JP2004100222A - 杭体用継手 - Google Patents

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小島 篤
Akio Yamada
山田 明朗
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Abstract

【課題】連結作業が容易であるとともに確実に連結することができるようにする。
【解決手段】第1の筒体10には第1の鋼管P1の端部が固定されるとともに、内面において周方向に延びる凹凸11が形成されている。第2の筒体20には第2の鋼管P2の端部が固定されるとともに、外面において周方向に延びる凹凸21が形成されている。第1の筒体10と第2の筒体20には軸方向に延びる切り込み15,25が形成され、第1の筒体10の凹凸11と第2の筒体20の凹凸21が嵌合するともに、第1の筒体10と第2の筒体20を貫通するボルト30にて両筒体10,20が締結される。
【選択図】  図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、杭体用継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
土木建築等において杭体として鋼管等が使用されている。この場合、安定した岩盤までの深さは場所によってさまざまであるため、杭体を一定の長さで製作して所要の深さに達するまで連結していく必要があった。杭体を連結する場合には、連結される両杭体の端部同士を溶接して接合していた。しかし、このやり方では、溶接によって接合部の強度を得るため、熟練した作業者が溶接作業を行う必要があった。またそのような溶接作業は天候や環境に大きく影響されるために、著しく信頼性に欠ける問題があった。
【0003】
この欠点を改善するために、ネジ式継手が用いられている(例えば、特許文献1参照)。これは、図9(a),(b)に示すように、内面にネジを切った第1の筒体100と外面にネジを切った第2の筒体110を螺合して、杭体120,121を連結するものである。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−8458号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図9(a),(b)に示した内面と外面に雄雌のネジ部を有する筒体100,110を螺合する場合には、筒体100,110を回転させなければならず螺合作業が面倒であるとともに回転方向に対する抜け止め対策を講じる必要があった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、連結作業が容易であるとともに確実に連結することができるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、第1の筒体と第2の筒体の少なくともいずれか一方には軸方向に延びる切り込みが形成されており、この切り込みにより第1の筒体と第2の筒体の少なくともいずれか一方は内方または外方に変形可能となっている。そして、この状態から、第1の筒体の内面での凹凸と第2の筒体の外面での凹凸を嵌合するとともに、両筒体を貫通するボルトにて両筒体を締結することにより、第1の筒体に固定された第1の杭体と、第2の筒体に固定された第2の杭体が連結される。
【0008】
その結果、溶接にて杭体を連結する場合においては、現場において溶接機を用いた作業になるが、本発明では溶接作業を不要にできる。また、溶接機を用いることがないため、天候に左右されずに杭体を連結することができる。さらに、従来では図9(a),(b)のように内面と外面に雄雌のネジ部を有する筒体100,110を螺合する場合には、螺合作業が面倒であるとともに抜け止め対策を講じる必要があったが、本発明においては、容易に両筒体を連結することができるとともに、ボルトを使って容易に抜けにくくすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、筒体に切り込みを複数設けたことにより両筒体の嵌合を容易に行うことができる。
請求項3に記載の発明によれば、複数の切り込みを円周方向において等間隔に設けたことにより、両筒体の嵌合をより容易に行うことができる。
【0010】
請求項4に記載の発明によれば、ボルトを複数設けたことにより、両筒体の連結を確実に行うことができる。
請求項5に記載の発明によれば、複数のボルトを円周方向において等間隔に設けたことにより、両筒体の連結をより確実に行うことができる。
【0011】
