JP2004099996A - 内燃機関用の構成部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム合金に含まれる成分の結晶粒の粗大化を抑制し、機械的性質の優れる内燃機関用の構成部品を得る。
【解決手段】2〜6%のFeと、14〜20%のSiと、0.2〜2%のMgと、0.5〜3%のCuと、0.01〜0.05%のTiと、残余にアルミニウムとを含むアルミニウム合金の急冷凝固粉末と、硬質材料粉末とを加熱・押し出しすることにより鍛造素材を得るステップと、得られた鍛造素材を425〜450℃で、0.5〜1時間予熱するステップと、予熱された該鍛造素材を鍛造して内燃機関用の構成部品を得るステップとを含む内燃機関用の構成部品の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】2〜6%のFeと、14〜20%のSiと、0.2〜2%のMgと、0.5〜3%のCuと、0.01〜0.05%のTiと、残余にアルミニウムとを含むアルミニウム合金の急冷凝固粉末と、硬質材料粉末とを加熱・押し出しすることにより鍛造素材を得るステップと、得られた鍛造素材を425〜450℃で、0.5〜1時間予熱するステップと、予熱された該鍛造素材を鍛造して内燃機関用の構成部品を得るステップとを含む内燃機関用の構成部品の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、内燃機関用の構成部品の製造方法に関する。本発明は、特には、強度及び対磨耗性等の機械的性質が向上した、内燃機関用の構成部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
エンジンのピストンをはじめとする内燃機関用の構成部品用材として鋳物は経済的であり、鋳造ピストンが広く利用されている。このような用途における代表的な鋳物合金にはJIS規格AC8Aがある。AC8Aは、Siが11〜13重量%、Cuが0.8〜1.3重量%、Mgが0.7〜1.3重量%、Niが0.8〜1.5重量%で含まれ、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金鋳物である。しかし、かかるAC8Aは、耐磨耗性に劣るという問題がある。
【0003】
近年、エンジン等の内燃機関用の構成部品開発において、強度及び耐摩耗性等の機械的性質の向上が求められている。しかし、鋳造法を利用する製造方法では、使用できる化学成分の範囲が制限されるために、所望の特性を有する材料により内燃機関用の構成部品、例えばピストン等を製造することが困難である。
【0004】
内燃機関用の構成部品の耐摩耗性を高めようとして硬質成分であるSiの量を増加させると、鋳造時にSi粒子が粗大に晶出するため、強度及び加工性が低下するという問題がある。一方、内燃機関用の構成部品の強度を高めようとして、Ni、Fe、Mn等の遷移元素量を増加させると、鋳造時にこれらの元素を含んだ化合物が粗大に晶出するため、強度及び靭性が低下し、鍛造性も低下する。そのため、これらの問題を解決すべく、化学成分の制約の小さい急冷凝固粉末を利用した粉末冶金法を応用することが試みられている。
【0005】
従来技術として、Si及びSiCを8重量%以上含み、鋳造性を低下させることなく、耐磨耗性等を向上させたピストン用アルミニウム合金が開示されている(特許文献1参照)。しかし、このようなピストン用アルミニウム合金には、SiC粉末により加工性が低下し、また摺動時の相手材への攻撃性が大きいといった問題がある。
【0006】
アルミニウム合金の急冷凝固粉末を固化して形成した鍛造前の鍛造素材を、金型による鍛造でピストン形状に成形する鍛造ピストンとその製造方法が開示されている(特許文献2参照)。しかし、このようなピストン及びその製造方法では、熱伝導が悪く、ピストン動作時にピストンヘッド部の温度が高くなる。その結果、燃焼室の温度が上昇し、内燃機関の出力が低下するという問題がある。さらには、鍛造前の鍛造素材の予熱条件によっては、成形不良が生じ、組織が粗大化し、所望の機械的物性が得られないといった問題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−36030号公報
【特許文献2】
特開2000−39067号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、合金に含まれる成分の結晶粒の粗大化を抑制し、機械的性質の優れる内燃機関用の構成部品を得ることができる内燃機関用の構成部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内燃機関用の構成部品の製造方法であって、2〜6重量%のFeと、14〜20重量%のSiと、0.2〜2重量%のMgと、0.5〜3重量%のCuと、0.01〜0.05重量%のTiと、残余にアルミニウムとを含むアルミニウム合金の急冷凝固粉末と、硬質材料粉末とを加熱・押し出しすることにより鍛造素材を得るステップと、得られた鍛造素材を425〜450℃で予熱するステップと、予熱された該鍛造素材を鍛造して内燃機関用の構成部品を得るステップとを含む。
