JP2004100010A - 陽極酸化膜の模様着色方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】例えば水槽5に複数色の染料で木目模様が印刷されたフイルム7を浮かせ、例えば水圧を加えて表面に陽極酸化膜を形成したアルミニウム製品8を接触させ、染料を電解孔に含侵させて着色処理を行った後、フイルムを除去し、電解孔を封孔し、クリヤー塗装を行う。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミニウム等の金属、又はアルミニウム等の金属合金の陽極酸化膜に模様着色を行う陽極酸化膜の模様着色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムは軽量、加工性が良好などの優れた特徴があり、今日アルミサッシ等の建築材料、車両、機械部品、調理器具、各種電機製品の筐体等に幅広く使用されている。また、ゴルフクラブ等にチタンやチタン合金が使用され、更に単位密度当たりの軽量性、高剛性、熱伝導性が優れていることからマグネシウム合金も注目されている。
【0003】
例えば、上記アルミニウムやアルミニウム合金に着色を行う場合、以下のような方法が採用されている。
(イ)先ず、耐磨耗性、耐腐食性を向上する為陽極酸化法によって、アルミニウムの表面に酸化アルミニウム皮膜を形成する。この手順は脱脂、 電解研磨等の処理によって表面を清浄し、例えば硫酸やシュウ酸などの電解液中で、アルミニウムを陽極として電圧を加え電流を流し、酸化アルミニウム皮膜を形成する。
【0004】
そして、上記処理を施した表面には多数の電解孔が形成され、上記電解孔に染料を含侵させ、封孔後耐候性や光沢を出す為、例えばアクリル、ポリエステルなどの熱硬化型の樹脂を使用してコーティングする。
【0005】
尚、無機酸(例えば、硫酸)にニッケル塩を加え、陽極酸化し、有色の酸化膜を形成し、単色のアルミニウム製品を製造することもできる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の着色方法では以下の問題がある。
先ず、上記(イ)の例では、電解孔に含侵させる染料は1色であり、単色のアルミニウム製品しか製造できない。したがって、上記方法では木目模様や石目調等の色模様が施されたバラエティーのあるアルミニウム製品を製造することはできない。
【0007】
また、上記(ロ)及び(ハ)の例では、着色がアルミニウム製品の表面に行われるので、特に建築材等では堅牢性も要求され、温度変化、雨風による摩耗等から不向きである。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、アルミニウム製品の表面ではなく、アルミニウム製品の内部に複数色の染料を含侵させ、堅牢性を確保しつつ木目模様や石目調等の模様が施されたアルミニウム製品を製造することを可能とする陽極酸化膜の模様着色方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、請求項1記載の発明によれば、金属の表面に陽極酸化膜を形成する酸化膜形成処理と、該処理によって形成される電解孔に複数色の染料で印刷されたフイルムを覆着させる覆着処理と、該覆着処理によって覆着したフイルムの染料が前記電解孔に含侵した後、該フイルムを除去する処理と、該フイルム除去後の前記電解孔を封孔する封孔処理とを行う陽極酸化膜の模様着色方法を提供することによって達成できる。
【0010】
ここで、上記陽極酸化膜に形成される電解孔は、アルミニウムの表面に発生した酸素(O)とアルミニウム(Al)が結びついて酸化アルミニウムが生成される際に形成される孔であり、アルミニウムの表面に直径数百Å程度の微少な孔が無数に形成される。
【0011】
また、上記電解孔が形成されたアルミニウム板を覆うフイルムには印刷が施され、例えば高級縮合染料を使用し、耐熱性、耐光性等の優れた染料が印刷されている。また、模様として、例えば木目模様や石目調等の模様が印刷されている。
【0012】
