JP2004100663A - 空気調和機 - Google Patents

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Abstract

【課題】ルームエアコンの室内ユニットにおいて、貫流ファンの風量を増加させつつ騒音を低減させることにより、省電力で静かな空気調和機を提供する。
【解決手段】円板13に羽根12を備えた貫流ファン1において、羽根断面肉厚の中心を示す反り線17は二つの円弧を含み、それぞれの円弧の反り方向は互いに反転しており、羽根12の圧力面18は回転軸方向に対して一致する。また、羽根間流路幅は内径側に対して外径側が60〜80%の範囲で変化することで達成される。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和機の室内ユニットに備えられている貫流ファンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、空気調和機においては省電力・静音化が求められており、その省電力化のための一手法として室内ユニット内に設けられ、熱交換器内を流れる冷媒と熱交換された室内の空気を室内ユニット外に吹出すファンの風量を増大させる方法がある。室内ユニットのファンとしては壁掛け式空気調和機の場合貫流ファン(クロスフローファン)が用いられることが主流である。よく知られているように、この室内ユニットのファンの風量を増加させると室内熱交換器の熱交換性能が向上する。ファン回転数を増加させることなくファン風量を増大させることができれば、結果的に空気調和機全体の性能が向上し省電力(消費電力を変えずに)で同じ空調効果を生み出すことが可能となる。
【0003】
この室内ユニットの送風機の風量増大を図る手法として、前述の通り室内ユニットの送風機である貫流ファンの回転数を上げること、及びファンの外径を大きくすることが考えられる。
【0004】
ところで、室内ユニット動作時の乱流音(高帯域の周波数帯域に分布する音)は貫流ファンの回転数の7〜8乗に比例するので、前者の手法で風量を30%増加させる場合、9dBも増加してしまう。一方、乱流音は貫流ファンの外径の4〜5乗に比例するので、後者の手法で風量を30%増やす場合、5dBの増加に留めることができる。
【0005】
その結果、騒音(乱流音)を出来る限り増加させることなく風量を増大させるためには後者の手法が妥当であると考えられる。しかし、室内ユニットの寸法は限られており、そのため室内ユニットの内側に備え付けられている貫流ファンの大きさにも制限があり、現状より外径を大きくすることは難しくなってきている。また、貫流ファンの外径を限界まで大きくすると、貫流ファンとノーズ間の隙間が小さくなることにより際立ってくる異音(羽根枚数Zと回転数N(/sec)の積により発生する周波数Z・N(Hz)、またはその高次の周波数)、及び室内熱交換器と貫流ファンとの距離が近くなることで貫流ファンの羽根がウェーク領域(熱交換器を通過する気流の速度分布はパイプ下流が遅く、その局所的に速度分布が大きく変化している領域)に近づき、羽根がその領域を通過することにより発生する音の問題がある。
【0006】
そこで、以上の貫流ファンとの干渉による羽根音を抑えて騒音を低減させる従来技術として、特許文献1、特許文献2が知られている。これら二つの文献は、効果の違いはあっても原理的に同じであり、風量を増加させるために貫流ファンを大きくしノーズ隙間が小さくなっても騒音(羽根音)を抑える効果がある。
【0007】
すなわち、原理的には、貫流ファンの羽根外径を回転軸方向に対して変化させることで、貫流ファンの羽根外周先端構造をノーズに対して傾斜させ、その傾斜により羽根外周先端がノーズ(又は、ウェーク領域)を通過するとき時間差(位相差)がでるようにしている。
【0008】
従って、羽根外周先端とノーズの位置関係から発生する周期的音を時間的に分散させることで羽根音を抑制することができ、ノーズ隙間を小さくして高風量化を図っている。
【0009】
その他の従来技術としては特許文献3、特許文献4が知られている。これら公報に記載されている内容を説明する。貫流ファンの羽根音を防止するため、羽根の周方向取り付けピッチを不等間隔にして、各羽根の周方向の位相を異ならせることによってピーク音を抑制して全体的に騒音を低減させるというものである。