硬質材料粉末とは、SiO2、SiC、Al2O3、その他のセラミックス等をいう。特には、硬質材料粉末は、立方晶β型のSiC粉末であり、鍛造素材全体の1〜5重量%となるように混合されることが好ましい。
鍛造素材とは、鍛造する前段階のアルミニウム合金と硬質材料粉末とが加熱により固化された状態をいい、鍛造素材は一塊の形態になっている。
【0010】
本発明によれば、前記予熱時間が0.5〜1時間であることが好ましい。また、内燃機関用の構成部品が、ピストンシリンダーヘッド、シリンダースリーブ、コンロッド、またはコンプレッサー部品のスクロールであることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、熱伝導性、高温強度、耐摩耗性に優れ、鍛造性が良好な内燃機関用の構成部品の効率的な製造が可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施の形態によりさらに詳しく説明する。本発明にかかる内燃機関用の構成部品の製造方法について、図1に製造工程のフローチャートを示して説明する。ここでは、内燃機関用の構成部品の一例としてピストンを挙げて説明するが、本発明に係る内燃機関用の構成部品の製造方法により製造される部品はピストンには限定されない。
【0013】
第1の工程では、アルミニウムの基板に対してSi、Fe及びその他の成分を含有させたアルミニウム合金のインゴットを準備する(1)。第2の工程では、一種類あるいは複数の種類のインゴットを所定の温度で溶解してから霧状に散布し、急激に冷却して凝固させ、アルミニウム合金の急冷凝固粉末を製造する(2)。続く第3の工程では、第2の工程で得られたアルミニウム合金の急冷凝固粉末を硬質材料とともに加熱して押し出し、丸棒として固形化する(3)。第4の工程では、第3の工程で得られた押出し丸棒を、鍛造素材に必要な長さに切断する(4)。第5の工程では、第4の工程で得られた鍛造素材の成形性を良くするために、鍛造素材および金型の内面に離型剤を塗布する(5)。第6の工程では、離型剤を塗布した鍛造素材を所定の温度まで予熱する(6)。第7の工程では、予熱した鍛造素材を型で挟み、鍛造してピストン粗材を得る(7)。第8の工程では、得られたピストン粗材の強度を高めるために熱処理を施す(8)。第9の工程では、熱処理を施したピストン粗材に機械加工をしてピストン本体の最終形状とする(9)。さらに、第10の工程においては、最終形状のピストン本体に表面処理を施して、製品としてのピストンを得る(10)。
【0014】
次に各々の工程における操作等についてさらに詳細に説明する。
第1の工程で用いるアルミニウム合金のインゴットは、2〜6重量%のFeと、14〜20重量%のSiと、0.2〜2重量%のMgと、0.5〜3重量%のCuと、0.01〜0.05重量%のTiとを含む。
【0015】
Feは鍛造ピストンの耐熱性、高温強度を向上させると共に弾性係数を向上させ、熱膨張係数を低下させるために加える元素である。Feの有効添加量は、インゴット全体の重量に対し、2〜6重量%であり、より好ましくは4〜5重量%である。Feの添加量が2重量%以下では十分な高温強度が得られず、添加量が6重量%を超えると、合金の延性及び靭性が低下する。
【0016】
Siは、鍛造ピストンの耐摩耗性、弾性係数を向上し、熱膨張係数を低下させ、密度を低下させるために加える元素である。Siの有効添加量は、インゴット全体の重量に対し、好ましくは14〜20重量%であり、より好ましくは16〜18重量%である。14重量%以下ではSiを添加することによる効果が小さく、20重量%を超えると合金が脆くなる。
【0017】
Mgは、アルミニウム合金のマトリックスに固溶されて、鍛造ピストンの常温及び高温における強度を向上させる。Mgの有効添加量は、インゴット全体の重量に対し、好ましくは0.2〜2重量%であり、より好ましくは0.8〜2重量%、さらに好ましくは0.8〜1.5重量%である。Mgの添加量が0.2重量%未満では効果が不足し、2重量%を超えると室温における合金の靭性が低下する。
【0018】
Cuは、鍛造ピストンの中高温における強度を向上させるために加える元素である。特には、150℃前後の高温における強度向上に有効である。Cuの有効添加量は、インゴット全体の重量に対し、好ましくは0.5〜3重量%であり、より好ましくは1〜2重量%である。Cuの添加量が0.5重量%以下ではその効果が小さく、3重量%を超えると合金の延性及び靭性が低下する。
【0019】
Tiは、鍛造ピストンの高温における強度を向上させるために加える元素であって、微量の添加でその効果が期待できる。Tiの有効添加量は、インゴット全体の重量に対し、0.01〜0.05重量%である。Tiの添加量が0.01%以下ではその効果が小さく、0.05重量%を超えると合金の熱伝導率を著しく低下させる。Tiを添加した場合には粉末作製時の溶融温度を高くする必要があるが、Tiの含有量が0.05重量%以下であれば、830℃〜890℃の温度でアトマイズすることができ、耐火物の低コスト化、寿命延長が可能となるという利点もある。
