JP2004104751A - アンテナ装置及びアンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法、及びスーパーゲインアンテナ装置 - Google Patents
アンテナ装置及びアンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法、及びスーパーゲインアンテナ装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】複数のアンテナが動作して所望のアンテナ特性を得るアンテナ装置における、各アンテナの相互結合によるアンテナ放射パターンのばらつきを抑え、アダプティブ動作を正確に行う。
【解決手段】回路群4(ウエイト演算回路、AD/DA変換器、アップコンバータ/ダウンコンバータ、RF回路部)、そしてアンテナ素子1までの全てを含んだ各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZt、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Ztの逆行列Zt−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Zt−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を各アンテナの入力信号とする補正演算部2を備える。
【選択図】図1
【解決手段】回路群4(ウエイト演算回路、AD/DA変換器、アップコンバータ/ダウンコンバータ、RF回路部)、そしてアンテナ素子1までの全てを含んだ各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZt、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Ztの逆行列Zt−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Zt−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を各アンテナの入力信号とする補正演算部2を備える。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアダプティブ動作を行うアレーアンテナ装置に関し、各アンテナの相互結合によるアンテナ放射パターンのばらつきを抑え、アダプティブ動作を正確に行うことができる、アンテナ間結合によるパターン歪みを補正したアンテナ装置及びアンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法、及び小型でありながら、高い指向性利得と実行利得をもつ、各アンテナの相互結合によるアンテナ効率の低下を抑え、最大の利得を得るスーパーゲインアンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のアンテナシステム構成(1)を図16に示す。
11はアレーアンテナを構成する各アンテナ素子、13はアレーアンテナの各入力端子である。
本アンテナはアンテナ素子をアレーに並べたものであり、各アンテナ素子にアンテナ装置の入力ポートが接続されていた。このため、各アンテナは相互結合の影響があり、本来単独で存在するアンテナパターンから変形し、さらに端のアンテナと中央のアンテナではアンテナパターンに違いが生じていた。さらに放射パターンの変形やアンテナ位置による違いは周波数特性を持ち、運用周波数の上限と下限、またはFDD(frequency division duplex)の場合には送信と受信でパターンに違いがあった。このため、アダプティブアンテナ制御を行うため各アンテナ入力端子への信号ウエイトを計算するには、予めこのアンテナパターンの変形や位置による違い、周波数特性を見込んで計算する必要があった。しかし、これらの放射パターンに関する問題は相互結合が影響しており、相互結合はアンテナ間隔/素子数、アンテナ形式、アレー構成などで相互結合は違う値となる。このため、アダプティブ制御を正確に行うにはアレーアンテナの構成を予め決めて行う必要があり、個々のアレーアンテナに適合した制御プログラムが必要となる。このため、アダプティブアンテナの制御プログラムの作製が煩雑になり、また労力がかかるという欠点がある。一方、アダプティブアンテナの制御プログラムを統一すると、上記のようなアレー化による放射パターンの変形による影響を受けるため、特性が劣化するという欠点がある。
【0003】
従来のアンテナシステム構成(2)を図17に示す。
11はアレーアンテナを構成する各アンテナ素子、13はアレーアンテナの各入力端子である。
このアンテナは、アンテナの間隔をシステムの運用波長の0.4λ波長以下としてアレーに並べたものであり、4素子の例を示している。この状態で例えば各アンテナへの給電電圧をSとすると、S={1,−1,1,−1}として、隣り合うアンテナ素子で逆位相とする。こうすることで、非常に高いアンテナ指向性利得が得られる(非特許文献1参照)。しかし、図18に示すように実際はアンテナが近接しているため、非常に強い相互結合があり、アンテナの効率が落ちるとともに、各アンテナの位相も正確に逆位相とはならない。例えば図17において、アンテナ間隔Ln=0.1λ、アンテナ素子数を4とし、各アンテナへの給電電圧Sを{1,−1,1,−1}とした場合のモーメント法を用いシミュレーション結果を図19に示す。指向性利得は約4.2dB、アンテナ実効利得は−9.29dB(図19)となり、指向性利得はあるものの実効利得は低いことがわかる。
すなわち、従来のスーパーゲインアンテナは、アンテナが近接しているためにアンテナ相互結合が非常に高く、アンテナ給電電圧を逆位相としても指向性利得は高いものの実効利得は得られなかった。
【0004】
【非特許文献1】
Bloch, A., Medhurst, A. and Pool,S. :“A new approach to the design of super directive aerial arrays ”,Proc.Inst. Electr.Emg., 100,part III, 67, p.303(spt.1953)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のアンテナ装置はアレー化による各アンテナパターンの変形があり、この現象を含めた制御を行うとアダプティブ制御ソフトが煩雑になる、または、この現象を無視して制御を行うと性能が落ちるという欠点があった。
