JP2004103422A - ナトリウム−硫黄電池及びその積層型電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】安全且つ簡単に製造することのでき、平板型電池に容易に形成することができ、また正極自体の内部抵抗が抑制される優れたナトリウム−硫黄電池を提供すると共に、エネルギー密度が極めて高く、安全性に優れたナトリウム−硫黄電池の積層型電池を提供すること。
【解決手段】ナトリウム−硫黄電池は、ナトリウムイオンを透過する固体電解質板1の両側に正極チャンバー22と負極チャンバー23が配せられるナトリウム−硫黄電池であって、上記固体電解質板の両面に、導電性セラミックス板2が対向して配されることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】ナトリウム−硫黄電池は、ナトリウムイオンを透過する固体電解質板1の両側に正極チャンバー22と負極チャンバー23が配せられるナトリウム−硫黄電池であって、上記固体電解質板の両面に、導電性セラミックス板2が対向して配されることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナトリウム−硫黄電池及びその積層型電池に関するものであり、より詳細には、二次電池として電力貯蔵、非常用電源、無停電電源、電気自動車などに利用されるナトリウム−硫黄電池及びその積層型電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、昼夜間電力平準化または夜間電力の利用を目的に、また非常用ないし無停電用としての、活物質利用率と充放電効率が高いナトリウム−硫黄電池の開発が盛んに行われている。
ナトリウム−硫黄電池は、一方に負極活物質である溶融金属ナトリウム、他方には正極活物質である溶融硫黄を配し、両者をナトリウムイオンに対して選択的な透過性を有するβ”−アルミナ固体電解質で隔離し、290〜350℃で作動させる高温二次電池である。
ナトリウム−硫黄電池は、図3に示すように、一般に、筒状(チューブ或いは深掘コップ)に形成した固体電解質管72内に、負極活物質が収容され、その外側に正極活物質が配される。負極活物質はナトリウム(Na)を含み、固体電解質管72はナトリウムイオン等を透過させるβ”−アルミナ等からなる。正極活物質には硫黄が使用され、導電性を有する正極用導電体Sに硫黄が含浸されて分散収容されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また正極用導電体Sは、断面が略ドーナツ形状の中空体に成形されるか或いは複数のパーツから組み合わせられ、この導電体Sはグラファイト繊維やカーボン繊維などからなる。負極室内には固体電解質管72の破損時に硫黄と反応するナトリウムの量を制限するため、有底円筒状の隔壁管(安全管)73を介して固体電解質管72と1mm以下の隙間を持っように配置された有底状かつ円筒状のカートリッジ74にナトリウムを収容されている。固体電解質管72とカートリッジ74との隙間にナトリウムが進入できるようにカートリッジの底部に径1mm程度の孔76を有している。
【0004】
また、従来のナトリウム−硫黄電池の剛性容器にあっては図3に示すように、その正極容器71を、ステンレス等からなる剛性容器80に収納して使用している。剛性容器80はその上端部が曲げ加工されて、容器内部方向に張り出すフランジ部81が形成されており、内部に正極容器71を収納した状態で底部にリング状底蓋84が接合される。正極容器71は、通常、アルミニウム製のものが使用され、上記固体電解質管72より熱膨張率が高いため、電池が高温となる作動時は、固体電解質管72の底部と正極容器71の底部との距離が両者の熱膨張差により一時的に大きくなる。一方、電池の運転を停止すると、電池温度が低下して固体電解質管72の底部と正極容器71の底部との間に溜まった硫黄又は多硫化ナトリウムが固化するとともに、固体電解質管72の底部と正極容器71の底部との距離が狭まる。固化した硫黄又は多硫化ナトリウムによって固体電解質管72の底部が押されて固体電解質管72が破損したり、固体電解質管72と正極容器71とを接合している絶縁リング86の接合部が剥離する等の損傷を招く。そこで、このような損傷を防止するため、上記剛性容器80に正極容器71を収容して、高温時の熱膨張による正極容器71の上下方向の伸びを出来る限り拘束するようにしている。
【0005】
しかしながら、従来のナトリウム−硫黄電池にあっては、これを単位セルとしたモジュール化、安全性の確保、及び正極室での抵抗低減などに課題が残されている。
従来のナトリウム−硫黄電池を単位セルとしてモジュール化する場合、矩形の断熱ボックス内に円柱状の単位セルを稠蜜配置させ、電気的に結線している。
しかし、このようなモジュール化にあっては、断熱ボックス内に緻密に配置したとしても、ナトリウム−硫黄電池が円筒状であるため、それらの間に空隙が存在する。このため、モジュールとしてのエネルギー密度の十分に高めることができない。また、従来の構造であれば電池の単位セルの集電を正極容器及び負極安全管から行なっており、正極容器長手方向(縦軸方向)の抵抗、負極安全管長手方向(縦軸方向)の抵抗及び電池の単位セル間の接続端子の抵抗により電圧損失を招いており、単位セルのエネルギー密度を低下させている。
【0006】
また、従来のナトリウム−硫黄電池の安全性を高めるために上述したように、負極室内に有底状かつ円筒状の安全管が配されている。
しかしながら、安全管は、温度290〜350℃の作動温度に昇温の際、固体電解質管と安全管の伸び差による固体電解質管破損を引き起こさないように、固体電解質管と安全管の軸心を合わせて加工する。このため製造上極めて困難を強いられる。また、固体電解質材を有底状に成形すること、及び正極室内の導電材の湾曲成形することと相まって、安全管を有底状に成形することが必要であり、製造工程が簡素化できない状態にある。
【0007】
更に、従来のナトリウム−硫黄電池において、放電時にはナトリウムと硫黄が反応して正極室内に多硫化ナトリウムを生成し、充電時には正極室内の多硫化ナトリウムから可逆的にナトリウム及び硫黄が生成するか、或いは硫黄リッチな多硫化ナトリウムが多くなる。
即ち、負極活物質であるナトリウム(Na)がナトリウムイオン(Na+)と電子(e−)とに分かれ、ナトリウムイオン(Na+)は固体電解質壁を透過して正極活物質中に侵入し、電子(e−)は負極集電体等から外部回路に流れる。正極における放電反応は、正極活物質中に侵入したナトリウムイオン(Na+)が硫黄(S)と反応して、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を生成する。
一方、ナトリウム−硫黄電池の充電時には、放電反応と逆の反応が起こり、ナトリウム(Na)および硫黄(S)が生成する。通常は、多硫化ナトリウム(Na2Sx)の一部が残留する程度まで充電する。これは、硫黄(S)よりも多硫化ナトリウム(Na2Sx)の固有抵抗が低いため、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を残存させておけば正極活物質の抵抗の上昇をできるだけ抑えることができるからである。
【0008】
ところで、充電時において正極室の所定の厚みを有する導電体中で生成したナトリウムイオンは固体電解質壁側に移動するため、導電体内において固体電解質壁の近傍で反応が起こり易くなり、結果として、その近傍が硫黄リッチに成り易くなる。硫黄リッチな多硫化ナトリウムは導電率が低下するため内部抵抗の増加を引き起こし、更なる外側の導電体内に生成したナトリウムイオンの移動を妨げ、その結果、充放電効率の低下を招くという問題がある。
【0009】
