JP2004099572A - 無水コハク酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無水コハク酸の製造方法において、反応時間の短縮および設備の小型化を図る。
【解決手段】無水マレイン酸を原料として用い、触媒の存在下で水素添加反応により無水コハク酸を製造する方法であって、無水マレイン酸、触媒および水素が供給される反応器10と、反応器10に配置され反応液と水素とを混合する混合ミキサー16と、反応器10内の反応液の昇温および反応熱の除去用外部熱交換器30と、反応液循環用ポンプ32とからなる循環型反応装置を用い、無水マレイン酸、触媒および水素を反応器10に供給し、反応器10内の反応液を熱交換器30に送った後、混合ミキサー16に送ることにより、反応液を循環させ、反応器10内の混合ミキサー16で反応液と水素とを混合しながら水素添加反応を行わせる。
【選択図】 図1
【解決手段】無水マレイン酸を原料として用い、触媒の存在下で水素添加反応により無水コハク酸を製造する方法であって、無水マレイン酸、触媒および水素が供給される反応器10と、反応器10に配置され反応液と水素とを混合する混合ミキサー16と、反応器10内の反応液の昇温および反応熱の除去用外部熱交換器30と、反応液循環用ポンプ32とからなる循環型反応装置を用い、無水マレイン酸、触媒および水素を反応器10に供給し、反応器10内の反応液を熱交換器30に送った後、混合ミキサー16に送ることにより、反応液を循環させ、反応器10内の混合ミキサー16で反応液と水素とを混合しながら水素添加反応を行わせる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無水コハク酸の製造方法に関し、詳しくは、無水マレイン酸を用い触媒の存在下に水素添加反応で無水コハク酸を製造する方法を対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
無水コハク酸は、例えば、コハク酸、コハク酸のジエステル類、スクシンイミド類、ポリエステル類等の合成原料として有用な化合物である。
無水コハク酸の製造方法としては、コハク酸を脱水する方法か、あるいは無水マレイン酸を水素添加する方法が知られているが、工業的な観点からは後者が好ましく、これまでに水素添加の際の触媒や反応条件等については種々の検討がなされてきた。
水素添加反応を行う反応装置としては、溶融状態の無水マレイン酸と触媒とが収容され、そこに水素ガスを供給して水素添加反応を行わせる槽型の反応器が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の製造方法では、反応時間が長くかかったり、大型の反応槽が必要であったりして、設備コストおよび無水コハク酸の生産コストが高くつくという問題がある。
槽型反応器における水素添加反応では、ガスの吸収拡散が律速となるため、他の条件をいくら適切に設定しても、反応時間が長くかかる。
また、水素添加反応では大量の反応熱が発生するため、反応熱の除熱を十分に行えることが、反応槽の容量を決定する重要な条件になる。反応槽での除熱は、反応槽に設置されたコイルやジャケットにより行うが、除熱速度(伝熱面積×伝熱係数×温度差)に制限があるため、水素添加反応を抑える必要があり、結果的に、反応槽の容量が大きくなり、設備コストが増える。大容量の反応槽を使用すると、前述のように、ガスの吸収拡散と反応熱の除熱の点から反応時間が長くかかる原因にもなる。
【0004】
本発明の課題は、前記した無水コハク酸の製造方法において、反応時間の短縮および設備の小型化を図ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる無水コハク酸の製造方法は、無水マレイン酸を原料として用い、触媒の存在下で水素添加反応により無水コハク酸を製造する方法であって、前記無水マレイン酸、触媒および水素が供給される反応器と、反応器に配置され反応液と水素とを混合する混合ミキサーと、反応器内の反応液の昇温および反応熱の除去用外部熱交換器と、反応液循環用ポンプとからなる循環型反応装置を用い、前記無水マレイン酸、触媒および水素を前記反応器に供給し、反応器内の反応液を前記熱交換器に送った後、混合ミキサーに送ることにより、反応液を循環させ、反応器内の混合ミキサーで反応液と水素とを混合しながら前記水素添加反応を行わせる。
【0006】
当該外部熱交換器による除熱速度の増大と、それに伴う反応速度の上昇により、設備の小型化が可能になる。
【0007】
【発明の実施の形態】
〔無水マレイン酸〕
原料となる無水マレイン酸としては、特に制限はなく、通常の無水コハク酸製造と同様の無水マレイン酸が使用できる。無水マレイン酸は、溶融状態で水素添加反応を行う反応器に供給するか、固体状で反応器に供給された無水マレイン酸を加熱溶融させて水素添加反応を行わせる。
〔触媒〕
触媒は、無水マレイン酸から無水コハク酸を得る水素添加反応に有効な触媒が使用される。
【0008】
具体的には、無水マレイン酸の環状構造部分における炭素−炭素二重結合部分に水素添加できる触媒を使用することが一般的であり好ましい。このような触媒具体例として、ラネー触媒や遷移族IおよびVIIIの金属触媒が挙げられる。
ラネー触媒は、Ni、Co、Cu、Feなどの水添活性を示す金属が少なくとも1種類以上含んでいるラネーであり、骨格を有するいわゆる骨格触媒である。よって、支持体を必要としない。ラネー触媒としては、コスト面を考慮すると、好ましくは上記金属元素の中の1種または2種のみ、より好ましくは上記金属元素の中の1種のみを含むラネー触媒である。なかでも、金属元素としてNiを用いることが特に好ましい。