また、従来のスーパーゲインアンテナ装置は、アンテナが近接しているためにアンテナ相互結合が非常に高く、アンテナ給電電圧を逆位相としても高い実効利得が得られないという欠点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数のアンテナが動作して所望のアンテナ特性を得るアンテナ装置において、アンテナ間結合によるパターン歪みを補正するために、各アンテナの給電ウエイトを乗算する乗算回路からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を乗算回路における各アンテナの入力信号とすることを特徴とする。
本発明は、複数のアンテナが動作して所望のアンテナ特性を得るアンテナ装置において、各アンテナ素子の給電点からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、ウエイトを乗算する乗算回路から各アンテナ給電点までの伝送係数行列をC、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけ、さらにCで割った信号行列S’(=1/C・Z−1・S)を各アンテナの入力信号とすることを特徴とする。
【0007】
本発明は、運用システム周波数の波長で規格化したアンテナ同士の間隔が0.4波長以下の複数のアンテナを配列して、隣り合うアンテナの位相をほぼ逆転させて動作させることで、非常に高い利得を得るスーパーゲインアンテナ装置において、各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、ここで、Sは隣り合うアンテナ同士の位相を逆転させるために、S≒{1,−1,1,−1,・・・}であり、そこで、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を各アンテナの入力信号とすることを特徴とする。
このような構成のアンテナ装置を使用することで、各アンテナの相互結合によるアンテナ効率の低下を抑え、最大の利得を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
本発明の第1実施例であるアンテナシステムの構成(1)を図1に示す。また、図2に一般のアダプティブアンテナの構成例を示す。
ここで1はアレーアンテナを構成する各アンテナ素子、2は相互インピーダンスを補正する補正演算部、3はアレーアンテナの各入力端子、4はウエイト乗算回路からアンテナ素子までの回路群、すなわち、図2に示すAD/DA変換器(AD/DA)、ダウンコンバータ/アップコンバータ(DC/UC)、RF回路部などである。
基本的にはアダプティブアンテナはディジタル信号でウエイトの乗算を行っているので、所望信号Sはディジタル信号で形成される。ここで、アレーアンテナの相互結合行列Zは、ウエイト乗算回路からAD/DA変換器、ダウンコンバータ/アップコンバータ、RF回路部、そしてアンテナ素子までの全てを含んだインピダンスZt(=C+Za)と考える。この相互インピーダンス行列を測定するためにキャリブレーション回路を有する。
【0009】
ウエイト乗算回路からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列、すなわちAD/DA変換器、ダウンコンバータ/アップコンバータ、RF回路部を含めたアレーアンテナの各アンテナ素子間の相互インピーダンス行列Ztは、キャリブレーション回路を備えており、この較正回路を用いて測定して判っている。測定には各アンテナの相互インピーダンスも測定しなくてはならないため、各アンテナ毎にキャリブレーション回路を接続して、Zt行列の各要素をひとつひとつ順番にアンテナ数の2乗回測定していくことになる。この状態でウエイト乗算回路において、アレーアンテナの入力に相互インピーダンス行列Ztの逆行列Zt−1をかけて各アンテナの入力とする。このことを数式で表すと以下となる。
S’=Zt−1・S (1)
ここで、本アンテナ装置への入力信号はS、各アンテナへのウエイト乗算回路における入力信号はS’である。
このようにしてアンテナから放射された電波信号S’は、アンテナ近傍の空間においてアンテナ間の相互結合Zを受けて遠方へ到達する。
【数1】
このように、アンテナ装置に入力された信号は相互結合の影響なく空間における電界(放射パターン)を形成することになる。
ここで、実際のアンテナにおける例を示す。
図3に示すようにダイポールアンテナが2本並列にならんでいる場合をモーメント法で計算した。ここで、アンテナ間相互インピーダンス(Z21,Z12)はアンテナ給電点から見た値を用いている。図4はアレーアンテナの1素子の振幅、図5は位相パターンである。インピーダンス補正を行った場合、その位置にアンテナが単独で存在した場合に近い振幅、位相パターンが得られることがわかる。すなわち、アンテナ相互結合があるにもかかわらず、その影響が低減されている。
【0010】
次に、さらにアンテナに何らかの付加回路がついている場合の例を計算する。
図6に示すようにアンテナに並行2線の給電線がついており、その給電線から見込んだ相互インピーダンスを用いることとする。この場合の結果を図7、図8に示す。この場合も、インピーダンス補正を行った場合、その位置にアンテナが単独で存在した場合に近い振幅、位相パターンが得られることがわかる。
このことは、全てのアダプティブアンテナアルゴリズムにおいて、アレーアンテナ構造や形状に起因する相互結合の影響を考慮しないで設計できることを示している。従って、共通のアルゴリズムを使えることになり、ソフトの生産性が向上する。また、相互結合の影響を軽減できるので、アダプティブ動作において性能が劣化することが無く、理想的な正確な動作が期待できる。
この動作を具体的に実現する手法は、アンテナ信号を全てディジタル信号に変換し、ディジタル処理で行えば良い。また、ディジタル信号に変換するには、RF信号をベースバンド信号に落として行っても良い。この動作は近年のディジタル技術の進展に伴い、十分可能である。
【0011】
(実施例2)
本発明の第2実施例であるアンテナシステムの構成(2)を図9に示す。
ここで、1はアレーアンテナを構成する各アンテナ素子、2は相互インピーダンスを補正する補正演算部、3はアレーアンテナの各入力端子、4はウエイト乗算回路からアンテナ素子までの回路群、すなわち、図2に示されたAD/DA変換器、ダウンコンバータ/アップコンバータ、RF回路部である。