杭体として、請求項6に記載のごとく鋼管を用いても、請求項7に記載のごとくコンクリート杭を用いてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を、図1〜図4に従って説明する。本実施形態における継手1は、第1の杭体としての第1の鋼管P1と第2の杭体としての第2の鋼管P2を連結するためのものである。
【0013】
図1は、本実施形態における継手1を用いて第1の鋼管P1と第2の鋼管P2を連結した状態での断面を示したものである。図2は図1のA−A線での断面図である。図3は、継手1の分解斜視図であり、第1の鋼管P1と第2の鋼管P2を連結する前の状態を表している。また、図4は、図1の連結部分の拡大図である。
【0014】
図3に示すように、本実施形態における杭体用継手1は、第1の筒体10と第2の筒体20を具備しており、第1の筒体10の内面と第2の筒体20の外面とが接し、かつ、ボルト30により両筒体10,20を締結する構造となっている。
【0015】
まず、第1の筒体10について説明する。
図1,4に示すように、第1の筒体10は円筒形状をなし、鉄製である。第1の筒体10の外形寸法は第1の鋼管P1の外形寸法と同じである。また、筒体10の下端面には鍔部10aが内方に突設されている。さらに、筒体10の下端部には段差を有する縮径部10bが形成され、この部位に第1の鋼管P1の端面が溶接にて固定される。また、第1の筒体10の内面には凹凸11が形成され、この凹凸11は周方向に延びている。
【0016】
図2,3に示すように、筒体10の上部には軸方向に延びる切り込み(スリット)15が形成され、この切り込み15は凹凸11の形成領域を貫通するように延設されている。切り込み15は合計12本等間隔に設けられている(図2においてθ1で示す)。さらに、筒体10にはボルト貫通孔12が、各切り込み15の中間部に等間隔に合計12個設けられている(図2においてθ2で示す)。ボルト貫通孔12は、ボルト30が貫通できるようにボルト径よりも多少大きく形成されている。
【0017】
次に、第2の筒体20について説明する。
図1,4に示すように、第2の筒体20は円筒形状をなし、鉄製である。筒体20の上端部には段差を有する縮径部20aが形成され、この部位に第2の鋼管P2の端面が溶接にて固定される。また、第2の筒体20の外面には凹凸21が形成され、この凹凸21は周方向に延びている。第2の筒体20の外面に形成した凹凸21と第1の筒体10の内面に形成した凹凸11とが嵌合するようになっている。また、図2,3に示すように、筒体20の下部には軸方向に延びる切り込み(スリット)25が形成され、この切り込み25は凹凸21の形成領域を貫通するように延設されている。切り込み25は合計12本等間隔に設けられている(図2においてθ1で示す)。
【0018】
そして、第1の筒体10に切り込み15を形成するとともに第2の筒体20に切り込み25を形成することにより、第1の筒体10と第2の筒体20とを連結すべく第1の筒体10に第2の筒体20を嵌入する際に、第1の筒体10は外側に、第2の筒体20は内側に変形可能となる。筒体20の筒体10への挿入は、図1,4に示すように、筒体20の下面が筒体10の鍔部10aに当接して止まる。
【0019】
また、図3に示すように、筒体20にはボルト孔22が、各切り込み25の中間部に等間隔に合計12個設けられている(図2においてθ2で示す)。このボルト孔22は、ボルト30が螺入できるようにボルト30に合わせたネジが切られている。また、第1の筒体10のボルト貫通孔12と第2の筒体20のボルト孔22とは、図1,4に示すごとく筒体20の下面が筒体10の鍔部10aに当接した状態において、ボルト30を挿入できる位置に形成されている。
【0020】
図4を用いて、筒体10,20での凹凸11,21について詳しく説明する。凹凸11において、3つの凸部11aが形成され、その凸部11aの間が凹部となるとともに最下部の凸部11aと鍔部10aとの間が凹部となっている。凸部11aの形状として、軸方向において下側の側壁は急峻な面であるとともに上側の壁面は緩やかな斜状面となっている。一方、凹凸21において、3つの凸部21aが形成され、その凸部21aの間が凹部となるとともに最上部の凸部21aの上側が凹部となっている。凸部21aの形状として、軸方向において上側の側壁は急峻な面であるとともに下側の壁面は緩やかな斜状面となっている。そして、凹凸11の凸部11aが凹凸21の凹部に係合するとともに、凹凸21の凸部21aが凹凸11の凹部に係合するようになっている。このようにして、第1の筒体10の凹凸11と第2の筒体20の凹凸21が嵌合する。
【0021】