そこで、このような充放電率の低下を防止するため導電体の改良が提案されている。例えば、カーボン繊維織布が積層されるとともに、ニードルパンチが施されて形成され、カーボン繊維織布の繊維径が固体電解質壁から外側に向かうに従って次第に細くなるように構成した導電体等を使用したナトリウム−硫黄電池が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、導電体としてのカーボン繊維織布を、厚さの異なる複数の織布で構成し、厚さの厚い織布を外側に組み込んだもの、更に、複数のカーボン繊維織布の厚さ方向に配向する繊維の割合を、外側ほど高くなるように設定したものも提案されている。
【0010】
また、耐硫黄及び多硫化ナトリウムに優れ、電子伝導性の低い物質層を固体電解質と電子導電体の間に接着して配置されたものが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
これらの従来の導電体を使用したナトリウム−硫黄電池では、その導電体の製造も煩雑であり、また正極自体の抵抗増加の抑制をするものではなく、充放電効率を改善するものではない。また活物質利用率が制限されるので、エネルギー密度を高めることもできない。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−266937号公報(図1及び第1頁)
【特許文献2】
特開平8−31451号公報(特許請求の範囲の請求項1)
【特許文献3】
特開平9−35741号公報(第1頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされものであり、安全且つ簡単に製造することのでき、平板型電池として特に、矩形や六角形等の省スペース平板に形成することができ、また正極自体の内部抵抗を抑制した優れたナトリウム−硫黄電池を提供すると共に、エネルギー密度が極めて高く、安全性に優れたナトリウム−硫黄電池の積層型電池を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、固体電解質板の両面に線膨張係数の差が少ない導電性セラミックス、即ち、ホウ化物系導電性セラミックスを負極或いは正極チャンバーの蓋材を兼ねた集電極として対向して設けることにより、安全性が高く、製造が簡単にできるナトリウム−硫黄電池が提供できること、及びこのようなナトリウム−硫黄電池を単位セルとすると、単位セル電池自体を平板状、より好ましくは矩形、六角形等の平板に容易に形成できることから、積層型電池のモジュールを省スペース化して容易に形成できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0014】
即ち、本発明に係るナトリウム−硫黄電池、及びその積層型電池は以下の構成及び特徴を有するものである。
【0015】
(1) ナトリウムイオンを透過する固体電解質板の両側に正極チャンバーと負極チャンバーが配せられるナトリウム−硫黄電池であって、上記固体電解質板の両面に、導電性セラミックス板が対向して配されることを特徴とするナトリウム−硫黄電池。
【0016】
(2) 上記導電性セラミックス板は、上記該固体電解質板との線膨張係数の差が、±8(×10−6[K−1])の範囲に収まることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
【0017】
(3) 上記導電性セラミックス板は、体積固有抵抗(Ω・cm)が20×10−5(Ω・cm)以下であることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
【0018】
(4) 上記導電性セラミックス板は、ホウ化物系導電性セラミックスであることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
(5) 上記固体電解質板はβ”アルミナであることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
(6) 上記正極チャンバー及び/又は負極チャンバーは側周壁が絶縁性セラミックスからなる枠材で形成され、該絶縁性セラミックスと上記固体電解質板及び/又は導電性セラミックス板とはガラスペーストを溶融させて接合したものであることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
(7) 上記負極チャンバー内に負極活物質が収容された安全箱が設けられ、該安全箱は上記固体電解質板面及び/又は導電性セラミックス板面に略平行に対向する外壁面を有し、該外壁面には突起部が形成されていることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
【0019】
(8) 上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のナトリウム−硫黄電池を上記正極チャンバーと負極チャンバーとを交互に複数個積層させてそれぞれ接合してなる積層型電池。
(9) 上記正極チャンバー内に正極活物質を含浸させた導電体が上記固体電解質板と共に立設して配せられ、該導電体は固体電解質板面から所定の厚み幅を有すると共に、固体電解質板と接する側から厚み幅方向に向けて孔を有し、該孔は上記固体電解質板から離れるに従って上向きに傾斜させて形成されていることを特徴とする上記(8)記載の積層型電池。
(10) 上記正極チャンバーと負極チャンバーとを形成する枠材は矩形枠材、三角形枠材、或いは六角形枠材であることを特徴とする上記(8)又は(9)記載の積層型電池。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の好ましい実施の形態を詳述する。尚、本発明に係るナトリウム−硫黄電池は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
図1は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池及びそれ単位セルとした積層型電池の断面図である。図2(a)乃至(f)は、図1のナトリウム−硫黄電池に使用される部材の斜視図である。
【0021】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池あっては、例えば、図1に示すようにナトリウムを選択的に透過する平板からなる固体電解質板1の両側に正極チャンバー22と負極チャンバー23とを形成し、かかるチャンバー22、23を介して、導電性セラミックス板2が蓋材兼集電体として対向して配されるものである。固体電解質板1及び導電性セラミックス板2の形状は円形、楕円形、長方形、四角形、六角形、多角形などの平板であり、本発明において特に限定されないが固体電解質1と導電性セラミックス板2は略同形状の平板であることが好ましい。また、後述するように積層型電池とする場合には矩形形状、三角形状、六角形状のように、併設される互いの積層型電池間に隙間が生じない形状であることが望ましい。
【0022】
また、正極チャンバー22及び負極チャンバー23は、固体電解質板1及び導電性セラミックス板2のそれぞれの周縁面に液密に接合する絶縁性枠体3によって形成されていることが望ましい。絶縁性枠体3は、絶縁性材である限り、本発明においての使用は可能である。絶縁性枠体3としては好ましくは絶縁性セラミックスであり、例えば、α−アルミナ等が好ましい。
固体電解質板1はナトリウムを選択的に透過させるものである限り、特に制限はないが、一般にβ”−アルミナ板が使用される。
【0023】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池にあっては、各チャンバーの蓋材を兼ねた集電体に導電性セラミック板2が使用される。導電性セラミックス板2であれば、上記固体電解質板1と絶縁性枠体2とを安全かつ容易に液密接合することができる。特に、固体電解質板1がβ”−アルミナで、絶縁性枠体5がα−アルミナ等であれば、ガラスペースト15を介して製造上容易に液密接合させることができる。