図2において、アレーアンテナのアンテナ素子のみの相互インピーダンス行列をZa、ウエイト乗算回路からAD/DA変換器、ダウンコンバータ/アップコンバータ、RF回路部、そしてアンテナ給電部までの全ての回路の伝達係数行列をCとする。
この図のように、アンテナ部分のみとアンテナ以下の回路部分を分離して各係数行列を考えた場合、アンテナのみの相互インピーダンスの測定と回路部に分けて測定ができる。このことで、殆ど変化がないアンテナのみの相互インピーダンスは予め製造段階で測定しておき、外部温度変化などで変化するアンテナに接続している回路部分は適宜キャリブレーション回路で較正することができる。これはアンテナ相互インピーダンスを測定する必要がないため、回路部分のみを1系統ずつ測定するのみで良く、測定回数はアンテナ数分の回数で良い。図2では、アンテナへの所望信号Sは以下の式のように変形されてアンテナ部へ伝送される。
S’=1/C・Za−1・S (4)
ここで、本アンテナ装置への入力信号S、各アンテナへのウエイト乗算回路における入力信号はS’である。
まず、S’は各種回路を通る。ここで、S’は変形されて以下となる。
S”=C・S’=C・1/C・Za−1・S=Za−1・S (5)
S”はアンテナ素子に入力される信号である。
【0012】
以下は実施例1と同じく、アンテナから放射された信号S”は予めアンテナ相互インピーダンスの逆行列が掛けてあるので、空間でアンテナ間の相互インピーダンスの影響を受けることで、本来の信号Sに戻る。従って、本例でもアンテナ装置に入力された信号は相互結合の影響なく空間における電界(放射パターン)を形成することができる。
効果は全く実施例1と同様であり、さらにディジタル乗算部から見込んだアンテナ相互インピーダンス行列を求めずに、各アンテナに接続されている回路部分の伝送係数を求めるのみで良いので、アンテナ較正回路が簡易になる。
【0013】
(実施例3)
本発明の第3実施例であるアンテナシステムの構成(3)を図10に示す。
ここで、5は相互インピーダンスを補正する補正演算部で、相互インピーダンスの逆行列を変形したものである。実施例1または2に示したように基本的にアレーアンテナの相互結合をアンテナ給電部で補償することで、アンテナパターンの歪みなどは押さえられるが、さらに相互インピーダンスの逆行列を変形することで、よりアダプティブ動作に適切なアンテナパターンが得られる。この変形は全てのアンテナ給電端子へ入力した時の放射パターンがほぼ同じ形状となり、位相中心のみアレーアンテナ間隔にほぼ等しいことが望ましい。具体的には、このようになるアンテナウエイトを相互インピーダンスの逆行列を変形することで求め、その変形行列Wcをアレーアンテナの入力と信号入力の間に挿入する。この場合もこの行列演算はディジタル的にソフトウエアなどで行うことが適当である。
【0014】
(実施例4)
本発明の第4実施例であるアンテナシステムの構成(4)を図11に示す。
ここで、6は相互インピーダンスを補正する補正演算部であり、周波数の関数である。この場合は各アンテナ素子間の相互結合の周波数特性を測定などで求める。そして、この周波数の関数のまま逆行列を求める。または、これを変形して補償行列を求め、これを用いる。これにより、本アンテナ装置は周波数による放射パターンの変形も補償できる。具体例としては、周波数の関数である相互インピーダンス行列Z(f)を、離散的ポイント周波数(Z1(f1),Z2(f2),・・・,Zn(fn))に分けて固定値とし、その各周波数での逆行列を計算する(Z1−1(f1),Z2−1(f2),・・・,Zn−1(fn))。これを補間して逆行列の周波数関数Z−1(f)とする。またはさらに変形して補償行列Wc(f)を作成する。これは一例であり、周波数特性を補償するための逆行列関数または補償行列の作成方法はこれに限らない。
【0015】
(実施例5)
本発明の第5実施例であるアンテナシステムの構成(5)を図12に示す。
1はアレーアンテナを構成する各アンテナ素子、2は相互インピーダンスを補正する補正演算部、3はアレーアンテナの各入力端子である。通常スーパーゲインとするために、アンテナ間隔Lnを0.0001λ≦Ln≦0.4λ(λ:波長)とし、隣り合うアンテナで逆位相、すなわちS={1,−1,1,−1,・・・,−1}とする。
実施例1において図2を参照して説明したように、基本的にアダプティブアンテナはディジタル信号でウエイトの乗算を行っているので、所望信号Sはディジタル信号で形成される。ここで、アレーアンテナの相互結合行列Zはウエイト乗算回路から、AD/DA変換器、ダウンコンバータ(DC)、アップコンバータ(UC)、RF回路、そしてアンテナまでの全てを含んだインピーダンスZtと考える。この相互インピーダンス行列を測定するためにキャリブレーション回路を有する。
【0016】
ウエイト乗算回路からアンテナ回路を見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列、すなわち、AD/DA変換器、ダウンコンバータ、アップコンバータ、RF回路を含めたアレーアンテナの各アンテナ素子間の相互インピーダンス行列Ztは、キャリブレーション回路を備えており、この較正回路を用いて測定して判っている。測定には各アンテナの相互インピーダンスも測定しなくてはならないため、各アンテナごとにキャリブレーション回路を接続して、Zt行列の各要素をひとつひとつ順番にアンテナ数の2乗回測定していくことになる。この状態でウエイト乗算回路において、アレーアンテナの入力に相互インピーダンス行列Ztの逆行列Zt−1をかけて各アンテナの入力とする。このことを数式で表すと以下となる。
S’=Zt−1・S (1)
ここで、本アンテナ装置への入力信号はS、各アンテナへのウエイト乗算回路における入力信号はS’である。
このようにしてアンテナから放射された電波信号S’は、アンテナ近傍の空間においてアンテナ間の相互結合Zを受けて遠方へ到達する。
【数2】
このように、アンテナ装置に入力された信号は相互結合の影響なく空間における電界(放射パターン)を形成することになる。
このため、スーパーゲインアンテナとするとアンテナ同士の相互結合が消え去った状態で各アンテナに給電できるので、理想状態のスーパーゲインアンテナができることになる。
【0017】