【0020】
第2の工程では、急冷凝固粉末法により、アルミニウム合金を粉末にする。このとき、インゴッドを830〜890℃で溶解し、空気中に噴霧することにより、冷却速度を100℃/s以上で急冷して、急冷凝固粉末を得る。
【0021】
第2の工程で得られたアルミニウム合金の急冷凝固粉末を、加熱・押し出しすることにより丸棒として固形化する第3の工程では、アルミニウム合金の急冷凝固粉末とともに硬質材料を添加する。アルミニウム合金の強度を増すためである。硬質材料としては、SiO2、SiC、Al2O3、その他のセラミックス等を用いることができるが、中でも強度の点からSiCを用いることが好ましい。また、SiCの中でも相手材を磨耗させにくい立方晶系のβ型SiCを用いることが好ましい。特には、粒径が2〜10μmのものを用いることが好ましい。このような硬質材料は、鍛造素材全体の重量に対し、1〜5重量%で添加することが好ましい。
【0022】
アルミニウム合金の急冷凝固粉末は297μm以下に分級し、アルミニウム缶等に充填する。硬質材料も同様にアルミニウム缶等に充填し、これらに対し、380〜495℃で真空脱ガスを行う。これは、粉末状のアルミニウム合金及び硬質材料を溶融するに先立って、これらの間隙に存在する空気等のガスを除き、合金にガスが混入するのを防止するためである。
【0023】
次いでアルミニウム缶を密封して押出用ビレットとし、好ましくは350〜450℃、さらに好ましくは380℃〜400℃で、押出比を好ましくは15〜30、さらに好ましくは20として熱間押出を行う。300℃以下では、温度が低すぎて、押出しが困難であり、500℃では、温度が高すぎて、組織が粗大化し、製品の機械的物性に問題が生じる。このようにして得られた塊状の合金を鍛造素材という。粉末状のアルミニウム合金及び硬質材料を、加熱・押し出しして鍛造素材を得る方法により、優れた機械的特性を有する合金を製造することができる。
【0024】
第4の工程では、第3の工程で固形化された丸棒をピストンの鍛造に必要な長さに切断する。
【0025】
第5の工程では、丸棒が切断されて得られた鍛造素材および金型の内面に離型剤を塗布する。これは、型で挟んで鍛造する第7の工程において、成形性をよくするためである。離型剤としては、グラファイト系潤滑剤等を使用することができる。
【0026】
鍛造前の鍛造素材を予熱する第6の工程では、鍛造素材を425〜450℃で、0.5〜1時間にわたって予熱する。予熱温度が450℃より高いと高温での硬さ低下が生じ機械的物性に悪影響を及ぼす一方、予熱時間が0.5h以下では鍛造素材の予熱が不十分となって鍛造時の成形不良が多発し、1.0h以上では成形サイクルが長くなり生産性が悪くなるからである。本発明は、粉末冶金法を用いて鍛造ピストンを製造する場合、鍛造前の鍛造素材の予熱条件により鍛造ピストンの物性値が大きく影響されることを考慮し、温度が高すぎたり時間が長すぎたりすると、急冷凝固粉末を用いる利点である硬さ、強度等の機械的物性値が低下することを発見し、なされたものである。
【0027】
第7の工程では、上下一対の型で、予熱した鍛造素材をはさみ、鍛造してピストン粗材を得る。本実施の形態では、ピストンを得るための型を用い、図1の(7)に概形を示すような形状に鍛造するが、所望の形状の型を用いることにより、所望の内燃機関用の構成部品を得ることができる。
【0028】
第8の工程では、ピストン粗材を熱処理する。これは、ピストン粗材の強度を高めるためであり、溶体化処理後、時効硬化処理といった熱処理を実施する。第9の工程では、熱処理したピストン粗材に機械加工を施し、最終形状のピストンを形成する。第10の工程では、機械加工を施したピストン粗材に、さらに表面処理を行うことで、完成品である鍛造ピストンを得る。
【0029】
本実施の形態においては、鍛造ピストンの製造方法について記載したが、本発明の方法は、ピストンのみならず、内燃機関用の構成部品であるシリンダーヘッド、シリンダースリーブ、コンロッド、またはコンプレッサー部品のスクロール等の製造においても使用することができる。その場合、それぞれの部品に適した型を用いて第7の工程を行うことで、実施することができる。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を参考例とともに挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0031】
[実施例・参考例1]
鍛造前のピストンを予熱する工程において、予熱時間、予熱温度を変化させた本発明の実施例と参考例を示す。
図1に示すピストン製造方法の第1の工程から第9の工程に従って、鍛造ピストンを製造した。第1の工程において、アルミニウム合金のインゴットとしては、アルミニウムの他、2〜6%のFeと、14〜20%のSiと、0.2〜2%のMgと、0.5〜3%のCuと、0.01〜0.05%のTiとを含むものを用いた。第2の工程において、このアルミニウム合金のインゴットを830〜890℃で溶解して霧状に散布し100℃/s以上で急激に冷して凝固させ、急冷凝固粉末を調製した。
【0032】