【0024】
上記導電性セラミックス板2は、固体電解質板1との線膨張係数の差が、±8×10−6[K−1]範囲に収まることが好ましい。より好ましくは、±5×10−6[K−1]範囲に、更には±2×10−6[K−1]の範囲に収まることが好ましい。
即ち、温度290〜350℃の作動温度に昇温の際、固体電解質板1と絶縁性セラミックス3、絶縁性セラミックス3と導電性セラミックス2、及び固体電解質板1と導電性セラミックス2との熱伸長差による応力がセラミックスや接合部位を破損させる恐れがある。しかし、導電性セラミックス板2の膨張係数の差が固体電解質板1に対して上記範囲内にあれば、作動温度での応力が少なく接合部位での破損の恐れがなく、電池の安全性が高まる。
【0025】
また、上記導電性セラミックス板2は、体積固有抵抗が20×10−5(Ω・cm)以下である。より好ましくは、10×10−5(Ω・cm)以下、更には2×10−5(Ω・cm)以下であることが望ましい。
導電性セラミックス板2の体積固有抵抗が上記範囲以下であれば、ナトリウム−硫黄電池としての集電体として十分に機能させることができる。
このような特性を有する導電性セラミックス2としては、ホウ化物系導電性セラミックス等が望ましく、例えば、ホウ化ジルコニウム、ホウ化物サーメット(モリブデンのホウ素化合物MoBと金属ニッケルを複合させたもの。)等を挙げることができる。
【0026】
上記負極チャンバー23内には安全管に代わる安全箱5が収納される。安全箱5は金属容器、例えば、SUSなどから形成され、上述のように固体電解質板1の破損時に急激に硫黄と反応するナトリウム量を制限するために設けられる。安全箱5の下部には1mm程度の孔12が形成され、また、安全箱5の外壁には突起部13が形成されている。
このような安全箱5にあっては、管状でなく、固体電解質板1の形状に合わせた所定厚みの平板状の安全箱となっているので、安全箱自体の加工が容易にできる。また、従来のような管状でないため、固体電解質管と安全管との軸芯を合わせ加工することもない。また、安全箱5の外壁に突起部13を形成したことにより、安全箱5と固体電解質板1及び/又は導電性セラミックス2の隙間を適宜に、例えば1mm以下のある値に保つことが容易にできる。また、安全箱5内のナトリウムが孔12から排出され、温度290℃乃至350℃の作動温度の昇温の際に、安全箱5にはクリアランスにナトリウムが充満するようにアンルゴン等の不活性ガスが充填される。
【0027】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極チャンバー22には硫黄、多硫化ナトリウム等の正極活物質が含浸された導電体4が設けられる。導電体4は、炭素繊維からなり、炭素繊維は、PAN系炭素繊維、PVA系炭素繊維、PVC系炭素繊維、石油ピッチ系炭素繊維、石炭ピッチ系炭素繊維若しくは気相合成系炭素繊維のいずれのものであっても良く、また、黒鉛系炭素繊維であっても良い。特に、黒鉛系繊維を用いた場合には、ナトリウム−硫黄電池の内部抵抗を著しく低減することが可能となる。これらは、原料繊維を500乃至1500℃、好ましくは1000℃前後で焼成することにより、カーボン化処理して所望の導電部材、或いは導電体そのものに成形される。
【0028】
導電体4は、マット状に上記繊維を焼成或いはカーボン化処理して形成された導電材を、そのまま、或いは組み合わせてナトリウム−硫黄電池に使用される。導電体4は、そして所定幅の厚みを持たせて、固体電解質板に沿わせて配される。
導電体4の厚みは電池の大きさにもよるが、1mm乃至40mmの範囲に形成することが望ましい。所定幅を確保しないと、電池としてエネルギー量が十分に得られないおそれがある。
【0029】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の導電体4にあっては、正極チャンバー22に装着する前に、固体電解質板が対向する内壁面から複数の孔11(或いはスリット)が形成される。複数の孔11の全ては、導電体4をチャンバー22内で立設したときに、内壁面から厚み方向の外壁面に向けて上向きに傾斜して設けられる。孔11の傾斜は水平方向に対して上向きであれば良く、例えば、水平方向に対して5°以上、特に10乃至80°の範囲であることが望ましい。
孔14の傾斜角度が5°未満では、後述するように、ナトリウムリッチで硫黄プアーな多硫化ナトリウムが孔11を介して移動しないおそれがあり、傾斜角度が80°を超えれば、孔11の形成が難しくなる。
ここで、孔11とは内側から外側に導電体4を貫通した孔または貫通していない穴を意味し、また、幅広のスリットとして形成されていても良い。
【0030】
図1に示すように、本発明に係る積層型電池31は、上述のナトリウム−硫黄電池21を単位セルとして、上記正極チャンバー22と負極チャンバー23とを交互に複数個積層させてそれぞれ接合してなるものである。
尚、上述したように上記正極チャンバー22と負極チャンバー23とを形成する枠材5は円形枠材や、その他の多角形枠材であっても良いが、矩形枠材、三角形枠材、或いは六角形枠材であることが望ましい。
【0031】
次に、本発明に係るナトリウム−硫黄電池及びその積層型電池の製造方法について簡単に述べる。
図2に示す様に、矩形状部材(例えば、100×100mm)の固体電解質板1(β”−アルミナ板)、導電性セラミックス板2(ホウ化ジルコニウム焼結板)、絶縁性枠体3(α−アルミナスペーサ)、導電体4(カーボンフェルト)、安全箱5(SUS製ボックス)、電極端14付き導電性セラミックス板2からなる部材から本発明に係るナトリウム−硫黄電池を製造する。
【0032】
先ず、真空中で、1つ目の絶縁性枠体3内に導電体4を挿入し、絶縁性枠体3の周縁面にガラスペースト15を塗布し、電極端14付き導電性セラミックス板2を接合する。次に、1つ目の絶縁性枠体3の他方の周縁面にガラスペースト15を塗布し、固体電解質板1を接合する。
次に、2つ目の絶縁性枠体3内に安全箱5を挿入し、該2つ目の絶縁性枠体3を上記固体電解質板1にガラスペースト15を介して接合する。更に、2つ目の絶縁性枠体3の他方の周縁面にガラスペースト15を塗布し、導電性セラミックス板2を接合する。尚、安全箱5の突起部13と固体電解質板1及び/又は導電性セラミックス板2との間のクリラアランスを1.0mm以下に抑えることができる。
【0033】
更に、3つ目以降の絶縁性枠体3を同様に組み合わせて、最後に、また電極端14付き導電性セラミックス板2を接合して組み合わせる。かかる組合わせ積層体を両端の電極端14付き導電性セラミックス板2から加圧して加熱炉においてガラスペースト15を熱融合させて各接合部位を液密に固着させる。
【0034】
このように構成されるナトリウム−硫黄電池及びその積層型電池にあっては、以下のような効果を期待することができる。
【0035】
(正極チャンバーの抵抗軽減)
本発明に係るナトリウム−硫黄電池或いは積層型電池において、固体電解質板1が立設して配せられる場合、正極における抵抗を軽減させることができる。
一般に充電時、特にその末期に絶縁性の硫黄ないし導電率の低い多硫化ナトリウムが固体電解質板の近傍に析出することにより内部抵抗が増加し、このため活物質利用率及び充放電効率が小さくなるおそれがある。しかし、本発明に係るナトリウム−硫黄電池では、導電体4に形成した孔11内において、ナトリウム比率が大きく且つ比重の大きい多硫化ナトリウムが比重差から傾斜孔11に沿って固体電解質板1側に移行し、固体電解質板1側に生成した硫黄リッチな多硫化ナトリウムが比重の大きい多硫化ナトリウムと比重差対流を起こし、固体電解質板1側で導電率の低い(電気抵抗の高い)ナトリウム比率の小さい多硫化ナトリウムないし硫黄の濃度が高くならずに、反応が連続的に行なえる。このため、充電末期においても内部抵抗が増加することなく、活物質利用率を広く確保でき、充放電効率も高くなる。結果として高エネルギー密度の電池が可能となる。