【0010】
これら特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4に記載された低騒音・高風量化技術は手法に違いはあるが、羽根音を周期的に分散させる点に関して共通しており、騒音(羽根音)を低減させた分風量を増加させ、空気調和機の性能を向上させることができる。
【特許文献1】
特開平9−100795号公報
【特許文献2】
特開2001−50189号公報
【特許文献3】
特開平6−129387号公報
【特許文献4】
特開平6−173886号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら現状において、空気調和機はより一層の省電力・静音化(低騒音・高風量化)が求められており、そのためには更なる高効率・低騒音の貫流ファンが必要となる。また、貫流ファンの音には流体により発生する広帯域の乱流音があり、上記の従来技術は周期的な羽根音を抑制できても、この乱流音を低減することはできない。このため従来技術に見られる手法のみでは更なる低騒音・省電力を実現することは難しいのが実情である。
【0012】
本発明の目的は、流体による乱流音を低減しながら低騒音にし、高風量化によって省電力化を実現するルームエアコンを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、室内ユニット内に貫流ファンを備えた空気調和機において、前記貫流ファンの羽根断面の肉厚中心を示す反り線は二つの円弧を含み、それぞれの円弧の反り方向を互いに反転させることにより達成される。
【0014】
また、上記目的は、室内ユニット内に貫流ファンを備えた空気調和機において、前記貫流ファンを構成する羽根の圧力面を回転軸方向に対して一致させることにより達成される。
【0015】
また、上記目的は、室内ユニット内に貫流ファンを備えた空気調和機において、前記貫流ファンの羽根間流路幅を内径側に対して外径側を60〜80%の範囲になるように羽根の厚さを設定することによって達成される。
【0016】
第二の手段は、室内ユニットの送風機として貫流ファンを備えている空気調和機において、ファンを構成する羽根の圧力面を回転軸方向に対して一致させた構造としたことである。圧力面を一致させることで回転軸方向の速度分布は乱れることなくバランスを整えられ、貫流ファンの性能の向上につながっている。
【0017】
第三の手段は、室内ユニットの送風機として貫流ファンを備えている空気調和機において、ファンの羽根間流路幅が内径側に対して外径側は60〜80%に変化する構造としたことである。貫流ファンは基本的に吹き出し側に向かって流体の速度が増加していく増速翼列であり、この羽根間流路幅により流体の増速の程度が決定されることになり、貫流ファン性能に多大な影響を与えることができる。
【0018】
第四の手段は、低騒音効果を高めるために、以上三つの手段の何れかに加えファンの羽根外径を回転軸方向に対して変化させた構造としたことである。羽根外径を変化させることにより、羽根の干渉に時間差(位相差)を与えることで羽根音を抑制し低騒音化を図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例を図1〜図8に基づき以下に説明する。
【0020】
図1はルームエアコン室内ユニット全体を示しており、(a)は正面からの全体図を、(b)は室内ユニット側面からの断面を表している。ユニット全体は化粧枠2に覆われ、フィルター5、熱交換器6、貫流ファン1の順に内包された構造となっており、貫流ファン1の下方にケーシング7が設けられている。
【0021】
貫流ファン1の概観は図2に示しており、(c)は全体の形状を、(d)は回転軸方向から見た断面を表している。羽根12が円周方向に配置された円板13を一つのファンブロックとし、このファンブロックを回転軸方向に数個組み合わせることで一つの貫流ファン1が構成される。また、ファンの両端には端面円板14とボス16を備えたボス付端面円板15が取付けられており、端面円板14を軸受け側、ボス付端面円板15をモータ軸側として回転する。
【0022】