上記の条件で得られた急冷凝固粉末を用いて、第2の工程から第5の工程に従って、実施の形態で説明した方法により、鍛造素材を製造した。その後、予熱温度が430℃、450℃、470℃、予熱時間が、0.5h、1.0h、2.0h、3.0h、4.0hとなるような条件で鍛造素材を予熱した。さらに、図1に示す第7の工程から第9の工程に従って、予熱した鍛造素材を鍛造し、ピストン粗材を成形した。
【0033】
第8の工程である熱処理工程では、490℃で4hにわたって溶体化した後、温水焼入れを行い、210℃で4hにわたって時効硬化を行う条件で熱処理を実施した。それぞれの条件で予熱後、熱処理を行い、得られたピストン粗材を300℃×100h保持し、その後の硬さ(HRB)を測定した。
【0034】
以下の表1に、実施例と参考例の各々につき、押出しのままの切断ビレットの硬さ、それぞれの予熱条件での予熱後の硬さ、それぞれの予熱条件での熱処理後の硬さ、そして熱処理後、更に300℃×100h保持後の硬さを測定し比較した結果を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
ここで、「基準との比較」とは、切断ビレットを予熱せずに熱処理を実施し、300℃×100h保持した後の硬さを基準に、予熱条件による硬さへの影響を調べた結果である。基準値以上の硬さを「硬」、基準値を下回る硬さを「軟」とした。
【0037】
表1の硬さの評価結果から、鍛造前の予熱条件によって、高温での機械的特性に影響があることがわかった。鍛造前の鍛造素材の予熱温度が430℃の場合、300℃×100h保持後の硬さは、保持時間0.5〜4.0hで、基準硬さ値に対し、硬さ低下は認められなかった。鍛造前の鍛造素材の予熱温度が450℃の場合、300℃×100h保持後の硬さは、保持時間が2.0〜4.0hで、基準硬さ値に対し硬さ低下が認められる。鍛造前の鍛造素材の予熱温度が470℃の場合、300℃×100h保持後の硬さは、保持時間0.5〜4.0hで基準硬さ値に対し硬さ低下が認められた。
【0038】
従って、鍛造成形性を良くするために鍛造前に鍛造素材を予熱するが、高温での機械的特性を低下させず、作業性を考慮した場合、鍛造素材の最適な予熱条件は予熱温度が430〜450℃で、予熱時間が0.5〜1.0hであった。
【0039】
[実施例・参考例2]
実施例・参考例2では、Tiの添加量と耐熱性、熱伝導性について検討した。表2の成分組成を有するアルミニウム合金を配合、溶解し、830〜890℃のアトマイズ温度で、エアアトマイズ法により急冷凝固粉末を作製し、297μm以下に分級した。この粉末をアルミニウム缶に充填し、380〜495℃で真空脱ガスを行った。次いでアルミニウム缶を密封して押出用ビレットとし、380℃〜400℃で押出比20として熱間押出を行い、直径20mmの丸棒を押出した。得られた丸棒材を、490℃で4時間加熱し、水冷し、210℃で4時間加熱し、空冷する条件で熱処理した後、以下の方法に従って、耐熱性、熱伝導率を測定し評価した。
【0040】
Tiと耐熱性の関係熱処理後の丸棒材から引張試験片を採取し、200℃で引張試験における耐力を測定し評価した。また、Tiと熱伝導率の関係熱処理後の丸棒材から熱伝導率を測定し評価した。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の評価結果から次のことが認められる。実施例2−1〜2−5、参考例2−2〜2−5ではTiの添加効果が認められ、200℃の耐力が、参考例2−1(Ti無添加)の場合に比べ約20%向上した。参考例2−1、実施例2−1〜2−5(Ti添加量:0.00wt%〜0.05wt%)は同程度の熱伝導率を示したが、Ti添加量が0.05wt%を越すと熱伝導率が急激に低下した。耐熱性、熱伝導率の評価試験結果及び粉末作製時のアトマイズ温度を考慮すると、Tiの最適添加量は0.01wt%〜0.05wt%であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係る内燃機関用の構成部品の製造方法により、アルミニウム合金に耐熱性、耐磨耗性当を付与するSi、Fe等の含有量を増やすことが可能となる。特には、本発明の方法によれば、鍛造後のピストン粗材における初晶Siの粒径を10μm以下とすることが可能となり、機械的性質の優れた内燃機関用の構成部品を得ることができる。また、鍛造前の鍛造素材の予熱条件の最適化を図ることにより、高温での熱変形が少なく、熱伝導が良く、高温強度の高く、耐摩耗性の良い内燃機関用の構成部品が得られる。
従って、本発明に係る内燃機関用の構成部品の製造方法を実施することで、十分に高温に耐え、摩耗劣化や溶損等を起こすことなく、薄肉軽量が図られたピストン等の内燃機関用の構成部品を製造することができ、これによりエンジン出力向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる内燃機関用の構成部品の製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 インゴット準備工程
2 溶解・急冷凝固工程
3 加熱・押し出し工程
4 切断工程
