JP2004103421A - ナトリウム−硫黄電池の正極構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】正極自体の抵抗を抑制し、充電に際して正極における導電体の内部抵抗を抑え、充放電効率を高く維持して、エネルギー密度も高めることができるナトリウム−硫黄電池の正極構造を提供すること。
【解決手段】ナトリウムイオンを透過する固体電解質壁2が立設され、該固体電解質壁面に沿わせて立設され、且つ該壁から所定の厚み幅を有する導電体11に、硫黄を含む正極活物質が含浸されているナトリウム−硫黄電池の正極構造において、上記導電体には上記固体電解質壁と接する側から厚み幅方向に向けて孔14が形成され、該孔は上記固体電解質壁から離れるに従って上向きに傾斜させて形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】ナトリウムイオンを透過する固体電解質壁2が立設され、該固体電解質壁面に沿わせて立設され、且つ該壁から所定の厚み幅を有する導電体11に、硫黄を含む正極活物質が含浸されているナトリウム−硫黄電池の正極構造において、上記導電体には上記固体電解質壁と接する側から厚み幅方向に向けて孔14が形成され、該孔は上記固体電解質壁から離れるに従って上向きに傾斜させて形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナトリウム−硫黄電池の正極構造に関するものであり、より詳細には、二次電池として電力貯蔵、非常用電源、無停電電源などに利用されるナトリウム−硫黄電池の正極構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、昼夜間電力平準化または夜間電力の利用を目的に、また非常用ないし無停電用としての、活物質利用率と充放電効率が高いナトリウム−硫黄電池の開発が盛んに行われている。ナトリウム−硫黄電池は、一般に、筒状(チューブ或いは深掘コップ)に形成した固体電解質管内に、負極活物質が収容され、その外側に陽極活物質が配される。負極活物質はナトリウムを含み、固体電解質管はナトリウムイオン等を透過させるβ−アルミナ等からなる。陽極活物質には硫黄が使用され、硫黄は導電性を有する陽極用導電体に含浸されて分散収容されている。また陽極用導電体は、固体電解質管を使用する場合、断面が略ドーナツ形状の中空体に成形されるか或いは複数のパーツから組み合わせられ、この導電体はグラファイト繊維やカーボン繊維などからなる。
【0003】
ナトリウム−硫黄電池の正極構造において、放電時にはナトリウムと硫黄が反応して正極室内に多硫化ナトリウムを生成し、充電時には正極室内の多硫化ナトリウムから可逆的にナトリウム及び硫黄が生成するか、或いは硫黄リッチな多硫化ナトリウムが多くなる。
即ち、負極活物質であるナトリウム(Na)がナトリウムイオン(Na+)と電子(e−)とに分かれ、ナトリウムイオン(Na+)は固体電解質壁を透過して正極活物質中に侵入し、電子(e−)は負極集電体等から外部回路に流れる。正極における放電反応は、正極活物質中に侵入したナトリウムイオン(Na+)が硫黄(S)と反応して、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を生成する。
ナトリウム−硫黄電池の充電時には、放電反応と逆の反応が起こり、ナトリウム(Na)および硫黄(S)が生成する。通常は、多硫化ナトリウム(Na2Sx)の一部が残留する程度まで充電する。これは、硫黄(S)よりも多硫化ナトリウム(Na2Sx)の固有抵抗が低いために、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を残存させておけば正極活物質の抵抗の上昇を抑えることができるからである。
【0004】
ところで、充電時において所定の厚みを有する導電体中で生成したナトリウムイオンは固体電解質壁側に移動するため、導電体内において固体電解質壁の近傍で反応が起こり易くなり、結果として、その近傍が硫黄リッチに成り易くなる。硫黄リッチな多硫化ナトリウムは導電率が低下するため内部抵抗の増加を引き起こし、更なる外側の導電体内に生成したナトリウムイオンの移動を妨げ、その結果、充放電効率の低下を招くという問題がある。
【0005】
そこで、このような充放電率の低下を防止するため導電体の改良が提案されている。例えば、カーボン繊維織布が積層されるとともに、ニードルパンチが施されて形成され、カーボン繊維織布の繊維径が固体電解質壁から外側に向かうに従って次第に細くなるように構成した導電体等を使用したナトリウム−硫黄電池が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、導電体としてのカーボン繊維織布を、厚さの異なる複数の織布で構成し、厚さの厚い織布を外側に組み込んだもの、更に、複数のカーボン繊維織布の厚さ方向に配向する繊維の割合を、外側ほど高くなるように設定したものも提案されている。
【0006】
また、耐硫黄及び多硫化ナトリウムに優れ、電子伝導性の低い物質層を固体電解質と電子導電体の間に接着して配置されたものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
これらの従来の導電体を使用したナトリウム−硫黄電池では、その導電体の製造も煩雑であり、また正極自体の抵抗増加の抑制をするものではなく、充放電効率を改善するものではない。また活物質利用率が制限されるので、エネルギー密度を高めることもできない。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−31451号公報(特許請求の範囲の請求項1)
【特許文献2】