ユニットでの実際の運転状態において、貫流ファン1はモータ10により図1(b)上で右周りに回転し、化粧枠2に設けられた前面グリル3と上面グリル4から空気を吸込み、ユニット下部の吹出し口から送風する。ユニット内部での気流は、フィルター5を介して熱交換器6に到達し、この熱交換器6を通過する過程で冷やされ、または暖められる。熱交換された気流は貫流ファン1を貫通しケーシング7側に出てゆき、吹出し口付近で縦風向板8と横風向板9により風向を制御され流れ出る。
【0023】
図3、図4、図5は本実施例に係る貫流ファンの特徴を示しており、貫流ファン1を回転軸方向から見た断面の拡大図である。以下にその内容を記す。
【0024】
図3において、羽根12の肉厚の中心を示す反り線17は曲率半径ρとρの二円弧から形成されており、それぞれの円弧の反り方向を互いに反転させている。また、この羽根12を形成している肉厚の分布は、翼弦長の中腹から羽根外周先端、羽根内周先端の両端に向かって次第に薄くなった翼形状を形成している。
【0025】
ここで流体の性質に着目すると、一般的に流速が速くなるほど乱流音は増大することになり、また必要とする入力も増加することになる。乱流音に関しては以下の数式(1)に示されているように、貫流ファンの羽根先端を通過する流速(代表速度)V(m/s)に依存している。
【0026】
【数1】
Figure 2004100663
αは変換係数であり流体機械の種類・状態により異なる定値をとる。そのため、騒音値SPLは代表速度Vにより値が大きく変化することになる。ルームエアコンに使用されている貫流ファンでは代表速度Vを10%減少させれば、騒音値SPLを3dB低減することができる。そして、入力に関しても以下の数式(2)に示しているように、貫流ファンの羽根を通過して吹出す流速(代表速度)Vに依存している。
【0027】
【数2】
Figure 2004100663
wは単位体積当たりの流体に与えられる入力(w/m)であり、p、ρはその流体領域における圧力(Pa)と密度(kg/m)を示している。大気中でルームエアコンを運転している状態では、圧力pは上流側・下流側共に大気圧に近似されることでほぼ影響を与えないと考えることができる。また、ルームエアコンの貫流ファンの送風性能では、流体は非圧縮性と見なすことができるので密度ρは一定となり、入力wに大きく影響を与えている要素は、貫流ファンから吹出してくる代表速度Vとなる。よって、流量を定量的とした場合、広い領域を使用して流体を送り出すことで流速Vを低下させれば、入力wを低減させることができる。入力wを一定とした場合は、広い領域で流体を送り出すことでより多くの流量を流すことが可能となる。
【0028】
以上のことから、貫流ファン1の羽根断面形状の中心線17を二円弧で反転した構造にすれば最大流速領域となるケーシング7側の羽根外周付近における流出領域が拡大され、流体を広くゆっくり送り出すことができる。一円弧で形成された羽根(例えば、図3においてρ2のみで形成)との相違を説明する。一円弧で形成された羽根を用いた貫流ファンの流れ解析を実行し、最外周の羽根間(隣接する回転方向前方の羽根の先端から演算対象の羽根の先端)の流速分布を求めた。これによると、流速分布は一様ではなく、演算対象となる羽根の先端付近の流速が突出して速いことがわかった。前述したように流速は騒音に直接関与し、一部分のみが高流速であるため全体風量にあまり寄与していないことがわかった。そこで、本実施例では、羽根の外周側先端を半回転方向に反らせることで先の突出した高流速を抑制可能であることが判った。
【0029】
その結果、低騒音・高効率となり、省電力・風量増加を図ることで空気調和機の性能が向上することになる。その送風性能についての効果を以下に示す。図6は、図2(d)において貫流ファン1が時計回り(右回り)の場合に、曲率半径ρと効率ηの関係を表しており、横軸には曲率半径ρの反り方向を正とした場合の曲率半径ρの逆数をとり、縦軸には効率比η/ηをとっている。(ηは従来貫流ファンの効率を示しており、従来ファンについては図8において説明する。)性能評価の指標として用いている効率ηは貫流ファンのファン効率であり数式(3)のように表される。
【0030】
【数3】
Figure 2004100663