5 離型剤塗布工程
6 予熱工程
7 鍛造工程
8 熱処理工程
9 機械加工工程
10 表面処理工程
【産業上の利用分野】
本発明は、内燃機関用の構成部品の製造方法に関する。本発明は、特には、強度及び対磨耗性等の機械的性質が向上した、内燃機関用の構成部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
エンジンのピストンをはじめとする内燃機関用の構成部品用材として鋳物は経済的であり、鋳造ピストンが広く利用されている。このような用途における代表的な鋳物合金にはJIS規格AC8Aがある。AC8Aは、Siが11〜13重量%、Cuが0.8〜1.3重量%、Mgが0.7〜1.3重量%、Niが0.8〜1.5重量%で含まれ、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金鋳物である。しかし、かかるAC8Aは、耐磨耗性に劣るという問題がある。
【0003】
近年、エンジン等の内燃機関用の構成部品開発において、強度及び耐摩耗性等の機械的性質の向上が求められている。しかし、鋳造法を利用する製造方法では、使用できる化学成分の範囲が制限されるために、所望の特性を有する材料により内燃機関用の構成部品、例えばピストン等を製造することが困難である。
【0004】
内燃機関用の構成部品の耐摩耗性を高めようとして硬質成分であるSiの量を増加させると、鋳造時にSi粒子が粗大に晶出するため、強度及び加工性が低下するという問題がある。一方、内燃機関用の構成部品の強度を高めようとして、Ni、Fe、Mn等の遷移元素量を増加させると、鋳造時にこれらの元素を含んだ化合物が粗大に晶出するため、強度及び靭性が低下し、鍛造性も低下する。そのため、これらの問題を解決すべく、化学成分の制約の小さい急冷凝固粉末を利用した粉末冶金法を応用することが試みられている。
【0005】
従来技術として、Si及びSiCを8重量%以上含み、鋳造性を低下させることなく、耐磨耗性等を向上させたピストン用アルミニウム合金が開示されている(特許文献1参照)。しかし、このようなピストン用アルミニウム合金には、SiC粉末により加工性が低下し、また摺動時の相手材への攻撃性が大きいといった問題がある。
【0006】
アルミニウム合金の急冷凝固粉末を固化して形成した鍛造前の鍛造素材を、金型による鍛造でピストン形状に成形する鍛造ピストンとその製造方法が開示されている(特許文献2参照)。しかし、このようなピストン及びその製造方法では、熱伝導が悪く、ピストン動作時にピストンヘッド部の温度が高くなる。その結果、燃焼室の温度が上昇し、内燃機関の出力が低下するという問題がある。さらには、鍛造前の鍛造素材の予熱条件によっては、成形不良が生じ、組織が粗大化し、所望の機械的物性が得られないといった問題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−36030号公報
【特許文献2】
特開2000−39067号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、合金に含まれる成分の結晶粒の粗大化を抑制し、機械的性質の優れる内燃機関用の構成部品を得ることができる内燃機関用の構成部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内燃機関用の構成部品の製造方法であって、2〜6重量%のFeと、14〜20重量%のSiと、0.2〜2重量%のMgと、0.5〜3重量%のCuと、0.01〜0.05重量%のTiと、残余にアルミニウムとを含むアルミニウム合金の急冷凝固粉末と、硬質材料粉末とを加熱・押し出しすることにより鍛造素材を得るステップと、得られた鍛造素材を425〜450℃で予熱するステップと、予熱された該鍛造素材を鍛造して内燃機関用の構成部品を得るステップとを含む。
硬質材料粉末とは、SiO2、SiC、Al2O3、その他のセラミックス等をいう。特には、硬質材料粉末は、立方晶β型のSiC粉末であり、鍛造素材全体の1〜5重量%となるように混合されることが好ましい。
鍛造素材とは、鍛造する前段階のアルミニウム合金と硬質材料粉末とが加熱により固化された状態をいい、鍛造素材は一塊の形態になっている。
【0010】
本発明によれば、前記予熱時間が0.5〜1時間であることが好ましい。また、内燃機関用の構成部品が、ピストンシリンダーヘッド、シリンダースリーブ、コンロッド、またはコンプレッサー部品のスクロールであることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、熱伝導性、高温強度、耐摩耗性に優れ、鍛造性が良好な内燃機関用の構成部品の効率的な製造が可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施の形態によりさらに詳しく説明する。本発明にかかる内燃機関用の構成部品の製造方法について、図1に製造工程のフローチャートを示して説明する。ここでは、内燃機関用の構成部品の一例としてピストンを挙げて説明するが、本発明に係る内燃機関用の構成部品の製造方法により製造される部品はピストンには限定されない。