次に、本実施形態の杭体用継手1を用いて杭体(P1,P2)を連結する方法について説明する。
第1の筒体10には第1の鋼管P1が、第2の筒体20には第2の鋼管P2がそれぞれ接続(固定)されている。この接続は、あらかじめ工場にて溶接により行われる。
【0022】
第1の筒体10と第2の筒体20は、工事作業現場にて連結作業が行われる。図3に示すように、第1の筒体10と第2の筒体20を対向させ、第1の筒体10を移動しないように支持した状態で第2の筒体20を移動させ、第1の筒体10の内面に第2の筒体20の外面を嵌入させていく。この時、第1の筒体10には切り込み15が形成されているため、第1の筒体10は外側へと変形する。同様に、第2の筒体20には切り込み25が形成されており、嵌入する際、内側へと変形する。また、図4に示したように、筒体10,20での凹凸11,21の凸部11a,21aは軸方向での一方の壁面が緩やかな斜状面となっているので、筒体10に筒体20を嵌入する際、この緩やかな斜状面同士が接触して引っかかりが少なくスムーズに挿入することができる。そして、筒体20の下面が筒体10の鍔部10aに当接する。この状態においては、筒体10,20での凹凸11,21の凸部11a,21aは軸方向での他方の壁面が急峻な面となっており、急峻な面同士が接触するので、この部分は、引っかかり部としての役割を果たし、筒体10に筒体20を嵌入した後は抜けにくい。
【0023】
このようにして、両筒体10,20の凹凸11,21を嵌合した後、ボルト貫通孔12とボルト孔22の位置合わせを行う。そして、ワッシャ31を介してボルト30をボルト貫通孔12を通してボルト孔22に螺入する。つまり、第1の筒体10と第2の筒体20を貫通するボルト30にて両筒体10,20を締結する。その結果、継手1を用いて第1の鋼管P1と第2の鋼管P2の連結が終了する。
【0024】
以上のように、切り込み15,25により第1の筒体10は外方に第2の筒体20は内方に変形可能となっており、第1の筒体10の内面での凹凸11と第2の筒体20の外面での凹凸21を嵌合するとともに、両筒体10,20を貫通するボルト30にて両筒体10,20を締結することにより、筒体10に固定された第1の鋼管P1と、筒体20に固定された第2の鋼管P2が連結される。それゆえ、溶接にて杭体を連結する場合においては、現場において溶接機を用いた作業になるが、本実施形態では溶接作業を不要にできる。また、従来では図9(a),(b)のように内面と外面に雄雌のネジ部を有する筒体100,110を螺合する場合には、螺合作業が面倒であるとともに抜け止め対策を講じる必要があったが、本実施形態においては、容易に両筒体10,20を連結することができるとともに、ボルト30を使って容易に抜けにくくすることができる。
【0025】
特に、筒体10,20に切り込み15,25を複数設けたので、両筒体10,20の嵌合を容易に行うことができる。さらに、複数の切り込み15,25を円周方向において等間隔に設けたことにより、両筒体10,20の嵌合をより容易に行うことができる。
【0026】
また、ボルト30を複数設けたので、両筒体10,20の連結を確実に行うことができる。さらに、複数のボルト30を円周方向において等間隔に設けたことにより、両筒体10,20の連結をより確実に行うことができる。
【0027】
これまでの説明においては杭体は鋼管P1,P2であったが、コンクリート杭であってもよい。
その場合は、以下のようになる。
【0028】
図5は、第1の杭体としての第1のコンクリート杭C1と第2の杭体としての第2のコンクリート杭C2を連結する前の状態の斜視図、即ち、継手1の分解斜視図である。図6は、第1のコンクリート杭C1と第2のコンクリート杭C2を連結した状態での、正面図である。図7は図6のA−A線での断面図である。また、図8は、図6の連結部分の拡大図である。
【0029】
図8に示すように、円筒形状をなす第1の筒体50の下端面には鍔部50aが内方に突設されている。この鍔部50aに第1のコンクリート杭C1の端面が当接する。また、円筒形状をなす第2の筒体60の下端面には鍔部60aが内方に突設されている。この鍔部60aに第2のコンクリート杭C2の端面が当接する。そして、PC工法により、工場において、第1の筒体50に第1のコンクリート杭C1の端部が固定されるとともに第2の筒体60に第2のコンクリート杭C2の端部が固定される。また、第1の筒体50には補強バンド59が溶接されるとともに第2の筒体60には補強バンド69が溶接される。この補強バンド59,69により、第1の筒体50と第1のコンクリート杭C1との接続、及び、第2の筒体60と第2のコンクリート杭C2との接続が強固なものになる。さらに、図5に示すように、筒体50の上部には軸方向に延びる切り込み55が形成され、この切り込み55は合計12本等間隔に設けられている。切り込み55により第1の筒体50は外方に変形可能となっている。
