JP2004103273A - プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラズマディスプレイパネルを、走査電極と維持電極とからなる表示電極を覆う誘電体層の表面に、珪素、アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1つの元素を有する酸化マグネシウム層を形成し、前記元素の濃度は酸化マグネシウム層の厚み方向で変化する構成とする。
このことにより、Siを含有するMgO層の表面が画像表示の放電により削られ、その削られたMgOの一部が再度MgO層表面に再付着しても、MgO層表面でのSi濃度は、常に初期の値以上を維持することができることとなり、2次電子放出係数の低下はなく、その結果、ライフ特性の良好なプラズマディスプレイパネルが実現できる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビなどの画像表示に用いられるプラズマディスプレイパネルおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータやテレビなどの画像表示に用いられているカラー表示デバイスにおいて、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)を用いたプラズマディスプレイ装置(PDP装置)は、大型で薄型軽量を実現することのできるカラー表示デバイスとして注目されている。
【0003】
PDPは、いわゆる3原色(赤、緑、青)を加法混色することにより、フルカラー表示を行っている。このフルカラー表示を行うために、PDPには3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を発光する蛍光体層が備えられ、この蛍光体層を構成する蛍光体はPDPの放電セル内で発生する紫外線により励起され、各色の可視光を生成している。
【0004】
ここで、PDPの課題の1つとして、点灯すべき放電セルが点灯しないというものがある。これは、放電セルにおいてアドレス放電が生じないというアドレスミスが発生するためであるが、保護膜(MgO)の2次電子放出係数が十分に大きくないためと考えられる。
【0005】
珪素(Si)やアルミニウム(Al)を含んだMgOを用いることで2次電子放出係数が増大し、良好な表示特性を示すという報告がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−334809号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、MgOにSiやAlを添加したPDPを点灯し続けた場合、点灯初期は良好な表示特性を示すが、時間とともにアドレスミスが増加してしまうという課題が発生し、長期的な信頼性の面では不十分であった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、長期的にもアドレスミスのない安定な表示特性を有するPDPおよびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のプラズマディスプレイパネルは、走査電極と維持電極とからなる表示電極を覆う誘電体層の表面に、珪素、アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1つの元素を有する酸化マグネシウム層を形成し、前記元素の濃度は酸化マグネシウム層の厚み方向に変化する構成としたものである。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、走査電極と維持電極とからなる表示電極を覆う誘電体層の表面に酸化マグネシウム層を形成する酸化マグネシウム形成工程を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、酸化マグネシウム形成工程は、酸化マグネシウムに珪素、アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1つの元素を含有する材料を用いた成膜工程を複数回行い、後の成膜工程ほど、前記元素を含有する量が少ない材料を用いることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、走査電極と維持電極とからなる表示電極を覆う誘電体層の表面に、珪素、アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1つの元素を有する酸化マグネシウム層を形成し、前記元素の濃度は酸化マグネシウム層の厚み方向に変化する構成としたものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記元素の濃度は、酸化マグネシウム層の表面が最小で、酸化マグネシウム層の表面から深くなるにしたがって増加することを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、酸化マグネシウム層表面での前記元素の濃度が、10ppm以上3000ppm未満であり、酸化マグネシウム層内での前記元素の濃度が、10ppmを超え3000ppm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、走査電極と維持電極とからなる表示電極を覆う誘電体層の表面に酸化マグネシウム層を形成する酸化マグネシウム形成工程を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、酸化マグネシウム形成工程は、酸化マグネシウムに珪素、アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1つの元素を含有する材料を用いた成膜工程を複数回行い、後の成膜工程ほど、前記元素を含有する量が少ない材料を用いることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、複数回行う前記成膜工程は、その前後する成膜工程の一部が重複して切り替ることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の発明において、前記成膜工程が、真空蒸着工程およびスパッタ工程の中から選ばれる一つの工程であることを特徴とするものである。