【0009】
上記遷移族IおよびVIIIの金属触媒は、例えば、Pd、Rh、Ru、Pt、Ir、Ni、Co、Feなどの水添活性成分を少なくとも1種類以上含んでいる金属触媒である。これら金属元素のなかでもPdまたはPtがより好ましく、Pdが特に好ましい。この金属触媒の形態としては、特に限定はされないが、金属粉末や、金属粉末を含むスラリーや、支持体に担持する形態などが挙げられる。特に、活性炭にPdを担持させた触媒が好ましい。
触媒粒子としては、平均粒径1μm〜1mmの範囲のものが好ましく使用できる。さらに好ましくは、平均粒径10〜100μmである。触媒中に含まれる1μm以下の粒子の含有量が10%以下であるものが好ましい。
【0010】
具体的には、以下に示す市販の活性炭にPdを担持させた触媒が使用できる。
Degussa社製:E101R、E101O、E196R
川研ファイン社製:M型、PH型、AD型
日揮化学社製:N1193A5、N1193B5、N1195B5、N1193C5
〔水素〕
水素原料としては、純水素でもよいし、工業的に安価で入手できるイナート成分が入った水素も使用できる。
【0011】
〔製造装置〕
<反応器>
たて型反応槽が使用できる。無水マレイン酸水添反応を完結できる容量を備えておく。
<混合ミキサー>
反応器の上部に配置される。混合ミキサーにより、触媒を含んだ反応液と原料水素との混合を行う。気液分散性能に優れたものが好ましい。混合ミキサーの操作範囲としては、混合ミキサーからの液の流出速度を、10m/sec以上、好ましくは20m/sec以上に設定する。
【0012】
<外部熱交換器>
各種タイプの熱交換器が用いられるが、好ましくは、たて型多管円筒式の熱交換器が用いられる。胴側の熱媒体により、管側を流れる反応液との間で熱の授受を行う。
<反応液循環手段>
循環ポンプなどの強制循環手段を備える。反応器内の反応液を、外部熱交換器から混合ミキサーに送って、循環を行わせ、外部熱交換器では、反応熱の除去を行い、無水マレイン酸の水素添加反応を行わせる。この際、循環ポンプに吸入する触媒を含んだガス/液混合物中のガスを30vol%以下に抑えることが望ましい。
【0013】
〔水素添加反応〕
無水マレイン酸から無水コハク酸を得る水素添加反応は、基本的には、従来公知の方法と同様に、加圧下で触媒とともに水素を反応させればよい。
<反応圧力>
水素添加反応を行う際の反応圧力は、特に限定されるものではないが、通常、0.1〜10MPaで行うことができる。好ましくは、反応圧力を、0.1〜2.0MPaに加圧しておくことができる。反応圧力の設定は、水素の供給圧力およびガスパージ量の調整によって行える。反応圧力が低過ぎると、反応速度が非常に遅くなるおそれがある。反応圧力が高過ぎると、望まない一層の水素添加反応などの副反応が起きるおそれがある。
【0014】
<反応温度>
反応温度を、120〜160℃に設定しておくことができる。反応温度の設定は、反応器の外部に設置した熱交換器により行うことができる。反応温度が低過ぎると、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。反応温度が高過ぎると、不純物の生成量が増えてしまうおそれがある。
<ガスパージ>
水素添加反応では、反応器内のガスを一部パージしながら反応を行うことができる。
【0015】
具体的には、反応器の気相部分を外部に連通するガスパージ配管やガスパージ口を設けておく。排気用のポンプや吸引装置を備えておくこともできる。ガスのパージは、無水コハク酸の製造に有害な成分、例えばメタンのみを除去すればよいが、メタン以外のガスも合わせて除去しても構わない。
〔触媒の分離〕
水素添加反応で得られた無水コハク酸と触媒とを含む反応液から、触媒を分離することができる。
基本的には、通常の固液分離手段が適用できる。
【0016】
濾過器が、操作が容易で、触媒の分離を確実にできるなどの利点を有する。濾過器は、処理液の通過経路に、濾過用のフィルターが配置されている。フィルターは、触媒の粒径に合わせてメッシュ寸法などを設定しておく。
濾過器のフィルターに、無水コハク酸と触媒とを含む反応液を通過させると、無水コハク酸はフィルターを通過して濾過器から取り出されるが、触媒はフィルターを通過できずに濾過器内に残存することになる。触媒が、反応液から分離される。
触媒の全量が反応液から分離されることが望ましいが、反応液に微量の触媒が存在していても、実用上は構わない。通常は、触媒の95%以上、好ましくは99%以上を分離しておく。反応液に残る微量の触媒は、蒸留などの処理工程で除去して、最終的に得られる無水コハク酸に含まれないようにすることができる。
【0017】
〔触媒の回収〕
濾過器などの固液分離手段で、無水コハク酸を含む反応液から分離された触媒は、水素添加反応に再供給するために、固液分離手段から回収することができる。通常の固液分離手段における固体の回収技術が適用される。
フィルターを備えた濾過器では、濾過された固体を分散できる液体を、濾過処理液の通過方向とは反対方向に通過させることで、液体中に固体を回収することができる。
〔触媒の再供給〕
反応液から分離された触媒は、水素添加反応に再供給することができる。
【0018】
粉体状の触媒は、液体に分散させた状態にしておけば、取り扱い易い。触媒を分散させる液体は、水素添加反応に悪影響のない材料を使用する。
触媒を溶融状の無水マレイン酸に回収した場合、無水マレイン酸は水素添加反応の原料であるから、溶融状の無水マレイン酸に回収した触媒を、そのまま、水素添加反応に再供給することができる。