このように構成することにより、フイルムに印刷された染料は酸化膜が形成されたアルミニウム製品の表面に覆着され、短時間でフイルム上の染料は酸化膜に形成された電解孔に含侵され、その後封孔処理を施すことによってアルミニウム製品の中に模様及び着色が施されることになり、堅牢性を確保しつつ各種模様が施されたアルミニウム製品を製造することを可能になる。
【0013】
請求項2の記載は、請求項1記載の発明において、前記陽極酸化膜を染料で着色し、次に前記覆着処理を前記金属の一部に行い、明度の異なる着色剤で部分着色を行い、その後前記封孔処理を行う構成である。
【0014】
このように構成することにより、より少ない色の染料によって堅牢なアルミニウム等の製品を製造することができる。
請求項3の記載は、請求項1記載の発明において、無機化合物によって着色した金属及びその合金に、陽極酸化膜を形成し、着色酸化金属膜を形成し、該着色酸化金属膜上に生成される電解孔に明度の異なる着色剤で部分着色を行い、その後前記封孔処理を行う構成である。
【0015】
このように構成することにより、木目模様や石目調等の模様着色がより容易になる。
請求項4の記載は、請求項1、2、又は3記載の発明において、例えば前記金属はアルミニウムである。
【0016】
また、請求項5の記載は、請求項1、2、又は3記載の発明において、例えば前記金属はチタンである。
また、請求項6の記載は、請求項1、2、又は3記載の発明において、例えば前記金属はマグネシウムである。
【0017】
さらに、請求項7の記載は、請求項1、2、又は3記載の発明において、例えば前記染料に代えて顔料を使用する構成である。
このように構成することにより、使用可能な材料が増え、より容易に堅牢で退色のない、例えば木目模様や石目調等の模様着色が行える。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
<第1の実施形態>
本例は、先ずアルミニウムに陽極酸化処理を施し、酸化アルミニウム(Al2 O3)を生成し、電解孔に染料を含侵して各種模様の着色を行うものである。以下、具体的に説明する。
【0019】
先ず、アルミニウムに陽極酸化膜を形成する。この陽極酸化膜の形成は、アルミニウムを陽極として硫酸電解液中で、電気分解を行う。この時、陽極反応として、以下の化学反応が起こり、
Al→Al3++3e−
OH− →O2− +H +
HSO4− →SO42− +H +
陰極反応として、以下の反応が起こる。
【0020】
H+ +e− →H2
一方、陽極の微細孔の内部でも同時に、以下の化学式で示す硫酸根を含む酸化皮膜の生成が進む。すなわち、
2Al3+ +3O2−→Al2 O3
Al3++SO42− →Al2 (SO4 )3
この酸化膜の成長は、電解孔の形成によって順次積層され、例えば10〜15μmの酸化アルミニウム膜を形成する。この状態において、酸化アルミニウム膜には多数の電解孔が形成されている。
【0021】
図1はこの状態を説明するアルミニウム(酸化アルミニウム)の断面図である。基体であるアルミニウム1上にはバリヤー層2が形成され、バリヤー層2上に上記酸化アルミニウム層(酸化アルミニウム膜)3が形成されている。また、この酸化アルミニウム層3内には前述のように電解孔4が多数形成され、この電解孔4は後述する染料の含侵後、封孔処理される。尚、図1において、酸化アルミニウム(Al2 O3) の膜厚は、例えば10〜15μmであり、電解孔4の直径は数100Åである。
【0022】
次に、上記酸化膜が形成されたアルミニウムの電解孔に染料を含侵する。図2はこの処理を説明する図である。尚、同図において、酸化膜が形成されたアルミニウムには加工が施され、例えば同図(a)に示すナベ形状である。
【0023】
先ず、本例においては、同図(b)に示す水槽5を使用する。この水槽5には所定量の水6が入っており、水6上にフイルム7が浮設されている。尚、フイルム7は水槽5の所定位置に浮設されるように、例えば不図示の支持部材で位置決めされている。また、フイルム7には所定の模様が染料によって印刷されている。尚、図3はフイルム7に印刷された木目模様の例を示す。
【0024】
