JP2004101823A - 光学素子及び光ピックアップ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】使用基準波長380〜450nm、保護基板厚約0.6mmの光情報記録媒体に用いられ、軸上色収差及び温度変化による球面収差を補正できる光学素子及び光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学素子は、保護基板6の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体5に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置1に用いられ、前記光情報記録媒体の情報記録面7に使用基準波長380〜450nmの光束を集光させる光学素子であって、少なくとも1つの光学面上に光軸Lを中心としたL個の輪帯からなる回折構造を備え、前記光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う際に、前記回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、 90≦Lk(f1/2)≦300 であることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明に係る光学素子は、保護基板6の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体5に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置1に用いられ、前記光情報記録媒体の情報記録面7に使用基準波長380〜450nmの光束を集光させる光学素子であって、少なくとも1つの光学面上に光軸Lを中心としたL個の輪帯からなる回折構造を備え、前記光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う際に、前記回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、 90≦Lk(f1/2)≦300 であることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報記録媒体の情報記録面に光束を集光させる光学素子及び光ピックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、波長400nm程度の青紫色半導体レーザ光源と、像側開口数(NA)が0.85程度まで高められた対物レンズを用いた新しい高密度光ディスク(以下、本明細書では「高密度DVD(Digital Video Disc)」という。)に用いるための光学素子及び光ピックアップ装置の研究・開発が進んでいる(例えば、特許文献1参照。)。
一例として、開口数0.85、光源波長405nm、光ディスクの保護基板厚0.1mmの高密度DVDでは、通常のDVD(開口数0.6、光源波長650nm、光ディスクの保護基板厚0.6mm、記憶容量4.7GB)と同径の直径12cmの光ディスクに対して、1面あたり20〜30GBの情報の記録が可能である。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−242373号公報(第2−3頁、第2図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
光ピックアップ装置は、その設置箇所の気温の変動や動作時の発熱などによる温度変化にさらされる場合が多く、一般的に光ピックアップ装置の温度上昇により、レーザ発振器から出射されるレーザビームの波長が長くなる特性を有している。
また、光学素子は素材及び成型にかかるコストを抑える観点から、ガラスよりもプラスチックで成形されるのが好ましいが、プラスチックレンズは温度上昇に伴い屈折率が低下する特性を有している。
さらに、プラスチックの熱膨張率はガラスなどと比較して大きいため、プラスチックレンズは形状が変化しやすいという特性を有している。
【0005】
このようなレーザ発振器及び光学素子の特性により、光ピックアップ装置を設計する際に想定した温度よりも高温(または低温)の環境下では、光軸上に形成されるビームスポットに、温度変化による収差(以下、「温度特性収差」という。)が発生するという問題があった。
また、光ディスクに対するデータの記録及び/又は再生が可能な光ピックアップ装置では、光ディスクへのデータの読み出しと書き込みとは交互に繰り返し行われるが、読み出し状態から書き込み状態に切り替わるときに、レーザ発振器から出射されるレーザビームのエネルギー密度を瞬時に上昇させるため、レーザビームの波長が瞬間的に長くなる現象(モードホップ)が生じる場合がある。
【0006】
モードホップやその他の原因によりレーザビームの波長が長くなった場合、光軸上に形成されるビームスポットの位置が対物レンズの分散により対物レンズから遠方に移動して軸上色収差が発生して、光ディスクにデータを書き込む際にエラーが発生するという問題があった。
特に、レーザビームの波長が短くなるほど波長の単位変動量に対するレンズ材料の屈折率の変化量は大きくなることから、CDやDVD等の他の光ディスクに対して用いるレーザビームの波長と比較して、より短い波長のレーザビームを用いる高密度DVDの光ピックアップ装置においては、軸上色収差がより大きくなるという問題があった。
【0007】
ところで、上記特許文献1には、複数の輪帯に分割された輪帯構造を対物レンズの光学面上に形成し、この輪帯構造を通過する入射光に対して所定の光路差を生じさせて、上記色収差を補正する対物レンズが開示されているが、この対物レンズによれば、非球面のレンズで球面収差を抑えつつ、軸上色収差を補正することができるが、上述の温度特性収差を補正することは困難であるという問題があった。
【0008】
また、近年では、特に光ディスクの保護基板厚が約0.1mmの高密度DVDに用いる光ピックアップ装置に対する研究・開発が進んでおり、上述のような諸問題を解消できる光ピックアップ装置に対する技術が提案されている。