反応液から分離された触媒は、直ちに水素添加反応に再供給することもできるし、一旦、触媒を貯蔵あるいは保管したあとで、水素添加反応に再供給することもできる。
【0019】
反応液から分離された触媒を、新たに供給される触媒、あるいは、触媒の分散液と合わせて、水素添加反応に供給することもできる。
触媒の分離回収および再供給は、触媒活性の低下や触媒の損傷が問題にならない範囲で、複数回繰り返すことができる。通常、5〜40回の繰り返しが可能であり、10〜30回程度が好ましい。触媒活性が大幅に低下したり、濾過が困難になったりした触媒は、分離工程のあとで水素添加反応に再供給せずに廃棄することができる。
〔酸素濃度〕
無水コハク酸の製造工程において、触媒、触媒を含む反応液、および、触媒を含む溶融状の無水マレイン酸を、酸素濃度7%以上のガスに接触させないでおくことができる。好ましくは、酸素濃度5%以上のガスに接触させない。酸素濃度を規制しておく具体的な工程として、前記水素添加反応工程、触媒分離工程、触媒回収工程、触媒再供給工程が挙げられる。
【0020】
酸素濃度は、下式で求められる。
酸素濃度(%)=[気相中に含有される酸素の容積(m3)]/[全気相の容積(m3)]×100
無水コハク酸の製造に使用する無水マレイン酸や触媒を含む反応液を、出来るだけ酸素と接触させないことで、酸素の作用によって着色の原因になる不純物が副生することを、効果的に抑制できる。
酸素との接触を避けるには、各工程の処理装置および各工程をつなぐ配管などから、酸素を排出して、酸素以外のガス環境にしておくことが有効である。具体的には、窒素などの不活性ガスを供給することが有効である。
【0021】
触媒の活性低下を防ぐために、不活性ガスを、濾過器などの固液分離装置で供給することが有効である。濾過器などの固液分離装置で分離し回収して再供給する触媒が、酸素と接触すると活性の低下が起こる。触媒と酸素との接触を抑制することで、触媒活性の低下が防止できる。再使用する触媒でも、新触媒と遜色のない活性を発揮させることが可能になる。そのために、触媒が接触する雰囲気の酸素濃度を3%以下、好ましくは1%以下に制御することが有効である。
〔無水コハク酸〕
本発明の製造方法で得られた無水コハク酸は、有水物や着色原因となる不純物が極めて少ないものである。
【0022】
無水コハク酸の純度として、98%以上のものが得られる。
このように純度の高い無水コハク酸は、例えば、コハク酸、コハク酸のジエステル類、スクシンイミド類、ポリエステル類等の合成原料として有用である。
〔製造装置〕
図1に示す製造装置は、本発明の製造方法を実施するのに必要とされる基本的な配置構造を備えている。
水素添加反応を行う反応器10は、密閉槽状をなし、水素ガスの供給配管11、無水マレイン酸の供給配管13、触媒の供給配管21が接続されている。反応器10の下部には、循環配管31が接続されている。循環配管31は、循環ポンプ32を経て、熱交換器30に接続され、熱交換器30から再び反応器10の上部へと接続されている。
【0023】
反応器10の内部には、上部から下方に向かって延びる混合ミキサー16が設けられている。前記した水素ガスの供給配管11は、混合ミキサー16の上端部に接続されているとともに、直接に反応器10にも接続されている。混合ミキサー16の上端部には、反応液の循環配管31が接続されている。
反応器10の上部には、パージガスの排出管18が接続されている。
触媒の供給配管21は、反応器10に接続されている。供給配管21の他端は触媒槽20に接続されている。触媒槽20には、配管23を介して新触媒槽22が接続されている。
【0024】
反応器10の下部に接続された循環配管31から分岐する反応液の取出管19が、反応液受槽40に接続されている。反応液受槽40には、反応液送液ポンプ42を経てフィルター装置50に至る配管52が接続されている。
フィルター装置50には、フィルター処理後の生成反応液の取出配管51、フィルター処理で分離された触媒の回収配管53、触媒回収に用いる無水マレイン酸の供給配管54も接続されている。回収配管53は、触媒槽20に接続されている。
窒素ガスの供給配管60が、反応器10、触媒槽20、新触媒槽22、反応液受槽40およびフィルター装置50にそれぞれ接続されている。
【0025】
上記した製造装置を用いて、無水コハク酸の工業的製造が可能である。但し、本発明の製造方法が実施できれば、各装置機器やその配置構造を変更することもできる。
製造装置の具体例として、デービー社製のループ式リアクター、EC・Chem社製のジェット・リアクターなどがある。
〔製造装置の動作〕
窒素ガスの供給配管60から供給された窒素ガスで、反応器10、触媒槽20、新触媒槽22、反応液受槽40およびフィルター装置50内を置換しておく。
【0026】
反応器10には、供給配管11から水素が供給され、供給配管13から無水マレイン酸が供給され、供給配管21から触媒が供給される。反応器10の内部では、無水マレイン酸および触媒が含まれる液相12と、水素が含まれる気相14とが存在する。
触媒は、新触媒槽22から配管23を経て触媒槽20に保持されていて、必要な量の触媒が反応器10に供給される。
反応器10内で、触媒の存在下、無水マレイン酸の水素添加反応が進行する。反応器10内の反応液は、循環ポンプ32により、循環配管31を介して熱交換器30に循環させたあと、混合ミキサー16に送液する。この際、水素添加反応によって発生した反応熱を、熱交換器30で除去する。
【0027】
反応器10に戻された反応液は、混合ミキサー16で水素ガスと混合された状態で反応器10の液相12に供給される。反応液と水素ガスとの接触が極めて良好になり、ガスの吸収、拡散が良くなり、水素添加反応の反応効率が向上する。水素添加反応の進行に伴って、反応器10の気相14に溜まった不要なガスは、排出管18から排出される。排出されるガスには、原料水素中に含まれていたメタンなどが含まれる。