特開平9−35741号公報(第1頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされものであり、正極自体の抵抗を抑制し、充電に際して正極における導電体の内部抵抗を抑え、充放電効率を高く維持して、エネルギー密度も高めることができるナトリウム−硫黄電池の正極構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、温度300℃乃至350℃における多硫化ナトリウムにあって、ナトリウム含有率に対して硫黄リッチな場合と硫黄プアーな場合ではその密度が相違していることに着目し、充電処理が進むと同時に、ナトリウムリッチで硫黄プアーな導電体の外側付近に存在する多硫化ナトリウムが、比重差を利用すれば導電体の内側、即ち固体電解質壁側に移動しうることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
即ち、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造は、以下の構成或いは手段からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造は、最小限の前提として、ナトリウムイオンを透過する固体電解質壁が立設されていること、固体電解質壁に沿って立設される所定の厚み幅を有した導電体に硫黄を含浸した正極活物質からなるものである。
【0011】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造あっては、例えば、負極活物質と正極活物質とをナトリウムを選択的に透過する筒状の固体電解質壁で仕切る構造(インサイドアウト構造)を採用することができる。固体電解質管等の内側に負極活物質であるナトリウムを収納し、固体電解質管の外側に導電体と正極活物質である硫黄成分を配置しても良く、またこれに限らず、正極活物質及び導電体を固体電解質管に収納し、負極活物質をその管の外側に配した構造であっても良い。更に、ナトリウム−硫黄電池の構造はインサイドアウト構造に限るものではなく、例えば、電解漕の内部に平板状の固体電解質壁を配置し、この固体電解質壁を介して正極活物質と負極活物質とが対向して配置された構造であっても良い。また、ナトリウム−硫黄電池の正極構造の形態は円筒形に限られず、角形やその他の形状であっても良い。
【0012】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造は、上記導電体に上記固体電解質壁側から厚み方向に向けて孔が形成され、該孔は上記固体電解質壁から離れるに従って上向きに傾斜させて形成されていることを特徴とする。
ここで、孔とは内側から外側に導電体を貫通した孔または貫通していない穴を意味し、上向きとは立設される固体電解質壁側と接する側の導電体内側から外側に向けて孔が上向きに傾斜して形成されていることであり、かかる角度は少なくとも水平方向以上の傾きであり、好ましくは5°以上、特に好ましくは10°乃至80°の範囲である。
また、導電体の厚み幅は少なくとも1mm以上であることが望ましく、また、導電体の厚み幅は、40mm以下を通常、上限としている。
尚、上記孔を施す工程を陽極用導電材のみの場合と硫黄含浸後の場合の両方可能とすることができ適切な製造工程を設計することができる。
【0013】
充電時、特にその末期に絶縁性の硫黄ないし導電率の低い多硫化ナトリウムが固体電解質壁の近傍に析出することにより内部抵抗が増加し、このため活物質利用率及び充放電効率が小さくなるおそれがある。しかし、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造では、導電体に形成した孔内において、ナトリウム比率が大きく且つ比重の大きい多硫化ナトリウムが比重差から傾斜孔に沿って固体電解質壁側に移行し、固体電解質壁側に生成した硫黄リッチな多硫化ナトリウムが比重の大きい多硫化ナトリウムと比重差対流を起こし、固体電解質壁側で導電率の低い(電気抵抗の高い)ナトリウム比率の小さい多硫化ナトリウムないし硫黄の濃度が高くならずに、反応が連続的に行なえる。このため、充電末期においても内部抵抗が増加することなく、活物質利用率を広く確保でき、充放電効率も高くなる。結果として高エネルギー密度の電池が可能となる。
【0014】
また、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造では、インサイドアウト構造を採用して固体電解質管が使用される場合、上記導電体に形成される上記孔は固体電解質管の周囲に放射状に複数形成させることが望ましく、このような場合には、孔内での拡散が良くなるとともに、円筒状の固体電解質壁から同一距離の陽極用導電体内の活物質反応が均一化され電流密度のばらつきが少なくなる。このため、活物質の利用率と充放電効率が更に向上する。
更に、繊維状導電体に孔を施すということは繊維をカット或いは削除することになるので、孔を施さない場合に比べて固体電解質板側の導電材の密度は低くなる。これは、固体電解質板側の導電材中の電子導電性を低下させることになり、充電時の固体電解質板側の反応を緩和する作用を有し、結果として内部抵抗の低減を可能にするものである。
【0015】
上記導電体にあってはまた、最終的に断面がドーナツ形状の中空体で形成され、所定の幅厚みを有する。上記導電体は一体成形しなくても良く、断面が略扇形状の導電材部材を組み合わせて形成することもできる。この場合、固体電解質壁が当接する断面が略扇形状の導電材の内壁側から上記孔を容易に形成することができる。また、略扇形状の導電材を成形するにあったても、フラットな板状に形成した導電材に、長尺方向、及び/又は幅方向に切れ込み等の溝条部をカッター等で形成し、その板状の導電材を折り曲げて、孔が形成された断面が略扇形状の柱状体とし、これを組み合わせて中空体の導電体を形成しても良い。
尚、このような上記導電体は、カーボン化処理したフェルトとすると、加工上容易に達成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の好ましい実施の形態を詳述する。尚、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