【0036】
即ち、・上記孔11は繊維内に施されるものであり、孔11内部の空隙率は繊維内のそれよりも大きく、活物質の移動が容易となる。従って、上記の比重による活物質の移動以外に、本来の活物質の濃度拡散も容易となる効果を有する。
・上記孔11を固体電解質板1に対して導電体4の厚さ方向にまんべんなく施すため、固体電解質板1から同一距離の正極用導電体4内の活物質の反応及び拡散が均一化され電流密度のばらつきがなくなるので、内部抵抗を抑制することができる。
【0037】
・繊維状正極用導電体4は正極チャンバー22内に収容されるが、孔11を施すということは繊維をカット或いは一部削除することを意味するので、繊維に孔11を施さない場合に比べて固体電解質板側の導電材の密度は低くなる。これは、固体電解質板側の導電材中の電子導電性を低下させることになり、充電時の固体電解質板側の反応を緩和する作用を持ち、結果として内部抵抗の低減を可能とするものである。
【0038】
・孔11を施す工程を正極用導電体のみの場合と硫黄含浸後の場合の両方可能とすることにより適切な製造工程を設計できる。
従って、内部抵抗が低下するということは、セル充放電効率を高くできることになり、また括物質利用率を向上させることができるので、エネルギー密度を増加できることになる。
【0039】
(ナトリウム−硫黄電池の安全性)
従来の構造であれば、温度290〜350℃の作動温度に昇温の際、固体電解質管と安全管の熱伸長差による固体電解質管破損を引き起こさないように、固体電解質管と安全管の軸心を合わせて加工する。しかし、かかる加工製造は困難を伴うものである。これに対して、本発明に係るナトリウム−硫黄電池にあっては、負極チャンバー23及びナトリウムを収容する安全箱5が矩形状等であるため加工が容易となる。また、安全箱5に数個の突起物13が形成されているので、安全箱5と固体電解質板1ないし導電性セラミックス2の隙間を1mm以下の適値に保つことを容易にする。更に、固体電解質板1乃至導電性セラミックス板2と絶縁性枠材3の性都合シール部15を強化するために、チャンバー内部を予め真空にして外部を陽圧状態にして製造することも好ましい。
【0040】
(モジュールの効率化)
・本発明に係る積層型電池31によれば、積層化した際に、上記ナトリウム−硫黄電池21を単位セル(平板型)とするため、電気的接続が容易であり、直列或いは並列の組み合わせが容易にでき、適宜なモジュール化ができる。
・上記平板型単位セル21では導電性セラミックス2(又はセパレータ)より単セルを重ねて電気的に接続してスタック化する。このセパレータは隣接する単位セルに共用されているため、従来の円筒型単セルごとで活物質を収容している場合に比べて、単位セル間の空隙をなくすことができる。更に、積層型電池31内の材料占有率も低下する。このため、積層型電池31を収容するモジュール内の活物質占有率が大きくなるため、モジュールのエネルギー密度が向上する。自己消火用の乾燥砂を充填した場合でもモジュールエネルギー密度は210Wh/Lと、従来の円筒型セル(160〜170Wh/L程度)の場合に比べて2割程度増加する。
【0041】
・従来の単位セルのように正極容器及び負極安全管からの集電した従来方法では、正極容器長手方向(縦軸方向)の抵抗、負極安全管長手方向(縦軸方向)の抵抗及び単位セル間の接続端子の抵抗により電圧損失を招いていた。また、従来、高温腐食雰囲気でのセル間の端子の接続には、かしめ、圧着法が使用できず、ボルト締めや耐腐食コーティングなどが必要とされコスト増の要因となっている。しかし、本発明に係る正極構造を有したナトリウム−硫黄電池を単位セルとする新しい方法では、導電性セラミックス2で直接集電、且つ正極が隣接するセルの負極を兼ねているため、特別な接続手段が要らないので、導電性セラミックス2の厚みの抵抗のみ電圧降下が起こる。導電性セラミックス板2の面積は大きいため抵抗が少なく、電圧損失を低減することができ、単位セルの充放電効率とエネルギー密度が向上する。単位セル当たりの充放電効率は95%と従来の円筒型セル(89%程度)に比べて6%程度の増加が期待され、単位セル当たりのエネルギー密度は370Wh/Lと従来の円筒型セル(360〜370Wh/L程度)と同程度である。
【0042】
・単位セル21は平板型であり固体電解質板1を有底状に成形する必要はなく、正極チャンバー22の導電体4の加工においても従来の湾曲成形は不要となる。また、安全箱5に関しても有底管に成形する必要がないことから製造工程が簡素化できる。
【0043】
・固体電解質壁と絶縁体部材と集電体との関係において従来のように金属とセラミックスとのシールが介在している場合は、温度変化時に線膨張差によりシール部の破損、固体電解質壁に加わる応力等の懸念が存在したが、本発明に係るナトリウム−硫黄電池及び積層型電池にあっては、全ての部材は、線膨張係数が近似したセラミックスであるため、シール部の破損がなく、安全性が極めて高くなる。ちなみに、本実施形態で使用される固体電解質板1(β”−アルミナ)の線膨張係数は7.8×10−6[K−1]であり、絶縁性枠材3(α−アルミナ)の線膨張係数は8×10−6[K−1]であり、導電性セラミックス4(ホウ化ジルコニウム)の線膨張係数は、6×10−6[K−1]である。これに対して、従来から使用される金属としてのSUSは10×10−6[K−1]乃至16×10−6[K−1]の範囲である。
このようなことから、本発明に係るナトリウム−硫黄電池及び積層型電池は熱変動に対して極めて安定且つ安全となることが期待できる。
【0044】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係るナトリウム−硫黄電池によれば、固体電解質板の両側に正極チャンバーと負極チャンバーが配せられるナトリウム−硫黄電池であって、上記固体電解質板の両面に、導電性セラミックス板が対向して配されるので、安全且つ簡単に製造することのでき、平板型電池、特に矩形や六角形等の省スペース形状に容易に形成することができる。またナトリウム−硫黄電池を容易に積層させることができ、エネルギー密度が極めて高く、安全性に優れた積層型電池を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)及び(b)は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池及びそれ単位セルとした積層型電池の断面図及びその概略電気回路図である。
【図2】図2(a)乃至(f)は、図1のナトリウム−硫黄電池に使用される部材の斜視図である。
【図3】図3は、従来のナトリウム−硫黄電池の縦断面図である。
【符号の説明】
1 固体電解質板
2 導電性セラミックス
3 絶縁性枠材
4 導電体
5 安全箱
21 単位セル
22 正極チャンバー
23 負極チャンバー
31 積層型電池
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナトリウム−硫黄電池及びその積層型電池に関するものであり、より詳細には、二次電池として電力貯蔵、非常用電源、無停電電源、電気自動車などに利用されるナトリウム−硫黄電池及びその積層型電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、昼夜間電力平準化または夜間電力の利用を目的に、また非常用ないし無停電用としての、活物質利用率と充放電効率が高いナトリウム−硫黄電池の開発が盛んに行われている。
ナトリウム−硫黄電池は、一方に負極活物質である溶融金属ナトリウム、他方には正極活物質である溶融硫黄を配し、両者をナトリウムイオンに対して選択的な透過性を有するβ”−アルミナ固体電解質で隔離し、290〜350℃で作動させる高温二次電池である。