反応器10における水素添加反応が終了すると、反応液を取出管19から反応液受槽40に送り、さらに、反応液送液ポンプ42を経て、フィルター装置50に送る。
【0028】
フィルター装置50では、反応液から触媒を分離する。触媒を分離したあとの反応液は取出配管51から取り出される。触媒は、供給配管54から供給された無水マレイン酸に回収され、回収配管53から触媒槽20へと戻される。
【0029】
【実施例】
本発明にかかる無水コハク酸の製造方法を具体的に適用した実施例について説明する。
なお、得られた反応液の分析は、ガスクロマトグラフィー(GC)とNMRにて行った。
(実施例1)
100Lのループ式リアクターに、窒素ガス雰囲気下で、66.0kgの溶融無水マレイン酸と270gの触媒(5%Pd/活性炭、水分2%)を仕込んだ。次いで、リアクター内に、メタンを含んだ水素を圧力が0.1MPaになるまで供給して、反応器の外部に設置した熱交換器により、140℃まで加熱した。140℃までの昇温の過程で、水素添加反応が始まるが、さらに、前記同様のメタンを含んだ水素により1MPaまで反応圧力を上げた。反応中、気相部のガス組成を、水素91%(容量)、メタン9%(容量)に維持するために、メタンを含む系内ガスを、30L/minの速度で連続的に反応器より抜き出した。反応が終わるまで、反応温度は140℃に維持した。100分後に、水素添加反応が終了した。
【0030】
反応生成物の分析の結果、無水マレイン酸の転化率は100%であり、無水コハク酸の組成は99.9%であった。
その後、触媒は、窒素雰囲気下、無水コハク酸が析出しない温度である120℃で濾過することにより、生成物から濾別した。
(実施例2)
100Lのループ式リアクターに、窒素ガス雰囲気下で、実施例1と同量の溶融無水マレイン酸と触媒とを仕込んだ。次いで、リアクター内に、純水素を圧力が0.1MPaになるまで供給して、140℃まで加熱した。140℃までの昇温の過程で、水素添加反応が始まるが、さらに、純水素により0.5MPaまで反応圧力を上げた。反応が終わるまで、反応温度は140℃に維持した。100分後に、2L/minの少量のガスをパージした。170分後に、水素添加反応が終了した。
【0031】
反応生成物の分析の結果、無水マレイン酸の転化率は100%であり、無水コハク酸の組成は99.9%であった。
その後、触媒は、窒素雰囲気下、無水コハク酸が析出しない温度である120℃で濾過することにより、生成物から濾別した。
(比較例1)
100Lの攪拌式槽型リアクター(ジャケットおよびコイル装着)に、窒素ガス雰囲気下で、66.0kgの溶融無水マレイン酸と270gの触媒(5%Pd/活性炭、水分2%)を仕込んだ。次いで、リアクター内に、メタンを含んだ水素を圧力が0.1MPaになるまで供給して、反応器に装着したジャケットおよびコイルから加熱用の熱媒により、140℃まで加熱した。その後、前記同様のメタンを含んだ水素により1MPaまで反応圧力を上げた。反応中、気相部のガス組成を、水素91%(容量)、メタン9%(容量)に維持するために、メタンを含む系内ガスを、10L/minの速度で連続的に反応器より抜き出した。反応が終わるまで、反応温度は、ジャケットおよびコイルから熱媒への除熱により、140℃に維持した。300分後に、水素添加反応が終了した。
【0032】
反応生成物の分析の結果、無水マレイン酸の転化率は100%であり、無水コハク酸の組成は99.9%であった。
その後、触媒は、窒素雰囲気下、無水コハク酸が析出しない温度である120℃で濾過することにより、生成物から濾別した。
(比較例2)
比較例1と同様の100Lの攪拌式槽型リアクター(ジャケットおよびコイル装着)に、窒素ガス雰囲気下で、比較例1と同量の溶融無水マレイン酸および触媒を仕込んだ。次いで、リアクター内に、純水素を圧力が0.1MPaになるまで供給して、140℃まで加熱した。さらに、純水素により0.5MPaまで反応圧力を上げ、0.5MPaを維持した。反応が終わるまで、ジャケットおよびコイルから熱媒への除熱により、反応温度を140℃に維持した。100分後に、2L/minの少量のガスをパージした。500分後に、水素添加反応が終了した。
【0033】
反応生成物の分析の結果、無水マレイン酸の転化率は100%であり、無水コハク酸の組成は99.9%であった。
その後、触媒は、窒素雰囲気下、無水コハク酸が析出しない温度である120℃で濾過することにより、生成物から濾別した。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、無水コハク酸を製造する水素添加反応において、反応器内の反応液を熱交換器と混合ミキサーに送液し循環させることで、反応熱の除熱効率を高め、反応時間の短縮ができ、製造設備全体の小型化を達成できる。
また、反応器内で混合ミキサーによって反応液を構成する無水マレイン酸、触媒および水素を攪拌混合することで、気液の接触を良好にし、ガスの吸収、拡散が反応の律速条件とならないようにして、反応時間を短縮することができる。
その結果、高純度の無水コハク酸を、効率的かつ経済的に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を表す反応装置の全体構造図
【符号の説明】
10 反応器
12 液相
14 気相
16 混合ミキサー
20 触媒槽
22 新触媒槽
30 熱交換器
32 循環ポンプ
40 反応液受槽
42 反応液送液ポンプ