図1は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の縦断面図である。図2は、図1のナトリウム−硫黄電池に使用される導電体の組み立て斜視図である。図3は、図2に示す導電体に形成される孔の断面を示すための導電部材の拡大断面図である。図4は、組み立て後における導電体の孔の位置が示された図2に示す導電体の上面図である。図5は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の導電体を図2に示す導電体と異なる工程で製造するための導電部材の斜視図である。図6は、組み立て後における導電体の孔の位置が示された図5からの導電体の上面図である。
【0017】
図1に示すように本実施の形態に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造1は、ナトリウムイオンを選択的に透過させる筒状の固体電解質壁からなる固体電解質管2が中心に立設してある。固体電解質管2内には、負極活物質4を収容した負極管5が設けられている。負極管5の上部開口にはフランジ6が形成され、フランジ6上面には天面に陰極端子8を備えた陰極蓋7が液密に装着されて上記開口が封しされている。尚、負極管5の最底部に負極活物質4が移動できるように孔が形成されている。
フランジ6下面には絶縁リング9が固着され、絶縁リング9の下面にはリング状の蓋10が取り付けられ、蓋10は固体電解質管2の外側に配される導電体11の上面に設けられる。導電体11は、正極活物質が含浸されており、固体電解質管2と正極集電体として機能する円筒容器12との間に収容される。
【0018】
負極活物質4にはナトリウムが含まれ、導電体11に含浸される正極活物質には硫黄、多硫化ナトリウム等が挙げられる。固体電解質管2は有底の柱状管であり、その材質はナトリウムイオンに対して伝導性を有するセラミックスまたはガラス等からなるもの、例えばβ−アルミナ(Na2O・11Al2O3)や、安定化剤としてMgO、Li2O等が添加されたβ”−アルミナ(3Na2O・16Al2O3)等を好ましく用いることができる。正極集電体である円筒容器12の材質は例えばステンレス、Ni合金等が用いられる。
【0019】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造における導電体11は、炭素繊維からなり、炭素繊維は、PAN系炭素繊維、PVA系炭素繊維、PVC系炭素繊維、石油ピッチ系炭素繊維、石炭ピッチ系炭素繊維若しくは気相合成系炭素繊維のいずれのものであっても良く、また、黒鉛系炭素繊維であっても良い。特に、黒鉛系繊維を用いた場合には、ナトリウム−硫黄電池の内部抵抗を著しく低減することが可能となる。
【0020】
これらは、原料繊維を500乃至1500℃、好ましくは1000℃前後で焼成することにより、カーボン化処理して所望の導電部材、或いは導電体そのものに成形される。
従って、導電体11は、マット状、断面が扇状の柱尺状物、或いは中空体に上記繊維を焼成或いはカーボン化処理して形成された導電材を、そのまま、或いは組み合わせてナトリウム−硫黄電池1に使用される。導電体11は、そして所定幅の厚みを持たせて、上記固体電解質管2の周囲に配される。尚、導電体11の厚みは1mm乃至40mmの範囲に形成することが望ましい。所定幅を確保しないと、電池としてエネルギー量が十分に得られないおそれがある。
【0021】
本実施態様におけるナトリウム−硫黄電池1の導電体11にあっては、中空体を一旦、4分割して図2に示すように断面が扇形状の柱状物からなる導電部材13を再び組み合わせて形成される。また、図3に示すように、導電部材13を組み合わせる前に、固体電解質管2が当接する導電部材13の内壁面から複数の孔14が形成される。複数の孔14の全ては、導電体11を電池1内で立設したときに、内壁面から厚み方向の外壁面に向けて上向きに傾斜して設けられる。孔14の傾斜は水平方向に対して上向きであれば良く、例えば、水平方向に対して5°以上、特に10乃至80°の範囲であることが望ましい。
孔14の傾斜角度が5°未満では、ナトリウムリッチで硫黄プアーな多硫化ナトリウムが孔14を介して移動しないおそれがあり、傾斜角度が80°を超えれば、孔14の形成が難しくなる。
【0022】
上述のナトリウム−硫黄電池1は、例えば次のように製造される。まず、図2乃至図4に示すように、導電材21を組み合わせた導電体11は、断面が略ドーナツ状の中空体として構成され、固体電解質管2の周囲に放射状に孔14が形成される。次に、得られた導電体11を正極集電体である円筒容器12に挿入し、更に導電体11の中空部に固体電解質管2を挿入し、蓋10、絶縁リング9を取り付け、保護管3を挿入し、更に負極管5を挿入する。負極活物質2であるナトリウムを充填し、更に、電極蓋7で負極活物質4を密封することにより、ナトリウム−硫黄電池1を製造する。
【0023】
このように構成されるナトリウム−硫黄電池の正極構造1の負極における放電反応は、負極活物質4であるナトリウム(Na)がナトリウムイオン(Na+)と電子(e−)とに分かれ、ナトリウムイオン(Na+)は固体電解質2内を透過して正極活物質中の導電体11に侵入する。電子(e−)は負極集電体である陰極端子7を介して外部回路に流れる。正極における放電反応において、正極活物質3中に侵入したナトリウムイオン(Na+)が硫黄(S)と反応して、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を生成する。
【0024】
一方、ナトリウム−硫黄電池の正極構造1の充電時には、放電反応と逆の反応が起こり、ナトリウム(Na)および硫黄(S)が生成する。通常は、多硫化ナトリウム(N2Sx)の一部が残留する程度まで充電する。硫黄(S)よりも多硫化ナトリウム(Na2Sx)の固有抵抗が低いために、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を残存させておけば正極活物質の抵抗の上昇を抑えることが可能となる。