式中のPは全圧(Pa)、Qは流量(m/s)、Tは貫流ファンのトルク(N・m)、ωは貫流ファンの角速度(rad/s)を示しており、全圧Pについては更に数式(4)のように展開される。
【0031】
【数4】
Figure 2004100663
全圧Pは静圧Pと動圧Pの和で表され、動圧Pは密度ρと代表速度Vにより決定される。以上のことから効率ηは数式(5)に示した形で整理できる。
【0032】
【数5】
Figure 2004100663
流量Q一定、回転数一定(角速度ω一定)の条件を与えた場合、貫流ファンの上流側から下流側にかけての静圧変化ΔP、代表速度変化ΔV、貫流ファンのトルクTにより効率ηは決まることになる。そして図6での性能評価において、流量・回転数は一定としており、いずれの場合の羽根形状においても圧力面は一致、最大肉厚値は固定、羽根外径・最小内径は共に固定していることから内外径比=一定の条件が与えられている。また、回転軸方向の羽根外周の変化状態は直線的に変化する図4(f)に示す形態をとり、D<Dとなる条件を与え、全ての条件においてDからDへの変化率は等しくしている。よってこの図6から、曲率半径をパラメータとして送風性能を評価することができ、羽根断面形状の中心線17を形成している二円弧の曲率半径が互いに反転した負の領域に最大効率点があることが判る。つまり、羽根12の外周先端が反り返った形状に貫流ファン1の性能を向上させる効果があることになり、それが空気調和機の性能向上に繋がっていくことになる。
【0033】
図4の(e)において、二つ描かれている羽根12の断面は、それぞれ回転軸方向に対して任意の位置での断面であり、その位置は一つのファンブロックを半径方向から見た断面図(f)に示している。厚く大きい断面Aは一つのファンブロックの円板3側を表し、薄く小さい断面A’はその反対側を表している。この断面図により、圧力面18は回転軸方向に対してほぼ一致していることが分かる。また(f)において、回転軸方向に対する外径変化は直径Dから直径Dへ直線的に変化しており、その関係がD≠Dとなっているのは先の従来技術で述べた羽根音を低下させる効果を加えるためである。一般的に、送風機の羽根において圧力面というものは、流体に直接動力を与える領域であり、送風性能に大きく影響する。この圧力面が歪な状態であると、流体的バランスが悪くなり不均一流れが強くなってしまい、その結果、性能低下・騒音増大といった問題が発生する。この問題は、前記の流体性質から起こることであり、根本的に同じ原理により解決することができる。その内容について以下に説明する。先述した数式(1)、(2)から判るように、騒音値・入力は代表速度Vの影響を大きく受けている。そのため、流速Vが大きくなるほど騒音は増大し、入力も増加することになる。ここで、羽根間を流出する流体の回転軸方向における速度分布に注目する。回転軸方向に対して圧力面が歪な状態とした場合、その形状が原因となり速度分布は回転軸方向に対して大きく変化する。逆に回転軸方向に対して圧力面が一致した状態の場合、速度分布はほぼ均一となり、流体は一様の流速で流出する。このとき流量を一定として、この双方の速度分布を比較し、性能に与える影響について以下に説明する。圧力面が歪な羽根は流量から計算される平均流速VaVeに対して局所的に流速Vが速い領域と遅い領域が存在し、この速度分布における各微小領域での入力は、速度の速い領域では大きくなり、速度の小さい領域では小さくなっている。そして、数式(2)に示しているように入力は流速の2乗で増加することから、この速度分布は低速域の入力低減分より高速域での入力増加分の方が多く、その結果、総入力は全体的に均一な速度分布の入力より大きくなってしまう。つまり、圧力面が一致した羽根は流量から計算される平均流速VaVeに対して全体的にほぼ同じ流速(VaVe)となっており、速度分布に関しては最も入力の少ない状態といえる。また、騒音の面から考えても数式(1)に示したように、圧力面が歪な羽根は流速Vの速い領域が存在するために騒音が増加し、圧力面が一致した羽根は最も騒音が低くなる速度分布となっている。速度分布の観点からすると、回転軸方向に圧力面が一致した羽根は速度分布が一様になることで、入力・騒音ともに最も良い状態となっている。よって、以上の様に圧力面18を回転軸方向に揃えることで、流体のバランスは改善され、送風性能の向上・静音を実現できる。