しかし、保護基板厚を、通常のDVD用の光ディスクの保護基板厚と等しい約0.6mmとし、開口数を0.65付近とした高密度DVD用の光ディスクに用いる光ピックアップ装置及び光学素子に関しては、上述のような諸問題を解消できる技術の提案がほとんどなされていない。
【0009】
本発明の課題は、上述の問題を考慮したものであり、使用基準波長380〜450nm、保護基板厚約0.6mmの光情報記録媒体に用いられ、軸上色収差及び温度変化による球面収差を補正できる光学素子及び光ピックアップ装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、保護基板6の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体5に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置1に用いられ、前記光情報記録媒体の情報記録面7に使用基準波長380〜450nmの光束を集光させる光学素子(例えば、対物レンズ4)であって、少なくとも1つの光学面上に光軸Lを中心としたL個の輪帯からなる回折構造を備え、前記光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う際に、前記回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、
90≦Lk(f1/2)≦300
であることを特徴とする。
【0011】
ここで、本明細書中において、保護基板とは光情報記録媒体の情報記録面を保護するために、情報記録面の光束入射面側に形成された光学的に透明な平行平板を指し、保護基板の厚さとは平行平板の厚さを指す。光源から出射された光束は、対物レンズによって保護透明基板を介して光情報記録媒体の情報記録面上に集光される。
また、光学素子とは、光ピックアップ装置の光学系を構成する、例えば、対物レンズ、カップリングレンズ(コリメータ)、ビームエキスパンダ、ビームシェイパ、補正板等の部材を指す。
また、光学素子としては、単一の部材のみで構成されているものに限定されず、例えば、複数のレンズを光軸方向に組み合わせて構成されるレンズ群をまとめて光学素子としてもよい。
対物レンズとは、狭義には光ピックアップ装置に光記録媒体を装填した状態において、最も光情報記録媒体側の位置で、これと対向すべく配置される集光作用を有するレンズを指し、広義にはそのレンズとともに、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に作動可能なレンズを指すものとする。
したがって、本明細書において、対物レンズの像側の開口数とは、対物レンズの最も光情報記録媒体側に位置するレンズ面の開口数を指すものである。
【0012】
また、本明細書では、必要(な所定の)開口数とは、光情報記録媒体の規格で規定されている開口数、あるいは、光情報記録媒体に使用する光源の波長に応じて、情報の記録または再生をするために必要なスポット径を得ることができる回折限界性能を有する対物レンズの開口数を指すものとする。
また、開口数とは、光ピックアップ装置に設けられた絞りやフィルタ等の絞り機能を有する部品又は部材や、対物レンズなどの光学素子上に設けられた回折パターンなどによって、最良像点におけるスポットの形成に寄与する光束が制限された結果として定義される開口数である。
【0013】
また、使用基準波長とは、用いられる光源が使用基準温度において出射する光束の波長を指す。これに対して、同光源が使用温度において出射する光束の波長を使用波長という。
使用基準温度とは、光学素子及び光ピックアップ装置が使用される環境の温度変化範囲内にある、常温(10〜40℃程度)のことである。
【0014】
また、情報の記録とは光情報記録媒体の情報記録面上に情報を記録することをいい、情報の再生とは光情報記録媒体の情報記録面上に記録された情報を再生することをいう。
また、本発明における光学素子は、情報の記録だけあるいは再生だけを行うために用いるものであってもよいし、記録と再生の両方を行うために用いるものであってもよい。なお、ここでいう再生とは、単に情報を読み取ることを含むものである。
【0015】
また、回折構造を備えた光学面(回折面)とは、光学素子の表面、例えばレンズの表面に、レリーフを設けて、入射光束を回折させる作用を持たせる面のことをいい、同一光学面に回折が生じる領域と生じない領域がある場合は、回折が生じる領域をいう。
レリーフの形状としては、例えば、光学素子の表面に、光軸を中心としてほぼ同心円状の輪帯として形成され、光軸を含む平面でその断面をみた場合に、各輪帯が鋸歯状あるいは階段状となったものを挙げられる。
【0016】
一般に、回折構造を備えた光学面からは、0次回折光、±1次回折光、±2次回折光、・・・、と無数の次数の回折光が生じるが、例えば、上記のような子午断面が鋸歯状となるレリーフを持つ回折面の場合は、特定の次数の回折効率を他の次数の回折効率よりも高くしたり、場合によっては、特定の1つの次数(例えば、+1次回折光)の回折効率をほぼ100%とするように、レリーフの形状を設定することができる。
また、本明細書中で、回折効率とは、回折構造により生じる回折光の光量の比率を表すもので、全次数の回折光の回折効率の和は1となる。
また、本発明において、「最大の回折効率を有する回折光の次数k」とは、使用基準波長380〜450nmの光が光学素子に入射したときに、回折光の回折効率が理論的に他の次数と比較して最大となる回折次数を指す。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、保護基板の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体の情報記録面に使用基準波長380〜450nmの光束を集光させて情報の再生及び/又は記録を行う際に、光軸を中心としたL個の輪帯からなる回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、
90≦Lk(f1/2)≦300
とすることにより、軸上色収差及び温度変化による球面収差を補正できる光学素子が得られる。