50 フィルター装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、無水コハク酸の製造方法に関し、詳しくは、無水マレイン酸を用い触媒の存在下に水素添加反応で無水コハク酸を製造する方法を対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
無水コハク酸は、例えば、コハク酸、コハク酸のジエステル類、スクシンイミド類、ポリエステル類等の合成原料として有用な化合物である。
無水コハク酸の製造方法としては、コハク酸を脱水する方法か、あるいは無水マレイン酸を水素添加する方法が知られているが、工業的な観点からは後者が好ましく、これまでに水素添加の際の触媒や反応条件等については種々の検討がなされてきた。
水素添加反応を行う反応装置としては、溶融状態の無水マレイン酸と触媒とが収容され、そこに水素ガスを供給して水素添加反応を行わせる槽型の反応器が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の製造方法では、反応時間が長くかかったり、大型の反応槽が必要であったりして、設備コストおよび無水コハク酸の生産コストが高くつくという問題がある。
槽型反応器における水素添加反応では、ガスの吸収拡散が律速となるため、他の条件をいくら適切に設定しても、反応時間が長くかかる。
また、水素添加反応では大量の反応熱が発生するため、反応熱の除熱を十分に行えることが、反応槽の容量を決定する重要な条件になる。反応槽での除熱は、反応槽に設置されたコイルやジャケットにより行うが、除熱速度(伝熱面積×伝熱係数×温度差)に制限があるため、水素添加反応を抑える必要があり、結果的に、反応槽の容量が大きくなり、設備コストが増える。大容量の反応槽を使用すると、前述のように、ガスの吸収拡散と反応熱の除熱の点から反応時間が長くかかる原因にもなる。
【0004】
本発明の課題は、前記した無水コハク酸の製造方法において、反応時間の短縮および設備の小型化を図ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる無水コハク酸の製造方法は、無水マレイン酸を原料として用い、触媒の存在下で水素添加反応により無水コハク酸を製造する方法であって、前記無水マレイン酸、触媒および水素が供給される反応器と、反応器に配置され反応液と水素とを混合する混合ミキサーと、反応器内の反応液の昇温および反応熱の除去用外部熱交換器と、反応液循環用ポンプとからなる循環型反応装置を用い、前記無水マレイン酸、触媒および水素を前記反応器に供給し、反応器内の反応液を前記熱交換器に送った後、混合ミキサーに送ることにより、反応液を循環させ、反応器内の混合ミキサーで反応液と水素とを混合しながら前記水素添加反応を行わせる。
【0006】
当該外部熱交換器による除熱速度の増大と、それに伴う反応速度の上昇により、設備の小型化が可能になる。
【0007】
【発明の実施の形態】
〔無水マレイン酸〕
原料となる無水マレイン酸としては、特に制限はなく、通常の無水コハク酸製造と同様の無水マレイン酸が使用できる。無水マレイン酸は、溶融状態で水素添加反応を行う反応器に供給するか、固体状で反応器に供給された無水マレイン酸を加熱溶融させて水素添加反応を行わせる。
〔触媒〕
触媒は、無水マレイン酸から無水コハク酸を得る水素添加反応に有効な触媒が使用される。
【0008】
具体的には、無水マレイン酸の環状構造部分における炭素−炭素二重結合部分に水素添加できる触媒を使用することが一般的であり好ましい。このような触媒具体例として、ラネー触媒や遷移族IおよびVIIIの金属触媒が挙げられる。
ラネー触媒は、Ni、Co、Cu、Feなどの水添活性を示す金属が少なくとも1種類以上含んでいるラネーであり、骨格を有するいわゆる骨格触媒である。よって、支持体を必要としない。ラネー触媒としては、コスト面を考慮すると、好ましくは上記金属元素の中の1種または2種のみ、より好ましくは上記金属元素の中の1種のみを含むラネー触媒である。なかでも、金属元素としてNiを用いることが特に好ましい。
【0009】
上記遷移族IおよびVIIIの金属触媒は、例えば、Pd、Rh、Ru、Pt、Ir、Ni、Co、Feなどの水添活性成分を少なくとも1種類以上含んでいる金属触媒である。これら金属元素のなかでもPdまたはPtがより好ましく、Pdが特に好ましい。この金属触媒の形態としては、特に限定はされないが、金属粉末や、金属粉末を含むスラリーや、支持体に担持する形態などが挙げられる。特に、活性炭にPdを担持させた触媒が好ましい。
触媒粒子としては、平均粒径1μm〜1mmの範囲のものが好ましく使用できる。さらに好ましくは、平均粒径10〜100μmである。触媒中に含まれる1μm以下の粒子の含有量が10%以下であるものが好ましい。
【0010】
具体的には、以下に示す市販の活性炭にPdを担持させた触媒が使用できる。
Degussa社製:E101R、E101O、E196R
川研ファイン社製:M型、PH型、AD型
日揮化学社製:N1193A5、N1193B5、N1195B5、N1193C5
〔水素〕
水素原料としては、純水素でもよいし、工業的に安価で入手できるイナート成分が入った水素も使用できる。
【0011】
〔製造装置〕
<反応器>
たて型反応槽が使用できる。無水マレイン酸水添反応を完結できる容量を備えておく。
<混合ミキサー>
反応器の上部に配置される。混合ミキサーにより、触媒を含んだ反応液と原料水素との混合を行う。気液分散性能に優れたものが好ましい。混合ミキサーの操作範囲としては、混合ミキサーからの液の流出速度を、10m/sec以上、好ましくは20m/sec以上に設定する。