【0025】
充電時における多硫化ナトリウム(Na2Sx)は硫黄リッチな状態の多硫化ナトリウムとなり、特に、導電体11の固体電解質管2の近傍で硫黄リッチな多硫化ナトリウムが多くなり、導電体11の円筒容器12の近傍では未だナトリウムリッチな、或いは硫黄成分がプアーな多硫化ナトリウムが多く存在している。
下記表1に示すごとく、通常、ナトリウム−硫黄電池の充電時、即ち温度300乃至350℃に多硫化ナトリウムの導電率(抵抗値の逆数)は、硫黄成分がリッチな多硫化ナトリウムほど小さい。例えば、温度340℃における硫黄成分のリッチな多硫化ナトリウム(Na2S5.1)は、硫黄成分のプアーな多硫化ナトリウム(Na2S3.0)に比べて、1/2強であり、これは極めて高い抵抗値を示し、導電体11の内側に存在する状態が多くなる。このため、固体電解質管2の近傍の硫黄成分リッチな多硫化ナトリウムが更に生成すれば、内部抵抗の増加を招く。
【0026】
【表1】
【0027】
しかしながら、下記表2に示すようにナトリウムリッチな多硫化ナトリウムに対して、硫黄リッチな多硫化ナトリウムは密度が小さいため、また、下記表3に示すように表面張力も極めて低下するため、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造にあっては、導電体11の複数の孔14を介して、ナトリウムリッチな多硫化ナトリウムが密度の低下した硫黄リッチな多硫化ナトリウムに換わり固体電解質管2側に移行してくる。このため、密度差対流による多硫化ナトリウムの変換が厚み方向に延びる孔14内で起こり易くなっている。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
従って、ナトリウム−硫黄電池1では、傾斜孔14内において比重差により、比重の大きいナトリウムリッチな多硫化ナトリウムが固体電解質管2側に移行しやすくなり、固体電解質管2側で電気抵抗の高い(又は導電率の低い)硫黄リッチな多硫化ナトリウムの濃度が高くなることなく、反応が連続的に起きるため、充電末期においても内部抵抗が増加することなく、活物質利用率を広く確保でき、充放電効率も高くなる。結果として高エネルギー密度の電池としての機能を十分に満たすことができる。
【0031】
図5は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の導電体における上記導電体11を別の工程から製造するための導電部材の斜視図である。導電部材21はマット状或いは平坦な厚みのあるカーボンフェルトとして形成される。導電部材21は長尺方向に沿って片面に複数の切れ込み22が形成され、かかる切れ込み22は導電体21を湾曲させるために形成されるものであり、平坦な導電材21を断面が略扇状となる図2で示した導電部材13と略同様な形状に加工できるようにしている。
また導電材21には、幅方向に所定間隔をおいて切れ込み23が形成され、かかる切れ込み23は切れ込み22と異なり、導電材21面に垂直に切れ込まれるのではなく、垂直位置から少し傾斜させて切れ込まれる。
【0032】
このような導電部材21を切れ込み22を内側にして折り曲げ、これらの導電材21を組み合わせて、図2に示したと同様な中空体を形成して導電体24とする。かかる導電体24は、図6に示すように切れ込み23が半径方向の全域に形成される孔23’として機能し、かかる孔23’も上向き傾斜している。
このため、このように形成される導電体24も上述した導電体13と同様な機能をするため、かかる導電体24をナトリウム−硫黄電池に利用しても、上述したと同様な作用効果を奏するものである。
【0033】
上記ナトリウム−硫黄電池1あっては、固体電解質管を用いたインサイドアウト構造を採用して、固体電解質管2の内側に負極活物質4であるナトリウムを収納し、固体電解質管2の外側に導電体11と正極活物質3である硫黄成分を配置しているが、これに限られず、正極活物質及び導電助材を固体電解質管に収納したものであっても良い。更に、ナトリウム−硫黄電池の構造はインサイドアウト構造に限るものではなく、例えば、電解漕の内部に平板状の固体電解質を配置し、この固体電解質を介して正極活物質と負極活物質とが対向して配置された構造であっても良い。また、ナトリウム−硫黄電池の正極構造の形態は円筒形に限られず、角形やその他の形状であっても良い。
【0034】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係るナトリウム−硫黄電池によれば、立設された所定の厚み幅を有する導電体には、固体電解質壁と接する側から厚み幅方向に向けて孔が形成され、該孔は上記固体電解質壁から離れるに従って上向きに傾斜させて形成されているので、正極自体の抵抗を抑制し、充電に際して正極における導電体の内部抵抗を抑え、充放電効率を高く維持して、エネルギー密度も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の縦断面図である。
【図2】図2は、図1のナトリウム−硫黄電池の正極構造に使用される導電体の組み立て斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す導電体に形成される孔の断面を示すための導電部材の拡大断面図である。
【図4】図4は、組み立て後における導電体の孔の位置が示された図2に示す導電体の上面図である。
【図5】図5は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の導電体を図2に示す導電体と異なる工程で製造するための導電部材の斜視図である。
【図6】図6は、組み立て後における導電体の孔の位置が示された図5からの導電体の上面図である。
【符号の説明】
1 ナトリウム−硫黄電池の正極構造
2 固体電解質管
4 負極活物質
8 負極端子
11 導電体
12 円筒容器(正極集電体)
13 導電部材
14 孔