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態のPDPの画像表示領域について一部を断面で示す斜視図である。
【0019】
PDP100は、前面ガラス基板101の1主面上に表示電極103、表示スキャン電極104、誘電体ガラス層105、酸化マグネシウム(以下、MgOと記す)層106が配設された前面パネルと、背面ガラス基板102の1主面上にアドレス電極107、誘電体ガラス層108、隔壁109、及び蛍光体層110R、110G、110Bが配設された背面パネルとが張り合わされ、前面パネルと背面パネルとの間に形成される放電空間111内に放電ガスが封入され放電セル112が形成された構成となっており、図2に示すPDPの駆動装置に接続することによりプラズマディスプレイ装置を構成する。
【0020】
プラズマディスプレイ装置は、図2に示すように、PDP100に表示ドライバ回路153、表示スキャンドライバ回路154、アドレスドライバ回路155を有しており、コントローラ152の制御に従い点灯させようとする放電セルにおいて表示スキャン電極104とアドレス電極107に電圧を印加することによりその間でアドレス放電を行い、その後、表示電極103、表示スキャン電極104間にパルス電圧を印加して維持放電を行う。この維持放電により、当該放電セルにおいて波長の短い真空紫外線(波長147nm)が発生し、この真空紫外線により励起された蛍光体層(図1での110R、110G、110B)が発光することで放電セルが点灯するもので、各色放電セル112の点灯、非点灯の組み合わせによって画像が表示される。
【0021】
そして、上記構成におけるMgO層は、図3に示すように、珪素(以下、Siと記す)元素を有し、そのSi元素の濃度はMgO層の表面から深さ方向、すなわち厚み方向に変化する、例えば深さ方向に増加するものとなっている。
【0022】
ここで、図3に示す特性のMgO層を備えた本発明の一実施の形態のPDPと、MgO層の深さ方向に均一に200ppmのSiを有する従来のPDPとをそれぞれ作製し、表示状態に対するライフ評価を行った結果について述べる。
【0023】
従来のPDPでは、点灯初期にはアドレスミスがなく良好な表示状態であったが、1000h程度の連続点灯で一部アドレスミスが発生し、不灯によるちらつきが生じた。さらに点灯時間が増すにしたがってアドレスミスの発生箇所や発生確率が増加し、ちらつきが顕著となった。
【0024】
一方、本実施の形態のPDPでは、5000hの連続点灯でもアドレスミスは発生せずに、点灯初期と同様の良好な表示状態を維持できることを確認した。
【0025】
従来のPDPが、点灯時間が増すにしたがってアドレスミスが発生する原因は次のように考えられる。すなわち、画像表示のためのPDP内部での放電により、Siを含有するMgO層の表面が削られ、その削られたMgOの一部が再度MgO層表面に再付着することを確認しており、このMgO層表面へのMgOの再付着により、MgO表面ではSi濃度が減少してしまうと考えられる。この結果、MgO層の2次電子放出係数が低下し、アドレスミスが生じやすくなるものと考えられる。
【0026】
ここで、本実施の形態のPDPでは、Siを含有するMgO層の表面が削られ、その削られたMgOの一部が再度MgO層表面に再付着しても、Si元素の濃度はMgO層の厚み方向に深くなるにしたがって増加するようにしているため、MgO層表面でのSi濃度は、常に初期の値以上を維持することができることとなり、2次電子放出係数の低下はなく、その結果、ライフ特性の良好なPDPが得られるものと考えられる。
【0027】
なお、表示状態のライフ特性は、MgO膜表面でのSi濃度に大きく影響されるため、MgO層の厚み方向のSi濃度は、再付着するMgOの量を考慮した上で、常に、必要な2次電子放出係数より低くならないことが重要である。そこで、Si元素の濃度は、MgO層の表面が最小で、MgO層の表面から深くなるにしたがって増加する、図3のような特性であれば好ましい。
【0028】
ここで、アドレスミスの発生を抑制する効果は、Si元素の濃度が10ppm以上、3000ppm以下で現れ、50ppm以上500ppm以下で顕著となることを確認している。
【0029】
次に、上述したようなMgO層形成工程について説明する。
【0030】
図4に、本発明の一実施の形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法において用いる真空蒸着工程の流れを示すブロック図を示す。
【0031】
真空蒸着装置は、仕込み室121、加熱室122、蒸着室123、冷却室124から構成され、基板125はこの順に搬送されMgOが蒸着される。蒸着室123では、例えば2箇所の蒸着源126、127が基板進行方向に、蒸着源126からの蒸着物と蒸着源127からの蒸着物とが、その一部が重なり合う(領域128)ような位置関係に並んで設置されている。ここで、先の蒸着工程で使用される蒸着源126としてはSiが300ppm添加されたMgOを用い、後の蒸着工程で使用される蒸着源127としてはSiが100ppm添加されたMgOを用いる。