【0012】
<外部熱交換器>
各種タイプの熱交換器が用いられるが、好ましくは、たて型多管円筒式の熱交換器が用いられる。胴側の熱媒体により、管側を流れる反応液との間で熱の授受を行う。
<反応液循環手段>
循環ポンプなどの強制循環手段を備える。反応器内の反応液を、外部熱交換器から混合ミキサーに送って、循環を行わせ、外部熱交換器では、反応熱の除去を行い、無水マレイン酸の水素添加反応を行わせる。この際、循環ポンプに吸入する触媒を含んだガス/液混合物中のガスを30vol%以下に抑えることが望ましい。
【0013】
〔水素添加反応〕
無水マレイン酸から無水コハク酸を得る水素添加反応は、基本的には、従来公知の方法と同様に、加圧下で触媒とともに水素を反応させればよい。
<反応圧力>
水素添加反応を行う際の反応圧力は、特に限定されるものではないが、通常、0.1〜10MPaで行うことができる。好ましくは、反応圧力を、0.1〜2.0MPaに加圧しておくことができる。反応圧力の設定は、水素の供給圧力およびガスパージ量の調整によって行える。反応圧力が低過ぎると、反応速度が非常に遅くなるおそれがある。反応圧力が高過ぎると、望まない一層の水素添加反応などの副反応が起きるおそれがある。
【0014】
<反応温度>
反応温度を、120〜160℃に設定しておくことができる。反応温度の設定は、反応器の外部に設置した熱交換器により行うことができる。反応温度が低過ぎると、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。反応温度が高過ぎると、不純物の生成量が増えてしまうおそれがある。
<ガスパージ>
水素添加反応では、反応器内のガスを一部パージしながら反応を行うことができる。
【0015】
具体的には、反応器の気相部分を外部に連通するガスパージ配管やガスパージ口を設けておく。排気用のポンプや吸引装置を備えておくこともできる。ガスのパージは、無水コハク酸の製造に有害な成分、例えばメタンのみを除去すればよいが、メタン以外のガスも合わせて除去しても構わない。
〔触媒の分離〕
水素添加反応で得られた無水コハク酸と触媒とを含む反応液から、触媒を分離することができる。
基本的には、通常の固液分離手段が適用できる。
【0016】
濾過器が、操作が容易で、触媒の分離を確実にできるなどの利点を有する。濾過器は、処理液の通過経路に、濾過用のフィルターが配置されている。フィルターは、触媒の粒径に合わせてメッシュ寸法などを設定しておく。
濾過器のフィルターに、無水コハク酸と触媒とを含む反応液を通過させると、無水コハク酸はフィルターを通過して濾過器から取り出されるが、触媒はフィルターを通過できずに濾過器内に残存することになる。触媒が、反応液から分離される。
触媒の全量が反応液から分離されることが望ましいが、反応液に微量の触媒が存在していても、実用上は構わない。通常は、触媒の95%以上、好ましくは99%以上を分離しておく。反応液に残る微量の触媒は、蒸留などの処理工程で除去して、最終的に得られる無水コハク酸に含まれないようにすることができる。
【0017】
〔触媒の回収〕
濾過器などの固液分離手段で、無水コハク酸を含む反応液から分離された触媒は、水素添加反応に再供給するために、固液分離手段から回収することができる。通常の固液分離手段における固体の回収技術が適用される。
フィルターを備えた濾過器では、濾過された固体を分散できる液体を、濾過処理液の通過方向とは反対方向に通過させることで、液体中に固体を回収することができる。
〔触媒の再供給〕
反応液から分離された触媒は、水素添加反応に再供給することができる。
【0018】
粉体状の触媒は、液体に分散させた状態にしておけば、取り扱い易い。触媒を分散させる液体は、水素添加反応に悪影響のない材料を使用する。
触媒を溶融状の無水マレイン酸に回収した場合、無水マレイン酸は水素添加反応の原料であるから、溶融状の無水マレイン酸に回収した触媒を、そのまま、水素添加反応に再供給することができる。
反応液から分離された触媒は、直ちに水素添加反応に再供給することもできるし、一旦、触媒を貯蔵あるいは保管したあとで、水素添加反応に再供給することもできる。
【0019】
反応液から分離された触媒を、新たに供給される触媒、あるいは、触媒の分散液と合わせて、水素添加反応に供給することもできる。
触媒の分離回収および再供給は、触媒活性の低下や触媒の損傷が問題にならない範囲で、複数回繰り返すことができる。通常、5〜40回の繰り返しが可能であり、10〜30回程度が好ましい。触媒活性が大幅に低下したり、濾過が困難になったりした触媒は、分離工程のあとで水素添加反応に再供給せずに廃棄することができる。
〔酸素濃度〕
無水コハク酸の製造工程において、触媒、触媒を含む反応液、および、触媒を含む溶融状の無水マレイン酸を、酸素濃度7%以上のガスに接触させないでおくことができる。好ましくは、酸素濃度5%以上のガスに接触させない。酸素濃度を規制しておく具体的な工程として、前記水素添加反応工程、触媒分離工程、触媒回収工程、触媒再供給工程が挙げられる。
【0020】
酸素濃度は、下式で求められる。
酸素濃度(%)=[気相中に含有される酸素の容積(m3)]/[全気相の容積(m3)]×100
無水コハク酸の製造に使用する無水マレイン酸や触媒を含む反応液を、出来るだけ酸素と接触させないことで、酸素の作用によって着色の原因になる不純物が副生することを、効果的に抑制できる。
酸素との接触を避けるには、各工程の処理装置および各工程をつなぐ配管などから、酸素を排出して、酸素以外のガス環境にしておくことが有効である。具体的には、窒素などの不活性ガスを供給することが有効である。