21 導電部材
23 切れ込み
23’ 孔
24 導電体
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナトリウム−硫黄電池の正極構造に関するものであり、より詳細には、二次電池として電力貯蔵、非常用電源、無停電電源などに利用されるナトリウム−硫黄電池の正極構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、昼夜間電力平準化または夜間電力の利用を目的に、また非常用ないし無停電用としての、活物質利用率と充放電効率が高いナトリウム−硫黄電池の開発が盛んに行われている。ナトリウム−硫黄電池は、一般に、筒状(チューブ或いは深掘コップ)に形成した固体電解質管内に、負極活物質が収容され、その外側に陽極活物質が配される。負極活物質はナトリウムを含み、固体電解質管はナトリウムイオン等を透過させるβ−アルミナ等からなる。陽極活物質には硫黄が使用され、硫黄は導電性を有する陽極用導電体に含浸されて分散収容されている。また陽極用導電体は、固体電解質管を使用する場合、断面が略ドーナツ形状の中空体に成形されるか或いは複数のパーツから組み合わせられ、この導電体はグラファイト繊維やカーボン繊維などからなる。
【0003】
ナトリウム−硫黄電池の正極構造において、放電時にはナトリウムと硫黄が反応して正極室内に多硫化ナトリウムを生成し、充電時には正極室内の多硫化ナトリウムから可逆的にナトリウム及び硫黄が生成するか、或いは硫黄リッチな多硫化ナトリウムが多くなる。
即ち、負極活物質であるナトリウム(Na)がナトリウムイオン(Na+)と電子(e−)とに分かれ、ナトリウムイオン(Na+)は固体電解質壁を透過して正極活物質中に侵入し、電子(e−)は負極集電体等から外部回路に流れる。正極における放電反応は、正極活物質中に侵入したナトリウムイオン(Na+)が硫黄(S)と反応して、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を生成する。
ナトリウム−硫黄電池の充電時には、放電反応と逆の反応が起こり、ナトリウム(Na)および硫黄(S)が生成する。通常は、多硫化ナトリウム(Na2Sx)の一部が残留する程度まで充電する。これは、硫黄(S)よりも多硫化ナトリウム(Na2Sx)の固有抵抗が低いために、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を残存させておけば正極活物質の抵抗の上昇を抑えることができるからである。
【0004】
ところで、充電時において所定の厚みを有する導電体中で生成したナトリウムイオンは固体電解質壁側に移動するため、導電体内において固体電解質壁の近傍で反応が起こり易くなり、結果として、その近傍が硫黄リッチに成り易くなる。硫黄リッチな多硫化ナトリウムは導電率が低下するため内部抵抗の増加を引き起こし、更なる外側の導電体内に生成したナトリウムイオンの移動を妨げ、その結果、充放電効率の低下を招くという問題がある。
【0005】
そこで、このような充放電率の低下を防止するため導電体の改良が提案されている。例えば、カーボン繊維織布が積層されるとともに、ニードルパンチが施されて形成され、カーボン繊維織布の繊維径が固体電解質壁から外側に向かうに従って次第に細くなるように構成した導電体等を使用したナトリウム−硫黄電池が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、導電体としてのカーボン繊維織布を、厚さの異なる複数の織布で構成し、厚さの厚い織布を外側に組み込んだもの、更に、複数のカーボン繊維織布の厚さ方向に配向する繊維の割合を、外側ほど高くなるように設定したものも提案されている。
【0006】
また、耐硫黄及び多硫化ナトリウムに優れ、電子伝導性の低い物質層を固体電解質と電子導電体の間に接着して配置されたものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
これらの従来の導電体を使用したナトリウム−硫黄電池では、その導電体の製造も煩雑であり、また正極自体の抵抗増加の抑制をするものではなく、充放電効率を改善するものではない。また活物質利用率が制限されるので、エネルギー密度を高めることもできない。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−31451号公報(特許請求の範囲の請求項1)
【特許文献2】
特開平9−35741号公報(第1頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされものであり、正極自体の抵抗を抑制し、充電に際して正極における導電体の内部抵抗を抑え、充放電効率を高く維持して、エネルギー密度も高めることができるナトリウム−硫黄電池の正極構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、温度300℃乃至350℃における多硫化ナトリウムにあって、ナトリウム含有率に対して硫黄リッチな場合と硫黄プアーな場合ではその密度が相違していることに着目し、充電処理が進むと同時に、ナトリウムリッチで硫黄プアーな導電体の外側付近に存在する多硫化ナトリウムが、比重差を利用すれば導電体の内側、即ち固体電解質壁側に移動しうることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
即ち、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造は、以下の構成或いは手段からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造は、最小限の前提として、ナトリウムイオンを透過する固体電解質壁が立設されていること、固体電解質壁に沿って立設される所定の厚み幅を有した導電体に硫黄を含浸した正極活物質からなるものである。