【0030】
その他の構成は鋼管の場合と同じである。つまり、第1の筒体50の内面には周方向に延びる凹凸51が形成されるとともに、第2の筒体60の外面には周方向に延びる凹凸61が形成されている。第1の筒体50の凹凸51と第2の筒体60の凹凸61が嵌合する。また、筒体50にはボルト貫通孔52が、各切り込み55の中間部に等間隔に合計12個設けられている。第2の筒体60にはボルト孔62が等間隔に合計12個設けられている。そして、ボルト30を、ボルト貫通孔52を通してボルト孔62に螺入することにより両筒体50,60が締結される(第1の筒体50と第2の筒体60を貫通するボルト30にて両筒体50,60が締結される)。また、凹凸51,61に関する構成は図4での凹凸11,21と同じである。
【0031】
なお、本発明の実施形態は前記に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態においては、ボルトの数は12本としたが、12本に限定されない。
【0032】
・上記実施形態においては、切り込み15,25,65をそれぞれ12カ所ずつ設けたが、12カ所に限定されない。
・切り込みは、図1〜図4においては第1の筒体10と第2の筒体20の双方に設け、また、図5〜図8においては第1の筒体50のみに設けたが、これに限ることはなく、第2の筒体のみに設ける構成としてもよい。
【0033】
・上記実施形態においては、凹凸11,21,51,61は、凸部を3カ所持つ構成としたが、これに限定されない。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、連結作業が容易であるとともに確実に連結することができる優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における杭体用継手の断面図。
【図2】図1のA−A線での断面図。
【図3】杭体用継手の分解斜視図。
【図4】杭体用継手の部分拡大断面図。
【図5】別例の杭体用継手の分解斜視図。
【図6】別例の杭体用継手の正面図。
【図7】図6のA−A線での断面図。
【図8】杭体用継手の部分拡大断面図。
【図9】(a),(b)は従来技術を説明するためのネジ式継手を示す断面図。
【符号の説明】
1…継手、10…第1の筒体、11…凹凸、15…切り込み、20…第2の筒体、21…凹凸、25…切り込み、30…ボルト、50…第1の筒体、51…凹凸、55…切り込み、60…第2の筒体、61…凹凸、65…切り込み、P1…第1の鋼管、P2…第2の鋼管、C1…第1のコンクリート杭、C2…第2のコンクリート杭。

Claims (7)

  1. 第1の杭体(P1,C1)の端部が固定されるとともに、内面において周方向に延びる凹凸(11,51)を形成した第1の筒体(10,50)と、
    第2の杭体(P2,C2)の端部が固定されるとともに、外面において周方向に延びる凹凸(21,61)を形成した第2の筒体(20,60)と、
    を具備し、
    前記第1の筒体(10,50)と第2の筒体(20,60)の少なくともいずれか一方に軸方向に延びる切り込み(15,25,55)が形成され、第1の筒体(10,50)の凹凸(11,51)と第2の筒体(20,60)の凹凸(21,61)が嵌合するともに、第1の筒体(10,50)と第2の筒体(20,60)を貫通するボルト(30)にて両筒体(10,50,20,60)を締結したことを特徴とする杭体用継手。
  2. 前記切り込み(15,25,55)を複数設けたことを特徴とする請求項1に記載の杭体用継手。
  3. 前記複数の切り込み(15,25,55)は円周方向において等間隔に設けたことを特徴とする請求項2に記載の杭体用継手。
  4. 前記ボルト(30)を複数設けたことを特徴とする請求項1に記載の杭体用継手。
  5. 前記複数のボルト(30)は円周方向において等間隔に設けたことを特徴とする請求項4に記載の杭体用継手。
  6. 前記第1および第2の杭体(P1,P2)は鋼管であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の杭体用継手。
  7. 前記第1および第2の杭体(C1,C2)はコンクリート杭であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の杭体用継手。
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