ナトリウム−硫黄電池は、図3に示すように、一般に、筒状(チューブ或いは深掘コップ)に形成した固体電解質管72内に、負極活物質が収容され、その外側に正極活物質が配される。負極活物質はナトリウム(Na)を含み、固体電解質管72はナトリウムイオン等を透過させるβ”−アルミナ等からなる。正極活物質には硫黄が使用され、導電性を有する正極用導電体Sに硫黄が含浸されて分散収容されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また正極用導電体Sは、断面が略ドーナツ形状の中空体に成形されるか或いは複数のパーツから組み合わせられ、この導電体Sはグラファイト繊維やカーボン繊維などからなる。負極室内には固体電解質管72の破損時に硫黄と反応するナトリウムの量を制限するため、有底円筒状の隔壁管(安全管)73を介して固体電解質管72と1mm以下の隙間を持っように配置された有底状かつ円筒状のカートリッジ74にナトリウムを収容されている。固体電解質管72とカートリッジ74との隙間にナトリウムが進入できるようにカートリッジの底部に径1mm程度の孔76を有している。
【0004】
また、従来のナトリウム−硫黄電池の剛性容器にあっては図3に示すように、その正極容器71を、ステンレス等からなる剛性容器80に収納して使用している。剛性容器80はその上端部が曲げ加工されて、容器内部方向に張り出すフランジ部81が形成されており、内部に正極容器71を収納した状態で底部にリング状底蓋84が接合される。正極容器71は、通常、アルミニウム製のものが使用され、上記固体電解質管72より熱膨張率が高いため、電池が高温となる作動時は、固体電解質管72の底部と正極容器71の底部との距離が両者の熱膨張差により一時的に大きくなる。一方、電池の運転を停止すると、電池温度が低下して固体電解質管72の底部と正極容器71の底部との間に溜まった硫黄又は多硫化ナトリウムが固化するとともに、固体電解質管72の底部と正極容器71の底部との距離が狭まる。固化した硫黄又は多硫化ナトリウムによって固体電解質管72の底部が押されて固体電解質管72が破損したり、固体電解質管72と正極容器71とを接合している絶縁リング86の接合部が剥離する等の損傷を招く。そこで、このような損傷を防止するため、上記剛性容器80に正極容器71を収容して、高温時の熱膨張による正極容器71の上下方向の伸びを出来る限り拘束するようにしている。
【0005】
しかしながら、従来のナトリウム−硫黄電池にあっては、これを単位セルとしたモジュール化、安全性の確保、及び正極室での抵抗低減などに課題が残されている。
従来のナトリウム−硫黄電池を単位セルとしてモジュール化する場合、矩形の断熱ボックス内に円柱状の単位セルを稠蜜配置させ、電気的に結線している。
しかし、このようなモジュール化にあっては、断熱ボックス内に緻密に配置したとしても、ナトリウム−硫黄電池が円筒状であるため、それらの間に空隙が存在する。このため、モジュールとしてのエネルギー密度の十分に高めることができない。また、従来の構造であれば電池の単位セルの集電を正極容器及び負極安全管から行なっており、正極容器長手方向(縦軸方向)の抵抗、負極安全管長手方向(縦軸方向)の抵抗及び電池の単位セル間の接続端子の抵抗により電圧損失を招いており、単位セルのエネルギー密度を低下させている。
【0006】
また、従来のナトリウム−硫黄電池の安全性を高めるために上述したように、負極室内に有底状かつ円筒状の安全管が配されている。
しかしながら、安全管は、温度290〜350℃の作動温度に昇温の際、固体電解質管と安全管の伸び差による固体電解質管破損を引き起こさないように、固体電解質管と安全管の軸心を合わせて加工する。このため製造上極めて困難を強いられる。また、固体電解質材を有底状に成形すること、及び正極室内の導電材の湾曲成形することと相まって、安全管を有底状に成形することが必要であり、製造工程が簡素化できない状態にある。
【0007】
更に、従来のナトリウム−硫黄電池において、放電時にはナトリウムと硫黄が反応して正極室内に多硫化ナトリウムを生成し、充電時には正極室内の多硫化ナトリウムから可逆的にナトリウム及び硫黄が生成するか、或いは硫黄リッチな多硫化ナトリウムが多くなる。
即ち、負極活物質であるナトリウム(Na)がナトリウムイオン(Na+)と電子(e−)とに分かれ、ナトリウムイオン(Na+)は固体電解質壁を透過して正極活物質中に侵入し、電子(e−)は負極集電体等から外部回路に流れる。正極における放電反応は、正極活物質中に侵入したナトリウムイオン(Na+)が硫黄(S)と反応して、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を生成する。
一方、ナトリウム−硫黄電池の充電時には、放電反応と逆の反応が起こり、ナトリウム(Na)および硫黄(S)が生成する。通常は、多硫化ナトリウム(Na2Sx)の一部が残留する程度まで充電する。これは、硫黄(S)よりも多硫化ナトリウム(Na2Sx)の固有抵抗が低いため、多硫化ナトリウム(Na2Sx)を残存させておけば正極活物質の抵抗の上昇をできるだけ抑えることができるからである。
【0008】
ところで、充電時において正極室の所定の厚みを有する導電体中で生成したナトリウムイオンは固体電解質壁側に移動するため、導電体内において固体電解質壁の近傍で反応が起こり易くなり、結果として、その近傍が硫黄リッチに成り易くなる。硫黄リッチな多硫化ナトリウムは導電率が低下するため内部抵抗の増加を引き起こし、更なる外側の導電体内に生成したナトリウムイオンの移動を妨げ、その結果、充放電効率の低下を招くという問題がある。
【0009】
そこで、このような充放電率の低下を防止するため導電体の改良が提案されている。例えば、カーボン繊維織布が積層されるとともに、ニードルパンチが施されて形成され、カーボン繊維織布の繊維径が固体電解質壁から外側に向かうに従って次第に細くなるように構成した導電体等を使用したナトリウム−硫黄電池が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、導電体としてのカーボン繊維織布を、厚さの異なる複数の織布で構成し、厚さの厚い織布を外側に組み込んだもの、更に、複数のカーボン繊維織布の厚さ方向に配向する繊維の割合を、外側ほど高くなるように設定したものも提案されている。
【0010】
また、耐硫黄及び多硫化ナトリウムに優れ、電子伝導性の低い物質層を固体電解質と電子導電体の間に接着して配置されたものが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
これらの従来の導電体を使用したナトリウム−硫黄電池では、その導電体の製造も煩雑であり、また正極自体の抵抗増加の抑制をするものではなく、充放電効率を改善するものではない。また活物質利用率が制限されるので、エネルギー密度を高めることもできない。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−266937号公報(図1及び第1頁)
【特許文献2】
特開平8−31451号公報(特許請求の範囲の請求項1)
【特許文献3】
特開平9−35741号公報(第1頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされものであり、安全且つ簡単に製造することのでき、平板型電池として特に、矩形や六角形等の省スペース平板に形成することができ、また正極自体の内部抵抗を抑制した優れたナトリウム−硫黄電池を提供すると共に、エネルギー密度が極めて高く、安全性に優れたナトリウム−硫黄電池の積層型電池を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、固体電解質板の両面に線膨張係数の差が少ない導電性セラミックス、即ち、ホウ化物系導電性セラミックスを負極或いは正極チャンバーの蓋材を兼ねた集電極として対向して設けることにより、安全性が高く、製造が簡単にできるナトリウム−硫黄電池が提供できること、及びこのようなナトリウム−硫黄電池を単位セルとすると、単位セル電池自体を平板状、より好ましくは矩形、六角形等の平板に容易に形成できることから、積層型電池のモジュールを省スペース化して容易に形成できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0014】