【0018】
従って、使用基準波長380〜450nmの光束を保護基板厚約0.6mmの光情報記録媒体に対して使用する場合に、プラスチックなどの温度変化により屈折率や形状が変化しやすい素材を用いて光学素子を形成した場合でも、温度特性収差の発生を抑えることができ、また、モードホップ等の理由により、レーザビームの波長が長くなった場合に生ずる軸上色収差の発生を抑えることができる。また、光情報記録媒体の再生/記録を行う際に、最大の回折効率を生じるk次の回折光を焦点に集光させてレーザビームの利用効率を高めることができる光学素子を得られる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学素子であって、 140≦Lk(f1/2)≦220 であることを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光学素子であって、開口数が0.60以上で0.70以下であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学素子であって、開口数が0.65であることを特徴とする光学素子。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子であって、プラスチックから成形されたものであることを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4と同様の効果を得られると共に、硝材の費用が節減されるとともに、金型を利用して輪帯構造を備える光学素子を射出成形により大量生産することで、光学素子をの製造コストを抑えることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、保護基板の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体の情報記録面に対して基準波長380〜450nmの光束を集光させる光学素子を備え、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置であって、前記光学素子が少なくとも1つの光学面上に光軸を中心としたL個の輪帯からなる回折構造を備え、前記光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う際に、前記回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、
90≦Lk(f1/2)≦300
であることを特徴とする。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、使用基準波長380〜450nmの光束を集光させる光学素子を用いて、保護基板の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体の情報記録面に情報の再生及び/又は記録を行う際に、光学素子が備える光軸を中心としたL個の輪帯からなる回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、
90≦Lk(f1/2)≦300
とすることにより、軸上色収差及び温度変化による球面収差を補正できる光ピックアップ装置が得られる。
また、光情報記録媒体の再生/記録を行う際に、最大の回折効率を生じるk次の回折光を焦点に集光させてレーザビームの利用効率が高い光ピックアップ装置が得られる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の光ピックアップ装置であって、 140≦Lk(f1/2)≦220 であることを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の光ピックアップ装置及び光学素子の実施の形態を、図面を参照して説明する。
光ピックアップ装置は、使用基準波長が380〜450nmの光源を用いて、保護基板の厚さが約0.6mmの高密度DVDに対して情報の記録及び/又は再生を行うために設計されたものであり、光ピックアップ装置を構成する複数の光学素子のうち少なくとも一つの光学素子の光学面上に回折構造(同心円状の輪帯)が形成されている。
図1に示すように、光ピックアップ装置1は、光源としてのレーザ発振器2から出射される使用基準波長380〜450nmの光束を、コリメータレンズ3を透過させることにより平行光束とする。そして、対物レンズを通過した光束を光軸L上で高密度DVD5の保護基板6を介して情報記録面7に集めてビームスポットを形成する。
【0027】
そして、情報記録面7で情報ピットにより変調されて反射した光束を、偏光ビームスプリッタ8で取り込み、検出器9の受光面に再びビームスポットを形成して、検出器9から出力される信号を用いて高密度DVD5に記録された情報の読み取り信号を得るものである。
ここで、本発明者の研究により、光学素子に形成した、光軸を中心とする同心円状の輪帯の数をL、高密度DVDに情報の記録及び/又は再生を行う際に回折構造により生じる回折光のうち最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)、焦点距離をfmmとした場合に、90≦Lk(f1/2)≦300 の範囲に収まるように、より好ましくは、140≦Lk(f1/2)≦220 の範囲に収まるように、L、k、fを設定した場合に、設計段階での想定値を超える温度変化により発生する収差(温度特性収差)と、設計段階での想定値を超える出射光束の波長の変化により発生する軸上色収差を許容レベルに収めることが可能であることが判明した。
【0028】
つまり、本発明にかかる光学素子及び光ピックアップ装置によれば、回折構造の回折作用を利用して、出射光束の波長の変化により発生する最良像点位置の変化や波面収差の変化、温度変化に伴う屈折率の変化により発生する波面収差の変化等を補正することが可能となる。
例えば、f=2.4mm、k=1と設定し、光学素子としての対物レンズに輪帯を形成する場合には、輪帯の数Lを、91<L<142 とすれば、温度特性収差、軸上色収差を許容レベル内に補正することができるとともに、最大の回折効率を生じる1次の回折光を用いた、光束の利用効率が高い対物レンズを得ることができる。