【0034】
羽根の流路幅を規定することにより性能を向上させることが可能であり、その内容を図5において説明する。(g)に示している羽根間流路幅Bは羽根内径側で最大幅Bma となり、羽根外径側で最小幅B となる。最大幅Bma は(h)に示した羽根内径r と羽根内径先端・回転軸を基点として決定した羽根間隔θによりBma =r siNθと表し、最小幅B は羽根外径側における最小幅と定義する。この状態において、流路幅変化割合B  /Bma だけをパラメータとしてファン性能を評価した結果を図7に示す。また、羽根最大肉厚は固定し、羽根内径・外径も固定することで内外径比=一定とする条件を与え、羽根内径・外径の両端もいずれの条件において等しい形状(同じR)として比較している。効率ηは送風性能について示した貫流ファンのファン効率ηであり前記したものと定義は同じであり、貫流ファンの上流側から下流側にかけての圧力変化と流量、ファンに与えられているトルクと回転数により定まる。ここで、効率ηと流路幅変化割合B /Bma との関係について説明する。貫流ファンの吹出し口付近では、流量Qが一定のためB /Bma が小さくなるほど流路幅B を通過する流体速度は大きくなる。
【0035】
しかし、流体の性質上、流体速度が大きいほど各流体領域における損失も大きくなってしまうため、貫流ファンの下流側で流速は流量Qに対応した速度分布まで下がってしまう。よって、貫流ファンによりトルクTが加えられ過剰に増速された流体は、静圧Pを上昇させることなく損失として失われるエネルギーが増えてしまう。その結果、流路幅変化割合B /Bma が55%以下の領域については、流路幅B が狭くなることで効率が悪くなっている。またB /Bma が大きい領域では、小さい場合とは逆に流路幅B を通過する流体速度は小さくなる。そのため、貫流ファン吹出し口で流体は十分に増速されずに流れ出てくる。この状態で、貫流ファンにトルクTが与えられても静圧P、動圧Pともに上昇せずに流体が貫流ファンを通過していく。その結果、流路幅変化割合B  /Bma が85%以上の領域において効率比η/ηma は低い値を示し効率が悪くなっている。そして、流路幅変化割合B  /Bma が60〜80%の領域においては、静圧P、動圧P、トルクTのバランスが良いため、効率比η/ηma は高い値を示している。以上のことから、ファンの羽根間流路幅が内径側に対して外径側は60〜80%の領域では効率が高くファン性能が向上していることが判る。室内ユニットを前記の構造範囲の貫流ファンを搭載して運転した場合は、同じ消費電力で風量を増加させることが可能となり、空気調和機全体の性能を向上させることに繋がる。
【0036】
以上は、羽根間間隔が等間隔で形成された貫流ファンで説明したが、不等間隔の貫流ファンでもこの考え方を用いることができる。以下、説明する。現在、空気調和機の室内ユニットに内装されている貫流ファンは、周方向に対して羽根が不等間隔で配置されたものが多い。つまり、貫流ファンの各羽根間のB 、Bma が不等となっていることになり、各流路幅も等しくなっていない。これは前述した従来技術を応用しているためであり、貫流ファンが回転しているときの干渉による羽根音を羽根の位相をずらすことで低減する効果を持たせており、現在の空気調和機の室内ユニットに汎用されている。そのため羽根が不等間隔の貫流ファンに関して、上記の流路幅変化割合B /Bma は各羽根間で違った値を示すことになる。そこで、以上の羽根間隔が不等の貫流ファンに対して、一意的に流路幅変化割合B /Bma を決めるために平均化された値を用いる。一つの貫流ファンブロックの周方向にN枚の羽根が不等間隔で配置されている場合、Bma =r siN(2π/N)、B =(ΣB’ )/Nとする。Bma は貫流ファンの一周を羽根枚数Nにより平均化した角度から計算され、B は貫流ファンの各羽根間の最小流路幅をB’ としたときの全羽根間の総和(ΣB’ )を羽根枚数Nにより平均することで求められる。そうすることで、不等間隔の貫流ファンにおいて一意的に流路幅変化割合B /Bma を決定することが可能となる。
【0037】