【0032】
基板125は、仕込み室121に搬送され真空引きされた後に、加熱室122に搬送され所定の温度まで加熱される。その後、蒸着室123に搬送され、電子ビームで加熱された蒸着源126、127により順次、MgOが蒸着される。その後、冷却室124で冷却された後に、取り出される。MgO膜の厚さは600nmとした。
【0033】
上述の真空蒸着装置によれば、蒸着源126を用いた蒸着工程と、蒸着源127を用いた蒸着工程とは、基板125の進行によって切り替り、このことにより形成されるMgO層が含有するSi元素の濃度も変化するのであるが、蒸着源126からの蒸着物と蒸着源127からの蒸着物との一部が重なり合う領域128が存在することから、Si元素の濃度の変化状態は階段状(蒸着源が2つなら2段)のものではなく、図3に示すような、滑らかなSi濃度変化状態を得ることができる。また、蒸着源の数を増やすことで、さらに滑らかなSi濃度変化状態を得ることができる。
【0034】
ここで、図4に示す装置では、蒸着源126、127の位置関係により、蒸着工程の切り替りに際して、一部が重複するようにしてSi元素の濃度変化を滑らかにする例を示したが、蒸着源からの蒸着物を飛散させるタイミングをずらすことで、すなわち先の蒸着源により第一の蒸着を行い、その後、後の蒸着源による第二の蒸着に切り替える際に、第一の蒸着が完全に終了してから第二の蒸着に切り替えるのではなく、第一の蒸着による蒸着物の飛散が行われている間に、第二の蒸着を開始し、その後、第一の蒸着を止めるというような、第一の蒸着工程と第二の蒸着工程とのそれぞれの一部が重複して切り替るように構成しても、図4に示す装置による効果と同様の効果を得ることができる。この場合も、後の蒸着工程ほど、Si元素を含有する量が少ない蒸着源を用いることが必要であることは当然である。
【0035】
また、以上に示すMgO膜は、真空蒸着工程だけではなくスパッタリング工程の場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、Si元素の代わりにアルミニウム(Al)元素を有するMgO層の場合でも、上述した同様の効果を得ることができる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、長期的にもアドレスミスのない安定な表示特性を有するPDPおよびその製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のプラズマディスプレイパネルの画像表示領域の構造の一部を示す断面斜視図
【図2】本発明の一実施の形態のプラズマディスプレイパネルを用いたプラズマディスプレイ装置のブロック図
【図3】本発明の一実施の形態のプラズマディスプレイパネルの、酸化マグネシウム層における、深さ方向のSi元素の濃度分布を示す図
【図4】本発明の一実施の形態のプラズマディスプレイパネルの製造方法において用いる真空蒸着工程の流れを示すブロック図
【符号の説明】
100 PDP
101 前面ガラス基板
102 背面ガラス基板
103 表示電極
104 表示スキャン電極
105 誘電体ガラス層
106 MgO保護層
107 アドレス電極
108 誘電体ガラス層
109 隔壁
110R 蛍光体層(赤)
110G 蛍光体層(緑)
110B 蛍光体層(青)
111 放電空間
112 放電セル
Claims (6)
- 走査電極と維持電極とからなる表示電極を覆う誘電体層の表面に、珪素、アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1つの元素を有する酸化マグネシウム層を形成し、前記元素の濃度は酸化マグネシウム層の厚み方向に変化する構成としたプラズマディスプレイパネル。
- 前記元素の濃度は、酸化マグネシウム層の表面が最小で、酸化マグネシウム層の表面から深くなるにしたがって増加することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 酸化マグネシウム層表面での前記元素の濃度が、10ppm以上3000ppm未満であり、酸化マグネシウム層内での前記元素の濃度が、10ppmを超え3000ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 走査電極と維持電極とからなる表示電極を覆う誘電体層の表面に酸化マグネシウム層を形成する酸化マグネシウム層形成工程を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、酸化マグネシウム層形成工程は、酸化マグネシウムに珪素、アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1つの元素を含有する材料を用いた成膜工程を複数回行い、後の成膜工程ほど、前記元素を含有する量が少ない材料を用いることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
- 複数回行う前記成膜工程は、その前後する成膜工程の一部が重複して切り替ることを特徴とする請求項4に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
- 前記成膜工程が、真空蒸着工程およびスパッタ工程の中から選ばれる一つの工程である請求項4または5に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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