【0029】
【実施例】
次に、上記実施の形態で示した光ピックアップ装置及び光学素子の実施例について説明する。
本実施例においては、図2に示すように、両面非球面の単レンズである対物レンズ4の一方(光源側)の非球面4a上に輪帯を形成している。
表1〜3に対物レンズのレンズデータを示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すように、本実施例の対物レンズ4は、使用基準波長が405nmのときの焦点距離f=2.4mm、像側開口数NA=0.65に設定されている。また、有効径(NA=0.65)での輪帯数L=100、k=1に設定されている。
従って、Lk(f1/2)≒155となっており、140≦Lk(f1/2)≦220 の条件を満たす対物レンズである。
表1中の面No.1、2はそれぞれ、対物レンズ4の第1面4a、第2面4bを示しており、面番号3、4はそれぞれ、高密度DVDの保護基板の表面6a、記録層7を表している。また、Rは曲率半径、dは高密度DVDの記録層を原点として、光束の反射方向を正とした場合の光軸上の距離、nは屈折率を表している。
【0032】
第1面は、図2に示す母非球面を、光軸L方向に、光軸Lを中心とした同心円上の輪帯に分割されていて、光軸から離れるにしたがって、厚みが増すように形成されている。
隣り合う2つの輪帯の間の段差は、一の輪帯を通過する光線と、その隣の輪帯を通過する光線との間に使用基準波長のほぼ整数倍の光路差を生じ、かつ波面のずれが生じない長さに設定されている。
【0033】
対物レンズ4の第1面4aと第2面4bは、それぞれ次式(数1)に表2に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、Xは光軸方向の軸(光の進行方向を正とする)、hは光軸からの高さ、Rは近軸曲率半径、κは円錐係数、A2iは非球面係数である。
また、一般に、回折輪帯のピッチは光路差関数を使って定義される。具体的には、光路差関数Φ(h)は単位をmmとして(数2)で表わされ、数2に、表2に示す係数を代入した数式で規定される。
【0036】
【数2】
ここで、B2iは光路差関数の係数、hは光軸からの高さである。
【0037】
【表2】
【0038】
表3は、本実施例に示した光学素子(対物レンズ4)及び光ピックアップ装置1を用いた場合の評価を示すものである。
【0039】
【表3】
【0040】
表3中、(i)は出射光束の波長の変化(1nmの増加)により発生する最良像点位置の変化量、(ii)は出射光束の波長の変化(5nmの増加)により発生する波面収差、(iii)は使用基準温度からの温度変化(30度の増加)に伴う屈折率の変化により発生する波面収差を表している。
表3から、本実施例に示した光学素子及び光ピックアップ装置によれば、温度特性収差と、出射光束の波長の変化により発生する軸上色収差を許容レベルに収めることが可能であることが分かる。
【0041】
次に、比較例として、軸上色収差の補正に対応していない対物レンズを図2に示した光ピックアップ装置1に用いた場合について説明する。
以下、対物レンズのレンズデータを示す(表4、表5を参照)。
この対物レンズは有効径(NA=0.65)での輪帯数L=47、k=1、光源波長400nmを用いた場合の焦点距離f=3.33mm、像側開口数NA=0.70に設定されている。
従って、Lk(f1/2)≒86となっており、90≦Lk(f1/2)≦300 の条件を満たしていない対物レンズである。
なお、対物レンズの像側の最大開口数に対応する輪帯のピッチPf=0.011mm、最大開口数の1/2の開口数に対応する輪帯のピッチPh=0.060mmとなっている。
【0042】
対物レンズの第1面の母非球面と第2面は、それぞれ数1に表4及び表5に示す係数を代入した数式で規定される、光軸の周りに軸対称な非球面に形成されている。
また、光路差関数Φ(h)は数2に、表5に示す係数を代入した数式で規定される。
【0043】
【表4】
【表5】
【0044】
図3は、本比較例における対物レンズについて、使用基準波長400nmに対する開口数0〜0.70までの球面収差図であり、NA0.70までの全開口がほぼ無収差となっていることが分かる。
【0045】
ここで、上述のように、本比較例における対物レンズは、Lk(f1/2)≒86であり、90≦Lk(f1/2)≦300 の条件を満たしていない。
そして、本発明者による検討の結果、この対物レンズを軸上色収差の補正に対応させるには、輪帯数Lを増加させる必要があり、90≦Lk(f1/2)≦300 を満たすように輪帯数Lを設定することにより、設計段階での想定値を超える温度変化により発生する球面収差と、設計段階での想定値を超える出射光束の波長の変化により発生する軸上色収差を許容レベルに収めることができることが判明した。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、保護基板の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体の情報記録面に使用基準波長380〜450nmの光束を集光させて情報の再生及び/又は記録を行う際に、光軸を中心としたL個の輪帯からなる回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、 90≦Lk(f1/2)≦300 とすることにより、軸上色収差及び温度変化による球面収差を補正できる光学素子及び光ピックアップ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る光ピックアップ装置及び光学素子の一例を示す概略図である。
【図2】対物レンズの構造を示す要部側面図である。
【図3】比較例の対物レンズの縦球面収差図である。
【符号の説明】
L 光軸
1 光ピックアップ装置
4 対物レンズ
5 光情報記録媒体
6 保護基板
7 情報記録面