【0011】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造あっては、例えば、負極活物質と正極活物質とをナトリウムを選択的に透過する筒状の固体電解質壁で仕切る構造(インサイドアウト構造)を採用することができる。固体電解質管等の内側に負極活物質であるナトリウムを収納し、固体電解質管の外側に導電体と正極活物質である硫黄成分を配置しても良く、またこれに限らず、正極活物質及び導電体を固体電解質管に収納し、負極活物質をその管の外側に配した構造であっても良い。更に、ナトリウム−硫黄電池の構造はインサイドアウト構造に限るものではなく、例えば、電解漕の内部に平板状の固体電解質壁を配置し、この固体電解質壁を介して正極活物質と負極活物質とが対向して配置された構造であっても良い。また、ナトリウム−硫黄電池の正極構造の形態は円筒形に限られず、角形やその他の形状であっても良い。
【0012】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造は、上記導電体に上記固体電解質壁側から厚み方向に向けて孔が形成され、該孔は上記固体電解質壁から離れるに従って上向きに傾斜させて形成されていることを特徴とする。
ここで、孔とは内側から外側に導電体を貫通した孔または貫通していない穴を意味し、上向きとは立設される固体電解質壁側と接する側の導電体内側から外側に向けて孔が上向きに傾斜して形成されていることであり、かかる角度は少なくとも水平方向以上の傾きであり、好ましくは5°以上、特に好ましくは10°乃至80°の範囲である。
また、導電体の厚み幅は少なくとも1mm以上であることが望ましく、また、導電体の厚み幅は、40mm以下を通常、上限としている。
尚、上記孔を施す工程を陽極用導電材のみの場合と硫黄含浸後の場合の両方可能とすることができ適切な製造工程を設計することができる。
【0013】
充電時、特にその末期に絶縁性の硫黄ないし導電率の低い多硫化ナトリウムが固体電解質壁の近傍に析出することにより内部抵抗が増加し、このため活物質利用率及び充放電効率が小さくなるおそれがある。しかし、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造では、導電体に形成した孔内において、ナトリウム比率が大きく且つ比重の大きい多硫化ナトリウムが比重差から傾斜孔に沿って固体電解質壁側に移行し、固体電解質壁側に生成した硫黄リッチな多硫化ナトリウムが比重の大きい多硫化ナトリウムと比重差対流を起こし、固体電解質壁側で導電率の低い(電気抵抗の高い)ナトリウム比率の小さい多硫化ナトリウムないし硫黄の濃度が高くならずに、反応が連続的に行なえる。このため、充電末期においても内部抵抗が増加することなく、活物質利用率を広く確保でき、充放電効率も高くなる。結果として高エネルギー密度の電池が可能となる。
【0014】
また、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造では、インサイドアウト構造を採用して固体電解質管が使用される場合、上記導電体に形成される上記孔は固体電解質管の周囲に放射状に複数形成させることが望ましく、このような場合には、孔内での拡散が良くなるとともに、円筒状の固体電解質壁から同一距離の陽極用導電体内の活物質反応が均一化され電流密度のばらつきが少なくなる。このため、活物質の利用率と充放電効率が更に向上する。
更に、繊維状導電体に孔を施すということは繊維をカット或いは削除することになるので、孔を施さない場合に比べて固体電解質板側の導電材の密度は低くなる。これは、固体電解質板側の導電材中の電子導電性を低下させることになり、充電時の固体電解質板側の反応を緩和する作用を有し、結果として内部抵抗の低減を可能にするものである。
【0015】
上記導電体にあってはまた、最終的に断面がドーナツ形状の中空体で形成され、所定の幅厚みを有する。上記導電体は一体成形しなくても良く、断面が略扇形状の導電材部材を組み合わせて形成することもできる。この場合、固体電解質壁が当接する断面が略扇形状の導電材の内壁側から上記孔を容易に形成することができる。また、略扇形状の導電材を成形するにあったても、フラットな板状に形成した導電材に、長尺方向、及び/又は幅方向に切れ込み等の溝条部をカッター等で形成し、その板状の導電材を折り曲げて、孔が形成された断面が略扇形状の柱状体とし、これを組み合わせて中空体の導電体を形成しても良い。
尚、このような上記導電体は、カーボン化処理したフェルトとすると、加工上容易に達成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の好ましい実施の形態を詳述する。尚、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
図1は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の縦断面図である。図2は、図1のナトリウム−硫黄電池に使用される導電体の組み立て斜視図である。図3は、図2に示す導電体に形成される孔の断面を示すための導電部材の拡大断面図である。図4は、組み立て後における導電体の孔の位置が示された図2に示す導電体の上面図である。図5は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の導電体を図2に示す導電体と異なる工程で製造するための導電部材の斜視図である。図6は、組み立て後における導電体の孔の位置が示された図5からの導電体の上面図である。
【0017】
図1に示すように本実施の形態に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造1は、ナトリウムイオンを選択的に透過させる筒状の固体電解質壁からなる固体電解質管2が中心に立設してある。固体電解質管2内には、負極活物質4を収容した負極管5が設けられている。負極管5の上部開口にはフランジ6が形成され、フランジ6上面には天面に陰極端子8を備えた陰極蓋7が液密に装着されて上記開口が封しされている。尚、負極管5の最底部に負極活物質4が移動できるように孔が形成されている。