即ち、本発明に係るナトリウム−硫黄電池、及びその積層型電池は以下の構成及び特徴を有するものである。
【0015】
(1) ナトリウムイオンを透過する固体電解質板の両側に正極チャンバーと負極チャンバーが配せられるナトリウム−硫黄電池であって、上記固体電解質板の両面に、導電性セラミックス板が対向して配されることを特徴とするナトリウム−硫黄電池。
【0016】
(2) 上記導電性セラミックス板は、上記該固体電解質板との線膨張係数の差が、±8(×10−6[K−1])の範囲に収まることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
【0017】
(3) 上記導電性セラミックス板は、体積固有抵抗(Ω・cm)が20×10−5(Ω・cm)以下であることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
【0018】
(4) 上記導電性セラミックス板は、ホウ化物系導電性セラミックスであることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
(5) 上記固体電解質板はβ”アルミナであることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
(6) 上記正極チャンバー及び/又は負極チャンバーは側周壁が絶縁性セラミックスからなる枠材で形成され、該絶縁性セラミックスと上記固体電解質板及び/又は導電性セラミックス板とはガラスペーストを溶融させて接合したものであることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
(7) 上記負極チャンバー内に負極活物質が収容された安全箱が設けられ、該安全箱は上記固体電解質板面及び/又は導電性セラミックス板面に略平行に対向する外壁面を有し、該外壁面には突起部が形成されていることを特徴とする上記(1)記載のナトリウム−硫黄電池。
【0019】
(8) 上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のナトリウム−硫黄電池を上記正極チャンバーと負極チャンバーとを交互に複数個積層させてそれぞれ接合してなる積層型電池。
(9) 上記正極チャンバー内に正極活物質を含浸させた導電体が上記固体電解質板と共に立設して配せられ、該導電体は固体電解質板面から所定の厚み幅を有すると共に、固体電解質板と接する側から厚み幅方向に向けて孔を有し、該孔は上記固体電解質板から離れるに従って上向きに傾斜させて形成されていることを特徴とする上記(8)記載の積層型電池。
(10) 上記正極チャンバーと負極チャンバーとを形成する枠材は矩形枠材、三角形枠材、或いは六角形枠材であることを特徴とする上記(8)又は(9)記載の積層型電池。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るナトリウム−硫黄電池の好ましい実施の形態を詳述する。尚、本発明に係るナトリウム−硫黄電池は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
図1は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池及びそれ単位セルとした積層型電池の断面図である。図2(a)乃至(f)は、図1のナトリウム−硫黄電池に使用される部材の斜視図である。
【0021】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池あっては、例えば、図1に示すようにナトリウムを選択的に透過する平板からなる固体電解質板1の両側に正極チャンバー22と負極チャンバー23とを形成し、かかるチャンバー22、23を介して、導電性セラミックス板2が蓋材兼集電体として対向して配されるものである。固体電解質板1及び導電性セラミックス板2の形状は円形、楕円形、長方形、四角形、六角形、多角形などの平板であり、本発明において特に限定されないが固体電解質1と導電性セラミックス板2は略同形状の平板であることが好ましい。また、後述するように積層型電池とする場合には矩形形状、三角形状、六角形状のように、併設される互いの積層型電池間に隙間が生じない形状であることが望ましい。
【0022】
また、正極チャンバー22及び負極チャンバー23は、固体電解質板1及び導電性セラミックス板2のそれぞれの周縁面に液密に接合する絶縁性枠体3によって形成されていることが望ましい。絶縁性枠体3は、絶縁性材である限り、本発明においての使用は可能である。絶縁性枠体3としては好ましくは絶縁性セラミックスであり、例えば、α−アルミナ等が好ましい。
固体電解質板1はナトリウムを選択的に透過させるものである限り、特に制限はないが、一般にβ”−アルミナ板が使用される。
【0023】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池にあっては、各チャンバーの蓋材を兼ねた集電体に導電性セラミック板2が使用される。導電性セラミックス板2であれば、上記固体電解質板1と絶縁性枠体2とを安全かつ容易に液密接合することができる。特に、固体電解質板1がβ”−アルミナで、絶縁性枠体5がα−アルミナ等であれば、ガラスペースト15を介して製造上容易に液密接合させることができる。
【0024】
上記導電性セラミックス板2は、固体電解質板1との線膨張係数の差が、±8×10−6[K−1]範囲に収まることが好ましい。より好ましくは、±5×10−6[K−1]範囲に、更には±2×10−6[K−1]の範囲に収まることが好ましい。
即ち、温度290〜350℃の作動温度に昇温の際、固体電解質板1と絶縁性セラミックス3、絶縁性セラミックス3と導電性セラミックス2、及び固体電解質板1と導電性セラミックス2との熱伸長差による応力がセラミックスや接合部位を破損させる恐れがある。しかし、導電性セラミックス板2の膨張係数の差が固体電解質板1に対して上記範囲内にあれば、作動温度での応力が少なく接合部位での破損の恐れがなく、電池の安全性が高まる。
【0025】
また、上記導電性セラミックス板2は、体積固有抵抗が20×10−5(Ω・cm)以下である。より好ましくは、10×10−5(Ω・cm)以下、更には2×10−5(Ω・cm)以下であることが望ましい。
導電性セラミックス板2の体積固有抵抗が上記範囲以下であれば、ナトリウム−硫黄電池としての集電体として十分に機能させることができる。
このような特性を有する導電性セラミックス2としては、ホウ化物系導電性セラミックス等が望ましく、例えば、ホウ化ジルコニウム、ホウ化物サーメット(モリブデンのホウ素化合物MoBと金属ニッケルを複合させたもの。)等を挙げることができる。
【0026】
上記負極チャンバー23内には安全管に代わる安全箱5が収納される。安全箱5は金属容器、例えば、SUSなどから形成され、上述のように固体電解質板1の破損時に急激に硫黄と反応するナトリウム量を制限するために設けられる。安全箱5の下部には1mm程度の孔12が形成され、また、安全箱5の外壁には突起部13が形成されている。
このような安全箱5にあっては、管状でなく、固体電解質板1の形状に合わせた所定厚みの平板状の安全箱となっているので、安全箱自体の加工が容易にできる。また、従来のような管状でないため、固体電解質管と安全管との軸芯を合わせ加工することもない。また、安全箱5の外壁に突起部13を形成したことにより、安全箱5と固体電解質板1及び/又は導電性セラミックス2の隙間を適宜に、例えば1mm以下のある値に保つことが容易にできる。また、安全箱5内のナトリウムが孔12から排出され、温度290℃乃至350℃の作動温度の昇温の際に、安全箱5にはクリアランスにナトリウムが充満するようにアンルゴン等の不活性ガスが充填される。