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報記録媒体の情報記録面に光束を集光させる光学素子及び光ピックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、波長400nm程度の青紫色半導体レーザ光源と、像側開口数(NA)が0.85程度まで高められた対物レンズを用いた新しい高密度光ディスク(以下、本明細書では「高密度DVD(Digital Video Disc)」という。)に用いるための光学素子及び光ピックアップ装置の研究・開発が進んでいる(例えば、特許文献1参照。)。
一例として、開口数0.85、光源波長405nm、光ディスクの保護基板厚0.1mmの高密度DVDでは、通常のDVD(開口数0.6、光源波長650nm、光ディスクの保護基板厚0.6mm、記憶容量4.7GB)と同径の直径12cmの光ディスクに対して、1面あたり20〜30GBの情報の記録が可能である。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−242373号公報(第2−3頁、第2図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
光ピックアップ装置は、その設置箇所の気温の変動や動作時の発熱などによる温度変化にさらされる場合が多く、一般的に光ピックアップ装置の温度上昇により、レーザ発振器から出射されるレーザビームの波長が長くなる特性を有している。
また、光学素子は素材及び成型にかかるコストを抑える観点から、ガラスよりもプラスチックで成形されるのが好ましいが、プラスチックレンズは温度上昇に伴い屈折率が低下する特性を有している。
さらに、プラスチックの熱膨張率はガラスなどと比較して大きいため、プラスチックレンズは形状が変化しやすいという特性を有している。
【0005】
このようなレーザ発振器及び光学素子の特性により、光ピックアップ装置を設計する際に想定した温度よりも高温(または低温)の環境下では、光軸上に形成されるビームスポットに、温度変化による収差(以下、「温度特性収差」という。)が発生するという問題があった。
また、光ディスクに対するデータの記録及び/又は再生が可能な光ピックアップ装置では、光ディスクへのデータの読み出しと書き込みとは交互に繰り返し行われるが、読み出し状態から書き込み状態に切り替わるときに、レーザ発振器から出射されるレーザビームのエネルギー密度を瞬時に上昇させるため、レーザビームの波長が瞬間的に長くなる現象(モードホップ)が生じる場合がある。
【0006】
モードホップやその他の原因によりレーザビームの波長が長くなった場合、光軸上に形成されるビームスポットの位置が対物レンズの分散により対物レンズから遠方に移動して軸上色収差が発生して、光ディスクにデータを書き込む際にエラーが発生するという問題があった。
特に、レーザビームの波長が短くなるほど波長の単位変動量に対するレンズ材料の屈折率の変化量は大きくなることから、CDやDVD等の他の光ディスクに対して用いるレーザビームの波長と比較して、より短い波長のレーザビームを用いる高密度DVDの光ピックアップ装置においては、軸上色収差がより大きくなるという問題があった。
【0007】
ところで、上記特許文献1には、複数の輪帯に分割された輪帯構造を対物レンズの光学面上に形成し、この輪帯構造を通過する入射光に対して所定の光路差を生じさせて、上記色収差を補正する対物レンズが開示されているが、この対物レンズによれば、非球面のレンズで球面収差を抑えつつ、軸上色収差を補正することができるが、上述の温度特性収差を補正することは困難であるという問題があった。
【0008】
また、近年では、特に光ディスクの保護基板厚が約0.1mmの高密度DVDに用いる光ピックアップ装置に対する研究・開発が進んでおり、上述のような諸問題を解消できる光ピックアップ装置に対する技術が提案されている。
しかし、保護基板厚を、通常のDVD用の光ディスクの保護基板厚と等しい約0.6mmとし、開口数を0.65付近とした高密度DVD用の光ディスクに用いる光ピックアップ装置及び光学素子に関しては、上述のような諸問題を解消できる技術の提案がほとんどなされていない。
【0009】
本発明の課題は、上述の問題を考慮したものであり、使用基準波長380〜450nm、保護基板厚約0.6mmの光情報記録媒体に用いられ、軸上色収差及び温度変化による球面収差を補正できる光学素子及び光ピックアップ装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、保護基板6の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体5に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置1に用いられ、前記光情報記録媒体の情報記録面7に使用基準波長380〜450nmの光束を集光させる光学素子(例えば、対物レンズ4)であって、少なくとも1つの光学面上に光軸Lを中心としたL個の輪帯からなる回折構造を備え、前記光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う際に、前記回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、
90≦Lk(f1/2)≦300
であることを特徴とする。
【0011】
ここで、本明細書中において、保護基板とは光情報記録媒体の情報記録面を保護するために、情報記録面の光束入射面側に形成された光学的に透明な平行平板を指し、保護基板の厚さとは平行平板の厚さを指す。光源から出射された光束は、対物レンズによって保護透明基板を介して光情報記録媒体の情報記録面上に集光される。
また、光学素子とは、光ピックアップ装置の光学系を構成する、例えば、対物レンズ、カップリングレンズ(コリメータ)、ビームエキスパンダ、ビームシェイパ、補正板等の部材を指す。
また、光学素子としては、単一の部材のみで構成されているものに限定されず、例えば、複数のレンズを光軸方向に組み合わせて構成されるレンズ群をまとめて光学素子としてもよい。