この状態において、先ず同図(a)に示すアルミ加工品8を同図(b)に示す水槽5上のフイルム7の上方に移動し、アルミ加工品8の外周面8aを下にしてフイルム7に上方から押しつける。そして、更にアルミ加工品8をフイルム7に押しつけると水槽5内の水6は周りに押し分けられ、同図(c)に示す状態となる。
【0025】
この時、フイルム7は水圧によってアルミ加工品8の外周面8aに押しつけられ、フイルム7に印刷された染料はアルミ加工品8表面に形成された電解孔4から孔内に含侵する。図4はこの状態を示す図である。
【0026】
フイルム7には前述の図3に示す木目模様が印刷され、フイルム7に印刷された染料は電解孔4に含侵し、木目模様に対応した色模様が酸化膜に形成される。尚、上記水槽5へのアルミ加工品8の浸漬時間は、例えば1秒程度である。
【0027】
次に、同図(d)に示すように、アルミ加工品8からフイルム7を剥がし、例えば蒸気による封孔処理を行う。図5は上記封孔処理後のアルミ加工品8の断面構成を示す図である。同図において、酸化層に形成された電解孔4には染料10a、10bが含侵し、電解孔4の上部が封孔処理9されている。また、電解孔4に含侵した染料10a及び10bは異なる色であり、前述の木目模様に対応する色である。
【0028】
その後、図5に示す酸化層3及び封孔処理9の上面には、更にアクリルやポリエステルなどの熱硬化型の樹脂を使用してコーティングが施される(図3(e))。
【0029】
以上のように処理することによって、電解孔4内に染料が含侵し、陽極酸化膜に染料を使用した模様が描かれたアルミニウム製品を製造することができる。したがって、本例の処理によって製造されるアルミニウム製品は色の剥げが無く、建築材としても使用できる堅牢な製品である。
【0030】
また、2色以上の色を使用した色模様等をアルミニウム製品に着色することができる。また、上記実施例ではフイルム7に印刷された模様は木目模様であったが、例えば石目調や、市松模様等の模様を自由に描くこともできる。
【0031】
また、上記実施形態の説明では、電解孔4に含侵する発色剤は染料であったが、顔料を使用してもよい。
さらに、上記本例の説明では陽極酸化膜形成後の電解孔に染料を含侵する処理について説明したが、本例の着色処理の前に一次電解発色法によって発色が施されたアルミニウム材料に対して本例を処理を行ってもよい。
【0032】
例えば、特殊な電解液を用い皮膜の基質から発色させたアルミニウム材料に対して本例の処理を施してもよく、またシリコン(Si)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)等の無機化合物が添加されたアルミニウム合金を用いて発色させたアルミニウム材料に対して本例の処理を施してもよい。
【0033】
このように構成することにより、例えば木目模様の一部の色を上記アルミニウム基体の色で対応させ、木目模様の他の色を本例によって発色させる着色処理を行うことができる。
【0034】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本例は前述の陽極酸化層が形成された後のアルミニウム製品への着色処理を説明する図である。前述の第1の実施形態では水槽5を使用したが、本例ではパット印刷による発色処理を説明する。
【0035】
図6は本例の処理を説明する図である。本例ではシリコンラバーが配設されたパットによって染料を電解孔4に含侵させる構成である。以下、具体的に説明する。
【0036】
同図(a)に示すアルミニウム板10には、前述と同様陽極酸化層が形成され、表面には多数の電解孔11が形成されている。先ず、このアルミニウム板10をプレスパッド12の直下に載置し、プレスパッド12を所定のタイミングで下降させ、プレスパッド12のパッド面12aに形成されたシリコンラバーをアルミニウム板10の表面に押しつける。
【0037】
ここで、シリコンラバーには、例えば前述の図3に示す木目模様に対応する染料が付着しており、このシリコンラバーをアルミニウム板10に押しつけることによって、染料はアルミニウム板10表面に形成された電解孔11に含侵する。この処理によってアルミニウム板10の酸化層には木目模様が着色される。
【0038】