フランジ6下面には絶縁リング9が固着され、絶縁リング9の下面にはリング状の蓋10が取り付けられ、蓋10は固体電解質管2の外側に配される導電体11の上面に設けられる。導電体11は、正極活物質が含浸されており、固体電解質管2と正極集電体として機能する円筒容器12との間に収容される。
【0018】
負極活物質4にはナトリウムが含まれ、導電体11に含浸される正極活物質には硫黄、多硫化ナトリウム等が挙げられる。固体電解質管2は有底の柱状管であり、その材質はナトリウムイオンに対して伝導性を有するセラミックスまたはガラス等からなるもの、例えばβ−アルミナ(Na2O・11Al2O3)や、安定化剤としてMgO、Li2O等が添加されたβ”−アルミナ(3Na2O・16Al2O3)等を好ましく用いることができる。正極集電体である円筒容器12の材質は例えばステンレス、Ni合金等が用いられる。
【0019】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造における導電体11は、炭素繊維からなり、炭素繊維は、PAN系炭素繊維、PVA系炭素繊維、PVC系炭素繊維、石油ピッチ系炭素繊維、石炭ピッチ系炭素繊維若しくは気相合成系炭素繊維のいずれのものであっても良く、また、黒鉛系炭素繊維であっても良い。特に、黒鉛系繊維を用いた場合には、ナトリウム−硫黄電池の内部抵抗を著しく低減することが可能となる。
【0020】
これらは、原料繊維を500乃至1500℃、好ましくは1000℃前後で焼成することにより、カーボン化処理して所望の導電部材、或いは導電体そのものに成形される。
従って、導電体11は、マット状、断面が扇状の柱尺状物、或いは中空体に上記繊維を焼成或いはカーボン化処理して形成された導電材を、そのまま、或いは組み合わせてナトリウム−硫黄電池1に使用される。導電体11は、そして所定幅の厚みを持たせて、上記固体電解質管2の周囲に配される。尚、導電体11の厚みは1mm乃至40mmの範囲に形成することが望ましい。所定幅を確保しないと、電池としてエネルギー量が十分に得られないおそれがある。
【0021】
本実施態様におけるナトリウム−硫黄電池1の導電体11にあっては、中空体を一旦、4分割して図2に示すように断面が扇形状の柱状物からなる導電部材13を再び組み合わせて形成される。また、図3に示すように、導電部材13を組み合わせる前に、固体電解質管2が当接する導電部材13の内壁面から複数の孔14が形成される。複数の孔14の全ては、導電体11を電池1内で立設したときに、内壁面から厚み方向の外壁面に向けて上向きに傾斜して設けられる。孔14の傾斜は水平方向に対して上向きであれば良く、例えば、水平方向に対して5°以上、特に10乃至80°の範囲であることが望ましい。
孔14の傾斜角度が5°未満では、ナトリウムリッチで硫黄プアーな多硫化ナトリウムが孔14を介して移動しないおそれがあり、傾斜角度が80°を超えれば、孔14の形成が難しくなる。
【0022】
上述のナトリウム−硫黄電池1は、例えば次のように製造される。まず、図2乃至図4に示すように、導電材21を組み合わせた導電体11は、断面が略ドーナツ状の中空体として構成され、固体電解質管2の周囲に放射状に孔14が形成される。次に、得られた導電体11を正極集電体である円筒容器12に挿入し、更に導電体11の中空部に固体電解質管2を挿入し、蓋10、絶縁リング9を取り付け、保護管3を挿入し、更に負極管5を挿入する。負極活物質2であるナトリウムを充填し、更に、電極蓋7で負極活物質4を密封することにより、ナトリウム−硫黄電池1を製造する。
【0023】
このように構成されるナトリウム−硫黄電池の正極構造1の負極における放電反応は、負極活物質4であるナトリウム(Na)がナトリウムイオン(Na+)と電子(e−)とに分かれ、ナトリウムイオン(Na+)は固体電解質2内を透過して正極活物質中の導電体11に侵入する。電子(e−)は負極集電体である陰極端子7を介して外部回路に流れる。正極における放電反応において、正極活物質3中に侵入したナトリウムイオン(Na+)が硫黄(S)と反応して、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を生成する。
【0024】
一方、ナトリウム−硫黄電池の正極構造1の充電時には、放電反応と逆の反応が起こり、ナトリウム(Na)および硫黄(S)が生成する。通常は、多硫化ナトリウム(N2Sx)の一部が残留する程度まで充電する。硫黄(S)よりも多硫化ナトリウム(Na2Sx)の固有抵抗が低いために、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を残存させておけば正極活物質の抵抗の上昇を抑えることが可能となる。
【0025】
充電時における多硫化ナトリウム(Na2Sx)は硫黄リッチな状態の多硫化ナトリウムとなり、特に、導電体11の固体電解質管2の近傍で硫黄リッチな多硫化ナトリウムが多くなり、導電体11の円筒容器12の近傍では未だナトリウムリッチな、或いは硫黄成分がプアーな多硫化ナトリウムが多く存在している。
下記表1に示すごとく、通常、ナトリウム−硫黄電池の充電時、即ち温度300乃至350℃に多硫化ナトリウムの導電率(抵抗値の逆数)は、硫黄成分がリッチな多硫化ナトリウムほど小さい。例えば、温度340℃における硫黄成分のリッチな多硫化ナトリウム(Na2S5.1)は、硫黄成分のプアーな多硫化ナトリウム(Na2S3.0)に比べて、1/2強であり、これは極めて高い抵抗値を示し、導電体11の内側に存在する状態が多くなる。このため、固体電解質管2の近傍の硫黄成分リッチな多硫化ナトリウムが更に生成すれば、内部抵抗の増加を招く。
【0026】
【表1】
【0027】