ここで、実際のアンテナにおける例を示す。図13に示すようにダイポールアンテナが4本、0.1波長間隔で並列に並んでいる場合をモーメント法で計算した。ここで、アンテナ間相互インピーダンスはアンテナ給電点から見た値を用いている。図14が放射パターンである。相互結合を無くした後で各アンテナで隣り合うもの同士に逆位相を与えている。すなわち、S={1,−1,1,−1}である。この場合の指向性利得は4.2dBであるが、実効利得は−5.51dB(図14)となった。これは従来と全く同じアンテナ構成において、実効利得が約−9.3dBであったことを考えると、3.8dB利得が向上したことがわかる。すなわち、明らかに高い利得が得られたことになる。
この動作を具体的に実現する手法は、アンテナ信号を全てディジタル信号に変換し、ディジタル処理を行えば良い。また、ディジタル信号に変換するには、RF信号をベースバンド信号に落として行っても良い。この動作は近年のディジタル技術の進展に伴い、十分可能である。
【0018】
(実施例6)
本発明の第6実施例であるアンテナのシステム構成(6)を図15に示す。
ここで、5は相互インピーダンスを補正する補正演算部であり、周波数の関数である。この場合は各アンテナ素子間の相互結合の周波数特性を測定などで求める。そして、この周波数の関数のまま逆行列を求める、またこれを変形して補償行列を求め、これを用いる。これにより、本アンテナ装置は周波数による放射パターンの変形も補償できる。具体例としては、周波数の関数である相互インピーダンス行列Z(f)を、離散的ポイント周波数(Z1(f1),Z2(f2),・・・,Zn(fn))に分けて固定値とし、その各周波数での逆行列を計算する(Z1−1(f1),Z2−1(f2),・・・,Zn−1(fn))。これを補間して逆行列の周波数関数Z−1(f)とする。または、さらに変形して補償行列Wc(f)を作成する。これは例であり、周波数特性を補償するための逆行列関数または補償行列の作成方法はこれに限らない。
【0019】
【発明の効果】
本発明のアンテナ装置は、各アンテナの給電ウエイトを乗算する乗算回路からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を乗算回路における各アンテナの入力信号とすることにより、各アンテナの相互結合によるアンテナ放射パターンのばらつきを抑え、アダプティブ動作を正確に行うことができる。
【0020】
本発明のスーパーゲインアンテナ装置は、運用システム周波数の波長で規格化したアンテナ同士の間隔が0.4波長以下の複数のアンテナを配列して、隣り合うアンテナの位相をほぼ逆転させて動作させることで、非常に高い利得を得るスーパーゲインアンテナ装置において、各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、ここで、Sは隣り合うアンテナ同士の位相を逆転させるために、S≒{1,−1,1,−1,・・・}であり、そこで、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を各アンテナの入力信号とすることにより、これによって、各アンテナの相互結合によるアンテナ効率の低下を抑え、最大の利得を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例のアンテナシステム構成(1)を示す図。
【図2】一般のアダプティブアンテナの構成例を示す図。
【図3】実際のダイポールアンテナが2本並列に並んでいるアンテナにおける例を示す図。
【図4】アレーアンテナの1素子の振幅パターン特性を示す図。
【図5】アレーアンテナの1素子の位相パターン特性を示す図。
【図6】実際のダイポールアンテナが2本並列に並んでいるアンテナに並行2線の給電線が接続されている例を示す図。
【図7】図6の例におけるアレーアンテナの1素子の振幅パターン特性を示す図。
【図8】図6の例におけるアレーアンテナの1素子の位相パターン特性を示す図。
【図9】本発明の第2実施例のアンテナシステム構成(2)を示す図。
【図10】本発明の第3実施例のアンテナシステム構成(3)を示す図。
【図11】本発明の第4実施例のアンテナシステム構成(4)を示す図。
【図12】本発明の第5実施例のアンテナシステム構成(5)を示す図。
【図13】実際のダイポールアンテナが0.1波長間隔で4本並列に並んでいるアンテナにおける例を示す図。
【図14】図13の例におけるアンテナの放射パターン特性を示す図。
【図15】本発明の第6実施例のアンテナシステム構成(6)を示す図。
【図16】従来のアンテナシステム構成(1)を示す図。
【図17】従来のアンテナシステム構成(2)を示す図。
【図18】従来のアンテナシステム構成(2)の放射パターンを示す図。
【図19】従来のアンテナシステム構成(2)の放射パターン特性を示す図。
【符号の説明】
1・・・アンテナ素子、2、5、6・・・補正演算部、3・・・入力端子、4・・・回路群
【発明の属する技術分野】
本発明はアダプティブ動作を行うアレーアンテナ装置に関し、各アンテナの相互結合によるアンテナ放射パターンのばらつきを抑え、アダプティブ動作を正確に行うことができる、アンテナ間結合によるパターン歪みを補正したアンテナ装置及びアンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法、及び小型でありながら、高い指向性利得と実行利得をもつ、各アンテナの相互結合によるアンテナ効率の低下を抑え、最大の利得を得るスーパーゲインアンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のアンテナシステム構成(1)を図16に示す。
11はアレーアンテナを構成する各アンテナ素子、13はアレーアンテナの各入力端子である。
本アンテナはアンテナ素子をアレーに並べたものであり、各アンテナ素子にアンテナ装置の入力ポートが接続されていた。このため、各アンテナは相互結合の影響があり、本来単独で存在するアンテナパターンから変形し、さらに端のアンテナと中央のアンテナではアンテナパターンに違いが生じていた。さらに放射パターンの変形やアンテナ位置による違いは周波数特性を持ち、運用周波数の上限と下限、またはFDD(frequency division duplex)の場合には送信と受信でパターンに違いがあった。このため、アダプティブアンテナ制御を行うため各アンテナ入力端子への信号ウエイトを計算するには、予めこのアンテナパターンの変形や位置による違い、周波数特性を見込んで計算する必要があった。しかし、これらの放射パターンに関する問題は相互結合が影響しており、相互結合はアンテナ間隔/素子数、アンテナ形式、アレー構成などで相互結合は違う値となる。このため、アダプティブ制御を正確に行うにはアレーアンテナの構成を予め決めて行う必要があり、個々のアレーアンテナに適合した制御プログラムが必要となる。このため、アダプティブアンテナの制御プログラムの作製が煩雑になり、また労力がかかるという欠点がある。一方、アダプティブアンテナの制御プログラムを統一すると、上記のようなアレー化による放射パターンの変形による影響を受けるため、特性が劣化するという欠点がある。