【0013】
第1の工程では、アルミニウムの基板に対してSi、Fe及びその他の成分を含有させたアルミニウム合金のインゴットを準備する(1)。第2の工程では、一種類あるいは複数の種類のインゴットを所定の温度で溶解してから霧状に散布し、急激に冷却して凝固させ、アルミニウム合金の急冷凝固粉末を製造する(2)。続く第3の工程では、第2の工程で得られたアルミニウム合金の急冷凝固粉末を硬質材料とともに加熱して押し出し、丸棒として固形化する(3)。第4の工程では、第3の工程で得られた押出し丸棒を、鍛造素材に必要な長さに切断する(4)。第5の工程では、第4の工程で得られた鍛造素材の成形性を良くするために、鍛造素材および金型の内面に離型剤を塗布する(5)。第6の工程では、離型剤を塗布した鍛造素材を所定の温度まで予熱する(6)。第7の工程では、予熱した鍛造素材を型で挟み、鍛造してピストン粗材を得る(7)。第8の工程では、得られたピストン粗材の強度を高めるために熱処理を施す(8)。第9の工程では、熱処理を施したピストン粗材に機械加工をしてピストン本体の最終形状とする(9)。さらに、第10の工程においては、最終形状のピストン本体に表面処理を施して、製品としてのピストンを得る(10)。
【0014】
次に各々の工程における操作等についてさらに詳細に説明する。
第1の工程で用いるアルミニウム合金のインゴットは、2〜6重量%のFeと、14〜20重量%のSiと、0.2〜2重量%のMgと、0.5〜3重量%のCuと、0.01〜0.05重量%のTiとを含む。
【0015】
Feは鍛造ピストンの耐熱性、高温強度を向上させると共に弾性係数を向上させ、熱膨張係数を低下させるために加える元素である。Feの有効添加量は、インゴット全体の重量に対し、2〜6重量%であり、より好ましくは4〜5重量%である。Feの添加量が2重量%以下では十分な高温強度が得られず、添加量が6重量%を超えると、合金の延性及び靭性が低下する。
【0016】
Siは、鍛造ピストンの耐摩耗性、弾性係数を向上し、熱膨張係数を低下させ、密度を低下させるために加える元素である。Siの有効添加量は、インゴット全体の重量に対し、好ましくは14〜20重量%であり、より好ましくは16〜18重量%である。14重量%以下ではSiを添加することによる効果が小さく、20重量%を超えると合金が脆くなる。
【0017】
Mgは、アルミニウム合金のマトリックスに固溶されて、鍛造ピストンの常温及び高温における強度を向上させる。Mgの有効添加量は、インゴット全体の重量に対し、好ましくは0.2〜2重量%であり、より好ましくは0.8〜2重量%、さらに好ましくは0.8〜1.5重量%である。Mgの添加量が0.2重量%未満では効果が不足し、2重量%を超えると室温における合金の靭性が低下する。
【0018】
Cuは、鍛造ピストンの中高温における強度を向上させるために加える元素である。特には、150℃前後の高温における強度向上に有効である。Cuの有効添加量は、インゴット全体の重量に対し、好ましくは0.5〜3重量%であり、より好ましくは1〜2重量%である。Cuの添加量が0.5重量%以下ではその効果が小さく、3重量%を超えると合金の延性及び靭性が低下する。
【0019】
Tiは、鍛造ピストンの高温における強度を向上させるために加える元素であって、微量の添加でその効果が期待できる。Tiの有効添加量は、インゴット全体の重量に対し、0.01〜0.05重量%である。Tiの添加量が0.01%以下ではその効果が小さく、0.05重量%を超えると合金の熱伝導率を著しく低下させる。Tiを添加した場合には粉末作製時の溶融温度を高くする必要があるが、Tiの含有量が0.05重量%以下であれば、830℃〜890℃の温度でアトマイズすることができ、耐火物の低コスト化、寿命延長が可能となるという利点もある。
【0020】
第2の工程では、急冷凝固粉末法により、アルミニウム合金を粉末にする。このとき、インゴッドを830〜890℃で溶解し、空気中に噴霧することにより、冷却速度を100℃/s以上で急冷して、急冷凝固粉末を得る。
【0021】
第2の工程で得られたアルミニウム合金の急冷凝固粉末を、加熱・押し出しすることにより丸棒として固形化する第3の工程では、アルミニウム合金の急冷凝固粉末とともに硬質材料を添加する。アルミニウム合金の強度を増すためである。硬質材料としては、SiO2、SiC、Al2O3、その他のセラミックス等を用いることができるが、中でも強度の点からSiCを用いることが好ましい。また、SiCの中でも相手材を磨耗させにくい立方晶系のβ型SiCを用いることが好ましい。特には、粒径が2〜10μmのものを用いることが好ましい。このような硬質材料は、鍛造素材全体の重量に対し、1〜5重量%で添加することが好ましい。
【0022】
アルミニウム合金の急冷凝固粉末は297μm以下に分級し、アルミニウム缶等に充填する。硬質材料も同様にアルミニウム缶等に充填し、これらに対し、380〜495℃で真空脱ガスを行う。これは、粉末状のアルミニウム合金及び硬質材料を溶融するに先立って、これらの間隙に存在する空気等のガスを除き、合金にガスが混入するのを防止するためである。