【0027】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の正極チャンバー22には硫黄、多硫化ナトリウム等の正極活物質が含浸された導電体4が設けられる。導電体4は、炭素繊維からなり、炭素繊維は、PAN系炭素繊維、PVA系炭素繊維、PVC系炭素繊維、石油ピッチ系炭素繊維、石炭ピッチ系炭素繊維若しくは気相合成系炭素繊維のいずれのものであっても良く、また、黒鉛系炭素繊維であっても良い。特に、黒鉛系繊維を用いた場合には、ナトリウム−硫黄電池の内部抵抗を著しく低減することが可能となる。これらは、原料繊維を500乃至1500℃、好ましくは1000℃前後で焼成することにより、カーボン化処理して所望の導電部材、或いは導電体そのものに成形される。
【0028】
導電体4は、マット状に上記繊維を焼成或いはカーボン化処理して形成された導電材を、そのまま、或いは組み合わせてナトリウム−硫黄電池に使用される。導電体4は、そして所定幅の厚みを持たせて、固体電解質板に沿わせて配される。
導電体4の厚みは電池の大きさにもよるが、1mm乃至40mmの範囲に形成することが望ましい。所定幅を確保しないと、電池としてエネルギー量が十分に得られないおそれがある。
【0029】
本発明に係るナトリウム−硫黄電池の導電体4にあっては、正極チャンバー22に装着する前に、固体電解質板が対向する内壁面から複数の孔11(或いはスリット)が形成される。複数の孔11の全ては、導電体4をチャンバー22内で立設したときに、内壁面から厚み方向の外壁面に向けて上向きに傾斜して設けられる。孔11の傾斜は水平方向に対して上向きであれば良く、例えば、水平方向に対して5°以上、特に10乃至80°の範囲であることが望ましい。
孔14の傾斜角度が5°未満では、後述するように、ナトリウムリッチで硫黄プアーな多硫化ナトリウムが孔11を介して移動しないおそれがあり、傾斜角度が80°を超えれば、孔11の形成が難しくなる。
ここで、孔11とは内側から外側に導電体4を貫通した孔または貫通していない穴を意味し、また、幅広のスリットとして形成されていても良い。
【0030】
図1に示すように、本発明に係る積層型電池31は、上述のナトリウム−硫黄電池21を単位セルとして、上記正極チャンバー22と負極チャンバー23とを交互に複数個積層させてそれぞれ接合してなるものである。
尚、上述したように上記正極チャンバー22と負極チャンバー23とを形成する枠材5は円形枠材や、その他の多角形枠材であっても良いが、矩形枠材、三角形枠材、或いは六角形枠材であることが望ましい。
【0031】
次に、本発明に係るナトリウム−硫黄電池及びその積層型電池の製造方法について簡単に述べる。
図2に示す様に、矩形状部材(例えば、100×100mm)の固体電解質板1(β”−アルミナ板)、導電性セラミックス板2(ホウ化ジルコニウム焼結板)、絶縁性枠体3(α−アルミナスペーサ)、導電体4(カーボンフェルト)、安全箱5(SUS製ボックス)、電極端14付き導電性セラミックス板2からなる部材から本発明に係るナトリウム−硫黄電池を製造する。
【0032】
先ず、真空中で、1つ目の絶縁性枠体3内に導電体4を挿入し、絶縁性枠体3の周縁面にガラスペースト15を塗布し、電極端14付き導電性セラミックス板2を接合する。次に、1つ目の絶縁性枠体3の他方の周縁面にガラスペースト15を塗布し、固体電解質板1を接合する。
次に、2つ目の絶縁性枠体3内に安全箱5を挿入し、該2つ目の絶縁性枠体3を上記固体電解質板1にガラスペースト15を介して接合する。更に、2つ目の絶縁性枠体3の他方の周縁面にガラスペースト15を塗布し、導電性セラミックス板2を接合する。尚、安全箱5の突起部13と固体電解質板1及び/又は導電性セラミックス板2との間のクリラアランスを1.0mm以下に抑えることができる。
【0033】
更に、3つ目以降の絶縁性枠体3を同様に組み合わせて、最後に、また電極端14付き導電性セラミックス板2を接合して組み合わせる。かかる組合わせ積層体を両端の電極端14付き導電性セラミックス板2から加圧して加熱炉においてガラスペースト15を熱融合させて各接合部位を液密に固着させる。
【0034】
このように構成されるナトリウム−硫黄電池及びその積層型電池にあっては、以下のような効果を期待することができる。
【0035】
(正極チャンバーの抵抗軽減)
本発明に係るナトリウム−硫黄電池或いは積層型電池において、固体電解質板1が立設して配せられる場合、正極における抵抗を軽減させることができる。
一般に充電時、特にその末期に絶縁性の硫黄ないし導電率の低い多硫化ナトリウムが固体電解質板の近傍に析出することにより内部抵抗が増加し、このため活物質利用率及び充放電効率が小さくなるおそれがある。しかし、本発明に係るナトリウム−硫黄電池では、導電体4に形成した孔11内において、ナトリウム比率が大きく且つ比重の大きい多硫化ナトリウムが比重差から傾斜孔11に沿って固体電解質板1側に移行し、固体電解質板1側に生成した硫黄リッチな多硫化ナトリウムが比重の大きい多硫化ナトリウムと比重差対流を起こし、固体電解質板1側で導電率の低い(電気抵抗の高い)ナトリウム比率の小さい多硫化ナトリウムないし硫黄の濃度が高くならずに、反応が連続的に行なえる。このため、充電末期においても内部抵抗が増加することなく、活物質利用率を広く確保でき、充放電効率も高くなる。結果として高エネルギー密度の電池が可能となる。
【0036】
即ち、・上記孔11は繊維内に施されるものであり、孔11内部の空隙率は繊維内のそれよりも大きく、活物質の移動が容易となる。従って、上記の比重による活物質の移動以外に、本来の活物質の濃度拡散も容易となる効果を有する。
・上記孔11を固体電解質板1に対して導電体4の厚さ方向にまんべんなく施すため、固体電解質板1から同一距離の正極用導電体4内の活物質の反応及び拡散が均一化され電流密度のばらつきがなくなるので、内部抵抗を抑制することができる。
【0037】
・繊維状正極用導電体4は正極チャンバー22内に収容されるが、孔11を施すということは繊維をカット或いは一部削除することを意味するので、繊維に孔11を施さない場合に比べて固体電解質板側の導電材の密度は低くなる。これは、固体電解質板側の導電材中の電子導電性を低下させることになり、充電時の固体電解質板側の反応を緩和する作用を持ち、結果として内部抵抗の低減を可能とするものである。
【0038】
・孔11を施す工程を正極用導電体のみの場合と硫黄含浸後の場合の両方可能とすることにより適切な製造工程を設計できる。
従って、内部抵抗が低下するということは、セル充放電効率を高くできることになり、また括物質利用率を向上させることができるので、エネルギー密度を増加できることになる。
【0039】
(ナトリウム−硫黄電池の安全性)
従来の構造であれば、温度290〜350℃の作動温度に昇温の際、固体電解質管と安全管の熱伸長差による固体電解質管破損を引き起こさないように、固体電解質管と安全管の軸心を合わせて加工する。しかし、かかる加工製造は困難を伴うものである。これに対して、本発明に係るナトリウム−硫黄電池にあっては、負極チャンバー23及びナトリウムを収容する安全箱5が矩形状等であるため加工が容易となる。また、安全箱5に数個の突起物13が形成されているので、安全箱5と固体電解質板1ないし導電性セラミックス2の隙間を1mm以下の適値に保つことを容易にする。更に、固体電解質板1乃至導電性セラミックス板2と絶縁性枠材3の性都合シール部15を強化するために、チャンバー内部を予め真空にして外部を陽圧状態にして製造することも好ましい。
【0040】
(モジュールの効率化)