【0003】
従来のアンテナシステム構成(2)を図17に示す。
11はアレーアンテナを構成する各アンテナ素子、13はアレーアンテナの各入力端子である。
このアンテナは、アンテナの間隔をシステムの運用波長の0.4λ波長以下としてアレーに並べたものであり、4素子の例を示している。この状態で例えば各アンテナへの給電電圧をSとすると、S={1,−1,1,−1}として、隣り合うアンテナ素子で逆位相とする。こうすることで、非常に高いアンテナ指向性利得が得られる(非特許文献1参照)。しかし、図18に示すように実際はアンテナが近接しているため、非常に強い相互結合があり、アンテナの効率が落ちるとともに、各アンテナの位相も正確に逆位相とはならない。例えば図17において、アンテナ間隔Ln=0.1λ、アンテナ素子数を4とし、各アンテナへの給電電圧Sを{1,−1,1,−1}とした場合のモーメント法を用いシミュレーション結果を図19に示す。指向性利得は約4.2dB、アンテナ実効利得は−9.29dB(図19)となり、指向性利得はあるものの実効利得は低いことがわかる。
すなわち、従来のスーパーゲインアンテナは、アンテナが近接しているためにアンテナ相互結合が非常に高く、アンテナ給電電圧を逆位相としても指向性利得は高いものの実効利得は得られなかった。
【0004】
【非特許文献1】
Bloch, A., Medhurst, A. and Pool,S. :“A new approach to the design of super directive aerial arrays ”,Proc.Inst. Electr.Emg., 100,part III, 67, p.303(spt.1953)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のアンテナ装置はアレー化による各アンテナパターンの変形があり、この現象を含めた制御を行うとアダプティブ制御ソフトが煩雑になる、または、この現象を無視して制御を行うと性能が落ちるという欠点があった。
また、従来のスーパーゲインアンテナ装置は、アンテナが近接しているためにアンテナ相互結合が非常に高く、アンテナ給電電圧を逆位相としても高い実効利得が得られないという欠点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数のアンテナが動作して所望のアンテナ特性を得るアンテナ装置において、アンテナ間結合によるパターン歪みを補正するために、各アンテナの給電ウエイトを乗算する乗算回路からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を乗算回路における各アンテナの入力信号とすることを特徴とする。
本発明は、複数のアンテナが動作して所望のアンテナ特性を得るアンテナ装置において、各アンテナ素子の給電点からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、ウエイトを乗算する乗算回路から各アンテナ給電点までの伝送係数行列をC、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけ、さらにCで割った信号行列S’(=1/C・Z−1・S)を各アンテナの入力信号とすることを特徴とする。
【0007】
本発明は、運用システム周波数の波長で規格化したアンテナ同士の間隔が0.4波長以下の複数のアンテナを配列して、隣り合うアンテナの位相をほぼ逆転させて動作させることで、非常に高い利得を得るスーパーゲインアンテナ装置において、各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、ここで、Sは隣り合うアンテナ同士の位相を逆転させるために、S≒{1,−1,1,−1,・・・}であり、そこで、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を各アンテナの入力信号とすることを特徴とする。
このような構成のアンテナ装置を使用することで、各アンテナの相互結合によるアンテナ効率の低下を抑え、最大の利得を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
本発明の第1実施例であるアンテナシステムの構成(1)を図1に示す。また、図2に一般のアダプティブアンテナの構成例を示す。
ここで1はアレーアンテナを構成する各アンテナ素子、2は相互インピーダンスを補正する補正演算部、3はアレーアンテナの各入力端子、4はウエイト乗算回路からアンテナ素子までの回路群、すなわち、図2に示すAD/DA変換器(AD/DA)、ダウンコンバータ/アップコンバータ(DC/UC)、RF回路部などである。
基本的にはアダプティブアンテナはディジタル信号でウエイトの乗算を行っているので、所望信号Sはディジタル信号で形成される。ここで、アレーアンテナの相互結合行列Zは、ウエイト乗算回路からAD/DA変換器、ダウンコンバータ/アップコンバータ、RF回路部、そしてアンテナ素子までの全てを含んだインピダンスZt(=C+Za)と考える。この相互インピーダンス行列を測定するためにキャリブレーション回路を有する。
【0009】
ウエイト乗算回路からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列、すなわちAD/DA変換器、ダウンコンバータ/アップコンバータ、RF回路部を含めたアレーアンテナの各アンテナ素子間の相互インピーダンス行列Ztは、キャリブレーション回路を備えており、この較正回路を用いて測定して判っている。測定には各アンテナの相互インピーダンスも測定しなくてはならないため、各アンテナ毎にキャリブレーション回路を接続して、Zt行列の各要素をひとつひとつ順番にアンテナ数の2乗回測定していくことになる。この状態でウエイト乗算回路において、アレーアンテナの入力に相互インピーダンス行列Ztの逆行列Zt−1をかけて各アンテナの入力とする。このことを数式で表すと以下となる。
