし、もってクラッチ解放時のショックを抑制防止する。
【0067】
また、図14のタイミングチャートは、アクセルペダルを解放した停止状態から、変速比(変速段)“1”速の状態で時刻t21でアクセルペダルを一定量だけ踏込み(APO>APO1 )、その結果、四輪駆動状態となって、ある一定の目標モータトルクTmでモータが駆動され、その後、二輪駆動状態に移行すべく、時刻t22以後、目標モータトルクTmが減少設定され、更にその後、時刻t13で変速比(変速段)が“2”速にアップシフトし、時刻t24で目標モータトルクTmが“0”となると共に、ほぼ同時に当該目標モータトルクTmが前記モータトルク所定値TTCL 以下となったため、当該時刻t24でクラッチを解放して二輪駆動状態に移行したものである。なお、アクセルペダルは一定に踏込まれたままなので、前記時刻t24以後もエンジン回転数Neは増加し続ける。
【0068】
このシミュレーションでは、前記時刻t22から変速比(変速段)が“2”速となる時刻t23までの間、アクセル開度APOが前記所定値APO1 より大きな値に維持され、且つ変速比(変速段)が“1”速のままである、つまり変速比が大きいため、前記図9の演算処理で減少設定される目標モータトルクTmは、前記サンプリング時間毎に前記比較的小さな所定値ΔTm1 ずつ減少されることになる。しかしながら、前記時刻t23で変速比(変速段)が“2”速にアップシフトすると、これ以後、前記図9の演算処理で減少設定される目標モータトルクTmは、前記サンプリング時間毎に前記比較的大きな所定値ΔTm2 ずつ減少されることになる。従って、図に破線で示す傾き制限前の目標モータトルクに対し、最終的な目標モータトルクTmは比較的速やかに減少する、換言すれば大きな減少勾配で減少する、或いは大きな減少変化率で減少する。このように変速比が大きいときにも、前述のようにエンジンによる発電機発電量が小さいため、十分な発電力が得られず、それにより目標とするモータトルクが得難いので、実際のモータトルクが目標値を下回る恐れがある。そこで、このような状況下では、目標モータトルクTmを速やかに減少させることにより実際のモータトルクとのずれをなくし、もってクラッチ解放時のショックを抑制防止する。
【0069】
なお、上記実施形態では、主駆動源として内燃機関を例示しているが、主駆動源をモータから構成しても良い。
また、上記実施形態では、4輪車の場合で例示しているが、モータ4を駆動源とした2輪車に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく一実施形態に係る概略装置構成図である。
【図2】本発明に基づく一実施形態に係るシステム構成図である。
【図3】本発明に基づく一実施形態に係る4WDコントローラを示すブロック図である。
【図4】本発明に基づく一実施形態に係る装置で処理手順を示す図である。
【図5】本発明に基づく一実施形態に係る余剰トルク演算部の処理を示す図である。
【図6】本発明に基づく一実施形態に係る目標トルク制御部の処理を示す図である。
【図7】本発明に基づく一実施形態に係る余剰トルク変換部の処理を示す図である。
【図8】本発明に基づく一実施形態に係るガタ詰め処理部の処理を示す図である。
【図9】本発明に基づく一実施形態に係る目標モータトルク設定の処理を示す図である。
【図10】本発明に基づく一実施形態に係るエンジンコントローラの処理を示す図である。
【図11】本発明に基づく一実施形態に係るタイムチャートを示す図である。
【図12】本発明に基づく一実施形態に係るタイムチャートを示す図である。
【図13】本発明に基づく一実施形態に係るタイムチャートを示す図である。
【図14】本発明に基づく一実施形態に係るタイムチャートを示す図である。
【符号の説明】
1L、1R 前輪
2 エンジン
3L、3R 後輪
4 モータ
6 ベルト
7 発電機
8 4WDコントローラ
9 電線
10 ジャンクションボックス
11 減速機
12 クラッチ
14 吸気管路
15 メインスロットルバルブ
16 サブスロットルバルブ18エンジンコントローラ
19 ステップモータ
20 モータコントローラ
21 エンジン回転数センサ
22 電圧調整器
23 電流センサ
26 モータ用回転数センサ
27FL、27FR、27RL、27RR 車輪速センサ
30 トランスミッション
31 ディファレンシャル・ギヤ
32 シフト位置検出手段
34 ブレーキペダル
35 ブレーキストロークセンサ
36 制動コントローラ
37FL、37FR、37RL、37RR 制動装置
Ifh 発電機の界磁電流
V 発電機の電圧
Nh 発電機の回転数
Ia 電機子電流
Ifm モータの界磁電流
E モータの誘起電圧
Nm モータの回転数
TG 発電機負荷トルク
Th 目標発電機負荷トルク
Th2 第2目標発電機負荷トルク
Tm モータのトルク
Te エンジンの出力トルク
c1 発電機制御指令
T1 設定時間
N1 設定回転数

Claims (4)

  1. 主駆動輪を内燃機関で駆動すると共に、従駆動輪を電動機で駆動可能とし、前記内燃機関で発電機を駆動して、その電力を前記電動機に供給するようにした四輪駆動車両の駆動力制御装置において、少なくとも四輪駆動状態では前記従駆動輪と電動機との間に介装されたクラッチの締結し且つ二輪駆動状態では当該クラッチを解放するクラッチ締結制御手段と、前記内燃機関による発電機の発電量を検出する発電機発電量検出手段と、前記電動機による従駆動輪の駆動トルクを制御する電動機トルク制御手段とを備え、前記電動機トルク制御手段は、前記発電機発電量検出手段で検出された内燃機関による発電機発電量に基づいて、前記四輪駆動状態から二輪駆動状態への移行期に減少する電動機トルクを設定することを特徴とする四輪駆動車両の駆動力制御装置。
  2. 前記電動機トルク制御手段は、前記発電機発電量検出手段で検出された内燃機関による発電機発電量が小さいときに、前記四輪駆動状態から二輪駆動状態への移行期の電動機トルクを速やかに減少設定することを特徴とする請求項1に記載の四輪駆動車両の駆動力制御装置。
  3. 前記発電機発電量検出手段として、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセル開度検出手段を備え、前記電動機トルク制御手段は、前記アクセル開度検出手段で検出されたアクセルペダルの操作量が小さいほど、前記四輪駆動状態から二輪駆動状態への移行期の電動機トルクを速やかに減少設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の四輪駆動車両の駆動力制御装置。
  4. 前記発電機発電量検出手段として、前記内燃機関と主駆動輪との間に介装された変速機の変速比を検出する変速比検出手段を備え、前記電動機トルク制御手段は、前記変速比検出手段で検出された変速機の変速比が小さいほど、前記四輪駆動状態から二輪駆動状態への移行期の電動機トルクを速やかに減少設定することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の四輪駆動車両の駆動力制御装置。
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