対物レンズとは、狭義には光ピックアップ装置に光記録媒体を装填した状態において、最も光情報記録媒体側の位置で、これと対向すべく配置される集光作用を有するレンズを指し、広義にはそのレンズとともに、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に作動可能なレンズを指すものとする。
したがって、本明細書において、対物レンズの像側の開口数とは、対物レンズの最も光情報記録媒体側に位置するレンズ面の開口数を指すものである。
【0012】
また、本明細書では、必要(な所定の)開口数とは、光情報記録媒体の規格で規定されている開口数、あるいは、光情報記録媒体に使用する光源の波長に応じて、情報の記録または再生をするために必要なスポット径を得ることができる回折限界性能を有する対物レンズの開口数を指すものとする。
また、開口数とは、光ピックアップ装置に設けられた絞りやフィルタ等の絞り機能を有する部品又は部材や、対物レンズなどの光学素子上に設けられた回折パターンなどによって、最良像点におけるスポットの形成に寄与する光束が制限された結果として定義される開口数である。
【0013】
また、使用基準波長とは、用いられる光源が使用基準温度において出射する光束の波長を指す。これに対して、同光源が使用温度において出射する光束の波長を使用波長という。
使用基準温度とは、光学素子及び光ピックアップ装置が使用される環境の温度変化範囲内にある、常温(10〜40℃程度)のことである。
【0014】
また、情報の記録とは光情報記録媒体の情報記録面上に情報を記録することをいい、情報の再生とは光情報記録媒体の情報記録面上に記録された情報を再生することをいう。
また、本発明における光学素子は、情報の記録だけあるいは再生だけを行うために用いるものであってもよいし、記録と再生の両方を行うために用いるものであってもよい。なお、ここでいう再生とは、単に情報を読み取ることを含むものである。
【0015】
また、回折構造を備えた光学面(回折面)とは、光学素子の表面、例えばレンズの表面に、レリーフを設けて、入射光束を回折させる作用を持たせる面のことをいい、同一光学面に回折が生じる領域と生じない領域がある場合は、回折が生じる領域をいう。
レリーフの形状としては、例えば、光学素子の表面に、光軸を中心としてほぼ同心円状の輪帯として形成され、光軸を含む平面でその断面をみた場合に、各輪帯が鋸歯状あるいは階段状となったものを挙げられる。
【0016】
一般に、回折構造を備えた光学面からは、0次回折光、±1次回折光、±2次回折光、・・・、と無数の次数の回折光が生じるが、例えば、上記のような子午断面が鋸歯状となるレリーフを持つ回折面の場合は、特定の次数の回折効率を他の次数の回折効率よりも高くしたり、場合によっては、特定の1つの次数(例えば、+1次回折光)の回折効率をほぼ100%とするように、レリーフの形状を設定することができる。
また、本明細書中で、回折効率とは、回折構造により生じる回折光の光量の比率を表すもので、全次数の回折光の回折効率の和は1となる。
また、本発明において、「最大の回折効率を有する回折光の次数k」とは、使用基準波長380〜450nmの光が光学素子に入射したときに、回折光の回折効率が理論的に他の次数と比較して最大となる回折次数を指す。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、保護基板の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体の情報記録面に使用基準波長380〜450nmの光束を集光させて情報の再生及び/又は記録を行う際に、光軸を中心としたL個の輪帯からなる回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、
90≦Lk(f1/2)≦300
とすることにより、軸上色収差及び温度変化による球面収差を補正できる光学素子が得られる。
【0018】
従って、使用基準波長380〜450nmの光束を保護基板厚約0.6mmの光情報記録媒体に対して使用する場合に、プラスチックなどの温度変化により屈折率や形状が変化しやすい素材を用いて光学素子を形成した場合でも、温度特性収差の発生を抑えることができ、また、モードホップ等の理由により、レーザビームの波長が長くなった場合に生ずる軸上色収差の発生を抑えることができる。また、光情報記録媒体の再生/記録を行う際に、最大の回折効率を生じるk次の回折光を焦点に集光させてレーザビームの利用効率を高めることができる光学素子を得られる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学素子であって、 140≦Lk(f1/2)≦220 であることを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光学素子であって、開口数が0.60以上で0.70以下であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学素子であって、開口数が0.65であることを特徴とする光学素子。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子であって、プラスチックから成形されたものであることを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4と同様の効果を得られると共に、硝材の費用が節減されるとともに、金型を利用して輪帯構造を備える光学素子を射出成形により大量生産することで、光学素子をの製造コストを抑えることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、保護基板の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体の情報記録面に対して基準波長380〜450nmの光束を集光させる光学素子を備え、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置であって、前記光学素子が少なくとも1つの光学面上に光軸を中心としたL個の輪帯からなる回折構造を備え、前記光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う際に、前記回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、