S’=Zt−1・S (1)
ここで、本アンテナ装置への入力信号はS、各アンテナへのウエイト乗算回路における入力信号はS’である。
このようにしてアンテナから放射された電波信号S’は、アンテナ近傍の空間においてアンテナ間の相互結合Zを受けて遠方へ到達する。
【数1】
このように、アンテナ装置に入力された信号は相互結合の影響なく空間における電界(放射パターン)を形成することになる。
ここで、実際のアンテナにおける例を示す。
図3に示すようにダイポールアンテナが2本並列にならんでいる場合をモーメント法で計算した。ここで、アンテナ間相互インピーダンス(Z21,Z12)はアンテナ給電点から見た値を用いている。図4はアレーアンテナの1素子の振幅、図5は位相パターンである。インピーダンス補正を行った場合、その位置にアンテナが単独で存在した場合に近い振幅、位相パターンが得られることがわかる。すなわち、アンテナ相互結合があるにもかかわらず、その影響が低減されている。
【0010】
次に、さらにアンテナに何らかの付加回路がついている場合の例を計算する。
図6に示すようにアンテナに並行2線の給電線がついており、その給電線から見込んだ相互インピーダンスを用いることとする。この場合の結果を図7、図8に示す。この場合も、インピーダンス補正を行った場合、その位置にアンテナが単独で存在した場合に近い振幅、位相パターンが得られることがわかる。
このことは、全てのアダプティブアンテナアルゴリズムにおいて、アレーアンテナ構造や形状に起因する相互結合の影響を考慮しないで設計できることを示している。従って、共通のアルゴリズムを使えることになり、ソフトの生産性が向上する。また、相互結合の影響を軽減できるので、アダプティブ動作において性能が劣化することが無く、理想的な正確な動作が期待できる。
この動作を具体的に実現する手法は、アンテナ信号を全てディジタル信号に変換し、ディジタル処理で行えば良い。また、ディジタル信号に変換するには、RF信号をベースバンド信号に落として行っても良い。この動作は近年のディジタル技術の進展に伴い、十分可能である。
【0011】
(実施例2)
本発明の第2実施例であるアンテナシステムの構成(2)を図9に示す。
ここで、1はアレーアンテナを構成する各アンテナ素子、2は相互インピーダンスを補正する補正演算部、3はアレーアンテナの各入力端子、4はウエイト乗算回路からアンテナ素子までの回路群、すなわち、図2に示されたAD/DA変換器、ダウンコンバータ/アップコンバータ、RF回路部である。
図2において、アレーアンテナのアンテナ素子のみの相互インピーダンス行列をZa、ウエイト乗算回路からAD/DA変換器、ダウンコンバータ/アップコンバータ、RF回路部、そしてアンテナ給電部までの全ての回路の伝達係数行列をCとする。
この図のように、アンテナ部分のみとアンテナ以下の回路部分を分離して各係数行列を考えた場合、アンテナのみの相互インピーダンスの測定と回路部に分けて測定ができる。このことで、殆ど変化がないアンテナのみの相互インピーダンスは予め製造段階で測定しておき、外部温度変化などで変化するアンテナに接続している回路部分は適宜キャリブレーション回路で較正することができる。これはアンテナ相互インピーダンスを測定する必要がないため、回路部分のみを1系統ずつ測定するのみで良く、測定回数はアンテナ数分の回数で良い。図2では、アンテナへの所望信号Sは以下の式のように変形されてアンテナ部へ伝送される。
S’=1/C・Za−1・S (4)
ここで、本アンテナ装置への入力信号S、各アンテナへのウエイト乗算回路における入力信号はS’である。
まず、S’は各種回路を通る。ここで、S’は変形されて以下となる。
S”=C・S’=C・1/C・Za−1・S=Za−1・S (5)
S”はアンテナ素子に入力される信号である。
【0012】
以下は実施例1と同じく、アンテナから放射された信号S”は予めアンテナ相互インピーダンスの逆行列が掛けてあるので、空間でアンテナ間の相互インピーダンスの影響を受けることで、本来の信号Sに戻る。従って、本例でもアンテナ装置に入力された信号は相互結合の影響なく空間における電界(放射パターン)を形成することができる。
効果は全く実施例1と同様であり、さらにディジタル乗算部から見込んだアンテナ相互インピーダンス行列を求めずに、各アンテナに接続されている回路部分の伝送係数を求めるのみで良いので、アンテナ較正回路が簡易になる。
【0013】
(実施例3)
本発明の第3実施例であるアンテナシステムの構成(3)を図10に示す。
ここで、5は相互インピーダンスを補正する補正演算部で、相互インピーダンスの逆行列を変形したものである。実施例1または2に示したように基本的にアレーアンテナの相互結合をアンテナ給電部で補償することで、アンテナパターンの歪みなどは押さえられるが、さらに相互インピーダンスの逆行列を変形することで、よりアダプティブ動作に適切なアンテナパターンが得られる。この変形は全てのアンテナ給電端子へ入力した時の放射パターンがほぼ同じ形状となり、位相中心のみアレーアンテナ間隔にほぼ等しいことが望ましい。具体的には、このようになるアンテナウエイトを相互インピーダンスの逆行列を変形することで求め、その変形行列Wcをアレーアンテナの入力と信号入力の間に挿入する。この場合もこの行列演算はディジタル的にソフトウエアなどで行うことが適当である。
【0014】
(実施例4)
本発明の第4実施例であるアンテナシステムの構成(4)を図11に示す。
ここで、6は相互インピーダンスを補正する補正演算部であり、周波数の関数である。この場合は各アンテナ素子間の相互結合の周波数特性を測定などで求める。そして、この周波数の関数のまま逆行列を求める。または、これを変形して補償行列を求め、これを用いる。これにより、本アンテナ装置は周波数による放射パターンの変形も補償できる。具体例としては、周波数の関数である相互インピーダンス行列Z(f)を、離散的ポイント周波数(Z1(f1),Z2(f2),・・・,Zn(fn))に分けて固定値とし、その各周波数での逆行列を計算する(Z1−1(f1),Z2−1(f2),・・・,Zn−1(fn))。これを補間して逆行列の周波数関数Z−1(f)とする。またはさらに変形して補償行列Wc(f)を作成する。これは一例であり、周波数特性を補償するための逆行列関数または補償行列の作成方法はこれに限らない。