・本発明に係る積層型電池31によれば、積層化した際に、上記ナトリウム−硫黄電池21を単位セル(平板型)とするため、電気的接続が容易であり、直列或いは並列の組み合わせが容易にでき、適宜なモジュール化ができる。
・上記平板型単位セル21では導電性セラミックス2(又はセパレータ)より単セルを重ねて電気的に接続してスタック化する。このセパレータは隣接する単位セルに共用されているため、従来の円筒型単セルごとで活物質を収容している場合に比べて、単位セル間の空隙をなくすことができる。更に、積層型電池31内の材料占有率も低下する。このため、積層型電池31を収容するモジュール内の活物質占有率が大きくなるため、モジュールのエネルギー密度が向上する。自己消火用の乾燥砂を充填した場合でもモジュールエネルギー密度は210Wh/Lと、従来の円筒型セル(160〜170Wh/L程度)の場合に比べて2割程度増加する。
【0041】
・従来の単位セルのように正極容器及び負極安全管からの集電した従来方法では、正極容器長手方向(縦軸方向)の抵抗、負極安全管長手方向(縦軸方向)の抵抗及び単位セル間の接続端子の抵抗により電圧損失を招いていた。また、従来、高温腐食雰囲気でのセル間の端子の接続には、かしめ、圧着法が使用できず、ボルト締めや耐腐食コーティングなどが必要とされコスト増の要因となっている。しかし、本発明に係る正極構造を有したナトリウム−硫黄電池を単位セルとする新しい方法では、導電性セラミックス2で直接集電、且つ正極が隣接するセルの負極を兼ねているため、特別な接続手段が要らないので、導電性セラミックス2の厚みの抵抗のみ電圧降下が起こる。導電性セラミックス板2の面積は大きいため抵抗が少なく、電圧損失を低減することができ、単位セルの充放電効率とエネルギー密度が向上する。単位セル当たりの充放電効率は95%と従来の円筒型セル(89%程度)に比べて6%程度の増加が期待され、単位セル当たりのエネルギー密度は370Wh/Lと従来の円筒型セル(360〜370Wh/L程度)と同程度である。
【0042】
・単位セル21は平板型であり固体電解質板1を有底状に成形する必要はなく、正極チャンバー22の導電体4の加工においても従来の湾曲成形は不要となる。また、安全箱5に関しても有底管に成形する必要がないことから製造工程が簡素化できる。
【0043】
・固体電解質壁と絶縁体部材と集電体との関係において従来のように金属とセラミックスとのシールが介在している場合は、温度変化時に線膨張差によりシール部の破損、固体電解質壁に加わる応力等の懸念が存在したが、本発明に係るナトリウム−硫黄電池及び積層型電池にあっては、全ての部材は、線膨張係数が近似したセラミックスであるため、シール部の破損がなく、安全性が極めて高くなる。ちなみに、本実施形態で使用される固体電解質板1(β”−アルミナ)の線膨張係数は7.8×10−6[K−1]であり、絶縁性枠材3(α−アルミナ)の線膨張係数は8×10−6[K−1]であり、導電性セラミックス4(ホウ化ジルコニウム)の線膨張係数は、6×10−6[K−1]である。これに対して、従来から使用される金属としてのSUSは10×10−6[K−1]乃至16×10−6[K−1]の範囲である。
このようなことから、本発明に係るナトリウム−硫黄電池及び積層型電池は熱変動に対して極めて安定且つ安全となることが期待できる。
【0044】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係るナトリウム−硫黄電池によれば、固体電解質板の両側に正極チャンバーと負極チャンバーが配せられるナトリウム−硫黄電池であって、上記固体電解質板の両面に、導電性セラミックス板が対向して配されるので、安全且つ簡単に製造することのでき、平板型電池、特に矩形や六角形等の省スペース形状に容易に形成することができる。またナトリウム−硫黄電池を容易に積層させることができ、エネルギー密度が極めて高く、安全性に優れた積層型電池を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)及び(b)は、本発明に係るナトリウム−硫黄電池及びそれ単位セルとした積層型電池の断面図及びその概略電気回路図である。
【図2】図2(a)乃至(f)は、図1のナトリウム−硫黄電池に使用される部材の斜視図である。
【図3】図3は、従来のナトリウム−硫黄電池の縦断面図である。
【符号の説明】
1 固体電解質板
2 導電性セラミックス
3 絶縁性枠材
4 導電体
5 安全箱
21 単位セル
22 正極チャンバー
23 負極チャンバー
31 積層型電池
Claims (10)
- ナトリウムイオンを透過する固体電解質板の両側に正極チャンバーと負極チャンバーが配せられるナトリウム−硫黄電池であって、上記固体電解質板の両面に、導電性セラミックス板が対向して配されることを特徴とするナトリウム−硫黄電池。
- 上記導電性セラミックス板は、上記該固体電解質板との線膨張係数の差が、±8(×10−6[K−1])の範囲に収まることを特徴とする請求項1記載のナトリウム−硫黄電池。
- 上記導電性セラミックス板は、体積固有抵抗(Ω・cm)が20×10−5(Ω・cm)以下であることを特徴とする請求項1記載のナトリウム−硫黄電池。
- 上記導電性セラミックス板は、ホウ化物系導電性セラミックスであることを特徴とする請求項1記載のナトリウム−硫黄電池。
- 上記固体電解質板はβ”アルミナであることを特徴とする請求項1記載のナトリウム−硫黄電池。
- 上記正極チャンバー及び/又は負極チャンバーは側周壁が絶縁性セラミックスからなる枠材で形成され、該絶縁性セラミックスと上記固体電解質板及び/又は導電性セラミックス板とはガラスペーストを溶融させて接合したものであることを特徴とする請求項1記載のナトリウム−硫黄電池。
- 上記負極チャンバー内に負極活物質が収容された安全箱が設けられ、該安全箱は上記固体電解質板面及び/又は導電性セラミックス板面に略平行に対向する外壁面を有し、該外壁面には突起部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のナトリウム−硫黄電池。
- 上記請求項1乃至7のいずれかに記載のナトリウム−硫黄電池を上記正極チャンバーと負極チャンバーとを交互に複数個積層させてそれぞれ接合してなる積層型電池。
- 上記正極チャンバー内に正極活物質を含浸させた導電体が上記固体電解質板と共に立設して配せられ、該導電体は固体電解質板面から所定の厚み幅を有すると共に、固体電解質板と接する側から厚み幅方向に向けて孔を有し、該孔は上記固体電解質板から離れるに従って上向きに傾斜させて形成されていることを特徴とする請求項8記載の積層型電池。
- 上記正極チャンバーと負極チャンバーとを形成する枠材は矩形枠材、三角形枠材、或いは六角形枠材であることを特徴とする請求項8又は9記載の積層型電池。
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JP2002264410A JP2004103422A (ja) | 2002-09-10 | 2002-09-10 | ナトリウム−硫黄電池及びその積層型電池 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US9269941B2 (en) | 2010-10-20 | 2016-02-23 | Sumitomo Electric Industries, Ltd. | Molten salt battery |
US9966578B2 (en) | 2008-08-19 | 2018-05-08 | General Electric Company | Seal ring and associated method |
-
2002
- 2002-09-10 JP JP2002264410A patent/JP2004103422A/ja active Pending
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