90≦Lk(f1/2)≦300
であることを特徴とする。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、使用基準波長380〜450nmの光束を集光させる光学素子を用いて、保護基板の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体の情報記録面に情報の再生及び/又は記録を行う際に、光学素子が備える光軸を中心としたL個の輪帯からなる回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、
90≦Lk(f1/2)≦300
とすることにより、軸上色収差及び温度変化による球面収差を補正できる光ピックアップ装置が得られる。
また、光情報記録媒体の再生/記録を行う際に、最大の回折効率を生じるk次の回折光を焦点に集光させてレーザビームの利用効率が高い光ピックアップ装置が得られる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の光ピックアップ装置であって、 140≦Lk(f1/2)≦220 であることを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の光ピックアップ装置及び光学素子の実施の形態を、図面を参照して説明する。
光ピックアップ装置は、使用基準波長が380〜450nmの光源を用いて、保護基板の厚さが約0.6mmの高密度DVDに対して情報の記録及び/又は再生を行うために設計されたものであり、光ピックアップ装置を構成する複数の光学素子のうち少なくとも一つの光学素子の光学面上に回折構造(同心円状の輪帯)が形成されている。
図1に示すように、光ピックアップ装置1は、光源としてのレーザ発振器2から出射される使用基準波長380〜450nmの光束を、コリメータレンズ3を透過させることにより平行光束とする。そして、対物レンズを通過した光束を光軸L上で高密度DVD5の保護基板6を介して情報記録面7に集めてビームスポットを形成する。
【0027】
そして、情報記録面7で情報ピットにより変調されて反射した光束を、偏光ビームスプリッタ8で取り込み、検出器9の受光面に再びビームスポットを形成して、検出器9から出力される信号を用いて高密度DVD5に記録された情報の読み取り信号を得るものである。
ここで、本発明者の研究により、光学素子に形成した、光軸を中心とする同心円状の輪帯の数をL、高密度DVDに情報の記録及び/又は再生を行う際に回折構造により生じる回折光のうち最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)、焦点距離をfmmとした場合に、90≦Lk(f1/2)≦300 の範囲に収まるように、より好ましくは、140≦Lk(f1/2)≦220 の範囲に収まるように、L、k、fを設定した場合に、設計段階での想定値を超える温度変化により発生する収差(温度特性収差)と、設計段階での想定値を超える出射光束の波長の変化により発生する軸上色収差を許容レベルに収めることが可能であることが判明した。
【0028】
つまり、本発明にかかる光学素子及び光ピックアップ装置によれば、回折構造の回折作用を利用して、出射光束の波長の変化により発生する最良像点位置の変化や波面収差の変化、温度変化に伴う屈折率の変化により発生する波面収差の変化等を補正することが可能となる。
例えば、f=2.4mm、k=1と設定し、光学素子としての対物レンズに輪帯を形成する場合には、輪帯の数Lを、91<L<142 とすれば、温度特性収差、軸上色収差を許容レベル内に補正することができるとともに、最大の回折効率を生じる1次の回折光を用いた、光束の利用効率が高い対物レンズを得ることができる。
【0029】
【実施例】
次に、上記実施の形態で示した光ピックアップ装置及び光学素子の実施例について説明する。
本実施例においては、図2に示すように、両面非球面の単レンズである対物レンズ4の一方(光源側)の非球面4a上に輪帯を形成している。
表1〜3に対物レンズのレンズデータを示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すように、本実施例の対物レンズ4は、使用基準波長が405nmのときの焦点距離f=2.4mm、像側開口数NA=0.65に設定されている。また、有効径(NA=0.65)での輪帯数L=100、k=1に設定されている。
従って、Lk(f1/2)≒155となっており、140≦Lk(f1/2)≦220 の条件を満たす対物レンズである。
表1中の面No.1、2はそれぞれ、対物レンズ4の第1面4a、第2面4bを示しており、面番号3、4はそれぞれ、高密度DVDの保護基板の表面6a、記録層7を表している。また、Rは曲率半径、dは高密度DVDの記録層を原点として、光束の反射方向を正とした場合の光軸上の距離、nは屈折率を表している。
【0032】
第1面は、図2に示す母非球面を、光軸L方向に、光軸Lを中心とした同心円上の輪帯に分割されていて、光軸から離れるにしたがって、厚みが増すように形成されている。
隣り合う2つの輪帯の間の段差は、一の輪帯を通過する光線と、その隣の輪帯を通過する光線との間に使用基準波長のほぼ整数倍の光路差を生じ、かつ波面のずれが生じない長さに設定されている。
【0033】
対物レンズ4の第1面4aと第2面4bは、それぞれ次式(数1)に表2に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、Xは光軸方向の軸(光の進行方向を正とする)、hは光軸からの高さ、Rは近軸曲率半径、κは円錐係数、A2iは非球面係数である。
また、一般に、回折輪帯のピッチは光路差関数を使って定義される。具体的には、光路差関数Φ(h)は単位をmmとして(数2)で表わされ、数2に、表2に示す係数を代入した数式で規定される。
【0036】
【数2】