【0015】
(実施例5)
本発明の第5実施例であるアンテナシステムの構成(5)を図12に示す。
1はアレーアンテナを構成する各アンテナ素子、2は相互インピーダンスを補正する補正演算部、3はアレーアンテナの各入力端子である。通常スーパーゲインとするために、アンテナ間隔Lnを0.0001λ≦Ln≦0.4λ(λ:波長)とし、隣り合うアンテナで逆位相、すなわちS={1,−1,1,−1,・・・,−1}とする。
実施例1において図2を参照して説明したように、基本的にアダプティブアンテナはディジタル信号でウエイトの乗算を行っているので、所望信号Sはディジタル信号で形成される。ここで、アレーアンテナの相互結合行列Zはウエイト乗算回路から、AD/DA変換器、ダウンコンバータ(DC)、アップコンバータ(UC)、RF回路、そしてアンテナまでの全てを含んだインピーダンスZtと考える。この相互インピーダンス行列を測定するためにキャリブレーション回路を有する。
【0016】
ウエイト乗算回路からアンテナ回路を見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列、すなわち、AD/DA変換器、ダウンコンバータ、アップコンバータ、RF回路を含めたアレーアンテナの各アンテナ素子間の相互インピーダンス行列Ztは、キャリブレーション回路を備えており、この較正回路を用いて測定して判っている。測定には各アンテナの相互インピーダンスも測定しなくてはならないため、各アンテナごとにキャリブレーション回路を接続して、Zt行列の各要素をひとつひとつ順番にアンテナ数の2乗回測定していくことになる。この状態でウエイト乗算回路において、アレーアンテナの入力に相互インピーダンス行列Ztの逆行列Zt−1をかけて各アンテナの入力とする。このことを数式で表すと以下となる。
S’=Zt−1・S (1)
ここで、本アンテナ装置への入力信号はS、各アンテナへのウエイト乗算回路における入力信号はS’である。
このようにしてアンテナから放射された電波信号S’は、アンテナ近傍の空間においてアンテナ間の相互結合Zを受けて遠方へ到達する。
【数2】
このように、アンテナ装置に入力された信号は相互結合の影響なく空間における電界(放射パターン)を形成することになる。
このため、スーパーゲインアンテナとするとアンテナ同士の相互結合が消え去った状態で各アンテナに給電できるので、理想状態のスーパーゲインアンテナができることになる。
【0017】
ここで、実際のアンテナにおける例を示す。図13に示すようにダイポールアンテナが4本、0.1波長間隔で並列に並んでいる場合をモーメント法で計算した。ここで、アンテナ間相互インピーダンスはアンテナ給電点から見た値を用いている。図14が放射パターンである。相互結合を無くした後で各アンテナで隣り合うもの同士に逆位相を与えている。すなわち、S={1,−1,1,−1}である。この場合の指向性利得は4.2dBであるが、実効利得は−5.51dB(図14)となった。これは従来と全く同じアンテナ構成において、実効利得が約−9.3dBであったことを考えると、3.8dB利得が向上したことがわかる。すなわち、明らかに高い利得が得られたことになる。
この動作を具体的に実現する手法は、アンテナ信号を全てディジタル信号に変換し、ディジタル処理を行えば良い。また、ディジタル信号に変換するには、RF信号をベースバンド信号に落として行っても良い。この動作は近年のディジタル技術の進展に伴い、十分可能である。
【0018】
(実施例6)
本発明の第6実施例であるアンテナのシステム構成(6)を図15に示す。
ここで、5は相互インピーダンスを補正する補正演算部であり、周波数の関数である。この場合は各アンテナ素子間の相互結合の周波数特性を測定などで求める。そして、この周波数の関数のまま逆行列を求める、またこれを変形して補償行列を求め、これを用いる。これにより、本アンテナ装置は周波数による放射パターンの変形も補償できる。具体例としては、周波数の関数である相互インピーダンス行列Z(f)を、離散的ポイント周波数(Z1(f1),Z2(f2),・・・,Zn(fn))に分けて固定値とし、その各周波数での逆行列を計算する(Z1−1(f1),Z2−1(f2),・・・,Zn−1(fn))。これを補間して逆行列の周波数関数Z−1(f)とする。または、さらに変形して補償行列Wc(f)を作成する。これは例であり、周波数特性を補償するための逆行列関数または補償行列の作成方法はこれに限らない。
【0019】
【発明の効果】
本発明のアンテナ装置は、各アンテナの給電ウエイトを乗算する乗算回路からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を乗算回路における各アンテナの入力信号とすることにより、各アンテナの相互結合によるアンテナ放射パターンのばらつきを抑え、アダプティブ動作を正確に行うことができる。
【0020】
本発明のスーパーゲインアンテナ装置は、運用システム周波数の波長で規格化したアンテナ同士の間隔が0.4波長以下の複数のアンテナを配列して、隣り合うアンテナの位相をほぼ逆転させて動作させることで、非常に高い利得を得るスーパーゲインアンテナ装置において、各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、ここで、Sは隣り合うアンテナ同士の位相を逆転させるために、S≒{1,−1,1,−1,・・・}であり、そこで、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を各アンテナの入力信号とすることにより、これによって、各アンテナの相互結合によるアンテナ効率の低下を抑え、最大の利得を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例のアンテナシステム構成(1)を示す図。
【図2】一般のアダプティブアンテナの構成例を示す図。
【図3】実際のダイポールアンテナが2本並列に並んでいるアンテナにおける例を示す図。
【図4】アレーアンテナの1素子の振幅パターン特性を示す図。
【図5】アレーアンテナの1素子の位相パターン特性を示す図。
【図6】実際のダイポールアンテナが2本並列に並んでいるアンテナに並行2線の給電線が接続されている例を示す図。
【図7】図6の例におけるアレーアンテナの1素子の振幅パターン特性を示す図。
【図8】図6の例におけるアレーアンテナの1素子の位相パターン特性を示す図。