その後、同図(c)に示すように、プレスパッド12を上方に上げ、アルミニウム板10を取り出し、前述と同様染料が含侵した電解孔11の封孔処理を行う。そして、アクリルやポリエステルなどの熱硬化型の樹脂を使用してコーティングを施す。
【0039】
以上のように処理することによって、前述と同様電解孔11内に染料が含侵し、陽極酸化層に木目模様が形成されたアルミニウム製品を製造することができる。したがって、本例の場合もアルミニウムの表面に色塗装された製品に比べて色が剥げず、建築材としても使用できる堅牢なアルミニウム製品とすることができる。
【0040】
また、2色以上の色を使用した色模様等をアルミニウム製品に着色することができ、木目模様のみならず石目調や、市松模様等の各種模様を自由に着色することもできる。
【0041】
また、上記実施形態の説明では、電解孔11に含侵する発色剤は染料であったが、顔料を使用する構成としてもよい。
尚、上記第1、及び第2の実施形態の説明では、アルミニウムについて本発明を適用した例について説明したが、アルミニウムに限らず、マグネシウム及びその合金に本発明を適用する構成としてもよい。マグネシウム及びその合金は、アルミニウムに比べて単位密度当たりの軽量性、高剛性、熱伝導性が優れており、本発明の着色によって、より用途を広げた材料とすることができる。
【0042】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば陽極酸化膜に形成された電解孔に複数色の染料を含侵することができ、各種色模様をアルミニウム等の製品に着色することができ、かつ堅牢な製品とすることができる。
【0043】
また、無機化合物等によって予め発色したアルミニウム等の材料に上記着色処理を施すことにより、より少ない色の染料によって堅牢なアルミニウム等の製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】陽極酸化膜形成後のアルミニウムの断面図である。
【図2】第1の実施形態の陽極酸化膜の模様着色方法を説明する図である。
【図3】フイルムに印刷された木目模様の例を示す図である。
【図4】陽極酸化膜上に染料が印刷されたフイルムを覆着した状態を示す図である。
【図5】電解孔に染料が含侵され、封孔処理が施された状態を示す図である。
【図6】第2の実施形態の陽極酸化膜の模様着色方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム
2 バリヤー層
3 酸化アルミニウム層(酸化アルミニウム膜)
4 電解孔
5 水槽
6 水
7 フイルム
8 アルミ加工品
8a 外周面
10 アルミニウム板
11 電解孔
12 プレスパッド
12a パッド面
Claims (7)
- 金属の表面に陽極酸化膜を形成する酸化膜形成処理と、
該処理によって形成される電解孔に複数色の染料で印刷されたフイルムを覆着させる覆着処理と、
該覆着処理によって覆着したフイルムの染料が前記電解孔に含侵した後、該フイルムを除去する処理と、
該フイルム除去後の前記電解孔を封孔し、クリヤー塗装する処理と、
を行うことを特徴とする陽極酸化膜の模様着色方法。 - 前記陽極酸化膜を染料で着色し、次に前記覆着処理を前記金属の一部に行い、明度の異なる着色剤で部分着色を行い、その後前記封孔処理を行うことを特徴とする請求項1記載の陽極酸化膜の 模様着色方法。
- 無機化合物によって着色した金属及びその合金に、陽極酸化膜を形成して着色酸化金属膜を形成し、該着色酸化金属膜上に形成される電解孔に明度の異なる着色剤で部分着色を行い、その後前記封孔処理を行うことを特徴とする請求項1記載の陽極酸化膜の模様着色方法。
- 前記金属はアルミニウムであることを特徴とする請求項1、2、又は3記載の陽極酸化膜の模様着色方法。
- 前記金属はチタンであることを特徴とする請求項1、2、又は3記載の陽極酸化膜の模様着色方法。
- 前記金属はマグネシウムであることを特徴とする請求項1、2、又は3記載の陽極酸化膜の模様着色方法。
- 前記染料に代えて顔料を使用することを特徴とする請求項1、2、又は3記載の陽極酸化膜の模様着色方法。
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