【0021】
触媒の活性低下を防ぐために、不活性ガスを、濾過器などの固液分離装置で供給することが有効である。濾過器などの固液分離装置で分離し回収して再供給する触媒が、酸素と接触すると活性の低下が起こる。触媒と酸素との接触を抑制することで、触媒活性の低下が防止できる。再使用する触媒でも、新触媒と遜色のない活性を発揮させることが可能になる。そのために、触媒が接触する雰囲気の酸素濃度を3%以下、好ましくは1%以下に制御することが有効である。
〔無水コハク酸〕
本発明の製造方法で得られた無水コハク酸は、有水物や着色原因となる不純物が極めて少ないものである。
【0022】
無水コハク酸の純度として、98%以上のものが得られる。
このように純度の高い無水コハク酸は、例えば、コハク酸、コハク酸のジエステル類、スクシンイミド類、ポリエステル類等の合成原料として有用である。
〔製造装置〕
図1に示す製造装置は、本発明の製造方法を実施するのに必要とされる基本的な配置構造を備えている。
水素添加反応を行う反応器10は、密閉槽状をなし、水素ガスの供給配管11、無水マレイン酸の供給配管13、触媒の供給配管21が接続されている。反応器10の下部には、循環配管31が接続されている。循環配管31は、循環ポンプ32を経て、熱交換器30に接続され、熱交換器30から再び反応器10の上部へと接続されている。
【0023】
反応器10の内部には、上部から下方に向かって延びる混合ミキサー16が設けられている。前記した水素ガスの供給配管11は、混合ミキサー16の上端部に接続されているとともに、直接に反応器10にも接続されている。混合ミキサー16の上端部には、反応液の循環配管31が接続されている。
反応器10の上部には、パージガスの排出管18が接続されている。
触媒の供給配管21は、反応器10に接続されている。供給配管21の他端は触媒槽20に接続されている。触媒槽20には、配管23を介して新触媒槽22が接続されている。
【0024】
反応器10の下部に接続された循環配管31から分岐する反応液の取出管19が、反応液受槽40に接続されている。反応液受槽40には、反応液送液ポンプ42を経てフィルター装置50に至る配管52が接続されている。
フィルター装置50には、フィルター処理後の生成反応液の取出配管51、フィルター処理で分離された触媒の回収配管53、触媒回収に用いる無水マレイン酸の供給配管54も接続されている。回収配管53は、触媒槽20に接続されている。
窒素ガスの供給配管60が、反応器10、触媒槽20、新触媒槽22、反応液受槽40およびフィルター装置50にそれぞれ接続されている。
【0025】
上記した製造装置を用いて、無水コハク酸の工業的製造が可能である。但し、本発明の製造方法が実施できれば、各装置機器やその配置構造を変更することもできる。
製造装置の具体例として、デービー社製のループ式リアクター、EC・Chem社製のジェット・リアクターなどがある。
〔製造装置の動作〕
窒素ガスの供給配管60から供給された窒素ガスで、反応器10、触媒槽20、新触媒槽22、反応液受槽40およびフィルター装置50内を置換しておく。
【0026】
反応器10には、供給配管11から水素が供給され、供給配管13から無水マレイン酸が供給され、供給配管21から触媒が供給される。反応器10の内部では、無水マレイン酸および触媒が含まれる液相12と、水素が含まれる気相14とが存在する。
触媒は、新触媒槽22から配管23を経て触媒槽20に保持されていて、必要な量の触媒が反応器10に供給される。
反応器10内で、触媒の存在下、無水マレイン酸の水素添加反応が進行する。反応器10内の反応液は、循環ポンプ32により、循環配管31を介して熱交換器30に循環させたあと、混合ミキサー16に送液する。この際、水素添加反応によって発生した反応熱を、熱交換器30で除去する。
【0027】
反応器10に戻された反応液は、混合ミキサー16で水素ガスと混合された状態で反応器10の液相12に供給される。反応液と水素ガスとの接触が極めて良好になり、ガスの吸収、拡散が良くなり、水素添加反応の反応効率が向上する。水素添加反応の進行に伴って、反応器10の気相14に溜まった不要なガスは、排出管18から排出される。排出されるガスには、原料水素中に含まれていたメタンなどが含まれる。
反応器10における水素添加反応が終了すると、反応液を取出管19から反応液受槽40に送り、さらに、反応液送液ポンプ42を経て、フィルター装置50に送る。
【0028】
フィルター装置50では、反応液から触媒を分離する。触媒を分離したあとの反応液は取出配管51から取り出される。触媒は、供給配管54から供給された無水マレイン酸に回収され、回収配管53から触媒槽20へと戻される。
【0029】
【実施例】
本発明にかかる無水コハク酸の製造方法を具体的に適用した実施例について説明する。
なお、得られた反応液の分析は、ガスクロマトグラフィー(GC)とNMRにて行った。
(実施例1)
100Lのループ式リアクターに、窒素ガス雰囲気下で、66.0kgの溶融無水マレイン酸と270gの触媒(5%Pd/活性炭、水分2%)を仕込んだ。次いで、リアクター内に、メタンを含んだ水素を圧力が0.1MPaになるまで供給して、反応器の外部に設置した熱交換器により、140℃まで加熱した。140℃までの昇温の過程で、水素添加反応が始まるが、さらに、前記同様のメタンを含んだ水素により1MPaまで反応圧力を上げた。反応中、気相部のガス組成を、水素91%(容量)、メタン9%(容量)に維持するために、メタンを含む系内ガスを、30L/minの速度で連続的に反応器より抜き出した。反応が終わるまで、反応温度は140℃に維持した。100分後に、水素添加反応が終了した。