【図9】本発明の第2実施例のアンテナシステム構成(2)を示す図。
【図10】本発明の第3実施例のアンテナシステム構成(3)を示す図。
【図11】本発明の第4実施例のアンテナシステム構成(4)を示す図。
【図12】本発明の第5実施例のアンテナシステム構成(5)を示す図。
【図13】実際のダイポールアンテナが0.1波長間隔で4本並列に並んでいるアンテナにおける例を示す図。
【図14】図13の例におけるアンテナの放射パターン特性を示す図。
【図15】本発明の第6実施例のアンテナシステム構成(6)を示す図。
【図16】従来のアンテナシステム構成(1)を示す図。
【図17】従来のアンテナシステム構成(2)を示す図。
【図18】従来のアンテナシステム構成(2)の放射パターンを示す図。
【図19】従来のアンテナシステム構成(2)の放射パターン特性を示す図。
【符号の説明】
1・・・アンテナ素子、2、5、6・・・補正演算部、3・・・入力端子、4・・・回路群
Claims (10)
- 複数のアンテナが動作して所望のアンテナ特性を得るアンテナ装置において、
各アンテナの給電ウエイトを乗算する乗算回路からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を乗算回路における各アンテナの入力信号とする補正演算部を備えたことを特徴とするアンテナ装置。 - 複数のアンテナが動作して所望のアンテナ特性を得るアンテナ装置において、
各アンテナ素子の給電点からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、ウエイトを乗算する乗算回路から各アンテナ給電点までの伝送係数行列をC、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけ、さらにCで割った信号行列S’(=1/C・Z−1・S)を各アンテナの入力信号とする補正演算部を備えたことを特徴とするアンテナ装置。 - 請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、
補正演算部は、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を変形し、各所望信号Snの入力に対応するアンテナ放射パターンPnが全てほぼ同じビーム幅またはパターン形状、または同じ位相パターンとなるようしたことを特徴とするアンテナ装置。 - 請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、
補正演算部は、周波数の関数として相互インピーダンス行列Z(f)を求め、その相互インピーダンス行列関数Z(f)の逆行列関数Z−1(f)を計算し、これを用いる、またはこれを変形して用いることを特徴とするアンテナ装置。 - 複数のアンテナが動作して所望のアンテナ特性を得るアンテナ装置における、アンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法において、
各アンテナの給電ウエイトを乗算する乗算回路からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を乗算回路における各アンテナの入力信号とすることを特徴とするアンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法。 - 複数のアンテナが動作して所望のアンテナ特性を得るアンテナ装置における、アンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法において、
各アンテナ素子の給電点からアンテナを見込んだ時の各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、ウエイトを乗算する乗算回路から各アンテナ給電点までの伝送係数行列をC、所望入力信号行列をSとして、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけ、さらにCで割った信号行列S’(=1/C・Z−1・S)を各アンテナの入力信号とすることを特徴とするアンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法。 - 請求項5又は6に記載のアンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法において、
各アンテナの入力信号を相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を変形し、各所望信号Snの入力に対応するアンテナ放射パターンPnが全てほぼ同じビーム幅またはパターン形状、または同じ位相パターンとなるようにすることを特徴とするアンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法。 - 請求項5又は6に記載のアンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法において、
周波数の関数として相互インピーダンス行列Z(f)を求め、その相互インピーダンス行列関数Z(f)の逆行列関数Z−1(f)を計算し、これを用いる、またはこれを変形して用いることを特徴とするアンテナ間結合によるパターン歪みを補正する較正方法。 - 運用システム周波数の波長で規格化したアンテナ同士の間隔が0.4波長以下の複数のアンテナを配列して、隣り合うアンテナの位相をほぼ逆転させて動作させることで、非常に高い利得を得るスーパーゲインアンテナ装置において、
各アンテナ間の相互インピーダンス行列をZ、所望入力信号行列をSとして、ここで、Sは隣り合うアンテナ同士の位相を逆転させるために、S≒{1,−1,1,−1,・・・}であり、そこで、相互インピーダンス行列Zの逆行列Z−1を計算し、所望入力信号行列Sに、Z−1をかけた信号行列S’(=Z−1・S)を各アンテナの入力信号とすることを特徴とするスーパーゲインアンテナ装置。 - 請求項9に記載のスーパーゲインアンテナ装置において、
周波数の関数として相互インピーダンス行列Z(f)を求め、その相互インピーダンス行列関数Z(f)の逆行列関数Z−1(f)を計算し、この関数を用いることを特徴とするスーパーゲインアンテナ装置。
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