しかしながら、下記表2に示すようにナトリウムリッチな多硫化ナトリウムに対して、硫黄リッチな多硫化ナトリウムは密度が小さいため、また、下記表3に示すように表面張力も極めて低下するため、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造にあっては、導電体11の複数の孔14を介して、ナトリウムリッチな多硫化ナトリウムが密度の低下した硫黄リッチな多硫化ナトリウムに換わり固体電解質管2側に移行してくる。このため、密度差対流による多硫化ナトリウムの変換が厚み方向に延びる孔14内で起こり易くなっている。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
従って、ナトリウム−硫黄電池1では、傾斜孔14内において比重差により、比重の大きいナトリウムリッチな多硫化ナトリウムが固体電解質管2側に移行しやすくなり、固体電解質管2側で電気抵抗の高い(又は導電率の低い)硫黄リッチな多硫化ナトリウムの濃度が高くなることなく、反応が連続的に起きるため、充電末期においても内部抵抗が増加することなく、活物質利用率を広く確保でき、充放電効率も高くなる。結果として高エネルギー密度の電池としての機能を十分に満たすことができる。
【0031】
図5は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の導電体における上記導電体11を別の工程から製造するための導電部材の斜視図である。導電部材21はマット状或いは平坦な厚みのあるカーボンフェルトとして形成される。導電部材21は長尺方向に沿って片面に複数の切れ込み22が形成され、かかる切れ込み22は導電体21を湾曲させるために形成されるものであり、平坦な導電材21を断面が略扇状となる図2で示した導電部材13と略同様な形状に加工できるようにしている。
また導電材21には、幅方向に所定間隔をおいて切れ込み23が形成され、かかる切れ込み23は切れ込み22と異なり、導電材21面に垂直に切れ込まれるのではなく、垂直位置から少し傾斜させて切れ込まれる。
【0032】
このような導電部材21を切れ込み22を内側にして折り曲げ、これらの導電材21を組み合わせて、図2に示したと同様な中空体を形成して導電体24とする。かかる導電体24は、図6に示すように切れ込み23が半径方向の全域に形成される孔23’として機能し、かかる孔23’も上向き傾斜している。
このため、このように形成される導電体24も上述した導電体13と同様な機能をするため、かかる導電体24をナトリウム−硫黄電池に利用しても、上述したと同様な作用効果を奏するものである。
【0033】
上記ナトリウム−硫黄電池1あっては、固体電解質管を用いたインサイドアウト構造を採用して、固体電解質管2の内側に負極活物質4であるナトリウムを収納し、固体電解質管2の外側に導電体11と正極活物質3である硫黄成分を配置しているが、これに限られず、正極活物質及び導電助材を固体電解質管に収納したものであっても良い。更に、ナトリウム−硫黄電池の構造はインサイドアウト構造に限るものではなく、例えば、電解漕の内部に平板状の固体電解質を配置し、この固体電解質を介して正極活物質と負極活物質とが対向して配置された構造であっても良い。また、ナトリウム−硫黄電池の正極構造の形態は円筒形に限られず、角形やその他の形状であっても良い。
【0034】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係るナトリウム−硫黄電池によれば、立設された所定の厚み幅を有する導電体には、固体電解質壁と接する側から厚み幅方向に向けて孔が形成され、該孔は上記固体電解質壁から離れるに従って上向きに傾斜させて形成されているので、正極自体の抵抗を抑制し、充電に際して正極における導電体の内部抵抗を抑え、充放電効率を高く維持して、エネルギー密度も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の縦断面図である。
【図2】図2は、図1のナトリウム−硫黄電池の正極構造に使用される導電体の組み立て斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す導電体に形成される孔の断面を示すための導電部材の拡大断面図である。
【図4】図4は、組み立て後における導電体の孔の位置が示された図2に示す導電体の上面図である。
【図5】図5は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極構造の導電体を図2に示す導電体と異なる工程で製造するための導電部材の斜視図である。
【図6】図6は、組み立て後における導電体の孔の位置が示された図5からの導電体の上面図である。
【符号の説明】
1 ナトリウム−硫黄電池の正極構造
2 固体電解質管
4 負極活物質
8 負極端子
11 導電体
12 円筒容器(正極集電体)
13 導電部材
14 孔
21 導電部材
23 切れ込み
23’ 孔
24 導電体
Claims (4)
- ナトリウムイオンを透過する固体電解質壁が立設され、該固体電解質壁面に沿わせて立設され、且つ該壁から所定の厚み幅を有する導電体に、硫黄を含む正極活物質が含浸されているナトリウム−硫黄電池の正極構造において、
上記導電体には上記固体電解質壁と接する側から厚み幅方向に向けて孔が形成され、該孔は上記固体電解質壁から離れるに従って上向きに傾斜させて形成されていることを特徴とするナトリウム−硫黄電池の正極構造。 - 上記正極活物質及び負極活物質の固体電解質壁構造に、筒状の固体電解質管が採用されるものであり、上記導電体に形成される上記孔は固体電解質管の周囲に放射状に複数形成させることを特徴とする請求項1記載のナトリウム−硫黄電池の正極構造。
- 上記導電体は、縦断分割された断面が略扇形状の導電材を組み合わせて形成した中空体からなることを特徴とする請求項2記載のナトリウム−硫黄電池の正極構造。
- 上記導電体は、焼成処理或いはカーボン化処理した炭素繊維からなる請求項1乃至3のいずれかに記載のナトリウム−硫黄電池の正極構造。
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