上記流路幅の調整は、基本的に羽根の厚みを調整することで対応可能である。羽根の間隔が等間隔であっても先の流路幅変化割合B  /Bma が60〜80%であれば、何れかの羽根(1枚以上の羽根)の厚さをその他の羽根の厚さと異ならせても良い(全ての羽根が同一厚さでなくても良い)し、不等間隔であっても先の平均値がその値内であれば、全ての羽根の厚さが同じでなくても良い。
【0038】
従来ファンと本実施ファンの性能比較を図8に示す。横軸に風量比Q/Qをとり、縦軸にそれぞれ全圧比PT/PT、入力比Lm/Lm、騒音値SL−SLをとっている。ここで、Q、PT、Lm、SLは従来の基準値を表している。条件は同回転数とし、従来ファンの形態は本実施ファンと同様の内外径をしており、そのため内外径比も等しくなっている。また、回転軸方向に対して羽根外径が変化しており、一つのファンブロックの軸方向における中間位置付近で最大外径となるように直線的に変化している。これは、本実施例も用いている羽根音を抑制する効果を備えていることになるが、それ以外の羽根間流路幅変化が60〜80%、二円弧が反転、圧力面を一致させた形状にはなっていない。このことから図8にも示すように、各風量比で比較すると全圧比は約+20%、入力比は約−10%、騒音値は約−1dBとなっており、本実施例により性能と騒音について改善されていることが顕著に現れている。
【0039】
【発明の効果】
本発明により、貫流ファンを高効率・低騒音化することで、風量を増加させつつ騒音を低減し、省電力で静かな空気調和機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例形態を示す全体図。
【図2】上記の一実施例形態の貫流ファン図。
【図3】上記の一実施例形態の羽根断面拡大図。
【図4】上記の一実施例形態の羽根断面拡大図、ファンブロック断面図。
【図5】上記の一実施例形態の羽根断面拡大図、ファンブロック断面拡大図。
【図6】上記の一実施例形態の効果を示す効率図。
【図7】上記の一実施例形態の効果を示す効率図。
【図8】上記の一実施例形態の性能を示す特性図。
【符号の説明】
1…貫流ファン、2…化粧枠、3…前面グリル、4…上面グリル、5…フィルター、6…熱交換器、7…ケ−シング、8…縦風向板、9…横風向板、10…モータ、11…ノーズ、12…羽根、13…円板、14…端面円板、15…ボス付端面円板、16…ボス、17…反り線、18…圧力面。

Claims (8)

  1. 室内ユニット内に貫流ファンを備えた空気調和機において、前記貫流ファンの羽根断面の肉厚中心を示す反り線は二つの円弧を含み、それぞれの円弧の反り方向を互いに反転させた空気調和機。
  2. 室内ユニット内に貫流ファンを備えた空気調和機において、前記貫流ファンを構成する羽根の圧力面を回転軸方向に対して一致させた空気調和機。
  3. 室内ユニット内に貫流ファンを備えた空気調和機において、前記貫流ファンの羽根間流路幅を内径側に対して外径側を60〜80%の範囲になるように羽根の厚さを設定した空気調和機。
  4. 請求項3において、前記貫流ファンは厚さが異なる羽根を含んでいる空気調和機。
  5. 室内ユニット内に貫流ファンを備えた空気調和機において、前記貫流ファンの羽根断面の肉厚中心を示す反り線は二つの円弧を含み、それぞれの円弧の反り方向を互いに反転させ、羽根の圧力面を回転軸方向に対して一致させた空気調和機。
  6. 室内ユニット内に貫流ファンを備えた空気調和機において、前記貫流ファンの羽根断面の肉厚中心を示す反り線は二つの円弧を含み、それぞれの円弧の反り方向を互いに反転させ、羽根間流路幅を内径側に対して外径側を60〜80%の範囲になるように羽根の厚さを設定した空気調和機。
  7. 室内ユニット内に貫流ファンを備えた空気調和機において、前記貫流ファンを構成する羽根の圧力面を回転軸方向に対して一致させ、羽根間流路幅を内径側に対して外径側を60〜80%の範囲になるように羽根の厚さを設定した空気調和機。
  8. 室内ユニット内に貫流ファンを備えた空気調和機において、前記貫流ファンの羽根断面の肉厚中心を示す反り線は二つの円弧を含み、それぞれの円弧の反り方向を互いに反転させ、羽根の圧力面を回転軸方向に対して一致させ、羽根間流路幅を内径側に対して外径側を60〜80%の範囲になるように羽根の厚さを設定した空気調和機。
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