ここで、B2iは光路差関数の係数、hは光軸からの高さである。
【0037】
【表2】
【0038】
表3は、本実施例に示した光学素子(対物レンズ4)及び光ピックアップ装置1を用いた場合の評価を示すものである。
【0039】
【表3】
【0040】
表3中、(i)は出射光束の波長の変化(1nmの増加)により発生する最良像点位置の変化量、(ii)は出射光束の波長の変化(5nmの増加)により発生する波面収差、(iii)は使用基準温度からの温度変化(30度の増加)に伴う屈折率の変化により発生する波面収差を表している。
表3から、本実施例に示した光学素子及び光ピックアップ装置によれば、温度特性収差と、出射光束の波長の変化により発生する軸上色収差を許容レベルに収めることが可能であることが分かる。
【0041】
次に、比較例として、軸上色収差の補正に対応していない対物レンズを図2に示した光ピックアップ装置1に用いた場合について説明する。
以下、対物レンズのレンズデータを示す(表4、表5を参照)。
この対物レンズは有効径(NA=0.65)での輪帯数L=47、k=1、光源波長400nmを用いた場合の焦点距離f=3.33mm、像側開口数NA=0.70に設定されている。
従って、Lk(f1/2)≒86となっており、90≦Lk(f1/2)≦300 の条件を満たしていない対物レンズである。
なお、対物レンズの像側の最大開口数に対応する輪帯のピッチPf=0.011mm、最大開口数の1/2の開口数に対応する輪帯のピッチPh=0.060mmとなっている。
【0042】
対物レンズの第1面の母非球面と第2面は、それぞれ数1に表4及び表5に示す係数を代入した数式で規定される、光軸の周りに軸対称な非球面に形成されている。
また、光路差関数Φ(h)は数2に、表5に示す係数を代入した数式で規定される。
【0043】
【表4】
【表5】
【0044】
図3は、本比較例における対物レンズについて、使用基準波長400nmに対する開口数0〜0.70までの球面収差図であり、NA0.70までの全開口がほぼ無収差となっていることが分かる。
【0045】
ここで、上述のように、本比較例における対物レンズは、Lk(f1/2)≒86であり、90≦Lk(f1/2)≦300 の条件を満たしていない。
そして、本発明者による検討の結果、この対物レンズを軸上色収差の補正に対応させるには、輪帯数Lを増加させる必要があり、90≦Lk(f1/2)≦300 を満たすように輪帯数Lを設定することにより、設計段階での想定値を超える温度変化により発生する球面収差と、設計段階での想定値を超える出射光束の波長の変化により発生する軸上色収差を許容レベルに収めることができることが判明した。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、保護基板の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体の情報記録面に使用基準波長380〜450nmの光束を集光させて情報の再生及び/又は記録を行う際に、光軸を中心としたL個の輪帯からなる回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、 90≦Lk(f1/2)≦300 とすることにより、軸上色収差及び温度変化による球面収差を補正できる光学素子及び光ピックアップ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る光ピックアップ装置及び光学素子の一例を示す概略図である。
【図2】対物レンズの構造を示す要部側面図である。
【図3】比較例の対物レンズの縦球面収差図である。
【符号の説明】
L 光軸
1 光ピックアップ装置
4 対物レンズ
5 光情報記録媒体
6 保護基板
7 情報記録面
Claims (7)
- 保護基板の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置に用いられ、前記光情報記録媒体の情報記録面に使用基準波長380〜450nmの光束を集光させる光学素子であって、
少なくとも1つの光学面上に光軸を中心としたL個の輪帯からなる回折構造を備え、前記光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う際に前記回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、
90≦Lk(f1/2)≦300
であることを特徴とする光学素子。 - 請求項1に記載の光学素子であって、
140≦Lk(f1/2)≦220
であることを特徴とする光学素子。 - 請求項1又は2に記載の光学素子であって、
開口数が0.60以上で0.70以下であることを特徴とする光学素子。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学素子であって、
開口数が0.65であることを特徴とする光学素子。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
プラスチックから成形されたものであることを特徴とする光学素子。 - 保護基板の厚さが約0.6mmである光情報記録媒体の情報記録面に対して基準波長380〜450nmの光束を集光させる光学素子を備え、情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置であって、
前記光学素子が、少なくとも1つの光学面上に光軸を中心としたL個の輪帯からなる回折構造を備え、
前記光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う際に前記回折構造により生じる回折光のうち、最大の回折効率を有する回折光の次数をk(自然数)とし、焦点距離をfmmとした場合に、
90≦Lk(f1/2)≦300
であることを特徴とする光ピックアップ装置。 - 請求項6に記載の光ピックアップ装置であって、
140≦Lk(f1/2)≦220
であることを特徴とする光ピックアップ装置。
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