【0023】
次いでアルミニウム缶を密封して押出用ビレットとし、好ましくは350〜450℃、さらに好ましくは380℃〜400℃で、押出比を好ましくは15〜30、さらに好ましくは20として熱間押出を行う。300℃以下では、温度が低すぎて、押出しが困難であり、500℃では、温度が高すぎて、組織が粗大化し、製品の機械的物性に問題が生じる。このようにして得られた塊状の合金を鍛造素材という。粉末状のアルミニウム合金及び硬質材料を、加熱・押し出しして鍛造素材を得る方法により、優れた機械的特性を有する合金を製造することができる。
【0024】
第4の工程では、第3の工程で固形化された丸棒をピストンの鍛造に必要な長さに切断する。
【0025】
第5の工程では、丸棒が切断されて得られた鍛造素材および金型の内面に離型剤を塗布する。これは、型で挟んで鍛造する第7の工程において、成形性をよくするためである。離型剤としては、グラファイト系潤滑剤等を使用することができる。
【0026】
鍛造前の鍛造素材を予熱する第6の工程では、鍛造素材を425〜450℃で、0.5〜1時間にわたって予熱する。予熱温度が450℃より高いと高温での硬さ低下が生じ機械的物性に悪影響を及ぼす一方、予熱時間が0.5h以下では鍛造素材の予熱が不十分となって鍛造時の成形不良が多発し、1.0h以上では成形サイクルが長くなり生産性が悪くなるからである。本発明は、粉末冶金法を用いて鍛造ピストンを製造する場合、鍛造前の鍛造素材の予熱条件により鍛造ピストンの物性値が大きく影響されることを考慮し、温度が高すぎたり時間が長すぎたりすると、急冷凝固粉末を用いる利点である硬さ、強度等の機械的物性値が低下することを発見し、なされたものである。
【0027】
第7の工程では、上下一対の型で、予熱した鍛造素材をはさみ、鍛造してピストン粗材を得る。本実施の形態では、ピストンを得るための型を用い、図1の(7)に概形を示すような形状に鍛造するが、所望の形状の型を用いることにより、所望の内燃機関用の構成部品を得ることができる。
【0028】
第8の工程では、ピストン粗材を熱処理する。これは、ピストン粗材の強度を高めるためであり、溶体化処理後、時効硬化処理といった熱処理を実施する。第9の工程では、熱処理したピストン粗材に機械加工を施し、最終形状のピストンを形成する。第10の工程では、機械加工を施したピストン粗材に、さらに表面処理を行うことで、完成品である鍛造ピストンを得る。
【0029】
本実施の形態においては、鍛造ピストンの製造方法について記載したが、本発明の方法は、ピストンのみならず、内燃機関用の構成部品であるシリンダーヘッド、シリンダースリーブ、コンロッド、またはコンプレッサー部品のスクロール等の製造においても使用することができる。その場合、それぞれの部品に適した型を用いて第7の工程を行うことで、実施することができる。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を参考例とともに挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0031】
[実施例・参考例1]
鍛造前のピストンを予熱する工程において、予熱時間、予熱温度を変化させた本発明の実施例と参考例を示す。
図1に示すピストン製造方法の第1の工程から第9の工程に従って、鍛造ピストンを製造した。第1の工程において、アルミニウム合金のインゴットとしては、アルミニウムの他、2〜6%のFeと、14〜20%のSiと、0.2〜2%のMgと、0.5〜3%のCuと、0.01〜0.05%のTiとを含むものを用いた。第2の工程において、このアルミニウム合金のインゴットを830〜890℃で溶解して霧状に散布し100℃/s以上で急激に冷して凝固させ、急冷凝固粉末を調製した。
【0032】
上記の条件で得られた急冷凝固粉末を用いて、第2の工程から第5の工程に従って、実施の形態で説明した方法により、鍛造素材を製造した。その後、予熱温度が430℃、450℃、470℃、予熱時間が、0.5h、1.0h、2.0h、3.0h、4.0hとなるような条件で鍛造素材を予熱した。さらに、図1に示す第7の工程から第9の工程に従って、予熱した鍛造素材を鍛造し、ピストン粗材を成形した。
【0033】
第8の工程である熱処理工程では、490℃で4hにわたって溶体化した後、温水焼入れを行い、210℃で4hにわたって時効硬化を行う条件で熱処理を実施した。それぞれの条件で予熱後、熱処理を行い、得られたピストン粗材を300℃×100h保持し、その後の硬さ(HRB)を測定した。
【0034】
以下の表1に、実施例と参考例の各々につき、押出しのままの切断ビレットの硬さ、それぞれの予熱条件での予熱後の硬さ、それぞれの予熱条件での熱処理後の硬さ、そして熱処理後、更に300℃×100h保持後の硬さを測定し比較した結果を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
ここで、「基準との比較」とは、切断ビレットを予熱せずに熱処理を実施し、300℃×100h保持した後の硬さを基準に、予熱条件による硬さへの影響を調べた結果である。基準値以上の硬さを「硬」、基準値を下回る硬さを「軟」とした。