【0030】
反応生成物の分析の結果、無水マレイン酸の転化率は100%であり、無水コハク酸の組成は99.9%であった。
その後、触媒は、窒素雰囲気下、無水コハク酸が析出しない温度である120℃で濾過することにより、生成物から濾別した。
(実施例2)
100Lのループ式リアクターに、窒素ガス雰囲気下で、実施例1と同量の溶融無水マレイン酸と触媒とを仕込んだ。次いで、リアクター内に、純水素を圧力が0.1MPaになるまで供給して、140℃まで加熱した。140℃までの昇温の過程で、水素添加反応が始まるが、さらに、純水素により0.5MPaまで反応圧力を上げた。反応が終わるまで、反応温度は140℃に維持した。100分後に、2L/minの少量のガスをパージした。170分後に、水素添加反応が終了した。
【0031】
反応生成物の分析の結果、無水マレイン酸の転化率は100%であり、無水コハク酸の組成は99.9%であった。
その後、触媒は、窒素雰囲気下、無水コハク酸が析出しない温度である120℃で濾過することにより、生成物から濾別した。
(比較例1)
100Lの攪拌式槽型リアクター(ジャケットおよびコイル装着)に、窒素ガス雰囲気下で、66.0kgの溶融無水マレイン酸と270gの触媒(5%Pd/活性炭、水分2%)を仕込んだ。次いで、リアクター内に、メタンを含んだ水素を圧力が0.1MPaになるまで供給して、反応器に装着したジャケットおよびコイルから加熱用の熱媒により、140℃まで加熱した。その後、前記同様のメタンを含んだ水素により1MPaまで反応圧力を上げた。反応中、気相部のガス組成を、水素91%(容量)、メタン9%(容量)に維持するために、メタンを含む系内ガスを、10L/minの速度で連続的に反応器より抜き出した。反応が終わるまで、反応温度は、ジャケットおよびコイルから熱媒への除熱により、140℃に維持した。300分後に、水素添加反応が終了した。
【0032】
反応生成物の分析の結果、無水マレイン酸の転化率は100%であり、無水コハク酸の組成は99.9%であった。
その後、触媒は、窒素雰囲気下、無水コハク酸が析出しない温度である120℃で濾過することにより、生成物から濾別した。
(比較例2)
比較例1と同様の100Lの攪拌式槽型リアクター(ジャケットおよびコイル装着)に、窒素ガス雰囲気下で、比較例1と同量の溶融無水マレイン酸および触媒を仕込んだ。次いで、リアクター内に、純水素を圧力が0.1MPaになるまで供給して、140℃まで加熱した。さらに、純水素により0.5MPaまで反応圧力を上げ、0.5MPaを維持した。反応が終わるまで、ジャケットおよびコイルから熱媒への除熱により、反応温度を140℃に維持した。100分後に、2L/minの少量のガスをパージした。500分後に、水素添加反応が終了した。
【0033】
反応生成物の分析の結果、無水マレイン酸の転化率は100%であり、無水コハク酸の組成は99.9%であった。
その後、触媒は、窒素雰囲気下、無水コハク酸が析出しない温度である120℃で濾過することにより、生成物から濾別した。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、無水コハク酸を製造する水素添加反応において、反応器内の反応液を熱交換器と混合ミキサーに送液し循環させることで、反応熱の除熱効率を高め、反応時間の短縮ができ、製造設備全体の小型化を達成できる。
また、反応器内で混合ミキサーによって反応液を構成する無水マレイン酸、触媒および水素を攪拌混合することで、気液の接触を良好にし、ガスの吸収、拡散が反応の律速条件とならないようにして、反応時間を短縮することができる。
その結果、高純度の無水コハク酸を、効率的かつ経済的に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を表す反応装置の全体構造図
【符号の説明】
10 反応器
12 液相
14 気相
16 混合ミキサー
20 触媒槽
22 新触媒槽
30 熱交換器
32 循環ポンプ
40 反応液受槽
42 反応液送液ポンプ
50 フィルター装置
Claims (5)
- 無水マレイン酸を原料として用い、触媒の存在下で水素添加反応により無水コハク酸を製造する方法であって、
前記無水マレイン酸、触媒および水素が供給される反応器と、反応器に配置され反応液と水素とを混合する混合ミキサーと、反応器内の反応液の昇温および反応熱の除去用外部熱交換器と、反応液循環用ポンプとからなる循環型反応装置を用い、
前記無水マレイン酸、触媒および水素を前記反応器に供給し、反応器内の反応液を前記熱交換器に送った後、混合ミキサーに送ることにより、反応液を循環させ、反応器内の混合ミキサーで反応液と水素とを混合しながら前記水素添加反応を行わせる
無水コハク酸の製造方法。 - 前記反応器内で、反応器に供給された水素を、前記熱交換器から反応器に戻された反応液に同伴させて、反応器内の液相部分に供給する
請求項1に記載の無水コハク酸の製造方法。 - 前記水素添加反応を、温度120〜160℃、水素圧0.1〜2.0MPaで行う
請求項1または2に記載の無水コハク酸の製造方法。 - 前記水素添加反応を、前記反応器上部に設置された前記混合ミキサーからの液流出速度を10m/sec以上で行う
請求項1〜3のいずれかに記載の無水コハク酸の製造方法。 - 前記水素添加反応を、前記反応液循環用ポンプとして、ガス容量30vol%以下のガス/液混合物を循環させることのできる循環用ポンプを用いる
請求項1〜4のいずれかに記載の無水コハク酸の製造方法。
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