【0037】
表1の硬さの評価結果から、鍛造前の予熱条件によって、高温での機械的特性に影響があることがわかった。鍛造前の鍛造素材の予熱温度が430℃の場合、300℃×100h保持後の硬さは、保持時間0.5〜4.0hで、基準硬さ値に対し、硬さ低下は認められなかった。鍛造前の鍛造素材の予熱温度が450℃の場合、300℃×100h保持後の硬さは、保持時間が2.0〜4.0hで、基準硬さ値に対し硬さ低下が認められる。鍛造前の鍛造素材の予熱温度が470℃の場合、300℃×100h保持後の硬さは、保持時間0.5〜4.0hで基準硬さ値に対し硬さ低下が認められた。
【0038】
従って、鍛造成形性を良くするために鍛造前に鍛造素材を予熱するが、高温での機械的特性を低下させず、作業性を考慮した場合、鍛造素材の最適な予熱条件は予熱温度が430〜450℃で、予熱時間が0.5〜1.0hであった。
【0039】
[実施例・参考例2]
実施例・参考例2では、Tiの添加量と耐熱性、熱伝導性について検討した。表2の成分組成を有するアルミニウム合金を配合、溶解し、830〜890℃のアトマイズ温度で、エアアトマイズ法により急冷凝固粉末を作製し、297μm以下に分級した。この粉末をアルミニウム缶に充填し、380〜495℃で真空脱ガスを行った。次いでアルミニウム缶を密封して押出用ビレットとし、380℃〜400℃で押出比20として熱間押出を行い、直径20mmの丸棒を押出した。得られた丸棒材を、490℃で4時間加熱し、水冷し、210℃で4時間加熱し、空冷する条件で熱処理した後、以下の方法に従って、耐熱性、熱伝導率を測定し評価した。
【0040】
Tiと耐熱性の関係熱処理後の丸棒材から引張試験片を採取し、200℃で引張試験における耐力を測定し評価した。また、Tiと熱伝導率の関係熱処理後の丸棒材から熱伝導率を測定し評価した。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の評価結果から次のことが認められる。実施例2−1〜2−5、参考例2−2〜2−5ではTiの添加効果が認められ、200℃の耐力が、参考例2−1(Ti無添加)の場合に比べ約20%向上した。参考例2−1、実施例2−1〜2−5(Ti添加量:0.00wt%〜0.05wt%)は同程度の熱伝導率を示したが、Ti添加量が0.05wt%を越すと熱伝導率が急激に低下した。耐熱性、熱伝導率の評価試験結果及び粉末作製時のアトマイズ温度を考慮すると、Tiの最適添加量は0.01wt%〜0.05wt%であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係る内燃機関用の構成部品の製造方法により、アルミニウム合金に耐熱性、耐磨耗性当を付与するSi、Fe等の含有量を増やすことが可能となる。特には、本発明の方法によれば、鍛造後のピストン粗材における初晶Siの粒径を10μm以下とすることが可能となり、機械的性質の優れた内燃機関用の構成部品を得ることができる。また、鍛造前の鍛造素材の予熱条件の最適化を図ることにより、高温での熱変形が少なく、熱伝導が良く、高温強度の高く、耐摩耗性の良い内燃機関用の構成部品が得られる。
従って、本発明に係る内燃機関用の構成部品の製造方法を実施することで、十分に高温に耐え、摩耗劣化や溶損等を起こすことなく、薄肉軽量が図られたピストン等の内燃機関用の構成部品を製造することができ、これによりエンジン出力向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる内燃機関用の構成部品の製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 インゴット準備工程
2 溶解・急冷凝固工程
3 加熱・押し出し工程
4 切断工程
5 離型剤塗布工程
6 予熱工程
7 鍛造工程
8 熱処理工程
9 機械加工工程
10 表面処理工程
Claims (4)
- 2〜6重量%のFeと、14〜20重量%のSiと、0.2〜2重量%のMgと、0.5〜3重量%のCuと、0.01〜0.05重量%のTiと、残余にアルミニウムとを含むアルミニウム合金の急冷凝固粉末と、硬質材料粉末とを加熱・押し出しすることにより鍛造素材を得るステップと、
得られた鍛造素材を425〜450℃で予熱するステップと、
予熱された該鍛造素材を鍛造して内燃機関用の構成部品を得るステップと
を含む内燃機関用の構成部品の製造方法。 - 前記予熱時間が0.5〜1時間である請求項1に記載の内燃機関用の構成部品の製造方法。
- 前記硬質材料粉末が、立方晶β型のSiC粉末であり、鍛造素材全体の1〜5重量%となるように混合される請求項1又は2に記載の内燃機関用の構成部品の製造方法。
- 前記内燃機関用の構成部品が、ピストンシリンダーヘッド、シリンダースリーブ、コンロッド、またはコンプレッサー部品のスクロールである請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関用の構成部品の製造方法。
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